説明

患者をモニターするためのバイオマーカー

本発明の分野は免疫療法であり、特定の免疫療法による治療の有効性を判定するための方法に関する。本発明の方法は、前記治療法の臨床転帰を評価するため、免疫療法による治療開始後のある時点において、特別なバイオマーカーを測定することを含んでなる。従って、本発明は、医学分野へ適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は免疫療法であり、特定の免疫療法による治療の有効性を判定するための方法に関する。本発明の方法は、前記治療法の臨床転帰を評価するため、免疫療法による治療開始後のある時点において、特別なバイオマーカーを測定することを含んでなる。従って本発明は、医学分野へ適用される。
【背景技術】
【0002】
免疫応答を誘導する抗原(例えばペプチド、タンパク質)の動物系への導入に関与し、これによって前記動物を例えば感染から保護する従来のワクチン接種技術が長年の間知られていた。これらの技術はさらに、生および不活化ワクチンの両方の開発を含んできた。生ワクチンは典型的には、感染病原体の病原型に対する免疫応答をプライミングできる、感染病原体の弱毒化された非病原型である。
【0003】
近年、興味ある外来抗原をコードし、ベクターから発現する組み換えワクチン、特に組み換え生ワクチンの開発に進歩がみられる。なかでも組み換えウイルスに基づくベクターは、新しいワクチンの開発において大きな見込みを示し、重要な役割を果たしている。多くのウイルスが、外来病原体または腫瘍組織由来のタンパク質を発現し、かつそれらの抗原に対する特異的な免疫応答をin vivoで誘導する能力について研究されてきた。一般にこれらの遺伝子に基づくワクチンが、強力な液性および細胞性免疫応答を刺激できることから、ウイルスベクターは、抗原をコードする遺伝子の送達ならびに抗原提示の促進および増強の両方に対する有効な戦略であり得る。ワクチン担体として利用するために、理想的なウイルスベクターは安全であり、かつ必要とされる病原体特異的抗原を免疫系へ効率的に提示できなければならない。さらにベクター系は、その大量産生を可能とする基準に合致しなければならない。このように、今日までに幾つかのウイルス性ワクチンベクターが出現し、それらは全て、提案される応用により相対的な利点と限界を有している(組み換えウイルス性ワクチンについての総説は、例えばHarrop and Carroll, 2006, Front Biosci., 11, 804-817 ; Yokoyana et al., 1997, J Vet Med Sci.,59, 311-322 を参照されたい)。前記組み換えワクチンの使用は、一般には標的免疫療法、または抗原特異的な活性免疫療法と名付けられている。
【0004】
プラスミドDNAベクターをin vivoで動物細胞へ直接トランスフェクトできるという1990年代初期の知見に続き、抗原をコードするDNAの動物への直接導入によって免疫応答を誘導する、DNAプラスミドの使用に基づいた免疫療法技術開発のための著しい研究努力もまた企てられた。このような技術は、DMAワクチン接種、またはDNA免疫療法と広く称されており、現在では多数の疾患モデルにおいて防御免疫応答を誘発するために用いられている。DNAワクチンの総説として、Reyes-Sandoval and Ertl, 2001 (Current Molecular Medicine, 1, 217-243)を参照されたい。
【0005】
しかしながら免疫療法の分野には、感染および疾患からの防御のために、治療される個体へ十分に強力な免疫応答を誘導する手法の同定という一般的な問題が存在する。
【0006】
従って、近年における主要な試みは、例えば、免疫療法によって誘導される免疫応答の増大に役立ち得る、免疫系の鍵となる特定の性状を刺激することによって作用する新規な薬品化合物の発見である。これらの化合物の多くは免疫応答修飾因子(IRM)またはアジュバントと称され、種々の重要なサイトカイン(例えばインターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子など。例えばSchiller et al., 2006, Exp Dermatol., 15, 331- 341を参照。)の生合成を誘導する、Toll様受容体(TLR)経由の基本的な免疫系の機序を通じて作用すると考えられる。このような化合物は、特定の樹状細胞、単球/マクロファージ由来のサイトカインの迅速な放出を刺激することが示されており、かつB細胞を刺激して、IRM化合物の抗ウイルスおよび抗腫瘍活性において重要な役割を果たす抗体を分泌させることもできる。
【0007】
あるいは、免疫療法戦略の多くはプライム−ブーストワクチン接種計画に基づいて提案されている。これらの「プライム−ブースト」免疫療法プロトコルによれば、免疫系は患者へプライミング組成物を投与することによって最初に誘導され、次にブースト第2組成物の投与によってブーストされる(例えば、欧州特許第1411974号または米国特許出願公開第20030191076号を参照)。
【0008】
これはさらに、一つの治療法が特定の群または患者においてのみ有効となり得るという、保健医療の状況において示されている。従って医師が、最適な個別化された患者の治療法を調整する、すなわち的確な治療法を的確な患者へ的確な時期に指示する、治療法の高い成功率を提供する、治療法への応答をモニターする、薬物の有効性および安全性を増大する、患者にとってその治療法が適切ではない不必要な治療法を排除する、患者に不必要な毒性および副作用を与えない、患者および保険会社に対し、不必要または危険で効果のない薬物療法の費用を削減する、および患者の生活の質を改善して、最終的には癌を適切なフォーローアップアッセイによって管理される疾患とすることを可能にし得る手段および方法を、彼らへ提供することが望ましい。
【0009】
これに関して文献は、例えば以下のような様々な手段および方法を提案している:
−遺伝的な相違による作用としての、薬物に対する個別の応答についての研究からなる遺伝薬理学。これらの応答は、所定のいずれの個体において薬物がどのように作用するか、それがどのように代謝されるか、その毒性および投薬必要量に関わる。ヒトゲノム計画により、遺伝薬理学は薬理ゲノム学へと発展した。薬理ゲノム学は、薬物の発見および開発、標的の発見および検証、ならびに治験から用途を見出す可能性によって遺伝薬理学を超える;
−メタボロミクスもまた、予測的な医学の分野に応用できる。遺伝的因子に限定される遺伝薬理学とは異なり、薬理メタボロミクスは、遺伝的因子のみではなく非遺伝的因子、例えば患者体内のその他の薬物、患者の現在の健康状態などにも基づいて、薬物に対する個体の応答を予測することが可能である。
−バイオマーカーの役割は、治療方法の臨床開発においてますます重要になりつつある。バイオマーカーは、正常な生物学的過程、疾患過程、または治療的介入への薬理応答の指標となり得る。その役割は、レスポンダー対ノンレスポンダーの同定に役立つ患者集団の層別化から、治療方法の有効性の判定にまで及ぶ。バイオマーカーは、薬剤開発の費用を減少させ、かつ治療法を的確な患者集団へより早く届けることを可能にする、よりよい判断のための貴重な手段となり得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、望まれる免疫応答に関連する、実質的に信頼できる特徴であると判定された生物学的なマーカー(バイオマーカー)を用いた、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法(すなわち免疫療法による治療)の有効性を評価するための材料および方法を提供する。このバイオマーカーは、患者から得た生体サンプル中に存在する。治療法開始後直ちにその臨床転帰を予測する能力により、医師および患者は、有効ではない治療法を同定して、それを放棄するかまたは代替治療法の実行を認めるかを含んでなる、治療過程についての説明および決定を行うことができるであろう。
【0011】
本出願の明細書全体を通して用いられる「a」および「an」の語は、文脈に他の指示が無い限り、参照される化合物もしくは工程の「少なくとも1」、「少なくとも最初」、「1以上」、または「複数」を意味する。例えば「a cell(細胞)」との語には、それらの混合を含んでなる、複数の細胞が含まれる。さらに詳細には、「少なくとも1つ」および「1以上」は、1または1よりも大きな数、特に1、2、もしくは3を好ましく意味する。
【0012】
本明細書のいずれの箇所でも用いられる「および/または」の語は、「および」、「または」、および「前記の語によって接続される要素の全て、またはその他の組み合わせのいずれも」との意味を含んでなる。
【0013】
本明細書で用いられる「約」または「おおよそ」の語は、20%以内、好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内を意味する。
【0014】
「患者」、「被験体」の語は、脊椎動物、特に哺乳類種のメンバーを意味し、家畜、変種動物、ヒトを含んでなる霊長類、を含んでなるがこれらに限定されない。
【0015】
本明細書で用いられる「治療法」または「治療する」の語は、予防および/または治療法を包含する。従って、本発明の免疫原性の組み合わせおよび方法は、治療への応用に限定されるものではなく、予防用にも使用できる。これは、本明細書の「予防用または治療用の応答、好ましくは免疫応答を発生させるため」との語によって包含される。「予防」は即時型の疾患(例えば感染症)の予防に限定されるものではなく、長期にわたるこれらの感染の結果、例えば肝硬変または癌の予防もさらに包含する。
【0016】
活性化合物の「有効量」または「十分量」は、臨床上の結果を含んでなる、有益な、または望まれる結果をもたらすために十分な量である。有効量は、1以上の投与によって投与できる。「治療上有効な量」は、ウイルス性の感染に付随する1以上の症状の緩和、同様に疾患の予防(例えば感染の1以上の症状の予防)を含んでなるがこれらに限定されない、有益な臨床上の結果をもたらす量である。
【0017】
第1の実施形態によれば、本発明は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法をモニターし、改変し、または適合させるための材料および方法に関する。これらの材料および方法は、患者における少なくとも1つのバイオマーカーの濃度に基づき、かつ、少なくとも1つのバイオマーカーについて、患者の生体サンプル(例えば血清または血漿)の濃度を、治療法開始後に少なくとも1回測定する工程を含んでなる。好ましい実施形態によれば、前記バイオマーカーはインターフェロンガンマ(インターフェロンγまたはIFNγ)である。
【0018】
本発明は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法(すなわち免疫療法による治療)の有効性を評価するための、ex−vivo方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、「評価する」の語は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法を「モニターし、改変し、または適合させる」こととして理解されなければならない。
【0020】
特定の態様によれば、この方法は、免疫療法による治療開始後の患者におけるインターフェロンγの濃度に基づいて、免疫療法による治療の有効性を評価することを含んでなる。
【0021】
特定の態様によれば、この方法は、免疫療法による治療後の患者のインターフェロンγ濃度を測定すること;およびインターフェロンγの濃度に基づいて、免疫療法による治療の有効性を評価することを含んでなる。
【0022】
特定の態様によれば、この方法は、免疫療法による治療後少なくとも数週間に1回、患者のインターフェロンγ濃度を測定すること;およびインターフェロンγの濃度に基づいて、免疫療法による治療の有効性を評価することを含んでなる。
【0023】
特定の態様によれば、この方法は、免疫療法による治療前に患者のインターフェロンγ濃度を測定することをさらに含んでよい。
【0024】
免疫療法による治療の開始からインターフェロンγ測定の間の時間は、1日から約48週間以上(例えば、約1日から約1週間、約1週間から約2週間、約2週間から約4週間、約4週間から約8週間、約8週間から約12週間、約12週間から約16週間、約16週間から約24週間、約24週間から約48週間以上)であってよい。本発明の好ましい実施形態によれば、時間間隔は約5週間である。同様に、追加の測定(すなわち第3、第4、第5などの測定)は、第2測定に続き、同様の時間間隔で行われてよい。
【0025】
本発明の特別な実施形態によれば、「免疫療法による治療」は、患者への免疫原性組成物の少なくとも1つの投与からなる。特別な実施形態によれば、「免疫療法による治療」は、患者への免疫原性組成物の連続的投与からなり、さらに詳細には、少なくとも2週間の期間、好ましくは少なくとも6週間の期間における毎週の投与からなる。
【0026】
関連する態様によれば、この方法は、患者への免疫原性組成物の投与後に、患者におけるインターフェロンγの濃度を判定すること;前記濃度をカットオフ値に対して比較すること;および、カットオフ値に比較したインターフェロンγの濃度に基づき、免疫療法による治療の有効性を評価することを含んでなる。
【0027】
本発明の特別な実施形態によれば、「インターフェロンγの濃度」は検出可能なインターフェロンγの濃度を意味し、「検出可能」とは、検出限界、さらに詳細には、インターフェロンγ濃度を測定するために用いた試験/方法(Luminex、Elisaなど)の検出限界と定義される。前記試験/方法の一検出限界は、ルーチンで容易に判定可能である。
【0028】
特別な実施形態によれば、カットオフ値および/または検出単位は約4pg/ml(例えば血漿中4.6pg/ml)であり、好ましくはLuminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングによって測定される(実施例1を参照)。別の試験/方法(例えばElisa)を用いる熟練者は、特定の一試験に関して、Luminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングによって測定された前記カットオフ値および/または約4pg/mlの検出限界と同値を判定することに困難はないであろう。特別な実施形態によれば、本発明による前記カットオフ値は、Luminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングによって測定されるカットオフ値に同等なカットオフ値として定義することができる。「Luminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングによって測定されるカットオフ値に同等なカットオフ値」は、Luminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングによって測定されるカットオフ値により同定される、同じ患者を同定するカットオフ値を意味する。
【0029】
特別な実施形態によれば、本発明は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法の有効性を評価するための方法に関し、該方法は、
(i)1以上の用量の前記免疫原性組成物を前記被験体へ投与し、
(ii)少なくとも1つの前記投与の後、前記被験体の体内のインターフェロンγ濃度を測定すること
を含んでなる。
【0030】
特別な実施形態によれば、本発明は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法の有効性を評価するための方法に関し、該方法は、
(i)1以上の用量の前記免疫原性組成物を前記被験体へ投与し、
(ii)少なくとも1つの前記投与の後、前記被験体の体内のインターフェロンγ濃度を測定し、
(iii)Luminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングによって測定された、約4pg/ml(例えば4.6pg/ml)を超えるインターフェロンγの濃度は、治療法に対する被験体の臨床転帰の成功、すなわち生存率の増加を示すこと
を含んでなる。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の方法は、患者体内のインターフェロンγ濃度を免疫原性組成物の投与前に測定することからなる最初の工程をさらに含んでなる。
【0032】
本発明によれば、インターフェロンγの濃度は、患者から得た生体サンプルにおいて測定される。生体サンプルには、血液および生物由来のその他の液体サンプル、生検の検体のような固形組織サンプルが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態によれば、生体サンプルは血液、血漿、または血清であり、この場合患者からのサンプルは、比較的単純で非侵襲的な手順により得られる。血液または血清を得る方法は当該技術分野において公知であり、本発明の一部ではない。
【0033】
加えて、インスタントバイオマーカーを含んでなる、ポリペプチドを検出および定量するための方法が多数知られている。このような方法には、抗体に基づく方法、さらに詳細にはモノクローナル抗体に基づく方法が含まれるが、これらに限定されない。本発明にとって、インスタントバイオマーカーを検出および定量するための特定の方法は重要ではない。例えば、本発明の材料および方法は、Luminex技術(Luminex Corporation、オースティン、テキサス州)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA、多くのELISAキットが、例えばCliniScience、Diaclone、Biosourceから市販されている)と共に用いられてよい。
【0034】
本明細書で用いられる「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」、「ワクチン」の語、または類似の語は互換的に用いることができ、被験体の免疫系を刺激し/誘導し/増大させて、現在の状態を寛解させるか、あるいは現在または将来の害もしくは感染(ウイルス性、細菌性、寄生虫性の感染)から保護するかまたはこれらを減少させるため、例えば腫瘍細胞の増殖もしくは生存の減少、被験体内での病原体の複製もしくは伝播の減少、または状態に付随する症状の検出可能な程度の減少、患者の生存の延長、に適した薬剤を意味する。前記免疫原性組成物は、(i)少なくとも1つの標的抗原の全部もしくは一部、および/または(ii)少なくとも1つの異種性ヌクレオチド配列、特に少なくとも1つの標的抗原の全部もしくは一部をコードする異種性ヌクレオチド配列の、全部もしくは一部をin vivoで発現する、少なくとも1つの組み換えベクターを含むことができる。別の実施形態によれば、本発明の免疫原性組成物は、(iii)少なくとも1つの免疫応答修飾因子を、単独、または(i)および/もしくは(ii)と組み合わせて含んでなる。このような免疫応答修飾因子(IRM)の例には、CpGオリゴヌクレオチド(例えば米国特許第6,194,388号;米国特許出願公開第2006094683号;国際公開第2004039829号を参照)、リポ多糖、ポリイノシン・ポリシチジン酸複合体(Kadowaki, et el., 2001, J. Immunol. 166, 2291-2295)、ならびに樹状細胞および/または単球/マクロファージからのサイトカイン酸性を誘導することが知られているポリペプチドおよびタンパク質が含まれる。このような免疫応答修飾因子(immune response modifiers:IRM)の例は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、オキザロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミンのような有機小分子である(例えば米国特許第4,689,338号;米国特許第5,389,640号;米国特許第6,110,929号;および米国特許第6,331,539号を参照)。
【0035】
本明細書で用いられる「抗原」の語は、免疫応答の標的となることが可能な、複合体抗原(例えば腫瘍細胞、ウイルス感染細胞など)を含むいずれの物質も指す。抗原は、例えば患者により引き起こされた細胞性および/または液性免疫応答の標的であってよい。「抗原」の語は、ウイルス性抗原、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原、細菌性抗原、寄生虫性抗原などの全部または一部を包含する:
−ウイルス性抗原は例えば、肝炎ウイルスA、B、C、DおよびE、HIV、疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹、パピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポバウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス由来の抗原を含んでなる;公知のウイルス性抗原の限定されない幾つかの例は、以下:HIV−1、例えばtat、nef、gp120もしくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、rev、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ由来の抗原;ヒト疱疹ウイルス、例えばgH、gL、gM、gB、gC、gK、gE、もしくはgDまたはそれらの一部および/もしくは組み合わせ、または前初期タンパク質、例えばHSV1もしくはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36由来の抗原;サイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルス、例えばgBまたはその誘導体由来の抗原;エプスタイン・バーウイルス、例えばgp350またはその誘導体由来の抗原;水痘帯状疱疹ウイルス、例えばgp1、11、111およびIE63由来の抗原;肝炎ウイルス、例えばB型肝炎、C型肝炎、またはE型肝炎ウイルス抗原(例えばHCVのenvタンパク質E1もしくはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ)由来の抗原;ヒトパピローマウイルス(例えばHPV6、11、16、18、例えばL1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ)由来の抗原;その他のウイルス性病原体、例えば呼吸器合胞体ウイルス(例えばFおよびGタンパク質またはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、フラビウイルス(例えば黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(例えばHA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの一部および/もしくは組み合わせ)由来の抗原を含んでなる;
−腫瘍特異的または関連抗原は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含んでなるがこれらに限定されない。このような癌のさらに詳細な例は、乳癌、前立腺癌、大腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌、肝臓癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌および様々な型の頭頚部癌、腎癌、悪性メラノーマ、咽頭癌、前立腺癌を含んでなる。癌抗原とは、明らかに腫瘍特異的な免疫応答を、潜在的に刺激することができる抗原である。これらの抗原のあるものは正常細胞によりコードされるが、必ずしも発現しない。これらの抗原は、正常細胞においては通常サイレント(すなわち発現しない)であるもの、低レベルでのみ発現するかまたは分化の特定の段階に発現するもの、および胚性および胎児性抗原のような一時的に発現するものとして特徴付けられる。その他の癌抗原は、癌遺伝子(例えば活性化ras癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば変異p53)のような変異細胞遺伝子、内部欠失または染色体転座の結果としての融合タンパク質によりコードされる。さらにその他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスにより保有されるような、ウイルス性遺伝子によってコードされ得る。腫瘍特異的または関連抗原の限定されない幾つかの例は、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)ならびにその免疫原性エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)ならびにその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えばMAGE−A1、MACE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−Al2、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えばGAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー(例えばMuC−1)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、アルファフェトプロテイン、E−カドヘリン、アルファカテニン、ベータカテニン、およびガンマカテニン、pl20ctn、gp100.sup.Pme1117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質のようなウイルス性産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBVによりコードされる核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、ならびにc−erbB−2を含んでなる;
−細菌性抗原は、例えば、TBおよびハンセン病の原因となるマイコバクテリア、肺炎球菌、好気性グラム陰性桿菌、マイコプラズマ、ブドウ球菌感染症、連鎖球菌感染症、サルモネラ、クラミジア、ナイセリア由来の抗原を含んでなる;
−その他の抗原は、例えばマラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、住血吸虫症、フィラリア症由来の抗原を含んでなる。
【0036】
特別な一実施形態によれば、前記抗原は異種性ヌクレオチド配列によりコードされ、組み換えベクターによりin vivoにおいて発現する。
【0037】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の異種性ヌクレオチド配列は、以下の抗原、HBV−PreS1、PreS2、および表面envタンパク質、コア、およびpolHIV−gp120、gp40、gp160、p24、gag、pol、env、vif、vpr、vpu、tat、rev、nef;HPV−E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、L1、L2(例えば国際公開第90/10459号、国際公開第98/04705号、国際公開第99/03885号を参照);HCV envタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7(例えば国際公開第WO2004111082号、国際公開第2005051420号を参照);Muc−1(例えば米国特許第5,861,381号;米国特許第6,054,438号;国際公開第98/04727号;国際公開第98/37095号を参照)の全部または一部の1以上をコードする。
【0038】
本発明の変異形によれば、免疫原性組成物は、少なくとも2の抗原、または少なくとも2の抗原をコードする1の異種性ヌクレオチド配列、または少なくとも2の抗原をコードする少なくとも2の異種性ヌクレオチド配列、またはそれらのいずれの組み合わせも含んでなる。
【0039】
別の特別な実施形態によれば、本発明の前記異種性ヌクレオチド配列は、HPVのE6初期コード領域、HPVのE7初期コード領域、およびそれらの誘導体または組み合わせからなる群より選択される、HPV抗原の全部または一部をコードする。
【0040】
本発明による、組み換えベクターによりコードされるHPV抗原は、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチド、またはHPV E6ポリペプチドおよびHPV E7ポリペプチドの両方からなる群より選択される。本発明は、変異しているかまたは少なくとも著しく減弱したp53に結合する、いずれのHPV E6ポリペプチドの使用、および/または変異しているかまたは少なくとも著しく減弱したRbに結合する、いずれのHPV E7ポリペプチドの使用も包含する(Munger et al., 1989, EMBO J. 8, 4099-4105; Crook et al., 1991, Cell 67, 547-556; Heck et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446; Phelps et al., 1992, J. Virol. 66, 2148-2427)。本発明の目的に適した非発癌性のHPV−16 E6変異体では、おおよそ位置118からおおよそ位置122におけるアミノ酸残基の1以上が欠失しており(+1は、天然HPV−16 E6ポリペプチドの最初のメチオニン残基を表す)、特に好ましくは残基118から122(CPEEK)が完全に欠失している。本発明の目的に適した非発癌性のHPV−16 E7変異体では、おおよそ位置21からおおよそ位置26におけるアミノ酸残基の1以上が欠失しており(+1は、天然HPV−16 E7ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す)、特に好ましくは残基21から26(DLYCYE)が完全に欠失している。好ましい実施形態によれば、本発明で用いられる1以上のHPV−16初期ポリペプチドは、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスIIの提示を改善するために、かつ/または抗HPV免疫を刺激するために、さらに改変される。HPV E6およびE7ポリペプチドは核タンパク質であり、以前に、膜提示によってそれらの治療上の有効性が改善されることが示されている(例えば、国際公開99/03885号を参照)。従って、少なくとも1つのHPV初期ポリペプチドが細胞膜に固定されるように改変することが望ましいであろう。膜アンカーは、HPV初期ポリペプチド内に膜アンカー配列を取り込むことにより、天然ポリペプチドが分泌配列(すなわちシグナルペプチド)を持たない場合に容易に達成できる。膜アンカーおよび分泌配列は、当該技術分野において公知である。簡単に述べると、分泌配列は、膜提示されるかまたは分泌されるポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)への通過を開始する。これらは通常15ないし35の、基本的には疎水性のアミノ酸を含んでなり、次にこれらのアミノ酸が、特異的なER局在のエンドペプチダーゼにより除去されて成熟ポリペプチドが得られる。膜アンカー配列は、通常、本来は高度に疎水性であり、ポリペプチドの細胞膜内への固定に役立つ(例えば、Branden and Tooze, 1991, in Introduction to Protein Structure p. 202-214, NY Garlandを参照)。
【0041】
本発明の文脈内で使用できる、膜アンカーおよび分泌配列の選択は非常に広い。これらは、それを含んでなるいずれの膜アンカーおよび/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞性またはウイルス性ポリペプチド)、例えば狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質、または麻疹ウイルスFタンパク質から得られてよいか、または合成であってよい。本発明によって用いられる初期HPV−16ポリペプチドそれぞれに挿入される膜アンカーおよび/または分泌配列は、共通または異なる起源を有してよい。分泌配列の好ましい挿入部位は翻訳開始コドン下流のN末端であり、膜アンカー配列の好ましい挿入部位はC末端、例えば終止コドンのすぐ上流である。
【0042】
本発明で用いられるHPV E6ポリペプチドは、麻疹Fタンパク質の分泌および膜アンカーシグナルの挿入によって好ましく改変される。任意に、または組み合わせて、本発明で用いられるHPV E7ポリペプチドは、狂犬病糖タンパク質の分泌および膜アンカーシグナルの挿入によって好ましく改変される。
【0043】
組み換えベクターの治療上の有効性はまた、免疫賦活ポリペプチドをコードする1以上の核酸の使用によっても改良できる。例えば、HPV初期ポリペプチドを、カルレティキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108, 669-678)、結核菌熱ショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60, 1035-1042)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71, 8497-8503)、または細菌性毒素、例えば緑膿菌外毒素A(ETA(dIII))の転移ドメイン(Hung et al., 2001 Cancer Res. 61, 3698-3703)、のようなポリペプチドに連結することは有利であり得る。
【0044】
別の実施形態によれば、本発明の組み換えベクターは、上で定義した初期ポリペプチドの1以上、さらに詳細にはHPV−16および/またはHPV−I8初期E6および/またはE7ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる。
【0045】
別の特別な好ましい実施形態によれば、本発明の前記異種性ヌクレオチド配列は、MUC1抗原またはその誘導体の全部もしくは一部をコードする。
【0046】
別の特別な好ましい実施形態によれば、本発明の前記異種性ヌクレオチド配列は、以下:HCV envタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはそれらの誘導体の全部もしくは一部の1以上をコードする。別の特別な好ましい実施形態によれば、本発明の前記異種性ヌクレオチド配列は1以上の融合タンパク質をコードし、ここにおける配置は、少なくとも1つのNSポリペプチドの順序が、天然の配置の順序とは異なるようであるという意味で天然ではない。従って、融合タンパク質がNS3ポリペプチド、NS4Aポリペプチド、およびNS5Bポリペプチドを含んでなる場合、天然の立体配置は、NS3がN末端、およびNS5BがC末端に位置する、NS3−NS4A−NS5Bであり得る。一方で非天然の配置は、NS5B−NS3−NS4A、NS5B−NS4A−NS3、NS4A−NS3−NS5B、NS4A−NS5B−NS3、またはNS3−NS5B−NS4Aであり得る。本発明の融合タンパク質は、以下の少なくとも1を含んでなる:
○NS3ポリペプチドのN末端へ、直接またはリンカーを通して融合するNS4Aポリペプチド;
○NS5BポリペプチドのN末端へ、直接またはリンカーを通して融合するNS3ポリペプチド;
○NS5BポリペプチドのN末端へ、直接またはリンカーを通して融合するNS4Bポリペプチド;
○NS4BポリペプチドのN末端へ直接またはリンカーを通して融合するNS3ポリペプチドのN末端へ、直接またはリンカーを通して融合するNS4Aポリペプチド;および/または
○NS5BポリペプチドのN末端へ直接またはリンカーを通して融合するNS4BポリペプチドのN末端へ、直接またはリンカーを通して融合するNS3ポリペプチド。
【0047】
本発明の融合タンパク質のこのような特別な部分において、NSポリペプチドはそれぞれ独立して天然であってよいか、または改変できる。例えば、NS4A−NS3の部分に含まれるNS4Aポリペプチドは天然であってよいが、NS3ポリペプチドは、以下に述べる少なくとも1つの改変を含んでなる。
【0048】
必要であれば、本発明で用いられる核酸分子は、標的抗原(例えばHPV初期ポリペプチド)を特定のホスト細胞または生命体、例えばヒトホスト細胞または生命体内に高レベルで発現させるため、最適化されてよい。典型的には、哺乳類ホスト細胞ではあまり用いられないコドンに相当する1以上の「天然」(例えばKPV)コドンを、同じアミノ酸をコードし、より頻繁に用いられる1以上のコドンによって置換することにより、コドンの最適化が行われる。これは従来の変異誘発または化学合成技術(例えば核酸を合成する)により達成できる。部分的な置換でも発現の増大は達成できることから、あまり用いられないコドンに相当する天然コドンの全てを置換する必要はない。さらに、最適化コドンの使用への厳格な固執からの幾らかの逸脱は、制限酵素部位の導入により行われる。
【0049】
ここで用いられる「組み換えベクター」の語は、染色体外(例えばエピソーム)、マルチコピー、および組み込みベクター(すなわちホスト染色体内に取り込まれる)を含んでなる、ウイルス性および非ウイルス性のベクターを指す。本発明の文脈において特に重要であるのは、遺伝子治療法に使用するためのベクター(すなわちホスト生命体へ核酸を送達できるもの)、および様々な発現システムにおいて使用するための発現ベクターである。適切な非ウイルス性のベクターには、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)、pCDM8(Seed, 1987, Nature 329, 840)、pVAX、およびpgWiz(Gene Therapy System Inc; Himoudi et al., 2002, J. Virol. 76, 12735-12746)のようなプラスミドが含まれる。適切なウイルスベクターは、様々な異なるウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、疱疹ウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルスなど)に由来してよい。本明細書で用いられる「ウイルスベクター」の語は、ベクターのDNA/RNA、および産生されたそのウイルス粒子を包含する。ウイルスベクターは複製可能であるか、または複製欠陥もしくは複製障害であるように、遺伝的に無効にすることができる。本明細書で用いられる「複製可能」の語は、特定のホスト細胞(例えば腫瘍細胞)内でより良く、または選択的に複製できるように改変された、複製選択的および条件的に複製可能なウイルスベクターを包含する。
【0050】
一態様によれば、本発明で用いられる組み換えベクターは組み換えアデノウイルスベクターである(総説として、"Adenoviral vectors for gene therapy", 2002, Ed D. Curiel and J. Douglas, Academic Pressを参照)。これは様々なヒトまたは動物源由来であってよく、かつアデノウイルス血清型の1ないし51からのいずれの血清型も用いられてよく、特にヒトアデノウイルス2(Ad2)、5(Ad5)、6(Ad6)、11(Ad11)、24(Ad24)および35(Ad35)が好ましい。このようなアデノウイルスは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC、ロックビル、メリーランド州)から入手でき、それらの配列、構成、および産生方法を記載した多数の出版物があることから、熟練者によるそれらの使用が可能である(例えば米国特許第6,133,028号;米国特許第6,110,735号;国際公開第02/40665号;国際公開第00/50573号;欧州特許第1016711号;Vogels et al., 2003, J. Virol. 77, 8263-8271を参照)。
【0051】
本発明で用いられるアデノウイルスベクターは、複製可能であってよい。複製可能なアデノウイルスベクターの多くの例が、当業者には容易に入手可能である(例えばHernandez-Alcoceba et al., 2000, Human Gene Ther. 11, 2009-2024; Nemunaitis et al., 2001, Gene Ther. 8, 746-759; Alemany et al., 2000, Nature Biotechnology 18, 723-727を参照)。例えば、これらは野生型アデノウイルスゲノムから、E1A CR2ドメインの欠失により(例えば国際公開第00/24408号を参照)、および/または、天然E1および/またはE4プロモーターを、組織、腫瘍、または細胞の状態に特異的なプロモーターで置換することにより(例えば米国特許第5,998,205号、国際公開第99/25860号、米国特許第5,698,443号、国際公開第00/46355号、国際公開第00/15820号、および国際公開第01/36650号を参照)改変できる。
【0052】
あるいは、本発明で用いられるアデノウイルスベクターは、複製欠陥である(例えば国際公開第94/28152号;Lusky et al., 1998, J. Virol 72, 2022-2032を参照)。好ましい複製欠陥アデノウイルスベクターは、E1欠陥(例えば米国特許第6,136,594号および米国特許第6,013,638号を参照)であり、これはおおよそ位置459ないし3328、またはおおよそ位置459ないし3510から伸展するE1の欠失による(受入番号M73260によりGeneBankに開示されるヒトアデノウイルスタイプ5の配列、およびChroboczek et al., 1992, Virol. 186, 280-285への参照による)。クローニング能は、アデノウイルスゲノムのさらなる部分(非必須のE3領域、またはその他の必須のE2、E4領域の、全部もしくは一部)の欠失によってさらに改良できる。アデノウイルスベクターのいずれの位置への核酸の挿入も、Chartier et al. (1996, J. Virol. 70, 4805-4810)に記載される相同組み換えを通して行うことができる。例えば、HPV−16 E6ポリペプチドをコードする核酸はE1領域を置換するために挿入でき、HPV−16 E7ポリペプチドをコードする核酸はE3領域を置換するために挿入でき、その逆もまた同じである。
【0053】
別の好ましい態様によれば、本発明で用いられるベクターはポックスウイルスベクターである(例えばCox et al. in "Viruses in Human Gene Therapy" Ed J. M. Hos, Carolina Academic Pressを参照)。別の好ましい実施形態によれば、これはワクシニアウイルスからなる群より選択され、適切なワクシニアウイルスは、コペンハーゲン株(Goebel et al,, 1990, Virol. 179, 247-266 および 517-563; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス株、およびそれら由来の、MVAを含んでなる高度に弱毒化されたウイルス(総説としてMayr, A., et al., 1975, Infection 3, 6-14を参照)ならびにそれらの誘導体(例えばMVAワクシニア株575(ECACC V00120707−米国特許第6,913,752号)、NYVAC(国際公開第92/15672号−Tartaglia et al., 1992, Virology, 188, 217-232を参照)を含んでなるがこれらに限定されない。MVAゲノムの完全な配列の決定、およびコペンハーゲンVVゲノムとの比較により、MVAゲノムにおける7の欠失(IないしVII)の正確な同定が可能となり(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)、それらのいずれも抗原をコードする核酸を挿入するために使用できる。ベクターはまた、その他のいずれのポックスウイルス科のメンバー、特に鶏痘(例えばTROVAC、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163を参照);カナリア痘(例えばALVAC、国際公開第95/27780号、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163);鳩痘;豚痘などからも取得され得る。例として当業者は、このような異種性ヌクレオチド配列、特に抗原をコードするヌクレオチド配列を発現できるポックスウイルスに基づいた発現ベクターの産生について記載されている、国際公開第92 15672号(参照により取り込まれる)を参照して
よい。
【0054】
ポックスウイルスゲノム内における発現に必要な、核酸および付随する調節性エレメントの挿入のための基本的技術は、当業者が利用できる多数の文書に記載されている(Paul et al., 2002, Cancer gene Ther. 9, 470-477; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymoiogy 153, 545-563;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,772,848号;米国特許第4,603,112号;米国特許第5,100,587号、および米国特許第5,179,993号)。これは通常、ウイルス性ゲノムおよび挿入する核酸を保有するプラスミドの両方に存在する重複配列(すなわち望まれる挿入部位)間の相同組み換えを通して進められる。
【0055】
本発明の抗原をコードする核酸は、組み換えポックスウイルスが生存可能かつ感染可能なままであるように、ポックスウイルスゲノムの非必須の遺伝子座へ好ましく挿入される。非必須の領域は、非コードの遺伝子間領域であるか、またはその不活性化もしくは欠失がウイルスの増殖、複製、または感染を有意に損なわない、いずれの遺伝子でもある。欠損した機能が、ウイルス粒子産生の途中に、例えばポックスウイルスゲノム内で欠失したそれらに対応する補完配列を保有するヘルパー細胞株を用いることにより供給されるという条件で、必須のウイルス性遺伝子座への挿入も想定され得る。
【0056】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを用いる際に、抗原をコードする核酸は、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)内へ好ましく挿入される(Hruby et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415 ; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530- 537)。しかしながらその他の挿入部位、例えば赤血球凝集素遺伝子内(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L遺伝子座内、u遺伝子内(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)、または文献上で様々な自発性または改変された欠失が報告されている、ワクシニアウイルスゲノムの左端(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395; Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286 ; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)もまた適切である。
【0057】
MVAを用いる際に、抗原をコードする核酸は、同定されたIないしVIIの欠失のいずれか1の内、およびD4R遺伝子座内に挿入されてよいが、欠失IIまたはIII内への挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031- 1038 ; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 1032-1040)。
【0058】
鶏痘ウイルスを用いる際にはチミジンキナーゼ遺伝子内への挿入が考慮され得るが、抗原をコードする核酸は、ORF7と9の間の遺伝子間領域内へ好ましく導入される(例えば欧州特許第314 569号および米国特許第5,180,675号を参照)。
【0059】
特別な一実施形態によれば、前記組み換えベクターは、組み換えプラスミドDNAまたは組み換えウイルスベクターである。
【0060】
別の特別な実施形態によれば、前記組み換えウイルスベクターは組み換えアデノウイルスベクターである。
【0061】
別の特別な実施形態によれば、前記組み換えウイルスベクターは組み換えワクシニアベクターである。
【0062】
好ましい一実施形態によれば、前記組み換えワクシニアベクターは組み換えMVAベクターである。
【0063】
好ましくは、本発明で用いられる抗原をコードする核酸は、ホスト細胞または生命体内でのその発現に適した形であり、これは抗原をコードする核酸配列が、ホスト細胞または生命体内でのその発現に必要な1以上の調節性配列の制御下に配置されることを意味する。本明細書で用いられる「調節性配列」の語は、複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、安定、および/または核酸もしくはその誘導体のうちの一つ(すなわちmRNA)のホスト細胞内への輸送を含んでなる、所定のホスト細胞内での核酸の発現を可能にするか、これに寄与するか、または調節するいずれの配列も指す。当業者は、調節性配列の選択が、ホスト細胞、ベクター、および望まれる発現レベルのような因子に依存し得ることを理解するであろう。抗原をコードする核酸は、真核細胞内での抗原核酸の発現を導く遺伝子発現配列へ機能的に連結される。遺伝子発現配列は、それが機能的に連結する抗原核酸の効率的な転写および翻訳を促進する、プロモーター配列またはプロモーター−エンハンサーの組み合わせのような調節性ヌクレオチド配列のいずれでもある。遺伝子発現配列は、例えば、恒常的もしくは誘導性プロモーターのような、哺乳類またはウイルス性プロモーターであってよい。恒常的哺乳類プロモーターには、以下の遺伝子に対するプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hypoxanthine phosphoribosyl transferase:HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、b−アクチンプロモーター、およびその他の恒常的プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。真核細胞内で恒常的に機能する典型的なウイルス性プロモーターには、例えば、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)、サルウイルス(例えばSV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの末端反復配列(long terminal repeats:LTR)およびその他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。その他の恒常的プロモーターは、当業者に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターには、誘導性プロモーターもまた含まれる。誘導性プロモーターは、誘導因子の存在下で発現する。例えばメタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で転写および翻訳の促進が誘導される。その他の誘導性プロモーターは、当業者に公知である。一般に遺伝子発現配列は、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などのような、転写および翻訳それぞれの開始に関わる5’非転写および5’非翻訳配列を含み得ることが必要である。特にこのような5’非転写配列は、機能的に連結された抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含んでなる、プロモーター領域を含み得る。遺伝子発現配列は、所望により、エンハンサー配列または上流の活性化因子配列を任意に含んでなる。ポックスウイルスベクターにおける使用のために好ましいプロモーター(以下を参照)には、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11、およびK1L、初期および後期ポックスウイルスプロモーターのキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097), Hammond et al. (1997, J. Virologicai Methods 66, 135-138)および Kumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されるような合成プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
プロモーターは特に重要であり、本発明は、多くの型のホスト細胞内で核酸の発現を導く恒常的プロモーター、および特定のホスト細胞においてのみか、または特異的な現象もしくは外来性の因子(例えば温度、栄養性添加物、ホルモン、またはその他のリガンド)に反応して発現を導くプロモーターの使用を包含する。適切なプロモーターは文献に広く記載されており、RSV、SV40、CMV、およびMLPプロモーターのようなウイルス性プロモーターがより詳細に引用され得る。ポックスウイルスベクターにおける使用のために好ましいプロモーターには、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11、およびK1L、初期および後期ポックスウイルスプロモーターのキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097), Hammond et al. (1997, J. Virologicai Methods 66, 135-138)および Kumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されるような合成プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
当業者は、本発明の核酸分子の発現を制御する調節性エレメントが、転写の適切な開始、調節、および/または終結(例えばポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば核局在化シグナル配列)、プロセシング(例えばスプライシングシグナル)、および安定(例えば、イントロンおよび非コード5’および3’配列)、翻訳(例えば、ペプチドシグナル、プロペプチド、三部からなるリーダー配列(tripartite leader sequences)、リボゾーム結合部位、シャイン−ダルガーノ配列など)のための追加エレメントを、ホスト細胞または生命体内へさらに含んでなり得ることを理解するであろう。
【0066】
あるいは、本発明で用いられる組み換えベクターは、少なくとも1つのサイトカインをコードする少なくとも1つの核酸をさらに含んでなってよい。適切なサイトカインには、限定はされないが、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−7、IL−15、IL−18、IL−21)およびインターフェロン(例えば、IFNγ、INFα)が含まれ、特にIL−2が好ましい。本発明の組み換えワクチンがサイトカインを発現する核酸を含んでなる場合、前記核酸は、1以上の抗原をコードする組み換えベクターによって、または同じかもしくは異なる由来であってよい、独立した組み換えベクターによって保有され得る。
【0067】
好ましい実施形態によれば、本発明で用いられる組み換えは、MUC1抗原またはその誘導体の全部もしくは一部、および上に記載したサイトカインの少なくとも1、好ましくはインターロイキン、特にIL2をコードする。
【0068】
上記の組み換えウイルスベクターを含んでなる感染性のウイルス粒子は、ルーチンの手順により産生することができる。典型的な手順は:
a.ウイルスベクターを適切な細胞株へ導入する工程、
b.前記感染性ウイルス粒子の産生が可能になるように、前記細胞株を適切な条件下で培養する工程、
c.前記細胞株の培養から産生された感染性ウイルス粒子を回収する工程、および
d.任意に、前記の回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程を含んでなる。
【0069】
アデノウイルスベクターの伝播に適した細胞は、例えば293細胞、PERC6細胞、HER96細胞、または国際公開第94/28152号、国際公開第97/00326号、米国特許第6,127,175号に開示される細胞である。
【0070】
ポックスウイルスベクターの伝播に適した細胞は鳥類細胞であり、最も好ましくは、受精卵から得たニワトリ胚より調製された、初代ニワトリ胚線維芽細胞(chicken embryo fibroblasts:CEF)である。
【0071】
感染性ウイルス粒子は、培養上清、または溶解(例えば、化学的手段、凍結/融解、浸透圧ショック、機械的ショック、超音波処理などによる)後の細胞から回収され得る。ウイルス粒子は、プラーク精製の連続ラウンドから回収でき、次に当該分野の技術(クロマトグラフィー法、塩化セシウムまたはショ糖勾配による超遠心分離法)を用いて精製される。
【0072】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、治療法の有効性を予測するための、さらに詳細には免疫療法の有効性を予測するためのその他の方法と組み合わせてよい。例えば、活性化NK細胞のレベル(欧州特許出願公開第08305876.8号に基づく優先権を主張する特許出願を参照)またはsICAM−1のレベル(欧州特許出願公開第09305032.6号に基づく優先権を主張する特許出願を参照)のような、バイオマーカーのレベルである。
【0073】
所望により、本発明による免疫原性組成物の投与は、1以上の従来の治療様式(例えば、照射、化学療法、および/または外科手術)と併用して実行することができる。複数の治療アプローチによって、選択された患者に、より広範な介入が行われる。一実施形態によれば、本発明による免疫原性組成物の投与は、外科的介入に先立つか、またはそれに続いてよい。別の実施形態によれば、これは放射線療法(例えばガンマ線照射)に先立つか、またはそれに続いてよい。当業者は、使用できる適切な放射線療法のプロトコルおよびパラメーターを容易に考案できる(例えば、当業者に容易に明らかとなり得る適切な適応および改変を用いる、Perez and Brady, 1992, Principles and Practice of Radiation Oncology, 2nd Ed. JB Lippincott Coを参照)。さらに別の実施形態によれば、本発明による免疫原性組成物の投与は、1以上の薬物(例えば、ウイルス感染、ウイルスに関連する病的状態、癌などの治療または予防のために慣習的に用いられる薬物)による化学療法に付随する。
【0074】
従って、本発明は、化学療法剤を用いた化学療法治療が行われている癌患者の治療を改善する方法に関し、前記方法は、
1以上の用量の本発明による免疫原性組成物、および1以上の用量の化学療法剤を患者へ投与し、
免疫原性組成物の少なくとも1つの前記投与の後、前記被験体の体内のインターフェロンγ濃度を測定し、
ここで、約4pg/ml(例えば4.6pg/ml)を超えるインターフェロンγの濃度は、治療法に対する被験体の臨床転帰の成功、すなわち生存率の増加を示すこと
を含んでなる。
【0075】
一実施形態によれば、前記化学療法剤の投与は、前記免疫原性組成物の投与前に行われる。
【0076】
別の実施形態によれば、前記化学療法剤の投与は、前記免疫原性組成物の投与後に行われる。
【0077】
別の実施形態によれば、前記化学療法剤の投与は、前記免疫原性組成物の投与と同時に行われる。
【0078】
別の実施形態によれば、本発明の方法または使用は、1以上のプライマー組成物および1以上のブースター組成物の連続投与を含んでなる、プライムブーストの治療様式により実行される。典型的には、プライミングおよびブースティング組成物には、少なくとも1つの共通する抗原性ドメインを含んでなるか、またはコードする、異なるビヒクルが使用される。プライミング組成物はホスト生命体へ最初に投与され、1日ないし12か月の期間後、ブースティング組成物が同じホスト生命体へ続いて投与される。本発明の方法は、1ないし10回のプライミング組成物の連続投与と、それに続く1ないし10回のブースティング組成物の連続投与を含んでなり得る。望ましくは、注射の間隔はおおよそ1週間ないし6か月である。さらに、プライミングおよびブースティング組成物は、同じ部位または別の部位に、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与できる。
【0079】
特別な一実施形態によれば、本発明は上記の方法に関し、ここで前記ヒト疾患は癌である。
【0080】
特別な実施形態によれば、前記癌は、例えば乳癌、大腸癌、腎癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、腎臓癌、悪性メラノーマ、咽頭癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、非小細胞肺癌(non Small cell Lung Cancer:NSCLC)、血液癌、胃癌、骨髄腫である。
【0081】
好ましい実施形態によれば、前記癌は非小細胞肺癌(non Small cell Lung Cancer:NSCLC)である。
【0082】
特別な一実施形態によれば、本発明は上記の方法に関し、ここで前記ヒト疾患は感染症である。
【0083】
好ましい実施形態によれば、前記感染症は、例えばHIV、HCV、HBV、HPVなどにより誘導される疾患のようなウイルス誘導性疾患である。
【0084】
特別な一実施形態によれば、治療法される患者集団に観察される免疫応答は、腫瘍特異的もしくは関連抗原、および/またはウイルス性抗原へ向けられる。一実施形態によれば、前記患者集団における前記「免疫応答」は、異なる抗原へ向けられる。特別な一実施形態によれば、前記患者集団における前記「免疫応答」は、MUC1抗原へ向けられる。別の特別な一実施形態によれば、前記患者集団における前記「免疫応答」は、T細胞免疫応答、好ましくはCD8+(細胞傷害性Tリンパ球)免疫応答である。別の特別な一実施形態によれば、前記患者集団における前記「免疫応答」は、非特異的免疫応答である。別の特別な一実施形態によれば、前記患者集団における前記「免疫応答」は、自然免疫応答の刺激である。
【0085】
動物またはヒト生命体への投与によって免疫応答を誘導または刺激する能力は、in vitroまたは in vivoのいずれかにおいて、当該技術分野において標準である様々なアッセイを用いて評価することができる。免疫応答の開始および活性化を評価するために利用できる技術についての一般的な記述は、例えば Coligan et al. (1992 and 1994, Current Protocols in Immunology ; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)を参照されたい。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞由来の細胞を含んでなる、活性化エフェクター細胞により分泌されるサイトカインプロファイルの測定(例えば、ELIspotによるIL−10またはIFNガンマ産生細胞の定量化)により、免疫エフェクター細胞の活性化状態の判定(例えば、古典的な[H]チミジン取り込みによるT細胞増殖アッセイ)により、感作された被験体における抗原特異的T細胞のアッセイ(例えば、細胞毒性アッセイにおけるペプチド特異的な溶解)により、または蛍光MHCおよび/もしくはペプチド多量体(例えば四量体)による抗原特異的T細胞の検出により行うことができる。液性応答を刺激する能力は、抗体結合および/または結合の競合により判定され得る(例えば、Harlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Pressを参照)。本発明の方法はまた、抗原に対する免疫応答の誘導または増強を反映する抗腫瘍活性を判定するため、適切な腫瘍誘導剤(例えばMUC1を発現するRMA細胞)を投与された動物モデルにおいて、さらに検証することもできる。
【0086】
従って、本発明はさらに、免疫原性組成物の投与によってヒト疾患を治療される患者の生存を延長するための方法に関し、前記方法は、
1以上の用量の本発明による免疫原性組成物を患者へ投与し、
本発明による免疫原性組成物の少なくとも1つの前記投与の後、前記被験体の体内のインターフェロンγ濃度を測定すること(上記を参照)を含んでなる。
【0087】
別の実施形態によれば、本発明は、免疫原性組成物の前記投与に対するフォローアップとして、免疫原性組成物の投与により治療された被験体が、予防用または治療用の応答、好ましくは予防用または治療用の免疫応答の発生に感受性であるか否かを予測するバイオマーカーとしてのインターフェロンγの使用に関する。
【0088】
別の実施形態によれば、本発明は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法をモニターし、改変し、または適合させるためのバイオマーカーとしてのインターフェロンγの使用に関する。
【0089】
さらに詳細には、本発明は、患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法をモニターし、改変し、または適合させるためのバイオマーカーとしてのインターフェロンγの濃度の使用に関し、ここで、前記投与後に測定された、約4pg/ml(例えば4.6pg/ml)を超えるインターフェロンγの濃度は、治療法に対する被験体の臨床転帰の成功、すなわち生存率の増加を示す。
【0090】
本発明はまた、本明細書に記載される方法を実施するためのパーツを含んでなるキットも提供し、これは本明細書に示される実施例から明らかになるであろう。パーツのキット(1または複数)は、インターフェロンガンマの回収、および/またはインターフェロンガンマの血清濃度を測定するための試薬を含んでよい。このような試薬は抗体を含んでよい。キットは、生体サンプルの回収および/またはプロセシングのための機器をさらに含んでよい。キットはまた、使用のための説明書、カットオフ値および/またはそれらの判定のための説明書、ならびにキットの使用により得られたデータの解釈のための説明書も含んでなると考えられる。
【0091】
本発明はさらに、治験およびインターフェロンガンマ濃度のモニター、これらの濃度が閾値濃度よりも上であるか下であるかの判定、および/または免疫療法治療法に対する患者の応答を改善するための治療法計画への推奨される改変、のためのコンピュータプログラムおよび/またはアルゴリズムを提供する。コンピュータプログラムおよびアルゴリズムは、必要なハードウェア、例えばキットまたは装置の形と共に提供されてよく、これは生体サンプルもまた受け入れ、かつそれらに存在するインターフェロンガンマの相対濃度を測定し得る。上記のコンピュータプログラムおよび/または装置は、医師または臨床検査室へ、適切な説明書および抗体を含んでなる試薬と共に提供されると考えられる。
【0092】
本発明は例示的な様式にて記載されており、使用されている専門用語は、限定としての性質よりも、記述のための語としての性質を意図していることが理解されなければならない。明らかに、本発明の多くの改変および変動は、上記の教示に鑑みて可能である。従って、添付の請求項の範囲内で、本発明は、本明細書の詳細な記載とは異なる方法において実施されてよいことが理解されなければならない。
【0093】
上に引用された特許、出版物、およびデータベースエントリーの開示の全ては、あたかもこれら個々の特許、出版物、およびデータベースエントリーが、参照により取り込まれることを詳細かつ個別に示していたかのように、それらの全体が同じ範囲で、引用することにより本明細書の一部とされる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】肺癌におけるワクチン免疫療法を表す生存曲線:43日目にインターフェロンγが検出されたかまたはされなかった患者を示した図である。 − 群1:43日目にインターフェロンγが検出された患者における、治療用ワクチン(すなわち免疫原性組成物)+化学療法。検出可能は、検出限界(4.6pg/ml)として定義した。22患者。生存期間中央値は25.4か月。 ---- 群2:インターフェロンγが検出されなかった患者における、治療用ワクチン(すなわち免疫原性組成物)+化学療法。検出不可能は、末梢血中のsCD54が、<4.6pg/mlとして定義した。29患者。生存期間中央値は10.14か月。 ログランクによる有意差:p=0.019○コンプリート(完全) +打ち切り。
【図2】肺癌における化学療法を表す生存曲線:インターフェロンγが検出された(4.6pg/ml)かまたはされなかった患者を示した図である。 − 群1:43日目にインターフェロンγが検出された患者における、化学療法のみ(治療用ワクチンなし)。検出可能は、末梢血中、4.6pg/mlとして定義した。25患者。生存期間中央値は8.5か月。 ---- 群2:43日目にインターフェロンγが検出されなかった患者における、化学療法のみ(治療用ワクチンなし)。検出不可能は、末梢血中のIFNgが、<4.6pg/mlとして定義した。34患者。生存期間中央値は12.8か月。 ログランクによる有意差:p=0.047○コンプリート(完全) +打ち切り。
【図3】肺癌における化学療法を表す生存曲線:4.6pg/mlのインターフェロンγを有する患者を示した図である。 − 群1:検出可能な濃度のインターフェロンγを有した患者における、治療用ワクチン(すなわち免疫原性組成物)+化学療法。検出可能な濃度は、末梢血中、4.6pg/mlとして定義した。22患者。生存期間中央値は25.4か月。 ---- 群2:検出可能な濃度のインターフェロンγを有した患者における、化学療法のみ(TG4010ワクチンなし)。検出可能な濃度は、末梢血中のインターフェロンγが、4.6pg/mlとして定義した。25患者。生存期間中央値は8.5か月。 ログランクによる有意差:p=0.002○コンプリート(完全) +打ち切り。
【実施例】
【0095】
実施例1
免疫原性組成物である、著名なワクチンTG4010を、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)患者の治療のために、標準的な化学療法と組み合わせて用いた。
【0096】
TG4010は、IL2および腫瘍関連抗原MUC1の両方を発現する、組み換え改変ウイルスアンカラ(Modified Virus Ankara:MVA)である。
【0097】
任意抽出された148人の患者が:
−化学療法(シスプラチン75mg/mを1日目、ゲムシタビン1250mg/mを1日目および8日目、3週間おきに6サイクルまで)を単独(研究治療法群2)、または
−TG4010による化学療法との併用(研究治療法群1)
を受けた。
【0098】
腫瘍を6週間おきに評価した(WHO基準)。エンドポイントは、6か月目の無進行生存(progression-free survival:PFS)、およびITT(intent to treat)解析による全生存であった。
【0099】
43日目(毎週の注射の6回目から一週間後)に血液サンプルを採取し、これを直ちに中央免疫検査室へ輸送して、血漿サンプルを分割し、凍結した。凍結された一定分量の血漿のバッチをドライアイス上で、インターフェロンガンマ濃度が評価される第2の中央検査室へ輸送した。
【0100】
血漿サンプルのインターフェロンガンマ(インターフェロンγ)含有量を、Luminex(登録商標)システムを用いるマルチアナライト血漿タンパク質プロファイリングにより評価した。検出限界は4.6pg/mlとして確立された。
【0101】
図1は、TG4010ワクチンおよび化学療法の両方で治療法した場合、43日目にインターフェロンγが検出された患者[治療法群1(TG4010+化学療法](生存期間中央値=25.4か月)は、インターフェロンγが検出されなかった患者(生存期間中央値10.14か月)よりも長く生存することを示す。
【0102】
図2のデータは、血漿インターフェロンγの検出と全生存の間の正の関連が、治療用ワクチンを投与された患者に限定されることを実証する。化学療法のみを受けた治療法群2の患者で、43日目にインターフェロンγが検出された患者の生存(8.5か月)は、43日目にインターフェロンγが検出されなかった患者の生存(12.8か月)よりも短かった。
【0103】
図3のデータは、43日目に血漿インターフェロンγが検出されたことによって選択された患者における効果は、治療用ワクチンを投与された患者に限定されることを実証する。図3は、43日目にインターフェロンγが検出された患者は、治療用ワクチンを投与されている場合においてのみ、長い生存が予測されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法の有効性を評価するための、ex−vivo法であって、
1以上の用量の前記免疫原性組成物を前記被験体へ投与し、
少なくとも1つの前記投与の後、前記被験体の体内のインターフェロンγ濃度を測定すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
患者への免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法の有効性を評価するための、ex−vivo方法であって、
1以上の用量の前記免疫原性組成物を前記被験体へ投与し、
少なくとも1つの前記投与の後、前記被験体の体内のインターフェロンγ濃度を測定すること
を含んでなり、
ここで、約4pg/ml(例えば4.6pg/ml)を超えるインターフェロンγの濃度は、治療法に対する被験体の臨床転帰の成功、すなわち生存率の増加を示す、方法。
【請求項3】
前記患者に投与される免疫原性組成物が、(i)前記抗原の全部もしくは一部および/または(ii)前記抗原をコードする、少なくとも1つの組み換えベクターおよび/または(iii)少なくとも1つの免疫応答修飾因子を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が癌に罹患している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が非小細胞肺癌または腎癌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標的抗原が腫瘍特異性抗原である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍特異性抗原がMUC1である、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−521549(P2012−521549A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501278(P2012−501278)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053755
【国際公開番号】WO2010/108908
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】