説明

患者を選択するためのバイオマーカーおよびそれに関連する方法

本発明は、免疫学の分野に関し、特に、例えば感染または癌により引き起こされる疾患に対して患者を治療するためのワクチン接種法に関する。より具体的には、本発明は、そのようなワクチン接種後の予防的または治療的応答、好ましくは免疫応答の発生に対して、被検体が感受性であるかどうかを予測する方法に関する。本発明は、免疫原性組成物、特にワクチンにより、in vivoで治療的免疫応答を特に良好に誘発することができる患者を選択する方法および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野に関し、特に例えば感染または癌により引き起こされる疾患に対して患者に免疫療法を施すことに関する。より具体的には、本発明は、そのような免疫療法後の予防的または治療的応答、好ましくは免疫応答の発生に対して、被検体が感受性であるかどうかを予測するための方法に関する。本発明は、免疫原性組成物、特にワクチンによりin vivoで誘発される免疫応答を向上させるための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、免疫応答を誘導することができる抗原(例えば、ペプチド、タンパク質)を動物系に導入し、それにより上記動物を感染から防御することに関する従来のワクチン接種技術は、長年知られている。これら技術には、生ワクチンおよび不活化ワクチンの両方を開発することが更に含まれる。生ワクチンは、典型的には、病原性型の感染因子に対する免疫応答を初回刺激することが可能な弱毒化された非病原性型の感染因子である。
【0003】
近年、目的の外来性抗原がベクターにコードされ、ベクターから発現される組換えワクチン、特に組換え生ワクチンの開発が進展している。それらの中で、組換えウイルスに基づくベクターは、大きな有望性を示しており、新ワクチンの開発に重要な役割を果たしている。外来性病原体または腫瘍組織に由来するタンパク質を発現し、これらの抗原に対する特異的な免疫学的応答をin vivoで誘導する能力について、多くのウイルスが調査されている。一般的に、遺伝子に基づくワクチンは、強力な体液性および細胞性免疫応答を刺激することができ、ウイルスベクターは、抗原をコードする遺伝子の送達ならびに抗原提示の促進および増強の両方に有効な戦略であり得る。ワクチン担体として使用するための理想的なウイルスベクターは、安全であり、必要な病原体特異的抗原を、免疫系に対して効率的に提示することを可能にすべきである。更に、ベクター系は、その大規模生産を可能にする基準を満たさなければならない。このように、現在まで幾つかのウイルス性ワクチンベクターが出現しており、それらは全て、提案された応用に応じて相対的な長所および制限を有する(組換えウイルス性ワクチンの総説は、例えば、以下を参照:Harrop and Carroll, 2006, Front Biosci., 11, 804-817;Yokoyama et al., 1997, J Vet Med Sci., 59, 20 311-322)。
【0004】
プラスミドDNAベクターにより、動物細胞をin vivoで直接形質移入することができることが1990年初頭に観察された後、DNAプラスミドを使用して抗原をコードするDNAを動物に直接導入することにより免疫応答を誘導することに基づくワクチン接種技術を開発することにも、多大な研究努力がなされてきた。広くDNAワクチン接種と呼ばれているそのような技術は、今や、多数の疾患モデルにおいて防御免疫応答を誘発するために使用されている。DNAワクチンに関する総説は、Reyes-Sandoval and Ertl, 2001 (Current Molecular Medicine, 1, 217-243)を参照されたい。
【0005】
しかしながら、ワクチン分野における一般的な問題は、ワクチン接種を受けた個体に十分に強力な免疫応答を誘導して感染および疾患から防御するための手段を特定することである。
【0006】
したがって、例えば、近年は、ワクチンにより誘導される免疫応答を増大させる働きをすることになる免疫系の特定の重要局面を刺激することにより作用する新しい薬物化合物を発見するために主な努力がなされている。免疫応答調節剤(IRM)またはアジュバントと呼ばれるこれら化合物のほとんどは、トール様受容体(TLR)を介して基礎的な免疫系機序により作用し、種々の重要なサイトカイン生合成を誘導すると考えられる(例えば、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子等。例えば、Schiller et al., 2006, Exp Dermatol., 15, 331-341を参照)。そのような化合物は、特定の樹状細胞、単球/マクロファージ由来サイトカインの迅速な放出を刺激することが示されており、B細胞を刺激して、IRM化合物の抗ウイルス活性および抗腫瘍活性に重要な役割を果たす抗体を分泌させることも可能である。
【0007】
あるいは、複数のワクチン接種戦略が提案されており、それらのほとんどは、プライム−ブーストワクチン接種法に基づいている。これら「プライム−ブースト」ワクチン接種プロトコールによると、最初に、初回刺激化合物を患者に投与することにより免疫系を誘導し、次に追加免疫用の第2の組成物を投与することにより追加免疫する(例えば、欧州特許第1411974号または米国特許出願第20030191076号を参照)。
【0008】
加えて、集団の全メンバーが、特定の治療に対して同様に応答性ではない場合がある。例えば、新しい化合物は、試験集団での有効性欠如のため、後期臨床試験に失敗することが多い。そのような化合物は、その集団全体には有効ではないかもしれないが、遺伝子発現の遺伝的な差異を含む種々の理由により、これら失敗化合物に感受性である亜集団が存在する可能性がある。したがって、ある化合物に感受性な患者亜集団を識別することにより、失敗化合物を救い出すために使用することができる方法を画定することが可能である。その後、感受性患者亜集団に限定した後続臨床試験を実施することにより、以前に失敗した化合物の有効性を、その特定の患者亜集団内で実証し、その亜集団で使用するための承認を受けるためにその化合物を進展させることができる。したがって、免疫療法の有効性を向上させる別の方法は、上記療法に感受性である患者集団を決定することであり得る。
【0009】
細胞内接着分子1(ICAM−1またはCD54)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着関連分子である。この分子は、内皮細胞の細胞膜に見出される。ICAM−1は、活性化されると、内皮表面に対する白血球の安定的な接着を可能にする。最初に、ICAM−1の一次構造は、典型的な疎水性膜貫通セグメントを有しており、非イオン性界面活性剤中で細胞を溶解することにより細胞膜から可溶化される不溶性分子であることが示されている(欧州特許第0289949号を参照)。その後の研究により、界面活性剤を添加せずに可溶性である、sICAM−1(またはsCD54)と称されるICAM−1の選択的分子種が同定されている(米国特許第5821341号を参照)。可溶性細胞間接着分子−1(sICAM−1)は、様々な細胞系の細胞表面で構成的に発現または誘導可能であるICAM−1の循環性形態である。可溶性ICAM−1は、血清、脳脊髄液、関節液、痰、尿、および気管支肺胞洗浄液等の体液中に見出されている。可溶性ICAM−1の放出は、幾つかのサイトカインおよび種々の因子(TNFアルファ、インターロイキン、インターフェロン等)により調節される。可溶性ICAM−1の役割および機能は、まだ完全には解明されていないが、ある疾患の進行(例えば、アテローム性動脈硬化および炎症、Hulthe et al, 2002, Clin Sci (Lond)., 103, 123-9)に関与していることを示唆する根拠がある。そのレベルが高いことは、少なくとも、病理学的プロセスに関する情報を臨床医に提供することできると提唱されている。
【0010】
例えば、以下を参照されたい:
米国特許出願第20060199239号には、ICAM−1レベル(285.2ng/mlを超えるレベルが、疾患レベルと定義される)を含む炎症リスク因子を測定することにより、患者の心臓の健康を評価する方法が開示されている。
【0011】
Molla et al.(1989, J Biol Chem., 264, 10589-94)には、sICAM−1のレベルが、アテローム性動脈硬化の臨床症状の指標として有用であることが示唆されている。
【0012】
Dong Soon Kim et al.(1999, Chest, 115, 1059-1065)には、サルコイドーシスの活性マーカーとしての可溶性ICAM−1レベルの数値を、活動性疾患を有する患者に使用することが示唆されており、血清中のsICAM−1レベル(575±221ng/mL)は、非活動性疾患を有する患者のレベルよりも高かった。
【0013】
Demerath et al.(2001, Ann Hum Biol., 28, 664-78)には、見かけ上健康な男性および女性において、可溶性sICAM−1およびsESELの濃度が、確立されたCVDリスク因子のレベルを反映することが示されており、これら因子が、血管内皮に対するそれらの炎症性効果によりCVDに寄与するという更なる根拠を与えている。
【0014】
種々の疾患における体液中のsiCAM−1の濃度が提供されているWitkowska et al., 2004, Eur Cytokine Netw., 15, 91-98も参照されたい。
【0015】
高レベルの可溶性ICAMおよびVCAMが、種々の急性および慢性炎症性疾患を有する患者の疾患活性と関連していることを示す研究がある(Ilic et al, 2007, Med Pregl., 60 Suppl 2,128-32)。
【0016】
最近、Dowlati et al., 2008, Clin. Cancer Res., 14, 1407-1412には、ICAMレベルは、生存の予後兆候であり、化学療法(つまり、カルボプラチン+パクリタキセル)に対する応答性の予測因子であることが示されている。
【0017】
本出願人は、今や新しいツールおよびワクチン接種戦略を特定した。第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの抗原を含んでなる免疫原性組成物を投与することによりヒト疾患について患者を治療する方法であって、上記患者が、低レベルのsICAM−1(sCD54または可溶性ICAM−1または可溶性CD54とも呼ばれる)を有する患者で構成される患者集団から選択される方法に関する。
【0018】
したがって、本発明は、少なくとも1つの抗原を含んでなる免疫原性組成物を投与することにより、ヒト疾患について患者を治療する方法であって、
低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から患者を選択し、
上記選択された患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、上記患者が、低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から選択される方法に関する。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、上記患者が、低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から選択される方法に関する。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、上記患者が、低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から選択され、上記免疫応答誘発が先天性免疫応答である方法に関する。先天性免疫応答は、病原体に対する体内の初期免疫防御であり、抗原提示細胞または「APC」を含む様々な細胞により誘発される。これら細胞は、由来が外来性である分子(例えば、細菌性およびウイルス性の核酸、タンパク質、炭水化物)を認識する表面および細胞質受容体を発現する。樹状細胞およびマクロファージは、これらシグナルを検出すると、サイトカイン(インターフェロン、TNF−アルファ、およびIL−12を含む)と、未熟樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、および顆粒球等の細胞を負荷部位に誘引するケモカインとの放出を含む防御反応を誘発する。このように先天性免疫応答は、身体が適応性応答を生成している間に、非特異的防御を付与する。
【0022】
したがって、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、
低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から患者を選択し、
上記選択された患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、
低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から患者を選択し、
上記選択された患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、上記免疫応答誘発が、先天性免疫応答であり、
低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から患者を選択し、
上記選択された患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより免疫応答を患者に誘導(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、
上記患者中でsICAM−1レベルを測定し、
上記患者が低レベルのsICAM−1を有する場合、上記患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を患者に誘導(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、
上記患者中でsICAM−1レベルを測定し、
上記患者が低レベルのsICAM−1を有する場合、上記患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、ヒト疾患を治療するために、免疫原性組成物を投与することにより免疫応答を患者に誘導(つまり、免疫応答誘発)させる方法であって、上記免疫応答誘発が、先天性免疫応答であり、
上記患者中でsICAM−1レベルを測定し、
上記患者が低レベルのsICAM−1を有する場合、上記患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0028】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物を投与することによる予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が感受性であるかどうかを予測する方法であって、
被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1レベルを測定することを含んでなり、低レベルのsICAM−1によって、予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が高い感受性(increased susceptibility)を有することが予測される方法に関する。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物を投与することによる予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して感受性である被検体を選択する方法であって、
被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1レベルを測定することを含んでなり、低レベルのsICAM−1が、予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が高い感受性を有することを示す方法に関する。
【0030】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物の投与を含んでなる治療に対する肯定的応答に、被検体が感受性であるどうかを予測する方法であって、
被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1レベルを測定することを含んでなり、低レベルのsICAM−1によって、予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が高い感受性を有することが予測される方法。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物の投与を含んでなる治療に対する肯定的応答に感受性である被検体を選択する方法であって、
被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1レベルを測定することを含んでなり、低レベルのsICAM−1が、予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が高い感受性を有することを示す方法に関する。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法に、被検体が治療的に応答するかどうかを試験するためのex vivo法であって、
被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1レベルを測定することを含んでなり、低レベルのsICAM−1が、疫原性組成物に対する予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答を、被検体が発生させることを示す方法に関する。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物を投与することによる癌の治療法に、被検体が治療的に応答するかどうかを試験するためのex vivo法であって、
被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1のレベルを測定することを含んでなり、低レベルのsICAM−1が、癌の治療法に被検体が治療的に応答することを示す方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で使用される場合、本出願の全体にわたって、用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、状況がそうではないと指示しない限り、「少なくとも1つの」、「少なくとも第1の」、「1つまたは複数の」、または「複数の」参照化合物または工程を意味するという意味で使用される。例えば、用語「1つの細胞(a cell)」は、その混合物を含む複数の細胞を含む。より具体的には、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数の」は、1または1以上である数を意味し、1、2、または3が特に好ましい。
【0035】
用語「および/または」は、本明細書のどこで使用されようとも、「および」、「または」、および上記用語で接続されている要素の全ておよび任意の他の組合せ」を含む。
【0036】
用語「約」または「およそ」は、本明細書で使用される場合、20%以内、好ましくは10%以内、およびより好ましくは5%以内を意味する。
【0037】
用語「患者」、「被検体」は、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを指し、これらに限定されないが、家畜、狩猟動物(sport animal)、ヒトを含む霊長類が含まれる。
【0038】
用語「低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から選択される患者」は、そのsICAM−1レベルが本明細書で開示されているように測定され、本発明による低レベルのsICAM−1を有する患者を意味すると理解されるべきである。試験された患者の数が1を超える場合、上記患者は患者集団を形成する。
【0039】
具体的な態様によれば、用語「患者は、治療的に応答することになる、または治療的応答に感受性である」は、本発明による免疫原性組成物を投与した後で、上記患者に免疫応答が誘発されること(つまり、免疫応答誘発)を意味する。好ましい態様によれば、用語「患者は、治療的に応答することになる、または治療的応答に感受性である」は、上記患者が生存率の増加を示すことを意味する(実施例セクションを参照)。
【0040】
本発明によると、生存率の増加は、本発明の治療を基準治療、つまりsICAM−1レベルに基づく患者選択をしない治療と比較することにより観察される。好ましい態様によれば、治療された患者が、本発明による治療を施した5年、2年、12か月、8か月、6か月、1か月後に依然として生存している場合、生存率の増加が観察される。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「治療」または「治療する」は、予防および/または療法を包含する。したがって、本発明の免疫原の組合せまたは方法は、治療用途に限定されるものではなく、予防用途に使用することができる。これは、本明細書では、用語「予防的または治療的応答、好ましくは免疫応答を発生させること」により包含される。「予防」は、急性疾患(例えば、感染症)の予防に限定されず、肝硬変または癌等の感染症の長期的結果を予防することを更に包含する。
【0042】
「有効量の」または「十分な量の」活性化合物は、臨床結果を含む有益な結果または所望の結果を達成するのに十分な量である。有効量は、単回または複数回投与で投与することができる。「治療上有効量」は、これらに限定されないが、腫瘍進行、ウイルス感染に関連する1つまたは複数の症状の緩和、ならびに疾患の予防(例えば、癌または感染症の1つまたは複数の症状の予防)、被検体の免疫系を刺激/誘導/増加させて現在の状態を寛解すること、または現在もしくは将来の有害性もしくは感染(ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染)を防御もしくは低減すること、例えば、腫瘍細胞増殖または生存の低減、病原体複製もしくは被検体内蔓延の低減、またはある状態に関連する望ましくない症状(複数可)の検出可能な低減、患者生存の延長を含む有益な臨床結果を達成する量である。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「sICAM−1」またはsCD54は、可溶性細胞間接着分子−1を意味し、ICAM−1の循環性形態である。sICAM−1またはsCD54は、同義的に使用することができる。
【0044】
本発明によれば、sICAM−1のレベルは、当技術分野で公知である任意の方法により決定することができ、例えば、本発明の物質および方法は、Luminex技術(Luminex technology; Luminex Corporation社製、オースティン、テキサス州)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA、多数のELISAキットが、例えばCliniScience社、Diaclone社、Biosource社により市販されている)を用いて使用することができる。
【0045】
本発明によれば、sICAM−1のレベルは、全血試料または血漿または血清で決定することができる。したがって、「被検体から血液試料を取得する」は、sICAM−1レベルを血漿または血清中で測定しなければならない場合、上記血液試料を更に処理することを含むと理解されるべきである。
【0046】
本発明の1つの態様によれば、sICAM−1のレベルは、抗体を使用することにより決定される。
本発明の1つの特定の態様によれば、上記抗体は、モノクローナル抗体である。
【0047】
本発明の1つの特定の態様によれば、上記抗体は、蛍光、放射性標識、酵素、ビオチンにより、または上記抗体で標識されたsICAM−1を検出可能にすることを目的とした任意の他の方法によりタグ化される。これらの技術は、広く使用されており、当技術分野で公知である。
【0048】
抗CD54抗体、特にモノクローナル抗体は、商業的に広く入手可能である。例えば、Anticorps−enligne.fr社製の抗体3H1547、抗体5540−P(Biocytex社製)を参照されたい。
【0049】
具体的な態様によれば、用語「低レベルのsICAM−1」は、約300ng/ml未満、好ましくは約250ng/ml未満、より好ましくは約224ng/ml未満、および更に好ましくは約200ng/ml未満のレベルを意味する。上記レベルは、Luminex(登録商標)システム(例えば、Luminex(登録商標)xMAP(商標)技術、R&D Systems社製)を使用して、多被検体血漿タンパク質プロファイリング法により測定することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」、「ワクチン」、または類似の用語は、同義的に使用されており、被検体の免疫系を刺激/誘導/増加させて現在の状態を寛解すること、または現在もしくは将来の有害性もしくは感染(ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染)を防御もしくは低減すること、例えば、腫瘍細胞増殖または生存の低減、病原体複製または被検体内蔓延の低減、またはある状態に関連する望ましくない症状(複数可)の検出可能な低減、患者生存の延長のために好適な作用剤を意味することができる。上記免疫原性組成物は、(i)少なくとも1つの標的抗原の全体もしくは部分、および/または(ii)少なくとも1つの異種性ヌクレオチド配列、特に少なくとも1つの標的抗原の全体もしくは部分をコードする異種性ヌクレオチド配列の全体もしくは部分をin vivoで発現する少なくとも1つの組換えベクターを含有することができる。代替的な態様によれば、本発明の免疫原性組成物は、(iii)少なくとも1つの免疫応答調節剤を、単独でまたは(i)および/もしくは(ii)と組合せて含んでなる。そのような免疫応答調節剤(IRM)の例には、CpGオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,194,388号;米国特許出願公開第2006094683号;国際公開第2004039829号を参照)、リポポリサッカリド、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸錯体(Kadowaki, et al., 2001, J. Immunol. 166, 2291-2295)、ならびに樹状細胞および/または単球/マクロファージからのサイトカイン産生を誘導することが知られているポリペプチドおよびタンパク質が含まれる。そのような免疫応答調節剤(IRM)の他の例は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン等の低有機分子である(例えば、米国特許第4,689,338号;米国特許第5,389,640号;米国特許第6,110,929号;および米国特許第6,331,539号を参照)。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、複雑な抗原(例えば、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等)を含む、免疫応答の標的となり得る任意の物質を指す。抗原は、例えば、患者により誘発される細胞媒介性および/または体液性免疫応答の標的であってもよい。用語「抗原」は、例えば、ウイルス抗原、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、およびアレルゲン等の全部または一部を包含する:
− ウイルス性抗原には、例えばA型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、パピローマウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルスからの抗原が挙げられ、公知のウイルス性抗原のいくつかの限定されない例として、次の、tat、nef、gpl20もしくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revのようなHIV−1由来の抗原またはその一部および/もしくはそれらの組み合わせ;gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDもしくはその一部および/もしくはそれらの組み合わせ、またはHSV1もしくはHSV2からのICP27、ICP47、ICP4、ICP36のような最初期のタンパク質のようなヒトヘルペスウイルス由来の抗原;サイトメガロウイルス、特にgBのようなヒトサイトメガロウイルス由来の抗原、またはその誘導体;gp350のようなエプスタイン・バール・ウイルス由来の抗原またはその誘導体;gp1、11、111およびIE63のような水痘帯状疱疹ウイルス由来の抗原;B型肝炎、C型肝炎またはE型肝炎ウイルス抗原(例えばHCVのenvタンパクE1もしくはE2、コアタンパク、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、もしくはその一部および/またはその組み合わせ)のような肝炎ウイルス由来の抗原;ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7もしくはその一部および/またはその組み合わせ)由来の抗原;他のウイルス性病原体由来の抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパクまたはその誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、またはインフルエンザ細胞(例えば、HA、NP、NA、もしくはMタンパク、もしくはその一部および/またはその組み合わせ)、が挙げられ、
− 腫瘍特異性抗原または腫瘍関連抗原には、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が含まれるが、限定されるものではない。そのようながんのより具体的な例には、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞性肺がん、消化器がん、膵がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、直腸結腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓がん、ならびに様々な型の頭部および頸部癌、腎がん、悪性黒色腫、喉頭がん、前立腺がんが挙げられる。がん抗原とは、明らかに潜在的に腫瘍特異的免疫反応を刺激できる抗原である。これらの抗原のうちいくつかは正常細胞によりコードされているが、必ずしも発現はしない。これらの抗原は、ふつう無症状(すなわち、発現していない)もの、ほんの低レベルで、または分化のある段階でのみ発現するもの、そして例えば、初期抗原(embryonic)および胎児性抗原(fetal antigens)のような一時的に発現するものであるとして特徴付けられる。他の癌抗原は、がん遺伝子(例えば、活性化ras遺伝子)、抑制遺伝子(例えば、p53変異株)、内部欠失または染色体転座による融合タンパク質のような変異細胞遺伝子によりコードされている。さらに他のがん抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスで運ばれるようなウイルス遺伝子によりコードされ得る。腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原のいくつかの限定されない例としては、MART−1/Melan−A、gplOO、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク(ADAbp)、シクロフィリンb、直腸結腸関連項抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP−IおよびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異抗原(PSA)ならびにその免疫原生エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T−細胞受容体/CD3−ζ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー(例えば、MUC−1)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−胎児性タンパク、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテインおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100.sup.Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫性ポリポーシスタンパク(APC)、ホドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピロマウイルスタンパクのようなウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBVコード化核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7ならびにc−erbB−2が挙げられ、
− 細菌性抗原として、例えば、TBおよびハンセン病の原因となるマイコバクテリア、肺炎双球菌、好気性グラム陰性桿菌、マイコプラズマ、ブドウ球菌感染症、連鎖球菌感染症、サルモネラ、クラミジア、ナイセリアからの抗原が挙げられ、
− 他の抗原として、例えば、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、住血吸虫症、フィラリア症からの抗原が挙げられ、
− アレルゲンは、感受性のある被験者のアレルギー反応または喘息反応を引き起こし得る物質を言う。アレルゲンの一覧は非常に大きく、花粉、虫毒、動物のフケのほこり、かびの胞子および薬(例えば、ペニシリン)を挙げることができる。天然の動物および植物アレルゲンの例として、次の属に特異的なタンパク質が挙げられるが、限定されるものではない、
イヌ属(カニスファミリアリス(Canis familiaris));ヒョウヒダニ属(例えば、コナヒョウヒダニ);ネコ属(イエネコ);ブタクサ属(ブタクサ);ドクムギ族(例えば、ホソムギまたはネズミムギ);スギ属(スギ);アルテルナリア属(葉上生息菌);ハンノキ;ハンノキ属(ハンノキ);カバノキ属(カバノキ);カシ属(ホワイトオーク);オリーブ属(オリーブ);ヨモギ属(ヨモギ);オオバコ属(例えば、ヘラオオバコ);ヒカゲミズ属(例えば、パリエタリア・オフィチナリス(Parietaria officinalis)またはカベイラクサ);チャバネゴキブリ属(例えば、チャバネゴキブリ);ミツバチ属(例えば、アピス・ムルチフロルム(Apis multiflorum));イトスギ属(例えば、イトスギ、アリゾナイトスギおよびゴールドクレスト);ビャクシン属(例えば、ユニペルス・サビオノイデス(Juniperus sabinoides);ユニペルス・ビルギニアナ(Juniperus virginiana)、ユニペルス・コムニス(Juniperus communis)およびユニペルス・アシェイ(Juniperus ashei));クロベ属(例えば、コノテガシワ);ヒノキ属(例えば、ヒノキ);ゴキブリ属(例えば、ワモンゴキブリ);カモジグサ属(例えば、シバムギ);ライムギ属(例えば、ライムギ);コムギ属(例えば、コムギ);カモガヤ属(例えば、オーチャードグラス);ウシノケグサ属(例えば、トールフェスク);イチゴツナギ属(例えば、ナガハグサまたはポア・コンプレサ(Poa compressa));カラスムギ属(例えば、マカラスムギ);シラゲガヤ属(例えば、シラゲガヤ);ハルガヤ族(例えば、ハルガヤ);オオカニツリ属(例えば、オオカニツリ);ヌカボ属(例えば、コヌカグサ);アワガエリ属(例えば、オオアワガエリ);クサヨシ属(例えば、リードカナリーグラス);スズメノヒエ属(例えば、バヒアグラス);モロコシ属(例えば、ソルグム・ハレペンシス(Sorghum halepensis))およびスズメノチャヒキ属(例えば、コスズメノチャヒノキ)。
【0052】
一つの特定の態様によれば、上記抗原は異種ヌクレオチド配列によりコードされ、そして組換えベクターによりインビボで発現される。
【0053】
特に好ましい態様によれば、本願発明の異種ヌクレオチド配列は、次の抗原、HBV−PreS1PreS2および表面envタンパク質、コアおよびpolHIV−gp120、gp40、gp160、p24、gag、pol、env、vif、vpr、vpu、tat、rev、nef;HPV−E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、L1、L2(例えば、WO 90/10459、WO 98/04705、WO 99/03885参照);HCVenvタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7(例えば、WO2004111082、WO2005051420参照);Muc−1(例えば、US 5,861,381、US6,054,438、WO98/04727、WO98/37095参照)のうち全部または一部の1つ以上をコードする。
【0054】
本発明の変異体によれば、免疫原性組成物は、少なくとも2つの抗原、または少なくとも2つの抗原をコードする異種性ヌクレオチド配列、または少なくとも2つの抗原をコードする少なくとも2つの異種性ヌクレオチド配列、またはそれらの任意の組合せを含有する。
【0055】
別の具体的な態様によれば、本発明の上記異種性ヌクレオチド配列は、HPVのE6初期コード領域、HPVのE7初期コード領域、およびそれらの誘導体または組合せからなる群から選択されるHPV抗原(複数可)の全部または一部をコードする。
【0056】
本発明による組換えベクターによりコードされるHPV抗原は、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチド、またはHPV E6ポリペプチドおよびHPV E7ポリペプチドの両方からなる群から選択される。本発明は、p53への結合が変更されているかもしくは少なくとも著しく低減されているあらゆるHPV E6ポリペプチドの使用、および/またはRbへの結合が変更されているかもしくは少なくとも著しく低減されているあらゆるHPV E7ポリペプチドの使用を包含する(Munger et al., 1989, EMBO J. 8, 4099-4105;Crook et al., 1991, Cell 67, 547-556;Heck et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446;Phelps et al., 1992, J. Virol. 66, 2148-2427)。本発明の目的に好適な非腫瘍形成性HPV−16 E6変異体は、およそ118位〜およそ122位(+1は、天然HPV−16 E6ポリペプチドの最初のメチオニン残基を表す)に位置する1つまたは複数のアミノ酸残基が欠失しており、残基118〜122(CPEEK)の完全な欠失が特に好ましい。本発明の目的に好適な非腫瘍形成性HPV−16 E7変異体は、およそ21位〜およそ26位(+1は、天然HPV−16 E7ポリペプチドの最初の残基を表す)に位置する1つまたは複数のアミノ酸残基が欠失しており、残基21〜26(DLYCYE)の完全な欠失が特に好ましい。好ましい態様によれば、本発明で使用される1つまたは複数のHPV−16初期ポリペプチド(複数可)は、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII提示を向上させ、および/または抗HPV免疫を刺激するように、更に修飾されている。HPV E6およびE7ポリペプチドは核タンパク質であり、膜提示により、それらの治療有効性を向上させることが可能であることが以前に示されている(例えば、国際公開第99/03885号を参照)。したがって、細胞膜に係留されるようにHPV初期ポリペプチド(複数可)の少なくとも1つを修飾することが望ましい場合がある。膜係留化は、HPV初期ポリペプチドに、膜係留配列、および天然ポリペプチドが分泌配列を欠如している場合は分泌配列(つまり、シグナルペプチド)を組み込むことにより容易に達成することができる。膜係留および分泌配列は、当技術分野で公知である。手短に言えば、分泌配列は、膜に提示されるかまたは分泌されるポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)への通過を開始させる。分泌配列は、通常、15〜35個の本質的に疎水性のアミノ酸を含んでなり、それらアミノ酸は、その後ERに存在する特異的エンドペプチダーゼにより取り除かれて、成熟ポリペプチドがもたらされる。膜係留配列は、通常、自然界では高度に疎水性であり、ポリペプチドを細胞膜に係留する働きをする(例えば、Branden and Tooze, 1991, in Introduction to Protein Structure p. 202-214, NY Garlandを参照)。
【0057】
本発明の状況で使用することができる膜係留および分泌配列の選択は、非常に幅が広い。それらは、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質、または麻疹ウイルスFタンパク質等の膜係留および/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞性またはウイルス性ポリペプチド)を含む任意の膜係留および/または分泌ポリペプチドから取得してもよく、または合成品であってもよい。本発明により使用される初期HPV−16ポリペプチドの各々に挿入される膜係留および/または分泌配列は、由来が共通であってもよく、または異なっていてもよい。分泌配列の好ましい挿入部位は、翻訳の開始コドンの下流にあるN末端であり、膜係留配列の好ましい挿入部位は、C末端、例えば終止コドンの直ぐ上流である。
【0058】
本発明で使用されるHPV E6ポリペプチドは、好ましくは、麻疹Fタンパク質の分泌および膜係留シグナルを挿入することにより修飾される。随意にまたは組合せて、本発明で使用されるHPV E7ポリペプチドは、好ましくは、狂犬病糖タンパク質の分泌および膜係留シグナルを挿入することにより修飾される。
【0059】
組換えベクターの治療有効性は、免疫強化ポリペプチド(複数可)をコードする1つまたは複数の核酸を使用することにより向上させることもできる。例えば、HPV初期ポリペプチド(複数可)を、カルレチキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108, 669-678)、結核菌ヒートショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60, 1035- 1042)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71, 8497-8503)、または緑膿菌菌体外毒素A等の細菌毒素の転位ドメイン(ETA(dIII))(Hung et al., 2001 Cancer Res. 61, 3698-3703)等のポリペプチドに結合させることが有利である場合がある。
【0060】
別の態様によれば、本発明による組換えベクターは、上記で明確にされている1つまたは複数の初期ポリペプチド(複数可)、より具体的にはHPV−16および/またはHPV−18の初期E6および/またはE7ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる。
【0061】
別の特定の好ましい態様によれば、本発明の上記異種性ヌクレオチド配列は、MUC1抗原またはその誘導体の全部または一部をコードする。
【0062】
別の具体的な態様によれば、本発明の上記異種性ヌクレオチド配列は、以下のもの:HCV envタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはそれらの誘導体の全部または一部の1つまたは複数をコードする。
別の具体的な態様によれば、本発明の上記異種性ヌクレオチド配列は、NSポリペプチドの少なくとも1つが、天然配置の順序とは異なる順序で出現するという意味で配置が天然ではない1つまたは複数の融合タンパク質をコードする。したがって、融合タンパク質が、NS3ポリペプチド、NS4Aポリペプチド、およびNS5Bポリペプチドを含んでなる場合、天然配置は、N末端がNS3でありC末端がNS5BであるNS3−NS4A−NS5Bであろう。対照的に、非天然配置は、NS5B−NS3−NS4A、NS5B−NS4A−NS3、NS4A−NS3−NS5B、NS4A−NS5B−NS3、またはNS3−NS5B−NS4Aであり得る。特に、本発明による融合タンパク質は、以下の少なくとも1つを含んでなる:
・ NS3ポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して融合されたNS4Aポリペプチド、
・ NS5BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して融合されたNS3ポリペプチド、
・ NS5BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して融合されたNS4Bポリペプチド、
・ NS4BポリペプチドのN−末端に直接またはリンカーを介して融合されているNS3ポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して融合されたNS4Aポリペプチド、および/または、
・ NS5BポリペプチドのN−末端に直接またはリンカーを介して融合されているNS4BポリペプチドのN末端に直接またはリンカーを介して融合されたNS3ポリペプチド。
【0063】
本発明の融合タンパク質のそのような特定の部分では、NSポリペプチドの各々は、独立して天然であってもよくまたは修飾されていてもよい。例えば、NS4A−NS3部分に含まれているNS4Aポリペプチドは、天然であってもよく、その一方でNS3ポリペプチドは、下述されている修飾の少なくとも1つを含んでなる。
【0064】
必要に応じて、本発明で使用される核酸分子は、特定の宿主細胞または生物、例えばヒト宿主細胞または生物中で標的抗原(例えば、HPV初期ポリペプチド(複数可))の高レベル発現をもたらすように最適化されていてもよい。典型的には、コドン最適化は、哺乳類宿主細胞で希にしか使用されないコドンに対応する1つまたは複数の「天然」(例えば、HPV)コドンを、より頻繁に使用される、同じアミノ酸をコードする1つまたは複数のコドンと置換することにより実施される。これは、従来の突然変異誘発により、または化学合成技術(例えば、その結果合成核酸が生じる)により達成することができる。部分的な置換でさえ発現の増加を達成することができるため、希少使用コドンに対応する天然コドンを全て置換する必要はない。更に、最適化コドン使用頻度の厳守からある程度逸脱させて、制限部位(複数可)の導入に対応することもできる。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「組換えベクター」は、染色体外ベクター(例えば、エピソーム)、多コピーベクター、および組込みベクター(つまり、宿主染色体への組込み用)を含む、ウイルスベクターならびに非ウイルスベクターを指す。本発明の状況においては、遺伝子治療で使用される(つまり、宿主生物に核酸を送達することが可能である)ベクター、ならびに種々の発現系で使用される発現ベクターが、特に重要である。好適な非ウイルスベクターには、pREP4、pCEP4(Invitrogene社製)、pCI(Promega社製)、pCDM8(Seed, 1987, Nature 329, 840)、pVAX、およびpgWiz(Gene Therapy System Inc社;Himoudi et al., 2002, J. Virol. 76, 12735-12746)等のプラスミドが含まれる。好適なウイルスベクターは、様々な異なるウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、および泡沫状ウイルス等)に由来してもよい。本明細書で使用される場合、用語「ウイルスベクター」は、ベクターDNA/RNAならびにその生成されたウイルス粒子を包含する。ウイルスベクターは、複製可能であってもよく、または複製欠損もしくは複製障害になるように遺伝子的に損傷されていてもよい。用語「複製可能な」は、本明細書で使用される場合、特定の宿主細胞でより良好にまたは選択的に複製するように操作されている選択的複製および条件的複製ウイルスベクターを包含する。
【0066】
1つの態様によれば、本発明での使用される組換えベクターは、組換えアデノウイルスベクターである(総説は、"Adenoviral vectors for gene therapy", 2002, Ed D. Curiel and J. Douglas, Academic Pressを参照)。それは、様々なヒトまたは動物供給源に由来していてもよく、アデノウイルス血清型1〜51の任意の血清型を使用することができる。特に、ヒトアデノウイルス2(Ad2)、5(Ad5)、6(Ad6)、11(Ad11)、24(Ad24)、および35(Ad35)が好ましい。そのようなアデノウイルスは、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、ロックビル、メリーランド州)から入手可能であり、それらの配列、構成、産生方法が記述されている多数の刊行物の主題となっており、当業者であればそれらを応用することが可能である(例えば、米国特許第6,133,028号;米国特許第6,110,735号;国際公開第02/40665号;国際公開第00/50573号;欧州特許第1016711号;Vogels et al., 2003, J. Virol. 77, 8263-8271)。
【0067】
本発明で使用されるアデノウイルスベクターは、複製可能であってもよい。当業者であれば、複製可能なアデノウイルスベクターの多数の例を、容易に入手可能である(例えば、Hernandez-Alcoceba et al., 2000, Human Gene Ther. 11, 2009-2024;Nemunaitis et al., 2001, Gene Ther. 8, 746-759;Alemany et al., 2000, Nature Biotechnology 18, 723-727を参照)。例えば、それらは、ElA CR2ドメインの欠失により(例えば、国際公開第00/24408号を参照)、ならびに/または天然Elおよび/もしくはE4プロモーターを、組織、腫瘍、もしくは細胞状態に特異的なプロモーターと置換することにより、野生型アデノウイルスゲノムから操作することができる(例えば、米国特許第5,998,205号、国際公開第99/25860号、米国特許第5,698,443号、国際公開第00/46355号、国際公開第00/15820号、および国際公開第01/36650号を参照)。
あるいは、本発明での使用されるアデノウイルスベクターは、複製欠損である(例えば、国際公開第94/28152号;Lusky et al., 1998, J. Virol 72, 2022-2032を参照)。好ましい複製欠損アデノウイルスベクターは、El欠損であり(例えば、米国特許第6,136,594号および米国特許第6,013,638号を参照)、El欠失は、およそ459位から3328位まで、またはおよそ459位から3510位まで伸長している(受入番号M73260でGeneBankに、およびChroboczek et al., 1992, Virol. 186, 280-285に開示されているヒトアデノウイルス5型の配列を参照することによる)。クローニング能力は、アデノウイルスゲノムの更なる部分(複数可)(非必須E3領域または他の必須E2、E4領域の全部または一部)を欠失することにより更に向上させることができる。アデノウイルスベクターの任意の位置への核酸挿入は、Chartier et al.(1996, J. Virol. 70, 4805-4810)に記述されているような相同組換えにより実施することができる。例えば、HPV−16 E6ポリペプチドをコードする核酸を、El領域の代わりに、HPV−16 E7ポリペプチドをコードする核酸を、E3領域の代わりに、またはその逆に挿入することができる。
【0068】
別の好ましい態様によれば、本発明で使用されるベクターは、ポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al. in "Viruses in Human Gene Therapy" Ed J. M. Hos, Carolina Academic Pressを参照)。別の好ましい態様によれば、本発明で使用されるベクターは、ワクシニアウイルスからなる群から選択され、好適なワクシニアウイルスには、限定ではないが、Copenhagen株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266 and 517-563;Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、Wyeth株、およびMVA(総説は、Mayr, A., et al., 1975, Infection 3, 6-14を参照)およびその誘導体(MVAワクシニア株575等(ECACC V00120707−米国特許第6,913,752号)、NYVAC(国際公開第92/15672号−Tartaglia et al., 1992, Virology, 188, 217-232を参照)を含む、それに由来する高度に弱毒化されたウイルスが含まれる。MVAゲノム全配列の決定およびCopenhagenVVゲノムとの比較により、MVAゲノムに生じた7つの欠失(I〜VII)の正確な特定が可能になっており(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)、抗原をコードする核酸を挿入するためには、それらのいずれを使用してもよい。ベクターは、ポックスウイルス科の任意の他のメンバー、特に鶏痘(例えば、TROVAC、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163を参照);カナリア痘;(例えば、ALVAC、国際公開第95/27780号、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163);鳩痘;および豚痘等から取得することもできる。例としては、当業者であれば、そのような異種性ヌクレオチド配列、特に抗原をコードするヌクレオチド配列を発現可能なポックスウイルスに基づく発現ベクターの産生が記述されている国際公開第92 15672号(参照によ
り組込まれる)を参照することができる。
【0069】
ポックスウイルスゲノムの発現に必要な核酸および関連調節エレメントを挿入するための基本技術は、当業者が参照可能な多数の文書に記述されている(Paul et al., 2002, Cancer gene Ther. 9, 470-477;Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563;米国特許第4,769,330号;米国特許第4,772,848号;米国特許第4,603,112号;米国特許第5,100,587号、および米国特許第5,179,993号)。通常は、ウイルスゲノムおよび挿入しようとする核酸を担持するプラスミドの両方に存在する重複配列(つまり、所望の挿入部位)間の相同組換えにより行う。
【0070】
本発明の抗原をコードする核酸は、好ましくは、組換えポックスウイルスが依然として成育可能および感染性のままであるように、ポックスウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入される。非必須領域は、非コード遺伝子間領域、またはその不活性化または欠失がウイルスの増殖、複製、または感染を著しく損なわない任意の遺伝子である。例えば、ポックスウイルスゲノムで欠失された配列に対応する補完的配列を担持するヘルパー細胞系を使用することにより、欠損機能がウイルス粒子の産生中にtransで供給される場合、必須ウイルス遺伝子座における挿入も起想することができる。
【0071】
Copenhagenワクシニアウイルスを使用する場合、抗原をコードする核酸は、好ましくはチミジンキナーゼ遺伝子(tk)に挿入される(Hruby et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415;Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530-537)。しかしながら、他の挿入部位、例えば、赤血球凝集素遺伝子(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、KlL遺伝子座、u遺伝子(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)、または様々な自然発生的なまたは操作された欠失が文献報告されているワクシニアウイルスゲノムの左端(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27;Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395;Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010;Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836;Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286;Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)も適切である。
【0072】
MVAを使用する場合、抗原をコードする核酸は、識別されている欠失I〜VIIのいずれか1つ、ならびにD4R遺伝子座に挿入することができるが、欠失IIまたはIIIでの挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038;Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 1032-1040)。
【0073】
鶏痘ウイルスを使用する場合、チミジンキナーゼ遺伝子内の挿入を考慮してもよいが、抗原をコードする核酸は、好ましくはORF7と9との間に位置する遺伝子間領域に導入される(例えば、欧州特許第314 569号および米国特許第5,180,675号を参照)。
【0074】
1つの具体的な態様によれば、上記組換えベクターは、組換えプラスミドDNAまたは組換えウイルスベクターである。
別の具体的な態様によれば、上記組換えウイルスベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。
別の具体的な態様によれば、上記組換えウイルスベクターは、組換えワクシニアベクターである。
1つの好ましい態様によれば、上記組換えワクシニアベクターは、組換えMVAベクターである。
【0075】
好ましくは、本発明で使用される抗原をコードする核酸は、宿主細胞または生物中での発現に好適な形態であり、それは、抗原をコードする核酸配列が、宿主細胞または生物中での発現に必要な1つまたは複数の調節配列の支配下に置かれていることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「調節配列」は、複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、安定性、および/または核酸またはその誘導体の1つ(つまり、mRNA)の宿主細胞への輸送を含む、所与の宿主細胞での核酸発現を可能にするか、寄与するか、または調節するあらゆる配列を指す。当業者であれば、調節配列の選択は、宿主細胞、ベクター、および所望の発現レベル等の要因に依存する場合があることが理解するだろう。抗原をコードする核酸は、真核細胞内で抗原核酸の発現を指図する遺伝子発現配列に作用可能に結合されている。遺伝子発現配列は、それが作用可能に結合されている抗原核酸の効率的な転写および翻訳を促進する、プロモーター配列またはプロモーター−エンハンサーの組合せ等の任意の調節ヌクレオチド配列である。遺伝子発現配列は、例えば、構成的または誘導可能なプロモーター等の、哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーターであってもよい。構成的哺乳動物プロモーターには、これらに限定されないが、以下の遺伝子のプロモーターが含まれる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、b−アクチンプロモーターおよび他の構成的プロモーター。真核細胞で構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターには、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルスに由来するプロモーター、モロニー白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長末端反復配列(LTR)、および単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。他の構成的プロモーターは、当業者に公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターには、誘導可能なプロモーターも含まれる。誘導可能なプロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある金属イオンの存在下で誘導され、転写および翻訳を促進する。他の誘導可能なプロモーターは、当業者に公知である。一般的に、遺伝子発現配列は、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、およびCAAT配列等の、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列を含むべきである。特に、そのような5’非転写配列は、作用可能に結合されている抗原核酸の転写を制御するためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含むだろう。遺伝子発現配列は、所望によりエンハンサー配列または上流活性化因子配列を随意に含む。ポックスウイルスベクター(以下を参照)で使用される好ましいプロモーターには、限定ではないが、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、pll、およびKlL、初期および後期ポックスウイルスプロモーター間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)、およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記述されているもの等の合成プロモーターが含まれる。
【0076】
プロモーターは非常に重要であり、本発明は、多くのタイプの宿主細胞で核酸発現を指図する構成的プロモーターの使用、および特定の宿主細胞でのみ、または特定の事象または外来性因子(例えば、温度、栄養添加物、ホルモン、または他のリガンドによる)に応答して発現を指図するものを包含する。好適なプロモーターは、文献に広く記述されており、より具体的には、RSV、SV40、CMV、およびMLPプロモーター等のウイルスプロモーターを引用することができる。ポックスウイルスベクターで使用される好ましいプロモーターには、限定ではないが、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、pll、およびKlL、初期および後期ポックスウイルスプロモーター間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)、およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記述されているもの等の合成プロモーターが含まれる。当業者であれば、本発明の核酸分子の発現を制御する調節エレメントは、転写の適切な開始、調節、および/または終結(例えば、polyA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核移行シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)、および安定性(例えば、イントロンならびに非コード5’および3’配列)、翻訳(例えば、ペプチドシグナル、プロペプチド、トリパータイトリーダー(tripartite leader)配列、リボソーム結合部位、Shine−Dalgamo配列等)のための追加的なエレメントを、宿主細胞または生物に更に含んでなることができることを理解するだろう。
【0077】
あるいは、本発明で使用される組換えベクターは、少なくとも1つのサイトカインをコードする少なくとも1つの核酸を更に含んでなる。好適なサイトカインには、限定ではないが、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−7、IL−15、IL−18、IL−21)およびインターフェロン(例えば、IFNγ、INFα)が含まれ、インターロイキンIL−2が特に好ましい。本発明の組換えワクチンが、サイトカインを発現する核酸を含んでなる場合、上記核酸は、1つまたは複数の抗原をコードする組換えベクターにより、または由来が同じであってもよくまたは異なっていてもよい独立した組換えベクターにより担持されていてもよい。
【0078】
1つの好ましい態様によれば、本発明で使用される組換え体は、MUCl抗原、および上記に列挙されている少なくとも1つのサイトカイン、および好ましくはインターロイキン、特にIL2の全部または一部をコードしている。
【0079】
上述の組換えウイルスベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子は、日常的なプロセスにより産生することができる。例示的なプロセスは、以下の工程を含んでなる:
a.ウイルスベクターを好適な細胞系に導入する工程、
b.上記感染性ウイルス粒子の産生を可能にするのに好適条件下で、上記細胞系統を培養する工程、
c.産生された感染性ウイルス粒子を上記細胞系の培養から回収する工程、および
d.所望により、上記回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程。
【0080】
アデノウイルスのベクターを増殖させるのに適切な細胞は、例えば293細胞、PERC6細胞、HER96細胞、または国際公開第94/28152号、国際公開第97/00326号、米国特許第6,127,175号に開示されているような細胞である。
【0081】
ポックスウイルスベクターを増殖させるのに適切な細胞は、トリ細胞、および最も好ましくは受精卵から得られるニワトリ胚から調製される初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)である。
【0082】
感染性ウイルス粒子は、溶解(例えば、化学的手段、凍結/解凍、浸透圧ショック、機械的ショック(mecanic shock)、および超音波処理等による)後に、培養上清または細胞から回収することができる。ウイルス粒子は、プラーク精製を連続して繰り返すことにより単離し、その後当技術分野の技術(クロマトグラフィー法、塩化セシウムまたはスクロース勾配での超遠心分離)を使用して精製することができる。
【0083】
所望の場合、本発明による(つまり、少なくとも1つの抗原を含んでなる免疫原性組成物の投与による)、ヒト疾患について患者を治療するための方法または使用は、1つまたは複数の従来の治療様式(例えば、放射線、化学療法、および/または外科手術)と併用して、選択された患者に実施することができる。複数の治療手法を使用することにより、選択された患者により広範な介入が提供される。1つの態様によれば、本発明によるヒト疾患について患者を治療するための方法または使用は、外科的介入の前であってもよく、または後であってもよい。別の態様によれば、本発明によるヒト疾患について患者を治療するための方法または使用は、放射線療法(例えば、ガンマ線)の前であってもよく、または後であってもよい。当業者であれば、使用することができる適切な放射線療法プロトコールおよびパラメーターを容易に処方することができる(例えば、Perez and Brady, 1992, Principles and Practice of Radiation Oncology, 2nd Ed. JB Lippincott Coを参照;当業者であれば容易に理解するような適切な適応および改変を使用して)。更に別の態様によれば、本発明の方法または使用は、1つまたは複数の薬物(例えば、ウイルス感染、ウイルスに関連する病理学的状態、および癌等を治療または予防するために従来使用されている薬物)を用いた化学療法と併用される。
【0084】
したがって、本発明は、化学療法剤を用いた化学療法治療を受けている癌患者の治療を向上させる方法であって、
低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から患者を選択し、
上記選択された患者に、本発明による免疫原性組成物および化学療法剤を投与することを含んでなる方法に関する。
【0085】
1つの態様によれば、上記化学療法剤の投与は、上記免疫原性組成物の投与前に実施される。
別の態様によれば、上記化学療法剤の投与は、上記免疫原性組成物の投与後に実施される。
別の態様によれば、上記化学療法剤の投与は、上記免疫原性組成物の投与と同時に実施される。
【0086】
本発明は、細胞毒性薬の細胞毒有効性または放射線療法を向上させるための方法であって、低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から選択される患者を、本発明による免疫原性組成物で共治療することを含んでなる方法に更に関する。
【0087】
好ましい化学療法剤または細胞毒性薬として、例えば、ビンクリスチン、シスプラチン、アザグアニン、エトポシド、アドリアマイシン、アクラルビシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、パクリタキセル、ゲムシタビン、タキソテール、デキサメタゾン、Ara−C、メチルプレドニゾロン、メトトレキサート、ブレオマイシン、メチル−GAG、カルボプラチン、5−FU(5−フルオロウラシル)、MABTHERA(商標)(リツキシマブ)、放射線、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤および5−アザ−2’−デオキシシチジン(デシタビン)が挙げられる。
【0088】
典型的な放射性化学療法剤として、アスタチン−211、ビスマス−212、ビスマス−213、鉛−212、ラジウム−223、アクチニウム−225、およびトリウム−227のようなα放射体、トリチウム、ストロンチウム−90、セシウム−137、炭素−11、窒素−13、酸素−15、フッ素−18、鉄−52、コバルト−55、コバルト−60、銅〜61、銅−62、銅−64、亜鉛−62、亜鉛−63、ヒ素−70、ヒ素−71、ヒ素−74、臭素−76、臭素−79、ルビジウム−82、イットリウム−86、ジルコニウム−89、インジウム−110、ヨウ素−120、ヨウ素−124、ヨウ素−129、ヨウ素−131、ヨウ素−125、キセノン−122、テクネチウム−94m、テクネチウム−94、テクネチウム−99m、およびテクネチウム−99のようなβ放射体、またはコバルト−60、セシウム−137、およびテクネチウム(商標)−99mのようなγ放射体を含んだ化合物が挙げられる。典型的な化学療法剤として、また、アレムツズマブ、ダクリズマブ、リツキシマブ(MABTHERA(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、エドレコロマブ、トシツモマブ、CeaVac、エプラツヅマブ、ミツモマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、エドレコロマブ、リンツズマブ、MDX−210、IGN−101、MDX−010、MAb、AME ABX−EGF、EMD72000、アポリズマブ、ラベツズマブ、ior−tl、MDX−220、MRA、H−11scFv、オレゴボマブ、huJ591 MAb、BZL ビシリズマブ、TriGem、TriAb、R3、MT−201、G−250、非抱合型、ACA−125、オニバックス−105、CDP−860、BrevaRex MAb AR54、IMC−ICl1、GlioMAb−H、ING−I、抗LCG MAbs、MT−103、KSB−303、テレックス、KW−2871、抗HMI.24、抗PTHrP、2C4抗体、SGN−30、TRAIL−RI MAb CAT、前立腺がん抗体、H22xKi−4、ABX−MAl、イミュテランおよびモノファーム−Cのような抗体も挙げられる。
【0089】
典型的な化学療法剤としては、また、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アドリアマイシン;アルデスロイキン;アルトレタルニン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カンプトテシン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;コンブレタスタチンA−4;グリスナトールメシラート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;DACA(N−[2−(ジメチル−アミノ)エチル]アクリジン−4−カルボキサミド);ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;ダウノマイシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニンメシラート;ジアジコン;ドセタキセル;ドルサチン;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンシトラート;ドロモスタノロンプロピオナート;ジュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エリプチシン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エチルヨウ化油1131;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロキスリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;5−FdUMP;フルオロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金Au 198;ホモカンプトテシン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;ルモホシン;インターフェロンα−2a;インターフェロンα−2b;インターフェロンα−nl;インターフェロンα−n3;インターフェロンβ−Ia;インターフェロンγ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;ランレオチドアセタート;レトロゾール;ロイプロリドアセタート;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;メゲストロールアセタート;メレンゲストロールアセタート;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトザントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リゾキシン;リゾキシンD;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホス酸ナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウム Sr 89;スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チミタック;チアゾフリン;チラパザミン;トムデックス;TOP53;塩酸トポテカン;トレミフェンシトレート;トレストロンアセタート;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;硫酸ビンブラスチン;ビンクリスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビンピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロウロシン;硫酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン;2−クロロデオキシアデノシン;2’−デオキシホルミシン;9−アミノカンプトテシン;ラルチトレキセド;N−プロパギル酸−5,8−ジデアザ葉酸;2−クロロ−2’−アラビノ−フルオロ−2’−デオキシアデノシン;2−クロロ−2’−デオキシアデノシン;アニソマイシン;トリコスタチンA;hPRL−G129R;CEP−751;リノミド;サルファマスタード;ナイトロジェンマスタード(塩酸メクロレタミン);シクロホスファミド;メルファラン;クロラムブシル;イフォスファミド;ブスルファン;N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU);N,N’−Bis(2−クロロエチル)−N−ニトロソウレア(BCNU);N−(2−クロロエチル)−N’シクロヘキシル−N−ニトロソウレア(CCNU);N−(2−クロロエチル)−N’−(trans−4−メチルシクロヘキシル−N−ニトロソウレア(MeCCNU);N−(2−クロロエチル)−N’−(ジエチル)エチルホスホネート−N−ニトロソウレア(ホテムスチン);ストレプトゾトシン;ジアカルバジン(DTIC);ミトゾロミド;テモゾロマイシン;チオテパ;マイトマイシンC;AZQ;アドゼレシン;シスプラチン;カルボプラチン;オルマプラチン;オキサリプラチン;Cl−973;DWA 2 114R;JM216;JM335;ビス(白金);トムデックス;アザシチジン;シタラビン;ゲムシタビン;6−メルカプトプリン;6−チオグアニン;ヒポキサンチン;テニポシド9−アミノカンプトセシン;トポテカン;CPT−Il;ドキソルビシン;ダウノマイシン;エピルビシン;ダルビシン;ミトキサントロン;ロソキサントロン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD);アムサクリン;ピラゾロアクリジン;オールトランス型レチノール;14−ヒドロキシ−レトロ−レチノール;オールトランス型レチノイン酸;N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド;13−シスレチノイン酸;3−メチルTTNEB;9−シスレチノイン酸;フルダラビン(2−F−ara−AMP);または2−クロロデオキシアデノシン(2−Cda)も挙げられる。
【0090】
他の化学療法剤としては、20−pi−l,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管形成阻害薬;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背方化形態形成タンパク質−1;抗アンドロゲン剤;前立腺癌;抗エストロゲン剤;アンチネオプラストン;アンチセンス_オリゴヌクレオチド;アフィディコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンDI誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータアレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート;ブレオマイシA2;ブレオマイシB2;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトセシン誘導体(例えば、10−ヒドロキシ−カンプトセシン);カナリアポックスHL−2;カペシタビン;カルボキサミドアミノトリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRestM3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;シトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;2’デオキシコホルマイシン(DCF);デスロレリン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムミンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;ジヒドロタキソール,9−;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ジスコデルモリド;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エポチロン(A,R=H;B R=Me);エピチロン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシド;エトポシド4’−リン酸(エトポフォス);エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;ホルフェニメックス;ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ホモハリングトニン(HHT);ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫促進ペプチド;インスリン様成長因子−1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール,4−;イリノテカン;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン−Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲンプロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;脂溶性二糖ペプチド;脂溶性白金化合物;リソクリンアミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶菌性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;IvHF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二重鎖RNA;ミトラシン;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞増殖因子サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体;ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+マイコバクテリウム属細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍サプレッサー1系治療;マスタード抗癌剤;ミカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N−置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;窒素酸化物酸化防止剤;ニトルリン;06−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導体;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニルアセテート;脱リン酸化酵素阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金トリアミン錯体;ポドフィロトキシン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質A系免疫モジュレーター;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤;微細藻類;タンパク質チロシン脱リン酸化酵素阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリキシエチレンコンジュゲート;RAFアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;RASファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤;RAS阻害剤;RAS−GAP阻害剤;脱メチルレテリプチン;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1ミメティック;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプト酸ナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管活性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイシン;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;サリドマイド;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチンミメティック;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トポテカン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系;赤血球遺伝子治療;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブおよびジノスタチンスチマラマーが挙げられるが、限定されるものではない。
【0091】
別の態様によれば、本発明の方法または使用は、1つまたは複数の初回刺激組成物および1つまたは複数の追加免疫組成物の連続投与を含んでなるプライムブースト治療様式により実施される。典型的には、初回刺激および追加免疫組成物には、少なくとも共通の抗原性ドメインを含んでなるかまたはコードする異なる媒体が使用される。初回刺激組成物を最初に宿主生物に投与し、その後追加免疫組成物を、1日〜12か月の範囲の期間後に同じ宿主生物に投与する。本発明の方法は、初回刺激組成物を1〜10回連続投与し、その後追加免疫組成物を1〜10回連続投与することを含んでなる場合がある。望ましくは、注射間隔は、1週間〜6か月程度である。更に、初回刺激および追加免疫組成物は、同じ投与経路または異なる投与経路により、同じ部位または代替部位に投与することができる。
【0092】
1つの具体的な態様によれば、本発明は、上記ヒト疾患が癌である上述の方法に関する。
具体的な態様によれば、上記癌は、例えば、乳癌、結腸癌、腎臓癌、直腸癌、肺癌、頭頚部癌、腎癌、悪性黒色腫、喉頭癌、卵巣癌、子宮頚癌、前立腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、血液学的癌、胃癌、骨髄腫である。
好ましい態様によれば、上記癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0093】
1つの具体的な態様によれば、本発明は、上記ヒト疾患が感染症である上述の方法に関する。
好ましい態様によれば、上記感染症は、ウイルス誘導性疾患、例えばHIV、HCV、HBV、およびHPV等により誘導される疾患である。
【0094】
更なる態様によれば、ヒト疾患について特定の患者集団中の患者を治療するための薬剤を製造するための、標的抗原の全部または一部(all or part)を含んでなる免疫原性組成物の使用が提供され、上記集団中の患者は、低レベルのsICAM−1を有する。
【0095】
更なる態様によれば、特定の患者集団においてヒト疾患を治療するために免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)する薬剤を製造するための免疫原性組成物の使用が提供され、上記集団中の患者は、低レベルのsICAM−1を有する。
【0096】
別の態様によれば、特定の患者集団においてヒト疾患を治療するために少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)するための薬剤を製造するための免疫原性組成物の使用が提供され、上記集団中の患者は、低レベルのsICAM−1を有する。
【0097】
別の態様によれば、特定の患者集団においてヒト疾患を治療するために標的抗原に対する免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)するための薬剤を製造するための免疫原性組成物の使用が提供され、上記集団中の患者は、低レベルのsICAM−1を有する。
【0098】
別の態様によれば、特定の患者集団においてヒト疾患を治療するために免疫応答を患者に誘発(つまり、免疫応答誘発)するための薬剤を製造するための免疫原性組成物の使用が提供され、上記集団中の患者は、低レベルのsICAM−1を有し、上記免疫応答誘発は、先天性免疫応答である。
【0099】
1つの具体的な態様によれば、上記患者集団における上記「免疫応答誘発」は、腫瘍特異的もしくは腫瘍関連抗原および/またはウイルス抗原に対して向けられる。1つの態様によれば、上記患者集団における上記「免疫応答誘発」は、個別の抗原に対して向けられる。1つの具体的な態様によれば、上記患者集団における上記「免疫応答誘発」は、MUC1抗原に対して向けられる。別の具体的な態様によれば、上記患者集団における上記「免疫応答誘発」は、T細胞免疫応答、および好ましくはCD8+(細胞傷害性リンパ球)免疫応答である。別の具体的な態様によれば、上記患者集団における上記「免疫応答誘発」は、非特異的免疫応答である。
別の具体的な態様によれば、上記患者集団における上記「免疫応答誘発」は、先天性免疫応答の刺激である。
【0100】
動物またはヒト生物に投与された際に免疫応答を誘導または刺激する能力は、当技術分野で標準的な様々なアッセイを使用して、in vitroまたはin vivoのいずれでも評価することができる。免疫応答の開始および活性化を評価するために使用できる技術の一般的説明については、例えば、Coligan et al. (1992 and 1994, Current Protocols in Immunology; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)を参照されたい。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む活性化エフェクター細胞により分泌されるサイトカインプロファイルを測定することにより(例えば、ELIspotによる、IL−10またはIFNガンマ産生細胞の定量化)、免疫エフェクター細胞の活性化状態を測定することにより(例えば、古典的な[H]チミジン取り込みによるT細胞増殖アッセイ)、感作被検体の抗原特異的Tリンパ球をアッセイすることにより(例えば、細胞毒性アッセイでのペプチド特異的溶解)、または蛍光性MHCおよび/もしくはペプチド多量体(例えば、四量体)によって抗原特異的T細胞の検出することにより実施することができる。体液性応答を刺激する能力は、抗体結合および/または結合における競合により決定することができる(例えば、Harlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Pressを参照)。本発明の方法は、抗腫瘍活性を決定するために適切な腫瘍誘導性作用剤(例えば、MUClを発現するTCl細胞)で負荷された、抗抗原免疫応答の誘導または増強を反映する動物モデルで更に検証することもできる。
【0101】
したがって、本発明は、免疫原性組成物を投与することによりヒト疾患が治療された患者の生存を延長させる方法であって、
低レベルのsICAM−1を有する患者で構成される患者集団から患者を選択し、
上記選択された患者に上記免疫原性組成物を投与することを含んでなる方法に更に関する。
【0102】
別の態様によれば、本発明は、免疫原性組成物を投与することによる予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が感受性であるかどうかを予測するためのバイオマーカーとしてのsICAM−1の使用に関する。
【0103】
より具体的には、本発明は、免疫原性組成物を投与することによる予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が感受性であるかどうかを予測するためのバイオマーカーとしてのsICAM−1レベルの使用に関し、低レベルのsICAM−1によって、予防的応答または治療的応答、好ましくは予防的免疫応答または治療的免疫応答の発生に対して、被検体が高い感受性を有すると予測されることを示す。
【0104】
言いかえれば、本発明は、免疫原性組成物を投与した後の生存延長に、被検体が感受性であるかどうかを予測するためのバイオマーカーとしてのsICAM−1レベルの使用に関し、低レベルのsICAM−1が、高レベルのsICAM−1を有する治療された患者と比較して、被検体がより長期の生存率を示すと予測されることを示す。
【0105】
本発明は、本明細書に記述されている方法を実施するための部品を含み、本明細書に提供されている例から明白になるだろうキットも提供する。部品のキット(複数可)は、sICAM−1の全血、血清、または血漿レベルを収集および/または測定するための試薬を含んでいてもよい。そのような試薬には、抗体が含まれていてもよい。キットは、生体試料を収集および/または処理するための器具を更に含んでいてもよい。キットは、使用説明書、カットオフ値および/またはそれらを決定するための説明書、およびキットの使用から得られるデータを解釈するための説明書も含有することが多い。
【0106】
1つの具体的な態様によれば、上記部品のキット(複数可)は、上記で開示されている免疫原性組成物および/または下記の実施例セクションに開示されている免疫原性組成物を更に含んでいてもよい。
【0107】
本発明は、臨床試験およびsICAM−lレベルをモニタリングし、そのようなレベルが、閾値レベルの上かまたは下であるかを決定し、および/または免疫療法治療に対する患者の応答を向上させるための治療計画の変更を推奨するするためのコンピュータプログラムおよび/またはアルゴリズムを更に提供する。そのコンピュータプログラムまたはアルゴリズムは、必要なハードウェアと共に、例えば、生体試料を受容し、そこに存在するsICAM−1の相対的レベルを測定することもできるキットまたは装置の形態で提供することができる。上述のコンピュータプログラムおよび/または装置は、適切な説明書および抗体を含む試薬と共に、医師または臨床検査室に提供されることが多い。
【0108】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は、限定ではなく言語的説明の性質を持つように意図されていると理解されるべきである。明らかに、本発明の多くの改変および変異が、上記の教示に照らして可能である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本明細書に具体的に記述されるものとは異なるように実施することができると理解されるべきである。
【0109】
上記で引用された特許、刊行物、およびデータベース記載事項は全て、そのような個々の特許、刊行物、またはデータベース記載事項の各々が、あたかも具体的におよび個々に参照により組み込まれるのと同じ程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】肺癌におけるワクチン免疫療法を記述する生存曲線である:224ng/ml以下のsCD54を有する患者、または224ng/mlを超えるsCD54を有する患者 − 群1:低レベルのsCD54を有する患者におけるワクチン(つまり、免疫原性組成物)+化学療法。末梢血血漿中224ng/ml以下のsCD54が、低レベルと規定される。患者は32人。---- 群2:高レベルのsCD54を有する患者におけるワクチン(つまり、免疫原性組成物)+化学療法。末梢血血漿中224ng/mlを超えるsCD54が、高レベルと定義される。患者は29人。 有意差はログランクによる:p=0.00006 ○完全 +打ち切り
【図2】肺癌における化学療法を記述する生存曲線である:224ng/ml以下のsCD54を有する患者、または224ng/mlを超えるsCD54を有する患者。 − 群1:低レベルのsCD54を有する患者のおける化学療法のみ(ワクチンなし)。末梢血血漿中224ng/ml以下のsCD54が、低レベルと定義される。患者は32人。---- 群2:高レベルのsCD54を有する患者における化学療法のみ(ワクチンなし)。末梢血血漿中224ng/mlを超えるsCD54が、高レベルと定義される。患者は36人。 有意差はログランクによる:p=0.064(統計的に有意ではない) ○完全 +打ち切り
【実施例】
【0111】
実施例1
ワクチンTG4010と称する免疫原性組成物を、標準的化学療法と組合せて使用して、非小細胞肺癌(NSCLC)患者を治療した。
【0112】
TG4010は、IL2および腫瘍関連抗原MUClを両方とも発現する組換え修飾ウイルスAnkara(MVA)である。
【0113】
− 148人の患者を無作為化し、以下の処置を施した:
化学療法のみ(l日目にシスプラチン 75mg/m、ならびにl日目および8日目にゲムシタビン 1250mg/m、3週毎に最大6サイクル)(研究集団2)、または
TG4010を併用した化学療法(研究集団1)のいずれか。
【0114】
腫瘍を6週毎に評価した(WHO基準)。解析を処理するためのエンドポイントは、6か月の無進行生存(PFS)および全生存だった。
【0115】
血液試料を治療の前に取得し、直ちに中央免疫検査室に送付し、そこで血漿試料を等分化し、凍結した。ドライアイス上の凍結血漿等量をバッチで第2の中央検査室に送付し、そこでsCD54レベルを評価した。
【0116】
血漿試料を、Luminex(登録商標)システムを使用して、多被検体血漿タンパク質プロファイリング法により、sCD54(sICAM−1)含有量を評価した。224ng/mlの境界値は、分析した129人の患者基線血漿試料全てについての中央値だった。
【0117】
図1は、TG4010ワクチンおよび化学療法の両方で治療した場合、基線で224ng/ml以下のsCD54(ICAMl)を有する患者[集団1(TG4010+化学療法)]は、224ng/mlを超えるsCD54(ICAM−1)を有する患者(生存中央値8.4か月)より、生存が延長される(生存中央値=24.5か月)ことを示す。
【0118】
図2のデータは、sCD54(sICAM−1)の血漿中含有量に基づいて患者を選択することの効果が、ワクチンを受容した患者に限定されることを実証する。図2は、従来の化学療法単独の使用を例示しており(l日目にシスプラチン 75mg/m、ならびにl日目および8日目にゲムシタビン 1250mg/m、3週毎に最大6サイクル)、基線にあっては、224ng/ml以下のsCD54(ICAM−1)を有する患者、または224ng/mlを超えるsCD54(ICAM−1)を有する患者が、著しく異なる生存予測を示さないことを示す。224ng/ml以下のsCD54(ICAM−1)および224ng/mlを超えるsCD54(ICAM−1)について、それぞれ12.2か月および8.5か月の生存中央値が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が、免疫原性組成物の投与を含んでなる治療法に治療的に応答するかどうかを試験するためのex vivo法であって、
前記被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1レベルを測定すること
を含んでなり、低レベルのsICAM−1が、前記免疫原性組成物に対する予防的または治療的応答、好ましくは免疫応答を前記被検体が発生させることを示す、方法。
【請求項2】
被検体が、免疫原性組成物の投与を含んでなる癌の治療法に治療的に応答するかどうかを試験するためのex vivo法であって、
前記被検体から血液試料を取得し、
sICAM−1のレベルを測定すること
を含んでなり、低レベルのsICAM−1が、前記被検体が前記癌の治療法に対して治療的に応答することを示す、方法。
【請求項3】
前記患者に投与される前記免疫原性組成物が、(i)前記抗原の全体または一部、および/または(ii)前記抗原をコードする少なくとも1つの組換えベクター、および/または(iii)少なくとも1つの免疫応答調節剤を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト疾患が癌である、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が非小細胞肺癌または腎臓癌である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記標的抗原が腫瘍特異的抗原である、先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍特異的抗原がMUClである、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−515893(P2012−515893A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545757(P2011−545757)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050532
【国際公開番号】WO2010/084100
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】