患者位置決めシステム
【課題】撮像面内だけでなく撮像面外の位置ずれ量を的確に推定することができ、短時間かつ高精度の位置決めが可能な患者位置決めシステムを提供する。
【解決手段】患者位置決めシステムは、患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置1と、患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置2と、取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置3とを備え、画像処理装置3は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量が存在する領域を選択する領域限定処理と、選択した領域に関して第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行する。
【解決手段】患者位置決めシステムは、患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置1と、患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置2と、取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置3とを備え、画像処理装置3は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量が存在する領域を選択する領域限定処理と、選択した領域に関して第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線や粒子線などを患者の病巣部に照射して治療を行う放射線治療において好適な患者位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者位置決めシステムでは、始めに、断層像撮影装置(例えば、X線CT(Computed Tomography)装置)を用いて患者の病巣部を撮影した治療計画用3次元CTデータを取得し、このCTデータの診断結果に基づいて治療計画を立てる。このとき3次元CTデータに基づいて腫瘍患部の位置や形状を特定し、放射線を照射する方向や照射線量などを決める。
【0003】
次に、決定した治療計画に基づいて放射線治療を行うことになる。しかし、CT撮影時から放射線治療までの間にかなりの時間が経過していると、治療時における治療台の患者の位置や体位が治療計画作成時の患者の位置や体位と異なっていることが多い。そのため放射線治療を行う前に、現在の患者位置と治療計画時の患者位置のずれを補正する必要がある。
【0004】
このずれの補正量を算出するために必要な基準画像を、治療計画時の3次元治療計画用データから再構成し、基準DRR(Digitally Reconstructed Radiograph:デジタル再構成ラジオグラフ)画像を生成する。一方、現在の患者位置は、X線TV画像撮影装置を用いて取得する。そして、取得したX線TV画像と再構成して得られたDRR画像とを比較し、画像処理を施すことによって補正量を算出する。治療ビームが患部の適切な位置を照射するように、算出した補正量に基づいて治療台の3次元位置と姿勢を調整する。以上の処理を行う装置が患者位置決めシステムである。こうした患者位置決めシステムでは、患者位置決めの精度向上や速度向上が要望されている。
【0005】
特に、近年の放射線治療では、たとえば粒子線など、体内で線量を集中させることが可能である。治療ビームのエネルギーを調節して腫瘍の深さ方向の位置に合わせることによって、高い線量部分を腫瘍患部に一致させることが可能である。つまり、腫瘍だけに高い線量を照射しつつ、周囲の正常組織に対する影響を低減できる。この性質を活かすためには、腫瘍患部のみに粒子線を照射するための、高精度な患者の位置決め技術が重要になってくる。
【0006】
現行の患者位置決めシステムでは、予め患者の体内に位置決めの指標となる体内マーカを埋め込み、腫瘍とマーカの3次元的位置情報を含むCTデータを断層撮影装置で取得している。そして、マーカを埋め込んだ状態で治療計画を立てる。
【0007】
治療時には、治療計画で用いたCTデータから再構成して得られる画像を生成する。そして、X線TV画像診断装置を用いて腫瘍とマーカの3次元的位置を含んだX線TV画像を投影し、現在の患者の位置および姿勢を特定する。
【0008】
この2つの画像、即ち、DRR画像とX線TV画像の上で実際の体内マーカ位置を計画マーカ位置に重ねることにより、患者位置決めを行っている。こうした位置決め手法としては、画像間のパターンマッチングが用いられる。
【0009】
この現行の手法では、X線TV画像撮像装置で得られるX線TV画像上で、位置決め指標になるマーカが死角となる可能性が残る。例えば、下記特許文献1ではこの問題に関する試みが行われている。また、下記特許文献2では、体内マーカを用いて患者の十分な位置決め精度を確保することが提案されている。また、下記非特許技術文献1では、体内マーカを使用せずに患者の位置決めを行う手法が提案されている。
【0010】
さらに特許文献6では、初回のみ特徴点を与えユーザが与え、初回以降はその特徴点を検出して自動に患者位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−140137号公報
【特許文献2】特開2006−218315号公報
【特許文献3】特開2007−282877号公報
【特許文献4】特開10−21393号公報
【特許文献5】特許第3360469号公報
【特許文献6】特開2008−228966号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A GPGPU Approach for Accelerating 2-D/3-D Rigid Registration of Medical Images (LECTURE NOTES IN COMPUTER SCIENCE 2006, NUMB 4330, pages 939-950)
【非特許文献2】Improvement of depth position in 2-D/3-D registration of knee implants using single-plane fluoroscopy (Medical Imaging, IEEE Transactions, May 2004, Vol. 23, Issue 5, pp. 602-612)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び特許文献2では、体内マーカなどの特徴を用いて位置決めを行っている。しかしながら、体内マーカを埋め込んだ場合、身体への侵襲性という課題だけでなく、CT撮影時から放射線治療までの間に時間が経過していると、体内マーカがずれてしまう可能性がある。また、患部の状態によってはマーカを埋めることができない場合がある。
【0014】
非特許文献1では、ランドマークとなる体内マーカを使用せずに、DRR画像のエッジ特徴とX線TV画像のエッジ特徴との正規化相互相関を用いて両者間のずれ量を算出している。この方法は、2次元的な撮像面内の回転は算出できるが、3次元的補正量である撮像面外の回転を算出するのが難しい。
【0015】
本発明の目的は、DRR画像生成過程において予めCTデータおよびDRR画像の解析を行うことにより、撮像面内だけでなく撮像面外の位置ずれ量を的確に推定することができ、短時間かつ高精度の位置決めが可能な患者位置決めシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る患者位置決めシステムは、患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量が存在する領域を選択する領域限定処理と、選択した領域に関して第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、3次元的な特徴抽出処理、特徴評価処理、領域限定処理を行うことによって、患者の位置決めを撮像面内だけでなく、撮像面外のずれ量を的確に推定することが可能になる。また、注目領域のみを用いてずれ量を推定するため、短時間かつ高精度の患者の位置決めが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る患者位置決めシステムを示す構成図である。
【図2】患者位置決め画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】断層像撮像装置を用いて3次元CTデータを取得する様子を示す説明図である。
【図4】患者のX線TV画像を取得する様子を示す説明図である。
【図5】レイキャスティングアルゴリズムを用いてDRR画像を生成する手法を示す説明図である。
【図6】患者位置決め画像処理装置の動作の一例を示す処理フロー図である。
【図7】2次元画像の圧縮(階層化)処理を示す説明図である。
【図8】3次元ボリュームデータの圧縮(階層化)処理を示す説明図である。
【図9】CT画像から抜き出し領域の限定を示す説明図である。
【図10】限定領域のみのレイキャスティング処理を示す説明図である。
【図11】レイキャスティングアルゴリズムにおいて特徴点が重複する様子を示す説明図である。
【図12】レイキャスティングアルゴリズムでの加算項の説明図である。
【図13】患者位置決め画像処理装置の動作の他の例を示す処理フロー図である。
【図14】患者位置決め画像処理装置の動作のさらに他の例を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る患者位置決めシステムを示す構成図である。患者位置決めシステムは、断層像撮影装置1と、X線TV画像撮影装置2と、患者位置決め画像処理装置3と、治療台4と、ディスプレイ装置5と、キーボードやマウス等の入力手段(不図示)などで構成される。
【0020】
断層像撮影装置1は、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置などで構成され、患部の3次元CTデータを取得する機能を有する。X線TV画像撮影装置2は、例えば、X線蛍光増倍管などで構成され、患部のX線TV画像を取得する機能を有する。こうしたX線TV画像撮影装置2は、通常、放射線治療装置と一体的に設置される。
【0021】
患者位置決め画像処理装置3は、単一または複数のコンピュータなどで構成され、断層像撮影装置1で取得したCTデータに基づいて2次元DRR(Digitally Reconstructed Radiograph:デジタル再構成ラジオグラフ)画像を生成するとともに、生成したDRR画像および、X線TV画像撮影装置2で取得したX線TV画像に基づいて、CTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する。
【0022】
治療台4は、放射線治療の際に、放射線や粒子線など治療ビームが患部の適切な位置を照射するように、3次元位置および姿勢が調整可能な機構を備える。ディスプレイ装置5は、3次元CTデータおよびX線TV画像を表示したり、患者位置決め画像処理装置3の処理結果を表示する。
【0023】
以下、患者の治療計画から実際の放射線治療までの流れに沿って説明する。まず、治療計画を立てるために、図3に示すように、患者11が撮像台10の上に寝た状態で、断層像撮像装置1を用いて患者の3次元治療計画用診断データである3次元CTデータ12を取得する。そして、このCTデータの診断結果に基づいて治療計画を立てる。
【0024】
治療計画を立てた後、放射線治療を開始する。このとき治療時の患者の位置を特定するために、図4に示すように、患者11が放射線治療装置の治療台4に寝た状態で、X線管13からX線15を照射しながら、X線TV画像撮影装置2を用いてX線TV画像14を取得する。このとき複数のX線TV画像14を異なる方向で撮影することによって、患者の3次元位置情報が得られる。
【0025】
なお、図4中の符号16は治療室の基準座標系を示し、符号17はX線管13からX線15の照射センタ(アイソセンタ)までの距離を示し、符号18はX線管13からX線TV画像撮影装置2までの距離を示す。
【0026】
そして、患者位置決め画像処理装置3は、断層像撮像装置1およびX線TV画像撮影装置2を用いて取得したデータに基づいて現在の患者位置と治療計画時のずれ量を算出する。算出したずれ量に基づいて、治療台4の3次元位置と姿勢を調整することによって、現在の患者位置を治療計画時の位置に一致させることができる。
【0027】
再度、現在の患者位置が適切か否かを確認するために、もう一度、X線TV画像撮影装置2を用いてX線TV画像14を取得してディスプレイ装置5に表示し、X線TV画像14とDRR画像20との重ね合わせにより、画像のずれ量が規定値以下であることで確認する。
【0028】
図2は、患者位置決め画像処理装置3の構成を示すブロック図である。この画像処理装置3は、治療計画時データ前処理装置6、透過画像生成装置7、治療時データ前処理装置8、最適パラメータ推定装置9などを備える。
【0029】
治療計画時データ前処理装置6は、断層像撮影装置1で得られた3次元CTデータ12を入力データとして、各種の画像処理を施す。透過画像生成装置7は、装置6で処理された3次元CTデータ12を再構成して、DRR画像を生成する。治療時データ前処理装置8は、現在の患者位置を表すX線TV画像14を入力データとして、各種の画像処理を施す。最適パラメータ推定装置9は、生成したDRR画像およびX線TV画像14に基づいて、CTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する。算出したずれ量に基づいて、治療台4の3次元位置および姿勢が調整される。
【0030】
図6は、患者位置決め画像処理装置3の動作を示す処理フロー図である。患者位置決め画像処理装置3は、まず、上述したようにCTデータ12およびX線TV画像14を取得する。
【0031】
次に、図6に示していないが、治療時に用いられるX線TV画像装置2のターゲット中心(アイソセンタ)や、治療ビームの照射方向などの照射パラメータ値を取得する。この処理は、放射線治療のターゲット中心(アイソセンタ)の3次元位置、治療室における幾何学的な位置情報(図4)であるX線管13から放射線治療のターゲット中心(アイソセンタ)までの距離17、X線管15からX線TV画像撮影装置2までの(治療ビームの)焦点距離18、治療室座標系16などのパラメータも含み、これらはX線TV画像撮影装置2で得られるX線TV画像14と同じ画像を3次元CTデータ12から生成するために必要なパラメータでもある。以上の処理は、治療計画時データ前処理装置6および治療時データ前処理装置8で行われる。
【0032】
次に、治療室座標系16などのパラメータに基づいてDRR画像を生成する。この手法は、例えば、レイキャスティング(Ray Casting)アルゴリズムを用いて行われる。このレイキャスティングアルゴリズムとは、図5に示すように、ボリュームデータ(ここではCTデータ12)に対して視点19とボリュームデータとを通過する光線22を仮定する。次に、この光線22上にあるボクセルの密度(輝度値)を合計し、最終的に到達する合計輝度値に基づいて半透明な透過画像面21からDRR画像20を生成するものである。ここで、図5の符号23はDRR画像生成の視点と対象物の距離、符号24はDRR画像を生成する座標系を示している。なお、図6の符号20は、既知のパラメータでDRR画像を生成した結果を表す。以上の処理は、透過画像生成装置7で行われる。
【0033】
次に、図6の3次元特徴解析手段30を用いて、CTデータ12の3次元的特徴を解析する。これは、治療計画時データ前処理装置6により行われる。この3次元特徴を解析する手法として具体的に、以下のものがある。本実施形態では何れの特徴量を適用してもよい。
【0034】
始めに、基本的な特徴量として、注目ボリュームの輝度値、領域(ゲートサイズ)内の平均輝度、領域内の輝度自乗和平均、領域内の分散、領域内の標準偏差、生起確率の自乗和、生起確率を用いたエントロピーなどが採用できる。
【0035】
また、他の特徴量として、CTデータ12をブロックごとに分割し、そのブロックごとに頂点の法線ベクトルの向きなどの分散を解析することにより得られる特徴量、予め曲面などを張り、曲面の曲がり具合を表す量である曲率を用いる特徴量、マーチングキューブなどにより表面形状を求め、表面を張るCTデータの輝度値を用いる特徴量、任意の2視点を決めスピンイメージなどにより得られる特徴量、テクスチャパターンである局所2値パターン(Local Binary Pattern)や立体高次局所自己相関(Cubic-Higher-order Local Auto Correlation)などを用いる特徴量、SHIFT(Scale Invariant Feature Transform)を3次元的に拡張し用いる方法、3次元ボリュームデータの3軸方向のそれぞれの固有値を求め固有値から内部組織の形状を評価して得られる特徴量、単純にCT画像値そのものを用いる特徴量、3次元ハフ(Hough)変換による特徴量、3次元ARTフィルタの特徴、3次元的な輝度勾配方向ヒストグラム(Histogram of oriented gradients)の特徴量、3Dガウスフィルタによる特徴量、3D−FFTフィルタ特徴、最後に、上記に示した特徴量を組み合わせて評価し、最適な特徴量の組み合わせを用いる特徴量などが採用できる。
【0036】
また、CTデータでは輝度値の変化が少ないために、特徴量を評価するのが困難なことがある。そこで、図8に示すように、CTデータを圧縮することにより明確化した特徴を利用することが好ましい。これらの特徴量を用いて3次元データの特徴を分析することができる。例えば、骨の密度(輝度)が高いところやそうでないところ、腫瘍の周辺の特徴などを3次元的に分析できる効果がある。または解剖学的情報を利用してもよい。その処理結果が3次元特徴解析データ31である。そして、この処理結果31によりDRR画像32を生成する。ここでのDRR生成処理とは、CTデータ12から3次元特徴解析処理せずにDRR画像20を生成し、後から3次元特徴解析手段で得られた特徴量および、通過する光線22との視線方向から得られる透過面の画素値や画素の3次元的位置を記憶して生成する。または、特徴解析結果31によって得る特徴の領域そのものを用いてDRR画像32を生成してもよい。
【0037】
2次元解析処理手段33では、Cannyオペレータ、Harris Corner Detector、Good Featuresなどのフィルタを用いて、DRR画像20、特徴解析結果によるDRR画像32およびX線TV画像14に対してフィルタ処理を行う。または、3次元特徴解析手段で用いた特徴抽出を2次元処理として用いてもよい。図6のDRR処理結果画像27、3次元解析を施したDRR画像28、X線TV処理結果画像25は処理結果を表す。ただし、2次元解析処理手段33では、同じフィルタをそれぞれの画像に行わなくても良い。つまり、DRR画像20、特徴解析結果によるDRR画像32には、画像に応じてフィルタを変えても良い。この処理は治療計画データ前処理装置8で行われる。
【0038】
特徴評価処理手段26では、DRR画像処理結果画像27と3次元解析によるDRR画像処理画像28との画像間で、3次元特徴が保存されているかについて評価を行う。評価方法は、両画像のピクセル値が一致する所やその周辺での特徴量の評価を行う。評価手法では、領域内での相関、相互情報量、ラスタ操作での一致点などを用いて行う。さらに、図6には示していないが、一致する領域やピクセル値が多く出るように3次元解析手段で用いたフィルタにフィードバックをかけて評価してもよい。例えば、ニューラルネットワーク、SVMやBoosting、確率モデルを用いた識別手法を用いて、最適なフィルタの組み合わせを予めこのフィードバック処理により学習を行ってもよい。または、既知量の面外回転を行い、連続的に複数のDRR画像を生成する。そして、その複数の画像上の特徴量の変化の評価や、フィードバック処理による学習により面外回転に強いフィルタを評価する。ただし、フィードバックで用いられる評価画像が3次元解析によるDRR画像処理画像28だけではなく、X線TV処理結果画像25を用いてもよい。その場合は、X線TV処理結果画像25とDRR画像処理結果画像27とが同じ条件のパラメータ、患者位置で作られている必要がある。この処理は、治療計画時データ前処理装置6および治療時データ前処理装置8で行われる。
【0039】
領域限定処理手段29では、3次元特徴解析手段30、2次元解析処理手段33により得られる結果の領域のみを限定する。つまり、図9のように、抽出領域だけをCT画像12から抜き出し領域の限定をする。そして、この限定領域42のみを用いて、図10に示すようなレイキャスティング処理をする。この結果、計算コスト削減につながる。
【0040】
さらに、図10の領域限定42では、医者が指定する腫瘍患部よりも領域を少し大きめの広げた領域、または、腫瘍として指定される輪郭情報を領域指定してもよい。この処理により、移動量推定34での計算コストや、パラメータ推定の収束をかなり早くする効果がある。ただし、図10の符号43は、限定領域のみを用いて生成されるDRR画像を表し、限定領域を光線22が通過するボリューム領域である。この処理は、治療計画時データ前処理装置6で行われる。
【0041】
移動量推定手段34では、特許文献5のように、テンプレートマッチングを行う。または、単純な画素と画素との比較による評価し、最適なパラメータを推定する。つまり、移動量推定手段34は、DRR画像座標系24におけるCTデータ12の位置と治療座標系16における患者の位置との位置合わせを、DRR画像20およびX線TV画像14を用いて行う。また評価値として、相互情報量を用いて評価してもよい。推定方法では、共役勾配法やアニーリングなど一般的に用いられている最適化手法を用いる。または、特徴量を画像の画素値で行うのではなく、3次元DCTにおけるボリュームデータ(CTデータ12)をそのままレイキャスティングの積分計算をおこない、DRR画像20と異なる透過特徴空間を生成する。そしてX線TV画像14により得られる画像をDCT変換(離散コサイン変換)し、その特徴量で最適パラメータ推定手段31を行う手法でもよい。これにより、雑音に強いパラメータ推定が可能になり、計算コストを抑えることも可能になる。また、ずれ量推定を複数のフィルタを用いて行ってもよい。この処理は最適パラメータ推定装置9で行われる。
【0042】
また、図示していないが、位置決め出力で、移動量推定手段34により得られる3次元の並進・回転パラメータの移動量(ずれ量)を放射線照射条件に反映して、DRR画像20を再生成し、同じ評価を繰り返す。最終的に任意に設定する閾値よりも小さくなるまでコンピュータ上でずれ量を算出し処理を終了する。得られるずれ量を反映したDRR画像20とX線TV画像14をディスプレイ装置5に出力し、ずれ量を治療台4に反映させる。この処理は患者位置決め画像処理装置3で行われる。
【0043】
以上の処理を行うことにより、3次元的位置ずれ量を効率的に推定できる。
【0044】
実施の形態2.
本実施形態では、実施の形態1の図6の処理フローにおいて、データを圧縮してずれ量を算出する。この処理は、CTデータ12の3次元的特徴を損なわないでデータの圧縮をする。そしてこの圧縮したデータを用いて位置決めを行う。この3次元的特徴を損なわない圧縮方法は、3次元特徴解析手段30を用いる。
【0045】
これは、特許文献4のように、図7に示すような2次元画像の処理を、図8に示すように、3次元ボリュームデータに拡張して行う。まず、全体のCTデータ12をブロック分割しておき、分割領域を圧縮する前と後での領域である高解像度ボリュームデータ39、低解像度ボリュームデータ40を用いて、3次元的特徴を損なわないように圧縮する。または、CTデータ12の3次元特徴解析処理30を行わないで圧縮してもよい。
【0046】
ここでの圧縮率は、圧縮する前(高解像度ボリュームデータ39)と後(低解像度ボリュームデータ40)を、高解像度と低解像度のボクセル数が異なるので、確率モデルを用いる方法(相互情報量)、単純に特徴量を平均する方法などを用いて評価する。
【0047】
そして、あらかじめ設定していた閾値を用いてデータの圧縮率を決定する。ここで、予め任意に治療時にユーザにより圧縮率を指定してもよい。この解析によりCTデータ12の圧縮する前と後での三次元データの特徴を保存する効果がある。3次元特徴解析に用いるフィルタ処理の選択により、データ圧縮するときの任意の特徴、たとえば、骨や腫瘍部位などが損なわないように特徴量を選択することが可能となる。
【0048】
ここで、図7は、画像を階層化してデータを圧縮することを模式的に表している。つまり、図7は、高解像度画像37を低解像度画像38に圧縮していることを示している。同様に、図8は、高解像度ボリュームデータ39を低解像度ボリュームデータ40に圧縮していることを示している。ここで得られた圧縮率を基に、近傍のボクセルごとに、データの階層化を行う。この処理を3次元DCT変換により周波数領域で処理・圧縮を行った後に、逆DCT変換を行って処理をしてもよい。この処理により、データの削減、雑音の影響を除去、などが可能になる。さらに、X線TV画像14をDRR画像20と同じ画像サイズになるように圧縮する。この処理は患者位置決め画像処理装置3で行われる。
【0049】
以上のデータ圧縮をすることにより、ずれ量算出の計算コストを削減することが可能となる。
【0050】
実施の形態3.
本実施形態では、実施の形態1の図6の処理フローにおいて、3次元特徴解析手段30、特徴評価処理手段26、領域限定処理手段29を行わないで、特徴評価処理手段26により得られる特徴量のみを用いて移動量推定を行う。収束した後に、面外回転のパラメータである移動量を振る。
【0051】
パラメータの振り方は以下の方法である。ここでの生成法はランダム(メルセデスツイスタ等)にパラメータを振る。または、面外の回転軸に対して、パラメータの振り幅を(+5°〜−5°)など任意の刻み幅で変化させパラメータを振る。ここでの振り幅の限界値は治療台が面外回転に対応する稼動の最大値である。または、X線TV画像に映る対象部位が移動する想定される範囲内に対応する面外回転のパラメータに設定する。刻み幅は、画像の解像度により決定する。つまり得られるX線TV画像のピクセル間の幅が推定する移動量の限界値であるため、それに対応した精度でステップ幅を決める。または、パラメータ推定で用いられる、共役勾配法でのステップ幅の値をそのまま用いてもよい。または、面外回転のパラメータを任意に変化させる事により、動かす前のDRR画像(または既知の座標系でとられたX線TV画像)と面外回転させたDRR画像やX線TV画像との画像の相関(相互相関・相互情報量)をとり誤差の曲線をプロットする。そのプロットした曲線が鋭角になるような2次元特徴フィルタの評価を行う。例えば評価方法は、曲線が極小解が一つであるような変化を示すフィルタを用いる。または曲線の変化量(1次微分や2次微分)により変化するフィルタを選択する。ここで問題なのは、曲線をプロットする間隔により曲線の評価に大きく異なるため、ランダムで刻み幅を設定するかまたは、画像の解像度を考慮して決定する。
【0052】
そして、移動推定パラメータとして、画像間で濃度勾配ベースのフロー検出および隣接角度要素間を評価する。例えば、勾配法などで評価を行い最適なパラメータを推定する。この処理は、移動量の推定後に、面外回転の評価を行い実際の一致度を評価して行うことである。
【0053】
実施の形態4.
本実施形態では、実施の形態3に係る手法を以下のように拡張している。まず実施の形態1の処理フローの移動推定手段34において以下の処理を行う。移動推定における収束過程で、特徴評価処理手段26で得られた特徴点や領域が存在するかなどを毎回評価する。ここでの評価方法は、例えば、トラッキングなどを行い、特徴点や特徴領域が面外回転で消失するかなどを評価とする。または、毎回2次元解析手段33や特徴量解析手段26を行い、全体の特徴量の数を評価とする。そして、注目している特徴点や領域(アイソセンタの付近の特徴領域とアイソセンタより遠い特徴領域)が収束過程で消失したところで、以下の処理を行う。ここでトラッキングは一般的に知られている、KLTや確率モデルを用いたCondensationなどである。
【0054】
移動推定パラメータとして、画像間で濃度勾配ベースのフロー検出および隣接角度要素間を評価することにより、面外回転のパラメータを振る。または、アニーリングのように、移動推定パラメータとして、面外回転のパラメータを振る。そして、その評価に関して、消失しなかった特徴領域で相関値を求め、面外回転で振ったパラメータ値を移動量推定に反映する。または、消失しなかった特徴領域は、並進・回転の座標系の原点から遠いもので評価する。つまり、並進・回転座標系の原点から遠い特徴領域よりも原点に近い領域の方が、面外回転に大きく影響する。そこで、並進・回転座標系の原点から遠い特徴領域を用いて評価する。または、並進・回転座標系の原点から遠い特徴領域から近い領域にかけて重み付けして評価しても良い。この処理により、面外回転に強い推定を可能とする。
【0055】
実施の形態5.
本実施形態では、実施の形態1〜3でDRR画像20を生成する際、任意のCTデータ12の輝度値を用いてDRR画像20を作る。一般に、レイキャスティングアルゴリズムを用いるときCT値は、−1000〜1000の値である。しかし、実際の骨などのCT値は400前後である。そこで、DRR画像を生成するときは、所定範囲の輝度値を有するCTデータだけに限定して処理する。その結果、例えば、DRRがCT値400前後の値、例えば、390〜410の輝度値を有するCTデータだけに限定することによって、骨などが強調された画像が得られる。これは、CT値が−1000〜1000の全体で作られたDRRに対してエッジフィルタで処理した結果のようなものに相当する。この処理により、2次元解析手段33で行われるエッジ処理と同じ効果が得られる。
【0056】
実施の形態6.
本実施形態では、実施の形態2のように3次元ボリュームデータの解像度を変えて移動量を推定するのではなく、以下の処理を段階的に行う。
【0057】
実施の形態4の限定特徴領域を、並進・回転の座標系の原点から遠いもので最初は評価する。そして、徐々に原点近い領域のみで評価を行う。または、最初は原点から遠い領域だけに注目し、徐々に全体の限定領域を用いて評価を行う。これにより計算量を削減することが可能になるとともに、局所解に陥りにくくなるため、位置決め精度が向上する。また、低解像度のデータを生成する必要がなくなるため、計算量を低減できる。
【0058】
実施の形態7.
本実施形態では、実施の形態1に係る手法と実施の形態2に係る手法の両方を組み合わせて実施している。つまり圧縮した低解像度のデータで大まかに位置決めを行い、解像度を上げることにより、詳細にずれ量推定を行う。これは、ずれ量推定する過程において、局所解に陥りにくくするとともに、位置決め精度が向上する効果がある。
【0059】
実施の形態8.
本実施形態では、図13の処理フロー図に示すように、実施の形態1における特徴評価処理手段26と領域限定処理手段29との間に特徴安定評価手段50を追加している。この特徴安定評価手段50による処理は、特徴評価処理手段26においてCTデータ12からDRR20を写像した際に特徴点の保存性の課題を解決するものである。例えば、図11のように、ある視点方向に沿ってDRR47にレイキャスティングアルゴリズムで写像した際に、3次元特徴解析より得られた3次元特徴点45,49がその視点方向で重複していると、2次元特徴点46は重複した特徴点として保存される。一方、DRR48を生成したときの視点19aであれば、良い2次元特徴点51を含むDRR48が得られる。
【0060】
なお、図11で示した関係は簡易化して示しているが、実際はレイキャスティングにより3次元データを2次元データに写像するため複雑な処理となる。この問題を解決する手段が特徴安定評価手段50である。ここで処理の流れを説明するために簡易的にレイキャスティングアルゴリズムを以下に定式化する。式(1)のI(x,y)は、DRR20の座標軸(x,y)の画素値を表す。同様に、R(X,Y,Z)はCTデータ値12やCTデータ値12の間で補間されて得られる座標(X,Y,Z)のCT値である。従って、視点19の方向にあるCTデータ値の加算によりI(x,y)が定義されることを式(1)が示している。ただし、αは透過率を表している。
【0061】
【数1】
【0062】
ここで、式(1)で得られるI(x,y)について、式(1)の右辺の加算項の割合を評価する。例えば、図11のDRR47のR値の例を図12に示す。図12中の横軸が視点からの距離である。縦軸が式(1)中のRの値を正規化した値になっている。従って、式(1)の右辺の加算項が横軸の要素になっている。この処理はヒストグラムや確率モデルで表現したのと同じことであり、確率モデルやヒストグラムで表現しても良い。そして評価では、例えば、図12中の特徴点45の正規化した割合が閾値以上(例えば、80%以上)であればI(x,y)を算出する際に大きな割合を占めていることを示している。このような処理を行う事により特徴点の取捨選択を行い、CTデータ(3次元データ)から2次元のDRRに写像する際の特徴点の安定化をする。
【0063】
ただし、この評価だけでは微小の視点変換によりI(x,y)値が大きく変化する可能性がある。そこで、以下の条件式を追加したり組み合わせたりする。まず、特徴点45を中心に視点変換を行う。これは、図11のDRR47からDRR48への視点変換である。この変換は極端であるが、微小の視点変換に対して特徴点46の画素値と特徴点51の画素値が変化しないという条件を設けることにより、視点変換に関しても3次元の特徴点45が保存されるような条件の特徴点を抽出する。この処理はトラッキングで行われている、オプティカルフローと同じ考え方である。この画素値の変化が小さいという評価方法とは別に確率モデルで表現をしても良い。例えば、図12を確率密度として定義し、微小に視点変換を行った分布との相互情報量により評価を行う方法である。これは、相互情報量が閾値以上であれば、視点変化に対しても微小であり、図12のような確率分布の変化は小さく、特徴点45が保存される。または、3次元特徴解析手段30で得られた特徴点に対して、3次元的にガウス分布をそれぞれの特徴点を中心として付加する。その空間において視点変換を行い、図12のような視点位置の混合ガウス値の確率密度分布を生成する。その確率密度上で評価を行ってもよい。または、2次元ヘッセ行列と3次元ヘッセ行列の関係を用いて、DRR47とDRR46のヘッセ行列をそれぞれ求めて、その固有値の変化を評価する事により、安定的な特徴点を選択してもよい。
【0064】
さらに、3次元特徴解析手段30の特徴点の間隔が広いほど、位置決めにおいてよい精度が得られる傾向にある。従って、3次元特徴解析手段30で得られた特徴点の距離の間隔が大きいほど良い特徴点である。そこで、特徴点の距離の分散を求めて評価に用いる。この処理は2次元であるDRRに落としこんだ時の距離の関係なども評価する。
【0065】
以上の評価方法の組み合わせにより、安定的な特徴点の抽出を可能とする。
【0066】
実施の形態9
本実施形態では、実施の形態8で行った処理においてディスプレイ装置5により視覚的なサポートを行う。例えば、図12で得られる結果を、DRR47やDRR48の特徴点51,46上での点滅や色の濃度などにより表示する。視点変化により3次元解析手段30から得られた特徴が、特徴安定化手段50により視覚的に位置決めするための特徴点を表示ができる。その結果、例えば、実施の形態8でのそれぞれの閾値を調節することによって、割合を濃度や点滅速度などにより表示し、位置決めに適した特徴点が視覚的に容易に理解できる。また、はずれ値のように患者が存在しない領域など、位置決めに適さない特徴点などの削除を自動的に行う。その結果、特徴安定評価手段50で抽出された特徴点が位置決めに適した特徴の選択が可能になる。
【0067】
実施の形態10
本実施形態では、実施の形態9における画像表示において、解剖学的情報を位置決めに反映する。例えば、位置決めの部位(例えば頭頚部、肺、肝臓、前立腺)により解剖的情報が予め分かっていることが多い。これは、年齢・性別などの統計情報が予め分かっているためである。そこで、解剖学的な情報を特徴点抽出に反映し、位置決めに適した特徴点の選択を行う。例えば、医者やX線技師などの画像診断により、ある部位の一部分を注目して位置決めを行うことがある。その領域情報を解析手段により予め解析し情報を取得する。この結果、医師が必要とする領域での位置合わせなどが可能となる。
【0068】
実施の形態11
実施の形態1〜10において、X線TV画像14を図4のように2方向または多方向の視点より位置合わせを行うことがある。そこで、他方向の軸と依存関係が少ない軸に対して以下の処理を、図4のように2方向の処理を例で示す。X軸方向とY軸方向の直交2方向にX線TV画像を得られるとすると、面外の軸であるZ軸の並進回転についての位置決めが難しい。そこで、面外回転の軸に対して以下の評価を行う。ここで、x軸,y軸,z軸の回転角をθ,ψ,φとする。そして、3次元特徴解析手段30により得られた特徴点において、z軸の並進・回転を微小区間で動かす。その結果、DRR47の特徴点46がDRR48の特徴点51に対して動くとする。この画像上での移動量が大きくなるような特徴点を選択することにより、安定した特徴点を抽出する。その結果、面外回転に強い特徴点を抽出できる。
【0069】
実施の形態12
本実施形態では、実施の形態8,9により得られた特徴点を用いて移動量推定手段34を行わずに、以下の処理を行う。実施の形態8で得られる最も安定する6点以上の特徴点を用いて位置決めを行う。例えば、図14のように、X線TV画像14とDRR21との間でSHIFTなどによる特徴点解析を行う。その結果、一致した特徴点51と特徴点46が得られる。ここで、画像は6自由度のアフィン変換で表現できるので、6点以上であれば、一意にX線TV14とDRR21との間の患者位置の差分が得られる。しかし、このX線TV画像14とDRR21の間では3次元情報が含まれていない。そこで、予め実施の形態8により特徴点がDRR21とCTデータ12の間の安定性のある特徴点を複数求める。この結果、得られる特徴点46は特徴点45の3次元座の情報を持っていることと等しい。この特徴点45が、先ほど得られたX線TV画像14とDRR21で一致した特徴点を用いて6自由度の患者のずれ量を算出する。以上の処理により、一意に位置推定が可能となり、移動量推定手段34で行われている最適計算を行わなくてもよい。その結果、計算時間の短縮になる。また、この移動量推定手段34と組み合わせにより位置決めを行ってもよい。その結果、高精度の位置決め推定が可能となる。
【0070】
実施の形態13
実施の形態12で用いた特徴点45と特徴点46における信頼性(図12)の割合を、統計処理を行い、データとして保存する。例えば、ある部位での患者位置合わせを行った際に、実施の形態8,9で得られた特徴点の領域と特徴点の保存性の割合をデータとして保存する。この処理を複数の患者において統計的処理を行う。この処理により、患者位置合わせに適した特徴点や領域、位置決め精度などを事前情報として保存され、後の患者位置あわせに反映する。例えば、治療計画のデータに位置決め情報として付加し、過去の履歴などから特徴点や領域の関係を確率分布モデルとして、表示や位置決めに用いる特徴点の過去の履歴の利用割合や位置決め精度の結果を点滅速度や濃度で表示する。さらに、自動位置決めの特徴点抽出の評価に用いる。この処理により、統計的に実施の形態8,9で得られる特徴点の信頼性を評価でき、特定の患者だけでなく一般モデルの特徴点が得られ、位置決めの精度の信頼性が得られる。
【0071】
以上説明した各実施形態において、GPU(Graphic Processing Unit)を用いて並列計算を行うことが好ましく、これにより高速処理が図られる。
【符号の説明】
【0072】
1 断層像撮影装置、 2 X線TV画像撮影装置、
3 患者位置決め画像処理装置、 4 治療台、 5 ディスプレイ装置、
6 治療計画時データ前処理装置、 7 透過画像生成装置、
8 治療時データ前処理装置、 9 最適パラメータ推定装置、 10 CT撮影台、
11 患者、 12 CTデータ、 13 X線管、14 X線TV画像、
15 X線、 16 治療室座標系、
17 X線管と放射線焦点距離(アイソセンタ)の距離、
18 X線管とX線TV画像撮影装置との距離、 19 視点、
20 DRR画像(透視画像)、 21 透過画像面(DRR画像生成面)、
22 光線、 23 DRR画像生成の視点と対象物の距離、
24 DRR画像生成座標系、 25 X線TV処理結果、
26 特徴評価処理手段、 27 DRR処理結果画像、
28 3次元特徴解析を施したDRR画像、 29 領域限定手段、
30 3次元特徴解析手段、 31 3次元特徴解析処理データ、
32 解析処理により得られるDRR画像、
33 2次元解析手段、 34 移動量推定手段、
37 高解度像画像、 38 低解像度画像、
39 高像度ボリュームデータ、 40 低解像度ボリュームデータ、
42 限定領域、 43 限定領域のみを用いて生成されるDRR画像、
44 限定領域43を光線22が通過するボリューム領域、
45 3次元特徴点、 46 DRR上の特徴点画像、 47 DRR画像、
48 DRR画像、 49 3次元特徴点、 50 特徴安定評価手段、
51 DRR上の特徴点画像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線や粒子線などを患者の病巣部に照射して治療を行う放射線治療において好適な患者位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者位置決めシステムでは、始めに、断層像撮影装置(例えば、X線CT(Computed Tomography)装置)を用いて患者の病巣部を撮影した治療計画用3次元CTデータを取得し、このCTデータの診断結果に基づいて治療計画を立てる。このとき3次元CTデータに基づいて腫瘍患部の位置や形状を特定し、放射線を照射する方向や照射線量などを決める。
【0003】
次に、決定した治療計画に基づいて放射線治療を行うことになる。しかし、CT撮影時から放射線治療までの間にかなりの時間が経過していると、治療時における治療台の患者の位置や体位が治療計画作成時の患者の位置や体位と異なっていることが多い。そのため放射線治療を行う前に、現在の患者位置と治療計画時の患者位置のずれを補正する必要がある。
【0004】
このずれの補正量を算出するために必要な基準画像を、治療計画時の3次元治療計画用データから再構成し、基準DRR(Digitally Reconstructed Radiograph:デジタル再構成ラジオグラフ)画像を生成する。一方、現在の患者位置は、X線TV画像撮影装置を用いて取得する。そして、取得したX線TV画像と再構成して得られたDRR画像とを比較し、画像処理を施すことによって補正量を算出する。治療ビームが患部の適切な位置を照射するように、算出した補正量に基づいて治療台の3次元位置と姿勢を調整する。以上の処理を行う装置が患者位置決めシステムである。こうした患者位置決めシステムでは、患者位置決めの精度向上や速度向上が要望されている。
【0005】
特に、近年の放射線治療では、たとえば粒子線など、体内で線量を集中させることが可能である。治療ビームのエネルギーを調節して腫瘍の深さ方向の位置に合わせることによって、高い線量部分を腫瘍患部に一致させることが可能である。つまり、腫瘍だけに高い線量を照射しつつ、周囲の正常組織に対する影響を低減できる。この性質を活かすためには、腫瘍患部のみに粒子線を照射するための、高精度な患者の位置決め技術が重要になってくる。
【0006】
現行の患者位置決めシステムでは、予め患者の体内に位置決めの指標となる体内マーカを埋め込み、腫瘍とマーカの3次元的位置情報を含むCTデータを断層撮影装置で取得している。そして、マーカを埋め込んだ状態で治療計画を立てる。
【0007】
治療時には、治療計画で用いたCTデータから再構成して得られる画像を生成する。そして、X線TV画像診断装置を用いて腫瘍とマーカの3次元的位置を含んだX線TV画像を投影し、現在の患者の位置および姿勢を特定する。
【0008】
この2つの画像、即ち、DRR画像とX線TV画像の上で実際の体内マーカ位置を計画マーカ位置に重ねることにより、患者位置決めを行っている。こうした位置決め手法としては、画像間のパターンマッチングが用いられる。
【0009】
この現行の手法では、X線TV画像撮像装置で得られるX線TV画像上で、位置決め指標になるマーカが死角となる可能性が残る。例えば、下記特許文献1ではこの問題に関する試みが行われている。また、下記特許文献2では、体内マーカを用いて患者の十分な位置決め精度を確保することが提案されている。また、下記非特許技術文献1では、体内マーカを使用せずに患者の位置決めを行う手法が提案されている。
【0010】
さらに特許文献6では、初回のみ特徴点を与えユーザが与え、初回以降はその特徴点を検出して自動に患者位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−140137号公報
【特許文献2】特開2006−218315号公報
【特許文献3】特開2007−282877号公報
【特許文献4】特開10−21393号公報
【特許文献5】特許第3360469号公報
【特許文献6】特開2008−228966号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A GPGPU Approach for Accelerating 2-D/3-D Rigid Registration of Medical Images (LECTURE NOTES IN COMPUTER SCIENCE 2006, NUMB 4330, pages 939-950)
【非特許文献2】Improvement of depth position in 2-D/3-D registration of knee implants using single-plane fluoroscopy (Medical Imaging, IEEE Transactions, May 2004, Vol. 23, Issue 5, pp. 602-612)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び特許文献2では、体内マーカなどの特徴を用いて位置決めを行っている。しかしながら、体内マーカを埋め込んだ場合、身体への侵襲性という課題だけでなく、CT撮影時から放射線治療までの間に時間が経過していると、体内マーカがずれてしまう可能性がある。また、患部の状態によってはマーカを埋めることができない場合がある。
【0014】
非特許文献1では、ランドマークとなる体内マーカを使用せずに、DRR画像のエッジ特徴とX線TV画像のエッジ特徴との正規化相互相関を用いて両者間のずれ量を算出している。この方法は、2次元的な撮像面内の回転は算出できるが、3次元的補正量である撮像面外の回転を算出するのが難しい。
【0015】
本発明の目的は、DRR画像生成過程において予めCTデータおよびDRR画像の解析を行うことにより、撮像面内だけでなく撮像面外の位置ずれ量を的確に推定することができ、短時間かつ高精度の位置決めが可能な患者位置決めシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る患者位置決めシステムは、患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量が存在する領域を選択する領域限定処理と、選択した領域に関して第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、3次元的な特徴抽出処理、特徴評価処理、領域限定処理を行うことによって、患者の位置決めを撮像面内だけでなく、撮像面外のずれ量を的確に推定することが可能になる。また、注目領域のみを用いてずれ量を推定するため、短時間かつ高精度の患者の位置決めが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る患者位置決めシステムを示す構成図である。
【図2】患者位置決め画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】断層像撮像装置を用いて3次元CTデータを取得する様子を示す説明図である。
【図4】患者のX線TV画像を取得する様子を示す説明図である。
【図5】レイキャスティングアルゴリズムを用いてDRR画像を生成する手法を示す説明図である。
【図6】患者位置決め画像処理装置の動作の一例を示す処理フロー図である。
【図7】2次元画像の圧縮(階層化)処理を示す説明図である。
【図8】3次元ボリュームデータの圧縮(階層化)処理を示す説明図である。
【図9】CT画像から抜き出し領域の限定を示す説明図である。
【図10】限定領域のみのレイキャスティング処理を示す説明図である。
【図11】レイキャスティングアルゴリズムにおいて特徴点が重複する様子を示す説明図である。
【図12】レイキャスティングアルゴリズムでの加算項の説明図である。
【図13】患者位置決め画像処理装置の動作の他の例を示す処理フロー図である。
【図14】患者位置決め画像処理装置の動作のさらに他の例を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る患者位置決めシステムを示す構成図である。患者位置決めシステムは、断層像撮影装置1と、X線TV画像撮影装置2と、患者位置決め画像処理装置3と、治療台4と、ディスプレイ装置5と、キーボードやマウス等の入力手段(不図示)などで構成される。
【0020】
断層像撮影装置1は、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置などで構成され、患部の3次元CTデータを取得する機能を有する。X線TV画像撮影装置2は、例えば、X線蛍光増倍管などで構成され、患部のX線TV画像を取得する機能を有する。こうしたX線TV画像撮影装置2は、通常、放射線治療装置と一体的に設置される。
【0021】
患者位置決め画像処理装置3は、単一または複数のコンピュータなどで構成され、断層像撮影装置1で取得したCTデータに基づいて2次元DRR(Digitally Reconstructed Radiograph:デジタル再構成ラジオグラフ)画像を生成するとともに、生成したDRR画像および、X線TV画像撮影装置2で取得したX線TV画像に基づいて、CTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する。
【0022】
治療台4は、放射線治療の際に、放射線や粒子線など治療ビームが患部の適切な位置を照射するように、3次元位置および姿勢が調整可能な機構を備える。ディスプレイ装置5は、3次元CTデータおよびX線TV画像を表示したり、患者位置決め画像処理装置3の処理結果を表示する。
【0023】
以下、患者の治療計画から実際の放射線治療までの流れに沿って説明する。まず、治療計画を立てるために、図3に示すように、患者11が撮像台10の上に寝た状態で、断層像撮像装置1を用いて患者の3次元治療計画用診断データである3次元CTデータ12を取得する。そして、このCTデータの診断結果に基づいて治療計画を立てる。
【0024】
治療計画を立てた後、放射線治療を開始する。このとき治療時の患者の位置を特定するために、図4に示すように、患者11が放射線治療装置の治療台4に寝た状態で、X線管13からX線15を照射しながら、X線TV画像撮影装置2を用いてX線TV画像14を取得する。このとき複数のX線TV画像14を異なる方向で撮影することによって、患者の3次元位置情報が得られる。
【0025】
なお、図4中の符号16は治療室の基準座標系を示し、符号17はX線管13からX線15の照射センタ(アイソセンタ)までの距離を示し、符号18はX線管13からX線TV画像撮影装置2までの距離を示す。
【0026】
そして、患者位置決め画像処理装置3は、断層像撮像装置1およびX線TV画像撮影装置2を用いて取得したデータに基づいて現在の患者位置と治療計画時のずれ量を算出する。算出したずれ量に基づいて、治療台4の3次元位置と姿勢を調整することによって、現在の患者位置を治療計画時の位置に一致させることができる。
【0027】
再度、現在の患者位置が適切か否かを確認するために、もう一度、X線TV画像撮影装置2を用いてX線TV画像14を取得してディスプレイ装置5に表示し、X線TV画像14とDRR画像20との重ね合わせにより、画像のずれ量が規定値以下であることで確認する。
【0028】
図2は、患者位置決め画像処理装置3の構成を示すブロック図である。この画像処理装置3は、治療計画時データ前処理装置6、透過画像生成装置7、治療時データ前処理装置8、最適パラメータ推定装置9などを備える。
【0029】
治療計画時データ前処理装置6は、断層像撮影装置1で得られた3次元CTデータ12を入力データとして、各種の画像処理を施す。透過画像生成装置7は、装置6で処理された3次元CTデータ12を再構成して、DRR画像を生成する。治療時データ前処理装置8は、現在の患者位置を表すX線TV画像14を入力データとして、各種の画像処理を施す。最適パラメータ推定装置9は、生成したDRR画像およびX線TV画像14に基づいて、CTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する。算出したずれ量に基づいて、治療台4の3次元位置および姿勢が調整される。
【0030】
図6は、患者位置決め画像処理装置3の動作を示す処理フロー図である。患者位置決め画像処理装置3は、まず、上述したようにCTデータ12およびX線TV画像14を取得する。
【0031】
次に、図6に示していないが、治療時に用いられるX線TV画像装置2のターゲット中心(アイソセンタ)や、治療ビームの照射方向などの照射パラメータ値を取得する。この処理は、放射線治療のターゲット中心(アイソセンタ)の3次元位置、治療室における幾何学的な位置情報(図4)であるX線管13から放射線治療のターゲット中心(アイソセンタ)までの距離17、X線管15からX線TV画像撮影装置2までの(治療ビームの)焦点距離18、治療室座標系16などのパラメータも含み、これらはX線TV画像撮影装置2で得られるX線TV画像14と同じ画像を3次元CTデータ12から生成するために必要なパラメータでもある。以上の処理は、治療計画時データ前処理装置6および治療時データ前処理装置8で行われる。
【0032】
次に、治療室座標系16などのパラメータに基づいてDRR画像を生成する。この手法は、例えば、レイキャスティング(Ray Casting)アルゴリズムを用いて行われる。このレイキャスティングアルゴリズムとは、図5に示すように、ボリュームデータ(ここではCTデータ12)に対して視点19とボリュームデータとを通過する光線22を仮定する。次に、この光線22上にあるボクセルの密度(輝度値)を合計し、最終的に到達する合計輝度値に基づいて半透明な透過画像面21からDRR画像20を生成するものである。ここで、図5の符号23はDRR画像生成の視点と対象物の距離、符号24はDRR画像を生成する座標系を示している。なお、図6の符号20は、既知のパラメータでDRR画像を生成した結果を表す。以上の処理は、透過画像生成装置7で行われる。
【0033】
次に、図6の3次元特徴解析手段30を用いて、CTデータ12の3次元的特徴を解析する。これは、治療計画時データ前処理装置6により行われる。この3次元特徴を解析する手法として具体的に、以下のものがある。本実施形態では何れの特徴量を適用してもよい。
【0034】
始めに、基本的な特徴量として、注目ボリュームの輝度値、領域(ゲートサイズ)内の平均輝度、領域内の輝度自乗和平均、領域内の分散、領域内の標準偏差、生起確率の自乗和、生起確率を用いたエントロピーなどが採用できる。
【0035】
また、他の特徴量として、CTデータ12をブロックごとに分割し、そのブロックごとに頂点の法線ベクトルの向きなどの分散を解析することにより得られる特徴量、予め曲面などを張り、曲面の曲がり具合を表す量である曲率を用いる特徴量、マーチングキューブなどにより表面形状を求め、表面を張るCTデータの輝度値を用いる特徴量、任意の2視点を決めスピンイメージなどにより得られる特徴量、テクスチャパターンである局所2値パターン(Local Binary Pattern)や立体高次局所自己相関(Cubic-Higher-order Local Auto Correlation)などを用いる特徴量、SHIFT(Scale Invariant Feature Transform)を3次元的に拡張し用いる方法、3次元ボリュームデータの3軸方向のそれぞれの固有値を求め固有値から内部組織の形状を評価して得られる特徴量、単純にCT画像値そのものを用いる特徴量、3次元ハフ(Hough)変換による特徴量、3次元ARTフィルタの特徴、3次元的な輝度勾配方向ヒストグラム(Histogram of oriented gradients)の特徴量、3Dガウスフィルタによる特徴量、3D−FFTフィルタ特徴、最後に、上記に示した特徴量を組み合わせて評価し、最適な特徴量の組み合わせを用いる特徴量などが採用できる。
【0036】
また、CTデータでは輝度値の変化が少ないために、特徴量を評価するのが困難なことがある。そこで、図8に示すように、CTデータを圧縮することにより明確化した特徴を利用することが好ましい。これらの特徴量を用いて3次元データの特徴を分析することができる。例えば、骨の密度(輝度)が高いところやそうでないところ、腫瘍の周辺の特徴などを3次元的に分析できる効果がある。または解剖学的情報を利用してもよい。その処理結果が3次元特徴解析データ31である。そして、この処理結果31によりDRR画像32を生成する。ここでのDRR生成処理とは、CTデータ12から3次元特徴解析処理せずにDRR画像20を生成し、後から3次元特徴解析手段で得られた特徴量および、通過する光線22との視線方向から得られる透過面の画素値や画素の3次元的位置を記憶して生成する。または、特徴解析結果31によって得る特徴の領域そのものを用いてDRR画像32を生成してもよい。
【0037】
2次元解析処理手段33では、Cannyオペレータ、Harris Corner Detector、Good Featuresなどのフィルタを用いて、DRR画像20、特徴解析結果によるDRR画像32およびX線TV画像14に対してフィルタ処理を行う。または、3次元特徴解析手段で用いた特徴抽出を2次元処理として用いてもよい。図6のDRR処理結果画像27、3次元解析を施したDRR画像28、X線TV処理結果画像25は処理結果を表す。ただし、2次元解析処理手段33では、同じフィルタをそれぞれの画像に行わなくても良い。つまり、DRR画像20、特徴解析結果によるDRR画像32には、画像に応じてフィルタを変えても良い。この処理は治療計画データ前処理装置8で行われる。
【0038】
特徴評価処理手段26では、DRR画像処理結果画像27と3次元解析によるDRR画像処理画像28との画像間で、3次元特徴が保存されているかについて評価を行う。評価方法は、両画像のピクセル値が一致する所やその周辺での特徴量の評価を行う。評価手法では、領域内での相関、相互情報量、ラスタ操作での一致点などを用いて行う。さらに、図6には示していないが、一致する領域やピクセル値が多く出るように3次元解析手段で用いたフィルタにフィードバックをかけて評価してもよい。例えば、ニューラルネットワーク、SVMやBoosting、確率モデルを用いた識別手法を用いて、最適なフィルタの組み合わせを予めこのフィードバック処理により学習を行ってもよい。または、既知量の面外回転を行い、連続的に複数のDRR画像を生成する。そして、その複数の画像上の特徴量の変化の評価や、フィードバック処理による学習により面外回転に強いフィルタを評価する。ただし、フィードバックで用いられる評価画像が3次元解析によるDRR画像処理画像28だけではなく、X線TV処理結果画像25を用いてもよい。その場合は、X線TV処理結果画像25とDRR画像処理結果画像27とが同じ条件のパラメータ、患者位置で作られている必要がある。この処理は、治療計画時データ前処理装置6および治療時データ前処理装置8で行われる。
【0039】
領域限定処理手段29では、3次元特徴解析手段30、2次元解析処理手段33により得られる結果の領域のみを限定する。つまり、図9のように、抽出領域だけをCT画像12から抜き出し領域の限定をする。そして、この限定領域42のみを用いて、図10に示すようなレイキャスティング処理をする。この結果、計算コスト削減につながる。
【0040】
さらに、図10の領域限定42では、医者が指定する腫瘍患部よりも領域を少し大きめの広げた領域、または、腫瘍として指定される輪郭情報を領域指定してもよい。この処理により、移動量推定34での計算コストや、パラメータ推定の収束をかなり早くする効果がある。ただし、図10の符号43は、限定領域のみを用いて生成されるDRR画像を表し、限定領域を光線22が通過するボリューム領域である。この処理は、治療計画時データ前処理装置6で行われる。
【0041】
移動量推定手段34では、特許文献5のように、テンプレートマッチングを行う。または、単純な画素と画素との比較による評価し、最適なパラメータを推定する。つまり、移動量推定手段34は、DRR画像座標系24におけるCTデータ12の位置と治療座標系16における患者の位置との位置合わせを、DRR画像20およびX線TV画像14を用いて行う。また評価値として、相互情報量を用いて評価してもよい。推定方法では、共役勾配法やアニーリングなど一般的に用いられている最適化手法を用いる。または、特徴量を画像の画素値で行うのではなく、3次元DCTにおけるボリュームデータ(CTデータ12)をそのままレイキャスティングの積分計算をおこない、DRR画像20と異なる透過特徴空間を生成する。そしてX線TV画像14により得られる画像をDCT変換(離散コサイン変換)し、その特徴量で最適パラメータ推定手段31を行う手法でもよい。これにより、雑音に強いパラメータ推定が可能になり、計算コストを抑えることも可能になる。また、ずれ量推定を複数のフィルタを用いて行ってもよい。この処理は最適パラメータ推定装置9で行われる。
【0042】
また、図示していないが、位置決め出力で、移動量推定手段34により得られる3次元の並進・回転パラメータの移動量(ずれ量)を放射線照射条件に反映して、DRR画像20を再生成し、同じ評価を繰り返す。最終的に任意に設定する閾値よりも小さくなるまでコンピュータ上でずれ量を算出し処理を終了する。得られるずれ量を反映したDRR画像20とX線TV画像14をディスプレイ装置5に出力し、ずれ量を治療台4に反映させる。この処理は患者位置決め画像処理装置3で行われる。
【0043】
以上の処理を行うことにより、3次元的位置ずれ量を効率的に推定できる。
【0044】
実施の形態2.
本実施形態では、実施の形態1の図6の処理フローにおいて、データを圧縮してずれ量を算出する。この処理は、CTデータ12の3次元的特徴を損なわないでデータの圧縮をする。そしてこの圧縮したデータを用いて位置決めを行う。この3次元的特徴を損なわない圧縮方法は、3次元特徴解析手段30を用いる。
【0045】
これは、特許文献4のように、図7に示すような2次元画像の処理を、図8に示すように、3次元ボリュームデータに拡張して行う。まず、全体のCTデータ12をブロック分割しておき、分割領域を圧縮する前と後での領域である高解像度ボリュームデータ39、低解像度ボリュームデータ40を用いて、3次元的特徴を損なわないように圧縮する。または、CTデータ12の3次元特徴解析処理30を行わないで圧縮してもよい。
【0046】
ここでの圧縮率は、圧縮する前(高解像度ボリュームデータ39)と後(低解像度ボリュームデータ40)を、高解像度と低解像度のボクセル数が異なるので、確率モデルを用いる方法(相互情報量)、単純に特徴量を平均する方法などを用いて評価する。
【0047】
そして、あらかじめ設定していた閾値を用いてデータの圧縮率を決定する。ここで、予め任意に治療時にユーザにより圧縮率を指定してもよい。この解析によりCTデータ12の圧縮する前と後での三次元データの特徴を保存する効果がある。3次元特徴解析に用いるフィルタ処理の選択により、データ圧縮するときの任意の特徴、たとえば、骨や腫瘍部位などが損なわないように特徴量を選択することが可能となる。
【0048】
ここで、図7は、画像を階層化してデータを圧縮することを模式的に表している。つまり、図7は、高解像度画像37を低解像度画像38に圧縮していることを示している。同様に、図8は、高解像度ボリュームデータ39を低解像度ボリュームデータ40に圧縮していることを示している。ここで得られた圧縮率を基に、近傍のボクセルごとに、データの階層化を行う。この処理を3次元DCT変換により周波数領域で処理・圧縮を行った後に、逆DCT変換を行って処理をしてもよい。この処理により、データの削減、雑音の影響を除去、などが可能になる。さらに、X線TV画像14をDRR画像20と同じ画像サイズになるように圧縮する。この処理は患者位置決め画像処理装置3で行われる。
【0049】
以上のデータ圧縮をすることにより、ずれ量算出の計算コストを削減することが可能となる。
【0050】
実施の形態3.
本実施形態では、実施の形態1の図6の処理フローにおいて、3次元特徴解析手段30、特徴評価処理手段26、領域限定処理手段29を行わないで、特徴評価処理手段26により得られる特徴量のみを用いて移動量推定を行う。収束した後に、面外回転のパラメータである移動量を振る。
【0051】
パラメータの振り方は以下の方法である。ここでの生成法はランダム(メルセデスツイスタ等)にパラメータを振る。または、面外の回転軸に対して、パラメータの振り幅を(+5°〜−5°)など任意の刻み幅で変化させパラメータを振る。ここでの振り幅の限界値は治療台が面外回転に対応する稼動の最大値である。または、X線TV画像に映る対象部位が移動する想定される範囲内に対応する面外回転のパラメータに設定する。刻み幅は、画像の解像度により決定する。つまり得られるX線TV画像のピクセル間の幅が推定する移動量の限界値であるため、それに対応した精度でステップ幅を決める。または、パラメータ推定で用いられる、共役勾配法でのステップ幅の値をそのまま用いてもよい。または、面外回転のパラメータを任意に変化させる事により、動かす前のDRR画像(または既知の座標系でとられたX線TV画像)と面外回転させたDRR画像やX線TV画像との画像の相関(相互相関・相互情報量)をとり誤差の曲線をプロットする。そのプロットした曲線が鋭角になるような2次元特徴フィルタの評価を行う。例えば評価方法は、曲線が極小解が一つであるような変化を示すフィルタを用いる。または曲線の変化量(1次微分や2次微分)により変化するフィルタを選択する。ここで問題なのは、曲線をプロットする間隔により曲線の評価に大きく異なるため、ランダムで刻み幅を設定するかまたは、画像の解像度を考慮して決定する。
【0052】
そして、移動推定パラメータとして、画像間で濃度勾配ベースのフロー検出および隣接角度要素間を評価する。例えば、勾配法などで評価を行い最適なパラメータを推定する。この処理は、移動量の推定後に、面外回転の評価を行い実際の一致度を評価して行うことである。
【0053】
実施の形態4.
本実施形態では、実施の形態3に係る手法を以下のように拡張している。まず実施の形態1の処理フローの移動推定手段34において以下の処理を行う。移動推定における収束過程で、特徴評価処理手段26で得られた特徴点や領域が存在するかなどを毎回評価する。ここでの評価方法は、例えば、トラッキングなどを行い、特徴点や特徴領域が面外回転で消失するかなどを評価とする。または、毎回2次元解析手段33や特徴量解析手段26を行い、全体の特徴量の数を評価とする。そして、注目している特徴点や領域(アイソセンタの付近の特徴領域とアイソセンタより遠い特徴領域)が収束過程で消失したところで、以下の処理を行う。ここでトラッキングは一般的に知られている、KLTや確率モデルを用いたCondensationなどである。
【0054】
移動推定パラメータとして、画像間で濃度勾配ベースのフロー検出および隣接角度要素間を評価することにより、面外回転のパラメータを振る。または、アニーリングのように、移動推定パラメータとして、面外回転のパラメータを振る。そして、その評価に関して、消失しなかった特徴領域で相関値を求め、面外回転で振ったパラメータ値を移動量推定に反映する。または、消失しなかった特徴領域は、並進・回転の座標系の原点から遠いもので評価する。つまり、並進・回転座標系の原点から遠い特徴領域よりも原点に近い領域の方が、面外回転に大きく影響する。そこで、並進・回転座標系の原点から遠い特徴領域を用いて評価する。または、並進・回転座標系の原点から遠い特徴領域から近い領域にかけて重み付けして評価しても良い。この処理により、面外回転に強い推定を可能とする。
【0055】
実施の形態5.
本実施形態では、実施の形態1〜3でDRR画像20を生成する際、任意のCTデータ12の輝度値を用いてDRR画像20を作る。一般に、レイキャスティングアルゴリズムを用いるときCT値は、−1000〜1000の値である。しかし、実際の骨などのCT値は400前後である。そこで、DRR画像を生成するときは、所定範囲の輝度値を有するCTデータだけに限定して処理する。その結果、例えば、DRRがCT値400前後の値、例えば、390〜410の輝度値を有するCTデータだけに限定することによって、骨などが強調された画像が得られる。これは、CT値が−1000〜1000の全体で作られたDRRに対してエッジフィルタで処理した結果のようなものに相当する。この処理により、2次元解析手段33で行われるエッジ処理と同じ効果が得られる。
【0056】
実施の形態6.
本実施形態では、実施の形態2のように3次元ボリュームデータの解像度を変えて移動量を推定するのではなく、以下の処理を段階的に行う。
【0057】
実施の形態4の限定特徴領域を、並進・回転の座標系の原点から遠いもので最初は評価する。そして、徐々に原点近い領域のみで評価を行う。または、最初は原点から遠い領域だけに注目し、徐々に全体の限定領域を用いて評価を行う。これにより計算量を削減することが可能になるとともに、局所解に陥りにくくなるため、位置決め精度が向上する。また、低解像度のデータを生成する必要がなくなるため、計算量を低減できる。
【0058】
実施の形態7.
本実施形態では、実施の形態1に係る手法と実施の形態2に係る手法の両方を組み合わせて実施している。つまり圧縮した低解像度のデータで大まかに位置決めを行い、解像度を上げることにより、詳細にずれ量推定を行う。これは、ずれ量推定する過程において、局所解に陥りにくくするとともに、位置決め精度が向上する効果がある。
【0059】
実施の形態8.
本実施形態では、図13の処理フロー図に示すように、実施の形態1における特徴評価処理手段26と領域限定処理手段29との間に特徴安定評価手段50を追加している。この特徴安定評価手段50による処理は、特徴評価処理手段26においてCTデータ12からDRR20を写像した際に特徴点の保存性の課題を解決するものである。例えば、図11のように、ある視点方向に沿ってDRR47にレイキャスティングアルゴリズムで写像した際に、3次元特徴解析より得られた3次元特徴点45,49がその視点方向で重複していると、2次元特徴点46は重複した特徴点として保存される。一方、DRR48を生成したときの視点19aであれば、良い2次元特徴点51を含むDRR48が得られる。
【0060】
なお、図11で示した関係は簡易化して示しているが、実際はレイキャスティングにより3次元データを2次元データに写像するため複雑な処理となる。この問題を解決する手段が特徴安定評価手段50である。ここで処理の流れを説明するために簡易的にレイキャスティングアルゴリズムを以下に定式化する。式(1)のI(x,y)は、DRR20の座標軸(x,y)の画素値を表す。同様に、R(X,Y,Z)はCTデータ値12やCTデータ値12の間で補間されて得られる座標(X,Y,Z)のCT値である。従って、視点19の方向にあるCTデータ値の加算によりI(x,y)が定義されることを式(1)が示している。ただし、αは透過率を表している。
【0061】
【数1】
【0062】
ここで、式(1)で得られるI(x,y)について、式(1)の右辺の加算項の割合を評価する。例えば、図11のDRR47のR値の例を図12に示す。図12中の横軸が視点からの距離である。縦軸が式(1)中のRの値を正規化した値になっている。従って、式(1)の右辺の加算項が横軸の要素になっている。この処理はヒストグラムや確率モデルで表現したのと同じことであり、確率モデルやヒストグラムで表現しても良い。そして評価では、例えば、図12中の特徴点45の正規化した割合が閾値以上(例えば、80%以上)であればI(x,y)を算出する際に大きな割合を占めていることを示している。このような処理を行う事により特徴点の取捨選択を行い、CTデータ(3次元データ)から2次元のDRRに写像する際の特徴点の安定化をする。
【0063】
ただし、この評価だけでは微小の視点変換によりI(x,y)値が大きく変化する可能性がある。そこで、以下の条件式を追加したり組み合わせたりする。まず、特徴点45を中心に視点変換を行う。これは、図11のDRR47からDRR48への視点変換である。この変換は極端であるが、微小の視点変換に対して特徴点46の画素値と特徴点51の画素値が変化しないという条件を設けることにより、視点変換に関しても3次元の特徴点45が保存されるような条件の特徴点を抽出する。この処理はトラッキングで行われている、オプティカルフローと同じ考え方である。この画素値の変化が小さいという評価方法とは別に確率モデルで表現をしても良い。例えば、図12を確率密度として定義し、微小に視点変換を行った分布との相互情報量により評価を行う方法である。これは、相互情報量が閾値以上であれば、視点変化に対しても微小であり、図12のような確率分布の変化は小さく、特徴点45が保存される。または、3次元特徴解析手段30で得られた特徴点に対して、3次元的にガウス分布をそれぞれの特徴点を中心として付加する。その空間において視点変換を行い、図12のような視点位置の混合ガウス値の確率密度分布を生成する。その確率密度上で評価を行ってもよい。または、2次元ヘッセ行列と3次元ヘッセ行列の関係を用いて、DRR47とDRR46のヘッセ行列をそれぞれ求めて、その固有値の変化を評価する事により、安定的な特徴点を選択してもよい。
【0064】
さらに、3次元特徴解析手段30の特徴点の間隔が広いほど、位置決めにおいてよい精度が得られる傾向にある。従って、3次元特徴解析手段30で得られた特徴点の距離の間隔が大きいほど良い特徴点である。そこで、特徴点の距離の分散を求めて評価に用いる。この処理は2次元であるDRRに落としこんだ時の距離の関係なども評価する。
【0065】
以上の評価方法の組み合わせにより、安定的な特徴点の抽出を可能とする。
【0066】
実施の形態9
本実施形態では、実施の形態8で行った処理においてディスプレイ装置5により視覚的なサポートを行う。例えば、図12で得られる結果を、DRR47やDRR48の特徴点51,46上での点滅や色の濃度などにより表示する。視点変化により3次元解析手段30から得られた特徴が、特徴安定化手段50により視覚的に位置決めするための特徴点を表示ができる。その結果、例えば、実施の形態8でのそれぞれの閾値を調節することによって、割合を濃度や点滅速度などにより表示し、位置決めに適した特徴点が視覚的に容易に理解できる。また、はずれ値のように患者が存在しない領域など、位置決めに適さない特徴点などの削除を自動的に行う。その結果、特徴安定評価手段50で抽出された特徴点が位置決めに適した特徴の選択が可能になる。
【0067】
実施の形態10
本実施形態では、実施の形態9における画像表示において、解剖学的情報を位置決めに反映する。例えば、位置決めの部位(例えば頭頚部、肺、肝臓、前立腺)により解剖的情報が予め分かっていることが多い。これは、年齢・性別などの統計情報が予め分かっているためである。そこで、解剖学的な情報を特徴点抽出に反映し、位置決めに適した特徴点の選択を行う。例えば、医者やX線技師などの画像診断により、ある部位の一部分を注目して位置決めを行うことがある。その領域情報を解析手段により予め解析し情報を取得する。この結果、医師が必要とする領域での位置合わせなどが可能となる。
【0068】
実施の形態11
実施の形態1〜10において、X線TV画像14を図4のように2方向または多方向の視点より位置合わせを行うことがある。そこで、他方向の軸と依存関係が少ない軸に対して以下の処理を、図4のように2方向の処理を例で示す。X軸方向とY軸方向の直交2方向にX線TV画像を得られるとすると、面外の軸であるZ軸の並進回転についての位置決めが難しい。そこで、面外回転の軸に対して以下の評価を行う。ここで、x軸,y軸,z軸の回転角をθ,ψ,φとする。そして、3次元特徴解析手段30により得られた特徴点において、z軸の並進・回転を微小区間で動かす。その結果、DRR47の特徴点46がDRR48の特徴点51に対して動くとする。この画像上での移動量が大きくなるような特徴点を選択することにより、安定した特徴点を抽出する。その結果、面外回転に強い特徴点を抽出できる。
【0069】
実施の形態12
本実施形態では、実施の形態8,9により得られた特徴点を用いて移動量推定手段34を行わずに、以下の処理を行う。実施の形態8で得られる最も安定する6点以上の特徴点を用いて位置決めを行う。例えば、図14のように、X線TV画像14とDRR21との間でSHIFTなどによる特徴点解析を行う。その結果、一致した特徴点51と特徴点46が得られる。ここで、画像は6自由度のアフィン変換で表現できるので、6点以上であれば、一意にX線TV14とDRR21との間の患者位置の差分が得られる。しかし、このX線TV画像14とDRR21の間では3次元情報が含まれていない。そこで、予め実施の形態8により特徴点がDRR21とCTデータ12の間の安定性のある特徴点を複数求める。この結果、得られる特徴点46は特徴点45の3次元座の情報を持っていることと等しい。この特徴点45が、先ほど得られたX線TV画像14とDRR21で一致した特徴点を用いて6自由度の患者のずれ量を算出する。以上の処理により、一意に位置推定が可能となり、移動量推定手段34で行われている最適計算を行わなくてもよい。その結果、計算時間の短縮になる。また、この移動量推定手段34と組み合わせにより位置決めを行ってもよい。その結果、高精度の位置決め推定が可能となる。
【0070】
実施の形態13
実施の形態12で用いた特徴点45と特徴点46における信頼性(図12)の割合を、統計処理を行い、データとして保存する。例えば、ある部位での患者位置合わせを行った際に、実施の形態8,9で得られた特徴点の領域と特徴点の保存性の割合をデータとして保存する。この処理を複数の患者において統計的処理を行う。この処理により、患者位置合わせに適した特徴点や領域、位置決め精度などを事前情報として保存され、後の患者位置あわせに反映する。例えば、治療計画のデータに位置決め情報として付加し、過去の履歴などから特徴点や領域の関係を確率分布モデルとして、表示や位置決めに用いる特徴点の過去の履歴の利用割合や位置決め精度の結果を点滅速度や濃度で表示する。さらに、自動位置決めの特徴点抽出の評価に用いる。この処理により、統計的に実施の形態8,9で得られる特徴点の信頼性を評価でき、特定の患者だけでなく一般モデルの特徴点が得られ、位置決めの精度の信頼性が得られる。
【0071】
以上説明した各実施形態において、GPU(Graphic Processing Unit)を用いて並列計算を行うことが好ましく、これにより高速処理が図られる。
【符号の説明】
【0072】
1 断層像撮影装置、 2 X線TV画像撮影装置、
3 患者位置決め画像処理装置、 4 治療台、 5 ディスプレイ装置、
6 治療計画時データ前処理装置、 7 透過画像生成装置、
8 治療時データ前処理装置、 9 最適パラメータ推定装置、 10 CT撮影台、
11 患者、 12 CTデータ、 13 X線管、14 X線TV画像、
15 X線、 16 治療室座標系、
17 X線管と放射線焦点距離(アイソセンタ)の距離、
18 X線管とX線TV画像撮影装置との距離、 19 視点、
20 DRR画像(透視画像)、 21 透過画像面(DRR画像生成面)、
22 光線、 23 DRR画像生成の視点と対象物の距離、
24 DRR画像生成座標系、 25 X線TV処理結果、
26 特徴評価処理手段、 27 DRR処理結果画像、
28 3次元特徴解析を施したDRR画像、 29 領域限定手段、
30 3次元特徴解析手段、 31 3次元特徴解析処理データ、
32 解析処理により得られるDRR画像、
33 2次元解析手段、 34 移動量推定手段、
37 高解度像画像、 38 低解像度画像、
39 高像度ボリュームデータ、 40 低解像度ボリュームデータ、
42 限定領域、 43 限定領域のみを用いて生成されるDRR画像、
44 限定領域43を光線22が通過するボリューム領域、
45 3次元特徴点、 46 DRR上の特徴点画像、 47 DRR画像、
48 DRR画像、 49 3次元特徴点、 50 特徴安定評価手段、
51 DRR上の特徴点画像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量が存在する領域を選択する領域限定処理と、選択した領域に関して第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行することを特徴とする患者位置決めシステム。
【請求項2】
画像処理装置は、取得した3次元CTデータにデータ圧縮を施して、低解像度の3次元CTデータに変換することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項3】
患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量に基づいて第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理と、移動量推定処理後、面外回転のパラメータを振って最適なパラメータを推定する処理とを実行することを特徴とする患者位置決めシステム。
【請求項4】
画像処理装置は、移動量推定処理後、面外回転のパラメータを振って最適なパラメータを推定する処理を実行することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項5】
画像処理装置は、面外回転のパラメータを振って最適なパラメータを推定する際、特徴点の消失の有無を判定するトラッキングを行うことを特徴とする請求項4記載の患者位置決めシステム。
【請求項6】
画像処理装置は、移動量推定処理の際、X線TV画像取得時のアイソセンタから遠い領域から近い領域の順序で移動量を推定することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項7】
2次元解析処理の際、所定範囲の輝度値を有するCTデータだけに限定して処理することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項8】
画像処理装置は、3次元CTデータの特徴点が2次元DRR画像に保存される可能性を表す保存性を評価して投影画像を生成し、保存性がある特徴点や領域の投影画像とX線TV画像とで特徴点が一致する点を抽出し、その特徴点を用いて3次元の位置決めを行うことを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項9】
画像処理装置は、保存性の評価結果を2次元DRR画像上に表示することを特徴とする請求項8記載の患者位置決めシステム。
【請求項10】
画像処理装置は、解剖学的情報を利用して特徴点を抽出することを特徴とする請求項9記載の患者位置決めシステム。
【請求項11】
画像処理装置は、座標の移動に伴って2次元DRR画像上で大きく変化する特徴点を抽出することを特徴とする請求項8記載の患者位置決めシステム。
【請求項12】
患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、3次元CTデータの特徴点が2次元DRR画像に保存される可能性を表す保存性を評価する特徴安定評価処理と、保存性のある複数の特徴点を用いて第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行することを特徴とする患者位置決めシステム。
【請求項13】
画像処理装置は、患者位置決め結果に統計処理を施して、治療計画データとして保存することを特徴とする請求項8または12記載の患者位置決めシステム。
【請求項1】
患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量が存在する領域を選択する領域限定処理と、選択した領域に関して第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行することを特徴とする患者位置決めシステム。
【請求項2】
画像処理装置は、取得した3次元CTデータにデータ圧縮を施して、低解像度の3次元CTデータに変換することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項3】
患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、評価した特徴量に基づいて第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理と、移動量推定処理後、面外回転のパラメータを振って最適なパラメータを推定する処理とを実行することを特徴とする患者位置決めシステム。
【請求項4】
画像処理装置は、移動量推定処理後、面外回転のパラメータを振って最適なパラメータを推定する処理を実行することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項5】
画像処理装置は、面外回転のパラメータを振って最適なパラメータを推定する際、特徴点の消失の有無を判定するトラッキングを行うことを特徴とする請求項4記載の患者位置決めシステム。
【請求項6】
画像処理装置は、移動量推定処理の際、X線TV画像取得時のアイソセンタから遠い領域から近い領域の順序で移動量を推定することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項7】
2次元解析処理の際、所定範囲の輝度値を有するCTデータだけに限定して処理することを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項8】
画像処理装置は、3次元CTデータの特徴点が2次元DRR画像に保存される可能性を表す保存性を評価して投影画像を生成し、保存性がある特徴点や領域の投影画像とX線TV画像とで特徴点が一致する点を抽出し、その特徴点を用いて3次元の位置決めを行うことを特徴とする請求項1記載の患者位置決めシステム。
【請求項9】
画像処理装置は、保存性の評価結果を2次元DRR画像上に表示することを特徴とする請求項8記載の患者位置決めシステム。
【請求項10】
画像処理装置は、解剖学的情報を利用して特徴点を抽出することを特徴とする請求項9記載の患者位置決めシステム。
【請求項11】
画像処理装置は、座標の移動に伴って2次元DRR画像上で大きく変化する特徴点を抽出することを特徴とする請求項8記載の患者位置決めシステム。
【請求項12】
患部の3次元CTデータを取得するためのCTデータ取得装置と、
患部のX線TV画像を取得するためのX線TV画像取得装置と、
取得したCTデータに基づいて2次元DRR画像を生成するとともに、生成したDRR画像および取得したX線TV画像に基づいてCTデータ取得時の第1患部位置とX線TV画像取得時の第2患部位置との間のずれ量を算出する画像処理装置とを備え、
画像処理装置は、3次元CTデータに関して3次元的な特徴量を抽出する3次元解析処理と、DRR画像およびX線TV画像に関して2次元的な特徴量を抽出する2次元解析処理と、抽出した特徴量を評価する特徴評価処理と、3次元CTデータの特徴点が2次元DRR画像に保存される可能性を表す保存性を評価する特徴安定評価処理と、保存性のある複数の特徴点を用いて第1患部位置と第2患部位置との間のずれ量を推定する移動量推定処理とを実行することを特徴とする患者位置決めシステム。
【請求項13】
画像処理装置は、患者位置決め結果に統計処理を施して、治療計画データとして保存することを特徴とする請求項8または12記載の患者位置決めシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−246883(P2010−246883A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185607(P2009−185607)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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