説明

患者位置表示システム

【課題】医用送信機が表示装置と通信不能になっても、患者の位置の手がかりが得られる患者位置表示システムを提供する。
【解決手段】患者位置表示システム10は、複数の位置情報発信機20と、医用送信機30と、アンテナ40と、表示装置50とを有する。位置情報発信機20は、各所の位置を示す位置情報を発信する。医用送信機30は、患者に装着されて当該患者の生体信号を検出して送信すると共に、位置情報発信機20から位置情報を受信可能であって当該位置情報を受信した場合には当該位置情報も送信する。アンテナ40は、医用送信機30から位置情報および生体情報を受信する。表示装置50は、アンテナ40に受信された位置情報および生体情報に基づいて患者の位置および状態を表示可能である。また、表示装置50は、アンテナにおいて位置情報を受信しなくなっても、最後に受信した位置情報に基づいて一定時間前記患者の位置を表示し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の位置を表示する患者位置表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院内において患者の状態をモニタする種々の技術が知られている。その一つとして、患者に医用送信機を携帯させ、当該医用送信機によって患者の状態を測定して、遠隔の表示装置に送信する技術がある。表示装置には、患者の状態が表示される。
【0003】
患者は医用送信機を携帯しつつ病院内を移動できる。患者の位置を把握するために、医用送信機から遠隔の表示装置に位置情報を送信して、表示装置に患者の位置も表示する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−248816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の技術では、医用送信機が表示装置と通信できる間のみ、患者の位置が表示される。したがって、たとえば、患者が医用送信機を持って表示装置との通信可能エリア外に出てしまった場合、患者の位置がすぐに表示されなくなってしまう。また、医用送信機の電池が消費して表示装置と通信不能となった場合も、患者の位置がわからなくなってしまう。患者の位置が全く表示されないので、患者の位置の手がかりもない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、医用送信機が表示装置と通信不能になっても、患者の位置の手がかりが得られる患者位置表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
患者位置表示システムは、複数の位置情報発信機と、医用送信機と、アンテナと、表示装置とを有する。位置情報発信機は、各所の位置を示す位置情報を発信する。医用送信機は、患者に装着されて当該患者の生体信号を検出して送信すると共に、位置情報発信機から位置情報を受信可能であって当該位置情報を受信した場合には当該位置情報も送信する。アンテナは、医用送信機から位置情報および生体情報を受信する。表示装置は、アンテナに受信された位置情報および生体情報に基づいて患者の位置および状態を表示可能である。また、表示装置は、アンテナにおいて位置情報を受信しなくなっても、最後に受信した位置情報に基づいて一定時間前記患者の位置を表示し続ける。
【発明の効果】
【0008】
一定時間患者の位置を表示し続ける。したがって、医用送信機の電池が切れたり、また、患者が位置情報発信機の通信範囲外に出て通信不能となったりしても、最新の患者の位置を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】患者位置表示システムの概略構成を示す図である。
【図2】位置情報発信機のエリアモードおよびゲートモード時の発信タイミングを示す図である。
【図3】表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】患者が移動する様子を示す図である。
【図5】第1表示形態に係る表示例を示す図である。
【図6】表示装置の動作を示す図である。
【図7】図6に示す動作と並行して実行される表示装置の動作を示す図である。
【図8】患者の様子を示す図である。
【図9】第2表示形態に係る表示例を示す図である。
【図10】患者の様子を示す図である。
【図11】第2表示形態に係る表示例を示す図である。
【図12】警告の表示例を示す図である。
【図13】第3表示形態に係る表示例を示す図である。
【図14】第4表示形態に係る医用送信機の装着様子および地磁気の作用を示す図である。
【図15】地磁気センサによる3軸の磁気強度の検出結果を示す図である。
【図16】第4表示形態に係る表示例を示す図である。
【図17】第4表示形態に係る表示例を示す図である。
【図18】第5表示形態に係る表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は患者位置表示システムの概略構成を示す図、図2は位置情報発信機のエリアモードおよびゲートモード時の発信タイミングを示す図、図3は表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0012】
患者位置表示システム10は、たとえば、病院に設けられる。以下では、病院に患者位置表示システム10が設けられる場合について説明する。
【0013】
図1に示すように、患者位置表示システム10は、位置情報発信機20(20a、20b)と、医用送信機30と、アンテナ40と、表示装置50とを有する。各構成について説明する。
【0014】
(位置情報発信機20)
位置情報発信機20は、病院内の各所、たとえば、病室、トイレ、談話室、食堂、エレベータ、非常口、それらの出入り口、廊下などに設置される。位置情報発信機20は、各所に固有のIDが設定され、当該IDを位置情報として送信する。
【0015】
また、位置情報発信機20は、病室、トイレ、談話室などの比較的広い範囲をカバーするエリアモード、または、出入口、廊下など比較的狭い範囲をカバーするゲートモードに設定(切り換え)可能である。図中では、エリアモードに設定された位置情報発信機に参照番号20aを付し、ゲートモードに設定された位置情報発信機に参照番号20bを付している。
【0016】
エリアモードに設定された位置情報発信機20aは、比較的長い間隔(休止時間)をおいて位置情報を発信する。このため、位置情報発信機20aは、患者が長い時間留まる場所に設置される。たとえば、エリアモードの場合、位置情報発信機20aは、10〜13秒の範囲でランダムな間隔をおいて位置情報を発信する。
【0017】
ゲートモードに設定された位置情報発信機20bは、比較的短い間隔(休止時間)をおいて位置情報を発信する。このため、位置情報発信機20bは、患者がすぐに通り過ぎてしまう場所に設置される。たとえば、位置情報発信機20bは、0.1〜0.5秒の範囲でランダムな間隔をおいて位置情報を発信する。通路や出入口などは、特に患者が素早く通過してしまう場合があるので、好ましくは、2つ以上の位置情報発信機20bが一緒に設置される。これによって、位置情報発信機20b同士で、位置情報の発信タイミングを補い合える。発信間隔がランダムに設定されているので、同時に位置情報発信機20bが発信を始めても、図2のゲートモード発信(1)、(2)に示すように発信タイミングは重ならない。
【0018】
上記のように、ゲートモードとエリアモードでは、信号を送信しない休止時間が異なる。休止時間は上記の例に限定されない。ゲートモードの場合、休止時間は基準時間以下の範囲でランダムに設定され、エリアモードの場合も同様に、休止時間は基準時間以上の範囲でランダムに設定されることができる。基準時間は設置する環境に合わせて、任意に設定できる。たとえば、基準時間は5秒である。
【0019】
(医用送信機30)
医用送信機30は、患者が携帯可能な装置であり、患者に装着されて患者の生体信号を検出し送信する。詳細には、医用送信機30は、動脈血酸素飽和度のトランスデューサや複数の心電図電極(不図示)などの各種の生体情報センサを有し、生体信号として患者の心電図信号、心拍数、体温、動脈血酸素飽和度、呼吸数等を検出する。
【0020】
医用送信機30は、さらに、位置情報発信機20から送信された位置情報を受信可能である。医用送信機30は、位置情報を受信した場合、生体信号に加えて位置情報も送信する。
【0021】
なお、図面では、明確のため、医用送信機30は、患者が手に保持しているように示されている。しかし、医用送信機30は、患者が携帯し易いように、ベルト等の身体に固定される手段に取り付けられてもよい。たとえば、ベルトには、医用送信機30を保持するケースが装着されており、ケース中に医用送信機30が固定される。これにより、患者は、両手が塞がらず、快適に過ごせる。
【0022】
(アンテナ40)
アンテナ40は、医用送信機30から送信された生体情報および位置情報を受信する。アンテナ40は、図1に概念的に示されるように、位置情報発信機20により位置情報が送信可能な範囲(図中斜線で示す範囲)を包含する範囲をカバーする。医用送信機30は、位置情報発信機20の送信範囲内で位置情報を受信し、生体情報と共に送信する。アンテナ40がカバーする領域の方が広いので、アンテナ40は、医用送信機30から送信された位置情報を受信できる。
【0023】
複数箇所に設置されたアンテナ40は、集合器60によって収束される。アンテナ40によって受信された情報を集合器60に集められる。集合器60は、さらに増幅器70に接続されている。増幅器70は、アンテナ40によって受信した信号を増幅して、表示装置50に送信する。
【0024】
(表示装置50)
表示装置50は、アンテナ40に受信された位置情報および生体情報に基づいて、患者の位置および状態を表示可能である。表示装置50は、制御部52、記憶部54および表示部56を有する。
【0025】
表示装置50は、上述のように、集合器60および増幅器70を介して位置情報および生体情報を受信する。位置情報および生体情報は、制御部52に受信される。制御部52は、受信した位置情報および生体情報を時系列的に記憶部54に記憶させる。さらに、制御部52は、患者の位置および状態を可視化できるように演算して、表示部56に表示させる。
【0026】
表示装置50による患者の位置および状態の表示方法は、後述のように、様々な形態が考えられる。以下に、第1〜第5表示形態として説明する。
【0027】
(第1表示形態)
図4は患者が移動する様子を示す図、図5は第1表示形態に係る表示例を示す図、図6は表示装置の動作を示す図、図7は図6に示す動作と並行して実行される表示装置の動作を示す図である。
【0028】
第1表示形態では、表示装置50は、アンテナ40において位置情報を受信しなくなっても、最後に受信した位置情報に基づいて一定時間患者の位置を表示し続ける。
【0029】
図5に示すように、患者(Aさん)がゲート100を通過したとする。ゲート100には、ゲート100の位置を示すIDを送信する位置情報発信機20bが設置されている。ゲート100には、アンテナ40も設置されている。このときの表示装置50の動作は図5に示す通りである。表示装置50の動作は、基本的には、制御部52によって実行される。
【0030】
まず、表示装置50は、患者がもつ医用送信機30から位置情報を受信したかどうかを判断する(ステップS1)。患者がちょうどゲート100の下を通過したとき、患者の医用送信機30は位置情報発信機20bの送信範囲に入り、位置情報を受信する。医用送信機30は、受信した位置情報を検出した患者の生体情報と共にアンテナ40に送信する。
【0031】
表示装置50は、アンテナ40を介して位置情報を受信した場合(ステップS1:YES)、最新の位置情報を受信してからの時間のカウントを開始する(ステップS2)。表示装置50は、受信した位置情報に基づいて、表示部56に患者の位置を表示する(ステップS3)。たとえば、図5に示すように、画面の右に患者毎に位置が表示される。表示装置50は、ステップS1の処理に戻って、再度、位置情報が受信されたか確認する。
【0032】
患者が位置情報発信機20bの送信範囲を通り過ぎて、表示装置50が位置情報を受信できない場合(ステップS1:NO)、表示装置50は、最新の位置情報を受信してから一定時間経過したか判断する(ステップS4)。ここで、一定時間とは、患者の医用送信機30が位置信号を受信できなくなっても最後の患者の位置を表示する時間である。この一定時間は、任意に設定可能である。たとえば、30秒に設定される。
【0033】
一定時間を経過していない場合(ステップS4:NO)、ステップS3に進んで、表示装置50は、最後に受信された位置情報に基づく患者の位置を引き続き表示部56に表示する。現在位置情報が受信されて表示されている位置との区別のため、図5の「西ゲート」のように、位置表示の周りが囲まれたり、あるいは西ゲートが点滅して表示されてもよい。
【0034】
一方、一定時間を経過した場合(ステップS4:YES)、患者の最新の位置はわからないので、位置を非表示とし、ステップS1の処理に戻る。
【0035】
このように、第1表示形態では、一定時間患者の位置を表示し続ける。したがって、医用送信機の電池が切れたり、また、患者が位置情報発信機の通信範囲外に出て通信不能となったりしても、患者の位置の手がかりとして最新の患者の位置を把握できる。
【0036】
なお、図6に示す動作では、位置情報が受信できなくなっても、一定時間だけは位置情報を保持して、最新の患者の位置として表示している。しかし、これに限定されるものではない。位置情報を受信できなくなった場合に、次の位置情報を受信するまでは、最後に受信した患者の位置情報に基づいて患者の最新位置を表示し続けてもよい。
【0037】
また、表示装置50は、図6に示す動作と並行して、図7に示す動作も実行する。
【0038】
表示装置50は、アンテナ40を介して位置情報を受信したか判断する(ステップS11)。位置情報を受信した場合(ステップS11:YES)、表示装置50は、位置情報を受信してからの時間のカウントを開始する(ステップS12)。ここで、一定時間とは、任意に設定される時間である。
【0039】
位置情報を受信しなくなった場合(ステップS11:NO)、表示装置50は、アンテナ受信範囲内であり位置情報を受信しなくても生体情報は受信するか判断する(ステップS13)。表示装置50は、患者が位置情報発信機20の送信範囲内にいないと、位置情報を受信することはないが、患者がアンテナ40の受信範囲内にいれば、生体情報は受信できる。
【0040】
アンテナ受信範囲内であり生体情報を受信している場合(ステップS13:YES)、少なくとも患者はアンテナ40の受信範囲におり、医用送信機30は正常に作動していることが確認できる。「生体情報」を表示し(ステップS14)、ステップS11の処理に戻る。ステップS11からステップS14に続く処理は、アンテナ受信範囲内に患者がいることを示している。
【0041】
アンテナ受信していない場合(ステップS13:NO)、表示装置50は、医用送信機30の電源が切れたこと、たとえば、「電波切れ」または「電池切れによる電波切れ」と表示部56に表示する(ステップS15)。ステップS11からステップS15に続く処理は、例えばアンテナ受信範囲内に患者はいるが、送信機の電池消耗や故障などにより送信機の電波が発信を停止し受信できないことを示している。
【0042】
カウント開始後(ステップS12)、アンテナ受信範囲内であり生体情報を受信したか判断する(ステップS16)。生体情報を受信した場合(ステップS16:YES)、アンテナ受信範囲内にいることがわかり、カウント開始から一定時間経過したかを判断する(ステップS17)。一定時間経過していない場合(ステップS17:NO)、表示装置50は、「患者の位置」と「生体情報」を表示する(ステップS18)。そして、ステップS16の処理に戻る。ステップS11からステップS17に続く処理は、患者がゲートを通過したがアンテナ受信範囲内にいることになり、例えば、受信範囲外の場所からゲートを通過し、アンテナ受信範囲内に戻ってきたことを示している。
【0043】
一定時間経過した場合(ステップS17:YES)、表示装置50は、「生体情報」を表示する(ステップS14)。そして、ステップS11に戻る。ステップS11からステップS17を経由しステップS14に至った処理は、患者がゲートを通過したがアンテナ受信範囲内にいることになり、例えば、受信範囲外の場所からゲートを通過し、アンテナ受信範囲内に戻ってきて一定時間以上経過したことを示している。
【0044】
また、カウント開始後(ステップS12)、生体情報を受信できない場合(ステップS16:NO)、患者がアンテナ受信範囲外であることがわかり、表示装置50は、「電波切れ」と表示すると共に、「患者の位置」の表示を保持する(ステップ19)。そしてステップS16に戻る。ステップS11からステップS19に続く処理は、例えば、患者がゲートを通過して、アンテナ受信範囲外の場所に出て行ったことを示している。
【0045】
(第2表示形態)
図8は患者の様子を示す図、図9は第2表示形態に係る表示例を示す図、図10は患者の様子を示す図、図11は第2表示形態に係る表示例を示す図、図12は警告の表示例を示す図である。
【0046】
第2表示形態では、表示装置50は、患者の位置について表示または非表示を選択可能である。ただし、患者の状態が異常である場合には、位置の表示または非表示の選択に関わらず患者の位置を表示する。
【0047】
表示装置50において、キーボード、マウスおよびタッチパネルなどの入力装置を介して、任意の場所について表示または非表示を設定できる。たとえば、患者がトイレにいても、非表示にすることを選択できる。
【0048】
この場合、図8に示すように、Cさんがトイレにいるとする。すると、図9に点線で囲んで示すように、Cさんの居場所を示す欄は非表示となる。このように、任意の場所については、患者の位置情報を受信している場合でもあえて表示装置50に位置を表示しないことを選択できる。これによって、患者のプライバシーを確保できる。
【0049】
ただし、図10に示すように、Cさんに異常が生じた場合、図11に示すように、表示装置50の表示部56にはCさんの居場所(2Fトイレ)が表示される。Cさんの状態の異常は、医用送信機30による生体情報の検出によって発見される。医用送信機30は、上述のように、患者の生体情報を常にモニタリングし、アンテナ40を介して表示装置50に送信している。したがって、表示装置50の制御部52は、受信した生体情報に基づいて患者の異常を判断できる。表示装置50は、異常と判断した場合、表示部56の警告灯58を点灯させて、異常をさらに視覚的に明確にしてもよい。
【0050】
さらに、表示装置50は、図11に示すように、受信した生体情報に基づいて、患者の症状を表示してもよい。たとえば、心室性期外収縮である場合には、「VPC」として、表示装置50に表示される。
【0051】
その他の症状として、たとえば、図12に示すようなものがある。図12の左欄に示す症状の場合には、表示装置50には右欄に示すようなサインが表示される。
【0052】
以上のように、第2表示形態の場合、異常と判断したときに患者の位置を表示するので、患者の状態が正常な時は患者のプライバシーを確保しつつ、異常な時には患者の位置を確認して緊急対応できる。加えて、症状も表示するので、患者の居場所に駆けつける際の準備も事前に整えることができる。
【0053】
第2表示形態は、上記第1表示形態と組み合わされてもよいし、あるいは単独で患者位置表示システム10に適用されてもよい。
【0054】
(第3表示形態)
図13は第3表示形態に係る表示例を示す図である。
【0055】
第3表示形態では、表示装置50は、受信した位置情報と生体情報とを時系列に記憶部54に記憶し、記憶した位置情報および生体情報に基づいて時系列的に患者の位置および状態を表示する。
【0056】
上述のように、患者の位置情報および生体情報は、モニタリングされアンテナ40を介して表示装置50に送信される。表示装置50は、リアルタイムに患者の状態および居場所を表示部56に表示する一方で、患者の状態および居場所を時間と関連付けて時系列に保存できる。保存された時系列の情報は、必要に応じて表示部56に表示される。たとえば、患者Aさんの朝からの居場所と健康状態を見る場合、表示装置50は表示部56に図13に示されるようにAさんの情報を表示する。時系列的に患者の位置および状態を表示できるので、より詳細に患者の状態を分析できる。
【0057】
第3表示形態は、上記第1表示形態または第2表示形態と組み合わされてもよいし、あるいは単独で患者位置表示システム10に適用されてもよい。
【0058】
(第4表示形態)
図14は第4表示形態に係る医用送信機の装着様子および地磁気の作用を示す図、図15は地磁気センサによる3軸の磁気強度の検出結果を示す図、図16は第4表示形態に係る表示例を示す図、図17は第4表示形態に係る表示例を示す図である。
【0059】
第4表示形態では、医用送信機30に、地磁気センサ32および加速度センサ34を加え、患者の向きおよび移動を検出して、表示装置50に表示する。
【0060】
第4表示形態に係る医用送信機30は、方向検出センサとして、地磁気センサ32を有する。地磁気センサ32は、地磁気を検出することで、方位を測定するものであり、本実施形態では、左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)の3軸を検出する。図14では、Y方向が地磁気の方向と平行であり、X方向が地磁気に対して水平面で直交し、Z方向が地磁気に対して垂直面で直交しているとする。地磁気センサ32は、X、Y、Z方向の磁気強度を検出することで、自身が取り付けられた医用送信機30、すなわち患者がどの方向を向いているかを演算できる。
【0061】
たとえば、図15に示すように、時系列で見て、X方向の磁気強度が0になり、Y方向の磁気強度が最高点になっている時点では、地磁気の方向に患者が向いている。また、Z方向は高さを示すので、患者が平坦な床を歩いている場合は変動しない。各軸の磁気強度に基づく、地磁気センサ32の方向の演算は、周知であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0062】
なお、地磁気センサ32により、患者の向き(進行方向)を測定する場合、地磁気センサ32の姿勢は固定されている必要がある。したがって、医用送信機30は、上述したベルトのような固定手段により、地磁気センサ32の姿勢が一定となるように、患者の身体に固定されている。たとえば、ベルトに固定されたケース中に医用測定器30は保持されている。
【0063】
地磁気センサ32によって、測定された患者の向きは、患者の進行方向情報として、医用送信機30からアンテナ40に送信される。アンテナ40に送信された患者の進行方向情報は、生体情報と共に表示装置50に送信される。たとえば、図4のゲート100を患者が通る際に、患者の進行方向情報もアンテナ40を介して表示装置50に送信される。ゲート100を通る際の患者の向きが分かれば、患者が室外に外出しようとしているのか、室内に入室しようとしているのかがわかる。
【0064】
表示装置50は、表示部56に、たとえば、図16に示すように、患者の出入りを表示できる。図16では、患者Aさんが、8時15分に101号室を出て行き、9時30分に西ゲートからも出て行き、その後10時15分に西ゲートから戻って、11時00分に101号室に戻ったことが表示される。このように、第4表示形態によれば、患者がゲート100等を通過したことだけでなく、どちら向きに通過したかも把握できるので、より正確に患者の位置を追跡できる。患者に異変があっても、即座に患者の位置を特定できる。
【0065】
さらに、医用送信機30は、加速度センサ34を有している。加速度センサ34は、加速度を計測する。本表示形態4では、加速度センサ34の加速度情報(出力電圧)も、アンテナ40を介して、生体情報と共に、表示装置50に送信される。加速度情報は、たとえば、図17に示すように、時系列に表示される。図17のように、加速度センサ34の出力電圧が周期的に変動している場合、患者が移動していることがわかる。表示装置50は、出力電圧の周期を分析することによって、移動中かどうかを認識して、表示部54に表示してもよい。
【0066】
以上のように、表示装置50の表示により、患者が移動しているか、停止しているかを確認できる。したがって、生体情報に異常が見られる場合でも、継続して一定に移動していることも分かれば、患者に異常はなく、医用送信機30等の機器やその装着状態に異常があることも判別できる。
【0067】
第4表示形態は、上記第1表示形態〜第3表示形態と組み合わされてもよいし、あるいは単独で患者位置表示システム10に適用されてもよい。
【0068】
なお、上記第4表示形態では、地磁気センサ32が3軸を検出できるタイプである場合を説明した。しかし、少なくとも、患者が高さ方向以外で向いている方向さえ確認できれば、ゲートの入退出は判断できる。したがって、X、Y方向の2軸を検出できる2軸タイプの地磁気センサを使ってもよい。
【0069】
(第5表示形態)
図18は第5表示形態に係る表示例を示す図である。
【0070】
第5表示形態では、表示装置50は、アンテナ40を介して受信する位置情報に基づいて、ある特定の位置に患者が所定時間以上いるかどうかを判断する。ある特定の位置とは、たとえば、トイレや着替え室など、ある短い時間は滞在する可能性があっても、あまり長時間は滞在しないような場所である。また所定時間とは、特定の位置によっても適宜変更されるが、通常であれば、特定の位置にはいないであろう時間である。たとえば、特定の位置がトイレの場合、所定時間は20分に設定され、着替え室の場合10分に設定される。
【0071】
表示装置50は、アンテナ40を介して、特定の位置に関する位置情報を受信した場合、当該特定の位置に関する位置情報を受信し続ける時間を計測する。たとえば、表示装置50は、トイレの位置情報を受信し始めると、患者が特定の位置であるトイレにいるので、滞在時間を計測する。計測した時間が、所定時間を超過すると、たとえば、20分を超過すると、図18に示すように、表示装置50の表示部56において警告を通知する。警告は、警告灯58を点灯させたり、表示部56の各自の位置を示す部分に、「長時間」等の文字、画像を表示したりして、視覚的に通知したり、音声により通知したりできる。音声の場合、たとえば、「特定位置に長時間いる」旨のアナウンスが、表示装置50から流れる。
【0072】
このように、第5表示形態では、患者か特定の位置に所定時間以上滞在していると、警告を通知するので、患者に異常が発生して動けなくなっていても、早期に発見できる。
【0073】
第5表示形態は、上記第1表示形態〜第4表示形態と組み合わされてもよいし、あるいは単独で患者位置表示システム10に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 患者位置表示システム、
20、20a、20b 位置情報発信機、
30 医用送信機、
32 地磁気センサ、
34 加速度センサ、
40 アンテナ、
50 表示装置、
52 制御部、
54 記憶部、
56 表示部、
58 警告灯、
60 集合器、
70 増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各所の位置を示す位置情報を発信する複数の位置情報発信機と、
患者に装着されて当該患者の生体信号を検出して送信すると共に、前記位置情報発信機から前記位置情報を受信可能であって当該位置情報を受信した場合には当該位置情報も送信する医用送信機と、
前記医用送信機から前記位置情報および前記生体情報を受信するアンテナと、
前記アンテナに受信された前記位置情報および前記生体情報に基づいて前記患者の位置および状態を表示可能な表示装置と、
を有し、
前記表示装置は、前記アンテナにおいて前記位置情報を受信しなくなっても、最後に受信した位置情報に基づいて一定時間前記患者の位置を表示し続ける患者位置表示システム。
【請求項2】
各所の位置を示す位置情報を発信する複数の位置情報発信機と、
患者に装着されて当該患者の生体信号を検出して送信すると共に、前記位置情報発信機から前記位置情報を受信可能であって当該位置情報を受信した場合には当該位置情報も送信する医用送信機と、
前記医用送信機から前記位置情報および前記生体情報を受信するアンテナと、
前記アンテナに受信された前記位置情報および前記生体情報に基づいて前記患者の位置および状態を表示可能な表示装置と、
を有し、
前記表示装置は、前記患者の位置について、表示または非表示を選択可能である患者位置表示システム。
【請求項3】
前記表示装置は、前記医用送信機から送信された生体情報に基づいて患者の状態が正常かまたは異常かを判断し、正常と判断した場合には前記患者の位置を表示せず、異常と判断した場合には前記患者の位置を表示する請求項2記載の患者位置表示システム。
【請求項4】
前記位置情報発信機は、前記位置情報を発信する発信時間と発信しない休止時間とを交互に繰り返し、
前記休止時間が所定の基準時間よりも短いゲートモードと、休止時間が前記基準時間よりも長いエリアモードとに切り換え可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の患者位置表示システム。
【請求項5】
前記表示装置は、前記アンテナを介して前記位置情報を受信した後、次の位置情報を受信する前に、所定時間内に前記アンテナを介して前記生体情報が受信できなくなった場合、前記医用送信機がアンテナの受信範囲外に出たことを表示し、前記所定時間後に前記アンテナを介して前記生体情報が受信できなくなった場合、前記医用送信機の電源が切れたことを表示する請求項1〜4のいずれか一項に記載の患者位置表示システム。
【請求項6】
各所の位置を示す位置情報を発信する複数の位置情報発信機と、
患者に装着されて当該患者の生体信号を検出して送信すると共に、前記位置情報発信機から前記位置情報を受信可能であって当該位置情報を受信した場合には当該位置情報も送信する医用送信機と、
前記医用送信機から前記位置情報および前記生体情報を受信するアンテナと、
前記アンテナに受信された前記位置情報および前記生体情報に基づいて前記患者の位置および状態を表示可能な表示装置と、
を有し、
前記表示装置は、前記位置情報と前記生体情報とを時系列に記憶し、記憶した位置情報および生体情報に基づいて時系列的に患者の位置および状態を表示する患者位置表示システム。
【請求項7】
前記アンテナにおいて、同じ特定の位置についての前記位置情報を所定時間受信し続けた場合、前記表示装置は、警告を音声により通知または画像により表示する請求項6記載の患者位置表示システム。
【請求項8】
前記医用送信機は、前記患者の進行方向を検出する方向検出センサを有し、検出した患者の進行方向情報を前記生体信号と共に送信し、
前記表示装置は、前記進行方向情報に基づいて、前記患者の進行方向を表示する請求項1〜7のいずれか一項に記載の患者位置表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−11176(P2012−11176A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32271(P2011−32271)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】