患者位置設定装置、患者台、搬送装置、粒子線治療装置及び患者位置設定方法
【課題】治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる患者位置設定装置を得ることを目的とする。
【解決手段】着脱自在な天板5と、天板5を駆動する第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aと、天板5を搬送する搬送装置20を備え、第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aは、それぞれの天板支持部3に天板5との位置関係を決定する位置決め部13を有し、搬送装置20は、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5が設置された第2の駆動装置9aから、位置決めされた患者15及び天板5を、第1の駆動装置9bへ搬送し、第1の駆動装置9bは、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5及び当該天板5に固定された患者15を設置し、第2の駆動装置9aにて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、第2の駆動装置9aにて位置決めされた状態に天板5及び患者15を駆動する。
【解決手段】着脱自在な天板5と、天板5を駆動する第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aと、天板5を搬送する搬送装置20を備え、第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aは、それぞれの天板支持部3に天板5との位置関係を決定する位置決め部13を有し、搬送装置20は、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5が設置された第2の駆動装置9aから、位置決めされた患者15及び天板5を、第1の駆動装置9bへ搬送し、第1の駆動装置9bは、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5及び当該天板5に固定された患者15を設置し、第2の駆動装置9aにて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、第2の駆動装置9aにて位置決めされた状態に天板5及び患者15を駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線、ガンマ線、粒子線等の放射線を患者の患部に照射してがん治療を行う放射線治療装置において、放射線を照射する放射線照射位置に患者を設定する患者位置設定装置及び患者位置設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、がん治療を目的とした放射線治療装置では、陽子や重イオンを用いたがん治療装置(特に、粒子線治療装置と呼ばれる)の開発や建設が進められている。周知のとおり、陽子や重イオン等を用いた粒子線治療はX線、ガンマ線等の従来の放射線治療に比べて、がん患部に集中的に照射することができ、正常細胞に影響を与えずに治療することが可能である。
【0003】
粒子線治療では、粒子線をがんなどの腫瘍部分に高精度に照射することが重要である。その為、患者は粒子線治療時には治療室(照射室)の寝台に対して位置がずれないように、固定具等を用いて寝台の天板に固定される。がんなどの腫瘍部を放射線照射範囲に精度よく位置する為に、レーザポインタなどを利用した患者の粗据付けなどのセッティングを行い、次いで、X線画像等をもちいて患者の患部の精密な位置決めを行っている。一般的に、高精度な放射線照射を行う為の照射前の患者のセッティング作業(位置設定作業)には約10分を必要としている。照射に要する時間約5分間に対して、照射前のセッティング作業の為に倍の時間が必要となり、粒子線治療装置の効率的な運用を損なう結果となっていた。
【0004】
上記の患者のセッティングに要する時間を短縮する為、特許文献1では治療室とは別の部屋でセッティングおよび位置決めを行う方法が記載されている。特許文献1の方法は、まず、準備室において第1のベッドに最初の患者を乗せて固定具を取付け、レーザポインタによる粗据付などのセッティングを行う。次に、第1のベッドに患者を乗せたまま、第1の搬送路に沿ってシミュレータ室まで搬送し、患者の精密な位置決めを行う。この時、最初の患者を搬出した準備室では、次の患者を第2のベッドに乗せて固定具を取付け、レーザポインタによる粗据付けなどのセッティングを行う。そして、シミュレータ室で精密な位置決めを行った最初の患者は第1のベッドに乗せたまま第2の搬送路に沿って照射室まで搬送して、患部への粒子線の照射を実行する。このように、照射室は放射線の照射時のみ使用することになり、一人の患者が治療している時に、次の患者は準備室もしくはシミュレータ室で位置決め作業を行うことができ、粒子線を用いる放射線治療装置(粒子線治療装置)の利用効率を高めるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−288102号公報(0020段乃至0022段、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の患者のセッティング(患者位置設定)方法の場合、準備室、シミュレーション室のそれぞれで位置決めした患者を、それぞれの位置決め状態を保ったまま、次の部屋へ移動させ、最終的に放射線治療を行う照射室へ移動させる必要がある。しかし、放射線治療に用いる患者台(特許文献1のベッドに相当)は、複雑な動作を行う複数の駆動軸を有し、かつ高い強度が必要になる為、患者台に患者を固定し、位置決め状態を保持したまま別の部屋へ患者台を移動させることは容易ではない。特許文献1では患者をベッド(患者台)に固定したままベッドを移動させるとしているが、患者が複雑な構造のベッドに固定され、そこに位置決め状態を保持したままでベッドを移動させる移動方法については、記載されていない。また、高精度に調整され、複雑な構造のベッドそのものを、各部屋へ移動させることは現実的ではないと考えられる。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、実際に放射線を照射する際に用いる治療室の患者台以外で患者の位置決めを行い、治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる患者位置設定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
着脱自在な天板と、天板を駆動する第1の駆動装置及び第2の駆動装置と、天板を搬送する搬送装置を備え、第1の駆動装置は放射線を照射する治療領域に設置され、第2の駆動装置は治療領域とは異なる場所に設置され、第1の駆動装置及び第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に天板との位置関係を決定する位置決め部を有する。搬送装置は、位置決め部を用いて所定の位置に天板が設置された第2の駆動装置から、放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めされた患者及び天板を、第1の駆動装置へ搬送し、第1の駆動装置は、位置決め部を用いて所定の位置に天板及び当該天板に固定された患者を設置し、第2の駆動装置にて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、第2の駆動装置にて位置決めされた状態に天板及び患者を駆動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る患者位置設定装置は、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現するので、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1による患者位置設定装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による患者位置設定方法の概略を説明する図である。
【図3】図1の患者台を示す図である。
【図4】図1の搬送装置を示す図である。
【図5】図1の患者台から搬送装置への移動方法を説明する図である。
【図6】図1の搬送装置による患者の移動を示す図である。
【図7】図1の搬送装置から患者台への移動方法を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態2による搬送装置を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2による患者位置設定装置を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3による患者位置設定装置を示す図である。
【図11】図10の患者台を示す図である。
【図12】図10の搬送装置を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4による粒子線治療装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による患者位置設定装置を示す図である。患者位置設定装置70は、患者15を搭載する天板5と天板5を駆動する駆動装置9(9b)を有する患者台2と、天板5を搬送する搬送装置20と、他の患者台2を構成する駆動装置9(9a
)とを備える。患者位置設定装置70は、放射線を照射する際に患者15を載置し、患者15における計画された放射線照射位置に放射線が照射されるように患者15の位置設定を行う。図1は、駆動装置9(9b)が治療を実施する治療領域のある治療室の床16(16b)に設置され、駆動装置9(9a)が治療室とは異なる部屋である準備室等の床16(16a)に設置される例を示している。治療室では、粒子線照射装置の照査ノズル1から、患者15の患部に荷電粒子線ビーム10が照射される。着脱自在な天板5と駆動装置9とは患者台2を構成する。なお、治療領域に設置された駆動装置を適宜、治療領域駆動装置と呼ぶことにする。
【0012】
駆動装置9(9a、9b)は、天板5をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各軸方向に並進させ、X軸周りのθ方向、Y軸周りのφ方向、Z軸周りのξ方向の各方向に回転させる。X軸方向は天板5の長手方向であり、Y軸方向は天板5の短手方向であり、Z軸方向は天板5の上下方向である。θ方向はローリング方向であり、φ方向はピッチング方向であり、ξ方向はローテーション方向である。
【0013】
患者位置設定方法の概略を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1による患者位置設定方法の概略を説明する図である。図2(a)は準備室における患者15の位置決めを説明する図であり、図2(b)は患者15の搬送を説明する図であり、図2(c)は治療室における患者15の位置決め状態の再現を説明する図である。まず、患者15は、準備室にて、天板5に搭載され駆動装置9(9a)で高精度の位置決めを行う(位置情報決定手順)。
【0014】
患者台2(2a)は、着脱自在な天板5を複数の天板固定具6(6a、6b、6c、6d、図3(c)参照)により駆動装置9(9a)の天板支持部3(3a)に固定された状態である。患者15を患者台2(2a)の天板5に搭載して固定具4を取付け、レーザポインタによる粗据付などのセッティングを行う。次に、患者15の精密な位置決めを行う。準備室ではCT装置やX線撮像装置が設置されている。CT装置のCT画像またはX線撮像装置のX線画像を用いて、治療計画を作成する際に用いた基準CT画像の患部に合うように、駆動装置9(9a)の各軸方向を設定するモータを駆動して患者の位置決めを行う。準備室で位置決めされ、決定された患者台2(2a)の駆動装置パラメータは、ネットワークを通じて、治療室の患者台2(2b)に転送される。
【0015】
ここで、準備室の患者台2(2a)による位置決めは、治療室の患者台2(2b)におけるアイソンセンタを基準にして行われる。すなわち、準備室の患者台2aの駆動装置パラメータは、準備室の患者台2aにおける天板5上のアイソセンタが、治療室の患者台2bにおける天板5上のアイソセンタと一致するように調整されているか、または、準備室の患者台2aの駆動装置パラメータは、準備室の患者台2aにおける天板5上のアイソセンタが、治療室の患者台2bにおける天板5上のアイソセンタと一致するように、転送される駆動装置パラメータのデータをオフセット調整する。
【0016】
次に、患者15は天板5に固定された状態を保持したまま、天板5と共に搬送装置20により搬送される(患者搬送手順)。図2(b)に示すように、患者15が患者固定具4で固定された天板5を搬送装置20に載せて、治療室へ搬送する。図2(b)は、準備室から治療室へ向かう廊下等の床16(16c)を搬送して場合を示している。
【0017】
次に、患者15は、天板5に固定された状態を保持したまま、治療室の患者台2(2b)の駆動装置9(9b)に移動され、他の治療台2(2a)で位置決めされた状態を再現する(位置決め状態再現手順)。患者15は、天板5に固定された状態のまま、搬送装置20から治療室の患者台2(2b)の駆動装置9(9b)の天板支持部3(3b)に設置され、天板支持部3(3a、3b)と天板5に設けられた位置決め部により、天板5と天板支持部3(3b)の相対位置が再現される。天板5は、複数の天板固定具6(6a、6b、6c、6d)により駆動装置9(9b)の天板支持部3(3a)に固定される。その後、駆動装置9(9b)は、準備室で位置決めされた患者台2(2a)の駆動装置パラメータを取り込む。駆動装置9(9b)は、各軸方向を設定するモータを駆動して、天板5及び患者15を準備室で高精度に位置決めされた位置状態に再現する。位置決め状態が再現された後に、粒子線照射装置の照射ノズル1から荷電粒子線ビーム10を、患者15の患部に照射する。なお、位置決め部については後述する。
【0018】
図3は患者台を示す図であり、図4は搬送装置を示す図である。図3(a)は患者台2における駆動装置9の上面図であり、図3(b)は駆動装置9の側面図であり、図3(c)は患者台2の上面図、すなわち駆動装置9に天板5が設置された上面図である。図4(a)は搬送装置20の上面図であり、図3(b)は搬送装置20の側面図である。患者台2は、患者15を搭載する天板5と天板5を駆動する駆動装置9を有する。駆動装置9の天板支持部3は、天板5を支持する。天板支持部3は、駆動装置9の本体上部と天板支持板12により構成される。天板支持部3には、複数のエア駆動式ボールベアリング11(11a、11b)と、複数の天板固定穴13(13a、13b、13c、13d)が設けられる。
【0019】
エア駆動式ボールベアリング11は、製造ラインなどに一般的に用いられている製品であり、高圧エアを供給することでボールをリフトアップさせ、天板5をボールで支持し、搬送物をボールの回転により自在に移動させることができるものである。エア駆動式ボールベアリング11は、高圧エアを供給していない通常時には、ボール部が駆動装置9の上面よりも低くなるようにできる。エア駆動式ボールベアリング11は、必要な時にのみボールを上昇させ、ボールの回転による天板支持部3と天板15との間の滑り摩擦抵抗を低減することで、天板15を自在に移動させることができる。
【0020】
搬送装置20は、天板15を載せる搬送装置上面32に、複数のボールベアリング31(31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g)と、複数の天板固定穴37(37a、37b、37c、37d)が設けられる。搬送装置上面32の短手方向の両側にガイド35(35a、35b)が設けられる。搬送装置20の外周に手すり34が設けられ、搬送装置20の下部には4つのキャスター33(図4において33a、33b)及び固定ストッパー36が設けられる。固定ストッパー36は床16に圧接することで、搬送装置20を固定する。ボールベアリング31は、エア駆動式ボールベアリング11とは異なり、ボール部が搬送装置上面32よりも高くなっている。ボールベアリング31は、エア駆動式ボールベアリング11と同様に、ボールの回転による天板支持部3と天板15との間の滑り摩擦抵抗を低減することで、天板15を自在に移動させることができる。搬送装置上面32の短手方向の両側に設けたガイド35(35a、35b)により、天板5を搬送装置20へ搭載する場合や、天板5を搬送装置20から降ろす場合に、所定の方向に導くことができる。
【0021】
前述の位置決め部について説明する。駆動装置9と天板5との位置決めは、天板支持部3に設けられた複数の天板固定穴13(13a、13b、13c、13d)と天板5に設けられた複数の位置決め固定穴17(17a、17b、17c、17d)を用いる。位置決め固定穴17(17a、17b、17c、17d)は貫通穴である。位置決め固定穴17は、天板5の上面から見た場合に、天板固定穴13を包含するように形成される。駆動装置9における位置決め部は天板固定穴13であり、天板5における位置決め部は位置決め固定穴17である。ピン14を、天板固定穴13及び位置決め固定穴17に挿入する。例えば、ピン14の軸部分はテーパーを有しており、ピン14を天板固定穴13及び位置決め固定穴17に押し込むことで、天板固定穴13及び位置決め固定穴17は、所定の位置関係で位置決めされる。このように、天板5は、位置決め部である天板固定穴13及び位置決め固定穴17により、天板支持部3の所定の位置に位置決めされる。その後、図2(a)に示すように、天板固定具6により天板支持部3及び天板5を、例えば挟み込んで固定する。
【0022】
駆動装置9a及び駆動装置9bは、それぞれの天板支持部3において、同じ位置に天板固定穴13が設けられている。したがって、一方の位置決めされた駆動装置9bと天板5との位置関係は、他方(治療室)の駆動装置9aと天板5との位置関係は、同じになる。すなわち、一方の位置決めされた駆動装置9bと天板5との位置関係は、駆動装置9及び天板5の位置決め部により、移動先(治療室)の駆動装置9a及び天板5において再現することができる。
【0023】
搬送装置20にて搬送される際の天板5の固定について説明する。天板5は、ピン14を天板固定穴37及び位置決め固定穴17に挿入することで、搬送装置20に固定する。人が搬送装置20を搬送する場合は、天板5は搬送装置20から滑り落ちないように固定すれば充分なので、天板固定具6を用いて強固に固定しなくても構わない。なお、搬送装置20が駆動装置にてタイヤを回転させて搬送するなど、天板5を搬送装置20に強固に固定したい場合は、天板固定具6等の固定具を用いて固定する。
【0024】
図5〜図7を用いて、患者位置設定方法における位置決めを行う準備室の駆動装置9aから治療室の駆動装置9bに天板5及び患者15を移動する方法を詳しく説明する。図5は患者台から搬送装置への移動方法を説明する図であり、図6は搬送装置による患者の移動を示す図であり、図7は搬送装置から患者台への移動方法を説明する図である。図5(a)は患者15を搬送装置20に搭載する前の状態を示し、図5(b)、(c)は搬送装置20に搭載する途中状態を示し、図5(d)は患者15を搬送装置20に搭載した状態を示す図である。なお、図において天板固定具6は省略した。
【0025】
最初に治療前の患者を位置決め用の部屋(準備室等)にて、患者15は、着脱自在な天板5に搭載され駆動装置9で高精度の位置決め(位置情報決定手順)が行われる。位置決めが終了し、搬送装置20に転載する準備として、図5(a)に示すように、天板5及び患者15を床16(16a)に対してほぼ平行にする。
【0026】
天板5に固定された患者15を、固定状態を保ったまま搬送装置20に移し変える為、図5(b)に示すように搬送装置20を患者台2(駆動装置9)の天板支持部3に寄り付かせ、固定ストッパー36を用いて固定する。そして、駆動装置9と搬送装置20の上面が同じ高さになるように、駆動装置9の上下軸(Z軸)方向に調整する。次に図5(c)に示すように、駆動装置9の上面に配置されたエア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給する為のホース38を治療台に接続する。高圧エアは患者台2が置かれている部屋もしくはその他の部屋に設けられたコンプレッサー(図示せず)から供給する(送出準備手順)。図5は、高圧エア供給口が床16に配置されている例である。高圧エア供給口には、コンプレッサーから出力される高圧エアが供給される。もちろんホース38は駆動装置9の内部に設けられていてもよい。
【0027】
図示しない天板固定具6を外し、図示しないピン14を外す。エア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給することにより、天板5はボールで支持されることになり、患者15への負担なく人力で天板5に固定された患者15を水平の任意の位置に移動させることが可能となる。搬送装置20のガイド35に沿って、操作者は患者15を弱い力で容易に搬送装置20へ移動することができる。搬送装置上面32にも天板5を支持する為のボールベアリング31が配置されている為、天板5が患者台2のエア駆動式ボールベアリング11で支持できない位置まで移動した際にも、搬送装置上面32のボールベアリング31により搬送装置20の任意の位置まで天板5を移動させることができる。
【0028】
天板5の位置決め固定穴17を搬送装置20の天板固定穴37の上に来るように調整して、ピン14を天板固定穴37及び位置決め固定穴17に挿入する。図5(d)に示すように、患者15が搬送装置20に搭載された状態にする。
【0029】
患者15が搬送装置20に搭載された後に、患者15は天板5に固定された状態を保持したまま、天板5と共に搬送装置20により搬送される(患者搬送手順)。図6(a)は準備室における移動途中を示す図であり、図6(b)は治療室における移動途中を示す図である。図6(a)に示すように、搬送装置20は準備室の床16(16a)の上を移動し、廊下等の通路を経て治療室に到着する。図6(b)に示すように、治療室の床16(16b)の上を移動し、駆動装置9(9b)に近づく。
【0030】
次に、図7に示すように、患者15は、天板5に固定された状態を保持したまま、治療室の患者台2(2b)の駆動装置9(9b)に移動され、他の治療台2(2a)で位置決めされた状態を再現する(位置決め状態再現手順)。図7(a)は患者15を駆動装置9に搭載する前の状態を示し、図7(b)、(c)は駆動装置9に搭載する途中状態を示し、図7(d)は患者15を駆動装置9に搭載した状態を示す図である。なお、天板固定具6は記載を省略した。
【0031】
天板5に固定された患者15を、固定状態を保ったまま駆動装置9(9b)に移し変える為、図7(a)に示すように搬送装置20を駆動装置9(9b)の天板支持部3に寄り付かせ、固定ストッパー36を用いて固定する。そして、駆動装置9と搬送装置20の上面が同じ高さになるように、駆動装置9の上下軸(Z軸)方向に調整する。次に図7(a)に示すように、駆動装置9の上面に配置されたエア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給する為のホース38を駆動装置9に接続する。図7は、図5と同様に、高圧エア供給口が床16に配置されている例である。高圧エア供給口には、コンプレッサーから出力される高圧エアが供給される。
【0032】
図示しない天板固定具6を外し、図示しないピン14を外す。エア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給することにより、天板5はボールで支持できる状態にする(受け入れ準備手順)。天板5はボールで支持されることになり、患者15への負担なく人力で天板5に固定された患者15を駆動装置9における水平の任意の位置に移動させることが可能となる。搬送装置上面32に配置されたボールベアリング31により、天板5は支持されているので、搬送装置20のガイド35に沿って、駆動装置9のエア駆動式ボールベアリング11の所まで移動させる。天板5の一部(先頭部分)がエア駆動式ボールベアリング11のボールにより支持されるようになると、操作者は患者15を弱い力で容易に駆動装置9へ移動することができる。
【0033】
天板5の位置決め固定穴17を駆動装置9の天板固定穴13の上に来るように調整して、ピン14を天板固定穴13及び位置決め固定穴17に挿入する。図7(c)に示すように、患者15が搬送装置20に完全に移動された状態にする。そして、図1に示すように、天板5は、複数の天板固定具6(6a、6b、6c、6d)により駆動装置9(9b)の天板支持部3(3a)に固定される。ホース38を外し、搬送装置20を駆動装置9から遠ざけて、図7(d)に示すように、患者15を駆動装置9(9b)に搭載した状態する。
【0034】
その後、駆動装置9(9b)は、準備室で位置決めされた患者台2(2a)の駆動装置パラメータを、ネットワークを通じて取得する。取得した駆動装置パラメータに基づいて、駆動装置9(9b)は、各軸方向を設定するモータを駆動して、天板5及び患者15を準備室で高精度に位置決めされた位置状態に再現する。位置決め状態が再現された後に、
粒子線照射装置の照射ノズル1から荷電粒子線ビーム10を、患者15の患部に照射する。
【0035】
実施の形態1の患者位置設定装置70は、位置決め用の部屋(準備室等)にて患部の位置を着脱自在な天板5に対して固定された患者15を、搬送装置20により固定状態を保ったまま、治療用の部屋(治療室)に移動させ、治療用の部屋に配置された患者台2の駆動装置9に天板5を移し替えることができる。駆動装置9に配置された天板固定穴13を用いて天板支持部3に天板5を固定することで、位置決め用の部屋での患者の患部位置を駆動装置9に対して高い精度で再現することが可能となる。すなわち、着脱自在な天板5と駆動装置9により構成される患者台2に対して、位置決め用の部屋での患者の患部位置を治療用の部屋においても高い精度で再現することが可能となる。位置決め用の部屋で位置決めされた患者台2(2a)の駆動装置パラメータを、ネットワークを通じて取得し、取得した駆動装置パラメータに基づいて、治療用の部屋の駆動装置9(9b)の各軸方向を設定するので、天板5及び患者15を位置決め用の部屋で高精度に位置決めされた位置状態に再現することができる。すなわち、実際に放射線を照射する際に用いる治療用の部屋の患者台2以外で患者15の位置決めを行い、患者台2の天板5に対する患者15の位置決めされた状態を保持して治療用の部屋に移動させ、治療用の部屋にて患者15の位置決め状態を再現することにより、患者15の位置設定を行うことができる。
【0036】
したがって、治療用の部屋の患者台2に患者15を固定し患部の精密な位置決めを行うセッティング作業(位置設定作業)に長時間(一般的には約10分)をかけることなく、治療用の部屋にて行う患者の位置設定作業を大幅に短縮することができる。このように、患者の位置設定作業を、着脱自在な天板5に対する患者の固定作業及び駆動装置の駆動装置パラメータを決定作業、すなわち位置決め用の部屋における患者の位置決め作業と、治療用の部屋における患者の位置決め状態再現作業を分けることができ、それぞれの作業を並列で行うことができるので、粒子線治療装置の効率的な運用を行うことができる。
【0037】
位置決め用の部屋における患者の位置決め作業を終了し、治療用の部屋に入る前に搬送装置20に載った状態で患者15が待機する待機室を設けてもよい。位置決め用の部屋、待機室、治療用の部屋において、3段階(位置決め作業の段階、待機の段階、位置決め状態再現及び治療の段階)を並列して行うことで、さらに粒子線治療装置の効率的な運用を行うことができる。
【0038】
治療用の部屋の駆動装置9(9b)に天板5を搭載し、天板固定穴13、位置決め固定穴17、ピン14を用いて天板15を固定する際にも、エア駆動式ボールベアリング11を使用することにより、駆動装置9(9b)に対して天板15を微調整して位置合わせすることが短時間に、弱い力で容易に行うことができる。
【0039】
なお、図5〜図7に記載されている天板5の移し変えの状態は図1における治療の際の状態と比べて患者15の向きが患者台2のローテーション方向に対して180度回転しているが、患者台2のローテーション方向の角度は180度によらず、どの角度で移し変えを実施してもかまわない。また、搬送装置20の寄り付きの方向に関しても図5及び図7では患者台2の長手方向から寄り付かせているが、患者台2および搬送装置20の外形やガイド位置によっては、長手方向と異なる方向、例えば短手方向から搬送装置20を寄り付かせて、天板5を移しかえるようにしても構わない。
【0040】
天板5は、患者台2において片持ちの張り出した構成となるように駆動装置9に取り付けられている。天板5を駆動装置9や搬送装置20に移動させる際に、天板5には若干のたわみが生じる。したがって、搬送装置20を患者台2の駆動装置9に寄りつける際や、駆動装置9の天板支持部3と搬送装置20の搬送装置上面32の高さを一定にする際など
に、駆動装置9の上下駆動の動作が伴う。この際、操作者が誤って駆動装置9を操作した場合、例えば、搬送装置20が寄り付いた状態で駆動装置9の高さを下げようとして、必要以上に天板5を下げてしまう場合等に、天板5に圧力が加わり、患者15が上方に持ちあげられる場合も考えられる。このような状況を回避するために、駆動装置9の上下駆動のストロークを、通常よりも制限する方法を追加してもよい。
【0041】
駆動装置9の上下駆動のストロークを制限する方法を説明する。治療に必要な駆動装置9の上下駆動のストロークは数百mmとなるが、患者15及び天板5の移動時は、天板5のたわみの調整分のみ移動させると考えれば、10mm〜20mm程度駆動できれば十分である。したがって、患者15及び天板5の移動時には必要最低限な範囲のみ駆動するように制限を設けることによって、上記の状況を回避することが可能である。駆動装置9の駆動を制限するためには、患者15及び天板5の移動時であることを駆動装置9が認識する必要がある。例えば第1の方法として、搬送装置20の設置位置にスイッチを設ける。スイッチは、キャスター33が踏むことで配線の接続や切断を行うものや、赤外線による送受信状態を検出して、配線の接続や切断を行うもの(赤外線型スイッチ)などを使用することができる。赤外線型スイッチは、搬送装置20に赤外線送信器を設け、床等に設置した赤外線受信器の信号を駆動装置9に入力するなどして構成することができる。また、第2の方法として、患者15及び天板5の移動時には、駆動装置9のローテーション角度を一定の値にし、しかも治療時には使用しないローテーション角度を選ぶことによって、この所定のローテーション角度(患者移動時角度)により上下駆動軸の駆動制限をかけるように制御してもよい。
【0042】
以上のように実施の形態1の患者位置設定装置70によれば、着脱自在な天板5と、天板5を駆動する第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aと、天板5を搬送する搬送装置20を備え、第1の駆動装置9bは放射線を照射する治療領域に設置され、第2の駆動装置9aは治療領域とは異なる場所に設置され、第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aは、それぞれの天板支持部3に天板5との位置関係を決定する位置決め部13を有し、搬送装置20は、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5が設置された第2の駆動装置9aから、放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めされた患者15及び天板5を、第1の駆動装置9bへ搬送し、第1の駆動装置9bは、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5及び当該天板5に固定された患者15を設置し、第2の駆動装置9aにて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、第2の駆動装置9aにて位置決めされた状態に天板5及び患者15を駆動するので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0043】
以上のように実施の形態1の患者台2によれば、着脱自在な天板5と、天板5を駆動する駆動装置9を備え、駆動装置9は、天板支持部3に天板5との位置関係を決定する位置決め部13を有し、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5及び当該天板5に固定された患者15を設置し、他の駆動装置9にて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、他の駆動装置9にて位置決めされた状態に天板5及び患者15を駆動するので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0044】
以上のように実施の形態1の搬送装置20によれば、放射線を照射する際に患者15を載置する天板5を搬送する搬送装置であって、位置決め部13を用いて所定の位置に天板
5が設置された第2の駆動装置9aから、放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めされた患者15及び天板5を、第1の駆動装置9bへ搬送するので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0045】
以上のように実施の形態1の患者位置設定方法によれば、放射線を照射する治療領域と異なる場所に設置された駆動装置9(9a)に配置された着脱自在な天板5に、患者15を固定し、患者15を放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めした駆動装置パラメータを決定する位置情報決定手順と、位置情報決定手順の後に、天板5及び当該天板5に固定された患者15を、搬送装置20により治療領域に設置された治療領域駆動装置9(9b)へ搬送する患者搬送手順と、搬送装置20にて搬送された天板5及び当該天板5に固定された患者15を、治療領域駆動装置9(9b)に配置し、駆動装置パラメータに基づいて、位置情報決定手順における位置決め状態を再現する位置決め状態再現手順を含むので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0046】
実施の形態2.
実施の形態1において、エア駆動式ボールベアリング11は駆動装置9にのみ設けることとしているが、搬送装置にもエア駆動式ボールベアリングを配置することで、実施の形態1より患者15の移し替えを容易にし、また、搬送装置にて部屋間を移動する際にも、患者をより安定して移動させることが可能となる。以下に説明する。図8は本発明の実施の形態2による搬送装置を示す図である。図8(a)は搬送装置30の上面図であり、図8(b)は搬送装置30の側面図である。実施の形態2の搬送装置30は、実施の形態1の搬送装置20とは、ボールベアリング31をエア駆動式ボールベアリング39に変更した点で異なる。エア駆動式ボールベアリング39は、上述のエア駆動式ボールベアリング11と同様の構造である。エア駆動式ボールベアリング39におけるボール数や、長さや幅はエア駆動式ボールベアリング11と異なっても構わない。
【0047】
実施の形態2の搬送装置30は、ボールベアリング31をエア駆動式ボールベアリング39に変更することで、搬送装置30に天板5を移し替えた後、エア駆動式ボールベアリング39の高圧エアを抜くことにより、天板5は搬送装置上面32で支持されることになり、実施の形態1よりも安定して患者15の移動を行うことができる。高圧エアの供給に関しては、図9(a)に示すように、駆動装置9と同じ供給源から、ホース38(38a)及びホース38(38b)を接続して供給すればよい。図9は本発明の実施の形態2による患者位置設定装置を示す図である。図9(a)は第1の搬送装置30(30b)及び患者位置設定装置70(70b)を示す図であり、図9(b)は第2の搬送装置30(30b)及び患者位置設定装置70(70c)を示す図であり、図9(c)は第3の搬送装置30(30c)及び患者位置設定装置70(70d)を示す図である。
【0048】
第2の搬送装置30(30b)は、搬送装置30(30b)にホース38(38a)を接続し、分岐を有するホース42で高圧エアを分岐させて、ホース38(38b)を駆動装置9に接続させた例である。また、駆動装置9の側から高圧エアを分岐させて、搬送装置30へ供給する形式をとることも可能である。
【0049】
第3の搬送装置30(30c)は、高圧エア供給用のコンプレッサー41を搬送装置30(30c)の内部に設けて、コンプレッサー41から、搬送装置30(30c)のエア駆動式ボールベアリング39及び駆動装置9のエア駆動式ボールベアリング11へ高圧エアを供給する例である。なお、高圧エア供給用のコンプレッサー41の代わりに、エアタンクを搬送装置30(30c)の内部に設けて、エアタンクから高圧エアを搬送装置30(30c)のエア駆動式ボールベアリング39及び駆動装置9のエア駆動式ボールベアリング11へ供給するようにしてもよい。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態1の駆動装置9は、エア駆動式ボールベアリング11を短手方向の両側に2本のみ配置した例で説明した。患者15をより安定に搬送装置20に移し替える為には、天板支持板12にもエア駆動式ボールベアリング11が配置されていることが望ましい。しかし、天板支持板12は放射線の照射位置に位置しており、天板支持板12にエア駆動式ボールベアリング11のように金属を配置すると、その箇所での位置決め画像がとれなくなり、天板5における照射可能範囲を大きく制限することにつながる。したがって天板支持板12はX線の吸収率が低い材質のみで構成されることが望ましい。また、天板支持板12をなくしてしまうと、駆動装置9における天板5を支持する部分が短くなり、天板5のたわみを少なくし、また強度をあげる為に、天板5を厚くする必要が出てくる。天板5を厚くすると、天板5が高価になり、また、天板5を通過させて患者に放射線を照射する場合、例えば天板5を通過して患者5に放射線を照射する場合、放射線の飛程への影響も大きくなる。したがって、天板支持板12により、天板5を支持する構成はそのまま残しつつ、エア駆動式ボールベアリングにて患者15を支持する領域を広げる方法が望まれる。実施の形態3では、天板支持板12により、天板5を支持する構成はそのまま残しつつ、エア駆動式ボールベアリングにて患者15を支持する領域を広げる方法を説明する。
【0051】
図10は、本発明の実施の形態3による患者位置設定装置を示す図である。図11は本発明の実施の形態3による患者台を示す図であり、図12は本発明の実施の形態3による搬送装置を示す図である。実施の形態3の患者位置設定装置70(70e)は、ボールベアリング31が患者台2の駆動装置に近づくように配置した搬送装置40と、搬送装置40の先端部分を内側へ挿入させることができる窪みを設けた天板支持板を有する駆動装置19とを備えた点で、実施の形態1の患者位置設定装置70(70a)とは異なる。図10(a)は、搬送装置40の先端部分である凸部46と、駆動装置19の窪みである凹部45とが接触した状態における上面図である。図10(b)は、図10(a)の状態の患者位置設定装置70(70e)の側面図である。図11(a)は駆動装置19の上面図であり、図11(b)は駆動装置19の側面図である。図12(a)は搬送装置40の上面図であり、図12(b)は搬送装置40の側面図である。
【0052】
駆動装置19の天板支持板44は、凹部45が設けられる。また、搬送装置40の先端部は天板支持板44の凹部45と係合する凸部46が設けられる。この搬送装置40の凸部46には、ボールベアリング31の一部がかかるように配置される。上記のような構造にすることで、天板5が駆動装置19に設置してある状態で、実施の形態1に比べて、天板5のより深い位置までボールベアリング31を挿入することができる。また、天板支持板44は凹部45の有無によって、天板5を支持するという目的を損なうことはない。すなわち、駆動装置19の天板支持板44における搬送装置40の側への延伸長Lが、駆動装置9の天板支持板12における搬送装置20の側への延伸長と同等にすることで、天板支持板44の凹部45を形成する周辺部分により天板5を充分に支持することができる。
【0053】
天板支持板44の凹部45は、搬送装置40の寄り付きの際に搬送装置40の凸部46を導くガイドの役割も果たす。この為、搬送装置40の寄り付きの際の操作性も向上することができる。なお、天板支持板44の凹部45は、図10及び図11に示した凹部45の深い部分が丸みを帯びたV字形状に限らず、例えば、凹部45の深い部分の丸みが小さい形状などでも同じ効果が得られる。
【0054】
なお、搬送装置40にボールベアリング31が配置された場合で説明したが、搬送装置40に実施の形態2に示したエア駆動式ボールベアリング39を配置してもよい。搬送装置40にエア駆動式ボールベアリング39を配置することで、さらに患者15の移し替えを容易にし、また、搬送装置40にて部屋間を移動する際にも、患者をより安定して移動させることが可能となる。
【0055】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4は、実施の形態1乃至3に示した患者位置設定装置70を備えた粒子線治療装置である。図13は本発明の実施の形態4による粒子線治療装置の概略構成図である。粒子線治療装置51は、ビーム発生装置52と、ビーム輸送系59と、粒子線照射装置58a、58bとを備える。ビーム発生装置52は、イオン源(図示せず)と、前段加速器53と、シンクロトロン54とを有する。粒子線照射装置58bは回転ガントリ(図示せず)に設置される。粒子線照射装置58aは回転ガントリを有しない治療室に設置される。ビーム輸送系59の役割はシンクロトロン54と粒子線照射装置58a、58bの連絡にある。ビーム輸送系59の一部は回転ガントリ(図示せず)に設置され、その部分には複数の偏向電磁石55a、55b、55cを有する。
【0056】
粒子線照射装置58aが設置された治療室には、患者台2(2a)が設置され、粒子線照射装置58bが設置された治療室には、患者台2(2b)が設置され、位置決め用の部屋(準備室等)には駆動装置9c(19c)が配置された例を示している。患者台2aには、駆動装置9a(19a)に天板5(5a)が搭載され、患者台2bには、駆動装置9b(19b)に天板5(5b)が搭載され例を示している。患者位置設定装置70は、位置決め用の部屋(準備室等)にて患部の位置を着脱自在な天板5に対して固定された患者15を、搬送装置20(30、40)により固定状態を保ったまま、治療室に移動させ、第1の治療室に配置された患者台2aの駆動装置9a(19a)や、第2の治療室に配置された患者台2bの駆動装置9b(19b)に、患者15及び天板5を載置する。
【0057】
位置決め用の部屋で位置決めされた患者台2の駆動装置9c(19c)の駆動装置パラメータを、ネットワークを通じて取得する。取得した駆動装置パラメータに基づいて、各治療室の駆動装置9a(19a)、9b(19b)は、各軸方向を設定するモータを駆動して、天板5及び患者15を準備室で高精度に位置決めされた位置状態に再現する。位置決め状態が再現された後に、以下の動作により、粒子線照射装置51の照射ノズル1から荷電粒子線ビーム10を、患者15の患部に照射する。
【0058】
イオン源で発生した陽子線等の粒子線である荷電粒子ビーム10は、前段加速器53で加速され、シンクロトロン54に入射される。荷電粒子ビーム10は、所定のエネルギーまで加速される。シンクロトロン54から出射された荷電粒子ビーム10は、ビーム輸送系59を経て粒子線照射装置58a、58bに輸送される。粒子線照射装置58a、58bは、照射口を設けた照査ノズル1から、荷電粒子ビーム10を患者15の患部(図1参照)に照射する。
【0059】
実施の形態4の粒子線治療装置51は、患者位置設定装置70により、実際に荷電粒子ビーム10を照射する際に用いる治療室の患者台2以外で患者15の位置決めを行い、患者台2の天板5に対する患者15の位置決めされた状態を保持して治療室に移動させ、治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、患者15の位置設定を行うことができるので、治療用の部屋にて行う患者の位置設定作業を大幅に短縮することができる。このように、患者の位置設定作業を、着脱自在な天板5に対する患者の固定作業及び駆動装置の駆動装置パラメータを決定作業、すなわち位置決め用の部屋における患者の位置決め作業と、治療用の部屋における患者の位置決め状態再現作業を分けることができ、それぞ
れの作業を並列で行うことができるので、粒子線治療装置51の効率的な運用を行うことができる。
【0060】
なお、実施の形態3において、搬送装置40の凸部46に、ボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39の一部がかかるように配置される例で説明したが、独立したボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39が、搬送装置40の凸部46に配置されるようにしてもよい。また、搬送装置40の凸部46に、ボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39がない場合でもよい。搬送装置40の凸部46が駆動装置19の凹部45に挿入されることで、実施の形態1や実施の形態2に比べて、ボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39を駆動装置19に近づけることができるので、患者15をより安定に搬送装置20に移し替えることができる。また、実施の形態1乃至4の内容は、矛盾しない範囲で相互に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
2、2a、2b…患者台、3…天板支持部、5…天板、9、9a、9b、9c…駆動装置、10…荷電粒子線ビーム、11、11a、11b…エア駆動式ボールベアリング、12…天板支持板、13、13a、13b、13c、13d…天板固定穴、15…患者、20…搬送装置、30、30a、30b、30c…搬送装置、31、31a、31b、31c、31d、31、31e、31f、31g…ボールベアリング、32…搬送装置上面、37、37a、37b、37c、37d…天板固定穴、39、39a、39b、39c、39d、39、39e、39f、39g…エア駆動式ボールベアリング、41…コンプレッサー、44…天板支持板、45…凹部、46…凸部、51…粒子線治療装置、52…ビーム発生装置、54…シンクロトロン、58a、58b…粒子線照射装置、59…ビーム輸送系、70、70a、70b、70c、70d、70e…患者位置設定装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線、ガンマ線、粒子線等の放射線を患者の患部に照射してがん治療を行う放射線治療装置において、放射線を照射する放射線照射位置に患者を設定する患者位置設定装置及び患者位置設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、がん治療を目的とした放射線治療装置では、陽子や重イオンを用いたがん治療装置(特に、粒子線治療装置と呼ばれる)の開発や建設が進められている。周知のとおり、陽子や重イオン等を用いた粒子線治療はX線、ガンマ線等の従来の放射線治療に比べて、がん患部に集中的に照射することができ、正常細胞に影響を与えずに治療することが可能である。
【0003】
粒子線治療では、粒子線をがんなどの腫瘍部分に高精度に照射することが重要である。その為、患者は粒子線治療時には治療室(照射室)の寝台に対して位置がずれないように、固定具等を用いて寝台の天板に固定される。がんなどの腫瘍部を放射線照射範囲に精度よく位置する為に、レーザポインタなどを利用した患者の粗据付けなどのセッティングを行い、次いで、X線画像等をもちいて患者の患部の精密な位置決めを行っている。一般的に、高精度な放射線照射を行う為の照射前の患者のセッティング作業(位置設定作業)には約10分を必要としている。照射に要する時間約5分間に対して、照射前のセッティング作業の為に倍の時間が必要となり、粒子線治療装置の効率的な運用を損なう結果となっていた。
【0004】
上記の患者のセッティングに要する時間を短縮する為、特許文献1では治療室とは別の部屋でセッティングおよび位置決めを行う方法が記載されている。特許文献1の方法は、まず、準備室において第1のベッドに最初の患者を乗せて固定具を取付け、レーザポインタによる粗据付などのセッティングを行う。次に、第1のベッドに患者を乗せたまま、第1の搬送路に沿ってシミュレータ室まで搬送し、患者の精密な位置決めを行う。この時、最初の患者を搬出した準備室では、次の患者を第2のベッドに乗せて固定具を取付け、レーザポインタによる粗据付けなどのセッティングを行う。そして、シミュレータ室で精密な位置決めを行った最初の患者は第1のベッドに乗せたまま第2の搬送路に沿って照射室まで搬送して、患部への粒子線の照射を実行する。このように、照射室は放射線の照射時のみ使用することになり、一人の患者が治療している時に、次の患者は準備室もしくはシミュレータ室で位置決め作業を行うことができ、粒子線を用いる放射線治療装置(粒子線治療装置)の利用効率を高めるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−288102号公報(0020段乃至0022段、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の患者のセッティング(患者位置設定)方法の場合、準備室、シミュレーション室のそれぞれで位置決めした患者を、それぞれの位置決め状態を保ったまま、次の部屋へ移動させ、最終的に放射線治療を行う照射室へ移動させる必要がある。しかし、放射線治療に用いる患者台(特許文献1のベッドに相当)は、複雑な動作を行う複数の駆動軸を有し、かつ高い強度が必要になる為、患者台に患者を固定し、位置決め状態を保持したまま別の部屋へ患者台を移動させることは容易ではない。特許文献1では患者をベッド(患者台)に固定したままベッドを移動させるとしているが、患者が複雑な構造のベッドに固定され、そこに位置決め状態を保持したままでベッドを移動させる移動方法については、記載されていない。また、高精度に調整され、複雑な構造のベッドそのものを、各部屋へ移動させることは現実的ではないと考えられる。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、実際に放射線を照射する際に用いる治療室の患者台以外で患者の位置決めを行い、治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる患者位置設定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
着脱自在な天板と、天板を駆動する第1の駆動装置及び第2の駆動装置と、天板を搬送する搬送装置を備え、第1の駆動装置は放射線を照射する治療領域に設置され、第2の駆動装置は治療領域とは異なる場所に設置され、第1の駆動装置及び第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に天板との位置関係を決定する位置決め部を有する。搬送装置は、位置決め部を用いて所定の位置に天板が設置された第2の駆動装置から、放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めされた患者及び天板を、第1の駆動装置へ搬送し、第1の駆動装置は、位置決め部を用いて所定の位置に天板及び当該天板に固定された患者を設置し、第2の駆動装置にて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、第2の駆動装置にて位置決めされた状態に天板及び患者を駆動する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る患者位置設定装置は、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現するので、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1による患者位置設定装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による患者位置設定方法の概略を説明する図である。
【図3】図1の患者台を示す図である。
【図4】図1の搬送装置を示す図である。
【図5】図1の患者台から搬送装置への移動方法を説明する図である。
【図6】図1の搬送装置による患者の移動を示す図である。
【図7】図1の搬送装置から患者台への移動方法を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態2による搬送装置を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2による患者位置設定装置を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3による患者位置設定装置を示す図である。
【図11】図10の患者台を示す図である。
【図12】図10の搬送装置を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4による粒子線治療装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による患者位置設定装置を示す図である。患者位置設定装置70は、患者15を搭載する天板5と天板5を駆動する駆動装置9(9b)を有する患者台2と、天板5を搬送する搬送装置20と、他の患者台2を構成する駆動装置9(9a
)とを備える。患者位置設定装置70は、放射線を照射する際に患者15を載置し、患者15における計画された放射線照射位置に放射線が照射されるように患者15の位置設定を行う。図1は、駆動装置9(9b)が治療を実施する治療領域のある治療室の床16(16b)に設置され、駆動装置9(9a)が治療室とは異なる部屋である準備室等の床16(16a)に設置される例を示している。治療室では、粒子線照射装置の照査ノズル1から、患者15の患部に荷電粒子線ビーム10が照射される。着脱自在な天板5と駆動装置9とは患者台2を構成する。なお、治療領域に設置された駆動装置を適宜、治療領域駆動装置と呼ぶことにする。
【0012】
駆動装置9(9a、9b)は、天板5をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各軸方向に並進させ、X軸周りのθ方向、Y軸周りのφ方向、Z軸周りのξ方向の各方向に回転させる。X軸方向は天板5の長手方向であり、Y軸方向は天板5の短手方向であり、Z軸方向は天板5の上下方向である。θ方向はローリング方向であり、φ方向はピッチング方向であり、ξ方向はローテーション方向である。
【0013】
患者位置設定方法の概略を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1による患者位置設定方法の概略を説明する図である。図2(a)は準備室における患者15の位置決めを説明する図であり、図2(b)は患者15の搬送を説明する図であり、図2(c)は治療室における患者15の位置決め状態の再現を説明する図である。まず、患者15は、準備室にて、天板5に搭載され駆動装置9(9a)で高精度の位置決めを行う(位置情報決定手順)。
【0014】
患者台2(2a)は、着脱自在な天板5を複数の天板固定具6(6a、6b、6c、6d、図3(c)参照)により駆動装置9(9a)の天板支持部3(3a)に固定された状態である。患者15を患者台2(2a)の天板5に搭載して固定具4を取付け、レーザポインタによる粗据付などのセッティングを行う。次に、患者15の精密な位置決めを行う。準備室ではCT装置やX線撮像装置が設置されている。CT装置のCT画像またはX線撮像装置のX線画像を用いて、治療計画を作成する際に用いた基準CT画像の患部に合うように、駆動装置9(9a)の各軸方向を設定するモータを駆動して患者の位置決めを行う。準備室で位置決めされ、決定された患者台2(2a)の駆動装置パラメータは、ネットワークを通じて、治療室の患者台2(2b)に転送される。
【0015】
ここで、準備室の患者台2(2a)による位置決めは、治療室の患者台2(2b)におけるアイソンセンタを基準にして行われる。すなわち、準備室の患者台2aの駆動装置パラメータは、準備室の患者台2aにおける天板5上のアイソセンタが、治療室の患者台2bにおける天板5上のアイソセンタと一致するように調整されているか、または、準備室の患者台2aの駆動装置パラメータは、準備室の患者台2aにおける天板5上のアイソセンタが、治療室の患者台2bにおける天板5上のアイソセンタと一致するように、転送される駆動装置パラメータのデータをオフセット調整する。
【0016】
次に、患者15は天板5に固定された状態を保持したまま、天板5と共に搬送装置20により搬送される(患者搬送手順)。図2(b)に示すように、患者15が患者固定具4で固定された天板5を搬送装置20に載せて、治療室へ搬送する。図2(b)は、準備室から治療室へ向かう廊下等の床16(16c)を搬送して場合を示している。
【0017】
次に、患者15は、天板5に固定された状態を保持したまま、治療室の患者台2(2b)の駆動装置9(9b)に移動され、他の治療台2(2a)で位置決めされた状態を再現する(位置決め状態再現手順)。患者15は、天板5に固定された状態のまま、搬送装置20から治療室の患者台2(2b)の駆動装置9(9b)の天板支持部3(3b)に設置され、天板支持部3(3a、3b)と天板5に設けられた位置決め部により、天板5と天板支持部3(3b)の相対位置が再現される。天板5は、複数の天板固定具6(6a、6b、6c、6d)により駆動装置9(9b)の天板支持部3(3a)に固定される。その後、駆動装置9(9b)は、準備室で位置決めされた患者台2(2a)の駆動装置パラメータを取り込む。駆動装置9(9b)は、各軸方向を設定するモータを駆動して、天板5及び患者15を準備室で高精度に位置決めされた位置状態に再現する。位置決め状態が再現された後に、粒子線照射装置の照射ノズル1から荷電粒子線ビーム10を、患者15の患部に照射する。なお、位置決め部については後述する。
【0018】
図3は患者台を示す図であり、図4は搬送装置を示す図である。図3(a)は患者台2における駆動装置9の上面図であり、図3(b)は駆動装置9の側面図であり、図3(c)は患者台2の上面図、すなわち駆動装置9に天板5が設置された上面図である。図4(a)は搬送装置20の上面図であり、図3(b)は搬送装置20の側面図である。患者台2は、患者15を搭載する天板5と天板5を駆動する駆動装置9を有する。駆動装置9の天板支持部3は、天板5を支持する。天板支持部3は、駆動装置9の本体上部と天板支持板12により構成される。天板支持部3には、複数のエア駆動式ボールベアリング11(11a、11b)と、複数の天板固定穴13(13a、13b、13c、13d)が設けられる。
【0019】
エア駆動式ボールベアリング11は、製造ラインなどに一般的に用いられている製品であり、高圧エアを供給することでボールをリフトアップさせ、天板5をボールで支持し、搬送物をボールの回転により自在に移動させることができるものである。エア駆動式ボールベアリング11は、高圧エアを供給していない通常時には、ボール部が駆動装置9の上面よりも低くなるようにできる。エア駆動式ボールベアリング11は、必要な時にのみボールを上昇させ、ボールの回転による天板支持部3と天板15との間の滑り摩擦抵抗を低減することで、天板15を自在に移動させることができる。
【0020】
搬送装置20は、天板15を載せる搬送装置上面32に、複数のボールベアリング31(31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g)と、複数の天板固定穴37(37a、37b、37c、37d)が設けられる。搬送装置上面32の短手方向の両側にガイド35(35a、35b)が設けられる。搬送装置20の外周に手すり34が設けられ、搬送装置20の下部には4つのキャスター33(図4において33a、33b)及び固定ストッパー36が設けられる。固定ストッパー36は床16に圧接することで、搬送装置20を固定する。ボールベアリング31は、エア駆動式ボールベアリング11とは異なり、ボール部が搬送装置上面32よりも高くなっている。ボールベアリング31は、エア駆動式ボールベアリング11と同様に、ボールの回転による天板支持部3と天板15との間の滑り摩擦抵抗を低減することで、天板15を自在に移動させることができる。搬送装置上面32の短手方向の両側に設けたガイド35(35a、35b)により、天板5を搬送装置20へ搭載する場合や、天板5を搬送装置20から降ろす場合に、所定の方向に導くことができる。
【0021】
前述の位置決め部について説明する。駆動装置9と天板5との位置決めは、天板支持部3に設けられた複数の天板固定穴13(13a、13b、13c、13d)と天板5に設けられた複数の位置決め固定穴17(17a、17b、17c、17d)を用いる。位置決め固定穴17(17a、17b、17c、17d)は貫通穴である。位置決め固定穴17は、天板5の上面から見た場合に、天板固定穴13を包含するように形成される。駆動装置9における位置決め部は天板固定穴13であり、天板5における位置決め部は位置決め固定穴17である。ピン14を、天板固定穴13及び位置決め固定穴17に挿入する。例えば、ピン14の軸部分はテーパーを有しており、ピン14を天板固定穴13及び位置決め固定穴17に押し込むことで、天板固定穴13及び位置決め固定穴17は、所定の位置関係で位置決めされる。このように、天板5は、位置決め部である天板固定穴13及び位置決め固定穴17により、天板支持部3の所定の位置に位置決めされる。その後、図2(a)に示すように、天板固定具6により天板支持部3及び天板5を、例えば挟み込んで固定する。
【0022】
駆動装置9a及び駆動装置9bは、それぞれの天板支持部3において、同じ位置に天板固定穴13が設けられている。したがって、一方の位置決めされた駆動装置9bと天板5との位置関係は、他方(治療室)の駆動装置9aと天板5との位置関係は、同じになる。すなわち、一方の位置決めされた駆動装置9bと天板5との位置関係は、駆動装置9及び天板5の位置決め部により、移動先(治療室)の駆動装置9a及び天板5において再現することができる。
【0023】
搬送装置20にて搬送される際の天板5の固定について説明する。天板5は、ピン14を天板固定穴37及び位置決め固定穴17に挿入することで、搬送装置20に固定する。人が搬送装置20を搬送する場合は、天板5は搬送装置20から滑り落ちないように固定すれば充分なので、天板固定具6を用いて強固に固定しなくても構わない。なお、搬送装置20が駆動装置にてタイヤを回転させて搬送するなど、天板5を搬送装置20に強固に固定したい場合は、天板固定具6等の固定具を用いて固定する。
【0024】
図5〜図7を用いて、患者位置設定方法における位置決めを行う準備室の駆動装置9aから治療室の駆動装置9bに天板5及び患者15を移動する方法を詳しく説明する。図5は患者台から搬送装置への移動方法を説明する図であり、図6は搬送装置による患者の移動を示す図であり、図7は搬送装置から患者台への移動方法を説明する図である。図5(a)は患者15を搬送装置20に搭載する前の状態を示し、図5(b)、(c)は搬送装置20に搭載する途中状態を示し、図5(d)は患者15を搬送装置20に搭載した状態を示す図である。なお、図において天板固定具6は省略した。
【0025】
最初に治療前の患者を位置決め用の部屋(準備室等)にて、患者15は、着脱自在な天板5に搭載され駆動装置9で高精度の位置決め(位置情報決定手順)が行われる。位置決めが終了し、搬送装置20に転載する準備として、図5(a)に示すように、天板5及び患者15を床16(16a)に対してほぼ平行にする。
【0026】
天板5に固定された患者15を、固定状態を保ったまま搬送装置20に移し変える為、図5(b)に示すように搬送装置20を患者台2(駆動装置9)の天板支持部3に寄り付かせ、固定ストッパー36を用いて固定する。そして、駆動装置9と搬送装置20の上面が同じ高さになるように、駆動装置9の上下軸(Z軸)方向に調整する。次に図5(c)に示すように、駆動装置9の上面に配置されたエア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給する為のホース38を治療台に接続する。高圧エアは患者台2が置かれている部屋もしくはその他の部屋に設けられたコンプレッサー(図示せず)から供給する(送出準備手順)。図5は、高圧エア供給口が床16に配置されている例である。高圧エア供給口には、コンプレッサーから出力される高圧エアが供給される。もちろんホース38は駆動装置9の内部に設けられていてもよい。
【0027】
図示しない天板固定具6を外し、図示しないピン14を外す。エア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給することにより、天板5はボールで支持されることになり、患者15への負担なく人力で天板5に固定された患者15を水平の任意の位置に移動させることが可能となる。搬送装置20のガイド35に沿って、操作者は患者15を弱い力で容易に搬送装置20へ移動することができる。搬送装置上面32にも天板5を支持する為のボールベアリング31が配置されている為、天板5が患者台2のエア駆動式ボールベアリング11で支持できない位置まで移動した際にも、搬送装置上面32のボールベアリング31により搬送装置20の任意の位置まで天板5を移動させることができる。
【0028】
天板5の位置決め固定穴17を搬送装置20の天板固定穴37の上に来るように調整して、ピン14を天板固定穴37及び位置決め固定穴17に挿入する。図5(d)に示すように、患者15が搬送装置20に搭載された状態にする。
【0029】
患者15が搬送装置20に搭載された後に、患者15は天板5に固定された状態を保持したまま、天板5と共に搬送装置20により搬送される(患者搬送手順)。図6(a)は準備室における移動途中を示す図であり、図6(b)は治療室における移動途中を示す図である。図6(a)に示すように、搬送装置20は準備室の床16(16a)の上を移動し、廊下等の通路を経て治療室に到着する。図6(b)に示すように、治療室の床16(16b)の上を移動し、駆動装置9(9b)に近づく。
【0030】
次に、図7に示すように、患者15は、天板5に固定された状態を保持したまま、治療室の患者台2(2b)の駆動装置9(9b)に移動され、他の治療台2(2a)で位置決めされた状態を再現する(位置決め状態再現手順)。図7(a)は患者15を駆動装置9に搭載する前の状態を示し、図7(b)、(c)は駆動装置9に搭載する途中状態を示し、図7(d)は患者15を駆動装置9に搭載した状態を示す図である。なお、天板固定具6は記載を省略した。
【0031】
天板5に固定された患者15を、固定状態を保ったまま駆動装置9(9b)に移し変える為、図7(a)に示すように搬送装置20を駆動装置9(9b)の天板支持部3に寄り付かせ、固定ストッパー36を用いて固定する。そして、駆動装置9と搬送装置20の上面が同じ高さになるように、駆動装置9の上下軸(Z軸)方向に調整する。次に図7(a)に示すように、駆動装置9の上面に配置されたエア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給する為のホース38を駆動装置9に接続する。図7は、図5と同様に、高圧エア供給口が床16に配置されている例である。高圧エア供給口には、コンプレッサーから出力される高圧エアが供給される。
【0032】
図示しない天板固定具6を外し、図示しないピン14を外す。エア駆動式ボールベアリング11に高圧エアを供給することにより、天板5はボールで支持できる状態にする(受け入れ準備手順)。天板5はボールで支持されることになり、患者15への負担なく人力で天板5に固定された患者15を駆動装置9における水平の任意の位置に移動させることが可能となる。搬送装置上面32に配置されたボールベアリング31により、天板5は支持されているので、搬送装置20のガイド35に沿って、駆動装置9のエア駆動式ボールベアリング11の所まで移動させる。天板5の一部(先頭部分)がエア駆動式ボールベアリング11のボールにより支持されるようになると、操作者は患者15を弱い力で容易に駆動装置9へ移動することができる。
【0033】
天板5の位置決め固定穴17を駆動装置9の天板固定穴13の上に来るように調整して、ピン14を天板固定穴13及び位置決め固定穴17に挿入する。図7(c)に示すように、患者15が搬送装置20に完全に移動された状態にする。そして、図1に示すように、天板5は、複数の天板固定具6(6a、6b、6c、6d)により駆動装置9(9b)の天板支持部3(3a)に固定される。ホース38を外し、搬送装置20を駆動装置9から遠ざけて、図7(d)に示すように、患者15を駆動装置9(9b)に搭載した状態する。
【0034】
その後、駆動装置9(9b)は、準備室で位置決めされた患者台2(2a)の駆動装置パラメータを、ネットワークを通じて取得する。取得した駆動装置パラメータに基づいて、駆動装置9(9b)は、各軸方向を設定するモータを駆動して、天板5及び患者15を準備室で高精度に位置決めされた位置状態に再現する。位置決め状態が再現された後に、
粒子線照射装置の照射ノズル1から荷電粒子線ビーム10を、患者15の患部に照射する。
【0035】
実施の形態1の患者位置設定装置70は、位置決め用の部屋(準備室等)にて患部の位置を着脱自在な天板5に対して固定された患者15を、搬送装置20により固定状態を保ったまま、治療用の部屋(治療室)に移動させ、治療用の部屋に配置された患者台2の駆動装置9に天板5を移し替えることができる。駆動装置9に配置された天板固定穴13を用いて天板支持部3に天板5を固定することで、位置決め用の部屋での患者の患部位置を駆動装置9に対して高い精度で再現することが可能となる。すなわち、着脱自在な天板5と駆動装置9により構成される患者台2に対して、位置決め用の部屋での患者の患部位置を治療用の部屋においても高い精度で再現することが可能となる。位置決め用の部屋で位置決めされた患者台2(2a)の駆動装置パラメータを、ネットワークを通じて取得し、取得した駆動装置パラメータに基づいて、治療用の部屋の駆動装置9(9b)の各軸方向を設定するので、天板5及び患者15を位置決め用の部屋で高精度に位置決めされた位置状態に再現することができる。すなわち、実際に放射線を照射する際に用いる治療用の部屋の患者台2以外で患者15の位置決めを行い、患者台2の天板5に対する患者15の位置決めされた状態を保持して治療用の部屋に移動させ、治療用の部屋にて患者15の位置決め状態を再現することにより、患者15の位置設定を行うことができる。
【0036】
したがって、治療用の部屋の患者台2に患者15を固定し患部の精密な位置決めを行うセッティング作業(位置設定作業)に長時間(一般的には約10分)をかけることなく、治療用の部屋にて行う患者の位置設定作業を大幅に短縮することができる。このように、患者の位置設定作業を、着脱自在な天板5に対する患者の固定作業及び駆動装置の駆動装置パラメータを決定作業、すなわち位置決め用の部屋における患者の位置決め作業と、治療用の部屋における患者の位置決め状態再現作業を分けることができ、それぞれの作業を並列で行うことができるので、粒子線治療装置の効率的な運用を行うことができる。
【0037】
位置決め用の部屋における患者の位置決め作業を終了し、治療用の部屋に入る前に搬送装置20に載った状態で患者15が待機する待機室を設けてもよい。位置決め用の部屋、待機室、治療用の部屋において、3段階(位置決め作業の段階、待機の段階、位置決め状態再現及び治療の段階)を並列して行うことで、さらに粒子線治療装置の効率的な運用を行うことができる。
【0038】
治療用の部屋の駆動装置9(9b)に天板5を搭載し、天板固定穴13、位置決め固定穴17、ピン14を用いて天板15を固定する際にも、エア駆動式ボールベアリング11を使用することにより、駆動装置9(9b)に対して天板15を微調整して位置合わせすることが短時間に、弱い力で容易に行うことができる。
【0039】
なお、図5〜図7に記載されている天板5の移し変えの状態は図1における治療の際の状態と比べて患者15の向きが患者台2のローテーション方向に対して180度回転しているが、患者台2のローテーション方向の角度は180度によらず、どの角度で移し変えを実施してもかまわない。また、搬送装置20の寄り付きの方向に関しても図5及び図7では患者台2の長手方向から寄り付かせているが、患者台2および搬送装置20の外形やガイド位置によっては、長手方向と異なる方向、例えば短手方向から搬送装置20を寄り付かせて、天板5を移しかえるようにしても構わない。
【0040】
天板5は、患者台2において片持ちの張り出した構成となるように駆動装置9に取り付けられている。天板5を駆動装置9や搬送装置20に移動させる際に、天板5には若干のたわみが生じる。したがって、搬送装置20を患者台2の駆動装置9に寄りつける際や、駆動装置9の天板支持部3と搬送装置20の搬送装置上面32の高さを一定にする際など
に、駆動装置9の上下駆動の動作が伴う。この際、操作者が誤って駆動装置9を操作した場合、例えば、搬送装置20が寄り付いた状態で駆動装置9の高さを下げようとして、必要以上に天板5を下げてしまう場合等に、天板5に圧力が加わり、患者15が上方に持ちあげられる場合も考えられる。このような状況を回避するために、駆動装置9の上下駆動のストロークを、通常よりも制限する方法を追加してもよい。
【0041】
駆動装置9の上下駆動のストロークを制限する方法を説明する。治療に必要な駆動装置9の上下駆動のストロークは数百mmとなるが、患者15及び天板5の移動時は、天板5のたわみの調整分のみ移動させると考えれば、10mm〜20mm程度駆動できれば十分である。したがって、患者15及び天板5の移動時には必要最低限な範囲のみ駆動するように制限を設けることによって、上記の状況を回避することが可能である。駆動装置9の駆動を制限するためには、患者15及び天板5の移動時であることを駆動装置9が認識する必要がある。例えば第1の方法として、搬送装置20の設置位置にスイッチを設ける。スイッチは、キャスター33が踏むことで配線の接続や切断を行うものや、赤外線による送受信状態を検出して、配線の接続や切断を行うもの(赤外線型スイッチ)などを使用することができる。赤外線型スイッチは、搬送装置20に赤外線送信器を設け、床等に設置した赤外線受信器の信号を駆動装置9に入力するなどして構成することができる。また、第2の方法として、患者15及び天板5の移動時には、駆動装置9のローテーション角度を一定の値にし、しかも治療時には使用しないローテーション角度を選ぶことによって、この所定のローテーション角度(患者移動時角度)により上下駆動軸の駆動制限をかけるように制御してもよい。
【0042】
以上のように実施の形態1の患者位置設定装置70によれば、着脱自在な天板5と、天板5を駆動する第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aと、天板5を搬送する搬送装置20を備え、第1の駆動装置9bは放射線を照射する治療領域に設置され、第2の駆動装置9aは治療領域とは異なる場所に設置され、第1の駆動装置9b及び第2の駆動装置9aは、それぞれの天板支持部3に天板5との位置関係を決定する位置決め部13を有し、搬送装置20は、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5が設置された第2の駆動装置9aから、放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めされた患者15及び天板5を、第1の駆動装置9bへ搬送し、第1の駆動装置9bは、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5及び当該天板5に固定された患者15を設置し、第2の駆動装置9aにて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、第2の駆動装置9aにて位置決めされた状態に天板5及び患者15を駆動するので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0043】
以上のように実施の形態1の患者台2によれば、着脱自在な天板5と、天板5を駆動する駆動装置9を備え、駆動装置9は、天板支持部3に天板5との位置関係を決定する位置決め部13を有し、位置決め部13を用いて所定の位置に天板5及び当該天板5に固定された患者15を設置し、他の駆動装置9にて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、他の駆動装置9にて位置決めされた状態に天板5及び患者15を駆動するので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0044】
以上のように実施の形態1の搬送装置20によれば、放射線を照射する際に患者15を載置する天板5を搬送する搬送装置であって、位置決め部13を用いて所定の位置に天板
5が設置された第2の駆動装置9aから、放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めされた患者15及び天板5を、第1の駆動装置9bへ搬送するので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0045】
以上のように実施の形態1の患者位置設定方法によれば、放射線を照射する治療領域と異なる場所に設置された駆動装置9(9a)に配置された着脱自在な天板5に、患者15を固定し、患者15を放射線照射位置に放射線が照射されるように位置決めした駆動装置パラメータを決定する位置情報決定手順と、位置情報決定手順の後に、天板5及び当該天板5に固定された患者15を、搬送装置20により治療領域に設置された治療領域駆動装置9(9b)へ搬送する患者搬送手順と、搬送装置20にて搬送された天板5及び当該天板5に固定された患者15を、治療領域駆動装置9(9b)に配置し、駆動装置パラメータに基づいて、位置情報決定手順における位置決め状態を再現する位置決め状態再現手順を含むので、実際に放射線を照射する際に用いる治療領域の患者台以外で患者の位置決めを行い、患者台の天板に対する患者の位置決めされた状態を保持して治療領域に移動させ、治療領域にて患者の位置決め状態を再現でき、治療領域のある治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、治療室にて短時間に患者の位置設定を行うことができる。
【0046】
実施の形態2.
実施の形態1において、エア駆動式ボールベアリング11は駆動装置9にのみ設けることとしているが、搬送装置にもエア駆動式ボールベアリングを配置することで、実施の形態1より患者15の移し替えを容易にし、また、搬送装置にて部屋間を移動する際にも、患者をより安定して移動させることが可能となる。以下に説明する。図8は本発明の実施の形態2による搬送装置を示す図である。図8(a)は搬送装置30の上面図であり、図8(b)は搬送装置30の側面図である。実施の形態2の搬送装置30は、実施の形態1の搬送装置20とは、ボールベアリング31をエア駆動式ボールベアリング39に変更した点で異なる。エア駆動式ボールベアリング39は、上述のエア駆動式ボールベアリング11と同様の構造である。エア駆動式ボールベアリング39におけるボール数や、長さや幅はエア駆動式ボールベアリング11と異なっても構わない。
【0047】
実施の形態2の搬送装置30は、ボールベアリング31をエア駆動式ボールベアリング39に変更することで、搬送装置30に天板5を移し替えた後、エア駆動式ボールベアリング39の高圧エアを抜くことにより、天板5は搬送装置上面32で支持されることになり、実施の形態1よりも安定して患者15の移動を行うことができる。高圧エアの供給に関しては、図9(a)に示すように、駆動装置9と同じ供給源から、ホース38(38a)及びホース38(38b)を接続して供給すればよい。図9は本発明の実施の形態2による患者位置設定装置を示す図である。図9(a)は第1の搬送装置30(30b)及び患者位置設定装置70(70b)を示す図であり、図9(b)は第2の搬送装置30(30b)及び患者位置設定装置70(70c)を示す図であり、図9(c)は第3の搬送装置30(30c)及び患者位置設定装置70(70d)を示す図である。
【0048】
第2の搬送装置30(30b)は、搬送装置30(30b)にホース38(38a)を接続し、分岐を有するホース42で高圧エアを分岐させて、ホース38(38b)を駆動装置9に接続させた例である。また、駆動装置9の側から高圧エアを分岐させて、搬送装置30へ供給する形式をとることも可能である。
【0049】
第3の搬送装置30(30c)は、高圧エア供給用のコンプレッサー41を搬送装置30(30c)の内部に設けて、コンプレッサー41から、搬送装置30(30c)のエア駆動式ボールベアリング39及び駆動装置9のエア駆動式ボールベアリング11へ高圧エアを供給する例である。なお、高圧エア供給用のコンプレッサー41の代わりに、エアタンクを搬送装置30(30c)の内部に設けて、エアタンクから高圧エアを搬送装置30(30c)のエア駆動式ボールベアリング39及び駆動装置9のエア駆動式ボールベアリング11へ供給するようにしてもよい。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態1の駆動装置9は、エア駆動式ボールベアリング11を短手方向の両側に2本のみ配置した例で説明した。患者15をより安定に搬送装置20に移し替える為には、天板支持板12にもエア駆動式ボールベアリング11が配置されていることが望ましい。しかし、天板支持板12は放射線の照射位置に位置しており、天板支持板12にエア駆動式ボールベアリング11のように金属を配置すると、その箇所での位置決め画像がとれなくなり、天板5における照射可能範囲を大きく制限することにつながる。したがって天板支持板12はX線の吸収率が低い材質のみで構成されることが望ましい。また、天板支持板12をなくしてしまうと、駆動装置9における天板5を支持する部分が短くなり、天板5のたわみを少なくし、また強度をあげる為に、天板5を厚くする必要が出てくる。天板5を厚くすると、天板5が高価になり、また、天板5を通過させて患者に放射線を照射する場合、例えば天板5を通過して患者5に放射線を照射する場合、放射線の飛程への影響も大きくなる。したがって、天板支持板12により、天板5を支持する構成はそのまま残しつつ、エア駆動式ボールベアリングにて患者15を支持する領域を広げる方法が望まれる。実施の形態3では、天板支持板12により、天板5を支持する構成はそのまま残しつつ、エア駆動式ボールベアリングにて患者15を支持する領域を広げる方法を説明する。
【0051】
図10は、本発明の実施の形態3による患者位置設定装置を示す図である。図11は本発明の実施の形態3による患者台を示す図であり、図12は本発明の実施の形態3による搬送装置を示す図である。実施の形態3の患者位置設定装置70(70e)は、ボールベアリング31が患者台2の駆動装置に近づくように配置した搬送装置40と、搬送装置40の先端部分を内側へ挿入させることができる窪みを設けた天板支持板を有する駆動装置19とを備えた点で、実施の形態1の患者位置設定装置70(70a)とは異なる。図10(a)は、搬送装置40の先端部分である凸部46と、駆動装置19の窪みである凹部45とが接触した状態における上面図である。図10(b)は、図10(a)の状態の患者位置設定装置70(70e)の側面図である。図11(a)は駆動装置19の上面図であり、図11(b)は駆動装置19の側面図である。図12(a)は搬送装置40の上面図であり、図12(b)は搬送装置40の側面図である。
【0052】
駆動装置19の天板支持板44は、凹部45が設けられる。また、搬送装置40の先端部は天板支持板44の凹部45と係合する凸部46が設けられる。この搬送装置40の凸部46には、ボールベアリング31の一部がかかるように配置される。上記のような構造にすることで、天板5が駆動装置19に設置してある状態で、実施の形態1に比べて、天板5のより深い位置までボールベアリング31を挿入することができる。また、天板支持板44は凹部45の有無によって、天板5を支持するという目的を損なうことはない。すなわち、駆動装置19の天板支持板44における搬送装置40の側への延伸長Lが、駆動装置9の天板支持板12における搬送装置20の側への延伸長と同等にすることで、天板支持板44の凹部45を形成する周辺部分により天板5を充分に支持することができる。
【0053】
天板支持板44の凹部45は、搬送装置40の寄り付きの際に搬送装置40の凸部46を導くガイドの役割も果たす。この為、搬送装置40の寄り付きの際の操作性も向上することができる。なお、天板支持板44の凹部45は、図10及び図11に示した凹部45の深い部分が丸みを帯びたV字形状に限らず、例えば、凹部45の深い部分の丸みが小さい形状などでも同じ効果が得られる。
【0054】
なお、搬送装置40にボールベアリング31が配置された場合で説明したが、搬送装置40に実施の形態2に示したエア駆動式ボールベアリング39を配置してもよい。搬送装置40にエア駆動式ボールベアリング39を配置することで、さらに患者15の移し替えを容易にし、また、搬送装置40にて部屋間を移動する際にも、患者をより安定して移動させることが可能となる。
【0055】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4は、実施の形態1乃至3に示した患者位置設定装置70を備えた粒子線治療装置である。図13は本発明の実施の形態4による粒子線治療装置の概略構成図である。粒子線治療装置51は、ビーム発生装置52と、ビーム輸送系59と、粒子線照射装置58a、58bとを備える。ビーム発生装置52は、イオン源(図示せず)と、前段加速器53と、シンクロトロン54とを有する。粒子線照射装置58bは回転ガントリ(図示せず)に設置される。粒子線照射装置58aは回転ガントリを有しない治療室に設置される。ビーム輸送系59の役割はシンクロトロン54と粒子線照射装置58a、58bの連絡にある。ビーム輸送系59の一部は回転ガントリ(図示せず)に設置され、その部分には複数の偏向電磁石55a、55b、55cを有する。
【0056】
粒子線照射装置58aが設置された治療室には、患者台2(2a)が設置され、粒子線照射装置58bが設置された治療室には、患者台2(2b)が設置され、位置決め用の部屋(準備室等)には駆動装置9c(19c)が配置された例を示している。患者台2aには、駆動装置9a(19a)に天板5(5a)が搭載され、患者台2bには、駆動装置9b(19b)に天板5(5b)が搭載され例を示している。患者位置設定装置70は、位置決め用の部屋(準備室等)にて患部の位置を着脱自在な天板5に対して固定された患者15を、搬送装置20(30、40)により固定状態を保ったまま、治療室に移動させ、第1の治療室に配置された患者台2aの駆動装置9a(19a)や、第2の治療室に配置された患者台2bの駆動装置9b(19b)に、患者15及び天板5を載置する。
【0057】
位置決め用の部屋で位置決めされた患者台2の駆動装置9c(19c)の駆動装置パラメータを、ネットワークを通じて取得する。取得した駆動装置パラメータに基づいて、各治療室の駆動装置9a(19a)、9b(19b)は、各軸方向を設定するモータを駆動して、天板5及び患者15を準備室で高精度に位置決めされた位置状態に再現する。位置決め状態が再現された後に、以下の動作により、粒子線照射装置51の照射ノズル1から荷電粒子線ビーム10を、患者15の患部に照射する。
【0058】
イオン源で発生した陽子線等の粒子線である荷電粒子ビーム10は、前段加速器53で加速され、シンクロトロン54に入射される。荷電粒子ビーム10は、所定のエネルギーまで加速される。シンクロトロン54から出射された荷電粒子ビーム10は、ビーム輸送系59を経て粒子線照射装置58a、58bに輸送される。粒子線照射装置58a、58bは、照射口を設けた照査ノズル1から、荷電粒子ビーム10を患者15の患部(図1参照)に照射する。
【0059】
実施の形態4の粒子線治療装置51は、患者位置設定装置70により、実際に荷電粒子ビーム10を照射する際に用いる治療室の患者台2以外で患者15の位置決めを行い、患者台2の天板5に対する患者15の位置決めされた状態を保持して治療室に移動させ、治療室にて患者の位置決め状態を再現することにより、患者15の位置設定を行うことができるので、治療用の部屋にて行う患者の位置設定作業を大幅に短縮することができる。このように、患者の位置設定作業を、着脱自在な天板5に対する患者の固定作業及び駆動装置の駆動装置パラメータを決定作業、すなわち位置決め用の部屋における患者の位置決め作業と、治療用の部屋における患者の位置決め状態再現作業を分けることができ、それぞ
れの作業を並列で行うことができるので、粒子線治療装置51の効率的な運用を行うことができる。
【0060】
なお、実施の形態3において、搬送装置40の凸部46に、ボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39の一部がかかるように配置される例で説明したが、独立したボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39が、搬送装置40の凸部46に配置されるようにしてもよい。また、搬送装置40の凸部46に、ボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39がない場合でもよい。搬送装置40の凸部46が駆動装置19の凹部45に挿入されることで、実施の形態1や実施の形態2に比べて、ボールベアリング31やエア駆動式ボールベアリング39を駆動装置19に近づけることができるので、患者15をより安定に搬送装置20に移し替えることができる。また、実施の形態1乃至4の内容は、矛盾しない範囲で相互に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
2、2a、2b…患者台、3…天板支持部、5…天板、9、9a、9b、9c…駆動装置、10…荷電粒子線ビーム、11、11a、11b…エア駆動式ボールベアリング、12…天板支持板、13、13a、13b、13c、13d…天板固定穴、15…患者、20…搬送装置、30、30a、30b、30c…搬送装置、31、31a、31b、31c、31d、31、31e、31f、31g…ボールベアリング、32…搬送装置上面、37、37a、37b、37c、37d…天板固定穴、39、39a、39b、39c、39d、39、39e、39f、39g…エア駆動式ボールベアリング、41…コンプレッサー、44…天板支持板、45…凹部、46…凸部、51…粒子線治療装置、52…ビーム発生装置、54…シンクロトロン、58a、58b…粒子線照射装置、59…ビーム輸送系、70、70a、70b、70c、70d、70e…患者位置設定装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する際に患者を載置し、前記患者における計画された放射線照射位置に前記放射線が照射されるように前記患者の位置設定を行う患者位置設定装置であって、
着脱自在な天板と、前記天板を駆動する第1の駆動装置及び第2の駆動装置と、前記天板を搬送する搬送装置を備え、
前記第1の駆動装置は前記放射線を照射する治療領域に設置され、前記第2の駆動装置は前記治療領域とは異なる場所に設置され、
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に前記天板との位置関係を決定する位置決め部を有し、
前記搬送装置は、前記位置決め部を用いて所定の位置に前記天板が設置された前記第2の駆動装置から、前記放射線照射位置に前記放射線が照射されるように位置決めされた前記患者及び前記天板を、前記第1の駆動装置へ搬送し、
前記第1の駆動装置は、前記位置決め部を用いて所定の位置に前記天板及び当該天板に固定された前記患者を設置し、前記第2の駆動装置にて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、前記第2の駆動装置にて位置決めされた状態に前記天板及び前記患者を駆動することを特徴とする患者位置設定装置。
【請求項2】
前記第1の駆動装置は、前記天板支持部にエア駆動式ボールベアリングを有し、
前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記位置決め部を用いて所定の位置に設置する際に、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項1記載の患者位置設定装置。
【請求項3】
前記第2の駆動装置は、前記天板支持部にエア駆動式ボールベアリングを有し、
前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記搬送装置に移動する際に、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項2記載の患者位置設定装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板をボールで支持するボールベアリングを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、エア駆動式ボールベアリングを有し、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記第2の駆動装置から移動する際、または前記第1の駆動装置に移動する際に、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項6】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に凹部が形成された天板支持板を有し、
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板支持板の凹部に挿入する凸部を有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項7】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に凹部が形成された天板支持板を有し、
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板支持板の凹部に挿入する凸部を有し、前記凸部に前記天板をボールで支持するボールベアリングが配置されたことを特徴とする請求項6記載の患者位置設定装置。
【請求項8】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に凹部が形成さ
れた天板支持板を有し、
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板支持板の凹部に挿入する凸部を有し、前記凸部に前記エア駆動式ボールベアリングが配置され、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項6記載の患者位置設定装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給するエア供給器を備えたことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項10】
前記第2の駆動装置は、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記搬送装置に移動する際に、当該第2の駆動装置が設置された床に対する上下駆動のストロークを通常よりも制限することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項11】
前記第1の駆動装置は、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記搬送装置から移動する際に、当該第1の駆動装置が設置された床に対する上下駆動のストロークを通常よりも制限することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームを発生させ、加速器により所定のエネルギーまで加速するビーム発生装置と、前記ビーム発生装置により加速された荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送系と、前記ビーム輸送系で輸送された荷電粒子ビームを照射対象に照射する粒子線照射装置と、前記荷電粒子ビームを照射する患者の位置設定を行う患者位置設定装置を備え、
前記患者位置設定装置は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の患者位置設定装置であることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項13】
放射線を照射する際に患者を載置し、前記患者における計画された放射線照射位置に前記放射線が照射されるように前記患者の位置設定を行う患者台であって、
前記患者台は、着脱自在な天板と、前記天板を駆動する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の患者位置設定装置の駆動装置であることを特徴とする患者台。
【請求項14】
放射線を照射する際に患者を載置する天板を搬送する搬送装置であって、
前記搬送装置は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の患者位置設定装置の搬送装置であることを特徴とする搬送装置。
【請求項15】
放射線を照射する際に患者を載置し、前記患者における計画された放射線照射位置に前記放射線が照射されるように前記患者の位置設定を行う患者位置設定方法であって、
前記放射線を照射する治療領域と異なる場所に設置された駆動装置に配置された着脱自在な天板に、前記患者を固定し、前記患者を前記放射線照射位置に前記放射線が照射されるように位置決めした駆動装置パラメータを決定する位置情報決定手順と、
前記位置情報決定手順の後に、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、搬送装置により前記治療領域に設置された治療領域駆動装置へ搬送する患者搬送手順と、
前記搬送装置にて搬送された前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、治療領域駆動装置に配置し、前記駆動装置パラメータに基づいて、前記位置情報決定手順における位置決め状態を再現する位置決め状態再現手順を含むことを特徴とする患者位置設定方法。
【請求項16】
前記駆動装置及び前記治療領域駆動装置は、それぞれの天板支持部に前記天板との位置関係を決定する位置決め部を有し、
前記位置決め状態再現手順は、前記位置決め部を用いて前記治療領域駆動装置における所
定の位置に前記天板及び当該天板に固定された前記患者を配置する手順を含むことを特徴とする請求項15記載の患者位置設定方法。
【請求項1】
放射線を照射する際に患者を載置し、前記患者における計画された放射線照射位置に前記放射線が照射されるように前記患者の位置設定を行う患者位置設定装置であって、
着脱自在な天板と、前記天板を駆動する第1の駆動装置及び第2の駆動装置と、前記天板を搬送する搬送装置を備え、
前記第1の駆動装置は前記放射線を照射する治療領域に設置され、前記第2の駆動装置は前記治療領域とは異なる場所に設置され、
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に前記天板との位置関係を決定する位置決め部を有し、
前記搬送装置は、前記位置決め部を用いて所定の位置に前記天板が設置された前記第2の駆動装置から、前記放射線照射位置に前記放射線が照射されるように位置決めされた前記患者及び前記天板を、前記第1の駆動装置へ搬送し、
前記第1の駆動装置は、前記位置決め部を用いて所定の位置に前記天板及び当該天板に固定された前記患者を設置し、前記第2の駆動装置にて位置決めされた駆動装置パラメータに基づいて、前記第2の駆動装置にて位置決めされた状態に前記天板及び前記患者を駆動することを特徴とする患者位置設定装置。
【請求項2】
前記第1の駆動装置は、前記天板支持部にエア駆動式ボールベアリングを有し、
前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記位置決め部を用いて所定の位置に設置する際に、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項1記載の患者位置設定装置。
【請求項3】
前記第2の駆動装置は、前記天板支持部にエア駆動式ボールベアリングを有し、
前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記搬送装置に移動する際に、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項2記載の患者位置設定装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板をボールで支持するボールベアリングを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、エア駆動式ボールベアリングを有し、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記第2の駆動装置から移動する際、または前記第1の駆動装置に移動する際に、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項6】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に凹部が形成された天板支持板を有し、
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板支持板の凹部に挿入する凸部を有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項7】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に凹部が形成された天板支持板を有し、
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板支持板の凹部に挿入する凸部を有し、前記凸部に前記天板をボールで支持するボールベアリングが配置されたことを特徴とする請求項6記載の患者位置設定装置。
【請求項8】
前記第1の駆動装置及び前記第2の駆動装置は、それぞれの天板支持部に凹部が形成さ
れた天板支持板を有し、
前記搬送装置は、前記天板を載せる搬送装置上面に、前記天板支持板の凹部に挿入する凸部を有し、前記凸部に前記エア駆動式ボールベアリングが配置され、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給し、前記天板をボールで支持することを特徴とする請求項6記載の患者位置設定装置。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記エア駆動式ボールベアリングに高圧エアを供給するエア供給器を備えたことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項10】
前記第2の駆動装置は、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記搬送装置に移動する際に、当該第2の駆動装置が設置された床に対する上下駆動のストロークを通常よりも制限することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項11】
前記第1の駆動装置は、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、前記搬送装置から移動する際に、当該第1の駆動装置が設置された床に対する上下駆動のストロークを通常よりも制限することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の患者位置設定装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームを発生させ、加速器により所定のエネルギーまで加速するビーム発生装置と、前記ビーム発生装置により加速された荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送系と、前記ビーム輸送系で輸送された荷電粒子ビームを照射対象に照射する粒子線照射装置と、前記荷電粒子ビームを照射する患者の位置設定を行う患者位置設定装置を備え、
前記患者位置設定装置は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の患者位置設定装置であることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項13】
放射線を照射する際に患者を載置し、前記患者における計画された放射線照射位置に前記放射線が照射されるように前記患者の位置設定を行う患者台であって、
前記患者台は、着脱自在な天板と、前記天板を駆動する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の患者位置設定装置の駆動装置であることを特徴とする患者台。
【請求項14】
放射線を照射する際に患者を載置する天板を搬送する搬送装置であって、
前記搬送装置は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の患者位置設定装置の搬送装置であることを特徴とする搬送装置。
【請求項15】
放射線を照射する際に患者を載置し、前記患者における計画された放射線照射位置に前記放射線が照射されるように前記患者の位置設定を行う患者位置設定方法であって、
前記放射線を照射する治療領域と異なる場所に設置された駆動装置に配置された着脱自在な天板に、前記患者を固定し、前記患者を前記放射線照射位置に前記放射線が照射されるように位置決めした駆動装置パラメータを決定する位置情報決定手順と、
前記位置情報決定手順の後に、前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、搬送装置により前記治療領域に設置された治療領域駆動装置へ搬送する患者搬送手順と、
前記搬送装置にて搬送された前記天板及び当該天板に固定された前記患者を、治療領域駆動装置に配置し、前記駆動装置パラメータに基づいて、前記位置情報決定手順における位置決め状態を再現する位置決め状態再現手順を含むことを特徴とする患者位置設定方法。
【請求項16】
前記駆動装置及び前記治療領域駆動装置は、それぞれの天板支持部に前記天板との位置関係を決定する位置決め部を有し、
前記位置決め状態再現手順は、前記位置決め部を用いて前記治療領域駆動装置における所
定の位置に前記天板及び当該天板に固定された前記患者を配置する手順を含むことを特徴とする請求項15記載の患者位置設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−148026(P2012−148026A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10761(P2011−10761)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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