説明

患者用人工呼吸器の制限装置

【課題】患者用人工呼吸器の制限装置に関し、該装置が人工呼吸器のガス流路に接続されている際は該装置の上流側に背圧が生じ、該装置が該ガス流路から外れた際は該装置内の背圧が減少して流体圧警報器を作動させる患者用人工呼吸器の制限装置を提供する。
【解決手段】人工呼吸器の制限装置30は、空気供給管の下流側末端に接続され、気管内チューブコネクタへ嵌め込まれる。空気供給管の内部圧力を維持するため、制限装置30は開口断面積が制限された通孔30Aを有する。背圧減少による警報機の作動は、空気供給管の脱離を意味する。制限装置30が前記コネクタから外れた場合警報機を確実に作動させるため、制限装置30の下流側末端に、前記通孔30Aとその上流側に開口部30Bを有する。開口部30Bは、前記コネクタへ接続時には前記コネクタの内壁で塞がれ、前記コネクタから外れた場合は開放され、空気供給管内部の背圧を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者用人工呼吸器の制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、患者用人工呼吸器では、気管内チューブコネクタ(ET チューブコネクタ)を経由して、人工呼吸器から患者へと管が続く。気管内チューブコネクタは、人工呼吸器からのガスの流れを一定に制限する機能を有する。気管内チューブコネクタの働きによって、気流回路内において、連続的な吸気圧あるいは背圧が生じる。この気流回路は、回路の吸気側に沿って患者へと向かう。気流回路において、吸気側は呼気側の反対側に位置する。気流回路内の気圧は、連続的にモニターされ、患者へのガスの供給にリークがないかチェックされる。例えば、気流回路が人工呼吸器から断絶すると、背圧が低下して警報機が作動する。
【0003】
ただし、問題は、気管内チューブコネクタに嵌め込まれた制限装置の管状部が、気管内チューブコネクタから外れても、背圧が残存してしまうため、患者は人工呼吸を受けていないにもかかわらずリークを知られる警報が鳴らないことである。
【0004】
添付図面を参照して説明する。
【0005】
図1は、基本的な患者用人工呼吸回路の模式図、
図2は、人工呼吸回路に用いられる従来の制限装置の概観図、
図3は、図2と似ているが、気管内チューブコネクタから外れた状態にある従来の制限装置の概観図である。
【0006】
図1に示すように、チューブ2が、人工呼吸器1から従来の制限装置3へと繋がっている。制限装置3は気管内チューブコネクタ4に繋がっている。 もう一方のチューブ5は、患者から人工呼吸器1へと呼気を送り返す。
【0007】
図2に示すように、制限装置3は、チューブ2の下流側の末端と繋がり、気管内チューブコネクタ4の上流側の末端に嵌め込まれる。矢印Fは、気流の向きを示す。
【0008】
制限装置3の両端の中間部分には、ガス流量の制限器Aが備わっている。制限器3Aはチューブ2内で必要な背圧を生じさせる。
【0009】
しかし、図3から明らかなように、制限装置3が気管内チューブコネクタ4から外れても、チューブ2内の背圧が残存しまう。そのため、患者が人工呼吸を受けていないにもかかわらず、リークを知らせる警報が作動しない。それ故に、これは、フェール・セーフ(fail−safe)でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、制限装置が人工呼吸器のガス流路に接続されている際は、制限装置の上流側へ背圧を生じさせ、制限装置が人工呼吸器のガス流路から外れた際は、制限装置内の背圧を減少させ、その結果、流体圧警報器を作動させることできるフェール・セーフな患者用人工呼吸器の制限装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
患者用人工呼吸器1と患者との間のガス流路2に使用時において配置され、制限された通孔30Aを持つ管状部を有する患者用人工呼吸器1の制限装置30であって、
前記通孔30Aが、前記管状部の末端に位置し、前記管状部の下流側へガスを流し、かつ、前記制限装置30の上流側へ背圧を生じさせるようになっており、
前記制限装置の側壁には少なくとも1つの開口部30Bが配置され、前記制限装置が前記患者用人工呼吸器のガス流路から外れた時には、前記開口部が前記背圧を減少させることにより流体圧警報器を作動させ、制限装置の通常使用時には、前記管状部が他部品へ接続された状態において、前記開口部が前記他部品の内壁で塞がれることにより前記背圧を維持するように構成してあることを特徴とする患者用人工呼吸器の制限装置が提供される。
【0012】
好ましくは、前記制限装置30は、気管内チューブコネクタ4に嵌め込まれ、前記気管内チューブコネクタ4との組み合わせで使用される。
【0013】
好ましくは、前記制限装置30を気管内チューブコネクタ4に嵌め込んだ際、前記開口部30Bが、前記気管内チューブコネクタ4の内壁で塞がれ、通孔30Aが、前記気管内チューブコネクタの内部に位置するように、前記気管内チューブコネクタと前記制限装置とを組み合わせる。
【0014】
本願発明は、患者用人工呼吸器の制限装置を提供するものである。この制限装置は、使用の際、人工呼吸器と患者との間のガス流路に配置される。また、この制限装置は、管状部を有する。この管状部は、その末端に開口断面積が制限された通孔を有する。この通孔は、管状部の下流へ向かってガスを流す一方、制限装置の上流へ向かう背圧も生じさせる。そして、制限装置の側壁には、少なくとも1つの開口部がある。この開口部は、制限装置が人工呼吸器のガス流路から外れた際、背圧を減少させるように働き、その結果、流体圧の警報器が作動する。制限装置の通常使用時には、制限装置の管状部は他部品に接続される。開口部は、制限装置と接続する他部品の内壁によって塞がれるような位置に配置されている。よって、制限装置が他部品に接続されている状態では、背圧が維持される。
【0015】
制限装置の管状部が接続される部分は、気管内チューブコネクタであっても良い。
【0016】
開口断面積が制限された通孔は、従来の装置のように、制限装置両端の中間に位置するのではなく、一方の端部に位置する。したがって、通常の使用状態では、開口断面積が制限された通孔によってチューブ2内の背圧が維持される。一方、制限装置の側壁に新たに備わった開口部は、制限装置が気管内チューブコネクタに嵌め込まれているとき、制限装置の側壁が気管内チューブコネクタの中へ嵌め込まれるため、気管内チューブコネクタの内壁によって塞がれる。しかし、制限装置が気管内チューブコネクタから外れるとただちに、チューブ2内の気流が開口部から放出され、チューブ2内の背圧が減少する。よって、不具合が発生した際にアラームを作動させることができ、フェール・セーフな制御が実現する。
【発明の効果】
【0017】
本願発明に係る患者用人工呼吸器1の制限装置30では、制限装置が人工呼吸器のガス流路に接続されている際は、制限装置の上流側へ背圧を生じさせ、制限装置が人工呼吸器のガス流路から外れた際は、制限装置内の背圧を減少させ、その結果、流体圧警報器を作動させることのできる、フェール・セーフな制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明をより詳細に説明し、その効果を示すために、図4〜6に、本願発明の実施例を示す。ここにおいて、
図4は本願発明に係る制限装置の概観図、
図5は、ガス供給管の下流側の末端と、気管内チューブコネクタの上流側との間に嵌め込まれた、本願発明に係る制限装置の概観図、
図6は、本願発明に係る制限装置が気管内チューブコネクタから外れた状態を示す。
【0019】
図4〜6では、本願発明に係る制限装置は、参照番号30で示される。制限装置の外観は、従来のタイプの装置3と似ている。それゆえ、制限装置30の上流側の末端は、従来の装置と同様に、人工呼吸器1から続くチューブ2の下流側の末端に嵌め込まれ、制限装置30の下流側の末端は気管内チューブコネクタ4の上流側の末端に嵌め込まれる。
【0020】
上述したように、従来の装置3との主な相違点は、開口断面積が制限された通孔30Aが、制限装置30の下流側末端に配置され、開口部30Bが制限装置30の管状部に配置されたことにある。図5に示すように、この管状部は、使用時において、気管内チューブコネクタ4の末端における開口部の内側に摩擦嵌合されて、隙間なく嵌め込まれる。換言すれば、開口部30Bは、気管内チューブコネクタ4の内壁によって塞がれる。この場合、チューブ2内の背圧は維持される。
【0021】
しかし、図6に示すように、制限装置30が、気管内チューブコネクタ4から外れると直ちに、開口部30Bが開き、背圧が低下して、警報機が作動する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、基本的な患者用人工呼吸回路の模式図である。
【図2】図2は、人工呼吸回路に用いられる従来の制限装置の概観図である。
【図3】図3は、図2と似ているが、気管内チューブコネクタから外れた状態にある従来の制限装置の概観図である。
【図4】図4は本願発明に係る制限装置の概観図である。
【図5】図5は、ガス供給管の下流側の末端と、気管内チューブコネクタの上流側との間に嵌め込まれた、本願発明に係る制限装置の概観図である。
【図6】図6は、本願発明に係る制限装置が気管内チューブコネクタから外れた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1… 患者用人工呼吸器
2… チューブ
4… 気管内チューブコネクタ
30… 制限装置
30A… 制限された通孔
30B… 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者用人工呼吸器(1)と患者との間のガス流路(2)に使用時において配置され、制限された通孔(30A)を持つ管状部を有する患者用人工呼吸器(1)の制限装置(30)であって、
前記通孔(30A)が、前記管状部の末端に位置し、前記管状部の下流側へガスを流し、かつ、前記制限装置(30)の上流側へ背圧を生じさせるようになっており、
前記制限装置の側壁には少なくとも1つの開口部(30B)が配置され、前記制限装置が前記患者用人工呼吸器のガス流路から外れた時には、前記開口部が前記背圧を減少させることにより流体圧警報器を作動させ、制限装置の通常使用時には、前記管状部が他部品へ接続された状態において、前記開口部が前記他部品の内壁で塞がれることにより前記背圧を維持するように構成してあることを特徴とする患者用人工呼吸器の制限装置。
【請求項2】
気管内チューブコネクタ(4)に嵌め込まれ、前記気管内チューブコネクタ(4)との組み合わせで使用されることを特徴とする請求項1に記載の患者用人工呼吸器の制限装置。
【請求項3】
前記制限装置(30)を気管内チューブコネクタ(4)に嵌め込んだ際、前記開口部(30B)が、前記気管内チューブコネクタ(4)の内壁で塞がれ、通孔(30A)が、前記気管内チューブコネクタの内部に位置することを特徴とする請求項2に記載の制限装置と気管内チューブコネクタとの組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−181347(P2006−181347A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321340(P2005−321340)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(500150539)エスエルイー リミテッド (1)