悪性腫瘍の治療のための免疫活性化血液灌流フィルタ
本発明は、生体非適合性生体材料を用いたアフェレーシス処置を約1時間付すことにより、ヒトにおいて自然免疫学的な活性化状態を生み出す方法を提供する。この処置によって誘導される免疫学的ショックを安全に制御するために、ヒトに約6時間(アフェレーシス時間及びその後の少なくとも更に5時間を含む)、全身麻酔をかける。この免疫学的活性化は、悪性腫瘍及び免疫抑制に関連した疾患(例えば、AIDS)を治療するのに有用である。本発明はまた、悪性腫瘍及び感染性疾患を治療するための生体非適合性材料を伴う血液灌流フィルタを含有するアフェレーシスカラムの使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/249,867号に基づいており、またその利益を主張する。この仮出願の全開示に依存しており、この仮出願は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
導入
悪性腫瘍は、免疫学的に抑制されている患者において発症し得る。多数の悪性腫瘍細胞が、毎日体内で産生される。幸運にも、免疫系はそれらを「正常ではない」細胞又は「非自己」細胞として認識し、続いてそれらを毎日破壊する。したがって、免疫系が適切に機能していれば、がんを発症する機会は低減する。
【0003】
免疫系は、ワクチン接種を介して活性化させることができる。しかしながら、ワクチンが使用される場合に、患者自身の免疫系によるがん細胞に対する結果として生じる攻撃は、十分に強力ではない。患者の免疫系が破壊すべき細胞として認識していない悪性腫瘍細胞を破壊可能になるには、より有効でかつより強力な免疫学的(immunogical)攻撃が必要とされる。結果として、悪性腫瘍の治療は、腫瘍の原発巣の外科的除去だけでなく、身体全体にわたって考え得る転移性腫瘍細胞を破壊するための薬物療法及び放射線療法も包含する。不運にも、抗がん剤療法は、多くの場合に、有効な治療転帰を達成する前に薬物療法の中断を余儀なくさせかねない様々なタイプの疎ましい副作用をもたらす。
【0004】
これまで、患者の免疫系を抑制するアフェレーシス療法は、自己免疫疾患を治療するのに使用されてきた。これらのタイプの患者に関して、自己免疫疾患を引き起こす血中の病理学的分子の除去により、治療効果を示した。これらのタイプの患者に関して、自己抗体、免疫複合体、サイトカイン及び活性化された補体のような体液性因子、並びに白血球のような細胞性因子が、アフェレーシスにより除去された。このタイプの治療法は、患者において免疫学的に抑制された状態を創出し、これはがん患者を治療するのに必要とされる免疫系に対して正反対の効果である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、アフェレーシスカラム中に存在する体外血液灌流フィルタを使用することによってヒトの免疫系を強力に活性化させる方法を提供する。結果として生じる免疫活性化は、アポトーシスによる悪性腫瘍細胞の破壊をもたらす。しかしながら、本発明の方法は、ヒトに対し、一過性の低血圧及び低酸素症を含むかなりの生理学的影響を引き起こす。これらの影響を管理するために、体外アフェレーシスは、全身麻酔下でヒトに実施される。慎重な血圧及び酸素飽和度のモニタリングを伴う全身麻酔は、ヒトの免疫系の安全な活性化を確保し、この処置に関連したいかなる不快感をも排除する。全身麻酔は、アフェレーシス処置中だけでなく、6時間の体内免疫活性調節期間中にも施される。
【0006】
生体非適合性材料を伴う灌流フィルタを使用して、免疫賦活を導入することが可能である。およそ100ml/分の速度で1時間、かかるフィルタを含有するアフェレーシスカラムに通して患者の血液を灌流させることにより、かかる状態を発生させることができる。本発明の方法は、初期の30分の体外循環中に免疫活性化を導く。免疫活性化により悪性腫瘍を治療するためのこの分子手術(molecular surgery)処置は、最初の30分で直接的かつ制御可能な効果を導き、数時間で正常に戻る。これらの影響としては、低血圧(血圧のおよそ50%低下)、白血球減少症(白血球のおよそ70%低下)、及び、処置が始まって30分後に生じる最低血中酸素濃度による低酸素症の結果として生じる呼吸障害を引き起こす。
【0007】
これらの影響は、アフェレーシスカラムに通す血流を低減させることによって、及び生理学的サポートをヒトに提供することによって元に戻すことができる。かかるサポートとしては、気管内挿管を伴う全身麻酔、血圧制御(血圧の連続的なモニタリング)及び酸素供給制御(血中酸素飽和度の連続的なモニタリング)が挙げられる。
【0008】
免疫活性化アフェレーシス系により誘導される一過性のショック症侯群のため、特定の免疫活性化カラムはこれまで臨床的に提供又は適用されなかった。米国食品医薬品局は、かかるアフェレーシス系を、それらの使用に付随するショック症侯群のため臨床上安全ではないとみなしてきた。本発明の方法は、本発明による血液灌流フィルタの使用に付随して起こるショック症侯群を制御しながら同時に免疫系を強力に活性化させる方法を提供することによって、この問題を克服する。
【0009】
本発明の血液灌流フィルタ中に存在する生体非適合性材料により誘導される制御された免疫学的ショックにより、実験動物に対して免疫活性化状態が生じる。安全で無痛性で有効でかつ再現性ある治療結果を提供するためには、気管内挿管を伴う全身麻酔が、1時間のアフェレーシス処置中だけでなく、更に5時間提供される。この手順で処理した動物は、動物実験中に死滅せず、また処置に関連した(procedurally related)身体的あるいは感覚的異常は示されなかった。
【0010】
約6時間全身麻酔を提供することは、最初の30分のショックの低血圧及び低酸素段階だけでなく、動物が血行動態的に正常化されるようになる回復段階も包含する。6時間後、肺に蓄積された白血球が、全身循環に復帰する。アフェレーシスの初期段階中では、顆粒球はほぼ100%減少する一方で、リンパ球は、40%〜50%だけしか減少せず、これが、ヒト免疫系において一過性のリンパ球優性状態を創出する。6時間の全身麻酔中、免疫賦活サイトカインTNF−α及びIL−6は、1000倍まで増加させることができる。6時間後、血中の白血球数は、ほぼ処置前のレベルに戻り、その後更に増加する。4日後、白血球数は、処置前のレベルと比較して2倍を上回る。次に、細胞性活性化及び体液性活性化は、2週後に正常化される。
【0011】
本発明の方法により提供される免疫賦活の誘導は、悪性腫瘍の治療や後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む不治の感染性疾患の処置に対し、治療効果を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のアフェレーシス方法の結果として患者において起こる免疫活性化の影響の模式図を提供する。体液性因子が活性化されるだけでなく、細胞性因子も活性化される。
【図2】手製のセロファン膜による血液透析に関する3時間の体外循環(血流200ml/分)の結果を示す図である。セロファン膜は、アフェレーシスに使用される合成膜よりも血液非適合性であるとみなされる。
【図3】肺毛細血管中の一過性の白血球捕捉を含む本発明の免疫活性化フィルタを使用したアフェレーシスにより導入される生理学的影響の模式図を提供する。
【図4】以下の生体非適合性材料:ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)及び酢酸セルロース(CA)を使用した経時的な血中の白血球数に対するアフェレーシスの影響を示す図である。
【図5】図5Aは、本発明によるアフェレーシスカラムの一例の模式図を提供する。図5Bは、カラムの一実施形態の写真である。
【図6】以下の生体非適合性材料:ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)及び酢酸セルロース(CA)を使用した経時的な引入側血液及び引出側血液における因子C3aの測定による補体活性化に対するアフェレーシスの影響を示す図である。
【図7】シリンジ及び生体非適合性材料を含む小型血液フィルタリングカラムの模式図を提供する。
【図8】酸及びアルカリで、又は生理食塩水でエジプト綿を処理することによる、処理した綿を通した濾過後の血中の或る特定の細胞型の数に対する影響を示す図である:(A)赤血球(RBC)、(B)白血球(WBC)、(C)血小板(Plt)並びに(D)好中球及びリンパ球。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。RBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。WBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。Pltに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。好中球及びリンパ球に関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。
【図9】全血から或る特定の細胞型、つまり、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球について、種々のタイプの綿繊維及びPVA繊維間の除去能の比較を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。RBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。WBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。Pltに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。好中球及びリンパ球に関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。
【図10】全血から好中球及びリンパ球を除去するための種々のタイプの綿繊維の能力についての比較を示す図である。
【図11】0.125g/mlの密度である場合のエジプト綿繊維の、様々な容積の全血から或る特定の細胞型、すなわち、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。各図のY軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。RBC及びPltは、細胞の数×104/μlの数として示された。WBC及び好中球/リンパ球は、細胞の数/μlとして示された。
【図12】0.05g/mlの密度である場合のエジプト綿繊維の、様々な容積の全血から或る特定の細胞型、すなわち、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。各図のY軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。RBC及びPltは、細胞の数×104/μlとして示された。WBC及び好中球/リンパ球は、細胞の数/μlとして示された。
【図13】様々な容積の全血から或る特定の細胞型、すなわち、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力に対するエジプト綿繊維の密度の影響を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図14】エジプト綿繊維の、全血から(A)RBC及び(B)WBCを除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図15】エジプト綿繊維の、全血から(A)Plt並びに(B)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図16】絹繊維の、全血から(A)RBC及び(B)WBCを除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは生理食塩水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図17】絹繊維の、全血から(A)Plt並びに(B)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは生理食塩水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図18】エジプト綿繊維の、全血から(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する弱イオンビーム照射による生体化の影響を示す図である。
【図19】エジプト綿繊維の、全血から(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する強イオンビーム照射による生体化の影響を示す図である。
【図20】血液の灌流前及び灌流後の白血球分析を示す図である。(A)好中球及び(B)リンパ球。
【図21】本発明の一実施形態による6時間の灌流を受けたイヌの血圧及び体温を示す図である。
【図22】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌにおけるWBC、RBC、Plt及びフィブリノーゲンのレベルを示す図である。
【図23】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌにおけるリンパ球、好中球及び単球の回復の動態を示す図である。Y軸は、各時点での全血中に存在する各細胞型の数を示す。
【図24】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌにおけるリンパ球、好中球及び単球の回復の動態を示す図である。Y軸は、各時点でのイヌの全血における総細胞に対するパーセントとしての各細胞型の存在を示す。
【図25】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌの血中の腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)及びインターロイキン6(IL−6)のレベルを示す図である。Y軸は、1ミリリットル当たりに存在するサイトカインの量(ピコグラム)を示すのに対して、X軸は、灌流の開始後の分を表す。
【図26】本発明の方法による処理後のアフェレーシスレシピエントの血中の白血球動態のグラフを示す図である。X軸は、アフェレーシスが始まってから経過した時間に関連する各相を示す。Y軸は、白血球数の相対単位を示し、1.0は、アフェレーシスの開始時の血中の白血球のレベルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記で論述するように、多数の悪性腫瘍細胞が、毎日ヒトの体内で産生される。幸運にも、免疫系はそれらを異常細胞として認識して、それらを毎日破壊する。免疫系が適切に機能していれば、がんを発症する機会が最低限に抑えられる。不運にも、ヒトの免疫系が抑制されていると、がん細胞は、破壊されるべき外来細胞として認識されない。この状況では、がん細胞は、悪性腫瘍中に取り残されて、宿主中で無限に成長する。
【0014】
悪性腫瘍に関する治療法を開発するために、本発明は、患者の免疫学的活性化状態を引き起こす安全で有効でかつ再現性ある方法を提供する。一実施形態では、患者はヒト患者である。別の実施形態では、患者は、非ヒト動物であり、この場合、本発明は、獣医学環境で使用され得る。非ヒト動物としては、ネコ、イヌ、ウシ及びウマが挙げられるが、これらに限定されない。現在、血液浄化(アフェレーシス)により患者の免疫学的状況を抑制することが可能である。ヒトの免疫系状態の活性状態の維持を担う血漿因子及び/又は細胞性因子の除去が、アフェレーシスによって可能である。Nose(1995年)を参照されたい。この血液浄化方法は、自己免疫疾患患者の治療のために導入された。これまで、アフェレーシス処置は、関節リウマチ又は潰瘍性大腸炎のような自己免疫疾患の治療のために導入された。逆に、がん患者から免疫学的抑制を引き起こす多くの分子的因子及び細胞性因子の除去を試みてきたが、このアフェレーシスの治療効果は、悪性腫瘍を有する患者に関して全く正の転帰を示さなかった。Tani(1998年)を参照されたい。
【0015】
実際に、表1で示されるように、悪性腫瘍を治療するための有効な治療法は、免疫系の活性化を包含し、免疫系の抑制を包含しない。したがって、免疫抑制アフェレーシス技法は、悪性腫瘍を治療するのに効果的ではなかった。ヒトが健常であり、かつ正常な免疫系を有する場合、がん細胞は破壊され、腫瘍は形成されない。免疫系が抑制される場合、がん細胞に身体で複製する機会が与えられ、ヒトががんになる。ヒトの免疫系が慢性的に過剰刺激される場合、自己免疫疾患が起こり得る。したがって、がんの場合、効果的な治療法は、抑制された免疫系の刺激を包含する。
【0016】
【表1】
【0017】
上記論理的根拠に基づいて、悪性腫瘍の治療は、正常レベルに到達するようにヒトにおける免疫学的機能を高めることを包含する。結果として、治療されたヒトの身体は、がん細胞を異常細胞として認識する能力を取り戻して、悪性腫瘍は、ヒトの正常化された免疫系により破壊される。免疫機能のかかる増強は、がん、及び細菌感染症、真菌感染症又はウイルス感染症のような感染性疾患を含む免疫抑制に関連した任意の疾患を治療するのに使用することができる。一実施形態では、がんは、身体で1つ又は複数の固形腫瘍として現れる。別の実施形態では、がんは、例えば白血病の場合では、固形腫瘍としては現れない。一実施形態では、ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、又はA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)若しくはC型肝炎ウイルス(HCV)のような肝炎ウイルス感染症であり得る。
【0018】
本発明は、アフェレーシス技法を使用して患者の抑制された免疫学的状態を活性化することによる治療方法を提供する。カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)ワクチンは、結核菌に対する免疫学的活性化を提供するのに使用されている(Grange 2009年)。不運にも、BCGの効果は非常に小さかった。本発明は、患者の免疫機能を刺激するより有効な方法を提供し、これは免疫抑制に関連する疾患又は感染性疾患の治療にとってより有効なものとなっている。
【0019】
本発明のアフェレーシス技法は、生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを使用する。本明細書中で使用する場合、「生体非適合性材料」は、身体からの反応を誘発する材料である(その反応が、免疫学的反応であるか、又は生理学的反応(例えば、直接的(例えば、身体への導入)若しくは間接的(例えば、体外循環を介して)のいずれかでの身体への曝露の結果としての抗体の形成)であるかは関係ない)。膜ベースの血液浄化系が、自己免疫疾患の治療用に開発されてきた。Nose(2000年)を参照されたい。これらの血液浄化アフェレーシス系に関して、当業者は、たとえこれらの系が自己免疫疾患の基礎をなす細胞性因子及び分子的因子を除去するものであったにせよ、患者の免疫系の活性化を回避するように血液適合性材料で作製されたフィルタを使用した。
【0020】
生体非適合性アフェレーシスフィルタにより免疫活性化がもたらされる場合、患者は、低血圧、呼吸不全、吐き気、嘔吐、過剰の発汗、寒さ及び震えを含む多くの副作用を被らなければならない。本明細書中で使用する場合、「免疫活性化」又は「免疫系の活性化」は、リンパ球のような免疫系の細胞の数及び/若しくは機能の増加、並びに/又はサイトカイン生成を伴うB細胞及び抗体の産生に関連した免疫系の体液性機能の増加を指す。一実施形態では、かかるサイトカイン生成は、TNF−α及び/又はIL−6の産生であり得る。これらの副作用を踏まえ、米国のFDA及び日本の厚生労働省を含む政府機関は、かかるアフェレーシスフィルタの臨床応用を禁止した。結果として、悪性腫瘍の治療のための有効な免疫活性化を導入するためのかかる生体非適合性アフェレーシスフィルタは、臨床上認可されなかった。
【0021】
本発明は、アフェレーシス技法において生体非適合性材料を使用して患者の抑制された免疫学的状態を活性化させることによる治療方法を提供する。低血圧及び低酸素症のような副作用がこの技法中に起こる可能性があるが、本発明は、安全でかつ制御された様式で免疫系を活性化する方法を提供する。上述したように、BCGワクチンのようなアフェレーシス以外の技法が、結核菌に対する免疫学的活性化を提供するのに使用されてきた(Grange 2009年)。不運にも、BCGの効果は非常に小さかった。本発明は、患者の免疫機能を刺激するより有効な方法を提供し、これは免疫抑制に関連する又は感染性疾患の治療にとってより有効なものとする。
【0022】
他のグループは、がん患者において免疫系を刺激するのに酢酸セルロースを使用している(Yonekawa 1997年)。Yonekawa博士は、がん治療に関して酢酸セルロースビーズ(Japanese Antibody Research Institute)カラムを利用した(Yonekawa 1992年)。9人の患者のうち8人において、疼痛及び倦怠感のような自覚症状が改善された。しかしながら、この酢酸セルロースビーズカラムフィルタの有効化には、相当数の処理を必要とし、さらには明確な結果を生じなかった。がん患者のより有効な治療のためには、より生体非適合性のフィルタによるより強い免疫活性化が必要とされる。
【0023】
別のグループは、潰瘍性大腸炎を治療するのにImmugard R(テルモ株式会社、日本)及び旭化成メディカル株式会社によるCellsorbaカラムを使用している。旭化成メディカル株式会社のフィルタと比較して、テルモ株式会社のフィルタは、潰瘍性大腸炎の治療にとってより良好な臨床転帰を示した。Cellsorbaカラムはポリエステル繊維を利用している。
【0024】
肺及び胃腸管の悪性腫瘍を治療する試みに使用された2つの更なるアフェレーシスカラムが存在する。日本のテルモ株式会社により生産されるImugardとして知られる第1のカラムは、ピマ綿(ゴシッピウム・バーバデンス、Gossypium barbadense)植物由来の綿繊維を実験的に含有していた(Amano 1996年)。このカラムがアフェレーシスに使用された場合、患者は、一過性の低血圧、白血球の一過性の低減及び補体の活性化を受けた。体外循環の開始時に、一過性の低血圧が、白血球の一過性の低減とともに起きた。補体活性化もまた、非常に強く起こった。合併症のため、FDAは、臨床用途に関してカラムの使用を承認しなかった。続いて、テルモ株式会社は、繊維を綿繊維から合成繊維へ切り替えることによってフィルタの生体非適合性を低減させようと試みた。しかしながら、そうすることで、カラムは、感染の治療に関して及び悪性腫瘍に関してその有効性を喪失したが、依然として関節リウマチに関して有効性を保持していた(Amano 1996年)。本質的に、テルモ株式会社のカラムは、フィルタの生体非適合性が低減された際に、免疫活性化カラムから免疫抑制カラムへ変更した。現在、テルモ株式会社は、ポリウレタンフィルタを利用しており、そのImmugardは主として、輸血のための白血球の除去に使用される。
【0025】
第2のカラムは、精製された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAを含有し、これは、免疫複合体形成されたIgG抗体に関して高い親和性を有する。このカラムがアフェレーシスに使用された場合、患者は、一過性の低血圧及び寒気を感じた。類似した経験は、プロテインAカラムによって得られた。このカラムはまた、がん療法にも試行されている(Messerschmidt 1998年及びAinsworth 1988年)。しかしながら、体外循環の開始時の低血圧及び寒気のような合併症が、テルモ株式会社のカラムと同様に起きた。そこでここでも、FDAは、プロテインAカラムをより生体適合性にさせるべきであることを求めた。プロテインAカラムの製造業者がその生体適合性の改善に成功した後、プロテインAカラムは、悪性腫瘍の治療に関して機能しなくなったが、関節リウマチに関する治療法として残った(Levy 2003年)。
【0026】
免疫系がこれらの生体非適合性アフェレーシスフィルタによって活性化された場合、患者は、低血圧、呼吸不全、吐き気、嘔吐、過剰の発汗、寒さ及び震えを含む多くの副作用を被った。米国のFDA、及び日本の厚生労働省を含む政府機関が、かかるアフェレーシスフィルタの臨床応用を禁止することは当然のことであった。結果として、悪性腫瘍の治療に有効な免疫活性化を導入するためのかかる生体非適合性アフェレーシスフィルタは、臨床上承認されなかった。しかしながら、それぞれの場合において、生体適合性が改善された場合には、悪性腫瘍に対する効果が消失した。したがって、これらの副作用を低減するプロセスにおいて、Imugardカラムは、腫瘍細胞に対してその有効性を喪失し、代わって関節リウマチ又は潰瘍性大腸炎を治療するのには依然として有効であった。同様に、プロテインAカラムもまた、それが副作用を低減するように変更された場合には、腫瘍細胞に対してその有効性を喪失し、代わって関節リウマチを治療するのに有効となった。関節リウマチ及び潰瘍性大腸炎はともに、過剰な免疫応答に関連した状態であり、修正されたカラムが患者の免疫系を抑制するように作用したことを実証している。
【0027】
要約すると、アフェレーシスカラムがその生体非適合性を低減するように修正されると、結果として生じるカラムは、自己抗体(特に、IgG3サブタイプのもの)の除去、免疫複合体の除去、及び/又は免疫賦活サイトカインの除去によって患者の免疫系を抑制するように作用する。これに対して、生体非適合性材料を含有するアフェレーシスカラムは、抗体産生を増加させること、サイトカイン産生を増加させること、及びリンパ球優性な状態への患者の血中の白血球群を偏向させることによって、免疫系を刺激するように作用する。
【0028】
悪性腫瘍及び感染性疾患を治療するための臨床上有効な治療方法を提供するために、本発明は、患者において制御されたショック状態を誘導する。換言すると、本発明は、アフェレーシスカラムにおいて生体非適合性材料を使用する方法を提供し、それにより免疫系の一時的ではあるが強力な刺激を誘導すると同時に、かかる刺激を随伴し得る副作用を制御する。かかる強力な免疫学的時刺激を与えない場合、免疫系の、アポトーシスを介して腫瘍細胞を死滅させる能力が低減される。任意の心臓血管保護を伴わない現在提供されるアフェレーシスは、臨床用途に関して許容可能ではない。免疫学的ショックを誘導することに関連する副作用は、全身麻酔を使用することによって制御することができる。このようにして、本発明は、患者の免疫系を分子レベルで変更して、疾患を引き起こす細胞を追跡して捕獲し(hunt down)、死滅させるタイプの分子手術を提供する。
【0029】
20世紀に行われた古典的な手術と21世紀に提唱される分子手術の差を表2に概説する。
【0030】
【表2】
【0031】
20世紀における手術手順は、全身麻酔下でハサミ及びメスにより組織を除去することを包含する。21世紀における血液浄化処置は、全身麻酔下で血液浄化フィルタ(アフェレーシス)により分子的成分及び細胞性成分を除去する。がん療法のこの分子方法に関して、がん療法に現在使用されている放射線療法又は化学療法に一般的に付随する合併症又は副作用は見られない。患者の正常細胞に損傷を与える必要性がないだけでなく、異常悪性腫瘍細胞を破壊する必要もない。同時に、小さな転移性領域を検出して、有効な放射線療法を適用することは非常に困難である。要するに、現時点では、悪性腫瘍の治療に関する有効な治療計画は存在しない。したがって、21世紀では、がんに関する治療手順は、全身麻酔を伴う分子手術であるべきである。
【0032】
これまで、臨床的なアフェレーシス処置は、全身麻酔なしでヒトに実施されてきた。しかしながら、イヌに対する実験的なアフェレーシス処置は、免疫学的ショックの副作用を制御するためではなく、処置中に動物が動かないようにするために全身麻酔を用いて実施された。結果として、全身麻酔は、アフェレーシス処置自体中で短期間用いられてきた。これに対して、本発明は、患者に生理的愁訴が見られる2つの状態、つまり、(1)最初の1時間の生体非適合性血液アフェレーシスフィルタを使用したアフェレーシスによる免疫活性化の誘導、及び(2)細胞性作用物質及び体液性作用物質による腫瘍死滅のための続く5時間の一過性のリンパ球優性免疫活性臨床段階の安全な維持、の間、全身麻酔を使用する。幾つかの実験フィルタは生体非適合性であり、かかる血行動態的変化及び呼吸変化をもたらすが、致命的な出来事は見られなかった。しかしながら、これらのフィルタは、免疫活性な状態を増強することは意図されず、代わって免疫学的活性を抑制することを目標にした。
【0033】
本発明の方法は、本発明のアフェレーシスカラムを使用したアフェレーシスの約1時間後に図1に示される免疫学的調節をもたらす。これらの現象は全て、体液性因子だけでなく、細胞性因子の免疫活性化に起因する。換言すると、これは、この6時間の間での、生体非適合性生体材料への患者の血液の直接的な接触とそれに続く、患者の体内における自己免疫的細胞性ならびに液性適応からなる第1相の調整(以下で論述される)の結果として、誘導される免疫学的ショックである。一実施形態では、免疫活性化プロセスは、2週で完了する。
【0034】
生体非適合性アフェレーシスフィルタがアフェレーシスに使用される場合、体外循環の最初の30分のフレームワーク内で、急激な血圧降下が見られ、循環している白血球の急激な低減が起きる(図2)。同じ状況が、未精製のへパリンを100ユニット/kgで注射した際に見られた。薬物誘導性の低血圧と生体非適合性アフェレーシスカラム誘導性の低血圧との違いは、前者は注射後のかかる副作用を覆すことはできないが、後者は体外循環血液量を低減させることによってこれらの副作用を停止させることができることである。
【0035】
本発明の免疫活性化血液灌流フィルタによってもたらされるこれらの生理学的影響を図3に示す。これらの生理学的影響の主な原因は、肺毛細血管中の白血球捕捉に由来する。主として、顆粒球は肺毛細血管の内部に一過的に捕捉されて、次に患者においてリンパ球優性状態を誘導する。これは、患者の免疫活性化の最も重要な徴候の1つである。したがって、低血圧を伴う循環している白血球の一過性の低減は、本発明の有益な治療効果を促進するのを助ける。白血球は、体外循環の最初の30分中に肺毛細血管中に捕捉される。体外循環が持続されてもされなくても、30分後には、肺毛細血管中のこれらの捕捉された白血球の放出が開始される。生体非適合性血液浄化のいわゆる安全でない「副作用」は、実際には悪性腫瘍に対する治療効果を導く生理学的応答である。
【0036】
この30分後の白血球の一過性の増加は、図4に示されるように起こり得る。フィルタの異なる適合性に応じて、循環に戻される白血球の動態は、これらの30分後には異なっている。最初の30分中の体外循環後の白血球捕捉は、異なる材料の異なるフィルタを用いた場合と同じであるが、血液循環への白血球回帰速度は、材料の異なる生体非適合性に起因して異なる。
【0037】
さらに、副作用のモニタリング及び防止は、悪性腫瘍に関する従来の薬物療法及び放射線療法を使用する場合に非常に困難である。これらの治療法中、患者は大量の合併症を被り、患者の毛髪を失うだけでなく、多くの負の生理機能を有する。さらにそれらの治療効果は定まっておらず、不経済であり得る。悪性腫瘍に関する従来の治療法に対して、免疫活性化による直接的な血液療法は、制御可能かつモニタリング可能な様式で容易にその効果を示す(表3)。換言すると、6時間の気管内挿管を伴う全身麻酔を使用した本発明の免疫活性化血液灌流処置中及びその後に、医師の適切な管理下に患者を置くことは、より安全でかつより簡単である。実際に、実施例2に記載される研究では、免疫活性アフェレーシス療法に付されたイヌは全て、治療後の少なくとも6〜12ヵ月間は生存し、かつ健常であった。制御された免疫学的ショックを患者に付与するこの体外療法は、適切な血圧モニタリングを伴う全身麻酔下で実施することができるため、患者は、処置中又は処置後に、いかなる負の感覚又は疼痛を有さない。
【0038】
【表3】
【0039】
方法
ヒトへの直接的な生体非適合性材料の注射は、免疫活性化が起こった後に除去することが困難であるため危険である。代わりに、患者の免疫系の安全な免疫活性化は、体外アフェレーシスを介して遂行することができる。上述したように、いわゆる免疫学的ショック症侯群を患者にもたらさない免疫活性アフェレーシスフィルタは存在しなかった。不運にも、この時点では、この免疫液学的ショック症侯群を適切にかつ安全に制御する方法は存在しなかった。しかしながら、がん患者に適切でかつ臨床上有効な免疫活性化を提供するためには、制御された免疫学的ショックを患者に与えることが重要である。
【0040】
安全なアフェレーシス処置を提供するために、本発明の方法は、全身麻酔下でアフェレーシス処置を実施することを包含する。別の実施形態では、アフェレーシスは、気管内挿管を用いて実施される。別の実施形態では、適切な血圧及び適切な血液ガスレベルが処置中維持される。適切な血液ガスレベルは、例えば鼻、口又は気管を介して投与される酸素供給を施して維持することができる。幾つかの実施形態では、酸素は、患者の鼻及び口を覆うマスクを通して投与される。別の実施形態では、酸素は、気管内チューブを介して投与される。
【0041】
例えば、被験体が、本発明による生体非適合性血液灌流フィルタを用いたアフェレーシス処置に付される場合、急激な低血圧及び白血球減少が、体外循環の最初の15分〜30分中に起こり得る。血圧は、50%を上回って減少し得る。この影響は、血流の速度を低減させることによって30分後に回帰させることができ、一般的に1時間のフレームワーク内に処置前のレベルに戻すことができる。本発明では、以下で論述するように、アフェレーシス中及びその後に起こる免疫活性化の性質のため、被験体は、およそ6時間全身麻酔に維持される。
【0042】
本発明の一実施形態では、全身麻酔を伴う1時間の本発明によるアフェレーシスカラムに通した体外循環、及び更に5時間の麻酔の維持により、安全な免疫活性化を患者に提供することができる。アフェレーシスカラムに通す初期血流量は、約60分のうちに全循環血液量の処理を可能にするように、約100ml/分〜200ml/分であり得る。およそ100ml/分の体外循環速度は、静脈静脈ニードルアクセス(veno-venous needle access)によって達成することができる。別の実施形態では、およそ100ml/分の血流量がアフェレーシス中に維持され得る。しかしながら、体外循環の初めに、血圧が安全でないレベル(例えば、50mmHg)に降下する場合、血圧のこの降下は修正されるべきである。一実施形態では、血流速は25%低減させることができる。低血圧が続く場合、血流速は、初期の血流速の50%をさらに低減させることができる。また、動脈血の酸素含有量は、この時間中に白血球数とともに降下し得る(例えば、総細胞数の20%未満)。25%〜50%の血流速の即時の低減はまた、低血圧及び白血球減少を修復させることができる。一実施形態では、血流速は、約100ml/分から、約75ml/分又は約50ml/分へ低減させることができる。
【0043】
別の実施形態では、血中の細胞性因子及び分子的因子の免疫活性化は、6時間で完了する(急性期)。この期間中、患者の心肺機能は全身麻酔下で維持することができる。したがって、患者は、眩暈、呼吸不全、吐き気、嘔吐、過剰の発汗、発熱、寒気及び震えを含む誘導された免疫学的ショックのいかなる疎ましい副作用を感じない。
【0044】
一実施形態では、本発明は、患者における疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシスカラムを準備することと、
(b)上記患者の血液が、該患者の身体に再び入る前に上記血液灌流フィルタを通過するように、該患者の血液循環を上記アフェレーシス系と接続することと、
(c)上記患者に全身麻酔をかけること、及び該患者に生理学的サポートを提供することと、
(d)上記患者の血液を上記アフェレーシス系に通して約1時間、循環させることと、
(e)上記患者の血液を上記アフェレーシス系に通して循環させた後、少なくとも5時間、上記患者を、全身麻酔をかけた状態に保つことと
を含み、上記患者の血液を上記血液灌流フィルタに通して循環させることで該患者の免疫系が活性化され、それにより上記疾患を治療する、患者における疾患を治療する方法を提供する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、患者における疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシスカラムを準備することと、
(b)気管内挿管により連続的な動脈圧モニタリング及び動脈血の酸素モニタリングを伴う全身麻酔を提供することと、
(c)上記患者へ抗凝固剤を投与することと、
(d)上記患者の血液を上記アフェレーシスカラムに通して約1時間、静脈静脈灌流により循環させること(ここで、該アフェレーシスカラムを通る血流量は、約100mL/分〜200mL/分である)、
(e)上記患者の血圧及び血中酸素濃度をモニタリングすることと、
(f)免疫活性化の徴候及び心肺安定性に関して上記患者をモニタリングしながら、該患者の血液を上記アフェレーシス系に通して循環させた後、少なくとも5時間、該患者に全身麻酔をかけた状態に保つことと、
(g)肺機能のアフェレーシス前のレベルへの回復を確認した後、上記患者から全身麻酔を取り外すことと
を含む、患者における疾患を治療する方法を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、患者における疾患を治療するための、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシス系であって、患者の血液が該患者の身体に再び入る前に該血液灌流フィルタを通過することができるように、該患者の血液循環に接続される、アフェレーシス系、及び
(b)上記アフェレーシス系の使用中、及び該アフェレーシス系の使用後の少なくとも5時間、上記患者に麻酔をするための全身麻酔薬
の使用であって、上記アフェレーシス系の使用によって上記患者の免疫系が活性化されて、それにより上記疾患を治療する、使用を提供する。
【0047】
本発明の方法は、患者の血中の白血球群の有意な変化、及び幾つかのサイトカインの一過性の増加をもたらす。図26に示されるように、2週にまたがって4つの異なる相の白血球動態が、上記方法の結果として出現した。体外循環が開始された後の30分未満である相1では、血液内部の白血球の一過性の低減が、主として肺毛細血管の内部に白血球を捕捉することによって起こる。アフェレーシスカラム中の生体非適合性材料の使用により、リンパ球(約40%)と比較して顆粒球のより大きな低減(ほぼ100%)が起こり、血中のリンパ球優性状態が創出される。30分後、顆粒球は、肺から徐々に放出される。概して、1時間の体外循環は、十分な免疫活性化効果を発生し得る。
【0048】
相2では、白血球が肺毛細血管から放出され、白血球数は、およそ6時間で正常化されるようになる。これらの6時間中、ほとんどの顆粒球が肺から放出される。この相は、サイトカインにおける大幅な一過性の増加が起こるリンパ球優性段階でもあり、これは患者の身体において腫瘍細胞の死を導く。これらの6時間中、肺機能は補助(assistance)を必要とし得る。気管内挿管による酸素の十分な供給を伴う全身麻酔によって、この期間中の低酸素状態を補うことができる。
【0049】
相3では、アフェレーシスの4日後、リンパ球数は、最初の6時間中の顆粒球の顕著な低減にも関わらず、実質的により高く増加する。顆粒球及びリンパ球を含む白血球はまた、アフェレーシス前のレベルの2倍を超えて増加することができる。顆粒球及びリンパ球と比較した場合の単球群の更により大幅な増加がまた、この相中に起こる。この期間中、これらの増加した単球及び顆粒球は、死滅した腫瘍細胞を排除することが可能であるものとする。その一方で、リンパ球は依然として、高いレベルで存在する。
【0050】
相4では、これらの正常範囲を超えて増加した白血球数は全て、2週間後にアフェレーシス前のレベルに戻る。一実施形態では、予期せぬほど高いレベルの免疫活性化及び続く腫瘍細胞の過剰な破壊が2週後に起こる場合、これらの細胞片及び免疫活性作用物質を除去するための血液浄化処置を、患者の安全性を維持するために適用させることがある。
【0051】
一実施形態では、アフェレーシスは、本発明に従って患者へ一回施すことができる。別の実施形態では、アフェレーシスは、2回以上患者へ施すことができる。この場合、各アフェレーシス処理は、2週毎に行われる。更に別の実施形態では、処理は少なくとも3回患者へ提供され、各処理は2週毎に行われる。この実施形態では、患者の処理全体は、6週で完了される。別の実施形態では、本発明によるアフェレーシス処理は、免疫活性化の本発明の効果を増強するために従来の抗がん療法で補ってもよい。
【0052】
患者の血液が、アフェレーシスカラムから直接、患者の身体へと戻すことは必要とされない。一実施形態では、患者の血液は、本発明のアフェレーシスカラムへ流し、続いて患者への後の投与のために収集することができる。したがって、患者から採取した血液を、生体非適合性材料カラムを用いて、フィルタへと曝露させ、患者への再注入により免疫活性化を確立することが可能である。
【0053】
本発明による体外アフェレーシスの主な技術的特徴としては、(1)約60分での生体非適合性血液灌流フィルタに通した体外循環の達成、(2)相2の免疫活性化を6時間で完了させることができ、その6時間中に、細胞性活性化及びサイトカイン活性化が起こること、並びに(3)処理に対する生理学的応答が約30分で起こること(この生理学的応答には低血圧、白血球減少及び呼吸障害(例えば、低酸素症)が含まれる)が挙げられる。これらの生理学的応答は、全身麻酔下にある患者により安全にかつ無痛で許容される。
【0054】
本発明の方法で使用可能なアフェレーシスカラム集合体
図5Aは、本発明の方法で使用することができるアクリル系アフェレーシスカラムの一実施形態を提供する。小さなアクリルチャンバ3は、約5μm以下の洗浄繊維をおよそ1g保持する。これらの繊維は、約2mm厚のPVAの不織メッシュ2により小さなチャンバ中で維持される。不織PVAメッシュ(VW100)は、クラレ株式会社(日本、東京)により提供された。調製された繊維及びPVAメッシュを含む小さなチャンバはそれぞれ、濾過ユニット4を構成する。5個〜10個の濾過ユニットを、アフェレーシスカラム1に積み重ねることができる。一実施形態では、5個の濾過ユニットが使用され、この場合、カラムの高さは約60mmである。別の実施形態では、10濾過ユニットが使用され、この場合、カラムの高さは約120mmである。
【0055】
一実施形態では、濾過ユニットは、血液の導入前にカラムに通して流れるチャンバ中のプライミング溶液の容量であるプライミング容量がおよそ400mlとなるようにチャンバ内部にパッキングされてもよい。フィルタのパッキング密度は、最大でおよそ10%(グラム/容量)であり得る。
【0056】
生体非適合性材料
肺毛細血管中に白血球を捕捉することは、リンパ球優性状態(その間に免疫活性化が起こる)を確立するのを助ける。がんの場合、この時間に、がん細胞が破壊され得る。最適な生体非適合性材料は、顆粒球をアフェレーシスカラム内部に捕捉することにより血液から顆粒球を除去し、身体に再び入る白血球に関しては、生体非適合性材料への曝露により、これらの白血球が肺中で一時的に捕捉されるようになり得る。小さな直径を有する繊維を使用することで、これらの効果を促進するのを助ける。一実施形態では、繊維は、5μm以下の直径を有する。別の実施形態では、繊維は、1μm〜25μmの直径を有する。
【0057】
本発明のアフェレーシスカラムで使用可能である天然繊維としては、綿及び絹が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
エジプト産のより小さな直径の綿繊維は、肺中での白血球捕捉を容易とし得る。合成ポリマーと対比して、天然綿繊維は、多重分子複合体により構成されており、より生体非適合性である。全ての綿繊維の中でもエジプト綿繊維は、パキスタン綿繊維及びオーストラリア綿繊維よりも小さな直径を有する。したがって、エジプト綿から作製される生体非適合性フィルタは、植物繊維の群の中で最も有効な免疫活性フィルタを創出しうると予測される。各タイプの綿は、その原産国で収穫されて、Marubeni America Corporation(テキサス州、ヒューストン)から得ることができる。
【0059】
天然の動物性繊維の中でも、絹繊維は、直径が最も小さい。全ての絹の中で、最小繊維サイズは、「広東」絹及び「日本」絹により実証された。日本絹は、日本の製造業者によって生産される一方で、広東絹は、中国で製造される。両方のタイプの絹は、Marubeni America Corporation(テキサス州、ヒューストン)から得ることができる。絹繊維の最小直径は、エジプト綿の繊維直径にほぼ類似している。その直径は5μm未満、通常1μm〜2μmである。しかしながら、動物性繊維は、植物繊維を超える多様な異なる生体非適合性成分(特に、タンパク質群)を伴うより複雑な構造である。したがって、動物性繊維は、合成繊維又は天然植物繊維よりも生体非適合性である。
【0060】
カイコ由来の外来タンパク質は、免疫賦活薬として作用することができ、絹が患者の免疫系のより良好な刺激をもたらすのを可能にする。したがって、最適な免疫活性化フィルタは、絹を使用することによって得ることができる。絹繊維で作製される免疫活性化カラムは、体外血液灌流により悪性腫瘍を治療することが可能であるはずであると予測される。
【0061】
幾つかの実施形態では、本発明の天然繊維は生体化されてもよい。本明細書中で使用する場合、「生体化(される)」という用語は、繊維上に滑らかで一貫した表面を生じるように繊維中に存在する同質(homogenous)タンパク質を連結させる架橋手順を指す。繊維は、化学的に又は照射技法を介して生体化することができる。繊維は、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドを含むがこれらに限定されない化学作用物質を使用することによって化学的に生体化することができる。一実施形態では、繊維は、少なくとも48時間、10%ホルムアルデヒド中に浸漬させる。別の実施形態では、繊維は、2週よりも長く、及び5年もの間、グルタルアルデヒドの0.45%溶液中で保管することができる。アフェレーシスカラム内部の生体非適合性材料が生体化されている場合、カラムは、臨床的利用前に残留アルデヒドを除去するために、カラムを生理食塩水で洗浄すべきである。
【実施例】
【0062】
実施例1:生体非適合性材料との接触時の血球数の変化
綿及び絹のタイプを、ヒト全血から種々の細胞型を濾別するそれらの能力に関して、様々な条件下で試験した。これらのin vitroでの実験に関して、5ml容のシリンジに、生体非適合性材料をシリンジ内部で4ml容積になるようパッキングして、0.125g/mlの密度とした。図7を参照されたい。全血は、正常で健常なヒトから得て、血液1ミリリットル当たり1ユニットのへパリンナトリウムを添加して、凝血を低減させた。この血液調整物は、収集の30分以内に実験で使用した。22℃での濾過中、処理した血液をシリンジの最上部へ注ぎ、生体非適合性材料に通して濾過した後、シリンジの底部から収集した。次に、結果として得られた濾過血液を、種々の細胞型の存在に関して分析した。
【0063】
0.5N酸溶液及び0.5Nアルカリ溶液で処理したエジプト綿の顆粒球除去速度を、生理食塩水(Baxter Corp. カタログ番号281324)で処理したエジプト綿を用いて得られる除去速度と比較した。未処理のエジプト綿は、Marubeni America Corporationから得られ、0.5N NaOH(S320−500、Fisher Scientific)、水、0.5N HCl(SA48−500、Fisher Scientific)、水、及び生理食塩水を用いて、各溶液中に約30分間、連続して浸漬させることによって調製した。エジプト綿は生理食塩水単独中にも浸漬させた。綿の処理後、酸/アルカリで処理した綿又は生理食塩水で処理した綿0.5gを、4ml容積でシリンジへ入れて、0.125g/mlの繊維密度とした。血液8ミリリットルをシリンジ小型カラムへ注いだ。濾過血液の最初の4mlを廃棄して、生理食塩水による希釈を防止した。濾過血液の残りの4mlを収集して、WBC及びRBCの数に関して、濾過前の血液と比較した。
【0064】
図8に示されるように、酸/アルカリ処理したエジプト綿と生理食塩水で処理した綿の除去速度間の差は見られなかった。両方の処理が、赤血球(RBC)、白血球(WBC)及び血小板の同程度の除去をもたらした。より具体的には、好中球及びリンパ球もまた、2つの綿処理群間で同程度の速度で除去された。リンパ球の数は、濾過前の血液中のリンパ球の数と比較してわずかに低減した(図8D)。これらの結果により、エジプト綿は、綿の調製で使用され得る(すなわちグリースを除去するため、綿を滅菌するため、及び/又は綿を中和するための)化学的処理の存在下で、好中球数の低減を測定すると、顆粒球を除去するその能力を維持したことが実証される。
【0065】
4つのタイプの綿、及び陰性対照としてPVA繊維について、濾過血液中の好中球の除去を測定することで、顆粒球の最も有効な除去率を試験した。試験した4つのタイプの綿は、パキスタン綿(Marubeni America Corporation)、オーストラリア綿(Marubeni America Corporation)及びエジプト綿であった。綿及びPVAはともに、生理食塩水ですすいだ後、各タイプの綿及びPVA0.5gを、4ml容積で5ml容のシリンジへ入れて、0.125g/mlの繊維密度とした。全血8ミリリットルをシリンジに通して濾過して、次位の4mlを分析用に収集した。
【0066】
図9に示されるように、ほぼ100%の顆粒球除去が、PVA陰性対照と比較して、試験した綿それぞれによって実証されており、エジプト綿が、最良の結果を提供した。図9Dを参照されたい。同様に、図10も参照されたい。さらに、RBCは、綿タイプのいずれによっても濾別されない一方で、血小板の大部分が除去される。図9A及び図9Cを参照されたい。リンパ球に関して、各タイプの綿は、わずかに異なるレベルのリンパ球除去を示し、オーストラリア綿が最も多くのリンパ球を除去した。
【0067】
顆粒球除去の速度に対する繊維密度の影響もまた、上述したように生理食塩水で処理したエジプト綿を使用して評価した。エジプト綿は、0.125g/ml及び0.05g/mlの密度でシリンジへパッキングした。0.05g/mlの密度に関して、エジプト綿2グラムを、4ml容のシリンジへパッキングした。0.125g/mlの密度のカラムは、上述したように調製した。0.125g/mlの密度に関して、20ml〜80mlの範囲の種々の血液容積を、試験した各血液容積に関して新たなミニカラムを使用して濾過した。0.05g/mlの密度に関して、5ml〜15mlの範囲の血液容積を試験した。各密度に関して、濾過血液の最初の4mlを廃棄して、生理食塩水による希釈を防止して、その後、濾過血液を2ml容のバッチ中に収集した。図11Dに示すように、エジプト綿は0.125g/mlの密度では、好中球の除去を測定すると、全血の80mlが濾過された場合でさえ、幾らかの顆粒球を除去することが可能であったが、全血20mlが濾過された場合に、除去は最も効率的であった。顆粒球除去の効率は、血液容積が増加するにつれ減少した。血液容積は、0.125g/mlの密度で試験した血液容積ではRBC又は血小板の除去の速度に影響を及ぼさなかった。0.125g/mlの密度では、エジプト綿は、加工処理した血液容積80mlまで、好中球の約70%を除去した状態を保つことができた。図12Dは、0.05g/mlの密度に関して、WBC除去の効率が、血液容積を増加するにつれて減少したことを示している。濾過した血液容積11ml〜13mlで、濾過血液中のリンパ球の存在を保持しながら、顆粒球除去が最適であった。ほんの少量の最初の5ml〜7mlでは、ミニカラムは、好中球の除去を測定すると、顆粒球を除去することが可能であった。
【0068】
図13では、3つの繊維密度を、単一血液容積での顆粒球除去の効率に関して試験した。0.05g/ml、0.125g/ml及び0.2g/mlの繊維密度を比較した。0.05g/ml及び0.125g/mlの密度のミニカラムは、上述したように調製した。0.2g/mlの密度のカラムに関しては、エジプト綿0.2グラムを、4ml容のシリンジ中に1ml容積になるようパッキングした。0.05g/mlの密度のカラムを試験する場合、全へパリン処理血7mlをカラムに通して濾過した。最初の5mlを廃棄して、残りの2mlを分析用に収集した。0.125g/mlの密度に関して、全へパリン処理血22mlをカラムに通して濾過した。最初の20mlを廃棄して、残りの2mlを分析用に収集した。0.2g/mlの密度のカラムに関して、全へパリン処理血5mlをカラムに通して濾過した。濾過した血液の最初の3mlを廃棄して、残りの2mlを分析用に収集した。繊維密度が異なっても、同程度のレベルのRBC除去をもたらした。しかしながら、WBCに関しては概して、0.05g/mlの密度は0.125g/ml及び0.2g/mlの密度と同様にはWBCを除去しなかった。同様に、0.125g/ml及び0.2g/mlの繊維密度は、かなりのリンパ球がミニカラムを通過するのを可能にしながら、好中球数計測により実証されるように、顆粒球を除去することに対し、とても効果的であった。したがって、少なくとも0.125g/mlの繊維密度が、顆粒球を除去することに対し、効果的であった。
【0069】
顆粒球除去の効率に対するエジプト綿繊維上の生体化の影響を評価した。綿繊維は、3種類の組合せ処理、すなわち、0.4%グルタルアルデヒド架橋、続く1%、0.1%又は0%ゼラチンによる繊維のコーティング、を用いて生体化した。0%のゼラチンの場合、繊維をグルタルアルデヒドのみを用いて生体化した。生体化に関して、繊維を24時間より長くグルタルアルデヒド中に浸漬させた。次に、繊維をゼラチン溶液(Fisher Scientific;カタログ番号G7−500)中でコーティングした。綿繊維はまた、水単独中に浸漬させて、陽性対照として役割を果たした。図14に示されるように、3つの処理は全て、サンプル間で同程度のRBC除去をもたらした。WBCに関して、3つの処理は全て、濾過血液からのWBCの有意な除去をもたらした。図14を参照されたい。図15は、3つの処理は全て、かなりのリンパ球がミニカラムを通過するのを可能にしながら、非常に良好な血小板除去及び完全な顆粒球除去をもたらしたことを示している。同様の研究を、エジプト綿に代わって絹繊維を使用して行い、同様の結果を得た。図16及び図17を参照されたい。
【0070】
化学処理に代わって照射によるエジプト綿の生体化についても試験した。綿繊維は、0.5時間(図18)又は1時間(図19)のいずれかで5キロボルトで設定したアルゴンプラズマベースのイオン注入(ion implantation)デバイスを使用して照射した後、上述したように生理食塩水で調製した。1時間の照射は、0.5時間の照射よりも良好に機能して、顆粒球を濾別した。このデータに基づいて、プラズマベースのイオン導入を使用して、血液から除去される好中球群を調節することができた。図18D及び図19D中の好中球数を比較されたい。
【0071】
実施例2:雑種犬における免疫活性化
20kg〜30kgの6匹の正常な雄雑種犬を、Marubeni International Inc.(テキサス、ヒューストン)により提供される天然の非合成型非植物繊維(ACS−A1 直径1μm〜2μmの天然で得られる繊維)を含有する生体非適合性アフェレーシスカラムを使用したアフェレーシス実験に付した。図5Bを参照されたい。カラムは、生体化されたACS繊維5グラムを含有した。これらの繊維は、有効な白血球フィルタであったが、依然として生体非適合性材料として機能した。総計5グラムのかかる繊維をカラム内部に組み込ませた。具体的には、よく洗浄した繊維1グラムを、分離したチャンバ中に含有させ、チャンバの最上部及び底部は、Kuraray Inc(テキサス、ヒューストン)により提供される不織PVA(ポリエチレンビニルアルコール)によって保持され、濾過ユニットを作製した。図5Aを参照されたい。5つの濾過ユニットを、カラム内部に組み込ませた。
【0072】
繊維は、0.5N NaOH、0.5N HCl、70%イソプロピルアルコールによる連続した処理により調製された。繊維は、溶液間での水による洗浄工程により各溶液中でおよそ30分を費やした。カートリッジを洗浄して、10%ホルムアルデヒド溶液を48時間カラムに通して流すことによって生体化した。実験前に、加工処理した繊維をカラムにパッキングして、続いて血液回路を設定した。
【0073】
血液回路は、ローラポンプ、チュービングセット、加熱ユニット及びアフェレーシスカラムを含んでいた。実験の開始前に、洗浄溶液中の残留ホルムアルデヒド濃度が5ppm未満になるまで、血液回路を生理食塩水で洗浄した。カラムを通る血流速を3ml/kgで設定した。カラムの引入側及び引出側の圧力は、圧力計により測定した。
【0074】
アフェレーシスカラムをイヌに接続して、加温装置及び空気除去チャンバと一緒にPVC(ポリ塩化ビニル)チュービングによる体外循環の完全な回路を完成させた。体外アフェレーシスカラムは、4%ホルムアルデヒドで一晩消毒した一方で、回路成分の残りは、使用前に予め滅菌した。
【0075】
体外アフェレーシスに先立って、麻酔の誘導のためのキシラジン(筋内)及びケタミン(筋内)の組合せ、続く維持のための2.5%イソフランガスを使用して、イヌに麻酔をかけた。酸素3L、空気5L(2%イソフルラン)を呼吸ガスに添加した。代替的な麻酔誘導として、アトロピンを使用した。全身麻酔は、アフェレーシス処理の開始60分以内に施した。
【0076】
イヌの血液を、最初に静脈内に200ユニット/kgをボーラス投与することによって、イヌの血液をヘパリン処理して、続いてアフェレーシス中に、イヌに、100ユニット/kgのへパリンを与え続け、次に、上述したように、イヌの血液を、流速3.3ml/kgで1時間、アフェレーシスカラムに通して循環させた。1時間のアフェレーシス後に、イヌは更に5時間、全身麻酔にかけたままにし、体外アフェレーシスが始まった時間から総持続時間6時間の全身麻酔を行った。
【0077】
図20に示されるように、この処理は、白血球のex vivoでの除去をもたらした。この図で、最も暗い棒グラフは、アフェレーシスカラムに進む血液である引入側血液中に存在する白血球(この図では、好中球及びリンパ球で表される)を示した。中間色の棒グラフは、アフェレーシスカラムを出て、イヌへと戻る血中に存在する白血球の数を表す。最も明るい色の棒グラフは、カラム内部に捕捉された残留血液中に存在する白血球の数を表す。ほぼ全ての顆粒球が除去された一方で、リンパ球のうち、60%だけが除去され、したがってイヌにおいてリンパ球優性状態をもたらした。
【0078】
図21で示されるように、血圧は、アフェレーシスの開始のおよそ30分後に一過的に降下の傾向を示した。しかしながら、血圧は後に、これらの一過性の降下後に増加した。麻酔中、血液ガスが維持されたのに対して、体温は、6時間の全身麻酔中、増加傾向であった。
【0079】
図22は、WBC数及びフィブリノーゲンレベルは最初、灌流中に減少したが、後に数時間のアフェレーシス内に元に戻ったことを示している。しかしながら、血小板数もまた、アフェレーシス中に降下して、およそ4日間、比較的低い数で維持された。RBC数は、1時間のアフェレーシス処理中及び処理後に極めて一定の状態であった。
【0080】
顆粒球は、単球とともに6時間のフレームワーク内で循環に戻った(図23)一方で、リンパ球はこれらの6時間中は低減したままであった(図23B)。しかしながら、短期間で、リンパ球優性の一過性の状態が、イヌにおいて確立された。具体的には、イヌの血中の顆粒球のパーセント及びリンパ球のパーセントは、体外循環の15分後に変化した。イヌの血中の好中球のパーセントはほんの20%であったのに対して、リンパ球は、血中のWBCの80%を構成した。より遅い時点では、好中球及び単球のパーセントは、6時間後に術前レベルに戻ったが、リンパ球のパーセントは、処理後の6時間〜4日間は依然として低いままであった(図24)。
【0081】
体外アフェレーシスの結果としてのイヌの免疫系の一過性のリンパ球優性状態の他に、アフェレーシスが始まった後の30分〜90分の間に、約1000倍のTNF−αの一過性の増加も見られた(図25)。また、アフェレーシスが始まった後の60分〜200分の間に、約1000倍のIL−6の一過性の増加も見られた(図25)。これに対して、インターフェロンガンマ(IFN−γ)及びインターロイキン2(IL−2)は、処理後の2週間、抗体レベルと同様に依然として変化しなかった。
【0082】
生体非適合性材料を使用したアフェレーシスに付随する免疫学的ショックとして、低血圧に起因する眩暈、呼吸障害、吐き気及び嘔吐、過剰な発汗、発熱、寒気及び震えが挙げられる。これらの生理学的影響を安全に管理するために、本発明の方法は、全身麻酔下で実施される。そうすることで、患者は、悪性腫瘍及び感染性疾患の治療に関して再現性がありかつ有効な免疫活性化アフェレーシス療法を受けることができる。安全でなくかつ危険なショック誘導性の免疫活性化アフェレーシスはここでは、本発明のために、安全で有効でかつ無痛の治療的分子手術処置となる。
【0083】
一実施形態では、本発明の有効でかつ安全な免疫活性化療法は、以下の8つの特徴、すなわち、(1)気管内挿管を伴う全身麻酔、(2)血圧及び動脈血酸素含有量の慎重なモニタリング、(3)酸素の十分な供給、(4)低血圧及び低酸素症が予測レベルを上回って起こった際の体外循環中の慎重な血流制御及び自動血流低減、(5)およそ60分以内の持続した体外循環、(6)少なくとも6時間の気管内麻酔の維持であり、その間に、全身麻酔下にありながら、患者は生理学的サポートを受けること、(7)免疫活性化の4日後に、白血球数の一過性の増加が起こること、及び(8)アフェレーシス処理の完了後の2週間の細胞性及び体液性の免疫学的応答のモニタリングの追跡、で説明することができる。
【0084】
生体非適合性生体材料を用いたアフェレーシス処理を1時間患者に付すことにより、患者の免疫学的活性化状態を生み出すことが可能になった。次に、患者の誘導された免疫活性化状態は、患者の自然で健常な細胞を全く傷つけることなく、腫瘍細胞又は感染細胞のアポトーシスを導く。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/249,867号に基づいており、またその利益を主張する。この仮出願の全開示に依存しており、この仮出願は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
導入
悪性腫瘍は、免疫学的に抑制されている患者において発症し得る。多数の悪性腫瘍細胞が、毎日体内で産生される。幸運にも、免疫系はそれらを「正常ではない」細胞又は「非自己」細胞として認識し、続いてそれらを毎日破壊する。したがって、免疫系が適切に機能していれば、がんを発症する機会は低減する。
【0003】
免疫系は、ワクチン接種を介して活性化させることができる。しかしながら、ワクチンが使用される場合に、患者自身の免疫系によるがん細胞に対する結果として生じる攻撃は、十分に強力ではない。患者の免疫系が破壊すべき細胞として認識していない悪性腫瘍細胞を破壊可能になるには、より有効でかつより強力な免疫学的(immunogical)攻撃が必要とされる。結果として、悪性腫瘍の治療は、腫瘍の原発巣の外科的除去だけでなく、身体全体にわたって考え得る転移性腫瘍細胞を破壊するための薬物療法及び放射線療法も包含する。不運にも、抗がん剤療法は、多くの場合に、有効な治療転帰を達成する前に薬物療法の中断を余儀なくさせかねない様々なタイプの疎ましい副作用をもたらす。
【0004】
これまで、患者の免疫系を抑制するアフェレーシス療法は、自己免疫疾患を治療するのに使用されてきた。これらのタイプの患者に関して、自己免疫疾患を引き起こす血中の病理学的分子の除去により、治療効果を示した。これらのタイプの患者に関して、自己抗体、免疫複合体、サイトカイン及び活性化された補体のような体液性因子、並びに白血球のような細胞性因子が、アフェレーシスにより除去された。このタイプの治療法は、患者において免疫学的に抑制された状態を創出し、これはがん患者を治療するのに必要とされる免疫系に対して正反対の効果である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、アフェレーシスカラム中に存在する体外血液灌流フィルタを使用することによってヒトの免疫系を強力に活性化させる方法を提供する。結果として生じる免疫活性化は、アポトーシスによる悪性腫瘍細胞の破壊をもたらす。しかしながら、本発明の方法は、ヒトに対し、一過性の低血圧及び低酸素症を含むかなりの生理学的影響を引き起こす。これらの影響を管理するために、体外アフェレーシスは、全身麻酔下でヒトに実施される。慎重な血圧及び酸素飽和度のモニタリングを伴う全身麻酔は、ヒトの免疫系の安全な活性化を確保し、この処置に関連したいかなる不快感をも排除する。全身麻酔は、アフェレーシス処置中だけでなく、6時間の体内免疫活性調節期間中にも施される。
【0006】
生体非適合性材料を伴う灌流フィルタを使用して、免疫賦活を導入することが可能である。およそ100ml/分の速度で1時間、かかるフィルタを含有するアフェレーシスカラムに通して患者の血液を灌流させることにより、かかる状態を発生させることができる。本発明の方法は、初期の30分の体外循環中に免疫活性化を導く。免疫活性化により悪性腫瘍を治療するためのこの分子手術(molecular surgery)処置は、最初の30分で直接的かつ制御可能な効果を導き、数時間で正常に戻る。これらの影響としては、低血圧(血圧のおよそ50%低下)、白血球減少症(白血球のおよそ70%低下)、及び、処置が始まって30分後に生じる最低血中酸素濃度による低酸素症の結果として生じる呼吸障害を引き起こす。
【0007】
これらの影響は、アフェレーシスカラムに通す血流を低減させることによって、及び生理学的サポートをヒトに提供することによって元に戻すことができる。かかるサポートとしては、気管内挿管を伴う全身麻酔、血圧制御(血圧の連続的なモニタリング)及び酸素供給制御(血中酸素飽和度の連続的なモニタリング)が挙げられる。
【0008】
免疫活性化アフェレーシス系により誘導される一過性のショック症侯群のため、特定の免疫活性化カラムはこれまで臨床的に提供又は適用されなかった。米国食品医薬品局は、かかるアフェレーシス系を、それらの使用に付随するショック症侯群のため臨床上安全ではないとみなしてきた。本発明の方法は、本発明による血液灌流フィルタの使用に付随して起こるショック症侯群を制御しながら同時に免疫系を強力に活性化させる方法を提供することによって、この問題を克服する。
【0009】
本発明の血液灌流フィルタ中に存在する生体非適合性材料により誘導される制御された免疫学的ショックにより、実験動物に対して免疫活性化状態が生じる。安全で無痛性で有効でかつ再現性ある治療結果を提供するためには、気管内挿管を伴う全身麻酔が、1時間のアフェレーシス処置中だけでなく、更に5時間提供される。この手順で処理した動物は、動物実験中に死滅せず、また処置に関連した(procedurally related)身体的あるいは感覚的異常は示されなかった。
【0010】
約6時間全身麻酔を提供することは、最初の30分のショックの低血圧及び低酸素段階だけでなく、動物が血行動態的に正常化されるようになる回復段階も包含する。6時間後、肺に蓄積された白血球が、全身循環に復帰する。アフェレーシスの初期段階中では、顆粒球はほぼ100%減少する一方で、リンパ球は、40%〜50%だけしか減少せず、これが、ヒト免疫系において一過性のリンパ球優性状態を創出する。6時間の全身麻酔中、免疫賦活サイトカインTNF−α及びIL−6は、1000倍まで増加させることができる。6時間後、血中の白血球数は、ほぼ処置前のレベルに戻り、その後更に増加する。4日後、白血球数は、処置前のレベルと比較して2倍を上回る。次に、細胞性活性化及び体液性活性化は、2週後に正常化される。
【0011】
本発明の方法により提供される免疫賦活の誘導は、悪性腫瘍の治療や後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む不治の感染性疾患の処置に対し、治療効果を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のアフェレーシス方法の結果として患者において起こる免疫活性化の影響の模式図を提供する。体液性因子が活性化されるだけでなく、細胞性因子も活性化される。
【図2】手製のセロファン膜による血液透析に関する3時間の体外循環(血流200ml/分)の結果を示す図である。セロファン膜は、アフェレーシスに使用される合成膜よりも血液非適合性であるとみなされる。
【図3】肺毛細血管中の一過性の白血球捕捉を含む本発明の免疫活性化フィルタを使用したアフェレーシスにより導入される生理学的影響の模式図を提供する。
【図4】以下の生体非適合性材料:ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)及び酢酸セルロース(CA)を使用した経時的な血中の白血球数に対するアフェレーシスの影響を示す図である。
【図5】図5Aは、本発明によるアフェレーシスカラムの一例の模式図を提供する。図5Bは、カラムの一実施形態の写真である。
【図6】以下の生体非適合性材料:ポリエチレン(PE)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)及び酢酸セルロース(CA)を使用した経時的な引入側血液及び引出側血液における因子C3aの測定による補体活性化に対するアフェレーシスの影響を示す図である。
【図7】シリンジ及び生体非適合性材料を含む小型血液フィルタリングカラムの模式図を提供する。
【図8】酸及びアルカリで、又は生理食塩水でエジプト綿を処理することによる、処理した綿を通した濾過後の血中の或る特定の細胞型の数に対する影響を示す図である:(A)赤血球(RBC)、(B)白血球(WBC)、(C)血小板(Plt)並びに(D)好中球及びリンパ球。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。RBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。WBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。Pltに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。好中球及びリンパ球に関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。
【図9】全血から或る特定の細胞型、つまり、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球について、種々のタイプの綿繊維及びPVA繊維間の除去能の比較を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。RBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。WBCに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。Pltに関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数×104を示す。好中球及びリンパ球に関して、Y軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。
【図10】全血から好中球及びリンパ球を除去するための種々のタイプの綿繊維の能力についての比較を示す図である。
【図11】0.125g/mlの密度である場合のエジプト綿繊維の、様々な容積の全血から或る特定の細胞型、すなわち、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。各図のY軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。RBC及びPltは、細胞の数×104/μlの数として示された。WBC及び好中球/リンパ球は、細胞の数/μlとして示された。
【図12】0.05g/mlの密度である場合のエジプト綿繊維の、様々な容積の全血から或る特定の細胞型、すなわち、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。各図のY軸は、濾過した血液1マイクロリットル当たりの細胞の数を示す。RBC及びPltは、細胞の数×104/μlとして示された。WBC及び好中球/リンパ球は、細胞の数/μlとして示された。
【図13】様々な容積の全血から或る特定の細胞型、すなわち、(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力に対するエジプト綿繊維の密度の影響を示す図である。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図14】エジプト綿繊維の、全血から(A)RBC及び(B)WBCを除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図15】エジプト綿繊維の、全血から(A)Plt並びに(B)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図16】絹繊維の、全血から(A)RBC及び(B)WBCを除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは生理食塩水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図17】絹繊維の、全血から(A)Plt並びに(B)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する生体化の影響を示す図である。1%、0.1%及び0%濃度のゼラチンを生体化に使用した。0%サンプルに関しては、グルタルアルデヒドのみを使用した。非生体化サンプルは生理食塩水で処理した。「Pre」サンプルは、濾過前に血液サンプルから採取した細胞数を示す。
【図18】エジプト綿繊維の、全血から(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する弱イオンビーム照射による生体化の影響を示す図である。
【図19】エジプト綿繊維の、全血から(A)RBC、(B)WBC、(C)Plt並びに(D)好中球及びリンパ球を除去する能力に対する強イオンビーム照射による生体化の影響を示す図である。
【図20】血液の灌流前及び灌流後の白血球分析を示す図である。(A)好中球及び(B)リンパ球。
【図21】本発明の一実施形態による6時間の灌流を受けたイヌの血圧及び体温を示す図である。
【図22】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌにおけるWBC、RBC、Plt及びフィブリノーゲンのレベルを示す図である。
【図23】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌにおけるリンパ球、好中球及び単球の回復の動態を示す図である。Y軸は、各時点での全血中に存在する各細胞型の数を示す。
【図24】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌにおけるリンパ球、好中球及び単球の回復の動態を示す図である。Y軸は、各時点でのイヌの全血における総細胞に対するパーセントとしての各細胞型の存在を示す。
【図25】本発明の一実施形態による灌流中及び灌流後のイヌの血中の腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)及びインターロイキン6(IL−6)のレベルを示す図である。Y軸は、1ミリリットル当たりに存在するサイトカインの量(ピコグラム)を示すのに対して、X軸は、灌流の開始後の分を表す。
【図26】本発明の方法による処理後のアフェレーシスレシピエントの血中の白血球動態のグラフを示す図である。X軸は、アフェレーシスが始まってから経過した時間に関連する各相を示す。Y軸は、白血球数の相対単位を示し、1.0は、アフェレーシスの開始時の血中の白血球のレベルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記で論述するように、多数の悪性腫瘍細胞が、毎日ヒトの体内で産生される。幸運にも、免疫系はそれらを異常細胞として認識して、それらを毎日破壊する。免疫系が適切に機能していれば、がんを発症する機会が最低限に抑えられる。不運にも、ヒトの免疫系が抑制されていると、がん細胞は、破壊されるべき外来細胞として認識されない。この状況では、がん細胞は、悪性腫瘍中に取り残されて、宿主中で無限に成長する。
【0014】
悪性腫瘍に関する治療法を開発するために、本発明は、患者の免疫学的活性化状態を引き起こす安全で有効でかつ再現性ある方法を提供する。一実施形態では、患者はヒト患者である。別の実施形態では、患者は、非ヒト動物であり、この場合、本発明は、獣医学環境で使用され得る。非ヒト動物としては、ネコ、イヌ、ウシ及びウマが挙げられるが、これらに限定されない。現在、血液浄化(アフェレーシス)により患者の免疫学的状況を抑制することが可能である。ヒトの免疫系状態の活性状態の維持を担う血漿因子及び/又は細胞性因子の除去が、アフェレーシスによって可能である。Nose(1995年)を参照されたい。この血液浄化方法は、自己免疫疾患患者の治療のために導入された。これまで、アフェレーシス処置は、関節リウマチ又は潰瘍性大腸炎のような自己免疫疾患の治療のために導入された。逆に、がん患者から免疫学的抑制を引き起こす多くの分子的因子及び細胞性因子の除去を試みてきたが、このアフェレーシスの治療効果は、悪性腫瘍を有する患者に関して全く正の転帰を示さなかった。Tani(1998年)を参照されたい。
【0015】
実際に、表1で示されるように、悪性腫瘍を治療するための有効な治療法は、免疫系の活性化を包含し、免疫系の抑制を包含しない。したがって、免疫抑制アフェレーシス技法は、悪性腫瘍を治療するのに効果的ではなかった。ヒトが健常であり、かつ正常な免疫系を有する場合、がん細胞は破壊され、腫瘍は形成されない。免疫系が抑制される場合、がん細胞に身体で複製する機会が与えられ、ヒトががんになる。ヒトの免疫系が慢性的に過剰刺激される場合、自己免疫疾患が起こり得る。したがって、がんの場合、効果的な治療法は、抑制された免疫系の刺激を包含する。
【0016】
【表1】
【0017】
上記論理的根拠に基づいて、悪性腫瘍の治療は、正常レベルに到達するようにヒトにおける免疫学的機能を高めることを包含する。結果として、治療されたヒトの身体は、がん細胞を異常細胞として認識する能力を取り戻して、悪性腫瘍は、ヒトの正常化された免疫系により破壊される。免疫機能のかかる増強は、がん、及び細菌感染症、真菌感染症又はウイルス感染症のような感染性疾患を含む免疫抑制に関連した任意の疾患を治療するのに使用することができる。一実施形態では、がんは、身体で1つ又は複数の固形腫瘍として現れる。別の実施形態では、がんは、例えば白血病の場合では、固形腫瘍としては現れない。一実施形態では、ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、又はA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)若しくはC型肝炎ウイルス(HCV)のような肝炎ウイルス感染症であり得る。
【0018】
本発明は、アフェレーシス技法を使用して患者の抑制された免疫学的状態を活性化することによる治療方法を提供する。カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)ワクチンは、結核菌に対する免疫学的活性化を提供するのに使用されている(Grange 2009年)。不運にも、BCGの効果は非常に小さかった。本発明は、患者の免疫機能を刺激するより有効な方法を提供し、これは免疫抑制に関連する疾患又は感染性疾患の治療にとってより有効なものとなっている。
【0019】
本発明のアフェレーシス技法は、生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを使用する。本明細書中で使用する場合、「生体非適合性材料」は、身体からの反応を誘発する材料である(その反応が、免疫学的反応であるか、又は生理学的反応(例えば、直接的(例えば、身体への導入)若しくは間接的(例えば、体外循環を介して)のいずれかでの身体への曝露の結果としての抗体の形成)であるかは関係ない)。膜ベースの血液浄化系が、自己免疫疾患の治療用に開発されてきた。Nose(2000年)を参照されたい。これらの血液浄化アフェレーシス系に関して、当業者は、たとえこれらの系が自己免疫疾患の基礎をなす細胞性因子及び分子的因子を除去するものであったにせよ、患者の免疫系の活性化を回避するように血液適合性材料で作製されたフィルタを使用した。
【0020】
生体非適合性アフェレーシスフィルタにより免疫活性化がもたらされる場合、患者は、低血圧、呼吸不全、吐き気、嘔吐、過剰の発汗、寒さ及び震えを含む多くの副作用を被らなければならない。本明細書中で使用する場合、「免疫活性化」又は「免疫系の活性化」は、リンパ球のような免疫系の細胞の数及び/若しくは機能の増加、並びに/又はサイトカイン生成を伴うB細胞及び抗体の産生に関連した免疫系の体液性機能の増加を指す。一実施形態では、かかるサイトカイン生成は、TNF−α及び/又はIL−6の産生であり得る。これらの副作用を踏まえ、米国のFDA及び日本の厚生労働省を含む政府機関は、かかるアフェレーシスフィルタの臨床応用を禁止した。結果として、悪性腫瘍の治療のための有効な免疫活性化を導入するためのかかる生体非適合性アフェレーシスフィルタは、臨床上認可されなかった。
【0021】
本発明は、アフェレーシス技法において生体非適合性材料を使用して患者の抑制された免疫学的状態を活性化させることによる治療方法を提供する。低血圧及び低酸素症のような副作用がこの技法中に起こる可能性があるが、本発明は、安全でかつ制御された様式で免疫系を活性化する方法を提供する。上述したように、BCGワクチンのようなアフェレーシス以外の技法が、結核菌に対する免疫学的活性化を提供するのに使用されてきた(Grange 2009年)。不運にも、BCGの効果は非常に小さかった。本発明は、患者の免疫機能を刺激するより有効な方法を提供し、これは免疫抑制に関連する又は感染性疾患の治療にとってより有効なものとする。
【0022】
他のグループは、がん患者において免疫系を刺激するのに酢酸セルロースを使用している(Yonekawa 1997年)。Yonekawa博士は、がん治療に関して酢酸セルロースビーズ(Japanese Antibody Research Institute)カラムを利用した(Yonekawa 1992年)。9人の患者のうち8人において、疼痛及び倦怠感のような自覚症状が改善された。しかしながら、この酢酸セルロースビーズカラムフィルタの有効化には、相当数の処理を必要とし、さらには明確な結果を生じなかった。がん患者のより有効な治療のためには、より生体非適合性のフィルタによるより強い免疫活性化が必要とされる。
【0023】
別のグループは、潰瘍性大腸炎を治療するのにImmugard R(テルモ株式会社、日本)及び旭化成メディカル株式会社によるCellsorbaカラムを使用している。旭化成メディカル株式会社のフィルタと比較して、テルモ株式会社のフィルタは、潰瘍性大腸炎の治療にとってより良好な臨床転帰を示した。Cellsorbaカラムはポリエステル繊維を利用している。
【0024】
肺及び胃腸管の悪性腫瘍を治療する試みに使用された2つの更なるアフェレーシスカラムが存在する。日本のテルモ株式会社により生産されるImugardとして知られる第1のカラムは、ピマ綿(ゴシッピウム・バーバデンス、Gossypium barbadense)植物由来の綿繊維を実験的に含有していた(Amano 1996年)。このカラムがアフェレーシスに使用された場合、患者は、一過性の低血圧、白血球の一過性の低減及び補体の活性化を受けた。体外循環の開始時に、一過性の低血圧が、白血球の一過性の低減とともに起きた。補体活性化もまた、非常に強く起こった。合併症のため、FDAは、臨床用途に関してカラムの使用を承認しなかった。続いて、テルモ株式会社は、繊維を綿繊維から合成繊維へ切り替えることによってフィルタの生体非適合性を低減させようと試みた。しかしながら、そうすることで、カラムは、感染の治療に関して及び悪性腫瘍に関してその有効性を喪失したが、依然として関節リウマチに関して有効性を保持していた(Amano 1996年)。本質的に、テルモ株式会社のカラムは、フィルタの生体非適合性が低減された際に、免疫活性化カラムから免疫抑制カラムへ変更した。現在、テルモ株式会社は、ポリウレタンフィルタを利用しており、そのImmugardは主として、輸血のための白血球の除去に使用される。
【0025】
第2のカラムは、精製された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAを含有し、これは、免疫複合体形成されたIgG抗体に関して高い親和性を有する。このカラムがアフェレーシスに使用された場合、患者は、一過性の低血圧及び寒気を感じた。類似した経験は、プロテインAカラムによって得られた。このカラムはまた、がん療法にも試行されている(Messerschmidt 1998年及びAinsworth 1988年)。しかしながら、体外循環の開始時の低血圧及び寒気のような合併症が、テルモ株式会社のカラムと同様に起きた。そこでここでも、FDAは、プロテインAカラムをより生体適合性にさせるべきであることを求めた。プロテインAカラムの製造業者がその生体適合性の改善に成功した後、プロテインAカラムは、悪性腫瘍の治療に関して機能しなくなったが、関節リウマチに関する治療法として残った(Levy 2003年)。
【0026】
免疫系がこれらの生体非適合性アフェレーシスフィルタによって活性化された場合、患者は、低血圧、呼吸不全、吐き気、嘔吐、過剰の発汗、寒さ及び震えを含む多くの副作用を被った。米国のFDA、及び日本の厚生労働省を含む政府機関が、かかるアフェレーシスフィルタの臨床応用を禁止することは当然のことであった。結果として、悪性腫瘍の治療に有効な免疫活性化を導入するためのかかる生体非適合性アフェレーシスフィルタは、臨床上承認されなかった。しかしながら、それぞれの場合において、生体適合性が改善された場合には、悪性腫瘍に対する効果が消失した。したがって、これらの副作用を低減するプロセスにおいて、Imugardカラムは、腫瘍細胞に対してその有効性を喪失し、代わって関節リウマチ又は潰瘍性大腸炎を治療するのには依然として有効であった。同様に、プロテインAカラムもまた、それが副作用を低減するように変更された場合には、腫瘍細胞に対してその有効性を喪失し、代わって関節リウマチを治療するのに有効となった。関節リウマチ及び潰瘍性大腸炎はともに、過剰な免疫応答に関連した状態であり、修正されたカラムが患者の免疫系を抑制するように作用したことを実証している。
【0027】
要約すると、アフェレーシスカラムがその生体非適合性を低減するように修正されると、結果として生じるカラムは、自己抗体(特に、IgG3サブタイプのもの)の除去、免疫複合体の除去、及び/又は免疫賦活サイトカインの除去によって患者の免疫系を抑制するように作用する。これに対して、生体非適合性材料を含有するアフェレーシスカラムは、抗体産生を増加させること、サイトカイン産生を増加させること、及びリンパ球優性な状態への患者の血中の白血球群を偏向させることによって、免疫系を刺激するように作用する。
【0028】
悪性腫瘍及び感染性疾患を治療するための臨床上有効な治療方法を提供するために、本発明は、患者において制御されたショック状態を誘導する。換言すると、本発明は、アフェレーシスカラムにおいて生体非適合性材料を使用する方法を提供し、それにより免疫系の一時的ではあるが強力な刺激を誘導すると同時に、かかる刺激を随伴し得る副作用を制御する。かかる強力な免疫学的時刺激を与えない場合、免疫系の、アポトーシスを介して腫瘍細胞を死滅させる能力が低減される。任意の心臓血管保護を伴わない現在提供されるアフェレーシスは、臨床用途に関して許容可能ではない。免疫学的ショックを誘導することに関連する副作用は、全身麻酔を使用することによって制御することができる。このようにして、本発明は、患者の免疫系を分子レベルで変更して、疾患を引き起こす細胞を追跡して捕獲し(hunt down)、死滅させるタイプの分子手術を提供する。
【0029】
20世紀に行われた古典的な手術と21世紀に提唱される分子手術の差を表2に概説する。
【0030】
【表2】
【0031】
20世紀における手術手順は、全身麻酔下でハサミ及びメスにより組織を除去することを包含する。21世紀における血液浄化処置は、全身麻酔下で血液浄化フィルタ(アフェレーシス)により分子的成分及び細胞性成分を除去する。がん療法のこの分子方法に関して、がん療法に現在使用されている放射線療法又は化学療法に一般的に付随する合併症又は副作用は見られない。患者の正常細胞に損傷を与える必要性がないだけでなく、異常悪性腫瘍細胞を破壊する必要もない。同時に、小さな転移性領域を検出して、有効な放射線療法を適用することは非常に困難である。要するに、現時点では、悪性腫瘍の治療に関する有効な治療計画は存在しない。したがって、21世紀では、がんに関する治療手順は、全身麻酔を伴う分子手術であるべきである。
【0032】
これまで、臨床的なアフェレーシス処置は、全身麻酔なしでヒトに実施されてきた。しかしながら、イヌに対する実験的なアフェレーシス処置は、免疫学的ショックの副作用を制御するためではなく、処置中に動物が動かないようにするために全身麻酔を用いて実施された。結果として、全身麻酔は、アフェレーシス処置自体中で短期間用いられてきた。これに対して、本発明は、患者に生理的愁訴が見られる2つの状態、つまり、(1)最初の1時間の生体非適合性血液アフェレーシスフィルタを使用したアフェレーシスによる免疫活性化の誘導、及び(2)細胞性作用物質及び体液性作用物質による腫瘍死滅のための続く5時間の一過性のリンパ球優性免疫活性臨床段階の安全な維持、の間、全身麻酔を使用する。幾つかの実験フィルタは生体非適合性であり、かかる血行動態的変化及び呼吸変化をもたらすが、致命的な出来事は見られなかった。しかしながら、これらのフィルタは、免疫活性な状態を増強することは意図されず、代わって免疫学的活性を抑制することを目標にした。
【0033】
本発明の方法は、本発明のアフェレーシスカラムを使用したアフェレーシスの約1時間後に図1に示される免疫学的調節をもたらす。これらの現象は全て、体液性因子だけでなく、細胞性因子の免疫活性化に起因する。換言すると、これは、この6時間の間での、生体非適合性生体材料への患者の血液の直接的な接触とそれに続く、患者の体内における自己免疫的細胞性ならびに液性適応からなる第1相の調整(以下で論述される)の結果として、誘導される免疫学的ショックである。一実施形態では、免疫活性化プロセスは、2週で完了する。
【0034】
生体非適合性アフェレーシスフィルタがアフェレーシスに使用される場合、体外循環の最初の30分のフレームワーク内で、急激な血圧降下が見られ、循環している白血球の急激な低減が起きる(図2)。同じ状況が、未精製のへパリンを100ユニット/kgで注射した際に見られた。薬物誘導性の低血圧と生体非適合性アフェレーシスカラム誘導性の低血圧との違いは、前者は注射後のかかる副作用を覆すことはできないが、後者は体外循環血液量を低減させることによってこれらの副作用を停止させることができることである。
【0035】
本発明の免疫活性化血液灌流フィルタによってもたらされるこれらの生理学的影響を図3に示す。これらの生理学的影響の主な原因は、肺毛細血管中の白血球捕捉に由来する。主として、顆粒球は肺毛細血管の内部に一過的に捕捉されて、次に患者においてリンパ球優性状態を誘導する。これは、患者の免疫活性化の最も重要な徴候の1つである。したがって、低血圧を伴う循環している白血球の一過性の低減は、本発明の有益な治療効果を促進するのを助ける。白血球は、体外循環の最初の30分中に肺毛細血管中に捕捉される。体外循環が持続されてもされなくても、30分後には、肺毛細血管中のこれらの捕捉された白血球の放出が開始される。生体非適合性血液浄化のいわゆる安全でない「副作用」は、実際には悪性腫瘍に対する治療効果を導く生理学的応答である。
【0036】
この30分後の白血球の一過性の増加は、図4に示されるように起こり得る。フィルタの異なる適合性に応じて、循環に戻される白血球の動態は、これらの30分後には異なっている。最初の30分中の体外循環後の白血球捕捉は、異なる材料の異なるフィルタを用いた場合と同じであるが、血液循環への白血球回帰速度は、材料の異なる生体非適合性に起因して異なる。
【0037】
さらに、副作用のモニタリング及び防止は、悪性腫瘍に関する従来の薬物療法及び放射線療法を使用する場合に非常に困難である。これらの治療法中、患者は大量の合併症を被り、患者の毛髪を失うだけでなく、多くの負の生理機能を有する。さらにそれらの治療効果は定まっておらず、不経済であり得る。悪性腫瘍に関する従来の治療法に対して、免疫活性化による直接的な血液療法は、制御可能かつモニタリング可能な様式で容易にその効果を示す(表3)。換言すると、6時間の気管内挿管を伴う全身麻酔を使用した本発明の免疫活性化血液灌流処置中及びその後に、医師の適切な管理下に患者を置くことは、より安全でかつより簡単である。実際に、実施例2に記載される研究では、免疫活性アフェレーシス療法に付されたイヌは全て、治療後の少なくとも6〜12ヵ月間は生存し、かつ健常であった。制御された免疫学的ショックを患者に付与するこの体外療法は、適切な血圧モニタリングを伴う全身麻酔下で実施することができるため、患者は、処置中又は処置後に、いかなる負の感覚又は疼痛を有さない。
【0038】
【表3】
【0039】
方法
ヒトへの直接的な生体非適合性材料の注射は、免疫活性化が起こった後に除去することが困難であるため危険である。代わりに、患者の免疫系の安全な免疫活性化は、体外アフェレーシスを介して遂行することができる。上述したように、いわゆる免疫学的ショック症侯群を患者にもたらさない免疫活性アフェレーシスフィルタは存在しなかった。不運にも、この時点では、この免疫液学的ショック症侯群を適切にかつ安全に制御する方法は存在しなかった。しかしながら、がん患者に適切でかつ臨床上有効な免疫活性化を提供するためには、制御された免疫学的ショックを患者に与えることが重要である。
【0040】
安全なアフェレーシス処置を提供するために、本発明の方法は、全身麻酔下でアフェレーシス処置を実施することを包含する。別の実施形態では、アフェレーシスは、気管内挿管を用いて実施される。別の実施形態では、適切な血圧及び適切な血液ガスレベルが処置中維持される。適切な血液ガスレベルは、例えば鼻、口又は気管を介して投与される酸素供給を施して維持することができる。幾つかの実施形態では、酸素は、患者の鼻及び口を覆うマスクを通して投与される。別の実施形態では、酸素は、気管内チューブを介して投与される。
【0041】
例えば、被験体が、本発明による生体非適合性血液灌流フィルタを用いたアフェレーシス処置に付される場合、急激な低血圧及び白血球減少が、体外循環の最初の15分〜30分中に起こり得る。血圧は、50%を上回って減少し得る。この影響は、血流の速度を低減させることによって30分後に回帰させることができ、一般的に1時間のフレームワーク内に処置前のレベルに戻すことができる。本発明では、以下で論述するように、アフェレーシス中及びその後に起こる免疫活性化の性質のため、被験体は、およそ6時間全身麻酔に維持される。
【0042】
本発明の一実施形態では、全身麻酔を伴う1時間の本発明によるアフェレーシスカラムに通した体外循環、及び更に5時間の麻酔の維持により、安全な免疫活性化を患者に提供することができる。アフェレーシスカラムに通す初期血流量は、約60分のうちに全循環血液量の処理を可能にするように、約100ml/分〜200ml/分であり得る。およそ100ml/分の体外循環速度は、静脈静脈ニードルアクセス(veno-venous needle access)によって達成することができる。別の実施形態では、およそ100ml/分の血流量がアフェレーシス中に維持され得る。しかしながら、体外循環の初めに、血圧が安全でないレベル(例えば、50mmHg)に降下する場合、血圧のこの降下は修正されるべきである。一実施形態では、血流速は25%低減させることができる。低血圧が続く場合、血流速は、初期の血流速の50%をさらに低減させることができる。また、動脈血の酸素含有量は、この時間中に白血球数とともに降下し得る(例えば、総細胞数の20%未満)。25%〜50%の血流速の即時の低減はまた、低血圧及び白血球減少を修復させることができる。一実施形態では、血流速は、約100ml/分から、約75ml/分又は約50ml/分へ低減させることができる。
【0043】
別の実施形態では、血中の細胞性因子及び分子的因子の免疫活性化は、6時間で完了する(急性期)。この期間中、患者の心肺機能は全身麻酔下で維持することができる。したがって、患者は、眩暈、呼吸不全、吐き気、嘔吐、過剰の発汗、発熱、寒気及び震えを含む誘導された免疫学的ショックのいかなる疎ましい副作用を感じない。
【0044】
一実施形態では、本発明は、患者における疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシスカラムを準備することと、
(b)上記患者の血液が、該患者の身体に再び入る前に上記血液灌流フィルタを通過するように、該患者の血液循環を上記アフェレーシス系と接続することと、
(c)上記患者に全身麻酔をかけること、及び該患者に生理学的サポートを提供することと、
(d)上記患者の血液を上記アフェレーシス系に通して約1時間、循環させることと、
(e)上記患者の血液を上記アフェレーシス系に通して循環させた後、少なくとも5時間、上記患者を、全身麻酔をかけた状態に保つことと
を含み、上記患者の血液を上記血液灌流フィルタに通して循環させることで該患者の免疫系が活性化され、それにより上記疾患を治療する、患者における疾患を治療する方法を提供する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、患者における疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシスカラムを準備することと、
(b)気管内挿管により連続的な動脈圧モニタリング及び動脈血の酸素モニタリングを伴う全身麻酔を提供することと、
(c)上記患者へ抗凝固剤を投与することと、
(d)上記患者の血液を上記アフェレーシスカラムに通して約1時間、静脈静脈灌流により循環させること(ここで、該アフェレーシスカラムを通る血流量は、約100mL/分〜200mL/分である)、
(e)上記患者の血圧及び血中酸素濃度をモニタリングすることと、
(f)免疫活性化の徴候及び心肺安定性に関して上記患者をモニタリングしながら、該患者の血液を上記アフェレーシス系に通して循環させた後、少なくとも5時間、該患者に全身麻酔をかけた状態に保つことと、
(g)肺機能のアフェレーシス前のレベルへの回復を確認した後、上記患者から全身麻酔を取り外すことと
を含む、患者における疾患を治療する方法を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、患者における疾患を治療するための、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシス系であって、患者の血液が該患者の身体に再び入る前に該血液灌流フィルタを通過することができるように、該患者の血液循環に接続される、アフェレーシス系、及び
(b)上記アフェレーシス系の使用中、及び該アフェレーシス系の使用後の少なくとも5時間、上記患者に麻酔をするための全身麻酔薬
の使用であって、上記アフェレーシス系の使用によって上記患者の免疫系が活性化されて、それにより上記疾患を治療する、使用を提供する。
【0047】
本発明の方法は、患者の血中の白血球群の有意な変化、及び幾つかのサイトカインの一過性の増加をもたらす。図26に示されるように、2週にまたがって4つの異なる相の白血球動態が、上記方法の結果として出現した。体外循環が開始された後の30分未満である相1では、血液内部の白血球の一過性の低減が、主として肺毛細血管の内部に白血球を捕捉することによって起こる。アフェレーシスカラム中の生体非適合性材料の使用により、リンパ球(約40%)と比較して顆粒球のより大きな低減(ほぼ100%)が起こり、血中のリンパ球優性状態が創出される。30分後、顆粒球は、肺から徐々に放出される。概して、1時間の体外循環は、十分な免疫活性化効果を発生し得る。
【0048】
相2では、白血球が肺毛細血管から放出され、白血球数は、およそ6時間で正常化されるようになる。これらの6時間中、ほとんどの顆粒球が肺から放出される。この相は、サイトカインにおける大幅な一過性の増加が起こるリンパ球優性段階でもあり、これは患者の身体において腫瘍細胞の死を導く。これらの6時間中、肺機能は補助(assistance)を必要とし得る。気管内挿管による酸素の十分な供給を伴う全身麻酔によって、この期間中の低酸素状態を補うことができる。
【0049】
相3では、アフェレーシスの4日後、リンパ球数は、最初の6時間中の顆粒球の顕著な低減にも関わらず、実質的により高く増加する。顆粒球及びリンパ球を含む白血球はまた、アフェレーシス前のレベルの2倍を超えて増加することができる。顆粒球及びリンパ球と比較した場合の単球群の更により大幅な増加がまた、この相中に起こる。この期間中、これらの増加した単球及び顆粒球は、死滅した腫瘍細胞を排除することが可能であるものとする。その一方で、リンパ球は依然として、高いレベルで存在する。
【0050】
相4では、これらの正常範囲を超えて増加した白血球数は全て、2週間後にアフェレーシス前のレベルに戻る。一実施形態では、予期せぬほど高いレベルの免疫活性化及び続く腫瘍細胞の過剰な破壊が2週後に起こる場合、これらの細胞片及び免疫活性作用物質を除去するための血液浄化処置を、患者の安全性を維持するために適用させることがある。
【0051】
一実施形態では、アフェレーシスは、本発明に従って患者へ一回施すことができる。別の実施形態では、アフェレーシスは、2回以上患者へ施すことができる。この場合、各アフェレーシス処理は、2週毎に行われる。更に別の実施形態では、処理は少なくとも3回患者へ提供され、各処理は2週毎に行われる。この実施形態では、患者の処理全体は、6週で完了される。別の実施形態では、本発明によるアフェレーシス処理は、免疫活性化の本発明の効果を増強するために従来の抗がん療法で補ってもよい。
【0052】
患者の血液が、アフェレーシスカラムから直接、患者の身体へと戻すことは必要とされない。一実施形態では、患者の血液は、本発明のアフェレーシスカラムへ流し、続いて患者への後の投与のために収集することができる。したがって、患者から採取した血液を、生体非適合性材料カラムを用いて、フィルタへと曝露させ、患者への再注入により免疫活性化を確立することが可能である。
【0053】
本発明による体外アフェレーシスの主な技術的特徴としては、(1)約60分での生体非適合性血液灌流フィルタに通した体外循環の達成、(2)相2の免疫活性化を6時間で完了させることができ、その6時間中に、細胞性活性化及びサイトカイン活性化が起こること、並びに(3)処理に対する生理学的応答が約30分で起こること(この生理学的応答には低血圧、白血球減少及び呼吸障害(例えば、低酸素症)が含まれる)が挙げられる。これらの生理学的応答は、全身麻酔下にある患者により安全にかつ無痛で許容される。
【0054】
本発明の方法で使用可能なアフェレーシスカラム集合体
図5Aは、本発明の方法で使用することができるアクリル系アフェレーシスカラムの一実施形態を提供する。小さなアクリルチャンバ3は、約5μm以下の洗浄繊維をおよそ1g保持する。これらの繊維は、約2mm厚のPVAの不織メッシュ2により小さなチャンバ中で維持される。不織PVAメッシュ(VW100)は、クラレ株式会社(日本、東京)により提供された。調製された繊維及びPVAメッシュを含む小さなチャンバはそれぞれ、濾過ユニット4を構成する。5個〜10個の濾過ユニットを、アフェレーシスカラム1に積み重ねることができる。一実施形態では、5個の濾過ユニットが使用され、この場合、カラムの高さは約60mmである。別の実施形態では、10濾過ユニットが使用され、この場合、カラムの高さは約120mmである。
【0055】
一実施形態では、濾過ユニットは、血液の導入前にカラムに通して流れるチャンバ中のプライミング溶液の容量であるプライミング容量がおよそ400mlとなるようにチャンバ内部にパッキングされてもよい。フィルタのパッキング密度は、最大でおよそ10%(グラム/容量)であり得る。
【0056】
生体非適合性材料
肺毛細血管中に白血球を捕捉することは、リンパ球優性状態(その間に免疫活性化が起こる)を確立するのを助ける。がんの場合、この時間に、がん細胞が破壊され得る。最適な生体非適合性材料は、顆粒球をアフェレーシスカラム内部に捕捉することにより血液から顆粒球を除去し、身体に再び入る白血球に関しては、生体非適合性材料への曝露により、これらの白血球が肺中で一時的に捕捉されるようになり得る。小さな直径を有する繊維を使用することで、これらの効果を促進するのを助ける。一実施形態では、繊維は、5μm以下の直径を有する。別の実施形態では、繊維は、1μm〜25μmの直径を有する。
【0057】
本発明のアフェレーシスカラムで使用可能である天然繊維としては、綿及び絹が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
エジプト産のより小さな直径の綿繊維は、肺中での白血球捕捉を容易とし得る。合成ポリマーと対比して、天然綿繊維は、多重分子複合体により構成されており、より生体非適合性である。全ての綿繊維の中でもエジプト綿繊維は、パキスタン綿繊維及びオーストラリア綿繊維よりも小さな直径を有する。したがって、エジプト綿から作製される生体非適合性フィルタは、植物繊維の群の中で最も有効な免疫活性フィルタを創出しうると予測される。各タイプの綿は、その原産国で収穫されて、Marubeni America Corporation(テキサス州、ヒューストン)から得ることができる。
【0059】
天然の動物性繊維の中でも、絹繊維は、直径が最も小さい。全ての絹の中で、最小繊維サイズは、「広東」絹及び「日本」絹により実証された。日本絹は、日本の製造業者によって生産される一方で、広東絹は、中国で製造される。両方のタイプの絹は、Marubeni America Corporation(テキサス州、ヒューストン)から得ることができる。絹繊維の最小直径は、エジプト綿の繊維直径にほぼ類似している。その直径は5μm未満、通常1μm〜2μmである。しかしながら、動物性繊維は、植物繊維を超える多様な異なる生体非適合性成分(特に、タンパク質群)を伴うより複雑な構造である。したがって、動物性繊維は、合成繊維又は天然植物繊維よりも生体非適合性である。
【0060】
カイコ由来の外来タンパク質は、免疫賦活薬として作用することができ、絹が患者の免疫系のより良好な刺激をもたらすのを可能にする。したがって、最適な免疫活性化フィルタは、絹を使用することによって得ることができる。絹繊維で作製される免疫活性化カラムは、体外血液灌流により悪性腫瘍を治療することが可能であるはずであると予測される。
【0061】
幾つかの実施形態では、本発明の天然繊維は生体化されてもよい。本明細書中で使用する場合、「生体化(される)」という用語は、繊維上に滑らかで一貫した表面を生じるように繊維中に存在する同質(homogenous)タンパク質を連結させる架橋手順を指す。繊維は、化学的に又は照射技法を介して生体化することができる。繊維は、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドを含むがこれらに限定されない化学作用物質を使用することによって化学的に生体化することができる。一実施形態では、繊維は、少なくとも48時間、10%ホルムアルデヒド中に浸漬させる。別の実施形態では、繊維は、2週よりも長く、及び5年もの間、グルタルアルデヒドの0.45%溶液中で保管することができる。アフェレーシスカラム内部の生体非適合性材料が生体化されている場合、カラムは、臨床的利用前に残留アルデヒドを除去するために、カラムを生理食塩水で洗浄すべきである。
【実施例】
【0062】
実施例1:生体非適合性材料との接触時の血球数の変化
綿及び絹のタイプを、ヒト全血から種々の細胞型を濾別するそれらの能力に関して、様々な条件下で試験した。これらのin vitroでの実験に関して、5ml容のシリンジに、生体非適合性材料をシリンジ内部で4ml容積になるようパッキングして、0.125g/mlの密度とした。図7を参照されたい。全血は、正常で健常なヒトから得て、血液1ミリリットル当たり1ユニットのへパリンナトリウムを添加して、凝血を低減させた。この血液調整物は、収集の30分以内に実験で使用した。22℃での濾過中、処理した血液をシリンジの最上部へ注ぎ、生体非適合性材料に通して濾過した後、シリンジの底部から収集した。次に、結果として得られた濾過血液を、種々の細胞型の存在に関して分析した。
【0063】
0.5N酸溶液及び0.5Nアルカリ溶液で処理したエジプト綿の顆粒球除去速度を、生理食塩水(Baxter Corp. カタログ番号281324)で処理したエジプト綿を用いて得られる除去速度と比較した。未処理のエジプト綿は、Marubeni America Corporationから得られ、0.5N NaOH(S320−500、Fisher Scientific)、水、0.5N HCl(SA48−500、Fisher Scientific)、水、及び生理食塩水を用いて、各溶液中に約30分間、連続して浸漬させることによって調製した。エジプト綿は生理食塩水単独中にも浸漬させた。綿の処理後、酸/アルカリで処理した綿又は生理食塩水で処理した綿0.5gを、4ml容積でシリンジへ入れて、0.125g/mlの繊維密度とした。血液8ミリリットルをシリンジ小型カラムへ注いだ。濾過血液の最初の4mlを廃棄して、生理食塩水による希釈を防止した。濾過血液の残りの4mlを収集して、WBC及びRBCの数に関して、濾過前の血液と比較した。
【0064】
図8に示されるように、酸/アルカリ処理したエジプト綿と生理食塩水で処理した綿の除去速度間の差は見られなかった。両方の処理が、赤血球(RBC)、白血球(WBC)及び血小板の同程度の除去をもたらした。より具体的には、好中球及びリンパ球もまた、2つの綿処理群間で同程度の速度で除去された。リンパ球の数は、濾過前の血液中のリンパ球の数と比較してわずかに低減した(図8D)。これらの結果により、エジプト綿は、綿の調製で使用され得る(すなわちグリースを除去するため、綿を滅菌するため、及び/又は綿を中和するための)化学的処理の存在下で、好中球数の低減を測定すると、顆粒球を除去するその能力を維持したことが実証される。
【0065】
4つのタイプの綿、及び陰性対照としてPVA繊維について、濾過血液中の好中球の除去を測定することで、顆粒球の最も有効な除去率を試験した。試験した4つのタイプの綿は、パキスタン綿(Marubeni America Corporation)、オーストラリア綿(Marubeni America Corporation)及びエジプト綿であった。綿及びPVAはともに、生理食塩水ですすいだ後、各タイプの綿及びPVA0.5gを、4ml容積で5ml容のシリンジへ入れて、0.125g/mlの繊維密度とした。全血8ミリリットルをシリンジに通して濾過して、次位の4mlを分析用に収集した。
【0066】
図9に示されるように、ほぼ100%の顆粒球除去が、PVA陰性対照と比較して、試験した綿それぞれによって実証されており、エジプト綿が、最良の結果を提供した。図9Dを参照されたい。同様に、図10も参照されたい。さらに、RBCは、綿タイプのいずれによっても濾別されない一方で、血小板の大部分が除去される。図9A及び図9Cを参照されたい。リンパ球に関して、各タイプの綿は、わずかに異なるレベルのリンパ球除去を示し、オーストラリア綿が最も多くのリンパ球を除去した。
【0067】
顆粒球除去の速度に対する繊維密度の影響もまた、上述したように生理食塩水で処理したエジプト綿を使用して評価した。エジプト綿は、0.125g/ml及び0.05g/mlの密度でシリンジへパッキングした。0.05g/mlの密度に関して、エジプト綿2グラムを、4ml容のシリンジへパッキングした。0.125g/mlの密度のカラムは、上述したように調製した。0.125g/mlの密度に関して、20ml〜80mlの範囲の種々の血液容積を、試験した各血液容積に関して新たなミニカラムを使用して濾過した。0.05g/mlの密度に関して、5ml〜15mlの範囲の血液容積を試験した。各密度に関して、濾過血液の最初の4mlを廃棄して、生理食塩水による希釈を防止して、その後、濾過血液を2ml容のバッチ中に収集した。図11Dに示すように、エジプト綿は0.125g/mlの密度では、好中球の除去を測定すると、全血の80mlが濾過された場合でさえ、幾らかの顆粒球を除去することが可能であったが、全血20mlが濾過された場合に、除去は最も効率的であった。顆粒球除去の効率は、血液容積が増加するにつれ減少した。血液容積は、0.125g/mlの密度で試験した血液容積ではRBC又は血小板の除去の速度に影響を及ぼさなかった。0.125g/mlの密度では、エジプト綿は、加工処理した血液容積80mlまで、好中球の約70%を除去した状態を保つことができた。図12Dは、0.05g/mlの密度に関して、WBC除去の効率が、血液容積を増加するにつれて減少したことを示している。濾過した血液容積11ml〜13mlで、濾過血液中のリンパ球の存在を保持しながら、顆粒球除去が最適であった。ほんの少量の最初の5ml〜7mlでは、ミニカラムは、好中球の除去を測定すると、顆粒球を除去することが可能であった。
【0068】
図13では、3つの繊維密度を、単一血液容積での顆粒球除去の効率に関して試験した。0.05g/ml、0.125g/ml及び0.2g/mlの繊維密度を比較した。0.05g/ml及び0.125g/mlの密度のミニカラムは、上述したように調製した。0.2g/mlの密度のカラムに関しては、エジプト綿0.2グラムを、4ml容のシリンジ中に1ml容積になるようパッキングした。0.05g/mlの密度のカラムを試験する場合、全へパリン処理血7mlをカラムに通して濾過した。最初の5mlを廃棄して、残りの2mlを分析用に収集した。0.125g/mlの密度に関して、全へパリン処理血22mlをカラムに通して濾過した。最初の20mlを廃棄して、残りの2mlを分析用に収集した。0.2g/mlの密度のカラムに関して、全へパリン処理血5mlをカラムに通して濾過した。濾過した血液の最初の3mlを廃棄して、残りの2mlを分析用に収集した。繊維密度が異なっても、同程度のレベルのRBC除去をもたらした。しかしながら、WBCに関しては概して、0.05g/mlの密度は0.125g/ml及び0.2g/mlの密度と同様にはWBCを除去しなかった。同様に、0.125g/ml及び0.2g/mlの繊維密度は、かなりのリンパ球がミニカラムを通過するのを可能にしながら、好中球数計測により実証されるように、顆粒球を除去することに対し、とても効果的であった。したがって、少なくとも0.125g/mlの繊維密度が、顆粒球を除去することに対し、効果的であった。
【0069】
顆粒球除去の効率に対するエジプト綿繊維上の生体化の影響を評価した。綿繊維は、3種類の組合せ処理、すなわち、0.4%グルタルアルデヒド架橋、続く1%、0.1%又は0%ゼラチンによる繊維のコーティング、を用いて生体化した。0%のゼラチンの場合、繊維をグルタルアルデヒドのみを用いて生体化した。生体化に関して、繊維を24時間より長くグルタルアルデヒド中に浸漬させた。次に、繊維をゼラチン溶液(Fisher Scientific;カタログ番号G7−500)中でコーティングした。綿繊維はまた、水単独中に浸漬させて、陽性対照として役割を果たした。図14に示されるように、3つの処理は全て、サンプル間で同程度のRBC除去をもたらした。WBCに関して、3つの処理は全て、濾過血液からのWBCの有意な除去をもたらした。図14を参照されたい。図15は、3つの処理は全て、かなりのリンパ球がミニカラムを通過するのを可能にしながら、非常に良好な血小板除去及び完全な顆粒球除去をもたらしたことを示している。同様の研究を、エジプト綿に代わって絹繊維を使用して行い、同様の結果を得た。図16及び図17を参照されたい。
【0070】
化学処理に代わって照射によるエジプト綿の生体化についても試験した。綿繊維は、0.5時間(図18)又は1時間(図19)のいずれかで5キロボルトで設定したアルゴンプラズマベースのイオン注入(ion implantation)デバイスを使用して照射した後、上述したように生理食塩水で調製した。1時間の照射は、0.5時間の照射よりも良好に機能して、顆粒球を濾別した。このデータに基づいて、プラズマベースのイオン導入を使用して、血液から除去される好中球群を調節することができた。図18D及び図19D中の好中球数を比較されたい。
【0071】
実施例2:雑種犬における免疫活性化
20kg〜30kgの6匹の正常な雄雑種犬を、Marubeni International Inc.(テキサス、ヒューストン)により提供される天然の非合成型非植物繊維(ACS−A1 直径1μm〜2μmの天然で得られる繊維)を含有する生体非適合性アフェレーシスカラムを使用したアフェレーシス実験に付した。図5Bを参照されたい。カラムは、生体化されたACS繊維5グラムを含有した。これらの繊維は、有効な白血球フィルタであったが、依然として生体非適合性材料として機能した。総計5グラムのかかる繊維をカラム内部に組み込ませた。具体的には、よく洗浄した繊維1グラムを、分離したチャンバ中に含有させ、チャンバの最上部及び底部は、Kuraray Inc(テキサス、ヒューストン)により提供される不織PVA(ポリエチレンビニルアルコール)によって保持され、濾過ユニットを作製した。図5Aを参照されたい。5つの濾過ユニットを、カラム内部に組み込ませた。
【0072】
繊維は、0.5N NaOH、0.5N HCl、70%イソプロピルアルコールによる連続した処理により調製された。繊維は、溶液間での水による洗浄工程により各溶液中でおよそ30分を費やした。カートリッジを洗浄して、10%ホルムアルデヒド溶液を48時間カラムに通して流すことによって生体化した。実験前に、加工処理した繊維をカラムにパッキングして、続いて血液回路を設定した。
【0073】
血液回路は、ローラポンプ、チュービングセット、加熱ユニット及びアフェレーシスカラムを含んでいた。実験の開始前に、洗浄溶液中の残留ホルムアルデヒド濃度が5ppm未満になるまで、血液回路を生理食塩水で洗浄した。カラムを通る血流速を3ml/kgで設定した。カラムの引入側及び引出側の圧力は、圧力計により測定した。
【0074】
アフェレーシスカラムをイヌに接続して、加温装置及び空気除去チャンバと一緒にPVC(ポリ塩化ビニル)チュービングによる体外循環の完全な回路を完成させた。体外アフェレーシスカラムは、4%ホルムアルデヒドで一晩消毒した一方で、回路成分の残りは、使用前に予め滅菌した。
【0075】
体外アフェレーシスに先立って、麻酔の誘導のためのキシラジン(筋内)及びケタミン(筋内)の組合せ、続く維持のための2.5%イソフランガスを使用して、イヌに麻酔をかけた。酸素3L、空気5L(2%イソフルラン)を呼吸ガスに添加した。代替的な麻酔誘導として、アトロピンを使用した。全身麻酔は、アフェレーシス処理の開始60分以内に施した。
【0076】
イヌの血液を、最初に静脈内に200ユニット/kgをボーラス投与することによって、イヌの血液をヘパリン処理して、続いてアフェレーシス中に、イヌに、100ユニット/kgのへパリンを与え続け、次に、上述したように、イヌの血液を、流速3.3ml/kgで1時間、アフェレーシスカラムに通して循環させた。1時間のアフェレーシス後に、イヌは更に5時間、全身麻酔にかけたままにし、体外アフェレーシスが始まった時間から総持続時間6時間の全身麻酔を行った。
【0077】
図20に示されるように、この処理は、白血球のex vivoでの除去をもたらした。この図で、最も暗い棒グラフは、アフェレーシスカラムに進む血液である引入側血液中に存在する白血球(この図では、好中球及びリンパ球で表される)を示した。中間色の棒グラフは、アフェレーシスカラムを出て、イヌへと戻る血中に存在する白血球の数を表す。最も明るい色の棒グラフは、カラム内部に捕捉された残留血液中に存在する白血球の数を表す。ほぼ全ての顆粒球が除去された一方で、リンパ球のうち、60%だけが除去され、したがってイヌにおいてリンパ球優性状態をもたらした。
【0078】
図21で示されるように、血圧は、アフェレーシスの開始のおよそ30分後に一過的に降下の傾向を示した。しかしながら、血圧は後に、これらの一過性の降下後に増加した。麻酔中、血液ガスが維持されたのに対して、体温は、6時間の全身麻酔中、増加傾向であった。
【0079】
図22は、WBC数及びフィブリノーゲンレベルは最初、灌流中に減少したが、後に数時間のアフェレーシス内に元に戻ったことを示している。しかしながら、血小板数もまた、アフェレーシス中に降下して、およそ4日間、比較的低い数で維持された。RBC数は、1時間のアフェレーシス処理中及び処理後に極めて一定の状態であった。
【0080】
顆粒球は、単球とともに6時間のフレームワーク内で循環に戻った(図23)一方で、リンパ球はこれらの6時間中は低減したままであった(図23B)。しかしながら、短期間で、リンパ球優性の一過性の状態が、イヌにおいて確立された。具体的には、イヌの血中の顆粒球のパーセント及びリンパ球のパーセントは、体外循環の15分後に変化した。イヌの血中の好中球のパーセントはほんの20%であったのに対して、リンパ球は、血中のWBCの80%を構成した。より遅い時点では、好中球及び単球のパーセントは、6時間後に術前レベルに戻ったが、リンパ球のパーセントは、処理後の6時間〜4日間は依然として低いままであった(図24)。
【0081】
体外アフェレーシスの結果としてのイヌの免疫系の一過性のリンパ球優性状態の他に、アフェレーシスが始まった後の30分〜90分の間に、約1000倍のTNF−αの一過性の増加も見られた(図25)。また、アフェレーシスが始まった後の60分〜200分の間に、約1000倍のIL−6の一過性の増加も見られた(図25)。これに対して、インターフェロンガンマ(IFN−γ)及びインターロイキン2(IL−2)は、処理後の2週間、抗体レベルと同様に依然として変化しなかった。
【0082】
生体非適合性材料を使用したアフェレーシスに付随する免疫学的ショックとして、低血圧に起因する眩暈、呼吸障害、吐き気及び嘔吐、過剰な発汗、発熱、寒気及び震えが挙げられる。これらの生理学的影響を安全に管理するために、本発明の方法は、全身麻酔下で実施される。そうすることで、患者は、悪性腫瘍及び感染性疾患の治療に関して再現性がありかつ有効な免疫活性化アフェレーシス療法を受けることができる。安全でなくかつ危険なショック誘導性の免疫活性化アフェレーシスはここでは、本発明のために、安全で有効でかつ無痛の治療的分子手術処置となる。
【0083】
一実施形態では、本発明の有効でかつ安全な免疫活性化療法は、以下の8つの特徴、すなわち、(1)気管内挿管を伴う全身麻酔、(2)血圧及び動脈血酸素含有量の慎重なモニタリング、(3)酸素の十分な供給、(4)低血圧及び低酸素症が予測レベルを上回って起こった際の体外循環中の慎重な血流制御及び自動血流低減、(5)およそ60分以内の持続した体外循環、(6)少なくとも6時間の気管内麻酔の維持であり、その間に、全身麻酔下にありながら、患者は生理学的サポートを受けること、(7)免疫活性化の4日後に、白血球数の一過性の増加が起こること、及び(8)アフェレーシス処理の完了後の2週間の細胞性及び体液性の免疫学的応答のモニタリングの追跡、で説明することができる。
【0084】
生体非適合性生体材料を用いたアフェレーシス処理を1時間患者に付すことにより、患者の免疫学的活性化状態を生み出すことが可能になった。次に、患者の誘導された免疫活性化状態は、患者の自然で健常な細胞を全く傷つけることなく、腫瘍細胞又は感染細胞のアポトーシスを導く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシス系を準備することと、
(b)前記患者の血液が、該患者の身体に再び入る前に前記血液灌流フィルタを通過するように、該患者の血液循環を前記アフェレーシス系と接続することと、
(c)前記患者に全身麻酔をかけること、及び該患者に生理学的サポートを提供することと、
(d)前記患者の血液を前記アフェレーシス系に通して約1時間、循環させること、及び
(e)前記患者の血液を前記アフェレーシス系に通して循環させた後、少なくとも5時間、該患者を、全身麻酔をかけた状態に保つことと
を含み、
前記患者の血液を前記血液灌流フィルタに通して循環させることで該患者の免疫系を活性化し、それによって前記疾患を治療する、方法。
【請求項2】
前記疾患が悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が感染性疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記感染性疾患が後天性免疫不全症候群(AIDS)又は肝炎である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アフェレーシス系が、空気チャンバ及び/又は加温装置を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生体非適合性材料が、綿又は絹である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記綿が、エジプト綿、オーストラリア綿及びパキスタン綿から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記絹が、日本絹及び広東絹から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記生非適合性材料が生体化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生体非適合性材料がホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドを用いて生体化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者がヒト患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が非ヒト動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記全身麻酔がケタミンによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生理学的サポートが、血圧の維持及び血液ガスレベルの維持の少なくとも1つから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の血液を前記アフェレーシス系に通して循環させる前に、抗凝固薬を該患者へ投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記抗凝固薬がヘパリンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者の血液が、約100ml/分〜200ml/分の速度で前記アフェレーシス系に通して循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
患者における疾患を治療するための、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシス系であって、患者の血液が該患者の身体に再び入る前に該血液灌流フィルタを通過することができるように、該患者の血液循環に接続される、アフェレーシス系、及び
(b)前記アフェレーシス系の使用中、及び該使用後の少なくとも5時間、前記患者に麻酔をするための全身麻酔薬
の使用であって、前記アフェレーシス系の使用によって前記患者の免疫系が活性化されて、それにより前記疾患を治療する、使用。
【請求項1】
患者における疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシス系を準備することと、
(b)前記患者の血液が、該患者の身体に再び入る前に前記血液灌流フィルタを通過するように、該患者の血液循環を前記アフェレーシス系と接続することと、
(c)前記患者に全身麻酔をかけること、及び該患者に生理学的サポートを提供することと、
(d)前記患者の血液を前記アフェレーシス系に通して約1時間、循環させること、及び
(e)前記患者の血液を前記アフェレーシス系に通して循環させた後、少なくとも5時間、該患者を、全身麻酔をかけた状態に保つことと
を含み、
前記患者の血液を前記血液灌流フィルタに通して循環させることで該患者の免疫系を活性化し、それによって前記疾患を治療する、方法。
【請求項2】
前記疾患が悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が感染性疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記感染性疾患が後天性免疫不全症候群(AIDS)又は肝炎である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アフェレーシス系が、空気チャンバ及び/又は加温装置を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生体非適合性材料が、綿又は絹である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記綿が、エジプト綿、オーストラリア綿及びパキスタン綿から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記絹が、日本絹及び広東絹から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記生非適合性材料が生体化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記生体非適合性材料がホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドを用いて生体化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者がヒト患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が非ヒト動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記全身麻酔がケタミンによるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生理学的サポートが、血圧の維持及び血液ガスレベルの維持の少なくとも1つから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の血液を前記アフェレーシス系に通して循環させる前に、抗凝固薬を該患者へ投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記抗凝固薬がヘパリンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者の血液が、約100ml/分〜200ml/分の速度で前記アフェレーシス系に通して循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
患者における疾患を治療するための、
(a)少なくとも1つの生体非適合性材料を含む血液灌流フィルタを含むアフェレーシス系であって、患者の血液が該患者の身体に再び入る前に該血液灌流フィルタを通過することができるように、該患者の血液循環に接続される、アフェレーシス系、及び
(b)前記アフェレーシス系の使用中、及び該使用後の少なくとも5時間、前記患者に麻酔をするための全身麻酔薬
の使用であって、前記アフェレーシス系の使用によって前記患者の免疫系が活性化されて、それにより前記疾患を治療する、使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−507379(P2013−507379A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533319(P2012−533319)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/051832
【国際公開番号】WO2011/044369
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/051832
【国際公開番号】WO2011/044369
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
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