説明

悪性腫瘍治療用Pin−point照射型X線発生装置

【課題】現行のX線治療は、悪性腫瘍治療に有効であるが、同時に健常部まで損傷し、多くの副作用が伴う。体内透過性が10〜20mm程度のエネルギーのX線を悪性腫瘍の直近傍で発生させ、Pin-pointで治療する手段が要求されている。
【解決手段】レーザーを細い可撓型パイプ内部や光ファイバー内を通して腫瘍患部の直近傍で集光して固体の表面に高温プラズマを生成してX線を発生させることはよく知られているが、本発明では 1.真空中ではなく大気中で生成可能、2.レーザー光の進行方向に強いX線発生が可能、3.光の進行方向に強い指向性をもっていることを特色とし、小型軽量で悪性腫瘍により有効にPin-point治療を可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性腫瘍治療に用いるX線発生装置に関するもので、患部をPin-pointに治療することを可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
X線は、悪性腫瘍治療に有用な手段であるが。欠点は患部だけでなく健常部をも損傷するところにある。
【0003】
それを解決するために、X線を細くしぼり、これを四方八方から照射してそれが互いに交差するところに悪性腫瘍を置いて治療する方法が開発研究されているが、装置が大がかりで使用するX線のエネルギーが高く使用する部屋自身も大変大きなX線シールド室を必要とする。この技術に関連した情報としては特許文献1がある。
【0004】
これを解決するために、フェムト秒レーザーのようにパルスの短いレーザーを使用したものが特許文献2で提案されているが、X線発生を真空中で行うので、真空装置を用いる必要があり、気密性の維持のためにシステムが複雑になり、また、集光点で発生する飛散物(デブリ)でレンズなどがすぐに曇ってしまう欠点をもっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3746747号公報
【特許文献2】特許第4279565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、X線のPin-point 治療を小型の装置で、一般の治療室等どこでも使用可能にするものでフェムト秒レーザーのようにパルスの短いレーザーを使用し、真空装置を用いない簡便なシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する悪性腫瘍のPin-point治療器は、フェムト秒レーザーなどパルス幅の短いレーザーを用いたもので、レーザーを金属面などに集光するとX線を発生することが知られていることから、レーザーを内視鏡などの中を通して患部の直近までもっていき、そこでレーザーを物体面に集光してX線を発生させる。
【0008】
請求項1記載の発明は、そのなかで真空装置などを用いずに、大気中でX線発生を可能にするPin-point照射型X線発生装置を提供する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明のなかでX線が悪性腫瘍患部のなかで吸収されてしまい、周辺の健常部位を損傷しないように発生X線のエネルギー幅が 5〜50keVであるPin-point照射型X線発生装置を提供する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1,2記載の発明において、X線の発生方向が光の進行方向と同じ方向に生成され、X線射出の角度分布が半値幅30°以内の強い指向性をもっているPin-point照射型X線発生装置を提供する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1,2、3記載の発明において、レーザー光を集光する固体に金属膜を有するプラスチックテープなどを使用し、集光点がいつも新しくなるように秒速0.3mm〜100mmで自動送りされているPin-point照射型X線発生装置を提供する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1,2,3に記載の発明において、集光点で発生するプラズマと一緒に生成されるデブリ(飛散物体)が集光レンズを汚染しないように、プラズマ発生点付近に乾燥空気等の高速気流を発生させ、デブリがレンズに到達することを阻害する機構を装備したPin-point照射型X線発生装置を提供する。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1,2,3に記載の発明において、集光点で発生するプラズマと一緒に生成されるデブリ(飛散物体)が集光レンズを汚染しないように、プラズマ発生点付近に強い磁場を発生させ、デブリがレンズに到達することを阻害する機構を装備したPin-point照射型X線発生装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、悪性治療の低侵襲治療器として小型で簡便なシステムが提供でき、一般の治療室での使用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1図は本発明に係るPin-point照射型X線発生装置の構成図である。
【図2】第2図は、本発明の核心部であるX線発生部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態の実施例について説明する。
【実施例】
【0017】
第1図に本発明に係るPin-point照射型X線発生装置の構成図 第2図に本発明の核心部であるX線発生部を示す。
【0018】
第1図において、1.短パルスレーザー発生装置は、フェムト秒レーザーあるいはピコ秒レーザー装置の機能を持つ。
【0019】
2.レーザー光伝送機構は、レーザー光を3.X線発生部まで導くもので光ファイバーやヒンジメカニズムをもっている。
【0020】
3.X線発生部は、レーザーをターゲットに収束してX線を発生させる。
【0021】
4.デブリ排除機構は、高速のガスを吹き付けることで、レーザー光をターゲットに収束したときにデブリを生成してレンズなどを劣化させることを防ぐ機能を持つ。
【0022】
5.ターゲット自動送り機構は、常に新しいターゲットの表面にレーザーを照射するため、テープや細いワイヤなどのターゲットを自動で送り出す機能を持つ。
【0023】
6.管制装置は、悪性腫瘍治療に必要なX線発生の最適化を行う。
【0024】
第2図は、本発明の核心部であるX線発生部の詳細を示す。
【0025】
X線発生部は、直径2〜20mmの 30 X線発生部収納管 に収納される。
【0026】
2.レーザー光伝送機構を経由して導入されたレーザー光は、 32 レンズ で 33 X線発生用ターゲット 上に集光される。そこで高温プラズマが生成され、X線が発生する。
【0027】
32 レンズは、 36 X線モニター の信号が最大になるように 34 焦点距離調整機構 で焦点位置を最適化する。
【0028】
ターゲットは ワイヤや薄いテープを使用する。材質は、金属、非金属いづれでもよい。
【0029】
5.ターゲット自動送り機構 から送り出された 33 X線発生用ターゲット は、管壁にそって収納管を経て 5.ターゲット自動送り機構 へ戻る。
【0030】
生成されたX線は、管壁先端の 37 X線出射孔 から出射される。
【0031】
レーザー光が集光して高温プラズマが発生するところからは、ターゲット材料の飛沫(デブリ)が発生してレンズ付着するがそれを排除するために 4.デブリ排除機構 から 38 デブリ排除パイプ を通して集光部に高速乾燥気流を流し、デブリを飛散させレンズを保護する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
悪性腫瘍の近傍で本装置を用い、Pin-pointで悪性腫瘍のみにダメージを与えるような新規ガン治療機器市場を拓く。
【符号の説明】
【0033】
1 短パルスレーザー発生装置
2 レーザー光伝送機構
3 X線発生部
4 デブリ排除機構
5 ターゲット自動送り機構
6 管制装置
30 X線発生部収納管
31 レーザー光
32 レンズ
33 X 線発生用ターゲット
34 焦点距離調整機構
35 生成X線
36 X線モニター
37 X線出射孔
38 デブリ排除パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを細い可撓型パイプ内部や光ファイバー内を通して腫瘍患部の直近傍で集光して固体の表面に高温プラズマを生成してX線を発生させ悪性腫瘍のpinpoint治療に供する装置で、プラズマ発生を真空排気を必要とせず 大気圧中で生成して治療に必要なX線発生を可能にするPin-point照射型X線発生装置
【請求項2】
請求項1記載の発明において、X線が悪性腫瘍患部のなかで吸収されてしまい、周辺の健常部位を損傷しないように発生X線の分布の中心エネルギーが 5〜50keVであるPin-point照射型X線発生装置
【請求項3】
請求項1記載の発明において、X線の発生方向が光の進行方向と同じ方向に生成され、X線射出の角度分布が半値幅30°以内の強い指向性をもっているPin-point照射型X線発生装置
【請求項4】
請求項1,2、3記載の発明において、レーザー光を集光する固体に金属膜を有するプラスチックテープを使用し、集光点がいつも新しくなるように0.3mm/秒〜100mm/秒で自動送りされているPin-point照射型X線発生装置
【請求項5】
請求項1,2,3に記載の発明において、集光点で発生するプラズマと一緒に生成されるデブリ(飛散物体)が集光レンズを汚染しないように、プラズマ発生点付近に乾燥空気等の高速気流を発生させ、デブリがレンズに到達することを阻害する機構を装備したもの
【請求項6】
請求項1,2,3に記載の発明において、集光点で発生するプラズマと一緒に生成されるデブリ(飛散物体)が集光レンズを汚染しないように、プラズマ発生点付近に強い磁場を発生させる機構を装備したもの

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−10957(P2012−10957A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150213(P2010−150213)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】