説明

悪液質の治療のための方法および手段

本発明は、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の使用による、哺乳類における悪液質の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、悪液質の治療およびそれに対応する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
除脂肪組織の分解、すなわち悪液質は、多数の急性および慢性の臨床症状において生じる深刻な問題である。様々な治療の副作用も悪液質をもたらしうる。外傷、手術、火傷、傷害、長期の絶食、敗血症、長期のベッド休養、癌およびAIDSは、除脂肪組織および骨格筋の有意な減少をもたらしうる異化状態の例である。タンパク質異化(悪液質)は、タンパク質分解の促進、およびエネルギー消費の上昇または異化亢進をもたらす。さらに、異化は、負の窒素バランスをもたらす尿窒素排泄の上昇としばしば関連する。
【0003】
悪液質は脂肪組織および筋肉組織の両方の喪失の原因となるが、悪液質を患う患者の生存の決定において、筋萎縮が最も重要な予後因子である。筋肉の異化反応は、筋肉組織の消耗および疲労の増加をもたらし、患者の生活の質に深刻に影響する。筋肉消耗の程度は、治療全体に対する反応不良と関連があることも分かっている。特に、癌悪液質を患う患者において、化学的治療に対する反応が損なわれる(van Eys, Annu Rev Nutr 435-461, 1985)。
【0004】
骨格筋における悪液質と関連する異化反応は、主にタンパク質分解の刺激、特に筋原繊維タンパク質の分解に起因する。このタンパク質分解の増加は、タンパク質合成の減少を伴うが、これは筋肉組織における負のタンパク質バランスに寄与する。
【0005】
細胞内タンパク質分解は、a)リソソーム性、b)Ca依存性、およびc)ユビキチンプロテアソーム依存性メカニズムを含むいくつかのタンパク質分解経路によって制御される。ラットおよびマウスモデルにおける最近の研究では、筋肉タンパク質分解は主にユビキチンプロテアソーム経路によって制御され、この経路におけるいくつかの遺伝子の上方制御と関連することが示唆されている。インビボおよびインビトロモデルにて詳細に分析された類似のメカニズムが、ヒト悪液質症候群に関係することも確認されている。筋肉消耗において確認されたユビキチンプロテアソーム代謝経路は、様々な病的状態、特に癌、敗血症、および火傷などにおいて活性化されている。これらの状態は、ユビキチン介在性タンパク質分解の促進を示す。ヒト癌悪液質患者の筋肉組織におけるユビキチンプロテアソームタンパク質分解経路の遺伝子の発現の増加についての最初の報告は、1999年に発表された(Williams A., et al. Surgery, 744-750, 1999)。ユビキチンおよび20SプロテアソームサブユニットのmRNAレベルは、癌を患う患者の筋肉におけるものが、対照患者の筋肉におけるものよりも2〜4倍高かった。
【0006】
異化疾患における除脂肪体重の減少、すなわち悪液質は、罹患患者における臨床経過および臨床転帰に対して非常に有意な影響を及ぼしうる。体脂肪に対する除脂肪体重の比率の変化は、薬物分布および薬物動態を顕著に変化させ得、同時に、薬効を減少させ得、毒性および副作用を増加させうる。除脂肪体重の減少は、免疫機能も損ない得、敗血症のリスクも増加させうる。有意なパーセンテージの癌およびAIDS患者が、悪液質として知られる重度の異化状態に苦しんでいる。組織分解をもたらすメカニズムはいまだに不明であるが、異化の効果はアミノ酸の細胞間および細胞内供給を増加させることであると推定されている。同化/異化ホルモンの比率の変化、同化ホルモンおよびインターロイキンなどの内在性サイトカインに対する組織の感受性の減少など、多数の要因が異化状態に関係しているようである。
【0007】
通常、異化状態を伴う生理学的変化および代謝変化は、例えばタンパク質分解の増加、炭水化物代謝の変化、脂肪酸化の増加、全身タンパク質代謝回転の増加、食欲不振、免疫反応の障害、創傷治癒の減少、および薬物動態の変化である。異化疾患における除脂肪体重の減少の臨床治療においては、いまだに、主に特定の経腸および非経口栄養剤の提供に着目している。しかしながら、多数の研究によると、栄養治療のみでは、異化疾患の間に正味のタンパク質分解を減少させ、またはタンパク質合成を刺激する効果が相対的にないことが分かっている。それゆえ、タンパク質減少の回復、およびタンパク質代謝のバランスの回復に向けられたさらなる薬剤が必要である。
【0008】
悪液質または消耗症候群は、しばしば末期癌と関連するが、AIDS、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、敗血症、尿毒症、アシドーシス、糖尿病および他の状態とも関連する(Hasselgren PO J Biochem & cell Biol 2156-2168, 2005)。悪液質は初期状態の影響を有意に増幅し、これらの疾患と関連する罹患率に寄与する。悪液質は癌患者によく見られるが、全ての型の腫瘍が悪液質を生じるわけではない。腫瘍性疾患とは無関係に、悪液質患者における除脂肪体重の減少は、特に呼吸器の筋肉機能の障害のために、生命を脅かしうるものである。
【0009】
悪液質は、タンパク質分解とタンパク質合成の不均衡に起因する。悪液質患者において、タンパク質合成は抑制され、タンパク質分解が増加するが、これは筋肉におけるタンパク質代謝の不均衡をもたらす。最近の研究によると、筋萎縮の原因となるメカニズムは、筋肉タンパク質のタンパク質分解の促進およびタンパク質合成の阻害をもたらすATP−ユビキチンプロテアソームタンパク質分解経路の活性化を含むことが示唆されている。現在、この基礎的な代謝不均衡に効果的に対処しうる治療法はない。
【0010】
悪液質の原因はよく分かっていない。しかしながら、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターフェロンγ(IFN−γ)、およびインターロイキン6(IL−6)などの炎症性サイトカインが悪液質に関係すると広く信じられている。さらに、タンパク質分解誘導因子(PIF)が悪液質と関連する(T M Watchorn et al., Proteolysis-inducing factor regulates gene expression via the transcription factors NF-κB and STAT3. FASEB J 2001; 15:562-564)。食欲刺激ホルモンであるグレリンが、悪液質の癌患者において高レベルで発見されている(G M Garcia et al., Active Ghrelin Levels and Active to Total Ghrelin Ratio in Cancer-Induced Cachexia. J Clin Endocrinol Metab 90:5 (2005) 2920-2926)。
【0011】
悪液質の様々な治療方法が当該技術分野で知られており、例えば、TNFの腫瘍細胞傷害因子IIの抑制作用に基づく治療方法(US7,138,372B2);抗腫瘍および抗悪液質免疫反応の誘導に基づく治療方法(US2004/0228925A1);特定の不飽和脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸の投与に基づく治療方法(EP0464084B1)、β−ヒドロキシ−β−メチルブチラートの投与に基づく治療方法(H J Smith et al., Attenuation of Proteasome-Incuced Proteolysis in Skeletal Muscle by β-hydroxy-β-methylbutyrate in Cancer-Induced Muscle Loss. Cancer Res 65 (2005) 722-283);合成プロゲスチンであるメゲストロールの投与に基づく治療方法(US7,101,576B2)、レニン−アンジオテンシン系の阻害剤の投与に基づく治療方法(US7,071,183B2;Sanders, P M et al., Angiotensin II directly induces muscle protein catabolism through the ubiquitin-proteasome proteolytic pathway and may play a role in cancer cachexia. Brit J Cancer 93 (2005) 425-434);グレリンおよびグレリン様化合物の投与に基づく治療方法(US2007/0037751A1);メラノコルチン−4受容体アゴニストの投与に基づく治療方法(US2006/0014676A1);硫酸ヒドラジンの投与に基づく治療方法(US5,264,208A);などである。しかしながら、開示された治療方法はいずれも十分に満足できるものではなく、さらにこれらのいくつかは、重度の副作用を伴いうる。それゆえ、改善された、または代替の悪液質、特に癌悪液質の治療方法がいまだ必要とされている。
【0012】
悪液質の治療薬が臨床上、大いに必要とされているにもかかわらず、効果的に悪液質を治療する有効な医薬品はない。癌そのものに対する多くの治療計画が存在するにもかかわらず、悪液質が癌患者の治療全体の成功を妨げる主要因子であり続けるため、この治療薬の欠如は深刻である。悪液質は、他の抗癌治療薬の有効性を有意に妨げる。癌悪液質は、単なる腫瘍の局所効果ではない。通常、タンパク質、脂肪、および炭水化物代謝の変化が生じる。例えば、炭水化物代謝の異常は、総グルコース代謝回転速度の増加、肝臓でのグルコース新生の増加、耐糖能異常およびグルコースレベルの上昇を含む。脂肪分解の増加、遊離脂肪酸およびグリセロール代謝回転の増加、高脂血症、ならびにリポタンパク質リパーゼ活性の減少がしばしば指摘される。癌悪液質と関連する体重減少は、体脂肪蓄積の減少のみならず、広範な骨格筋消耗を伴う体内の総タンパク質の質量の減少にも起因する。タンパク質代謝回転の増加およびアミノ酸酸化の不完全な制御も重要な要素である。
【0013】
原発臓器を越えて癌が転移した患者の大部分については、手術、放射線治療または化学的治療のいずれも回復を提供することができない。悪液質と関連する罹患率および死亡率の認識の下、過去15年間、進行性癌の増殖と関連する栄養不良を回復するために、栄養補給を行う試みがなされてきた。しかしながら、これらの研究は成功しなかった。従来の栄養補給は、進行性腫瘍の増殖と関連する栄養不良をすぐには回復せず、栄養補給は総罹患率および死亡率を減少させることができなかった(Fearon et al., 1991)。
【0014】
伝統的に、抗悪液質治療は、1)腫瘍増殖を阻害もしくは遅延させるために原発腫瘍組織を標的とし、または2)腫瘍による悪液質誘導因子の放出を阻害することによって、もしくは標的二次組織に対するこれらの因子の効果を阻害することによって、二次組織の消耗の原因となる原発組織によってもたらされる代謝効果を阻害しようとしてきた。歴史的には、悪液質の分子経路の調査を可能にし得、見込みのある抗悪液質化合物を検査するためにも用いられうる優れた動物モデルの欠如が、悪液質研究の深刻な限界の要因であった。動物モデルは、筋肉組織などの末梢組織の消耗に対する腫瘍の影響を研究するための、最も有効で信頼できる方法である。悪液質は癌宿主にとって苦痛であり、それゆえ悪液質の研究はインビボモデルにおいてのみ可能であり、完全な、腫瘍を有する生きた動物の研究を必要とする。
【0015】
1980年代の後半に、実験動物において悪液質を常に誘導する動物モデルが開発された。「MAC16」動物モデルは、NMRIマウスおよび腺癌細胞株を用いるが、迅速な腫瘍増殖および悪液質を常に誘導する。悪液質は、タンパク質合成の抑制(60%)およびタンパク質分解の増加(240%)に起因することが示されている(Tisdale et al., 1993 Br J Cancer)。タンパク質合成の抑制およびタンパク質分解の増加に起因する骨格筋における代謝不均衡により、アミノ酸および無機成分の血流への放出量が増加する。原発腫瘍は、これらの栄養を成長および細胞増殖に用いることができる。逆説的に、末梢筋肉は、原発腫瘍の栄養貯蔵庫としての機能を果たしうる。これらの栄養は、筋肉組織の分解の増加を通じて原発腫瘍に利用される。
【0016】
今日、タンパク質合成およびタンパク質分解を、インビトロおよびインビボ状態の両方で正確に測定することが可能である。インビトロおよびインビボの両方で、抗悪液質薬の有効な検査が過去数年間にわたって広く実施されている。これらの研究技術の開発により、潜在的な抗悪液質薬のスクリーニングが可能となっている。
【0017】
MAC16モデルは、腫瘍組織によって産生され、宿主細胞の消耗代謝に影響する腫瘍特異的物質を探索するのに用いられている。該産物の1つは、タンパク質分解誘導因子(PIF)と名付けられ、1996年に発見された(Tisdale et al., Nature. 1996 Feb.)。PIFはその代謝効果にちなんで名付けられ、その分子経路の大部分が解明されている。
【0018】
悪液質の癌患者は、彼らの尿中に測定可能な量のPIFを有するが、健常対照群は有さない。PIFは、体重が安定な癌患者または良性腫瘍を患う体重が減少している対照群の尿中では発見されない。原発腫瘍組織はPIFを血流に分泌し、PIFが骨格筋消耗の原因となる。PIFは、骨格筋におけるタンパク質合成の抑制およびタンパク質分解の増加の両方の原因となることが分かっている(Tisdale et al., Skeletal muscle atrophy, a link between depression of protein synthesis and increase in degradation. Journal of Biological Chemistry 2007 March 9;(10):7087-7097)。悪液質誘導腫瘍のみが、グリコシル化PIFを十分に産生することができる(Tisdale M., Tumour-host interactions. J of Cell Biochemistry, 2004 Nov 15;93(5):871-7)。PIFは、MAC16腫瘍を有するマウスのヒラメ筋におけるタンパク質分解の増強を促進したが、これはPIFが悪液質マウスにおける骨格筋の減少の原因であることを裏付けるものである。腫瘍を有さないマウスにPIFを与えると、筋肉組織からのタンパク質の有意な減少を誘導したが、これはPIFが悪液質をもたらす変化に影響する原因となりうることを示唆するものである(Bhogal a et al., Changes in nucleic acid and protein levels in atrophying skeletal muscle in cancer cachexia. Anticancer Res. 2006 Nov-Dec; 26:4149-54)。さらに、インビトロモデルは、PIFがプロテアソームを活性化するのに加えて、C(2)C(12)筋管におけるアポトーシスを誘導することを示している。これらのプロセスは共に、癌悪液質における骨格筋の減少に寄与する(Smith H., Induction of apoptosis by a cachexic-factor in murine myotubes and inhibition by eicosapentaenoic acid. Apoptosis, 2003 Mar;8(2):161-9)。これらの全ての結果は、PIFが癌悪液質をもたらす骨格筋恒常性における変化を媒介する主要因子であることを示唆する。筋肉組織におけるPIFのタンパク質分解効果は、インビトロで広範に研究されており、タンパク質分解の増加およびタンパク質合成の減少に関連する経路が詳細に研究されている。PIFは腫瘍組織と骨格筋の間の重要な関連を提供し、腫瘍組織がいかにして末梢骨格筋の消耗の原因となるのかを説明する助けとなる。
【0019】
癌悪液質の原因物質として確認された別の重要な物質は、アンジオテンシンII(AngII)である。AngIIは伝統的に心臓および血管壁などの心血管臓器と関連するため、これは驚くべきことである。AngIIは、生体内の血圧、電解質および液体バランスを制御することが知られている。AngIIはレニン・アンジオテンシン系の主要な生理活性成分であり、前駆体分子アンジオテンシノーゲンおよびAngIから形成される。アンジオテンシン変換酵素(ACE)は、AngIをAngIIに変換する。最近の研究は、キマーゼ酵素がACEと同一の結果を生じ、AngIをAngIIに変換することができることを示している。哺乳類キマーゼは、最初はマスト細胞において確認され(Sayama et al, Human chymotrypsin-like proteinase chymase sub-cellular localization to mast cell granules and interaction with heparin and their glycoaminoglycans. J Biol Chem 263, 1987, 6808)、キマーゼはマスト細胞顆粒における主要なタンパク質であることが知られている(Katuma et a, Eur j Biochem, 52, 1975, 37)。マスト細胞は、組織内、特に脊椎動物の結合組織内に広範に分布する。
【0020】
AngIIは、PIFと同様に、骨格筋の消耗を誘導する。アンジオテンシンIIは悪液質と直接関連しており、マウスの筋管においてタンパク質合成を有意に阻害することが示されている(Tisdale M et al., Angiotensin II directly inhibits protein synthesis in murine myotubes. Cancer Letters, 2006 Jan 18;231(2):290-294)。アンジオテンシンIIをラットに注入すると、悪液質が生じ、AngIIがユビキチンプロテアソーム経路の誘導を通じて筋管におけるタンパク質分解を刺激することが示されているが、これはAngIIが筋萎縮および悪液質の原因となりうることを示唆するものである(Brink M., Angiotensin II induces skeletal muscle wasting through enhanced protein degradation and down-regulates autocrine insulin-like growth factor I. Endocrinology. 2001 Apr;142:1489-96、およびSanders PM., et al., Angiotensin II directly induces muscle protein catabolism through the ubiquitin-proteasome proteolytic pathway and may play a role in cancer cachexia, Br J Cancer. 2005 Aug 22;93:425-34)。AngIIは、タンパク質合成の阻害を通じて筋萎縮を誘導する能力を有することも示されている(Russell ST. et al., Angiotensin II directly inhibits protein synthesis in murine myotubes, Cancer Lett. 2006 Jan 18;231:290-4)。
【0021】
AngIIおよびPIFは共に、悪液質を患うヒト患者において発見されている。両分子は、実験動物においてタンパク質分解を促進し、タンパク質合成を阻害することによって、悪液質の原因となることも示されている。これらの実験結果は、AngIIおよびPIFが悪液質の発生の原因となる関係を有していることを示唆している。PIFおよびアンジオテンシンIIは、ヒトおよび実験動物において同一の分子構造を有している。悪液質マウスにおいて発見されたPIFは、24kDの硫酸化グリコタンパク質であり、悪液質癌患者の尿中に発見されたものと全く同一の分子である。同様に、アンジオテンシンIIは、オクタペプチドであるが、ヒトおよび実験動物において同一の組成を有する。
【0022】
悪液質においてPIFおよびAngIIが果たす中心的役割は、これら2つの分子の阻害が、悪液質の治療および予防において有意にポジティブな影響を有しうることを示唆する。
【0023】
骨格筋の萎縮は、タンパク質合成の抑制、タンパク質分解の増加、またはこれらの2つの現象の組み合わせのいずれかの結果でありうる(Smith, British Journal of Cancer, 680, 1993)。PIFおよびAngIIは、タンパク質合成の減少およびタンパク質分解の誘導とも関連する。これらの因子は、真核生物翻訳開始因子2(eIF2α)のリン酸化の増加と共に、マウスの筋管におけるタンパク質合成の抑制をもたらすことが示されている。PKR阻害剤はタンパク質合成におけるPIFおよびAngIIの阻害効果を弱めるため、両薬剤によるeIF2αのリン酸化は、PKRの活性化を通じて生じるようである(Eley, Journal of Biological Chemistry, 7087-7097, 2007)。
【0024】
悪液質動物において観察されるタンパク質分解の増加の背後には、いくつかの因子がある。悪液質は、ユビキチンプロテアソーム経路における重要な成分の発現の増加をもたらす。これらの成分は、筋原繊維タンパク質ミオシンの選択的減少の原因であることが示唆されている20Sプロテアソームサブユニットを含む。
【0025】
タンパク質分解は、プロテアソーム「キモトリプシン様」酵素活性の増加、さらには20Sプロテアソームサブユニットおよびユビキチン結合酵素のmRNAおよびタンパク質の両方の発現の増加と関連する(E2(14k))(Smith, Biochem Biophys Res Commun. 83-8, 2005)。悪液質経路において役割を果たすことが示されている他の因子は、mTOR、開始因子4E−結合タンパク質(4E−BP1)、真核生物翻訳開始因子2(eIF4E)およびeIF4Gである(Eley, Am J Physiol Endocrinol Metab. E923-31, 2007)。
【0026】
C(2)C(12)が分化した有糸分裂後の多核骨格筋管を、濃度1〜10nMの腫瘍由来のタンパク質分解誘導因子(PIF)で処理すると、アポトーシス開始剤のカスパーゼ−8および−9、ならびにアポトーシスエフェクターのカスパーゼ−2、−3および−6の活性を刺激することが示された。カスパーゼ−3阻害剤は、プロテアソームの主要なタンパク質分解活性である「キモトリプシン様」酵素活性のPIF誘導性の増加を完全に弱めるため、一部のカスパーゼ活性の増加は、プロテアソームタンパク質分解活性の増加に関連すると推定されている(Smith, Apoptosis. 161-9 2003)。
【0027】
栄養不足状態と感染傾向の間の相互関係についての未解決の問題が残ったままである。敗血症の代謝的特徴の1つは、タンパク質分解の増加によって特徴付けられる骨格筋における異化反応である。この異化反応は、筋肉組織からのアミノ酸の放出をもたらし、肝臓に急性期タンパク質合成および糖新生の基質を提供する。重度で遅延性の敗血症において、筋肉タンパク質分解が続くと、筋肉消耗および疲労をもたらすが、これは回復の低下をもたらしうる。それゆえ、敗血症を患う患者における異化反応を阻害する将来の治療方法の開発のために、敗血症の間の筋肉タンパク質分解を制御するメカニズムを理解することは大いなる臨床的意義がある。
【0028】
敗血症は、損傷後に生じる病原菌の炎症発作による深刻な高頻度の罹患率および死亡率を定義するのに用いられる最も古い医学用語の1つであり、病院内の救急医療および感染単位のみならず、より初期段階の外来の状況にも影響する。重度の敗血症の管理のための最新の治療ガイドラインは、2004年にフィリップ・デリンジャー(Philip Dillinger)によって発表された(Dellinger et al., Crit Care Med 858-873, 2004)。敗血症は、依然として多くの外科集中治療室における死亡の主要な原因である。敗血症は重度の感染および微生物病原体感染を示すのに用いられるが、しばしば致死的な末期合併症が代謝上および分子上の謎であり、有効な治療上の解決方法がない。今日、敗血症についての全ての治療は抗生物質治療、特に病原菌に対する静脈内抗生物質治療、液体治療、心臓および循環器治療(十分な血圧を回復し、心拍出量を増加させるための治療)ステロイド適用、血液製剤投与ならびに機械的人工呼吸に基づく。
【0029】
我々が知る限り、今日、横隔膜などの骨格筋における悪液質症候群に対する有効な治療薬はない。
【0030】
しかしながら、この謎多き疾患の最も重要な代謝的特徴の1つは、タンパク質分解、特に骨格筋の筋原繊維タンパク質分解の増加によって特徴付けられる骨格筋の異化反応である。この異化反応は、筋肉組織からのアミノ酸の放出をもたらし、急性期タンパク質合成用および糖生成用の基質を肝臓に提供する。筋肉タンパク質分解が継続すると、筋肉消耗および疲労をもたらすが、これは回復を損ない得、血栓塞栓性合併症および肺合併症のリスクを増加させる。
【0031】
それゆえ、骨格筋の筋肉タンパク質分解を制御する基本的なメカニズムをさらに理解することは、大いに臨床的意義があり、術後肺炎または無気肺を患う患者における異化反応を阻害しうる将来の治療方法の開発にとって重大な意味を持つ。
【0032】
呼吸筋は生命にとって極めて重要な唯一の骨格筋であり、呼吸筋機能のタンパク質喪失および局所的に特異的な悪液質現象に対して有効な影響を与えることが、本発明の治療方法である。肺炎または無気肺などの術後合併症を患う患者は、術後の体タンパク質の有意な減少に苦しんでいるということが最近になって確認された。このタンパク質の大部分は骨格筋から生じたものであるが、これは筋肉組織からのアミノ酸の正味の放出、および筋原繊維タンパク質分解のマーカーである3−メチルヒスチジンの尿中排泄によって証明された。最近の研究によると、敗血症の間の筋肉タンパク質分解はユビキチンプロテアソーム経路の上方制御に起因し、ユビキチン遺伝子の発現の増加と関連することが示唆されている。
【0033】
敗血症の患者および実験動物の研究によると、筋原繊維タンパク質のアクチンおよびミオシンが敗血症の効果に特に感受性があることが示唆されている。これらの筋肉タンパク質の制御および敗血症の間のその分解、ならびに関連するメカニズムを理解することは、臨床的観点から非常に重要であり、筋肉組織の減少を予防する新たな治療方法の開発に不可欠である(Hasselgren PO, World J Surg, 203-208, 1998)。
【0034】
筋肉タンパク質分解を誘導した敗血症におけるユビキチンプロテアソーム経路の中心的役割を知ることにより、筋肉分解のメカニズムをより具体的に同定する動物モデルをデザインすることが可能となる。
【0035】
火傷も負の窒素バランスおよび全体のタンパク質の喪失と関連するが、これは主に骨格筋の異化反応を反映する。ファンら(Fang et al)は、「以前の研究は、火傷によって誘導された筋悪液質はタンパク質合成の阻害およびタンパク質分解の増加の両方を反映することを示唆しているが、タンパク質分解、特に筋原繊維タンパク質分解の刺激が、この状態の筋肉異化の最も重要な要素である」と報告している(Fang CH, Clin Sci 181-187, 2000)。
【0036】
これらの結果および他の結果は、悪液質の主要な経路がユビキチンプロテアソーム経路であることを示唆している。アーロン・チカノーバー(Aaron Ciechanover)は次のように述べている:「ユビキチン経路ならびにその多数の基質および機能の発見は、細胞内タンパク質分解についての我々の概念に革命を起こした」(Ciechanover A, Embo J 7151-7160, 1998)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
発明の目的
本発明の目的は、悪液質を予防、緩和および/または治療する代替方法、特に、当該技術分野で知られている治療方法よりも、少なくともいくつかの点で優れている方法を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、それに対応する手段を提供することである。
【0039】
本発明の別の目的は、悪液質などの異化状態の予防用または治療用の栄養組成物を提供することである。
【0040】
本発明のさらなる目的は、下記の発明の概略、その好ましい実施態様の記載、および添付の特許請求の範囲の研究から明らかになるであろう。
【0041】
発明の概略
本発明は、哺乳類において、悪液質を予防、緩和および/または治療するための薬剤の製造用の、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の使用に関する。好ましくは、負に帯電した領域は、3個以上の隣接したリン含有ラジカルを含む。
【0042】
別の実施態様では、本発明は、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量の投与を含む、哺乳類における悪液質の治療方法に関する。
【0043】
本発明のさらに好ましい実施態様は、下記の記載および添付の特許請求の範囲に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0044】
発明の記載
本発明について記載する前に、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるため、本明細書で用いられている用語は特定の実施態様を記載する目的のためにのみ用いられており、限定する意図はないことが理解されるべきである。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲にて用いられている単数形を示す「a」、「an」、および「the」は、文脈ではっきりと示した場合を除いて、複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0046】
また、用語「約(about)」は、示した値からの+/−2%のずれ、好ましくは+/−5%のずれ、最も好ましくは適用可能な場合、数値の+/−10%のずれを示すのに用いられる。
【0047】
特に、本発明は、不随意の体重減少をもたらす重度の異化状態として定義される異化消耗または悪液質の治療に関する。異化消耗、または悪液質は、1個または数個の下記の状態であってこれらに限定されない状態によって特徴付けられる症候群に関連している:不随意かつ進行性の脂肪および骨格筋の減少、栄養投与の増加に対する体重減少の不応状態、安静時エネルギー消費量(REE)の上昇、タンパク質合成の減少、タンパク質分解の増加、炭水化物代謝の変化、タンパク質分解のATP−ユビキチン依存性プロテアソーム経路を介した筋肉の過剰異化、ならびに脂肪分解を介した脂肪組織の過剰異化。疾患の直接的な結果として、または治療(すなわち放射線治療および/または化学的治療)の結果として、悪液質は全癌患者のおよそ50%に生じる。症候群は、例えば、AIDSなどの免疫不全疾患、心疾患、感染症、細菌性および寄生虫性疾患、関節リウマチ、慢性腸疾患、慢性肝疾患、慢性腎疾患、慢性肺疾患(例えば慢性閉塞性肺疾患)および慢性心疾患(例えば慢性心不全)、ショック、火傷、敗血症、エンドトキシン血症、臓器炎症、手術、糖尿病、コラーゲン疾患、ならびに外傷などでこれらに限定されない疾患を患う患者にも見られる。悪液質は老化における状態としても生じ得、基礎疾患がない場合にも生じうる。悪液質症候群は患者の機能的能力および生活の質を低下させ、可能な基礎状態を悪化させ、薬物耐性を低下させる。悪液質の程度は患者の生存期間と逆相関し、常に予後不良を暗示する。
【0048】
本発明との関連で、用語「悪液質」、「悪液質の状態」および「悪液質疾患」は互換的に用いられている。
【0049】
本発明との関連で、用語「高密度」は、炭素骨格と共有結合で結合した少なくとも2つのラジカルの中で少なくとも2つの負電荷が分布している領域に関する。
【0050】
本発明との関連で、用語「隣接して配向した」は、互いに隣接した炭素骨格の炭素原子に結合したラジカルに関する。
【0051】
本発明との関連で、用語「ラジカル」は、共有結合で炭素骨格と結合した化学基に関する。
【0052】
驚くべきことに、本発明によると、ヒトを含む哺乳類において、悪液質を予防、緩和および/または治療するための薬剤の製造用に、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量を用いることが可能であった。好ましくは、該領域は少なくとも二重に負に帯電しており、2個以上の電荷が少なくとも2個のラジカルの間に分布している。本発明の好ましい実施態様では、負に帯電した領域は、カドミウム、カルシウム、銅、特に亜鉛などの二価カチオンと錯体形成が可能である。
【0053】
本発明は、ヒトを含む哺乳類において、悪液質を予防、緩和および/または治療するための、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量の使用にも関する。
【0054】
本発明では、悪液質の治療方法であって、該治療を必要とする患者に、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量を投与することを含む方法がさらに開示される。
【0055】
本発明は、ヒトを含む哺乳類において、悪液質と関連する体重減少を予防、緩和および/または治療するための、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量の使用にも関する。悪液質と関連する体重減少の治療方法であって、該治療を必要とする患者に、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量を投与することを含む方法がさらに開示される。特に、悪液質は癌を患う患者のみならず、AIDS、心疾患、感染症、細菌性および寄生虫性疾患、関節リウマチ、慢性腸疾患、慢性肝疾患、慢性腎疾患、慢性肺疾患および慢性心疾患、ショック、火傷、敗血症、エンドトキシン血症、臓器炎症、手術、糖尿病、コラーゲン疾患、ならびに外傷などでこれらに限定されない状態を患う患者にも見られる。
【0056】
本発明との関連で、PIFおよびAngII誘導性キモトリプシン様酵素活性を減少させるために、ならびに該酵素活性と関連する状態を予防、緩和および/または治療するために、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物が用いられうることも驚くべき発見であった。
【0057】
本発明では、タンパク質分解を阻害し、タンパク質合成を刺激する方法であって、該治療を必要とする患者に、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の薬理学的有効量を投与することを含む方法がさらに開示される。
【0058】
本発明は、本発明の実施態様に用いられうる化合物の開示によって、以下でさらに詳細に記載されるであろう。
【0059】
本発明の好ましい実施態様では、本発明で使用/投与される化合物の負に帯電した領域は、3個以上の隣接したリン含有ラジカルを含む。
【0060】
本発明の好ましい実施態様では、リン含有ラジカルは、一般式I
【化1】

または一般式II
【化2】

[式中、
〜VはYm6o3Uであり、
o1〜To3は(CH、CH=CH、またはCHCH=CHCHであり、
o1〜o3は0〜1であり、
nは0〜4であり、
UはR10m7、CY1112、SY131415、PY161718、Y19PY202122、CHNO、NHSOまたはNHCY2324であり、
m1〜m7は0〜1であり、
〜Y24はNHR10、NOR11、OまたはSであり、
〜R11
i) 水素;
ii) 1〜22個の炭素原子からなる直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基;
iii)3〜22個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子からなる飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基;
iv) 3〜22個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子からなる飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式置換基を含む、1〜22個の炭素原子からなる直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基;
v) 1〜22個の炭素原子からなる直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル置換基を含む、3〜22個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子からなる芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基である]
の1つである。
【0061】
〜R11、ii)〜v)の群における1個以上の残基および/または置換基の1個または数個は、1〜6個のヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、フルオロ、クロロ、ブロモ、アジド、シアノ、オキソ、オキサ、アミノ、イミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アリールアゾ、ニトロ、アルキルチオ、およびアルキルスルホニルで置換されていることが好ましい。
【0062】
〜R11、ii)、iv)、v)の群における1個以上の直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基の1個または数個は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドエイコシル(doeicosyl)、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソドエコシル(isodoecosyl)、2−ブチル、2−ペンチル、2−ヘキシル、2−ヘプチル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドエイコシル(2-doeicosyl)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、2−メチルヘプチル、2−メチルオクチル、2−メチルノニル、2−メチルデシル、2−メチルエイコシル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルオクチル、2−エチルノニル、2−エチルデシル、2−エチルエイコシル、tert−ブチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドエイコセニル(doeicosenyl)、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ドエイコジエニル(doeicodienyl)、エチニル、プロピニル、およびドエイコシニル(doeicosynyl)であることが好ましい。
【0063】
〜R11、iii)〜v)の群における飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基または置換基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロテトラデシル、シクロペンタデシル、シクロヘキサデシル、シクロヘプタデシル、シクロオクタデシル、シクロノナデシル、シクロエイコシル、シクロヘンエイコシル(cycloheneicosyl)、シクロドエイコシル(cyclodoeicosyl)、アダマンチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、メルカプトフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、アジドフェニル、シアノフェニル、カルボキシフェニル、アルコキシフェニル、アシルオキシフェニル、アシルフェニル、オキシラニル、チイラニル、アジリジニル、オキセタニル、チエタニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、ジオキサニル、ジチアニル、トリオキサニル、フリル、ピロリル、チエニル、ピリジル、キノリル、ベンゾフリル、インドリル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、プリニル、および炭水化物から選択されることが好ましい。
【0064】
本発明の第1の特に好ましい実施態様では、リン含有ラジカルは、一般式III
【化3】

[式中、VおよびVは互いに独立に、OH、(CHOH、COOH、CONH、CONOH、(CHCOOH、(CHCONH、(CHCONOH、(CHSOH、(CHSO、NH、(CHNO、(CHPO、O(CHOH、O(CHCOOH、O(CHCONH、O(CHCONOH、(CHSOH、O(CHSONH、O(CHNO、O(CHPO、およびCFCOOHから選択され、pは1〜4である]の1つである。本発明の本実施態様では、リン含有ラジカルはホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステルまたはリン酸エステル、さらにはその誘導体を含む。
【0065】
本実施態様では、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域は、環式部分と結合している。環式部分は、飽和もしくは不飽和の芳香族もしくは非芳香族のホモ環式もしくはヘテロ環式環を含み、または該環からなる。該部分がヘテロ環式環を含む場合、そのヘテロ原子は酸素、窒素、硫黄およびセレンから選択される。
【0066】
好ましくは、環式部分は4〜24個の原子を含み、より好ましくは5〜18個の原子を含み、最も好ましくは6個の原子を含む。環式部分は、好ましくはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、イノシトール、単糖、二糖、三糖、四糖、アラビニトール、ピペリジン、テトラ−ヒドロチオピラン、5−オキソテトラヒドロチオピラン、5,5−ジオキソテトラヒドロ−チオピラン、テトラヒドロセレノピラン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、5−オキソテトラヒドロチオフェン、5,5−ジオキソテトラヒドロチオフェン、テトラヒドロセレノフェン、ベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレンおよびフェナントレンから選択される。最も好ましくは、環式部分はイノシトール、単糖、二糖、三糖、および四糖からなる群から選択される。
【0067】
環式部分がシクロヘキサンのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである場合、本発明の好ましい化合物は、特に1,2,3−β−シクロヘキサン−1,2,3−トリオール三リン酸である。
【0068】
環式部分がイノシトールである場合、特に好ましいのは、アロ−イノシトール、シス−イノシトール、エピ−イノシトール、D/L−キロ−イノシトール、シロイノシトール、ミオイノシトール、ムコイノシトールおよびネオイノシトールから好ましくは選択される。
【0069】
イノシトールは、好ましくはリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、またはその誘導体である。好ましくは、イノシトール部分あたりのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルの数は3個以上である。
【0070】
本実施態様の好ましいイノシトールは、イノシトール−三リン酸、イノシトール−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、イノシトール−トリス(カルボメチルホスホン酸)、イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、トリ−O−メチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ヘキシル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ブチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ペンチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−イソブチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−プロピル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキシル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロピル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−ヒドロキシプロピル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキシル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−フェニルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−プロピル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−ブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−イソブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、トリ−O−ペンチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−ヘキシル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−プロピル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、トリ−O−イソブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ペンチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ヘキシル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−プロピル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、トリ−O−ブチル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、トリ−O−イソブチル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ペンチル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、およびトリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)からなる群から選択される。
【0071】
イノシトールがミオ−イノシトールである場合、好ましい化合物はD−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボメチルホスホン酸)、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−メチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキシル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−ヒドロキシプロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−5−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、およびD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)からなる群から選択される。
【0072】
イノシトール三リン酸は、本発明の好ましい化合物である。本発明の化合物がイノシトール三リン酸である場合、好ましい化合物はミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸およびミオ−イノシトール−1,2,3−三リン酸、特にナトリウム塩の形態にある化合物である。特に、1,2,6−D−ミオイノシトール三リン酸の五ナトリウム塩(NaH1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸)、Mg1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸またはCa1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸である。
【0073】
環式部分が糖である場合、好ましくはD/L−リボース、D/L−アラビノース、D/L−キシロース、D/L−リキソース、D/L−アロース、D/L−アルトロース、D/L−グルコース、D/L−マンノース、D/L−グロース、D/L−イドース、D/L−ガラクトース、D/L−タロース、D/L−リブロース、D/L−キシルロース、D/L−プシコース、D/L−ソルボース、D/L−タガトース、D/L−ラムノースおよびD/L−フルクトース、ならびにその誘導体を含む糖から選択される。好ましくは、本発明の化合物は糖のリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである。好ましくは、糖部分あたりのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルの数は3個以上である。リンに結合していない糖部分の1個以上のヒドロキシル基は、エーテル化またはエステル化されうる。エステル化およびエーテル化は、酵素分解に対する感受性を減少させることによって、本発明の化合物のインビボでの安定性を増加させ、半減期を延ばすため、特に好ましい。
【0074】
糖部分を有する好ましい化合物は、マンノース−2,3,4−三リン酸、ガラクトース−2,3,4−三リン酸、フルクトース−2,3,4−三リン酸、アルトロース−2,3,4−三リン酸およびラムノース−2,3,4−三リン酸から選択される。最も好ましくは、化合物は、RおよびRが互いに独立に上記のように定義され、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルであるR−6−O−R−α−D−マンノ−ピラノシド−2,3,4−三リン酸、R−6−O−R−α−D−ガラクト−ピラノシド−2,3,4−三リン酸、R−6−O−R−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−三リン酸およびR−6−O−R−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−三リン酸から選択される。
【0075】
および/またはRが上記の様式で置換されている糖部分を含む本発明の好ましい化合物は、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクトピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−グリコピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−0−ブチル−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−三リン酸、1,5−アンヒドロ−D−アラビニトール−2,3,4−三リン酸、1,5−アンヒドロキシリトール−2,3,4−三リン酸、1,2−O−エチレン−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−α−D−ラムノ−ピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシ−メチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノ−ピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノ−ピラノシド−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクトピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクト−ピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクト−ピラノシド−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−グルコピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−グルコピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−グルコピラノシド−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−トリス−(ヒドロキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−β−D−フルクト−ピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチル−ホスホン酸)、およびメチル−6−O−ブチル−β−D−フルクト−ピラノシド−2,3,4−トリス−(ヒドロキシメチルホスホン酸)から選択される。
【0076】
環式部分がアラビニトールである場合、本発明の化合物は好ましくはアラビニトールのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである。ヘテロ環式部分を含む好ましいアラビニトール化合物は、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノアラビニトール−2,3,4−三リン酸、1,5−ジデオキシ−l,5−イミノアラビニトール−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、1,5−ジデオキシ−l,5−イミノ−アラビニトール−2,3,4−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノアラビニトール−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−N−(2−フェニルエチル)アラビニトール−2,3,4−三リン酸、1,5−ジデオキシ−l,5−イミノ−N−(2−フェニルエチル)−アラビニトール−2,3,4−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−N−(2−フェニルエチル)アラビニトール−2,3,4−トリス−(カルボキシ−メチルホスホン酸)、およびl,5−ジデオキシ−l,5−イミノ−N−(2−フェニル−エチル)アラビニトール−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)から選択される。
【0077】
環式部分がリン含有ラジカルに結合していない1個以上のヒドロキシル基を含む場合、該ヒドロキシル基の少なくとも1個は、エーテルまたはエステルの形態に誘導体化されうる。エステル化およびエーテル化は、酵素分解に対する感受性を減少させることによって、この型の化合物のインビボでの安定性を増加させ、半減期を延ばすため、好ましい。
【0078】
リン含有ラジカルに結合していない環式部分の少なくとも1個のヒドロキシル基は、誘導体化され得、一般式IV
【化4】

を有するエステルを形成しうる。
【0079】
第1の代替方法では、Aはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドエイコシル(doeicosyl)、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソドエコシル(isodoecosyl)、2−ブチル、2−ペンチル、2−ヘキシル、2−ヘプチル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドエイコシル(2-doeicosyl)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、2−メチルヘプチル、2−メチルオクチル、2−メチルノニル、2−メチルデシル、2−メチルエイコシル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルオクチル、2−エチルノニル、2−エチルデシル、2−エチルエイコシル、tert−ブチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドエイコセニル(doeicosenyl)、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ドエイコジエニル(doeicodienyl)、エチニル、プロピニルおよびドエイコシニル(doeicosynyl)からなる群から選択される1〜24個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基である。
【0080】
第2の代替方法では、Aはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロテトラデシル、シクロペンタデシル、シクロヘキサデシル、シクロヘプタデシル、シクロオクタデシル、シクロノナデシル、シクロエイコシル、シクロヘンエイコシル(cycloheneicosyl)、シクロドエイコシル(cyclodoeicosyl)、アダマンチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、メルカプトフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、アジドフェニル、シアノフェニル、カルボキシフェニル、アルコキシフェニル、アシルオキシフェニル、アシルフェニル、オキシラニル、チイラニル、アジリジニル、オキセタニル、チエタニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、ジオキサニル、ジチアニル、トリオキサニル、フリル、ピロリル、チエニル、ピリジル、キノリル、ベンゾフリル、インドリル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、プリニルおよび炭水化物からなる群から選択される飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基または置換基である。
【0081】
第3の代替方法では、Aは(CHOR12であり、nは1〜10の間の整数であり、R12は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは2〜4の間の整数であり、R12は水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0082】
第4の代替方法では、Aは(CHZ(CHOR12であり、nおよびmは1〜10の間の整数であり、Zは酸素または硫黄であり、R12は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは1であり、mは2〜4の間の整数であり、R12は水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0083】
第5の代替方法では、Aは(CHOCOR12であり、nは1〜10の間の整数であり、R12は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは2〜4の間の整数であり、R12は水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0084】
第6の代替方法では、Aは(CHCOOR12であり、nは1〜10の間の整数であり、R12は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは2〜4の間の整数であり、R12は水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0085】
第7の代替方法では、Aは(CHOCOOR12であり、nは1〜10の間の整数であり、R12は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは2〜4の間の整数であり、R12は水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0086】
第8の代替方法では、Aは(CH12であり、nは1〜10の間の整数であり、R12は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは2〜4の間の整数であり、R12は水素、またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0087】
第9の代替方法では、Aは(CHOCONR1213であり、nは1〜10の間の整数であり、R12およびR13は水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nは2〜4の間の整数であり、R12およびR13は水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである。
【0088】
置換基Aは全ての位置で同一であってよく、または上記の定義に従って、異なる構造を有してよい。
【0089】
環式部分がイノシトールである場合、該化合物のトリエステルが好ましい。最も好ましい化合物は、トリ−O−ヘキサノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ブタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ペンタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(4−ヒドロキシ)ペンタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−イソブタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−プロパノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキサノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロパノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−ヒドロキシプロパノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキサノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−フェニルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ドデカノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(2−アセトキシ)ベンゾイルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ブチルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−メチルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、およびトリ−O−フェニルカルバモイル−イノシトール−三リン酸からなる群から選択される。
【0090】
環式部分がミオ−イノシトールである場合、該化合物のトリエステルが好ましい。最も好ましい化合物は、D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(4−ヒドロキシ)ペンタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−ヒドロキシプロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ドデカノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(2−アセトキシ)ベンゾイルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ブチルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−メチルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、およびD−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸であり、特にそれらのナトリウム塩の形態にある化合物である。1つの好ましい化合物のトリエステルは、五ナトリウム塩の形態にあるD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1−2,6−三リン酸である。
【0091】
1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸は、制御酵素切断によってフィチン酸から形成される。1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸は、中性点付近の水溶液を形成するその塩形態が安定である。特に示さない限り、1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸は該塩形態にて存在すると推定される。塩形態にある1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸および塩形態にある1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸を含む医薬組成物は、それぞれUS4,777,134AおよびUS4,735,936Aに開示されている。1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸は、心血管疾患、大脳疾患、呼吸器系の疾患、異常ホルモン放出に関連する疾患(US5,128,332A)、および神経ペプチドYが関連すると言われている他の状態において予防効果を有することが開示されている。1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸は、細胞膜を透過しない。
【0092】
本発明で用いられる化合物の医薬的に許容される塩、特にナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩も本発明に含まれる。特に好ましいのは、1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸の五ナトリウム塩(NaH1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸)または1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸の別の医薬的に許容される塩、特にマグネシウム塩およびカルシウム塩である。
【0093】
本発明の好ましい態様では、1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸の3位、4位、および5位にある1個以上の、特に、全てのヒドロキシル基は、C−C10カルボン酸、より好ましくは飽和C−C10カルボン酸、さらに好ましくは飽和直鎖状C−C10カルボン酸、最も好ましくは酪酸、吉草酸、特に、カプロン酸などでエステル化されている。
【0094】
化合物の好ましいトリエステルは、1D−3,4,5−トリスヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1−2,6−三リン酸であり、特に、その五ナトリウム塩の形態にある化合物である。
【0095】
本発明の化合物の薬理学的有効量は、異化を予防、抑制さらには停止させる量、特に除脂肪体重の減少速度を減速または停止させる量である。
【0096】
本発明は、異化状態の患者、特に悪液質患者においてタンパク質分解を阻害し、タンパク質合成を刺激する方法も開示する。
【0097】
一般的に、本発明の化合物は、その医薬的に許容される塩の1つ、特に、そのナトリウム塩の形態にて投与される。本発明の他の化合物は、好ましくは、それに相当する様式にて投与される。下記において、α−トリノシトールへの言及は、1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸の医薬的に許容される塩、特に五ナトリウム塩への言及を含む。
【0098】
好ましくは、本発明の化合物は本質的に純粋な形態にて用いられるが、80%以上の純度、好ましくは90%以上の純度、最も好ましくは95%以上の純度でのその使用も本発明に含まれる。本発明で用いられ、投与されるイノシトール三リン酸に伴う不純物は、他の医薬的に許容されるイノシトールリン酸を含み、または実質的に該イノシトールリン酸からなる。特に、化合物が1,2,6−D−ミオイノシトール三リン酸の五ナトリウム塩である場合、不純物は他の医薬的に許容されるイノシトールリン酸を含み、または実質的に該イノシトールリン酸からなる。
【0099】
本発明で使用/投与される化合物は、例えば静脈内に投与されてよい。静脈内に投与される場合、成人にボーラス注射として与えられるα−トリノシトールの好ましい量は、約5mg/kg体重〜約80mg/kg体重、好ましくは約10mg/kg体重〜約60mg/kg体重、より好ましくは約20mg/kgまたは約30mg/kg〜約50mg/kg、最も好ましくは約40mg/kgである。約5mg/kg体重〜約80mg/kg体重、約10mg/kg〜約60mg/kg、より好ましくは約20mg/kgまたは約30mg/kg〜約50mg/kg、最も好ましくは約40mg/kgのα−トリノシトールをボーラス注射することによって得られる最大血漿レベル、またはその付近にその血漿レベルを維持する速度で静脈内にα−トリノシトールを投与することが好ましい。あるいは、1〜12時間の間隔を空けて、1日以上かけて2回以上に分けて、約5mg/kg体重〜約80mg/kg体重の化合物、好ましくは約10mg/kg〜約60mg/kgの化合物、より好ましくは約20mg/kgまたは約30mg/kg〜約50mg/kgの化合物、最も好ましくは約40mg/kgの化合物を静脈内ボーラス注射で投与する。
【0100】
使用/投与される化合物がα−トリノシトールのエステルなどの上記のようなエステルである場合、投与される量は約0.1mg/kg体重〜約20mg/kg体重、好ましくは約1mg/kg〜約10mg/kg、より好ましくは約4mg/kg〜約8mg/kgである。
【0101】
異化状態に苦しむ患者または異化状態を発症するリスクがある患者への本発明のα−トリノシトールの投与は、明らかな悪液質または悪液質のリスクがある限り、例えば1日〜1週間または2週間、さらには1ヶ月以上にわたって継続してよい。α−トリノシトールの性質のため、該治療は十分耐えうるものである。本発明の他の化合物の好ましい投与範囲(本発明の化合物のmg/kg体重)は、異化状態を患う動物モデルおよび/または患者の用量設定によって容易に決定されうる。
【0102】
あるいは、本発明のα−トリノシトールまたは他の化合物、およびそれらの医薬的に許容される塩は、皮下または筋肉内に投与される。
【0103】
注入ポンプなどの埋め込みの手段によって、患者におけるα−トリノシトールまたは他の本発明の化合物の十分な血漿レベルを提供することも本発明の範囲内であるが、これらは埋め込まれ、持続放出用にデザインされてよい。
【0104】
本発明では、上記のような化合物を含む医薬組成物も開示される。組成物は、静脈内ボーラス注射、および例えば数時間さらには1日以上にわたる長時間の静脈内注入を含む静脈内投与に適合させることができ、薬理学的有効量のα−トリノシトールまたは他の本発明の化合物、水性溶媒、特に生理食塩水、および医薬的に許容される担体を含む。好ましくは、該組成物は密閉容器内で、寒冷沈降物の形態を含む結晶形態またはアモルファス形態にある。組成物は、安定化剤または安定化剤の混合物、特に、1つ以上のグルコース、マンノース、塩化ナトリウム中に分散されていてもよい。
【0105】
本発明の別の好ましい態様では、静脈内注入用の組成物は、鎮痛剤、特に、オピオイドアゴニストをさらに含む。オピオイドアゴニストは、モルヒネ、ナロルフィン、ナルブフィン、レボルファノール、ラセモルファン、レバロルファン、デキストロメトルファン、シクロルファン、ブトルファノール、ペンタゾシン、フェナゾシン、シクラゾシン、ケタゾシン、ペチジン、メペリジン、ジフェノキシレート、アニレリジン、ピミノジン、フェンタニル、エトヘプタジン、アルファプロジン、ベータプロジン、1−メチル−4−フェニル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)、ロペラミド、スルフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、ロフェンタニル、メタドン、d−プロポキシフェン、イソメタドン、レボ−アルファ−アセチルメタドール(LAAM)、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルトリンドール、オリパビンおよびその誘導体、コデイン、ヘテロコデイン、モルフィノン、ジヒドロモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒノン、ジヒドロコデイノン、6−デスオキシモルヒネ、オキシモルフォン、オキシコドン、6−メチレン−ジヒドロモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、メトポン、アポモルヒネ、ノルモルヒネ、N−(2−フェニルエチル)−ノルモルヒネ、エトルフィン、ブプレノルフィン、スピラドリン、エナドリンまたはアシマドリンから選択されることが好ましい。
【0106】
さらに、本発明の特定の実施態様では、従来の栄養療法では回復がしばしば困難または不可能である重度の外傷または他の状態と関連する悪液質または他の深刻な異化状態を治療する目的で、好ましくは二価カチオンと錯体を形成できる、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む、前記で一般的に記載した化合物の有効量を、栄養素と組み合わせてよい。該異化状態は、例えば敗血症および重度の火傷または上記の他の異化状態から誘導されうる。
【0107】
前記の型の化合物および栄養素を含む治療薬は、成分が適切な所定のスキームにしたがって別々に投与され、または非経口もしくは経腸栄養で投与するのに適切な通常の形態にて同時投与されうる補助治療薬であってよい。救急医療における多数の栄養製品が入手可能であり、それらは通常1個または数個の脂肪乳剤、アミノ酸源および炭水化物(糖)に基づいている。特に、非経口栄養用に、最終滅菌および長期保存の間の成分の適合性に特別な配慮をした製品が開発されている。当業者であれば、ω−3−脂肪酸(油源から)ならびに分枝鎖アミノ酸(例えばバリン、ロイシンおよびイソロイシン)などの、異化状態において有用性が立証された栄養成分も知っているであろう。
【0108】
本発明の選択された栄養素による併用療法は、骨格筋において枯渇した栄養供給を補充し、総体重を回復することによって、深刻な異化状態の患者の治療をさらに増強することを目的とする。本発明の1つの態様では、栄養組成物はイノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステル;ならびに、脂肪乳剤、アミノ酸の液体供給源、および炭水化物からなる群から選択される少なくとも1つの栄養素を含んで提供される。
【0109】
組成物が非経口投与に適している場合、この投与経路に適切なビヒクル中で適切に製造された成分を含む。経口または経腸投与用の栄養組成物は、味増強剤および当業者に周知の通常の成分を含んでよい。適切な栄養素の例は、アミノ酸またはその複合体もしくは前駆体(例えばペプチド)の液体供給源、長鎖または中鎖脂肪酸を有する油相を含む脂肪乳剤、ならびに炭水化物溶液(グルコースおよび/または他の高エネルギー化合物を含む)である。
【0110】
栄養組成物は、ビタミン、微量元素、電解質、等張調整剤、さらに臨床的状況に依存する補助剤などの当該技術分野で周知の成分をさらに含んでよい。
【0111】
別の実施態様では、本発明は、悪液質または重度の外傷と関連する異化状態を予防および/または治療するための栄養補助剤の製造用の、イノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステル;ならびに、脂肪乳剤、アミノ酸の液体供給源、および炭水化物からなる群から選択される少なくとも1つの栄養素の使用に関する。
【0112】
好ましくは、イノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステルは、非経口投与に適した組成物に、その投与の直前に供給される。1つの実施態様では、該組成物は炭水化物の溶液を含む。
【0113】
栄養補助剤の使用は、約5〜約80、好ましくは約10〜約60mg/kg体重のイノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステルを患者へ提供する。
【0114】
本発明は、図示された多数の好ましい実施態様へ言及することによって、さらに詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、用量10mg/kg、20mg/kg、および40mg/kg体重のα−トリノシトール(AT)で治療したMAC16腫瘍を有するマウスの体重変化を示す図であり、c=p<0.001(対照群との差)である;
【図2】図2は、対応する腫瘍量の変化を示す図であり、b=p<0.01(対照群との差)である;
【図3】図3は、α−トリノシトールの1日投与量が3x40mg/kgの場合の、図1のモデルの体重減少を示すステープル図である;
【図4】図4は、α−トリノシトール(AT)の3通りの投与量(10mg/kg、20mg/kg、および40mg/kg体重)水準での、図1のモデルの腫瘍量の減少を示すステープル図である;
【図5】図5は、α−トリノシトール(AT、100μM)の存在下での、マウスの筋管におけるタンパク質分解に対するPIF(タンパク質分解誘導因子)の効果を示す図である。対照群との差はcとして示し(p<0.001)、一方で、AT存在下での差はfとして示す(p<0.001)。
【図6】図6は、α−トリノシトール(AT、100μM)の存在下での、C2C12筋管におけるキモトリプシン様活性に対する4.2nMのPIFの効果を示す図である。対照群との差はcとして示す(p<0.001)。
【図7】図7は、α−トリノシトールの脂溶性誘導体(H)ATが100μMにて存在する条件下、C2C12筋管におけるキモトリプシン様活性に対するPIFの効果を示す図である。対照群との差はcとして示し(p<0.001)、一方で、α−トリノシトール(AT)存在下での差はe(p<0.01)またはf(p<0.001)として示す。
【図8】図8は、α−トリノシトール(AT、100μM)の存在下での、マウスの筋管におけるタンパク質分解に対するAngIIの効果を示す図である。対照群との差はcとして示し(p<0.001)、一方で、AT存在下での差はfとして示す(p<0.001)。
【図9】図9は、α−トリノシトール(AT、100μM)の存在下での、C2C12筋管におけるアンジオテンシンII誘導性のキモトリプシン様活性の効果を示す図である。
【図10】図10は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの体重変化を示す図である。◆−対照群;▲−AT。
【図11】図11は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスにおける、腓腹筋重量を示すステープル図である。
【図12】図12は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、タンパク質合成を示すステープル図である。
【図13】図13は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、タンパク質分解を示すステープル図である。
【図14】図14は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、キモトリプシン活性を示すステープル図である。
【図15】図15は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、20Sプロテアソームサブユニットの発現を示すステープル図である。
【図16】図16は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、P42発現を示すステープル図である。
【図17】図17は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、ミオシン発現を示すステープル図である。
【図18】図18は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、ホスホPKR/総PKRの比率を示すステープル図である。
【図19】図19は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、pelF2α/総elF2αの比率を示すステープル図である。
【図20】図20は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、mTORの発現を示すステープル図である。
【図21】図21は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、4E−BP1の発現を示すステープル図である。
【図22】図22は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、総4E−BP1/総elF4eの比率を示すステープル図である。
【図23】図23は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、総eIF4G/総eIF4Eの比率を示すステープル図である。
【図24】図24は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、カスパーゼ3活性を示す図である。
【図25】図25は、40mg/kgのα−トリノシトール(AT)で治療した、および治療していないMAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋における、カスパーゼ8活性を示す図である。
【図26】図26は、脂溶性α−トリノシトール(AT、6mg/kgおよび8mg/kg)で治療したMAC16腫瘍を有するマウスの体重変化を示す図である。
【図27】図27は、脂溶性α−トリノシトール(AT、6mg/kgおよび8mg/kg)で治療したMAC16腫瘍を有するマウスの食物消費量を示す図である。
【図28】図28は、脂溶性α−トリノシトール(AT、6mg/kgおよび8mg/kg)で治療したMAC16腫瘍を有するマウスの水消費量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
本発明は、下記の非限定的実施例にて、以下でさらに開示されるであろう。
【実施例】
【0117】
実施例1.α−トリノシトールによる悪液質マウスの治療
材料. α−トリノシトール(1−D−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸)は、US4,777,134に従って製造した。ガラスアンプル内で、1gのα−トリノシトールを生理食塩水に溶解し、総容量10mlとすることによってストック溶液を製造した。ストック溶液は、24時間以内に使用するために冷蔵庫内に保存した。
【0118】
動物.純系のオスのNMRIマウス(平均体重25g)の側腹部の皮下に、体重減少が確立したドナー動物から選択したMAC16腫瘍の断片をトロカールによって移植した(Bibby M C et al., Characterization of transplantable adenocarcinoma in the mouse colon producing cachexia in the recipient animals. J Natl Cancer Inst 78 (1987) 539-546)。移植動物に、ラットおよびマウス用飼料(Special Diet Services, Witham, UK)ならびに水を自由に与えた。体重減少は、腫瘍の埋め込み後、10〜12日で明らかになった。体重減少の発生の直前に、24匹の動物を各6匹ずつの動物の4つの群(I〜IV)にランダム化した。
【0119】
α−トリノシトールの投与.動物の体重が約5%減少したときに、第1の実験を開始した。10mg/kg、20mg/kg、および40mg/kgの用量に相当する一定分量(2.5μl、第I群;5μl、第II群;10μl、第III群)のα−トリノシトールストック溶液を、25gの動物について、1日当たり3回、8.00時、12.00時および16.00時に皮下投与した。第4の群(第IV群;対照群)には、10μlの水を静脈内注射した。体重(図1)、腫瘍量(図2)、ならびに水および食物摂取量を毎日最後の注射後に測定した。
【0120】
図1および図2のモデルにおける体重減少について、α−トリノシトールの至適な1日の投与量3x40mg/kgの場合を図3に示す。図4は、第1の実験の3通りのα−トリノシトール投与量レベルでの、腫瘍量の減少を図示する。
【0121】
全群において、最初の1グラムの減少は0日目〜1日目に生じた(1日目=0日目からの2週間の腫瘍増殖)。これは、全動物が悪液質を発症したことを裏付けるものである。それゆえ、体重変化の差は、比較が1日目(すなわち治療の初日)〜5日目(治療の最終日)に行われた場合にさらに明白である。0日目〜5日目において、対照群は〜4.7g減少し、AT群は〜2.3減少したが、これは、AT群の相対的体重減少が対照群の半分であったことを意味する。しかしながら、1日目〜5日目において、対照群は〜3.3g減少し、AT群は1.15g減少したが、これは対照群の1/3の減少であった。
【0122】
興味深いことに、10mg/kgの用量により、明白な抗悪液質効果が現れた(40mg/kgと同程度、図1を参照のこと)。しかしながら、用量10mg/kgでは、腫瘍阻害に関して統計的に有意な効果を全く生じなかった。これは、抗悪液質効果は腫瘍阻害効果に起因しない、すなわち、ATは腫瘍非依存性経路を通じて悪液質を阻害することを示唆する。
【0123】
実施例2.悪液質治療の体組成に対する影響
実施例1に記載した治療の終わりに、マウスを屠殺し、それらの体組成を分析した。結果は第1表に示す。これらは、本発明の方法が、動物の除脂肪体重を維持するのみならず、除脂肪体重の相対的増加、さらには絶対的増加さえもたらすことを実証する。除脂肪体重の減少は通常、悪液質患者に観察され、罹患率の有意な原因となる。水含有量の有意な変化は観察されなかった。
【0124】
第1表.悪液質のMAC16マウスの体組成(重量%)
【表1】

【0125】
対照群からの絶対的変化は第2表に示す。
【0126】
第2表.悪液質のMAC16マウスの体組成、絶対的脂肪および除脂肪体重変化
【表2】

【0127】
実施例3.α−トリノシトールによるPIF(タンパク質分解誘導因子)およびアンジオテンシンIIのインビトロでの阻害
ATが悪液質における除脂肪体重を保護するメカニズムを調べるために、骨格筋の代理モデルとしてマウスの筋管を用いて、さらにインビトロでの実験を実施した。PIFまたはアンジオテンシンII(AngII)のいずれかとインキュベーションすることで、以前に報告されたような特徴的な釣鐘状の用量反応曲線を示すタンパク質分解を誘導したが(Smith et al., 2004, Br. J. Cancer, およびTisdale et al., 2006, Cell. Sig)、PIFは4.2nMで、AngIIは0.5μMで最大効果を示した(図5および8)。PIF(図5)またはAngII(図8)を加える前2時間、筋管をAT(100μM)とインキュベーションすると、タンパク質分解は基礎レベルまで完全に弱まった。PIFによって誘導されるタンパク質分解は、ユビキチンプロテアソーム経路の上方制御を通じて媒介される(Tisdale et al., 2004, Br. J. Cancer)。筋管におけるプロテアソームのβ−サブユニットの主要なタンパク質分解活性であるキモトリプシン様酵素活性の測定は、4.2nMのPIFの存在下で増加を示したが(図6)、この効果はAT(100μM)の存在下で完全に弱まった。ATのヘキサノイルエステル(脂溶性AT)は、エステラーゼによる加水分解後、持続放出形態として生成した。図7の結果は、PIF誘導性キモトリプシン様酵素活性を弱めることについて、ATの脂溶性誘導体(濃度100mM)が、水溶性ATと同程度に有効であったことを示す。筋管におけるキモトリプシン様酵素活性の測定は、AngIIの存在下においても増加したことを示す(図9)。この効果は、AT(100μM)の存在下で完全に弱まった。
【0128】
キマーゼは、キモトリプシン活性を有するセリンプロテアーゼであり、マスト細胞分泌顆粒に最も豊富に存在するタンパク質の1つである。キマーゼは正の電荷を持ち、ヘパリンと結合する(Takao et al Jpn J Pharmacol, 81, 1999, 404)。キマーゼは、アンジオテンシン変換酵素と同一の効果、すなわちAngIをAngIIに変換する効果を有することも示唆されている。それゆえ、ATは、キマーゼに対する阻害効果、および様々な病的状態においてキマーゼによって誘導される破壊的活性に対する阻害効果も有しうる。
【0129】
実施例4.α−トリノシトールによる治療後のMAC16腫瘍を有するマウスの筋肉におけるタンパク質合成および分解への影響
本研究は、腫瘍を有するマウスのα−トリノシトールによる治療が、除脂肪体重の維持を通じて体重減少を緩和するという以前の結果を確認するものである。
【0130】
材料.α−トリノシトールは、US4,777,134に従って製造した。ガラスアンプル内で、1gのα−トリノシトールを生理食塩水に溶解し、総容量10mlとすることによってストック溶液を製造した。ストック溶液は、24時間以内に使用するために冷蔵庫内に保存した。
【0131】
L−[2,6−H]フェニルアラニン(sp.act.1.96TBq/mmole)、Hybond Aニトロセルロース膜、mGTP(7−メチル−GTP)セファロース4B、およびECL検出キットは、Amersham Biosciences Ltd(Bucks, UK)から購入した。20Sプロテアソームのα−サブユニットおよびp42に対するマウスモノクローナル抗体は、Affiniti Research Products(Exeter, UK)から購入した。ホスホ−4EBP1(Thr37/46)、ホスホmTOR(Ser2448)ならびにThr56ホスホおよび総PKRに対するウサギモノクローナル抗体、さらには4E−BP1、eIF4E、eIF4G、ならびにホスホおよび総伸長因子2(eEF2)に対するウサギポリクローナル抗血清は、New England Biolabs(Herts, UK)から購入した。ホスホeIF2α(Ser51)および総eIF2αに対するウサギポリクローナル抗血清は、Santa Cruz Biotechnology(CA)から購入した。ミオシン重鎖に対するウサギポリクローナル抗血清は、Novocastra(Newcastle, UK)から購入した。マウスβ−アクチンに対するウサギポリクローナル抗血清、およびキモトリプシン基質のスクシニルLLVY−7−アミノ−4−メチルクマリンは、Sigma Aldridge(Dorset, UK)から購入した。ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウス抗体およびペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギ抗体は、Dako Ltd(Cambridge, UK)から購入した。Phosphosafe(登録商標)抽出試薬は、Merck Eurolab Ltd(Leicestershire, UK)から購入した。カスパーゼ−3および−8基質および阻害剤は、Biomol International(Devon, UK)から購入した。
【0132】
動物.実施例4に記載したように、純系のオスのNMRIマウスに、MAC16腫瘍の断片を移植した。
【0133】
α−トリノシトールの投与.MAC16腫瘍を有するマウス(n=6)を1日3回、5日間、AT(40mg/kg)の皮下投与で治療し、一方で対照群にはPBSを与えた。タンパク質合成および分解は、「Smith et al., Cancer Res., 2005; 65:277-83」に記載されているように、L−[2,6−H]フェニルアラニンの取り込みおよび放出によって決定した。治療の4日目に、群の半分に、PBSに溶解した0.4mmol/LのL−[2,6−H]フェニルアラニン(100μl)を、腹腔内投与によって投与した。
【0134】
タンパク質分析.24時間後、動物を屠殺し、腓腹筋を除去し、PBSおよびRPMI 1640で洗浄し、RPMI 1640中での2時間のインキュベーションの間の放射能の放出を測定した。タンパク質結合活性は、2%過塩素酸中に筋肉をホモジナイズし、沈殿中の放射能を測定することによって決定した。タンパク質分解は、2時間にわたって培地に放出された放射能の量を、タンパク質結合放射能の特異的活性で割ることによって計算した。タンパク質合成を決定するために、フェノールレッドの非存在下、L−[2,6−H]フェニルアラニン(37MBq)の存在下、O/CO(19:1)雰囲気下、腓腹筋をRMPI 1640中に2時間インキュベートした。次いで、筋肉を非放射性培地中ですすぎ、2%過塩素酸中でホモジナイズした。タンパク質合成の速度は、タンパク質結合放射能を酸可溶性物質で割ることによって計算した。
【0135】
プロテアソーム活性の決定 20Sプロテアソームの活性は、プロテアソームのβ5サブユニットの主要なタンパク質分解活性である「キモトリプシン様」酵素活性として決定した。腓腹筋を氷冷PBSですすぎ、20mmol/LのTris−HCl(pH7.5)、2mmol/LのATP、5mmol/LのMgClおよび1mmol/LのDTT中でホモジナイズし、次いで超音波処理した。超音波処理物を4℃で、18,000xgの速度で10分間遠心分離し、上清中の酵素活性を「Orino et al., FEBS Lett., 1991; 284:206-10」記載の方法によって決定し、蛍光発生基質LLVY−AMCからのアミノメチルクマリン(AMC)の放出を測定することによって決定した。活性は、特異的プロテアソーム阻害剤ラクタシスチン(10μmol/L)の非存在下および存在下で測定した。ラクタシスチンを抑制できる活性のみが、プロテアソーム特異的であると考えた。
【0136】
ウエスタンブロット分析 腓腹筋(10mg)をPhosphosafe(登録商標)抽出試薬(500μl)中でホモジナイズし、15000gで15分間遠心分離した。細胞質タンパク質の試料(5μg)を、10%(mTOR、ミオシン、eIF4EおよびeIF4G)、12%(PKR、eIF2αおよびアクチン)または15%(4E−BP1)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)に乗せ、180Vでおよそ1時間電気泳動した。4E−BP1のリン酸化の程度、ならびに4E−BP1およびeIF4GとeIF4Eの結合は、以前に「Eley ey al., Biochem J., 2007; 407:113-20」に記載されたように、eIF4EをmGTP−セファロース4B−親和結合によって筋肉試料から抽出した時に、20μgのタンパク質を乗せることによるウエスタンブロッティングによって決定した。次いで、ゲル上のタンパク質を0.45mmのニトロセルロース膜へ移し、Tris−緩衝食塩水pH7.5に溶解した5%マーベル(Marvel)を用いて、4℃で一晩ブロッキングした。ホスホおよび総eIF2α(1:500)ならびにミオシン(1:250)を除いて、一次抗体は1:1000の希釈で用いた。二次抗体は、1:1000の希釈で用いた。インキュベーションは室温で1時間、または一晩行い、ECLによって検出した。ブロットを濃度計によってスキャンし、差を定量化した。
【0137】
カスパーゼ活性の決定.カスパーゼ3の活性は、カスパーゼ3阻害剤AcDEVD−CHOの存在下または非存在下で、特異的基質AcDEVD−AMCからの7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)の放出によって決定した。筋肉(10mg)を溶解緩衝液中(150mmol/LのNaCl、1%NP40、50mmol/LのTris HCl、pH7.4、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、2mmol/LのEGTA、1mmol/LのEDTA、0.2mmol/Lのオルトバナジン酸ナトリウム、20mmol/LのNaFおよび1%プロテアソーム阻害剤混合物)にホモジナイズし、4℃で放置し、室温で10分間放置し、次いで15,000gで15分間遠心分離した。上清(50μgのタンパク質)をカスパーゼ3基質と1時間インキュベートし、AMCによる蛍光の増加を励起波長370nmおよび発光波長430nmで測定した。カスパーゼ−3阻害剤の非存在下と存在下の値の差を、活性の測定値とした。カスパーゼ8については、基質をZ−IETD−AFC、および阻害剤をIETD−CHOとして用いた類似の方法で行った。7−アミノ−4−トリフルオロ−メチルクマリン(AFC)の放出による蛍光の増加は、励起波長400nm、および発光波長505nmで測定した。
【0138】
統計的分析.全ての結果は、少なくとも3回繰り返した実験についての平均値±標準誤差として示している。群と群の間の平均値の差は、分散の一元配置分析と、続くテューキー・クレーマー(Tukey-Kramer)多重比較検定によって決定した。0.05未満のp値を「有意」であると考えた。
【0139】
タンパク質合成およびタンパク質分解の結果.結果は図10〜13に示す。実施例4で観察されたように、体重減少は、α−トリノシトールで治療したマウスにおいては、対照群と比較して有意に低かった(図10)。MAC16腫瘍を有する動物の腓腹筋重量は、対照群と比較して有意に高かった(図11)。これは、α−トリノシトールで治療したマウスの腓腹筋におけるタンパク質合成の対照群と比較した有意な増加(50%)(p<0.001)(図12)、およびα−トリノシトールで治療したマウスの腓腹筋におけるタンパク質分解の対照群と比較した有意な減少(20%)(p<0.001)(図13)によってさらに確認された。これらの結果は、α−トリノシトールが、腓腹筋におけるタンパク質合成の増加およびタンパク質分解の減少を通じて除脂肪体重を増加させることを示唆する。
【0140】
20Sプロテアソーム活性の結果.腓腹筋においてキモトリプシン活性の有意な増加があったが(図14)、これは20Sプロテアソーム活性の増加を示すものである。α−トリノシトールによる治療から4日後、腫瘍を有する動物のキモトリプシン活性は、腫瘍を有さない正常なマウスにおいて見られるレベルにまで減少した。このことは、20Sプロテアソームのα−サブユニットの発現の測定(図15)およびp42の発現の測定(図16)によってさらに確認されたが、これはα−トリノシトールが悪液質の動物において観察されるユビキチンプロテアソーム経路の活性の増加を下方制御することを示唆している。
【0141】
ウエスタンブロット分析からの結果.ミオシン発現の測定は、プロテアソーム成分のレベルと逆相関した。腫瘍を有するマウスにおいて、ミオシン発現は90%減少し(図17)、α−トリノシトールで4日間治療した後、腫瘍を有さない動物における値と同一レベルの値に回復した。
【0142】
腫瘍を有する動物において、ホスホPKR(図18)およびeIF2α(図19)の両方の発現はタンパク質合成の増加と相関し、α−トリノシトールによる治療後に有意な減少を示した。
【0143】
MAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋におけるmTORのリン酸化(Ser2448)形態のレベルの有意な減少も見られたが(図20)、α−トリノシトールによる治療から4日後に、腫瘍を有さない動物で見られる値まで完全に回復した。腓腹筋における活性eIF4G.eIF4E複合体の形成に利用できるeIF4Eの量に対する悪液質の効果と、ATの効果も研究した。腫瘍を有する動物は、4E−BP1のリン酸化(Thr37/46)のレベルが60%減少したが(図21)、eIF4Eのリン酸化(Ser209)に対しては効果がなかった(図22)。腫瘍を有する動物において、体重減少は、eIF4Eと結合する4E−BP1の量を増加させ、活性eIF4G.eIF4E複合体の形成を減少させた(図23)。これらの効果はα−トリノシトールによる治療によって完全に弱まり、eIF4Fのレベルは腫瘍を有さない対照群と同一であった(図22)。
【0144】
カスパーゼ活性の測定からの結果.腫瘍を有さない動物と比較して、MAC16腫瘍を有するマウスの腓腹筋におけるカスパーゼ−3の活性(図24)およびカスパーゼ−8の活性(図25)は2.5〜3倍上昇した。α−トリノシトールで治療した腫瘍を有する動物において、このレベルは有意に減少したが、該レベルは腫瘍を有さない動物で見られるよりも依然として有意に高かった。
【0145】
実施例5.脂溶性α−トリノシトール(1−D−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸)による悪液質マウスの治療
材料.脂溶性α−トリノシトール(1−D−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸)は、1−D−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸をさらにエステル化することによって形成した。
【0146】
動物.純系のオスのNMRIマウス(平均体重25g)の側腹部の皮下に、体重減少が確立したドナー動物から選択したMAC16腫瘍の断片をトロカールによって移植した(Bibby M C et al., Characterization of transplantable adenocarcinoma in the mouse colon producing cachexia in the recipient animals. J Natl Cancer Inst 78 (1987) 539-546)。移植動物に、ラットおよびマウス用飼料(Special Diet Services, Witham, UK)ならびに水を自由に与えた。体重減少は、腫瘍の埋め込み後、10〜12日で明らかになった。体重減少の発生の直前に、24匹の動物を各6匹ずつの動物の3つの群にランダム化した。
【0147】
α−トリノシトールの投与.動物の体重が約5%減少したときに、第1の実験を開始した。用量6mg/kg体重および8mg/kg体重に相当する一定分量の脂溶性α−トリノシトールストック溶液を、25gの動物について、1日当たり3回、8.00時、12.00時および16.00時に皮下投与した。第3の群(対照群)には10μlのPBSを静脈内注射した。体重(図26)、腫瘍量、ならびに食物(図27)および水(図28)摂取量を、毎日(5日間)最後の注射後に測定した。0日目は移植の日であり、1日目は実験開始の日である。対照群の減少のために、実験は5日目に終了した。
【0148】
結果.結果は図26〜28に示す。図26は、脂溶性α−トリノシトールで治療したMAC16腫瘍を有するマウスの体重変化を示す。脂溶性α−トリノシトール(8mg/kgおよび6mg/kg)を投与したマウスは、対照群と比較して有意に体重減少が緩和した。最も高い濃度の脂溶性α−トリノシトールで治療した群においては、この差は4日後に既に有意であった。対照群における平均体重減少は5日間で約6gであったが、最も高い濃度の脂溶性α−トリノシトールで治療した群における相当する体重減少は約3gであった。
【0149】
腫瘍量の増加は、脂溶性α−トリノシトールで治療した2つの群の間で類似していたが、対照群の方がわずかに高かった。
【0150】
それゆえ、α−トリノシトールと同様に、脂溶性α−トリノシトールは悪液質マウスにおける体重減少を緩和するのに有効であるが、腫瘍増殖速度に対する効果は劣る。これは、抗悪液質効果は腫瘍阻害効果に起因するのではない、すなわちATは腫瘍非依存性経路を通じて悪液質を阻害するという水溶性ATの投与からの結果を裏付けるものである。
【0151】
図27および28で見られるように、食物および水摂取量は、治療によっては影響されなかった。
【0152】
特定の実施態様が本明細書で詳細に開示されているが、これは例示目的のためにのみ示されているのであって、添付の特許請求の範囲を限定することを意図していない。特に、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な置換、変化、および修飾がなされてよいことが発明者によって意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む哺乳類において、悪液質を予防、緩和および/または治療するための薬剤の製造用の、隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域を含む化合物の使用。
【請求項2】
負に帯電した領域が3個以上の隣接したリン含有ラジカルを含む、請求項1の使用。
【請求項3】
リン含有ラジカルが、一般式I
【化1】

または一般式II
【化2】

[式中、
〜VはYm6o3Uであり、
o1〜To3は(CH、CH=CH、またはCHCH=CHCHであり、
o1〜o3は0〜1であり、
nは0〜4であり、
UはR10m7、CY1112、SY131415、PY161718、Y19PY202122、CHNO、NHSOまたはNHCY2324であり、
m1〜m7は0〜1であり、
〜Y24はNHR10、NOR11、OまたはSであり、
〜R11
i) 水素;
ii) 1〜22個の炭素原子からなる直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基;
iii)3〜22個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子からなる飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基;
iv) 3〜22個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子からなる飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式置換基を含む、1〜22個の炭素原子からなる直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基;
v) 1〜22個の炭素原子からなる直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル置換基を含む、3〜22個の炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される0〜5個のヘテロ原子からなる芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基である]
を有する、請求項1の使用。
【請求項4】
〜R11、ii)〜v)における残基および/または置換基の1個または数個が、1〜6個のヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールオキシカルボニルオキシ、カルバモイル、フルオロ、クロロ、ブロモ、アジド、シアノ、オキソ、オキサ、アミノ、イミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アリールアゾ、ニトロ、アルキルチオおよびアルキルスルホニルで置換されている、請求項3の使用。
【請求項5】
〜R11、ii)、iv)、v)における直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基および置換基の1個または数個が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドエイコシル(doeicosyl)、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソドエコシル(isodoecosyl)、2−ブチル、2−ペンチル、2−ヘキシル、2−ヘプチル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドエイコシル(2-doeicosyl)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、2−メチル−ヘプチル、2−メチルオクチル、2−メチルノニル、2−メチルデシル、2−メチル−エイコシル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチル−ヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルオクチル、2−エチルノニル、2−エチルデシル、2−エチルエイコシル、tert−ブチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドエイコセニル(doeicosenyl)、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ドエイコジエニル(doeicodienyl)、エチニル、プロピニル、およびドエイコシニル(doeicosynyl)からなる群から選択される、請求項3の使用。
【請求項6】
〜R11、iii)〜v)における飽和芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基または置換基が、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロテトラデシル、シクロペンタデシル、シクロヘキサデシル、シクロヘプタデシル、シクロオクタデシル、シクロノナデシル、シクロエイコシル、シクロヘンエイコシル(cycloheneicosyl)、シクロドエイコシル(cyclodoeicosyl)、アダマンチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、メルカプトフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、アジドフェニル、シアノフェニル、カルボキシフェニル、アルコキシフェニル、アシルオキシフェニル、アシルフェニル、オキシラニル、チイラニル、アジリジニル、オキセタニル、チエタニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、ジオキサニル、ジチアニル、トリオキサニル、フリル、ピロリル、チエニル、ピリジル、キノリル、ベンゾフリル、インドリル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、プリニルおよび炭水化物からなる群から選択される、請求項3の使用。
【請求項7】
本発明のリン含有ラジカルが、一般式III
【化3】

[式中、VおよびVは互いに独立に、OH、(CHOH、COOH、CONH、CONOH、(CHCOOH、(CHCONH、(CHCONOH、(CHSOH、(CHSO、NH、(CHNO、(CHPO、O(CHOH、O(CHCOOH、O(CHCONH、O(CHCONOH、(CHSOH、O(CHSONH、O(CHNO、O(CHPO、およびCFCOOHからなる群から選択され、pは1〜4である]
を有する、請求項2の使用。
【請求項8】
本発明の化合物が医薬的に許容されるリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである、請求項1、2または7のいずれか1項の使用。
【請求項9】
化合物がリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルのナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩である、請求項8の使用。
【請求項10】
隣接して配向したラジカルの高密度の負に帯電した領域が、飽和もしくは不飽和の芳香族もしくは非芳香族のホモ環式もしくはヘテロ環式環を含み、または該環からなる環式部分と結合している、請求項7〜9のいずれか1項の使用。
【請求項11】
環式部分のヘテロ環式環のヘテロ原子が、互いに独立に、酸素、窒素、硫黄、およびセレンからなる群から選択される、請求項10の使用。
【請求項12】
環式部分が4〜24個の原子、特に5〜18個の原子、とりわけ6個の原子を含む、請求項10の使用。
【請求項13】
環式部分がシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、イノシトール、単糖、二糖、三糖、四糖、アラビニトール、ピペリジン、テトラ−ヒドロチオピラン、5−オキソテトラヒドロチオピラン、5,5−ジオキソテトラヒドロ−チオピラン、テトラヒドロセレノピラン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、5−オキソテトラヒドロチオフェン、5,5−ジオキソテトラヒドロチオフェン、テトラヒドロセレノフェン、ベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレンおよびフェナントレンからなる群から選択される、請求項10〜12のいずれか1項の使用。
【請求項14】
環式部分がリン含有ラジカルに結合していない1個以上のヒドロキシル基を含み、該ヒドロキシル基の少なくとも1個がエーテルまたはエステルの形態に誘導体化されている、請求項13の使用。
【請求項15】
環式部分がイノシトール、単糖、二糖、三糖、および四糖からなる群から選択される、請求項13または14のいずれか1項の使用。
【請求項16】
環式部分がアロ−イノシトール、シス−イノシトール、エピ−イノシトール、D/L−キロ−イノシトール、シロイノシトール、ミオイノシトール、ムコイノシトールおよびネオイノシトールからなる群から選択されるイノシトールである、請求項15の使用。
【請求項17】
環式部分がイノシトールであり、化合物がイノシトールのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである、請求項15〜16のいずれか1項の使用。
【請求項18】
イノシトール部分あたりのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルの数が3個以上である、請求項16〜17の使用。
【請求項19】
環式部分がイノシトールであり、イノシトールがイノシトール−三リン酸、イノシトール−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、イノシトール−トリス(カルボメチルホスホン酸)、イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、トリ−O−メチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ヘキシル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ブチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ペンチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−イソブチル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−プロピル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキシル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロピル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−ヒドロキシプロピル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキシル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−フェニルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−プロピル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−ブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−イソブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、トリ−O−ペンチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−ヘキシル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルリン酸)、トリ−O−プロピル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、トリ−O−イソブチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ペンチル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ヘキシル−イノシトール−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、トリ−O−プロピル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、トリ−O−ブチル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、トリ−O−イソブチル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、トリ−O−ペンチル−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、およびトリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)からなる群から選択される、請求項15の使用。
【請求項20】
化合物がイノシトール三リン酸である、請求項19の使用。
【請求項21】
環式部分がミオイノシトールであり、該ミオイノシトールがD−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボメチルホスホン酸)、D−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−メチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキシル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−ヒドロキシプロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−5−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロピル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンチル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキシル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−リン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(カルボキシメチルリン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、およびD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)からなる群から選択される、請求項16の使用。
【請求項22】
環式部分がイノシトールであり、該イノシトールがミオイノシトールであり、該ミオイノシトールがミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸またはミオ−イノシトール−1,2,3−三リン酸である、請求項21の使用。
【請求項23】
化合物が1,2,6−D−ミオイノシトール三リン酸の五ナトリウム塩(NaH1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸)、Mg1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸またはCa1,2,6−D−ミオ−イノシトール三リン酸)である、請求項22の使用。
【請求項24】
少なくとも1個のヒドロキシル基が誘導体化され、一般式IV
【化4】

を有するエステルを形成している、請求項14〜15のいずれか1項の使用。
【請求項25】
Aがメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドエイコシル(doeicosyl)、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソドエコシル(isodoecosyl)、2−ブチル、2−ペンチル、2−ヘキシル、2−ヘプチル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドエイコシル(2-doeicosyl)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、2−メチルヘプチル、2−メチルオクチル、2−メチルノニル、2−メチルデシル、2−メチルエイコシル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルオクチル、2−エチルノニル、2−エチルデシル、2−エチルエイコシル、tert−ブチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドエイコセニル(doeicosenyl)、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル、ドエイコジエニル(doeicodienyl)、エチニル、プロピニルおよびドエイコシニル(doeicosynyl)からなる群から選択される1〜24個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル残基である、請求項24の使用。
【請求項26】
Aがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロテトラデシル、シクロペンタデシル、シクロヘキサデシル、シクロヘプタデシル、シクロオクタデシル、シクロノナデシル、シクロエイコシル、シクロヘンエイコシル(cycloheneicosyl)、シクロドエイコシル(cyclodoeicosyl)、アダマンチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、アミノフェニル、メルカプトフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、アジドフェニル、シアノフェニル、カルボキシフェニル、アルコキシフェニル、アシルオキシフェニル、アシルフェニル、オキシラニル、チイラニル、アジリジニル、オキセタニル、チエタニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、ジオキサニル、ジチアニル、トリオキサニル、フリル、ピロリル、チエニル、ピリジル、キノリル、ベンゾフリル、インドリル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、プリニルおよび炭水化物からなる群から選択される飽和または不飽和の芳香族または非芳香族のホモ環式またはヘテロ環式残基または置換基である、請求項24の使用。
【請求項27】
Aが(CHOR12であり、nが1〜10の間の整数であり、R12が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが2〜4の間の整数であり、R12が水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項28】
Aが(CHZ(CHOR12であり、nおよびmが1〜10の間の整数であり、Zが酸素または硫黄であり、R12が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが1であり、mが2〜4の間の整数であり、R12が水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項29】
Aが(CHOCOR12であり、nが1〜10の間の整数であり、R12が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが2〜4の間の整数であり、R12が水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項30】
Aが(CHCOOR12であり、nが1〜10の間の整数であり、R12が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが2〜4の間の整数であり、R12が水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項31】
Aが(CHOCOOR12であり、nが1〜10の間の整数であり、R12が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが2〜4の間の整数であり、R12が水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項32】
Aが(CH12であり、nが1〜10の間の整数であり、R12が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが2〜4の間の整数であり、R12が水素、またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項33】
Aが(CHOCONR1213であり、nが1〜10の間の整数であり、R12およびR13が水素、置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルカリールであり;好ましくは、nが2〜4の間の整数であり、R12およびR13が水素またはメチル、エチルもしくはプロピルなどの低級アルキルである、請求項24の使用。
【請求項34】
化合物がシクロヘキサンのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである、請求項13、14および24〜33のいずれか1項の使用。
【請求項35】
化合物が1,2,3−β−シクロヘキサン−1,2,3−トリオール三リン酸である、請求項34の使用。
【請求項36】
イノシトール三リン酸がトリ−O−ヘキサノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ブタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ペンタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(4−ヒドロキシ)ペンタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−イソブタノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−プロパノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキサノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロパノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−3−ヒドロキシプロパノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキサノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−フェニルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ドデカノイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−(2−アセトキシ)ベンゾイルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−ブチルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、トリ−O−メチルカルバモイル−イノシトール−三リン酸、およびトリ−O−フェニルカルバモイル−イノシトール−三リン酸からなる群から選択される、請求項13〜15および24のいずれか1項の使用。
【請求項37】
化合物がD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ペンタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(4−ヒドロキシ)ペンタノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−イソブタノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ−4−オキサ)ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−(エチルスルホニル)プロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−3−ヒドロキシプロパノイル−ミオ−イノシトール−l,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(6−ヒドロキシ)−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ドデカノイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−(2−アセトキシ)ベンゾイルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−ブチルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、D−3,4,5−トリ−O−メチルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸、およびD−3,4,5−トリ−O−フェニルカルバモイル−ミオ−イノシトール−1,2,6−三リン酸からなる群から選択される、請求項13〜15および24のいずれか1項の使用。
【請求項38】
化合物がそのナトリウム塩の形態にある、請求項36〜37のいずれか1項の使用。
【請求項39】
本発明の化合物が五ナトリウムD−3,4,5−トリ−O−ヘキサノイル−ミオ−イノシトール−1−2,6−三リン酸である、請求項38の使用。
【請求項40】
環式部分がD/L−リボース、D/L−アラビノース、D/L−キシロース、D/L−リキソース、D/L−アロース、D/L−アルトロース、D/L−グルコース、D/L−マンノース、D/L−グロース、D/L−イドース、D/L−ガラクトース、D/L−タロース、D/L−リブロース、D/L−キシルロース、D/L−プシコース、D/L−ソルボース、D/L−タガトースおよびD/L−フルクトース、またはその誘導体からなる群から選択される単糖または二糖である、請求項15および24〜33のいずれか1項の使用。
【請求項41】
化合物が単糖または二糖のリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルである、請求項40の使用。
【請求項42】
糖部分あたりのリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルの数が3個以上である、請求項41の使用。
【請求項43】
糖部分を含む化合物がマンノース−2,3,4−三リン酸、ガラクトース−2,3,4−三リン酸、フルクトース−2,3,4−三リン酸、アルトロース−2,3,4−三リン酸およびラムノース−2,3,4−三リン酸からなる群から選択される、請求項40〜42のいずれか1項の使用。
【請求項44】
化合物が、RおよびRが互いに独立にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルからなる群から選択されるR−6−O−R−α−D−マンノ−ピラノシド−2,3,4−三リン酸、R−6−O−R−α−D−ガラクト−ピラノシド−2,3,4−三リン酸、R−6−O−R−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−三リン酸およびR−6−O−R−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−三リン酸からなる群から選択される、請求項13〜15の使用。
【請求項45】
化合物がメチル−6−O−ブチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクトピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−グリコピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−0−ブチル−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−三リン酸、1,5−アンヒドロ−D−アラビニトール−2,3,4−三リン酸、1,5−アンヒドロキシリトール−2,3,4−三リン酸、1,2−O−エチレン−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−α−D−ラムノ−ピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−三リン酸、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−マンノピラノシド−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクトピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクト−ピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−ガラクトピラノシド−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチル−ホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−グルコピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−グルコピラノシド−2,3,4−トリス(カルボキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−グルコピラノシド−2,3,4−トリス(ヒドロキシ−メチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−α−D−アルトロピラノシド−2,3,4−トリス−(ヒドロキシル−メチルホスホン酸)、メチル−6−O−ブチル−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、メチル−6−O−ブチル−β−D−フルクトピラノシド−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルホスホン酸)およびメチル−6−O−ブチル−β−D−フルクト−ピラノシド−2,3,4−トリス−(ヒドロキシメチルホスホン酸)からなる群から選択される、請求項44の使用。
【請求項46】
化合物がヘテロ環式部分を含むリン酸エステル、ホスホン酸エステルまたはホスフィン酸エステルであり、該ヘテロ環式部分がアラビニトールであり、該アラビニトールが1,5−ジデオキシ−1,5−イミノアラビニトール−2,3,4−三リン酸、1,5−ジデオキシ−l,5−イミノアラビニトール−2,3,4−トリス−(カルボキシメチルリン酸)、1,5−ジデオキシ−l,5−イミノ−アラビニトール−2,3,4−トリス(カルボキシメチル−ホスホン酸)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノアラビニトール−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−N−(2−フェニルエチル)アラビニトール−2,3,4−三リン酸、1,5−ジデオキシ−l,5−イミノ−N−(2−フェニルエチル)−アラビニトール−2,3,4−トリス(カルボキシ−メチルリン酸)、1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−N−(2−フェニルエチル)−アラビニトール−2,3,4−トリス−(カルボキシ−メチルホスホン酸)、およびl,5−ジデオキシ−l,5−イミノ−N−(2−フェニル−エチル)アラビニトール−2,3,4−トリス(ヒドロキシメチルホスホン酸)からなる群から選択される、請求項13および14のいずれか1項の使用。
【請求項47】
悪液質が癌と関連する悪液質である、前述の請求項のいずれか1項の使用。
【請求項48】
悪液質の治療または予防において薬理学的に有効な1,2,6−D−ミオイノシトール三リン酸の五ナトリウム塩の用量、特に10mg〜60mg/kg体重の用量、またはそれに相当する有効性を有する請求項1〜46で用いた別の化合物の用量、および医薬的に許容される液体担体を含む医薬組成物。
【請求項49】
担体が水性担体、特に生理食塩水である、請求項48の組成物。
【請求項50】
悪液質の治療または予防において薬理学的に有効な1,2,6−D−ミオイノシトール三リン酸の用量、特に1,2,6−D−ミオイノシトール三リン酸の五ナトリウム塩の5mg〜80mgの用量、またはそれに相当する有効性を有する請求項1〜46で用いた別の化合物の用量を含み、密閉容器内で、寒冷沈降物の形態を含む結晶形態またはアモルファス形態にある医薬組成物。
【請求項51】
前述の用量が、安定化剤または安定化剤の混合物、特に1つ以上のグルコース、マンノース、塩化ナトリウム中に分散されている、請求項50の組成物。
【請求項52】
請求項1〜46で用いた化合物、鎮痛剤および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項53】
鎮痛剤がオピオイドアゴニストである、請求項51の組成物。
【請求項54】
オピオイドアゴニストがモルヒネ、ナロルフィン、ナルブフィン;レボルファノール、ラセモルファン、レバロルファン、デキストロメトルファン、シクロルファン、ブトルファノール、ペンタゾシン、フェナゾシン、シクラゾシン、ケタゾシン、ペチジン、メペリジン、ジフェノキシレート、アニレリジン、ピミノジン、フェンタニル、エトヘプタジン、アルファプロジン、ベータプロジン、1−メチル−4−フェニル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)、ロペラミド、スルフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、ロフェンタニル、メタドン、d−プロポキシフェン、イソメタドン、レボ−アルファ−アセチルメタドール(LAAM)、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルトリンドール;オリパビンおよびその誘導体、コデイン、ヘテロコデイン、モルフィノン、ジヒドロモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒノン、ジヒドロコデイノン、6−デスオキシモルヒネ、オキシモルフォン、オキシコドン、6−メチレン−ジヒドロモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、メトポン、アポモルヒネ、ノルモルヒネ、N−(2−フェニルエチル)−ノルモルヒネ、エトルフィン、ブプレノルフィン、スピラドリン、エナドリンまたはアシマドリンから選択される、請求項53の組成物。
【請求項55】
担体が水性担体である、請求項47〜54の組成物。
【請求項56】
(i) イノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステル;ならびに
(ii)脂肪乳剤、アミノ酸の液体供給源、および炭水化物からなる群から選択される少なくとも1つの栄養素、
を含む、悪液質を予防し、または重度の外傷と関連する異化状態を予防するための栄養組成物。
【請求項57】
非経口投与に適している請求項56の栄養組成物。
【請求項58】
経口または経腸投与に適している請求項56の栄養組成物。
【請求項59】
悪液質または重度の外傷と関連する異化状態を予防および/または治療するための栄養補助剤の製造用の、イノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステル;ならびに、脂肪乳剤、アミノ酸の液体供給源、および炭水化物からなる群から選択される少なくとも1つの栄養素の使用。
【請求項60】
イノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステルが、非経口投与に適した組成物に、その投与の直前に供給される、請求項59の使用。
【請求項61】
イノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステルが、非経口的に投与可能な炭水化物の溶液中に存在する、請求項59の使用。
【請求項62】
栄養補助剤が、5〜80mg/kg体重のイノシトール三リン酸もしくはそのエステル、または糖部分あたり3個以上のリン酸エステルを有する単糖もしくは二糖もしくはそのエステルを患者へ提供する、請求項59の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2010−539231(P2010−539231A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525782(P2010−525782)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051043
【国際公開番号】WO2009/038533
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510074988)ビオネリス・アクチボラゲット (1)
【氏名又は名称原語表記】BIONERIS AB
【Fターム(参考)】