説明

情報コード検証機

【課題】デコード成功率が許容される下限値未満となる不良コードの生成を抑制し得る情報コード検証機を提供する。
【解決手段】コード画像取得処理により撮像される撮像画像のうち情報コードが占めるコード画像に対して、当該コード画像を構成する複数の白色領域および黒色領域の明暗度合が各フィルタ処理により調整され、各フィルタ処理によりデコード成功率Sを向上させるように明暗度合が調整された調整済画像に対してデコード処理を施すことで、この調整済画像に含まれる情報コードがデコードされる。そして、デコード処理により1つの調整済画像について複数回デコードしたときのデコード成功率Sが第1閾値So以下に低下すると、許容される下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことが表示部46にて表示されることで報知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検証対象の表示面上に表示された情報コードの表示状態を検証する情報コード検証機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検証対象の表示面上に表示された情報コードの表示状態を検証する情報コード検証機に関する技術として、下記特許文献1に開示される二次元コード読取装置が知られている。この二次元コード読取装置は、二次元コードをセットした状態で撮像部で画像データを取得し復号部にて復号化処理を行う動作を複数回繰り返すことにより、二次元コードの読取動作が正常に行われているか否かを確認するための読取テストモードと、照明部で二次元コードを照明する状態で撮像部にて画像データを取得することにより、撮像部の視野範囲における照度分布を確認するための照度分布確認モードとの2つのモードを備えている。そして、二次元コード読取装置は、両モードを利用して、二次元コードの読取条件を読取試行の結果に基づいてより好ましい条件に設定するというフィードバックを繰り返すことにより、所望の読取条件の設定を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−054871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示される読取条件設定が採用される情報コード検証機では、検証対象の表示面に対して削る/溶かす/焦がす等の加工を施すことでその表示面上に表示された情報コード、例えばダイレクトマーキングにより生成される情報コードを検証する場合に、以下の問題が生じる。
【0005】
すなわち、ダイレクトマーキングにより生成される情報コードは、加工部分をレーザー加工等のように色をつけるか、ドットインパクト加工等のように穴を開け、加工部分に照明を当てることで周囲よりも明るくして、加工部分と非加工部分との間にコントラスト差を付けることで、撮像された情報コードのデコードを可能にしている。このため、加工具が徐々に摩耗等することで加工形状が徐々に変化すると、情報コードの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化することとなる。
【0006】
そうすると、上述のような情報コードが本来のあるべき印字状態(表示状態)から大きく変化したために、例えば、加工具の磨耗によって、表面を削る深さが少なくなる等によって、情報コードの認識率が下がり、デコードの失敗が検出される。加工具は、前記のように徐々に磨耗することから、デコードの失敗が検出された情報コードよりも前に生成した情報コードも本来の表示状態から大きく変化しており、コントラスト差が出にくい、即ち、デコード成功率が許容される下限値未満となる情報コード(不良コード)が多く生成されてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、デコード成功率が許容される下限値未満となる不良コードの生成を抑制し得る情報コード検証機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の情報コード検証機は、検証対象の表示面(R)上に加工を施すことで複数の明色系セル(Cw)および暗色系セル(Cb)を有するように表示される情報コード(C,C1,C2)の表示状態を検証する情報コード検証機(10)であって、前記表示面上に表示される前記情報コードを撮像する撮像手段(28)と、前記撮像手段により撮像される撮像画像のうち前記情報コードが占めるコード画像に対して、当該コード画像を構成する複数の明色領域および暗色領域の明暗度合を調整可能な画像調整手段(40)と、前記画像調整手段によりデコード成功率(S)を向上させるように明暗度合が調整された調整済画像に対してデコード処理を施すことでこの調整済画像に含まれる情報コードをデコードするデコード手段(40)と、前記デコード手段により1つの前記調整済画像について複数回デコードしたときのデコード成功率が許容される下限値よりも大きく設定される第1の閾値(So)以下に低下すると、前記下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされたことを報知する報知手段(46)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報コード検証機において、前記報知手段は、前記デコード手段によるデコード成功率が前記第1の閾値以下に低下したとき、その調整済画像の明暗度合を前記画像調整手段によりデコード成功率を向上させるように更なる調整を施した画像について複数回デコードしたときのデコード成功率が前記第1の閾値を超えると、当該更なる調整に関する情報を、デコード成功率が前記下限値未満となる不良コードの生成を抑制するための情報として報知することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の情報コード検証機において、前記コード画像のうち少なくとも1つの前記明色系セルに相当する明色領域および少なくとも1つの前記暗色系セルに相当する暗色領域のいずれか1つのセル領域を抽出可能な抽出手段(40)と、前記抽出手段により抽出される前記セル領域について前記明色領域および前記暗色領域のうちより広く占有する領域の占有率(P)が第2の閾値(Po)以下であるか否かについて判定する判定手段(40)と、を備え、前記報知手段は、前記デコード手段によるデコード成功率が前記第1の閾値以下に低下したとき、前記判定手段により前記占有率が前記第2の閾値以下であると判定されると、このセル領域を拡大した表示情報を、デコード成功率が前記下限値未満となる不良コードの生成を抑制するための情報として報知することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報コード検証機において、前記第1の閾値を所望の値に設定可能な閾値設定手段(40)を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報コード検証機において、前記報知手段は、前記デコード手段によるデコード成功率が前記第1の閾値よりも大きく設定される第3の閾値(St)以下に低下すると、前記下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされる可能性が高いことを報知することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、撮像手段により撮像される撮像画像のうち情報コードが占めるコード画像に対して、当該コード画像を構成する複数の明色領域および暗色領域の明暗度合を調整可能な画像調整手段が設けられており、この画像調整手段によりデコード成功率を向上させるように明暗度合が調整された調整済画像に対してデコード手段によりデコード処理を施すことで、この調整済画像に含まれる情報コードがデコードされる。そして、デコード手段により1つの調整済画像について複数回デコードしたときのデコード成功率が上記第1の閾値以下に低下すると、下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされたことが報知手段により報知される。
【0014】
これにより、情報コードの表示状態が徐々に変化したためにデコード成功率が上記第1の閾値以下に低下すると、下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされたことが報知手段により報知されるので、使用者は、不良コードが検証される前に、情報コードの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化していることを認識することができる。すなわち、使用者に対して、不良コードが生成されるまえに、表示面に加工を施すための加工設備のメンテナンス、例えば加工具の交換等が促されることとなるので、デコード成功率が低い不良コードの生成を抑制することができる。
【0015】
請求項2の発明では、デコード手段によるデコード成功率が第1の閾値以下に低下したとき、その調整済画像の明暗度合を画像調整手段によりデコード成功率を向上させるように更なる調整を施した画像について複数回デコードしたときのデコード成功率が第1の閾値を超えると、報知手段により、当該更なる調整に関する情報が不良コードの生成を抑制するための情報として報知される。
【0016】
更なる調整によりデコード成功率が第1の閾値を超えるように向上する場合、この更なる調整は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法に対応する。例えば、更なる調整として、暗色領域を膨張させるように明暗度合が調整されることでデコード成功率が第1の閾値を超えるように向上する場合、暗色領域に相当する部分を膨張させるように表示面に対する加工を変更することが、情報コードの表示状態の改善方法となる。
【0017】
このため、デコード成功率が第1の閾値以下に低下したとき、上記更なる調整に関する情報(例えば、暗色領域の膨張によりデコード成功率が向上したことに関する情報)を、不良コードの生成を抑制するための情報として報知することで、使用者は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法(例えば、暗色領域に相当する部分を膨張させるために加工時の加工力を増大させる方法)を認識することができる。
【0018】
請求項3の発明では、コード画像のうち明色領域および暗色領域のいずれか少なくとも1つのセル領域を抽出可能な抽出手段と、この抽出手段により抽出されるセル領域について明色領域および暗色領域のうちより広く占有する領域の占有率が第2の閾値以下であるか否かについて判定する判定手段と、が設けられている。そして、デコード手段によるデコード成功率が第1の閾値以下に低下したとき、判定手段により上記占有率が第2の閾値以下であると判定されると、報知手段により、このセル領域を拡大した表示情報が不良コードの生成を抑制するための情報として報知される。
【0019】
これにより、情報コードの表示状態が徐々に変化することで上記占有率が第2の閾値以下になりデコード成功率が上記第1の閾値以下に低下すると、下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされたことが報知されるとともに、セル領域を拡大した表示情報が、不良コードの生成を抑制するための情報として報知されるので、使用者は、不良コードがデコードされる前に、情報コードの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化していることを容易に視認することができる。
【0020】
特に、上記占有率が第2の閾値以下となる場合、すなわち、そのセル領域が明色系セルおよび暗色系セルのどちらであるかを容易に判断できないほど不明瞭である場合には、そのセル領域を拡大した表示情報が報知される。このため、使用者は、その表示情報を見ることで当該セル領域の不明瞭さを視認するので、この表示状態を改善するための具体的な方法、例えば、当該セル領域が暗色系セルであることから暗色領域に相当する部分を膨張させるために加工時の加工力を増大させる方法等を認識することができる。
【0021】
請求項4の発明では、上記第1の閾値を所望の値に設定可能な閾値設定手段を備えるため、使用環境等に応じて適切な閾値を容易に設定することができる。
【0022】
請求項5の発明では、デコード手段によるデコード成功率が上記第1の閾値よりも大きく設定される第3の閾値以下に低下すると、報知手段により、上記下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされる可能性が高いことが報知される。
【0023】
これにより、上記下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされる前に、その旨が報知手段により報知されるので、デコード成功率が低い不良コードの生成を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る情報コード検証機の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2(A)は、レーザー加工を施すことで検証対象の表示面に表示されたQRコードを示す説明図であり、図2(B)〜(G)は、図2(A)の黒セルを拡大して例示する拡大図である。
【図3】ドットインパクト加工を施すことで検証対象の表示面に表示されたQRコードを示す説明図である。
【図4】第1実施形態における検証処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図5】第1実施形態における検証処理の流れを例示するフローチャートの一部である。
【図6】各セル領域における占有率を説明するための説明図である。
【図7】平滑化フィルタ処理を説明するための説明図である。
【図8】膨張フィルタ処理を説明するための説明図である。
【図9】収縮フィルタ処理を説明するための説明図である。
【図10】第1実施形態の変形例におけるフィルタ処理を説明するための説明図である。
【図11】第2実施形態における検証処理の流れを例示するフローチャートである。
【図12】第2実施形態の変形例における検証処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の情報コード検証機を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る情報コード検証機10の電気的構成を概略的に示すブロック図である。図2(A)は、レーザー加工を施すことで検証対象の表示面Rに表示されたQRコードQ1を示す説明図であり、図2(B)〜(G)は、図2(A)の黒セルCbを拡大して例示する拡大図である。図3は、ドットインパクト加工を施すことで検証対象の表示面Rに表示されたQRコードQ2を示す説明図である。
【0026】
図1に示す情報コード検証機10は、検証対象の表示面Rに表示されたバーコードなどの一次元コードやQRコード(登録商標)などの二次元コードの情報コードCの表示状態(印字状態)を検証するための検証機である。ここで、本実施形態における検証とは、撮像した情報コードCのコード画像について所定のデコード処理を複数回施したときのデコード成功率が、許容される下限値以上であるか否かを確認することをいう。
【0027】
本実施形態では、検証対象の表示面R上に所定の加工を直接施すことで複数の明色系セルおよび暗色系セルを有するように表示される情報コード、すなわち、ダイレクトマーキングにより生成(印字)される情報コードCが検証される。検証される具体的な情報コードCとしては、例えば、図2(A)に例示するQRコードC1がある。このQRコードC1は、当該QRコードC1を構成する複数の白色セル(明色系セル)および黒色セル(暗色系セル)のうちの各黒色セル(図2(A)で符号Cbにて例示する)に対応する領域に対して、例えば、図2(B)〜(E)のいずれかに例示するように表示面Rを削る等のレーザー加工を施すことで形成される。
【0028】
また、検証される他の情報コードCとしては、例えば、図3に例示するQRコードC2がある。このQRコードC2は、その各黒色セルに対応するそれぞれ領域に対して、表示面Rを凹状に押しつぶすようにドットインパクト加工を施すことで形成される。ここで、図3中、符号Lbは黒色セルのサイズを示し、符号Lwは白色セルのサイズを示し、加工(印字)する際の圧力によって、彫り込みの深さ、すなわちLb/Lw比が異なる。彫り込みが深く、黒色セルが他の黒色セルと繋がるように加工される方が読み取りやすいこととなる。
【0029】
このように構成される情報コードCは、照明光が照射されることで加工部分と非加工部分との間に明色系セルと暗色系セルとを区別可能なコントラスト差を生じさせ、この状態を撮像することで、当該情報コードCを読み取るデコードが可能となる。
【0030】
次に、情報コード検証機10の回路20の電気的構成について説明する。
図1に示すように、回路20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0031】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図1では、情報コードCが表示面Rに表示された検証対象に向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0032】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、情報コードCまたは表示面Rに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。なお、受光センサ28は、特許請求の範囲に記載の「撮像手段」の一例に相当し得る。
【0033】
結像レンズ27は、外部から読取窓13を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光Lfが情報コードCにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aに情報コードCの像を結像させている。
【0034】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、表示部46、操作部47等から構成されている。このマイコン系は、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40およびメモリ35を中心として構成され、上述した光学系によって撮像された情報コードCの画像信号をハードウェア的及びソフトウェア的に信号処理し得るものである。
【0035】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、メモリ35に入力されると、画像データ蓄積領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0036】
メモリ35は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、上述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。またROMには、後述する検証処理、解析処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源21、受光センサ28等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0037】
制御回路40は、情報コード検証機10全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるもので、メモリ35とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有する。この制御回路40は、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置と接続可能に構成されており、本実施形態の場合、液晶表示器などからなる表示部46や、各種操作キーなどからなる操作部47等が制御可能に接続されている。
【0038】
次に、本実施形態にて実施される情報コードCに対する検証処理について説明する。
図2または図3にて例示するようなダイレクトマーキングにより次々に各検証対象の表示面Rに生成(印字)される情報コードCを順次検証する場合、これら各情報コードCを形成する加工具が徐々に摩耗等することで加工形状が徐々に変化すると、当該各情報コードCの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化してしまう。そうすると、上述のような情報コードCが本来のあるべき印字状態(表示状態)から大きく変化したために、情報コードCの認識率が下がりデコードの失敗が検出されるときには、このデコードの失敗が検出された情報コードCよりも前に生成した情報コードも本来の表示状態から大きく変化している場合が考えられる。この場合には、コントラスト差が出にくい、即ち、デコード成功率が許容される下限値未満となる情報コード(不良コード)が多く生成されることとなる。
【0039】
そこで、本実施形態では、以下に示す検証処理を実施することで、上述した加工形状の変化に起因する不良コードが検証される前に、情報コードCの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化していることを報知することで、不良コードの生成(印字)を抑制する。
以下、本実施形態に係る情報コード検証機10の制御回路40による検証処理について、図4および図5を用いて説明する。図4および図5は、第1実施形態における検証処理の流れを例示するフローチャートである。
【0040】
まず、電源ON状態になり所定の初期設定がなされた後に、表示面Rに情報コードCが印字(表示)された検証対象が情報コード検証機10に対して所定の位置まで送られてくると、図4のステップS101に示すコード画像処理がなされる。この処理では、照明光源21から照射される照明光Lfに応じて情報コードCにて反射する反射光Lrが受光センサ28にて受光されることで、受光センサ28から出力される受光信号に応じたコード画像が取得される。
【0041】
次に、ステップS103に示すデコード処理がなされる。この処理では、上記コード画像に対して、所定のデコード処理が複数回なされて、デコードが成功した成功率(以下、デコード成功率Sという)が算出される。そして、ステップS105に示す判定処理にて、デコード成功率Sが第1閾値So以下であるか否かについて判定される。ここで、第1閾値Soは、許容される下限値よりも大きく設定される閾値であって、例えば、97%に設定されている。なお、第1閾値Soは、特許請求の範囲に記載の「第1の閾値」の一例に相当し得る。
【0042】
そして、ダイレクトマーキング時の加工具が摩耗等せず、情報コードCの表示状態が本来の表示状態と変わらないことから、デコード成功率Sが第1閾値Soを超えた状態が維持されていると(S105でNo)、図5のステップS135に示すセル解析処理がなされる。この処理では、上記デコード処理時に実施されたコード画像を各セル領域ごとに分割するマッピング処理から得られた各セル領域について、白色領域(明色領域)および黒色領域(暗色領域)のうちより広く占有する領域の占有率Pが算出される。
【0043】
図6は、各セル領域における占有率Pを説明するための説明図である。
図6(A)に示すように、マッピング処理を実施することで、コード画像を各セル領域ごとに分割した後に、各セル領域を抽出する。抽出されたセル領域は、黒色領域Cbであれば、例えば、図6(B)〜(E)に例示するように抽出され、白色領域Cwであれば、例えば、図6(F)〜(I)に例示するように抽出される。そして、このように各セル領域が抽出されると、黒色領域であれば、そのセル領域のうち黒色部分が占有する占有率Pが算出され、白色領域であれば、そのセル領域のうち白色部分が占有する占有率Pが算出される。
【0044】
そして、ステップS137に示す表示処理がなされる。この処理では、後述する各フィルタ処理が実施されていない場合には、上記セル解析処理にて解析された各セル領域の印字状態やその占有率Pが表示部46に表示される。これにより、当該情報コード検証機10を使用する使用者(検証者)は、表示部46に表示される各セル領域の印字状態等を見ることで、情報コードCの印字状態を把握することができる。なお、表示部46に表示される各セル領域の印字状態は、例えば、上記占有率Pが小さなセル領域に限って表示してもよい。また、後述する各フィルタ処理が実施されていない場合には、表示部46に、各セル領域の印字状態を表示することなく、検証結果が良好である旨のみ表示してもよい。
【0045】
このように表示処理がなされると、ステップS139に示す判定処理にて、読取可能条件が設定されているか否かについて判定され、フィルタ処理の種類や、フィルタレベル等の読取可能条件が設定されていれば、Yesと判定される。続いて、ステップS141に示す判定処理にて、改善要求が必要であるか否かについて判定され、少なくとも後述する各フィルタ処理が実施されていない場合には、Noと判定され、後述する設定条件通知処理がなされる。
【0046】
一方、ダイレクトマーキング時の加工具が徐々に摩耗等することで加工形状が徐々に変化しており、情報コードCの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化していると、デコード成功率Sが徐々に低下する。そして、情報コードCの表示状態の変化が大きくなり、デコード成功率Sが第1閾値So以下になると、上述したステップS105にてYesと判定される。この場合、ステップS107に示す平滑化フィルタ処理がなされる。この平滑化フィルタ処理について、図7を用いて詳細に説明する。図7は、平滑化フィルタ処理を説明するための説明図であり、図7(A)は、平滑化フィルタ処理前のコード画像であり、図7(B)は図7(A)のコード画像に対してレベル1の平滑化フィルタ処理を施した状態を示し、図7(C)は図7(A)のコード画像に対してレベル3の平滑化フィルタ処理を施した状態を示し、図7(D)は図7(A)のコード画像に対してレベル5の平滑化フィルタ処理を施した状態を示す。
【0047】
平滑化フィルタ処理は、コード画像を全体的にぼかすように明暗度合が調整される画像処理であって、図7(A)〜(D)からわかるように、レベルが高くなるほどぼかす度合いが高くなるように処理される。このため、図7(A)に例示するように、セル領域の一部がきれているようなコード画像が取得される場合に、このコード画像に対して、図7(B)〜(D)に例示する所定のレベルの平滑化フィルタ処理を施すことで、各セル領域を適度にぼかして画像的につながるように画像処理がなされて、デコード成功率Sが向上することとなる。
【0048】
この平滑化フィルタ処理では、まずレベル1の平滑化フィルタ処理がなされたコード画像(以下、調整済画像ともいう)に対して、ステップS109に示すデコード処理が実施される。そして、デコード成功率Sが第1閾値So以下となる場合には(S111でYes)、更なる明暗度合の調整としてレベル2の平滑化フィルタ処理がなされたコード画像に対してデコード処理がなされ、全てのレベルの平滑化フィルタ処理が施されるまでステップS113にてNoと判定されて、上記平滑化フィルタ処理からの処理が繰り返される。なお、上記平滑化フィルタ処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「画像調整手段」の一例に相当し、平滑化フィルタ処理がなされたコード画像は、特許請求の範囲に記載の「調整済画像」の一例に相当し得る。また、上記デコード処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「デコード手段」の一例に相当し得る。
【0049】
このような繰り返し処理中に、あるレベルの平滑化フィルタ処理がなされたコード画像について、デコード成功率Sが第1閾値Soを超えると、ステップS111にてNoと判定される。そして、ステップS135に示すセル解析処理にて、各セル領域の占有率Pがそれぞれ算出されると、ステップS137に示す表示処理がなされる。この処理では、デコード成功率Sが第1閾値So未満の情報コードがデコードされたことと、デコード成功率Sが第1閾値So以上となったときの平滑化フィルタ処理のレベルと、上記セル解析処理にて解析された各セル領域の印字状態やその占有率Pとが表示部46に表示される。これにより、使用者は、下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことを認識することができる。
【0050】
このように表示処理がなされると、ステップS139に示す判定処理にて、読取可能条件が設定されているか否かについて判定され、フィルタ処理の種類や、フィルタレベル等の読取可能条件が設定されていれば、Yesと判定される。続いて、ステップS141に示す判定処理にて、改善要求が必要であるか否かについて判定され、改善要求が必要な程度の平滑化フィルタ処理、例えばレベル5の平滑化フィルタ処理が実施されている場合には、Yesと判定される。
【0051】
次に、ステップS149に示す報知処理がなされる。この処理では、不良コードの生成を抑制するための情報、すなわち、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法に関する情報が、表示部46に表示されることで報知される。この報知情報について、以下に説明する。
【0052】
上述したように更なる調整によりデコード成功率Sが第1閾値Soを超えるように向上する場合、この更なる調整は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法に対応する。例えば、更なる調整として、上述したようにコード画像を全体的にぼかすように明暗度合が調整されることでデコード成功率Sが第1閾値Soを超えるように向上する場合、セルの欠損部を少なくさせるように表示面Rに対する加工を変更すること、例えば、印字時のパワーを上げることや、タクトタイムを変更することが、情報コードの表示状態の改善方法となる。
【0053】
このため、デコード成功率Sが第1閾値So以下に低下したとき、上記更なる調整に関する情報を、不良コードの生成を抑制するための情報として報知することで、使用者は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法を認識することができる。なお、ステップS149の報知処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「報知手段」の一例に相当し得る。
【0054】
一方、ステップS141に示す判定処理において、改善要求が不要な程度の平滑化フィルタ処理、例えばレベル1の平滑化フィルタ処理が実施されている場合にはNoと判定されて、ステップS143に示す設定条件通知処理がなされる。この処理では、フィルタ処理においてデコード成功率Sが第1閾値Soを超えたときのフィルタレベルとともに、このフィルタレベルに設定条件を変更するか否かを判断するための情報が表示部46に表示される。
【0055】
続いて、ステップS145に示す判定処理にて、上記設定条件を変更する指示がなされたか否かについて判定される。そして、上記設定条件通知処理にて表示部46に表示された情報を見た使用者が、上記フィルタレベルへの設定条件の変更を所望することから、この変更を指示するように操作部47を操作すると、ステップS145にてYesと判定される。そして、ステップS147に示す条件設定処理がなされ、上記指示に応じたフィルタレベルへの設定条件の変更がなされて、撮像されたコード画像についての検証処理が終了する。なお、使用者が、上記フィルタレベルへの設定条件の変更を所望しないことから、この変更を指示するための操作が操作部47に対してなされないと(S145でNo)、上記条件設定処理がなされることなく、撮像されたコード画像についての検証処理が終了する。
【0056】
上述したステップS113に示す判定処理において、全てのレベルの平滑化フィルタ処理を施してもデコード成功率Sが第1閾値Soを超えない場合には(S113でYes)、ステップS115に示す膨張フィルタ処理がなされる。この膨張フィルタ処理について、図8を用いて詳細に説明する。図8は、膨張フィルタ処理を説明するための説明図であり、図8(A)は、膨張フィルタ処理前のコード画像であり、図8(B)は図8(A)のコード画像に対してレベル1の膨張フィルタ処理を施した状態を示し、図8(C)は図8(A)のコード画像に対してレベル3の膨張フィルタ処理を施した状態を示し、図8(D)は図8(A)のコード画像に対してレベル5の膨張フィルタ処理を施した状態を示す。
【0057】
膨張フィルタ処理は、コード画像を構成する各セル領域のうち各黒色領域を拡げるように明暗度合が調整される画像処理であって、図8(A)〜(D)からわかるように、レベルが高くなるほど各黒色領域を拡げる度合いが高くなるように処理される。このため、図8(A)に例示するように、各黒色セルが1つのドットで印字される情報コード(図3参照)や黒色セルが細く印字される情報コードを撮像したコード画像が取得される場合に、このコード画像に対して、図8(B)〜(D)に例示する所定のレベルの膨張フィルタ処理を施すことで、各黒色領域を適度に太らせるように画像処理がなされて、デコード成功率Sが向上することとなる。
【0058】
この膨張フィルタ処理では、まずレベル1の膨張フィルタ処理がなされたコード画像(以下、調整済画像ともいう)に対して、ステップS117に示すデコード処理が実施される。そして、デコード成功率Sが第1閾値So以下となる場合には(S119でYes)、更なる明暗度合の調整としてレベル2の膨張フィルタ処理がなされたコード画像に対してデコード処理がなされ、全てのレベルの膨張フィルタ処理が施されるまでステップS121にてNoと判定されて、上記膨張フィルタ処理からの処理が繰り返される。なお、上記膨張フィルタ処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「画像調整手段」の一例に相当し、膨張フィルタ処理がなされたコード画像は、特許請求の範囲に記載の「調整済画像」の一例に相当し得る。また、上記デコード処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「デコード手段」の一例に相当し得る。
【0059】
このような繰り返し処理中に、あるレベルの膨張フィルタ処理がなされたコード画像について、デコード成功率Sが第1閾値Soを超えると、ステップS119にてNoと判定される。そして、ステップS135に示すセル解析処理にて、各セル領域の占有率Pがそれぞれ算出されると、ステップS137に示す表示処理がなされる。この処理では、デコード成功率Sが第1閾値So未満の情報コードがデコードされたことと、デコード成功率Sが第1閾値So以上となったときの膨張フィルタ処理のレベルと、上記セル解析処理にて解析された各セル領域の印字状態やその占有率Pとが表示部46に表示される。これにより、使用者は、下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことを認識することができる。
【0060】
このように表示処理がなされると、ステップS139に示す判定処理にて、読取可能条件が設定されているか否かについて判定され、フィルタ処理の種類や、フィルタレベル等の読取可能条件が設定されていれば、Yesと判定される。続いて、ステップS141に示す判定処理にて、改善要求が必要であるか否かについて判定され、改善要求が必要な程度の膨張フィルタ処理、例えばレベル5の膨張フィルタ処理が実施されている場合には、Yesと判定される。
【0061】
次に、ステップS149に示す報知処理がなされ、不良コードの生成を抑制するための情報が、表示部46に表示されることで報知される。更なる調整として、上述したようにコード画像を構成する各セル領域のうち各黒色領域を拡げるように明暗度合が調整されることでデコード成功率Sが第1閾値Soを超えるように向上する場合、各黒色領域に相当する部分を膨張させるように表示面Rに対する加工を変更することが、情報コードの表示状態の改善方法となる。このような加工の変更としては、例えば、加工時の加工具にかける加工力(印字パワー)を増大させることや、加工時間(タクトタイム)を短縮することがあげられる。このような更なる調整に関する情報を、不良コードの生成を抑制するための情報として報知することで、使用者は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法を認識することができる。
【0062】
一方、ステップS141に示す判定処理において、改善要求が不要な程度の膨張フィルタ処理、例えばレベル1の膨張フィルタ処理が実施されている場合にはNoと判定されて、ステップS143に示す設定条件通知処理がなされる。この処理では、フィルタ処理においてデコード成功率Sが第1閾値Soを超えたときのフィルタレベルとともに、このフィルタレベルに設定条件を変更するか否かを判断するための情報が表示部46に表示される。
【0063】
続いて、ステップS145に示す判定処理にて、上記設定条件を変更する指示がなされたか否かについて判定される。そして、上記設定条件通知処理にて表示部46に表示された情報を見た使用者が、上記フィルタレベルへの設定条件の変更を所望することから、この変更を指示するように操作部47を操作すると、ステップS145にてYesと判定される。そして、ステップS147に示す条件設定処理がなされ、上記指示に応じたフィルタレベルへの設定条件の変更がなされて、撮像されたコード画像についての検証処理が終了する。
【0064】
上述したステップS121に示す判定処理において、全てのレベルの膨張フィルタ処理を施してもデコード成功率Sが第1閾値Soを超えない場合には(S121でYes)、図5のステップS123に示す収縮フィルタ処理がなされる。この収縮フィルタ処理について、図9を用いて詳細に説明する。図9は、収縮フィルタ処理を説明するための説明図であり、図9(A)は、収縮フィルタ処理前のコード画像であり、図9(B)は図9(A)のコード画像に対してレベル1の収縮フィルタ処理を施した状態を示し、図9(C)は図9(A)のコード画像に対してレベル3の収縮フィルタ処理を施した状態を示し、図9(D)は図9(A)のコード画像に対してレベル5の収縮フィルタ処理を施した状態を示す。
【0065】
収縮フィルタ処理は、コード画像を構成する各セル領域のうち各黒色領域を収縮させるように明暗度合が調整される画像処理であって、図9(A)〜(D)からわかるように、レベルが高くなるほど各黒色領域を収縮させる度合いが高くなるように処理される。このため、図9(A)に例示するように、太り気味の黒色領域から構成されるコード画像が取得される場合に、このコード画像に対して、図9(B)〜(D)に例示する所定のレベルの収縮フィルタ処理を施すことで、各黒色領域を適度に細らせるように画像処理がなされて、デコード成功率Sが向上することとなる。
【0066】
この収縮フィルタ処理では、まずレベル1の収縮フィルタ処理がなされたコード画像(以下、調整済画像ともいう)に対して、ステップS125に示すデコード処理が実施される。そして、デコード成功率Sが第1閾値So以下となる場合には(S127でYes)、更なる明暗度合の調整としてレベル2の収縮フィルタ処理がなされたコード画像に対してデコード処理がなされ、全てのレベルの収縮フィルタ処理が施されるまでステップS129にてNoと判定されて、上記収縮フィルタ処理からの処理が繰り返される。なお、上記収縮フィルタ処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「画像調整手段」の一例に相当し、収縮フィルタ処理がなされたコード画像は、特許請求の範囲に記載の「調整済画像」の一例に相当し得る。また、上記デコード処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「デコード手段」の一例に相当し得る。
【0067】
このような繰り返し処理中に、あるレベルの収縮フィルタ処理がなされたコード画像について、デコード成功率Sが第1閾値Soを超えると、ステップS127にてNoと判定される。そして、ステップS135に示すセル解析処理にて、各セル領域の占有率Pがそれぞれ算出されると、ステップS137に示す表示処理がなされる。この処理では、デコード成功率Sが第1閾値So未満の情報コードがデコードされたことと、デコード成功率Sが第1閾値So以上となったときの収縮フィルタ処理のレベルと、上記セル解析処理にて解析された各セル領域の印字状態やその占有率Pとが表示部46に表示される。これにより、使用者は、下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことを認識することができる。
【0068】
このように表示処理がなされると、ステップS139に示す判定処理にて、読取可能条件が設定されているか否かについて判定され、フィルタ処理の種類や、フィルタレベル等の読取可能条件が設定されていれば、Yesと判定される。続いて、ステップS141に示す判定処理にて、改善要求が必要であるか否かについて判定され、改善要求が必要な程度の収縮フィルタ処理、例えばレベル5の収縮フィルタ処理が実施されている場合には、Yesと判定される。
【0069】
次に、ステップS149に示す報知処理がなされ、不良コードの生成を抑制するための情報が、表示部46に表示されることで報知される。更なる調整として、上述したようにコード画像を構成する各セル領域のうち各黒色領域を収縮させるように明暗度合が調整されることでデコード成功率Sが第1閾値Soを超えるように向上する場合、各黒色領域に相当する部分を収縮させるように表示面Rに対する加工を変更することが、情報コードの表示状態の改善方法となる。このような加工の変更としては、例えば、加工時の加工具にかける加工力(印字パワー)を減少させることや、加工時間(タクトタイム)を長くすることがあげられる。このような更なる調整に関する情報を、不良コードの生成を抑制するための情報として報知することで、使用者は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法を認識することができる。
【0070】
一方、ステップS141に示す判定処理において、改善要求が不要な程度の収縮フィルタ処理、例えばレベル1の収縮フィルタ処理が実施されている場合にはNoと判定されて、ステップS143に示す設定条件通知処理がなされる。この処理では、フィルタ処理においてデコード成功率Sが第1閾値Soを超えたときのフィルタレベルとともに、このフィルタレベルに設定条件を変更するか否かを判断するための情報が表示部46に表示される。
【0071】
続いて、ステップS145に示す判定処理にて、上記設定条件を変更する指示がなされたか否かについて判定される。そして、上記設定条件通知処理にて表示部46に表示された情報を見た使用者が、上記フィルタレベルへの設定条件の変更を所望することから、この変更を指示するように操作部47を操作すると、ステップS145にてYesと判定される。そして、ステップS147に示す条件設定処理がなされ、上記指示に応じたフィルタレベルへの設定条件の変更がなされて、撮像されたコード画像についての検証処理が終了する。
【0072】
上述したステップS129に示す判定処理において、全てのレベルの収縮フィルタ処理を施してもデコード成功率Sが第1閾値Soを超えない場合には(S129でYes)、ステップS131に示すコード外形取得処理がなされる。この処理では、情報コードを撮像した画像データを表示部46に表示した状態で、使用者に対して、コード画像の四隅を示す情報を、操作部47等を介して入力させる。これにより、使用者からみたコード画像の外形を取得することができる。
【0073】
そして、ステップS133に示すマッピング処理がなされる。この処理では、コード外形が明らかにされたコード画像が、各セル領域ごとに分割される。具体的には、例えば、QRコードをマッピング処理する場合には、コード外形に基づいて、QRコードの位置特定パターンである各ファインダパターンを検出し、これら各ファインダパターンを利用して当該コード画像を各セル領域ごとに分割する。そして、上記ステップS135に示すセル解析処理以降の処理がなされる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る情報コード検証機10では、コード画像取得処理により撮像される撮像画像のうち情報コードが占めるコード画像に対して、当該コード画像を構成する複数の白色領域(明色領域)および黒色領域(暗色領域)の明暗度合が各フィルタ処理により調整され、各フィルタ処理によりデコード成功率Sを向上させるように明暗度合が調整された調整済画像に対してデコード処理を施すことで、この調整済画像に含まれる情報コードがデコードされる。そして、デコード処理により1つの調整済画像について複数回デコードしたときのデコード成功率Sが第1閾値So以下に低下すると、許容される下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことが表示部46にて表示されることで報知される。
【0075】
これにより、情報コードの表示状態が徐々に変化したためにデコード成功率Sが第1閾値So以下に低下すると、許容される下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことが表示部46にて表示されることで報知されるので、使用者は、不良コードが検証される前に、情報コードの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化していることを認識することができる。すなわち、使用者に対して、不良コードが生成されるまえに、表示面Rに加工を施すための加工設備のメンテナンス、例えば加工具の交換等が促されることとなるので、デコード成功率が低い不良コードの生成を抑制することができる。
【0076】
また、デコード処理によるデコード成功率Sが第1閾値So以下に低下したとき、フィルタ処理がなされたコード画像の明暗度合を各フィルタ処理(画像調整手段)によりデコード成功率Sを向上させるように更なる調整を施した画像について複数回デコードしたときのデコード成功率Sが第1閾値Soを超えると、報知処理により、当該更なる調整に関する情報が不良コードの生成を抑制するための情報として表示部46にて表示されることで報知される。
【0077】
このように、デコード成功率Sが第1閾値So以下に低下したとき、上記更なる調整に関する情報(例えば、黒色領域の膨張によりデコード成功率Sが向上したことに関する情報)を、不良コードの生成を抑制するための情報として報知することで、使用者は、情報コードの表示状態を改善するための具体的な方法(例えば、黒色領域に相当する部分を膨張させるために加工時の加工力を増大させる方法)を認識することができる。
【0078】
図10は、第1実施形態の変形例におけるフィルタ処理を説明するための説明図である。
上記第1実施形態の変形例として、平滑化フィルタ処理、膨張フィルタ処理および収縮フィルタ処理の各フィルタ処理は、単独で用いられることに限らず、2つ以上のフィルタ処理を組み合わせて用いられてもよい。
【0079】
具体的には、図10に例示するように、フィルタ処理前の図10(A)に示す画像に対して、図10(B)〜(E)に示すように順次収縮フィルタ処理を実施した後、図10(F)〜(I)に示すように順次膨張フィルタ処理を実施することができる。このように、2つ以上のフィルタ処理を組み合わせて実施することで、コード画像に応じたフィルタ処理を実施することができる。
【0080】
また、コード画像に対してフィルタ処理を実施するとき、当該コード画像のうち一部の領域について所定のフィルタ処理を実施するとともに、他の領域について異なるフィルタ処理を実施してもよい。
【0081】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る情報コード検証機10について図11を参照して説明する。図11は、第2実施形態における検証処理の流れを例示するフローチャートである。
本第2実施形態に係る情報コード検証機10では、上述した検証処理について図4および図5に示すフローチャートに代えて図11に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る情報コード検証機と主に異なる。したがって、上述した第1実施形態の情報コード検証機と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0082】
以下、本第2実施形態における検証処理について、図11のフローチャートを用いて説明する。
上記第1実施形態における検証処理と同様に、図11に示すステップS103に示すデコード処理がなされ、デコード成功率Sが第1閾値So以下であることから、ステップS105に示す判定処理にてYesと判定されると、ステップS201に示す抽出処理がなされる。この処理では、上記デコード処理時に実施されたコード画像を各セル領域ごとに分割するマッピング処理に応じて各セル領域が抽出される。そして、ステップS203に示す占有率算出処理がなされ、各セル領域における占有率Pがそれぞれ算出される(図6参照)。
【0083】
次に、ステップS205に示す判定処理にて、算出された各占有率Pのうち最小の占有率(以下、最小占有率Psという)が、第2閾値Po以下であるか否かについて判定される。なお、第2閾値Poは、本実施形態では、80%に設定されているが、これに限らず、使用環境等に応じて適切に設定されてもよい。
【0084】
そして、最小占有率Psが第2閾値Po以下でない場合には(S205でNo)、後述する報知処理を実施することなく撮像されたコード画像についての検証処理が終了する。一方、最小占有率Psが第2閾値Po以下になると(S205でYes)、ステップS207に示す報知処理がなされ、この最小占有率Psに対応するセル領域を拡大した表示情報が不良コードの生成を抑制するための情報として、表示部46に表示されることで報知される。なお、ステップS203の占有率算出処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「抽出手段」の一例に相当し、ステップS205の判定処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「判定手段」の一例に相当し得る。また、第2閾値Poは、特許請求の範囲に記載の「第2の閾値」の一例に相当し得る。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係る情報コード検証機10では、コード画像のうち白色領域および黒色領域を抽出する抽出処理と、この抽出処理により抽出されるセル領域について最小占有率Psが第2閾値Po以下であるか否かについて判定する判定処理と、が設けられている。そして、デコード処理によるデコード成功率Sが第1閾値So以下に低下したとき、判定処理により最小占有率Psが第2閾値Po以下であると判定されると、報知処理により、このセル領域を拡大した表示情報が不良コードの生成を抑制するための情報として報知される。
【0086】
これにより、情報コードの表示状態が徐々に変化することで最小占有率Psが第2閾値Po以下になりデコード成功率Sが第1閾値So以下に低下すると、許容される下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされたことが報知されるとともに、セル領域を拡大した表示情報が、不良コードの生成を抑制するための情報として報知されるので、使用者は、不良コードがデコードされる前に、情報コードの表示状態が本来の表示状態から徐々に変化していることを容易に視認することができる。
【0087】
特に、最小占有率Psが第2閾値Po以下となる場合、すなわち、そのセル領域が白色セルおよび黒色セルのどちらであるかを容易に判断できないほど不明瞭である場合には、そのセル領域を拡大した表示情報が報知される。このため、使用者は、その表示情報を見ることで当該セル領域の不明瞭さを視認するので、この表示状態を改善するための具体的な方法、例えば、当該セル領域が黒色セルであることから黒色領域に相当する部分を膨張させるために加工時の加工力を増加させる方法等を認識することができる。
【0088】
なお、ステップS205の判定処理では、最小占有率Psと第2閾値Poとを比較することに限らず、全てのセル領域での占有率Pと第2閾値Poとを比較して、占有率Pが第2閾値Po以下となるセル領域のうち少なくとも一部のセル領域を拡大表示してもよいし、一部のセル領域での占有率Pと第2閾値Poとを比較して、占有率Pが第2閾値Po以下となるセル領域のうち少なくとも一部のセル領域を拡大表示してもよい。
【0089】
図12は、上記第2実施形態の変形例における検証処理の流れを例示するフローチャートである。
上記第2実施形態の変形例として、図12に示すフローチャートに基づいて検証処理を実施してもよい。
具体的には、上記第2実施形態と同様に図12のステップS103に示すデコード処理がなされると、ステップS104に示す判定処理にて、ステップS103のデコード処理によるデコード成功率Sが第1閾値Soよりも大きく設定される第3閾値St以下であるか否かについて判定される。
【0090】
ここで、第3閾値Stは、例えば、99%に設定されており、デコード成功率Sが第3閾値St以下でなければ、ステップS104にてNoと判定されて、ステップS105の判定処理以降の処理がなされる。一方、デコード成功率Sが第3閾値St以下になる場合(S104でYes)、すなわち、デコード成功率Sが第1閾値So以下とはならないものの、後に、上述した許容される下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされる可能性が高い場合には、ステップS104aに示す事前報知処理がなされる。この処理では、これから後に検証される情報コードについて、上述した許容される下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされる可能性が高いことが表示部46に表示されて報知される。
【0091】
これにより、上記下限値に近いデコード成功率Sの情報コードがデコードされる前に、その旨が表示部46に表示されて報知されるので、デコード成功率Sが低い不良コードの生成を確実に抑制することができる。
なお、上述したステップS104に示す判定処理およびステップs104aに示す事前報知処理は、上記第1実施形態においてステップS103に示すデコード処理の後に実施してもよい。
【0092】
なお、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)上記各実施形態では、複数の黒色セルおよび白色セルからなるQRコードを検証しているが、これに限らず、複数の暗色系セルおよび明色系セルからなるQRコードや他のコード種別の情報コード、例えば、バーコードやデータマトリックスコード、マキシコード等を検証してもよい。
【0093】
(2)上述した検証処理では、上記各閾値(第1閾値So,第2閾値Po,第3閾値St)を所望の値に設定するための設定処理を実施してもよい。これにより、上記各閾値として、使用環境等に応じて適切な閾値を容易に設定することができる。なお、この設定処理を実行する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「閾値設定手段」の一例に相当し得る。
【符号の説明】
【0094】
10…情報コード検証機
28…受光センサ(撮像手段)
40…制御回路(画像調整手段,デコード手段,抽出手段,判定手段,閾値設定手段)
46…表示部(報知手段)
C…情報コード
C1,C2…QRコード(情報コード)
Cb…黒色セル(暗色系セル)
Cw…白色セル(明色系セル)
R…表示面
P…占有率
Ps…最小占有率
Po…第2閾値(第2の閾値)
S…デコード成功率
So…第1閾値(第1の閾値)
St…第3閾値(第3の閾値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検証対象の表示面上に加工を施すことで複数の明色系セルおよび暗色系セルを有するように表示される情報コードの表示状態を検証する情報コード検証機であって、
前記表示面上に表示される前記情報コードを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像される撮像画像のうち前記情報コードが占めるコード画像に対して、当該コード画像を構成する複数の明色領域および暗色領域の明暗度合を調整可能な画像調整手段と、
前記画像調整手段によりデコード成功率を向上させるように明暗度合が調整された調整済画像に対してデコード処理を施すことでこの調整済画像に含まれる情報コードをデコードするデコード手段と、
前記デコード手段により1つの前記調整済画像について複数回デコードしたときのデコード成功率が許容される下限値よりも大きく設定される第1の閾値以下に低下すると、前記下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされたことを報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする情報コード検証機。
【請求項2】
前記報知手段は、
前記デコード手段によるデコード成功率が前記第1の閾値以下に低下したとき、その調整済画像の明暗度合を前記画像調整手段によりデコード成功率を向上させるように更なる調整を施した画像について複数回デコードしたときのデコード成功率が前記第1の閾値を超えると、当該更なる調整に関する情報を、デコード成功率が前記下限値未満となる不良コードの生成を抑制するための情報として報知することを特徴とする請求項1に記載の情報コード検証機。
【請求項3】
前記コード画像のうち少なくとも1つの前記明色系セルに相当する明色領域および少なくとも1つの前記暗色系セルに相当する暗色領域のいずれか1つのセル領域を抽出可能な抽出手段と、
前記抽出手段により抽出される前記セル領域について前記明色領域および前記暗色領域のうちより広く占有する領域の占有率が第2の閾値以下であるか否かについて判定する判定手段と、
を備え、
前記報知手段は、
前記デコード手段によるデコード成功率が前記第1の閾値以下に低下したとき、前記判定手段により前記占有率が前記第2の閾値以下であると判定されると、このセル領域を拡大した表示情報を、デコード成功率が前記下限値未満となる不良コードの生成を抑制するための情報として報知することを特徴とする請求項1に記載の情報コード検証機。
【請求項4】
前記第1の閾値を所望の値に設定可能な閾値設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報コード検証機。
【請求項5】
前記報知手段は、前記デコード手段によるデコード成功率が前記第1の閾値よりも大きく設定される第3の閾値以下に低下すると、前記下限値に近いデコード成功率の情報コードがデコードされる可能性が高いことを報知することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報コード検証機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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