説明

情報コード読取り装置

【課題】 情報コードの読取りが行われる状態を包括的に推定し、推定した状態に応じて制御条件を適切に切り替えることが可能な情報コード読取り装置を提供する。
【解決手段】 情報コード読取装置の制御装置は、バーコードの読取りが開始された場合に、傾斜センサにより検出される装置の傾き角度に基づいて(ステップS3)バーコードの読取りが行なわれている状態を推定し(ステップS4,S9,S12)、推定した読取り状態に応じてバーコードの読取り制御条件を切替え設定する(ステップS5,S10)。具体的には、読取り制御条件の内、画像信号の取込み制御に関する条件として、「露光時間」,「アンプの利得」,「焦点距離」,「照明の明るさ」を切替え設定すると共に、「画像信号の処理に関する条件」として「2値化アルゴリズム」,「デコードするコード種」を切替え設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報コードを光学的に読取るように構成される情報コード読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードなどの情報コードには、例えばダンボールに印刷されることが多いITF(Interleaved Two of Five)や、伝票などに印刷されるCode39やCode128,NW7等のように様々な種類がある。ITFは、ラベルサイズが比較的大きく(幅11cm〜20cm程度)、バー/スペース幅も大きく低密度である(0.635mm〜1.2mm程度)。また、情報コード読取り装置によって読取りが行われる場合は、図8に示すように印刷面から比較的離れた状態で読取りが行われることが多い。そして、印刷面がダンボールであるからPCS(Print Contrast Signal)が悪く、読取りが行われる環境は、例えば倉庫などのように比較的暗い場所が多い。
【0003】
一方、Code39などは、ラベルサイズが比較的小さく(幅3cm〜5cm程度)バー/スペース幅も高密度であり(0.15mm〜0.33mm程度)。伝票ラベルなどに印刷されている。そして、読取りが行われる場合は、図9に示すように印刷面に近接した状態で読取りが行われることが多い。また、印刷面は一般に上質紙であることが多くPCSは良好であり、読取りが行われる環境は例えばオフィスなどのように比較的明るい場所が多い。
【0004】
このように、情報コードはその種類に応じて仕様や読取りが行われる環境が異なるため、1台の読取り装置によってそれらの全てをスムーズに読取ることは困難である。斯様な問題に対処するため、従来、例えば情報コードの記録面までの距離を赤外線センサなどで測定し、測定した距離に応じて受光焦点距離を変化させるような技術が存在する。
尚、出願人は、上記従来技術に対応する先行技術文献として提示するのに適切なものを発見することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では可変設定される制御条件が極めて限定的であるため、その他の制御条件についてはやはりユーザが設定を行う必要があり、利便性が良好であると言えるものではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、読取り装置によって情報コードの読取りが行われる状態を包括的に推定し、推定した状態に応じて制御条件を適切に切り替えることが可能な情報コード読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、情報コードの読取りが開始された場合に、傾き角度検出手段により検出される装置の傾き角度に基づいて情報コードの読取りが行なわれている状態を推定し、推定した読取り状態に応じて情報コードの読取り制御条件を切替え設定する。即ち、読取りが開始された時点における情報コード読取り装置の傾きは、どのような情報コードをどのような状態で読取るか、ということに大きな関連性を有している。従って、前記傾き角度に基づいて読取り状態を推定し、読取り制御条件を設定すれば、実際に行われる読取り状態に対して妥当性がある制御条件の設定を行うことができる。
【0007】
請求項2記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、読取り制御条件として、前記画像信号の取込み制御に関する条件を切替え設定する。ここで言う「画像信号の取込み制御」とは、「読取り制御条件」の下位概念として、情報コードを読取るために画像信号を二値化してデジタル的に取り扱う以前に、アナログ的に取り扱う段階で行なう制御を示す。そして、この「取込み制御に関する条件」を切替え設定することで、推定した読取り状態に適合するように画像信号のアナログ処理を行なうことができる。
【0008】
請求項3記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、画像信号の取込み制御に関する条件として、受光手段に対する露光時間を切替え設定する。即ち、情報コード読取り装置の傾き状態により、読取りが行なわれる態様から、読取り対象との距離や周囲環境の明るさ等を推定できる。従って、例えば読取り対象との距離が比較的長いと推定される場合や、周囲環境が比較的暗いと推定される場合などには露光時間が相対的に長くなるように切替え設定すれば、推定した読取り状態に応じた条件設定を行うことができる。
【0009】
請求項4記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、画像信号の取込み制御に関する条件として、受光手段によって出力される画像信号を増幅する増幅手段の増幅率を切替え設定する。例えば、請求項3で述べたように、読取り対象との距離が比較的長い、或いは周囲環境が比較的暗いと推定される場合でも、画像信号の増幅率をより大きくすれば読取り感度を向上させることができ、上記読取り状態に対応して画像信号をより高いレベルで取り込むことができる。
【0010】
請求項5記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、画像信号の取込み制御に関する条件として、情報コードが記録されている記録面に照明光を投射する照明手段の光度又は指向性,前記記録面からの反射光を受光手段の受光面に結像させる結像手段の焦点距離の内、何れか1つ以上を切替え設定する。斯様に構成すれば、記録面に投射される照明光の状態を変化させたり、装置と記録面との距離の長さに応じて結像手段の焦点距離を設定することができる。
【0011】
請求項6記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、読取り制御条件として、記録面に対して読取り基準位置を指示するためのマーカの点灯又は消灯を切替え設定する。即ち、情報コード読取り装置の傾き状態より推定される読取り状態によっては、マーカ光により基準位置を指示せずとも読取りを容易に行うことが可能な場合もある。従って、推定した読取り状態に応じてマーカ光の要否を適切に設定し、不要な場合に点灯することを回避できる。
【0012】
請求項7記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、画像信号の処理に関する条件を切替え設定する。ここで言う「画像信号の処理」とは、「読取り制御条件」の下位概念として、情報コードを読取るために画像信号を二値化した以降に、デジタル的に取り扱う処理を示す。そして、この「画像信号の処理に関する条件」を切替え設定することで、推定した読取り状態に適合するように画像信号のデジタル処理を行なうことができる。
【0013】
請求項8記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、画像信号の処理に関する条件として、受光手段によって出力される画像信号を二値化する二値化手段の二値化アルゴリズムを切替え設定する。即ち、情報コードの種類には、コードサイズが大きくバー幅が比較的太いものやセルサイズが大きいもの、コードサイズが小さくバー幅が比較的細いものやセルサイズが小さいものが存在する。そして、前者の場合、二値化アルゴリズムについては分解能が低くても二値化が可能であり、後者の場合は比較的高い分解能が必要となる。従って、推定された読取り状態について適合すると想定される情報コードの種類に応じて二値化アルゴリズムを切替え設定すれば、二値化処理を適切な分解能及び処理速度で実行することができる。
【0014】
請求項9記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、画像信号の処理に関する条件として、画像信号の復号処理を行なう復号手段における情報コードの種類に応じた復号アルゴリズムを切替え設定する。即ち、請求項8で述べた場合と同様に、推定された読取り状態について適合すると想定される情報コードの種類に応じて復号アルゴリズムを切替え設定すれば、情報コードの復号を迅速に行うことができる。
【0015】
請求項10記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、最初に設定した読取り制御条件による情報コードの読取りが失敗した場合は、読取り制御条件を切替えて再試行するので、読取り状態の推定が不適切であった場合でも、情報コードの読取りを確実に行うことができる。
【0016】
請求項11記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、推定した読取り状態の夫々について行った情報コードの読取り結果の成否に基づき、再試行する読取り制御条件の優先順位を設定する。即ち、情報コード読取り装置をユーザが実際に使用する条件に応じて、読取りが行われる場合の装置の傾き状態に対応する読取り制御条件はある程度定まるようになる。従って、実際の読取り結果の成否に基づき、再試行する読取り制御条件の優先順位を設定すれば、読取りが早期に成功する確率を高めて読取りを迅速に行うことができる。
【0017】
請求項12記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、推定した読取り状態が情報コードの読取りに不適切であると判断すると、マーカを消灯させるように制御する。即ち、情報コード読取り装置の傾き状態によっては、情報コードの読取りが行われる可能性が極めて低い場合がある。そのような場合にマーカ光を投射するのは無意味であるから、マーカを消灯させることで電力の無駄な消費を抑制することができる。
【0018】
請求項13記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、本体を光軸照射口が一端に位置する側面から見た場合に検出される傾き角度θが、マーカの光軸が仰角方向において45度以上で且つ180度以下を示す角度範囲内にある場合、及び/又は、本体を光軸照射口が位置する正面から見た場合に検出される傾き角度φが、前記マーカの光軸が仰角方向において45度以上で且つ135度以下を示す角度範囲内にある場合に読取り状態が不適切であると判断する。即ち、情報コード読取り装置より投射されるマーカの光軸が上記角度範囲にある場合は、実際に情報コードの読取りが行われる可能性が極めて低いと想定されるので、上記角度範囲にある場合にマーカを消灯させれば電力の無駄な消費をより確実に抑制することができる。
【0019】
請求項14記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、ユーザが、傾き角度検出手段により検出される傾き角度に基づく制御を有効化,無効化するための傾き角度制御設定手段における設定状態に応じて、請求項1乃至13の何れかについて行う制御を有効化,無効化する。即ち、実際にユーザが使用する状況によっては、読取り対象とする情報コードの種類が予め確定している場合もある。そのような場合にまで本発明の自動設定制御を敢えて行う必要性は低いので、ユーザの意思に応じて傾き角度に基づく制御を有効化,無効化することで利便性を向上させることができる。
【0020】
請求項15記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、ユーザが角度範囲設定手段により設定した傾き角度範囲に応じて読取り制御条件を切り替える。即ち、ユーザ夫々の使用状態に対応して、実際に読取り制御条件を切り替えるのに適切な角度範囲は異なる場合がある。従って、ユーザが夫々の実情に応じて適切な角度範囲を設定すれば、より実際の読取り状態に適合するように制御条件を切替えることができ、利便性を向上させることができる。
【0021】
請求項16記載の情報コード読取り装置によれば、制御手段は、設定した読取り制御条件の情報を表示手段に表示させる。即ち、本発明のように、装置の傾き状態に応じて情報コードの読取り状態を推定すると、実際のユーザの使用形態とは必ずしも一致しない場合がある。従って、設定した読取り制御条件の情報を表示手段に表示させてユーザに報知すれば、自動的に設定された制御条件が、ユーザが実際に行おうとしている読取り状態に一致しているかどうかをユーザに確認させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施例)
以下、本発明を情報コードたるバーコードの読取りを行う読取装置に適用した場合の第1実施例について図1乃至図5を参照して説明する。図5は、バーコード読取装置の電気的構成を概略的に示している。このバーコード読取装置1は、読取対象に印字されたバーコードを光学的に読取るためのもので、バッテリ2,電源回路3,制御装置(制御手段,二値化手段,復号手段)4,メモリ5,キー群6,照明駆動回路7,照明(照明手段)8,レンズ焦点駆動回路9,結像レンズ10,センサ駆動回路11,光学的センサ(受光手段)12,波形整形部(増幅手段)13,データ入出力部14を備えている。
【0023】
電源回路3は、バッテリ2より供給される電源を安定化させてバーコード読取装置1の全構成に供給するようになっている。制御装置4は、例えばマイクロコンピュータにより構成されており、メモリ5に記憶されている制御用プログラムに基づいてバーコード読取装置1の全体を制御するようになっている。キー群6は、例えばトリガーキーや数字キー等の各種操作設定用キーが設けられて構成されており、ユーザ等によりトリガーキーが操作されると、制御装置4の制御に基づいてバーコード読取装置1が処理動作を開始する。
照明駆動回路7は、制御装置4の制御に基づいて照明8に駆動信号を与える。照明8は、例えばLED等により構成されており、照明駆動回路7から駆動信号が与えられると、本体の先端に位置する照射口を介して読取対象に光を照射する。レンズ焦点駆動回路9は、結像レンズ10を移動させてその焦点を調整するために使用される。
【0024】
結像レンズ10は、照明8から読取対象に照射され反射した光を結像し光学的センサ12に与える。光学的センサ12は例えばエリアセンサとも称されており、例えばCCD等の受光素子が二次元平面状に配列され、対応する受光素子やその範囲(取込対象エリア)を設定することで全画素信号を独立に取込むことができるように構成されており、読取対象に反射した光を受光して光電変換する。この光学的センサ12において露光するための露光時間は、制御装置4が例えば図示しないシャッタ機構の開閉時間を制御することで設定可能に構成されている。
【0025】
制御装置4がセンサ駆動回路11を介して光学的センサ12を駆動制御すると、光学的センサ12は光電変換した信号を波形整形部13に出力するようになっている。センサ駆動回路11は、光学的センサ12の受光素子から画素信号を出力させるためのクロックを光学的センサ12に与える。波形整形部13は、光学的センサ12により光電変換された信号を増幅して輝度レベル信号を制御装置4に与えるようになっている。そして、波形整形部13の増幅率は、制御装置4により設定可能に構成されている。
【0026】
制御装置4は、波形整形部13より与えられる輝度レベル信号を所定のしきい値と比較することで二値化して「1,0」のデジタルデータに変換すると、そのデータに何れかのバーコードの種類に対応する復号アルゴリズムを適用して復号処理(デコード)を行なう。データ入出力部14は、通信用のインターフェイス回路であり、制御装置4と外部装置(図示せず)との間でデータを入出力可能にしている。
また、バーコード読取装置1は、マーカ駆動回路15及びマーカ16を備えており、制御装置4は、情報コードの読取りを行う場合にマーカ駆動回路15を介してマーカ16を駆動することで、読取り位置を指示するためのマーカ光を読取り対象に照射する(即ち、光学的表示を行う)ようになっている。
【0027】
更に、本実施例のバーコード読取装置1は、傾斜センサ(傾き角度検出手段)17,増幅回路18,A/Dコンバータ19を備えている。傾斜センサ17は、水平(基準角度)に対するバーコード読取装置1の傾き角度を検出するセンサであり、その出力信号は、増幅回路18により増幅されるとA/Dコンバータ19を介してA/D変換され、制御装置4に与えられる。そして、制御装置4は、傾斜センサ17により得られるバーコード読取装置1の傾き角度に基づいて、以下に述べる制御を行うようになっている。尚、表示部(表示手段)20は例えばLCD(Liquid Crystal Display)などで構成されており、制御装置4が、バーコード読取装置1が読取ったバーコードの情報や、読取り制御に関する各種情報を画面表示させるように制御する。
【0028】
次に、本実施例の作用について図1乃至図4も参照して説明する。図1は、バーコード読取装置1の制御装置4によって行われる制御内容を、本発明の要旨に係る部分について示すフローチャートである。キー群6におけるトリガスイッチが操作されて読取り処理がスタートすると、制御装置4は、先ず、以下に説明する「傾き角度制御」を、ユーザが有効とするように設定しているか否かを判断する(ステップS1)。
即ち、キー群6を介して行う操作により、ユーザは「傾き角度制御」の有効/無効を設定することが可能となっている(傾き角度制御設定手段)。そして、「傾き角度制御」が無効に設定されている場合(ステップS1,「NO」)、制御装置4は、通常通りの読取り制御を行うと(ステップS2)、マーカ16及び照明8を点灯(ON)させる(ステップS20)。それから、ステップS5aに移行して、設定した読取り制御条件に関する情報を表示部20に表示させる。
【0029】
一方、「傾き角度制御」が有効に設定されていると(ステップS1,「YES」)、制御装置4は、傾斜センサ17によって得られる傾き角度θを取得する(ステップS3)。尚、ここでの傾き角度θは、バーコード読取装置1が読取りを行う場合に、その本体を光軸の照射口が左端に位置する側面から見て、照明8より照射される照明光の光軸が基準水平(0度)に対してなす角度として得られるようになっている。
続くステップS4において、制御装置4は、傾き角度θが−90度≦θ<−20度の範囲内にあるか否かを判断し、当該範囲内にある場合は(「YES」)バーコード読取装置1の読取り制御条件を「近接読取り」に対応する条件に設定する(ステップS5)。また、傾き角度θが−90度≦θ<−20度の範囲内にない場合は(「NO」)ステップS9に移行して、傾き角度θが−20度≦θ<45度の範囲内にあるか否かを判断し、当該範囲内にある場合は(「YES」)バーコード読取装置1の読取り制御条件を「遠隔読取り」に対応する条件に設定する(ステップS10)。
【0030】
ここで、図2には、傾き角度θの範囲と読取り制御条件との対応関係を示す。即ち、「近接読取り」とは、図9に示したように、例えば机上に載置されたような状態にある伝票ラベルとしてのバーコードを、バーコード読取装置1が下向きとなる(俯角方向を「−」とする)光軸で読取る場合を想定している。つまり、傾き角度θが−90度≦θ<−20度の範囲内であれば、バーコード読取装置1の本体は水平に近い状態にあるから「近接読取り」が行われることを想定する。
また、「遠隔読取り」とは、図8に示したように、ダンボールに貼り付けられたバーコードを、概ね横向きとなる光軸でバーコード読取装置1が読取る場合を想定している。つまり、傾き角度θが−20度≦θ<45度の範囲内であれば、バーコード読取装置1の本体は垂直に近い状態にあるから「遠隔読取り」が行われることを想定する。
【0031】
そして、ステップS5,S10では、夫々の読取り制御条件に応じた設定を行うが、夫々の制御条件は、図3に示している。即ち、「近接読取り」の場合は、読取り環境が比較的良好であるから、光学的センサ12の露光時間を短く、波形整形部13のアンプ利得を小さく設定し、照明8の明るさもそれほど必要ではないと想定されるから光度を抑え目にする。そして、読取り対象との距離は比較的短いと想定されるので、結像レンズ10の焦点距離を短く設定する。
更に、この場合、読取り対象となるコード種類はコードサイズが比較的小さいものが多いことから、2値化アルゴリズムには、細いバー/スペースに対応した分解能が高いものを選択する。また、読取り対象となるコード種類は比較的多いため、優先してデコード対象とするのは前回読取りに成功したコード種類とする。
【0032】
一方、「遠隔読取り」の場合は、読取り環境が比較的良好と言えない場合が多いことから、光学的センサ12の露光時間を長く、波形整形部13のアンプ利得を大きく設定し、照明8の光度をより明るくして読取り感度を向上させる。そして、読取り対象との距離は比較的長いと想定されるので、結像レンズ10の焦点距離を長く設定する。この場合、読取り対象となるコード種類はITFである確率が高いため、2値化アルゴリズムには、太いバー/スペースに対応した分解能が高いものを選択し、ITFを優先してデコード対象とする。
【0033】
尚、以上の設定条件の全般はバーコードの読取りに関する制御条件であるが、それらの内、「露光時間」,「アンプの利得」,「焦点距離」,「照明の明るさ」については、バーコードを光学的に読み取った画像信号をアナログ信号として取り扱う過程に関する制御条件であり、これらは「画像信号の取込み制御に関する条件」に対応する。また、「2値化アルゴリズム」,「デコードするコード種」については、画像信号をデジタル化して取り扱う過程に関する制御条件であり、これらは「画像信号の処理に関する条件」に対応する。
【0034】
以上のように、ステップS5,S10において夫々に対応した読取り制御条件を設定すると、制御装置4は、ステップS2における通常読取り制御の場合と同様にステップS20,S5aに移行して、マーカ16及び照明8を点灯させ、設定した読取り制御条件に関する情報を表示部20に表示させてユーザに報知を行う。続いて、照明8及びマーカ16を駆動してコードの読取り処理を行う(ステップS6)。そして、読取り処理が成功すると(ステップS7,「YES」)、制御装置4は、その時に設定していた読取り制御条件をメモリ5に書き込んで記憶させて(ステップS8)処理を終了する。一方、読取り処理が失敗した場合(ステップS7,「NO」)、制御装置4は、読取り制御条件を次の候補に切替えて変更し(ステップS11)、ステップS5aに移行する。
【0035】
また、ステップS9において、傾き角度θが−20度≦θ<45度の範囲にない場合(「NO」)、傾き角度θは45度≦θ<270度(=−90度)の範囲にある。この角度範囲については、読取りを行うのに不適切な状態にあると判断し、制御装置4は、「マーカ制御」を、ユーザが有効とするように設定しているか否かを判断する(ステップS12)。即ち、キー群6を介して行う操作により、ユーザは「マーカ制御」の有効/無効も設定することが可能となっている。
【0036】
ここで、「マーカ制御」とは、傾き角度θが45度≦θ<270度(−90度)の範囲にある場合はマーカ16及び照明8を点灯しないように制御することをいう。即ち、この角度範囲にある場合は、図4に示すように、マーカ光が主に上方を指向するように照射されるため、コードの読取りが行われることは想定し難いからである。従って、「マーカ制御」が有効である場合は(ステップS12,「YES」)そのままステップS3に戻るようにする。この場合、勿論照明8も点灯させる意味はない。一方、「マーカ制御」が無効に設定されていれば(「NO」)、この時点でマーカ16及び照明8を点灯(ON)させてから(ステップS13)ステップS3に戻る。
【0037】
以上のように本実施例によれば、バーコード読取装置1の制御装置4は、バーコードの読取りが開始された場合に、傾斜センサ17により検出される装置1の傾き角度に基づいてバーコードの読取りが行なわれている状態を推定し、推定した読取り状態に応じてバーコードの読取り制御条件を切替え設定するようにした。具体的には、読取り制御条件の内、画像信号の取込み制御に関する条件として、「露光時間」,「アンプの利得」,「焦点距離」,「照明の明るさ」を切替え設定すると共に、「画像信号の処理に関する条件」として「2値化アルゴリズム」,「デコードするコード種」を切替え設定するようにした。
即ち、バーコードの読取りが開始された時点におけるバーコード読取り装置1の傾きは、どのようなバーコードをどのような状態で読取るか、ということに大きな関連性を有しているので、前記傾き角度に基づいて読取り状態を推定し、読取り制御条件を設定すれば、実際に行われる読取り状態に対して妥当性がある設定を自動的に行うことができる。
そして、「取込み制御に関する条件」を切替え設定することで、推定した読取り状態に適合するように画像信号のアナログ処理を行なうことができる。また、「画像信号の処理に関する条件」を切替え設定することで、推定した読取り状態に適合するように画像信号のデジタル処理を行なうことができる。
【0038】
また、制御装置4は、最初に設定した読取り制御条件によるバーコードの読取りが失敗した場合は、読取り制御条件を切替えて再試行するので、読取り状態の推定が不適切であった場合でも、バーコードの読取りを確実に行うことができる。更に、制御装置4は、推定した読取り状態がバーコードの読取りに不適切であると判断すると、マーカ16を消灯させるように制御する。具体的には、マーカ16の光軸が仰角方向において45度以上で且つ270度未満を示す角度である場合に、読取り状態が不適切であると判断する。即ち、マーカ16の光軸が上記角度範囲にある場合は、実際にバーコードの読取りが行われる可能性が極めて低いと想定されるので、上記角度範囲にある場合にマーカ16を消灯させれば、電力の無駄な消費をより確実に抑制することができる。
【0039】
また、制御装置4は、ユーザが、傾斜センサ17により検出される傾き角度θに基づく制御を有効化,無効化するための設定状態に応じて、読取り制御条件の切替え制御を有効化,無効化する。即ち、実際にユーザが使用する状況によっては、読取り対象とするバーコードの種類が予め確定している場合もある。そのような場合にまで本発明の制御を敢えて行う必要性は低いので、ユーザの意思に応じて傾き角度に基づく制御を有効化,無効化することで利便性を向上させることができる。
更に、制御装置4は、設定した読取り制御条件の情報を表示部20に表示させるので、自動的に設定された制御条件が、ユーザが実際に行おうとしている読取り状態に一致しているかどうかをユーザに確認させることができる。
【0040】
(第2実施例)
図6及び図7は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。第1実施例は、図2乃至図4に示したように、バーコード読取装置1の本体を、光軸の照射口が左端に位置する側面から見た場合に定義される傾き角度θの範囲に基づいて制御を行った。これに対して、第2実施例では、図6に示すように、バーコード読取装置1の本体を、光軸の照射口が位置する正面から見た場合に定義される傾き角度φの範囲に基づいて制御を行う。
【0041】
但し、第2実施例では、第1実施例のように「近接読取り」,「遠隔読取り」を推定する制御は行わず、傾き角度φの範囲が「読取り不適」となる角度範囲、この場合「45度≦φ≦135度」にあるか否かを判断する(ステップS14)。従って、ステップS5,S9,S10,S11,S20は削除されている。そして、ステップS14において「YES」と判断するとステップS12に移行し、「NO」と判断するとステップS2に移行する。
【0042】
以上のように第2実施例によれば、制御装置4は、バーコード読取装置1の本体を、光軸の照射口が位置する正面から見た場合に定義される傾き角度φの範囲について、マーカ16の光軸が仰角方向において45度以上で且つ135度以下を示す範囲である場合は読取り状態が不適切であると判断するので、本体を正面から見た場合についても、実際にバーコードの読取りが行われる可能性が極めて低いと想定される角度範囲でマーカ16を消灯させて、電力の無駄な消費をより確実に抑制することができる。
【0043】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
図1に示すフローチャートのステップS1,S12は、必要に応じて配置すれば良い。また、ステップS5aにおいて、設定した読取り制御条件を表示する処理についても、必要に応じて行えば良い。
実施例において具体的に提示した読取り制御条件については、個別の使用条件等に応じて必要となるものを適宜選択して切替え設定すれば良い。
2次元コードについても、各種類に適した読取り条件を設定して同様の制御を行うようにしても良い。
また、バーコードのみに対応した読取装置の場合、受光手段をラインセンサで構成しても良い。
照明8の光度と共に或いは光度に替えて、指向性を切替え設定しても良い。
【0044】
第1実施例において、傾き角度θが、マーカ16の光軸が仰角方向において少なくとも45度以上で且つ180度以下を示す角度である場合に、読取り状態が不適切であると制御装置4が判断するように設定しても良い。
第1実施例と第2実施例とを組み合わせて実施しても良い。
制御装置4は、読取り制御条件として、マーカ16の点灯又は消灯を切替え設定しても良い。即ち、バーコード読取り装置1の傾き状態より推定される読取り状態によっては(例えば「近接読取り」)、マーカ光により基準位置を指示せずとも読取りを容易に行うことが可能な場合もある。従って、斯様に構成すれば、推定した読取り状態に応じてマーカ光の要否を適切に設定することができる。
【0045】
制御装置4は、推定した読取り状態の夫々について行ったバーコードの読取り結果の成否に基づき、例えばステップS11などで再試行する読取り制御条件の優先順位を設定するようにしても良い。即ち、バーコード読取り装置1をユーザが実際に使用する条件に応じて、読取りが行われる場合の装置1の傾き状態に対応して、実際に読取りが行われる制御条件はある程度定まるようになる。従って、実際の読取り結果の成否に基づき、再試行する読取り制御条件の優先順位を設定すれば、読取りが早期に成功する確率を高めて読取りを迅速に行うことができる。
【0046】
ステップS4,S9,S12,S14,S15おける角度範囲を、ユーザがキー群(角度範囲設定手段)6により設定操作可能とし、設定された角度範囲に応じて読取り制御条件を切り替えても良い。即ち、上記実施例で提示した角度範囲はあくまでも一例である。そして、ユーザ夫々の使用状態に対応して、実際に読取り制御条件を切り替えるのに適切な角度範囲は異なる場合がある。従って、ユーザが夫々の実情に応じて適切な角度範囲を設定すれば、より実際の読取り状態に適合するように制御条件を切替えることができ、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施例であり、バーコード読取装置の制御装置によって行われる制御内容を、本発明の要旨に係る部分について示すフローチャート
【図2】図1のフローチャートにおいて設定されている傾き角度θの範囲を示す図
【図3】想定した読取り状態に応じて設定する制御条件を示す図
【図4】読取りに不適切なバーコード読取装置の状態の一例を示す図
【図5】バーコード読取装置の電気的構成を概略的に示す図
【図6】本発明の第2実施例を示す図2相当図
【図7】図1相当図
【図8】バーコード読取装置がダンボールに印刷されているITFコードを読取る状態を示す図
【図9】バーコード読取装置が伝票ラベルに印刷されているコードを読取る状態を示す図
【符号の説明】
【0048】
図面中、1はバーコード読取装置(情報コード読取装置)、4は制御装置(制御手段,二値化手段,復号手段)、6はキー群(傾き角度制御設定手段,角度範囲設定手段)、8は照明(照明手段)、12は光学的センサ(受光手段)、13は波形整形部(増幅手段)、17は傾斜センサ(傾き角度検出手段)、20は表示部(表示手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードを光学的に読取るように構成される情報コード読取り装置において、
水平方向に対する光軸の傾き角度を検出する傾き角度検出手段と、
情報コードの読取りが開始された場合に、前記傾き角度検出手段により検出される傾き角度に基づいて前記情報コードの読取りが行なわれている状態を推定し、推定した読取り状態に応じて情報コードの読取り制御条件を切替え設定する制御手段とを備えたことを特徴とする情報コード読取り装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記読取り制御条件として、前記画像信号の取込み制御に関する条件を切替え設定することを特徴とする請求項1記載の情報コード読取り装置。
【請求項3】
情報コードが記録されている記録面からの反射光を受光して光電変換することで画像信号を出力する受光手段を備え、
前記制御手段は、前記画像信号の取込み制御に関する条件として、前記受光手段に対する露光時間を切替え設定することを特徴とする請求項2記載の情報コード読取り装置。
【請求項4】
前記受光手段によって出力される画像信号を増幅する増幅手段を備え、
前記制御手段は、前記画像信号の取込み制御に関する条件として、前記増幅手段の増幅率を切替え設定することを特徴とする請求項2又は3記載の情報コード読取り装置。
【請求項5】
情報コードが記録されている記録面に照明光を投射する照明手段と、
前記記録面からの反射光を前記受光手段の受光面に結像させるための結像手段とを備え、
前記制御手段は、前記画像信号の取込み制御に関する条件として、前記照明手段における光度又は指向性、前記結像手段の焦点距離の内、何れか1つ以上を切替え設定することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項6】
前記記録面に対して読取り基準位置を光学的表示により指示するためのマーカを備え、
前記制御手段は、前記読取り制御条件として、前記マーカの点灯又は消灯を切替え設定することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項7】
前記制御手段は、画像信号の処理に関する条件を切替え設定することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項8】
前記受光手段によって出力される画像信号を二値化する二値化手段を備え、
前記制御手段は、前記画像信号の処理に関する条件として、前記二値化手段の二値化アルゴリズムを切替え設定することを特徴とする請求項7記載の情報コード読取り装置。
【請求項9】
画像信号の復号処理を行なう復号手段を備え、
前記制御手段は、前記画像信号の処理に関する条件として、前記復号手段における情報コードの種類に応じた復号アルゴリズムを切替え設定することを特徴とする請求項7又は8記載の情報コード読取り装置。
【請求項10】
前記制御手段は、最初に設定した読取り制御条件による情報コードの読取りが失敗した場合は、読取り制御条件を切替えて再試行することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項11】
前記制御手段は、推定した読取り状態の夫々について行った情報コードの読取り結果の成否に基づき、再試行する読取り制御条件の優先順位を設定することを特徴とする請求項10記載の情報コード読取り装置。
【請求項12】
前記記録面に対して読取り基準位置を光学的表示により指示するためのマーカを備え、
前記制御手段は、推定した読取り状態が、情報コードの読取りに不適切であると判断すると、前記マーカを消灯させるように制御することを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項13】
前記制御手段は、
本体を、その光軸照射口が一端に位置する側面から見た場合、前記傾き角度検出手段により検出される傾き角度θが、前記マーカの光軸が仰角方向において45度以上で且つ180度以下を示す角度範囲内にある場合、
及び/又は、本体を、その光軸照射口が位置する正面から見た場合、前記傾き角度検出手段により検出される傾き角度φが、前記マーカの光軸が仰角方向において45度以上で且つ135度以下を示す角度範囲内にある場合に、読取り状態が不適切であると判断することを特徴とする請求項12記載の情報コード読取り装置。
【請求項14】
ユーザが、前記傾き角度検出手段により検出される傾き角度に基づく制御を有効化,無効化するための傾き角度制御設定手段を備え、
前記制御手段は、前記傾き角度制御設定手段における設定状態に応じて、前記制御を有効化,無効化することを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項15】
ユーザが、前記読取り制御条件を切り替える傾き角度の範囲を設定するための角度範囲設定手段を備え、
前記制御手段は、前記角度範囲設定手段により設定された傾き角度範囲に応じて、前記読取り制御条件を切り替えることを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の情報コード読取り装置。
【請求項16】
各種情報を表示させるための表示手段を備え、
前記制御手段は、設定した読取り制御条件の情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の情報コード読取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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