説明

情報システムを用いて反応を解析する方法およびシステム

【課題】化学反応および/または生体反応に関する測定を行う情報システムおよび方法を提供する。
【解決手段】化学反応および/または生体反応の最初に存在する分析物の量を測定するための方法およびシステム、ならびに増幅反応の数学的もしくは図式的解析を含む解析の一部を自動化するためのコンピュータ実行による方法およびシステム。
【効果】変動し得る閾値やCt値を計算する必要なく、試験サンプル中に存在する標的の量を客観的に定量することが可能となる。さらに、Ct後のサイクルでのデータなどの以前は無視されていたデータなどのPCR増幅曲線の形状を解析することで、反応における阻害程度を求める上で利用可能な情報を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅反応のデータ解析に関する。より具体的には本発明は、化学反応および/または生体反応に関する測定を行う情報システムおよび方法に関するものである。本発明には、標的の増幅を含むサンプル中の核酸の別途定量方法ならびに増幅反応時に得られるデータの解析も関与する。本発明にはさらに、PCR分析など(それに限定されるものではない)のリアルタイム核酸増幅を用いる診断システムおよび/またはキットも関与する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる工業分野、医学分野、生物分野および/または研究分野において、対象の核酸の量を測定することが望ましい。対象となる核酸の定量方法の一部では、それらを増幅し、生成した増幅生成物の量に比例するシグナルを観察する。他の方法には、標的核酸の存在に応じたシグナルの発生が関与し、そのシグナルは増幅反応の期間にわたって蓄積されるものである。本明細書で使用される場合、核酸増幅反応とは、標的核酸の配列の一部の増幅、ならびに標的核酸の存在を示すシグナルの増幅および蓄積の両方を指すものであり、前者の方が後者より好まれる場合が多い。増幅反応時のデータは標的核酸に応答して発生しないシグナル(すなわち、ノイズ)によってかなり不明瞭化される場合が多いことから、核酸の定量は比較的困難であるか正確さを欠くか、またはその両方である。さらに、多くのモニタリング方法によって取り込まれるデータには、反応時または反応の異なる場合間で変化し得る条件のために、変動や再現性の欠如が生じ得る。以上の点を鑑みると、改良された核酸定量手段の開発が必要とされている。核酸の定量が増幅反応によって可能になる場合、疑わしいまたは無関係な増幅反応を検出する現行法の改良も必要である。さらには、サンプル中の標的核酸の量の少なさ、増幅反応の阻害程度その他の原因を理由とする増幅反応から得られる弱いシグナルから標的核酸を検出しない増幅反応(すなわち、陰性反応)間で識別を行う現在の能力を高めることも必要とされている。本発明は、下記で開示のようなこれらの分野での改良を提供するものである。
【0003】
本発明に関する背景情報を提供する参考文献のリストを下記に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0004】
Livak,K.and Schmittgen,T.,Analysis of Relative Gene Expression Data Using Real−Time Quantitative PCR and the 22DDCT Method,METHODS 25:402−408(2001) doi:10.1006/meth.2001.1262.
Bustin SA,Absolute quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR assays,Journal of Molecular Endocrinology 25:169−193(2000).
Bustin SA.,Quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR:trends and problems,J Mol Endocrinol. 29:23−29(2002)。
【0005】
本発明者らは、下記のウェブサイトが現在も利用可能であることを保証できないとともに、そこに記載されている意見を必ずしも支持するとは限らないが、興味のある者は、有用な背景情報としてウェブサイトwww.wzw.tum.de/gene−quantification/index.shtmlを参照しても良い。
【0006】
本願とともに提出した文書中の内容を含めて、この提示文献にある研究、発表、販売またはいずれかの箇所での活動についてのいずれの言及も、逆の内容が明瞭に示されない限りは、いかなる形態でもそのような研究が先行技術を構成することを承認するものではない。同様に、本明細書中での活動、研究または発表についての言及は、そのような活動、研究または発表が特定の管轄領域で公知であったことを承認するものではない。
【0007】
リアルタイムPCRは、試験サンプル中の標的核酸の定量に用いられる増幅反応である。従来では当業者は、増幅反応を3つの異なる相を有するものと見るのが普通である。第一に、バックグラウンド期またはベースライン期があり、そこでは標的核酸を増幅しているが、標的とは独立のシグナル(「バックグラウンド」または「バックグラウンドシグナル」と称される場合がある)と比較して、標的核酸の量に比例するシグナルが観察するには小さすぎることから、そのシグナルを検出することはできない。次に対数期があり、そこでは、前記シグナルが増幅反応で標的核酸の量に実質的に比例しており、バックグラウンドシグナルより大きいことから、そのシグナルはほぼ対数的に強くなる。最後に、標的核酸の対数的増幅より小さい増幅を反映する「平坦」期時において、シグナルの上昇が低下する。当業界において公知であるように、バックグラウンドシグナルの値より若干大きい値である閾値を対数期が超える時点は、標的核酸の濃度の対数に再現性良く関係している。この先行技術の方法は、C法と称されるが、恐らくはシグナルが閾値(hreshold)を超えるサイクル(ycle)にちなんで命名されたものであろう。C解析は再現性および正確さがかなり高いが、いくつかの欠点もある。それらの欠点については、本発明を理解する上でここで議論する必要はない。
【0008】
米国特許第6303305号には、PCR反応を用いる核酸の定量方法が開示されている。そこで開示の方法は、蛍光核酸増幅反応の成長曲線のn次導関数を用いる。この方法は、ベースライン補正を行う必要性を効果的に回避するものであるが、非反応性サンプルから反応性サンプルを識別する信頼性の高い方法を提供するものではなく、得られる結果の妥当性を評価する上でのn次導関数計算の用い方を合理的に提示するものではない。さらに、そこで開示の方法を用いて、系中におけるアーチファクト(例:クロストークまたは陽性ブリードオーバー規定インフラ(positive bleedover−defined infra))から生じる核酸増幅シグナルを、真正の陽性応答から識別することができず、偽陽性の結果を生じる可能性がある。しかしながら、米国特許第6303305号に開示の一次導関数計算は、本発明の文脈で有用である効率関連の値を提供するものである。核酸増幅シグナル成長曲線の一次導関数の計算に関係するさらなる詳細について、当業者は米国特許第6303305号を参照することができる。米国特許第6303305号は、米国および参照による組み込みを許可する他の管轄地域においてのみ、核酸増幅成長曲線の一次導関数の計算をそれが開示する範囲で、参照によって組み込まれるものである。しかしながら、米国特許第6303305号は、本開示に記載のこの効率関連の値(下記)の使用を開示も示唆もしていない。
【0009】
2003年12月6日出願の共同所有の米国暫定特許出願60/527389号には、増幅反応からのシグナルの対数について最大傾斜または勾配を調べる核酸増幅反応の解析方法が開示されている。あらゆるデータセットにおいて、増幅反応開始後の一定期間の時点またはサイクル数に相当するこの値は、その反応のMGLと称される。MGLは、本発明のある種の実施形態において有用であり、特には標的核酸をわずかに含むサンプルを標的核酸を含まないサンプルから量的に識別する実施形態において有用である。2003年12月6日出願の米国特許出願第60/527389号は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6303305号明細書
【特許文献2】米国特許出願第60/527389号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Livak,K.and Schmittgen,T.,Analysis of Relative Gene Expression Data Using Real−Time Quantitative PCR and the 22DDCT Method,METHODS 25:402−408(2001) doi:10.1006/meth.2001.1262
【非特許文献2】Bustin SA,Absolute quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR assays,Journal of Molecular Endocrinology 25:169−193(2000)
【非特許文献3】Bustin SA.,Quantification of mRNA using real−time reverse transcription PCR:trends and problems,J Mol Endocrinol. 29:23−29(2002)
【非特許文献4】ウェブサイトwww.wzw.tum.de/gene−quantification/index.shtml
【発明の概要】
【0012】
本発明は、サンプルが対象となる核酸を含むか否かを決定する方法、その核酸の定量方法、ならびに前記の定性的および定量的測定を行うのに用いられるデータの妥当性もしくは質を評価する方法を提供するものである。
【0013】
本発明の方法は、増幅試薬もしくは検出試薬またはその両方とサンプルとを接触させて核酸を増幅する段階を有する(本明細書において「増幅」という用語を用いるように)。その増幅反応は、サンプル中に存在する標的核酸の量を示すシグナルを発生させるものであり、そのシグナルを増幅反応中に多くの点で記録する。そのシグナルは、測定し、時間値の関数としてまたは別の形態ではサイクル数で記録することができる。
【0014】
時間の関数として見たりまたは計算される好適な「効率関連変換値」を増幅反応について求め、効率関連変換値の最大値の増幅反応における点、効率関連変換値の最大値の大きさ、または時間の関数としての効率関連変換値のプロットにおけるピークの幅(または類似のパラメータ)を用いて、その反応についての情報を得ることができる。反応におけるその点は、効率関連変換値が最大値となる時間点または増幅サイクルを表す。有利には、特定の反応における効率関連変換値の最大値、ならびに計算される効率関連変換値での実質的な変化の期間および大きさは、サンプル中の標的核酸の初期濃度、そのアッセイによって生じるデータおよび情報の信頼性、真正の標的核酸の有無および反応の他のパラメータに対して一貫して再現性のある関係を有する。有利には、それらの関係は、前記増幅反応に生じるシグナル中における実質的なノイズおよび予想外の変動があっても保持される。本明細書で使用される場合に、効率関連変換値に使用される「最大値」という用語は、効率関連変換値の逆数を用いる場合には、効率関連変換値の最小値を含むものである。その逆比を利用することができ、曲線の場合には、その曲線はベースライン領域では約1の値で開始し、成長領域時には低下し、平坦領域ではほぼ1に戻る。この変換値の使用により、解析において、ピークの大きさおよび位置ではなく、谷の大きさおよび位置を用いることが可能になると考えられる。この変換は、特定の反応における効率関連変換値の最大値を用いる比率法と実質的に同等の方法で行われる。
【0015】
いずれの実施形態においても、増幅反応からのシグナルを、増幅反応中のその増幅反応に適した時間間隔で測定する。それらのシグナルは、時間基準測定値または定期的測定値を称することができ、そうして特定の反応において発生するシグナルの各測定値を時間の関数として表現することができる。一部の実施形態では、増幅反応は周期性である(例えば、PCRでの場合)。サイクルは実質的に一定の期間を有する場合が多いことから、時間測定値に代えて「サイクル数」を用いることが簡便である場合が非常に多い。従って、本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載の情報処理システム上の1以上の方法によって確認されるデータ領域が、サイクル数に相当し得る。しかしながら、一部の周期的増幅反応は、期間が一定しないサイクルを有する。これらの増幅反応では、一定しない尺度で時間を測定することが好ましい場合がある。例えば、期間が変動するサイクルを有するPCR反応における理論上の増幅程度は、反応期間ではなく実施されるサイクル数と、より直接に関連している。従って、時間基準測定値を容易にスケール調整して、基礎となる増幅反応を反映させることが可能であることは、当業者には明らかであろう。当業界では公知のように、サイクル数間のデータおよび結果を内挿することが有用である場合が多く、それによって分割サイクル数「FCN」の概念が生じる。同様に、測定が時間に基づくものである反応では、分割時間単位で事象を測定することができる。
【0016】
別の実施形態において、本発明には有利には、反応曲線が閾値を通過する点のような非常に限られたデータセットを用いるのではなく、利用可能な反応速度論データの実質的な集合を用いて対象領域を確認するPCR反応サンプルなどの反応サンプルを解析するためのシステムもしくは方法またはその両方が関与する。
【0017】
ある種の実施形態では、1つの確認された領域を用いて、1以上の定性的結果もしくは定量的データ解析結果またはその両方を求めることができる。効率関連変換値が最大値の反応点を用いて、サンプル中の標的核酸の濃度を求めたり、または試験サンプル中に標的分析物が存在するか否かを定性的に求めることができる。これらおよび他の値を、先行技術において閾値サイクル数(C)または分割閾値サイクル数を用いることができるのとほぼ同様にして、基準量と比較することができる。
【0018】
効率関連変換値の最大値に相当する反応点は、反応効率の最大時または反応効率最大値に関係するもしくは何らかの他の反応進行に一貫して関係する領域などの、反応効率に関して比較的一定の点に位置するサイクル数を示すか、そのサイクル数から誘導されるものであると理解することができる。各種方法を用いて、反応効率の最大値に関係する反応点を求めることができる。その値は、下記のような調節FCN値(例:FCNMRAdj.およびFCNIntAdj.)を含むことができる。本発明のある種の実施形態において、本発明の方法によって、標的および/または対照などの複数の反応シグナルについてFCN値を求めることができ、それらの値を、サンプル中に最初に存在する標的核酸の量および増幅反応によって生じる結果の妥当性など(これらに限定されるものではない)の反応パラメータ測定で用いることができる。
【0019】
本発明は、シグナル成長曲線上の1以上の領域で反応効率(本明細書においては、「効率関連値」(ERV)と称する場合がある)を示す値を確認することができる。具体的な効率関連値は、最大比(MaxRatio)値またはMRと称される。最大比とは、本明細書においてさらに議論する一つの可能な効率関連値の計算方法に関連する。これはERV測定方法の一例であり、MRについて言及する本明細書での例示的な実施例が、2003年12月6日出願の共同所有の米国特許出願第60/527389に記載の成長曲線の対数における最大勾配、増幅反応から得られるシグナルの最大一次導関数(例:米国特許第6303305号に開示のもの)および増幅反応から得られる2つの連続するシグナル間の最大差など(これらに限定されるものではない)の効率関連値を求める上での他の好適な方法を含むことも明らかである。従って本発明には、反応曲線における2つの値、すなわち(1)サイクル数または時間値に関係する一つの値および(2)効率関連値を示す一つの値を確認する解析方法が関与する。本発明は、情報取り扱いシステムを用いて行う反応データの解析ならびにそのシステムの使用方法でそれら2つの値を用いることができる。そのような2つの値の例は、下記で記載のFCNおよびMRの具体的な実施形態である。
【0020】
本発明には、調べている反応から求められる上記で記載の2つの値を用いて、その反応を1以上の基準データセットと比較する方法およびシステムも関与する。基準比較を用いて、本明細書に記載の結果および/または定量値を確認および/または補正することができる。基準データは、量既知もしくは濃度既知またはその両方である複数の較正反応からサイクル数関連値−効率関連値のペア(例えば、FCN−MRのペア)を得ることで誘導することができる。
【0021】
本発明にはまた、反応データの効率解析を行う1以上の技術も関与する。その解析は、本明細書で議論されるサイクル数関連値−効率関連値解析とは別個に、またはそれと組み合わせて用いることができる。効率解析を用いて、当業界で知られているC解析と同様にして、較正データセットとの比較などの反応データに関する測定を行うための対象領域を見いだすことができる。
【0022】
本発明はまた、核酸を含むサンプルを増幅試薬と接触させ、好適な増幅条件下に置いてサンプル中の核酸の一部を増幅させる核酸増幅反応の分析方法を提供する。その増幅反応中、存在する標的核酸の量に比例するシグナルを、好適な期間で定期的に測定する。簡便にはその期間は、周期性のある増幅反応のサイクル期間に相当するものであることができる。次に、そのシグナルを操作して、増幅反応における効率関連変換値を求める。いずれか好適な効率関連変換値を本発明では用いることができる。本発明の文脈において好ましい効率関連変換値には、一連のデータ点に関する差計算、反応シグナルの成長曲線に適合させた直線の一次導関数の測定およびその成長曲線の対数(すなわち、Log(成長曲線))の傾斜、勾配もしくは導関数の測定など(これらに限定されるものではない)、多くの方法によって求めることができる直線の勾配などがある。より好ましくは、効率関連変換値は、本明細書において場合により比曲線とも称される一連のデータ点の比率である。反応における効率関連変換値が既知である場合、時間の関数としての効率関連変換値のプロット(好ましくは、シグナルを測定するのに用いられる単位で表される)(またはプロットと同様の情報を与える数学的操作)を用いて、ピーク値を確認することができる。しかしながら、プロットは必要ない。許容されるピーク幅の特定範囲におけるピーク幅を、いずれか好適な技術または方法によって求めることができる。しかしながら、許容されるピーク幅を求める好ましい方法では、本発明の方法によって解析される増幅方法と非常に類似または同一である客観的に正常な増幅反応から得られるピーク幅における分散度を統計的に解析する。解析される反応では、増幅反応または分析物アッセイを特性決定するのに用いられるサンプルに代えて、未知の試験サンプルを用いるのが普通である。解析される増幅反応のピーク幅が許容されるピーク幅の所定範囲内にある場合、その反応は正常であると宣言される。解析される増幅反応のピーク幅が許容されるピーク幅の所定範囲内にない場合、その反応は最適より低い、異常その他の形の問題のあるシグナルを提供したものとされる。効率関連変換値ピークの最初の半分の幅を評価する。この評価は、増幅反応の妥当性のより許容性の大きい測定であることから、一部の場合では好ましい可能性があるが、全ての場合においてそうであるとは限らない。
【0023】
本発明にはさらに、捕捉データを解析することができる情報システムおよび/またはプログラムが関与する。データは、そのデータの観察可能な特徴からの画像データとして捕捉することができ、情報システムが他の成分と統合して、サンプルデータの捕捉、準備および/または表示を行うことができる。本発明を用いることができるシステムの代表例には、バイオラド(BioRad;登録商標)i−サイクラー(i−Cycler)(登録商標)、ストラータジーンズ(Stratagenes;登録商標)MX4000(登録商標)およびABIプリズム(Prism)7000(登録商標)システムなどがあるが、これらに限定されるものではない。同様に、本発明は、本発明の方法を実行する能力を有するコンピュータ製品を提供する。
【0024】
本発明の各種実施形態が、Java(登録商標)、C++、C#、Cobol、C、Pascal、Fortran、PL1、LISP、アセンブリなどの好適なプログラミング言語ならびにHTML、XML、dHTML、TIFF、JPEG、タブ区切りテキスト、バイナリなどの好適なデータまたはフォーマット規格による汎用または特殊目的の情報取り扱いシステム上で実行することができる方法および/またはシステムを提供する。議論を容易にするため、本発明の文脈において有用な各種コンピュータソフトウェアコマンドは、MATLAB(登録商標)コマンドで示している。MATLAB(登録商標)ソフトウェアは、マスワークス者(The Mathworks,Natick,Massachusetts(米国))から市販されている線形代数マニピュレータおよびビューワソフトである。当然のことながら、いずれか特定の実行では(ソフトウェア開発プロジェクトでの場合のように)、多くの実行特有の決定を行って、実行ごとに変動するシステム関連および/または業務関連の制約の順守などの開発者の具体的な目標を達成することができる。さらに、そのような開発努力は複雑かつ時間を要するものである可能性があるが、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては日常的なソフトウェア工学の仕事であると考えられることは明らかであろう。
【0025】
下記の図面および詳細な説明を参照することで、本発明についての理解が深まるであろう。明瞭を期して、ここでの議論は、具体的な例に関して装置、方法および概念について言及するものである。しかしながら、本発明およびそれの態様は、多様な種類の装置およびシステムに用いることが可能である。
【0026】
さらに、本明細書に記載のものなどの論理システムおよび方法には、モジュラー形式での各種の異なる構成要素および異なる機能が含まれ得ることは明らかである。本発明の異なる実施形態は、要素および機能の異なる組み合わせを含み得るものであり、各種要素の一部として各種機能をグループ化し得るものである。明瞭を期して、多くの異なる構成要素ならびに新規な構成要素および公知の構成要素の組み合わせを含むシステムに関して本発明の説明を行う。いずれの推定も、本発明の例示的な実施形態における全ての新規構成要素を必要とする組み合わせに本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「本発明」という言葉は、本発明の1以上の具体的な実施形態を含むものと理解すべきである(逆の内容が明瞭に示されていない限り)。当業者には、本発明による多くの変形形態が、本明細書の内容から理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態による解析方法で使用可能な核酸増幅反応から取った43の読み取り値(例、サイクル)からの不連続な捕捉反応データ値のプロットである。
【図2】本発明の実施形態に従って正規化されている標的および対照データセットを示す捕捉反応データを示すプロットである。
【図3】本発明の実施形態に従ってスケール調整された標的および対照データを示す反応データを示すプロットである。
【図4】本発明の実施形態に従ってデジタルフィルタリングした後の標的および対照データを示す捕捉反応データを示すプロットである。
【図5】本発明の実施形態に従って取り出した勾配値を有する標的および対照データを示す捕捉反応データを示すプロットである。
【図6】本発明の実施形態による反応標的および対照データの比変換を示すプロットである。
【図7】本発明の実施形態による反応標的および対照データのシフト比変換を示すプロットである。
【図8】本発明の実施形態に従って内挿された標的および対照データを示す内挿変換反応データを示すプロットである。
【図9】本発明の実施形態によるFCNおよびMR点の確認を示す内挿反応データを示すプロットである。
【図10】本発明の実施形態による反応データの特性決定を行うフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態による基準データを求めるための方法を示すプロットである。
【図12】同濃度初期サンプルについての反応曲線が各種反応異常のためにどのように変動し得るかを示す2つの反応データセットを示すプロットである。
【図13】図12におけるデータセットについてのピーク効率計算を示す図であり、本発明の具体的な実施形態によるオフセット効率変換の使用が望ましいことを示す図である。
【図14】50、500、5000、50000、500000および5000000コピー/mLの既知濃度サンプルの8回複製で行ったHIVアッセイ用のデータを示す図である。
【図15】本発明の実施形態による4つの異なるサイクル数関連値(例:FCN、FCN2、FCNMRAdj.およびFCNint.Adj.)を用いる3点較正データから得られた4つの線形標準曲線を示すプロットである。
【図16】本発明の実施形態による図15に示した4つの曲線を用いて図14に示したデータについて、計算濃度を既知濃度と比較する図である。
【図17】本発明の実施形態による1点較正を用いる結果を示す図である。
【図18】本発明の実施形態による1点較正とともにMR解析を用いる実験的HBV結果を示す図である。
【図19】本発明の実施形態による1点較正とともにMR解析およびFCNMRadj.を用いる実験的HBV結果を示す図である。
【図20】C解析および本発明の実施形態による1点較正を用いる実験的HBV結果を示す図である。
【図21】本発明に従ってMR解析および1点較正を用いる、例えばキャリブレータとして10および10コピー/mL応答を用いる実験的HIV結果を示す図である。
【図22】本発明の実施形態による2種類の基準データを示すプロットであって、下側の水平線が陰性反応を陽性反応から識別する上で好適な基準データを表すものである。
【図23】本発明の実施形態に従って、データにフィットさせた曲線を用い、信頼区間を求める統計解析ソフトウェアによって解析した50コピー/mL〜5000000コピー/mLのHIVデータについてのFCN−MRを示すプロットである。
【図24】本発明の実施形態によって信頼区間を求める統計解析ソフトウェアによって解析される内部対照データを示すプロットである。
【図25】本発明の実施形態に従って、内部対照および標的増幅反応の両方についてのサイクル数関連値−効率関連値のペアの解析によってアッセイの妥当性を評価するための論理解析ツリーを示すフローチャートである。
【図26】本発明の実施形態に従って、サイクル数関連値−効率関連値のペアを用いる妥当性基準評価とともに標的結果を報告するための論理解析ツリーを示すフローチャートである。
【図27】本発明の実施形態によるピーク幅測定値の較正を示す図である。
【図28】本発明の実施形態による全ピーク幅測定値を用いる実験的HIV結果を示す図である。
【図29】本発明の実施形態による全ピーク幅測定値を用いて異常応答を確認する実験的HIV結果を示す図である。
【図30】本発明の実施形態によるFCN−MRプロットを示すユーザーインターフェースの1例を示す図である。
【図31】本発明の実施形態によるシフト比プロットを示すユーザーインターフェースの1例を示す図である。
【図32】本発明の各種態様を具体化することができる論理デバイスの代表例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書で使用される場合、「効率関連値」という用語は、増幅反応の効率に対して一貫した関係を有する値を意味する。「効率関連変換値」という用語は、効率関連値を求めるのに使用される増幅反応における応答が関与する数学的変換を意味する。「反応点」という用語は、効率関連値が起こる反応中の時点を意味する。反応点は、反応開始から測定される時間点であることができる。あるいは反応点は、反応開始から測定されるサイクルを示す時点であることができる。「導関数」という用語は、曲線中の所定の点でのその曲線の傾きを意味する。
【0030】
本発明は、分析物を含むサンプルの分析に関するものである。分析物は核酸であることができる。本発明の文脈において、分析物の一部のコピーを、増幅時に検出可能なシグナルを発生するように作る(以下、「増幅」と称する)。そのシグナルは増幅反応の進行を示すものであり、好ましくは試験サンプル中に存在する分析物および分析物のコピーの量に関するものであるか、またはその反応によって産生される分析物のコピーの量に関するものである。増幅は好ましくは、標的分析物の対数的蓄積(例えば、PCR反応でのもの)を可能とするような構成とし、より好ましい実施形態では増幅は、各PCRサイクルでの特定の時点でデータを収集するPCR反応である。
【0031】
核酸を増幅および検出することができる多くのシステムが開発されている。同様に、多くのシステムが、別の方法では検出限界より低いと考えられる量の核酸の測定を可能とするシグナル増幅を用いるものである。本発明は、それらシステムのいずれかを利用することができる。ただし、核酸および核酸のコピーの増幅の存在を示すシグナルは、時間依存的またはサイクル依存的に測定することができる。本発明の文脈において有用であるいくつかの好ましい核酸検出システムには、PCR、LCR、3SR、NASBA、TMAおよびSDAなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は当業界において公知であり、主にサイキらの報告(Saiki et al.,Science 230;1350−1354(1985));サイキらの報告(Saiki et al.,Science 239:487−491(1988))、リバク(Livak)らの米国特許第5538848号;5723591号;および5876930号、ならびに他の文献に記載されている。PCRはまた、逆転写酵素(RT)および/またはある種の多官能性DNAポリメラーゼとともに用いて、RNA分子をDNAコピーに形質転換することで、DNAポリメラーゼによるPCR増幅用の基質としてRNA分子を使用できるようにすることも可能である(Myers et al.Biochem. 30:7661−7666(1991))。
【0033】
連結連鎖反応(LCR)はPCRと類似しているが、主要な特色は、LCRでは重合ではなく連結を用いて標的配列を増幅するという点である。LCRについては、特にバックマン(Backman)らの欧州特許第320308号;ランデグレンらの報告(Landegren et al.,Science 241:1077(1988));ウーらの報告(Wu et al.,Genomics 4:560(1989))に記載されている。一部の最新の形態のLCRでは、オリゴヌクレオチド間のギャップを提供することで特異性を高めることができ、そのギャップは鋳型依存性重合で埋められなければならない。4つのdNTP全てがオリゴヌクレオチドプローブのギャップを埋める必要がなく、4つのdNTP全てが増幅試薬で供給されない場合に、それは特に有利となり得る。同様に、ローリング・サークル増幅(RCA)が、リズビーらの報告(Lisby,Mol.Biotechnol. 12(1):75−99(1999))、ハッチらの報告(Hatch et al.,Genet.Anal. 15(2):35−40(1999))およびその他に記載されており、本発明の文脈において有用である。
【0034】
等温増幅反応も当業界において公知であり、本発明の文脈において有用である。等温増幅反応の例には、コーらの報告(Kwoh et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(USA) 86:1173−1177(1989))に記載され、当業界でさらに発展している3SR;キービッツらの報告(Kievits et al.,J.Virol.Methods 35:273−286(1991))に記載され、当業界でさらに発展しているNASBA;およびウォーカーらの報告(Walker et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(USA) 89:392−396(1992))および米国特許第5270184号に記載され、当業界でさらに発展している鎖置換増幅(SDA)法などがある。
【0035】
従って、標的核酸の量を示すシグナル取得を時間依存的またはサイクル依存的に測定可能であることのみを必要とする多くの増幅または検出システムが、本発明の文脈において有用である。それらの特徴を有する他のシステムが当業者には公知であり、上記で議論はしなかったが、本発明の文脈において有用である。
【0036】
前記増幅反応から収集されたデータの解析は、下記の質問のうちの1以上に対する回答を提供することができる。
(1)標的配列が見つかったか?
(2)「イエス」であれば、標的配列の初期レベルまたは量はいくらか?
(3)結果は正確か?
(4)一連の反応は正しく行われたか?
(5)所望の反応または予想される反応の阻害はなかったか?
(6)サンプル調製物回収は許容されるか?
(7)基準データを用いる場合には、その基準データに対する較正が、なおも妥当であるか?
【0037】
本発明の一部の実施形態によれば、対象領域(例:FCN)および標的および/または内部対照反応の効率関連値(例:MR)を確認することで、これらの質問の1以上に答えることができる。他の実施形態では、本明細書において基準データ、基準曲線および/または基準データセットと称されるデータセットとそのような値を比較することで、これらの質問の1以上に答えることができる。別の実施形態では、同じ反応混合物中の内部対照(例:二次増幅対照反応)について得られたそのような値をそれの基準データとして比較することで、これらの質問の1以上に答えることができる。さらに別の実施形態では、標的反応について得られたそのような値を、それらの個々の基準データとして同じ反応混合物中の内部対照反応について得られたそのような値と比較することで、これらの質問の1以上に答えることができる。
【0038】
明瞭を期して、ヒト核酸、動物核酸、植物核酸、ならびにヒト、ヒト以外の動物および植物の病原体の核酸を検出および定量するための自動および手動システムで非常に興味深い種類の測定およびモニタリング技術であるリアルタイムPCR反応を参照して、本発明の説明を行う。リアルタイムPCRは、生物戦争剤および環境中の他の生物もしくはウィルス生物の検出にも十分に適応させられる。リアルタイムPCRは、核酸(NA)配列標的の増幅を、増幅産生物のほぼ同時検出と組み合わせるものである。任意に、検出は、標的核酸の存在に応じて消光もしくは活性化される蛍光プローブまたはプライマーに基づいて行うことができる。蛍光の強度は、サンプル中の標的配列の濃度または量によって決まる(当然のことながら、標的の量は最低検出可能限界より上であり、飽和限界より低いものと仮定する)。プローブのこの消光/蛍光能力により、均一なアッセイ条件が可能である。すなわち、増幅および検出の両方のための全ての試薬を、反応容器、例えば複数ウェル反応プレートにおける単一ウェルに一緒に加える。特定のシステムが標的増幅反応の各種時間点時においてサンプル中に存在する標的の量を示すデータを蓄積する限りにおいて、電子検出システム、標的捕捉に基づくシステムならびに少量サンプル分析のシステムおよび技術が、本発明の文脈において有用な他の形態の検出システムである。
【0039】
PCR反応では、試薬が限定的となるか消費されたり、重大な競争、反応物の不十分な供給その他の反応途中で累積する他の要素があるまで、各サイクルで標的核酸の量は倍加する。特定のサイクルでPCR反応が標的の倍加(正確に)を起こした時点で、その反応は効率(e)1を有すると言われる(例えば、e=1)。多くのサイクル後、非常に少量で最初は検出できない量の標的から、検出可能な量の標的を得ることができる。代表的には、PCRサイクルプロトコールは、ほぼ30〜50サイクルの増幅からなるが、それより多いまたは少ないサイクルを用いるPCR反応が当業界では知られており、本発明の文脈において有用である。
【0040】
本発明を説明するために下記にされるリアルタイムPCR反応では、反応混合物は、オリゴヌクレオチドプライマー、相補標的核酸に結合していない時には消光され得る蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ、増幅酵素、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)および別の支持試薬の適切な試薬カクテルを含む。さらに、一連の反応を通じて増幅されないままであるオリゴヌクレオチドに結合していても良い増幅可能な「対照配列」もしくは「内部対照」および「基準色素」の検出用の第二の蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブを、リアルタイムPCR反応用の混合物に加えることができる。従って、一部のリアルタイムPCRシステムでは、各サンプルまたは反応容器(例:ウェル)において最低3種類の蛍光色素を用いる。第二の標的核酸の検出用の追加の蛍光プローブを用いるPCRシステムが当業界では公知であり、本発明の文脈において有用である。
【0041】
一つまたは可能であればそれ以上の反応のそれぞれ(例えば、複数ウェルプレートにおける各ウェル)についてデータをプロットまたは表示するシステムも、本発明の文脈において有用である。それらのシステムは任意に、時間もしくはサイクル数(CN)またはその両方の関数としてのプローブの蛍光強度を二次元プロット(yとx)として表す値を計算する。従って、プロットされた蛍光強度は、複数色素(例えば、プローブ色素および/または基準色素によって正規化された対照色素)からの計算値を表すものであっても良く、バックグラウンドシグナルの計算値の減算を含むものであっても良い。PCRシステムでは、そのようなプロットはPCR増幅曲線と称され、プロットされたデータはPCR増幅データと称することができる。
【0042】
PCRにおいて、データ解析は多くの因子によって困難になっている場合がある。従って、各種段階を行って、これらの要素を説明することができる。例えば、捕捉された光シグナルを解析して、光検出自体における不正確さを説明することができる。そのような不正確さは、色素混合物中の複数の色素間で個々の色素の蛍光を分離する際の誤差および困難さが原因となっている可能性がある(下記において「ブリードオーバー」として説明)。同様に、わずかな量のシグナルが存在する場合があり(例えば、「バックグラウンドシグナル」)、標的が存在しない場合であってもそれが増加する可能性がある(例えば、「ベースラインドリフト」)。従って、好ましくはベースラインドリフト、動向分析および正規化など、バックグラウンドシグナルを取り除くための多くの技術が、本明細書に記載されているか、ないしは当業界で公知である。それらの技術は有用であるが、本発明の文脈においては必要ではない(ベースラインドリフトまたは傾向化は、例えば色素の不安定性、ランプの不安定性、温度の変動、光学系の配列、センサーの安定性またはそれらの組み合わせなどの多くの原因によって生じ得るものである。これらの因子および他のノイズ因子のため、自動でのベースライン領域の確認および補正方法は誤差を生じる傾向がある。)。
【0043】
PCRにおいて代表的には、対象となる答えは成長曲線から決定され、その曲線は特徴的には、検出可能なシグナルを生じるにはまだ倍加が不十分である初期反応サイクル中にはほぼ平坦で始まり、その後、1以上の反応物の消費などの1以上の反応制限条件が増幅反応もしくは検出プロセスに影響し始めるまで指数関数的に上昇する。
【0044】
PCR型の反応データを解析するために、多くの方法が提案され、研究および他の状況で使用されている。代表的にはこれらの方法は、通常は指数関数的またはほぼ指数関数的なシグナル成長期(「対数−直線期」とも称される)の間の反応曲線が特定の点に到達した時点の検出を試みるものである。いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、対数−直線期がベースラインもしくはバックグラウンドシグナルより上で観察できる最も早い時点が、反応についての最も有用な情報を提供するものであり、対数−直線期の傾きは増幅効率の反映であると考えている。先行技術の参考文献の中には、その傾きが真の増幅(シグナルドリフトではなく)の指標であるためには、対数−直線期が終わる成長曲線上の点である変曲点がなければならないことを、誤って示唆しているものがある。変曲点は成長曲線の最大変化率を表す場合もあり得る。阻害が起こる一部の反応では、指数関数的成長期の終わりが起こってから、バックグラウンドからシグナルが生じる可能性がある。
【0045】
PCR分析を行う際には、標的分子の初期量/濃度に関する1以上のアッセイ結果を求めることが望まれる。説明を目的として、結果は、下記の4つの質問の少なくとも一つに対する回答によって表すことができる。
(1)一体、初期サンプルに標的分子が存在したのか(例えば、陽性/陰性の検出結果)?
(2)存在した初期標的の絶対量はいくらだったか?
(3)信頼度はどの程度か(例えば、質問1または2に対する回答が正しいという信頼値として表現される場合がある)?
(4)2つの異なるサンプルに存在する標的の相対的な量はいくらか?
【0046】
多くの方法が開発されており、研究および他の状況でそれらを用いて、これらの質問の1以上に回答することができる。
【0047】
PCR反応のデータは多くの場合、反応において測定される各色素について各サイクルで1回収集される(すなわち、測定される蛍光)。そのようなデータは本発明の文脈において有用であるが、各サイクルで得られたデータ点間の内挿によって、より正確な定量を行うことができる。このようにして、データを解析して、「部分サイクル数」を得ることができ、対象の時点を、特定のサイクル数と、またはいずれかのサイクル数ペア間の反応点で同期させることができる。
【0048】
特に、閾値を固定することが望まれる診断環境において、閾値に依存する方法での一つの問題は、それらの方法が、例えば「クロストーク」および「ブリードオーバー」などの特定の系統的ノイズ因子が存在するために誤差を生じやすくなり得るという点である。クロストークは通常、ある位置(複数ウェルプレートでの1個のウェルなど)でのアッセイからのシグナルが、異なる(通常は隣接する)アッセイ位置においてシグナルに異常を生じさせる場合に起こるものと理解することができる。ブリードオーバーは、複数のシグナルまたはデータセットが反応から検出される状況で起こるものと理解することができる。反応用の検出色素は、ほぼ互いに独立に選択され、個々の蛍光発光スペクトラムを有するが、場合によってはその発光スペクトラムが重なって、一つの色素からの発行スペクトラムが、別の色素の発行スペクトラムにブリードオーバーする。
【0049】
クロストークとブリードオーバーのいずれも、対象の計算測定値を増加または減少させる効果を有し得る。さらに、いずれの場合も、これら現象のいずれかまたは両方のために曲線自体に異常が生じる状況があり得る。クロストークおよびブリードオーバーなどの系統的ノイズ因子は、ベースライン補正を実施する際には取り扱いが特に難しい可能性がある。
【0050】
先行技術の一部のシステムでは、定性的結果または定量的結果において低レベルのシグナルを検出するために、低い閾値が必要である。しかしながら、低閾値を使用すると、クロストークのために偽陽性シグナルと正確な陽性シグナルとの間の識別が特に困難になる。それは、いずれによってもPCR曲線が増幅閾値を超えることで、標的分析物が存在することが示唆されるからである。陽性および陰性の陰性ブリードオーバーも問題を生じさせ得る。陽性ブリードオーバーは、偽陽性の結果を生じる可能性があるか、サンプル中の標的の初期量を誤って高く推定させる可能性があり、陰性ブリードオーバーはサンプル中の標的の初期量を誤って低く推定させたり、試験サンプル中に標的が存在しないと誤って示す可能性がある。
【0051】
本発明の方法またはシステムは、好ましくは情報処理システムを用いて反応曲線またはデータにおける領域を再現性良く確認することができ、次にそれを用いて増幅反応データに基づいた結果を提供することができる。本発明は、たとえかなりのノイズが存在しても、シグナルのベースラインレベルとは無関係に、その領域を確認することができる。本発明はさらに、その領域での効率を代表する値を確認することができる。その値は、主要な結果を求めたり、結果を調節したり、本明細書に記載の信頼値を求めたり、またはそれらの全てを行うのに用いることができる。
【0052】
本発明は、下記の示す具体的な実施例によって説明することができる。この例では、情報処理システムを用いて、増幅反応の成長曲線を表すデータを解析する。その増幅では、データ解析中の1段階によって「ピーク」が生じる。そのピークの位置(増幅反応開始からの時間単位またはサイクルで測定)は、部分サイクル数(FCN)と称され、ピークの最大値はERV(効率関連値)と称される。これらの値を、効率関連値領域を確認する方法およびそのピークでの効率関連値の測定方法で用いることができる。これらの値のいずれも、同一サンプルで開始したとしても反応ごとおよび装置ごとに変動し得る増幅シグナルの強度とは無関係に反応曲線の形状を解析する方法から誘導されるものと理解することができる。反応曲線は、反応における標的の量を実質的に示すシグナルが時間または適切であればサイクル数の関数としてプロットされる反応を表すものである。FCNは反応曲線の最大成長効率の点に常に関連していると理解することができ、ERVはその時点での効率に常に関連していると理解することができる。
【0053】
本発明の一部の実施形態では、任意にそして有利には、ベースライン補正を用いずに、解析方法を用いることができる。
【0054】
本発明により、一部の先行技術で用いられている主観的かつ変動し得る閾値やCt値を計算する必要なく、試験サンプル中に存在する標的の量を客観的に定量することが可能となる。さらに本発明は、C後のサイクルでのデータなどの以前は無視されていたデータなどのPCR増幅曲線の形状を解析することで、反応における阻害程度を求める上で利用可能な情報を用いることができる。
【実施例】
【0055】
反応曲線データから求められるデータペアの形成および使用の一般的方法については、下記の実施例から理解されよう。明瞭を期して、これらの実施例は、特定のデータセットおよびそのデータを解析するための具体的な関数に言及するものである。ただし本発明は、議論されている実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1−捕捉データ)
1例として、代表的なリアルタイムPCR反応検出システムによって、1以上の検出色素から発生するシグナルを記憶するデータファイルを作成する。図1には、本発明による解析方法で使用することができる捕捉反応データのプロットを示してある。この例では、1色素シグナル(DYE1)が捕捉標的データを提供し、別の色素シグナル(DYE2)が捕捉内部対照データを提供し、さらに別の色素シグナル(DYE3)が任意の捕捉基準データを提供する。これらのデータは、標準出力ファイルから取った単一の反応からのデータを代表するものである。この特定のプロットは、何らかの形の複数成分アルゴリズムが適用された初期データを表すものと理解することができる。このプロットにおいて、x軸はサイクル数(例:1〜45)、y軸は相対的な蛍光単位で検出される色素強度を示す。この図においては、3種類の異なる捕捉データセットを、連続曲線として示している。しかしながら実際の捕捉データ値は、各サイクル数で捕捉される別個のシグナル値である。従って、図1に示した初期データセットは、3組(標的、対照および基準)の好適な別個の値(例えば、この場合には約50値)からなるものであることができる。
【0057】
(実施例2−正規化)
任意ではあるが、いくつかの異なる方法で、捕捉データについて正規化を行うことができる。一つの方法には、相当する基準色素シグナルによる各サイクル読み取り時での標的値と対照値の分割が関与する。あるいは、約数は全サイクルにわたる基準値であったり、一定のサイクルにおける平均であることができる。別の別途実施形態では、増幅シグナルが検出されない場合には、約数は、1以上の比較的初期の(ベースライン)サイクルでの標的色素もしくは対照色素の平均または標的色素および対照色素の平均であることができる。公知の正規化方法を、データ解析に用いることができる。PCRシステムによってすでに正規化されているデータとともに、本発明を用いることができる。図2は、本発明に従って正規化された標的および対照データセットを示す捕捉反応データのプロットである。この例では、正規化の結果として、y軸スケールは単純な数字で表わされる。この場合、数字は約0〜9である。他の正規化方法が当業界で公知であり、その数字を0〜100の値や他の所望の範囲に変換することができる。
【0058】
正規化は任意であることから、正規化や基準色素を用いずに、本発明を用いて反応データを解析することができる。あるいは、標的シグナルもしくは対照シグナルまたは両方を正規化に用いることができる。
【0059】
(実施例3−スケール調整)
スケール調整は任意であるが、それを行って、オペレータがデータを目視しやすくすることが可能である。スケール調整は解析結果に影響するものではない。スケール調整は、正規化に加えて、正規化を行わずに、または正規化の前もしくは後に行うことができる。
【0060】
スケール調整の一つの方法では、陽性データシグナルが検出される前のベースライン領域で、いくつかの初期サイクル中の値の平均で各データセット値を割る。この例では、4〜8の読み取りの平均を求め、最初に正規化を行った。図3は、スケール調整を行った標的および対照データを示す反応データのプロットである。この例では、スケール調整は標的および対照の早期値を1とするもので、早期値が1未満であることから、割り算によってその後の値は若干大きい純粋な数値となる。
【0061】
(実施例4−デジタルフィルタリング)
捕捉データに1以上のデジタルフィルタリング法を適用して、シグナルデータセットを「クリーンアップ」し、シグナル/ノイズ比を高めることができる。多くの異なるフィルタリングアルゴリズムが知られている。本発明は、ゼロなしの4極フィルターを用いることができる。それによって、フィルタリングされたシグナルのオーバーシュートの可能性がなくなる。例として、それは、前方および後方の両方のフィルターが位相ずれ(時間遅延)を排除するMATLABのシグナル処理ツールボックス(Signal Processing Toolbox)が添付されたMATLAB関数「フィルトフィルト(filtfilt)」で行うことができる。パラメータおよびMATLAB関数呼び出しの1例は次の通りである。
b=0.3164;
a=[1.0000−1.00000.3750−0.06250.0039];
データ(:,:,アッセイ)=フィルトフィルト(b,a,データ(:,:,アッセイ));
データ(:,:,ic)=フィルトフィルト(b,a,データ(:,:,ic));
【0062】
この例では、「b」および「a」はフィルター係数を含む。「データ(:,:,アッセイ)」および「データ(:,:,ic)」は、正規化、スケール調整またはその両方を行っていても良いまたは行っていなくとも良い捕捉データを含む。この場合、フィルタリングされたデータについて、正規化とスケール調整の両方を行う。図4は、デジタルフィルタリング後の標的および対照データを示す捕捉反応データのプロットである。値はデジタルフィルタリングによって変化しないが、データセットは若干「平坦化」される。
【0063】
(実施例5−傾き除去/ベースライン化)
任意の傾き除去方法を用いて、検出可能な実際のシグナルが生じる前に早期ベースラインシグナルに存在する残存傾斜を除去することができる。この手順はベースライン化と称することもできるが、一部の実施形態ではオフセットは除去せず、傾きのみである。本発明によれば、傾き除去の場合、標的(DYE1)および対照(DYE2)シグナルの両方を同時に調べる。いずれか最初に出た方のシグナルが前方回帰点を規定し、メソッドは10サイクル戻る。10サイクル戻りがサイクル5以前である場合は、サイクル5を初期回帰点として用いて、比較的早期の一過性シグナルを回避する。これらの点間のシグナルデータを用いて線形回帰線を計算し、各色素についての回帰の傾きを色素のシグナルから引く。この場合、傾き除去を、上記で記載の正規化、スケール調整およびフィルタリングしたデータに適用する。図5は、勾配値を除去した標的および対照データを示す捕捉反応データのプロットである。これらの各図において、早期サイクルでは傾きはほとんど存在しなかった。従って、傾き除去は捕捉データ値にほとんど影響していない。
【0064】
(実施例6−変換値計算)
本発明の方法の1実施形態は、MaxRatio法である。この方法では、順次測定値間の比率を計算することで、一連の比率を得て、そのそれぞれを時間値およびサイクル数にインデックス付けすることができる。これらの比率を計算する好適な手段が多くあり、いずれか好適な手段を用いることができる。最も簡単なこの比率計算法は、下記の関数を利用するものである。
【0065】
比率(n)=s(n+1)/s(n)
式中、nはサイクル数を表し、s(n)はサイクルnでのシグナルを表し。この計算は、応答のベースライン領域において約1で開始し、成長領域中に最大まで上昇し、平坦領域で約1に戻る曲線を提供する。この計算を効率的に行うMATLAB表現は、下記の通りである。
【0066】
比率=s(2:end,:)./s(1:end−1,:)
式中、「s」は、各列が別個の応答を表すシグナル応答行列を表す。
【0067】
図6は、この比率変換の1例を示す図である。固有のバックグラウンド蛍光のため、その比率は、シグナルが倍加されている場合のPCR反応に予想されるように2には達しない。それとは無関係に、ピークの大きさは増大性強度変動とは独立であり、その点での成長速度または効率に比例する。その比率計算方法は単純であり、効率的に計算される。他の等価な計算を行うことができると考えられる。1例では、正および逆の比率を計算してから、それらの平均を求めるものが考えられる。その比率の逆数を用いることができ、その場合は、曲線はベースライン領域では約1の値で開始し、成長領域で低下し、平坦領域で約1の値に戻る。次に、ピークではなく谷の大きさおよび位置を用いて解析を行うことになると考えられる。この変換は、比率法と実質的に等価な方法で実行することができる。
【0068】
MaxRatioアルゴリズムは上記のように使用可能であるが、各点から定数(例えば、約1)を引くことで曲線をシフトさせることが簡便である。この操作は、元の応答の変換を提供するものであり、ベースライン領域でほぼゼロで始まり、曲線の成長領域で上昇してピークに達し、平坦領域でほぼゼロに戻る。このシフト比率計算は、比率(n)={s(n+1)/s(n)}−1という関数によって説明される。図7は、このシフト比率計算の出力を示す図である。次に、シフト比率曲線のピークの反応点および大きさを求める。反応点(すなわち、x軸方向の距離)はFCN値を指定するものであり、大きさは効率関連値MR(比率の最大値)を指定するものである。
【0069】
(実施例7−内挿)
サイクル数の分離能を高めるため、内挿を行うことができる。この操作を行うには多くの方法が当業界で知られている。本発明の文脈における一つの内挿方法は、三次スプライン補間であり、それは平滑な内挿を提供することで、捕捉データセットの二次導関数であっても連続的となるものである。本発明を用いて一連のデータ全体を内挿することができる。本発明を用いて、対象の領域を決定し、その領域のみで内挿を行って、周期より小さいまたはサイクルより小さい分離能を達成することができる。三次スプライン補間を行うためのMATLABコマンドの1例は、下記の通りである。
【0070】
out=interp1(x,in,x2,’spline’)
式中、「x」は周期(またはサイクル)数(1、2、3...)を表し、「in」はそれらのサイクルでの未内挿シグナルを表し、「x2」は相対的に高分離能周期(またはサイクル)ベクトル(1.00、1.01、1.02、...)を表し、「out」は「x2」での部分サイクルに相当する内挿シグナルを表す。
【0071】
図8は、内挿されて関数の連続性を提供している標的および対照データを示す捕捉反応データのプロットである。内挿の結果として、データセット中の値の数字が大幅に上昇し、例えば43値から4201値に上昇する。
【0072】
理解すべき点として、上記で記載の段階を異なる順序で行うことができる。例えばフィルタリングを最初に行い、次にベースライン化を行って、その後にスケール調整を行うことができる。しかしながら、内挿を行ってから比率計算を行う場合、比率計算に適した内挿応答値を選択するよう注意を払う必要がある。比率値間の間隔が同一のままとなるようにすることが重要である。従って、サイクルを測定周期として用い、内挿によって時間分離能が0.01サイクルまで上昇する場合、x=2.35でのシフト比率はR=s(3.35)/s(2.35)−1になると考えられる。
【0073】
(実施例8−ピーク発見による標的および対照のFCNおよびERV(例:MR)測定)
別の段階は、一連のデータにおいてピークを選択するというものである。この操作では、(1)局所ピークを発見する段階および(2)任意に基準データ(前記で定義)を用いて、局所ピークから1以上のさらなる解析用ピークを選択する段階を行う。
【0074】
ピーク発見アルゴリズムは、極大を表す正から負への曲線勾配の変化を確認するものである。このアルゴリズムは、ピークの位置および大きさを確認するものである。その計算を行うためのMATLAB関数の1例は次の通りである。
【0075】
【数1】

【0076】
図9は、本発明の実施形態による標的および内部対照色素の確認されたFCNおよびMR値ならびに基準曲線を示す効率計算の図である。標的データに関しては、FINDPEAKSが、一つのピークを0.354の大きさでサイクル軸x=19.42に配置した。内部対照データに関しては、FINDPEAKSがx=2.03、5.29、7.67、12.83、22.70、37.86でピークを発見し、それぞれの大きさは0.0027、0.0027、0.0022、0.0058、0.1738、0.0222である。
【0077】
(実施例9−ピーク選択による標的および対照のFCNおよびERV(例:MR)の測定)
上記で論じた方法において、多くの極大ピークが標的データおよび対照データの両方で確認される場合が多い。それらの極大ピークのどれを用いてFCNおよびERVを求めるかを選択するのに、各種方法を用いることができる。
【0078】
代表的には、そして特に反応が正常に進む時には、最も高いピークまたは最大ピークを選択する。多くの状況で、その選択によって、本明細書で記載のようにさらに計算を行う最も再現性の高い反応点が提供される。しかしながら、状況によっては、最初のピーク、または特定のカットオフより上もしくは特定数のサイクル後の最初のピークが好ましい。従って、特定の例では、Max Peak選択もしくはFirst Peak選択を用いることができ、Max Peakはシフト比曲線での最も大きいピークを見いだすものであり、First Peakは何らかの選択値より高い第1のピークを見いだすものである。
【0079】
基準データが決定されたら、そのデータを用いて、特に弱くてノイズの多いシグナルの場合に、実際の操作時にERV測定用にどのピークを選択するかを決定することもできる。
【0080】
例えば図9において、色素2データの場合、ピーク発見アルゴリズムが6つの局所ピークを見いだしているが、5番目のピークが最大ピークであり、基準曲線より上にある唯一のピークでもあった。従ってこの例では、色素2について求められるFCNは22.70であり、色素2について求められるMRは0.1738である。
【0081】
情報機器またはシステム装置を用いて、本発明の方法を行うこともできる。図10は、本発明の実施形態による反応データ特性決定を行うためのフローチャートである。この一般的方法の詳細については、下記の議論から明らかになろう。
【0082】
本明細書に記載の解析方法は、既知もしくは不明の標的濃度を有する反応に適用することができる。1実施形態において、既知標的核酸濃度は、多ウェル反応プレートで行われる反応における較正ウェルに含まれ、反応点のERVおよび値を、これらの既知濃度サンプルから用いて、定量を実施する。既知濃度を用いて、本明細書でさらに説明する基準データを得ることもできる。
【0083】
(実施例10−基準曲線/基準データセットの決定)
他の実施形態において、効率関連値(例:MR値)を、既知濃度の多くのデータセットに関するそれらの反応点値(FCN)値の関するとしてプロットして、特定のアッセイに特徴的な基準曲線を得ることができる。その基準曲線は、特定のアッセイ設計および検出プロトコールの特徴を有し、陽性/陰性結果を高信頼性で求め、ある特定の結果が信頼性がないものとして棄却するか否かを決定し、結果の信頼性尺度を求め、またはそれらの組み合わせを行うのに用いることができる。概して、基準曲線より下にある反応データのペアは、非反応性サンプルまたはかなりの阻害を受ける反応のような非機能性反応を示す。
【0084】
基準データを用いて、反応解析でどのピークを報告もしくは使用またはその両方を行うかを選択することができる。基準データは、陰性結果(例えば、全く存在しない標的)と低量の標的を示す結果との間を識別する自動的な高信頼性の方法を提供する。
【0085】
図11は、6組の既知濃度の反応(すなわち、標準もしくはキャリブレータ)および1組の陰性反応がMR値の計算FCN値の関数としてプロットされたプロットである。このプロットによって、基準曲線を選択することができる。前述の基準曲線は、陽性結果を陰性結果から分ける曲線または直線である。その基準曲線は好ましくは、それが(プロットのx−y空間において)陰性反応データに比較的近く、しかもその上にあるように選択する。図11では、同一もしくは類似のアッセイ条件下で測定された既知濃度の多くのサンプルからのMR−FCNデータのペアを、サンプルが陰性物とも称されるアッセイの標的を含まないサンプルからのMR−FCNデータのペアとともにプロットする。陰性物は増幅応答を示さないはずであるが、その解析方法はそれらサンプルについてのMR−FCNデータペアを決定するものではない。陰性サンプルについてのこれらのデータは通常、通常はランダム応答である応答出力上のノイズ由来最大値に相当する。ノイズから求められるMR値は非常に低く、既知濃度サンプルからの応答からはかけ離れている。ブリードオーバーなどの系統的ノイズ源がある場合には、陰性反応におけるMR−FCNペアがクラスタ形成する場合があり、その場合には、MR−FCNペアが偽って陽性反応シグナルであるように見える可能性がある.真陰性に対して真陽性のMR−FCN応答を特徴付ける場合、図11において波線または曲線、すなわち基準曲線によって表されるこれら2組のデータ間の明瞭な分離領域を確認することができる。この図では、各円はFCN−MRデータペアを表す。この場合、円の各クラスタは、標的の既知濃度での複数応答を表す。この例内には、6つの既知濃度で8つの異なる反復がある。例えばプロットの右から、これらの既知濃度は50コピー/mL、5×10コピー/mL、5×10コピー/mL、4×10コピー/mL、5×10コピー/mLおよび5×10コピー/mLの濃度を表すことができる。これらの基準データクラスターを用いて、基準曲線を得ることができる。
【0086】
複数の比較的単純な基準データセットを用いて、多くのアッセイに特徴的な基準曲線を得ることができる。ある有用なアプローチでは、陰性応答のセットについてMR値の平均を取り、陰性応答についてのMR値の複数の標準偏差をその値に加える。図11に示した例では、陰性応答についての前記平均+MR値の10個の標準偏差に等しい水平線となるように、基準曲線を設定した。この例での基準値を計算すると、約0.026となった。一部のシステムでは、他の検討を加えることで、例えばクロストークもしくは陽性ブリードオーバーなどの可能なシグナル異常を考慮する上で望ましい基準値の変更を行うことができる(例:FCN−MR値)。クロストークは、複数ウェル装置の陽性ウェルでのシグナルから生じて、異なるウェルからのシグナルに影響を与える可能性がある。ある装置では、2%という量のクロストークが観察されている。そのため、その基準が高くなって、真陰性サンプルを陽性サンプルとして分類することを回避できる。図11で表したアッセイデータの場合、陽性アッセイにおいて最もMR値は約0.50である。この値のパーセントは0.010である。0.010ずつ基準を上昇させることで、クロストークによる擬陽性を排除すべきである。このアッセイでの最高MR値は相対的に小さいFCN値を有する相対的に高濃度のサンプルでのみ起こることから、クロストークが起こりやすい相対的に小さいFCN値でのみ前記基準を高くすることができる。この変更基準セットは、多成分曲線を記述する一連のデータ対(X,Y)によって記述することができる。例えば、図11に示した変更基準曲線は、下記の基準データセットによって特定することができる。
【0087】
(X,Y)=(1,0.036)
(X,Y)=(20,0.036)
(X,Y)=(25,0.026)
(X,Y)=(45,0.026)。
【0088】
別の例として、図10に示した基準曲線は下記の基準データセットによって特定することができる。
【0089】
(X,Y)=(1,0.10)
(X,Y)=(10,0.10)
(X,Y)=(20,0.05)
(X,Y)=(40,0.05)。
【0090】
不要な実験を行うことなく、異なる形状もしくはより複雑な形状またはその両方を有するセットなどの基準曲線および/または基準データセットを決定することができる。PCR使用の所期の用途は、基準線を確立する上での異なるアプローチを必要とするものである。当業者であれば、あるアッセイで高感度が要求される場合、低い基準線を用いることは容易に理解されよう。例えば、母集団コンセンサス配列(すなわち、「野生型」配列)と多形もしくは変異配列(例:「一塩基多形」)などの配列変異体を識別するようアッセイを設計する場合、配列変異体の確認には通常は標的核酸の限界量の検出必要ないことから、比較的高い値の基準線を用いることができる。
【0091】
図11に示した特定の例は、内部対照(IC)シグナル応答からアッセイシグナル応答への陽性ブリードオーバーを示さない。アッセイブリードオーバーに対する陽性ICシグナル応答が存在すると仮定した場合、基準に対する同様の変更を行うことができると考えられる。ICシグナル応答は狭い範囲のFCN値でのみ起こるはずであることから、その基準はその限られた範囲でのみ上昇させることができると考えられる。
【0092】
通常、本明細書においてさらに議論するように、対象とする標的濃度範囲にわたって既知濃度のサンプルについてFCN−MR応答を求めて、「正常」応答を定義する。アッセイ反応を調べるサンプルの母集団における別の試験を行って、アッセイ成績が低下する前にMRにおいてどれだけの劣化が許容されるかを確認することができる。それらの種類の特性決定解析を用いて、標準偏差や標的核酸を含まないサンプルを増幅条件下で処理した時に認められるノイズもしくはベースラインの他の特徴から独立の基準データもしくは基準データセットを確立することができる。
【0093】
本発明の他の実施形態によれば、基準データは、先行技術においてすでに行われているC解析においてCを求める場合と同様の方法で求めることもできる。設計中の特定のアッセイを多数回行って、それの代表的なMR−RCN応答の特性を決定することができる。その代表的な応答から、基準データセットを定義することができる。しかしながら、C解析の場合とは異なり、FCN−MRでは、応答はシグナルとは独立であって、同一サンプルで非常に変動性の高い結果を生じる特定種類の装置においてであっても容易に再現することができる。
【0094】
(実施例11−別の対象領域)
上記で測定される効率関連値のFCN値を調節して、さらに再現性の高い定量値を得ることができるという効果があることが、経験的に認められている。例えば図12は、同じ初期濃度を有するサンプルについての反応曲線が各種反応異常のためにどのように変動し得るかを示した2組の反応データのプロットである。この図には、等しい量のHIV標的核酸を含むサンプルについての2つの応答を図示してある。しかしながら、一方の応答では、その反応から得られたシグナルは、反応における異常のために早期に低下している。この低下は、図13に示すように、シフト比曲線の最大値から求めたFCN値を2つのサンプル間で大きく変動させ得る。しかしながらこの図は、その2つの勾配曲線が、グラフのx軸上にプロットされた初期または早期サイクル数と比較的大きく類似していることも示している。
【0095】
そこで本発明では、本明細書に記載の解析について用いることが可能な反応曲線上の別の点の位置である最大効率値のサイクル数(以下、FCN2値と称する)からのオフセットを求める。さらに別の実施形態では、効率関連値閾値(ERVT)または比閾値(RT)値を選択および使用して、対象のサイクル数領域を決定することができる。ERVTまたはRTは、特定のアッセイについて自動的または経験的に求めることができる。RT値は、アッセイ較正時の後者のサイクルで求められる基準データレベル付近もしくはそのレベルで設定することができる。
【0096】
本発明の方法の1実施形態は、シフト比曲線上のFCN値で開始し、その曲線がRT値を通過する相対的に早い反応点を求める。その反応点を、FCN2値として報告する。FCN2値は、非特異的な生成物形成が低コピー数を有するサンプルでの生成物形成の効率を低下させる反応などの、ある種のアッセイにおけるFCN値とは対象的に、低コピー数を有するサンプルにおいて改善された直線性を提供するものと考えられている。
【0097】
図13は、オフセット効率値を用いることが望ましいことを示す図である。この図は、図12に示した応答におけるシフト比曲線および0.03でのRT線を示す。この例について、FCNおよびFCN2値を表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
この例では、一方の応答の曲線が早期に平坦となり。他方の応答の曲線と形状が異なっており、シフト比曲線が差を示す。この早期平坦化が相対的に早いピークを生じさせ得る。この例では、FCN2値の方がFCN値より合致性が高い。通常、FCNおよびFCN2値は、C値より正確(標準偏差が相対的に低い)ことが認められている。これらの例はMRの使用に焦点を当てたものであるが、増幅反応の効率の他の尺度を本発明のFCNおよびFCN2実施形態で用いることが可能であることは明らかであろう。本発明の文脈において有用な他の効率関連変換値には、(a)一次導関数の使用、(b)連続する周期データ点間の差の使用、および(c)成長曲線の対数の傾きもしくは勾配の使用などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
(実施例12−MR−FCN解析を用いる定量)
各種反応解析において定量が望ましい場合が多い。例えばPCR反応において、定量とは、反応を解析することによって、未知濃度を有する標的の開始時の量もしくは濃度を計算することを指す。本発明には、効率関連値およびサイクル数値(例:FCN)を用いて定量を行うための方法もしくはシステムまたはその両方が関与する。具体的には、試験サンプルのERVを、それぞれが既知量の標的核酸を含む少なくとも1個のキャリブレータ、好ましくは少なくとも2個のキャリブレータ、そして任意に3、4、5もしくは6個のキャリブレータの1以上のERVと比較する。
【0101】
さらに別の実施形態では、定量は、1以上の較正データ捕捉および1異常の定量データ捕捉が関与するものと理解することができる。較正データおよび定量は、定量関係もしくは式の使用に関係する。
【0102】
較正では、捕捉データまたは捕捉データから誘導される値(FCN、FCN2もしくはMRまたはそれらの組み合わせなど)と1以上の開始時濃度既知の反応との間の関係を用いて、定量式における1以上のパラメータを確立する。次にそれらのパラメータを用いて、1以上の未知反応の開始時濃度を求めることができる。
【0103】
反応解析での定量および/または較正を行うには、各種の方法および技術が公知である。例えば、診断PCRの状況では、96ウェル反応プレートで試験サンプルを分析することは珍しいことではない。各96ウェル反応プレートでは、一部のウェルが、既知の初期標的濃度を有するサンプルでの較正反応専用である。次に、それらのサンプルについての較正値を用いて、ウェル中の未知濃度のサンプルを定量することができる。
【0104】
2つの一般的な種類の較正方法が、1点較正および標準曲線(例:多点)較正と称される。これらの種類の例を以下に示す。しかしながら、いずれの好適な較正方法も本発明の文脈において用いることが可能である。
【0105】
阻害や妨害がない場合、PCR反応が進行して、標的配列が指数関数的な成長を示すことで、Nサイクルの複製後、下記の関係に従って、初期標的濃度が増幅されている。
【0106】
Conc∝Conc(1+e)
この式は、下記のようにも表現することができる。
【0107】
【数2】

上記式中、ConcはN反応サイクル後の増幅標的濃度を表し;Concは、増幅前の初期標的濃度を表し;Nはサイクル数を表し;eは、標的増幅の効率を表す。
【0108】
定量データ解析を用いてリアルタイムPCR反応曲線を解析することで、許容される程度の正確さまでConcを求める。以前のC解析方法は、Concが解析下の全ての反応について同じである反応点でのサイクル数を求めようとするものである。本発明の方法によって求められるFCN値は、入力標的濃度のダイナミックレンジにわたって重大な阻害やシグナル劣化が示されないアッセイにおけるサイクル数Nの良好な推定値を提供する。開始時濃度とFCNとの間の下記の比例関係を用いることができる。
【0109】
【数3】

式中、Conc(FCN)は、本発明の方法によって測定されるFCN値を用いることで測定される初期標的濃度の推定値を表す。
【0110】
すなわち、標的の開始濃度が低いほど、PCR反応で求められるFCN値が高くなる。この関係を、較正データと定量データの両方について用いることができる。
【0111】
この比例関係は、下記のような等価な式として表すこともできる。
【0112】
【数4】

式中、Kは較正比例定数を表す。
【0113】
較正データについて、Conc(FCN)は標的核酸500000コピー/mLなどの既知濃度を表し;指数部FCNは、上記で求められるFCNサイクル数であり;eは、反応における効率値を表し、e=1は各サイクルの倍加を示す。これらの因子を組み合わせて、比例定数の測定を可能とする関係を形成する。その比例定数測定は、増幅反応の効率eについての演繹的知識がある場合にのみ行うことができる。この演繹的知識は、1点較正を可能とするものである。定量データの場合、標的の未知濃度を有するサンプルが関与する反応についてFCN値を求める。次に、上記の等式を用いることで、FCN値を濃度値に変換する。効率eが演繹的に未知である場合、標準曲線定量法を用いることができる。この場合、較正データについては、各種濃度の既知濃度を有するサンプルを増幅し、それらのサンプルのFCN値を求める。それらのFCN値を、既知濃度の対数(底10)に対してプロットして、対数(濃度)−FCN応答を記述する。入力標的濃度のダイナミックレンジにわたって有意な阻害やシグナル劣化を示さないアッセイの場合、この応答は代表的には、直線によって良好に適合される。下記式は、この標準曲線の形態を記述するものである。
【0114】
Log10(Conc(FCN))=m×FCN+b
式中、Log10(Conc(FCN))は、初期標的濃度の対数(底10)を表し;mは、線形標準曲線の傾きを表し;bは、線形標準曲線の切片を表す。
【0115】
2以上の既知濃度較正サンプルを用いることで、線形回帰を適用して、標準曲線の傾きmおよび切片bを求めることができる。定量データに関しては、未知濃度の試験サンプルが関与する反応についてFCN値を求め、次に上記の一次方程式を用いることで、その値を対数(濃度)値に変換する。結果を、対数(濃度)または適切な変換によって濃度単位で報告することができる。
【0116】
留意すべき点として、1点較正式は、この線形標準曲線型に容易に変換される。
【0117】
【数5】

【0118】
Log10(Conc(FCN))=−log10(1+e)×FCN+log10(K)。線形係数mを用いて、特定のPCR反応の効率を計算することができる。
【0119】
(実施例13−定量の調節)
PCR反応が阻害を受ける場合、得られるリアルタイムPCRシグナル強度は、抑制されるか遅延し得る。このシグナル劣化がMRなどの効率関連値に与える効果は、その値における低下である。さらに、部分サイクル数に対するシグナル劣化の効果は、阻害を受けない反応で予想されるものより早いサイクル数でのFCNの確認である。これらの要素により、FCNの関数としての対数(濃度)のプロットが、線形曲線適合関数によって十分に記述されないようになる。標準曲線には比較的高次の曲線適合関数を適用することができるが、直線回帰は相対的に低い較正レベルを必要とし、計算が相対的に簡単である。
【0120】
これらの問題のうちの一部は、上記の定量関係にERVまたは強度値を組み込むことによって、標準曲線解析で取り扱うことが可能である。従って、上記の等式は下記のように書き換えることができる。
【0121】
【数6】

【0122】
式中、強度は測定FCN値での応答強度(バックグラウンドより高い)を表し;MRは、前述のMR値を表す。Conc(FCN強度Adj)は、強度値を用いることで調節されるFCN値を用いることで求められる標的の初期濃度の計算値を表し;Conc(FCNMRAdj)は、MR値を用いることで調節されるFCN値を用いることで求められる標的に初期濃度の計算値を表す。
【0123】
これらの表現は、上記のような、特定FCNサイクルでの強度もしくは特定FCNサイクルで測定されるMRまたはその両方と阻害存在下でのFCN値に対する変化との間で認められる関係を利用するものである。正味の効果は、上記の比例表現の右側が、PCR増幅曲線に影響を与える阻害および他の要素に対して比較的感受性が低いことから、標的の濃度値を求める上での表現としてかなりの堅牢性を提供するというものである。
【0124】
下記の議論は、FCN、FCN強度AdjおよびFCNMRAdjの特性および関係をさらに説明するものである。効率が1であると仮定すると、前記式は下記のものに簡略化することができる。
【0125】
【数7】

【0126】
これらの表現に対数底2を取ると、下記のようになる。
【0127】
Log2(Conc(FCN))∝FCN
Log2(Conc(FCN強度Adj))∝FCN−Log2(強度)
Log2(Conc(FCNMRAdj))∝FCN−Log2(MR)。
【0128】
これらの表現の右側から、強度またはMRの補償を行って下記式によってFCN値を調節する値が得られる。
【0129】
FCN強度Adj=FCN−Log2(強度)
FCNMRAdj=FCN−Log2(MR)。
【0130】
次に、FCN値またはC値の使用と類似の調節FCN値を用いることで、この計算によって定量が得られる。留意すべき点として、これらの調節FCN値の使用によって、阻害ならびに未知サンプル中の標的の濃度を測定するのに使用されるCt値などのPCR増幅に影響する他の要素に対するかなりの堅牢性を提供する。対数(濃度)−これら調節FCN値のプロットは、線形標準曲線によって良好に適合される。従って本発明は、サンプル中の標的核酸の量を測定する方法であって、(a)効率関連値、好ましくはMRの最大値に相当する増幅反応の期間もしくはサイクル数を見出す段階、(b)強度の対数もしくはMRの対数を引くことでその値を調節する段階、ならびに(c)前記の得られた値を同じ方法を用いて得られる較正データと比較する段階を有する方法を提供する。
【0131】
(実施例14−標準曲線較正)
既知濃度からの標準曲線の作成と定量におけるそれの使用は当業界で公知であり、下記の実施例からさらに理解が進む。代表的な例では、各増幅または一連の増幅時に多くの較正反応(初期濃度が既知であるウェルでのものなど)を用いて、較正操作を行う。広い範囲の可能な初期濃度でサンプル中の標的核酸を定量しようとした場合に生じる一つの問題は、特定の反応での比較的低量の標的核酸の定量がより困難になるという点である。例えば図14には、試験サンプル中のHIVの量を定量するよう設計されたアッセイについてのデータを示してある。それらの反応は、50;500;5000;50000;500000;および5000000コピー/mLという標的核酸の6種類の既知濃度について8連で行った。アッセイデータは、コピー数が低い(曲線が右に対して最も遠い)反応での有意なシグナル抑制を示している。標的核酸の4つの最高濃度の量(左側の曲線集合)によって低い変動係数で正確な結果が得られたが、2つの最低濃度では、正確さの低い曲線が得られた。ダイナミックレンジが100000〜1またはそれ以上であるアッセイでの低濃度の標的核酸を定量する上での難しさが原因で生じるその不正確さは、下記の本発明の方法によって扱うことができる。
【0132】
反応プレートでの較正試験は比較的高価であることから、従来では最小数の許容される較正データセットを収集する。例えば、ある実行では、それぞれ500;50000;および5000000コピー/mLサンプル2連の平均を診断アッセイとともに行うことで、較正反応で用いる96ウェルプレートで恐らく6個のウェルが必要である。
【0133】
サイクル数とキャリブレータ濃度の対数の間の関係は実質的に線形であることから、キャリブレータ濃度の対数(例:log10)とサイクル数との間で線形回帰を行うことができる。この回帰は、エクセルプログラムおよび他の数学的解析ソフトウェアによって容易に行うことができる。図15には、4種類の異なるサイクル数関連値(例:FCN、FCN2、FCNMRAdj.およびFCNint.Adj.)を用いて3点較正データから得られた4つの線形標準曲線を示してある。
【0134】
各曲線適合式において、x軸はLog10[標的]実際または既知濃度を示す。従って、xについての解法は、サイクル数関連値からアッセイのLog10(標的)計算濃度への変換に関する表現を提供するものである。アッセイ応答がLog(標的)と直線的でない場合、より高次もしくはより複雑な回帰もしくはより多くの較正曲線またはその両方を用いることができる。本実施例では、下記の式を求めた。
【0135】
FCN=−3.0713Log10(Conc)+31.295
FCN2=−3.0637Log10(Conc)+25.006
FCNMRadj=−3.2344Log10(Conc)+33.271
FCNInt.adj=−3.2870Log10(Conc)+32.775。
【0136】
(実施例15−各種サイクル数関連値を用いる定量の比較)
上記の異なるサイクル数関連値を用いた較正の異なる特性を調べるため、既知濃度を有する各種サンプルについて定量を行い、計算濃度を既知濃度と比較することができる。そのような比較の1例では、上記で得られたパラメータを有する標準曲線を用いて、図14に示したアッセイの定量を行った。各既知濃度での8連の計算濃度の平均を、既知濃度値と比較した。図16は、既知濃度値のlog10(x軸)を、各濃度での8個のサンプルについての各計算濃度のlog10の平均と比較するものである。
【0137】
図16によって示したように、50コピー/mLサンプル(log(濃度)=1.7)はFCNを用いると若干上に定量されるが(すなわち、実際の濃度より高い)それより高い濃度での(MRの)FCN法における正確さは非常に良好である。FCN2は最低濃度でより正確であるが、若干下に定量され(すなわち、実際の濃度より低い)、いくつかのそれより高い濃度で比較的低い線形性および正確さを示す。FCNMRAdj.は、その濃度範囲を通じて非常に正確かつ直線的な定量を示した。FCNIntAdj.も、最低濃度での非常にわずかな下方定量以外は、FCNと比較して正確さおよび線形性においてかなりの改善を示した。従って、4つのいずれの方法も良好に機能するが、特定の状況では一部のものが他のものより優れている。従って当業者は、特定の用途に適した方法を容易に選択して、優れた結果を得ることができる。
【0138】
(実施例16−1点較正を用いる定量)
1点較正を定量に用いることができる。この場合、50000コピー/mL濃度(Log(4.7))での2つのウェルを較正に用いた。較正定数を計算するため、下記式:K=Conc0FCN[式中、Kは較正定数を表し;Concはキャリブレータの既知濃度を表し;FCNはキャリブレータの部分サイクル数を表し;前述した反応効率eは1であると仮定する。]を用いる。FCN2、FCNMRAdj.およびFCNInt.Adj.などの比例関係を用いて、同様の較正定数を得ることができる。
【0139】
この場合、2つのウェルについて定数を得て、平均を用いた。較正定数が得られたら、各アッセイについての濃度を下記式:Conc=KFCN/2FCNで計算する。図17は、1点較正からの結果を示す図である。
【0140】
図でわかる通り、FCN結果は、最低の2濃度で高く、log(Conc)=3.7以上から正確である。FCN2は、FCNと比較して低濃度で向上した正確さを示しているが、log(標的)=5.7および6.7では低く定量している。FCN−MR調節は、範囲全体で良好な線形性を示し、2つの最低濃度では若干高い定量を示している。FCN−強度調節も、良好な線形性を示し、2つの最低濃度で非常にわずかな下方定量を示している。従って、これらの各実施形態は良好に機能し、当業者はこれらの選択肢から容易に選択することができる。
【0141】
上記のように、FCN−MR解析を用いて、特定の反応を陽性もしくは陰性として特徴付けたり、または反応データを基準データと比較したり、またはその両方を行うことができる。これらの値を用いて、反応を定量することができる。各種定量方法が、C解析ではなくFCN−MR解析から恩恵を得ることができる。
【0142】
1実施形態において、FCN値、FCN2値またはFCN調節値を、C値が先行技術で用いられていたあらゆる形態で用いることができる。必ずしも必要とは限らないが代表的には、FCN−調節、FCN2−調節またはFCN−調節解析を各種較正データ集合に適用することで、標的の濃度が未知である反応の結果と標的の濃度が既知である反応の結果を比較するための基準データ曲線または等式を得ることができる。従って、本発明を用いて、基準データを形成し、2つの値(例:FCN−MR)を基準データ作成とそのデータに対する比較の実施の両方に用いる比較を行うことができる。
【0143】
MR方法を用いる実験は一様に捕捉データセットについて異なる再処理段階を用いてから、比率関数でデータセットを処理していたが、これらの段階のほとんどが必要ない。特に、実験結果は、スケール調整、基準色素による正規化、ベースライン調整(オフセットおよび傾き補正の両方)およびフィルタリングが必要ないことを示していた。しかしながら、フィルタリングは、それがノイズ存在下での成績を向上させることから、望ましいことが認められている。傾き補正(ベースライン領域に関して)も、それが、標的核酸を含まないサンプルと非常に少量の標的核酸を含むか増幅反応の大幅な阻害を受けるサンプルとの間の区別をわずかに改善することから、望ましいことが認められている。しかしながら、FCN強度adj.を用いる場合、スケール調整または基準色素に対する正規化など(これらに限定されるものではない)の正規化法を用いることが好ましい。
【0144】
(実施例17−1点較正を用いるHBVデータに適用されるMRアルゴリズム)
10コピー/反応から10コピー/反応および陰性の範囲の対照溶液のHBVアッセイを、各濃度6連でABIプリズム(Prism)7000で処理した。捕捉データは、デジタルフィルターのみを用いて処理した。次に、上記のMRアルゴリズムを用いてFCN値を計算した。それらの濃度は、基準キャリブレータとして10コピー/反応での応答のうちの3つを用いる1点較正によって計算した。
【0145】
正規化やベースライン調整を行わないとしても、10コピー/反応および100コピー/反応サンプル(すなわち、Log(標的)=1および2サンプル)の許容量の上方定量以外は、得られる定量は非常に良好であった。陰性と10コピー/反応アッセイとの間には非常に明瞭な区別があり、偽陽性も偽陰性もなかった。別の結果は、同じデータをC解析で定量した場合、10コピー/反応および100コピー/反応アッセイも若干上方定量し、10コピー/反応より上の全ての濃度での精度はMR解析の場合より良好であることを示していた。この場合、C結果は、正規化し、ベースライン調整し、10および10コピー/反応の各濃度で3連にて2点較正によって較正した。
【0146】
図19には、MR解析およびFCNMRadj.補正を用いる同じHBVデータの例を示してある。やはり、その定量は、正規化、スケール調整およびベースライン調整を行わずに、10コピー/反応で3つの応答での1点較正によって行った。わかるように、低濃度での上方定量が大幅に減少している。すなわち、定量結果が大幅に向上している。
【0147】
(実施例18−HIVデータに適用されるMRアルゴリズム)
本実施例では、対照溶液のHIVアッセイを、6連での陰性、50コピー/mL、および100コピー/mL〜10コピー/mLの濃度で行った。応答は、正規化およびベースライン調整を行うFCNMRAdj.を用いるMRアルゴリズムによって処理した。図21は、MR解析および例えばキャリブレータとして2連の10および10コピー/mL応答を用いる2点較正を使用した本実施例の結果を示した。陰性と50コピー/mLアッセイとの間に明瞭な区別があり、偽陽性も偽陰性もなかった。図でわかる通り、良好な線形性と精度がある。
【0148】
(実施例19−標的およびIC(FCN、MR)ペアを用いる妥当性決定)
反応時間もしくはサイクル数値および効率関連値のペア(例:FCN−MR値のペア)が核酸増幅反応、例えばPCR反応についての貴重な情報を得ることができ、それはさらに、内部対照および標的増幅反応の両方についてデータペアを考慮することでさらに向上させることができることが認められている。標的反応単独のペアは反応効率についての重要な情報を有し、基準データとの比較に用いることができるが、サンプルの処理またはサンプル自体で生じる別の要素も、対照データを考慮することでより良好に解析することが可能である。
【0149】
例えば、PCRまたは他の好適な増幅反応で用いられる試料の処理において、サンプルは、標的データのみの評価で検出可能になると考えられる反応への各種阻害因子を有する場合がある。しかしながら、サンプル調製時の標的核酸の異常回収は、単一の増幅反応の解析によっては検出されないのが普通であると考えられる。さらに、例えば配列の多形領域に結合するプローブを用いる場合、標的核酸は、標的核酸の検出を妨害する可能性のある多形配列を有する可能性がある。この領域での多形配列によって引き起こされる不一致が検出されるシグナルに影響を与えることが考えられ、結果的に、単一増幅におけるデータペアの評価を用いて、その増幅は異常だったり阻害されているようには見えない可能性がある。内部対照の標的増幅応答解析との共解析は、他の方法が通常は正しくない反応を示すと考えられる場合に、そのようなサンプル中の標的核酸の正確な定量を提供することができる。
【0150】
従って、反応時間またはサイクル数値と効率関連値のペアを一緒に用いることで、例えば所定の容器もしくはウェルでの所定の反応の妥当性を評価することができる。堅牢性において標的増幅反応に匹敵するか、若干堅牢性が低い内部対照(IC)増幅反応を設計することができると考えられる。この文脈での堅牢性は、サンプル調製やサンプル自体から生じる阻害などのPCR処理経路に影響し得る要素、またはピペットによる不正確な量の増幅試薬の移動などのピペットによる反応混合物の移動における変動性に対する反応成績の感受性を意味する。
【0151】
(実施例20−多重基準データ曲線)
サイクル数値−効率関連値のペア(例:FCN−MRペア)についての多重基準曲線を作成することができ、それは特に妥当性決定での使用において、異なる用途および重要性レベルを有し得る。例えば、第一の基準曲線を選択して、反応性増幅シグナルを非反応性応答から区別可能とすることができる。第二の基準曲線を選択して、第一のものより制約を厳しくすることで、定量において相対的に低い信頼性を有すると考えられる部分阻害を有するものと対照して、正確な定量をもたらすサンプル応答を確認する上でそれが有用となるようにすることが可能である。図22は、2種類の基準データを示すプロットであり、図中において下方の水平線は、陰性反応を反応性反応から区別する上で好適な基準データを表す。第二の直線集合は、FCN−MRペア応答における正常範囲を示す基準データを表す。これらの基準を用いて、部分的反応阻害が原因であるこの範囲外の値に関連すると考えられる相対的に低い信頼性との対照で、定量における高信頼性を識別することができる。
【0152】
例えば、反応性と非反応性の増幅反応を区別する第一の種類の基準データは、「MR基準データ」と称することができる。これらのデータはカットオフ閾値として働き、反応性応答はMR基準データを超えるMR値を有するが、陰性サンプルは基準値または基準線を越えないMR値を有する。基準データは好ましくは、応答シグナルにおけるノイズが基準を超えず、クロストークやブリードオーバーなどの偏りではないように設定する。
【0153】
第二の種類の基準データは、MR正常範囲と称される。この範囲は、サンプルの定量が正確である所定のFCNにおけるMR値の範囲となると考えられる。シグナル応答が抑制される場合、観察されるMR値が低下する。阻害のためにMR値が低下するに連れて、FCN値は早い方のサイクルにシフトし得るが、閾値に基づくCは遅い方のサイクルにシフトし得る。MR正常範囲は、アッセイ標準曲線からサンプル中の標的の濃度を求めるのに使用される場合に、サイクル数に関係する選択値がサンプルについての正確な定量結果を与えると考えられる基準データセットにおけるMR値の範囲であると考えられる。
【0154】
「MR正常範囲」は、当業界では明らかなFCNによるMRの二変量適合を用いて形成することができる。例えば図23には、50コピー/mL〜5000000コピー/mLのHIVデータについてのFCN−MRプロットを示してある。そのデータを統計ソフトウェア(JMP(SAS Institute,Inc.)など)によって解析して、そのデータに三次元曲線適合を適用した。この三次元曲線適合は、図の中央の実線によって表される。上側および下側の点線は、αレベル0.001での信頼区間個別解析オプションを用いて得られた信頼区間を表す。表2A、2Bおよび2Cは、図23に関係するサンプルデータの入力および出力を示す図である。
【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
統計的に誘導される信頼区間は、示したように、どのデータ点が「正常な」応答を表し、従って定量化すべきかに対する系統的なアプローチである。この区間外にあるデータ点は例外的であり、好ましくはソフトウェアプログラムによってオペレータに特定(identified)されることで、さらなる検討を行うことができる。
【0159】
別の実施形態では、そのような曲線は、1以上の直線部分の形態で単純化することができる。この単純化は、場合によって生データを見る技術者が行うことができるか、あるいは上記のα区間から誘導することができる。
【0160】
同様の統計的適合を、内部対照(IC)データについて行うことができる。例えば図24には、ICデータ、すなわち図23に示したデータに関連するICデータについてのFCNの関数としてのMRのプロットを示してある。このデータを用いて、IC基準を決定することができ、その基準は例えばICのMR値の平均より下の5標準偏差である単一の値であることができ、あるいは例えばMRおよびFCN値の平均5標準偏差に基づいた値の範囲もしくはボックスであることができる。
【0161】
そこで本発明は、増幅反応の解析方法であって、第一の値が最大効率関連値(それは好ましくはMRである)であり、第二の値が反応点での時間値もしくはサイクル数値(分数であっても良い)であるペアで提供される特定値の範囲である「信頼コリドー(corridor)」を確立する段階を有する方法をも提供する。その方法はさらに、いずれか特定の周期的時間値または反応点でのサイクル数値(分数であっても良い)で起こる最大効率値が選択範囲内にあるか否かを決定する段階を有する。その値が範囲内でない場合、さらなる検討または結果の無視が示される。いずれか好適な方法を用いて、選択される信頼コリドーを確立することができる。好ましい方法には、アッセイを特徴付けるのに使用される1群の反応から得られるデータの平均からの約1、2、3、5、10または他の好適な数字の標準偏差に信頼コリドーを設定することなどがある。別の好適な方法では、既知の異常もしくは矛盾した結果を観察することで信頼コリドーを変更し、さらなるアッセイでその異常もしくは矛盾する結果の一部を除外するように信頼コリドーを変更する。本発明の信頼コリドーの使用は、標的核酸定量、標準、キャリブレータ、対照のいずれかの解析、またはこれらの組み合わせに適用することができる。
【0162】
(実施例21−妥当性解析)
図25は、内部対照および標的増幅反応の両方についてのERV(例:MR)を引いたサイクル数(例:FCN)のペアの解析によるアッセイ妥当性の評価のための論理解析ツリーを示すフローチャートである。図26は、サイクル数(例:FCN)−ERV(例:MR)のペアを用いる妥当性基準評価とともに標的結果を報告する論理解析ツリーを示すフローチャートである。
【0163】
これらのフローチャートでは、説明を明瞭にするためにFCNを用いているが、本明細書の別の箇所に記載のように、例えばC法、FCN2、FCNMRAdj.またはFCNInt.Adj.その他の好適な方法のような他の方法を用いて、反応点値を得ることができる。
【0164】
従って、妥当性チェックは、内部対照(IC)および/または標的データに関する一連の質問として進めても良い。
【0165】
図25において、最も左の矢印ブロックは、この方法の段階の全般的説明を提供する。方法の詳細は、下記のものを検討することでさらに理解することが可能である。その方法は、標的反応および対照(IC)反応の両方からのサイクル数/ERVペアを解析するものである。最初に、(1)ICMRがICMR基準データより上である場合、そして(2)ICFCNが正常範囲内にある場合、さらには(3)ICMRが正常範囲内にある場合に、反応の妥当性が確認される。
【0166】
図に示したように、標的MRの1以上の特徴を考慮することで、無効な結果をさらに特徴付けもしくは説明することができる。
【0167】
図26には、妥当な反応に関する標的データを解析することで、(1)非反応性標的サンプル、(2)アッセイの検出限界未満の濃度の標的、(3)存在するが恐らくサブタイプの不一致のために定量が阻害されている標的、または(4)妥当で定量可能な標的反応を示すものとして妥当な結果をさらに特徴付ける方法を示している。
【0168】
従って、複数標的に基づいた分析を組み合わせ、サイクル数および効率関連値の両方を用いることで、阻害されたサンプルを、サンプル調製時の核酸回収の不首尾があったサンプルから区別することができる。その解析は、内部対照および標的基準データに含まれるアッセイについての予め確立された知見を利用するものである。
【0169】
(実施例22−ピーク幅を用いる妥当性決定)
増幅応答を説明する単一の値のみを提供する先行技術における従来のC解析とは対照的に、効率関連値解析(および好ましくはMR解析)は、増幅反応全体またはそれの一部の時間値またはサイクル数値に相当するデータを効率関連変換値曲線に提供することができる。具体的なアッセイ形態内では、正常アッセイ応答は非常に再現性の高い効率関連変換値曲線を与えることが発見されている。特に、一つの特徴は、効率関連変換値曲線のピークの幅である。例えば最大高さの半値での幅によって定義される効率関連変換値のピークの幅は、蛍光強度の大きさが大きく変動する場合であってもほとんど変動しないことが認められている。
【0170】
いずれか好適な方法を用いて、効率関連値のピークの幅を求めることができる。図27には、効率関連値ピークの幅を求める上でのある好適な方法を示してある。図27では、全ピーク幅は、最大レベル半値でのピークのサイクルにおける幅である。図14におけるHIV応答は、約8の相対的に高い濃度のサンプルでは正規化蛍光を示しているが、低濃度のサンプルについての正規化蛍光は約1という低いものである。シフト比法を用いた各増幅反応での効率関連変換値の計算および全ピーク幅計算は、図28に示した結果を提供する。最終蛍光強度における8倍変化がある場合であっても、ピーク幅は驚くべきことに狭い範囲内に保存される。従って本発明は、増幅反応妥当性基準を提供し、そこでは効率関連値のピークの幅が増幅反応に特徴的な選択範囲内に含まれている場合には、増幅反応は妥当であると考えられる。図28では、太い点線の水平線は、幅測定値の平均±10標準偏差を表す。約5.5〜8.0の範囲(図28に示したもの)内にない幅測定値は、妥当でないか少なくとも疑わしいと見なされる。当業者であれば、特定のアッセイの要件に応じて、不要な実験を行うことなく、許容される区間を説明するパラメータを容易に変動させることができる。
【0171】
ピーク幅を用いて、異常アッセイ応答を検出することができる。全ピーク幅計算を、図12に示した異常応答を含むアッセイデータに適用した。その結果を図29に示した。図からわかるように、このデータセットにおける正常応答は約6〜9サイクルの全ピーク幅を生じるが、ウェル42の全ピーク幅は17.42である。従って、ウェル42の増幅反応は異常であり、無視される。
【0172】
全ピーク幅計算は、効率関連値の反応点値(例:FCN)の前および後の両方で起こる増幅反応における異常変動によって影響を受ける。効率関連値の反応点後に起こる異常変動は、それらがMR方法によるアッセイ定量に影響し得ないことから、アッセイ妥当性試験では考慮しない。このオプションは、図27に示したピーク幅半値計算またはそれの等価物を用いて容易に達成することができる。例示した例では、ほぼ最大効率関連変換値半値から最大効率関連値のほぼ反応点値までの周期的時間単位での幅のみを用いる。当然のことながら、ピーク幅およびピーク幅半値を測定する上での他の好適な方法が、当業界において公知である。
【0173】
(実施例23−ソフトウェア実施形態)
本発明のシステムを、多数の好適なコンピュータ製品または情報機器に組み込むことができる。MRソフトウェア実行の若干の詳細を以下に提供する。具体的なユーザーインターフェースの説明および図示は、具体的な実施形態を説明するためにのみ取ったものであり、情報処理業界で公知の多くの異なるユーザーインターフェース方法を、本発明を具体化するシステムで用いることができる。本発明は、下記の実質的に全ての選択肢が存在し、計算され、もしくは情報システムによって提供され、結果的にほとんどユーザーインターフェース選択肢を提供しないシステムも用いることができる。場合により、試作システムの詳細および/または選択肢が例示を目的として説明されており、それらの選択肢および/または詳細の多くが、製造システムには無関係であったり、利用できない場合がある。
【0174】
さらに、ソフトウェアの実施形態は、例えば一つもしくは二つの標的反応、または1以上の内部対照反応、または基準データ、またはそれらの組み合わせでの反応の処理などの各種機能性を含むことができる。本発明での使用に好適なソフトウェアシステムは、開く、閉じる、印刷、保存などの非常に多くの標準的なファイル取り扱い機能を提供することができる。
【0175】
図30には、本発明によるPCRデータ処理のためのユーザーインターフェースを示してある。このインターフェースでは、標的アッセイに相当する適切な色素、内部対照および基準応答の選択は、ウィンドウの左上部分にあるポップアップリストから選択される。異なる表示オプションを選択するためのタブが、ウィンドウの中央に配置されており、水平方向に並んでいる。図30は、MR−FCNプロットを示すタブが選択されているのを示している。図31は、ウェル1についての同じデータを示すユーザーインターフェースを図示しているが、シフト比曲線を示している。他のタブによって、全ての応答における生蛍光データ、正規化蛍光およびベースライン化データを表示することができる。さらに、タブによって、個別に各応答の検査を行うことができる。プロットの右手のフィールドは、ベースライン領域でのMR、FCN、Cおよび標準偏差などの計算応答値を示す。これらの計算値の下には、比率ボタンがあって、それによってユーザーはアッセイデータまたは内部対照データのいずれかを表示することができる。
【0176】
プログラム情報機器における実施形態
図32は、本発明の各種態様を具体化することができる論理素子の1例を示すブロック図である。本明細書にある内容からわかるように、本発明はハードウェアもしくはソフトウェアまたはその両方で実行することができる。一部の実施形態では、本発明の各種態様を、クライアント側ロジックまたはサーバー側ロジックのいずれかで実行することができる。さらに、本発明または本発明の構成要素は、適切に構成されたコンピュータデバイスにロードされた時に、そのデバイスを本発明に従って実行させることができる論理指令もしくはデータまたはその両方を含む固定メディアプログラムコンポーネントで具体化することができる。論理指令を含む固定メディアコンポーネントは、閲覧者のコンピュータに物理的にロードするための固定メディア上で閲覧者に送ることができるか、または論理指令を含む固定メディアが、閲覧者が通信媒体を通じてアクセスしてプログラムコンポーネントをダウンロードできる遠隔サーバー上にあっても良い。
【0177】
図32は、本明細書に記載の画像表示もしくは解析またはその両方に関する論理演算を行うための論理装置として用いることが可能な情報機器またはデジタル装置700を示す図である。そのような装置は、本発明の各種実施形態に従って論理命令を行う汎用コンピュータシステムまたはワークステーションとして具体化することができる。そのような装置は、論理処理を各種サンプル取り扱い操作を行うための機械に統合する特注および/または特殊実験室用もしくは科学用ハードウェアであることもできる。概して、本発明による装置の論理処理コンポーネントは、メディア717もしくはネットワークポート719またはその両方から命令を読み取ることができる。中央演算処理装置は、固定メディア722を有するサーバー720に接続されていても良い。その後、装置700は、本明細書に記載の動作を指示したり、解析を実行する指令を用いることができる。本発明を具体化することができるある種類の論理装置は、CPU707、任意の入力装置709および711、記憶メディア715(例:ディスクドライブ類)および任意のモニター705を含む、700で示したコンピュータシステムである。固定メディア717、またはポート719上の固定メディア722を用いて、そのようなシステムをプログラムすることができるか、またはそのメディアはディスク型の光学メディアもしくは磁気メディア、磁気テープ、固体のダイナミックメモリもしくはスタティックメモリなどを表すことができる。本発明はまた、全体または一部において、この固定メディア上に記録されたソフトウェアで具体化することもできる。通信ポート719を用いて、最初に命令を受信し、それを用いてそのようなシステムをプログラムすることができ、そのポートはあらゆる種類の通信接続を表す。
【0178】
図32は、診断システムの一部となり得る別の構成要素を示す図である。これらの構成要素には、ビューワまたは検出器750または顕微鏡、サンプル取り扱い装置755、UVその他の光源760およびフィルター765、ならびにシグナルデータを捕捉するためのCCDカメラまたはキャプチャー装置780などがある。これらの別の構成要素は、論理解析および/または制御を含む単一システムの構成要素であることができる。これらの装置は、当業界では明らかなように、ネットワーク、バス、無線通信などを介して700などの情報機器とデジタル通信している実質的にスタンドアロンの装置であることもできる。そのようなシステムの構成要素は、いずれか簡便な物理的構成および/または外観を有することができ、合わせて単一の統合システムとすることができる。従って、図42に示した個々の構成要素は、システムのほんの1例を表しているにすぎない。
【0179】
本発明はまた、特定用途向け集積回路(ASIC)またはプログラム可能論理回路(PLD)の回路機構内で全体または部分的に具体化することもできる。そのような場合、本発明は、本明細書に記載のように動作するASICまたはPLDを作るのに用いることができるコンピュータが理解可能な記述言語で具体化することができる。
【0180】
他の実施形態
以上、具体的な実施形態を参照しながら、本発明について説明した。他の実施形態は、当業者には明らかであろう。特には、ビューワデジタル情報機器は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータワークステーションとして説明してきた。しかしながら、そのデジタルコンピュータ装置は本発明の論理方法を実行するのに好適ないずれの機器も意味するものであって、デジタル的に可能な実験室システムもしくは装置、デジタル的に可能なテレビ、携帯電話、携帯情報端末などの機器を含むことができると考えられる。本発明の精神の範囲内での変更は、当業者には明らかであろう。さらに、各種の異なる作業を用いて、本発明の具体的な実施携帯によるシステムとの相互作用を実行することが可能である。例えば、オペレータが音声コマンドを話すことができ、オペレータがキーを押すことができ、クライアント側科学装置上のボタンをオペレータが押すことができ、またはポインティングデバイスを用いる選択をユーザーが行うことができる。
【0181】
本明細書に記載の実施例および実施形態は例示を目的としたものであって、それを考慮した上での各種の修正または変更が、本明細書における記述によって当業者に示唆されるであろうし、それが本願の精神および範囲ならびに特許請求の範囲に包含されるものであることは明らかである。
【0182】
情報開示陳述書の一部として提出された引例を含む、本明細書で引用または本願とともに提出された全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプルが標的核酸を含むか否かを決定する方法であって、
(a)前記試験サンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプルの前記標的核酸の少なくとも一部を増幅する段階;
(c)前記増幅における各種点で得られる、存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを測定する段階;
(d)前記増幅反応の効率関連変換値を求める段階;
(e)前記効率関連変換値の最大の大きさである効率関連値を求める段階;および
(f)前記増幅における前記効率関連値が特定の値を超える場合に、前記試験サンプルが標的核酸を含むと決定する段階
を有する前記方法。
【請求項2】
増幅反応の効率関連変換値が、(1)増幅から得られるシグナルの比変換、(2)増幅から得られるシグナルの対数の導関数、および(3)増幅から得られるシグナルの一次導関数からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
効率関連変換値が増幅から得られるシグナルの一次導関数であり;増幅反応から得られるシグナルの前記一次導関数が、連続するシグナル間の間隔の大きさで割った増幅反応から得られた2つの連続するシグナル間の差に等しい請求項2に記載の方法。
【請求項4】
効率関連変換値が、増幅から得られるシグナルの一次導関数であり;増幅反応から得られるシグナルの前記一次導関数が、増幅反応から得られるシグナルに適合される曲線の数学的操作によって計算される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
効率関連値が特定の値を超えるか否かを決定する段階を、効率関連値を基準曲線と比較することで行い;前記基準曲線を、
(a)陰性サンプルについて複数の増幅反応を行い(前記陰性サンプルは、標的核酸を含まないサンプルである);
(b)各陰性サンプルについて効率関連値を求め;
(c)前記陰性サンプルの前記効率関連値の平均および標準偏差を求め;そして
(d)前記陰性サンプルの前記効率関連値の前記標準偏差の特定倍だけ前記平均を超える効率関連値を有するサンプルを確認することで決定する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
陰性サンプルの効率関連変換値の標準偏差の1から約20倍だけ平均を超える効率関連値を有するサンプルが標的核酸を含むと見なされる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
段階(e)の特定値が、効率関連値が起こる特定の反応点に応じて変動する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
段階(e)の特定値を、(1)複数のサンプルを増幅して効率関連値を求め、そして(2)陰性サンプルについての効率関連値の全てより高い値を選択することで求める請求項1に記載の方法。
【請求項9】
特定値を、(1)複数のサンプルを増幅して効率関連値を求め、そして(2)陰性サンプルの効率関連値を陽性サンプルの効率関連値から分離する値を選択することで求める請求項1に記載の方法。
【請求項10】
効率関連値が、増幅応答の対数の最大勾配である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
効率関連値が増幅応答の最大比である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
効率関連値が増幅応答の最大一次導関数である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
サンプル中の標的核酸の濃度を定量する方法であって、
(a)前記核酸サンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプル中の前記標的核酸の少なくとも一部を増幅させる段階;
(c)前記増幅における各種点で得られる、存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを測定する段階;
(d)段階(c)で測定された前記シグナルに比率変換を適用する段階;
(e)前記段階(c)および(d)で得られた前記比率の最大値に相当する前記増幅反応における反応点を確認する段階;および
(f)段階(e)で確認された前記反応点から、前記サンプル中の標的核酸の濃度を計算する段階
を有する前記方法。
【請求項14】
第一のシグナルが、第二のシグナルが得られる反応点の次の反応点で得られて;確認された反応点は、段階(e)で得られた比率の最大値に相当する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
点が増幅のサイクルを表し;得られるシグナル間の期間が、各増幅サイクルを完了するのに必要な期間に等しく;一つの第一のシグナルおよび一つの第二のシグナルがある請求項14に記載の方法。
【請求項16】
点が増幅における時間点を表し;得られるシグナル間の期間が、各増幅サイクルを完了するのに必要な期間に等しく;一つの第一のシグナルおよび一つの第二のシグナルがある請求項14に記載の方法。
【請求項17】
段階(d)を実行する前に段階(c)で測定されたシグナルからのベースラインシグナルから求められる傾きを取り除く段階をさらに有する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
段階(c)で測定されるシグナル点間に内挿することで、追加のシグナル値を発生させる請求項13に記載の方法。
【請求項19】
段階(d)がさらに、得られる各比率から定数を減算する段階をさらに有する請求項13に記載の方法。
【請求項20】
定数が約1であって、それによってシフト比が得られる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
サンプル中の標的核酸の濃度を定量する方法であって、
(a)前記試験サンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプル中の前記標的核酸の少なくとも一部を増幅させる段階;
(c)前記増幅における各種点で得られる、存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを測定する段階;
(d)前記増幅反応の効率関連変換値を求める段階;
(e)前記効率関連変換値の最大の大きさである効率関連値を求める段階;
(e)段階(e)で得られた前記効率関連値の前記最大の大きさに相当する前記増幅反応での反応点を確認する段階;および
(f)調節反応点を計算する段階
を有する前記方法。
【請求項22】
調節反応点が、反応点−効率関連値の対数(底数2)に等しい請求項21に記載の方法。
【請求項23】
調節反応点が、反応点−バックグラウンド上のシグナル強度の対数(底数2)に等しい請求項21に記載の方法。
【請求項24】
効率関連値が、増幅応答のシフト比から誘導される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
効率関連値が増幅応答の最大比である請求項21に記載の方法。
【請求項26】
効率関連値が増幅応答の対数の最大勾配である請求項1に記載の方法。
【請求項27】
効率関連値が増幅応答の最大一次導関数である請求項1に記載の方法。
【請求項28】
下記段階を有する核酸増幅反応の解析方法:
(a)核酸サンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプル中の標的核酸の少なくとも一部を増幅させる段階;
(c)前記増幅における各種点で得られる、存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを測定する段階;
(d)前記増幅反応の効率関連変換値を求める段階;
(e)前記効率関連変換値の最大の大きさである効率関連値を求める段階;
(f)効率関連値および反応点値を含むデータペアの範囲を確立する段階;
(g)特定の反応点値で生じる効率関連値が段階(f)で確立された前記範囲内に入るか否かを決定する段階;および
(h)前記効率関連値が特定の反応点値に相当する前記効率関連値について確立された値の前記範囲内にない場合、前記反応が誤差を受けている可能性があると見なす段階。
【請求項29】
効率関連値が増幅応答の対数の最大勾配である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
効率関連値が増幅応答の最大比である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
効率関連値が増幅応答の最大一次導関数である請求項28に記載の方法。
【請求項32】
反応点値がサイクル数である請求項28に記載の方法。
【請求項33】
サイクル数が分割サイクル数である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
核酸増幅反応を、核酸サンプル中の標的核酸の有無を検出するように設計する請求項28に記載の方法。
【請求項35】
核酸増幅反応が標準、キャリブレータまたは対照核酸を増幅する請求項28に記載の方法。
【請求項36】
一連のサンプルを増幅してアッセイ特性決定データセットを得て;各サンプルについて、最大効率関連値および反応点値を確立し;各反応点値についての信頼性のある効率関連値の範囲を確立する請求項25に記載の方法。
【請求項37】
信頼性のある効率関連値の前記範囲が、特性決定データセットで表される各反応点値についての平均最大効率関連値より大きい、およびそれより小さい標準偏差の特定数である請求項36に記載の方法。
【請求項38】
効率関連値が特定範囲内にあってサンプルが標的核酸を含まない、標的核酸検出のためのアッセイから矛盾した結果を観察する段階;ならびに
特定の反応点値で許容される効率関連変換値の特定範囲を変更することで、前記矛盾する結果を生じた反応の効率関連値を除外する段階をさらに有する請求項25に記載の方法。
【請求項39】
下記段階を有する核酸増幅反応の解析方法:
(a)核酸を含むサンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプル中の前記核酸の少なくとも一部を増幅する段階;
(c)存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを定期的に測定する段階;
(d)前記増幅反応全体における点の段階(c)で収集されたデータから得られる前記増幅反応の効率関連変換値を求める段階;
(e)前記効率関連変換値におけるピークを、時間またはサイクル数の関数として確認する段階;
(g)前記ピークの幅を求める段階;
(h)前記ピークの前記幅を、許容されるピーク幅の特定範囲と比較する段階;および
(i)前記の求めたピーク幅が許容されるピーク幅の前記特定範囲より大きいか小さい場合には、前記核酸増幅反応が異常であると宣言する段階。
【請求項40】
ピーク幅を、効率関連値の反応点値時またはその前に生じる効率関連変換値のみを用いて計算する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
効率関連変換値がシフト比である請求項39に記載の方法。
【請求項42】
効率関連値が増幅応答の対数の最大勾配である請求項39に記載の方法。
【請求項43】
効率関連値が増幅応答の最大比である請求項39に記載の方法。
【請求項44】
効率関連値が増幅応答の最大一次導関数である請求項39に記載の方法。
【請求項46】
増幅反応における点を、分割サイクル数で測定する請求項39に記載の方法。
【請求項47】
サンプル中の標的核酸の濃度を定量する方法であって、
(a)前記核酸サンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプル中の前記標的核酸の少なくとも一部を増幅する段階;
(c)存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを定期的に測定する段階;
(d)前記増幅反応に関して段階(c)で測定した前記シグナルから効率関連変換値を求める段階であって、
前記効率関連変換値が、段階(c)の前記シグナルの比変換値、段階(c)の前記シグナルのシフト比変換値、段階(c)の前記シグナルの一次導関数、段階(c)で得られた連続するシグナル間の差および段階(c)で得られた前記シグナルの対数の傾きもしくは勾配からなる群から選択され;
前記効率関連変換値が、少なくとも2つの確認可能なデータサブセット、すなわち前記効率関連変換値が実質的に一定であるベースライン部分を形成する第一のデータサブセットおよび前記効率関連変換値が最大値に近づくかそれに達する成長領域を形成する第二のデータサブセットを有する段階;
(e)段階(d)の前記効率関連変換値の前記ベースライン領域について線の適合を行うか平均値を求める段階;
(f)段階(e)の前記線に平行であって、その線より大きい値を有する閾値線を選択するか、または段階(e)の前記平均値より大きい値を有する閾値を選択する段階;
(g)段階(d)の前記効率関連変換値が段階(f)の前記閾値線または閾値を超える反応点値を求める段階;および
(h)段階(g)の結果を用いて、前記サンプル中の標的核酸の量を求める段階
を有する前記方法。
【請求項48】
段階(c)で測定されるシグナル間に点を内挿することで、追加のシグナル値を形成する請求項47に記載の方法。
【請求項49】
下記段階を有するサンプル中の標的核酸の濃度を定量する方法:
(a)前記核酸サンプルを少なくとも1種類の増幅試薬と接触させる段階;
(b)前記サンプル中の前記標的核酸の少なくとも一部を増幅する段階;
(c)存在する前記標的核酸の量に比例するシグナルを定期的に測定する段階;
(d)前記増幅反応に関して段階(c)で測定した前記シグナルからの効率関連変換値を求める段階であって、
前記効率関連変換値が、段階(c)で測定された前記シグナルの比変換値および段階(c)で測定された前記シグナルのシフト比変換値からなる群から選択され;
前記効率関連変換値が、少なくとも2つの確認可能なデータサブセット、すなわち前記効率関連変換値が実質的の一定であるベースライン部分を形成する第一のデータサブセットおよび前記効率関連変換値が最大値に近づくかそれに達する成長領域を形成する第二のデータサブセットを有する段階;
(e)段階(d)の前記比率の前記ベースライン領域について線の適合を行うか、平均値を求める段階;
(f)段階(e)の前記線に平行であって、その線より大きい値を有する閾値線を選択するか、または段階(e)の前記平均値より大きい値を有する閾値を選択する段階;
(g)段階(d)の前記効率関連変換値が段階(f)の前記閾値線または閾値を超える反応点値を求める段階;および
(h)段階(g)の結果を用いて、前記サンプル中の標的核酸の量を求める段階。
【請求項50】
段階(c)で測定される前記シグナル間の点を内挿することで、追加のシグナル値を形成する請求項49に記載の方法。
【請求項51】
下記段階を有するサンプル中の標的核酸の定量方法:
(a)前記サンプルを増幅試薬もしくは検出試薬と、該標的核酸が増幅されるように接触させる段階;
(b)時間基準もしくはサイクル基準の間隔で、前記サンプル中の前記核酸の量または核酸の増幅量に比例するシグナルを測定および記録する段階;
(c)時間もしくはサイクルn+1でのシグナル/時間もしくはサイクルnでのシグナルの比が最大である最大比となる時間もしくはサイクルを求める段階;および
(d)前記サンプル中の前記標的核酸の量を求める段階。
【請求項52】
最大比の大きさを基準と比較することで、増幅反応におけるサンプル中の標的核酸の量を求める請求項51に記載の方法。
【請求項53】
増幅試薬が、標的核酸存在下にPCR反応を生じさせる能力を有する請求項51に記載の方法。
【請求項54】
下記段階を有するサンプル中の標的核酸の定量方法:
(a)前記サンプルを増幅試薬もしくは検出試薬と、前記標的核酸が増幅されるように接触させる段階;
(b)時間基準もしくはサイクル基準の間隔で、前記サンプル中の前記核酸の量または核酸の増幅量に比例するシグナルを測定および記録する段階;
(c)(a)時間もしくはサイクルn+1でのシグナル/時間もしくはサイクルnでのシグナルの比および(b)時間もしくはサイクルnでのシグナル/時間もしくはサイクルn−1でのシグナルの比の平均が最大である前記データ中の領域を求める段階;および
(d)前記サンプル中の前記標的核酸の量を求める段階。
【請求項55】
最大比の大きさを基準と比較することで、増幅反応におけるサンプル中の標的核酸の量を求める請求項54に記載の方法。
【請求項56】
増幅試薬が、標的核酸存在下にPCR反応を生じさせる能力を有する請求項54に記載の方法。
【請求項57】
効率関連値が増幅応答の最大シフト比変換値である請求項1に記載の方法。
【請求項58】
効率関連値が増幅応答の最大シフト比変換値である請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−231791(P2012−231791A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−128624(P2012−128624)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−542601(P2006−542601)の分割
【原出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】