説明

情報中心ネットワークにおけるポテンシャルに基づくルーティング方法およびそれを用いたネットワーク

【課題】情報中心ネットワークにおけるルーティング問題をポテンシャルに基づくルーティング方法を提供する。
【解決手段】ユーザの通信端末と、それを接続するネットワークと、そのネットワークの通信路の接続を切り換えるノードの複数と、そのノード間を接続する通信路の複数を備えるもので、そのノードは、ユーザーがネットワークを通じてダウンロードする情報を蓄積するネットワークを前提として、ノードを座標点とする離散空間にポテンシャル値を与えてポテンシャル面を形成し、このポテンシャル面の極小点または極大点を探索することでユーザーの望むコンテンツの所在を見出し、その探索履歴でユーザーから目標ノードまでの通信路を設定する。また、各ノードに与えるポテンシャル値は、コンテンツを有するノードからのネット上で定義された測度による距離に従って単調に減少または増加し、無限遠の距離においては、予め決められた値に収束するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、希望のデータの、名前や識別符号に基づいてルーティング(経路設定)される情報中心ネットワーク(ICN:Information Centric Network)におけるポテンシャルに基づくルーティング方法およびそれを用いたネットワークに関している。
【背景技術】
【0002】
ICN(非特許文献1から3参照)においては、ユーザーのリクエスト(要求)は、IP(インターネットプロトコル)アドレスで表現された位置よりもむしろ求められるデータの名前に基づいて通信経路が設定される。この性質のため、動きつつあるデバイスにIPアドレスを割り当てるという問題、あるいは、増加しつつあるモバイルデバイスのIPアドレスを管理する問題は自然に解消されるので、モビリティ(機動性)問題やマルチホーミング問題(非特許文献4参照)として知られている問題とは無縁である。さらに、コンテンツ(一連の情報)をローカルにキャッシュ(蓄積)することでICNが低遅延のストレージ空間をサポートするので、ポピュラーコンテンツ(一般情報)の場合に起こる送り手側の隘路(ボトルネック)を引き起こさない。
【0003】
上記の利点にもかかわらず、この有望な構成を進展させるためにいくつかの問題に注目する必要がある。その1つは、ネットワークに分散した複数のコンテンツから1つを賢く選択するか指定するかをどのように行うか、という問題である(この問題はICNにおけるルーティング問題として知られている)。
【0004】
本発明では、上記のゴールを実現するために、ポテンシャルに基づくルーティング(PBR:Potential Based Routing)というアイデアを採用する。これは、当初 Chalermark et al. (非特許文献5)によって導入されたもので、方向付けられた拡散法(directed diffusion method)と呼ばれたものである。ポテンシャルに基づくルーティングアルゴリズムは、注目するアプリケーションに対応したスカラー値をネットワーク要素ごとに割り当ててポテンシャル場を形成する。それから、クエリー(処理要求)やトラフィック(情報)が、ポテンシャル値を最小化する方向に転送される。
【0005】
図1は、非特許文献1に基づく図であり、(a)はPBRの場合で、ポテンシャル場を示す図である。谷があるものと想像されたい。ボールを落とすと、ボールはその場の底まで落ち続ける。同様に、その場の中から出たユーザーの要求は、自然にその場の底に導かれるが、その底は要求されたコンテンツの置き場所を示す。(b)は、EPBR(Extended PBR)の場合で、この図に示すような有限の範囲に限られるポテンシャル場である場合には、ボールをランダムに転がし続ける。これは、コンテンツの置き場所を示す1つの穴に導かれるまで行う。
【0006】
従来、ICNルーティングアルゴリズムは、2つのカテゴリーに分類されてきた。つまり、構造化されていないルーティングと構造化されたルーティングとであり、これはルーティング表を維持する際にシステマティックな構造があるかどうかによっている。
【0007】
例えば、NDN(Named Data Networking、非特許文献3)は前者に属し、集約コンテンツの識別子への特別な命名法を示唆しているが、その識別子は、IPルーティングにおけるプレフィクス集約と同様なものである。IPルーティングにおいては、コンテンツ識別子の集約によって拡張可能性問題の緩和するが、コンテンツ名の単一性を犠牲にしている。高い利便性のルーティングは、一般にネットワークの複数の識別子をもったコンテンツを利用して構築されているが、実現が難しい。
【0008】
他方、DONA(Data-Oriented Network Architecture、非特許文献2)は後者に属するが、エニーキャスト(anycast)に基づくルーティングを採用している。非特許文献2の著者達の主張では、彼らの方法は高い利便性を有し、これはユーザーに信頼性と低いレイテンシ(遅延時間)をもたらす。これは近くのコンテンツへのプロキシミティに基づくルーティングによるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D. R. Cheriton and M. Gritter, TRIAD: a Scalable Deployable NAT-based Internet Architecture, “Distributed Systems Group, StanfordUniversity,” Technical Report, Jan 2000.
【非特許文献2】T. Koponen, A. Ermolinskiy, M. Chawla, K. H. Kim, I. Stoica, B. gon Chun, and S. Shenker, “A data-oriented (and beyond) network architecture,” in Proceedings of the 2007 conference on Applications,technologies, architectures, and protocols for computer communications (SIGCOMM'07), Kyoto, Japan, Aug 2007.
【非特許文献3】Named Data Networking. [Online]. Available:http://www.named-data.net/
【非特許文献4】J. Choi, J. Han, E. Cho, T. Kwon, and Y. Choi, “A Survey on content-oriented networking for efficient content delivery,” Communications Magazine, IEEE, vol. 49, pp. 121-127, 2011.
【非特許文献5】R. G. C. Intanagonwiwat and D. Estrin, “Directed diffusion: a scalable and robust communication paradigm for sensor networks,” in Proceedings of the sixth annual international conference on Mobile computing and networking, Boston, MA USA, Aug 2000.
【非特許文献6】S. Jin and L. Wang, “Content and service replication strategies in multi-hop wireless mesh networks,” in Proceedings of the 8th ACM international symposium on Modeling, analysis and simulation of wireless and mobile systems, Montreal, Canada, October 2005.
【非特許文献7】P. Radoslavov, R. Govindan, and D. Estrin, “Topology-Informed Internet Replica Placement,” in Proceedings of Sixth International Workshop on Web Caching and Content Distribution, Boston, USA, June 2001.
【非特許文献8】L. QIU, V. N. PADMANABHAN, AND G. M. VOELKER, “ON THE PLACEMENT OF WEB SERVER REPLICAS,” IN PROCEEDINGS OF IEEE INFOCOM, ANCHORAGE, USA, APRIL 2001.
【非特許文献9】S. ARIANFAR, P. NIKANDER, AND J. OTT, “ON CONTENT-CENTRIC ROUTER DESIGN AND IMPLICATIONS,” IN PROCEEDINGS OF ACM REARCH 2010, PHILADELPHIA, USA, NOVEMBER 2010.
【非特許文献10】M. Pathan and R. Buyya, “A Taxonomy of CDNs (Content Delivery Networks).” R. Buyya, M. Pathan, and A. Vakali (Eds.), Springer-Verlag, Germany, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の様に、ICNにおいては、動きつつあるデバイスにIPアドレスを割り当てるという問題、あるいは、増加しつつあるモバイルデバイスのIPアドレスを管理する問題は、自然に解消されるので、モビリティ(機動性)問題やマルチホーミング問題とは無縁である。さらに、ポピュラーコンテンツでは送り手側の隘路(ボトルネック)が起こり易い、という問題が起きない。しかし、上記の様に、ICNにおけるルーティング問題がある。本発明は、このICNにおけるルーティング問題を取り扱う1つのアイデアを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、概略、情報を伝送する複数の通信経路(以下では単に、経路)と、上記経路によって互いに接続された複数のノード(結節点)と、上記ノードのいずれかに上記経路によって接続された複数の通信端末とを備え、上記ノードは、受信した情報の少なくとも1部を蓄積(キャッシュ)し、またその受信した情報の演算処理を行い、その演算結果に基づいて送信する経路を選択して情報を送信するものであり、上記通信端末は接続された経路に対して、処理要求(クエリ)を送信し、あるいは情報(トラフィック)の送受信をするネットワークにおいて、ネットワークの使用者は、上記通信端末に、例えば、希望のコンテンツをダウンロードするためのクエリを入力し、上記通信端末に上記コンテンツを表示するか、上記通信端末から出力するもである。
【0012】
同一のコンテンツを有するノードが複数の場合、上記ネットワークの各ノードのポテンシャル値は、上記コンテンツを有するノードのそれぞれからのポテンシャル値への寄与の線形和であるとする。これによって、同一のコンテンツを有するノードから、ユーザにとって最も好条件のノードを選択することができるようになる。
【0013】
さらに詳しくは、本発明は、ポテンシャルに基づくルーティング方法であって、ユーザーが情報の入出力を行う通信端末と、該通信端末の接続するネットワークと、を備え、
該ネットワークは、該ネットワークにおける通信路の接続を切り換える機能を備えるノードの複数と、該ノードの複数を互いに接続する通信路の複数を備えるものであり、
該ノードは、上記ユーザーが上記ネットワークを通じてダウンロードできる情報を蓄積する機能を備えたネットワークシステムにおいて、
上記ノードを座標点とする離散空間にポテンシャル面を想定するために上記ノードの各々にポテンシャル値を与え、
このポテンシャル面の極小値または極大値を与える目標ノードを探索することによってユーザーの望むコンテンツの所在を探索し、上記探索履歴を用いて上記ユーザーから上記目標ノードに至る通信路を設定するものであり、
それぞれのノードに与えるポテンシャル値は、上記コンテンツを有するノードからの、該ネット上で定義された測度による距離に従って単調に減少または増加し、無限遠の距離においては,予め決められた値に収束するものである。
【0014】
上記測度としては色々なものを選択することができるが、例えば、上記測度はホッピング数であって、この測度によるノードAとノードB間の距離は、ノードAからノードBに至るために必要な最小ホッピング数に比例する値である。
【0015】
また、上記測度は、例えば信号遅延時間であって、この測度によるノードAとノードB間の距離は、ノードAからノードBに至るために必要な最小信号遅延時間に比例する値である。
【0016】
上記の極小値または極大値を与えるノードを探索するための方法は、
ユーザーの指定するコンテンツについて付与されたポテンシャル値を有するいずれかのノードを暫定探索ノードとし、上記暫定探索ノードにおいて、該ノードに上記通信路で接続されたノードのそれぞれが持つポテンシャル値を比較して、より目標ノードに近いポテンシャルを有するノードを新たな暫定探索ノードとして探索を順次繰り返すことによるものである。
【0017】
上記暫定探索ノードについては、上記ユーザーが情報の入出力を行う通信端末が直接接続するノードを最初の暫定探索ノードとするものである。
【0018】
また、上記暫定探索ノードについては、ユーザーの指定するコンテンツについて付与されたポテンシャル値を有するいずれかのノードをランダムにあるいは予め決められた順に探索し、その探索によって得られたノードを最初の暫定探索ノードとするものである。
【0019】
上記ポテンシャル値は、コンテンツが長時間蓄積されるノードを中心とする第1種ポテンシャルによるポテンシャル値と、上記コンテンツの複写が短時間蓄積されるノードを中心とする第2種ポテンシャルの単数あるいは複数によるポテンシャル値の単数あるいは複数との和であって、第1種ポテンシャルは、第2種ポテンシャルよりも、広範囲の作用領域を有するものである。特別な場合として、第1種ポテンシャルは上記コンテンツを永続的に蓄積するノードからのもので、第2種ポテンシャルは上記コンテンツをネットワーク上での傍受により蓄積したノードによるポテンシャルである。
【0020】
また、本発明は、ポテンシャルに基づくネットワークであって、ユーザーが情報の入出力を行う通信端末と、該通信端末の接続するネットワークと、を備え、
該ネットワークは、該ネットワークにおける通信路の接続を切り換える機能を備えるノードの複数と、該ノードの複数を互いに接続する通信路の複数を備えるものであり、
該ノードは、上記ユーザーが上記ネットワークを通じてダウンロードできる情報を記憶する機能を備えたものであるネットワークシステムであって、
上記のポテンシャルに基づくルーティング方法によって、通信経路を設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、ネットワークに分散した複数のコンテンツから1つを賢く選択するか指定するかをどのように行うか、という問題、つまり、ICNにおけるルーティング問題、を解決することができる。これにより、ICNの利点である高い利便性に加えて、高い多様性を実現することができる。この多様性とは、ルーティングに多数の判断プロセスを提供するものである。例えば、誰かある者のコンテンツ要求は、それに合致するコンテンツに直接経路設定されるが、この際、コンテンツへの近さの他にコンテンツの質やネットワーク状況を考慮することができる。さらに、ICNの利点であるダイナミックな環境に対する高い適用性を得ることができる。このダイナミックな環境では、コンテンツはキャッシュに置かれたり取り除かれたりが任意に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、非特許文献1に基づく図であり、(a)はPBRの場合で、ポテンシャル場を示す図である。谷があるものと想像されたい。ボールを落とすと、ボールはその場の底まで落ち続ける。同様に、その場の中から出たユーザーの要求は、自然にその場の底に導かれるが、その底は要求されたコンテンツの置き場所を示す。(b)は、EPBR(Extended PBR)の場合で、この図に示すような有限の範囲に限られるポテンシャル場である場合には、ボールをランダムに転がし続ける。これは、コンテンツの置き場所を示す1つの穴に導かれるまで行う。
【図2】現在のインターネット上のCATTの最初の配備構成例を示す。このCATTトポロジー5は、本発明のICN構造でPBRに基づくものである。CATTノードは、自律システム(AS:Autonomous System)の端点で展開され、コンテンツは、それがAS間を伝送される途中でキャッシュされる。図中、エッジルータER(Edge router)1、バックボーンルータBR(Backbone router)2、自律システムAS(Autonomous system, e.g., ISP)3は、たとえばISP(インターネットサービスプロバイダ)であり、CATN4はCATTノードである。これは、純CATTネットワーク上で動作する「白紙状態」のフェーズに移行する前の遷移フェーズにあるものである。この構成では、1つ以上のCATTノード(CATNs:sは複数)が、自律システム(AS)のサイズに依存して、ASのエッジ上にASのサイズ順に展開されている。CATNsをISPs(Internet Services Provider:インターネットサービスプロバイダ)間の情報のやり取りのキャッシング地点(蓄積地点)と考えれば、CATN(s)を備えたISPs低コストの方法を適用することができて、それは、コンテンつをエンドユーザの近くに配置し、そのコンテンツをダウンロードする際に広域回線網を用いないものである。
【図3】複数のノードで同じコンテンツと持つ場合について説明するための図である。この場合は、各ノードのポテンシャル値は、単に各キャッシュノードからの影響によるポテンシャル値の線形和であると考える。2つのノードnp1とnp2で1つのコンテンツ(同じコンテンツ)を持つとし、そのポテンシャル値はそれぞれ、−Qnp1、−Qnp2とする。ポテンシャル値は、隣のノードへ移っていくに従って抑制され、それぞれ図3の点線aと2点鎖線bで示すようになる。実線cは両方のポテンシャル値の和を示す。この値は、各ノード、n1、n2、n3、n4、n5、が、クライアントの要求にこたえて経路を設定するために用いる。上記例においては、クライアントの要求はノードn2上で行われるとする。その近隣のノードは、n3とn1なので、ノードn2が計算するのは、自身の値と隣のポテンシャル値との差であり、それぞれ、−ψ2+ψ1、と、−ψ2+ψ3、である。後者は前者よりも大きいので、要求はノードn3に転送される。これと同様に、ノードn3上の要求はコンテンツを持ったノードnp1へ転送される。
【図4】各ノードの記憶領域に残すテーブルの例を示す図である。この例では、FT(Forwarding Table:フォワーディング・テーブル)、PT(Pending Table:ペンディングのテーブル)の2つである。
【図5】コンテンツを保管するノードからのポテンシャル((a)第1種ポテンシャル)と、その情報を傍受してキャッシュしたノードからのポテンシャル((b)第2種ポテンシャル)との線形和のポテンシャル((c)重畳ポテンシャル)について上記の探索を行う場合の例を示す。この例においては、第1種ポテンシャルは、時間的変化が無いものと仮定することができるので、作用範囲の広いポテンシャルを設けても、ポテンシャルの設定や除去に関わる情報資源的コストを低く抑えることができる。しかし、第2種ポテンシャルについては、キャッシュ内容が時々刻々変化するものと仮定することができ、この場合は、ポテンシャル場を入れ替える必要が出てくる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。また、以下では、極小点に向かって引力が生じるポテンシャル場を想定するが、極大点に向かって引力が生じるポテンシャル場を想定することは、符号を変えることで実現できるので、容易なことであるので、以下では、通常のポテンシャルの場合と同様に、極小点に向かって引力が生じるポテンシャル場を想定して説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明は、キャッシュ依存ターゲット識別(CATT:Cache Aware Target idenTification)と呼ばれる分類に属するものである。CATTは2つの要件、すなわちルーティングおよびコンテンツのキャッシングを考慮して設計される。1つめの要件は、ネットワーク内に公表されるか貯えられるコンテンツの1つを見つけるか選択する方法である。ここで、各コンテンツは、上記DONAと同様に、16進数を並べたフラット型でハッシュコードなどを並べた自己認証型である形式(standard flat and self-certifying scheme)で名称が付けられているものと仮定する。この形式では、認証が容易であり、一貫性がある。2つめの要件は、キャッシング形態と呼ぶもので、ネットワーク上の異なる部分に公表されたコンテンツをキャッシュする方法を取り扱う。
【0025】
図2は、現在のインターネット上のCATTの最初の配備構成例を示す。このCATTトポロジー5は、本発明のICN構造でPBRに基づくものである。CATTノードは、自律システム(AS:Autonomous System)の端点で展開され、コンテンツは、それがAS間を伝送される途中でキャッシュされる。図中、エッジルータER(Edge router)1、バックボーンルータBR(Backbone router)2、自律システムAS(Autonomous system, 例えば, ISP)3はたとえばISP(インターネットサービスプロバイダ)であり、CATN4はCATTノードである。これは、純CATTネットワーク上で動作する「白紙状態」のフェーズに移行する前の遷移フェーズにあるものである。この構成では、1つ以上のCATTノード(CATNs:sは複数)が、自律システム(AS)のサイズに依存して、ASのエッジ上にASのサイズ順に展開されている。CATNsをISPs(Internet Services Provider:インターネットサービスプロバイダ)間の情報のやり取りのキャッシング地点(蓄積地点)と考えれば、CATN(s)を備えたISPs低コストの方法を適用することができて、それは、コンテンつをエンドユーザの近くに配置し、そのコンテンツをダウンロードする際に広域回線網を用いないものである。
【0026】
配備構成は、かなり高度に、ISPルーティングポリシーに関係している。ASの内のユーザはローカルのCATN(s:sは複数)の位置を知っていると仮定すると、ネットワーク上にコンテンツを公開することができる。したがって、コンテンツに関わるどんな要請も、そのローカルのCATNへ最初に転送され、その地点からコンテンツ分解(つまりルーティングに向けた)のプロセスが開始される。ユーザのリクエストを最初に受け取ったCATNは、そのコンテンツがキャッシュにあるかどうかをチェックし、それが存在する場合は、要求に直接応答し、存在しない場合は、隣のCATNのうちの1つへリクエストを転送する。このルーティングメカニズムについては、以下でポテンシャルに基づいたルーティング(PBR)を導入する。
【0027】
高い有用性を達成するために、多数の同一のコンテンツを利用するという意味で、本発明のルーティング解は上記DONAに似ている。有用性が最大の場合には、次のさらなる設計ゴールを達成することができる;
(イ) ルーティングに豊富な意志決定プロセスを供給する多様性。例えば、ユーザのコンテンツの要請は、コンテンツへの近さだけでなく、コンテンツの質またはネットワーク条件を考慮して、一致するコンテンツの方へ直接経路が向けられる。
(ロ) コンテンツが、いつ何時でも、キャッシュに置かれるか、取り除かれるかする環境への順応性。
(ハ) 十分に分散されたメカニズムに基づいた、単一故障に対する強健さ。
(ニ) ルーティング性能の低下を僅かなものに抑制して、ルーティングテーブルのサイズを緩和する拡張性。
【0028】
ポテンシャルに基づいたルーティングアルゴリズムでは、関心のあるアプリケーションに対して、1つのスカラー値をネットワーク要素ごとに定義してポテンシャル場を形成する。その後、クエリまたはトラフィックは、ポテンシャル値を最小化する方向へ転送される。
【0029】
さらに、ICNに起こりうるスケーラビリティ問題を緩和するために、PBR様式を拡張する。
【0030】
ルーティング解に加えて、コンテンツキャッシング(コンテンツの蓄積)問題を取り扱う。理論的には、このICNにおけるコンテンツキャッシング問題は、CDN(Content Delivery Network)における代理サーバー配置と同様な最適化問題として定式化できる。これは、適正なスポットをネットワーク上に最適に選択することによって、最高のパフォーマンスが得られるという意味である。しかし、その最適化問題はNP(Non-deterministic Polynomial)−完全であることが証明されており、発見的問題解決法だけが有効である(非特許文献6)。
【0031】
これらのやり方では計算が複雑であることから、いくつかの別の直感的なやり方が、計算が比較的容易で十分な解を得られるものとして導入されている。例えば、トポロジー依存配置戦略(非特許文献7)では、ネットワークのトポロジカルな特徴に注目する。他の例は、ホットスポットアルゴリズム(非特許文献8)で、最大負荷を生じるユーザーの近くにそのコンテンツのレプリカを配置する。
【0032】
以下では、2つの代替案を考慮する。つまり、ICNの在り得るキャッシング形態としては、トポロジー依存配置(TP:topology aware placement、非特許文献7)およびトラフィック依存配置(TF:traffic aware placement、非特許文献8)である。比較目的のために、ランダム配置(RD、非特許文献9)も考慮する。
【実施例2】
【0033】
<ケース1> 1つのノードのみがコンテンツを持つ場合
上記の1つのノードはポテンシャル値として、−Q、を持つものとする。絶対値|Q|は、コンテンツの予測品質を表す。この品質とは、キャッシュノードの容量やトラフィック付加などである。例えば、高容量の外向きリンクを備えるキャッシュノードは高品質のコンテンツを提供するものと見なすことができる。さらに、ポテンシャル値はそのノードから離れるに従って増加する(たとえば、ホップカウント数に基づいて)。このように、ポテンシャル値は、ネットワークの各ノードで定義することができる。従って、コンテンツを見つけるためには、ユーザー要求のあるノードは、その要求をポテンシャル値が減少するように隣のノードに転送する。次に、このルーティングについて、詳しく説明する。
【0034】
本発明の特徴の1つが、このポテンシャルに基づいたルーティング(PBR)にある。この説明のため、まず、方向性の無いグラフとしてネットワークをモデル化する。ノードnはそれぞれ、隣のノードB(n)のセットを持っている。ネットワーク中のノードは、2つのグループ(すなわちキャッシュされたノードnc、キャッシュされていないノードnnc)に分けられる。ここで、キャッシュされたノードは、そのキャッシュにコンテンツをもつノードとして定義される。また、Tは、同一の内容(n1c、n2c、・・・、nTc)をもった、キャッシュされたノードの数を表わす。
【0035】
最初に、1つのキャッシュされたノードだけ(T=1)がネットワークにあると考える。そのとき、ノードnのポテンシャル値ψnは数1で定義される。
【0036】
【数1】

【0037】
キャッシュされたノードのポテンシャル値ψncを−Qncとして定義する。絶対値|Qnc|は、そのコンテンツについて、キャッシュされたノードのキャパシティあるいはトラヒック負荷などで表され期待できる質を表わす。例えば、高キャパシティの出力リンクを持ったキャッシュされたノードは、高品質コンテンツを供給すると仮定することができる。また、dnc⇔nは、キャッシュされたノードncとノードnの間の距離を表す。直観的に、コンテンツの質が、距離dnc⇔nの増加にしたがって低下すると推測される。距離としては、地理的な接近、ホップカウント、送信遅延、リンクコストなどのような様々な物理的な解釈がある。数1における負号は、ユーザのリクエストが、ポテンシャル場の、より低い部分に向かって下がり続けることを意味する。
【0038】
上記の図1(a)におけるポテンシャル場は、ブロードキャストメカニズムを使用して、個々のキャッシュされたノードのアドバタイズ(経路広告)によって定義されるものとする。アドバタイズメッセージを受信するノードはそれぞれ、経路指定項目(ルーティングエントリー)を作るか、あるいは、入り口点(エントリーポイント)があればそれを更新する。あるノードにおけるルーティングテーブルのサイズはそのノードが受信するアドバタイズメッセージの数に比例するので、アドバタイズメッセージ用のブロードキャスト範囲を制限することでルーティングテーブルのサイズを抑制することができる。
【0039】
上記のPBRを次のように拡張し、拡張されたPBR(EPBR)とする。上記のように、図1(b)は、6つのキャッシュされたノードがある場合の例を示す。また、そのノードの各々は、アドバタイズメッセージの移動を少数のホップ内に納めることが可能になる。このホップ数は、アドバタイズエリア(経路広告範囲)を決定するmとして表わす。逆に言えば、アドバタイズされたエリアの外側のノードではルーティング情報を維持する必要はなく、それでルーティングテーブルのサイズが縮小される。このアプローチを用いると、どれほどルーティングテーブルのサイズを縮小することができるか、を次に示す。
【0040】
EPBR構成では、ユーザリクエストは第1にランダムウォークを行ない、次に、そのリクエストは、ポテンシャル場に移るとすぐに、決定論的にルーティングされる。リクエストがポテンシャル場にあるノードnに到達すると、コンテンツを持ったノードに到達するまで、それは隣接するノードn∈B(n)に転送される。ここで、B(n)は、ノードnに隣接するノードの集合を表す。次のホップbnextのための選択は、ノードnとその隣のb∈B(n)の間のポテンシャル差Fn→bによって決定される。
【0041】
【数2】

【0042】
数2に示すように、ユーザのノードnに関するリクエストは、ポテンシャル差Fn→bが最大となるノードnの隣のノードへ転送される。
【0043】
どのノードにキャッシュするかというキャッシング形態は、パフォーマンスを最大化する上で重要な問題である。ICNにおけるキャッシュについてのコンテンツの配置問題は、最適な配置にすることで最大のパフォーマンスが得られるという意味で、CDNにおける代理配置の問題に類似している。ほとんどのCDNプロバイダー(例えばアカマイ)は、その実装が単純である(非特許文献10)ことから、非協力的プル型アルゴリズムを採用している。同じ理由で、本実施例においても、ICNに非協力的プル型アルゴリズムを使用することを想定している。
【0044】
キャッシングのアルゴリズムの実装は以下のとおりである。第1に、ICNアーキテクチャーの1つの特性から受ける恩恵がある。それは、リクエストノードとレスポンスノードの間の経路上のICNノードは、それらのノードで交換されるコンテンツを知っていることにより生じるもので、これがために、中間ノードはより少ないオーバーヘッドでそのコンテンツをキャッシュできることになる。この場合は、経路上のノードからキャッシングポイントを選択することで、ネットワーク関連の手続きでなく、内部ルーター操作の一環としてのキャッシングを行うこともできる。
【0045】
パス上のノードから1つのキャッシングポイントを選択するために、いくつかの直観的なアプローチを想定する。すなわちトポロジー依存配置(TP)、トラフィック依存配置(TF)およびランダム配置(RD)である。
【0046】
トポロジー依存配置については、リンクを多く持ったノード(高位ノード)にコンテンツをキャッシュする。これは高位ノードが、他のノードへは、より少ない遅延時間で到達することができるためである。他方では、トラフィック依存配置の観点からは、真中にある高位ノードが選ばれる。また、ランダム配置の場合は、経路上のノードをランダムに選ぶ。
【実施例3】
【0047】
複数のノードで同じコンテンツと持つ場合について説明する。この場合は、図3にその例を示す様に、各ノードのポテンシャル値は、単に各キャッシュノードからの影響によるポテンシャル値の線形和であると考える。2つのノードnp1とnp2で1つのコンテンツ(同じコンテンツ)を持つとし、そのポテンシャル値はそれぞれ、−Qnp1、−Qnp2とする。ポテンシャル値は、隣のノードへ移っていくに従って抑制され、それぞれ図3の点線aと2点鎖線bで示すようになる。実線cは両方のポテンシャル値の和を示す。この値は、各ノード、n1、n2、n3、n4、n5、が、クライアントの要求にこたえて経路を設定するために用いる。
【0048】
上記例においては、クライアントの要求はノードn2上で行われるとする。その近隣のノードは、n3とn1なので、ノードn2が計算するのは、自身の値と隣のポテンシャル値との差であり、それぞれ、−Ψ2+Ψ1、と、−Ψ2+Ψ3、である。後者は前者よりも大きいので、要求はノードn3に転送される。これと同様に、ノードn3上の要求はコンテンツを持ったノードnp1へ転送される。
【0049】
次に、複数のキャッシュされたノードがある場合を、より一般化した形式で扱う。それぞれのノードにおけるポテンシャル値は、個々のキャッシュされたノードを反映したポテンシャル値の線形和であると単純に考えることができる。
この場合、上記数1は、数3のように変形できる。
【0050】
【数3】

【実施例4】
【0051】
上記の図1(a)のポテンシャルの場合は、個々のキャッシュノードのブロードキャスト機能を用いたアドバタイズで定義される。アドバタイズメッセージを受け取った各ノードは、ルーティングエントリーを作るかそれをアップデートするかを要求する。この要求は、エントリーポイントの有無に依存する(ルーティング表の各エントリーポイントは、コンテンツの名前と隣のノード用のポテンシャル値とを含むものである)。
【0052】
ここで、各ノードの記憶領域にはそれぞれ図4に示されるような2つのテーブルを設ける。これらは、FT(Forwarding Table:フォワーディング・テーブル)、PT(Pending Table:ペンディングのテーブル)である。
【0053】
FTには3カラムがあり、最初の2行のみ示すが、以降必要な分続く。第1列は、コンテンツ名またはIDを記入する。第2列は、それぞれそのポテンシャル値を入れる。最後の列にはフォワーディング・インターフェース、つまり、指定されたIDを備えた内容を見つけるために、リクエストを転送する隣接ノードを記入する。フォワーディング・インターフェースを決定するために、各ノードはそれぞれ、それ自身の値とその隣のポテンシャル値の間の各内容のポテンシャル差を計算し、最大のポテンシャル差がある隣接ノードを選択するようにする。
【0054】
ノードにおけるルーティング表のサイズ(つまり行または列の数)は、そのノードの受け取る新しいアドバタイズメッセージの数に比例しているので、アドバタイズメッセージのブロードキャスト領域を制限することによってルーティング表のサイズを小さくすることができる。
【0055】
上記の図1(b)のポテンシャルの場合は、この例で6つのキャッシュノードがある場合の例で、アドバタイズメッセージが2〜3ホップ以内である場合を示す。この場合は、アドバタイズ領域外ではルーティング情報を持つ必要がないためルーティング表のサイズを小さくできる。
【0056】
上記PTは、希望のコンテンツを提供するノードに至る経路で、クエリ(要求メッセージ)が伝搬されたのと同じ経路を遡って、トラフィック(応答メッセージ)をユーザーに送るために使用する。言いかえれば、クエリ(要求メッセージ)は、一致する旨のレスポンスの場合に、中間ノードにユーザーまで逆に辿れる経路の記録を残すようにする。上記PTの第2列には、注目するノードの、どのインターフェースへリクエストが入るかを記録する。したがって、あるノードが、あるリクエストIDを備えたレスポンスを受け取る場合、そのノードは、リクエストが入ってきたインターフェースへ、応答メッセージを逆向きに送出する。
【実施例5】
【0057】
図5にコンテンツを保管するノードからのポテンシャル((a)第1種ポテンシャル)と、その情報を傍受してキャッシュしたノードからのポテンシャル((b)第2種ポテンシャル)との線形和のポテンシャル((c)重畳ポテンシャル)について上記の探索を行う場合の例を示す。この例においては、第1種ポテンシャルは、時間的変化が無いものと仮定することができるので、作用範囲の広いポテンシャルを設けても、ポテンシャルの設定や除去に関わる情報資源的コストを低く抑えることができる。しかし、第2種ポテンシャルについては、キャッシュ内容が時々刻々変化するものと仮定することができ、この場合は、ポテンシャル場を入れ替える必要が出てくる。
【0058】
ポテンシャル場を入れ替えることは、各ノードのポテンシャル値を書換えることであるので、第2種ポテンシャルの作用範囲がより広範囲になるにしたがって、その書換え分の情報量あるいは情報処理量が増大し情報資源的コストが増加することは明らかである。従って、第2種ポテンシャルの作用範囲は、なるべく狭いことが望ましい。しかし、上記の図1(b)の説明の様に、第2種ポテンシャルの作用範囲がより小さい場合は、その分目的とするコンテンツの探索に時間を要する様になる。
【0059】
従って、第2種ポテンシャルとしては、複数のノードを包含するが、第1種ポテンシャルよりも狭い作用範囲を持つことが望ましい。例えば、第1種ポテンシャルとして、所定の作用範囲を持ち、定義された距離について単調に増加または減少する関数を想定する。また、第2種ポテンシャルとしては、当初は、キャッシュノード近くのみに及ぶ作用範囲を持ち、時間の経過とともにその作用範囲を拡大し、所定の時間が経過した場合は、第1種ポテンシャルの作用範囲と同じになるように想定することも可能である。
【0060】
第2種ポテンシャルを生成するキャッシュノードのコンテンツの変更が生じた場合には、そのコンテンツによるポテンシャル場を解消する必要がある。この際、複数のノードでのポテンシャル値を同時に改変することが理想であるが、それは通常困難であるので、何らかの手順に従ってそれぞれのノードで順に改変を進めることになる。この改変作業中もユーザーによるコンテンツ探索を許す場合には、この作業の間、コンテンツが消えた後に局所的な極小点(ポテンシャルや引力の極性が上記と逆の場合は、極大点)が発生すると、探索が必ずしも収束しなくなる、あるいは収束点に望みのコンテンツを見出せないなどの事が起こるので、この発生を避けることが臨まれる。このためには、第2種ポテンシャルのキャッシュノードでポテンシャル値を一旦解消するためには、例えば、コンテンツを消す前に、そのポテンシャルの作用する領域の最外殻にあるノードからそのキャッシュノードへ向かってポテンシャル値の解消を進めることで、この問題の発生を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のポテンシャルに基づくルーティング方法を既存のネットワークに適用する場合を考えると、TCP−IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に基づく通常のインターネットでは、ユーザーが情報の入出力を行う通信端末と、該通信端末の接続するネットワークと、を備えており、また、インターネットでは、通信路の接続を切り換えるルータ機能と情報を蓄えるキャッシュ機能を備えたサーバーが複数接続されている。このため、これを用いて、本発明のポテンシャルに基づくルーティング方法を適用できるようにすることは、容易である。
【0062】
このためには、各ノードには、図4に示す表を用意し、コンテンツを有するノードからは、周りのノードに図1(b)のポテンシャル面を形成するためのブロードキャストを行い、上記の表にデータを書き込む。
【0063】
ユーザーが上記コンテンツを上記通信端末に表示しようとするときには、転送要求を、ランダムに選択したサーバー宛に、目的とするコンテンツのポテンシャル値を持ったサーバーの存在が確認できるまで(但し、決められた上限あり)送信する。そのポテンシャル値の極小点となるサーバーを見出す。この際、図4の表に必要なデータを埋めて残す。このサーバーにはユーザーの目的とするコンテンツがあるので、このコンテンツをユーザー宛に転送する。この際、図4(b)に示す経路履歴が残されているので、この履歴を逆に辿るように各ノードを経由して上記通信端末まで送信する。
【符号の説明】
【0064】
1 ER(エッジルータ)
2 BR(バックボーンルータ)
3 AS(自律システム)
4 CATN
5 CATTトポロジー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーが情報の入出力を行う通信端末と、該通信端末の接続するネットワークと、を備え、該ネットワークは、該ネットワークにおける通信路の接続を切り換える機能を備えるノードの複数と、該ノードの複数を互いに接続する通信路の複数を備えるものであり、該ノードは、上記ユーザーが上記ネットワークを通じてダウンロードできる情報を蓄積する機能を備えたネットワークシステムにおいて、
上記ノードを座標点とする離散空間にポテンシャル面を想定するために上記ノードの各々にポテンシャル値を与え、
このポテンシャル面の極小値または極大値を与える目標ノードを探索することによってユーザーの望むコンテンツの所在を探索し、上記探索履歴を用いて上記ユーザーから上記目標ノードに至る通信路を設定するものであり、
それぞれのノードに与えるポテンシャル値は、上記コンテンツを有するノードからの、該ネット上で定義された測度による距離に従って単調に減少または増加し、無限遠の距離においては,予め決められた値に収束するものである、
ことを特徴とするポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項2】
同一のコンテンツを有するノードが複数の場合、上記ネットワークの各ノードのポテンシャル値は、上記コンテンツを有するノードのそれぞれからのポテンシャル値への寄与の線形和であることを特徴とする請求項1に記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項3】
上記測度はホッピング数であって、この測度によるノードAとノードB間の距離は、ノードAからノードBに至るために必要な最小ホッピング数に比例する値であることを特徴とする請求項1または2のどちらかに記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項4】
上記測度は信号遅延時間であって、この測度によるノードAとノードB間の距離は、ノードAからノードBに至るために必要な最小信号遅延時間に比例する値であることを特徴とする請求項1または2のどちらかに記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項5】
上記の極小値または極大値を与えるノードを探索するための方法は、
ユーザーの指定するコンテンツについて付与されたポテンシャル値を有するいずれかのノードを暫定探索ノードとし、上記暫定探索ノードにおいて、該ノードに上記通信路で接続されたノードのそれぞれが持つポテンシャル値を比較して、より目標ノードに近いポテンシャルを有するノードを新たな暫定探索ノードとして探索を順次繰り返すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項6】
上記暫定探索ノードについては、上記ユーザーが情報の入出力を行う通信端末が直接接続するノードを最初の暫定探索ノードとすることを特徴とする請求項5に記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項7】
上記暫定探索ノードについては、ユーザーの指定するコンテンツについて付与されたポテンシャル値を有するいずれかのノードをランダムにあるいは予め決められた順に探索し、その探索によって得られたノードを最初の暫定探索ノードとすることを特徴とする請求項5に記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項8】
上記ポテンシャル値は、コンテンツが長時間蓄積されるノードを中心とする第1種ポテンシャルによるポテンシャル値と、上記コンテンツの複写が短時間蓄積されるノードを中心とする第2種ポテンシャルの単数あるいは複数によるポテンシャル値の単数あるいは複数との和であって、第1種ポテンシャルは、第2種ポテンシャルよりも、広範囲の作用領域を有するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載のポテンシャルに基づくルーティング方法。
【請求項9】
ユーザーが情報の入出力を行う通信端末と、該通信端末の接続するネットワークと、を備え、 該ネットワークは、該ネットワークにおける通信路の接続を切り換える機能を備えるノードの複数と、該ノードの複数を互いに接続する通信路の複数を備えるものであり、該ノードは、上記ユーザーが上記ネットワークを通じてダウンロードできる情報を記憶する機能を備えたものであるネットワークシステムであって、
請求項1から8のいずれか1つのポテンシャルに基づくルーティング方法によって、通信経路を設定することを特徴とするポテンシャルに基づくネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102330(P2013−102330A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244459(P2011−244459)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】