説明

情報伝達式ステアリング装置

【課題】制御が簡易であり且つコストの増大を抑えると共に、運転者がステアリングホイールを軽く握ってしまっている場合又は掌を離してしまった場合においても情報を伝達することが可能な情報伝達式ステアリング装置を提供する。
【解決手段】機械式触覚刺激部30はステアリングホイール20の中心Pから径方向へ反復動作可能な複数のピンから構成され、ステアリングホイール20の外周部にピンの組30a等の進行波状の形状が構成されている。1台のアクチュエータ52が左右に回転することによりベルト51が左右に回転し、これに応じて複数の中心軸PnL等が左右に回転して楕円形状の回転体40nL等が回転し、この回転により複数のピン30n1等が径方向へ上下に動く。制御部15が伝達する情報に応じてアクチュエータ52を制御することにより、結果的にピンの組30a等の各ピンを伝達する情報に応じて上下に駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングを介して情報を伝達する情報伝達式ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車内で運転者へ情報を伝達する場合、ステアリングホイールに情報を照射表示するというように視覚を利用したシステムが開発されていた(特許文献1参照)。しかし、運転者が運転中の場合、視覚を利用した情報の伝達は見落とされる可能性が高いという問題があった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するために、ステアリングホイールに複数の電極を設け、当該電極を介して運転者へ電流刺激を与えることにより情報の伝達を行う情報伝達ステアリング装置の開発が進められた(特願2009−019369)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した情報伝達ステアリング装置は、ステアリングホイール上に設置する複数の電極と、当該複数の電極に電圧を印加する電極切替部と、電極切替部へ刺激電流を出力する波形生成出力部等とが必要となるため、制御が複雑化すると共にコストが増大するという問題があった。さらに、運転者が信号待ちをしている際等においてステアリングホイールを軽く握ってしまっている場合、掌が電極から離れてしまうため情報が伝達されなくなるという問題もあった。特に、運転者がステアリングホイールから掌を離してしまった場合、情報は全く伝達されなくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、制御が簡易であり且つコストの増大を抑えると共に、運転者がステアリングホイールを軽く握ってしまっている場合であっても運転者へ情報を伝達することが可能な情報伝達式ステアリング装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第2の目的は、運転者がステアリングホイールから掌を離してしまった場合においても情報を伝達可能な情報伝達式ステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の情報伝達式ステアリング装置は、ステアリングホイールを介して情報を伝達する情報伝達式ステアリング装置であって、前記ステアリングホイールの外周部に設けられた触覚を機械的に刺激する機械式触覚刺激部と、前記機械式触覚刺激部を駆動する駆動部と、前記駆動部を動作させる動作源と、伝達する情報に応じて動作源を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、この発明の情報伝達式ステアリング装置において、前記機械式触覚刺激部は、前記ステアリングホイールの径方向へ反復動作可能な所定の形状体とすることができる。
【0009】
ここで、この発明の情報伝達式ステアリング装置において、前記駆動部は、前記所定の形状体が載置された楕円形状の回転体を複数個有し、前記動作源は、複数の前記楕円体の各中心軸に沿って掛け回されたベルトと、該ベルトを回転させる回転部とを備えることができる。
【0010】
ここで、この発明の情報伝達式ステアリング装置において、前記駆動部は、上下駆動可能に保持部に保持された前記所定の形状体を駆動する所定の周期形状の波状移動体であり、前記動作源は、前記波状移動体を前記ステアリングホイールの外周方向に沿って動作させることができる。
【0011】
ここで、この発明の情報伝達式ステアリング装置において、前記所定の形状体はピン形状体とすることができる。
【0012】
ここで、この発明の情報伝達式ステアリング装置において、前記ステアリングホイールの運転者視認可能な側面に視覚刺激部をさらに備え、前記制御部は伝達する情報に応じて動作源及び/又は視覚制御部を制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の情報伝達式ステアリング装置は、機械式触覚刺激部はステアリングホイールの中心から径方向へ反復動作(上下動作)可能な複数のピンから構成されている。各ピンの組はその組に含まれる各ピンの上下動作によって、ステアリングホイールの中心から最も離れた状態にあるピンと中心に最も近づいた状態にあるピンとそれらの中間の状態にあるピンとにより、全体として波状の形を構成している。これら各ピンの組の波状の形が集まって、ステアリングホイールの外周部にピンの組の進行波状の形状が構成されている。機械式触覚刺激部を駆動する駆動部は、楕円形状の回転体から構成されている。楕円形状の回転体にはピンが載置されている。ベルトおよびアクチュエータにより駆動部を動作させる動作源が構成されている。1台のアクチュエータが左右に回転することによりベルトが左右に回転し、これに応じて複数の中心軸が左右に回転して楕円形状の回転体が回転する。この回転により、複数のピンがステアリングホイールの径方向へ上下に動き、機械式触覚刺激部は全体として進行波の形状を構成する。制御部が伝達する情報に応じてアクチュエータを制御することにより、結果的にピンを伝達する情報に応じて上下に駆動(押し上げ/下げ)することができる。このため、ステアリングホイールの外周部を握っている運転者の掌に対して機械式触覚刺激部の進行波状の形状による機械的な触覚刺激を与えることができる。以上のように、本発明の情報伝達式ステアリング装置によれば、アクチュエータが1台だけで進行波機械式触覚刺激部の進行波状の形状を作り出すことができるため、制御が簡易であり且つコストの増大を抑えることができる。運転者がステアリングホイールを軽く握ってしまっている場合であっても、ステアリングホイールの中心から最も離れた状態にある(進行波の山に位置する)ピンが必ず存在し且つそのような状態にあるピンはステアリングホイール上に複数個存在するため、運転者へ情報を伝達することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1における触覚刺激ステアリング装置(情報伝達式ステアリング装置)10の概略構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における機械式触覚刺激部30等の拡大図である。
【図3】本発明の実施例2における機械式触覚刺激部30等の拡大図である。
【図4】本発明の実施例3における複合式情報伝達ステアリング装置(情報伝達式ステアリング装置)11の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1における触覚刺激ステアリング装置(情報伝達式ステアリング装置)10の概略構造を示す。図1で、符号20はステアリングホイール、30はステアリングホイール20の外周部に設けられた触覚を機械的に刺激する機械式触覚刺激部である。図1に示されるように、機械式触覚刺激部30はステアリングホイール20の中心Pから径方向(矢印Ra、Rb、...、Rn方向)へ反復動作(上下動作)可能な複数の所定の形状体、好適にはピン(ピン形状体)から構成されている。図1で、符号30aはステアリングホイール20の中心Pから径が略Ra方向にある複数のピンから構成されるピンの組、30bはステアリングホイール20の中心Pから径が略Rb方向にある複数のピンから構成されるピンの組、30nはステアリングホイール20の中心Pから径が略Rn方向にある複数のピンから構成されるピンの組である(途中のピンの組30cないし30n−1は不図示)。図1に示されるように、各ピンの組30a等はその組に含まれる各ピンの上下動作によって、ステアリングホイール20の中心Pから最も離れた状態にあるピンと中心Pに最も近づいた状態にあるピンとそれらの中間の状態にあるピンとにより、全体として波状の形を構成している。これら各ピンの組30a等の波状の形が集まって、ステアリングホイール20の外周部にピンの組30a等の進行波状の形状が構成されている。後述するように、制御部15が伝達する情報に応じてステアリングホイール20の外周部に設けられたピンの組30a等の各ピンを上下駆動することにより、ステアリングホイール20の外周部を握っている運転者の掌(不図示)に対して上述したピンの組30a等の進行波状の形状による機械的な触覚刺激を与えることができる。図1ではピンの組の数はn個示されているが、ピンの組は上記進行波の形状の一時点(1周期分等)を説明するための便宜上のものであって、ピンの組の数はn個に限定されるものではない。
【0017】
図2は、本発明の実施例1における機械式触覚刺激部30等の拡大図を示す。図2で図1と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図2に示されるように、略Rn方向にあるピンの組30nはピン30n1、ピン30n2、ピン30n3、ピン30n4およびピン30n5から構成され、同様に略Ra方向にあるピンの組30aはピン30a1ないしピン30a5から構成され、略Rb方向にあるピンの組30bはピン30b1ないしピン30b5から構成されている。図2では各ピンの組30a等は5個のピン30a1等から構成されているが、ピンの数は5個に限定されるものではない。図2で、符号40は機械式触覚刺激部30を駆動する駆動部であり、楕円形状の回転体40nLおよび40nR、40aLおよび40aR、40bLおよび40bR等から構成されている。図2に示されるように、略Rn方向にあるピンの組30nには楕円形状の回転体40nLおよび40nRが対応しており、左側の楕円形状の回転体40nLにはピン30n1およびピン30n2が載置され、右側の楕円形状の回転体40nRにはピン30n3、ピン30n4およびピン30n5が載置されている。同様に、略Ra方向にあるピンの組30aは楕円形状の回転体40aLおよび40aRが対応しており、左側の楕円形状の回転体40aLにはピン30a1およびピン30a2が載置され、右側の楕円形状の回転体40aRにはピン30a3ないしピン30a5が載置されている。略Rb方向にあるピンの組30bも同様であるため、説明は省略する。ピン30n1等が楕円形状の回転体40nL等に載置(配置)される間隔は等間隔であることが好適である。ピン30n1等の楕円形状の回転体40nL等への載置方法は、例えばピン30n1等と楕円形状の回転体40nL等とを適度に柔軟性を有する樹脂等で一体的に成型する方法がある。この場合、ピン30n1等は楕円形状の回転体40nL等の回転(矢印Aで示す。)に伴い、無理なく上下駆動(矢印Bで示す。)することができる。あるいは、ピン30n1等と楕円形状の回転体40nL等とを別々に製作し、バネまたは柔軟性を有する弾性体により両者を接続する法もある。この場合も、ピン30n1等は楕円形状の回転体40nL等の回転に伴い、無理なく上下駆動することができる。
【0018】
図2で、符号51は複数の楕円形状の回転体40nLおよび40nR、40aLおよび40aR、40bLおよび40bR等の各中心軸PnLおよびPnR、PaLおよびPaR、PbLおよびPbR等に沿って掛け回されたベルト、52はベルト51を回転させる1台のアクチュエータ(回転部)である。ベルト51およびアクチュエータ52により駆動部40を動作させる動作源50が構成されている。図2に示されるように、1台のアクチュエータ52が左右に回転する(矢印Cで示す。)ことによりベルト51が左右に回転し、これに応じて複数の中心軸PnL等が左右に回転して楕円形状の回転体40nL等が回転する(矢印Aで示す。アクチュエータ52による駆動部40の動作)。この回転により、複数のピン30n1等がRn等の方向へ上下に動き(矢印Bで示す。駆動部40による機械式触覚刺激部30の駆動)、機械式触覚刺激部30は全体として進行波の形状を構成する。アクチュエータ52は制御部15(図1参照)に接続されており、制御部15が伝達する情報に応じてアクチュエータ52を制御することにより、結果的にピンの組30a等の各ピンを伝達する情報に応じて上下に駆動(押し上げ/下げ)することができる。このため、ステアリングホイール20の外周部を握っている運転者の掌(不図示)に対して機械式触覚刺激部30の進行波状の形状による機械的な触覚刺激を与えることができる。
【0019】
触覚刺激ステアリング装置10の主要な用途として、自動車の運転等における操舵方向呈示が挙げられる。例えば、制御部15がカーナビゲーション装置(不図示)と接続され、カーナビゲーション装置の経路案内機能により、左折、右折または車線変更の指示が制御部15へ伝達されたものとする。制御部15はカーナビゲーション装置から伝達された指示に基づき、ステアリングホイール20を左右いずれの方向へ操作するべきであるという情報を運転者へ伝達する。例えば、伝達する情報が左折または左車線への変更である場合、制御部15はアクチュエータ52を左回転(矢印Cで示す。)させるように制御する。この結果、ベルト51は左回りとなるように回転するため、複数の中心軸PnL等が左回りに回転して楕円形状の回転体40nL等が左回りに回転する(矢印Aで示す。)。この左回りの回転により、複数のピン30n1等がRn等の方向へ上下に動き(矢印Bで示す。)、機械式触覚刺激部30は全体として左方向へ進行する進行波の形状を構成する。以上により、ステアリングホイール20を握っている運転者は機械式触覚刺激部30が全体として左回りに移動していく機械的刺激を感じることができるため、運転者はステアリングホイール20を左方向へ操作するべきであると直感的に認識することができる。伝達する情報が右折または右車線への変更である場合も、上述した左折または左車線への変更の場合と左右が異なるだけで同様であるため、説明は省略する。
【0020】
上述の説明ではカーナビゲーション装置を用いた場合を主要な用途の例として取り上げた。他の用途としては、自動車の先端部またはフロントガラス上部等に設置したCCDカメラ(不図示)と制御部15とを接続し、制御部15がCCDカメラにより歩行者等の存在を検出した場合、制御部15は危険を知らせる情報を運転者へ伝達するようにしてもよい。この場合、例えば制御部15はアクチュエータ52を左右へ交互に急速に回転させるように制御し、機械式触覚刺激部30は全体として左右方向へ交互に急速に進行する進行波の形状を形成する。ステアリングホイール20を握っている運転者は機械式触覚刺激部30が全体として左右方向へ交互に急速に移動していく機械的刺激を感じることができるため、運転者は危険な状況の存在を直感的に認識することができる。
【0021】
以上のように、本発明の実施例1によれば、機械式触覚刺激部30はステアリングホイール20の中心Pから径方向(矢印Ra、Rb、...、Rn方向)へ反復動作(上下動作)可能な複数のピンから構成されている。各ピンの組30a等はその組に含まれる各ピンの上下動作によって、ステアリングホイール20の中心Pから最も離れた状態にあるピンと中心Pに最も近づいた状態にあるピンとそれらの中間の状態にあるピンとにより、全体として波状の形を構成している。これら各ピンの組30a等の波状の形が集まって、ステアリングホイール20の外周部にピンの組30a等の進行波状の形状が構成されている。機械式触覚刺激部30を駆動する駆動部は、楕円形状の回転体40nLおよび40nR、40aLおよび40aR、40bLおよび40bR等から構成されている。例えば、略Rn方向にあるピンの組30nには楕円形状の回転体40nLおよび40nRが対応しており、左側の楕円形状の回転体40nLにはピン30n1およびピン30n2が載置され、右側の楕円形状の回転体40nRにはピン30n3、ピン30n4およびピン30n5が載置されている。ベルト51およびアクチュエータ52により駆動部40を動作させる動作源50が構成されている。1台のアクチュエータ52が左右に回転することによりベルト51が左右に回転し、これに応じて複数の中心軸PnL等が左右に回転して楕円形状の回転体40nL等が回転する(アクチュエータ52による駆動部40の動作)。この回転により、複数のピン30n1等がRn等の方向へ上下に動き(駆動部40による機械式触覚刺激部30の駆動)、機械式触覚刺激部30は全体として進行波の形状を構成する。制御部15(図1参照)が伝達する情報に応じてアクチュエータ52を制御することにより、結果的にピンの組30a等の各ピンを伝達する情報に応じて上下に駆動(押し上げ/下げ)することができる。このため、ステアリングホイール20の外周部を握っている運転者の掌(不図示)に対して機械式触覚刺激部30の進行波状の形状による機械的な触覚刺激を与えることができる。
【0022】
上述したように、アクチュエータ52が1台だけで進行波機械式触覚刺激部30の進行波状の形状を作り出すことができるため、制御が簡易であり且つコストの増大を抑えることができる。運転者がステアリングホイール20を軽く握ってしまっている場合であっても、ステアリングホイール20の中心Pから最も離れた状態にある(進行波の山に位置する)ピン30n2、30n3、30a2、30a3、30b2、30b3等が必ず存在し且つそのような状態にあるピン30n2等はステアリングホイール20上に複数個存在するため、運転者へ情報を伝達することができる。
【実施例2】
【0023】
実施例2では実施例1とは別の駆動部について説明する。図3は、本発明の実施例2における機械式触覚刺激部30等の拡大図を示す。図3で図2と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図3に示されるように、ピン30n1等は保持部46により径Rn方向等へ上下駆動可能に保持されており、所定の周期の波状移動体47が左右へ(矢印Dで示す。)移動することにより、波状移動体47によって形成される所定の周期の進行波に従って径Rn方向等へ上下駆動される(矢印Bで示す。)。実施例2では波状移動体47が駆動部45を構成する。動作源55は、波状移動体47をステアリングホイール20の外周方向に沿って左右へ(矢印Dで示す。)動作させる。
【0024】
動作源55は制御部15(図1参照)に接続されており、制御部15が伝達する情報に応じて動作源55を制御することにより、動作源55が波状移動体47を左右へ(矢印Dで示す。)移動する。この結果、ピン30n1等は波状移動体47によって形成される所定の周期に従って径Rn方向等へ上下駆動(矢印Bで示す。)される。動作源55が波状移動体47を左右へ移動する速度は適宜設定することが可能である。即ち、制御部15はピン30n1等の各ピンを伝達する情報に応じて所定の周期および所望の速度に従って上下に駆動(押し上げ/下げ)することができる。このため、ステアリングホイール20の外周部を握っている運転者の掌(不図示)に対して機械式触覚刺激部30の所定の周期および所望の速度による機械的な触覚刺激を与えることができる。実施例2における駆動部45を備えた触覚刺激ステアリング装置10の主要な用途としては、実施例1と同様に自動車等の運転における操舵方向呈示が挙げられる。詳細は実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0025】
以上のように、本発明の実施例2によれば、ピン30n1等は保持部46により径Rn方向等へ上下駆動可能に保持されており、所定の周期の波状移動体47が左右へ移動することにより、波状移動体47によって形成される所定の周期の進行波に従って径Rn方向等へ上下駆動される。制御部15はピン30n1等の各ピンを伝達する情報に応じて所定の周期および所望の速度に従って上下に駆動(押し上げ/下げ)することができる。このため、ステアリングホイール20の外周部を握っている運転者の掌(不図示)に対して機械式触覚刺激部30の所定の周期よび所望の速度による機械的な触覚刺激を与えることができる。動作源55が1台だけで進行波機械式触覚刺激部30の所定の周期の形状および所望の速度を作り出すことができるため、制御が簡易であり且つコストの増大を抑えることができる。運転者がステアリングホイール20を軽く握ってしまっている場合であっても、ステアリングホイール20の中心Pから最も離れた状態にある(進行波の山に位置する)ピン30n2等が必ず存在し且つそのような状態にあるピン30n2等はステアリングホイール20上に複数個存在するため、運転者へ情報を伝達することができる。
【0026】
波状移動体47の周期とピン30n1等に固有な空間周波数(上下の振動数)とが干渉し合うことにより、いわゆるエリアシング(うなり、モワレ)が発生する。このようなエリアシングに基づく機械的な触覚刺激をステアリングホイール20の外周部を握っている運転者の掌(不図示)に対して与えることができる。上記エリアシングを利用することにより、実施例1よりもさらに微妙な情報伝達を行うことが可能である。例えば、実施例1で説明したCCDカメラを運転者へ向けておき、運転者が眠りかけている状況を制御部15が把握した場合、眠気覚まし用の制御を動作源55に対して行ってもよい。動作源55は、運転者が不愉快と感じるようなエリアシングを発生させるように波状移動体47を動作させることにより、ピン30n1等に当該エリアシングに応じた上下駆動を行わせ、運転者へ眠気覚まし用の機械的刺激を与えることができる。
【実施例3】
【0027】
図4は、本発明の実施例3における複合式情報伝達ステアリング装置(情報伝達式ステアリング装置)11の概略構造を示す。図4で図1と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図4に示されるように、複合式情報伝達ステアリング装置11は実施例1ないし3の触覚刺激ステアリング装置10に加えて、ステアリングホイール20の運転者視認可能な側面に視覚刺激部60a(左側)および60b(右側)をさらに備えることができる。制御部15は視覚刺激部60aおよび60bに接続されており、伝達する情報に応じて上述したアクチュエータ52、動作源55だけでなく、視覚制御部60a、60bを制御することができる。図4に示されるように、視覚制御部60aおよび60bは種々の発光部から構成されており、伝達する情報は発光部による種々の発光により運転者へ表示することができる。例えば、左折するという情報を伝達する場合には、左側の視覚制御部60aの発光部を発光させ、逆に右折するという情報を伝達する場合には、右側の視覚制御部60bの発光部を発光させればよい。図4では視覚制御部60aおよび60bの2つを例示したが、視覚制御部の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上設置することも可能である。例えば、ステアリングホイール20の下部に視覚制御部を設置しておき、ギアがバックに入った場合に点滅するように制御することもできる。この結果、騒々しい環境でギアがバックに入った際の警告音が聞き取りにくい場合であっても、ギアがバックに入ったことを容易に確認した後、バックすることができる。アクチュエータ52および動作源55の制御と視覚制御部60aおよび60bの制御とは排他的に行うこともでき、共に行うこともできる。従って、例えば、伝達する情報が左折または左車線への変更である場合、制御部15はアクチュエータ52を左回転させるように制御して、結果的に機械式触覚刺激部30は全体として左方向へ進行する進行波の形状を構成する。この制御と共に、制御部15は左側の視覚制御部60aの発光部を発光させることができる。以上により、ステアリングホイール20を握っている運転者は機械式触覚刺激部30が全体として左回りに移動していく機械的刺激を感じると共に、ステアリングホイール20の視覚制御部60aの発光を見るという複合的な刺激を受けるため、運転者はステアリングホイール20を左方向へ操作するべきであると、より直感的に認識することができる。
【0028】
以上のように、本発明の実施例3によれば、制御部15は視覚制御部60aおよび60bにより運転者へ情報を伝達することができるため、運転者がステアリングホイール20から掌を離してしまった場合においても、情報を伝達することができる。制御部15はアクチュエータ52および動作源55の制御と視覚制御部60aおよび60bの制御とを排他的に行うこともでき、共に行うこともできる。従って、アクチュエータ52等に基づく触覚刺激と視覚制御部60a等に基づく視覚刺激との複合的な刺激による情報の伝達を運転者へ行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の活用例として、自動車のステアリング装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 触覚刺激ステアリング装置、 11 複合式情報伝達ステアリング装置、 15 制御部、 20 ステアリングホイール、 30 機械式触覚刺激部、 30a、30b、30n ピンの組、 30a1、30a2、30a3、30a4、30a5、30b1、30b2、30b3、30b4、30b5、30n1、30n2、30n2、30n4、30n5 ピン、 40、45 駆動部、 40aL、40aR、40bL、40bR、40nL、40nR 楕円状の回転体、 46 保持部、 47 波状駆動体、 50、55 動作源、 51 ベルト、 52 アクチュエータ、 60a、60b 視覚制御部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2008−150029号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールを介して情報を伝達する情報伝達式ステアリング装置であって、
前記ステアリングホイールの外周部に設けられた触覚を機械的に刺激する機械式触覚刺激部と、
前記機械式触覚刺激部を駆動する駆動部と、
前記駆動部を動作させる動作源と、
伝達する情報に応じて動作源を制御する制御部とを備えたことを特徴とする情報伝達式ステアリング装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報伝達式ステアリング装置において、前記機械式触覚刺激部は、前記ステアリングホイールの径方向へ反復動作可能な所定の形状体であることを特徴とする情報伝達式ステアリング装置。
【請求項3】
請求項2記載の情報伝達式ステアリング装置において、
前記駆動部は、前記所定の形状体が載置された楕円形状の回転体を複数個有し、
前記動作源は、複数の前記楕円体の各中心軸に沿って掛け回されたベルトと、該ベルトを回転させる回転部とを備えたことを特徴とする情報伝達式ステアリング装置。
【請求項4】
請求項2記載の情報伝達式ステアリング装置において、
前記駆動部は、上下駆動可能に保持部に保持された前記所定の形状体を駆動する所定の周期形状の波状移動体であり、
前記動作源は、前記波状移動体を前記ステアリングホイールの外周方向に沿って動作させることを特徴とする情報伝達式ステアリング装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の情報伝達式ステアリング装置において、前記所定の形状体はピン形状体であることを特徴とする情報伝達式ステアリング装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の情報伝達式ステアリング装置において、前記ステアリングホイールの運転者視認可能な側面に視覚刺激部をさらに備え、前記制御部は伝達する情報に応じて動作源及び/又は視覚制御部を制御することを特徴とする情報伝達式ステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−35682(P2012−35682A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175788(P2010−175788)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】