説明

情報入力装置

【課題】暗い使用環境においてもトラックボールの位置を判別可能とし、当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているかを認識可能とする。
【解決手段】情報を処理するコンピュータPCと、該コンピュータの情報処理の内容を表示する画像表示装置MTと、前記コンピュータに情報入力するためのボール2、このボールが嵌まり得る凹球面を有し該ボールを回転可能に支持するケース3、このケース内にボールを回転可能に保持するボール保持リング5を有するトラックボール1と、を備えた情報入力装置であって、トラックボール1のボール2及び/又はボール保持リング5を光透過性とし、このボール2及び/又はボール保持リング5に光照射手段25により可変色の光を照射してそれらが光るようにし、前記画像表示装置MTの表示画面に、前記ボール2及び/又はボール保持リング5が光る色と同じ色のポインティングマーク27を表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の情報を処理するコンピュータと、画像表示装置と、前記コンピュータに情報入力するための入力操作部となるトラックボールとを備えた情報入力装置に関し、詳しくは、暗い使用環境においてもトラックボールの位置を容易に判別可能とすると共に、当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているかを認識可能とし、かつ操作部材としてのボールの回転の検出を確実とする情報入力装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
各種の情報処理装置、例えば医用画像診断装置、内視鏡装置、船舶誘導装置又は航空監視システム等の入力操作部として用いられるトラックボールは、その使用環境が異なっており、装置によっては操作するボールがどこにあるのかが分からないほど暗い環境で使用する場合もある。また、トラックボールの操作による入力情報により対象部位の位置計測、長さ計測又は面積計測等の機能を行う場合、その機能が複雑になると当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているのか分かりにくくなっている。
【0003】
これに対処して、ケーシングの上面から一部を露出し回転自在に設けられたボールを有し、前記ボールの回転により入力情報を得るようにしたトラックボール構造において、前記ケーシングに設けられた光源からの光が前記ボールを透過することにより前記ボールが発光するように構成した照明付トラックボールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の装置として、指などで操作するための操作部材となる球体と、上記球体を回転可能に支持する支持部材と、上記球体に向かって光を発する発光部と、上記発光部から発せられた光に対し、上記球体により反射された反射光を検知する検知部とからなり、上記球体は、上記光の一部分が透過する材質で構成され、上記球体において、上記発光部からの光を透過させることにより、上記球体の照光を図るようにした光学式トラックボール装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−324188号公報
【特許文献2】特開2004−38368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に記載の照明付トラックボールにおいては、暗い使用環境においてもボールの位置を判別可能とすることはできるが、回転自在に設けられたボールの外周に、互いに軸方向が直交するX方向及びY方向に沿って一対の回転軸が回転自在に設けられ、この一対の回転軸で前記ボールを支持して該ボールの回転を検出し、前記各回転軸に付設されたエンコーダ等の検出手段でボールの回転方向や回転量を検出するものであり、ボールの外周に接触する一対の回転軸により機械的な構造でボールの回転を検出するようになっているので、ボールと回転軸とがスリップしたり、ボールの表面又は回転軸の表面に塵埃が付着すると、ボールの回転の検出が確実に行えないことがあった。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の光学式トラックボール装置においては、暗い使用環境においても球体の位置を判別可能とすることはできるが、上記球体の下方に配された発光部の光源がLED(発光ダイオード)などであり、上記球体により反射された反射光を検知部で検知して上記球体の回転操作状態を検出するようになっているので、球体の表面が滑らかで何の模様やパターン等も付されていない場合は、検知部で球体からのLED反射光を検知できないことがあり、球体の回転の検出が確実に行えないことがあった。そのため、球体の表面全周の表面粗度を粗くしたり、球体の表面に何らかの模様やパターン等を付する必要があった。
【0008】
なお、前記いずれの特許文献1及び特許文献2に記載の発明も、当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているかを容易に認識することはできなかった。
【0009】
このような問題点に対処し、本発明が解決しようとする課題は、暗い使用環境においてもトラックボールの位置を容易に判別可能とすると共に、当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているかを認識可能とし、かつ操作部材としてのボールの回転の検出を確実とする情報入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による情報入力装置は、情報を処理するコンピュータと、前記コンピュータの情報処理の内容を表示する画像表示装置と、回転操作して前記コンピュータに情報入力するための操作部材となるボール、このボールが嵌まり得る凹球面を有しその内周側に前記ボールを回転可能に支持するケース、このケース内にボールを回転可能に保持するボール保持リング、並びに前記ケースに設けられ前記ボールに向かってレーザ光を照射する投光部及び前記ボールから反射されたレーザ光を検知する受光部を有して前記ボールの回転量を検出する検出デバイスを有するトラックボールと、を備えた情報入力装置であって、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方を光透過性とし、このボール及びボール保持リングの少なくとも一方に光照射手段により可変色の光を照射して該ボール及びボール保持リングの少なくとも一方が可変色で光るようにし、前記画像表示装置の表示画面に、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る色と同じ色のポインティングマークを表示するようにしたものである。
【0011】
このような構成により、レーザ光を利用した検出デバイスを用いることで操作部材としてのボールの回転量の検出を確実とし、また、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方を光透過性とし、このボール及びボール保持リングの少なくとも一方に光照射手段により可変色の光を照射して該ボール及びボール保持リングの少なくとも一方が可変色で光るようにすることで、暗い使用環境においてもトラックボールの位置を容易に判別可能とし、さらに、画像表示装置の表示画面に、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る色と同じ色のポインティングマークを表示することで、当該トラックボールと画像表示装置のポインティングマークとの対応関係を明確にする。
【0012】
また、前記トラックボールを複数個備え、前記光照射手段による可変色の光の照射により前記複数個のトラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方をそれぞれ異なる色で光らせ、前記画像表示装置の表示画面には、それぞれのトラックボールに対応するポインティングマークを該トラックボールのボール又はボール保持リングの色に合わせて異なる色で表示するようにしてもよい。
これにより、複数個のトラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方をそれぞれ異なる色で光らせ、画像表示装置の表示画面には、それぞれのトラックボールに対応するポインティングマークを該トラックボールのボール又はボール保持リングの色に合わせて異なる色で表示することで、複数個のトラックボールと画像表示装置の表示画面上のポインティングマークとの対応関係を明らかにする。
【0013】
さらに、前記光照射手段により照射する光の強度を可変として、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを可変としてもよい。
これにより、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを可変とすることで、暗い使用環境においては明るさを強くして光らせ、あまり暗くない使用環境においては明るさを弱くして光らせ、使用環境の明るさに応じてトラックボールの位置を容易に判別可能とする。
【0014】
さらにまた、前記光照射手段により照射する光の強度を周辺の明るさに追従して可変とし、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを自動調整可能としてもよい。
これにより、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを周辺の明るさに追従して自動調整可能とすることで、自動的に暗い使用環境においては明るさを強くして光らせ、あまり暗くない使用環境においては明るさを弱くして光らせ、使用環境の明るさに応じてトラックボールの位置を容易に判別可能とする。
【0015】
また、前記コンピュータからの操作指令により前記トラックボールの操作が要求される際は、当該トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方の光を点滅表示させるようにしてもよい。
これにより、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方の光を点滅表示させることで、コンピュータからの操作指令により操作が要求されたトラックボールを認識可能とする。
【0016】
さらに、前記トラックボールの光透過性とされたボールの材料中に光散乱性微粒子を配合してなり、前記光照射手段からの光の照射により前記ボールが光ると共に散乱光を発生し、前記検出デバイスの投光部からのレーザ光の照射により前記ボールが散乱光を発生するようにしてもよい。
これにより、光照射手段からの光の照射によりボールが光ると共に散乱光を発生し、検出デバイスの投光部からのレーザ光の照射により前記ボールが散乱光を発生するようにしたことで、暗い使用環境においてもトラックボールの位置を容易に判別可能とし、操作部材としてのボールの回転量の検出を確実とする。
【0017】
さらにまた、前記トラックボールのケース内に支持されたボールの回転に伴って音を発生させるようにしてもよい。
これにより、ボールの回転に伴って音を発生させることで、トラックボールの操作部材としてのボールが回転操作されていることを音により認識可能とする。
【0018】
また、前記ボールの回転に伴って発生させる音は、該ボールの回転方向により音量、音程又は音色を変化させるようにしてもよい。
これにより、ボールの回転に伴って発生させる音を、該ボールの回転方向により音量、音程又は音色を変化させることで、トラックボールの操作部材としてのボールの回転操作状態を音量、音程又は音色等により認識可能とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、レーザ光を利用した検出デバイスを用いることで操作部材としてのボールの回転量の検出を確実とし、また、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方を光透過性とし、このボール及びボール保持リングの少なくとも一方に光照射手段により可変色の光を照射して該ボール及びボール保持リングの少なくとも一方が可変色で光るようにすることで、暗い使用環境においてもトラックボールの位置を容易に判別可能とし、さらに、画像表示装置の表示画面に、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る色と同じ色のポインティングマークを表示することで、当該トラックボールと画像表示装置のポインティングマークとの対応関係を明確にすることができる。そして、トラックボールとポインティングマークとの対応関係を明確にすることで、当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているかを認識可能とすることができる。
【0020】
また、請求項2に係る発明によれば、複数個のトラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方をそれぞれ異なる色で光らせ、画像表示装置の表示画面には、それぞれのトラックボールに対応するポインティングマークを該トラックボールのボール又はボール保持リングの色に合わせて異なる色で表示することで、複数個のトラックボールと画像表示装置の表示画面上のポインティングマークとの対応関係を明らかにすることができる。したがって、当該トラックボールに現時点でどのような機能が与えられているかを認識可能とすることができる。
【0021】
さらに、請求項3に係る発明によれば、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを可変とすることで、暗い使用環境においては明るさを強くして光らせ、あまり暗くない使用環境においては明るさを弱くして光らせ、使用環境の明るさに応じてトラックボールの位置を容易に判別可能とすることができる。
【0022】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを周辺の明るさに追従して自動調整可能とすることで、自動的に暗い使用環境においては明るさを強くして光らせ、あまり暗くない使用環境においては明るさを弱くして光らせ、使用環境の明るさに応じてトラックボールの位置を容易に判別可能とすることができる。
【0023】
また、請求項5に係る発明によれば、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方の光を点滅表示させることで、コンピュータからの操作指令により操作が要求されたトラックボールを認識可能とすることができる。したがって、当該トラックボールに与えられた機能を認識可能とすることができる。
【0024】
さらに、請求項6に係る発明によれば、光照射手段からの光の照射によりボールが光ると共に散乱光を発生し、検出デバイスの投光部からのレーザ光の照射により前記ボールが散乱光を発生するようにしたことで、暗い使用環境においてもトラックボールの位置を容易に判別可能とし、操作部材としてのボールの回転量の検出を確実とすることができる。
【0025】
さらにまた、請求項7に係る発明によれば、ボールの回転に伴って音を発生させることで、トラックボールの操作部材としてのボールが回転操作されていることを音により認識可能とすることができる。
【0026】
また、請求項8に係る発明によれば、ボールの回転に伴って発生させる音を、該ボールの回転方向により音量、音程又は音色を変化させることで、トラックボールの操作部材としてのボールの回転操作状態を音量、音程又は音色等により認識可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による情報入力装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明におけるトラックボールの実施形態を示す平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図2の左側面図である。
【図5】図2及び図3の左斜視図である。
【図6】本発明におけるトラックボールの分解斜視図である。
【図7】図6に示すケースを上から見た平面図である。
【図8】ケースに対する検出デバイスの取り付け状態を示す説明図であり、図8(a)は検出デバイスを示す斜視図、図8(b)は検出デバイスを取り付けたケースを上から見た平面図、図8(c)は前記検出デバイスからのレーザ光がボールに照射し反射される状態を示す光経路図である。
【図9】本発明におけるトラックボールのX軸検出デバイス及びY軸検出デバイスによるボールの回転量の検出方向を示す説明図である。
【図10】図1に示す光照射手段及び図8に示す2個の検出デバイスを搭載する帯状のフレキシブル基板を示す平面図である。
【図11】本発明におけるトラックボールの実施形態を示す底面図であり、ケースの下半部の外周側面にフレキシブル基板を巻き付けて取り付けた状態を示す図である。
【図12】図6に示すボールをボール取り出しリングで吊下げ保持する状態を示す説明図であり、図12(a)は正面図、図12(b)はその中央断面図である。
【図13】ボールがケースの内周側面のボール支持体のみの支持により回転可能となった状態を示す中央断面図である。
【図14】フレキシブル基板に搭載された光照射手段により光を照射してボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る状態を示す断面説明図であり、図14(a)はボール保持リングが光る状態を示す図、図14(b)はボールが光る状態を示す図である。
【図15】図1に示すトラックボールにおいて、光照射手段によりボール及び/又はボール保持リングに可変色の光を照射する実施形態を示す説明図である。
【図16】図1に示すトラックボールにおいて、光照射手段により照射する光の強度を可変として、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを可変とする実施形態を示す説明図である。
【図17】図1に示すトラックボールにおいて、光照射手段により照射する光の強度を周辺の明るさに追従して可変とし、トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを自動調整可能とする実施形態を示す説明図である。
【図18】図1に示すトラックボールにおいて、該トラックボールのケース内に支持されたボールの回転に伴って音を発生させるようにした実施形態を示す説明図である。
【図19】図1に示すトラックボールにおいて、該トラックボールのケース内に支持されたボールの回転に伴って音を発生させる際に、該ボールの回転方向により音量、音程又は音色を変化させるようにした実施形態を示す説明図である。
【図20】図1に示す情報入力装置において、トラックボールを複数個備え、それぞれのボール及びボール保持リングの少なくとも一方を異なる色で光らせ、画像表示装置の表示画面には、各トラックボールに対応するポインティングマークを該トラックボールのボール又はボール保持リングの色に合わせて異なる色で表示するようにした実施形態を示す説明図である。
【図21】図20に示す実施形態において、2個のトラックボールと画像表示装置の表示画面上のポインティングマークの色分け表示の状態を示す説明図である。
【図22】トラックボールと画像表示装置の表示画面上のポインティングマークの色分け表示の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による情報入力装置の実施形態を示すブロック図である。この情報入力装置は、例えば医用画像診断装置、内視鏡装置、船舶誘導装置又は航空監視システム等の各種の情報処理システムにおいて情報を入力するもので、図1に示すように、コンピュータPCと、画像表示装置MTと、トラックボール1とを備えて成る。
【0029】
前記コンピュータPCは、情報処理システムにおいて各種の情報を処理するもので、一般に電子計算機と呼ばれるものである。また、画像表示装置MTは、前記コンピュータPCの情報処理の内容を表示するもので、画像データを処理する表示回路と、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)又はプラズマディスプレイ(PDP)等の表示器とを備えて成る。
【0030】
そして、トラックボール1は、前記コンピュータPCの入力操作部として用いられるもので、回転操作して前記コンピュータPCに情報入力するための操作部材となるボール2と、このボール2が嵌まり得る凹球面を有しその内周側に前記ボール2を回転可能に支持するケース3と、このケース3内にボール2を回転可能に保持するボール保持リング5と、前記ケース3に設けられ前記ボール2に向かってレーザ光を照射する投光部及び前記ボール2から反射されたレーザ光を検知する受光部を有して前記ボール2の回転量を検出する検出デバイス4と、前記ボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方に可変色の光を照射する光照射手段25と、前記検出デバイス4及び光照射手段25を制御すると共にボール2の回転量を演算し出力するCPU(中央処理装置)などの制御回路26とを有して成る。
【0031】
以下、前記トラックボール1の具体的な構造について図2〜図6を参照して説明する。図2は本発明におけるトラックボール1の実施形態を示す平面図、図3はその正面図、図4はその左側面図、図5は図2及び図3の左斜視図であり、図6は本発明におけるトラックボール1の分解斜視図である。前記ボール2は、操作者が指で回転操作して情報入力するための操作部材となるもので、例えば合成樹脂又はガラスなどで製造されている。
【0032】
前記ボール2は、ケース3内に支持されている。このケース3は、その内周側に前記ボール2を回転可能に支持するもので、図6に示すように、ボール2が嵌まり得る半球状の凹球面を有して前記ボール2を嵌合するようになっており、例えば透明な合成樹脂などで製造されている。
【0033】
前記ケース3には、検出デバイス4が設けられている。この検出デバイス4は、前記ケース3内に支持されたボール2の回転量を検出するもので、前記ボール2に向かってレーザ光を照射する投光部及び前記ボール2から反射されたレーザ光を検知する受光部を有している。
【0034】
このような構成要素を有するトラックボール1は、図6に示すようにして組み立てられる。すなわち、図6において、まず、ボール2の上部に、該ボール2の直径よりも小さい内径のボール露出孔5aを有するボール保持リング5を載せる。次に、前記ボール2にボール保持リング5を載せた状態のものの上方から、ボール2を前記ケース3内に吊下げ保持すると共に該ケース3に着脱可能とするボール取り出しリング6を載せて、ボール2とボール保持リング5とボール取り出しリング6とを一体的に組み合わせる。その後、この一体的に組み合わされたボール2とボール保持リング5とボール取り出しリング6とを、前記ケース3の半球状の凹球面の上方から内周側に嵌めて、前記ボール取り出しリング6を例えば時計回りに少し回転させてケース3の引掛けミゾに掛止する。これにより、図3に示すように、ケース3の上面にボール取り出しリング6のリング部が位置し、ボール保持リング5のボール露出孔5aから上方にボール2の上部が露出した状態でトラックボール1が組み立てられる。
【0035】
以下、このようにして組み立てられるトラックボール1の各構成要素について、さらに詳しく説明する。
図7は、図6に示すケース3を上から見た平面図である。このケース3は、前述のようにその内周側に前記ボール2を回転可能に支持するものであるが、半球状の凹球面の内周側面に、図7(a)に示すように、円周方向の例えば3等分の位置にボール支持体7が設けられている。或いは、前記ボール支持体7は、図7(b)に示すように、円周方向の例えば5等分の位置に設けてもよい。前記ボール支持体7の前記ケース3における設置位置は、図13に示すように、ケース3の高さの約1/2程度の位置に設けられている。ケース3の内側底部には、何も設けられていない。
【0036】
前記ボール支持体7は、ケース3内にて前記ボール2を回転可能に支持する部材となるもので、例えば直径の小さい球体に形成されており、各々のボール支持体7の一部が前記ボール2の表面に点接触で当接している。具体的には、小球状のボール支持体7(支持球)の材質はルビー又はジルコニアから成り、その直径は例えば1.0mmから2.0mmまでの範囲であり、実用的には直径1.2mm以上で1.75mm以下のルビーであるのが望ましい。
なお、ボール支持体7(支持球)の数は、多いほどボール2の回転操作力が軽くなるが、操作のし易さという観点から5個程度が適当である。
【0037】
図8は、前記ケース3に対する検出デバイス4の取り付け状態を示す説明図であり、図8(a)は検出デバイス4を示す斜視図、図8(b)は検出デバイス4を取り付けたケース3を上から見た平面図、図8(c)は前記検出デバイス4からのレーザ光がボール2に照射し反射される状態を示す光経路図である。検出デバイス4は、図8(a)に示すように、ベース部材8に、ボール2に向かってレーザ光を照射するレーザ発光素子から成る投光部9と、前記ボール2から反射されたレーザ光を検知するレーザ受光素子から成る受光部10と、前記受光部10で検知した信号を処理してボール2の回転量を検出するセンサ11とを備えている。
【0038】
そして、図8(b)に示すように、前記ボール2の真下を除くケース3の下半部にて該ボール2の中心を通る一平面内で直交する二軸方向(X軸方向、Y軸方向)に1個ずつデバイス取付け窓12が設けられ、各々のデバイス取付け窓12にX軸検出デバイス4xとY軸検出デバイス4yとがそれぞれ取り付けられている。この場合、前記2個の検出デバイス4x,4yは、前記ボール2の回転方向のX軸方向とY軸方向とに対応させて、X軸検出デバイス4xでボール2のX軸方向の回転量を検出し、Y軸検出デバイス4yでボール2のY軸方向の回転量を検出するようになっている。これら2個の検出デバイス4x,4yで個別にボール2の回転量を検出し、2個の検出デバイス4x,4yの検出信号を合成した値によってボール2の回転量を検出するようになっている。
【0039】
なお、前述のボール2の真下を除くケース3の下半部にて該ボール2の中心を通る一平面とは、図13(ボール2がケース3内に嵌合した断面図)においてボール2の中心を符号13で表すと、この中心13を通る斜め方向の平面14のことである。そして、図8(b)に示すX軸検出デバイス4x及びY軸検出デバイス4yは、この平面14内にて直交するX軸方向、Y軸方向にそれぞれ設けられている。この場合、前記2個の検出デバイス4x,4yは、前記ボール2の平面14内にて、図8(c)に示すように投光部9からボール2に向かってレーザ光を照射し、前記ボール2から反射されたレーザ光を受光部10で検知して、該ボール2の直交するX軸方向、Y軸方向の回転量を検出する。
【0040】
図9は、前記トラックボール1のX軸検出デバイス4x及びY軸検出デバイス4yによるボール2の回転量の検出方向を示す説明図である。X軸検出デバイス4xは、前述のようにボール2のX軸方向の回転量を検出するものであるが、その検出データはCCD(電荷結合素子)カメラのように2次元(X方向、Y方向)の移動量データを含んでおり、図9(a)に示すように、X軸方向の回転量データとY軸方向の回転量データとを含んでいる。また、Y軸検出デバイス4yは、前述のようにボール2のY軸方向の回転量を検出するものであるが、その検出データは上述と同様に、2次元(X方向、Y方向)の移動量データを含んでおり、図9(b)に示すように、Y軸方向の回転量データとX軸方向の回転量データとを含んでいる。そして、前記2個の検出デバイス4x,4yで個別にボール2の回転量を検出し、2個の検出デバイス4x,4yの検出信号を合成した値によってボール2の回転量を検出するようになっている。
【0041】
図8(b)に示す2個の検出デバイス4x,4yは、図10に示す帯状のフレキシブル基板15に搭載されている。このフレキシブル基板15は、例えば厚さ0.2mm程度のポリイミド樹脂から成り折り曲げ可能とされ、縦幅が約14mmで横の長さが約170mm程度の細長い帯状に形成されており、図10において左端部にX軸検出デバイス4xを搭載するための取付け穴16xがあけられ、右端部にY軸検出デバイス4yを搭載するための取付け穴16yがあけられている。そして、これらの取付け穴16x,16yに図8(a)に示す投光部9及び受光部10を挿入して、前記フレキシブル基板15の表面側にそれぞれX軸検出デバイス4x、Y軸検出デバイス4yが取り付けられている。
【0042】
また、前記帯状のフレキシブル基板15には、光照射手段25が搭載されている。この光照射手段25は、後述のように光透過性とされるボール2及び/又はボール保持リング5に可変色の光を照射するもので、図10に示すように、フレキシブル基板15の例えば上辺部に適宜の間隔をおいて8個設けられている。例えば、前記帯状のフレキシブル基板15の右端部から順に第1の光照射手段25a、第2の光照射手段25b、第3の光照射手段25c、第4の光照射手段25d、第5の光照射手段25e、第6の光照射手段25f、第7の光照射手段25g及び第8の光照射手段25hが設けられている。ここで、第1、第2、第4、第5、第7及び第8の光照射手段25a,25b,25d,25e,25g,25hは、主としてボール保持リング5に光を照射するもので、単色光の発光ダイオード(LED)から成る。残りの第3及び第6の光照射手段25c,25fは、主としてボール2に光を照射するもので、それぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光を発する3個の発光ダイオード(LED)を組み合わせて成る。したがって、第3及び第6の光照射手段25c,25fは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3個の発光ダイオードの点灯を組み合わせることで発光色を適宜変えて照射することができる。なお、前記各光照射手段25の光源は、発光ダイオードに限られず、可変色の光を照射するものであるならば、他の光源であってもよい。
【0043】
なお、図10において、符号17は、前記フレキシブル基板15の裏面側に取り付けられた電力供給及び信号取出し用のコネクタを示し、符号18は、このフレキシブル基板15の検出デバイス、CPU、コネクタなどの部品を搭載する搭載部を裏打ち補強し、前記ケース3に巻き付けて取り付けるための板状の取付部材を示している。
【0044】
そして、前記フレキシブル基板15は、図11に示すように、前記ケース3の下半部の外周側面に巻き付けて取り付けられている。図11は本発明におけるトラックボール1の底面図であり、ケース3の底面部に水平方向に取り付けられた板金19を利用し、その板金19の上面に図10に示すフレキシブル基板15の取付部材18の下辺が接するように位置させて、X軸検出デバイス4x、取付部材18、コネクタ17及びY軸検出デバイス4yが前記ケース3の下半部の外周側面に位置するように、前記フレキシブル基板15の裏面側を内側にして巻き付けられている。この状態で、前記フレキシブル基板15の取付け穴16x,16yに投光部9及び受光部10を挿入して取り付けられたX軸検出デバイス4x、Y軸検出デバイス4yは、前記ケース3の内周側に向けて設けられ、図8(b)に示すように、ケース3のそれぞれのデバイス取付け窓12内に位置して前記ボール2に向かってレーザ光を照射し、該ボール2から反射されたレーザ光を検知するようにされている(図8(c)参照)。また、前記フレキシブル基板15に搭載された光照射手段25a〜25hの光が後述のようにボール2側に到達するために、ケース3は透明な材料で出来ている。
なお、前述の図3〜図5においては、ケース3の下半部の形状を見せるためにフレキシブル基板15の図示を省略している。
【0045】
図12は、図6に示すボール2をボール取り出しリング6で吊下げ保持する状態を示す説明図であり、図12(a)は正面図、図12(b)はその中央断面図である。ボール取り出しリング6は、前記ケース3とボール2との間において該ボール2をケース3内で吊下げ保持すると共にケース3に着脱可能とするもので、図12(b)に示すように、ボール2の直径よりも小さい内径のボール露出孔6aを有するリング部20と、このリング部20の対向する2箇所から所定の幅及び長さでボール2の下半部まで下方に伸びる保持アーム21とを備えている。前記保持アーム21は、ケース3内に組み込まれたボール2を該ケース3から取り出すときに実際にボール2を吊下げ保持するもので、その幅方向において前記リング部20と同心円状に湾曲しており、その下端部22はボール2の球面形状に沿って内側に円弧状に形成されている。この状態で、前記保持アーム21の2個の下端部22を円周の一部とする仮想の円を描くとき、この仮想の円がボール2の最大外周円より小さくなるように形成され、前記仮想の円がボール2の最大外周円より広がるように保持アーム21が弾性を有するようにされている。
【0046】
このようなボール取り出しリング6を用いてボール2をケース3に着脱するには、図6において、ボール2の上部にボール保持リング5を載せ、このボール保持リング5を載せた状態のボール2の上方から、図12(b)に示す2個の保持アーム21をボール2側に向けてボール取り出しリング6をボール2に押し込むと、前記保持アーム21の下端部22がボール2と接触して該保持アーム21が弾性により外側に広げられる。そして、保持アーム21の下端部22がボール2の最大外周円を通過すると、前記保持アーム21は弾性により元の形状に復元する。この状態で、ボール2は、リング部20のボール露出孔6aと2個の保持アーム21の下端部22とにより吊下げ保持される。なお、図12(b)においては、図6に示すボール保持リング5は図示を省略してある。
【0047】
次に、前記のようにボール2を保持したボール取り出しリング6を、図6においてケース3の半球状の凹球面の上方から内周側に嵌め、前記ボール取り出しリング6を例えば時計回りに少し回転させて、該ボール取り出しリング6の下部周囲に設けられた複数個の係合爪23をケース3の内周側に設けられた引掛けミゾ24に掛止する。このとき、前記ボール2は、図7に示すケース3の内周側面に3個又は5個設けられたボール支持体7で支持されるため、図12(b)に示す保持アーム21の下端部22より上方に押し上げられ、該保持アーム21の下端部22と非接触となる。この状態で、ボール2は、ボール取り出しリング6のリング部20及び保持アーム21にも接触しないでボール取り出しリング6の保持から開放され、図13に示すように、ケース3の内周側面のボール支持体7のみの支持により回転可能となる。
【0048】
次に、前記ボール取り出しリング6を用いてボール2をケース3から取り出すには、図6において、ボール取り出しリング6のリング部20を手で保持して例えば反時計回りに少し回転させて、ケース3の引掛けミゾ24に対する係合爪23の掛止を解除する。その状態で、リング部20を手で保持してボール取り出しリング6をケース3から上方に引き上げる。すると、ボール2は、2個の保持アーム21の下端部22に引っかかり、前記ボール取り出しリング6と共にケース3の上方へ取り出される。
【0049】
ここで、本発明においては、前記トラックボール1のボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方を光透過性とし、このボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方に光照射手段25により可変色の光を照射して該ボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方が可変色で光るようにされている。すなわち、図1において、トラックボール1のボール2及びボール保持リング5の両方又は何れか一方が光透過性とされている。ここで言う「光透過性」とは、ある部材が光を透過する性質のことであり、光を100%透過する透明状態と、光を透過する度合いが0%より高く100%未満である半透明状態とを含むものである。以下、本明細書においては、光透過性とは、透明状態及び半透明状態を含むものとして用いる。
【0050】
具体的には、半透明の材料としては、ポリエステル、ポリスチレンなどがある。この場合、ボール2及びボール保持リング5の両方又は何れか一方が、ポリエステル又はポリスチレンなどの半透明な材料で形成されている。また、ボール2又はボール保持リング5の一方を不透明な材料で形成する場合は、ポリアセタール、ポリプロピレンなどの材料から成る。このような半透明な材料と不透明な材料との組み合わせによって、ボール2を不透明としてボール保持リング5を半透明とし、これとは逆にボール保持リング5を不透明としてボール2を半透明とするという実施形態がある。或いは、ボール2及びボール保持リング5の両方を半透明とするという実施形態もある。
【0051】
図14は、前記フレキシブル基板15に搭載された光照射手段25a〜25h(図10参照)により可変色の光を照射してボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方が可変色で光る状態を示す断面説明図であり、図14(a)はボール保持リング5が光る状態を示す図、図14(b)はボール2が光る状態を示す図である。まず、図14(a)においては、ケース3は透明とされており、ボール2を不透明としてボール保持リング5が半透明とされている。この場合、前記光照射手段25a〜25hから発せられた光は、透明なケース3を透過して不透明なボール2の表面に到達し、このボール2の表面で外向きに反射されてボール取り出しリング6の内側面に到達し、このボール取り出しリング6の内側面で内向きに反射されて半透明なボール保持リング5に入射して矢印Aのように透過する。このとき、ボール保持リング5は、例えば乳白色の半透明な材料で形成されているので、光が入射して矢印Aのように透過することでその内部で光が散乱すると共に透過して、該ボール保持リング5の全体が可変色で光るようになる。
【0052】
次に、図14(b)においては、ケース3は透明とされており、ボール保持リング5を不透明としてボール2が半透明とされている。この場合、前記光照射手段25a〜25hから発せられた光は、透明なケース3を透過してそのまま半透明なボール2に入射して矢印Bのように透過する。このとき、ボール2は、例えば乳白色の半透明な材料で形成されているので、光が入射して矢印Bのように透過することでその内部で光が散乱すると共に透過して、該ボール2の全体が可変色で光るようになる。
なお、図14(a)及び(b)では、ボール2又はボール保持リング5の一方が光る場合について説明したが、本発明はこれに限られず、ボール2及びボール保持リング5の両方を半透明な材料で形成して、前記光照射手段25a〜25hから発せられた光の照射により両方が可変色で光るようにしてもよい。
【0053】
さらに、前記光透過性(半透明)とされたボール2の材料中に光散乱性微粒子を配合して、前記光照射手段25a〜25hからの光の照射により前記ボール2が光ると共に散乱光を発生し、前記検出デバイス4の投光部9からのレーザ光の照射により前記ボール2が散乱光を発生するようにしてもよい。この場合のボール2は、例えば、半透明なポリエステル樹脂100重量部に対し、平均粒子径が0.5〜20μmの光散乱性微粒子を0.0001〜0.03重量部配合してなるポリエステル樹脂ボールから成る。光散乱材としては、アルミナ、酸化チタン等がある。このようなポリエステル樹脂ボールを用いると、ボール2が均質に光るようになり、レーザ光の照射によるボール2の回転量の検出感度が向上する。
【0054】
そして、本発明においては、前記光照射手段25により可変色の光を照射して前記ボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方が可変色で光ると共に、図1に示す画像表示装置MTの表示画面に、前記トラックボール1のボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方が光る色と同じ色のポインティングマーク27を表示するようになっている。すなわち、図1において、トラックボール1内の制御回路26からの輝度制御信号Br(赤),Bg(緑),Bb(青)の送信により光照射手段25が点灯してボール2及び/又はボール保持リング5が例えば赤色、緑色、青色等に変化して光った際に、その光照射手段25への輝度制御信号Br(赤),Bg(緑),Bb(青)に対応する輝度情報が前記制御回路26からコンピュータPCへ送信され、さらに該コンピュータPCから当該輝度情報が画像表示装置MTへ送信されて、ポインティングマーク27の色をトラックボール1のボール2及び/又はボール保持リング5が光る色と同じ色とする。
これにより、トラックボール1と画像表示装置MTのポインティングマーク27との対応関係を明確にすることができる。そして、トラックボール1とポインティングマーク27との対応関係を明確にすることで、当該トラックボール1に現時点でどのような機能が与えられているかを認識可能とすることができる。
【0055】
図15は、図1に示すトラックボール1において、光照射手段25によりボール2及び/又はボール保持リング5に可変色の光を照射する実施形態を示す説明図である。図15において、光照射手段25は、赤色発光のLED1と、緑色発光のLED2と、青色発光のLED3とから成るものとする。なお、図15では、ボール2、ボール保持リング5及び検出デバイス4は図示省略している。
【0056】
この実施形態では、コンピュータPCに付設されたキーボード等の可変色入力部28を操作して光変更信号Saをトラックボール1の制御回路26に入力する。例えば、可変色入力部28により赤色照射の光変更信号Saを制御回路26に送信する。すると、制御回路26は、赤色照射に対応するLED選択信号S1を出力して赤色発光のLED1に入力させ、該LED1を赤色に点灯させる。これにより、光照射手段25は、図1に示すボール2及び/又はボール保持リング5に赤色の光を照射し、該ボール2及び/又はボール保持リング5が赤色で光る。
【0057】
同様にして、前記可変色入力部28により緑色照射の光変更信号Saを制御回路26に送信すると、制御回路26は、緑色照射に対応するLED選択信号S2を出力して緑色発光のLED2に入力させ、該LED2を緑色に点灯させて、光照射手段25はボール2及び/又はボール保持リング5に緑色の光を照射し、該ボール2及び/又はボール保持リング5が緑色で光る。さらに、前記ボール2及び/又はボール保持リング5に青色の光を照射するには、前記可変色入力部28により青色照射の光変更信号Saを制御回路26に送信すれば、青色照射に対応するLED選択信号S3を出力して、前述と同様にして青色発光のLED3が点灯して青色の光を照射する。なお、図15において、可変色入力部28からの光変更信号Saは、前記制御回路26ではなく、各LED1、LED2及びLED3の駆動回路(図示省略)に送信するようにしてもよい。
【0058】
図16は、図1に示すトラックボール1において、光照射手段25により照射する光の強度を可変として、トラックボール1のボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方が光る明るさを可変とする実施形態を示す説明図である。図16においても、光照射手段25は、赤色発光のLED1と、緑色発光のLED2と、青色発光のLED3とから成るものとし、ボール2、ボール保持リング5及び検出デバイス4は図示省略している。
【0059】
この実施形態では、コンピュータPCに付設されたキーボード等の光強度入力部29を操作して光強度信号Sbをトラックボール1の制御回路26に入力する。例えば、光強度入力部29により光強度の大、中、小を内容とする光強度信号Sbを制御回路26に送信する。すると、制御回路26は、光強度信号Sbに対応する光強度を内容とするLED選択信号S4,S5,S6を出力して各LED1,LED2,LED3に入力させ、それぞれ点灯させる。これにより、光照射手段25は、光強度入力部29で入力された光強度の光を図1に示すボール2及び/又はボール保持リング5に照射し、該ボール2及び/又はボール保持リング5が光る明るさが可変とされる。なお、図16において、光強度入力部29からの光強度信号Sbは、前記制御回路26ではなく、各LED1、LED2及びLED3の駆動回路(図示省略)に送信するようにしてもよい。
【0060】
図17は、図1に示すトラックボール1において、光照射手段25により照射する光の強度を周辺の明るさに追従して可変とし、トラックボール1のボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方が光る明るさを自動調整可能とする実施形態を示す説明図である。図17においても、光照射手段25は、赤色発光のLED1と、緑色発光のLED2と、青色発光のLED3とから成るものとし、ボール2、ボール保持リング5及び検出デバイス4は図示省略している。
【0061】
この実施形態では、コンピュータPCに付設されたキーボード等の端部に設けられた周辺光センサ30で感知した周辺明るさ信号Scがトラックボール1の制御回路26へ自動的に送信される。例えば、周辺光センサ30により周辺明るさの大、中、小を内容とする周辺明るさ信号Scを制御回路26に送信する。すると、制御回路26は、周辺明るさ信号Scに対応する明るさの光強度を内容とするLED選択信号S7,S8,S9を出力して各LED1,LED2,LED3に入力させ、それぞれ点灯させる。これにより、光照射手段25は、周辺光センサ30から送信された明るさに対応する光強度の光を図1に示すボール2及び/又はボール保持リング5に照射し、該ボール2及び/又はボール保持リング5が光る明るさが自動調整可能とされる。なお、図17において、周辺光センサ30からの周辺明るさ信号Scは、前記制御回路26ではなく、各LED1、LED2及びLED3の駆動回路(図示省略)に送信するようにしてもよい。また、前記周辺光センサ30は、コンピュータPCに付設されたキーボードに限られず、図1に示す画像表示装置MTの表示器の枠部に設けてもよい。
【0062】
なお、図1及び図15〜図17の実施形態において、前記コンピュータPCからの操作指令によりトラックボール1の操作が要求される際は、当該トラックボール1のボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方の光を点滅表示させるようにしてもよい。この場合は、例えば、コンピュータPCからトラックボール1への操作指令の送信に連動して、該コンピュータPCからトラックボール1の制御回路26にボール2及び/又はボール保持リング5の点滅表示信号を送信すればよい。これにより、コンピュータPCからの操作指令により操作が要求されたトラックボール1を認識可能とすることができる。
【0063】
図18は、図1に示すトラックボール1において、該トラックボール1のケース3内に支持されたボール2の回転に伴って音を発生させるようにした実施形態を示す説明図である。なお、図18では、ボール2、ボール保持リング5及び光照射手段25は図示省略している。
【0064】
図18(a)は、トラックボール1の制御回路26に音発生手段として、例えばブザー31を設けたものである。この場合は、検出デバイス4でボール2の回転を検出すると、該検出デバイス4から回転量データが制御回路26へ送られる。制御回路26は、前記回転量データの入力によりボール2が回転していることを検出し、ブザー31へ音発生信号Sdを送出して該ブザー31を鳴動させる。これにより、トラックボール1の操作部材としてのボール2が回転操作されていることを音により認識可能とする。
【0065】
図18(b)は、トラックボール1の制御回路26に音発生手段として、例えば音声IC(各種の音声を合成して記憶したメモリ)などの音声発生回路32を設けると共に、この音声発生回路32にスピーカ33を接続したものである。この場合は、検出デバイス4でボール2の回転を検出すると、該検出デバイス4から回転量データが制御回路26へ送られる。制御回路26は、前記回転量データの入力によりボール2が回転していることを検出し、音声発生回路32へ音発生信号Seを送出し、この音声発生回路32からの音声信号によりスピーカ33を鳴動させる。これにより、トラックボール1の操作部材としてのボール2が回転操作されていることを音により認識可能とする。
【0066】
図19は、図1に示すトラックボール1において、該トラックボール1のケース3内に支持されたボール2の回転に伴って音を発生させる際に、該ボール2の回転方向により音量、音程又は音色を変化させるようにした実施形態を示す説明図である。なお、図19においても、ボール2、ボール保持リング5及び光照射手段25は図示省略している。
【0067】
この実施形態は、トラックボール1の制御回路26に音発生手段として、例えば3個のブザー31a,31b,31cを設けたものである。ここで、3個のブザー31a,31b,31cは、それぞれ音量が異なり、音程が異なり、或いは音色が異なるものとされている。この場合は、検出デバイス4でボール2の回転及び回転方向を検出すると、該検出デバイス4から回転量データが制御回路26へ送られる。制御回路26は、前記回転量データの入力によりボール2の回転方向を検出し、その回転方向に応じて例えば3種類の音発生信号Sf1,Sf2,Sf3を生成する。そして、ボール2の回転方向に応じて3種類の音発生信号Sf1,Sf2,Sf3の何れかを選択し、第1の音発生信号Sf1を第1のブザー31aに、第2の音発生信号Sf2を第2のブザー31bに、第3の音発生信号Sf3を第3のブザー31cにそれぞれ送出する。すると、選択されたブザー31a,31b,31cに応じて異なる音量、音程又は音色で各ブザーを鳴動させる。これにより、トラックボール1の操作部材としてのボール2の回転操作状態を音量、音程又は音色等により認識可能とする。
【0068】
なお、図19は、図18(a)の実施形態においてボール2の回転に伴って発生させる音をその回転方向により音量、音程又は音色を変化させるようにしたものであるが、図18(b)の実施形態においてもボール2の回転方向により音量、音程又は音色を変化させるようにしてもよい。その場合は、音声発生回路32にボール2の回転方向により音量、音程又は音色を変化させる音声を記憶させておき、制御回路26から前記ボール2の回転方向により音量、音程又は音色を変化させる音発生信号Seを音声発生回路32へ送出し、この音声発生回路32からの音声信号によりスピーカ33を鳴動させればよい。
【0069】
図20は、図1に示す情報入力装置において、トラックボール1を複数個(1a,1b)備え、光照射手段25による可変色の光の照射により前記複数個のトラックボール1a,1bのボール2及びボール保持リング5の少なくとも一方をそれぞれ異なる色で光らせ、画像表示装置MTの表示画面には、それぞれのトラックボール1a,1bに対応するポインティングマーク27を該トラックボール1a,1bのボール2又はボール保持リング5の色に合わせて異なる色で表示するようにした実施形態を示す説明図である。なお、図20では、ボール保持リング5及び光照射手段25は図示省略している。
【0070】
この実施形態では、図20に示すように、コンピュータPCからそれぞれのトラックボール1a,1bに例えば赤色表示の輝度制御信号Br、緑色表示の輝度制御信号Bg、青色表示の輝度制御信号Bbの何れかを送信し、トラックボール1a,1b内の光照射手段25が点灯してボール2及び/又はボール保持リング5が前記輝度制御信号に対応する色に光り、前記トラックボール1a又は1bのボール2の回転操作による回転量データ及び輝度情報が出力されてコンピュータPCに入力する。コンピュータPCは前記回転量データ及び輝度情報の入力により何れのトラックボール1a又は1bが操作されたかを判断して、前記コンピュータPCから画像表示装置MTへ当該輝度情報が送信されて、ポインティングマーク27の色を、トラックボール1a又は1bのボール2及び/又はボール保持リング5が光る色と同じ色とする。
【0071】
図21は、図20に示す実施形態において、2個のトラックボール1a,1bと画像表示装置MTの表示画面上のポインティングマーク27の色分け表示の状態を示す説明図である。まず、図21(a)は、第2のトラックボール1bが緑色に発光してボール2が回転操作されており、この第2のトラックボール1bから図1に示すコンピュータPCを介して緑発光の輝度情報が画像表示装置MTへ送信されて、ポインティングマーク27の色を、トラックボール1bのボール2及び/又はボール保持リング5の光る色と同じ緑色で表示する状態を示している。
また、図21(b)は、第1のトラックボール1aが青色に発光してボール2が回転操作されており、この第1のトラックボール1aから図1に示すコンピュータPCを介して青発光の輝度情報が画像表示装置MTへ送信されて、ポインティングマーク27の色を、トラックボール1aのボール2及び/又はボール保持リング5の光る色と同じ青色で表示する状態を示している。
【0072】
なお、図20又は図21において、画像表示装置MTの表示画面に2個のトラックボール1a,1bに対応させて二つのポインティングマーク27を表示し、一方のポインティングマーク27を第1のトラックボール1aの発光色に合わせ、他方のポインティングマーク27を第2のトラックボール1bの発光色に合わせるようにしてもよい。
【0073】
図22は、トラックボール1と画像表示装置MTの表示画面上のポインティングマーク27の色分け表示の他の実施形態を示す説明図である。この実施形態では、画像表示装置MTの機能切替ボタン34を追加し、この機能切替ボタン34で画像表示装置MTの機能切替えとトラックボール1の発光色の切替えとを連動させて、画像表示装置MTの機能で描画している色とトラックボール1の発光色とを一致させるようにしたものである。
【0074】
図22(a)は、機能切替ボタン34で、トラックボール1を緑色で発光させる輝度制御信号及び画像表示装置MTにて緑色で図形等を描画する信号を該トラックボール1に入力し、これによって前記トラックボール1のボール2及び/又はボール保持リング5が緑色で発光し、画像表示装置MTの表示画面上にポインティングマーク27を緑色で表示してこのポインティングマーク27の動きで図形等を緑色で描画する状態を示している。
また、図22(b)は、同様にして機能切替ボタン34で、トラックボール1を青色で発光させる輝度制御信号及び画像表示装置MTにて青色で図形等を描画する信号を該トラックボール1に入力し、これによって前記トラックボール1のボール2及び/又はボール保持リング5が青色で発光し、画像表示装置MTの表示画面上にポインティングマーク27を青色で表示してこのポインティングマーク27の動きで図形等を青色で描画する状態を示している。
これにより、前記トラックボール1の現在の機能を明らかにすると共に、該トラックボール1の発光色から次に画像表示装置MTにて何色で描画されるかを明らかにしたり、その描画の色の変更が可能になる。
【符号の説明】
【0075】
PC…コンピュータ
MT…画像表示装置
1…トラックボール
2…ボール
3…ケース
4…検出デバイス
5…ボール保持リング
6…ボール取り出しリング
7…ボール支持体
9…投光部
10…受光部
11…センサ
15…フレキシブル基板
25,25a〜25h…光照射手段
26…制御回路
27…ポインティングマーク
28…可変色入力部
29…光強度入力部
30…周辺光センサ
31,31a〜31c…ブザー
32…音声発生回路
34…機能切替ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を処理するコンピュータと、
前記コンピュータの情報処理の内容を表示する画像表示装置と、
回転操作して前記コンピュータに情報入力するための操作部材となるボール、このボールが嵌まり得る凹球面を有しその内周側に前記ボールを回転可能に支持するケース、このケース内にボールを回転可能に保持するボール保持リング、並びに前記ケースに設けられ前記ボールに向かってレーザ光を照射する投光部及び前記ボールから反射されたレーザ光を検知する受光部を有して前記ボールの回転量を検出する検出デバイスを有するトラックボールと、
を備えた情報入力装置であって、
前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方を光透過性とし、このボール及びボール保持リングの少なくとも一方に光照射手段により可変色の光を照射して該ボール及びボール保持リングの少なくとも一方が可変色で光るようにし、
前記画像表示装置の表示画面に、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る色と同じ色のポインティングマークを表示するようにしたことを特徴とする情報入力装置。
【請求項2】
前記トラックボールを複数個備え、前記光照射手段による可変色の光の照射により前記複数個のトラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方をそれぞれ異なる色で光らせ、前記画像表示装置の表示画面には、それぞれのトラックボールに対応するポインティングマークを該トラックボールのボール又はボール保持リングの色に合わせて異なる色で表示することを特徴とする請求項1記載の情報入力装置。
【請求項3】
前記光照射手段により照射する光の強度を可変として、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを可変としたことを特徴とする請求項1又は2記載の情報入力装置。
【請求項4】
前記光照射手段により照射する光の強度を周辺の明るさに追従して可変とし、前記トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方が光る明るさを自動調整可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載の情報入力装置。
【請求項5】
前記コンピュータからの操作指令により前記トラックボールの操作が要求される際は、当該トラックボールのボール及びボール保持リングの少なくとも一方の光を点滅表示させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報入力装置。
【請求項6】
前記トラックボールの光透過性とされたボールの材料中に光散乱性微粒子を配合してなり、前記光照射手段からの光の照射により前記ボールが光ると共に散乱光を発生し、前記検出デバイスの投光部からのレーザ光の照射により前記ボールが散乱光を発生するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の情報入力装置。
【請求項7】
前記トラックボールのケース内に支持されたボールの回転に伴って音を発生させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の情報入力装置。
【請求項8】
前記ボールの回転に伴って発生させる音は、該ボールの回転方向により音量、音程又は音色を変化させるようにしたことを特徴とする請求項7記載の情報入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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