説明

情報再生装置とそれを備えた電子機器

【課題】本発明は、情報記録媒体格納部の側板に突設された係止部とイジェクトレバーの上部に切り欠き状に形成された凸部との係合した状態を良好に維持することができ、かつ、情報記録媒体格納部を開放してカートリッジを取り出したい場合にはその係止状態を安定して解除することのできる情報再生装置とそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】イジェクトレバー131は、側板と対向配置され係止部と係合可能な凸部を有する弾性変形部131cと、弾性変形部131cから角部に沿って曲折され保持板と所定の間隔を置いて配設された本体部131eと、本体部131eから情報記録媒体格納部の内側に垂下された作用部131aと、作用部131aから延設されカートリッジが格納された状態において保持板に当接または保持板と所定の間隔を有する当接部131dと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク等の情報記録媒体に記録された情報を、少なくとも再生することが可能な情報再生装置とそれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のデジタル技術の急速な発展に伴い、各種のコンテンツでは取り扱うデータ量が急増しており、ユーザの様々な用途に合わせた情報記録媒体が開発されている。
【0003】
このような情報記録媒体の例としてはハードディスク、光ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
【0004】
これら情報記録媒体を使用する情報再生装置やパーソナルコンピュータなどを、室内だけではなく屋外に持ち出して使用したいというユーザからの強い要望がある。
【0005】
そのようなモバイル用途を想定した少し大きめの電子機器としては、例えばノート型の携帯型パーソナルコンピュータ、PDAに代表される携帯情報端末、携帯電話、携帯ゲーム機器、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどを挙げることができる。
【0006】
特に、最近では、7インチ、8.9インチ、または10.2インチなどの小画面の液晶表示装置を搭載した超小型のいわゆるウルトラモバイルパソコンなどが携帯端末の価格とあまり変わらない価格帯で販売され爆発的な人気を博している。
【0007】
これらモバイル用途において、取り扱うコンテンツが静止画やテキストデータが中心の場合、即ち情報記録媒体の記録容量が少なくてもよい場合は一般に半導体メモリが多用される。
【0008】
その理由は、半導体メモリには消費電力が少なく、機構部がないために落下衝撃に強く、データ転送速度が高速であるというメリットがあるが、その反面、記憶容量あたりのコストが高いために動画など大容量のデータを持つコンテンツに対する記録メディアとしては不向きである。
【0009】
一方、光ディスクを用いた情報記録媒体は光ディスクの交換による容量当たりのコストの優位性、ランダムアクセス性、再生専用のメディア(ROM)としたときにディスク製造の生産性に優れているため、特に動画など大容量データを有するコンテンツを記録する情報記録媒体の主流となっている。
【0010】
また、例えば、操作者が携帯するのに適合した音楽再生用としてポピュラーな小型の電子機器としては、直径約63mmの小径光ディスクを幅約72mm、奥行き68mm、高さ5mmの外形寸法を有する樹脂製のカートリッジ内に収容したミニディスク(登録商標)などの小径の光ディスクの再生が可能な小型プレーヤー、あるいはインターネットのネット回線を介して内蔵されたハードディスクや半導体メモリにお気に入りの画像や楽曲などをダウンロードして再生が可能な超小型プレーヤーなども広く普及している。
【0011】
このようなカートリッジに収容された小径光ディスクを再生する情報再生装置としては、例えば(特許文献1)に開示される構成が知られている。
【0012】
本文献では、カートリッジが情報記録媒体格納部にスライド挿入されることによりイジェクトレバーが移動範囲において後端寄り(挿入方向側)の位置まで移動されると、情報記録媒体格納部の角部の近傍に突設された係止部がイジェクトレバーの上部に切り欠き状に形成された凸部を係止した状態となり、イジェクトレバーの弾性変形部の前端部側(挿入口側)に形成されたコイルばね掛け部よりもコイルばね掛け突部の方をやや上側に位置させることでコイルばねが伸び、そのコイルばねが自然状態に形状復帰しようとする付勢力によってイジェクトレバーの前端部が挿入口方向だけでなくやや上方へも付勢されているという構成が開示されている。
【0013】
このやや上方に向かう付勢力によって情報記録媒体格納部の側板に突設された係止部がイジェクトレバーの上部に切り欠き状に形成された凸部を係止した状態が確実に維持され、操作者の再生中や携帯中に振動・落下などの衝撃によりカートリッジが不用意に排出されるのを未然に防止できている。
【0014】
一方、カートリッジを取り出そうとして情報記録媒体格納部が開放しようとするとリリース板に形成された係止部によって、弾性変形部の爪部の先端凸部が下方に引き下げられ、その結果、係止部によって係止された凸部も同様に引き下げられるため、係止状態が解除されコイルばねが自然長に戻ろうとして情報記録媒体格納部が前端部側(挿入口側)へ移動する。
【特許文献1】特開2004−118961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら従来の技術では、イジェクトレバーの弾性変形部は、前端部側(挿入口側)に形成されたコイルばね掛け部からコイルばねで引っ張り応力が加えられているものの、弾性変形部の爪部の先端凸部が下方に引き下げられようとすると、情報記録媒体格納部の角部のイジェクトレバーの往復運動方向を中心軸とした内側方向への回転変位も生じるため、その回転変位を阻止することができずに爪部がリリース板の係止部から内側に外れてしまい、弾性変形部が十分に引き下げされないため係止状態を安定して解除することが困難となってきているという課題があった。
【0016】
特に、カートリッジに収容された小径光ディスクを再生する情報再生装置として利用する場合には、装置自体の小型軽量化に伴いイジェクトレバーの板厚も薄くなる傾向であること、さらにはイジェクトレバーの十分なスライド性を確保するためには、情報記録媒体格納部との間に所定の隙間を設けることが必要なことなどの回転変位をより増大させる原因ともなり、そのような課題がより顕著になってきている。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するもので、小径ディスクに対応した情報再生装置でありながら、情報記録媒体格納部の側板に突設された係止部とイジェクトレバーの上部に切り欠き状に形成された凸部との係合した状態を良好に維持することができ、かつ、情報記録媒体格納部を開放してカートリッジを取り出したい場合にはその係止状態を安定して解除することのできる情報再生装置とそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係わる情報再生装置のイジェクトレバーは、側板と対向配置され係止部と係合可能な凸部を有する弾性変形部と、弾性変形部から角部に沿って曲折され保持板と所定の間隔を置いて配設された本体部と、本体部から情報記録媒体格納部の内側に垂下された作用部と、作用部から延設されカートリッジが格納された状態において保持板に当接するまたは保持板と所定の間隔を有する当接部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係わる情報再生装置のイジェクトレバーは、側板と対向配置され係止部と係合可能な凸部を有する弾性変形部と、弾性変形部から角部に沿って曲折され保持板と所定の間隔を置いて配設された本体部と、本体部から情報記録媒体格納部の内側に垂下された作用部と、作用部から延設されカートリッジが格納された状態において保持板に当接するまたは保持板と所定の間隔を有する当接部と、を有するものである。
【0020】
これにより、小径ディスクに対応した情報再生装置でありながら、情報記録媒体格納部の側板に突設された係止部とイジェクトレバーの上部に切り欠き状に形成された凸部との係合した状態を良好に維持することができ、かつ、情報記録媒体格納部を開放してカートリッジを取り出したい場合にはその係止状態を安定して解除することのできる情報再生装置とそれを備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1に示すように情報再生装置1は、着脱可能な情報記録媒体7を格納する情報記録媒体格納部8と、少なくとも情報記録媒体7のカートリッジ6に収容されたディスク状記録媒体5に記録された情報を読み取るピックアップ75と、再生機構部2のほぼ中央に配置され、ディスク状記録媒体5を回転駆動するスピンドルモータ22と、上面シャーシ9の下方に隣接配置された取付け部95から情報記録媒体格納部8の開口部を通って垂れ下がり、ピックアップ75の正常な動作範囲を超える変位を規制するピックアップ規制部材94を有している。
【0023】
この図からも明らかなように、情報記録媒体格納部8はカートリッジ6をその高さ方向から挟み込むように所定の間隔で対面配置された一対の保持板81、保持板82とそれらと連接されカートリッジ6をその幅方向の側面側から挟み込むように所定の間隔で対面配置された一対の側板83、側板84を有している。
【0024】
まず操作者は、情報記録媒体7を情報再生装置1に装着するにあたって、図示しない開放レバーを操作することにより再生機構部2から上面シャーシ9と情報記録媒体格納部8の両部材を上方に開放した状態にしてから、次に手動で情報記録媒体7を情報記録媒体格納部8の中へ所定の方向でスライド挿入する。
【0025】
ここで、情報の記録面を有するディスク状記録媒体5を収容したカートリッジ6の上面となるディスク状記録媒体5の記録面と平行な方向の面に少なくとも1つの凹部(図示せず)がスライド挿入方向と平行に形成されており、その凹部を上側に向けた状態でゆっくりスライド挿入する。
【0026】
すると、ピックアップ規制部材94は、情報記録媒体7が情報記録媒体格納部8への情報記録媒体7の着脱に応じて容易に弾性変位するように構成されているので、情報記録媒体7のスライド挿入に伴って、そのカートリッジ6の進行方向の先端部に押されて上側に弾性変形する。
【0027】
さらにカートリッジ6がスライド挿入されると、ピックアップ規制部材94がカートリッジ6の上面に当接した状態で情報記録媒体7を押圧するのと併せてカートリッジ6のスライド挿入方向側の端面が情報記録媒体格納部8の奥側の左に偏倚して設けられたイジェクトレバー131(図2参照)の作用部131aに当接する。
【0028】
ここで、イジェクトレバー131は、保持板81と保持板82に連接された側板83により構成された角部85の外側に往復運動可能に取り付けられており、カートリッジ6の挿入によってイジェクトレバー131もその作用部131aがカートリッジ6に当接するため奥側にスライドして押し込まれる。
【0029】
そして、カートリッジ6が情報記録媒体格納部8に格納された状態で角部85の近傍から突出する係止部133によってイジェクトレバー131の凸部134(図2参照)は係止される。
【0030】
また、この状態で、上面シャーシ9を押し下げると、情報記録媒体7の中に収容されたディスク状記録媒体5が、スピンドルモータ22の周部に配設されたマグネットによってチャッキング装着され、スピンドルモータ22によってディスク状記録媒体5の回転駆動が可能な位置で保持される。
【0031】
ここで、図面の下部で示した矢印x、y、zは、相互に垂直な関係にある空間3次元の方向を示しており、それぞれ情報再生装置1やカートリッジ6に対する幅方向、奥行き方向および高さ方向を示している。
【0032】
次に、図2を用いて前述した情報記録媒体格納部8の角部85に配設されたイジェクト機構部P2について詳細に説明する。
【0033】
本図は、イジェクトレバー131の凸部134が、係止部133によって係止された状態を示しているが、イジェクトレバー131はコイルばね掛け部131bを介してコイルばね132と連結され常時方向D6に付勢されている。
【0034】
また、前述したようにイジェクトレバー131の弾性変形部131cの前端部側(挿入口側)に形成されたコイルばね掛け部131bよりも挿入口側に位置するコイルばね掛け突部(図示せず)の方をやや上側に位置させることでコイルばね132が伸び、そのコイルばね132が自然状態に形状復帰しようとする付勢力によってイジェクトレバー131の前端部が挿入口方向だけでなくやや上方へも付勢されている。
【0035】
しかしながら、イジェクトレバー131の弾性変形部131cの上部に設けられた凸部134が情報記録媒体格納部8の角部85の近傍に突設された係止部133によって係止されており、イジェクトレバー131は方向D6にスライドすることはない。
【0036】
一方、情報記録媒体格納部8の閉状態においては、この状態が維持されるものの、操作者の操作によって情報記録媒体格納部8が開かれると、爪部137はリリース板135の係止部136と当接し、係止部136の側すなわち方向D7に変位する。
【0037】
そして、その爪部137の方向D7への変位によってイジェクトレバー131に設けられた凸部134が情報記録媒体格納部8に設けられた係止部133から外れ係止状態が解除されると、コイルばね132が自然長に戻ろうとして縮むことによってイジェクトレバー131は方向D6に変位し、情報記録媒体格納部8に格納されていたカートリッジ6が方向D6にイジェクトされる。
【0038】
次に、図3を用いてイジェクトレバー131単体について説明する。
【0039】
イジェクトレバー131は、側板83(図4参照)とスライド可能に対向配置され係止部133と係合可能な凸部134を有する弾性変形部131cと、弾性変形部131cから角部85(図4参照)に沿って曲折され保持板81と所定の間隔を置いて配設された本体部131eと、本体部131eから情報記録媒体格納部8の内側に垂下された作用部131aと、作用部131aから延設されカートリッジ6が格納された状態において保持板81の下面に当接するまたは保持板81と所定の間隔を有する当接部131dと、を有する。
【0040】
また、イジェクトレバー131には、弾性変形部131cの下方に側板83に突設された少なくとも1つの支持ピン(図示せず)と被支持孔131fを介してy方向にスライド可能に取り付けられた被支持部131gが設けられており、往復運動方向の規制がなされている。
【0041】
また、図4で示したように、作用部131aから延設されカートリッジ6が格納された状態において当接部131dは保持板81の下面と若干の所定の間隔を有するように設けられているが、これは情報記録媒体格納部8を構成する保持板81やイジェクトレバー131の加工精度や組み立て精度を考慮して余裕(公差)を持たせ安定した往復運動を確保するためのもので、それらを考慮する必要がない場合には、当接部131dを保持板81の下面と当接するように設けても構わない。
【0042】
ここで、カートリッジ6を取り出そうとした場合、係止部136によるイジェクトレバー131の凸部134の係止状態を解除するために弾性変形部131cの爪部137の先端凸部137aが方向D7で示したように下方に引き下げられる。
【0043】
そうすると、情報記録媒体格納部8の角部85のイジェクトレバー131の往復運動方向を中心軸とした内側方向(本図では反時計周り方向)、つまり本体部131eの上面が角部85を支点として破線で示した位置まで回転変位θが生じようとするが、その回転変位前に当接部131dに対して保持板81から下方向D8の押圧力が作用するため、そのような回転変位θが生じるのを有効に阻止することができる。
【0044】
その結果、イジェクトレバー131の凸部134の係止状態を解除する際に爪部137がリリース板135の係止部136から内側に外れることもなく、弾性変形部131cが十分に真下方向に引き下げられるため係止状態を安定して解除することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明による情報再生装置とそれを備えた電子機器は、小径ディスクに対応した情報再生装置でありながら、情報記録媒体格納部の側板に突設された係止部とイジェクトレバーの上部に切り欠き状に形成された凸部との係合した状態を良好に維持することができ、かつ、情報記録媒体格納部を開放してカートリッジを取り出したい場合にはその係止状態を安定して解除することのできる情報再生装置とそれを備えた電子機器を提供することができるので、ノート型の携帯型パーソナルコンピュータ、PDAに代表される携帯情報端末、携帯電話、携帯ゲーム機器、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどのモバイル用途の情報再生装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】情報再生装置の情報記録媒体格納部を開放した状態の斜視図
【図2】情報再生装置の情報記録媒体格納部のイジェクト機構部を見た斜視図
【図3】情報再生装置のイジェクトレバー単体の斜視図
【図4】イジェクトレバーと情報記録媒体格納部との関係を示す角部近傍の部分正面図
【符号の説明】
【0047】
1 情報再生装置
2 再生機構部
5 ディスク状記録媒体
6 カートリッジ
7 情報記録媒体
8 情報記録媒体格納部
9 上面シャーシ
22 スピンドルモータ
75 ピックアップ
81 保持板
82 保持板
83 側板
84 側板
85 角部
94 ピックアップ規制部材
95 取付け部
131 イジェクトレバー
131a 作用部
131b コイルばね掛け部
131c 弾性変形部
131d 当接部
131e 本体部
131f 被支持孔
131g 被支持部
132 コイルばね
133 係止部
134 凸部
135 リリース板
136 係止部
137 爪部
137a 先端凸部
P2 イジェクト機構部
θ 回転変位
D6 方向
D7 方向
D8 方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報の記録面を有するディスク状記録媒体を収容したカートリッジをその高さ方向から挟み込むように所定の間隔で対面配置された一対の保持板と前記一対の保持板と連接され前記カートリッジをその幅方向の側面側から挟み込むように所定の間隔で対面配置された一対の側板とを有する情報記録媒体格納部と、
前記一対の保持板のいずれか一方の保持板とその保持板に連接された側板とにより構成された角部の外側に往復運動可能に取り付けられ、前記カートリッジが前記情報記録媒体格納部に格納された状態で前記角部の近傍から突出する係止部によって係止される凸部を有するイジェクトレバーと、を備え、
前記イジェクトレバーは、前記側板と対向配置され前記係止部と係合可能な前記凸部を有する弾性変形部と、
前記弾性変形部から前記角部に沿って曲折され前記保持板と所定の間隔を置いて配設された本体部と、
前記本体部から前記情報記録媒体格納部の内側に垂下された作用部と、
前記作用部から延設され前記カートリッジが格納された状態において前記保持板に当接するまたは前記保持板と所定の間隔を有する当接部と、を有する情報再生装置。
【請求項2】
前記当接部は、前記係止部による前記イジェクトレバーの前記凸部の係止状態が解除される際に前記保持板に当接して前記弾性変形部が前記角部の前記往復運動方向を中心軸とした回転方向の動きを規制するように設けられた請求項1記載の情報再生装置。
【請求項3】
請求項1記載の情報再生装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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