説明

情報処理システム及び情報処理装置

【課題】簡単な演算にて勾配を推定することができる情報処理システム及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】センターサーバと、前記センターサーバと通信を行う移動体と、を備える情報処理システムであって、所定の区間における一方から他方へ向かう第1の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得すると共に、区間における他方から一方へ向かう第2の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得する燃費情報取得部と、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費とを比較する比較部と、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費の差に基づいて、区間の勾配を推定する勾配推定部と、を備える情報処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配を推定する情報システム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、勾配を推定する方法として、車両の走行中に、エンジンに実際に供給された燃料量と走行距離とに基づいた実燃費を算出し、燃費マップから車速に対する基準燃費を算出し、これらの算出結果に基づいて勾配を推定するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−256646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、基準燃費と実燃費との間で様々なパラメータの条件を統一した上で、勾配の推定を行っている。すなわち、基準燃費と実燃費との比較を行う上で、そのまま比較することはできず、一度演算によって補正を行ってから比較をする必要がある。これにより、勾配を推定するための演算が複雑になる可能性があった。更に、基準燃費を予め準備しておく必要があるが、当該基準燃費は車種ごとに異なるものであるため、当該方法をあらゆる車種に適用させるためには、更に演算量が増える可能性がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、簡単な演算にて勾配を推定することができる情報処理システム及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
情報処理システムは、センターサーバと、センターサーバと通信を行う移動体と、を備える情報処理システムであって、所定の区間を一方から他方へ向かう第1の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得すると共に、区間を他方から一方へ向かう第2の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得する燃費情報取得部と、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費とを比較する比較部と、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費の差に基づいて、区間の勾配を推定する勾配推定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この情報処理システムは、移動体の実際の移動に基づいた情報を用い、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費の差に基づいて、区間の勾配を推定することができる。すなわち、所定の区間について、互いに異なる方向に移動したときのそれぞれの燃費を比較するだけで勾配を推定することができる。従って、当該方法では、パラメータの条件の整合性をとることが、従来方法に比して容易になり、演算を簡単に行うことができる。また、実際の移動体の移動に基づいた推定を行うことで、何らかの基準燃費を準備しておく必要がなくなるため、あらゆる種類の移動体に対して適用することができる。以上により、情報処理システムによれば、簡単な演算にて勾配を推定することができる。
【0008】
具体的に、情報処理システムにおいて、勾配推定部は、第1の方向における燃費に比して第2の方向における燃費が良い場合、区間は第1の方向へ向かう上り勾配であり、第2の方向における燃費に比して第1の方向における燃費が良い場合、区間は第1の方向へ向かう下り勾配である、と推定する。
【0009】
また、情報処理システムにおいて、勾配推定部は、第1の方向における燃費の分散に比して第2の方向における燃費の分散が大きく、且つ、第1の方向における燃費に比して第2の方向における燃費が良い場合、区間は第1の方向へ向かう上り勾配であり、第2の方向における燃費の分散に比して第1の方向における燃費の分散が大きく、且つ、第2の方向における燃費に比して第1の方向における燃費が良い場合、区間は第1の方向へ向かう下り勾配である、と推定する。燃費の差のみならず、燃費の分散も考慮することで、一層確実に勾配を推定することが可能となる。
【0010】
また、情報処理装置は、所定の区間を一方から他方へ向かう第1の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得すると共に、区間を他方から一方へ向かう第2の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得する燃費情報取得部と、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費とを比較する比較部と、第1の方向における燃費と第2の方向における燃費の差に基づいて、区間の勾配を推定する勾配推定部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この情報処理装置は、上述の情報処理システムと同様な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な演算にて勾配を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る情報処理システムのブロック構成図である。
【図2】情報処理システムでの処理内容を示すフローチャートである。
【図3】燃費と車速の関係をプロットしたグラフである。
【図4】所定の区間の勾配の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して情報処理システムの実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、情報処理システム100は、センターサーバ1と、センターサーバ1と通信を行う車両2と、を備えている。なお、図1には車両2が一台しか示されていないが、センターサーバ1は、多数の車両2と通信可能であり、各車両2から情報を取得することができる。情報処理システム100は、車両2から取得した燃費に関する情報に基づいて、道路の所定の区間での勾配を推定することができる。
【0016】
車両2は、センターサーバ1と通信するための通信機21と、車両の状態に関する情報を検出する車両状態センサ22と、を備えている。車両状態センサ22は、例えば、車速、消費燃料、現在位置等、その他車両状態に関するあらゆる情報を検出することができる。通信機21は、検出した車両状態に関する情報をセンターサーバ1へ送信することができる。なお、各車両2は、車両状態に関する情報を走行のたびに逐次センターサーバ1へ送信してもよく、一定以上の情報をためておいてまとめて送信してもよい。
【0017】
センターサーバ1は、通信機10と、走行情報格納部11と、走行情報データベース12と、車速・燃費分布算出部13と、勾配推定部14と、を備えている。通信機10は、各車両2から送信された車両状態に関する情報を受信する機能を有している。また、通信機10は、センターサーバ1にて推定した勾配情報を各車両2へ送信することによって、当該勾配情報を各車両2の走行に役立たせることができる。
【0018】
走行情報格納部11は、通信機10にて受信した車両状態に関する情報に基づいて車両の各種走行情報を演算して走行情報データベース12に格納する機能を有している。走行情報格納部11は、例えば、1トリップでの出発地、到着地、平均車速、燃費を演算すると共に、当該演算結果を走行情報データベース12に格納する機能を有している。なお、例えば、エンジンをONとしたときからOFFとするまでを1トリップとすることができる。走行情報データベース12は、ユーザごとの情報を管理しておくことができる。
【0019】
車速・燃費分布算出部13は、同一ユーザが同一の区間を複数回往復したときのデータを走行情報データベース12より取得する機能を有している。また、車速・燃費分布算出部13は、当該ユーザが当該区間を走行したときの往路(第1の方向)における平均車速及び燃費のばらつきを算出すると共に、復路(第2の方向)における平均車速及び燃費のばらつきを算出する機能を有している。例えば、図3に示すように、平均車速が横軸、燃費が縦軸に設定されたグラフ内に、地点Aから地点Bへ向かう方向(第1の方向)に車両2が走行するときの各データがプロットされると共に、地点Bから地点Aへ向かう方向(第2の方向)に車両2が走行するときの各データがプロットされる。また、車速・燃費分布算出部13は、平均車速の分散及び燃費の分散を算出することができる。
【0020】
勾配推定部14は、車速・燃費分布算出部13にて算出した燃費のばらつきのパターンから、演算対象の区間の勾配を推定する機能を有している。勾配推定部14は、往路における燃費と、復路における燃費とを比較する機能を有している。また、勾配推定部14は、当該比較を行うことで、往路における燃費と復路における燃費の差に基づいて、演算対象の区間の勾配を推定する機能を有している。
【0021】
ここで、下り斜面を走行する場合は、上り斜面を走行する場合に比して、必要とされるエネルギーが小さく、燃費が良くなる傾向にある。勾配推定部14は、この傾向を利用して、勾配を推定する。具体的には、勾配推定部14は、地点Aから地点Bの方向に走行したときの燃費に比して地点Bから地点Aの方向に走行したときの燃費が良い場合、AB区間は地点Aから地点Bの方向へ向かう上り勾配と推定する。一方、勾配推定部14は、地点Bから地点Aの方向に走行したときの燃費に比して地点Aから地点Bの方向に走行したときの燃費が良い場合、AB区間は地点Aから地点Bの方向へ向かう下り勾配である、と推定する。
【0022】
また、上り斜面を走行する場合は、燃費のばらつきは少なくなり、燃費の分散が小さくなる傾向にある。一方、下り斜面を走行する場合は、燃費のばらつきが大きくなり、燃費の分散が大きくなる傾向にある。従って、勾配推定部14は、燃費の差に加えて燃費の分散も考慮して勾配を推定してもよい。燃費の差のみならず、燃費の分散も考慮することで、一層確実に勾配を推定することが可能となる。具体的には、勾配推定部14は、地点Aから地点Bの方向に走行したときの燃費の分散に比して地点Bから地点Aの方向に走行したときの燃費の分散が大きく、且つ、地点Aから地点Bの方向に走行したときの燃費に比して地点Bから地点Aの方向に走行したときの燃費が良い場合、AB区間は地点Aから地点Bの方向へ向かう上り勾配であると推定する。また、勾配推定部14は、地点Bから地点Aの方向に走行したときの燃費の分散に比して地点Aから地点Bの方向に走行したときの燃費の分散が大きく、且つ、地点Bから地点Aの方向に走行したときの燃費に比して地点Aから地点Bの方向に走行したときの燃費が良い場合、AB区間は地点Aから地点Bの方向へ向かう下り勾配であると推定する。
【0023】
次に、図2〜図4を参照して、情報処理システム100の具体的な情報処理について説明する。本実施形態においては、センターサーバ1が所定の車両2から継続的に走行に係る車両状態データを取得し、センターサーバ1が所定の区間の勾配を求める際に当該処理を実行する。この処理は、センターサーバ1の稼働時に所定のタイミングで繰り返し実行される。ここでは、ある車両2がAB区間を複数回往復(例えば、車両2が毎日の通勤に用いられた場合、家と会社の間の区間がAB区間に該当する)したデータに基づいてAB区間の勾配を延在する際の処理の一例について説明する。車両2がAB区間を往復するたびに、図3に示すグラフ(横軸が平均車速、縦軸が燃費)に「地点Aから地点Bへ向かうデータ」がプロットされると共に「地点Bから地点Aへ向かうデータ」がプロットされる。
【0024】
図2に示すように、車速・燃費分布算出部13は、同一区間の走行回数が閾値以上存在するか否かを判定する(ステップS100)。勾配を演算できる程度に十分な数のデータがそろっていない場合は、勾配の推定を行うことはできない。車速・燃費分布算出部13は、AB区間の走行回数が閾値以上であるか否かを判定する。走行回数が閾値より少ないと判定された場合、センターサーバ1は、勾配を判定不能として(ステップS180)、図2の処理を終了する。センターサーバ1は、再びデータを取得して再度図2の処理を実行する。
【0025】
S100において走行回数が閾値以上であると判定された場合、車速・燃費分布算出部13は、当該区間における平均車速の分散を算出する(ステップS110)。例えば、図3(a)の(1)で示すように、車速・燃費分布算出部13は、地点Aから地点Bへ向かうときの各プロットにおける平均車速の分散を算出する。また、車速・燃費分布算出部13は、S110で算出した分散が、閾値以上であるか否かを判定する(ステップS120)。複数の走行データが存在していても、同様な速度条件でのデータしかない場合、速度条件が変わったときにプロットがどのような傾向になるか不明である。しかし、ステップS120の処理により、あらゆる速度条件でのプロットの傾向について検証することが可能となる。S120において、分散が閾値より小さいと判定された場合、センターサーバ1は、勾配を判定不能として(ステップS180)、図2の処理を終了する。センターサーバ1は、再びデータを取得して再度図2の処理を実行する。
【0026】
S120において分散が閾値以上であると判定された場合、車速・燃費分布算出部13は、当該区間での平均燃費、及び燃費の分散を算出する(ステップS130)。例えば、図3の(2)で示すように、車速・燃費分布算出部13は、地点Aから地点Bへ向かうときの各プロットにおける平均燃費を算出する。また、車速・燃費分布算出部13は、図3の(3)で示すように、地点Aから地点Bへ向かうときの各プロットにおける燃費の分散を演算する。
【0027】
次に、車速・燃費分布算出部13は、当該区間における出発地と目的地を入れ替えた場合における平均燃費及び燃費の分散を算出すると共に、勾配推定部14は、当該演算結果とS130での演算結果を比較する(ステップS140)。例えば、車速・燃費分布算出部13は、S130の演算では「出発地:地点A」で「目的地:地点B」であったものを、「出発地:地点B」で「目的地:地点A」とし、地点Bから地点Aへ向かうときの各プロットにおける平均燃費、及び燃費の分散を演算する。そして、勾配推定部14は、図3の(4)に示すように、各データの比較を行う。
【0028】
次に、勾配推定部14は、当該区間での一方へ向かう走行が、他方へ向かう走行よりも、平均燃費が良く、且つ、燃費の分散が大きいか否かを判定する(ステップS150)。当該判定により、何れか一方の走行が、他方に比して平均燃費が良く、且つ、燃費の分散が大きいと判定された場合、勾配推定部14は、燃費が良い方向に係る走行では出発地の標高は目的地に対して標高が高いと判定する(ステップS160)。ここでは、平均燃費の差に対する閾値と、燃費の分散の差に対する閾値とを予め設定しておき、各値が各閾値以上となるか否かによって判定される。
【0029】
すなわち、地点Aから地点Bへ向かう走行の平均燃費が良く、且つ、燃費の分散が大きい場合、勾配推定部14は、当該区間は地点Aから地点Bへ向かう下り勾配(出発地Aの方が標高が高い)であると判断する。例えば、AB区間が、図4(c)に示すような勾配であると推定される。また、地点Bから地点Aへ向かう走行の平均燃費が良く、且つ、燃費の分散が大きい場合、勾配推定部14は、当該区間は地点Aから地点Bへ向かう上り勾配(出発地Bの方が標高が高い)と判断する。例えば、AB区間が、図4(b)に示すような勾配であると推定される。
【0030】
一方、各方向についての平均燃費の差が小さい場合や燃費の分散の差が小さい場合は、勾配推定部14は、当該区間は勾配がない区間である、または上がり下りを両方含んだ区間であると判定する(ステップS170)。例えば、勾配推定部14は、地点Aから地点Bへ向かう走行の平均燃費と、地点Bから地点Aへ向かう走行の平均燃費の差が閾値よりも小さい場合、あるいは、地点Aから地点Bへ向かう走行の燃費の分散と、地点Bから地点Aへ向かう走行の燃費の分散の差が閾値よりも小さい場合は、S170のように判断する。例えば、AB区間が図4(a)に示すように勾配のない区間であると判定される。あるいは、AB区間が図4(d)のように中間位置で上りと下りの折返しポイントを有することで、結果的に地点Aと地点Bの往復において燃費に差のできない区間であると判定される。
【0031】
例えば、図3(a)のプロット例では、地点Aから地点Bへ向かう走行では、各プロットにおける燃費のばらつきは大きくなく平均燃費付近に固まっている。すなわち、燃費の分散が小さい。また、平均燃費も小さい。一方、地点Bから地点Aへ向かう走行では、各プロットにおける燃費のばらつきが大きくなっている。すなわち、燃費の分散が大きい。また、平均燃費も大きく、地点Aから地点Bへの走行の平均燃費との差が大きい。このような場合、勾配推定部14は、S160の推定結果を出力する。一方、図3(b)のプロット例では、地点Aから地点Bへ向かう走行では、各プロットにおける燃費のばらつきが大きく、燃費の分散が大きい。また、平均燃費も大きい。一方、地点Bから地点Aへ向かう走行では、各プロットにおける燃費のばらつきが大きく、燃費の分散が大きい。また、平均燃費も大きい。地点Aから地点Bへの走行と、地点Bから地点Aへの走行とでは、燃費の分散の差及び平均燃費の差は大きくない。このような場合、勾配推定部14は、S170の推定結果を出力する。
【0032】
S160またはS170の推定結果を演算した後、センターサーバ1は、当該推定結果を蓄積しておく。センターサーバ1は、保持している地図データベースに対して、例えば「地図のうち、AB区間は下り(上り)勾配である」などの情報を反映する。これにより、実際に調査員がAB区間まで出向いて勾配調査をしなくとも、センターサーバ1のデータベースに勾配情報を反映することができる。また、センターサーバ1は、一台の車両2からの情報のみならず、多数の車両2からの情報を取得することで、あらゆる区間での勾配を推定することができる。センターサーバ1は、このように取得した勾配情報を、各車両2へ送信する。これにより、各車両2は、一層効率の良い走行制御を実現することができる。例えば、車両2は、所定の区間を往復する場合に、行きと帰りの勾配状況(例えば、行きは上り勾配だが帰りは下り勾配になる、など)を考慮して、SOC制御の計画を立てたり、エネルギー源として電気とガソリンのどちらを優先させて走行するか、などの制御計画を立てることができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る情報処理システム100及びセンターサーバ1の作用・効果について説明する。
【0034】
この情報処理システム100は、AB区間の実際の走行に基づいた情報を用い、地点Aから地点Bへ向かう方向(往路)における燃費と地点Bから地点Aへ向かう方向(復路)における燃費の差に基づいて、AB区間の勾配を推定することができる。すなわち、AB区間について、互いに異なる方向に移動したときのそれぞれの燃費を比較するだけで勾配を推定することができる。従って、当該方法では、パラメータの条件の整合性をとることが、従来方法に比して容易になり、演算を簡単に行うことができる。また、実際の車両2の移動に基づいた推定を行うことで、何らかの基準燃費を準備しておく必要がなくなるため、あらゆる種類の移動体に対して適用することができる。以上により、情報処理システム100によれば、簡単な演算にて勾配を推定することができる。
【0035】
例えば、地図情報として勾配情報を取得しようとする場合、調査員が現地調査を行うことによって勾配情報を取得するという方法が一般的に採用される。しかしながら、地図情報に勾配情報を組み入れるには全国の道路を現地確認する必要が生じてしまい、多大なコストがかかってしまう。また、道路工事によって勾配が変化する場合もあり、情報更新に更なるコストがかかってしまう。また、ある車両の走行に必要な部分だけの勾配情報を取得しようとしても、必要な部分を特定して現地調査するということは極めて困難である。しかしながら、本実施形態に係る情報処理システム100は、例えば特定の車両2の通勤時の往復走行のデータに基づいて、通勤区間の勾配を推定することができる。これにより、実際に現地調査などを行うことなく、必要な区間のみの勾配を推定できる。勾配が変化したとしても、実際の走行データに基づいて、速やかに更新することができる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、上述の実施形態では、センターサーバ1が勾配推定の処理を行い、車両2は車両状態データをセンターサーバ1に出力するだけであった。しかし、車両2に搭載された情報処理装置が、上述の方法による勾配推定を実行してもよい。車両2の情報処理装置は、所定の区間について勾配を推定したのち、当該勾配情報をセンターサーバ1へ送信する。
【0038】
また、上述の実施形態では、1トリップにおける出発地(地点A)と目的地(地点B)の間のみの燃費や平均車速に基づいて演算を行っていた。これに加え、地点Aと地点Bを更に細かい小区間に分け、各小区間についての勾配をそれぞれ推定してもよい。
【0039】
例えば、図2のS170のような推定結果となったとき、勾配推定部14は、図4(a)のようにAB区間が平坦なのか、図4(d)のように地点Aから地点Bに向けて一度下って上がる勾配なのかを、更に検討してもよい。例えば、地点Aと地点Bの中間位置に中間ポイントを設定し、地点A〜中間ポイントについてS130〜S150の処理を実行すると共に、中間ポイント〜地点BについてS130〜S150の処理を実行してもよい(このとき、各小区間に対する車速や燃費などの情報は、既に走行情報データベース12から取得可能であるものとする。以下の説明について同様である)。このような処理を実行すると、AB区間の勾配が図4(a)のような場合は、勾配推定部14は、地点A〜中間ポイントの小区間及び中間ポイント〜地点Bの小区間が、いずれも平坦であると推定する。AB区間の勾配が図4(d)のような場合は、勾配推定部14は、地点A〜中間ポイントの小区間で下り勾配で、中間ポイント〜地点Bの小区間で上り勾配と推定する。また、図4(d)のような場合であっても、上りと下りの切替りポイントの位置が中央位置からずれる場合もあるので、勾配推定部14は、更に、中間ポイントを移動させて推定してもよく、更に複数の中間ポイントを設定してもよい。
【0040】
また、図4(e)のように、地点Aと地点Bとの間で複数回上り下りを繰返す場合もある。更に、S160のように地点Aと地点Bのいずれかが標高が高いという推定結果が出る場合であっても、地点Aと地点Bとの間で複数回上り下りを繰返している場合もある。このような場合も考慮し、小区間の分け方や範囲や個数を様々に変化させてS130〜S150の処理を繰返してもよい。例えば、勾配推定部14は、どのように小区間の分け方等を変化させても推定結果が変わらなくなったときに、勾配の形が確定したものと結論付けることができる。これにより、一層正確な勾配を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1…センターサーバ(情報処理装置)、2…車両(移動体)、10…通信機(燃費情報取得部)、11…走行情報格納部(燃費情報取得部)、12…走行情報データベース(燃費情報取得部)13…車速・燃費分布算出部(燃費情報取得部)、14…勾配推定部(比較部、勾配推定部)、21…通信機(燃費情報取得部)、22…車両状態センサ(燃費情報取得部)、100…情報処理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターサーバと、前記センターサーバと通信を行う移動体と、を備える情報処理システムであって、
所定の区間を一方から他方へ向かう第1の方向に前記移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得すると共に、前記区間を前記他方から前記一方へ向かう第2の方向に前記移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得する燃費情報取得部と、
前記第1の方向における燃費と前記第2の方向における燃費とを比較する比較部と、
前記第1の方向における燃費と前記第2の方向における燃費の差に基づいて、前記区間の勾配を推定する勾配推定部と、を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記勾配推定部は、
前記第1の方向における燃費に比して前記第2の方向における燃費が良い場合、前記区間は前記第1の方向へ向かう上り勾配であり、
前記第2の方向における燃費に比して前記第1の方向における燃費が良い場合、前記区間は前記第1の方向へ向かう下り勾配である、と推定することを特徴とする請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記勾配推定部は、
前記第1の方向における燃費の分散に比して前記第2の方向における燃費の分散が大きく、且つ、前記第1の方向における燃費に比して前記第2の方向における燃費が良い場合、前記区間は前記第1の方向へ向かう上り勾配であり、
前記第2の方向における燃費の分散に比して前記第1の方向における燃費の分散が大きく、且つ、前記第2の方向における燃費に比して前記第1の方向における燃費が良い場合、前記区間は前記第1の方向へ向かう下り勾配である、と推定することを特徴とする請求項2記載の情報処理システム。
【請求項4】
所定の区間を一方から他方へ向かう第1の方向に移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得すると共に、前記区間を前記他方から前記一方へ向かう第2の方向に前記移動体が移動する際の燃費に関する情報を取得する燃費情報取得部と、
前記第1の方向における燃費と前記第2の方向における燃費とを比較する比較部と、
前記第1の方向における燃費と前記第2の方向における燃費の差に基づいて、前記区間の勾配を推定する勾配推定部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−77238(P2013−77238A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217913(P2011−217913)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】