説明

情報処理方法、端末装置および電子マネー届出装置

【課題】電子マネーの流通性を損ねることなく、電子マネーの不正使用を防止できるようにし、また、紛失された電子マネー媒体を見つけた者が、その電子マネー媒体を届け出てくれる可能性が高くなり、結果的に電子マネーの不正使用が減少し、所有者の利益が保護されるようにする。
【解決手段】電子マネーカード10が無線インタフェース28に呈示されると、電子マネー端末装置20は、情報取得部30によってカード呈示者の生体情報を検出取得して、電子マネーカード10に記録されているカード所有者の生体情報と照合し、両者が一致しないときには、カード使用を認めない処理を実行する。紛失された電子マネーカード10を拾得した者が電子マネーカード10をカード挿入口42に挿入すると、電子マネー届出装置40は、電子マネーカード10に残存する電子マネーの一部をカード拾得者に給付し、残額をカード所有者に返還する処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子マネーに係る情報処理方法、電子マネー対応の端末装置および電子マネー届出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子マネー(electronic money,digital cash,digital money)は、電子的なデータによって金銭またはポイントを表現したものである。
【0003】
ICカードなどの記録媒体を利用した電子マネーシステムでは、電子マネーデータの記録によって電子マネーがICカードなどの記録媒体に保持され、所有者が商品を購入する際やサービスの提供を受ける際、その電子マネー媒体を呈示して、データの書き替えにより電子マネーを減額させることによって、代金の支払として減額分の電子マネーが商品販売者やサービス提供者に移転する。
【0004】
また、インターネットなどのネットワークを利用した電子マネーシステムでは、ネットワークを介して電子マネーデータを授受することによって、電子的に決済をすることができる。
【0005】
このような電子マネーに関連する先行技術として、特許文献1(特開2001−175748号公報)には、電子マネーに対して利用期間の限定を付すことが示されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2004−192476号公報)には、ユーザが複数枚のカードを容易に管理することができるようにした方法および装置が示されている。
【0007】
また、特許文献3(特開2006−31182号公報)には、電子マネーカードによる決済時、カードごとに異なる効果音を発生させることが示されている。
【0008】
さらに、特許文献4(特開2006−318453号公報)には、携帯電話端末でネットワーク上のサービスを受ける場合にICカードを利用することが示されている。
【0009】
上に挙げた先行技術文献は、以下の通りである。
【特許文献1】特開2001−175748号公報
【特許文献2】特開2004−192476号公報
【特許文献3】特開2006−31182号公報
【特許文献4】特開2006−318453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、Edy(登録商標)などの電子マネーは、一般に匿名性があり、ICカードなどの電子マネー媒体が呈示されたとき、呈示した者が誰であるかが確認されることなく、処理される。
【0011】
そのため、所有者が電子マネー媒体を紛失すると、それを拾得した者によって電子マネーが消費されてしまうおそれがある。
【0012】
ICカードの表面にはカード番号が記載されるので、所有者がカード番号を控えていて、かつ善意の拾得者がカード発行者や電子マネーシステムを運営管理する者に届け出てくれれば、所有者がICカードの返還を受けることも可能であるが、その場合でも、当該カードの所有者であることを立証することは、必ずしも容易ではない。
【0013】
記名式の電子マネーも考えられているが、所有者の名前がカード内に記録されている場合、ICカードを呈示する者が自身の名前を申告または入力し、呈示された端末側で呈示した者がカード内に記録されている所有者であるか否かを判定することは、煩わしく、電子マネーの流通性を損ねる。
【0014】
また、紛失されたICカードを見つけても、見つけた者は、届け出るのが煩わしく、どこに届け出るべきか迷うこともあるため、そのまま放置してしまうことも多い。
【0015】
そこで、この発明は、第1に、電子マネーの流通性を損ねることなく、電子マネーの不正使用を防止することができ、記名式と同等のセキュリティーを得ることができるようにしたものである。
【0016】
この発明は、第2に、紛失された電子マネー媒体を見つけた者が、その電子マネー媒体を届け出てくれる可能性が高くなり、結果的に電子マネーの不正使用が減少し、所有者の利益が保護されるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明の情報処理方法は、
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が呈示されたとき、その電子マネー媒体の所有者の生体情報を、所有者情報として取得するとともに、その電子マネー媒体を呈示した者の生体情報を、照合対象情報として取得する情報取得工程と、
上記照合対象情報を上記所有者情報と照合して、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するか否かを判定する照合工程と、
上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するときには、上記電子マネー媒体の使用を認める処理を行い、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致しないときには、上記電子マネー媒体の使用を認めない処理を行う処分工程と、
を備えるものである。
【0018】
第2の発明の情報処理方法は、
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が呈示されたとき、その電子マネー媒体の所有者の使用状況を示す使用状況情報を、所有者情報として取得するとともに、その電子マネー媒体が呈示されたときの状況を示す呈示状況情報を、照合対象情報として取得する情報取得工程と、
上記照合対象情報を上記所有者情報と照合して、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するか否かを判定する照合工程と、
上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するときには、上記電子マネー媒体の使用を認める処理を行い、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致しないときには、上記電子マネー媒体の使用を認めない処理を行う処分工程と、
を備えるものである。
【0019】
この発明の電子マネー届出装置は、
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が挿入される媒体挿入口と、
この媒体挿入口に挿入された電子マネー媒体を認識して、その電子マネー媒体に保持された電子マネーの少なくとも一部を、その電子マネー媒体の所有者に返還する処理を実行する情報処理手段と、
を備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の情報処理方法では、電子マネー媒体を呈示した者の生体情報、または電子マネー媒体が呈示されたときの状況が、電子マネー媒体の所有者の生体情報または使用状況と一致しないときには、当該電子マネー媒体の使用が認められないので、電子マネーの不正使用を防止することができ、記名式と同等のセキュリティーを得ることができる。しかも、電子マネー媒体を呈示する者は自身の名前を申告または入力する必要がないので、電子マネーの流通性を損ねることがない。
【0021】
この発明の電子マネー届出装置では、紛失された電子マネー媒体を見つけた者が、その電子マネー媒体を届け出て電子マネー届出装置の媒体挿入口に挿入すると、当該電子マネー媒体に保持された電子マネーの少なくとも一部が所有者に返還され、紛失された電子マネー媒体を見つけた者が、その電子マネー媒体を届け出てくれる可能性が高くなり、結果的に電子マネーの不正使用が減少し、所有者の利益が保護される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[1.電子マネーおよび電子マネー媒体の意義]
この発明で電子マネーとは、電子的な暗号化されたデータによって、金銭またはポイントを示したものである。金額は、円やドルなど、いずれで表示されてもよい。ポイントは、その数に応じて、商品やサービスなどと交換できるものであればよい。
【0023】
電子マネー媒体は、電子マネーデータが記録されることによって電子マネーを保持し搭載する、いわゆる電子財布である。
【0024】
電子マネー媒体の形状としては、ICカードのようなカード形のほか、各種の形状のものが考えられるが、いずれでもよい。
【0025】
電子マネー媒体には、通信方式の違いとして、端子を有し、リーダ・ライタに差し込むことによって、電力が供給され、データが授受される接触型、アンテナを有し、リーダ・ライタに接近させることによって、電力が供給され、データが授受される非接触型、および接触型と非接触型の両方の機能を備えたタイプがあるが、いずれでもよい。
【0026】
また、電子マネー媒体には、ICチップの構成による違いとして、メモリおよびCPUを搭載したもの、メモリと簡単な制御を行うロジック回路を組み込んだもの、およびメモリだけでCPUを持たないものがあるが、いずれでもよい。
【0027】
さらに、電子マネーシステムとしては、電子マネー媒体にチャージ(入金)しておくプリペイド式と、プリペイド式に信用の供与による後払い式を組み合わせたものとがあるが、いずれでもよい。
【0028】
ICカードなどの電子マネー媒体が内蔵された携帯電話端末などの携帯端末も、電子マネー媒体である。
【0029】
[2.システム構成:図1〜図4]
(2−1.システム全体:図1)
図1に、この発明の電子マネーシステムの一例を示す。
【0030】
電子マネーカード10は、FeliCa(登録商標)カードなどの非接触型ICカードであり、ICチップ11およびアンテナ12を備えるものである。
【0031】
図1の例の電子マネーシステムでは、電子マネー端末装置20および電子マネー届出装置40とサーバシステム70とが、ネットワーク90を介して接続される。
【0032】
電子マネー端末装置20は、商品を販売する店舗やサービスを提供する施設などに決済処理などの処理のために設置され、商品やサービスの購入代金などの支払のために電子マネーカード10が呈示される、上記のリーダ・ライタの機能を備えるとともに、後述の照合対象情報を取得する情報取得部30が接続されたものである。
【0033】
電子マネー届出装置40は、カード所有者が、電子マネーカード10を落とすなど、紛失したとき、それを拾うなど、拾得した者が、それを届け出たときに、拾得者(届け出た者)に報労金を給付し、カード所有者に電子マネーを返還する処理を行うもので、電子マネー端末装置20と同様に、商品を販売する店舗やサービスを提供する施設などに設置される。
【0034】
サーバシステム70は、電子マネーシステムを運営管理する者によって設置され、管理サーバ71とデータベース72とからなる。
【0035】
ネットワーク90は、インターネットのような汎用のネットワーク、または当該の電子マネーシステムに専用のネットワークである。
【0036】
この例の電子マネーシステムでは、電子マネー端末装置20および電子マネー届出装置40と管理サーバ71との間で送受されるデータは暗号化され、システムのセキュリティが確保される。
【0037】
なお、電子マネーシステムとしては、ほかに、システムを運営管理する者からカード発行ライセンスを供与された者のサーバや、カード所有者に信用を供与した者のサーバなどが存在するが、図1では省略した。
【0038】
(2−2.電子マネー端末装置および電子マネー届出装置:図2〜図4)
電子マネー端末装置20は、具体的に、図2に示すように、CPU21、ROM22およびRAM23からなるコントローラ24を備え、そのバス25に、記憶装置部26、アンテナ27を備える無線インタフェース28、ネットワークインタフェース29、および後述の情報取得部30が接続される。
【0039】
電子マネー対応インタフェースとしての無線インタフェース28としては、FeliCa(登録商標)インタフェースなどを用いることができる。
【0040】
電子マネー届出装置40は、構造的には、図3(A)(B)に示すように(ただし、同図(A)は正面から見た図、同図(B)は一部を断面にした側面図である)、筐体41の正面側に、電子マネーカード10が差し込まれるカード挿入口42を設け、筐体41内に、カード挿入口42に差し込まれた電子マネーカード10を破線15で示すように所定位置に案内し、さらに破線16で示すように筐体41の背面側に押し出すスライド機構43、および、破線15で示すように所定位置に案内された電子マネーカード10を認識して上記の処理を行う情報処理端末50を設ける。
【0041】
情報処理端末50は、具体的に、図4に示すように、電子マネー端末装置20と同様に、CPU51、ROM52およびRAM53からなるコントローラ54を備え、そのバス55に、記憶装置部56、アンテナ57を備える無線インタフェース58、およびネットワークインタフェース59が接続される。
【0042】
[3.電子マネー媒体の不正使用を防止する方法:図5〜図8]
図1の例の電子マネーシステムでは、以下のような方法によって、カード所有者が紛失した電子マネーカード10を拾得した者などによる電子マネーカード10の不正使用が防止される。
【0043】
(3−1.所有者情報および照合対象情報)
不正使用の防止のために、所有者情報と、この所有者情報と照合されるべき情報である照合対象情報とを用いる。
【0044】
<第1の方法:生体情報を用いる場合>
具体的に、第1の方法として、所有者情報としては、カード所有者の生体情報を用い、照合対象情報としては、カード呈示者(電子マネーカード10を呈示した者)の生体情報を用いる。
【0045】
ただし、カード所有者の生体情報とカード呈示者の生体情報は、同種のものである必要があり、例えば、カード所有者の生体情報として指の静脈を用いるときは、カード呈示者の生体情報としても指の静脈を用い、カード所有者の生体情報として指紋を用いるときは、カード呈示者の生体情報としても指紋を用い、カード所有者の生体情報として虹彩を用いるときは、カード呈示者の生体情報としても虹彩を用いる。
【0046】
カード所有者の生体情報は、カード発行時、またはカード発行後、電子マネーカード10に記録され、または電子マネーカード10に記録された番号や名義などのカード特定情報と対応づけられてサーバシステム70のデータベース72に登録される。
【0047】
カード呈示者の生体情報は、呈示者が電子マネーカード10を呈示したとき、図1および図2に示した電子マネー端末装置20の情報取得部30によって検出取得される。
【0048】
すなわち、この場合の情報取得部30は、カード呈示者の指の静脈や指紋または虹彩などを検出するセンサやカメラなどの検出部と、その検出信号を処理する信号処理部とからなるものとする。
【0049】
<第2の方法:使用状況情報および呈示状況情報を用いる場合>
第2の方法として、所有者情報としては、カード所有者の使用状況情報を用い、照合対象情報としては、電子マネーカード10が呈示されたときの状況を示す情報である呈示状況情報を用いる。
【0050】
カード所有者の使用状況情報は、所有者が電子マネーカード10を使用した場所(地域または店舗や施設)、日時および用途(目的)の少なくとも1つを示すもので、例えば、場所としては、港区および品川区、日時としては、曜日を問わず、午前8時から午後9時までの間、用途としては、1回の使用が3千円以内の買物または交通費、などである。
【0051】
この使用状況情報は、カード所有者によって電子マネーカード10が使用された都度、情報取得部30を備える電子マネー端末装置20によって、使用された場所、日時または用途が検出されて、情報が書き替えられるように、電子マネーカード10に記録され、または電子マネーカード10に記録された番号や名義などのカード特定情報と対応づけられてサーバシステム70のデータベース72に登録される。
【0052】
ただし、このように履歴的なものではなく、あらかじめカード所有者が電子マネーカード10の使用状況を設定するようにしてもよい。
【0053】
呈示状況情報も、電子マネーカード10が呈示された場所、日時および用途の少なくとも1つを示すもので、呈示状況情報は、電子マネーカード10が呈示されたとき、情報取得部30を備える電子マネー端末装置20によって、呈示された場所、日時または用途が検出されることによって、取得される。
【0054】
したがって、この場合の情報取得部30は、例えば、電子マネー端末装置20が存在する場所をGPS(Global Positioning System)などによって検出し、電子マネーカード10が呈示された日時をカレンダおよび時計によって検出するものである。
【0055】
(3−2.使用制限処理:図5〜図7)
図1の例の電子マネーシステムでは、電子マネーカード10が電子マネー端末装置20に呈示されたとき、すなわち電子マネーカード10を所持する者が商品を購入するなどのために電子マネーカード10を電子マネー端末装置20のアンテナ27を備える無線インタフェース28にかざしたとき、上記の照合対象情報を所有者情報と照合して、照合対象情報が所有者情報と一致するか否かを判定し、照合対象情報が所有者情報と一致するときには、電子マネーカード10の使用を認めるが、照合対象情報が所有者情報と一致しないときには、電子マネーカード10の使用を認めない。
【0056】
図5に、第1の方法として示したように、所有者情報としてカード所有者の生体情報を用い、照合対象情報としてカード呈示者の生体情報を用いるとともに、カード所有者の生体情報が電子マネーカード10に記録されていて、かつ電子マネー端末装置20が一連の処理を全て実行する場合の、使用制限処理の一例を示す。
【0057】
この例では、電子マネー端末装置20は、まずステップ101で、電子マネーカード10を認識したか否かを判断し、電子マネーカード10が電子マネー端末装置20の無線インタフェース28にかざされることによって、電子マネーカード10を認識したときには、ステップ102に進んで、電子マネーカード10に記録されているカード所有者の生体情報を読み込み、さらにステップ103に進んで、情報取得部30によってカード呈示者の生体情報を検出取得する。
【0058】
ただし、先に、カード呈示者の生体情報を検出取得し、その後、カード所有者の生体情報を読み込むようにしてもよい。
【0059】
次に、ステップ105で、カード呈示者の生体情報をカード所有者の生体情報と照合し、さらにステップ106に進んで、その照合の結果、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致するか否かを判断する。
【0060】
そして、カード所有者が電子マネーカード10を呈示したときのように、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致するときには、ステップ106からステップ107に進んで、カード使用を認める処理、すなわち電子マネーカード10内の電子マネーによる商品購入やサービス提供を認める処理を実行する。
【0061】
一方、カード拾得者が電子マネーカード10を呈示したときのように、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致しないときには、ステップ106からステップ108に進んで、カード使用を認めない処理を実行する。
【0062】
具体的に、警告表示または警告音によって、カード呈示者に当該カードは使用できない旨を警告し、さらには電子マネーを使用できないように電子マネーカード10をロックするなどである。さらに、別ルーチンとして、当該カードが他人に拾得されたことを、カード所有者に直接通報し、または管理サーバ71に通知して管理サーバ71からカード所有者に通報させるようにしてもよい。
【0063】
これによって、カード拾得者などによる電子マネーカード10の不正使用を防止することができる。
【0064】
上記の例は、一連の処理を全て電子マネー端末装置20が行う場合であるが、一部の処理を管理サーバ71が行うようにしてもよい。
【0065】
図6および図7に、第1の方法として示したように、所有者情報としてカード所有者の生体情報を用い、照合対象情報としてカード呈示者の生体情報を用いるとともに、カード所有者の生体情報が管理サーバ71に登録されていて、かつ管理サーバ71が一連の処理の一部を実行する場合の、使用制限処理の一例を示す。
【0066】
この例では、電子マネー端末装置20は、まずステップ111で、電子マネーカード10を認識したか否かを判断し、電子マネーカード10を認識したときには、ステップ112に進んで、電子マネーカード10に記録されている番号や名義などのカード特定情報を読み込み、さらにステップ113に進んで、情報取得部30によってカード呈示者の生体情報を検出取得する。
【0067】
ただし、この場合も、先に、カード呈示者の生体情報を検出取得し、その後、カード特定情報を読み込むようにしてもよい。
【0068】
次に、電子マネー端末装置20は、ステップ114で、そのカード特定情報およびカード呈示者の生体情報を、管理サーバ71に送信する。
【0069】
管理サーバ71は、ステップ121で、そのカード特定情報およびカード呈示者の生体情報を受信し、さらにステップ122に進んで、そのカード特定情報をもとに、データベース72にカード特定情報と対応づけられて登録されているカード所有者の生体情報を読み出す。
【0070】
次に、管理サーバ71は、ステップ123で、カード呈示者の生体情報をカード所有者の生体情報と照合し、さらにステップ124に進んで、その照合の結果、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致するか否かを判断する。
【0071】
そして、管理サーバ71は、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致するときには、ステップ124からステップ125に進んで、電子マネー端末装置20に一致する旨を通知し、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致しないときには、ステップ124からステップ126に進んで、電子マネー端末装置20に一致しない旨を通知する。
【0072】
電子マネー端末装置20は、ステップ114の後、ステップ115に進んで、管理サーバ71からの通知を受信し、さらにステップ116に進んで、その通知内容が、「一致する」であるか、「一致しない」であるかを判断する。
【0073】
そして、電子マネー端末装置20は、通知内容が「一致する」であるときには、ステップ116からステップ117に進んで、カード使用を認める処理を実行し、通知内容が「一致しない」であるときには、ステップ116からステップ118に進んで、カード使用を認めない処理を実行する。
【0074】
さらに、電子マネー端末装置20は、ステップ119で、管理サーバ71に結果を報告し、管理サーバ71は、ステップ129で、その報告を受信する。
【0075】
以上の例は、第1の方法による場合、すなわち、所有者情報としてカード所有者の生体情報を用い、照合対象情報としてカード呈示者の生体情報を用いる場合であるが、第2の方法による場合、すなわち、所有者情報としてカード所有者の使用状況情報を用い、照合対象情報として呈示状況情報を用いる場合も、同じである。
【0076】
具体的に、この場合、例えば、カード所有者の使用状況情報は、場所が、港区および品川区、日時が、曜日を問わず、午前8時から午後9時までの間、用途が、1回の使用が3千円以内の買物または交通費であるとき、呈示状況情報で示される電子マネーカード10が呈示されたときの状況が、場所としては新宿区であり、日時としては午前3時であり、用途としては2万円の飲食であるときには、呈示状況情報が使用状況情報と一致しないことになり、カード使用が認められないことになる。
【0077】
(3−3.使用制限処理のオンオフ:図8)
上記の方法によれば、カード拾得者などによる電子マネーカード10の不正使用を防止することができるが、例えば、カード所有者が他の者に電子マネーカード10を渡して、他の者の物を買わせる場合、または自身の物を買いに行かせる場合には、カード呈示者の生体情報がカード所有者の生体情報と一致しなくなるため、カード使用が認められなくなる。
【0078】
上記の第2の方法による場合でも、例えば、カード所有者が、いつも電子マネーカード10を使用している場所または用途とは異なる場所または用途で、またはいつも電子マネーカード10を使用している日時とは異なる日時に、電子マネーカード10を使用する場合には、呈示状況情報が使用状況情報と一致しなくなるため、カード使用が認められなくなる。
【0079】
そこで、電子マネーカード10に対しては、カード所有者が上記の使用制限状態を解除することができ、その後、使用制限状態に戻すことができるようにする。
【0080】
このロックオフ(使用制限状態の解除)およびロックオン(使用制限状態の設定)は、例えば、USB(Universal Serial Bus)などによってPC(Personal Computer)に接続されたPaSoRi(登録商標で、上記のFeliCa(登録商標)インタフェースの一例)などの電子マネー対応インタフェースに電子マネーカード10をかざすことによってPC上で行うことができ、または、電子マネーカード10が携帯電話端末などの携帯端末に内蔵されている場合には、その携帯端末上で行うことができるようにする。
【0081】
また、カード所有者が電子マネー端末装置20の無線インタフェース28に電子マネーカード10をかざしてロックオフおよびロックオンを行うことができるように電子マネー端末装置20を構成することもできる。
【0082】
ただし、いずれの場合にも、ロックオフについては、カード所有者が電子マネーカード10に対して設定したパスワードや暗証番号などが入力されなければ、使用制限状態を解除できないようにする。
【0083】
カード所有者は、上記のように他の者に電子マネーカード10を使わせる場合には、上記の方法によってロックオン状態(使用制限状態)を解除し、他の者による使用後、電子マネーカード10が返還されたとき、必要に応じてロックオン状態に戻せばよい。第2の方法による場合も、同じである。
【0084】
図8に、このようにロックオンおよびロックオフの機能を有する場合に、図5の例と同様に、所有者情報としてカード所有者の生体情報を用い、照合対象情報としてカード呈示者の生体情報を用いるとともに、カード所有者の生体情報が電子マネーカード10に記録されていて、かつ電子マネー端末装置20が一連の処理を全て実行する場合の、一連の処理の一例を示す。
【0085】
この例では、電子マネー端末装置20は、まずステップ131で、電子マネーカード10を認識したか否かを判断し、電子マネーカード10を認識したときには、ステップ132に進んで、電子マネーカード10がロックオン状態にされているか否かを判断する。
【0086】
そして、電子マネーカード10がロックオン状態にされているときには、ステップ132からステップ110に進んで、図5のステップ102〜108で示したような一連の使用制限処理を実行する。
【0087】
一方、電子マネーカード10がロックオフ状態にされているときには、ステップ132からステップ133に進んで、カード所有者およびカード呈示者の生体情報の取得および照合を行うことなく、カード使用を認める処理を実行する。
【0088】
[4.拾得者への報労金の給付と所有者への電子マネーの返還:図9]
図1の例の電子マネーシステムの、図3および図4に示した電子マネー届出装置40では、カード所有者が紛失した電子マネーカード10を拾得した者が、その電子マネーカード10を電子マネー届出装置40のカード挿入口42に差し込むことによって、以下のように、カード拾得者に報労金が給付され、カード所有者に電子マネーが返還される。
【0089】
報労金は、電子マネーカード10に残存する電子マネーの所定割合、または所定額とする。所定割合とする場合、残存する電子マネーの多寡にかかわらず10%、などというように一定割合とすることもできるが、残存する電子マネーの多寡に応じて段階的に定めてもよい。所定額とする場合、残存する電子マネーが、その所定額より少額のときには、残存する電子マネー分とする。
【0090】
カード拾得者への報労金の給付は、紛失拾得された電子マネーカード10とは別の、拾得者が所有する電子マネーカードに、電子マネーとしてチャージ(入金)する方法で行うことが望ましい。
【0091】
図1の例の電子マネーシステムでは、電子マネー端末装置20の近傍に電子マネー届出装置40を設置して、電子マネー端末装置20と電子マネー届出装置40を接続し、電子マネー端末装置20にチャージ機能を持たせることによって、カード拾得者は、拾得した電子マネーカード10を電子マネー届出装置40のカード挿入口42に差し込んだ後、自身が所有する電子マネーカードを電子マネー端末装置20の無線インタフェース28にかざすことによって、その場で報労金を受け取ることができる。
【0092】
また、カード拾得者が、拾得した電子マネーカード10を電子マネー届出装置40のカード挿入口42に差し込んだ後、別途、PCや携帯端末などで管理サーバ71に接続することによって、電子マネーのチャージとして報労金を受け取ることができるようにしてもよい。
【0093】
さらに、電子マネーカードの発行や、電子マネーに変換できるチケットの発給などによって、カード拾得者に報労金が給付されるようにしてもよい。
【0094】
電子マネーカード10に残存する電子マネーから報労金を減じた分の電子マネー、またはさらに所定の手数料を減じた分の電子マネーは、カード所有者に返還する。
【0095】
その返還の方法としては、少なくとも報労金の分を減じた後の電子マネーを保持する、拾得された電子マネーカード10そのものを、所有者に返還する方法のほかに、拾得された電子マネーカード10そのものは破棄して、所有者がPCや携帯端末などで管理サーバ71に接続することによって、少なくとも報労金の分を減じた後の電子マネーを、所有者の別の電子マネーカードへのチャージとして返還する方法などを用いることができる。
【0096】
以上の方法によれば、紛失された電子マネーカード10を見つけた者が、届け出るのが煩わしいと感じることや、どこに届け出るべきか迷うことが少なくなって、電子マネーカード10を届け出てくれる可能性が高くなり、結果的に電子マネーの不正使用が減少し、所有者の利益が保護される。
【0097】
図9に、図1の例の電子マネーシステムの電子マネー届出装置40の情報処理端末50が実行する、以上のような報労金給付および電子マネー返還に係る一連の処理の一例を示す。
【0098】
この例では、電子マネー届出装置40の情報処理端末50は、まずステップ151で、電子マネーカード10を認識したか否かを判断し、図3に示したように電子マネーカード10がカード挿入口42に差し込まれ、破線15で示すように所定位置に案内されることによって、電子マネーカード10を認識したときには、ステップ152に進んで、電子マネーカード10がロックオン状態にされているか否かを判断する。
【0099】
そして、電子マネーカード10がロックオン状態にされているときには、ステップ152からステップ153に進んで、カード拾得者への報労金の給付のために電子マネーデータを書き替えて電子マネーを減額するために、電子マネーカード10のロックオン状態を解除し、すなわち電子マネーカード10をロックオフ状態にした上で、ステップ154に進む。
【0100】
一方、電子マネーカード10がロックオフ状態にされているときには、ステップ152から、そのままステップ154に進む。
【0101】
ステップ154では、報労金の分、電子マネーカード10に残存する電子マネーを減額して、カード拾得者に給付するための処理を実行する。
【0102】
次に、情報処理端末50は、ステップ155で、減額後の電子マネーをカード所有者に返還するための処理を実行する。
【0103】
次に、情報処理端末50は、ステップ156で、電子マネーカード10をロックオン状態にし、さらにステップ157に進んで、以上の結果を管理サーバ71に報告する。
【0104】
電子マネー届出装置40では、情報処理端末50で以上の処理が実行された後、ロックオン状態にされた電子マネーカード10が、図3において破線16で示すように筐体41の背面側に押し出される。
【0105】
カード拾得者が電子マネーカード10を届け出る前に、カード所有者が電子マネーカード10を紛失したことを届け出ていた場合は、もちろんのこと、カード拾得者が電子マネーカード10を届け出た時、カード所有者が電子マネーカード10を紛失したことを届け出ていなかった場合にも、上記の一連の処理の後、電子マネーカード10が届けられたことがカード所有者に通知され、カード所有者は上述した方法で電子マネーの返還を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】この発明の電子マネーシステムの一例を示す図である。
【図2】電子マネー端末装置の一例を示す図である。
【図3】電子マネー届出装置の一例を示す図である。
【図4】電子マネー届出装置の情報処理端末の一例を示す図である。
【図5】電子マネー端末装置が実行する使用制限処理の一例を示す図である。
【図6】電子マネー端末装置および管理サーバが実行する使用制限処理の一例の一部を示す図である。
【図7】電子マネー端末装置および管理サーバが実行する使用制限処理の一例の一部を示す図である。
【図8】ロックオンおよびロックオフの機能を有する場合の電子マネー端末装置が実行する一連の処理の一例を示す図である。
【図9】報労金給付および電子マネー返還に係る一連の処理の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
主要部については図中に全て記述したので、ここでは省略する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が呈示されたとき、その電子マネー媒体の所有者の生体情報を、所有者情報として取得するとともに、その電子マネー媒体を呈示した者の生体情報を、照合対象情報として取得する情報取得工程と、
上記照合対象情報を上記所有者情報と照合して、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するか否かを判定する照合工程と、
上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するときには、上記電子マネー媒体の使用を認める処理を行い、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致しないときには、上記電子マネー媒体の使用を認めない処理を行う処分工程と、
を備える情報処理方法。
【請求項2】
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が呈示されたとき、その電子マネー媒体の所有者の使用状況を示す使用状況情報を、所有者情報として取得するとともに、その電子マネー媒体が呈示されたときの状況を示す呈示状況情報を、照合対象情報として取得する情報取得工程と、
上記照合対象情報を上記所有者情報と照合して、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するか否かを判定する照合工程と、
上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するときには、上記電子マネー媒体の使用を認める処理を行い、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致しないときには、上記電子マネー媒体の使用を認めない処理を行う処分工程と、
を備える情報処理方法。
【請求項3】
請求項1または2の情報処理方法において、
上記所有者情報は、上記電子マネー媒体に記録されたものであり、
上記照合工程は、上記電子マネー媒体が呈示される端末装置が実行する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項4】
請求項1または2の情報処理方法において、
上記所有者情報は、上記電子マネー媒体が呈示される端末装置とネットワークを介して接続されるサーバ側に登録されたものであり、
上記照合工程は、上記サーバが実行する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
請求項1または2の情報処理方法において、
上記電子マネー媒体は、上記照合工程を含む各工程が実行されるべきロックオン状態と、上記照合工程が実行されることなく当該電子マネー媒体の使用を認める処理が実行されるべきロックオフ状態との、いずれにも設定可能とされたことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が呈示されるインタフェース手段と、
このインタフェース手段に上記電子マネー媒体が呈示されたとき、その電子マネー媒体の所有者の生体情報を、所有者情報として取得するとともに、その電子マネー媒体を呈示した者の生体情報を、照合対象情報として取得する情報取得手段と、
上記照合対象情報を上記所有者情報と照合して、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するか否かを判定し、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するときには、上記電子マネー媒体の使用を認める処理を行い、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致しないときには、上記電子マネー媒体の使用を認めない処理を行う情報処理手段と、
を備える端末装置。
【請求項7】
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が呈示されるインタフェース手段と、
このインタフェース手段に上記電子マネー媒体が呈示されたとき、その電子マネー媒体の所有者の使用状況を示す使用状況情報を、所有者情報として取得するとともに、その電子マネー媒体が呈示されたときの状況を示す呈示状況情報を、照合対象情報として取得する情報取得手段と、
上記照合対象情報を上記所有者情報と照合して、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するか否かを判定し、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致するときには、上記電子マネー媒体の使用を認める処理を行い、上記照合対象情報が上記所有者情報と一致しないときには、上記電子マネー媒体の使用を認めない処理を行う情報処理手段と、
を備える端末装置。
【請求項8】
請求項6または7の端末装置において、
上記所有者情報は、上記電子マネー媒体に記録されたものであることを特徴とする端末装置。
【請求項9】
請求項6または7の端末装置において、
上記所有者情報は、当該端末装置とネットワークを介して接続されるサーバ側に登録されたものであり、そのサーバから当該端末装置に送信されることを特徴とする端末装置。
【請求項10】
請求項6または7の端末装置において、
上記電子マネー媒体は、上記情報処理手段が上記照合対象情報を上記所有者情報と照合すべきロックオン状態と、上記情報処理手段が上記照合対象情報を上記所有者情報と照合することなく当該電子マネー媒体の使用を認める処理を実行すべきロックオフ状態との、いずれにも設定可能とされたことを特徴とする端末装置。
【請求項11】
電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体が挿入される媒体挿入口と、
この媒体挿入口に挿入された電子マネー媒体を認識して、その電子マネー媒体に保持された電子マネーの少なくとも一部を、その電子マネー媒体の所有者に返還する処理を実行する情報処理手段と、
を備える電子マネー届出装置。
【請求項12】
請求項11の電子マネー届出装置において、
上記情報処理手段は、さらに、上記電子マネー媒体に保持された電子マネーの少なくとも一部を、その電子マネー媒体を届け出た者に給付する処理を実行することを特徴とする電子マネー届出装置。
【請求項13】
装置に設けられた媒体挿入口に挿入された、電子的なデータで表現された電子マネーを保持する電子マネー媒体を認識する工程と、
上記電子マネー媒体に保持された電子マネーの少なくとも一部を、その電子マネー媒体の所有者に返還する処理を実行する工程と、
を備える情報処理方法。
【請求項14】
請求項13の情報処理方法において、
さらに、上記電子マネー媒体に保持された電子マネーの少なくとも一部を、その電子マネー媒体を届け出た者に給付する処理を実行する工程を備えることを特徴とする情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−262321(P2008−262321A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103569(P2007−103569)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】