説明

情報処理装置、情報処理プログラム。

【課題】ユーザの印刷物取得に関する各種の移動パターンを考慮して印刷装置の設置場所の評価等を行うことのできる情報処理装置、情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】
印刷装置が受領した印刷指示毎に、その印刷指示を出したユーザの該印刷指示に係る印刷物の取得に関する移動状況の計測結果から移動パターンを判別し、ユーザ別に、集計対象期間における各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力として求める、また、各移動パターンの発生回数と設置場所変更後の各移動パターンにおける移動労力とから設置場所変更後の各ユーザの総移動労力をシミュレートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスなどにおいて複数の利用者に共用される機器の設置場所の評価を行う情報処理装置または、情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスなどにおいて、印刷機や、プリント、スキャン、コピー、ファックス機能を備える複合機などの画像形成装置は共用機器として複数のユーザに共用されている。ユーザの中には、印刷機の使用頻度の高い人もいれば、低い人もいる。また、ユーザは自席のPC(Personal Computer)などの端末から印刷機に印刷指示を送出し、該印刷機で印刷された印刷物を取得するため、該印刷機の前まで移動する必要がある。ユーザの席から遠く離れた場所に印刷機が設置されると、そのユーザの印刷物の取得に関する移動労力が大きくなる。印刷機の使用頻度が高いユーザの移動労力が大きくなることは、そのユーザの作業効率低下に繋がるため望ましくない。その為、印刷機の設置場所の決定に関する各種の方法が提案されている。
【0003】
たとえば、各ユーザの座席位置と、共用機器の設置候補場所とをそれぞれ特定した後、それらの移動距離をそれぞれ算出し、その後、それら各移動距離と過去の各ユーザ毎の共用機器の利用回数とを乗算して設置候補場所毎の総移動距離を求め、総移動距離が最も小さくなる設置候補場所を共用機器の設置場所として決定する設置場所決定方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−302652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザの印刷物取得に関する移動パターンは、印刷機で印刷物を取得後、自席に戻る移動パターンもあれば、どこか他の特定の箇所に移動する移動パターンもある。ユーザが印刷物を取得後、自席に戻る移動パターンの発生回数が最も多いなら、自席から複合機までの距離が近いことが、総移動労力が少なくなって好ましい。一方、ユーザが印刷物を取得後、どこか他の箇所に移動するパターンの発生回数が最も多いなら、その移動パターンでの総移動労力が最も少なくなる位置に印刷機を設置することが好ましい。
【0006】
しかし、特許文献1に開示の方法では、ユーザの印刷物取得に関する移動パターンは、ユーザが印刷指示後に印刷機に移動し、印刷物を取得後は自席に戻るという移動パターンしか想定されていない。このため、他の箇所に移動するパターンが多い場合には、ユーザの利用実態に即した配置の提案等はできなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、ユーザの印刷物取得に関する各種の移動パターンを考慮して印刷装置の設置場所の評価等を行うことのできる情報処理装置、または情報処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0009】
[1]所定の印刷装置が受領した印刷指示毎に、その印刷指示を出したユーザの前記印刷指示に係る印刷物の取得に関する移動状況の計測結果から移動パターンを判別し、
ユーザ別に、集計対象期間における前記各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力として求める
ことを特徴とする情報処理装置。
【0010】
上記[1]および下記[10]に係る発明では、ユーザの印刷物の取得に関する移動パターンを、ユーザが印刷物を取得するまでだけでなく、印刷物取得後の移動パターンについても考慮し、各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力としてユーザ毎に求める。これにより、各ユーザの移動パターンに合致した移動労力を求めることができる。
【0011】
[2]前記判別では、少なくとも、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動する第1移動パターンと、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動して印刷物を取得した後に特定箇所へ移動する第2移動パターンを判別する
ことを特徴とする[1]に記載の情報処理装置。
【0012】
上記[2]および下記[11]に係る発明では、ユーザの印刷物取得に関する移動パターンを、ユーザの座席から印刷装置へ向かう第1移動パターンと、前記印刷装置で印刷物を取得後に特定箇所へ向かう第2移動パターンとに分けて判別し、各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合に伴う移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力として求める。これにより、ユーザの移動パターンにより合致した移動労力を計測することができる。特定箇所とは、たとえば、書棚や、ゴミ箱、階段や、ドアも含む。特定の箇所は1箇所でも複数箇所でもよい。特定箇所は一定の範囲(エリア)としてもよい。
【0013】
[3]前記印刷装置の配置を変更した場合における各移動パターンでの移動労力を取得し、該取得した移動労力を使用して前記積和を求めることで、印刷装置の配置を変更した場合の総移動労力をシミュレートする
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の情報処理装置。
【0014】
上記[3]および下記[12]に係る発明では、印刷装置の配置場所を変更した場合における各移動パターンでの移動労力を取得し、各移動パターンの発生回数と配置場所変更後の各移動パターンの移動労力とから、印刷機の配置を変更した場合の総移動労力をシミュレートする。たとえば、自席から印刷装置へ行きさらに特定箇所(たとえば、ドア)へ向かうといった移動パターンでN回印刷を行うユーザは、印刷装置が別の場所であったとしても、やはりこの移動パターン(自席から印刷装置を経てドアへ向かう移動パターン)でN回印刷すると考えられるので、場所変更前の移動パターンの移動労力を場所変更後の移動パターンの移動労力に置き換えて演算すれば、場所変更後の総移動労力をシミュレートすることができる。これにより、印刷機の配置位置を変更し移動させる前に、移動後の総移動労力の目安となる値を簡単にかつ精度良く取得することができる。
【0015】
[4]前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザから出力操作を受けて印刷を開始し、
ユーザの出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と前記特定箇所に前記ユーザが到達した時刻との差分が予め定めた基準時間内の場合に、前記印刷指示に係る前記ユーザの移動パターンは前記第2移動パターンであると判別する
ことを特徴とする[2]または[3]に記載の情報処理装置。
【0016】
上記[4]および下記[13]に係る発明では、印刷装置は前記印刷装置にてユーザから出力操作を受けた際に印刷を開始し、その印刷の完了時刻とその後にそのユーザが自席以外の特定箇所に到着した時刻との差分が、予め定めた基準時間以内であるか否かで、移動パターンを判定する。これは、ユーザが印刷装置で出力操作して印刷が開始する場合には、印刷完了時にユーザは印刷装置の前にいたと想定され、その印刷完了時刻から所定時間(印刷装置から特定箇所へ通常の移動速度で移動した場合の所要時間)内に特定箇所を通過すれば、印刷物取得後に印刷装置の前から特定箇所へ移動したと考えられるからである。
【0017】
[5]前記移動労力は、移動時間または移動距離、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせ、である
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0018】
上記[5]および下記[14]に係る発明では、移動時間を移動労力とする場合には、移動時間は距離を移動速度で割った数値なので、ユーザの移動速度を考慮した移動労力となる。また、移動距離を移動労力とした場合は、距離は移動速度に依存しないため、実際の移動に伴う消費エネルギーに対応した移動労力となる。時間と距離の両方を移動労力として扱う場合は、時間と距離に重み付けをして移動労力を求めることができる。例えば、時間と距離の両方を移動労力として扱う際に、時間を重視する場合、時間と距離の重要度の比重を2対1などの比率に設定して移動労力を求めることが可能となる。
【0019】
[6]前記移動労力は、移動時間、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせで表し、
ユーザの座席から前記印刷装置までの移動時間は、前記ユーザが印刷指示を出した時刻と、その後に前記ユーザが前記印刷装置でユーザ認証した時刻との差分に基づいて導出し、前記印刷装置から前記特定箇所までの移動時間は、前記ユーザが出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と、その後に前記ユーザが前記特定箇所に到達したことが検出された時刻との差分に基づいて導出する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0020】
上記[6]および下記[15]に係る発明では、印刷指示を出した時刻にユーザが自席から移動開始したと仮定し、ユーザ認証をもって印刷装置にユーザが到着したと認定し、これらの時刻の差分を自席から印刷装置への移動に要した時間と判定する。また、印刷完了をもって印刷装置からユーザが移動を開始したものと仮定し、この時刻と特定箇所への到着時刻との差分を、印刷装置から特定箇所への移動に要した時間と判定する。
【0021】
[7]前記特定箇所には、出入口を含む
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0022】
[8]前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザ認証されたことを条件に印刷を開始し、
印刷完了により、前記ユーザ認証されたユーザが印刷物を取得したことを検出する
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0023】
[9]情報処理装置を、
所定の印刷装置が受領した印刷指示毎に、その印刷指示を出したユーザの前記印刷指示に係る印刷物の取得に関する移動パターンを判別し、
ユーザ別に、集計対象期間における前記各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力として求める
ように動作させる
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【0024】
[10]前記情報処理装置を、
前記判別において、少なくとも、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動する第1移動パターンと、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動して印刷物を取得した後に特定箇所へ移動する第2移動パターンを判別するように動作させる
ことを特徴とする[9]に記載の情報処理プログラム。
【0025】
[11]前記情報処理装置をさらに、
前記印刷装置の配置を変更した場合における各移動パターンでの移動労力を取得し、該取得した移動労力を使用して前記積和を求めることで、印刷装置の配置を変更した場合の総移動労力をシミュレートするように動作させる
ことを特徴とする[9]または[10]に記載の情報処理プログラム。
【0026】
[12]前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザから出力操作を受けて印刷を開始するものであり、
前記判別において、前記情報処理装置を、
ユーザの出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と前記特定箇所に前記ユーザが到達した時刻との差分が予め定めた基準時間内の場合に、前記印刷指示に係る前記ユーザの移動パターンは前記第2移動パターンであると判別するように動作させる
ことを特徴とする[10]または[11]に記載の情報処理プログラム。
【0027】
[13]前記移動労力は、移動時間または移動距離、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせ、である
ことを特徴とする[9]乃至[12]のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【0028】
[14]前記情報処理装置を、
前記移動労力は、移動時間、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせで表し、
ユーザの座席から前記印刷装置までの移動時間は、前記ユーザが印刷指示を出した時刻と、その後に前記ユーザが前記印刷装置でユーザ認証した時刻との差分に基づいて導出し、前記印刷装置から前記特定箇所までの移動時間は、前記ユーザが出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と、その後に前記ユーザが前記特定箇所に到達したことが検出された時刻との差分に基づいて導出する
ように動作させる
ことを特徴とする[9]乃至[13]のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【0029】
[15]前記特定箇所には、出入口を含む
ことを特徴とする[9]乃至[14]のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【0030】
[16]前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザ認証されたことを条件に印刷を開始するものであり、
前記情報処理装置を、
印刷完了により、前記ユーザ認証されたユーザが印刷物を取得したことを検出するように動作させる
ことを特徴とする[9]乃至[15]のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る情報処理装置、情報処理プログラムによれば、ユーザの印刷物取得に関する各種の移動パターンを考慮して印刷物取得に係るユーザの総移動労力を算出し評価等することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る全体システムを示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るPC端末と画像形成装置の持つソフトウェアの機能を示す説明図である。
【図4】移動時間を集積する動作の流れを示す流れ図である。
【図5】移動時間集積テーブルの一例を示す説明図である。
【図6】ユーザが移動する区間を示す説明図である。
【図7】移動時間の積算及びシミュレートの際の動作の流れを示す流れ図である。
【図8】移動時間積算テーブルの一例を示す説明図である。
【図9】移動時間をグラフで示す説明図である。
【図10】基準値算定テーブルの一例を示す説明図である。
【図11】移動時間基準値を算出する処理動作の流れを示す流れ図である
【図12】所定時間の設定に係る動作の流れを示す流れ図である
【図13】所定時間テーブルの一例を示す説明図である。
【図14】移動時間集積テーブルを作成する際の動作の流れの前半を示す流れ図である。
【図15】移動時間集積テーブルを作成する際の動作の流れの後半を示す流れ図である。
【図16】移動時間積算テーブルを作成する際の動作の流れの前半を示す流れ図である。
【図17】移動時間積算テーブルを作成する際の動作の流れの後半を示す流れ図である。
【図18】現状のレイアウトとシミュレート用の仮定レイアウトを示す説明図である。
【図19】設置場所を変更したときの移動時間算定テーブルをシミュレートする動作の流れを示す流れ図である。
【図20】現状の配置レイアウトでの移動時間積算テーブルと、仮定配置レイアウトでシミュレートした移動時間積算テーブルを示す説明図である。
【図21】物の場所を座標で示している居室レイアウトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置としての複数のPC(Personal Computer)端末40と、画像形成装置10と、入退出管理システム30がLAN(Local Area Network)2を通じて接続されている全体システム5を示している。以降の図面内では画像形成装置10をMFPと簡易表記することがある。
【0035】
入退出管理システム30は、ユーザがドアAまたはドアBを通過する際に、カードリーダー32にユーザの識別情報などが記録された磁気カードを読み取らせることで、ユーザがドアAまたはドアBから入室または退室した時刻をドア通過履歴情報33として蓄積記録し、画像形成装置10からの要求に応じて各ユーザの入退室時刻を画像形成装置10へ送信する機能を果たす。
【0036】
画像形成装置10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷するコピージョブ、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部装置へ送信したりするスキャンジョブ、PCから送出されたデータに係る画像を記録紙に印刷して出力するプリントジョブなどのジョブを実行する機能を備えた、所謂、複合機である。
【0037】
PC端末40は画像形成装置10へ印刷指示を送信する。
【0038】
全体システム5は、画像形成装置10の配置を評価したり、配置に関する各種のシミュレートを行ったりする機能(配置評価機能)を備えている。詳細には、画像形成装置10に対してPC端末40から印刷指示を送ったユーザの移動パターンを計測する。たとえば、印刷指示を出してから画像形成装置10へ向かい、画像形成装置10でその印刷物を取得し、その後自席に戻る、あるいは、印刷指示を出してから画像形成装置10へ向かい、画像形成装置10でその印刷物を取得し、その後別の部屋へ移動する、といった印刷指示に伴うユーザの移動パターンを計測して累積記憶する。また、移動パターン別に、その移動パターンによる移動労力(移動時間や移動距離)を算出する。そして、ユーザ毎に、各移動パターンの発生回数とその移動パターンの移動労力との積を合計した総移動労力を求める。このようにして求めたユーザ毎の総移動労力に基づき、画像形成装置10の配置を評価したり、各種のシミュレートを行ったりするようになっている。
【0039】
図2は、画像形成装置10の概略構成を示している。画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)11と、このCPU11に接続されたROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、不揮発メモリ14と、ハードディスク装置15と、表示部16と、操作部17と、ネットワークI/F部19と、スキャナ部20と、画像処理部21と、プリンタ部22と、ファクシミリ通信部23と、時刻管理部24で構成されている。
【0040】
CPU11はOS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどが実行される。ROM12には各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が処理を実行することでジョブの実行など画像形成装置10の各機能が実現される。RAM13はCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。
【0041】
不揮発メモリ14は、電源がオフにされても記憶が保持できる書き換え可能なメモリ(フラッシュメモリ)である。不揮発メモリ14には、装置固有の情報や各種の設定情報などが記憶される。ハードディスク装置15は、大容量の不揮発の記憶装置であり、OSプログラムや各種アプリケーションプログラム、印刷データや画像データ、ジョブに係る情報履歴、また後述する移動時間集積テーブル60などが保存される。
【0042】
表示部16は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作、設定に係る内容を表示する機能を果たす。操作部17は、ユーザからのジョブの投入や設定、プリントの際のログインなど、各種の操作を受け付ける機能を果たす。操作部17は、表示部16の画面上に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルのほか、画面外にテンキーや文字入力キー、スタートキーなどを備えて構成される。
【0043】
ネットワークI/F部19は、LANなどのネットワークを通じて接続されている他の外部装置などと通信を行う。本実施の形態ではPC端末40や入退出管理システム30と通信しており、ジョブや各種情報の送受信を行う。
【0044】
スキャナ部20は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。スキャナ部20は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0045】
画像処理部21は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理を行う。
【0046】
プリンタ部22は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成は、インクジェット方式や、他の方式でもかまわない。
【0047】
ファクシミリ通信部23は、ファクシミリ送信および受信に係る動作を制御する。
【0048】
時刻管理部24は、時計としての機能を果たす。CPU11は、印刷に係る時刻(印刷指示を受領した時刻、ユーザがログインした時刻、印刷完了時刻)を、それぞれの事象が発生した時点で時計管理部24の時刻を参照して認識する。
【0049】
図3は、配置評価機能に関するPC端末40と、画像形成装置10のソフトウェアの機能構成を示すブロック図である。図では、各ソフトウェアがその機能を実行する際に参照する情報は破線の枠で示してある。PC端末40は、画像形成装置10に印刷指示(プリントジョブ)を出力する印刷指示機能50と、ユーザの各移動パターンにおける移動時間を積算、及びシミュレートする機能55と、その集計、シミュレート結果を表示する表示機能56とを果たすソフトウェアを備えている。
【0050】
画像形成装置10は、PC端末40からの印刷指示を受領する印刷ジョブ受領機能51と、ログインユーザが印刷ジョブ受領機能51の受領した印刷指示を出したユーザ本人であることを認証するユーザ認証機能52と、印刷機能53と、移動時間集積テーブル60を作成する移動時間集積機能54とを果たすソフトウェアを備えている。移動時間集積テーブル60には、印刷ジョブ毎に、その印刷ジョブの受領時刻、印刷終了時刻、その印刷ジョブを出したユーザの当該画像形成装置10へのログイン時刻、該印刷ジョブ受領時刻や印刷終了時刻の近傍における該印刷ジョブを出したユーザのドアAやドアBの通過時刻などが登録される。なお、移動時間集積機能54は、入退室管理システム30が管理しているドア通過履歴情報33を参照してドアAやドアBの通過時刻を取得する。
【0051】
次に、全体システム5の動作について詳細を説明する。
【0052】
図4は、全体システム5において、ユーザごとの移動時間を集積する際のPC端末40と、画像形成装置10の動作の流れを示す流れ図である。PC端末40は、画像形成装置10に印刷指示を送出する(ステップS401)。画像形成装置10は、ステップS401でPC端末40から送出された印刷指示を受領し、その受領時刻を取得する(ステップS402)。印刷指示を出したユーザは印刷物を取得するために、印刷指示を出したPC端末40から画像形成装置10まで移動し画像形成装置10へのログインを行う。画像形成装置10は、ユーザのログインによりユーザの情報を取得し該ユーザの認証を行う。そして認証した時刻(ログイン時刻)を取得した後(ステップS403)、印刷処理を実行し、印刷終了時刻を取得する(ステップS404)。
【0053】
その後、画像形成装置10はユーザの印刷物取得に係る移動にかかった時間を集積する(ステップS405)。この集積処理では、まず入退出管理システム30が蓄積記憶しているドア通過履歴情報33から、当該印刷指示を出したユーザのドア通過履歴を取得する(ステップS406)。そして、ステップS402、ステップS403、ステップ404で取得した印刷指示受領時刻、ログイン時刻、印刷終了時刻とあわせて移動時間集積テーブル60を作成(書込み処理)している(ステップS407)。
【0054】
図5は、移動時間集積テーブル60の一例を示している。図5の移動時間集積テーブル60は、図6に示すように、居室にドアA、ドアBがある場合に対応したものである。ユーザの自席から画像形成装置10までの移動区間を区間X、画像形成装置10からドアAまでの移動区間を区間Y、画像形成装置10からドアBまでの移動区間を区間Zとする。
【0055】
移動時間集積テーブル60には、受領した印刷ジョブ毎に、ユーザID(Identification)61と、印刷指示受領時刻62と、印刷終了時刻63と、ログイン時刻64と、ドアA通過OUT時刻65と、ドアB通過OUT時刻66と、ドアA通過IN時刻67と、ドアB通過IN時刻68と、移動時間(X)69と、移動時間(Y)69Aと、移動時間(Z)69Bとが登録される。
【0056】
ユーザID61は、受領した印刷ジョブをPC端末40から送出したユーザのID(識別情報)である。このユーザIDは、たとえば、受領した印刷ジョブに付加されているユーザIDである。印刷指示受領時刻62は、画像形成装置10が印刷指示(印刷ジョブ)の受領を開始した時刻であり、これはユーザがPC端末40にて印刷ジョブを送信した時刻に相当する。印刷終了時刻63は印刷出力が完了した時刻である。ログイン時刻64は、ユーザが画像形成装置10にて印刷物取得のためにログインした時刻である。すなわち、ユーザがPC端末40にて印刷ジョブを送信した後、印刷物取得のために画像形成装置10に向けて移動を開始し、画像形成装置10に到着した時刻に当たる。
【0057】
ドアA通過OUT時刻65はユーザが印刷物取得後にドアAを通過した時刻である。ドアB通過OUT時刻66はユーザが印刷物取得後にドアBを通過した時刻である。印刷終了時刻から所定の時間内にドアを通過した場合は、ユーザが印刷物を取得後に自席(PC端末40がある位置)に戻らず、ドアを通過したものとみなしてその時刻をセットする。印刷終了時刻から所定の時間内にドアを通過しなかった場合は、時刻のセットは行わない。なお、印刷終了時刻から所定の時間内にないドアの通過は印刷物の取得とは無関係と判断する。
【0058】
ドアA通過IN時刻67はユーザが印刷物取得前にドアAを通過した時刻である。ドアB通過IN時刻68はユーザが印刷物取得前にドアBを通過した時刻である。ドアを通過した時刻から所定の時間内にユーザがログインした場合は、自席(PC端末40がある位置)から移動して印刷物を取得したのではなく、ドア通過の直後に印刷物を取得したものとみなし、その時刻をセットする。ドアを通過した時刻から所定の時間内にユーザがログインしなかった場合は、そのドアの通過は印刷物取得とは無関係と判断して時刻のセットは行わない。
【0059】
上記した所定の時間は、ユーザがドアAと画像形成装置10の間(図6の区間Y)、またはドアBと画像形成装置10間(図6の区間Z)の移動に必要とされる移動時間の上限値である。所定時間は、ユーザごとに、画像形成装置10からドアAまでの区間Yと、画像形成装置10からドアBまでの区間Zのそれぞれについて予め設定する。なお、所定時間は全ユーザで共通の値に設定してもよいし、画像形成装置10からドアA間と画像形成装置10からドアB間の値を共通にしてもよい。所定時間の設定について詳細は後述する。
【0060】
移動時間(X)69はユーザの自席から画像形成装置10までの区間の移動時間である。ドアの通過履歴がない場合は、ユーザの自席から画像形成装置10までの間の移動と判断し、印刷指示受領時刻とログイン時刻の差分をセットする。
【0061】
移動時間(Y)69Aは、ドアAから画像形成装置10までの区間Yの移動時間である。ドアA通過OUT時刻65がセットされている場合、ドアA通過OUT時刻65と印刷終了時刻の差分を移動時間(Y)69Aにセットする。この時間は、ユーザが画像形成装置10からドアAまで移動した時間である。ドアA通過IN時刻67がセットされている場合、ドアA通過IN時刻67とログイン時刻の差分を移動時間(Y)69Aにセットする。この時間は、ユーザがドアAから画像形成装置10まで移動した時間である。
【0062】
移動時間(Z)69BはドアBから画像形成装置10までの区間Zの移動時間である。ドアB通過OUT時刻66がセットされている場合、ドアB通過OUT時刻66と印刷終了時刻の差分を移動時間(Z)69Bにセットする。この時間は、ユーザが画像形成装置10からドアBまで移動した時間である。ドアB通過IN時刻68がセットされている場合、ドアB通過IN時刻68とログイン時刻の差分を移動時間(Z)69Bにセットする。この時間は、ユーザがドアBから画像形成装置10まで移動した時間である。
【0063】
図7はPC端末40における、移動時間の積算結果と移動時間シミュレート結果を画面に表示するまでの動作の流れ図である。なお、移動時間集積テーブル60は、画像形成装置10の内部にあるので破線の枠の中に表示している。ユーザはPC端末40の移動時間の積算及びシミュレートを行う機能を備えた所定のソフトウェアを起動する(ステップS501)。まず、移動時間の積算を行う(第1のメニュー)か、移動時間のシミュレート(第2のメニュー)を行うかの選択をメニュー画面にて受ける(ステップS502)。
【0064】
第1のメニューに対応する処理では、ユーザの印刷物取得に関する移動時間がジョブ毎に登録されている移動時間集積テーブル60を参照して集計し、各ユーザの印刷物取得に関する総移動時間を求め、その結果を表示する。詳細には、第1のメニューの選択を受けたら(ステップS502;第1のメニュー)、まず集計情報(集計の対象期間、集計対象となるユーザ情報等)の入力を受ける(ステップS503)。そして、この集計情報に従って、ユーザの印刷物取得に係る移動時間の積算処理を行う(ステップS504)。該積算処理では、画像形成装置10内で予め作成して記憶しておいた移動時間集積テーブル60を読み込み(ステップS505)、これを基にして、各ユーザの印刷物取得に関する総移動時間などの集計結果が登録される移動時間積算テーブル70を作成する(ステップS508)(図8参照のこと)。
【0065】
移動時間積算テーブル70の作成では、まずステップS503で入力された集計情報に対応するユーザごとの、移動時間(X)69、移動時間(Y)69A、移動時間(Z)69Bから、それぞれの区間(区間X、区間Y、区間Z)における移動時間基準値を導出する(図11参照のこと)。移動時間基準値とは、ユーザIDの示すユーザが該当の区間(区間X、区間Y、区間Z)を寄り道せずに移動した場合の移動時間の基準値である。移動時間基準値の導出方法については後述する。
【0066】
次に、ユーザ毎に、そのユーザの各区間おける移動時間基準値にその区間におけるそのユーザの移動回数をそれぞれ乗算した値を、すべての区間について合計して、各ユーザの合計移動時間を導出する。さらにこのユーザ毎に求めた合計移動時間を、すべてユーザについて積算した、総合計移動時間を算出する。移動時間積算テーブル70の作成の詳細については、図16、図17を基にして後に説明する。
【0067】
移動時間積算テーブル70が作成されたら、ステップS503で入力された条件をもとに積算して得た各ユーザの印刷物取得に係る合計移動時間などを表示する(ステップS506)。
【0068】
ステップS502で第2のメニューを選んだ場合は(ステップS502;第2のメニュー)、移動時間のシミュレートを行う(ステップS507)。移動時間のシミュレートでは、ステップS508で作成した移動時間積算テーブル70を元に画像形成装置10の設置場所を変更した際の移動時間のシミュレーションを行う。
【0069】
図8は移動時間積算テーブル70の一例を示している。移動時間積算テーブル70には、移動時間集積テーブル60をもとに算出された、ユーザ毎の合計移動時間や総合計移動時間などが登録される。詳細には、移動時間積算テーブル70には、ユーザID毎に、ドア通過無し回数71と、ドアA通過回数71Aと、ドアB通過回数71Bと、移動距離X72と、総移動時間(X)73と、総移動時間(Y)73Aと、総移動時間(Z)73Bと、移動時間(X)基準値74と、移動時間(Y)基準値74Aと、移動時間(Z)基準値74Bと、合計移動時間75が登録されている。各項目の最下欄には、全てのユーザの合計値が表示されている。
【0070】
ユーザID61は、印刷を行ったユーザのIDである。ドア通過無し回数は、区間X(自席とMFPとの間)におけるユーザの移動回数である。ドアA通過回数71Aは区間Y(MFPとドアAとの間)におけるユーザの移動回数である。ドアB通過回数71Bは区間Z(MFPとドアBとの間)におけるユーザの移動回数である。
【0071】
総移動時間(X)73は、区間Xにおけるユーザの総移動時間である。総移動時間(X)73は、移動時間(X)基準値74とドア通過なし回数71とを乗算して導出される。移動時間(X)基準値74は区間Xにおけるユーザの移動時間の基準値である。
【0072】
総移動時間(Y)73Aは区間Yにおけるユーザの総移動時間である。総移動時間(Y)73Aは、移動時間(Y)基準値74AとドアA通過回数71Aを乗算して導出される。移動時間(Y)基準値74Aは区間Yにおけるユーザの移動時間の基準値である。
【0073】
総移動時間(Z)73Bは区間Zにおけるユーザの総移動時間である。
【0074】
総移動時間(Z)73Bは、移動時間(Z)基準値74BとドアB通過回数71Bを乗算して導出される。移動時間(Z)基準値74Bは区間Zにおけるユーザの移動時間の基準値である。
【0075】
合計移動時間75は総移動時間(X)73と総移動時間(Y)73Aと総移動時間(Z)73Bを合計した数値であり、ユーザの印刷物取得に係る移動パターン全てを含めた移動労力に相当する。全ユーザの合計移動時間75の合計である総合計移動時間は、各ユーザの移動労力の合計である総移動労力76に相当する。
【0076】
印刷指示を出してからすぐに画像形成装置10に取りに向かう、しばらくしてから向かうなど、実際のユーザの行動パターンにはばらつきがある。したがって印刷指示から印刷物取得までにかかった移動時間や、画像形成装置10からドアAまでの間の移動時間、画像形成装置10からドアBまでの移動時間にはばらつきが発生する。このばらつきを有する移動時間の計測値のうち、移動時間の短いものは、印刷指示を出してから直ぐにかつ最短経路で画像形成装置10へ移動した場合の移動時間と考えられる。
【0077】
そこで、計測された各移動時間の中で比較的短時間のものから移動時間の基準値を導出する。詳細には、印刷物を取得した回数全体の中で一定の割合(たとえば、90%)の回数分の計測値を移動時間の短いものから優先的に抽出し、これらの平均値などとして基準値を算定する。これにより、計測された各移動時間の中で、時間の長いもの、すなわち、ユーザが遠回りしたケースや、印刷指示後しばらくしてから移動を開始したようなケースを、除外した計測値のみから、移動の基準値を算定でき、基準値を適正化することができる。
【0078】
また、ユーザの移動速度もユーザ毎にばらつきがある。そこで、移動時間基準値は、それぞれの区間についてユーザ別に算定している。これにより、ユーザごとの移動速度も考慮に入れた移動労力を算出することができる。
【0079】
図9は計測された移動時間の度数分布を示すグラフ90で示す。縦軸は度数(発生回数)を、横軸は移動時間を示しており、この図では、移動時間の短いものから順に左から右へと棒グラフを並べてある。図9中の基準線91は、計測された移動時間のうち基準値の算出に使用するものだけを抽出するための閾値を示している。基準線91の左側の領域に存在する移動時間の計測値の平均値を移動時間基準値として算出する。
【0080】
図10は基準値算定テーブル92の例を示している。基準値算定テーブル92には、上述のようにして算出した移動時間基準値が登録される。本例の基準値算定テーブル92には、ユーザごとに、移動時間(X)基準値74、移動時間(Y)基準値74A、移動時間(Z)基準値74Bが登録されている。なお、基準値算定テーブル92は後述する図11の処理で作成され、また、後述する図12の所定時間の設定における処理で参照される。
【0081】
図11は移動時間基準値を算出する処理を示す流れ図である。まず、計測された移動時間のうち何割のものを基準値の算出に使用するかを示す基準時間割合P(%)の設定を受け付ける(ステップS901)。この基準時間割合は既定の固定値でもよい。次に、画像形成装置10から移動時間集積テーブル60を読み込み(ステップS902)、基準値算定テーブル92を開く。そして、移動時間基準値の算出を開始する(ステップS903)。
【0082】
以下の処理はユーザ毎に行われる。まず、全てのユーザの移動時間基準値の算出および基準値算定テーブル92への設定が終了しているか否かを調べ(ステップS904)、終了していないのなら(ステップS904;No)、移動時間基準値の算出が未処理のユーザIDのうちの1つを処理対象のユーザIDに指定する(ステップS906)。
【0083】
そして指定したユーザIDに対応する移動時間の計測値を移動時間集積テーブル60から収集して集計する(ステップS907)。ここでは、各ジョブについて計測された移動時間が登録されている移動時間集積テーブル60の中から、(図5参照)指定されたユーザIDに対応した移動時間(X)69、移動時間(Y)69A、移動時間(Z)69Bを収集・集計する。
【0084】
集計された移動時間(X)69、移動時間(Y)69A、移動時間(Z)69Bにおいて、移動時間の短い時間のほうから、各移動時間の集計数のP%の回数分の範囲内の移動時間の平均値を、区間別に算定する(ステップS908)。算定した値を各区間の移動時間基準値として設定し(ステップS909)、ステップS904に戻る。全てのユーザについて、基準値の算出および基準値算定テーブル92への設定が終了した場合は(ステップS904;Yes)、基準値算定テーブル92を閉じて(ステップS905)処理を終了する。
【0085】
図12は、所定時間の設定に係る動作について詳細を示す流れ図である。所定時間とは区間Y、区間Zのそれぞれの区間においての移動に際し許容される移動時間の上限値である。所定時間を設定するモードは2つある。一つはユーザが手入力で数字を入力するモード(手入力モード)、もう一つは、前述した基準値算定テーブル92に登録されている移動時間基準値をもとに自動的に設定するモード(Autoモード)である。
【0086】
まず、所定時間の設定モード画面を表示する(ステップS1001)。ユーザはこの設定モード画面にて前述のモードを選択する。手入力モードが選択された場合は(ステップS1002;手入力)、ユーザごとの各区間それぞれの所定時間について手入力による設定を受け付ける(ステップS1003)。そして、その設定内容を所定時間テーブル93(図13参照)に登録して(ステップS1008)動作を終了する。
【0087】
ステップS1002でAutoモードが選択された場合は、基準値算定テーブル92を開く(ステップS1004)。次に、移動基準時間に付加するマージン時間となるαの設定をユーザから受け付ける(ステップS1005)。移動時間基準値はある区間をユーザが移動するのに要する時間の基準値なので、移動時間の上限値となる所定時間には、移動時間の基準値に対してある程度の余裕を持たせる必要がある。そこで、マージンαの設定を受け付けている。
【0088】
マージンαの入力を受けた後、ユーザごとに、区間Y、区間Zそれぞれの区間の移動時間基準値を読み込む(ステップS1006)。そして読み込んだ各移動時間基準値にαを加算した時間をそれぞれの区間の所定時間として設定し(ステップS1007)、これら設定した所定時間を、所定時間テーブルの該当箇所に登録して(ステップS1008)動作を終了する。
【0089】
図13は所定時間テーブル93の例である。所定時間テーブル93には、ユーザIDごとに、ドアA通過所定時間93Aと、ドアB通過所定時間93Bが登録されている。ドアA通過所定時間93Aは、画像形成装置10とドアAの間(区間Y)の移動時間に関する所定時間(移動時間の上限値)である。ドアB通過所定時間93Bは画像形成装置10とドアBの間(区間Z)の移動時間に関する所定時間である。
【0090】
図14、図15は画像形成装置10が移動時間集積テーブル60(図5参照)を作成(書き込み)する際の動作を示す流れ図である。この処理は図4のS405で行われる。図14では記録された時刻の書き込み、図15では図14で書き込まれた時刻の差分から移動時間を求める。
【0091】
画像形成装置10は、PC端末40からの印刷指示を受領したときにこの処理を実行する。印刷指示を受領すると、その受領した印刷指示に係る印刷ジョブ情報を取得する(ステップS801)。印刷ジョブ情報は、この印刷指示を送信したユーザのユーザID、印刷指示受領時刻、ログイン時刻、印刷終了時刻の4つを含む。これら取得した情報を移動時間集積テーブルに書き込む(ステップS802)。なお、ログイン時刻は、印刷指示受領時刻以後に最初のそのユーザIDのユーザが当該画像形成装置10にログインした時刻である。印刷終了時刻は当該印刷指示に基づく印刷を完了した時刻である。
【0092】
次に、先のユーザIDが示すユーザに関するドア通過時刻を、入退室管理システム30から取得する(ステップS803)。
【0093】
ログイン時刻前の、所定時間内にドアA、ドアBのどちらかにドア通過INがあった場合は、(ステップS804;Yes)、移動時間集積テーブルのそのドア通過INがあったドアのドア通過IN時刻の項目部分にそのドア通過INの時刻を書き込む(ステップS805)。その後ステップS806に進む。
【0094】
ここでは、ドア通過INがあったドアから前述のユーザIDのユーザが入室し、画像形成装置10まで印刷物を取得するために移動してきたものと判断している。ステップS804では、ステップS801で取得したユーザIDに対応するドア通過INがあった場合、そのドアと画像形成装置10間の移動に係る所定時間を所定時間テーブル93から取得する。たとえば、ドアA通過INがあった場合はドアA通過所定時間を取得する。そして先のドア通過INがあった時刻とログイン時刻との差分が所定時間内であるか否かを判定する。
【0095】
ドア通過INの時刻から所定時間の経過後にログインがあった場合は(ステップS804;No)、そのままステップS806に進む。ここでは、ユーザが自席から画像形成装置10まで移動し、印刷物を取得していると判断している。
【0096】
印刷終了後の所定時間内にドアA、ドアBのどちらかにドア通過OUTがあった場合は(ステップS806;Yes)、移動時間集積テーブル60のそのドア通過OUTがあったドアのドア通過OUT時刻の項目部分にそのドア通過OUTの時刻を書き込む(ステップS807)。その後ステップS809に進む。
【0097】
ここでは前述のユーザIDのユーザが画像形成装置10で印刷物を取得後に、そのドア通過OUTがあったドアから退室したものと判断している。ステップS806では、ステップS801で取得したユーザIDに対応するドア通過OUTがあった場合、そのドア通過OUTがあったドアと画像形成装置10との間の移動に係る所定時間を所定時間テーブル93から取得する。たとえば、ドアA通過OUTがあった場合はドアA通過所定時間を取得する。そして先のドア通過OUTがあった時刻と印刷完了時刻があった時刻との差分が所定時間内であるか否かを判定する。
【0098】
印刷終了後の時刻から所定時間を過ぎた後にドア通過OUTがあった場合は(ステップS806;No)、そのままステップS809に進む。ここでは、ユーザが印刷物を取得後に、ユーザが自席まで戻ったと判断している。ここまでが、前述の時刻の書き込み作業に当たる。
【0099】
この後の処理ではここまでに書き込まれた時刻のうちの2つの差分から移動時間を導出する。まず、ここまでに書き込まれた時刻の中に所定時間内のドア通過INもしくはドア通過OUTの少なくとも一方が書き込まれているか否かを調べる(ステップS809)。所定時間内のドア通過INとドア通過OUTの双方とも無かった場合は(ステップS809;No)、印刷指示受領時刻とログイン時刻の差分を区間X(自席とMFP)間のユーザの移動時間として移動時間集積テーブルに書き込み(ステップS815)、動作を終了する。この場合は印刷物の取得に関する移動にて、ドア通過IN、ドア通過OUTが全く無い。よってユーザが自席から画像形成装置10まで移動し、印刷物を取得した後、自席に戻った移動パターンであると判断する。
【0100】
所定時間内のドア通過INもしくはドア通過OUTが1回でもあった場合は(ステップS809;Yes)、そのドア通過の中にドア通過OUTがあるか否かを調べる(ステップS810)。ドア通過OUTが無ければ(ステップS810;No)、ドア通過INの時刻とログイン時刻との差分を、ドア通過INがあったドアと画像形成装置10間の移動時間として移動時間集積テーブル60に書き込む(ステップS814)。その後、動作を終了する。この場合は、ドア通過INがあり、ドア通過OUTが無いので、ドア通過INがあったドアからユーザが入室し、画像形成装置10まで移動し、印刷物を取得後、退室せずに、室内にある自席に戻った移動パターンであると判断する。
【0101】
ステップS810で、ドア通過OUTがあった場合は(ステップS810;Yes)、まずドア通過OUTの時刻と印刷終了時刻との差分を、画像形成装置10とドア通過OUTがあったドア間の移動時間として移動時間集積テーブル60に書き込む(ステップS811)。次に、所定時間内のドア通過INがあったか否かを判定する。所定時間内のドア通過INがあった場合は(ステップS812;Yes)ドア通過INの時刻とログイン時刻との差分を、ドア通過INがあったドアと画像形成装置10間の移動時間として移動時間集積テーブル60に書き込んで(ステップS813)、動作を終了する。この場合は、ドア通過IN、ドア通過OUTがともにある。よってドア通過INがあったドアからユーザが入室し、画像形成装置10まで移動し、印刷物を取得後、ドア通過OUTがあったドアから退室した移動パターンであると判断する。
【0102】
ステップS812で所定時間内のドア通過INが無かった場合は(ステップS812;No)、印刷指示受領時刻とログイン時刻の差分をPC端末40から画像形成装置10間のユーザの移動時間として移動時間集積テーブル60に書込み(ステップS815)、動作を終了する。この場合はドア通過OUTがあり、ドア通過INが無いので、ユーザが自席から画像形成装置10まで移動し、印刷物を取得後、ドア通過OUTがあったドアから退室した移動パターンであると判断する。
【0103】
図16、図17はPC端末40が移動時間積算テーブル70(図8参照)を作成する際の動作の流れを示す流れ図である。この処理は、図7のステップS504に対応する処理である。まず、ジョブ毎に移動時間に関するデータが登録された移動時間集積テーブル60(図5参照)を読み込む(ステップS600)。次に読み込んだ移動時間集積テーブル60から、図11に示す処理によって移動時間基準値を算定する(ステップS601)。
【0104】
その後、移動時間積算テーブル70を開く(ステップS602)。このとき、移動時間積算テーブル70は初期状態であり、各項目は未登録となっている。ステップS601で読み込んだ移動時間集積テーブル60に登録されているジョブ毎のデータのうち、当該処理で未処理のジョブのデータが残っているか否かを調べる(ステップS603)。未処理のデータが残っている場合は(ステップS603;No)、その残っている未処理のデータの中の1つ(注目データとする)を取り出し、この注目データが、ステップS503で設定された集計対象期間内のデータであるか否かを調べる(ステップS604)。この注目データが集計対象期間のデータでなければ(ステップS604;No)処理を終了する。注目データが集計対象期間のデータであれば(ステップS604;Yes)、この注目データに含まれるユーザIDを読み込む(ステップS605)。そして、暫定ドア通過なし回数カウントを2回に設定し(ステップS606)、印刷物取得前後の移動パターンを調べる。
【0105】
注目データにおいて印刷物取得前にドア通過INの履歴があるか否かを調べる(ステップS607)。詳細には、注目データにドアA通過IN時刻またはドアB通過IN時刻の登録があれば、ドア通過INの履歴ありと判定する。ドアA通過IN時刻の登録もドアB通過IN時刻の登録も無ければ、ドア通過INの履歴なしと判定する。ドア通過INの履歴がない場合は(ステップS607;No)、ステップS615に進む。
【0106】
ドア通過INの履歴がある場合は(ステップS607;Yes)、その通過したドアがドアAか否かを調べる(ステップS608)。通過したドアがドアAならば(ステップS608;Yes)、ドアAから画像形成装置10間における移動時間(Y)の基準値(秒)を、移動時間積算テーブル70のうちの当該ユーザIDに対応する総移動時間(Y)73Aに加算する。そして当該総移動時間(Y)73Aの値および移動時間積算テーブル70内の関連する合計値を更新する(ステップS609)。その後、暫定ドア通過無し回数のカウントを1減らし(ステップS610)、ドアAの通過回数71Aを1増やし(ステップS611)ステップS615に進む。
【0107】
通過したドアがドアBならば(ステップS608;No)、ドアBから画像形成装置10間における移動時間(Z)の基準値を移動時間積算テーブル70のうちの当該ユーザIDに対応する総移動時間(Z)73Bに加算する。そして当該総移動時間(Z)73Bの値および移動時間積算テーブル70内の関連する合計値を更新する(ステップS612)。その後暫定ドア通過無し回数のカウントを1減らし(ステップS613)、ドアBの通過回数71Bを1増やし(ステップS614)ステップS615に進む。
【0108】
印刷物取得後にドア通過OUTの履歴があるか否かを調べる(ステップS615)。詳細には、注目データにドアA通過OUT時刻またはドアB通過OUT時刻の登録があれば、ドア通過OUTの履歴ありと判定する。ドアA通過OUT時刻の登録もドアB通過OUT時刻の登録も無ければ、ドア通過OUTの履歴なしと判定する。ドア通過OUTの履歴がない場合は(ステップS615;No)、ステップS623に進む。ドア通過OUTの履歴がある場合は(ステップS615;Yes)、その通過したドアがドアAか否かを調べる(ステップS616)。通過したドアがドアAならば(ステップS616;Yes)、ドアAと画像形成装置10間における移動時間(Y)の基準値を、移動時間積算テーブル70のうちの当該ユーザIDに対応する総移動時間(Y)73Aに加算する。そして当該総移動時間(Y)73Aの値および移動時間積算テーブル70内の関連する合計値を更新する(ステップS617)。その後、暫定ドア通過無し回数のカウントを1減らし(ステップS618)、ドアAの通過回数71Aを1増やし(ステップS619)ステップS623に進む。
【0109】
通過したドアがドアBならば(ステップS616;No)、ドアBと画像形成装置10間における移動時間(Z)の基準値を移動時間積算テーブル70のうちの当該ユーザIDに対応する総移動時間(Z)73Bに加算する。そして当該総移動時間(Z)73Bの値および移動時間積算テーブル70内の関連する合計値を更新する(ステップS620)。その後、暫定ドア通過無し回数のカウントを1減らし(ステップS621)、ドアBの通過回数71Bを1増やし(ステップS622)ステップS623に進む。
【0110】
この時点で残っている暫定ドア通過無し回数を、ドア通過無し回数71として正式に決定する。そして、そのカウント分だけ移動時間(X)の基準値(自席と画像形成装置10間における移動時間の基準値)を、移動時間積算テーブル70のうちの当該ユーザIDに対応する総移動時間(X)73に加算する。そして当該総移動時間(X)73の値および移動時間積算テーブル70内の関連する合計値を更新し(ステップS623)、ステップS603に戻って処理を継続する。ステップS600で読み込んだ移動時間集積テーブル60に登録されているすべてのジョブのデータについて処理が終了した場合は(ステップS603;Yes)、移動時間積算テーブル70を閉じて(ステップS625)処理を終了する。
【0111】
次に、画像形成装置10の設置場所を変更したときの総移動時間のシミュレートについて説明する。
【0112】
PC端末40は、移動時間積算テーブル70を使用して、画像形成装置10の設置場所を変更したときの移動時間積算テーブルをシミュレートして作成する。図18は、現状レイアウト80とシミュレート用の仮定レイアウト81を示している。現状レイアウト80は、現在室内に設置されている画像形成装置10と、ドアA、ドアB、そして各ユーザの席(PC端末40)の場所との位置関係を示している。
【0113】
仮定レイアウト81は、現状レイアウト80において、画像形成装置10の設置位置をシミュレート予定の場所に変更した仮定のレイアウトである。本例の現状のレイアウト80では、画像形成装置10からドアAまでの距離は20m、ドアBまでの距離は8mであるのに対して、仮定レイアウト81では画像形成装置10からドアAまでの距離は2m、ドアBまでの距離は30mになっている。
【0114】
図19は、PC端末40が移動時間積算テーブル70を使用して、画像形成装置10の設置場所を変更したときの移動時間積算テーブルをシミュレートする動作を示す流れ図である。まず、シミュレート用居室レイアウトを表示する(ステップS701)。次に、表示したシミュレート用居室レイアウト上に、現状の画像形成装置10と、ユーザごとの自席(PC端末40)、各ドア(ドアA、ドアB)に相当する位置を設定する(ステップS702)。その後、各設定された位置とシミュレート用居室レイアウトの縮尺とに基づいて、各区間の距離、すなわち、各ユーザの自席から画像形成装置10までの間の距離と、画像形成装置10と各ドア(ドアA、ドアB)間の距離とを算出する(ステップS703)。そして移動時間積算テーブル70を読み込み(ステップS704)、ステップS703で算出した距離と、その区間に対応する移動時間基準値により、ユーザの移動速度(秒速×m)を算定する(ステップS705)。詳細には、ユーザ毎かつ区間毎に、そのユーザのその区間における移動速度を算定する。
【0115】
次にシミュレート用居室レイアウト上で、画像形成装置10の仮定の設置位置(シミュレート用仮定設置位置)を設定する(ステップS706)。そして、全ユーザについて、それぞれのユーザの自席から該シミュレート用仮定設置位置までの間の距離を算出する。さらに該シミュレート用仮定設置位置からドアAまでの距離と、該シミュレート用仮定設置位置からドアBまでの距離も算出する(ステップS707)。その後、ステップS707で算出した距離と、ステップS705で算定したユーザの移動速度(秒速×m)とから、該シミュレート用仮定設置位置から各ドア(ドアA、ドアB)までの間のそれぞれの移動時間基準値を算出する(ステップS708)。詳細には、ユーザ毎かつ区間毎に、ステップS707で算出したその区間の距離を、ステップS705で算定したそのユーザのその区間における移動速度で除した値を算出する。その値をそのユーザ、その区間における移動時間基準値として、シミュレート時の移動時間積算テーブルを作成する(ステップS709)。最後にユーザID別の合計移動時間を算出する。そしてユーザ全体の総合計移動時間(総移動労力)を算出し(ステップS710)、シミュレート結果をPC端末40のディスプレイに表示して(ステップS711)動作を終了する。合計移動時間は該当ユーザの、総移動時間(X)+総移動時間(Y)+総移動時間(Z)である。
【0116】
図20は、現状レイアウトと仮定レイアウトの移動時間積算テーブルを上下に対比表示した表示例を示している。上側の移動時間積算テーブルは現状レイアウト80(図18参照)にて集計・作成した移動時間積算テーブル70Aである。下側の移動時間積算テーブルは仮定レイアウト81の配置でシミュレートした場合の仮定移動時間積算テーブル70Bである。移動時間積算テーブル70A、70Bは、図8の移動時間積算テーブル70と同一の構成である。
【0117】
図20の例では、現状レイアウト80上での移動時間積算テーブル70A内の総移動労力76は75500秒であり、仮想レイアウト81上での移動時間積算テーブル70B内の総移動労力76Bは55000秒であり、仮想レイアウト81の方が、総移動労力が減少している。よって仮定レイアウト81に対応する位置に画像形成装置10の設置位置を変更した方が、ユーザ全体の総移動労力が少なくなる。
【0118】
このように、本発明では、ユーザの印刷物の取得に関する移動パターンを、ユーザが印刷物を取得するまでだけではなく、印刷物を取得後の移動パターンについても考慮し、各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力としてユーザ毎に求める。これにより、各ユーザの移動パターンに合致した移動労力を計測することができ、複数のユーザに共用される印刷装置の設置場所に対して、利用実態に即した評価を行うことができる。
【0119】
また、移動パターンを、基点と、画像形成装置と、終点の3点にて規定するので、画像形成装置10の位置を変更した場合のシミュレートを、変更前の移動パターンそれぞれの発生回数に関するデータに基づいて、行うことができる。そして、そのシミュレートによって導出した移動労力により、変更された複数のユーザに共用される印刷装置の設置場所に対しても、利用実態に即した評価を行うことができる。
【0120】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0121】
移動時間の基準値の設定方法は、実施の形態に記載した方法に限らない。たとえば、移動時間が極端に長い異常値だけを省いて、残りから基準値をもとめてもよい。
【0122】
移動時間集積テーブルの作成は、画像形成装置内で行わなくてもよい。たとえば、画像形成装置や入退室管理システムなどと、ネットワークで接続された管理サーバが、情報を収集し行ってもよい。
【0123】
図7の処理は、汎用のPC端末で専用のソフトウェアを実行することにより行われているが、専用の端末装置がこの処理を行ってもよい。
【0124】
本発明の実施の形態では、移動労力をユーザが印刷物取得に係る移動パターンごとの移動時間として扱ったが、印刷物取得に係る移動パターンごとの移動距離としてもよい。たとえば、移動距離を移動労力として扱う場合、図21のような居室レイアウト41から算出した各ユーザの移動パターンごとの移動距離と、印刷物取得に係る各移動パターンの発生回数とを積和した値をユーザごとの移動労力としてもよい。このほか、GPS(Global Positioning System)でユーザの移動経路を記録し、移動パターン毎の移動距離を導出するようにしてもよい。
【0125】
また、移動労力は移動時間と移動距離の両方でもよい。移動時間と移動距離の両方を移動労力として扱う場合は、移動時間と移動距離に重み付けをして移動労力を求めることができる。例えば、移動時間と移動距離の両方を移動労力として扱う際に、移動時間を重視する場合、移動時間と移動距離の重要度の比重を2対1などの比率に設定して移動労力を求めることが可能となる。
【0126】
居室レイアウトから距離を算出する方法には、図21のように居室レイアウト41上のユーザや、画像形成装置10、ドアの位置をXY座標で表し、相互の距離を、2点を結ぶ直線距離として計算してもよい。また、実際の移動軌跡を追跡して距離を計算する、などでもよい。また、ユーザごとの席と画像形成装置10間や、画像形成装置10と各ドア間には、障害物があって直行できない場合があるので、その際は、ユーザが障害物を避けて通る最適な移動ルート(たとえば、障害物をよけた場合の最短経路)を算出し、その移動ルートにおける移動距離を使用するようにしてもよい。
【0127】
本発明の実施の形態ではドアの数はドアA、ドアBの2つであったがドアの数2つに限らない。単数の場合でも、3以上でもよい。
【0128】
本発明の実施形態では、特定箇所はドアであるとしたが、特定箇所はドアに限らない。たとえば書棚や、階段、印刷機以外の機器等、ある物体の付近でもよく、印刷物の取得に係る移動パターンの基点や終点などになり得る場所であればよい。特定箇所にユーザが到来したことを検知する方法は、入退室管理システム30などに限らず、公知の任意の方法でよい。
【0129】
印刷物の取得の検出は、排紙トレイから用紙が取り去れたことをセンサで検知し、その取り去ったユーザの特定を、たとえば、取り去られた時刻とユーザの移動軌跡と照合して取り去った時刻に画像形成装置の前に居たユーザをその印刷物を取得したユーザに特定する方法、あるいは、画像形成装置10の近くにいるユーザを検知するユーザ認証システムにて特定する方法で行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0130】
2…LAN
5…全体システム
10…画像形成装置(MFP)
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…不揮発メモリ
15…ハードディスク装置
16…表示部
17…操作部
19…ネットワークI/F部
20…スキャナ部
21…画像処理部
22…プリンタ部
23…ファクシミリ通信部
24…時刻管理部
30…入退出管理システム
32…カードリーダー
33…ドア通過履歴情報
40…PC端末
41…居室レイアウト
50…印刷指示機能
51…印刷ジョブ受領機能
52…ユーザ認証機能
53…印刷機能
54…移動時間集積機能
55…移動時間の積算及びシミュレート機能
56…表示機能
60…移動時間集積テーブル
61…ユーザID
62…印刷指示受領時刻
63…印刷終了時刻
64…ログイン時刻
65…ドアA通過OUT時刻
66…ドアB通過OUT時刻
67…ドアA通過IN時刻
68…ドアB通過IN時刻
69…移動時間(X)
69A…移動時間(Y)
69B…移動時間(Z)
70…移動時間積算テーブル
70A…現状の配置位置での移動時間積算テーブル
70B…シミュレート移動時間積算テーブル
71…ドア通過無し回数
71A…ドアA通過回数
71B…ドアB通過回数
72…移動距離X
73…総移動時間(X)
73A…総移動時間(Y)
73B…総移動時間(Z)
74…移動時間(X)基準値
74A…移動時間(Y)基準値
74B…移動時間(Z)基準値
75…合計移動時間
76…総移動労力
76B…シミュレート結果の総移動労力
80…現状レイアウト
81…仮定レイアウト
90…グラフ
91…基準線
92…基準値算定テーブル
93…所定時間テーブル
93A…ドアA通過所定時間
93B…ドアB通過所定時間
X…ユーザの自席から画像形成装置までの区間
Y、Z…画像形成装置からドアまでの区間
A、B…ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の印刷装置が受領した印刷指示毎に、その印刷指示を出したユーザの前記印刷指示に係る印刷物の取得に関する移動状況の計測結果から移動パターンを判別し、
ユーザ別に、集計対象期間における前記各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力として求める
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記判別では、少なくとも、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動する第1移動パターンと、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動して印刷物を取得した後に特定箇所へ移動する第2移動パターンを判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記印刷装置の配置を変更した場合における各移動パターンでの移動労力を取得し、該取得した移動労力を使用して前記積和を求めることで、印刷装置の配置を変更した場合の総移動労力をシミュレートする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザから出力操作を受けて印刷を開始し、
ユーザの出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と前記特定箇所に前記ユーザが到達した時刻との差分が予め定めた基準時間内の場合に、前記印刷指示に係る前記ユーザの移動パターンは前記第2移動パターンであると判別する
ことを特徴とする請求項2または3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記移動労力は、移動時間または移動距離、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせ、である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記移動労力は、移動時間、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせで表し、
ユーザの座席から前記印刷装置までの移動時間は、前記ユーザが印刷指示を出した時刻と、その後に前記ユーザが前記印刷装置でユーザ認証した時刻との差分に基づいて導出し、前記印刷装置から前記特定箇所までの移動時間は、前記ユーザが出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と、その後に前記ユーザが前記特定箇所に到達したことが検出された時刻との差分に基づいて導出する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定箇所には、出入口を含む
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザ認証されたことを条件に印刷を開始し、
印刷完了により、前記ユーザ認証されたユーザが印刷物を取得したことを検出する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置を、
所定の印刷装置が受領した印刷指示毎に、その印刷指示を出したユーザの前記印刷指示に係る印刷物の取得に関する移動パターンを判別し、
ユーザ別に、集計対象期間における前記各移動パターンの発生回数とその移動パターンで移動した場合の移動労力との積和を、そのユーザの総移動労力として求める
ように動作させる
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項10】
前記情報処理装置を、
前記判別において、少なくとも、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動する第1移動パターンと、ユーザの座席から前記印刷装置へ移動して印刷物を取得した後に特定箇所へ移動する第2移動パターンを判別するように動作させる
ことを特徴とする請求項9に記載の情報処理プログラム。
【請求項11】
前記情報処理装置をさらに、
前記印刷装置の配置を変更した場合における各移動パターンでの移動労力を取得し、該取得した移動労力を使用して前記積和を求めることで、印刷装置の配置を変更した場合の総移動労力をシミュレートするように動作させる
ことを特徴とする請求項9または10に記載の情報処理プログラム。
【請求項12】
前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザから出力操作を受けて印刷を開始するものであり、
前記判別において、前記情報処理装置を、
ユーザの出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と前記特定箇所に前記ユーザが到達した時刻との差分が予め定めた基準時間内の場合に、前記印刷指示に係る前記ユーザの移動パターンは前記第2移動パターンであると判別するように動作させる
ことを特徴とする請求項10または11に記載の情報処理プログラム。
【請求項13】
前記移動労力は、移動時間または移動距離、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせ、である
ことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【請求項14】
前記情報処理装置を、
前記移動労力は、移動時間、もしくは移動時間と移動距離の組み合わせで表し、
ユーザの座席から前記印刷装置までの移動時間は、前記ユーザが印刷指示を出した時刻と、その後に前記ユーザが前記印刷装置でユーザ認証した時刻との差分に基づいて導出し、前記印刷装置から前記特定箇所までの移動時間は、前記ユーザが出した印刷指示に係る印刷物の印刷完了時刻と、その後に前記ユーザが前記特定箇所に到達したことが検出された時刻との差分に基づいて導出する
ように動作させる
ことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【請求項15】
前記特定箇所には、出入口を含む
ことを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。
【請求項16】
前記印刷装置は、当該印刷装置にてユーザ認証されたことを条件に印刷を開始するものであり、
前記情報処理装置を、
印刷完了により、前記ユーザ認証されたユーザが印刷物を取得したことを検出するように動作させる
ことを特徴とする請求項9乃至15のいずれか1つに記載の情報処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−234478(P2012−234478A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104321(P2011−104321)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】