説明

情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システム

【課題】、複数のユーザが効率よく観察対象物を観察することができる情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムを提供すること。
【解決手段】
PC5に接続される複数のコントローラ4のうち1つが操作コントローラ10として設定され、その他のコントローラ4が位置コントローラ15として設定される。そして操作コントローラ10からの操作情報に基づく共有画像2に対する処理の実行は有効とされ、位置コントローラ15からの操作情報に基づく共有画像2に対する処理の実行は無効とされる。これにより例えば複数のユーザ1が同時に共有画像2を移動等させることで、共有画面6に表示される共有画像2がどの表示範囲Dを表す画像であるか分からなくなるといったこと等を防止することができる。この結果、複数のユーザ1は効率よく観察対象物25を観察することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、病理、生物、材料等の分野において顕微鏡により得られた画像の表示を制御する情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療または病理等の分野において、光学顕微鏡により得られた、生体の細胞、組織、臓器等の画像をデジタル化し、そのデジタル画像に基づき、医師や病理学者等がその組織等を検査したり、患者を診断したりするシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の方法では、顕微鏡により光学的に得られた画像が、CCD(Charge Coupled Device)を搭載したビデオカメラによりデジタル化され、そのデジタル信号が制御コンピュータシステムに入力され、モニタに可視化される。病理学者はモニタに表示された画像を見て検査等を行う(例えば、特許文献1の段落[0027]、[0028]、図5参照)。
【0004】
上記した病理医の検査等に用いられる観察対象物の画像(以後、病理画像という)は、40×30(Kpixel:キロピクセル)程度のサイズであることが多い。このような巨大なサイズの画像から一部が選択され、1920×1080(pixel)程度のモニタ画面に表示される。病理医はマウス等の入力デバイスを用いて、モニタ画面に表示される表示領域を移動または拡大縮小させながら、病理画像の全体を観察する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−37250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の病理医が1つのモニタ画面を共有し、1つの病理画像に対して議論をしながら、病理画像の診断や検証を行うことも多い。複数の病理医にはそれぞれ入力デバイスが用意され、各病理医によりモニタ画面に表示される領域の移動や拡大縮小が行われる。このような所謂コンファレンスとよばれる形態の診断等が行われる場合、各病理医が各自の判断で自由に表示領域を移動等させると、共有するモニタ画面に表示される領域が巨大な病理画像のどの部位であるか等の認識が難しくなることがある。そうすると、複数の病理医による診断等の効率や精度が低下し、誤診等に繋がる可能性もある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、複数のユーザが効率よく観察対象物を観察することができる情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る情報処理装置は、接続部と、処理実行部と、設定部と、制御部とを具備する。
前記接続部は、画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力する複数の入力装置を接続することが可能である。
前記処理実行部は、前記画面に表示される前記画像に対して前記操作情報に応じた処理を実行することが可能である。
前記設定部は、前記接続部により接続された前記複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定する。
前記制御部は、前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記処理実行部による前記画像に対する処理の実行を有効とし、前記副入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記処理実行部による前記画像に対する処理の実行を無効とするように制御する。
【0009】
この情報処理装置では、接続される複数の入力装置のうち1つが主入力装置として設定され、その他の入力装置が副入力装置として設定される。そして主入力装置からの操作情報に基づく画像に対する処理の実行は有効とされ、副入力装置からの操作情報に基づく画像に対する処理の実行は無効とされる。従って複数のユーザが同時に画像を操作することで、画面に表示される画像の把握が困難になることを防止することができる。これにより複数のユーザは効率よく観察対象物を観察することができる。
【0010】
前記情報処理装置は、前記画面上で前記各入力装置によりそれぞれ指定された位置を示す複数のポインタを、前記各入力装置との対応関係をそれぞれ識別可能に表示するポインタ表示手段をさらに具備してもよい。これにより副入力装置を用いるユーザは、画面上のポインタを移動させながら画像の所定の位置を指し示すことができる。
【0011】
前記設定部は、前記副入力装置として設定された前記入力装置から入力される第1の設定変更要求に基づいて、当該入力装置を前記主入力装置とするように設定を変更してもよい。これにより複数の入力装置に対する主入力装置及び副入力装置の設定が適宜変更されるので、複数のユーザにより効率よく観察対象物が観察される。
【0012】
前記画像に対する操作は、前記画面より解像度が大きな画像データの、前記画面での前記画像データの表示位置の変更の操作であってもよい。
この場合、前記情報処理装置は、前記画像データの表示位置の情報を記憶する記憶部をさらに具備してもよい。
また、前記制御部は、前記設定部によりいずれかの前記入力装置が前記主入力装置から前記副入力装置へと設定が変更されるとき、変更前に前記画面に表示されていた前記画像データの表示位置の情報を前記記憶部に記憶し、次に当該入力装置が前記主入力装置として設定されたとき、前記記憶部に記憶された前記画像データの表示位置の情報をもとに前記変更前の画像データの表示を復元してもよい。
【0013】
この情報処理装置では、過去に主入力装置から副入力装置に設定が変更された入力装置が再び主入力装置として設定されるときに、その入力装置が過去に主入力装置として操作していた画像を画面に表示することが可能となる。これにより複数のユーザは効率よく観察対象物を観察することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る情報処理方法は、設定部が、画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力するために接続部に接続された複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定することを含む。
制御部により、前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記画像に対する処理の実行が排他的に有効にされる。
処理実行部により、前記操作情報に基づく前記画像に対する処理が実行される。
【0015】
本発明の一形態に係るプログラムは、コンピュータを、接続部と、処理実行部と、設定部と、制御部として動作させる。
前記接続部は、画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力する複数の入力装置を接続することが可能である。
前記処理実行部は、前記画面に表示される前記画像に対して前記操作情報に応じた処理を実行することが可能である。
前記設定部は、前記接続部により接続された前記複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定する。
前記制御部は、前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記処理実行部による前記画像に対する処理の実行を排他的に有効とするように制御する。
前記プログラムが記録媒体に記録されていてもよい。
【0016】
本発明の一形態に係る情報処理システムは、複数の入力装置と、設定部と、表示部と、処理実行部と、制御部とを具備する。
前記複数の入力装置は、画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力する。
前記設定部は、前記複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定する。
前記表示部は、前記画面として共有画面と前記入力装置ごとの個別画面とを表示する。
前記共有画面には、前記主入力装置として設定された前記入力装置を用いたユーザにとっての操作対象である画像と前記複数の入力装置がそれぞれ指定する位置を示す複数のポインタとが表示される。
前記個別画面には、前記副入力装置として設定された前記入力装置を用いたユーザにとっての操作対象である画像と当該入力装置が指定するポインタとが表示される。
前記処理実行部は、前記共有画面及び前記各個別画面にそれぞれ表示される前記画像に対して前記操作情報に応じた処理を実行することが可能である。
前記制御部は、前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記共有画面に表示された画像に対する前記処理実行部による処理の実行を排他的に有効とするように制御する。
【0017】
この情報処理システムでは、表示部により入力装置ごとの個別画面が表示される。この個別画面に表示される画像に対しては、各ユーザが用いる入力装置が主入力装置として設定されているか、あるいは副入力装置として設定されているかにかかわらず、操作情報に応じた処理の実行が有効である。これにより各ユーザは、使用する入力装置が副入力装置として設定されている間も、個別画面に表示される画像を十分に観察することができる。
【0018】
前記設定部は、前記副入力装置として設定された前記入力装置から入力される第1の設定変更要求に基づいて、当該入力装置を前記主入力装置とするように設定を変更してもよい。
【0019】
前記制御部は、前記設定部により前記入力装置からの前記第1の設定変更要求に基づいて当該入力装置が前記副入力装置から前記主入力装置へと変更されるとき、変更前に前記個別画面に表示されていた前記画像を前記共有画面の画像として表示させてもよい。
【0020】
この情報処理システムでは、副入力装置として設定された入力装置が主入力装置として設定されるときに、その入力装置に対応する個別画面に表示されていた画像が共有画面に表示される。これにより主入力装置として設定された入力装置を使用するユーザは、個別画面に表示されていた画像を、共有画面上で操作しながら自分の意見を述べることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、複数のユーザが効率よく観察対象物を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す模式的な図である。
【図2】第1の実施形態に係る情報処理装置としてのPCの構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すPCによる共有画像の表示原理を説明するための画像ピラミッド構造を示す図である。
【図4】図3に示す画像ピラミッド構造の画像群が生成されるときの手順を説明するための図である。
【図5】操作コントローラ及び位置コントローラの設定状況を示すルックアップテーブル(設定テーブル)を示す図である。
【図6】複数のコントローラから共有画像に対する操作を実行するための操作情報が出力されたときのPCの動作を示すフローチャートである。
【図7】複数のコントローラのなかで操作権が移動する際の、PCの動作を示すフローチャートである。
【図8】一のコントローラから他のコントローラへ操作権が移動した際の共有画面を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係るPCによる操作ポインタ及び位置ポインタの表示について説明するための図である。
【図10】図9に示す共有画面から位置ポインタが消去される場合の、PCの処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】消去された位置ポインタが再び共有画面に表示される場合の、PCの処理の一例を示すフローチャートである。
【図12】第3の実施形態に係る情報処理システムを説明するための図である。
【図13】図12に示す、複数のポインタの各色の設定に用いられる設定テーブルの一例を示す図である。
【図14】第4の実施形態に係る操作権の移動について説明するための図である。
【図15】第5の実施形態に係る共有画面に表示された各ポインタを示す図である。
【図16】第6の実施形態に係る情報処理装置(PC)の動作を説明するための図である。
【図17】第6の実施形態に係る情報処理装置(PC)の動作を説明するための図である。
【図18】図16及び図17で説明するPCによる処理のために用いられる設定テーブルを示す図である。
【図19】第7の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す模式的な図である。
【図20】第7の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図21】第7の実施形態の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す模式的な図である。
【0025】
情報処理システム100は、複数のユーザ1が共有して見るための画像2を表示する表示装置3と、各ユーザ1により用いられる入力装置であるコントローラ4と、上記表示装置3及び複数のコントローラ4と無線又は有線で接続される情報処理装置とを含む。
【0026】
[情報処理装置の構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理装置としてのPC(Personal Computer)5の構成を示すブロック図である。情報処理装置として、PC5の代わりにオーディオ/ビジュアル機器やプロジェクト等が用いられてもよい。
【0027】
PC5は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、入出力インタフェース55、及び、これらを互いに接続するバス54を備える。
【0028】
入出力インタフェース55には、上記した表示装置3及び複数のコントローラ4が接続される。また、入出力インタフェース55には、記憶部58、通信部59、ドライブ部60等が接続される。
【0029】
記憶部58は、不揮発性の記憶デバイスであり、例えばHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、その他の固体メモリである。
【0030】
ドライブ部60は、例えば光学記録媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気記録テープ、フラッシュメモリ等、リムーバブルの記録媒体61を駆動することが可能なデバイスである。これに対し上記記憶部58は、主にリムーバブルでない記録媒体を駆動する、PC5に予め搭載されたデバイスとして使用される場合が多い。
【0031】
通信部59は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等に接続可能な、他のデバイスと通信するためのモデム、ルータ、その他の通信機器である。通信部59は、有線及び無線のどちらを利用して通信するものであってもよい。通信部59は、PC5とは別体で使用される場合が多い。
【0032】
表示装置3は、例えば液晶、EL(Electro-Luminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)等が用いられた画面6を有する。本実施形態では、光学顕微鏡により得られた観察対象物の画像が画面6に表示される。画像2は、PC5の記憶部58に記憶されており、以下に示す表示原理に基づいて表示される。
【0033】
図3は、PC5による画像2の表示原理を説明するための画像ピラミッド構造を示す図である。
【0034】
本実施形態における画像ピラミッド構造20は、光学顕微鏡により同じ1つの観察対象物25(図4参照)から得られる同一の画像について、異なる複数の解像度により生成された画像群(全体画像群)である。画像ピラミッド構造20の最下には、最も大きいサイズの画像が配置され、最上には最も小さいサイズの画像が配置される。最も大きいサイズの画像の解像度は、例えば40×30(Kpixel:キロピクセル)、あるいは50×50(Kpixel:キロピクセル)である。最も小さいサイズの画像は、例えば256×256(pixel)、あるいは、256×512(pixel)である。
【0035】
つまり、同じ画面6により、これらの画像が例えば100%でそれぞれ表示(それらの画像のピクセル数と同じ物理的なドット数でそれぞれ表示)されると、最も大きいサイズの画像が最も大きく表示され、最も小さいサイズの画像が最も小さく表示される。ここで、図3では、その画面6に表示される表示範囲をDとして示している。本実施形態では、表示範囲のサイズは、画面6が有するドット数に相当し、例えば1920×1080(pixel)である。
【0036】
図4は、この画像ピラミッド構造20の画像群を生成するときの手順を説明するための図である。
【0037】
まず、図示しない光学顕微鏡により所定の観察倍率で得られた元画像のデジタル画像が用意される。この元画像が、図3で示した画像ピラミッド構造20の最下の画像である最も大きいサイズの画像に相当し、つまり最も高い解像度の画像となる。したがって、画像ピラミッド構造20の最下の画像としては、比較的高倍率で観察されて得られる光学顕微鏡の画像が用いられる。
【0038】
なお、病理の分野一般においては、生体の臓器、組織、細胞、またはこれらの一部から、薄く切り取られたものが観察対象物25となる。そして、光学顕微鏡の機能を有する図示しないスキャナ装置により、ガラススライドに収められた観察対象物25が読み取られ、これにより得られたデジタル画像が、そのスキャナ装置またはその他の記憶装置に記憶される。
【0039】
このスキャナ装置または図示しない汎用コンピュータは、図4に示すように、上記のように得られた最も大きいサイズの画像から、段階的に解像度を小さくした複数の画像を生成し、これらを例えば所定サイズの単位である「タイル」単位で記憶する。1タイルのサイズは、例えば256×256(pixel)である。このように生成された画像群が画像ピラミッド構造20を形成し、この画像ピラミッド構造20がPC5の記憶部58に記憶される。実際には、PC5はそれら異なる複数の解像度の画像と、解像度の情報とをそれぞれ対応付けて記憶すればよい。なお、画像ピラミッド構造20の生成及びその記憶は、図2に示したPC5が実行してもよい。
【0040】
これらの画像ピラミッド構造20を形成する全体画像群は、公知の圧縮方法により生成されてもよいし、例えばサムネイル画像を生成するときの公知の圧縮方法により生成されてもよい。
【0041】
PC5は、この画像ピラミッド構造20のシステムを採用するソフトウェアを用い、ユーザの用いるコントローラ4を介した入力操作に応じて、画像ピラミッド構造20から所望の画像を抽出し、これを共有画面6に出力する。具体的には、PC5は、ユーザにより選択された任意の解像度の画像のうちの、ユーザにより選択された任意の部位の画像を表示する。このような処理により、ユーザは、観察倍率を変えながら観察対象物25を観察しているような感覚を得ることができる。すなわち、PC5は仮想顕微鏡として機能する。ここでの仮想的な観察倍率は、実際には解像度に相当する。
【0042】
また図1に示すように、画面6には、アイコン7やポインタ8等のGUI(Graphical User Interface)が表示される。アイコンとは、CPU51により実行されるプログラムの機能、実行コマンド、またはファイルの内容等が画面6上で画像化されたものである。ポインタ8(いわゆるカーソル)は、入力装置を使ってユーザが指定した画面6上の位置を示すオブジェクトである。
【0043】
本実施形態では、1つのPC5による画像処理系および画像表示系のリソースを複数のユーザで共有するために複数のコントローラ4がPC5に接続される。それぞれのコントローラ4で指定された画面6上の位置には、それぞれのコントローラ4に対応する複数のポインタ8が同時に表示される。すなわち、複数のユーザが1つの画像上で所定の部位をポインタ8で指定しつつ、各々の意見を述べることができる環境がここにある。
【0044】
図1の例では、4つのコントローラ4a〜4dに対応する4つのポインタ8a〜8dが画面6に表示される。各ポインタ8は、他のポインタと識別可能なように、例えば赤、青、黄、緑等の色により区別されて表示されてもよい。以後、このように複数のコントローラ4に対応する複数のポインタ8が同時に表示され、複数のユーザ1によって用いられる画面であるということから、この画面6を「共有画面6」と呼ぶこととする。また「共有画面6」に表示される画像2を「共有画像2」と呼ぶこととする。
【0045】
コントローラ4は、十字キー41と、決定ボタン42と、LRボタン43と、選択ボタン44とを有し、各ユーザ1からの操作入力をPC5に供給する。十字キー41は、主に上記ポインタ8の移動及び共有画面6に表示される共有画像2の移動に用いられる。決定ボタン42は、コマンドの決定に用いられる。例えば十字キー41を用いてポインタ8をアイコン7上に移動させ、決定ボタン42を押すと所定のコマンドが実行される。LRボタン43は、共有画像2の拡大縮小に用いられる。選択ボタン44は、後述する操作権の移動に用いられる。
【0046】
コントローラ4の形状や、各種ボタンの位置、役割等は適宜設定されてよい。また、コントローラ4に代えて、マウス等のポインティングデバイスやタッチパネル、キーボード等が用いられてもよい。
【0047】
[情報処理装置の動作]
本実施形態に係る情報処理装置である、PC5の動作を説明する。以下のPC5の処理は、記憶部58またはROM52等に記憶されたソフトウェアと、PC5のハードウェア資源との協働により実現される。具体的には、CPU51が記憶部58またはROM52等に記憶された、ソフトウェアを構成するプログラムをRAM53にロードして実行することにより、以下の処理が実現される。
【0048】
まず、PC5に接続される複数のコントローラ4のうちいずれか1つのコントローラが、主入力装置として設定される(以後このコントローラ4を操作コントローラ10という)。また主入力装置として設定された操作コントローラ10をのぞく他のコントローラ4が、副入力装置として設定される(以後、これらのコントローラ4を位置コントローラ15という)。
【0049】
操作コントローラ10及び位置コントローラ15の設定は、例えばPC5に最も早く接続されたコントローラ4が操作コントローラ10として設定される等、PC5に各コントローラ4が接続された順番により設定されてもよい。あるいは、例えばPC5にコントローラ接続用のジャックが複数設けられている場合、所定のジャックに差し込まれたコントローラ4が操作コントローラ10として設定されてもよい。または、複数のユーザ1の各コントローラ4を介した入力により、操作コントローラ10及び位置コントローラ15が設定されてもよい。
【0050】
図5は、操作コントローラ10及び位置コントローラ15の設定状況を保持するルックアップテーブル(設定テーブル)を示す図である。この設定テーブルは、コントローラのID(Identification)及び操作権フラグで構成される。ここでは図1に示す各コントローラ4a〜4dのIDが1〜4であるとしている。すなわち、操作権フラグが立っているコントローラ4a(ID=1)が操作コントローラ10として設定されている。設定テーブルは、PC5の記憶部58等に記憶される。
【0051】
以後、操作コントローラ10により移動が制御されるポインタ8を操作ポインタ11と記載し、位置コントローラ15により移動が制御されるポインタ8を位置ポインタ16と記載する。
【0052】
本実施形態では、図1に示すように、操作コントローラ10(コントローラ4a)により移動が制御される操作ポインタ11(8a)は、白色の矢印で表示される。また3つの位置コントローラ15(4b〜4d)により移動が制御される3つの位置ポインタ16(8b〜8d)は、それぞれが識別可能なように異なる色で表示される。また、操作ポインタ11と位置ポインタ16とは、その形状が異なるように表示される。これにより、4つのポインタ8のうちどれが操作ポインタ11であり、どれが位置ポインタ16であるかを各ユーザ1が容易に認識することができる。操作ポインタ11と位置ポインタ16の認識を可能とするための表示方法は適宜設定されてよい。
【0053】
次に、複数のコントローラ4から共有画像2に対する操作を実行するための操作情報が出力されたときのPC5の動作を説明する。図6は、その動作を示すフローチャートである。
【0054】
共有画像2に対する操作としては、観察対象物25の表示範囲Dを移動させる動作、すなわち共有画面6に表示される共有画像2を移動させる操作、共有画像2を拡大又は縮小させる操作等である。なお、本実施形態では、共有画像2に対する操作の他に、各ポインタ8の移動を制御する操作や、アイコン7をクリックして所定のコマンドを実行させる操作等が実行される。
【0055】
まず、操作情報を出力したコントローラ4が操作コントローラ10であるか位置コントローラ15であるかが判定される(ステップ101)。この判定は上記した設定テーブルに基づいて行われる。しかしながら、例えば各コントローラ4が接続されている接続用のジャックの位置等に基づいて、操作コントローラ10及び位置コントローラ15の判定が行われてもよい。このような場合、上記設定テーブルが作成されなくてもよい。
【0056】
操作情報を出力したコントローラ4が操作コントローラであると判定された場合(ステップ101のYes)、出力された操作情報に対応する操作がPC5により実行される(ステップ102)。
【0057】
操作情報を出力したコントローラ4が操作コントローラ10でないと判定された場合(ステップ101のNo)、そのコントローラ4により出力された操作情報が、ポインタ8の移動を制御する操作に対応する操作情報(以後、位置指示情報という)であるか否かが判定される(ステップ103)。このステップ103は、位置コントローラ15により操作情報が出力された場合に処理されるステップである。
【0058】
位置コントローラ15により出力された操作情報が、位置指示情報であると判定された場合(ステップ103のYes)、PC5によりポインタの移動を制御する操作が実行される(ステップ102)。
【0059】
位置コントローラ15により出力された操作情報が、位置指示情報ではないと判定された場合(ステップ103のNo)、PC5は、出力された操作情報に対応する操作の実行を無効化する(ステップ104)。ここでいう「操作の実行を無効化する」という処理は、位置コントローラ15により出力された操作情報に対応する操作がPC5により認識され、その操作の実行がPC5により無効化されるという処理でもよい。あるいは、位置コントローラ15から出力される操作情報のうち位置指示情報以外の操作情報は、PC5により、その操作情報の内容が認識される前に無効な情報として処理されてもよい。
【0060】
このように本実施形態に係る情報処理装置であるPC5では、PC5に接続される複数のコントローラ4のうち1つが操作コントローラ10として設定され、その他のコントローラ4が位置コントローラ15として設定される。そして操作コントローラ10からの操作情報に基づく共有画像2に対する処理の実行は有効とされ、位置コントローラ15からの操作情報に基づく共有画像2に対する処理の実行は無効とされる。すなわちPC5により、操作コントローラ10からの操作情報に基づく共有画像2に対する処理の実行が排他的に有効とされる。これにより例えば複数のユーザ1が同時に共有画像2を移動等させることで、共有画面6に表示される共有画像2がどの表示範囲Dを表す画像であるか分からなくなるといったこと等を防止することができる。この結果、複数のユーザ1は効率よく観察対象物25を観察することができる。
【0061】
上記で説明したように、本実施形態では、位置コントローラ15からの位置指示情報に基づいて位置ポインタ16の移動が制御される。これにより位置コントローラ15を使用するユーザ1は、共有画面6上のポインタ8を移動させながら共有画像2の所定の位置を指し示すことができる。
【0062】
例えば複数の病理医により、上記情報処理システム100を用いて、コンファレンス形式の診断等が行われる場合、操作コントローラ10を使用する病理医により共有画面に表示される病理画像の移動や拡大縮小が行われる。位置コントローラ15を用いる病理医は、位置ポインタ16を移動させながら病理画像の所定の位置を指し示し、自分の意見を述べることができる。
【0063】
次に、複数のコントローラ4に対する操作コントローラ10及び位置コントローラ15の設定の変更について説明する。上記したように操作コントローラ10から出力された操作情報に対応する操作については、無効とされることなくPC5により実行される。以後、この操作コントローラ10が有する権限を「操作権」と記載する。また以下に示す説明では、図1に示すコントローラ4aからコントローラ4bに操作権が移動する場合を例に挙げて、操作コントローラ10及び位置コントローラ15の設定の変更を説明する。
【0064】
図7は、複数のコントローラ4のなかで操作権が移動する際の、PC5の動作を示すフローチャートである。
【0065】
ユーザ1により位置コントローラ15(4b)の選択ボタン44が押されて、位置コントローラ15(4b)から第1の設定変更要求がPC5に出力される(ステップ111)。第1の設定変更要求を受信したPC5は、第1の設定変更要求を出力した位置コントローラ15(4b)を操作コントローラ10として設定する。また、第1の設定変更要求が出力されたときに操作コントローラ10として設定されていたコントローラ4aを位置コントローラ15として設定する(ステップ112)。そして図5で示す設定テーブルの操作権フラグを変更する。これにより、コントローラ4aからコントローラ4bへ操作権が移動する。
【0066】
図8は、コントローラ4aからコントローラ4bへ操作権が移動した際の共有画面6を示す図である。図1と比べてみると、操作コントローラ10として設定されたコントローラ4bに対応するポインタ8bが、操作ポインタ11として表示されている。また、操作権を奪われて位置コントローラ15として設定されたコントローラ4aに対応するポインタ8aが、位置ポインタ16として表示されている。
【0067】
図8に示すように、操作ポインタ11には設定変更マーク12が付けられている。設定変更マーク12は、識別可能に表示されていた3つのポインタ8b〜8dの情報を示すものである。例えば図1に示すポインタ8b(位置ポインタ16)が青色の矢印で表示されていた場合、そのポインタ8bが操作ポインタ11に変更されたときに、設定変更マーク12として青色の円形状を有するマークが付けられる。これにより、いずれの位置ポインタ16が操作ポインタ11に変更されたのか、すなわち、いずれのユーザ1のコントローラ4に操作権が移動したのかを、複数のユーザ1が直感的に把握することができる。
【0068】
このようにPC5では、位置コントローラ15から第1の設定変更要求が出力されることで、複数のコントローラ4に対する操作コントローラ10及び位置コントローラ15の設定が変更可能となる。これにより複数のユーザ1により効率よく観察対象物25が観察される。例えば、位置コントローラ15を用いる病理医が、自分の意見を述べるときに、選択ボタン44を押して操作権を自分のコントローラ4に移動させる。これにより共有画像2を移動等させながら、自分の意見を詳細に発表することができる。この結果、複数の病理医による診断等の効率や精度が向上し、誤診等を十分に防止することができる。
【0069】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る情報処理装置としてのPCについて説明する。これ以降の説明では、第1の実施形態で説明した情報処理システム100に用いられる各種の装置やその装置の処理等と同様なものについては、その説明を省略又は簡略化する。
【0070】
図9は、本実施形態に係るPCによる操作ポインタ211及び位置ポインタ216の表示について説明するための図である。図9に示すように、本実施形態では、ユーザにより一定時間操作が行われない位置コントローラに対応する位置ポインタ216が、共有画面6から消去される。これにより、共有画面6上の共有画像2を複数のユーザで観察する際に、操作されない位置ポインタ216が邪魔になることがない。なお、図9では、3つの位置ポインタ216が全て消去されているが、位置ポインタ216ごとに以下で示す処理が行われる。
【0071】
図10は、PCにより位置ポインタ216が消去される処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係るPCでは、定期的にカウンターを増分し、一定値を越えるとタイムアップ情報を出力するウォッチドッグタイマを機能として有する(ステップ201)。CPUは、タイムアップ情報が出力される前に、定期的にウォッチドックタイマのカウンターをクリアする。
【0072】
ウォッチドッグタイマがカウンターを増分するごとに、予め設定されていたタイマ値がデクリメントされる。(ステップ202)。このタイマ値により、位置ポインタ216が消去されるための条件となる、位置ポインタ216が操作されない時間の長さが設定される。タイマ値は、ウォッチドッグタイマのカウントの間隔の長さに基づいて定められればよい。
【0073】
位置ポインタ216が操作されない状態で、位置ポインタ216が消去される条件として設定された時間が経過したか否かが判定される(ステップ203)。ステップ202にてタイマ値がデクリメントされた結果、タイマ値が0になった場合、設定時間が経過したと判定される。タイマ値が0とならない場合、未だ設定時間が経過していないと判定される。
【0074】
未だ設定時間が経過していないと判定された場合(ステップ203のNo)、CPUによりウォッチドッグタイマのカウンターがクリアされ、再びウォッチドッグタイマのカウントに基づいて同様の処理が行われる。設定時間が経過したと判定された場合(ステップ203のYes)、共有画面6から位置ポインタ216が消去され、ウォッチドッグタイマのカウンターがクリアされる(ステップ204)。
【0075】
図11は、消去された位置ポインタ216が再び共有画面6に表示される場合の、PCの処理の一例を示すフローチャートである。ステップ211に示すように、PCにより本実施形態に係る入力デバイスである各コントローラが監視される。PCによる各コントローラの監視は、他の処理のために行われる工程を利用してもよい。
【0076】
監視対象のコントローラにより操作されるポインタが位置ポインタ216であるか否かが判定される(ステップ212)。監視対象のコントローラにより操作されるポインタが位置ポインタ216でないと判定された場合(ステップ212のNo)、ポインタ消去の処理は行われない。位置ポインタ216でない操作ポインタ211は、操作権を有する操作コントローラにより制御され、操作ポインタ211が制御されることで共有画像2に対する各種の操作がPCにより実行される。従って、操作ポインタ211は消去されなくてもよい。
【0077】
監視対象のコントローラにより操作されるポインタが位置ポインタ216であると判定された場合(ステップ212のYes)、その位置ポインタ216が位置コントローラを介して操作されたか否かが判定される(ステップ213)。位置ポインタ216が操作されていないと判定された場合(ステップ213のNo)、ステップ211の各コントローラの監視に戻る。
【0078】
位置ポインタ216が操作されたと判定された場合、(ステップ213のYes)、現在、位置ポインタ216が共有画面6に表示されているか否かが判定される(ステップ214)。位置ポインタ216が共有画面6に表示されていると判定された場合(ステップ214のYes)、図10に示すステップ202で説明したタイマ値が設定される(ステップ215)。位置ポインタ216が共有画面6に表示されていない場合(ステップ214のNo)、共有画面6に位置ポインタ216が表示され(ステップ216)、タイマ値が設定される。
【0079】
ステップ216において、位置ポインタ216を再び表示させる場合には、前に位置ポインタ216が消去された共有画面6上の位置を記憶しておき、その位置から位置ポインタ216を再表示させてもよい。あるいは、共有画面6の中央等所定の位置から位置ポインタ216を再表示させてもよいし、現在表示中の操作ポインタ211と同じ位置から表示させてもよい。この場合、位置ポインタ216の非表示期間が長かった場合には、どこにその位置ポインタ216があったかをユーザが忘れてしまうため、現在表示されている操作ポインタ211の位置から再表示させることは有効である。
【0080】
<第3の実施形態>
図12は、本発明の第3の実施形態に係る情報処理システムを説明するための図である。本実施形態の情報処理システム300では、各コントローラ304(304a〜304d)の色と、各コントローラ304に対応する各ポインタ308(308a〜308d)の色とが同じ色になるように設定されている。これにより、いずれのユーザが各ポインタ308を操作しているのかを容易に認識することができ、観察対象物を効率よく観察することができる。なお、操作権を有する操作コントローラにより移動が制御される操作ポインタ311は、白色の矢印で表示されている。
【0081】
図13は、ポインタ308a〜308dの各色の設定に用いられる設定テーブルの一例を示す図である。このように、各コントローラ304のIDと、各コントローラ304の色とを対応付けた設定テーブルを予め用意しておくことで、各コントローラ304の色と各ポインタ308の色とを対応づけることが可能となる。
【0082】
各コントローラ304と各ポインタ308とを対応付ける方法としては、上記した色付けに限られない。例えば、各ポインタ308に、各ユーザの名前を表すテキスト状の画像や、各ユーザを表すマーク等を付けることで、各コントローラ304(これを使用するユーザ)と各ポインタ308とを対応付けてもよい。
【0083】
<第4の実施形態>
図14は、本発明の第4の実施形態に係る操作権の移動について説明するための図である。図14には、コントローラ404a(緑色のコントローラとする)からコントローラ404b(青色のコントローラとする)へ操作権が移動し、コントローラ404a及び404bに対応するポインタ408a及び408bの表示が変更されたときの共有画面6が示されている。
【0084】
本実施形態に係る複数のコントローラはそれぞれ振動機能を有しており、PCは所定の制御信号を出力することで、各コントローラを振動させることができる。図14に示すように、緑のコントローラ404aから青のコントローラ404bに操作権が移る際に、操作権を取得した青のコントローラ404b及び操作権を奪われた緑のコントローラ404aが振動する。このようにして、コントローラ404a及び404bをそれぞれ使用する2人のユーザに、操作権が移ったことが告知されてもよい。これにより、ユーザは操作権の移動をより的確に認識することができる。
【0085】
操作権を取得した青のコントローラ404bに対する告知と、操作権を奪われた緑のコントローラ404aに対する告知とが異なるものであってもよい。例えば、操作権を取得した青のコントローラ404bを強く振動させ、操作権を奪われた緑のコントローラ404aを青のコントローラ404bよりも弱く振動させるような方法が考えられる。その他、振動の周期や振動が継続する時間等を異ならせてもよい。このように各コントローラ404a及び404bに対する振動制御を適宜設定することで、振動のみによって操作権の移動を複数のユーザに告知してもよい。
【0086】
<第5の実施形態>
図15は、本発明の第5の実施形態に係る共有画面に表示された各ポインタを示す図である。図15に示すように、本実施形態では、ユーザは位置コントローラ515を使用することで、共有画像2の所定の位置にアノテーション513を設定することができる。アノテーション513とは、ユーザによって共有画像2の注目すべき箇所、例えば、疾患があるおそれのある部位に設定された位置情報と、この位置情報に関連付けられた内容情報とが視覚的に合成された注釈である。
【0087】
すなわち本実施形態に係るPCでは、位置コントローラ515からの位置指示情報に基づくポインタの移動を制御する操作と、位置コントローラ515からのアノテーション情報に基づくアノテーデョン設定処理の操作とが実行される。
【0088】
このように、位置コントローラ515を使用するユーザが共有画像2に対してアノテーションを設定することができるので、複数のユーザにより観察対象物が効率よく観察される。
【0089】
<第6の実施形態>
図16及び図17は、本発明の第6の実施形態に係る情報処理装置(PC)の動作を説明するための図である。図16に示すように、図4で説明した画像ピラミッド構造20の任意の解像度の画像において、表示範囲D1が共有画像602Aとして共有画面606に表示されているとする。このときコントローラ604aが操作権を有しており、図17(A)に示すように、コントローラ604aに対応する操作ポインタ611が白色の矢印で表示されている。
【0090】
ここで、上記表示範囲D1の共有画像602Aが表示されているときに、位置コントローラとして設定されたコントローラ604bから第1の設定変更要求が出力されたとする。そうすると、操作権がコントローラ604aからコントローラ604bへ移動し、図17(B)に示すように、コントローラ604bに対応するポインタ608bが操作ポインタ611として表示される。
【0091】
操作権を取得して操作コントローラとして設定されたコントローラ604bを使用するユーザは、共有画像602Aを移動させることが可能である。すなわち図16に示す表示範囲D2を共有画像602Bとして共有画面606に表示させることができる。
【0092】
ここで、表示範囲D2の共有画像602Bが表示されているときに、先ほど操作権を奪われたコントローラ604aから第2の設定変更要求が出力されたとする。そうすると、PCはコントローラ604bからコントローラ604aへ再び操作権を移動させる。またPCは、先ほど操作権が移動したときに表示されていた表示範囲D1の共有画像602Aを共有画面606に表示させる。すなわちPCにより、図17(A)に示す共有画像602Aが共有画面606に表示される。
【0093】
このように本実施形態に係るPCでは、過去に操作権を奪われて操作コントローラから位置コントローラに設定が変更されたコントローラが再び操作コントローラとして設定される。このときにそのコントローラが過去に操作コントローラとして操作していた共有画像が履歴情報として記憶される。
【0094】
図18は、上記処理のために用いられる設定テーブルを示す図である。図18に示す設定テーブルでは、各コントローラのIDと、操作権フラグと、過去に操作権を奪われたときに表示していた共有画像の位置情報とを含む。ここでいう共有画像の位置情報とは、図16に示す表示範囲Dの位置情報のことであり、例えば表示範囲Dの中心位置の座標(x、y)が管理される。その他、操作権を奪われたときに表示されていた共有画像の履歴情報を記憶するために、倍率の情報や時刻の情報が用いられてもよい。例えば、コントローラ604aからコントローラ604bに操作権が移動し、共有画像602Aの倍率が変更されたとする。このような場合に倍率の情報を管理することにより、コントローラ604aに再び操作権が移動したときに、過去に観察していた倍率で共有画像602Aを再表示することができる。
【0095】
本実施形態において、各コントローラ604から出力される第2の設定変更要求は、例えば選択ボタン644をダブルクリックすることにより、あるいは決定ボタン642やLRボタン643を押しながら選択ボタン644を押すことにより出力される。すなわち第1の設定変更要求が出力されるときとは異なる操作方法で、コントローラが操作されればよい。これにより、第1の設定変更要求に基づいて共有画像602を変更させずに操作権の移動のみを行う処理(図17(A)から図17(B)への処理)と、第2の設定変更要求に基づいて操作権の移動とともに共有画像602の変更も行う処理(図17(C)から図17(A)への処理)の両方の処理を行うことができる。
【0096】
操作権の移動とともに共有画像602が変更される場合、各ポインタ608が表示される位置はデフォルトで定められてもよい。あるいは、各ポインタ608の位置情報も記憶されており、記憶された位置情報に基づいて各ポインタ608が表示されてもよい。
【0097】
例えば図16に示す表示範囲D1及びD2において同様の疾患が認められた場合等、各ユーザが注目する共有画像602A及び602Bについて議論が進められる場合がある。この場合に、操作権の移動に伴って共有画像602A及び602Bが切り替えられることで、2つの共有画像602A及び602Bについての議論を効率よく進めることができる。なお、表示範囲D1及びD2の位置は、各ユーザが認識しているので、共有画像602A及び602Bの切り替えにより、共有画像602の把握が困難になることはない。
【0098】
<第7の実施形態>
図19は、本発明の第7の実施形態に係る情報処理システムの構成を示す模式的な図である。本実施形態の情報処理システム700は、各ユーザが個別に見るための画像714(以後、個別画像714という)をそれぞれ表示する複数の表示装置717を含む。複数の表示装置717は、本実施形態に係る情報処理装置であるPC705と有線または無線にて接続されており、各ユーザが使用するコントローラ704に対応して設けられる。また複数の表示装置717はそれぞれ個別画面718を有しており、この個別画面718に各個別画像714が表示される。
【0099】
本実施形態に係る情報処理システム700において、共有画面706を有する表示装置703と、個別画面718をそれぞれ有する複数の表示装置717とは、表示ユニットとして一体的に設けられてもよいし、それぞれ個別に設けられてもよい。
【0100】
本実施形態では、各コントローラ704から共有画像702に対する操作の実行のための第1の操作情報と、個別画像714に対する操作の実行のための第2の操作情報が出力される。例えば各ユーザがコントローラ704を操作することで、共有画像702を操作するモードと、個別画像714を操作するモードとが切り替えられる。これにより、PC705に出力される第1の操作情報と第2の操作情報とが区別される。共有画像702及び個別画像714を操作するためのコントローラに対する操作方法は、ともに同様のものであってよい。
【0101】
PC705は、各コントローラ704から出力される第1の操作情報に対しては、上記各実施形態で説明した処理を行う。すなわち位置コントローラとして設定されたコントローラ704から出力された第1の操作情報については、共有画像702に対する処理の実行が無効とされる。
【0102】
一方、各コントローラ704から出力される第2の操作情報については、個別画像714に対する処理の実行が有効とされる。すなわち、各ユーザは、自分の使用するコントローラ704が操作コントローラであるか位置コントローラであるかを問わず、自由に個別画像714の移動や拡大縮小をすることができる。図19に示すように、各個別画面718には、各ユーザが操作することができる個別ポインタ719が表示されている。この個別ポインタ719が、ユーザが使用する各コントローラ704により制御されることで、個別画像714に対して各種の操作が実行される。
【0103】
これにより各ユーザは、位置コントローラとして設定されたコントローラ704を使用する間も、個別画面718に表示される観察対象物の個別画像714を十分に観察することができる。従って、操作コントローラを有する他のユーザが共有画像702を操作している間に、個別画像714を操作しながら自分の考え等を十分に整理することができる。
【0104】
次に、本実施形態に係る情報処理システム700において、操作権が移動する場合について説明する。
【0105】
本実施形態では、PC705の記憶部等に、各個別画面718に表示されている個別画像714の位置情報、倍率情報、又は時刻情報等が記憶される。図19に示す位置コントローラ715(704b)から設定変更要求が出力されると、操作コントローラ710(704a)からコントローラ704bに操作権が移動する。このときに、PC705の記憶部に記憶された各情報に基づいて、コントローラ704bに対応して設けられた個別画面718bに表示される個別画像714bが、共有画像702として共有画面706に表示される。これにより、各ユーザが使用するコントローラ704に操作権が移動したときに、各自で操作していた個別画像714を共有画像702として他のユーザに見せながら、自分の意見を述べることができる。
【0106】
なお、PC705により、第1の実施形態で説明したように共有画像702を変更することなく、操作権の移動のみが実行されてもよい。あるいは第6の実施形態で説明したように、過去に操作権を奪われたときに表示されていた共有画像が操作権の移動に伴って共有画面に再表示されてもよい。
【0107】
<その他の実施形態>
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態がある。
【0108】
図20及び図21は、第7の実施形態の変形例を説明するための図である。図20に示すように、共有画面806に、共有画像802及び各ユーザが操作する複数の個別画像814がともに表示されてもよい。これにより、各ユーザが観察している個別画像814を他のユーザが認識することができる。
【0109】
例えば操作権を有する操作コントローラにより、操作ポインタ811を個別画像814上に移動させ、操作コントローラの決定ボタンを押す。これにより選択された個別画像814が共有画像802として表示されてもよい。あるいは、操作ポインタ811に限られず、位置ポインタ816により、個別画像814が選択されてもよい。
【0110】
図21に示すように、各ユーザが観察している個別画像の代わりに、各個別画像に対応する表示範囲Dが共有画面906に表示されてもよい。これにより、観察対象物925に対する、各ユーザが観察している位置や倍率を直感的に把握することができる。なお、この変形例では表示範囲Dのサイズを変更させることで、各ユーザが観察する個別画像の倍率が表現されている。図21に示す表示範囲Dが小さいほど、その表示範囲Dに対応する個別画像の倍率は大きいものとなる。
【0111】
各表示範囲Dを表すフレーム970や、表示範囲Dの内部が選択されてときに、その表示範囲Dに対応する個別画像が共有画像902として表示される。フレーム970をそれぞれ異なる色で表示することで、どのユーザの個別画像に対応する表示範囲Dであるかを識別可能としてもよい。あるいは、フレーム970の線種(線幅の違い、実線か破線かの違いなど)をそれぞれ異ならせてもよい。なお表示範囲Dは、矩形に限られない。
【0112】
上記の各実施形態では、位置コントローラからの操作情報に応じた共有画像に対する操作の実行が無効化された。しかしながら、共有画面に表示される共有画像の認識が困難にならないのであれば、共有画像に対する一部の操作の実行が有効となるように設定してもよい。例えば位置コントローラを使用することで、共有画像の移動は不可能であるが、共有画像の拡大または縮小は可能であるといった設定が考えられる。
【0113】
上記で説明した情報処理システムでは、図2で説明したPC5の入出力インタフェース55に、各コントローラと表示装置が接続される場合について説明した。しかしながら、本発明に係る情報処理装置として、各コントローラ及び共有画面と一体的に設けられているPC等が用いられてもよい。この場合、各コントローラが入出力インタフェース55に接続された入力部として設けられ、また共有画面が入出力インタフェース55に接続された表示部として設けられればよい。
【0114】
上記実施形態に係る情報処理装置としてPCが用いられたが、PCに限られず、専用の情報処理装置であってもよい。また、情報処理装置として、ハードウェア資源及びソフトウェアの協働により上記情報処理を実現する装置に限られず、専用のハードウェアにより上記情報処理が実現されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
2、602(602A、602B)、702、802、902…共有画像
4(4a〜4d)、304(304a〜304d)、404a、404b、604a、604b、704(704a、704b)…コントローラ
5、705…PC
6、606、706、806、906…共有画面
8(8a〜8d)、308(308a〜308d)…ポインタ
10、710…操作コントローラ
15、515、715…位置コントローラ
51…CPU
52…ROM
53…RAM
55…入出力インタフェース
58…記憶部
100、300、700…情報処理システム
714(714b)、814…個別画像
718(718b)…個別画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力する複数の入力装置を接続することが可能な接続部と、
前記画面に表示される前記画像に対して前記操作情報に応じた処理を実行することが可能な処理実行部と、
前記接続部により接続された前記複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定する設定部と、
前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記処理実行部による前記画像に対する処理の実行を有効とし、前記副入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記処理実行部による前記画像に対する処理の実行を無効とするように制御する制御部と
を具備する情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記画面上で前記各入力装置によりそれぞれ指定された位置を示す複数のポインタを、前記各入力装置との対応関係をそれぞれ識別可能に表示するポインタ表示手段をさらに具備する情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理装置であって、
前記設定部は、前記副入力装置として設定された前記入力装置から入力される第1の設定変更要求に基づいて、当該入力装置を前記主入力装置とするように設定を変更する情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記画像に対する操作は、前記画面より解像度が大きな画像データの、前記画面での前記画像データの表示位置の変更の操作であって、
前記画像データの表示位置の情報を記憶する記憶部をさらに具備し、
前記制御部は、前記設定部によりいずれかの前記入力装置が前記主入力装置から前記副入力装置へと設定が変更されるとき、変更前に前記画面に表示されていた前記画像データの表示位置の情報を前記記憶部に記憶し、次に当該入力装置が前記主入力装置として設定されたとき、前記記憶部に記憶された前記画像データの表示位置の情報をもとに前記変更前の画像データの表示を復元する
情報処理装置。
【請求項5】
設定部が、画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力するために接続部に接続された複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定し、
制御部が、前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記画像に対する処理の実行を排他的に有効にして、
処理実行部が、前記操作情報に基づく前記画像に対する処理を実行する
情報処理方法。
【請求項6】
画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力する複数の入力装置を接続することが可能な接続部と、
前記画面に表示される前記画像に対して前記操作情報に応じた処理を実行することが可能な処理実行部と、
前記接続部により接続された前記複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定する設定部と、
前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記処理実行部による前記画像に対する処理の実行を排他的に有効とするように制御する制御部
としてコンピュータを動作させるプログラム。
【請求項7】
画面に表示される画像に対する操作を実行するための操作情報を出力する複数の入力装置と、
前記複数の入力装置のうち、いずれか1つの前記入力装置を主入力装置として設定し、その他の前記入力装置を副入力装置として設定する設定部と、
前記画面として、前記主入力装置として設定された前記入力装置を用いたユーザにとっての操作対象である画像と前記複数の入力装置がそれぞれ指定する位置を示す複数のポインタとが表示される共有画面と、前記副入力装置として設定された前記入力装置を用いたユーザにとっての操作対象である画像と当該入力装置が指定するポインタとが表示される前記入力装置ごとの個別画面とを表示する表示部と、
前記共有画面及び前記各個別画面にそれぞれ表示される前記画像に対して前記操作情報に応じた処理を実行することが可能な処理実行部と、
前記主入力装置として設定された前記入力装置からの前記操作情報に基づく前記共有画面に表示された画像に対する前記処理実行部による処理の実行を排他的に有効とするように制御する制御部と
を具備する情報処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理システムであって、
前記設定部は、前記副入力装置として設定された前記入力装置から入力される第1の設定変更要求に基づいて、当該入力装置を前記主入力装置とするように設定を変更する情報処理システム。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理システムであって、
前記制御部は、前記設定部により前記入力装置からの前記第1の設定変更要求に基づいて当該入力装置が前記副入力装置から前記主入力装置へと変更されるとき、変更前に前記個別画面に表示されていた前記画像を前記共有画面の画像として表示させる情報処理システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図16】
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【図18】
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【図1】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−227628(P2011−227628A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95530(P2010−95530)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】