説明

情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、及びピアツーピアシステム

【課題】 フォントがない場合でも、画像形成要求時の処理時間を短縮すると共にデータ転送時間を短縮することを目的とする。
【解決手段】 P2Pネットワークに接続して(400)、P2Pネットワークを介して他のピアが保持するフォント保持情報を取得する(402)。そして、自装置の保持しないフォントがある場合には、P2Pネットワークを介して他のピアから自装置が保持しないフォントを探索して取得し(404、406)、取得したフォントをディスプレイフォントやプリンタフォント等に変換して保存し(408)、フォント保持情報を更新する(410)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、及びピアツーピアシステムにかかり、特に、ネットワークを介し互いに接続された複数の装置の少なくとも一部が、専用のサーバを介することなく直接通信するピアツーピアシステムに接続可能な情報処理装置、当該情報処理装置で適用可能な情報処理方法、情報処理プログラム、及び当該ピアツーピアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンピュータ等の装置をネットワークを介して互いに接続するネットワークシステムの形態として、クライアント・サーバシステムと、ピアツーピア(以下、P2Pという)システムとがある。
【0003】
クライアント・サーバシステムは、サーバが各種情報資源を管理したり各種アプリケーションを提供するサービスを実行し、これをクライアントが利用するシステムであり、主従関係が固定的なシステムある。
【0004】
これに対し、P2Pシステムでは、基本的には専用のサーバを設けず、ネットワークに接続されたピア(例えばパーソナルコンピュータ等)の各々が、あるときは他のピアに対して所定のサービスを提供してサーバのように動作し、あるときは他のピアが提供するサービスを利用してクライアントのように動作するシステムであり、各ピアが対等なシステムである。このようなP2Pシステムに関して、従来より様々な技術が提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−335269号公報
【特許文献2】特開2003−256363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなシステムを利用して、クライアントコンピュータからプリンタ等に対してプリント要求を行い、アプリケーションデータをプリントする場合には、アプリケーションデータをPDL(Page Description Language)に変換してプリンタに送信する。そして、アプリケーションデータが使用しているフォントがプリンタにない場合には、フォントをPDLに埋め込むことにより、WYSWIG(What you see is what you get)を保っている。
【0006】
しかしながら、従来の技術では、PDLにフォントを埋め込むため、データ量が大きくなってしまい、プリンタへのデータ転送時間を長くなってしまう、という問題がある。
【0007】
また、PDL作成毎にフォントを埋め込む必要があるため、処理に時間がかかってしまう、という問題がある。
【0008】
さらに、クライアントのフォントのヒント情報がPDLに埋め込む際に削除されてしまうため、プリント品質が低下してしまう、という問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、フォントがない場合でも、画像形成要求時の処理時間を短縮すると共にデータ転送時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の情報処理装置は、複数の装置が接続され、各装置毎に保持された情報を互いに共有可能なネットワークシステムに接続可能な情報処理装置であって、自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶する記憶手段と、前記ネットワークシステムに接続された他の装置から前記フォント保持情報を含む共有情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得した前記共有情報と、前記記憶手段に記憶された前記フォント保持情報とから、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得する探索取得手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、記憶手段には自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報が記憶され、取得手段ではネットワークシステムに接続された他の装置からフォント保持情報を含む共有情報が取得される。
【0012】
そして、探索取得手段では、取得手段によって取得した共有情報と、記憶手段に記憶されたフォント保持情報から、自装置が保持していないフォント保持情報が他の装置から探索されて取得される。すなわち、フォントが自装置にない場合でも、ネットワークシステムで共有しているフォントを他の装置から取得して自装置で使用することができる。従って、請求項2に記載の発明のように、ネットワークシステム接続された他の装置からの画像形成要求を受け付ける受付手段と、受付手段によって受け付けた画像形成要求に応じて画像形成を行う画像形成手段と、を更に備える情報処理装置のように、画像形成を行う装置に上述の構成を設けることで、画像形成要求時に他の装置から取得したフォントを使用することができ、画像形成要求を行う情報処理装置での処理時間を短縮することができる。
【0013】
また、画像形成要求を行う情報処理装置側でPDLにフォント埋め込む必要がなくなるので、データ量の増加を抑制することができ、データ転送時間を短縮することができる。
【0014】
更には、記憶手段、取得手段、及び探索取得手段を備えることで、他の装置からデータを取得した際に、当該データに自装置が保持していないフォントを有する場合でも、取得したデータに対応するフォントを他の装置から取得することができるので、画像形成要求に拘わらず、データ処理時間及びデータ転送時間の短縮が可能となる。
【0015】
なお、画像形成手段は、請求項3に記載の発明のように、画像形成要求に含まれる画像形成するための画像データを自装置で処理可能なデータ形式に変換する変換手段と、変換手段によって変換された変換後の画像データを一時保持する保持手段と、を含み保持手段によって保持された変換後の画像データをネットワークシステムに接続された複数の装置で共有し、他の装置からの要求に応じて保持手段に保持された変換後の画像データを要求元に送信するようにしてもよい。このように構成することで、変換後の画像データを他の装置で使用することが可能となり、他の装置が自装置で処理可能なデータ形式に変換する際の処理時間を短縮することが可能となる。
【0016】
また、ネットワークは、請求項4に記載の発明のように、ピアツーピアシステムを適用するようにしてもよい。
【0017】
請求項5に記載の情報処理方法は、複数の装置が接続され、各装置毎に保持された情報を互いに共有可能なネットワークシステムに接続可能な情報処理装置における情報処理方法であって、自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶する記憶ステップと、前記ネットワークシステムに接続された他の装置から前記フォント保持情報を含む共有情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記共有情報と、前記記憶ステップで記憶した前記フォント保持情報とから、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得する探索取得ステップと、を含むことを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、記憶ステップでは自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶し、取得ステップではネットワークシステムに接続された他の装置からフォント保持情報を含む供給情報を取得する。
【0019】
そして、探索取得ステップでは、取得ステップで取得した共有情報と、記憶ステップで記憶したフォント保持情報から、自装置が保持していないフォント保持情報を他の装置から探索して取得する。すなわち、フォントが自装置にない場合でも、ネットワークシステムで共有しているフォントを他の装置から取得して自装置で使用することができる。従って、請求項6に記載の発明のように、ネットワークシステム接続された他の装置からの画像形成要求を受け付ける受付ステップと、受付ステップで受け付けた画像形成要求に応じて画像形成を行う画像形成ステップと、を更に備える情報処理方法を適用した画像形成を行う装置で上述の方法で処理を行うことで、画像形成要求時に他の装置から取得したフォントを使用することができ、画像形成要求を行う情報処理装置での処理時間を短縮することができる。
【0020】
また、画像形成要求を行う情報処理装置側でPDLにフォント埋め込む必要がなくなるので、データ量の増加を抑制することができ、データ転送時間を短縮することができる。
【0021】
更には、記憶ステップ、取得ステップ、及び探索取得ステップを備えることで、他の装置からデータを取得した際に、当該データに自装置が保持していないフォントを有する場合でも、取得したデータに対応するフォントを他の装置から取得することができるので、画像形成要求に拘わらず、データ処理時間及びデータ転送時間の短縮が可能となる。
【0022】
なお、画像形成ステップは、請求項7に記載の発明のように、画像形成要求に含まれる画像形成するための画像データを自装置で処理可能なデータ形式に変換する変換ステップと、変換ステップで変換した変換後の画像データを一時保持する保持ステップと、を含み保持ステップで保持した変換後の画像データをネットワークシステムに接続された複数の装置で共有し、他の装置からの要求に応じて保持ステップで保持した変換後の画像データを要求元に送信するようにしてもよい。このように構成することで、変換後の画像データを他の装置で使用することが可能となり、他の装置が自装置で処理可能なデータ形式に変換する際の処理時間を短縮することが可能となる。
【0023】
また、ネットワークは、請求項8に記載の発明のように、ピアツーピアシステムを適用するようにしてもよい。
【0024】
請求項9に記載の情報処理プログラムは、複数の装置が接続され、各装置毎に保持された情報を互いに共有可能なネットワークシステムに接続可能なコンピュータに以下の情報処理を実行させる情報処理プログラムであって、前記処理は、自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶する記憶ステップと、前記ネットワークシステムに接続された他の装置から前記フォント保持情報を含む共有情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記共有情報と、前記記憶ステップで記憶した前記フォント保持情報とから、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得する探索取得ステップと、を含むことを特徴としている。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、請求項4に記載の情報処理方法を情報処理プログラムとして適用したものである。すなわち、フォントが自装置にない場合でも、ネットワークシステムで共有しているフォントを他の装置から取得して自装置で使用することができる。従って、請求項10に記載の発明のように、ネットワークシステム接続された他の装置からの画像形成要求を受け付ける受付ステップと、受付ステップで受け付けた画像形成要求に応じて画像形成を行う画像形成ステップと、を更に備える情報処理プログラムを適用した、画像形成を行う装置に上述の情報処理プログラムで処理を行うことで、画像形成要求時に他の装置から取得したフォントを使用することができ、画像形成要求を行う情報処理装置での処理時間を短縮することができる。
【0026】
また、画像形成要求を行う情報処理装置側でPDLにフォント埋め込む必要がなくなるので、データ量の増加を抑制することができ、データ転送時間を短縮することができる。
【0027】
更には、記憶ステップ、取得ステップ、及び探索取得ステップを備えることで、他の装置からデータを取得した際に、当該データに自装置が保持していないフォントを有する場合でも、取得したデータに対応するフォントを他の装置から取得することができるので、画像形成要求に拘わらず、データ処理時間及びデータ転送時間の短縮が可能となる。
【0028】
なお、画像形成ステップは、請求項11に記載の発明のように、画像形成要求に含まれる画像形成するための画像データを自装置で処理可能なデータ形式に変換する変換ステップと、変換ステップで変換した変換後の画像データを一時保持する保持ステップと、を含み保持ステップで保持した変換後の画像データをネットワークシステムに接続された複数の装置で共有し、他の装置からの要求に応じて保持ステップで保持した変換後の画像データを要求元に送信するようにしてもよい。このように構成することで、変換後の画像データを他の装置で使用することが可能となり、他の装置が自装置で処理可能なデータ形式に変換する際の処理時間を短縮することが可能となる。
【0029】
また、ネットワークは、請求項12に記載の発明のように、ピアツーピアシステムを適用するようにしてもよい。
【0030】
請求項13に記載のピアツーピアシステムは、複数のピアが接続されて構成されたピアツーピアシステムであって、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の情報処理装置をピアとして含むことを特徴としている。
【0031】
請求項13に記載の発明によれば、複数のピアが接続されて構成されたピアツーピアシステムに、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の情報処理装置をピアとして含んでいるので、上述したように、フォントがない場合でも、画像形成要求時の処理時間を短縮すると共にデータ転送時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明によれば、自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶し、ネットワークシステムに接続された他の装置からフォント保持情報を含む共有情報を取得して、取得した共有情報と、記憶したフォント保持情報から、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得することによって、他の装置から画像形成等に必要なフォントを取得することができるので、フォントがない場合でも、画像形成要求時の処理時間を短縮すると共にデータ転送時間を短縮することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0034】
図1には、P2Pネットワーク10のネットワーク構成について概念的に示した。図1に示すように、P2Pネットワーク10は、仮想的には各ピア12A〜12Gが相互に接続された構成であり、実際には、例えばピア12A〜12Cはファイアウォール14によるアクセス制限下にあるピアであったり、ピア12C〜12Eはインターネットに接続されたピアであったり、ピア12E〜12GはNAT(Network Address Translation)によってアドレス変換されるピアであったりする。
【0035】
また、各ピア同士の接続方法は様々であり、IPv4(Internet Protocol version 4)やIPv6(Internet Protocol version 6)の機能を用いるTCP(Transmission Control Protocol)接続を用いたり、HTTP(HyperText Transfer Protocol)を用いたり、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)を用いたりすることができる。
【0036】
ここで、ピアとは、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータの他、PDA(Personal Digital Assistance)、携帯電話、プリンタ、コピー機、これらの機能を複数備えた複合機等のハードウェア又はこれらの機能を実現するソフトウェアをいう。また、各ピアは、同じ種類のものであるか異なる種類のものであるかにかかわらずP2Pネットワークに参加することができる。
【0037】
P2Pネットワークの形態としては、図2に示すように、各ピア14A〜14Kの全てが対等な関係にあるピュアP2Pと、図3に示すように、サーバ14Sを設け、一部のサービスの提供をサーバ14Sに委ね、その他のサービスについては各ピア14A〜14Hが対等な関係において実現されるハイブリッドP2Pの形態があり、何れの形態でも本発明を適用可能である。
【0038】
また、P2Pネットワークに参加する各ピアにログオンするユーザ又はピアは、図4に示すように、目的に応じたグループを構成することができる。図4では、ピア12A〜12G全てがグループ1に属し、さらに、ピア12A、12C、12E、12Fはグループ2に属しており、ピア12B、12E、12F、12Gはグループ3に属している。なお、各ユーザ又はピアは、単一のグループに属してもよいし、複数のグループに属していてもよい。また、ユーザ又はピアは必ずしもグループに属する必要はない。
【0039】
図5には、P2Pネットワーク10に参加する各ピアの基本構成を示した。図5に示すように、ピア12は、P2P基盤構成部16、P2P基盤管理データ記憶部18、アプリケーション実行部20、及びアプリケーションメモリ22を含んで構成される。
【0040】
P2P基盤構成部16は、メッセージ制御部24、データ管理部26、送信部28、及び受信部30を含んで構成される。
【0041】
送信部28は、メッセージ制御部24から受け取ったメッセージをネットワーク32へ向けて送信する。
【0042】
受信部30は、P2Pネットワーク10内で送受信されるデータのうち、自ピアにとって必要なデータを受信する。常に受信待機状態となっており、P2Pネットワーク10の他ピアからの各種要求やデータを受信し、メッセージ制御部24に受け渡す。なお、送信部28とは独立かつ並列に動作する。
【0043】
図6には、メッセージ制御部24の概略構成を示した。メッセージ制御部24は、図6に示すように、サービス実行部34及びメッセージディスパッチ部36を含んで構成されている。
【0044】
サービス実行部34は、ピア探索サービス部38、告知情報公開サービス部40、告知情報取得サービス部42、グループ管理サービス部44、ユーザ管理サービス部46、及びピア管理サービス部48を含んで構成されており、各サービス部は相互に情報を授受しながら各サービスを実行する。
【0045】
ピア探索サービス部38は、P2Pネットワークに参加しているピアを探索する機能及び自ピアが必要とするサービス(機能)を提供可能なピアを探索する機能を有する。なお、探索の範囲は、必要とするサービスの名称や属性、ホップ数の閾値等を指定することにより制御することができる。ここで、ホップ数とは、メッセージを送信する際に経由するピアの数である。
【0046】
告知情報公開サービス部40は、自ピアが提供可能なサービス等の情報を告知情報としてP2Pネットワーク上に公開する機能を有する。ここで、提供可能なサービスには、例えばアプリケーション実行部20により実行されるアプリケーションの他、後述するグループ管理サービスやユーザ管理サービス等も含まれる。なお、告知情報の公開は、例えば他ピアから問い合わせがあった場合や自ピアの起動時に実行してもよいし、定期的に実行するようにしてもよい。
【0047】
このように各ピアの告知情報公開サービス部40によって告知情報がP2Pネットワーク上に公開されることにより、P2Pネットワークに参加している各ピアは、P2Pネットワーク上でどのようなサービスを利用できるかを把握することができる。
【0048】
告知情報取得サービス部42は、ピア探索サービス部38によって探索されたピアから送信された告知情報又は他ピアから自発的に送信された告知情報を取得し、データ管理部26へ受け渡す。データ管理部26では、取得した告知情報をピア情報としてP2P基盤管理データ記憶部18に記憶させる。これにより、ピアは、P2Pネットワークに参加している他ピアがどのようなサービスを提供しているのかを把握することができる。
【0049】
グループ管理サービス部44は、同じ目的を有するピア同士で構成されたグループへの参加や脱退、新たなグループの作成等をグループ情報に基づいて管理する機能を有する。グループ情報は、例えば少なくともグループIDとユーザIDとの対応関係を表す情報であり、P2P基盤管理データ記憶部18に記憶される。このグループ情報を参照することにより、どのグループにどのユーザが属しているかを把握することができる。
【0050】
ユーザ管理サービス部46は、ユーザ情報を管理する機能を有する。ユーザ情報は、例えばピアIDとそのピアにログオンしているユーザIDとの対応関係を表すログオン情報や、ユーザの名前、メールアドレス等のユーザ自身に関する情報、そのユーザが属するグループのグループID等の情報を含み、P2P基盤管理データ記憶部18に記憶される。
【0051】
ピア管理サービス部48は、P2Pネットワークに参加しているピアのピア情報を管理する機能を有する。
【0052】
メッセージディスパッチ部36は、アプリケーション実行部20からのメッセージや他ピアとの間で送受信されるメッセージを解析し、サービス実行部34のうち解析したメッセージに関する処理を行うべきサービス部へ制御を渡す。
【0053】
P2P基盤管理データ記憶部18は、経路情報18A、グループ情報18B、隣接情報18C、ピア情報18D、及びユーザ情報18Eを記憶する。
【0054】
経路情報18Aは、P2Pネットワークにおける経路の情報、例えば後述するスパニングツリーに関する情報を含む。
【0055】
グループ情報18Bは、前述したように例えば少なくともグループIDとユーザIDとの対応関係を表す情報である。
【0056】
隣接情報18Cは、自ピアに隣接するピアに関する情報、例えばピアID等の情報を含む。ここで、隣接するピアとは、例えば自ピアから送信したパケットに対する応答時間が予め定めた所定時間内のピアとすることができる。隣接情報は、例えば他ピアと通信する課程において得られる応答時間に基づいて生成することができるが、オペレータの操作等により手動的に設定するようにしてもよい。
【0057】
ピア情報18Dは、ピア探索サービス部38によって探索されたピアに関する情報、例えばピアID等の情報や、告知情報取得サービス部42によって取得したP2Pネットワーク上の各ピアが提供しているサービスに関する情報等を含む。ここで、ピアIDには、例えばIPアドレスやURI(Uniform Resource Identifier)等を用いることができる。
【0058】
ユーザ情報18Eは、前述したようにユーザのログオン情報やユーザ自身に関する情報等を含む。
【0059】
アプリケーション実行部20は、各種アプリケーションを実行するものであり、メッセージ制御部24を介して他ピアとメッセージの送受信を行う。また、アプリケーションメモリ22は、アプリケーション実行部20の実行に関連する各種の情報を記憶するためのメモリである。
【0060】
次に、P2Pネットワークにおいて、目的のサービスを検索し実行する場合の具体例について説明する。
【0061】
まず、他ピアへメッセージを転送する機能を有する転送機能付きピアと、転送機能を備えず、転送機能付きピアを介して他ピアとメッセージの送受信を行うエンドピアと、からなるP2Pネットワークにおいて、転送機能付きピア及びエンドピアのP2P基盤構成部16で実行される処理について説明する。なお、転送機能付きピアは、図示しない転送機能サービス部をサービス実行部34に備えた構成である。
【0062】
図7にはエンドピアで実行される処理のフローチャートを、図8には転送機能付きピアで実行される処理のフローチャートを示した。
【0063】
図7に示すように、エンドピアは、ステップ100において、転送機能付きピアの探索要求を、例えば自ピアに予め記憶された設定情報に設定された他の転送機能付きピアに対して、又はマルチキャストやブロードキャストにより他の転送機能付きピアに対してP2Pネットワークに送信する。これは、ピア探索サービス部38により実行される。
【0064】
そして、ステップ102において、転送機能付きピアが存在するか否かを判断し、転送付きピアが存在する場合には、ステップ104へ移行し、転送機能付きピアが存在しない場合には、ステップ102へ戻り、例えば所定時間経過後に再度転送機能付きピアを探索する。
【0065】
ステップ104では、自ピアにログオンしているユーザ又は自ピアが属するグループに属している他ユーザがログオンしている他ピアの告知情報を取得するよう転送機能付きピアに要求する。これは、告知情報取得サービス部42により実行される。
【0066】
ステップ106では、転送機能付きピアから告知情報を受信したか否かを判断し、受信していない場合には、ステップ110へ移行し、受信した場合には、ステップ108において、受信した告知情報をP2P基盤管理データ記憶部18にピア情報18Dとして記憶させる。
【0067】
ステップ110では、サービス要求が発生したか否かを判断する。例えば自ピアにログオンしているユーザの操作等によってアプリケーション実行部20によりアプリケーションが実行され、サービス要求が発生した場合には、アプリケーション実行部20からメッセージ制御部24へサービス要求が通知される。この場合、ステップ112へ移行し、サービス要求が発生していない場合には、ステップ116へ移行する。
【0068】
ステップ112では、発生したサービス要求に対応したメッセージを作成して転送機能付きピアに送信する。例えば、アプリケーション実行部20からのサービス要求が、所望のファイルを取得する要求だった場合には、アプリケーション実行部20から通知されたファイル名等の所望のファイルを特定するための情報を含むファイル探索要求メッセージを転送機能付きピアに送信する。
【0069】
ステップ114では、送信したメッセージに対する応答処理を行う。すなわち、送信したメッセージに対する応答メッセージを受信し、受信した応答メッセージの内容に応じた処理を行う。例えば、サービス要求が所定のファイルを取得する要求であった場合には、そのファイルを所有しているピアがあれば、そのピア情報が応答メッセージとして受信されるので、これをアプリケーション実行部20に通知する。この場合、アプリケーション実行部20では、受信したピア情報に基づいて、所望のファイルを所有しているピアにファイル送信要求を送信するようメッセージ制御部24に依頼する。これにより、所望のファイルを取得することができる。
【0070】
そして、ステップ116では、転送機能付きピアから、他ピアから何らかのサービス提供又は情報提供を要求する要求メッセージを受信したか否かを判断し、要求メッセージを受信していた場合には、ステップ118へ移行し、要求メッセージを受信していない場合には、ステップ106へ戻って上記と同様の処理を繰り返す。
【0071】
ステップ118では、要求に対する処理を実行する。そして、ステップ120において、処理結果に対応したメッセージを転送機能付きピアに送信する。例えば、他ピアからファイル探索の要求メッセージを受信した場合には、その要求メッセージをファイル検索を実行するアプリケーション実行部20へ渡す。これによりアプリケーション実行部20においてファイル検索が実行され、検索結果がメッセージ制御部24に通知される。メッセージ制御部24では、アプリケーション実行部20から通知された検索結果に基づいて応答メッセージを作成し、ファイル探索要求メッセージの送信元のピアに送信する。例えばファイルが検索できた場合には、自ピアのピアID等の情報を含めた応答メッセージを作成して、ファイル探索要求メッセージの送信元のピアに送信する。これにより、送信元のピアでは、所望のファイルが検索できたか否かを確認することができる。
【0072】
次に、転送機能付きピアで実行される処理について説明する。
【0073】
転送機能付きピアは、まず図8に示すステップ200において、例えば自ピアに予め記憶された設定情報に設定された他の転送機能付きピアに対して、又はマルチキャストやブロードキャストにより他の転送機能付きピアに対して、グループ情報やユーザ情報等の各種情報を送信するよう要求し、これらの情報を取得する。取得した情報は、P2P基盤管理データ記憶部18に記憶される。これにより、P2Pネットワークを構成しているピアの情報やログオンしているユーザの情報を得ることができる。
【0074】
ステップ202では、P2P基盤管理データ記憶部18に記憶された隣接情報18Cを、自ピアの隣の転送機能付きピア全てに告知する。隣接情報18Cには、自ピアの隣の転送機能付きピアの情報が少なくとも含まれ、さらに、他のピアが有している隣接情報を既に取得している場合には、その隣接情報も含まれる。
【0075】
ステップ204では、隣の転送機能付きピアに隣接情報を送信するよう要求し、取得する。このように、自ピアの隣の転送機能付きピアと隣接情報を交換する。
【0076】
そして、ステップ206では、交換した隣接情報に基づき、スパニングツリーの構成情報を生成し、P2P基盤管理データ記憶部18に経路情報として記憶する。ここで、スパニングツリーとは、メッセージの転送経路が、ループのない木構造となるような経路を表す。例えばP2Pネットワークが、図9(A)に示すように、グループ1にのみ属する転送機能付きピア501、グループ2にのみ属する転送機能付きピア502、グループ1、2の何れにも属する転送機能付きピア5012、何れのグループにも属さない転送機能付きピア50n、これらの各転送機能付きピアの背後に存在するエンドピア(図9では図示省略)で構成されていたとする。この場合、スパニングツリーは、図9(B)に示すようなループのない木構造の経路となる。
【0077】
次のステップ208では、エンドピアからのメッセージ送信要求を受信したか否かを判断し、受信している場合にはステップ210へ移行し、受信していない場合には、ステップ212へ移行する。
【0078】
ステップ210では、スパニングツリーの構成情報としての経路情報に基づいて、メッセージを転送する。例えば、図9(A)に示すようなネットワークが構築されている場合において、エンドピアが例えばグループ1に属しており、グループ1向けの要求メッセージを転送機能付きピアに送信した場合について説明する。この場合、転送機能付きピアは、グループ1に属しているエンドピアに対してのメッセージ転送を担う転送機能付きピアを全て含み、この転送機能付きピア全てにメッセージが転送されるようなスパニングツリー、例えば図9(C)に示すようなスパニングツリーを経路情報に基づいて計算する。そして、転送機能付きピアは、計算されたスパニングツリーに基づいて、隣の転送機能付きピア全てにエンドピアからの要求メッセージを転送する。これにより、図9(C)に示すスパニングツリー上の転送機能付きピアにメッセージが転送され、グループ1のエンドピア全てにメッセージが転送される。なお、グループ2向けのメッセージ送信要求を転送機能付きピアに送信した場合は、図9(D)に示すようなスパニングツリーが計算される。
【0079】
次のステップ212では、隣の転送機能付きピアからメッセージを受信したか否かを判断し、受信した場合にはステップ214へ移行し、受信していない場合には、ステップ208へ戻って上記と同様の処理を繰り返す。なお、定期的にステップ200へ戻ってスパニングツリーを定期的に計算するようにしてもよい。
【0080】
ステップ214では、計算したスパニングツリーに基づき、メッセージを転送する必要がある場合、すなわちスパニングツリー上における隣の転送機能付きピアのうちメッセージを転送していない転送機能付きピアが存在する場合には、その転送機能付きピアにメッセージを転送する。また、受信したメッセージが、自ピアがメッセージの転送を担うエンドピアと同一のグループ宛であった場合には、そのメッセージをエンドピアへ転送する。
【0081】
このように、スパニングツリーを各転送機能付きピアが計算し、このスパニングツリー計算に従ってメッセージを転送することにより、同じグループ内のエンドピア間においてメッセージの送受信が可能となる。
【0082】
上記のような転送機能付きピアによってメッセージを転送する構成は、主にLAN(Local Area Network)等の比較的小規模のネットワークでP2Pネットワークを構築する場合に適しているが、大規模のネットワークでP2Pネットワークを構成する場合には、ファイアウォールやゲートウェイ等を介して、異なるネットワークに接続されたピア間でメッセージの送受信が行われる。以下では、このような比較的大規模なネットワークでP2Pネットワークを構築する場合に適した形態について説明する。
【0083】
図10に示すP2Pネットワーク11は、複数のネットワーク52〜58を含み、ネットワーク52は、ルータ60、62を介してネットワーク54と接続されると共に、ルータ64を介してネットワーク58と接続される。また、ネットワーク56は、ルータ66を介してネットワーク58と接続される。
【0084】
ネットワーク52は、エンドピア52A、52B、及び待ち合わせ機能付きピア52Cを含んで構成され、ネットワーク54はエンドピア54Aを含んで構成され、ネットワーク56はエンドピア56Aを含んで構成され、ネットワーク58は中継機能付きピア58Aを含んで構成されている。なお、待ち合わせ機能付きピアは、図示しない待ち合わせ機能サービス部をサービス実行部34に備えた構成であり、中継機能付きピア58Aは、図示しない中継機能サービス部をサービス実行部34に備えた構成である。
【0085】
このように構成されたP2Pネットワーク11において、エンドピアは、図7のフローチャートの示す処理とほぼ同様の処理を実行する。すなわち、P2Pネットワーク11におけるエンドピアで実行される処理は、図7のフローチャートの説明において、転送機能付きピアを待ち合わせ機能付きピアに言い換えた処理を実行すると考えることができる。
【0086】
また、中継機能付きピアは、基本的には所謂ゲートウェイとしての動作をするピアである。中継機能付きピアは、まず、例えば自ピアに記憶された設定情報に予め設定された他のピアに対して、又はマルチキャストやブロードキャストにより他のピアに対して、グループ情報やユーザ情報等の各種情報を送信するよう要求し、これらの情報を取得しておく。そして、他ピアからメッセージを受信した場合には、送信先として指定されたピアにメッセージを転送する。
【0087】
次に、待ち合わせ機能付きピアで実行される処理について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0088】
まず、ステップ300において、例えば自ピアに記憶された設定情報に予め設定された他の転送機能付きピアに対して、又はマルチキャストやブロードキャストによって、他のピアに対してグループ情報やユーザ情報等の各種情報を送信するよう要求する。
【0089】
ステップ302では、他ピアから何らかの情報、例えばステップ300で要求したグループやユーザ情報等の情報や、他ピアからの告知情報等を受信したか否かを判断し、受信した場合には、ステップ304へ移行し、受信していない場合には、ステップ306へ移行する。
【0090】
ステップ304では、他ピアから受信した情報をP2P基盤管理データ記憶部18に記憶させる。例えば受信した情報がグループ情報であればグループ情報18BとしてP2P基盤管理データ記憶部18に記憶させ、受信した情報がユーザ情報であればユーザ情報18EとしてP2P基盤管理データ記憶部18に記憶させる。
【0091】
ステップ306では、エンドピアから何らかのサービス提供又は情報提供を要求する要求メッセージを受信したか否かを判断し、受信している場合には、ステップ308へ移行し、受信していない場合には、ステップ302へ戻って上記と同様の処理を繰り返す。
【0092】
ステップ308では、要求メッセージに対応した情報が自ピアのP2P基盤管理データ記憶部18に記憶されているか否かを判断し、記憶されている場合には、ステップ310へ移行し、記憶されていない場合には、ステップ312へ移行する。
【0093】
ステップ310では、要求メッセージに対応した情報をP2P基盤管理データ記憶部18から読み出して要求元のピアに送信する。
【0094】
一方、ステップ312では、要求メッセージを隣接のピアに転送する。これにより、要求メッセージが他ピアに伝搬される。これにより、要求メッセージに対応した処理を実行可能なピアから応答メッセージが送信される。
【0095】
ステップ314では、要求メッセージに対応した処理を実行可能なピアから送信された応答メッセージを受信し、これを要求元のエンドピアに送信する。
【0096】
ここで、ネットワーク54のピア54Aが告知情報の探索要求を行う場合について説明する。この場合、ピア54Aは、待ち合わせ機能付きピアを検索し、検索された待ち合わせ機能付きピア52Cに告知情報の探索要求メッセージを送信する。これにより待ち合わせ機能付きピア52Cは、自ピアに他ピアの告知情報が蓄積されていれば、これをピア54Aに送信し、蓄積されていない場合には、例えば隣のピア52A、52B等に告知情報を送信するよう要求する。このとき、ピア52Aは、自ピアの告知情報と、自ピアに記憶されている他ピアの告知情報、例えばピア56Aの告知情報がすでに記憶されている場合には、その告知情報とを待ち合わせ機能付きピア52Cに送信する。ピア52Cについても同様である。待ち合わせ機能付きピア54Cは、他ピアから送信された告知情報を蓄積すると共に、ピア54Aに送信する。
【0097】
以上のように、待ち合わせ機能付きピアは、他ピアから送信された告知情報等の各種情報を自ピアに蓄積しておき、エンドピアからの要求に対応した情報が自ピアに記憶されている場合には、その情報をエンドピアに送信する。従って、P2Pネットワーク11のように大規模なネットワークにおけるメッセージの送受信の効率を向上させることができる。
【0098】
次に、アプリケーション実行の具体例として、アプリケーションがファイル共有サービスの場合におけるアプリケーション実行部20の処理について説明する。
【0099】
この場合、アプリケーション実行部20は、ファイル名等の所望のファイルを特定するための情報を少なくとも含んだファイル探索要求をメッセージ制御部24のメッセージディスパッチ部36に通知する。メッセージディスパッチ部36では、このファイルを所有するピアを探索するようピア探索サービス部38に対して要求する。これにより、ピア探索サービス部38によって所望のファイルを所有するピアが探索され、アプリケーション実行部20に通知される。そして、アプリケーション実行部20では、探索されたピアに対してファイルを送信するよう要求し、取得する。なお、所望のファイルを所有しているピアの情報を既に取得しており、自ピアに記憶されていた場合には、ピア探索を実行せずに、直接そのピアにファイル送信要求を送信してファイルを取得すればよい。
【0100】
このように、アプリケーション実行部20は、メッセージ制御部24を介して他ピアとメッセージの送受信を行い、サービスを提供する。
【0101】
なお、P2Pネットワークの構築について上記は一例であり、例えば上記特許文献1に記載されたプロトコルや、JXTAプロトコルのPDP(Peer Discovery Protocol:ピア発見プロトコル)、PRP(Peer Resolver Protocol:ピア解決プロトコル)、PIP(Peer Information Protocol:ピア情報プロトコル)、PMP(Peer Membership Protocol:ピアメンバーシッププロトコル)、PBP(Peer Binding Protocol:ピアバインディングプロトコル)、PEP(Peer Endpoint Protocol:ピアエンドポイントプロトコル)等の公知のプロトコルを用いてP2Pネットワークを構築してもよい。
【0102】
ここで、上述したピア12の構成をクライアントコンピュータ及びプリンタやファクシミリ等のデバイスに組み込んだ場合の一例について詳細に説明する。
【0103】
図12は、本発明の実施の形態に係わるピアの構成を組み込んだクライアントコンピュータ及びデバイスが接続されたP2Pネットワークの一例を示す図である。
【0104】
図12に示すように、P2Pネットワーク10に上述のピア12の構成を組み込んだ複数のクライアントコンピュータ70及びデバイス72が接続されている。なお、P2Pネットワーク10は、上述の何れの構成を適用するようにしてもよい。
【0105】
クライアントコンピュータ70及びデバイス72に組み込まれたピア12のアプリケーション実行部20は、ファイル共有サービスを行うようになっており、詳細には、各ピアが保持するフォントを共有する。
【0106】
クライアントコンピュータ70とデバイス72とは、P2Pネットワーク10に接続されている他にLPR(Line PRinter daemon protocol)やIPP(Internet Printing Protocol)プロトコルを用いてPDLデータのやり取りを行うための通信部70A、72Aを介してそれぞれ接続されており、プリント要求やプリントするためのデータの送受信を通信部70A、70Bを介して行う。なお、P2Pネットワーク10を介してプリント要求やプリントするためのデータの送受信等を行うようにしてもよい。
【0107】
また、クライアントコンピュータ70には、デバイス72に対してプリント要求するためのプリンタドライバ70Bが組み込まれており、アプリケーションデータ70Cをプリンタドライバ70BによってPDLのデータ形式に変換して、通信部70Aを介してデバイス72に送信することでプリント要求を行う。
【0108】
また、クライアントコンピュータ70は、フォント管理部70D及びフォント変換部70Eを備えている。フォント管理部70Dは、クライアントコンピュータ70のディスプレイにアプリケーションデータ等を表示するためのフォントを管理しており、プリンタドライバ70Bの要求に応じてフォントデータを渡す。フォント変換部70Eは、各ピア12で共有しているフォントをプリンタドライバ70Bが処理できる形式に変換する。
【0109】
一方、デバイス72は、クライアントコンピュータ70からプリント要求を通信部72Aで受け付ける。そして、クライアントコンピュータ70から送信されるPDLデータをPDLインタプリタ72Bによってビットマップデータ等のデバイス72が処理できるデータ形式に変換して、出力部72Cによって用紙等にプリントを行う。
【0110】
また、デバイス72にもフォント管理部72D及びフォント変換部72Eを備えている。フォント管理部70Dは、デバイス72の出力部70Aで出力するためのフォントを管理しており、PDLインタプリタ72Bの要求に応じてフォントデータを渡する。フォント変換部72Eは、各ピア12で共有しているフォントをPDLインタプリタ72Bが処理できる形式に変換する。
【0111】
続いて、クライアントコンピュータ70に組み込まれたピア12によってフォントを共有する際の処理について説明する。
【0112】
図13は、本発明の実施の形態に係わるクライアントコンピュータ70に組み込まれたピア12によってフォントを共有する際の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0113】
まず、ステップ400では、P2Pネットワーク10への接続を行う。これによって、告知情報公開サービス部40によって自ピア12が提供可能なサービス等の情報が告知情報としてP2Pネットワーク10上に公開される。
【0114】
続いて、ステップ402では、P2Pネットワーク10を介して他のピア12が保持しているフォント保持情報を取得し、ステップ404へ移行して、取得したフォント保持情報に基づいて自ピア12が保持していないフォントがあるか否か判定し、判定が否定された場合には、当該処理を終了し、ステップ404の判定が肯定された場合、すなわち、自ピア12が保持していないフォントがP2Pネットワーク10に参加しているピア12にある場合には、ステップ406へ移行する。
【0115】
詳細には、ピア探索サービス部38によってP2Pネットワーク10に参加しているピア12が探索され、自ピア12が必要とするサービス(機能)として自ピア12が保持していないフォント保持情報が探索され、ピア探索サービス部38によって探索されたピア12から送信された告知情報(フォント保持情報)又は他ピア12から自発的に送信された告知情報(フォント保持情報)が告知情報取得サービス部42によって取得され、取得された告知情報(フォント保持情報)がデータ管理部26によってP2P基盤管理データ記憶部18に記憶され、記憶されたフォント保持情報に基づいてアプリケーション実行部20によってステップ404の判定が行われる。
【0116】
ステップ406では、自装置が保持していないフォントをP2Pネットワーク10を介して他のピア12から取得する。すなわち、アプリケーション実行部20によって自ピア12が保持していないフォントを保持するピア12に対してフォントの送信要求が行われて取得される。
【0117】
続いて、ステップ408では、取得したフォントがフォント変換部70Eによってディスプレイフォントに変換してフォント管理部70Dに記憶させ、ステップ410へ移行して、告知情報公開サービス部40で公開された告知情報としてのフォント保持情報を更新して、一連の処理を終了する。
【0118】
次に、デバイス72に組み込まれたピア12によってフォントを共有する際の処理について説明する。
【0119】
図14は、本発明の実施の形態に係わるデバイスに組み込まれたピア12によってフォントを共有する際の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
まず、ステップ500では、P2Pネットワーク10への接続を行う。これによって、告知情報公開サービス部40によって自ピア12が提供可能なサービス等の情報が告知情報としてP2Pネットワーク10上に公開される。
【0121】
続いて、ステップ502では、P2Pネットワーク10を介して他のピア12が保持しているフォント保持情報を取得し、ステップ504へ移行して、取得したフォント保持情報に基づいて自ピア12が保持していないフォントがあるか否か判定し、判定が否定された場合には、当該処理を終了し、ステップ504の判定が肯定された場合、すなわち、自ピア12が保持していないフォントがP2Pネットワーク10に参加しているピア12にある場合には、ステップ506へ移行する。
【0122】
詳細には、ピア探索サービス部38によってP2Pネットワーク10に参加しているピア12が探索され、自ピア12が必要とするサービス(機能)として自ピア12が保持してないフォント保持情報が探索され、ピア探索サービス部によって探索されたピアから送信された告知情報(フォント保持情報)又はピア12から自発的に送信された告知情報(フォント保持情報)が告知情報取得サービス部42によってP2P基盤管理データ記憶部18に記憶され、記憶されたフォント保持情報に基づいてアプリケーション実行部20によってステップ504の判定が行われる。
【0123】
ステップ506では、自装置が保持していないフォントをP2Pネットワーク10を介して他のピア12から取得する。すなわち、アプリケーション実行部20によって自ピア12が保持していないフォントを保持するピア12に対してフォントの送信要求が行われて取得される。
【0124】
続いて、ステップ508では、取得したフォントをフォント変換部72Eによってプリンタフォントに変換してフォント管理部82Dに記憶させ、ステップ510へ移行して、告知情報公開サービス部40で公開された告知情報としてのフォント保持情報を更新して、一連の処理を終了する。
【0125】
続いて、上述のように各ピア12によってフォントが共有された後に、クライアントコンピュータ70で行われるプリント要求受付時の処理について説明する。
【0126】
図15は、本発明の実施の形態に係わるクライアントコンピュータ70で行われるプリント要求時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0127】
まず、ステップ600では、プリンタドライバ70Bによってアプリケーションデータ70CをPDLデータに変換する。
【0128】
次にステップ602では、アプリケーションデータ70Cに含まれるフォントが印刷可能か否かP2Pネットワーク10を介して問い合わせを行う。すなわち、アプリケーション実行部20によって、デバイス72を特定するための情報とフォント保持情報を特定するための情報を含んだファイル探索要求がメッセージ制御部24のメッセージディスパッチ部36に通知され、メッセージディスパッチ部36によって、このファイルを探索するようにピア探索サービス部38に対して要求が行われる。これによって、ピア探索サービス部38によりアプリケーションデータ70Cに含まれるフォントを印刷要求を行うデバイス72が保持しているか否か探索されて、アプリケーション実行部20に通知される。
【0129】
そして、ステップ604では、アプリケーション実行部20に通知された情報を元に、アプリケーションデータ70Cに含まれるフォントを印刷要求を行うデバイス72で処理可能か否か判定し、該判定が否定された場合には、ステップ606へ移行し、肯定された場合には、ステップ608へ移行する。
【0130】
ステップ606では、デバイス72でアプリケーションデータ70Cに含まれるフォントを処理できるように、PDLデータにフォントを埋め込んだ後、ステップ608へ移行する。
【0131】
ステップ608では、PDLデータをデバイス72に通信部70A、72Aを介して送信して、クライアントコンピュータ70による印刷要求時の処理を終了する。
【0132】
一方、上述のようにクライアントコンピュータ70からプリント要求が行われるとデバイス72ではプリント受付処理が行われる。
【0133】
図16は、本発明の実施の形態に係わるデバイス72で行われるプリント受付時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0134】
ステップ700では、PDLデータにフォントが埋め込まれているか否か判定する。すなわち、上述のクライアントコンピュータ70のプリント要求時の処理においてステップ606でPDLデータにフォントが埋め込まれたPDLデータが送信されてきたか否か判定される、該判定が否定された場合にはステップ702へ移行し、肯定された場合にはステップ708へ移行する。
【0135】
ステップ702では、クライアントコンピュータ70から送信されてきたPDLデータに使われているフォントをPDLインタプリタ72Bによって識別して、ステップ704へ移行して、識別したフォントをフォント管理部72Dに通知して、ステップ706へ移行する。
【0136】
ステップ706では、フォント管理部72Dで管理しているフォントをPDLインタプリタ72Bに読み取り、ステップ708へ移行する。すなわち、P2Pネットワーク10を介して取得されたフォントや自ピア12が保持していたフォントがフォント管理部72DからPDLインタプリタ72Bに読み取られる。
【0137】
ステップ708では、PDLインタプリタ72BによってPDLデータをデバイス72で処理可能なデータ形式(例えば、ビットマップデータ等)に変換して、ステップ710へ移行する。
【0138】
ステップ710では、デバイス72でプリント可能なデータ形式に変換されたデータを一時キャッシュ(例えば、フォント名、文字コード、サイズがそれぞれ対応するように一時記憶)して、ステップ712へ移行して、一時記憶されたプリント可能なデータ形式のデータに関する情報をピア12に通知して、ステップ714へ移行し、P2Pネットワーク10の共有情報を更新する。これによって、告知情報公開サービス部40によってP2Pネットワーク10に展開後のデータについても告知され、他のクライアントコンピュータ70やデバイス72等で当該データが必要な場合には、P2Pネットワーク10を介して取得して使用することが可能となる。なお、一時キャッシュのメモリ容量は、予め定められているので、キャッシュ時にメモリ容量を超える場合には、使用頻度の少ないデータや最も古いデータ等を削除してから一時キャッシュして、データが更新される毎に、告知情報公開サービス部40によってP2Pネットワーク10上に公開されたデータについても更新する。
【0139】
そして、ステップ716では、デバイス72が処理可能なデータ形式に変換されたデータに基づいてプリント出力して、デバイス72で行われるプリント受付時の処理を終了する。
【0140】
このように、本実施の形態では、フォントをP2Pネットワーク10上で共有することによって、P2Pネットワーク10上に存在するフォントであれば、PDLデータにフォントを埋め込まずにプリント要求を行うことが可能となり、PDLデータのサイズを小さくすることができる。また、これによって、プリントデータの転送時間を短縮することができると共に、PDLデータにフォントを埋め込まないで済むので、処理時間を短縮することができる。
【0141】
また、PDLデータをビットマップデータ等に変換後のデータについても一時キャッシュして、P2Pネットワーク上に公開するようにしたので、他のクライアントコンピュータ70やデバイス72等で当該データが必要な場合に使用することが可能となり、PDLデータからビットマップデータ等への変換処理の時間についても短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】P2Pネットワークのネットワーク構成図である。
【図2】ピュアP2Pのネットワーク構成図である。
【図3】ハイブリッドP2Pのネットワーク構成図である。
【図4】P2Pネットワークのグループについて説明するための概念図である。
【図5】ピアの基本的構成のブロック図である。
【図6】メッセージ制御部のブロック図である。
【図7】エンドピアで実行される処理のフローチャートである。
【図8】転送機能付きピアで実行される処理のフローチャートである。
【図9】スパニングツリーのイメージ図である。
【図10】P2Pネットワークの他の形態のネットワーク構成図である。
【図11】待ち合わせ機能付きピアで実行される処理のフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態に係わるピアの構成を組み込んだクライアントコンピュータ及びデバイスが接続されたP2Pネットワークの一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係わるクライアントコンピュータに組み込まれたピアによってフォントを共有する際の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態に係わるデバイスに組み込まれたピアによってフォントを共有する際の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態に係わるクライアントコンピュータで行われるプリント要求時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態に係わるデバイスで行われるプリント受付時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0143】
10、11 P2Pネットワーク
12 ピア
18 P2P基盤管理データ記憶部
20 アプリケーション実行部
70 クライアントコンピュータ
70A 通信部
70B プリンタドライバ
70C アプリケーションデータ
70D フォント管理部
70E フォント変換部
72 デバイス
72A 通信部
72B PDLインタプリタ
72C 出力部
72D フォント管理部
72E フォント変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装置が接続され、各装置毎に保持された情報を互いに共有可能なネットワークシステムに接続可能な情報処理装置であって、
自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶する記憶手段と、
前記ネットワークシステムに接続された他の装置から前記フォント保持情報を含む共有情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得した前記共有情報と、前記記憶手段に記憶された前記フォント保持情報とから、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得する探索取得手段と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記ネットワークシステムに接続された他の装置からの画像形成要求を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって受け付けた前記画像形成要求に応じて画像形成を行う画像形成手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像形成手段は、前記画像形成要求に含まれる画像形成するための画像データを自装置で処理可能なデータ形式に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された変換後の画像データを一時保持する保持手段と、を含み、前記保持手段によって保持された変換後の画像データを前記ネットワークシステムに接続された複数の装置で共有し、他の装置からの要求に応じて前記保持手段に保持された変換後の画像データを要求元に送信することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ネットワークシステムは、ピアツーピアシステムであることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
複数の装置が接続され、各装置毎に保持された情報を互いに共有可能なネットワークシステムに接続可能な情報処理装置における情報処理方法であって、
自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶する記憶ステップと、
前記ネットワークシステムに接続された他の装置から前記フォント保持情報を含む共有情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記共有情報と、前記記憶ステップで記憶した前記フォント保持情報とから、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得する探索取得ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項6】
前記ネットワークシステムに接続された他の装置からの画像形成要求を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受け付けた前記画像形成要求に応じて画像形成を行う画像形成ステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記画像形成ステップは、前記画像形成要求に含まれる画像形成するための画像データを自装置で処理可能なデータ形式に変換する変換ステップと、前記変換ステップで変換した変換後の画像データを一時保持する保持ステップと、を含み、前記保持ステップで保持した変換後の画像データを前記ネットワークに接続された複数の装置で共有し、他の装置からの要求に応じて前記保持ステップで保持した変換後の画像データを要求元に送信することを特徴とする請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記ネットワークシステムは、ピアツーピアシステムであることを特徴とする請求項5乃至請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
複数の装置が接続され、各装置毎に保持された情報を互いに共有可能なネットワークシステムに接続可能なコンピュータに以下の情報処理を実行させる情報処理プログラムであって、
前記処理は、
自装置が保持するフォントを表すフォント保持情報を記憶する記憶ステップと、
前記ネットワークシステムに接続された他の装置から前記フォント保持情報を含む共有情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記共有情報と、前記記憶ステップで記憶した前記フォント保持情報とから、自装置が保持していないフォントを他の装置から探索して取得する探索取得ステップと、
を含んだ情報処理プログラム。
【請求項10】
前記処理は、前記ネットワークシステムに接続された他の装置からの画像形成要求を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受け付けた前記画像形成要求に応じて画像形成を行う画像形成ステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の情報処理プログラム。
【請求項11】
前記画像形成ステップは、前記画像形成要求に含まれる画像形成するための画像データを自装置で処理可能なデータ形式に変換する変換ステップと、前記変換ステップで変換した変換後の画像データを一時保持する保持ステップと、を含み、前記保持ステップで保持した変換後の画像データを前記ネットワークに接続された複数の装置で共有し、他の装置からの要求に応じて前記保持ステップで保持した変換後の画像データを要求元に送信することを特徴とする請求項10に記載の情報処理プログラム。
【請求項12】
前記ネットワークシステムは、ピアツーピアシステムであることを特徴とする請求項9乃至請求項11に記載の情報処理プログラム。
【請求項13】
複数のピアが接続されて構成されたピアツーピアシステムであって、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の情報処理装置をピアとして含むことを特徴とするピアツーピアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−171899(P2006−171899A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360345(P2004−360345)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】