情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体
【課題】 効率的な省電力制御を実現する情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供すること。
【解決手段】 本発明の情報処理装置10は、メインシステム110の省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果からメインシステム110による処理が必要であると判定した場合に、メインシステム110を復帰させる制御を行うサブシステム200と、メインシステム110を復帰させる理由となった通信の種類に応じて、メインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段192と、再移行条件の成立を監視し、復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、再移行条件が成立したことに応答して、メインシステム110を省電力状態へ移行する制御手段196とを含む。
【解決手段】 本発明の情報処理装置10は、メインシステム110の省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果からメインシステム110による処理が必要であると判定した場合に、メインシステム110を復帰させる制御を行うサブシステム200と、メインシステム110を復帰させる理由となった通信の種類に応じて、メインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段192と、再移行条件の成立を監視し、復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、再移行条件が成立したことに応答して、メインシステム110を省電力状態へ移行する制御手段196とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置の省電力化技術に関し、より詳細には、効率的な省電力制御を実現する情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置などの情報処理装置における消費電力を低減する目的で、アイドル時にSTR(Suspend To RAM)状態などの省電力状態に移行する技術が知られている。STR状態は、メインシステムで実行中のコンテキストを主記憶装置(RAM)に格納し、デバイスへの電力供給を停止することにより、通常状態よりも省電力な状態に移行する省電力モードの一種である。
【0003】
また、ネットワークに接続された情報処理装置に対しては、ネットワークから種々の通信が発生するため、省電力状態における通信に対処するための技術も知られている。上記技術においては、省電力状態では、消費電力の少ないサブシステムが稼働しており、簡単なパケット通信応答についてはサブシステムで行う。一方、サブシステムのみで応答できない種類の通信や、装置が能動的にデータ送信する通信については、省電力状態から通常状態に復帰した上でメインシステムがその通信の処理を行う。
【0004】
上記省電力状態における通信に対処する従来技術としては、例えば特開2009−29102号公報(特許文献1)を挙げることができる。特許文献1は、省電力モードを維持したままネットワークに対するパケット応答を可能とすることを目的として、省電力モードで動作中に、ネットワークから受信したパケットが情報処理装置宛の処理を必要としない返送要求のパケットである場合に、パケットの受信時における省電力モードを維持した状態で、受信したパケットに対する応答パケットを生成し、生成された応答パケットを返送要求のパケットの送信元にネットワークを介して返送することを特徴とする、情報処理装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述までの従来の省電力制御技術では、装置が通常状態にある時間が比較的長くなってしまい、消費電力を削減の効率性の観点から充分なものではなかった。効率よく消費電力を低減するためには、通常状態にある時間をできるだけ短く、省電力状態に移行している時間をできるだけ長くする必要がある。したがって、操作や通信が発生していない、または発生する可能性が低いアイドル時間は、可能な限り省電力状態に移行していることが望ましい。
【0006】
しかしながら、操作や通信が発生していない、または発生する可能性が低い時間かどうかは、無操作時間や無通信時間に対するしきい値により判断するため、一旦復帰した後は、少なくともしきい値に達するまでの時間経過が必要であり、その時間中は通常状態となる。したがって、通常状態への復帰を必要とする通信が頻発すると、省電力効率は低下してしまう。一方、頻繁なモード移行を回避し、省電力状態により長期間移行させるためには、上記しきい値を或る程度のレベルに維持する必要がある。つまり、従来技術では、省電力状態になるべく長い時間移行させようとして、却ってしきい値に相当する時間だけ通常状態にある時間を長くしてしまい、結果として、省電力効率を充分に向上させることができなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術における不充分な点に鑑みてなされたものであり、本発明は、省電力状態からの復帰が必要なネットワーク通信が発生した場合に、通信の種類に応じて省電力状態へ再度移行する条件を設定することで、全体として省電力状態に移行している時間の割合を大きくして、省電力効率を向上できる情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の特徴を有する情報処理装置を提供する。本発明の情報処理装置は、通常稼働するメインシステムの他、上記メインシステムの省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果からメインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、メインシステムを復帰させる制御を行うサブシステムを備える。本発明の情報処理装置は、さらに、例えばメインシステム上に、メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じてメインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段と、上記通信の種類に応じた再移行条件の成立を監視し、復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、かつ上記再移行条件が成立したことに応答して、メインシステムを省電力状態へ移行する制御手段とを備える。
【0009】
また本発明では、通信の種類がメインシステムのネットワーク制御を司るネットワーク制御モジュールのみで応答可能なものであるか否かに応じて、応答可能なものである場合に、応答可能でない場合に比べて省電力状態へ再移行し易い条件で再移行条件を設定することができる。さらに本発明では、通信の種類が、メインシステムのアプリケーションによるデータ処理を必要とするか否かに応じて、必要とする場合に、必要としない場合に比べて省電力状態へ再移行し難い条件で再移行条件を設定することができる。さらにまた本発明では、復帰させる理由となった通信に対するデータ処理中に新規通信イベントまたはユーザ操作イベントが発生するたびに、省電力状態へ再移行し難い条件へ再移行条件を段階的に変更することができる。さらに本発明によれば、上記情報処理装置が実行する省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【0010】
上記構成によれば、メインシステムとサブシステムとを含み構成される情報処理装置において、メインシステムを復帰させてメインシステム搭載の機能と連携させる必要がある種類の通信に対しては、その種類に応じて再度省電力状態に移行するまでの再移行条件を設定することにより、効率的に省電力状態に再移行することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の画像処理装置が接続されるネットワーク環境を示す図。
【図2】本実施形態の画像処理装置のハードウェア構成を示す図。
【図3】本実施形態の画像処理装置のソフトウェア構成およびハードウェア構成を示す図。
【図4】本実施形態の画像処理装置における省電力制御に関連する機能ブロック図。
【図5】本実施形態のサブシステムが実行する代理応答処理を示すシーケンス図。
【図6】本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件を変化させる復帰処理を示すシーケンス図。
【図7】(A)サブシステムで代理可能なプロトコルリスト、(B,C)復帰レベルを判定するためのテーブルのデータ構造を示す図。
【図8】本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の再移行処理を示すシーケンス図。
【図9】本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の他の再移行処理を示すシーケンス図。
【図10】復帰理由のプロトコルによる通信が発生する毎に復帰レベルが積み上げられる態様を説明する図。
【図11】本実施形態のシステム制御管理部が実行する省電力制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する実施形態では、情報処理装置として、コピー、ファクシミリ、スキャナ、プリント等の画像を扱う複数機能を有する画像処理装置を一例として説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の画像処理装置が接続されるネットワーク環境を示す図である。図1に示すネットワーク環境において、画像処理装置10は、クライアント・コンピュータ(以下、単にクライアントという。)60にネットワーク62を介して接続されている。クライアント60は、ネットワーク62を介して画像処理装置10に対し、プリントジョブ、スキャンジョブ、ファクシミリ送信ジョブなどを要求するための装置であり、直接またはプリントサーバなどを経由して、画像処理装置10に対しジョブを発行することができる。
【0014】
クライアント60としては、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)、スマートフォン、デジタルカメラなどの如何なるコンピュータを挙げることができる。クライアント60は、特定の実施形態では、シングルコア、マルチコアのCPU、ROM、実行空間を提供するRAM、ハードディスク装置などを含み、Windows7(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)、Mac OS(登録商標)Xなどのオペレーティングシステム(OS)による制御の下、後述する各機能部および各処理を実現する。
【0015】
上記ネットワーク62は、イーサネット(登録商標)やTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)などのトランザクション・プロトコルによるLAN(Local Area Network)、VPN(Virtual Private Network)や専用線を使用して接続されるWAN(Wide Area Network)などとして構成される。しかしながら、ネットワーク62の構成は、特に限定されるものではなく、図示しないルータを介して接続されるインターネットを含んでいてもよく、また有線または無線、またはこれらの混合のネットワークとして構成することができる。
【0016】
画像処理装置10は、上記クライアント60からの要求に応答して、プリントジョブ、スキャナジョブ、ファクシミリ送信ジョブを実行する画像処理サービスを提供する。画像処理装置10は、またネットワーク62上のクライアント60や、スイッチ、ルータ、ゲートウェイ、機器管理サーバなどの装置から種々の通信パケットを受信している。画像処理装置10は、メインシステムの省電力状態時に稼働するサブシステムを備えており、省電力状態中に上記通信パケットを受信した場合は、その通信の種類に応じて適宜メインシステムを復帰させて処理する。以下、画像処理装置10の省電力制御を説明するにあたって、まず画像処理装置10のハードウェア構成について説明する。
【0017】
図2は、本実施形態の画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。画像処理装置10は、コントローラ11と、オペレーション・パネル50と、FCU(ファクシミリ・コントロール・ユニット)52と、プロッタ54と、スキャナ56と、他のハードウェア・リソース58とを含む。コントローラ11は、メインCPU(中央演算処理装置)12と、NB(ノース・ブリッジ)14と、NB14を介してメインCPU12と接続するASIC18と、システムメモリ(MEM−P)16とを含む。メインCPU12は、詳細は後述するが、本実施形態のメインシステムを実現するための演算装置である。ASIC18は、AGP(Accelerated Graphic Port)を介してNB14と接続され、各種画像処理を実行する。
【0018】
ASIC18は、ローカルメモリ(MEM−C)20と、ハードディスクドライブ(以下、HDDとして参照する。)22と、図示しないフラッシュメモリなどの不揮発性メモリと接続する。ローカルメモリ20は、コピー用画像バッファや符号バッファとして用いられ、HDD22は、画像データ、文書データ、プログラム、フォントデータやフォームデータなどを蓄積する。不揮発性メモリには、画像処理装置10を制御するためのプログラムや各種システム情報や各種設定情報が格納される。
【0019】
コントローラ11は、SB(サウス・ブリッジ)24と、SB24に接続されるサブCPU26とを含む。サブCPU26は、本実施形態のサブシステムを実現するための演算装置であり、画像処理装置10が説明する省電力状態に移行した後も給電が維持される。サブCPU26は、上述したメインCPU12に比較して低い消費電力で動作することができる。コントローラ11は、さらに、シリアルバス30と、NIC(ネットワーク・インタフェース・カード)32と、USBインタフェース36と、IEEE802.11a/b/gなどのワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38と、IEEE1394インタフェース42と、USBホスト44と、メモリカードインタフェース46とを含み、これらはPCIバス28を介してNB14に接続される。
【0020】
SB24は、図示しないROMやPCIバス周辺デバイスなどをNB14に接続するためのブリッジである。NIC32は、画像処理装置10を有線ネットワーク34に有線接続するためのインタフェース機器であり、有線ネットワーク34を介して各種パケットを送受信している。ワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38は、画像処理装置10を無線ネットワーク40に無線接続するためのインタフェース機器であり、無線ネットワーク40を介して各種パケットを送受信している。シリアルバス30、USBインタフェース36、IEEE1394インタフェース42、USBホスト44およびメモリカードインタフェース46は、それぞれの規格に準じたインタフェースである。上記NIC32およびワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38は、本実施形態においては、画像処理装置10が説明する省電力状態においても給電が維持され、省電力状態の画像処理装置10を復帰させ得るパケットを受信する。
【0021】
上記オペレーション・パネル50は、コントローラ11のASIC18と接続され、オペレータからの各種指示の入力を受付けや、画面表示を行なうためのユーザ・インタフェースを提供する。FCU52、プロッタ54、スキャナ56および他のハードウェア・リソース58は、PCIバス48を介してASIC18に接続される。FCU52は、G3またはG4といったファクシミリ通信規格に準じた通信方法を実行する。プロッタ54およびスキャナ56は、それぞれ、アプリケーションが発行したプリント指令およびスキャン指令を受け、画像形成処理や画像読取処理を実行する。
【0022】
以下、画像処理装置10のソフトウェア構成について説明する。図3は、本実施形態の画像処理装置のソフトウェア構成およびハードウェア構成を示す図である。図3に示した画像処理装置10は、種々のハードウェア・リソースを含むハードウェア部100と、種々のソフトウェア・コンポーネントを含むソフトウェア部110とを含み構成される。
【0023】
ハードウェア部100は、プロッタ54やスキャナ56などのエンジンを制御するエンジン制御ボード102と、上記プロッタ54と、上記スキャナ56と、その他のハードウェア・リソース58とを含む。ソフトウェア部110は、画像処理装置としての機能を提供するための各種アプリケーション170〜180からなるアプリケーション層120と、プラットフォーム層130と、アプリケーション層120およびプラットフォーム層130を仲介する仮想アプリケーション・サービス(VAS)122とを含み構成される。VAS122は、プラットフォーム層130をアプリケーション層120から隠蔽するラッピング機能を備え、プラットフォーム層130のバージョンアップによる差分を吸収している。
【0024】
アプリケーション層120は、プリンタ、コピー、ファックスやスキャナなどの画像形成に関連するユーザ・サービスに固有の処理を行い、図3に示した実施形態では、プリンタ機能を提供するプリンタ・アプリケーション170と、コピー機能を提供するコピー・アプリケーション172と、ファクシミリ機能を提供するファックス・アプリケーション174と、スキャナ機能を提供するスキャナ・アプリケーション176と、ネットワーク・ファイル機能を提供するネットワークファイル・アプリケーション178と、ブラウザ180とを含み構成される。
【0025】
ブラウザ180は、HTTP(HyperText Transfer Protocol)による通信において、クライアント機能を実現するWWWライブラリ124を用いて、外部のウェブ・サーバからHTML(HyperText Markup Language)データを取得するとともに、取得したHTMLデータをWWWライブラリ124を参照して解釈し、当該画像処理装置10のオペレーション・パネル50上に表示させる。ブラウザ180は、さらに、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語を解釈可能に構成され、HTMLデータ中に記述されるスクリプトに従って、当該画像処理装置10のハードウェア・リソースを制御することができる。
【0026】
プラットフォーム層130は、図示しないオペレーティング・システム(OS)とともにアプリケーション170〜180からの処理要求を解釈して、ハードウェア資源の獲得要求を発生するコントロール・サービス層132と、システム資源管理部(SRM)140と、ハンドラ層134とを含み構成される。SRM140は、1つまたは複数のハードウェア・リソースの管理を行い、コントロール・サービス層132からの獲得要求を調停し実行制御する。ハンドラ層134は、SRM140からの獲得要求に応じて、ハードウェア・リソースの管理を行う。OSとしては、例えば、UNIX(登録商標)を採用することができるが、WINDOWS(登録商標)やその他いかなるOSを採用することができる。ソフトウェア部110のソフトウェア・コンポーネントは、UNIX(登録商標)などのOSにより、プロセス単位で並列的に実現される。
【0027】
各種コントロール・サービスとしては、図3に示した実施形態では、ネットワーク制御サービス(NCS)142と、デリバリー制御サービス(DCS)144と、オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146と、ファクシミリ制御サービス(FCS)148と、エンジン制御サービス(ECS)150と、メモリ制御サービス(MCS)152と、認証制御サービス(CCS)156と、ユーザ情報制御サービス(UCS)154と、システム制御サービス(SCS)158とを含む。
【0028】
SCS158は、各種アプリケーションの管理、システム画面表示やLED表示などのユーザ・インタフェースの制御、ハードウェア資源の管理、割込みアプリケーションの制御、本実施形態の省電力制御を行う。UCS154は、ユーザ情報を管理する。CCS156は、認証処理および課金処理に関する制御を行う。MCS152は、画像メモリの取得および解放、画像データの圧縮・伸張等のメモリ制御などを行う。
【0029】
ECS150は、プロッタ54やスキャナ56などのハードウェア・リソースを制御し、画像読取りや画像形成動作などを実行し、各アプリケーションから受信したジョブを、一枚単位の原稿、転写紙レベルにプロセスを分割して、該プロセスを管理し、画像読取や画像形成動作を制御する。FCS148は、GSTNインタフェースと接続し、GSTN網を使用したファクシミリ送受信、バックアップメモリで管理されている各種ファクシミリ・データの登録/引用、ファクシミリ読み取りなどを制御する。
【0030】
OCS146は、オペレータと本体制御との間のインタフェースとなるオペレーション・パネル50の制御を行う。DCS144は、HDD22などに蓄積された蓄積文書の配信を制御を行う。NCS142は、NIC32やワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38を制御して、画像処理装置10をイーサネット(登録商標)に接続し、ネットワークI/Oを必要とするアプリケーションに対して共通に利用可能なサービスを提供する。NCS142は、また、ネットワーク側から各プロトコルによって受信したデータを各アプリケーションに振り分け、各アプリケーションからのデータをネットワーク側に送信する際の仲介を行う。さらに本実施形態のNCS142は、上記ネットワーク通信の種類に応じた省電力制御を実現するための判定処理を行う。
【0031】
また、プラットフォーム層130とアプリケーション層120との間には、アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)136を有し、プラットフォーム層130は、API136に含まれる予め定義された関数により、各種アプリケーション170〜180からの処理要求を受信している。SRM140は、SCS158とともにシステム制御およびハードウェア・リソースの管理を行い、獲得要求されたハードウェア・リソースが利用可能か否かを判定する。SRM140は、利用可能であれば獲得要求されたハードウェア・リソースが利用可能である旨を上位層に通知する。また、SRM140は、上位層からの獲得要求に対して、ハードウェア・リソースを利用するためのスケジューリングを行い、例えばプロッタ54による紙搬送や画像形成動作やメモリ確保やファイル生成などを直接実施している。
【0032】
ハンドラ層134は、FCU52を管理するファクシミリ・コントロール・ユニット・ハンドラ(FCUH)160と、プロセスに対するメモリ割当て、プロセスに割当てたメモリの管理を行うイメージメモリハンドラ(IMH)162とを含み構成される。SRM140、FCUH160およびIMH162は、エンジン・インタフェース(I/F)138に含まれる予め定義されている関数を使用して、ハードウェア部100のハードウェア・リソースに対する処理要求を送信する。
【0033】
画像処理装置10は、上述のソフトウェア群により、プロッタ54、スキャナ56、HDD22などのハードウェア・リソースを制御し、ユーザ・インタフェースを介したユーザ指令や外部コンピュータからの入力に応答して、コピーやファクシミリやモノクロコピーやフルカラーコピーなどの機能をユーザに提供している。なお、上述のアプリケーションおよびコントロール・サービス、ハードウェアは、種々の組み合わせにより構成することができ、例えば、特定の用途、機種に対応して追加・削除することができる。また、図3に示した実施形態では、画像処理装置としての各アプリケーションや制御サービスにおける共通部分を抽出して、プラットフォーム化した構成として参照したが、画像処理装置10のハードウェア構成およびソフトフェアの構成は、特に限定されるものではない。
【0034】
以下、本実施形態の画像処理装置10が実行する省電力制御について説明する。図4は、本実施形態の画像処理装置10における省電力制御に関連する機能ブロック図である。図4には、メインシステムであるソフトウェア部(以下、メインシステムと参照する。)110上のコンポーネントと、サブシステム200上のコンポーネントとが示されている。メインシステム110は、通常状態において画像処理装置としてのサービスを提供するためのシステムである。一方、サブシステム200は、メインシステム110が省電力状態に移行している間稼働し、メインシステム110に代理してネットワーク62からの通信パケットを処理するためのシステムである。
【0035】
上述した省電力状態としては、コントローラ11上の各コンポーネントへの給電状態、プロッタ54の定着ユニットへの給電状態等に対応して種々のモードが考えられる。説明する実施形態では、メインシステム110で実行中のコンテキストをシステムメモリ16に維持したまま、サブCPU26、NIC32やワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38などサブシステム200で必要なコンポーネットを除く大部分のコンポーネントへの電力供給を停止し、クロック供給を停止するSTRモードを一例として説明する。しかしながら、システムメモリ16の内容をハードディスクなどの不揮発性記憶領域に格納し、システムメモリ16を含めて電力供給を停止するコントローラオフモードなど、ネットワーク通信の一部をサブシステム200に代理をさせるような、あらゆる省電力モードに対して適用することができる。
【0036】
上記メインシステム110に含まれる省電力制御に関連するコンポーネントとしては、図4には、アプリケーション層120と、ネットワーク制御サービス(NCS)142と、システム制御サービス(SCS)158と、オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146とが示されている。アプリケーション層120は、プリンタ・アプリケーション170やコピー・アプリケーション172など、ネットワーク通信に応答し得るアプリケーションを含む。オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146は、オペレーション・パネル50に対するユーザ操作などを受け付けるユーザ・インタフェース188を含む。ユーザ・インタフェース188は、例えば省電力状態から復帰した後、ユーザ操作があるとシステム制御サービス158にその旨を通知する。
【0037】
システム制御サービス(SCS)158は、システム制御管理部196と、電力管理部198とを含む。システム制御管理部196は、メインシステム110の起動、終了といったシステム制御を行う。また、本実施形態のシステム制御管理部196は、省電力状態へ移行する移行条件の成立を監視し、移行条件が成立したことに応答して、メインシステム110を省電力状態へ移行するシステム制御を行う。なお、システム制御管理部196は、本実施形態の制御手段を構成する。電力管理部198は、メインシステム110の電源管理を行う。
【0038】
ネットワーク制御サービス(NCS)142は、ネットワーク送受信部190と、ネットワーク制御管理部192と、複数のプロトコル処理部194a〜194zとを含む。ネットワーク制御管理部192は、ネットワーク制御サービス142の起動制御を行う。ネットワーク送受信部190は、ネットワーク62との通信パケットを交換するコンポーネントであり、ネットワーク62から受信した通信パケットを適切なプロトコル処理部194に振り分け、またプロトコル処理部194a〜194zからの通信パケットをネットワークへ送信する。プロトコル処理部194a〜194zは、各種プロトコル制御プログラム(デーモン)であり、通信パケットを受け取り、印刷系(lp / ippd / centrod)、ファイル転送系(httpd / ftpd)、機器管理系(snmpd)などのそれぞれが担当するプロトコル処理を実行して応答を返す。なお、説明する実施形態では、1プロトコルに対し1つのプロトコル処理部194が処理を担当している。
【0039】
一方、上記サブシステム200に含まれる省電力制御に関連するコンポーネントとしては、ネットワーク送受信部202と、プロトコル解析部204と、プロトコル処理部206a〜206zと、サブシステム管理部208とを含む。ネットワーク送受信部202は、ネットワーク62との通信パケットを交換するコンポーネントであり、まずネットワーク62から受信した通信パケットをプロトコル解析部204に解析依頼し、解析結果から当該サブシステム200で代理可能であると判断された場合には、適切なプロトコル処理部194に振り分け、またプロトコル処理部206a〜206zからの通信パケットをネットワークへ送信する。
【0040】
プロトコル解析部204は、メインシステム110からサブシステム200で代理するべきプロトコル(あるいはさらに細分化した通信の種類)の登録を受けており、ネットワーク送受信部202から依頼された通信パケットをプロトコル解析し、プロトコルを特定するとともに、本サブシステム200で代理可能であるか否かを判定し、解析結果をネットワーク送受信部202に返す。プロトコル処理部206は、上記メインシステム110と同様の各種プロトコル制御プログラム(デーモン)であり、当該サブシステム200で代理可能な通信パケットについて、ネットワーク送受信部202からの依頼に応答してプロトコル処理を実行して応答する。サブシステム管理部208は、サブシステム200の起動、終了およびメインシステム110に対する電源投入依頼を行う。
【0041】
上述したように本実施形態の画像処理装置10は、省電力状態時にネットワーク通信を受信した場合、サブシステム200で代理可能である通信については、メインシステム110を復帰させずに、サブシステム200が代理応答する。一方、ネットワーク通信の中には、サブシステム200のみで処理を完結することができない通信の種類も存在し、そのような場合は、メインシステム110を省電力状態から復帰させる必要がある。しかしながら、メインシステム110による処理が必要であると判定されるネットワーク通信の中にも、さらに、細分化された種類があり、単純に1パケットを応答すれば済む負荷の小さなものから、印刷やウェブ・ブラウジングのような頻繁なパケット交換を発生させる必要がある負荷の大きなものまで種々の種類がある。前者のような負荷の小さな通信は、短時間、小データ量、散発的に発生することが多いのに対し、後者のような負荷の大きな通信は、比較的長時間、大データ量、断続的に発生することが多い。後者の負荷の大きな通信を受信した場合は、STR状態に移行すべきかどうかを判断するために、ユーザ操作や通信を長時間監視する必要があるが、前者の負荷の小さな通信については、短期間の監視で充分である。
【0042】
そこで、本実施形態の省電力制御では、メインシステム110を復帰させる場合に、メインシステム110が復帰してから省電力状態に再移行するまでの再移行条件を、ネットワーク通信の種類に応じて変化させて、不必要に通常状態にいる時間を短縮する。上記再移行条件は、例えば、「復帰後10分経過すること」といった、メインシステムが復帰してからの時間経過に対するしきい値として条件付けることができる。
【0043】
本実施形態のネットワーク制御管理部192は、メインシステムが復帰した際に、その復帰の理由となったネットワーク通信の種類に応じて、省電力状態へ再度移行させる再移行条件(例えば時間)を設定する。また、ネットワーク制御管理部192は、上記通信の種類が、メインシステムのネットワーク制御を司るネットワーク制御サービス(NCS)142のみで応答可能なものであるか否かに応じて、応答可能なものである場合に、応答可能なものではない場合に比べて省電力状態へ再移行し易い条件(例えば短い時間)で再移行条件を設定することができる。さらにネットワーク制御管理部192は、ネットワーク通信の種類が、メインシステム110のアプリケーション170〜180によるデータ処理を必要とするか否かに応じて、必要とする場合に、必要としない場合に比べて省電力状態へ再移行し難い条件(例えば長い時間)で再移行条件を設定することができる。なお、ネットワーク制御管理部192は、本実施形態の設定手段を構成する。
【0044】
以下、図5を参照しながら、サブシステム200による代理応答処理について説明する。図5は、本実施形態のサブシステムが実行する代理応答処理を示すシーケンス図である。なお、図5に示す処理は、画像処理装置10が既にSTR状態に移行している段階からステップS101で開始する。ステップS101では、ネットワーク送受信部202は、NIC32などを介してネットワークデータを受信し、ステップS102で、プロトコル解析部204に対しプロトコル解析を依頼する。ステップS103では、プロトコル解析部204は、依頼されたネットワークデータに対しプロトコル解析を実施する。図7(A)は、サブシステム200で代理可能なプロトコルリストを例示する。図7(A)に示す代理可能なプロトコルのリストは、例えばメインシステム110から、代理するべきものとしてプロトコル解析部204に予め登録される。図7(A)に示す例では、アプリケーション層120などの上位層の処理を必要としないICMP(Internet Control Message Protocol)、ICMPv6(Internet Control Message Protocol Version 6)のEchoRequestやARP(Address Resolution Protocol)、Windows(登録商標)XPやWindows(登録商標)Vistaにおいて周期的に送信されるSNMPのGetRequestなどの種類が登録されている。
【0045】
ステップS104では、プロトコル解析部204は、上記プロトコル解析依頼に対する応答としてプロトコル解析結果をネットワーク送受信部202へ返す。上記プロトコル解析結果には、ネットワークデータから特定されたプロトコル名と、サブシステム200で代理応答が可能であるか否かを示す値とを含む。なお、図5に示す例では、ネットワークデータはサブシステム200で代理応答が可能であり、メインシステムをSTR状態から復帰させる必要がない場合を例示する。ステップS105では、ネットワーク送受信部202は、特定されたプロトコルに対応したプロトコル処理部206に対し、プロトコル処理を依頼する。ステップS106では、対応するプロトコル処理部206は、ネットワークデータに対して所定のプロトコル処理を実行し、ステップS107で、プロトコル処理の結果として、ネットワーク送受信部202に対しデータ送信を依頼する。ステップS108では、ネットワーク送受信部202は、依頼にかかるネットワークデータの送信処理を実行する。
【0046】
上述したように本実施形態の画像処理装置10では、図5に示したように、メインシステム110を煩わせる必要のないネットワーク通信については、サブシステム200で代理して応答することで、これにより画像処理装置10の省電力効率を高めている。
【0047】
以下、図6を参照しながら、ネットワーク通信の種類に応じて省電力状態に再移行するための再移行条件を変化させる省電力制御について説明する。図6は、本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件を変化させる復帰処理を示すシーケンス図である。なお、図6に示す処理は、図5と同様に、画像処理装置10が既にSTR状態に移行している段階からステップS201で開始する。ステップS201では、ネットワーク送受信部202は、ネットワークデータを受信し、ステップS202で、プロトコル解析部204に対しプロトコル解析を依頼する。ステップS203では、プロトコル解析部204は、依頼されたネットワークデータに対しプロトコル解析を実施する。ステップS204では、プロトコル解析部204は、プロトコル解析結果をネットワーク送受信部202へ返す。なお、図6に示す例では、ネットワークデータはサブシステム200のみでは代理応答が不可能であり、メインシステムをSTR状態から復帰させる必要があると解析された場合を例示する。
【0048】
ステップS205では、ネットワーク送受信部202は、サブシステム管理部208に対し、プロトコル名を渡すとともに、メインシステム110の起動依頼を行う。ステップS206では、サブシステム管理部208は、メインシステム110と通信し、システム制御サービス(SCS)158の電力管理部198に対し、復帰理由を通知するとともに、電源投入依頼を行う。なお、上記復帰理由とは、上記プロトコル解析部204が特定したプロトコル名と同様の情報であり、ネットワーク通信の種類を識別するための情報である。復帰理由は、プロトコル名そのままとしても良いし、さらに細分化された理由としてもよい。ステップS207では、メインシステム110の電力管理部198は、本メインシステム110の復帰処理を行い、システム制御管理部196に対し復帰通知を行う。ステップS208では、システム制御管理部196は、さらに、ネットワーク制御管理部192に対して復帰通知を行う。復帰通知には、上述した復帰理由が付される。
【0049】
ステップS209では、ネットワーク制御管理部192は、上記復帰理由から復帰レベルを判定する。ここで、復帰レベルとは、上述した復帰理由となるネットワーク通信の種類に応じて省電力状態へ再移行する再移行条件(時間)を変更するために定義されるレベルである。本明細書では、復帰レベルは、小さい値の方が省電力状態へ再移行し易いことを意味するように用いる。復帰レベルが上がるに従って、再移行条件が厳しくなり、その最大値は、通常の省電力状態へ移行する移行条件に対応する。図7(B)および(C)は、復帰レベル判定に用いることができるテーブルのデータ構造を示す。図7(B)は、ネットワーク通信の種類に応じて、メインシステム110のネットワーク制御サービス(NCS)142の処理が必要であるか否か、アプリケーション170〜180による処理が必要であるか否かを対応付けるテーブルである。図7(C)は、上記処理の要否の組み合わせに対して復帰レベルを対応付けるテーブルである。なお、図7(C)における「新たな通信・操作が発生」列は、後述する復帰レベルの変更処理等で使用されるものであり、ステップS209では、「No」であるとする。また、図7(C)における「再移行条件」列は、復帰レベルに対応付けられる実際の再移行条件を示している。
【0050】
本実施形態のネットワーク制御管理部192は、図7(B)および(C)に示すようなデータ構造を用いて、ネットワーク通信の種類に応じて復帰レベルを判定する。なお、図7(B)および(C)に示すようなデータは、例えば、管理者が、オペレーション・パネル50を介してシステム設定画面で予め設定することができる。また、図7(B)および(C)は、例示であり、通信の種類に対して復帰レベルを条件付ける如何なるデータ構造を採用することができる。また、登録されるネットワーク通信の種類としては、印刷ジョブやSNMPの他、スキャナジョブ、ファクシミリジョブ、ファイル転送などアプリケーション層120との連携が必要な他のプロトコルや、NPMP(Network Peripheral Management Protocol)などの他の機器管理プロトコルを挙げることができる。
【0051】
ステップS210では、ネットワーク制御管理部192は、省電力状態への移行制御を行っているシステム制御管理部196に対し、上記判定した復帰レベルを通知して設定する。システム制御管理部196は、復帰レベルの通知を受けて、復帰レベルまたは上記対応する再移行条件を記憶する。また、ステップS211では、ネットワーク制御管理部192は、パケット処理を行わせるために、ネットワーク送受信部190およびプロトコル処理部194を起動する。ステップS212では、電源管理部198は、サブシステム200と通信し、サブシステム管理部208に対し電源が投入された旨を報告する。ステップS213では、サブシステム管理部208は、ネットワーク送受信部202に対し、メインシステム110が起動した旨を報告し、ステップS214以降は通常状態となる。
【0052】
以下、図8を参照しながら、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の再移行処理について説明する。図8は、本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の再移行処理を示すシーケンス図である。なお、図8に示す例は、図6に示すステップS214の処理により通常状態になった後の段階からステップS301で開始する。ステップS301では、ネットワーク送受信部190は、上述した復帰の理由となったネットワークデータの転送を受けて、ステップS302で、ネットワークデータの受信処理を行う。ステップS303では、ネットワーク送受信部190は、適切なプロトコル処理部194に対しデータ処理を依頼する。
【0053】
ステップS304では、プロトコル処理部194は、依頼されたネットワークデータに対して所定のデータ処理を実行する。図8は、ネットワーク通信の種類がアプリケーション170〜180によるデータ処理を必要とする場合について例示する。ステップS305では、プロトコル処理部194は、アプリケーション170〜180のいずれかのアプリケーションに対し、データ処理を依頼し、その処理結果を受け取る。ステップS306では、プロトコル処理部194は、ネットワーク送受信部190に対しデータ送信を依頼する。ステップS307では、ネットワーク送受信部190は、渡されたデータのネットワークデータ送信を行い、ステップS308では、上記復帰の理由となった通信に対する応答として、データが転送される。後続する処理が適宜行われた後、ステップS309で、プロトコル処理部194が、当該復帰理由となったネットワーク通信に対する処理がすべて完了したと判定すると、ステップS310で、プロトコル処理部194は、ネットワーク制御管理部192に対しデータ処理が完了した旨を報告する。
【0054】
ステップS311では、ネットワーク制御管理部192は、上記復帰理由の通信以外のネットワーク通信が発生していないことを確認する。ステップS311で、復帰理由以外のネットワーク通信が発生していないことの確認が行われると、ステップS312では、ネットワーク制御管理部192は、システム制御管理部196に対し、復帰理由の通信に対する処理が完了した旨を通知する。なお、ここにいう復帰理由以外のネットワーク通信とは、例えば画像処理装置10側からネットワーク62へ能動的にデータ送信するアウトバウンド通信をいう。このような能動的なネットワーク通信が発生している場合、画像処理装置10はアイドル状態ではないため、直ちに省電力状態に移行させることは適切ではない。そこで、本実施形態では、ネットワーク制御管理部192は、上記完了した旨の報告に合わせて、能動的なネットワーク通信が発生した旨をシステム制御管理部196に通知し、図6に示すステップS209で判定した復帰レベルに応じた再移行条件を維持せず、復帰レベルを最大値に設定し直し、通常の移行条件を適用する。
【0055】
ステップS313では、システム制御管理部196は、さらに、ユーザ操作の有無を判定する。画像処理装置10に対するユーザ操作が行われているということは、画像処理装置10が操作中であり、直ぐに省電力状態に移行させることが適切ではない。そこで、本実施形態では、オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146から通知があり、ユーザ操作中であると判定された場合は、システム制御管理部196は、図6に示すステップS209で判定した復帰レベルに応じた再移行条件を維持せず、復帰レベルを最大値に変更し、通常の移行条件を適用する。ユーザ操作中ではないと判定された場合は、そのまま図6に示すステップS209で判定した復帰レベルに応じた再移行条件が維持される。
【0056】
ステップS313で、ユーザ操作が発生していないことの確認が行われると、ステップS314では、システム制御管理部196は、現在設定されている復帰レベルを確認し、復帰レベルに対応した再移行条件が成立するまで待つ。図6に示すステップS209で判定された復帰レベルのまま変更がなければ、上記ネットワーク通信の種類に応じた再移行条件が適用される。図8に示すステップS311またはS313で復帰レベルが最大値に設定し直されているのであれば、通常の移行条件が適用される。移行条件が成立するまで上記ユーザ操作や別途の新たなアウトバウンド通信が発生しなければ、ステップS315で、システム制御管理部196は、電力管理部198に対しSTR状態へ移行するよう依頼する。ステップS316では、電力管理部198は、サブシステム200と通信し、ネットワーク送受信部202に対し、STR移行する旨を通知する。ステップS317では、電力管理部198は、メインシステム110のソフトウェア・コンポーネントがシャットダウン完了した後、PSU(Power Supply Unit)に対し命令を行って省電力モードに対応したコンポーネントへの電源を遮断し、ステップS318で、省電力状態に再移行する。
【0057】
上述したように本実施形態の画像処理装置10では、メインシステム110を復帰する必要がある場合であっても、再移行条件を一律に決めずに、復帰の理由となったネットワーク通信の種類に応じて適切な復帰レベル、再移行条件を設定することができるため、不必要に通常状態にいる時間を短縮し、省電力効率を向上することができる。以下、さらに、復帰後に発生するイベントに応じて再移行条件を適切に変更する省電力制御について説明する。
【0058】
図9は、本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の他の再移行処理を示すシーケンス図である。なお、図9に示す例は、図8と同様に、図6に示すステップS214の処理により通常状態になった後の段階からステップS401で開始する。ステップS401では、ネットワーク送受信部190は、復帰の理由となったネットワークデータの転送を受けて、ステップS402で、ネットワークデータの受信処理を行う。ステップS403では、ネットワーク送受信部190は、適切なプロトコル処理部194に対し、データ処理を依頼する。プロトコル処理部194は、ステップS404で、依頼されたネットワークデータに対してデータ処理を実行し、必要に応じてステップS405で、アプリケーション170〜180に対しデータ処理を依頼し、その処理結果を受け取る。ステップS406では、プロトコル処理部194は、ネットワーク送受信部190に対しデータ送信を依頼し、ステップS407では、ネットワーク送受信部190は、ネットワークデータ送信処理を行い、ステップS408で、データが転送される。
【0059】
図9に示す例では、復帰理由の通信に対する処理が行われている間にイベントが発生し、そのイベントに応じて復帰レベルが変更される。例えば、イベントE1−1として、他の復帰理由の通信が発生し、ネットワーク送受信部190がそのネットワーク通信のデータ転送を受けた場合は、ネットワーク送受信部190は、ステップE1−2で、ネットワークデータ受信処理その他の応答処理を行った後、ステップE1−3で、システム制御管理部196に対し新規通信の発生を通知する。このようなネットワーク通信が発生しているということは、画像処理装置10は、再移行の判断をより慎重に行う必要があることを意味するため、システム制御管理部196は、ステップE1−4で、新規通信イベント毎に復帰レベルを段階的に引き上げる。復帰レベルの引き上げ方としては、特に限定されるものではないが、例えば1段階ずつ引き上げたり、図10に示すように復帰理由のプロトコル毎に対応する復帰レベルを積み上げたりすることができる。なお、図10では、復帰レベルLがプロトコル毎に値が加算されている。また、イベントE2−1として、システム制御管理部196がオペレーション・パネル制御サービス(OCS)146からの通知を受けて処理中のユーザ操作の発生を検知した場合は、再移行の判断をより慎重に行う必要があるため、システム制御管理部196は、ステップE2−2で、ユーザ操作イベント毎に復帰レベルを1段引き上げたりすることで、復帰レベルを段階的に変更する。
【0060】
ステップS409で、プロトコル処理部194が、当該復帰理由となったネットワーク通信に対する処理をすべて完了させると、ステップS410で、プロトコル処理部194は、ネットワーク制御管理部192に対してデータ処理が完了した旨を報告する。ステップS411では、ネットワーク制御管理部192は、上記復帰理由の通信以外のネットワーク通信が現在発生していないことを確認する。説明を加えると、上記復帰レベルの変更を促す新規通信は、画像処理装置10が受信した他の復帰理由等による通信であり、一方ステップS411で発生していないことを確認する通信は、画像処理装置10が能動的に行うアウトバウンド通信である。復帰理由以外のネットワーク通信が発生すると、図8と同様に、復帰レベルが最大値とされ、通常の移行条件が適用される。ステップS411で、復帰理由以外のネットワーク通信が発生していないことが確認されると、ステップS412では、ネットワーク制御管理部192は、復帰理由の通信に対する処理が完了した旨をシステム制御管理部196に通知する。
【0061】
ステップS413では、システム制御管理部196は、さらに、ユーザ操作の有無を判定する。ステップS413で、ユーザ操作が発生していないことが確認されると、ステップS414では、システム制御管理部196は、現在設定されている復帰レベルを確認し、復帰レベルに対応した再移行条件が成立するまで待つ。図6に示すステップS209で判定された復帰レベルのまま変更がなければ、上記ネットワーク通信の種類に応じた再移行条件が確認される。図9に示すステップE1−4またはE2−2でイベントに応じて復帰レベルが変更された場合、ステップS411またはS413で復帰レベルが最大値に設定された場合は、これらに対応する移行条件が適用される。移行条件が成立するまで上記ユーザ操作や別途の新たなアウトバウンド通信が発生しなければ、ステップS415で、システム制御管理部196は、電力管理部198に対しSTR状態へ移行するよう依頼する。ステップS416では、電力管理部198は、ネットワーク送受信部202に対し、STR移行する旨を通知し、ステップS417で、メインシステム110の省電力モードに対応したコンポーネントへの電源を遮断し、ステップS418で、再度、省電力状態に移行する。
【0062】
図11は、本実施形態のシステム制御管理部が実行する、省電力制御処理を示すフローチャートである。図11に示す処理は、メインシステム110の復帰に応答してステップS500から開始し、ステップS501では、システム制御管理部196は、サブシステム200から電力管理部198を経由して復帰通知を受信し、さらに復帰通知をネットワーク制御管理部192に通知する。ステップS502では、システム制御管理部196は、復帰した時刻を記録する。ステップS503では、システム制御管理部196は、ネットワーク制御管理部192から復帰レベルの通知を受信し、ステップS504で、受信した復帰レベルを設定し、保持する。
【0063】
ステップS505では、システム制御管理部196は、上述したユーザ操作または復帰理由となる新規通信のイベントが発生しているか否かを判定する。ステップS505で、オペレーション・パネル制御サービス146からの通知を受けてユーザ操作イベントが発生したと判定された場合、またはネットワーク制御サービス142からの通知を受けて新規通信イベントが発生したと判定された場合(YES)は、ステップS506へ処理を分岐させる。ステップS506では、システム制御管理部196は、復帰レベルを段階的に変更し、ステップS507へ処理を進める。復帰レベルは、段階的に、通常の移行条件に相当する最大値まで増加し得る。一方、ステップS505で、ユーザ操作または新規通信のイベントが発生していないと判定された場合(NO)には、ステップS507へ直接処理を進める。
【0064】
ステップS507では、システム制御管理部196は、復帰理由にかかる処理の完了の通知を受けたか否かを判定する。ステップS507で、復帰理由処理完了の通知がなされていない場合(NO)は、ステップS505へループさせ、復帰理由処理が完了するまで待ち受ける。一方、ステップS507で、復帰理由処理完了の通知を受けたと判定された場合(YES)は、ステップS508へ処理を進める。ステップS508では、システム制御管理部196は、ユーザ操作の有無を判定する。ステップS508で、ユーザ操作が有ると判定された場合(YES)は、ステップS509へ処理を分岐させて、復帰レベルを最大値に変更し、通常の移行条件を適用し、ステップS510へ処理を進める。一方、ステップS508で、ユーザ操作が無いと判定された場合(NO)は、ステップS510へ直接処理を進める。
【0065】
ステップS510では、システム制御管理部196は、現在の復帰レベルと、それに応じた再移行条件とを確認する。ステップS511では、システム制御管理部196は、再移行条件の成立を監視して、現在アイドル状態が解除されたか否かを判定する。ステップS511で、アイドル状態が解除されたと判定される場合(YES)は、ステップS512へ処理を進め、通常の移行条件が適用される通常制御へ移行する。一方、ステップS511で、アイドル状態のままであると判定される場合(NO)は、ステップS513へ処理を進める。ステップS513では、システム制御管理部196は、記録した復帰時刻からの経過時間等を計り、再移行条件が成立したか否かを判定し、成立するまでの間(NOの間)、ステップS511へ処理をループさせる。一方、アイドル状態が継続したまま再移行条件が成立し、ステップS513で、再移行条件が成立したと判定された場合(YES)には、ステップS514へ処理を進める。ステップS514では、システム制御管理部196は、電力管理部198に対し、省電力状態(STR状態)へ再移行を依頼し、ステップS515で、処理を終了させる。
【0066】
以上説明した実施形態によれば、メインシステム110とサブシステム200とが構成される画像処理装置10において、メインシステム110を復帰させてメインシステム搭載の機能と連携させる必要がある種類のネットワーク通信に対しては、その種類に応じて再移行条件を設定することにより、種類に関わらず条件を一律とする場合と比較しても、全体として省電力状態に移行している時間の割合を大きくすることができる。したがって、効率的な省電力制御が実現される。
【0067】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、省電力状態からの復帰が必要なネットワーク通信が発生した場合に、通信の種類に応じて省電力状態へ再度移行する条件を設定することで、全体として省電力状態に移行している時間の割合を大きくして、省電力効率を向上できる情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【0068】
なお、上述までの実施形態では、情報処理装置として、複数機能を有する画像処理装置を用いて説明したが、情報処理装置は、これに限定されるものではない。本発明は、プリンタ、複写機などの画像形成装置、スキャナなどの画像読取装置、ファクシミリなどの画像通信装置を含む、単一のまたは複数の画像処理機能を提供する如何なる画像処理装置に対しても適用することができる。さらに、本発明は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビジョン、PDAやタブレット端末などの携帯情報端末、パーソナルコンピュータなど、ネットワークに接続する種々の電子機器に適用することができる。
【0069】
本実施形態の上記機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD−ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0070】
これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
10…画像処理装置、11…コントローラ、12…メインCPU、14…NB、16…システムメモリ、18…ASIC、20…ローカルメモリ、22…HDD、24…SB、26…サブCPU、28…PCIバス、30…シリアルバス、32…NIC、34…有線ネットワーク、36…USBインタフェース、38…ワイヤレス・ネットワーク・アダプタ、40…無線ネットワーク、42…IEEE1394インタフェース、44…USBホスト、46…メモリカード・インタフェース、48…PCIバス、50…オペレーション・パネル、52…FCU、54…プロッタ、56…スキャナ、58…ハードウェア・リソース、60…クライアント、62…ネットワーク、100…ハードウェア部、102…エンジン制御ボード、110…ソフトウェア部(メインシステム)、120…アプリケーション層、122…VAS、124…WWWライブラリ、130…プラットフォーム層、132…制御サービス層、134…ハンドラ層、136…API、138…エンジンI/F、140…システム資源管理部、142…NCS、144…DCS、146…OCS、148…FCS、150…ECS、152…MCS、154…UCS、156…CCS、158…SCS、160…FCUH、162…IMH、170…プリンタ・アプリケーション、172…コピー・アプリケーション、174…ファックス・アプリケーション、176…スキャナ・アプリケーション、178…ネットワークファイル・アプリ、180…ブラウザ、188…ユーザインタフェース、190…ネットワーク送受信部、192…ネットワーク制御管理部、194…プロトコル処理部、196…システム制御管理部、198…電力管理部、200…サブシステム、202…ネットワーク送受信部、204…プロトコル解析部、206…プロトコル処理部、208…サブシステム管理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2009−29102号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置の省電力化技術に関し、より詳細には、効率的な省電力制御を実現する情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置などの情報処理装置における消費電力を低減する目的で、アイドル時にSTR(Suspend To RAM)状態などの省電力状態に移行する技術が知られている。STR状態は、メインシステムで実行中のコンテキストを主記憶装置(RAM)に格納し、デバイスへの電力供給を停止することにより、通常状態よりも省電力な状態に移行する省電力モードの一種である。
【0003】
また、ネットワークに接続された情報処理装置に対しては、ネットワークから種々の通信が発生するため、省電力状態における通信に対処するための技術も知られている。上記技術においては、省電力状態では、消費電力の少ないサブシステムが稼働しており、簡単なパケット通信応答についてはサブシステムで行う。一方、サブシステムのみで応答できない種類の通信や、装置が能動的にデータ送信する通信については、省電力状態から通常状態に復帰した上でメインシステムがその通信の処理を行う。
【0004】
上記省電力状態における通信に対処する従来技術としては、例えば特開2009−29102号公報(特許文献1)を挙げることができる。特許文献1は、省電力モードを維持したままネットワークに対するパケット応答を可能とすることを目的として、省電力モードで動作中に、ネットワークから受信したパケットが情報処理装置宛の処理を必要としない返送要求のパケットである場合に、パケットの受信時における省電力モードを維持した状態で、受信したパケットに対する応答パケットを生成し、生成された応答パケットを返送要求のパケットの送信元にネットワークを介して返送することを特徴とする、情報処理装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述までの従来の省電力制御技術では、装置が通常状態にある時間が比較的長くなってしまい、消費電力を削減の効率性の観点から充分なものではなかった。効率よく消費電力を低減するためには、通常状態にある時間をできるだけ短く、省電力状態に移行している時間をできるだけ長くする必要がある。したがって、操作や通信が発生していない、または発生する可能性が低いアイドル時間は、可能な限り省電力状態に移行していることが望ましい。
【0006】
しかしながら、操作や通信が発生していない、または発生する可能性が低い時間かどうかは、無操作時間や無通信時間に対するしきい値により判断するため、一旦復帰した後は、少なくともしきい値に達するまでの時間経過が必要であり、その時間中は通常状態となる。したがって、通常状態への復帰を必要とする通信が頻発すると、省電力効率は低下してしまう。一方、頻繁なモード移行を回避し、省電力状態により長期間移行させるためには、上記しきい値を或る程度のレベルに維持する必要がある。つまり、従来技術では、省電力状態になるべく長い時間移行させようとして、却ってしきい値に相当する時間だけ通常状態にある時間を長くしてしまい、結果として、省電力効率を充分に向上させることができなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術における不充分な点に鑑みてなされたものであり、本発明は、省電力状態からの復帰が必要なネットワーク通信が発生した場合に、通信の種類に応じて省電力状態へ再度移行する条件を設定することで、全体として省電力状態に移行している時間の割合を大きくして、省電力効率を向上できる情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の特徴を有する情報処理装置を提供する。本発明の情報処理装置は、通常稼働するメインシステムの他、上記メインシステムの省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果からメインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、メインシステムを復帰させる制御を行うサブシステムを備える。本発明の情報処理装置は、さらに、例えばメインシステム上に、メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じてメインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段と、上記通信の種類に応じた再移行条件の成立を監視し、復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、かつ上記再移行条件が成立したことに応答して、メインシステムを省電力状態へ移行する制御手段とを備える。
【0009】
また本発明では、通信の種類がメインシステムのネットワーク制御を司るネットワーク制御モジュールのみで応答可能なものであるか否かに応じて、応答可能なものである場合に、応答可能でない場合に比べて省電力状態へ再移行し易い条件で再移行条件を設定することができる。さらに本発明では、通信の種類が、メインシステムのアプリケーションによるデータ処理を必要とするか否かに応じて、必要とする場合に、必要としない場合に比べて省電力状態へ再移行し難い条件で再移行条件を設定することができる。さらにまた本発明では、復帰させる理由となった通信に対するデータ処理中に新規通信イベントまたはユーザ操作イベントが発生するたびに、省電力状態へ再移行し難い条件へ再移行条件を段階的に変更することができる。さらに本発明によれば、上記情報処理装置が実行する省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【0010】
上記構成によれば、メインシステムとサブシステムとを含み構成される情報処理装置において、メインシステムを復帰させてメインシステム搭載の機能と連携させる必要がある種類の通信に対しては、その種類に応じて再度省電力状態に移行するまでの再移行条件を設定することにより、効率的に省電力状態に再移行することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の画像処理装置が接続されるネットワーク環境を示す図。
【図2】本実施形態の画像処理装置のハードウェア構成を示す図。
【図3】本実施形態の画像処理装置のソフトウェア構成およびハードウェア構成を示す図。
【図4】本実施形態の画像処理装置における省電力制御に関連する機能ブロック図。
【図5】本実施形態のサブシステムが実行する代理応答処理を示すシーケンス図。
【図6】本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件を変化させる復帰処理を示すシーケンス図。
【図7】(A)サブシステムで代理可能なプロトコルリスト、(B,C)復帰レベルを判定するためのテーブルのデータ構造を示す図。
【図8】本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の再移行処理を示すシーケンス図。
【図9】本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の他の再移行処理を示すシーケンス図。
【図10】復帰理由のプロトコルによる通信が発生する毎に復帰レベルが積み上げられる態様を説明する図。
【図11】本実施形態のシステム制御管理部が実行する省電力制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する実施形態では、情報処理装置として、コピー、ファクシミリ、スキャナ、プリント等の画像を扱う複数機能を有する画像処理装置を一例として説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の画像処理装置が接続されるネットワーク環境を示す図である。図1に示すネットワーク環境において、画像処理装置10は、クライアント・コンピュータ(以下、単にクライアントという。)60にネットワーク62を介して接続されている。クライアント60は、ネットワーク62を介して画像処理装置10に対し、プリントジョブ、スキャンジョブ、ファクシミリ送信ジョブなどを要求するための装置であり、直接またはプリントサーバなどを経由して、画像処理装置10に対しジョブを発行することができる。
【0014】
クライアント60としては、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)、スマートフォン、デジタルカメラなどの如何なるコンピュータを挙げることができる。クライアント60は、特定の実施形態では、シングルコア、マルチコアのCPU、ROM、実行空間を提供するRAM、ハードディスク装置などを含み、Windows7(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)、Mac OS(登録商標)Xなどのオペレーティングシステム(OS)による制御の下、後述する各機能部および各処理を実現する。
【0015】
上記ネットワーク62は、イーサネット(登録商標)やTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)などのトランザクション・プロトコルによるLAN(Local Area Network)、VPN(Virtual Private Network)や専用線を使用して接続されるWAN(Wide Area Network)などとして構成される。しかしながら、ネットワーク62の構成は、特に限定されるものではなく、図示しないルータを介して接続されるインターネットを含んでいてもよく、また有線または無線、またはこれらの混合のネットワークとして構成することができる。
【0016】
画像処理装置10は、上記クライアント60からの要求に応答して、プリントジョブ、スキャナジョブ、ファクシミリ送信ジョブを実行する画像処理サービスを提供する。画像処理装置10は、またネットワーク62上のクライアント60や、スイッチ、ルータ、ゲートウェイ、機器管理サーバなどの装置から種々の通信パケットを受信している。画像処理装置10は、メインシステムの省電力状態時に稼働するサブシステムを備えており、省電力状態中に上記通信パケットを受信した場合は、その通信の種類に応じて適宜メインシステムを復帰させて処理する。以下、画像処理装置10の省電力制御を説明するにあたって、まず画像処理装置10のハードウェア構成について説明する。
【0017】
図2は、本実施形態の画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。画像処理装置10は、コントローラ11と、オペレーション・パネル50と、FCU(ファクシミリ・コントロール・ユニット)52と、プロッタ54と、スキャナ56と、他のハードウェア・リソース58とを含む。コントローラ11は、メインCPU(中央演算処理装置)12と、NB(ノース・ブリッジ)14と、NB14を介してメインCPU12と接続するASIC18と、システムメモリ(MEM−P)16とを含む。メインCPU12は、詳細は後述するが、本実施形態のメインシステムを実現するための演算装置である。ASIC18は、AGP(Accelerated Graphic Port)を介してNB14と接続され、各種画像処理を実行する。
【0018】
ASIC18は、ローカルメモリ(MEM−C)20と、ハードディスクドライブ(以下、HDDとして参照する。)22と、図示しないフラッシュメモリなどの不揮発性メモリと接続する。ローカルメモリ20は、コピー用画像バッファや符号バッファとして用いられ、HDD22は、画像データ、文書データ、プログラム、フォントデータやフォームデータなどを蓄積する。不揮発性メモリには、画像処理装置10を制御するためのプログラムや各種システム情報や各種設定情報が格納される。
【0019】
コントローラ11は、SB(サウス・ブリッジ)24と、SB24に接続されるサブCPU26とを含む。サブCPU26は、本実施形態のサブシステムを実現するための演算装置であり、画像処理装置10が説明する省電力状態に移行した後も給電が維持される。サブCPU26は、上述したメインCPU12に比較して低い消費電力で動作することができる。コントローラ11は、さらに、シリアルバス30と、NIC(ネットワーク・インタフェース・カード)32と、USBインタフェース36と、IEEE802.11a/b/gなどのワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38と、IEEE1394インタフェース42と、USBホスト44と、メモリカードインタフェース46とを含み、これらはPCIバス28を介してNB14に接続される。
【0020】
SB24は、図示しないROMやPCIバス周辺デバイスなどをNB14に接続するためのブリッジである。NIC32は、画像処理装置10を有線ネットワーク34に有線接続するためのインタフェース機器であり、有線ネットワーク34を介して各種パケットを送受信している。ワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38は、画像処理装置10を無線ネットワーク40に無線接続するためのインタフェース機器であり、無線ネットワーク40を介して各種パケットを送受信している。シリアルバス30、USBインタフェース36、IEEE1394インタフェース42、USBホスト44およびメモリカードインタフェース46は、それぞれの規格に準じたインタフェースである。上記NIC32およびワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38は、本実施形態においては、画像処理装置10が説明する省電力状態においても給電が維持され、省電力状態の画像処理装置10を復帰させ得るパケットを受信する。
【0021】
上記オペレーション・パネル50は、コントローラ11のASIC18と接続され、オペレータからの各種指示の入力を受付けや、画面表示を行なうためのユーザ・インタフェースを提供する。FCU52、プロッタ54、スキャナ56および他のハードウェア・リソース58は、PCIバス48を介してASIC18に接続される。FCU52は、G3またはG4といったファクシミリ通信規格に準じた通信方法を実行する。プロッタ54およびスキャナ56は、それぞれ、アプリケーションが発行したプリント指令およびスキャン指令を受け、画像形成処理や画像読取処理を実行する。
【0022】
以下、画像処理装置10のソフトウェア構成について説明する。図3は、本実施形態の画像処理装置のソフトウェア構成およびハードウェア構成を示す図である。図3に示した画像処理装置10は、種々のハードウェア・リソースを含むハードウェア部100と、種々のソフトウェア・コンポーネントを含むソフトウェア部110とを含み構成される。
【0023】
ハードウェア部100は、プロッタ54やスキャナ56などのエンジンを制御するエンジン制御ボード102と、上記プロッタ54と、上記スキャナ56と、その他のハードウェア・リソース58とを含む。ソフトウェア部110は、画像処理装置としての機能を提供するための各種アプリケーション170〜180からなるアプリケーション層120と、プラットフォーム層130と、アプリケーション層120およびプラットフォーム層130を仲介する仮想アプリケーション・サービス(VAS)122とを含み構成される。VAS122は、プラットフォーム層130をアプリケーション層120から隠蔽するラッピング機能を備え、プラットフォーム層130のバージョンアップによる差分を吸収している。
【0024】
アプリケーション層120は、プリンタ、コピー、ファックスやスキャナなどの画像形成に関連するユーザ・サービスに固有の処理を行い、図3に示した実施形態では、プリンタ機能を提供するプリンタ・アプリケーション170と、コピー機能を提供するコピー・アプリケーション172と、ファクシミリ機能を提供するファックス・アプリケーション174と、スキャナ機能を提供するスキャナ・アプリケーション176と、ネットワーク・ファイル機能を提供するネットワークファイル・アプリケーション178と、ブラウザ180とを含み構成される。
【0025】
ブラウザ180は、HTTP(HyperText Transfer Protocol)による通信において、クライアント機能を実現するWWWライブラリ124を用いて、外部のウェブ・サーバからHTML(HyperText Markup Language)データを取得するとともに、取得したHTMLデータをWWWライブラリ124を参照して解釈し、当該画像処理装置10のオペレーション・パネル50上に表示させる。ブラウザ180は、さらに、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語を解釈可能に構成され、HTMLデータ中に記述されるスクリプトに従って、当該画像処理装置10のハードウェア・リソースを制御することができる。
【0026】
プラットフォーム層130は、図示しないオペレーティング・システム(OS)とともにアプリケーション170〜180からの処理要求を解釈して、ハードウェア資源の獲得要求を発生するコントロール・サービス層132と、システム資源管理部(SRM)140と、ハンドラ層134とを含み構成される。SRM140は、1つまたは複数のハードウェア・リソースの管理を行い、コントロール・サービス層132からの獲得要求を調停し実行制御する。ハンドラ層134は、SRM140からの獲得要求に応じて、ハードウェア・リソースの管理を行う。OSとしては、例えば、UNIX(登録商標)を採用することができるが、WINDOWS(登録商標)やその他いかなるOSを採用することができる。ソフトウェア部110のソフトウェア・コンポーネントは、UNIX(登録商標)などのOSにより、プロセス単位で並列的に実現される。
【0027】
各種コントロール・サービスとしては、図3に示した実施形態では、ネットワーク制御サービス(NCS)142と、デリバリー制御サービス(DCS)144と、オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146と、ファクシミリ制御サービス(FCS)148と、エンジン制御サービス(ECS)150と、メモリ制御サービス(MCS)152と、認証制御サービス(CCS)156と、ユーザ情報制御サービス(UCS)154と、システム制御サービス(SCS)158とを含む。
【0028】
SCS158は、各種アプリケーションの管理、システム画面表示やLED表示などのユーザ・インタフェースの制御、ハードウェア資源の管理、割込みアプリケーションの制御、本実施形態の省電力制御を行う。UCS154は、ユーザ情報を管理する。CCS156は、認証処理および課金処理に関する制御を行う。MCS152は、画像メモリの取得および解放、画像データの圧縮・伸張等のメモリ制御などを行う。
【0029】
ECS150は、プロッタ54やスキャナ56などのハードウェア・リソースを制御し、画像読取りや画像形成動作などを実行し、各アプリケーションから受信したジョブを、一枚単位の原稿、転写紙レベルにプロセスを分割して、該プロセスを管理し、画像読取や画像形成動作を制御する。FCS148は、GSTNインタフェースと接続し、GSTN網を使用したファクシミリ送受信、バックアップメモリで管理されている各種ファクシミリ・データの登録/引用、ファクシミリ読み取りなどを制御する。
【0030】
OCS146は、オペレータと本体制御との間のインタフェースとなるオペレーション・パネル50の制御を行う。DCS144は、HDD22などに蓄積された蓄積文書の配信を制御を行う。NCS142は、NIC32やワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38を制御して、画像処理装置10をイーサネット(登録商標)に接続し、ネットワークI/Oを必要とするアプリケーションに対して共通に利用可能なサービスを提供する。NCS142は、また、ネットワーク側から各プロトコルによって受信したデータを各アプリケーションに振り分け、各アプリケーションからのデータをネットワーク側に送信する際の仲介を行う。さらに本実施形態のNCS142は、上記ネットワーク通信の種類に応じた省電力制御を実現するための判定処理を行う。
【0031】
また、プラットフォーム層130とアプリケーション層120との間には、アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)136を有し、プラットフォーム層130は、API136に含まれる予め定義された関数により、各種アプリケーション170〜180からの処理要求を受信している。SRM140は、SCS158とともにシステム制御およびハードウェア・リソースの管理を行い、獲得要求されたハードウェア・リソースが利用可能か否かを判定する。SRM140は、利用可能であれば獲得要求されたハードウェア・リソースが利用可能である旨を上位層に通知する。また、SRM140は、上位層からの獲得要求に対して、ハードウェア・リソースを利用するためのスケジューリングを行い、例えばプロッタ54による紙搬送や画像形成動作やメモリ確保やファイル生成などを直接実施している。
【0032】
ハンドラ層134は、FCU52を管理するファクシミリ・コントロール・ユニット・ハンドラ(FCUH)160と、プロセスに対するメモリ割当て、プロセスに割当てたメモリの管理を行うイメージメモリハンドラ(IMH)162とを含み構成される。SRM140、FCUH160およびIMH162は、エンジン・インタフェース(I/F)138に含まれる予め定義されている関数を使用して、ハードウェア部100のハードウェア・リソースに対する処理要求を送信する。
【0033】
画像処理装置10は、上述のソフトウェア群により、プロッタ54、スキャナ56、HDD22などのハードウェア・リソースを制御し、ユーザ・インタフェースを介したユーザ指令や外部コンピュータからの入力に応答して、コピーやファクシミリやモノクロコピーやフルカラーコピーなどの機能をユーザに提供している。なお、上述のアプリケーションおよびコントロール・サービス、ハードウェアは、種々の組み合わせにより構成することができ、例えば、特定の用途、機種に対応して追加・削除することができる。また、図3に示した実施形態では、画像処理装置としての各アプリケーションや制御サービスにおける共通部分を抽出して、プラットフォーム化した構成として参照したが、画像処理装置10のハードウェア構成およびソフトフェアの構成は、特に限定されるものではない。
【0034】
以下、本実施形態の画像処理装置10が実行する省電力制御について説明する。図4は、本実施形態の画像処理装置10における省電力制御に関連する機能ブロック図である。図4には、メインシステムであるソフトウェア部(以下、メインシステムと参照する。)110上のコンポーネントと、サブシステム200上のコンポーネントとが示されている。メインシステム110は、通常状態において画像処理装置としてのサービスを提供するためのシステムである。一方、サブシステム200は、メインシステム110が省電力状態に移行している間稼働し、メインシステム110に代理してネットワーク62からの通信パケットを処理するためのシステムである。
【0035】
上述した省電力状態としては、コントローラ11上の各コンポーネントへの給電状態、プロッタ54の定着ユニットへの給電状態等に対応して種々のモードが考えられる。説明する実施形態では、メインシステム110で実行中のコンテキストをシステムメモリ16に維持したまま、サブCPU26、NIC32やワイヤレス・ネットワーク・アダプタ38などサブシステム200で必要なコンポーネットを除く大部分のコンポーネントへの電力供給を停止し、クロック供給を停止するSTRモードを一例として説明する。しかしながら、システムメモリ16の内容をハードディスクなどの不揮発性記憶領域に格納し、システムメモリ16を含めて電力供給を停止するコントローラオフモードなど、ネットワーク通信の一部をサブシステム200に代理をさせるような、あらゆる省電力モードに対して適用することができる。
【0036】
上記メインシステム110に含まれる省電力制御に関連するコンポーネントとしては、図4には、アプリケーション層120と、ネットワーク制御サービス(NCS)142と、システム制御サービス(SCS)158と、オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146とが示されている。アプリケーション層120は、プリンタ・アプリケーション170やコピー・アプリケーション172など、ネットワーク通信に応答し得るアプリケーションを含む。オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146は、オペレーション・パネル50に対するユーザ操作などを受け付けるユーザ・インタフェース188を含む。ユーザ・インタフェース188は、例えば省電力状態から復帰した後、ユーザ操作があるとシステム制御サービス158にその旨を通知する。
【0037】
システム制御サービス(SCS)158は、システム制御管理部196と、電力管理部198とを含む。システム制御管理部196は、メインシステム110の起動、終了といったシステム制御を行う。また、本実施形態のシステム制御管理部196は、省電力状態へ移行する移行条件の成立を監視し、移行条件が成立したことに応答して、メインシステム110を省電力状態へ移行するシステム制御を行う。なお、システム制御管理部196は、本実施形態の制御手段を構成する。電力管理部198は、メインシステム110の電源管理を行う。
【0038】
ネットワーク制御サービス(NCS)142は、ネットワーク送受信部190と、ネットワーク制御管理部192と、複数のプロトコル処理部194a〜194zとを含む。ネットワーク制御管理部192は、ネットワーク制御サービス142の起動制御を行う。ネットワーク送受信部190は、ネットワーク62との通信パケットを交換するコンポーネントであり、ネットワーク62から受信した通信パケットを適切なプロトコル処理部194に振り分け、またプロトコル処理部194a〜194zからの通信パケットをネットワークへ送信する。プロトコル処理部194a〜194zは、各種プロトコル制御プログラム(デーモン)であり、通信パケットを受け取り、印刷系(lp / ippd / centrod)、ファイル転送系(httpd / ftpd)、機器管理系(snmpd)などのそれぞれが担当するプロトコル処理を実行して応答を返す。なお、説明する実施形態では、1プロトコルに対し1つのプロトコル処理部194が処理を担当している。
【0039】
一方、上記サブシステム200に含まれる省電力制御に関連するコンポーネントとしては、ネットワーク送受信部202と、プロトコル解析部204と、プロトコル処理部206a〜206zと、サブシステム管理部208とを含む。ネットワーク送受信部202は、ネットワーク62との通信パケットを交換するコンポーネントであり、まずネットワーク62から受信した通信パケットをプロトコル解析部204に解析依頼し、解析結果から当該サブシステム200で代理可能であると判断された場合には、適切なプロトコル処理部194に振り分け、またプロトコル処理部206a〜206zからの通信パケットをネットワークへ送信する。
【0040】
プロトコル解析部204は、メインシステム110からサブシステム200で代理するべきプロトコル(あるいはさらに細分化した通信の種類)の登録を受けており、ネットワーク送受信部202から依頼された通信パケットをプロトコル解析し、プロトコルを特定するとともに、本サブシステム200で代理可能であるか否かを判定し、解析結果をネットワーク送受信部202に返す。プロトコル処理部206は、上記メインシステム110と同様の各種プロトコル制御プログラム(デーモン)であり、当該サブシステム200で代理可能な通信パケットについて、ネットワーク送受信部202からの依頼に応答してプロトコル処理を実行して応答する。サブシステム管理部208は、サブシステム200の起動、終了およびメインシステム110に対する電源投入依頼を行う。
【0041】
上述したように本実施形態の画像処理装置10は、省電力状態時にネットワーク通信を受信した場合、サブシステム200で代理可能である通信については、メインシステム110を復帰させずに、サブシステム200が代理応答する。一方、ネットワーク通信の中には、サブシステム200のみで処理を完結することができない通信の種類も存在し、そのような場合は、メインシステム110を省電力状態から復帰させる必要がある。しかしながら、メインシステム110による処理が必要であると判定されるネットワーク通信の中にも、さらに、細分化された種類があり、単純に1パケットを応答すれば済む負荷の小さなものから、印刷やウェブ・ブラウジングのような頻繁なパケット交換を発生させる必要がある負荷の大きなものまで種々の種類がある。前者のような負荷の小さな通信は、短時間、小データ量、散発的に発生することが多いのに対し、後者のような負荷の大きな通信は、比較的長時間、大データ量、断続的に発生することが多い。後者の負荷の大きな通信を受信した場合は、STR状態に移行すべきかどうかを判断するために、ユーザ操作や通信を長時間監視する必要があるが、前者の負荷の小さな通信については、短期間の監視で充分である。
【0042】
そこで、本実施形態の省電力制御では、メインシステム110を復帰させる場合に、メインシステム110が復帰してから省電力状態に再移行するまでの再移行条件を、ネットワーク通信の種類に応じて変化させて、不必要に通常状態にいる時間を短縮する。上記再移行条件は、例えば、「復帰後10分経過すること」といった、メインシステムが復帰してからの時間経過に対するしきい値として条件付けることができる。
【0043】
本実施形態のネットワーク制御管理部192は、メインシステムが復帰した際に、その復帰の理由となったネットワーク通信の種類に応じて、省電力状態へ再度移行させる再移行条件(例えば時間)を設定する。また、ネットワーク制御管理部192は、上記通信の種類が、メインシステムのネットワーク制御を司るネットワーク制御サービス(NCS)142のみで応答可能なものであるか否かに応じて、応答可能なものである場合に、応答可能なものではない場合に比べて省電力状態へ再移行し易い条件(例えば短い時間)で再移行条件を設定することができる。さらにネットワーク制御管理部192は、ネットワーク通信の種類が、メインシステム110のアプリケーション170〜180によるデータ処理を必要とするか否かに応じて、必要とする場合に、必要としない場合に比べて省電力状態へ再移行し難い条件(例えば長い時間)で再移行条件を設定することができる。なお、ネットワーク制御管理部192は、本実施形態の設定手段を構成する。
【0044】
以下、図5を参照しながら、サブシステム200による代理応答処理について説明する。図5は、本実施形態のサブシステムが実行する代理応答処理を示すシーケンス図である。なお、図5に示す処理は、画像処理装置10が既にSTR状態に移行している段階からステップS101で開始する。ステップS101では、ネットワーク送受信部202は、NIC32などを介してネットワークデータを受信し、ステップS102で、プロトコル解析部204に対しプロトコル解析を依頼する。ステップS103では、プロトコル解析部204は、依頼されたネットワークデータに対しプロトコル解析を実施する。図7(A)は、サブシステム200で代理可能なプロトコルリストを例示する。図7(A)に示す代理可能なプロトコルのリストは、例えばメインシステム110から、代理するべきものとしてプロトコル解析部204に予め登録される。図7(A)に示す例では、アプリケーション層120などの上位層の処理を必要としないICMP(Internet Control Message Protocol)、ICMPv6(Internet Control Message Protocol Version 6)のEchoRequestやARP(Address Resolution Protocol)、Windows(登録商標)XPやWindows(登録商標)Vistaにおいて周期的に送信されるSNMPのGetRequestなどの種類が登録されている。
【0045】
ステップS104では、プロトコル解析部204は、上記プロトコル解析依頼に対する応答としてプロトコル解析結果をネットワーク送受信部202へ返す。上記プロトコル解析結果には、ネットワークデータから特定されたプロトコル名と、サブシステム200で代理応答が可能であるか否かを示す値とを含む。なお、図5に示す例では、ネットワークデータはサブシステム200で代理応答が可能であり、メインシステムをSTR状態から復帰させる必要がない場合を例示する。ステップS105では、ネットワーク送受信部202は、特定されたプロトコルに対応したプロトコル処理部206に対し、プロトコル処理を依頼する。ステップS106では、対応するプロトコル処理部206は、ネットワークデータに対して所定のプロトコル処理を実行し、ステップS107で、プロトコル処理の結果として、ネットワーク送受信部202に対しデータ送信を依頼する。ステップS108では、ネットワーク送受信部202は、依頼にかかるネットワークデータの送信処理を実行する。
【0046】
上述したように本実施形態の画像処理装置10では、図5に示したように、メインシステム110を煩わせる必要のないネットワーク通信については、サブシステム200で代理して応答することで、これにより画像処理装置10の省電力効率を高めている。
【0047】
以下、図6を参照しながら、ネットワーク通信の種類に応じて省電力状態に再移行するための再移行条件を変化させる省電力制御について説明する。図6は、本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件を変化させる復帰処理を示すシーケンス図である。なお、図6に示す処理は、図5と同様に、画像処理装置10が既にSTR状態に移行している段階からステップS201で開始する。ステップS201では、ネットワーク送受信部202は、ネットワークデータを受信し、ステップS202で、プロトコル解析部204に対しプロトコル解析を依頼する。ステップS203では、プロトコル解析部204は、依頼されたネットワークデータに対しプロトコル解析を実施する。ステップS204では、プロトコル解析部204は、プロトコル解析結果をネットワーク送受信部202へ返す。なお、図6に示す例では、ネットワークデータはサブシステム200のみでは代理応答が不可能であり、メインシステムをSTR状態から復帰させる必要があると解析された場合を例示する。
【0048】
ステップS205では、ネットワーク送受信部202は、サブシステム管理部208に対し、プロトコル名を渡すとともに、メインシステム110の起動依頼を行う。ステップS206では、サブシステム管理部208は、メインシステム110と通信し、システム制御サービス(SCS)158の電力管理部198に対し、復帰理由を通知するとともに、電源投入依頼を行う。なお、上記復帰理由とは、上記プロトコル解析部204が特定したプロトコル名と同様の情報であり、ネットワーク通信の種類を識別するための情報である。復帰理由は、プロトコル名そのままとしても良いし、さらに細分化された理由としてもよい。ステップS207では、メインシステム110の電力管理部198は、本メインシステム110の復帰処理を行い、システム制御管理部196に対し復帰通知を行う。ステップS208では、システム制御管理部196は、さらに、ネットワーク制御管理部192に対して復帰通知を行う。復帰通知には、上述した復帰理由が付される。
【0049】
ステップS209では、ネットワーク制御管理部192は、上記復帰理由から復帰レベルを判定する。ここで、復帰レベルとは、上述した復帰理由となるネットワーク通信の種類に応じて省電力状態へ再移行する再移行条件(時間)を変更するために定義されるレベルである。本明細書では、復帰レベルは、小さい値の方が省電力状態へ再移行し易いことを意味するように用いる。復帰レベルが上がるに従って、再移行条件が厳しくなり、その最大値は、通常の省電力状態へ移行する移行条件に対応する。図7(B)および(C)は、復帰レベル判定に用いることができるテーブルのデータ構造を示す。図7(B)は、ネットワーク通信の種類に応じて、メインシステム110のネットワーク制御サービス(NCS)142の処理が必要であるか否か、アプリケーション170〜180による処理が必要であるか否かを対応付けるテーブルである。図7(C)は、上記処理の要否の組み合わせに対して復帰レベルを対応付けるテーブルである。なお、図7(C)における「新たな通信・操作が発生」列は、後述する復帰レベルの変更処理等で使用されるものであり、ステップS209では、「No」であるとする。また、図7(C)における「再移行条件」列は、復帰レベルに対応付けられる実際の再移行条件を示している。
【0050】
本実施形態のネットワーク制御管理部192は、図7(B)および(C)に示すようなデータ構造を用いて、ネットワーク通信の種類に応じて復帰レベルを判定する。なお、図7(B)および(C)に示すようなデータは、例えば、管理者が、オペレーション・パネル50を介してシステム設定画面で予め設定することができる。また、図7(B)および(C)は、例示であり、通信の種類に対して復帰レベルを条件付ける如何なるデータ構造を採用することができる。また、登録されるネットワーク通信の種類としては、印刷ジョブやSNMPの他、スキャナジョブ、ファクシミリジョブ、ファイル転送などアプリケーション層120との連携が必要な他のプロトコルや、NPMP(Network Peripheral Management Protocol)などの他の機器管理プロトコルを挙げることができる。
【0051】
ステップS210では、ネットワーク制御管理部192は、省電力状態への移行制御を行っているシステム制御管理部196に対し、上記判定した復帰レベルを通知して設定する。システム制御管理部196は、復帰レベルの通知を受けて、復帰レベルまたは上記対応する再移行条件を記憶する。また、ステップS211では、ネットワーク制御管理部192は、パケット処理を行わせるために、ネットワーク送受信部190およびプロトコル処理部194を起動する。ステップS212では、電源管理部198は、サブシステム200と通信し、サブシステム管理部208に対し電源が投入された旨を報告する。ステップS213では、サブシステム管理部208は、ネットワーク送受信部202に対し、メインシステム110が起動した旨を報告し、ステップS214以降は通常状態となる。
【0052】
以下、図8を参照しながら、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の再移行処理について説明する。図8は、本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の再移行処理を示すシーケンス図である。なお、図8に示す例は、図6に示すステップS214の処理により通常状態になった後の段階からステップS301で開始する。ステップS301では、ネットワーク送受信部190は、上述した復帰の理由となったネットワークデータの転送を受けて、ステップS302で、ネットワークデータの受信処理を行う。ステップS303では、ネットワーク送受信部190は、適切なプロトコル処理部194に対しデータ処理を依頼する。
【0053】
ステップS304では、プロトコル処理部194は、依頼されたネットワークデータに対して所定のデータ処理を実行する。図8は、ネットワーク通信の種類がアプリケーション170〜180によるデータ処理を必要とする場合について例示する。ステップS305では、プロトコル処理部194は、アプリケーション170〜180のいずれかのアプリケーションに対し、データ処理を依頼し、その処理結果を受け取る。ステップS306では、プロトコル処理部194は、ネットワーク送受信部190に対しデータ送信を依頼する。ステップS307では、ネットワーク送受信部190は、渡されたデータのネットワークデータ送信を行い、ステップS308では、上記復帰の理由となった通信に対する応答として、データが転送される。後続する処理が適宜行われた後、ステップS309で、プロトコル処理部194が、当該復帰理由となったネットワーク通信に対する処理がすべて完了したと判定すると、ステップS310で、プロトコル処理部194は、ネットワーク制御管理部192に対しデータ処理が完了した旨を報告する。
【0054】
ステップS311では、ネットワーク制御管理部192は、上記復帰理由の通信以外のネットワーク通信が発生していないことを確認する。ステップS311で、復帰理由以外のネットワーク通信が発生していないことの確認が行われると、ステップS312では、ネットワーク制御管理部192は、システム制御管理部196に対し、復帰理由の通信に対する処理が完了した旨を通知する。なお、ここにいう復帰理由以外のネットワーク通信とは、例えば画像処理装置10側からネットワーク62へ能動的にデータ送信するアウトバウンド通信をいう。このような能動的なネットワーク通信が発生している場合、画像処理装置10はアイドル状態ではないため、直ちに省電力状態に移行させることは適切ではない。そこで、本実施形態では、ネットワーク制御管理部192は、上記完了した旨の報告に合わせて、能動的なネットワーク通信が発生した旨をシステム制御管理部196に通知し、図6に示すステップS209で判定した復帰レベルに応じた再移行条件を維持せず、復帰レベルを最大値に設定し直し、通常の移行条件を適用する。
【0055】
ステップS313では、システム制御管理部196は、さらに、ユーザ操作の有無を判定する。画像処理装置10に対するユーザ操作が行われているということは、画像処理装置10が操作中であり、直ぐに省電力状態に移行させることが適切ではない。そこで、本実施形態では、オペレーション・パネル制御サービス(OCS)146から通知があり、ユーザ操作中であると判定された場合は、システム制御管理部196は、図6に示すステップS209で判定した復帰レベルに応じた再移行条件を維持せず、復帰レベルを最大値に変更し、通常の移行条件を適用する。ユーザ操作中ではないと判定された場合は、そのまま図6に示すステップS209で判定した復帰レベルに応じた再移行条件が維持される。
【0056】
ステップS313で、ユーザ操作が発生していないことの確認が行われると、ステップS314では、システム制御管理部196は、現在設定されている復帰レベルを確認し、復帰レベルに対応した再移行条件が成立するまで待つ。図6に示すステップS209で判定された復帰レベルのまま変更がなければ、上記ネットワーク通信の種類に応じた再移行条件が適用される。図8に示すステップS311またはS313で復帰レベルが最大値に設定し直されているのであれば、通常の移行条件が適用される。移行条件が成立するまで上記ユーザ操作や別途の新たなアウトバウンド通信が発生しなければ、ステップS315で、システム制御管理部196は、電力管理部198に対しSTR状態へ移行するよう依頼する。ステップS316では、電力管理部198は、サブシステム200と通信し、ネットワーク送受信部202に対し、STR移行する旨を通知する。ステップS317では、電力管理部198は、メインシステム110のソフトウェア・コンポーネントがシャットダウン完了した後、PSU(Power Supply Unit)に対し命令を行って省電力モードに対応したコンポーネントへの電源を遮断し、ステップS318で、省電力状態に再移行する。
【0057】
上述したように本実施形態の画像処理装置10では、メインシステム110を復帰する必要がある場合であっても、再移行条件を一律に決めずに、復帰の理由となったネットワーク通信の種類に応じて適切な復帰レベル、再移行条件を設定することができるため、不必要に通常状態にいる時間を短縮し、省電力効率を向上することができる。以下、さらに、復帰後に発生するイベントに応じて再移行条件を適切に変更する省電力制御について説明する。
【0058】
図9は、本実施形態の画像処理装置が実行する、ネットワーク通信の種類に応じて再移行条件が設定された後の他の再移行処理を示すシーケンス図である。なお、図9に示す例は、図8と同様に、図6に示すステップS214の処理により通常状態になった後の段階からステップS401で開始する。ステップS401では、ネットワーク送受信部190は、復帰の理由となったネットワークデータの転送を受けて、ステップS402で、ネットワークデータの受信処理を行う。ステップS403では、ネットワーク送受信部190は、適切なプロトコル処理部194に対し、データ処理を依頼する。プロトコル処理部194は、ステップS404で、依頼されたネットワークデータに対してデータ処理を実行し、必要に応じてステップS405で、アプリケーション170〜180に対しデータ処理を依頼し、その処理結果を受け取る。ステップS406では、プロトコル処理部194は、ネットワーク送受信部190に対しデータ送信を依頼し、ステップS407では、ネットワーク送受信部190は、ネットワークデータ送信処理を行い、ステップS408で、データが転送される。
【0059】
図9に示す例では、復帰理由の通信に対する処理が行われている間にイベントが発生し、そのイベントに応じて復帰レベルが変更される。例えば、イベントE1−1として、他の復帰理由の通信が発生し、ネットワーク送受信部190がそのネットワーク通信のデータ転送を受けた場合は、ネットワーク送受信部190は、ステップE1−2で、ネットワークデータ受信処理その他の応答処理を行った後、ステップE1−3で、システム制御管理部196に対し新規通信の発生を通知する。このようなネットワーク通信が発生しているということは、画像処理装置10は、再移行の判断をより慎重に行う必要があることを意味するため、システム制御管理部196は、ステップE1−4で、新規通信イベント毎に復帰レベルを段階的に引き上げる。復帰レベルの引き上げ方としては、特に限定されるものではないが、例えば1段階ずつ引き上げたり、図10に示すように復帰理由のプロトコル毎に対応する復帰レベルを積み上げたりすることができる。なお、図10では、復帰レベルLがプロトコル毎に値が加算されている。また、イベントE2−1として、システム制御管理部196がオペレーション・パネル制御サービス(OCS)146からの通知を受けて処理中のユーザ操作の発生を検知した場合は、再移行の判断をより慎重に行う必要があるため、システム制御管理部196は、ステップE2−2で、ユーザ操作イベント毎に復帰レベルを1段引き上げたりすることで、復帰レベルを段階的に変更する。
【0060】
ステップS409で、プロトコル処理部194が、当該復帰理由となったネットワーク通信に対する処理をすべて完了させると、ステップS410で、プロトコル処理部194は、ネットワーク制御管理部192に対してデータ処理が完了した旨を報告する。ステップS411では、ネットワーク制御管理部192は、上記復帰理由の通信以外のネットワーク通信が現在発生していないことを確認する。説明を加えると、上記復帰レベルの変更を促す新規通信は、画像処理装置10が受信した他の復帰理由等による通信であり、一方ステップS411で発生していないことを確認する通信は、画像処理装置10が能動的に行うアウトバウンド通信である。復帰理由以外のネットワーク通信が発生すると、図8と同様に、復帰レベルが最大値とされ、通常の移行条件が適用される。ステップS411で、復帰理由以外のネットワーク通信が発生していないことが確認されると、ステップS412では、ネットワーク制御管理部192は、復帰理由の通信に対する処理が完了した旨をシステム制御管理部196に通知する。
【0061】
ステップS413では、システム制御管理部196は、さらに、ユーザ操作の有無を判定する。ステップS413で、ユーザ操作が発生していないことが確認されると、ステップS414では、システム制御管理部196は、現在設定されている復帰レベルを確認し、復帰レベルに対応した再移行条件が成立するまで待つ。図6に示すステップS209で判定された復帰レベルのまま変更がなければ、上記ネットワーク通信の種類に応じた再移行条件が確認される。図9に示すステップE1−4またはE2−2でイベントに応じて復帰レベルが変更された場合、ステップS411またはS413で復帰レベルが最大値に設定された場合は、これらに対応する移行条件が適用される。移行条件が成立するまで上記ユーザ操作や別途の新たなアウトバウンド通信が発生しなければ、ステップS415で、システム制御管理部196は、電力管理部198に対しSTR状態へ移行するよう依頼する。ステップS416では、電力管理部198は、ネットワーク送受信部202に対し、STR移行する旨を通知し、ステップS417で、メインシステム110の省電力モードに対応したコンポーネントへの電源を遮断し、ステップS418で、再度、省電力状態に移行する。
【0062】
図11は、本実施形態のシステム制御管理部が実行する、省電力制御処理を示すフローチャートである。図11に示す処理は、メインシステム110の復帰に応答してステップS500から開始し、ステップS501では、システム制御管理部196は、サブシステム200から電力管理部198を経由して復帰通知を受信し、さらに復帰通知をネットワーク制御管理部192に通知する。ステップS502では、システム制御管理部196は、復帰した時刻を記録する。ステップS503では、システム制御管理部196は、ネットワーク制御管理部192から復帰レベルの通知を受信し、ステップS504で、受信した復帰レベルを設定し、保持する。
【0063】
ステップS505では、システム制御管理部196は、上述したユーザ操作または復帰理由となる新規通信のイベントが発生しているか否かを判定する。ステップS505で、オペレーション・パネル制御サービス146からの通知を受けてユーザ操作イベントが発生したと判定された場合、またはネットワーク制御サービス142からの通知を受けて新規通信イベントが発生したと判定された場合(YES)は、ステップS506へ処理を分岐させる。ステップS506では、システム制御管理部196は、復帰レベルを段階的に変更し、ステップS507へ処理を進める。復帰レベルは、段階的に、通常の移行条件に相当する最大値まで増加し得る。一方、ステップS505で、ユーザ操作または新規通信のイベントが発生していないと判定された場合(NO)には、ステップS507へ直接処理を進める。
【0064】
ステップS507では、システム制御管理部196は、復帰理由にかかる処理の完了の通知を受けたか否かを判定する。ステップS507で、復帰理由処理完了の通知がなされていない場合(NO)は、ステップS505へループさせ、復帰理由処理が完了するまで待ち受ける。一方、ステップS507で、復帰理由処理完了の通知を受けたと判定された場合(YES)は、ステップS508へ処理を進める。ステップS508では、システム制御管理部196は、ユーザ操作の有無を判定する。ステップS508で、ユーザ操作が有ると判定された場合(YES)は、ステップS509へ処理を分岐させて、復帰レベルを最大値に変更し、通常の移行条件を適用し、ステップS510へ処理を進める。一方、ステップS508で、ユーザ操作が無いと判定された場合(NO)は、ステップS510へ直接処理を進める。
【0065】
ステップS510では、システム制御管理部196は、現在の復帰レベルと、それに応じた再移行条件とを確認する。ステップS511では、システム制御管理部196は、再移行条件の成立を監視して、現在アイドル状態が解除されたか否かを判定する。ステップS511で、アイドル状態が解除されたと判定される場合(YES)は、ステップS512へ処理を進め、通常の移行条件が適用される通常制御へ移行する。一方、ステップS511で、アイドル状態のままであると判定される場合(NO)は、ステップS513へ処理を進める。ステップS513では、システム制御管理部196は、記録した復帰時刻からの経過時間等を計り、再移行条件が成立したか否かを判定し、成立するまでの間(NOの間)、ステップS511へ処理をループさせる。一方、アイドル状態が継続したまま再移行条件が成立し、ステップS513で、再移行条件が成立したと判定された場合(YES)には、ステップS514へ処理を進める。ステップS514では、システム制御管理部196は、電力管理部198に対し、省電力状態(STR状態)へ再移行を依頼し、ステップS515で、処理を終了させる。
【0066】
以上説明した実施形態によれば、メインシステム110とサブシステム200とが構成される画像処理装置10において、メインシステム110を復帰させてメインシステム搭載の機能と連携させる必要がある種類のネットワーク通信に対しては、その種類に応じて再移行条件を設定することにより、種類に関わらず条件を一律とする場合と比較しても、全体として省電力状態に移行している時間の割合を大きくすることができる。したがって、効率的な省電力制御が実現される。
【0067】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、省電力状態からの復帰が必要なネットワーク通信が発生した場合に、通信の種類に応じて省電力状態へ再度移行する条件を設定することで、全体として省電力状態に移行している時間の割合を大きくして、省電力効率を向上できる情報処理装置、省電力制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【0068】
なお、上述までの実施形態では、情報処理装置として、複数機能を有する画像処理装置を用いて説明したが、情報処理装置は、これに限定されるものではない。本発明は、プリンタ、複写機などの画像形成装置、スキャナなどの画像読取装置、ファクシミリなどの画像通信装置を含む、単一のまたは複数の画像処理機能を提供する如何なる画像処理装置に対しても適用することができる。さらに、本発明は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、テレビジョン、PDAやタブレット端末などの携帯情報端末、パーソナルコンピュータなど、ネットワークに接続する種々の電子機器に適用することができる。
【0069】
本実施形態の上記機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD−ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0070】
これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
10…画像処理装置、11…コントローラ、12…メインCPU、14…NB、16…システムメモリ、18…ASIC、20…ローカルメモリ、22…HDD、24…SB、26…サブCPU、28…PCIバス、30…シリアルバス、32…NIC、34…有線ネットワーク、36…USBインタフェース、38…ワイヤレス・ネットワーク・アダプタ、40…無線ネットワーク、42…IEEE1394インタフェース、44…USBホスト、46…メモリカード・インタフェース、48…PCIバス、50…オペレーション・パネル、52…FCU、54…プロッタ、56…スキャナ、58…ハードウェア・リソース、60…クライアント、62…ネットワーク、100…ハードウェア部、102…エンジン制御ボード、110…ソフトウェア部(メインシステム)、120…アプリケーション層、122…VAS、124…WWWライブラリ、130…プラットフォーム層、132…制御サービス層、134…ハンドラ層、136…API、138…エンジンI/F、140…システム資源管理部、142…NCS、144…DCS、146…OCS、148…FCS、150…ECS、152…MCS、154…UCS、156…CCS、158…SCS、160…FCUH、162…IMH、170…プリンタ・アプリケーション、172…コピー・アプリケーション、174…ファックス・アプリケーション、176…スキャナ・アプリケーション、178…ネットワークファイル・アプリ、180…ブラウザ、188…ユーザインタフェース、190…ネットワーク送受信部、192…ネットワーク制御管理部、194…プロトコル処理部、196…システム制御管理部、198…電力管理部、200…サブシステム、202…ネットワーク送受信部、204…プロトコル解析部、206…プロトコル処理部、208…サブシステム管理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2009−29102号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシステムの省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果から前記メインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、前記メインシステムを復帰させる制御を行うサブシステムと、
前記メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じて、前記メインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段と、
前記再移行条件の成立を監視し、前記復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、かつ前記再移行条件が成立したことに応答して、前記メインシステムを省電力状態へ移行する制御手段と
を含む、情報処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記通信の種類が、前記メインシステムのネットワーク制御を司るネットワーク制御モジュールのみで応答可能なものであるか否かに応じて、応答可能なものである場合に、応答可能でない場合に比べて省電力状態へ再移行し易い条件で前記再移行条件を設定することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記通信の種類が、前記メインシステムのアプリケーションによるデータ処理を必要とするか否かに応じて、必要とする場合に、必要としない場合に比べて省電力状態へ再移行し難い条件で前記再移行条件を設定することを特徴とする、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記復帰させる理由となった通信に対するデータ処理中に新規通信イベントまたはユーザ操作イベントが発生するたびに、省電力状態へ再移行し難い条件へ前記再移行条件を段階的に変更する手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記復帰させる理由となった通信に対するデータ処理が完了した時に新規通信またはユーザ操作中である場合に、前記再移行条件を通常の移行条件に変更する手段をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記再移行条件は、前記メインシステムが復帰してから経過した時間に対するしきい値を設けたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記設定手段および前記制御手段は、前記メインシステム上で稼働するソフトウェアであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
メインシステムの省電力状態時に稼働するサブシステムを備える情報処理装置が実行する省電力制御方法であって、
前記情報処理装置が、前記サブシステムによって、前記メインシステムの省電力状態中、ネットワークを介した通信をプロトコル解析し、解析結果から前記メインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、前記メインシステムを復帰するステップと、
前記情報処理装置が、前記メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じて、前記メインシステムを省電力状態へ再度移行させるための再移行条件を設定するステップと、
前記情報処理装置が、前記復帰させる理由となった通信に対する処理が完了した後、前記再移行条件が成立しているか否かを判定するステップと、
前記再移行条件が成立したと判定したことに応答して、前記メインシステムを省電力状態へと移行するステップと
を実行することを特徴とする、省電力制御方法。
【請求項9】
情報処理装置を実現するためのコンピュータ実行可能なプログラムであって、前記プログラムは、コンピュータを、
メインシステムの省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果から前記メインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、前記メインシステムを復帰させる制御を行うサブシステム、
前記メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じて、前記メインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段、および
前記再移行条件の成立を監視し、前記復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、かつ前記再移行条件が成立したことに応答して、前記メインシステムを省電力状態へ移行する制御手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータ実行可能なプログラムをコンピュータ可読に格納する記録媒体。
【請求項1】
メインシステムの省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果から前記メインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、前記メインシステムを復帰させる制御を行うサブシステムと、
前記メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じて、前記メインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段と、
前記再移行条件の成立を監視し、前記復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、かつ前記再移行条件が成立したことに応答して、前記メインシステムを省電力状態へ移行する制御手段と
を含む、情報処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記通信の種類が、前記メインシステムのネットワーク制御を司るネットワーク制御モジュールのみで応答可能なものであるか否かに応じて、応答可能なものである場合に、応答可能でない場合に比べて省電力状態へ再移行し易い条件で前記再移行条件を設定することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記通信の種類が、前記メインシステムのアプリケーションによるデータ処理を必要とするか否かに応じて、必要とする場合に、必要としない場合に比べて省電力状態へ再移行し難い条件で前記再移行条件を設定することを特徴とする、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記復帰させる理由となった通信に対するデータ処理中に新規通信イベントまたはユーザ操作イベントが発生するたびに、省電力状態へ再移行し難い条件へ前記再移行条件を段階的に変更する手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記復帰させる理由となった通信に対するデータ処理が完了した時に新規通信またはユーザ操作中である場合に、前記再移行条件を通常の移行条件に変更する手段をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記再移行条件は、前記メインシステムが復帰してから経過した時間に対するしきい値を設けたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記設定手段および前記制御手段は、前記メインシステム上で稼働するソフトウェアであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
メインシステムの省電力状態時に稼働するサブシステムを備える情報処理装置が実行する省電力制御方法であって、
前記情報処理装置が、前記サブシステムによって、前記メインシステムの省電力状態中、ネットワークを介した通信をプロトコル解析し、解析結果から前記メインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、前記メインシステムを復帰するステップと、
前記情報処理装置が、前記メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じて、前記メインシステムを省電力状態へ再度移行させるための再移行条件を設定するステップと、
前記情報処理装置が、前記復帰させる理由となった通信に対する処理が完了した後、前記再移行条件が成立しているか否かを判定するステップと、
前記再移行条件が成立したと判定したことに応答して、前記メインシステムを省電力状態へと移行するステップと
を実行することを特徴とする、省電力制御方法。
【請求項9】
情報処理装置を実現するためのコンピュータ実行可能なプログラムであって、前記プログラムは、コンピュータを、
メインシステムの省電力状態時に稼働し、ネットワークを介した通信をプロトコル解析して、解析結果から前記メインシステムによる処理が必要であると判定した場合に、前記メインシステムを復帰させる制御を行うサブシステム、
前記メインシステムを復帰させる理由となった通信の種類に応じて、前記メインシステムを省電力状態へ再度移行させる再移行条件を設定する設定手段、および
前記再移行条件の成立を監視し、前記復帰させる理由となった通信に対する処理が完了し、かつ前記再移行条件が成立したことに応答して、前記メインシステムを省電力状態へ移行する制御手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータ実行可能なプログラムをコンピュータ可読に格納する記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−208922(P2012−208922A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33574(P2012−33574)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]