情報処理装置およびその方法
【課題】 積層構造をもつ板状の部品から形成される構造物の三次元形状を効率的に作成する。
【解決手段】 三次元構造物の二次元展開図データを取得する(S101)。波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力する(S102)。二次元展開図データの座標に対して、内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定する(S103)。二次元展開図データが示す各面に、層構成情報および主軸方向を表す情報を付加する(S104、S105)。二次元展開図データおよび折曲情報を用いて、三次元構造物の三次元形状を作成する(S105)。そして、各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、三次元形状が示す各面に、板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成する(S106)。
【解決手段】 三次元構造物の二次元展開図データを取得する(S101)。波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力する(S102)。二次元展開図データの座標に対して、内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定する(S103)。二次元展開図データが示す各面に、層構成情報および主軸方向を表す情報を付加する(S104、S105)。二次元展開図データおよび折曲情報を用いて、三次元構造物の三次元形状を作成する(S105)。そして、各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、三次元形状が示す各面に、板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成する(S106)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造物の二次元展開図データから、三次元構造物の三次元形状を作成する情報処理に関する。
【背景技術】
【0002】
部品や製品の設計にコンピュータ支援設計(CAD)が広く利用されている。CADにおける作業内容の一つに、有限要素法を使った解析を行うために、二次元CADモデルから三次元CADモデルを作成する作業がある。
【0003】
構造物をモデリングする手法として特許文献1は、既存の二次元CADモデルから、対話形式によって、自動展開可能な板金製品の三次元モデルを生成する技術を開示する。つまり、正面図と側面図のような、二方向の二次元CAD情報を基に、板金製品を平板部分と曲げ部分に分けて認識し、断面形状の作成が可能か否かを検証する。そして、断面形状の作成が可能な場合、板金製品の平板部分、曲げ部分、長さ情報に基づき、断面形状の押出形状として、板金製品の三次元CADモデルを生成する。
【0004】
また、構造物をモデリングする別の手法として特許文献2は、板金部品の二次元CADモデルから、板金製品の三次元CADモデルを生成する技術を開示する。つまり、二次元展開図における各曲げ線について曲げ半径および曲げ角度の情報を参照し、板厚方向の断面に対する回転スイープを行い、曲げ部分モデルを作成する。また、曲げ線以外の領域である二つの平面部に対し、板厚の距離だけ平行移動スイープを行い平面部分モデルを生成する。この後、平面部分モデルと曲げ部分モデルを結合し、板金製品の三次元モデルを生成する。
【0005】
ダンボールシートのような積層構造をもつ板状の素材(以下、積層板)が存在する。積層板により作成された構造物の、例えば落下解析を実施する場合、その解析精度を保つには、その内部の積層構造も形状として表現したモデルが必要になる。しかし、特許文献1、2に開示される技術は何れも、構造物のモデリングに関して、板金のように積層構造をもたず、板厚の方向が均一な形状で表現できるものに限定されている。これは、多くの場合、二次元展開図の各面を基準面たる中立面として折り曲げ、その後、属性としての厚さをすべての面に一律に付与し、三次元の外形形状を作成する手順を用いるためである。なお、中立面は、部材の板厚の中心の面を表す。
【0006】
従来の技術を用いて積層板の内部構成を再現して解析を試みる場合、本来の目的である解析の前に、三次元CADモデルをマニュアル作成する必要がある。さらに、積層板により構成される構造物の設計図面は、二次元展開図データのみが与えられることが多く、二次元図面から三次元形状をマニュアル作成する必要がある。このように、積層板の構造物の解析には、三次元CADモデルの作成に工数が掛かる上、工数削減の障害も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-115555号公報
【特許文献2】特開平7-141527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、積層構造をもつ板状部品から形成される構造物の三次元形状を効率的に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0010】
本発明にかかる装置処理は、三次元構造物の二次元展開図データを取得し、波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、前記二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力し、前記二次元展開図データの座標に対して、前記内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定し、前記二次元展開図データが示す各面に、前記層構成情報および前記主軸方向を表す情報を付加し、前記二次元展開図データおよび前記折曲情報を用いて、前記三次元構造物の三次元形状を作成し、前記各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、前記三次元形状が示す各面に、前記板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層構造をもつ板状部品から形成される構造物の三次元形状を効率的に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】積層板によって形成される構造物の形状を作成する情報処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図2】二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明するフローチャート。
【図3】二次元展開図データの構成例を示す図。
【図4】ダンボールシートの構造例を説明する図。
【図5】層構成情報の入力用のUIの一例を示す図。
【図6】折曲情報の入力用のUIの一例を示す図。
【図7】二次元展開図データから作成される三次元形状の一例を示す図。
【図8】二次元展開図データから作成した三次元形状に内部積層構造を加えた状態例を示す図。
【図9】内部積層構造の主軸方向および積層板の面の定義を入力するためのUIの一例を示す図。
【図10】三次元形状の作成結果の一例を示す図。
【図11】二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す図。
【図12】三次元形状データのデータ構造例を示す図。
【図13】内部積層構造の形状情報を三次元CADモデルの形状として定義、作成する処理例を説明する図。
【図14】ダンボールシートの内部積層構造の断面形状を作成する様子を説明する図。
【図15】物性値や境界条件などの入力用のUIの一例を示す図。
【図16】実施例2の情報処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図17】二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明するフローチャート。
【図18】板厚変化情報の入力用のUIの一例を示す図。
【図19】展開長を修正した三次元形状の作成処理の詳細を説明するフローチャート。
【図20】展開長を修正した三次元形状の作成結果の一例を示す図。
【図21】展開長を修正した三次元形状の作成結果の他の一例を示す図。
【図22】二次元展開図データから三次元外形形状を作成した結果例を示す図。
【図23】二次元展開図から作成された三次元形状の一例を示す図。
【図24】二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す図。
【図25】三次元形状データのデータ構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる実施例の情報処理を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、ダンボールシートによる構造物の三次元形状の作成および解析モデルの作成に本発明を適用する例を説明する。なお、本発明を適用可能なダンボールシート以外の素材として、直交異方性を有する板状の複合材料、例えば繊維強化プラスチック板などが挙げられる。また、以下に説明する解析モデルは、積層構造をもつ板状部品(以下、積層板)、および、積層板によって構成される構造物全体を再現した解析モデルを指す。
【実施例1】
【0014】
[装置の構成]
図1のブロック図により積層板によって形成される構造物の形状を作成する情報処理装置13の構成例を説明する。つまり、図1は、三次元CADモデルの作成処理、および、三次元解析モデルの作成処理を行うコンピュータシステムを示す。なお、図1に示すコンピュータシステムは、例えばパーソナルコンピュータのようなコンピュータに、本発明の機能を有するCADシステムのソフトウェアをインストールし実行することで構成可能である。
【0015】
情報処理装置13は、その内部にマイクロプロセッサ(CPU)101、リードオンリメモリ(ROM)102、ランダムアクセスメモリ(RAM)103を備える。また、情報処理装置13には、キーボードやマウスなどの入力装置11、液晶ディスプレイなどのモニタである表示装置12、ハードディスクドライブ(HDD)や半導体メモリなどの記憶装置14が接続される。さらに、データの保管や受け渡しに用いる例えばリムーバブルディスクドライブのような補助記憶装置15などが接続される。なお、補助記憶装置15の代わりに、ネットワーク上のサーバ装置を介してデータを受け渡すこともできる。
【0016】
CPU101は、ROM102や記憶装置14に格納されたオペレーティングシステム(OS)やCADシステムのソフトウェアをRAM103にロードし、それらを実行することで図1に示す機能ブロック121-127を実現する。
【0017】
展開図取得部121は、三次元CADモデルおよび三次元解析モデルの作成対象である、積層板によって形成される三次元構造物の、二次元展開図データから形状や寸法を示すデータを取得する。
【0018】
層構成情報・折曲情報取得部122は、内部積層構成である、積層板の形状や寸法を示す構成情報、および、積層板の折曲情報を取得する。
【0019】
主軸方向情報取得部123は、積層板の主軸方向を示す情報(以下、主軸方向情報)を取得する。主軸方向情報取得部123は、任意の一面(基準面)の主軸方向情報を自動的に取得してもよいし、ユーザが指定する一面(基準面)の主軸方向情報を取得してもよい。なお「主軸方向」の詳細は後述する。
【0020】
属性情報付与部124は、積層板の層構成情報と折曲情報、および、積層板の主軸方向情報をすべての面に定義する。
【0021】
形状作成部125は、三次元構造物の形状や寸法、積層板の構成情報と折曲情報、主軸方向情報に基づき、中立面を基準面として積層板を折り曲げた場合の構造物全体の三次元形状を作成する。
【0022】
三次元モデル作成部126は、形状作成部125が作成した板状の三次元形状に対して、隣接する面に跨り、連続かつ周期的な内部積層構造をもつ詳細な三次元形状である三次元CADモデルを作成する。
【0023】
解析モデル作成部127は、三次元モデル作成部126が定義した三次元CADモデルに基づき、解析モデルを作成する。解析モデルの作成には、メッシュモデルの作成、材料定義、境界条件設定などの一般的な解析作業が含まれる。
【0024】
[三次元CADモデルおよび解析モデルの作成処理]
図2のフローチャートにより二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明する。
【0025】
●二次元展開図データの取得(S101)
展開図取得部121は、補助記憶装置15に格納された、ユーザが指定する二次元展開図データ16を取得する(S101)。
【0026】
図3により二次元展開図データの構成例を示す。図3(a)に示すように、二次元展開図データは、面の頂点を示す、二次元座標値を有する四つの点データP、二つの点情報によって定義される四つのエッジデータE、四つのエッジデータによって定義される一つの面データSから構成される。図3B(b)は二次元展開図データのデータ構造例を示す。つまり、各面Sを構成するエッジEのデータと、各エッジEを構成する点Pのデータの階層構造を有する。なお、図3には二面分の情報しか示さないが、これら情報は、展開図上の面の数分、存在する。
【0027】
図4によりダンボールシートの構造例を説明する。ダンボールシートは、板状の部品として扱われるが、その断面は、三枚の紙またはプラスチック薄板などによって構成される。表面に位置する表ライナ1244は、一枚の平らな形状の薄板である。中間に位置する内部部材である中芯1245は、一枚の薄板であるが、正弦波状に規則的かつ連続に変化する形状(以下、波状形状)を有し、その形状は波ピッチ1247と波高さ1248で表現することができる。裏面に位置する裏ライナ1246は、表ライナ1244と同様に、一枚の平らな形状の薄板である。これら三枚の薄板の厚さは、その用途に応じて、すべてが同一でも、それぞれ異なってもよい。
【0028】
●層構成情報と折曲情報の取得(S102)
層構成情報・折曲情報取得部122は、ユーザインタフェイス(UI)を使用して、積層板の層構成情報と折曲情報を取得する(S102)。つまり、層構成情報・折曲情報取得部122は、図4に示すダンボールシートが有する各種属性情報を取得する。
【0029】
図5により層構成情報の入力用のUIの一例を示す。層構成情報・折曲情報取得部122は、図5に示すUIを表示装置12に表示する。ユーザは、図5に示すUIと入力装置11を用いて、積層板の層構成情報を入力する。つまり、入力欄1102に表ライナ1244の板厚t1を、入力欄1103に中芯1245の板厚t2を、入力欄1104に裏ライナ1245の板厚t3を、入力欄1105に波ピッチpを、入力欄1106に波高さhをそれぞれ入力する。
【0030】
ユーザが図5に示すUIの各欄に数値を入力し、OKボタンを押すと、層構成情報・折曲情報取得部122は、折曲情報を取得するためのUIを表示装置12に表示する。図6により折曲情報の入力用のUIの一例を示す。
【0031】
図6に示すUIは、二次元展開図として積層板の折曲情報を示すウィンドウ1110と、選択された折曲部の設定を示すウィンドウ1115を有する。また、符号1112で示すように、ユーザによって指定された三次元座標系がウィンドウ1110内に表示される。ユーザは、ウィンドウ1110、1115を使用して、入力装置11により折曲部の情報を入力する。
【0032】
ユーザが、ウィンドウ1110において折曲部である一稜線を選択すると、選択された稜線を囲む位置に選択領域を示す破線1113などが表示され、例えば符号1114で示すように、曲げ順序を示す番号が稜線上に表示される。稜線の選択に対応して、ウィンドウ1115の表示欄1116には当該稜線の曲げ順序が表示される。ユーザは、選択した稜線の曲げ角度を入力欄1117に、曲げ半径(曲げR)を入力欄1118にそれぞれ入力する。なお、ユーザは、折曲部の選択、並びに、曲げ角度および曲げRの入力を折曲部の数だけ繰り返す。
【0033】
ユーザが図6に示すUIに表示された各稜線の曲げ角度および曲げRを入力し、OKボタンを押すと、層構成情報・折曲情報取得部122による層構成情報と折曲情報の取得が終了する。
【0034】
なお、上記では、ユーザがUIを使用して層構成情報と折曲情報を入力する方法を説明した。しかし、二次元展開図データが層構成情報および折曲情報を含む場合、層構成情報・折曲情報取得部122は、二次元展開図データから層構成情報と折曲情報を取得することができる。
【0035】
●主軸方向情報の取得(S103)
図7により二次元展開図データから作成される三次元形状の一例を示す。三次元形状として板金構造物の三次元ソリッドモデルを作成し、その三次元形状を基にダンボールシートの三次元CADモデルを作成する場合、付加属性として積層板の内部構造を与える作業を行う。図8により二次元展開図データから作成した三次元形状に内部積層構造を加えた状態例を示す。
【0036】
ダンボールシートの中芯1245の波は、位相が変化する方向と位相が変化しない方向が平面内で直交する。これら直交する二方向のうち、位相が変化しない方向が「主軸方向」である。言い換えれば、二次元展開図データの座標に対して、波状形状を有する内部部材の形状が変化しない方向(波に直交する方向)が「主軸方向」である。
【0037】
図7に示す三次元形状に内部積層構造を付与する場合、構造物の底面1175、右側面1176、後側面1177、左側面1178それぞれに対して、図8に示すように、主軸方向1179-1182を与える。主軸方向は、二次元展開図データに指定された主軸方向を基に、構造物の作成時の基準になる座標系1183に対して、各所で適切に定める必要がある。
【0038】
主軸方向情報取得部123は、内部積層構造の配向の主軸方向および積層板の面の定義(表面か裏面か)を取得する(S103)。なお、面の定義において、ユーザは、二次元展開図データが示す各面と、積層板の面の関係、つまり、二次元展開図データが示す面が積層板の表面(表ライナ)に対応するか、裏面(裏ライナ)に対応するかを定義する。
【0039】
図9により内部積層構造の主軸方向および積層板の面の定義を入力するためのUIの一例を示す。主軸方向情報取得部123は、図9に示すUIを表示装置12に表示する。図9に示すUIは、二次元展開図として積層板の主軸方向の設定状況を示すウィンドウ1122、積層板の主軸方向の角度を定義するためのウィンドウ1126、積層板の面を定義するためのウィンドウ1132を有する。また、符号1125、1128、1136で示すように、ユーザによって指定された三次元座標系がウィンドウ1122、1126、1132内にそれぞれ表示される。
【0040】
ユーザは、ウィンドウ1126のラジオボタン1127を選択し、入力欄1129に積層板の主軸方向の角度θを入力する。主軸方向情報取得部123は、ユーザが入力した値に応じて、各ウィンドウの三次元座標系の表示に主軸方向の角度θの表示を加えて、X軸となす角度θを表す両矢印表示、X軸との角度θの数値表示などを行う。
【0041】
次に、ユーザは、ウィンドウ1132のラジオボタン1133を選択し、積層板の面を定義するラジオボタン1134または1135を選択する。なお、積層板の面の定義は、積層板の表ライナ1244の厚さと裏ライナ1246の厚さが異なる場合に必要な定義である。ユーザが、ラジオボタン1134を選択するとウィンドウ1122に表示する二次元展開図の手前側(+Z側)が表面(表ライナ)として定義される。また、ラジオボタン1135を選択するとウィンドウ1122に表示する二次元展開図の奥側(-Z側)が表面(表ライナ)として定義される。
【0042】
主軸方向の角度θの入力と積層板の面の定義の順番は任意である。ユーザが図9に示すUIに表示された主軸方向の角度θと積層板の面の定義を終了し、OKボタンを押すと、主軸方向情報取得部123による主軸方向の角度θと積層板の面の定義の取得が終了する。
【0043】
上記では、二次元展開図に含まれるすべての面に同一の値を自動的に設定する例を説明した。しかし、例えば、ユーザがウィンドウ1122において一面を選択し、選択した面の主軸方向の角度θと積層板の面の定義することもできる。なお、ダンボールシートの場合、任意の一面の選択は、自動、手動に関わらず、同一の主軸方向を与える。言い換えれば、ダンボールシートの主軸方向は、二次元展開図におけるすべて面で同一である。
【0044】
●属性情報の付与(S104)
属性情報付与部124は、層構成情報、折曲情報、主軸方向情報、および、面の定義をすべての面に属性情報として付与する(S104)。
【0045】
●三次元形状の作成(S105)
形状作成部125は、二次元展開図データが示す形状と寸法、並びに、積層板の折曲情報に基づき、中立面を基準面として、平面部と曲げ部からなる板状の三次元形状を作成する。ただし、基準面は、中立面に限らず、外表面または内表面にしてもよい。また、詳細は後述するが、形状作成部125は、二次元展開図データに積層板の主軸方向を表す単位ベクトルVを付加する。
【0046】
図10により三次元形状の作成結果の一例を示す。三次元形状は、平面部1139、曲げ部1140から構成される中立面三次元モデル1141として表される。
【0047】
図11により二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す。なお、説明を容易にするために、図11に示す二次元展開図データは、図3と同様に、二面の例を示しているが、実際の構造物はさらに多くの面を有することはいうまでもない。
【0048】
形状作成部125は、二次元展開図データの二次元情報、積層板の層構成情報、折曲情報、主軸方向情報、面の定義、および、基準面(例えば中立面)に基づき、三次元座標系1255を設定し、三次元情報(三次元形状)を生成する(S105)。
【0049】
三次元情報の生成には、折曲線(稜線)を軸とする回転座標変換などを行えばよい。例えば、図11に示す点P1からP6を座標変換して点P1'からP6'を生成し、それによってエッジE1からE7はエッジE1'からE7'へ座標変換され、面S1とS2は面S1'とS2'へ座標変換される。図11に示す例において、とくに点P5とP6、エッジE5からE7は、その位置がZ軸の正方向(+Z方向)へ移動する。
【0050】
形状作成部125は、図11に示すように、積層板の主軸方向を表す単位ベクトルV1とV2を二次元展開図データに付加する。従って、三次元情報の生成における点Pの座標変換とともに、単位ベクトルV1とV2も単位ベクトルV1'とV2'に座標変換される。言い換えれば、各面の主軸方向を示す三次元情報が生成可能である。従来の手法によれば、二次元展開図データから三次元情報を生成した後、各面に主軸方向を設定する必要がある。本実施例によれば、三次元情報の生成によって各面の主軸方向も生成されるから、三次元情報の作成後の主軸方向の設定は不要になる。
【0051】
図12により三次元形状データのデータ構造例を示す。図12(a)に示す三次元形状データは、図12(b)に示すデータ構造例を有する。つまり、各面Sを構成するエッジEのデータと、各エッジEを構成する点Pのデータの階層構造、および、主軸方向を示すベクトルVのデータを有する。なお、図12には二面分の情報しか示さないが、これら情報は、展開図上の面の数分、存在する。
【0052】
このように、形状作成部125による三次元情報の生成手順、つまり、二次元展開図データから三次元形状を作成する手順は、座標変換などの従来の手法を利用することができる。そして、二次元展開図データに主軸方向を示す単位ベクトルVを付加することによって、三次元形状における各面の主軸方向を示す単位ベクトルを生成することができる。
【0053】
●三次元CADモデルの作成(S106)
三次元モデル作成部126は、形状作成部125が作成した三次元形状に基づき、曲げ部1140を跨ぐ二つの平面部1139に亘って、連続かつ周期的な内部積層構造の形状情報を三次元CADモデルの形状として定義、作成する(S106)。図13により内部積層構造の形状情報を三次元CADモデルの形状として定義、作成する処理例を説明する。
【0054】
図13(a)は、平面部1139の板厚T1と曲げ部1140の板厚T2が等しい条件を設定し、連続かつ周期的な内部積層構造の形状情報を一括定義し、三次元形状(中立面三次元モデル)1141から三次元CADモデル1143を作成する例を示す。つまり、図13(a)は、板厚が変化しない(T1=T2)作成条件における三次元CADモデル1143の作成例を示す。
【0055】
図13(b)は、平面部1139の板厚T1よりも曲げ部1140の板厚T3が薄い条件を設定し、連続かつ周期的な内部積層構造の形状情報を一括定義して、中立面三次元モデル1141から三次元CADモデル1143を作成する例を示す。つまり、図13(b)は、曲げ部1140において板厚が減少する(T1>T3)作成条件における三次元CADモデル1143の作成例を示す。
【0056】
図14によりダンボールシートの内部積層構造の断面形状を作成する様子を説明する。
【0057】
中立面三次元モデル1141の中立面1249には、主軸方向の角度θを示す方向1251が設定されている。なお、方向1251は、前述したように波の位相が変化しない方向である。三次元モデル作成部126は、積層板の属性情報(中芯の波ピッチ1247、波高さ1248)に基づき、方向1251と直交する方向に正弦波状の中芯の位相形状1253を作成する。そして、中立面1249を基準として生成した位相形状1253を用いて、中芯の三次元形状1254を作成する。つまり、方向1251へ、位相形状1253を中立面1250と同一の外形長さまで押し出して、中芯の三次元形状1254を作成し、三次元CADモデル1143を作成する。
【0058】
なお、三次元CADモデル1143を作成する際の中立面は、平面に限らず、曲面などでもよい。また、正弦波状の中芯の位相形状の位相と周期は一定でなくてもよい。
【0059】
●解析モデルの作成(S107)
解析モデル作成部127は、三次元モデル作成部126が作成した内部詳細形状を有する三次元CADモデル、および、ユーザが入力する物性値や境界条件に基づき解析モデルを作成する(S107)。
【0060】
図15により物性値や境界条件などの入力用のUIの一例を示す。解析モデル作成部127は、図15に示すUIを表示装置12に表示する。図15に示すUIは、解析モデル1149を表示するウィンドウ1148、シェル要素と境界条件を定義するためのウィンドウ1150を有する。ユーザは、ウィンドウ1148に表示された解析モデル1149の、任意の有限要素を任意の数選択し、シェル要素と境界条件を定義することができる。
【0061】
ユーザは、ラジオボタン1151を選択して、選択した任意の有限要素の属性情報を定義することができる。つまり、有限要素の板厚を入力欄1152に、摩擦係数を入力欄1153に、ヤング率を入力欄1154に、ポアソン比を入力欄1155に、密度を入力欄1156に入力することができる。
【0062】
また、ユーザは、ラジオボタン1159を選択して、選択した任意の領域の境界条件を定義することができる。つまり、領域の拘束条件として、併進方向の各成分、回転方向の各成分をチェックボタン1160から1165によって選択することができる。
【0063】
なお、有限要素の属性情報や領域の境界条件は、補助記憶装置15から別データファイルとして読み込むことができる。その場合、ウィンドウ1150の入力欄やチェックボタンは、読み込んだ情報の表示欄として機能する。また、ユーザがOKボタンを押すと、解析モデル作成部127は、有限要素に定義された属性情報や領域に定義された境界条件をメインメモリなどに格納された解析モデルのデータに加える。
【0064】
なお、解析モデル作成用の入力は、要素、境界条件などに限定されるわけではない。任意の解析モデル定義、すなわち接触領域の範囲、接触定義などを含めることができる。
【0065】
このように、情報処理装置13は、二次元展開図データと、積層板の内部構成を示す情報を取得し、積層板が有する積層構成情報を三次元形状に定義する。これにより、積層板で形成される構造物全体の三次元CADモデルおよび解析モデルの作成が可能になる。その結果、積層板の内部構成を示す情報である、主軸方向、位相とその周期、かつ、連続した形状の情報を踏まえた、構造物全体の三次元CADモデルの作成、および、解析モデルの作成における作業効率を大幅に向上して、作成工数の短縮を図ることができる。
【実施例2】
【0066】
以下、本発明にかかる実施例2の情報処理を説明する。実施例2では、積層板のような板状部品が板厚変化部を有する場合を考慮した三次元CADモデルおよび解析モデルの作成を説明するが、実施例2において実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0067】
[装置の構成]
図16のブロック図により実施例2の情報処理装置13の構成例を説明する。
【0068】
層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、実施例1の層構成情報・折曲情報取得部122と同様に積層板の層構成情報と折曲情報を取得する。さらに、折曲部に対応する積層板の位置を予め加工して設けられた板厚変化部の板厚変化情報を取得する。なお、板厚変化部の設定は、折曲部の作成を容易にするためにダンボール構造物などで多用される。
【0069】
主軸方向情報取得部123は、実施例1と同様に、積層板の主軸方向情報を取得する。属性情報付与部124は、積層板の層構成情報と折曲情報および積層板の主軸方向情報に加えて、積層板の板厚変化情報をすべての面に定義する。
【0070】
形状作成部125は、三次元構造物の形状や寸法、積層板の構成情報と折曲情報および主軸方向情報に加え、積層板の板厚変化情報に基づき、中立面を基準面として積層板を折り曲げた場合の構造物全体の三次元形状を作成する。
【0071】
三次元モデル作成部126は、形状作成部125が作成した板状の三次元形状に対して、隣接する面に跨り、連続かつ周期的な内部積層構造をもつ詳細な三次元形状である三次元CADモデルを作成する。その際、展開長の修正を行うが、その詳細は後述する。
【0072】
解析モデル作成部127は、実施例1と同様に、三次元モデル作成部126が定義した三次元CADモデルに基づき、解析モデルを作成する。
【0073】
[三次元CADモデルおよび解析モデルの作成処理]
図17のフローチャートにより二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明する。以下では、実施例1と同様の処理である、二次元展開図データの取得処理(S101)、主軸方向情報の取得処理(S103)、三次元CADモデルの作成(S106)、解析モデルの作成(S107)の詳細説明を省略する。
【0074】
●層構成情報、折曲情報、板厚変化情報の取得(S202)
層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、UIを使用して、積層板の層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を取得する(S202)。つまり、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部132は、図4に示すダンボールシートが有する各種属性情報を取得する。
【0075】
層構成情報の入力には図5に一例を示すUIを利用し、折曲情報の入力には図6に一例を示すUIを利用するが、それらの詳細説明は省略する。
【0076】
図18により板厚変化情報の入力用のUIの一例を示す。層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、図18に示すUIを表示装置12に表示する。ユーザは、図18に示すUIと入力装置11を用いて、積層板の板厚変化情報を入力する。
【0077】
ユーザは、ラジオボタン1179を用いて板厚の変化方向を選択する。つまり、板厚の中立軸に対して曲げの稜線が外側にあるか内側にあるかを板厚の変化方向として選択する。また、板厚変化方法欄1180のラジオボタンを用いて、板厚変化が罫線によって提供されるのか、ミシン目(ライナ部分切断)によって提供されるのか、ライナ切断によって提供されるのかの何れかを選択する。さらに、入力欄1181に板厚変化前の積層板の板厚(元)を、入力欄1182に板厚変化部の板厚の変化量Δをそれぞれ入力する。
【0078】
ユーザが図18に示すUIの各欄のラジオボタンを選択し数値を入力して、OKボタンを押すと、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222による層構成情報、折曲情報、板厚変化情報の取得が終了する。
【0079】
なお、上記では、ユーザがUIを使用して層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を入力する方法を説明した。しかし、二次元展開図データが層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を含む場合、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、二次元展開図データから層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を取得することができる。
【0080】
●属性情報の付与(S204)
属性情報付与部124は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義をすべての面に属性情報として付与する(S204)。
【0081】
●展開長を修正した三次元形状の作成(S205)
形状作成部125は、二次元展開図データが示す形状と寸法、並びに、積層板の折曲情報に基づき、中立面を基準面として、平面部と曲げ部からなる板状の三次元形状を作成する。ただし、基準面は、中立面に限らず、外表面または内表面にしてもよい。また、形状作成部125は、二次元展開図データに積層板の主軸方向を表す単位ベクトルVを付加するとともに、二次元展開図データに曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を表す単位ベクトルV'を付加する。
【0082】
三次元形状は、図10に示すように、基本的に、平面部1139と曲げ部1140から構成される中立面三次元モデル1141として表される。
【0083】
この三次元形状を作成する際、通常、二次元展開図の中立面の位置を曲げ位置とし、各曲げ部に板厚の半分の値を加算することで外形形状寸法が定まる。しかし、板厚変化部を考慮すると、外形形状寸法が、そのように定まるとは限らない。さらに、内部積層構造の主軸方向を併せて考慮すると、曲げ稜線部の方向と内部積層構造の主軸方向がなす角度によって板厚変化量も変化する。つまり、二次元展開図の中立面位置を曲げ位置とし、各曲げ部に板厚の半分の値を加算しても、外形形状寸法は定まらない。
【0084】
そこで、本実施例において三次元形状を作成する際、二次元展開図の中立面の位置から得られる曲げ位置に、さらに正から負の値をとる修正量を曲げ回数に応じて加減算する修正を行い、正確な三次元形状を得る。つまり、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義を踏まえ、展開長を修正した三次元形状を作成する(S205)。
【0085】
図19のフローチャートにより展開長を修正した三次元形状の作成処理(S205)の詳細を説明する。
【0086】
まず、基準平面部を曲げ部の探索面に設定し(S301)、探索面において曲げ部を探索し(S302)、曲げ部が検出されたか否かを判定する(S303)。曲げ部が検出されると探索面における主軸方向ベクトルVと、当該曲げ部の曲げ稜線軸ベクトルV'を抽出し(S304)、それらベクトルがなす角を算出する(S305)。
【0087】
次に、ベクトルがなす角度が90度の場合と0度の場合で処理を分岐する(S306)。そして、残り長さの有無を判定し(S307、S308)、残り長さがある場合は展開長を修正した、当該曲げ部の三次元形状を作成する(S309、S310)。その際、記憶装置14に格納された層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報などの属性情報が参照される。
【0088】
検出した曲げ部の三次元形状の作成が終了した場合は、処理をステップS301に戻し、曲げ部によって作成された新規平面を探索面に設定し(S301)、新たな探索面の曲げ部を探索する。
【0089】
また、残り長さがないと判定した場合は、処理をステップS302に戻し、探索面における曲げ部の探索を行う。
【0090】
探索面において曲げ部が検出されなかった場合(S303)、処理をステップS301に戻し、一つ前の平面を再び探索面に設定する(S301)。そして、ステップS302からS309の処理を繰り返して、探索面を基準平面部まで戻しても新たな曲げ部が検出されない終了条件を満たす場合(S303)は、展開長を修正した三次元形状の作成処理(S205)を終了する。
【0091】
図20により展開長を修正した三次元形状の作成結果の一例を示す。中芯形状1197によって定まる積層板の主軸方向ベクトル1196と、曲げ稜線に平行なベクトル1200がなす角度を内積により算出する。そして、外部形状寸法から定まる曲げ間隔の展開長称呼寸法1198から残り長さを算出した上で、修正量1199を加減算する。修正量1199は、記憶装置14に格納にされた層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報を踏まえ、正から負の値をとる修正量として各曲げ部ごとに算出され、三次元形状寸法に反映される。
【0092】
図21により展開長を修正した三次元形状の作成結果の他の一例を示す。中芯形状1203によって定まる積層板の主軸方向ベクトル1201と、曲げ稜線に平行なベクトル1205がなす角度を内積により算出する。そして、外部形状寸法から定まる曲げ間隔の展開長称呼寸法1202から残り長さを算出した上で、修正量1204を加減算する。修正量1204は、記憶装置14に格納にされた層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報を踏まえ、正から負の値をとる修正量として各曲げ部ごとに算出され、三次元形状寸法に反映される。
【0093】
図22により二次元展開図データから三次元外形形状を作成した結果例を示す。図22(a)は、二次元展開図の曲げ位置を中立面とし、一律に板厚を設けて、二次元展開図データ1186から三次元形状1187を作成した例である。
【0094】
図22(b)は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義を踏まえて二次元展開図データ1186から三次元形状1190を作成した例である。図22(b)に示すように、三次元形状1190は、三次元形状1187よりも小さく作成される。この例は、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222が提供する図18に示すUIから明らかなように、曲げ稜線が中立軸の外側にある場合に相当する。
【0095】
図22(c)は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義を踏まえて二次元展開図データ1186から三次元形状1193を作成した例である。図22(c)に示すように、三次元形状1193は、三次元形状1187よりも大きく作成される。なお、この例は、図18に示すUIから明らかなように、曲げ稜線が中立軸の内側にある場合に相当する。
【0096】
図23により二次元展開図から作成された三次元形状の一例を示す。図23(a)は、積層構造を踏まえずに、二次元展開図の曲げ位置を中立面として、一律に板厚を設けて作成された三次元形状1194の一例を示す。図23(b)は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報を踏まえて、二次元展開図から作成された三次元形状1195の一例を示す。三次元形状1195は、三次元形状1194よりも小さく作成され、実際の製品の各面に生じる微小な角度の倒れも再現する。
【0097】
図24により二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す。なお、説明を容易にするために、図24に示す二次元展開図データは、図3と同様に、二面の例を示しているが、実際の構造物はさらに多くの面を有することはいうまでもない。
【0098】
形状作成部125は、二次元展開図データの二次元情報、積層板の層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、面の定義、および、基準面(例えば中立面)に基づき、三次元座標系1255を設定し、三次元情報(三次元形状)を生成する。
【0099】
三次元情報の生成には、折曲線(稜線)を軸とする回転座標変換などを行えばよい。例えば、図24に示す点P1からP6を座標変換して点P1'からP6'を生成し、それによってエッジE1からE7はエッジE1'からE7'へ座標変換され、面S1とS2は面S1'とS2'へ座標変換される。図24に示す例において、とくに点P5とP6、エッジE5からE7は、その位置がZ軸の正方向(+Z方向)へ移動する。
【0100】
形状作成部125は、図24に示すように、積層板の主軸方向を表す単位ベクトルV1とV2を二次元展開図データに付加する。従って、三次元情報の生成における点Pの座標変換とともに、単位ベクトルV1とV2も単位ベクトルV1'とV2'に座標変換される。
【0101】
同様に、形状作成部125は、図24に示すように、曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を表す単位ベクトルV'1を二次元展開図データに付加する。従って、三次元情報の生成における点Pの座標変換とともに、単位ベクトルV'1も単位ベクトルV'1'に座標変換される。
【0102】
言い換えれば、各面の主軸方向を示す三次元情報が生成可能である。従来の手法によれば、二次元展開図データから三次元情報を生成した後、各面に主軸方向を設定する必要がある。本実施例によれば、三次元情報の生成によって各面の主軸方向も生成されるから、三次元情報の作成後の主軸方向の設定は不要になる。
【0103】
さらに、各曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を示す三次元情報も生成可能である。従来の手法によれば、二次元展開図データから三次元情報を生成した後、各曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を設定する必要がある。本実施例によれば、三次元情報の生成によって各曲げ部の曲げ稜線に平行な方向も生成されるから、三次元情報の作成後の曲げ稜線に平行な方向の設定も不要になる。
【0104】
図25により三次元形状データのデータ構造例を示す。図25(a)に示す三次元形状データは、図25(b)に示すデータ構造例を有する。つまり、各面Sを構成するエッジEのデータと、各エッジEを構成する点Pのデータの階層構造、および、主軸方向を示すベクトルV、曲げ稜線に平行な方向を示すベクトルV'のデータを有する。なお、図25には二面と一稜線分の情報しか示さないが、これら情報は、展開図上の面と稜線の数分、存在する。
【0105】
このように、形状作成部125による三次元情報の生成手順、つまり、二次元展開図データから三次元形状を作成する手順は、座標変換などの従来の手法を利用することができる。そして、二次元展開図データに主軸方向を示す単位ベクトルVと、曲げ稜線に平行な方向を示す単位ベクトルV'を付加することによって、三次元形状における各面の主軸方向と、曲げ稜線に平行な方向を示す単位ベクトルを生成することができる。
【0106】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造物の二次元展開図データから、三次元構造物の三次元形状を作成する情報処理に関する。
【背景技術】
【0002】
部品や製品の設計にコンピュータ支援設計(CAD)が広く利用されている。CADにおける作業内容の一つに、有限要素法を使った解析を行うために、二次元CADモデルから三次元CADモデルを作成する作業がある。
【0003】
構造物をモデリングする手法として特許文献1は、既存の二次元CADモデルから、対話形式によって、自動展開可能な板金製品の三次元モデルを生成する技術を開示する。つまり、正面図と側面図のような、二方向の二次元CAD情報を基に、板金製品を平板部分と曲げ部分に分けて認識し、断面形状の作成が可能か否かを検証する。そして、断面形状の作成が可能な場合、板金製品の平板部分、曲げ部分、長さ情報に基づき、断面形状の押出形状として、板金製品の三次元CADモデルを生成する。
【0004】
また、構造物をモデリングする別の手法として特許文献2は、板金部品の二次元CADモデルから、板金製品の三次元CADモデルを生成する技術を開示する。つまり、二次元展開図における各曲げ線について曲げ半径および曲げ角度の情報を参照し、板厚方向の断面に対する回転スイープを行い、曲げ部分モデルを作成する。また、曲げ線以外の領域である二つの平面部に対し、板厚の距離だけ平行移動スイープを行い平面部分モデルを生成する。この後、平面部分モデルと曲げ部分モデルを結合し、板金製品の三次元モデルを生成する。
【0005】
ダンボールシートのような積層構造をもつ板状の素材(以下、積層板)が存在する。積層板により作成された構造物の、例えば落下解析を実施する場合、その解析精度を保つには、その内部の積層構造も形状として表現したモデルが必要になる。しかし、特許文献1、2に開示される技術は何れも、構造物のモデリングに関して、板金のように積層構造をもたず、板厚の方向が均一な形状で表現できるものに限定されている。これは、多くの場合、二次元展開図の各面を基準面たる中立面として折り曲げ、その後、属性としての厚さをすべての面に一律に付与し、三次元の外形形状を作成する手順を用いるためである。なお、中立面は、部材の板厚の中心の面を表す。
【0006】
従来の技術を用いて積層板の内部構成を再現して解析を試みる場合、本来の目的である解析の前に、三次元CADモデルをマニュアル作成する必要がある。さらに、積層板により構成される構造物の設計図面は、二次元展開図データのみが与えられることが多く、二次元図面から三次元形状をマニュアル作成する必要がある。このように、積層板の構造物の解析には、三次元CADモデルの作成に工数が掛かる上、工数削減の障害も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-115555号公報
【特許文献2】特開平7-141527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、積層構造をもつ板状部品から形成される構造物の三次元形状を効率的に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0010】
本発明にかかる装置処理は、三次元構造物の二次元展開図データを取得し、波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、前記二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力し、前記二次元展開図データの座標に対して、前記内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定し、前記二次元展開図データが示す各面に、前記層構成情報および前記主軸方向を表す情報を付加し、前記二次元展開図データおよび前記折曲情報を用いて、前記三次元構造物の三次元形状を作成し、前記各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、前記三次元形状が示す各面に、前記板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層構造をもつ板状部品から形成される構造物の三次元形状を効率的に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】積層板によって形成される構造物の形状を作成する情報処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図2】二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明するフローチャート。
【図3】二次元展開図データの構成例を示す図。
【図4】ダンボールシートの構造例を説明する図。
【図5】層構成情報の入力用のUIの一例を示す図。
【図6】折曲情報の入力用のUIの一例を示す図。
【図7】二次元展開図データから作成される三次元形状の一例を示す図。
【図8】二次元展開図データから作成した三次元形状に内部積層構造を加えた状態例を示す図。
【図9】内部積層構造の主軸方向および積層板の面の定義を入力するためのUIの一例を示す図。
【図10】三次元形状の作成結果の一例を示す図。
【図11】二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す図。
【図12】三次元形状データのデータ構造例を示す図。
【図13】内部積層構造の形状情報を三次元CADモデルの形状として定義、作成する処理例を説明する図。
【図14】ダンボールシートの内部積層構造の断面形状を作成する様子を説明する図。
【図15】物性値や境界条件などの入力用のUIの一例を示す図。
【図16】実施例2の情報処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図17】二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明するフローチャート。
【図18】板厚変化情報の入力用のUIの一例を示す図。
【図19】展開長を修正した三次元形状の作成処理の詳細を説明するフローチャート。
【図20】展開長を修正した三次元形状の作成結果の一例を示す図。
【図21】展開長を修正した三次元形状の作成結果の他の一例を示す図。
【図22】二次元展開図データから三次元外形形状を作成した結果例を示す図。
【図23】二次元展開図から作成された三次元形状の一例を示す図。
【図24】二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す図。
【図25】三次元形状データのデータ構造例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる実施例の情報処理を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、ダンボールシートによる構造物の三次元形状の作成および解析モデルの作成に本発明を適用する例を説明する。なお、本発明を適用可能なダンボールシート以外の素材として、直交異方性を有する板状の複合材料、例えば繊維強化プラスチック板などが挙げられる。また、以下に説明する解析モデルは、積層構造をもつ板状部品(以下、積層板)、および、積層板によって構成される構造物全体を再現した解析モデルを指す。
【実施例1】
【0014】
[装置の構成]
図1のブロック図により積層板によって形成される構造物の形状を作成する情報処理装置13の構成例を説明する。つまり、図1は、三次元CADモデルの作成処理、および、三次元解析モデルの作成処理を行うコンピュータシステムを示す。なお、図1に示すコンピュータシステムは、例えばパーソナルコンピュータのようなコンピュータに、本発明の機能を有するCADシステムのソフトウェアをインストールし実行することで構成可能である。
【0015】
情報処理装置13は、その内部にマイクロプロセッサ(CPU)101、リードオンリメモリ(ROM)102、ランダムアクセスメモリ(RAM)103を備える。また、情報処理装置13には、キーボードやマウスなどの入力装置11、液晶ディスプレイなどのモニタである表示装置12、ハードディスクドライブ(HDD)や半導体メモリなどの記憶装置14が接続される。さらに、データの保管や受け渡しに用いる例えばリムーバブルディスクドライブのような補助記憶装置15などが接続される。なお、補助記憶装置15の代わりに、ネットワーク上のサーバ装置を介してデータを受け渡すこともできる。
【0016】
CPU101は、ROM102や記憶装置14に格納されたオペレーティングシステム(OS)やCADシステムのソフトウェアをRAM103にロードし、それらを実行することで図1に示す機能ブロック121-127を実現する。
【0017】
展開図取得部121は、三次元CADモデルおよび三次元解析モデルの作成対象である、積層板によって形成される三次元構造物の、二次元展開図データから形状や寸法を示すデータを取得する。
【0018】
層構成情報・折曲情報取得部122は、内部積層構成である、積層板の形状や寸法を示す構成情報、および、積層板の折曲情報を取得する。
【0019】
主軸方向情報取得部123は、積層板の主軸方向を示す情報(以下、主軸方向情報)を取得する。主軸方向情報取得部123は、任意の一面(基準面)の主軸方向情報を自動的に取得してもよいし、ユーザが指定する一面(基準面)の主軸方向情報を取得してもよい。なお「主軸方向」の詳細は後述する。
【0020】
属性情報付与部124は、積層板の層構成情報と折曲情報、および、積層板の主軸方向情報をすべての面に定義する。
【0021】
形状作成部125は、三次元構造物の形状や寸法、積層板の構成情報と折曲情報、主軸方向情報に基づき、中立面を基準面として積層板を折り曲げた場合の構造物全体の三次元形状を作成する。
【0022】
三次元モデル作成部126は、形状作成部125が作成した板状の三次元形状に対して、隣接する面に跨り、連続かつ周期的な内部積層構造をもつ詳細な三次元形状である三次元CADモデルを作成する。
【0023】
解析モデル作成部127は、三次元モデル作成部126が定義した三次元CADモデルに基づき、解析モデルを作成する。解析モデルの作成には、メッシュモデルの作成、材料定義、境界条件設定などの一般的な解析作業が含まれる。
【0024】
[三次元CADモデルおよび解析モデルの作成処理]
図2のフローチャートにより二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明する。
【0025】
●二次元展開図データの取得(S101)
展開図取得部121は、補助記憶装置15に格納された、ユーザが指定する二次元展開図データ16を取得する(S101)。
【0026】
図3により二次元展開図データの構成例を示す。図3(a)に示すように、二次元展開図データは、面の頂点を示す、二次元座標値を有する四つの点データP、二つの点情報によって定義される四つのエッジデータE、四つのエッジデータによって定義される一つの面データSから構成される。図3B(b)は二次元展開図データのデータ構造例を示す。つまり、各面Sを構成するエッジEのデータと、各エッジEを構成する点Pのデータの階層構造を有する。なお、図3には二面分の情報しか示さないが、これら情報は、展開図上の面の数分、存在する。
【0027】
図4によりダンボールシートの構造例を説明する。ダンボールシートは、板状の部品として扱われるが、その断面は、三枚の紙またはプラスチック薄板などによって構成される。表面に位置する表ライナ1244は、一枚の平らな形状の薄板である。中間に位置する内部部材である中芯1245は、一枚の薄板であるが、正弦波状に規則的かつ連続に変化する形状(以下、波状形状)を有し、その形状は波ピッチ1247と波高さ1248で表現することができる。裏面に位置する裏ライナ1246は、表ライナ1244と同様に、一枚の平らな形状の薄板である。これら三枚の薄板の厚さは、その用途に応じて、すべてが同一でも、それぞれ異なってもよい。
【0028】
●層構成情報と折曲情報の取得(S102)
層構成情報・折曲情報取得部122は、ユーザインタフェイス(UI)を使用して、積層板の層構成情報と折曲情報を取得する(S102)。つまり、層構成情報・折曲情報取得部122は、図4に示すダンボールシートが有する各種属性情報を取得する。
【0029】
図5により層構成情報の入力用のUIの一例を示す。層構成情報・折曲情報取得部122は、図5に示すUIを表示装置12に表示する。ユーザは、図5に示すUIと入力装置11を用いて、積層板の層構成情報を入力する。つまり、入力欄1102に表ライナ1244の板厚t1を、入力欄1103に中芯1245の板厚t2を、入力欄1104に裏ライナ1245の板厚t3を、入力欄1105に波ピッチpを、入力欄1106に波高さhをそれぞれ入力する。
【0030】
ユーザが図5に示すUIの各欄に数値を入力し、OKボタンを押すと、層構成情報・折曲情報取得部122は、折曲情報を取得するためのUIを表示装置12に表示する。図6により折曲情報の入力用のUIの一例を示す。
【0031】
図6に示すUIは、二次元展開図として積層板の折曲情報を示すウィンドウ1110と、選択された折曲部の設定を示すウィンドウ1115を有する。また、符号1112で示すように、ユーザによって指定された三次元座標系がウィンドウ1110内に表示される。ユーザは、ウィンドウ1110、1115を使用して、入力装置11により折曲部の情報を入力する。
【0032】
ユーザが、ウィンドウ1110において折曲部である一稜線を選択すると、選択された稜線を囲む位置に選択領域を示す破線1113などが表示され、例えば符号1114で示すように、曲げ順序を示す番号が稜線上に表示される。稜線の選択に対応して、ウィンドウ1115の表示欄1116には当該稜線の曲げ順序が表示される。ユーザは、選択した稜線の曲げ角度を入力欄1117に、曲げ半径(曲げR)を入力欄1118にそれぞれ入力する。なお、ユーザは、折曲部の選択、並びに、曲げ角度および曲げRの入力を折曲部の数だけ繰り返す。
【0033】
ユーザが図6に示すUIに表示された各稜線の曲げ角度および曲げRを入力し、OKボタンを押すと、層構成情報・折曲情報取得部122による層構成情報と折曲情報の取得が終了する。
【0034】
なお、上記では、ユーザがUIを使用して層構成情報と折曲情報を入力する方法を説明した。しかし、二次元展開図データが層構成情報および折曲情報を含む場合、層構成情報・折曲情報取得部122は、二次元展開図データから層構成情報と折曲情報を取得することができる。
【0035】
●主軸方向情報の取得(S103)
図7により二次元展開図データから作成される三次元形状の一例を示す。三次元形状として板金構造物の三次元ソリッドモデルを作成し、その三次元形状を基にダンボールシートの三次元CADモデルを作成する場合、付加属性として積層板の内部構造を与える作業を行う。図8により二次元展開図データから作成した三次元形状に内部積層構造を加えた状態例を示す。
【0036】
ダンボールシートの中芯1245の波は、位相が変化する方向と位相が変化しない方向が平面内で直交する。これら直交する二方向のうち、位相が変化しない方向が「主軸方向」である。言い換えれば、二次元展開図データの座標に対して、波状形状を有する内部部材の形状が変化しない方向(波に直交する方向)が「主軸方向」である。
【0037】
図7に示す三次元形状に内部積層構造を付与する場合、構造物の底面1175、右側面1176、後側面1177、左側面1178それぞれに対して、図8に示すように、主軸方向1179-1182を与える。主軸方向は、二次元展開図データに指定された主軸方向を基に、構造物の作成時の基準になる座標系1183に対して、各所で適切に定める必要がある。
【0038】
主軸方向情報取得部123は、内部積層構造の配向の主軸方向および積層板の面の定義(表面か裏面か)を取得する(S103)。なお、面の定義において、ユーザは、二次元展開図データが示す各面と、積層板の面の関係、つまり、二次元展開図データが示す面が積層板の表面(表ライナ)に対応するか、裏面(裏ライナ)に対応するかを定義する。
【0039】
図9により内部積層構造の主軸方向および積層板の面の定義を入力するためのUIの一例を示す。主軸方向情報取得部123は、図9に示すUIを表示装置12に表示する。図9に示すUIは、二次元展開図として積層板の主軸方向の設定状況を示すウィンドウ1122、積層板の主軸方向の角度を定義するためのウィンドウ1126、積層板の面を定義するためのウィンドウ1132を有する。また、符号1125、1128、1136で示すように、ユーザによって指定された三次元座標系がウィンドウ1122、1126、1132内にそれぞれ表示される。
【0040】
ユーザは、ウィンドウ1126のラジオボタン1127を選択し、入力欄1129に積層板の主軸方向の角度θを入力する。主軸方向情報取得部123は、ユーザが入力した値に応じて、各ウィンドウの三次元座標系の表示に主軸方向の角度θの表示を加えて、X軸となす角度θを表す両矢印表示、X軸との角度θの数値表示などを行う。
【0041】
次に、ユーザは、ウィンドウ1132のラジオボタン1133を選択し、積層板の面を定義するラジオボタン1134または1135を選択する。なお、積層板の面の定義は、積層板の表ライナ1244の厚さと裏ライナ1246の厚さが異なる場合に必要な定義である。ユーザが、ラジオボタン1134を選択するとウィンドウ1122に表示する二次元展開図の手前側(+Z側)が表面(表ライナ)として定義される。また、ラジオボタン1135を選択するとウィンドウ1122に表示する二次元展開図の奥側(-Z側)が表面(表ライナ)として定義される。
【0042】
主軸方向の角度θの入力と積層板の面の定義の順番は任意である。ユーザが図9に示すUIに表示された主軸方向の角度θと積層板の面の定義を終了し、OKボタンを押すと、主軸方向情報取得部123による主軸方向の角度θと積層板の面の定義の取得が終了する。
【0043】
上記では、二次元展開図に含まれるすべての面に同一の値を自動的に設定する例を説明した。しかし、例えば、ユーザがウィンドウ1122において一面を選択し、選択した面の主軸方向の角度θと積層板の面の定義することもできる。なお、ダンボールシートの場合、任意の一面の選択は、自動、手動に関わらず、同一の主軸方向を与える。言い換えれば、ダンボールシートの主軸方向は、二次元展開図におけるすべて面で同一である。
【0044】
●属性情報の付与(S104)
属性情報付与部124は、層構成情報、折曲情報、主軸方向情報、および、面の定義をすべての面に属性情報として付与する(S104)。
【0045】
●三次元形状の作成(S105)
形状作成部125は、二次元展開図データが示す形状と寸法、並びに、積層板の折曲情報に基づき、中立面を基準面として、平面部と曲げ部からなる板状の三次元形状を作成する。ただし、基準面は、中立面に限らず、外表面または内表面にしてもよい。また、詳細は後述するが、形状作成部125は、二次元展開図データに積層板の主軸方向を表す単位ベクトルVを付加する。
【0046】
図10により三次元形状の作成結果の一例を示す。三次元形状は、平面部1139、曲げ部1140から構成される中立面三次元モデル1141として表される。
【0047】
図11により二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す。なお、説明を容易にするために、図11に示す二次元展開図データは、図3と同様に、二面の例を示しているが、実際の構造物はさらに多くの面を有することはいうまでもない。
【0048】
形状作成部125は、二次元展開図データの二次元情報、積層板の層構成情報、折曲情報、主軸方向情報、面の定義、および、基準面(例えば中立面)に基づき、三次元座標系1255を設定し、三次元情報(三次元形状)を生成する(S105)。
【0049】
三次元情報の生成には、折曲線(稜線)を軸とする回転座標変換などを行えばよい。例えば、図11に示す点P1からP6を座標変換して点P1'からP6'を生成し、それによってエッジE1からE7はエッジE1'からE7'へ座標変換され、面S1とS2は面S1'とS2'へ座標変換される。図11に示す例において、とくに点P5とP6、エッジE5からE7は、その位置がZ軸の正方向(+Z方向)へ移動する。
【0050】
形状作成部125は、図11に示すように、積層板の主軸方向を表す単位ベクトルV1とV2を二次元展開図データに付加する。従って、三次元情報の生成における点Pの座標変換とともに、単位ベクトルV1とV2も単位ベクトルV1'とV2'に座標変換される。言い換えれば、各面の主軸方向を示す三次元情報が生成可能である。従来の手法によれば、二次元展開図データから三次元情報を生成した後、各面に主軸方向を設定する必要がある。本実施例によれば、三次元情報の生成によって各面の主軸方向も生成されるから、三次元情報の作成後の主軸方向の設定は不要になる。
【0051】
図12により三次元形状データのデータ構造例を示す。図12(a)に示す三次元形状データは、図12(b)に示すデータ構造例を有する。つまり、各面Sを構成するエッジEのデータと、各エッジEを構成する点Pのデータの階層構造、および、主軸方向を示すベクトルVのデータを有する。なお、図12には二面分の情報しか示さないが、これら情報は、展開図上の面の数分、存在する。
【0052】
このように、形状作成部125による三次元情報の生成手順、つまり、二次元展開図データから三次元形状を作成する手順は、座標変換などの従来の手法を利用することができる。そして、二次元展開図データに主軸方向を示す単位ベクトルVを付加することによって、三次元形状における各面の主軸方向を示す単位ベクトルを生成することができる。
【0053】
●三次元CADモデルの作成(S106)
三次元モデル作成部126は、形状作成部125が作成した三次元形状に基づき、曲げ部1140を跨ぐ二つの平面部1139に亘って、連続かつ周期的な内部積層構造の形状情報を三次元CADモデルの形状として定義、作成する(S106)。図13により内部積層構造の形状情報を三次元CADモデルの形状として定義、作成する処理例を説明する。
【0054】
図13(a)は、平面部1139の板厚T1と曲げ部1140の板厚T2が等しい条件を設定し、連続かつ周期的な内部積層構造の形状情報を一括定義し、三次元形状(中立面三次元モデル)1141から三次元CADモデル1143を作成する例を示す。つまり、図13(a)は、板厚が変化しない(T1=T2)作成条件における三次元CADモデル1143の作成例を示す。
【0055】
図13(b)は、平面部1139の板厚T1よりも曲げ部1140の板厚T3が薄い条件を設定し、連続かつ周期的な内部積層構造の形状情報を一括定義して、中立面三次元モデル1141から三次元CADモデル1143を作成する例を示す。つまり、図13(b)は、曲げ部1140において板厚が減少する(T1>T3)作成条件における三次元CADモデル1143の作成例を示す。
【0056】
図14によりダンボールシートの内部積層構造の断面形状を作成する様子を説明する。
【0057】
中立面三次元モデル1141の中立面1249には、主軸方向の角度θを示す方向1251が設定されている。なお、方向1251は、前述したように波の位相が変化しない方向である。三次元モデル作成部126は、積層板の属性情報(中芯の波ピッチ1247、波高さ1248)に基づき、方向1251と直交する方向に正弦波状の中芯の位相形状1253を作成する。そして、中立面1249を基準として生成した位相形状1253を用いて、中芯の三次元形状1254を作成する。つまり、方向1251へ、位相形状1253を中立面1250と同一の外形長さまで押し出して、中芯の三次元形状1254を作成し、三次元CADモデル1143を作成する。
【0058】
なお、三次元CADモデル1143を作成する際の中立面は、平面に限らず、曲面などでもよい。また、正弦波状の中芯の位相形状の位相と周期は一定でなくてもよい。
【0059】
●解析モデルの作成(S107)
解析モデル作成部127は、三次元モデル作成部126が作成した内部詳細形状を有する三次元CADモデル、および、ユーザが入力する物性値や境界条件に基づき解析モデルを作成する(S107)。
【0060】
図15により物性値や境界条件などの入力用のUIの一例を示す。解析モデル作成部127は、図15に示すUIを表示装置12に表示する。図15に示すUIは、解析モデル1149を表示するウィンドウ1148、シェル要素と境界条件を定義するためのウィンドウ1150を有する。ユーザは、ウィンドウ1148に表示された解析モデル1149の、任意の有限要素を任意の数選択し、シェル要素と境界条件を定義することができる。
【0061】
ユーザは、ラジオボタン1151を選択して、選択した任意の有限要素の属性情報を定義することができる。つまり、有限要素の板厚を入力欄1152に、摩擦係数を入力欄1153に、ヤング率を入力欄1154に、ポアソン比を入力欄1155に、密度を入力欄1156に入力することができる。
【0062】
また、ユーザは、ラジオボタン1159を選択して、選択した任意の領域の境界条件を定義することができる。つまり、領域の拘束条件として、併進方向の各成分、回転方向の各成分をチェックボタン1160から1165によって選択することができる。
【0063】
なお、有限要素の属性情報や領域の境界条件は、補助記憶装置15から別データファイルとして読み込むことができる。その場合、ウィンドウ1150の入力欄やチェックボタンは、読み込んだ情報の表示欄として機能する。また、ユーザがOKボタンを押すと、解析モデル作成部127は、有限要素に定義された属性情報や領域に定義された境界条件をメインメモリなどに格納された解析モデルのデータに加える。
【0064】
なお、解析モデル作成用の入力は、要素、境界条件などに限定されるわけではない。任意の解析モデル定義、すなわち接触領域の範囲、接触定義などを含めることができる。
【0065】
このように、情報処理装置13は、二次元展開図データと、積層板の内部構成を示す情報を取得し、積層板が有する積層構成情報を三次元形状に定義する。これにより、積層板で形成される構造物全体の三次元CADモデルおよび解析モデルの作成が可能になる。その結果、積層板の内部構成を示す情報である、主軸方向、位相とその周期、かつ、連続した形状の情報を踏まえた、構造物全体の三次元CADモデルの作成、および、解析モデルの作成における作業効率を大幅に向上して、作成工数の短縮を図ることができる。
【実施例2】
【0066】
以下、本発明にかかる実施例2の情報処理を説明する。実施例2では、積層板のような板状部品が板厚変化部を有する場合を考慮した三次元CADモデルおよび解析モデルの作成を説明するが、実施例2において実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0067】
[装置の構成]
図16のブロック図により実施例2の情報処理装置13の構成例を説明する。
【0068】
層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、実施例1の層構成情報・折曲情報取得部122と同様に積層板の層構成情報と折曲情報を取得する。さらに、折曲部に対応する積層板の位置を予め加工して設けられた板厚変化部の板厚変化情報を取得する。なお、板厚変化部の設定は、折曲部の作成を容易にするためにダンボール構造物などで多用される。
【0069】
主軸方向情報取得部123は、実施例1と同様に、積層板の主軸方向情報を取得する。属性情報付与部124は、積層板の層構成情報と折曲情報および積層板の主軸方向情報に加えて、積層板の板厚変化情報をすべての面に定義する。
【0070】
形状作成部125は、三次元構造物の形状や寸法、積層板の構成情報と折曲情報および主軸方向情報に加え、積層板の板厚変化情報に基づき、中立面を基準面として積層板を折り曲げた場合の構造物全体の三次元形状を作成する。
【0071】
三次元モデル作成部126は、形状作成部125が作成した板状の三次元形状に対して、隣接する面に跨り、連続かつ周期的な内部積層構造をもつ詳細な三次元形状である三次元CADモデルを作成する。その際、展開長の修正を行うが、その詳細は後述する。
【0072】
解析モデル作成部127は、実施例1と同様に、三次元モデル作成部126が定義した三次元CADモデルに基づき、解析モデルを作成する。
【0073】
[三次元CADモデルおよび解析モデルの作成処理]
図17のフローチャートにより二次元展開図データから三次元CADモデルおよび解析モデルを生成する処理を説明する。以下では、実施例1と同様の処理である、二次元展開図データの取得処理(S101)、主軸方向情報の取得処理(S103)、三次元CADモデルの作成(S106)、解析モデルの作成(S107)の詳細説明を省略する。
【0074】
●層構成情報、折曲情報、板厚変化情報の取得(S202)
層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、UIを使用して、積層板の層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を取得する(S202)。つまり、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部132は、図4に示すダンボールシートが有する各種属性情報を取得する。
【0075】
層構成情報の入力には図5に一例を示すUIを利用し、折曲情報の入力には図6に一例を示すUIを利用するが、それらの詳細説明は省略する。
【0076】
図18により板厚変化情報の入力用のUIの一例を示す。層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、図18に示すUIを表示装置12に表示する。ユーザは、図18に示すUIと入力装置11を用いて、積層板の板厚変化情報を入力する。
【0077】
ユーザは、ラジオボタン1179を用いて板厚の変化方向を選択する。つまり、板厚の中立軸に対して曲げの稜線が外側にあるか内側にあるかを板厚の変化方向として選択する。また、板厚変化方法欄1180のラジオボタンを用いて、板厚変化が罫線によって提供されるのか、ミシン目(ライナ部分切断)によって提供されるのか、ライナ切断によって提供されるのかの何れかを選択する。さらに、入力欄1181に板厚変化前の積層板の板厚(元)を、入力欄1182に板厚変化部の板厚の変化量Δをそれぞれ入力する。
【0078】
ユーザが図18に示すUIの各欄のラジオボタンを選択し数値を入力して、OKボタンを押すと、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222による層構成情報、折曲情報、板厚変化情報の取得が終了する。
【0079】
なお、上記では、ユーザがUIを使用して層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を入力する方法を説明した。しかし、二次元展開図データが層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を含む場合、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222は、二次元展開図データから層構成情報、折曲情報、板厚変化情報を取得することができる。
【0080】
●属性情報の付与(S204)
属性情報付与部124は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義をすべての面に属性情報として付与する(S204)。
【0081】
●展開長を修正した三次元形状の作成(S205)
形状作成部125は、二次元展開図データが示す形状と寸法、並びに、積層板の折曲情報に基づき、中立面を基準面として、平面部と曲げ部からなる板状の三次元形状を作成する。ただし、基準面は、中立面に限らず、外表面または内表面にしてもよい。また、形状作成部125は、二次元展開図データに積層板の主軸方向を表す単位ベクトルVを付加するとともに、二次元展開図データに曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を表す単位ベクトルV'を付加する。
【0082】
三次元形状は、図10に示すように、基本的に、平面部1139と曲げ部1140から構成される中立面三次元モデル1141として表される。
【0083】
この三次元形状を作成する際、通常、二次元展開図の中立面の位置を曲げ位置とし、各曲げ部に板厚の半分の値を加算することで外形形状寸法が定まる。しかし、板厚変化部を考慮すると、外形形状寸法が、そのように定まるとは限らない。さらに、内部積層構造の主軸方向を併せて考慮すると、曲げ稜線部の方向と内部積層構造の主軸方向がなす角度によって板厚変化量も変化する。つまり、二次元展開図の中立面位置を曲げ位置とし、各曲げ部に板厚の半分の値を加算しても、外形形状寸法は定まらない。
【0084】
そこで、本実施例において三次元形状を作成する際、二次元展開図の中立面の位置から得られる曲げ位置に、さらに正から負の値をとる修正量を曲げ回数に応じて加減算する修正を行い、正確な三次元形状を得る。つまり、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義を踏まえ、展開長を修正した三次元形状を作成する(S205)。
【0085】
図19のフローチャートにより展開長を修正した三次元形状の作成処理(S205)の詳細を説明する。
【0086】
まず、基準平面部を曲げ部の探索面に設定し(S301)、探索面において曲げ部を探索し(S302)、曲げ部が検出されたか否かを判定する(S303)。曲げ部が検出されると探索面における主軸方向ベクトルVと、当該曲げ部の曲げ稜線軸ベクトルV'を抽出し(S304)、それらベクトルがなす角を算出する(S305)。
【0087】
次に、ベクトルがなす角度が90度の場合と0度の場合で処理を分岐する(S306)。そして、残り長さの有無を判定し(S307、S308)、残り長さがある場合は展開長を修正した、当該曲げ部の三次元形状を作成する(S309、S310)。その際、記憶装置14に格納された層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報などの属性情報が参照される。
【0088】
検出した曲げ部の三次元形状の作成が終了した場合は、処理をステップS301に戻し、曲げ部によって作成された新規平面を探索面に設定し(S301)、新たな探索面の曲げ部を探索する。
【0089】
また、残り長さがないと判定した場合は、処理をステップS302に戻し、探索面における曲げ部の探索を行う。
【0090】
探索面において曲げ部が検出されなかった場合(S303)、処理をステップS301に戻し、一つ前の平面を再び探索面に設定する(S301)。そして、ステップS302からS309の処理を繰り返して、探索面を基準平面部まで戻しても新たな曲げ部が検出されない終了条件を満たす場合(S303)は、展開長を修正した三次元形状の作成処理(S205)を終了する。
【0091】
図20により展開長を修正した三次元形状の作成結果の一例を示す。中芯形状1197によって定まる積層板の主軸方向ベクトル1196と、曲げ稜線に平行なベクトル1200がなす角度を内積により算出する。そして、外部形状寸法から定まる曲げ間隔の展開長称呼寸法1198から残り長さを算出した上で、修正量1199を加減算する。修正量1199は、記憶装置14に格納にされた層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報を踏まえ、正から負の値をとる修正量として各曲げ部ごとに算出され、三次元形状寸法に反映される。
【0092】
図21により展開長を修正した三次元形状の作成結果の他の一例を示す。中芯形状1203によって定まる積層板の主軸方向ベクトル1201と、曲げ稜線に平行なベクトル1205がなす角度を内積により算出する。そして、外部形状寸法から定まる曲げ間隔の展開長称呼寸法1202から残り長さを算出した上で、修正量1204を加減算する。修正量1204は、記憶装置14に格納にされた層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報を踏まえ、正から負の値をとる修正量として各曲げ部ごとに算出され、三次元形状寸法に反映される。
【0093】
図22により二次元展開図データから三次元外形形状を作成した結果例を示す。図22(a)は、二次元展開図の曲げ位置を中立面とし、一律に板厚を設けて、二次元展開図データ1186から三次元形状1187を作成した例である。
【0094】
図22(b)は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義を踏まえて二次元展開図データ1186から三次元形状1190を作成した例である。図22(b)に示すように、三次元形状1190は、三次元形状1187よりも小さく作成される。この例は、層構成情報・折曲情報・板厚変化情報取得部222が提供する図18に示すUIから明らかなように、曲げ稜線が中立軸の外側にある場合に相当する。
【0095】
図22(c)は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、および、面の定義を踏まえて二次元展開図データ1186から三次元形状1193を作成した例である。図22(c)に示すように、三次元形状1193は、三次元形状1187よりも大きく作成される。なお、この例は、図18に示すUIから明らかなように、曲げ稜線が中立軸の内側にある場合に相当する。
【0096】
図23により二次元展開図から作成された三次元形状の一例を示す。図23(a)は、積層構造を踏まえずに、二次元展開図の曲げ位置を中立面として、一律に板厚を設けて作成された三次元形状1194の一例を示す。図23(b)は、層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報を踏まえて、二次元展開図から作成された三次元形状1195の一例を示す。三次元形状1195は、三次元形状1194よりも小さく作成され、実際の製品の各面に生じる微小な角度の倒れも再現する。
【0097】
図24により二次元展開図データから三次元形状データを作成する様子を示す。なお、説明を容易にするために、図24に示す二次元展開図データは、図3と同様に、二面の例を示しているが、実際の構造物はさらに多くの面を有することはいうまでもない。
【0098】
形状作成部125は、二次元展開図データの二次元情報、積層板の層構成情報、折曲情報、板厚変化情報、主軸方向情報、面の定義、および、基準面(例えば中立面)に基づき、三次元座標系1255を設定し、三次元情報(三次元形状)を生成する。
【0099】
三次元情報の生成には、折曲線(稜線)を軸とする回転座標変換などを行えばよい。例えば、図24に示す点P1からP6を座標変換して点P1'からP6'を生成し、それによってエッジE1からE7はエッジE1'からE7'へ座標変換され、面S1とS2は面S1'とS2'へ座標変換される。図24に示す例において、とくに点P5とP6、エッジE5からE7は、その位置がZ軸の正方向(+Z方向)へ移動する。
【0100】
形状作成部125は、図24に示すように、積層板の主軸方向を表す単位ベクトルV1とV2を二次元展開図データに付加する。従って、三次元情報の生成における点Pの座標変換とともに、単位ベクトルV1とV2も単位ベクトルV1'とV2'に座標変換される。
【0101】
同様に、形状作成部125は、図24に示すように、曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を表す単位ベクトルV'1を二次元展開図データに付加する。従って、三次元情報の生成における点Pの座標変換とともに、単位ベクトルV'1も単位ベクトルV'1'に座標変換される。
【0102】
言い換えれば、各面の主軸方向を示す三次元情報が生成可能である。従来の手法によれば、二次元展開図データから三次元情報を生成した後、各面に主軸方向を設定する必要がある。本実施例によれば、三次元情報の生成によって各面の主軸方向も生成されるから、三次元情報の作成後の主軸方向の設定は不要になる。
【0103】
さらに、各曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を示す三次元情報も生成可能である。従来の手法によれば、二次元展開図データから三次元情報を生成した後、各曲げ部の曲げ稜線に平行な方向を設定する必要がある。本実施例によれば、三次元情報の生成によって各曲げ部の曲げ稜線に平行な方向も生成されるから、三次元情報の作成後の曲げ稜線に平行な方向の設定も不要になる。
【0104】
図25により三次元形状データのデータ構造例を示す。図25(a)に示す三次元形状データは、図25(b)に示すデータ構造例を有する。つまり、各面Sを構成するエッジEのデータと、各エッジEを構成する点Pのデータの階層構造、および、主軸方向を示すベクトルV、曲げ稜線に平行な方向を示すベクトルV'のデータを有する。なお、図25には二面と一稜線分の情報しか示さないが、これら情報は、展開図上の面と稜線の数分、存在する。
【0105】
このように、形状作成部125による三次元情報の生成手順、つまり、二次元展開図データから三次元形状を作成する手順は、座標変換などの従来の手法を利用することができる。そして、二次元展開図データに主軸方向を示す単位ベクトルVと、曲げ稜線に平行な方向を示す単位ベクトルV'を付加することによって、三次元形状における各面の主軸方向と、曲げ稜線に平行な方向を示す単位ベクトルを生成することができる。
【0106】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元構造物の二次元展開図データを取得する取得手段と、
波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、前記二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力する入力手段と、
前記二次元展開図データの座標に対して、前記内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定する設定手段と、
前記二次元展開図データが示す各面に、前記層構成情報および前記主軸方向を表す情報を付加する付加手段と、
前記二次元展開図データおよび前記折曲情報を用いて、前記三次元構造物の三次元形状を作成する三次元形状の作成手段と、
前記各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、前記三次元形状が示す各面に、前記板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成する三次元モデルの作成手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
さらに、前記三次元モデルから解析モデルを作成する解析モデルの作成手段を有することを特徴とする請求項1に記載された情報処理装置。
【請求項3】
前記付加手段は、前記主軸方向を表す情報として、前記主軸方向を示す単位ベクトルを前記各面に付加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された情報処理装置。
【請求項4】
前記三次元形状の作成手段は、前記三次元構造物の面の頂点に対応する前記二次元展開図データの点データを座標変換して前記三次元形状を作成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項5】
さらに、前記二次元展開図データが示す各面と、前記板状部品の面の関係を定義する手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項6】
前記折曲情報は、前記折曲部に対応する前記板状部品の位置に予め設けられた板厚変化部の板厚の変化を示す情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項7】
前記三次元形状の作成手段は、前記二次元展開図データから得られる中立面を基準として前記折曲部の寸法を作成し、前記層構成情報、前記主軸方向を表す情報および前記折曲情報に応じた修正量によって前記折曲部の寸法を修正することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項8】
取得手段、入力手段、設定手段、付加手段、三次元形状の作成手段、三次元モデルの作成手段を有する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記取得手段が、三次元構造物の二次元展開図データを取得し、
前記入力手段が、波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、前記二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力し、
前記設定手段が、前記二次元展開図データの座標に対して、前記内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定し、
前記付加手段が、前記二次元展開図データが示す各面に、前記層構成情報および前記主軸方向を表す情報を付加し、
前記三次元形状の作成手段が、前記二次元展開図データおよび前記折曲情報を用いて、前記三次元構造物の三次元形状を作成し、
前記三次元モデルの作成手段が、前記各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、前記三次元形状が示す各面に、前記板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から請求項7の何れか一項に記載された情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
三次元構造物の二次元展開図データを取得する取得手段と、
波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、前記二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力する入力手段と、
前記二次元展開図データの座標に対して、前記内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定する設定手段と、
前記二次元展開図データが示す各面に、前記層構成情報および前記主軸方向を表す情報を付加する付加手段と、
前記二次元展開図データおよび前記折曲情報を用いて、前記三次元構造物の三次元形状を作成する三次元形状の作成手段と、
前記各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、前記三次元形状が示す各面に、前記板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成する三次元モデルの作成手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
さらに、前記三次元モデルから解析モデルを作成する解析モデルの作成手段を有することを特徴とする請求項1に記載された情報処理装置。
【請求項3】
前記付加手段は、前記主軸方向を表す情報として、前記主軸方向を示す単位ベクトルを前記各面に付加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された情報処理装置。
【請求項4】
前記三次元形状の作成手段は、前記三次元構造物の面の頂点に対応する前記二次元展開図データの点データを座標変換して前記三次元形状を作成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項5】
さらに、前記二次元展開図データが示す各面と、前記板状部品の面の関係を定義する手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項6】
前記折曲情報は、前記折曲部に対応する前記板状部品の位置に予め設けられた板厚変化部の板厚の変化を示す情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項7】
前記三次元形状の作成手段は、前記二次元展開図データから得られる中立面を基準として前記折曲部の寸法を作成し、前記層構成情報、前記主軸方向を表す情報および前記折曲情報に応じた修正量によって前記折曲部の寸法を修正することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項8】
取得手段、入力手段、設定手段、付加手段、三次元形状の作成手段、三次元モデルの作成手段を有する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記取得手段が、三次元構造物の二次元展開図データを取得し、
前記入力手段が、波状形状を有する内部部材を含む積層構造を有する板状部品の層構成情報、および、前記二次元展開図データが示す折曲部の折曲情報を入力し、
前記設定手段が、前記二次元展開図データの座標に対して、前記内部部材の形状が変化しない方向を示す主軸方向を設定し、
前記付加手段が、前記二次元展開図データが示す各面に、前記層構成情報および前記主軸方向を表す情報を付加し、
前記三次元形状の作成手段が、前記二次元展開図データおよび前記折曲情報を用いて、前記三次元構造物の三次元形状を作成し、
前記三次元モデルの作成手段が、前記各面に付加された層構成情報および主軸方向を表す情報を用いて、前記三次元形状が示す各面に、前記板状部品の積層構造の形状を付加した三次元モデルを作成することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から請求項7の何れか一項に記載された情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図15】
【公開番号】特開2012−168928(P2012−168928A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289898(P2011−289898)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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