情報処理装置および情報処理方法
【課題】ネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完する。
【解決手段】情報処理装置は、在圏セクタ識別情報、位置情報等を含む位置データを取得する位置データ取得部と、セクタ毎のセクタ識別情報とセクタ中心位置情報とを含むレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部と、位置データと基地局データとを照合し位置データ内のセクタ識別情報自身又はセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出部と、抽出された位置データの特徴量又は位置データの数、及び位置データの位置情報に基づき、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコード又はセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、生成されたレコード又はセクタ中心位置情報により基地局データを補完する基地局データ補完部とを備える。
【解決手段】情報処理装置は、在圏セクタ識別情報、位置情報等を含む位置データを取得する位置データ取得部と、セクタ毎のセクタ識別情報とセクタ中心位置情報とを含むレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部と、位置データと基地局データとを照合し位置データ内のセクタ識別情報自身又はセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出部と、抽出された位置データの特徴量又は位置データの数、及び位置データの位置情報に基づき、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコード又はセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、生成されたレコード又はセクタ中心位置情報により基地局データを補完する基地局データ補完部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後述する基地局データの補完を行う情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ネットワークにて基地局の制御下に存在する複数のセクタについては、個々のセクタのセクタ識別子に当該セクタのセクタ中心位置情報(例えば、セクタ中心の緯度・経度情報)を対応付けて記憶・管理している。このように記憶・管理されたセクタ識別子およびセクタ中心位置情報を含んだ、セクタに関する管理情報を、本件では「基地局データ」と称する。
【0003】
上記基地局データに含まれるセクタ中心位置情報は、例えば、複数のセクタを含んだ対象領域に対し、いわゆるボロノイ分割を行う際に利用される。例えば特許文献1には、管理サーバがセクタ中心位置情報を利用してボロノイ分割を行い、ボロノイ分割で得られた複数のボロノイ領域に基づき対象領域における人口分布を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2011/021608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば基地局データ自身の更新作業の遅れ、基地局増設計画の前倒しなどに起因して、当該時点で記憶・管理されている基地局データが実際のネットワーク実装とは合致しない事態が起こりうる。このような場合、ネットワークに上がってくる位置情報(位置登録情報、GPS位置情報等)の中に、当該時点の基地局データと整合しないものが出てくるおそれがある。このように基地局データと整合しない位置情報は、前述したボロノイ分割を行う際に利用されず、その結果、適正なボロノイ分割が困難となり、精度良く人口分布を求めることが困難となるといった不都合が起こりうる。
【0006】
本発明は、上記のような不都合を防止するため、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る情報処理装置は、携帯端末を識別する端末識別情報と携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と携帯端末の位置に関する位置情報と位置情報が取得された位置取得時刻情報とを含む位置データを取得する位置データ取得部と、セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部と、位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出部と、抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完部と、を備えることを特徴とする。なお、「特徴量」とは、携帯端末によって生成された位置データについての推定生成密度に対応する情報であり、ここでの「推定生成密度」とは、当該位置データを生成した携帯端末が、当該位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)周辺で単位時間あたりに生成する位置データの数の推定値を意味する。
【0008】
上記のような情報処理装置によって、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出し、抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していた基地局データまたはセクタ中心位置情報を生成し、生成された基地局データまたはセクタ中心位置情報によって、基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完することで、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することができる。
【0009】
上記の情報処理装置は、位置データ取得部により取得された位置データのうち、ある第1の位置データについて、当該第1の位置データと同一の端末識別情報を含む位置データのうち、当該第1の位置データの直前の位置データである第2の位置データの位置取得時刻情報、および当該第1の位置データの直後の位置データである第3の位置データの位置取得時刻情報を取得し、第1の位置データの位置取得時刻情報、第2の位置データの位置取得時刻情報および第3の位置データの位置取得時刻情報のうち2つ以上に基づいて、第1の位置データについての特徴量を算出する特徴量算出部、をさらに備え、欠落セクタ情報生成部は、抽出された位置データについての特徴量、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ中心位置情報を生成してもよい。上記の特徴量算出部は、第2の位置データの位置取得時刻と第3の位置データの位置取得時刻との差を、第1の位置データについての特徴量として計算してもよい。詳細な原理は後述するが、「位置データの数」ではなく、「位置データについての特徴量」を基礎として、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完することで、位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)の間隔が変動することによる影響を校正しつつ、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データをより適切に補完することができる。
【0010】
なお、上記の欠落セクタ情報生成部は、抽出された全ての位置データについての特徴量、および、当該全ての位置データ内の位置情報に基づいて、第1のセクタ中心位置情報を生成するとともに、抽出された位置データから位置データの種別に応じて抽出された位置データについての特徴量、および、当該抽出した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成し、生成された第1のセクタ中心位置情報および第2のセクタ中心位置情報に基づいて、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成してもよい。例えば、欠落セクタ情報生成部は、第1のセクタ中心位置と第2のセクタ中心位置との所定の按分点(例えば中点)を求め、当該按分点の位置情報を、上記欠落していたセクタ中心位置情報として生成してもよい。上記の「位置データの種別」としては、例えば、位置データが生成された生成要因が挙げられ、この場合、「位置データの種別に応じて抽出された位置データ」として、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報に対応する位置データを除外した後の位置データや、周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報に対応する位置データのみを抽出して得られた位置データ、などが挙げられる。なお、「位置データの種別」としては、上記の生成要因以外に、例えば位置データの生成時刻なども適用可能である。
【0011】
そこで、欠落セクタ情報生成部は、第2のセクタ中心位置情報については、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報に対応する位置データを除外した後の位置データについての特徴量、および、当該除外した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成してもよい。また、欠落セクタ情報生成部は、上記に代わり、周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報に対応する位置データのみを抽出し、該抽出された位置データについての特徴量、および、該抽出された位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成してもよい。これらの場合、位置登録エリア境界付近では、位置登録エリア境界から少し離れた位置よりも、位置登録情報がより頻繁に生成されることに起因した不都合を抑制することができる。
【0012】
また、位置データとしては、位置登録情報、セクタ識別子付きのGPS位置情報などを広く含むことができる。ただし、位置データを位置登録情報のみに限定してもよい。
【0013】
本発明に係る情報処理装置は、補完された基地局データを用いて人口を推計するための構成を備えてもよい。例えば、情報処理装置は、補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計部と、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出部と、算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出部と、をさらに備えてもよい。また、このような情報処理装置は、導出された人口に対し、予め定められた基準に基づき秘匿処理を行う秘匿処理部、をさらに備えてもよい。
【0014】
さて、情報処理装置に係る本発明は、情報処理装置によって実行される情報処理方法に係る発明として捉えることができ、以下のように記述することができる。以下の情報処理方法に係る発明は、上述した情報処理装置に係る発明と同様の作用・効果を奏する。
【0015】
本発明の一側面に係る情報処理方法は、セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部を備えた情報処理装置、によって実行される情報処理方法であって、携帯端末を識別する端末識別情報と携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と携帯端末の位置に関する位置情報と位置情報が取得された位置取得時刻情報とを含む位置データを取得する位置データ取得ステップと、位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出ステップと、抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完ステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る情報処理方法は、補完された基地局データを用いて人口を推計するための情報処理方法として、以下のように記述できる。即ち、本発明に係る情報処理方法は、補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計ステップと、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出ステップと、算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出ステップと、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1、第2実施形態の情報処理装置を示す機能ブロック図である。
【図2】第1実施形態の欠落セクタ情報生成部を示す機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態の情報処理装置により実行される処理を示すフロー図である。
【図4】図3の処理過程における、位置データ、特徴量付き位置データ、基地局データ、情報結合部による結合後のデータ、および補完した後の基地局データのそれぞれのデータ例を示す図である。
【図5】欠落セクタ情報生成部による処理を説明するための図である。
【図6】第2実施形態の欠落セクタ情報生成部を示す機能ブロック図である。
【図7】第2実施形態の情報処理装置により実行される処理を示すフロー図である。
【図8】第3実施形態の情報処理装置を示す機能ブロック図である。
【図9】第3実施形態の情報処理装置により実行される処理を示すフロー図である。
【図10】セクタ勢力範囲の推計処理を説明するための図である。
【図11】面積按分比の算出処理を説明するための図である。
【図12】面積按分比の算出処理を説明するための図である。
【図13】位置データと面積按分比との結合後のデータ例を示す図である。
【図14】第1実施形態の変形例に係る情報処理装置を示す機能ブロック図である。
【図15】端末数推計の考え方を説明するための図である。
【図16】端末数推計に係る計算方法を説明するための図である。
【図17】秘匿処理を示すフロー図である。
【図18】第1〜第3実施形態の情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る各種の実施形態を順に説明する。なお、本件における「位置データ」とは、携帯端末を識別する端末識別子と、携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別子と、携帯端末の位置に関する位置情報(例えば緯度・経度情報)と、位置情報が取得された位置取得時刻情報と、を含むデータを広く意味し、例えば、携帯端末にて生成された位置登録信号に含まれる情報(以下「位置登録情報」という)、上記セクタ識別子が付加されたGPS位置情報などが含まれる。GPS位置情報は、その生成時には上記のセクタ識別子を含まないが、携帯端末からのGPS位置情報を受信した基地局によって上記セクタ識別子が付加され、後述の情報処理装置10(図1)はセクタ識別子付きのGPS位置情報を取得可能とされている。また、GPS位置情報は、その生成時に上記のセクタ識別子を含む場合も想定される。この場合、携帯端末がGPS位置情報を生成した際に上記セクタ識別子が付加され、後述の情報処理装置10(図1)はセクタ識別子付きのGPS位置情報を取得可能とされている。位置登録情報には、位置登録信号が生成された要因(例えば、周期的位置登録、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだこと(いわゆるLA跨り)、携帯端末の電源オン等によるアタッチ処理の実行、携帯端末の電源オフ等によるデタッチ処理の実行など)を示す生成要因情報が含まれており、この生成要因情報に基づいて、位置登録情報のうち、例えば、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報(以下「LA跨り位置登録情報」と称する)を除外することや、周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報のみを抽出すること等が可能とされている。
【0020】
[第1実施形態]
第1、第2実施形態では、携帯端末の位置データの一例として「位置登録情報に対応する位置データ」(以下では「位置登録情報」と表記する)のみを使用して、基地局データを補完する処理を説明する。詳細は後述するが、第2実施形態では、位置データの種別に応じて抽出された位置データに基づき算出されたセクタ情報と、上記抽出を行う前の位置データに基づき算出されたセクタ情報と、に基づいて、基地局データを補完する処理を説明する。ここでの「セクタ情報」とは、セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む情報であり、基地局データにおける1レコードに相当する。このような第2実施形態に先立ち、第1実施形態では、対象とすべき全ての位置データに基づきセクタ情報を算出し、基地局データを補完する処理を説明する。
【0021】
図1には、第1実施形態にて基地局データ補完に係る一連の処理を実行する情報処理装置10の構成を示す。図1に示すように、情報処理装置10は、後述する予め定められた取得元から携帯端末の位置データ(ここでは位置登録情報)を取得する位置データ取得部11と、取得された位置データを記憶する位置データ記憶部12と、位置データに対し当該位置データについての後述する「特徴量」を算出する特徴量算出部13と、セクタごとのセクタ識別子と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部14と、位置取得時刻が予め定められた位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合することで、位置データ内のセクタ識別子自身または位置データ内のセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データ(以下「欠落位置データ」という)を抽出する欠落位置データ抽出部15と、欠落位置データについての特徴量および当該欠落位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別子に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部16と、生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、基地局データ記憶部14に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完部17と、を備える。以下、各構成部の機能を補足説明する。
【0022】
位置データ取得部11により取得される位置データは、図4(a)に示すように、携帯端末を識別する端末識別子と、携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別子と、携帯端末の位置を示す位置情報(位置情報緯度および位置情報経度)と、位置情報が取得された位置取得時刻情報とを含む。また、位置データ取得部11による位置データの取得元は、特定の装置に限定されるものではない。例えば、位置データ取得部11は、携帯端末にて生成された位置登録情報を基地局経由で取得してもよいし、ネットワークにおいて基地局の上位にあるRNC(無線ネットワーク制御装置)又は交換機経由で取得してもよい。
【0023】
上記の欠落位置データ抽出部15による抽出処理に関する「位置データ抽出期間」としては、例えば、2011年9月1日〜2011年9月30日の1ヶ月の期間、2011年9月24日〜2011年9月30日の1週間の期間、2011年9月30日の1日の期間など、さまざまな期間を設定することができる。
【0024】
特徴量算出部13は、位置取得時刻が上記の位置データ抽出期間内にある位置データのそれぞれについて、当該対象とする位置データ(「対象位置データ」という)と同一の端末識別情報を含む位置データ(即ち、同一の携帯端末に関する位置データ)のうち、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直前の位置データに含まれる位置取得時刻情報、および、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直後の位置データに含まれる位置取得時刻情報を取得し、直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差を対象位置データの特徴量として算出する。さらに、特徴量算出部13は、図4(b)に示すように、位置データ(図4(a))に特徴量の情報を付加し、付加後の特徴量付き位置データを欠落位置データ抽出部15へ出力する。なお、位置データへの特徴量の情報の付加は、欠落位置データ抽出部15における欠落位置データの抽出の前までに実行すればよく、後述するセクタ中心位置情報と位置データとの結合後に実行してもよい。また、本実施形態では、特徴量算出部13により特徴量が算出される対象位置データを、位置データ抽出期間内にある位置データとしたが、これに限定されるものではなく、「位置データ抽出期間を含んだ期間」内の位置データであればよく、例えば位置データ取得部11により取得された全て位置データを対象位置データとして特徴量を算出してもよい。
【0025】
基地局データ記憶部14は、図4(c)に示すように、セクタごとのセクタ識別子と当該セクタのセクタ中心位置情報(セクタ中心緯度およびセクタ中心経度)とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶している。なお、図4(c)の基地局データにおいて、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報は欠落しており、「N/A」(即ち、Not Available)と表記している。
【0026】
欠落位置データ抽出部15は、図1に示すように、情報結合部15Aと情報抽出部15Bとを含む。このうち情報結合部15Aは、位置取得時刻が位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合し、位置データにおけるセクタ識別子自身が基地局データ内に存在すれば、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報を基地局データから取得し、該セクタ中心位置情報を特徴量付き位置データに結合する。このとき、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に存在しなければ、情報結合部15Aは、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」(Not Available))を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。また、位置データにおけるセクタ識別子自身が基地局データ内に存在しない場合も、情報結合部15Aは、上記同様、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。図4(d)には、位置データにおけるセクタ識別子が基地局データ内に存在するものの当該セクタ識別子に関するセクタ中心位置情報が欠落していた場合の結合後の特徴量付き位置データの一例を示している。この例では、基地局データにてセクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が欠落しているため、結合後の特徴量付き位置データにおけるセクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)がセットされている。なお、結合後の特徴量付き位置データでは、端末識別子は必須ではないため、図4(d)の例には表記していない。即ち、端末識別子は、結合後の特徴量付き位置データに含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0027】
情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データから欠落位置データを抽出し、欠落セクタ情報生成部16へ出力する。例えば、情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データのうち、少なくとも「セクタ中心位置情報」が欠落しているデータを抽出することで、欠落位置データ(位置データ内のセクタ識別子自身または位置データ内のセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データ)を抽出することができる。
【0028】
欠落セクタ情報生成部16は、図2に示すように、特徴量小計算出部16Aと乗算処理部16Bと総和処理部16Cと算出処理部16Dとを備え、欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、以下の式(1)による重み付け演算を行うことで、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)を生成する。
Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)/特徴量総和 (1)
【0029】
詳細は図5の例を用いて後述するが、欠落セクタ情報生成部16では、上記抽出された欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、以下の処理が行われる。特徴量小計算出部16Aは、対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する。乗算処理部16Bは、位置情報緯度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を算出する。総和処理部16Cは、特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する。算出処理部16Dは、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を特徴量総和により割算することで、欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子のセクタに関するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として当該セクタ識別子に対応付ける。こうして得られた、セクタ識別子に対応付けられた欠落セクタ情報は、基地局データ補完部17へ出力され、基地局データ補完部17は、欠落セクタ情報によって、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データを補完する。これにより、図4(e)に示すように、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が補完された「補完した後の基地局データ」が得られる。なお、上記のような欠落セクタ情報生成部16における処理を欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに実行するために、例えば、特徴量小計算出部16Aが、抽出された欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類して、処理対象となるセクタ識別子に関する情報を算出処理部16Dあてに転送し、算出処理部16Dが、当該処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断してもよい。
【0030】
なお、図18には、図1の情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す。図18に示すように情報処理装置10は、CPU10A、主記憶装置であるRAM10B及びROM10C、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置10D、ディスプレイ等の出力装置10E、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール10F、および、ハードディスク等の補助記憶装置10Gを含むコンピュータにより構成されている。図1、図2において説明した各機能は、図18に示すCPU10A、RAM10B等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU10Aの制御のもとで入力装置10D、出力装置10Eおよび通信モジュール10Fを動作させるとともに、RAM10Bおよび補助記憶装置10Gにおけるデータの読み出し、書き込みを行うことによって実現される。第2実施形態以降で説明する情報処理装置10、10S(図8)、10T(図14)についても、同様のハードウェア構成とされている。また、これら情報処理装置10、10S、10Tの各々は、1台のコンピュータにより構成されることに限定されるものではなく、相互に通信接続可能な複数のコンピュータにより構成してもよい。
【0031】
次に、図3のフロー図に沿って、図1の情報処理装置10により実行される処理(本発明の情報処理方法に係る処理)を説明する。
【0032】
位置データ取得部11は、予め定められた取得元から携帯端末の位置データ(ここでは位置登録情報)を取得する(図3のステップS1)。取得された位置データは、位置データ記憶部12により記憶される。
【0033】
特徴量算出部13は、位置取得時刻が前述した位置データ抽出期間内にある位置データのそれぞれについて、当該対象とする位置データ(「対象位置データ」という)と同一の端末識別情報を含む位置データ(即ち、同一の携帯端末に関する位置データ)のうち、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直前の位置データに含まれる位置取得時刻情報、および、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直後の位置データに含まれる位置取得時刻情報を取得し、直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差を対象位置データの特徴量として算出する(ステップS2)。このとき特徴量算出部13は、図4(b)に示すように、位置データ(図4(a))に特徴量の情報を付加し、付加後の特徴量付き位置データを情報結合部15Aへ出力する。
【0034】
情報結合部15Aは、特徴量付き位置データのうち位置取得時刻が位置データ抽出期間内にある位置データと、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合し、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報を基地局データから取得し、該セクタ中心位置情報を特徴量付き位置データに結合する(ステップS3)。このとき、情報結合部15Aは、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に存在しなければ、情報結合部15Aは、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。また、位置データにおけるセクタ識別子自身が基地局データ内に存在しない場合も、情報結合部15Aは、上記同様、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。そして、情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データから欠落位置データを抽出し、欠落セクタ情報生成部16へ出力する(ステップS4)。例えば、情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データのうち、少なくとも「セクタ中心位置情報」が欠落しているデータを抽出することで、欠落位置データ(位置データ内のセクタ識別子自身または位置データ内のセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データ)を抽出することができる。図4(c)に示す基地局データの例では、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が欠落しているため、図4(d)のように、結合後の特徴量付き位置データにおけるセクタ中心位置情報も欠落することとなる。ステップS4では、図4(d)のようなセクタ中心位置情報が欠落している欠落位置データが抽出される。
【0035】
次に、ステップS5A〜S8Dにて、欠落セクタ情報生成部16は、欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、前述した式(1)による重み付け演算を行うことで、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)を生成する。ここでは、図5を用いて欠落セクタ情報生成部16の処理を説明する。図5には、基地局データにおいてセクタ中心位置情報が欠落しているセクタYが示されており、このセクタYのセクタ識別子を含んだ位置データがステップS4で欠落位置データとして抽出されたとする。また、ここでは、セクタYのセクタ識別子を含んだ位置データ(位置登録情報)における位置情報緯度・位置情報経度の組合せとして図5の右上部に示すa〜fの6つがあるものとし、便宜上、緯度と経度は小数点以下1けた目までの数値で説明する。
【0036】
まず、特徴量小計算出部16Aは、抽出された欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類し、当該セクタ識別子のうち対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する(ステップS5A)。これにより、例えば図5の右上部に示すように、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計が算出される。なお、欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類することで得られた「処理対象となるセクタ識別子に関する情報」は、算出処理部16Dあてに転送され、後述のステップS8Dにて用いられる。また、上記のセクタ識別子ごとへの分類処理は最初の1回だけ実行すればよい。
【0037】
次に、乗算処理部16Bは、図5の下部に示すように、位置情報緯度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出することで、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を求める(ステップS6A)。また、総和処理部16Cは、特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する(ステップS7A)。図5の下部に示すように、特徴量総和「150」が求められる。なお、ステップS6A、S7Aの処理は、同時並行で実行してもよいし、ステップS7A、S6Aの順に実行してもよい。
【0038】
さらに、算出処理部16Dは、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を特徴量総和により割算することで、欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子のセクタに関するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として当該セクタ識別子に対応付ける(ステップS8A)。例えば図5の下部に示すように、欠落セクタ情報として(セクタ中心緯度,セクタ中心経度)=(34.617,139.182)が求められる。そして、算出処理部16Dは、処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断する(ステップS8D)。未処理のセクタ識別子が残っていれば、ステップS5Aへ戻り、未処理のセクタ識別子を含んだ欠落位置データについてステップS5A〜S8Aの処理を実行する。一方、未処理のセクタ識別子が残っていなければ、セクタ識別子に対応付けられたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)が基地局データ補完部17へ出力され、後述のステップS9が実行される。
【0039】
最後に、基地局データ補完部17は、欠落セクタ情報によって、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データを補完する(ステップS9)。これにより図4(e)に示すように、補完した後の基地局データでは、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が補完されることとなる。なお、本実施形態では、基地局データ内に、セクタ識別子は存在するものの当該セクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が欠落している例を用いて説明したが、本発明は、基地局データ内にセクタ識別子とセクタ中心位置情報の両方が欠落している場合にも適用可能である。この場合は、例えば、ステップS9にて基地局データ補完部17は、欠落していたセクタ識別子とセクタ中心位置情報の両方を基地局データに追加することで、基地局データを補完すればよい。
【0040】
以上のようにして、欠落位置データを抽出し、抽出された欠落位置データについての特徴量および位置情報に基づいて、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完することで、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することができる。
【0041】
[特徴量と端末数推計について]
前述したように、「特徴量」とは、携帯端末によって生成された位置データについての推定生成密度に対応する情報であり、ここでの「推定生成密度」とは、当該位置データを生成した携帯端末が、当該位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)周辺で単位時間あたりに生成する位置データの数の推定値を意味する。そのため、ある領域(例えばセクタ)に在圏する携帯端末によって所定の観測期間内に生成された位置データについての特徴量の和は、当該領域に在圏する携帯端末の端末数に相関する。以下、この点について説明する。
【0042】
まず、位置データの生成時間間隔が変動することによる影響を校正しつつ端末数を推計する処理の考え方および計算方法を説明する。図15に示すモデルのように、ある観測期間(長さT)の間に、n個の端末a1,a2,…,anがセクタSを通過し、各端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間がti(0<ti≦T)であったとする。このとき、セクタSに存在する端末数m(実際にはセクタSに存在する端末数mの観測期間内における平均値)は、以下の式(2)で表わされる。
【数1】
即ち、各端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiの総和を観測期間の長さTで除した結果を、端末数mとして推計する。ただし、端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiの真の値は観測不能であるが、各端末aiは信号(例えば位置登録信号)を発信し、それらの信号は観測可能である。
【0043】
端末aiが観測期間内にセクタSで発信した信号を、時刻順に
【数2】
(xiは、端末aiが観測期間内にセクタSで発信した信号の総数)とすると、端末数の推計とは、観測された信号qij(jは1以上xi以下の整数)からmの値を推計することに他ならない。
【0044】
さて、図16に基づき端末数推計の計算方法を説明する。端末aiから信号qijが送信される密度(即ち、単位時間あたりの信号数)をpiとする。このとき、信号が送信される確率がセクタに対して独立であれば、端末aiが観測期間内にセクタSで発信した信号の総数xiの期待値E(xi)は、E(xi)=ti×piであるため、端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiの期待値E(ti)について以下の式(3)が成立する。
E(ti)=xi/pi (3)
ここで、信号qijの送信時刻をuijとしたとき、信号qijの密度pijは、以下の式(4)で与えられる。
pij=2/(ui(j+1)−ui(j−1)) (4)
ここで、信号qijを対象の位置データに係る信号とすると、信号qi(j-1)は直前の位置データに係る信号、信号qi(j+1)は直後の位置データに係る信号に相当する。本実施形態では、直前の位置データに係る信号qi(j-1)の送信時刻ui(j−1)と直後の位置データに係る信号qi(j+1)の送信時刻ui(j+1)の差、即ち、上記式(4)の(ui(j+1)−ui(j−1))を、対象の位置データについての特徴量wijとする。そのため、上記式(4)は、以下となる。即ち、特徴量wijは、密度pijの逆数に対応づけて算出することができる。
pij=2/(ui(j+1)−ui(j−1))=2/wij (5)
このとき密度piは、
【数3】
で与えられるため、端末数mの推計値E(m)は、以下の式(7)に示すように、特徴量wijの総和を2Tで割算することで求めることができる。
【数4】
【0045】
なお、図16の例に示すように、観測期間内であり且つ端末aiがセクタSに滞在していた期間内に、端末aiは信号qi1、qi2、qi3を送信し、信号qi1の直前に信号qi0を、信号qi3の直後に信号qi4を送信したものとし、信号qi0、qi1、qi2、qi3、qi4の送信時刻をそれぞれui0、ui1、ui2、ui3、ui4とすると、上記の考え方は、端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiを、(ui0とui1の中点)から(ui3とui4の中点)までの期間と推計することに相当する。なお、端末aiは、観測期間内ではないものの、セクタSへの滞在中に信号qi4を送信している。但し、滞在時間tiの推計量の不偏性を維持するために、ここでは一例として、滞在時間tiの終了時刻を観測期間の終了時刻と同じとして推計することは行わない処理を説明する。
【0046】
さて、上記式(7)に示すように、端末数mの推計値E(m)は、特徴量wijの和を2Tで割算することで求めることができるため、ある領域(例えばセクタ)に在圏する携帯端末によって所定の観測期間内に生成された位置データについての特徴量の和は、当該領域に在圏する携帯端末の端末数に相関する。
【0047】
これを利用することで、図5の例のように、a〜fの位置情報緯度・位置情報経度ごとに特徴量小計を求め、得られた位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計(即ち、位置情報緯度・位置情報経度ごとの端末数に相関する値)を重みとして、以下の式(8)による重み付け演算を行うことで、位置データの生成時間間隔が変動することによる影響を校正しつつ、セクタ中心緯度・経度を精度良く求めることができる。
Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)/特徴量総和 (8)
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態では、位置データの種別に応じて抽出された位置データに基づき算出されたセクタ情報と、上記抽出を行う前の位置データに基づき算出されたセクタ情報と、に基づいて、基地局データを補完する処理を説明する。なお、上記の「位置データの種別」として、以下では、位置データの生成要因を利用した例を示す。位置データの種別に応じた抽出方法として、例えば、位置登録情報に含まれる前述した生成要因情報を参照することで、位置データのうちLA跨り位置登録情報のみを除外する(即ち、LA跨り位置登録情報以外の位置データを抽出する)方法、位置データのうち周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報のみを抽出する方法、などを実行できる。また、「位置データの種別」としては、上記の生成要因以外に、例えば位置データの生成時刻なども適用可能である。
【0049】
以下では、位置データのうちLA跨り位置登録情報のみを除外する方法を用いて、対象とすべき位置データのうちLA跨り位置登録情報を除外した位置データに基づき算出されたセクタ情報と、LA跨り位置登録情報を除外しない位置データに基づき算出されたセクタ情報とに基づいて、基地局データを補完する例を説明する。
【0050】
第2実施形態の情報処理装置の全体構成は、第1実施形態で述べた図1の構成と同様であるため、説明を省略する。ただし、欠落セクタ情報生成部16の内部構成が第1実施形態とは異なるため、図6を用いて欠落セクタ情報生成部16の構成を説明する。
【0051】
図6に示すように、欠落セクタ情報生成部16は、第1実施形態と同様の機能を持つ特徴量小計算出部16A、乗算処理部16B、総和処理部16Cおよび算出処理部16Dを備え、さらに、LA除外特徴量小計算出部16E、LA除外乗算処理部16F、LA除外総和処理部16G、LA除外算出処理部16Hおよび按分点算出処理部16Iが追加された構成とされている。このうちLA除外特徴量小計算出部16E、LA除外乗算処理部16F、LA除外総和処理部16GおよびLA除外算出処理部16Hは、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、第1実施形態と同様の重み付け演算を行うことで、特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求める。以下、これらの追加された各構成部の機能を説明する。
【0052】
このうち、LA除外特徴量小計算出部16Eは、位置登録情報に含まれる生成要因情報を参照することで、図1の情報抽出部15Bから出力された欠落位置データのうちLA跨り位置登録情報を除外し、除外した後の欠落位置データにおけるセクタ識別子のうち、対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する。
【0053】
LA除外乗算処理部16Fは、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報緯度とを乗算してその積の合計を算出するとともに、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報経度とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データを対象として、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を算出する。LA除外総和処理部16Gは、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する。LA除外算出処理部16Hは、LA除外乗算処理部16Fにより算出されたΣ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を、LA除外総和処理部16Gにより算出された特徴量総和により割算することで、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子に対応付ける。なお、上記のような処理をセクタ識別子ごとに実行するために、例えば、LA除外特徴量小計算出部16Eが、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類して、処理対象となるセクタ識別子に関する情報をLA除外算出処理部16Hあてに転送し、LA除外算出処理部16Hが、当該処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断してもよい。
【0054】
上記のようにしてLA除外算出処理部16Hにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報、および、第1実施形態と同様の手法で算出処理部16Dにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報は、按分点算出処理部16Iへ出力される。なお、変形例として、欠落セクタ情報生成部16において、対象とするセクタ識別子について、後述する按分点算出処理部16Iによる按分点算出までの処理を実行し、以後、各セクタ識別子について上記のように按分点算出までの処理を繰り返す処理形態を採用してもよい。
【0055】
按分点算出処理部16Iは、セクタ識別子をキーにして、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報とLA除外算出処理部16Hから得られた緯度・経度の重心の情報とを関連付け、セクタ識別子ごとに、算出処理部16Dにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外しない欠落位置データに関する緯度・経度の重心)と、LA除外算出処理部16Hにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する緯度・経度の重心)との間の所定の按分点(例えば中間値)を算出し、得られたセクタ識別子ごとの按分点情報を、当該セクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として図1の基地局データ補完部17へ出力する。なお、ある特定のセクタ識別子を含む位置データが全てLA跨り位置登録情報であるケースが起こりうる。このケースでは、上記特定のセクタ識別子は、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報に係るセクタ識別子の中に存在するものの、LA除外算出処理部16Hから得られた緯度・経度の重心の情報に係るセクタ識別子の中には存在しないことになる。このような場合、上記の按分点算出ができないため、按分点算出処理部16Iは、例えば、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報を、当該合致しないセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報とすればよい。
【0056】
次に、図7のフロー図に沿って、第2実施形態の情報処理装置10により実行される処理(本発明の情報処理方法に係る処理)を説明する。図7においてステップS1〜S4およびS5A〜S8A、S8Dの処理は、第1実施形態の処理と同様なので、ここでは説明を省略する。図7に示すように、ステップS5B〜S8Bの処理は、一例として、ステップS5A〜S8Aの処理と同時並行で実行される。ただし、同時並行で実行することは必須ではなく、ステップS5B〜S8Bの処理は、ステップS5A〜S8Aの処理の後に実行してもよいし、ステップS5A〜S8Aの処理の前に実行してもよく、このように順次実行する場合は、未処理のセクタ識別子が残っているか否かの判断処理(ステップS8D、S8E)は、ステップS5A〜S8Aの処理およびステップS5B〜S8Bの処理の後に実行すればよい。
【0057】
ステップS5Bでは、LA除外特徴量小計算出部16Eが、位置登録情報に含まれる生成要因情報を参照することで、図1の情報抽出部15Bから出力された欠落位置データのうちLA跨り位置登録情報を除外し、除外した後の欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類し、当該セクタ識別子のうち対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する。なお、欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類することで得られた「処理対象となるセクタ識別子に関する情報」は、LA除外算出処理部16Hあてに転送され、後述のステップS8Eにて用いられる。また、上記のセクタ識別子ごとへの分類処理は最初の1回だけ実行すればよい。
【0058】
次のステップS6Bでは、LA除外乗算処理部16Fが、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報緯度とを乗算してその積の合計を算出するとともに、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報経度とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データを対象として、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を算出する。次のステップS7Bでは、LA除外総和処理部16Gが、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する。そして、ステップS8Bでは、LA除外算出処理部16Hが、LA除外乗算処理部16Fにより算出されたΣ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を、LA除外総和処理部16Gにより算出された特徴量総和により割算することで、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子に対応付ける。そして、ステップS8EでLA除外算出処理部16Hは、処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断する。未処理のセクタ識別子が残っていれば、ステップS5Bへ戻り、未処理のセクタ識別子を含んだ欠落位置データについてステップS5B〜S8Bの処理を実行する。一方、未処理のセクタ識別子が残っていなければ、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報が基地局データ補完部17へ出力され、後述のステップS8Fが実行される。
【0059】
上記のようにしてLA除外算出処理部16Hにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報、および、第1実施形態と同様の手法で算出処理部16Dにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報は、按分点算出処理部16Iへ出力され、ステップS8Fにおいて按分点算出処理部16Iは、セクタ識別子をキーにして、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報とLA除外算出処理部16Hから得られた緯度・経度の重心の情報とを関連付け、セクタ識別子ごとに、算出処理部16Dにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外しない欠落位置データに関する緯度・経度の重心)と、LA除外算出処理部16Hにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する緯度・経度の重心)との間の所定の按分点(例えば中間値)を算出し、得られたセクタ識別子ごとの按分点情報を、当該セクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として図1の基地局データ補完部17へ出力する。
【0060】
そして、基地局データ補完部17は、按分点算出処理部16Iから得られた欠落セクタ情報によって、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データを補完する(ステップS9)。これにより図4(e)に示すように、補完した後の基地局データでは、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が補完されることとなる。
【0061】
以上のように、欠落セクタ情報生成部16において、算出処理部16Dにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外しない欠落位置データに関する緯度・経度の重心)と、LA除外算出処理部16Hにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する緯度・経度の重心)との間の所定の按分点(ここでは例えば中間値)を算出し、得られた按分点情報を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として生成することで、位置登録エリア境界付近では、位置登録エリア境界から少し離れた位置よりも、位置登録情報がより頻繁に生成されることに起因した不都合を抑制することができる。
【0062】
なお、第2実施形態では、位置データの種別に応じて抽出された位置データとして、LA跨り位置登録情報を除外した位置データを用いた例を示したが、これ以外に、例えば「周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報」のみを用いてもよい。つまり、対象とすべき位置データのうち「周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報」のみを抽出し、抽出後の位置データに基づき算出されたセクタ情報と、抽出する前の位置データに基づき算出されたセクタ情報とに基づいて、基地局データを補完してもよく、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(第1、第2実施形態の変形例1)
なお、第1、第2実施形態の特徴量小計算出部16Aおよび第2実施形態のLA除外特徴量小計算出部16Eは、欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類して、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出したが、このように位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計を算出することは必須ではない。
【0064】
例えば、第1実施形態の欠落セクタ情報生成部16において、特徴量小計算出部16Aを設けないで、乗算処理部16Bが、欠落位置データそれぞれについて、位置情報緯度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出すればよい。また、総和処理部16Cは、欠落位置データそれぞれの特徴量の総和を算出し、算出処理部16Dは、乗算処理部16Bにより得られたΣ(位置情報緯度×特徴量,位置情報経度×特徴量)を、総和処理部16Cにより得られた特徴量の総和により割算すればよい。
【0065】
こうして得られた欠落位置データに関する緯度・経度の重心は、第1実施形態にて得られる欠落位置データに関する緯度・経度の重心に等しくなるため、上記の変形例1により得られた緯度・経度の重心を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)とすることができる。また、上記の変形例1は、第2実施形態の欠落セクタ情報生成部16についても適用することができる。
【0066】
(第1、第2実施形態の変形例2)
第1、第2実施形態では、携帯端末の位置データの一例として「位置登録情報」のみを使用して基地局データを補完する処理を説明したが、位置データとしては、位置登録情報だけに限らず、端末識別子、セクタ識別子および位置情報を含んだ位置データであれば、使用することができる。例えば、前述したセクタ識別子付きのGPS位置情報を使用してもよい。
【0067】
仮に、位置登録情報だけに限定しない位置データを用いて第1実施形態の処理を実行する場合、情報処理装置の構成(図1、図2)および処理のフロー(図3)は上記第1実施形態とほぼ同様である。ただし、位置登録情報のみを使用した場合とは違い、位置情報緯度・位置情報経度の組合せの数が極めて多数になるため、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計を算出することは現実的でない。そのため、この場合は、上述した変形例1のように、欠落セクタ情報生成部16において、特徴量小計算出部16Aを設けないで、乗算処理部16Bが、欠落位置データそれぞれについて、位置情報緯度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出する実施態様となる。
【0068】
また、位置登録情報だけに限定しない位置データを用いて第2実施形態の処理を実行することもできる。この場合、位置登録情報が位置データに含まれることが前提となる。また、上述したように、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計を算出することは現実的でないため、上述した変形例1のように、欠落セクタ情報生成部16において、特徴量小計算出部16AおよびLA除外特徴量小計算出部16Eを設けないで、乗算処理部16BおよびLA除外乗算処理部16Fが、欠落位置データそれぞれについて、位置情報緯度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出する実施態様となる。
【0069】
(第1、第2実施形態の変形例3)
第1、第2実施形態では、位置データについての「特徴量」を基礎として、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完する例を説明した。しかし、第1、第2実施形態において、位置データについての「特徴量」に代わり、「位置データの数」を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完してもよい。
【0070】
ここでは一例として、第1実施形態において位置データ(ここでは位置登録情報)の数を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を以下の式(9)に基づいて生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完する変形例を説明する。
Σ(位置情報緯度×位置データの数,位置情報経度×位置データの数)/位置データの総数 (9)
【0071】
例えば、図14に示す情報処理装置10Tによって、位置データ(位置登録情報)の数を基礎とした一連の基地局データ補完処理を行うことができる。第1実施形態の情報処理装置(図1、図2)との比較で説明すると、図14に示すように、情報処理装置10Tは、図1の特徴量算出部13を備えておらず、特徴量を算出しない。情報結合部15Aは、位置取得時刻が位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合し、照合された基地局データの中から、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報を取得し、該セクタ中心位置情報を位置データに結合する。情報抽出部15Bは、結合後の位置データのうちセクタ中心位置情報が欠落しているデータ(即ち、欠落位置データ)を抽出し、欠落セクタ情報生成部16へ出力する。
【0072】
欠落セクタ情報生成部16では、信号数小計算出部16Sが、上記抽出された欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの「位置データの数」をカウントする。乗算処理部16Bは、位置情報緯度と位置データの数とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と位置データの数とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、Σ(位置情報緯度×位置データの数,位置情報経度×位置データの数)を算出する。総和処理部16Cは、位置データの総数を算出する。算出処理部16Dは、Σ(位置情報緯度×位置データの数,位置情報経度×位置データの数)を位置データの総数により割算することで、欠落位置データに関する「位置データの数」を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)とする。また、欠落セクタ情報生成部16において、信号数小計算出部16Sは、上記のように欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類する処理を行わずに、上記抽出された欠落位置データに対してセクタ毎にその重心を求め、得られた重心の緯度・経度を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)としてもよい。こうして得られた欠落セクタ情報は、基地局データ補完部17へ出力され、基地局データ補完部17は、欠落セクタ情報によって基地局データを補完する。
【0073】
以上のようにして、位置データについての「特徴量」に代わり、「位置データの数」を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完することができる。
【0074】
ただし、前述した第1、第2実施形態のように、「位置データの数」ではなく、位置データについての「特徴量」を基礎として、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完する場合は、位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)の間隔が変動することによる影響を校正しつつ、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データをより適切に補完することができる、という利点がある。一方、変形例3のように「位置データの数」を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、当該セクタ中心位置情報によって基地局データを補完する場合は、特徴量の算出処理が不要となるため、全体の処理量を削減できるという利点がある。
【0075】
[第3実施形態]
第3実施形態では、補完された基地局データを用いて人口を推計するための構成を備えた情報処理装置、および該情報処理装置により実行される処理について説明する。
【0076】
図8には、第3実施形態における情報処理装置10Sの構成を示す。図8に示すように、情報処理装置10Sは、基地局データの補完を行う補完部10Xに加え、補完された基地局データに基づいて後述するセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計部18と、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出部19と、算出された面積按分比を特徴量付き位置データに結合する面積按分比結合部20と、位置取得時刻が人口推計の対象期間(以下「対象期間」という)内にある位置データについての特徴量、面積按分比および対象期間の長さに基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの端末数を推計する端末数推計部21と、端末数を人口に変換するための拡大係数を算出する拡大係数算出部22と、拡大係数を用いて対象期間の人口推計単位ごとの端末数から人口を推計する人口推計部23と、推計された人口に対し、予め定められた基準に基づき秘匿処理を行う秘匿処理部24と、を備える。
【0077】
特許請求の範囲に記載の「人口導出部」に相当する人口導出部23Sは、端末数推計部21、拡大係数算出部22および人口推計部23を含んで構成される。補完部10Xは、前述した第1、第2実施形態と同様の構成でも、前述した変形例1〜3の構成でも適用することができる。即ち、基地局データの補完に関する構成および処理内容は特定の形態に限定されるものではない。
【0078】
人口推計の「対象期間」と、第1、第2実施形態で述べた基地局データ補完に係る処理のための「位置データ抽出期間」とは、同一の期間であってもよいし、異なる期間であってもよく、互いに独立して設定することができる。なお、端末数推計部21が上記「対象期間」における端末数を推計するためには、位置取得時刻が「対象期間」内にある位置データについての特徴量が必要となる。そのため、補完部10X内の特徴量算出部13は、位置データのうち、少なくとも位置取得時刻が「対象期間」内にある位置データについて特徴量を算出し、特徴量付き位置データを面積按分比結合部20に出力する。ここでは、ある位置データについての「特徴量」は、第1実施形態で述べたように「直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差」とする。このとき、直前の位置データの位置取得時刻情報および直後の位置データの位置取得時刻情報が必要となるので、特徴量算出部13は、少なくとも対象期間内の位置データについて特徴量を算出するために、実際には、対象期間を前後に数時間拡張した期間内の位置データを位置データ記憶部12から読み出して、第1実施形態のような特徴量算出処理を行う。
【0079】
以下、図9のフロー図に沿って、図8の情報処理装置10Sにより実行される処理(本発明の情報処理方法に係る処理)を説明する。
【0080】
補完部10Xは、前述した第1、第2実施形態、変形例1〜3の何れかの処理により基地局データの補完処理を行い、基地局データを補完する(図9のステップS10)。
【0081】
次に、セクタ勢力範囲推計部18が、補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計する(ステップS20)。例えば、セクタ勢力範囲推計部18は、補完された基地局データからセクタごとのセクタ情報(セクタ中心緯度、セクタ中心経度)を抽出し、セクタごとのセクタ情報を用いてボロノイ分割を行い、セクタ勢力範囲としてボロノイ領域を推計する。図10には、セクタごとのセクタ中心X(即ち、セクタ中心緯度およびセクタ中心経度に相当するセクタ中心X)を示しており、例えば、対象とするセクタのセクタ中心Xと隣接するセクタ各々のセクタ中心Xとの間に垂直二等分線を引き、これら複数の垂直二等分線によって上記対象とするセクタについてのセクタ勢力範囲(ボロノイ領域)を推計する。
【0082】
次に、面積按分比算出部19が、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する(ステップS30)。ここでは人口推計単位として、例えば、図11(b)に示すいわゆるメッシュ領域を想定し、セクタ勢力範囲として図11(a)に示すボロノイ領域A〜Cを想定する。面積按分比算出部19は、図11(c)に示すようにボロノイ領域とメッシュ領域とを仮想的に重ね合わせ、図12に示すように各ボロノイ領域について地理的に重なるメッシュ領域ごとの面積按分比を算出する。例えばボロノイ領域Aについては、地理的に重なるメッシュ領域はメッシュ領域1〜4である。ボロノイ領域Aの面積が200m2であり、メッシュ領域1と重なる部分の面積が10m2、メッシュ領域2と重なる部分の面積が50m2、メッシュ領域3と重なる部分の面積が100m2、メッシュ領域4と重なる部分の面積が40m2とすると、面積按分比算出部19は、ボロノイ領域Aについて、メッシュ領域1と重なる部分:5%、メッシュ領域2と重なる部分:25%、メッシュ領域3と重なる部分:50%、メッシュ領域4と重なる部分:20%という面積按分比を算出する。
【0083】
そして、面積按分比結合部20が、算出された面積按分比を、図8の特徴量算出部13から出力された特徴量付き位置データに結合する(ステップS40)。これにより、図13に示すように、算出された面積按分比が特徴量付き位置データに結合される。
【0084】
次に、端末数推計部21は、図13に示す面積按分比および特徴量が付加された位置データを受け取り、それらの位置データのうち位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、面積按分比および対象期間の長さに基づいて、対象期間における人口推計単位ごとの端末数を推計する(ステップS50)。例えば端末数推計部21は、位置取得時刻が対象期間内の位置データそれぞれについて、当該位置データに付加された面積按分比および特徴量を読み出して、メッシュ領域ごとに(面積按分比×特徴量)を算出し、対象期間内の位置データ全てから得られた(面積按分比×特徴量)をメッシュ領域ごとに集計する。これにより、対象期間におけるメッシュ領域ごとの特徴量の総和が得られる。そこで、端末数推計部21は、第1実施形態にて図15、図16を用いて説明したように、対象期間におけるメッシュ領域ごとの特徴量の総和を(対象期間長×2)で割算することにより、対象期間におけるメッシュ領域(人口推計単位)ごとの端末数を推計する。
【0085】
なお、セクタと該セクタのセクタ勢力範囲(ボロノイ領域)では、それらの領域範囲は異なるが、端末数推計や人口推計を簡易に行うために、各セクタのセクタ勢力範囲(ボロノイ領域)を当該セクタの領域範囲として扱っている。
【0086】
次に、拡大係数算出部22は、端末数を人口に変換するための拡大係数を算出する(ステップS60)。拡大係数は、一例として「在圏率と携帯端末の普及率との積(即ち、人口に対する在圏数の比率)の逆数」を用いることができる。ここで「在圏率」とは、携帯端末の契約台数に対する在圏数の比率を意味し、「普及率」とは人口に対する携帯端末の契約台数の比率を意味する。拡大係数の算出方法として、特徴量を用いた拡大係数の算出方法について後述する。
【0087】
なお、拡大係数は毎回算出する必要はなく、拡大係数算出部22は、算出した拡大係数を記憶しておき、次回以降は当該記憶した拡大係数を人口推計部23に提供してもよい。また、予め定められた拡大係数を使用してもよく、この場合、図8の人口導出部23Sにおいて、人口推計部23が当該予め定められた拡大係数を記憶しておけば、拡大係数算出部22は不要となる。
【0088】
次に、人口推計部23は、対象期間の人口推計単位ごとの端末数に拡大係数を乗算することで、対象期間の人口推計単位ごとの人口を推計する(ステップS70)。
【0089】
なお、上記例は、全体で共通の拡大係数を用いる例であるが、後述する所定の単位(以下「拡大係数算出単位」という。例えば、ユーザ属性(性別・年齢・住所など)、場所、時間帯など)ごとの拡大係数を用いてもよい。拡大係数算出部22が、例えばユーザ属性ごとの拡大係数を算出するには、端末識別子をキーにしてユーザ属性を取得し位置データに関連付けておく必要がある。これは、例えば、位置データ取得部11が、取得した位置データの端末識別子をキーにして、図示しないユーザ属性記憶部からユーザ属性を取得し、当該位置データにユーザ属性を付加することで実現できる。この場合、拡大係数は、以下のように特徴量および対象期間長に基づいて推計された端末数を用いて算出してもよい。上述した手法により位置データから特徴量を求め、特徴量および対象期間長に基づいて、拡大係数算出単位(ユーザ属性)ごとの端末数を集計することでユーザ数ピラミッドデータを得るともに、統計データ(例えば住民基本台帳など)として予め求められた同じ拡大係数算出単位における人口ピラミッドデータを取得する。そして、ユーザ数ピラミッドデータ及び人口ピラミッドデータにおいて拡大係数算出単位(ユーザ属性)ごとの位置データの取得率(即ち、在圏数/人口)を算出する。ここで得られた「位置データの取得率(即ち、在圏数/人口)」が、前述した「在圏率と端末の普及率との積」に相当する。このようにして得られたユーザ属性ごとの「位置データの取得率」の逆数を、拡大係数算出単位(ユーザ属性)ごとの拡大係数として得ることができる。なお、上記のように拡大係数を算出する拡大係数算出単位としては、一例として、住所の都道府県ごと、5才又は10才刻み年齢層ごと、男女ごと、時間帯として1時間ごとなどを採用してもよいし、これらの2つ以上を組み合わせたものを採用してもよい。例えば、拡大係数算出単位を「東京都在住の20才台の男性」とした場合、日本全国における、東京都在住の(即ち、ユーザ属性における住所情報が東京都である)20才台の男性に該当する位置データを抽出して端末数を集計することでユーザ数ピラミッドデータを得るとともに、統計データから東京都在住の20才台の男性に関する人口ピラミッドデータを取得する。なお、上記ユーザ数ピラミッドデータを得る際に、「東京都在住」という条件については、東京都に在圏するユーザの位置データだけを抽出するのではなく、ユーザ属性における住所情報が東京都である位置データを抽出する。そして、ユーザ数ピラミッドデータ及び人口ピラミッドデータから拡大係数算出単位(ここでは東京都在住の20才台の男性)の位置データの取得率(即ち、在圏数/人口)を算出し、得られた「位置データの取得率」の逆数を拡大係数として導出することができる。なお、本願では、拡大係数算出単位と人口推計単位とが等しいものとして説明しているが、これはあくまでも一例であり、これに限られるものではない。
【0090】
また、上記例は、図8の人口導出部23Sにおいて、端末数を一旦推計し、端末数と拡大係数から人口を推計する例であるが、端末数を推計することは必須ではなく、以下のように端末数推計を行わずに人口を推計してもよい。例えば、人口推計部23は、特徴量に拡大係数を乗算し当該乗算結果の集計値を用いて人口を求めてもよい。また、人口推計部23は、人口推計を行う所定の単位(例えば、ユーザ属性、場所、時間帯など)ごとに特徴量を集計し、当該特徴量の集計値に当該所定の単位に応じた拡大係数を乗算し、当該乗算結果を用いて人口を求めてもよい。この場合、図8の人口導出部23Sにおいて、端末数推計部21は不要となる。
【0091】
図9へ戻り、最後のステップS80にて、秘匿処理部24は、人口推計部23から推計値(推計人口)を受け取ると、例えば図17に示すいわゆるセル秘匿相当の秘匿処理を行う。即ち、秘匿処理部24は、推計の基礎となったエリア(セクタ)ごとの位置データが何台の端末から取得されたかを示す取得元端末数が、秘匿処理が必要と判断するための予め定められた基準値(一例として10)未満であるか否かを判定する(図17のステップS81)。なお、取得元端末数は、同一端末についての重複を除いたユニークな端末数を示す。ここでの判定を行うには、エリア(セクタ)ごとの位置データの取得元端末数が必要となるが、一例としては、端末数推計部21が、位置データに対応付けられた特徴量を集計する際に、重複を省きながら該位置データ中の端末識別子の数をカウントし、得られた端末識別子のカウント数情報を人口推計部23経由で秘匿処理部24へ送り、秘匿処理部24が端末識別子のカウント数をエリア(セクタ)ごとの位置データの取得元端末数として用いてもよい。
【0092】
ステップS81にて、上記取得元端末数が基準値未満ならば、秘匿処理部24は当該エリア(セクタ)に関する推計値をゼロとすることで、当該推計値を秘匿する(ステップS82)。なお、ここでの秘匿方法は、推計値をゼロとすることに限定されるものではなく、推計値を所定の文字や記号(例えば「X」など)で表象する方法など他の方法を採用してもよい。
【0093】
一方、ステップS81にて、上記取得元端末数が基準値以上ならば、秘匿処理部24は当該エリア(セクタ)に関する推計値に対し、以下のような、推計値出力にて用いられる階級幅の確率的丸めを行う(ステップS83)。即ち、あるエリア(セクタ)に関する推計値をx、階級幅をkとすると、秘匿処理部24は、kn≦x<k(n+1)(nは整数)の場合に、当該推計値xを、確率(x−kn)/kでk(n+1)に、確率(k(n+1)−x)/kでknに丸める。例えば、推計値xが23、階級幅kが10の場合、k×2≦x<k(2+1)なので、n=2となり、推計値「23」は、確率0.3(30%の確率)で「30」に、確率0.7(70%の確率)で「20」に丸められる。
【0094】
なお、秘匿処理部24による秘匿処理は、図17に示す処理には限定されず、別の処理を採用してもよい。例えば、図17のステップS81では、推計の基礎となったエリア(セクタ)ごとの「位置データの取得元端末数」に代わり、推計の基礎となったエリア(セクタ)ごとの「位置データの個数」が基準値未満か否かを判定してもよいし、「出力される推計値(推計人口)」が基準値未満か否かを判定してもよい。また、図17のステップS81で否定判定された場合には、ステップS83の処理を省略してもよい。
【0095】
以上のような第3実施形態により、補完された基地局データを用いて人口推計単位(例えばメッシュ領域)ごとの人口を推計することができる。また、上述した秘匿処理部24による秘匿処理により、推計結果からの個人特定を防止して推計結果の有用性を高めることができ、また、秘匿した値が他の値から推測できてしまうといった不都合を未然に防止することができる。
【0096】
なお、ある程度の広さを持った任意図形の人口推計単位(例えば、市区町村単位)で人口推計値を求める場合には、上述した手法で補完した後の基地局データに含まれるセクタ中心位置情報に基づくセクタ中心位置をそのセクタの代表点と見なし、ある人口推計単位の中にセクタ中心位置が位置する全てのセクタについての人口推計値を合計することで、当該人口推計単位の人口推計値を求めてもよい。上記の手法は、上記のような人口推計単位で端末数を推計する場合にも同様に適用できる。
【0097】
また、上記第3実施形態では、特徴量算出部13が、ある位置データ(対象位置データ)について特徴量として、「直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差」を算出する例を示した。これを式で表すと、特徴量は、以下の式(10)で表すことができる。なお、以下の式(10)は、前述した式(4)を変形しただけであり、式(4)と等価である(即ち、式(4)の考え方を変更したものではない)。
wij=ui(j+1)−ui(j−1) (10)
【0098】
以下では、特徴量算出部13において算出される特徴量の算出方法に関する別の例を示すものである。ここでは、特徴量算出部13は、以下のようにして直前の位置データの信号種別および直後の位置データの信号種別を考慮して対象位置データについての特徴量を算出する。具体的に、特徴量算出部13は、直後の位置データの位置取得時刻ui(j+1)と対象位置データの位置取得時刻uijとの時間差に対し、直後の位置データの信号種別に対応する補正係数αを乗算した値を算出するとともに、直前の位置データの位置取得時刻ui(j−1)と対象位置データの位置取得時刻uijとの時間差に対し、直前の位置データの信号種別に対応する補正係数βを乗算した値を算出する。そして、特徴量算出部13は、算出したこれらの値を合計した値を対象位置データについての特徴量wijとしてもよい。即ち、以下の式(11)により、対象位置データについての特徴量wijを求めてもよい。
wij=α(ui(j+1)−uij)+β(uij−ui(j−1)) (11)
なお、直後の位置データの信号種別に対応する補正係数αとしては、直後の位置データの信号種別ごとに予め定められた値を用いてもよい。但し、補正係数αは0以上2以下の値となっている。同様に、直前の位置データの信号種別に対応する補正係数βとしては、直前の位置データの信号種別ごとに予め定められた値を用いてもよい。但し、補正係数βは0以上2以下の値となっている。なお、ここで示した補正係数α,βの値は一例であり、この値に限定されるものではない。
【0099】
また、上記例のように、対象位置データについての特徴量を算出する場合に、直前の位置データの信号種別および直後の位置データの信号種別を考慮する以外に、対象位置データの信号種別を考慮してもよいし、対象位置データの信号種別および直前の位置データの信号種別を考慮してもよいし、対象位置データの信号種別および直後の位置データの信号種別を考慮してもよい。さらに、対象位置データ、直前の位置データおよび直後の位置データの信号種別すべてを考慮してもよい。
【0100】
このように、特徴量算出部13は、対象位置データについての特徴量を算出する場合に、対象位置データに対し直前・直後の位置データについての信号種別に応じて時間差を補正し、補正した時間差を用いて特徴量を算出することで、位置データの信号種別に基づいて特徴量をより精度よく算出することができる。
【0101】
ここで、上記の式(11)を用いて特徴量を算出する場合の一例として、対象位置データの信号種別に基づいて特徴量を算出する場合について説明する。周期的に行われる測位処理に基づく位置データのように端末の位置と位置データの生成契機とが無関係である位置データの場合は、現在のセクタに滞在していた時間の期待値は、当該位置データの生成の前後で同じと考えられる。一方、位置登録エリア境界を跨いだときに生成される位置データの場合、少なくとも当該位置データが生成される前は、端末は現在のセクタに滞在していなかったと判断できる。そのため、当該位置データが生成される前に端末が現在のセクタに滞在していた時間を0と考え、対象位置データの信号種別(生成要因)が「位置登録エリア境界跨り」であれば、上記式(11)における補正係数β(即ち、直前の位置データとの時間差に関する補正係数β)を0に設定することができる。これにより、より実態に即した特徴量を算出できる。
【符号の説明】
【0102】
10、10S、10T…情報処理装置、10X…補完部、11…位置データ取得部、12…位置データ記憶部、13…特徴量算出部、14…基地局データ記憶部、15…欠落位置データ抽出部、15A…情報結合部、15B…情報抽出部、16…欠落セクタ情報生成部、16A…特徴量小計算出部、16B…乗算処理部、16C…総和処理部、16D…算出処理部、16E…LA除外特徴量小計算出部、16F…LA除外乗算処理部、16G…LA除外総和処理部、16H…LA除外算出処理部、16I…按分点算出処理部、16S…信号数小計算出部、17…基地局データ補完部、18…セクタ勢力範囲推計部、19…面積按分比算出部、20…面積按分比結合部、21…端末数推計部、22…拡大係数算出部、23…人口推計部、23S…人口導出部、24…秘匿処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、後述する基地局データの補完を行う情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ネットワークにて基地局の制御下に存在する複数のセクタについては、個々のセクタのセクタ識別子に当該セクタのセクタ中心位置情報(例えば、セクタ中心の緯度・経度情報)を対応付けて記憶・管理している。このように記憶・管理されたセクタ識別子およびセクタ中心位置情報を含んだ、セクタに関する管理情報を、本件では「基地局データ」と称する。
【0003】
上記基地局データに含まれるセクタ中心位置情報は、例えば、複数のセクタを含んだ対象領域に対し、いわゆるボロノイ分割を行う際に利用される。例えば特許文献1には、管理サーバがセクタ中心位置情報を利用してボロノイ分割を行い、ボロノイ分割で得られた複数のボロノイ領域に基づき対象領域における人口分布を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2011/021608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば基地局データ自身の更新作業の遅れ、基地局増設計画の前倒しなどに起因して、当該時点で記憶・管理されている基地局データが実際のネットワーク実装とは合致しない事態が起こりうる。このような場合、ネットワークに上がってくる位置情報(位置登録情報、GPS位置情報等)の中に、当該時点の基地局データと整合しないものが出てくるおそれがある。このように基地局データと整合しない位置情報は、前述したボロノイ分割を行う際に利用されず、その結果、適正なボロノイ分割が困難となり、精度良く人口分布を求めることが困難となるといった不都合が起こりうる。
【0006】
本発明は、上記のような不都合を防止するため、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る情報処理装置は、携帯端末を識別する端末識別情報と携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と携帯端末の位置に関する位置情報と位置情報が取得された位置取得時刻情報とを含む位置データを取得する位置データ取得部と、セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部と、位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出部と、抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完部と、を備えることを特徴とする。なお、「特徴量」とは、携帯端末によって生成された位置データについての推定生成密度に対応する情報であり、ここでの「推定生成密度」とは、当該位置データを生成した携帯端末が、当該位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)周辺で単位時間あたりに生成する位置データの数の推定値を意味する。
【0008】
上記のような情報処理装置によって、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出し、抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していた基地局データまたはセクタ中心位置情報を生成し、生成された基地局データまたはセクタ中心位置情報によって、基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完することで、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することができる。
【0009】
上記の情報処理装置は、位置データ取得部により取得された位置データのうち、ある第1の位置データについて、当該第1の位置データと同一の端末識別情報を含む位置データのうち、当該第1の位置データの直前の位置データである第2の位置データの位置取得時刻情報、および当該第1の位置データの直後の位置データである第3の位置データの位置取得時刻情報を取得し、第1の位置データの位置取得時刻情報、第2の位置データの位置取得時刻情報および第3の位置データの位置取得時刻情報のうち2つ以上に基づいて、第1の位置データについての特徴量を算出する特徴量算出部、をさらに備え、欠落セクタ情報生成部は、抽出された位置データについての特徴量、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ中心位置情報を生成してもよい。上記の特徴量算出部は、第2の位置データの位置取得時刻と第3の位置データの位置取得時刻との差を、第1の位置データについての特徴量として計算してもよい。詳細な原理は後述するが、「位置データの数」ではなく、「位置データについての特徴量」を基礎として、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完することで、位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)の間隔が変動することによる影響を校正しつつ、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データをより適切に補完することができる。
【0010】
なお、上記の欠落セクタ情報生成部は、抽出された全ての位置データについての特徴量、および、当該全ての位置データ内の位置情報に基づいて、第1のセクタ中心位置情報を生成するとともに、抽出された位置データから位置データの種別に応じて抽出された位置データについての特徴量、および、当該抽出した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成し、生成された第1のセクタ中心位置情報および第2のセクタ中心位置情報に基づいて、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成してもよい。例えば、欠落セクタ情報生成部は、第1のセクタ中心位置と第2のセクタ中心位置との所定の按分点(例えば中点)を求め、当該按分点の位置情報を、上記欠落していたセクタ中心位置情報として生成してもよい。上記の「位置データの種別」としては、例えば、位置データが生成された生成要因が挙げられ、この場合、「位置データの種別に応じて抽出された位置データ」として、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報に対応する位置データを除外した後の位置データや、周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報に対応する位置データのみを抽出して得られた位置データ、などが挙げられる。なお、「位置データの種別」としては、上記の生成要因以外に、例えば位置データの生成時刻なども適用可能である。
【0011】
そこで、欠落セクタ情報生成部は、第2のセクタ中心位置情報については、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報に対応する位置データを除外した後の位置データについての特徴量、および、当該除外した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成してもよい。また、欠落セクタ情報生成部は、上記に代わり、周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報に対応する位置データのみを抽出し、該抽出された位置データについての特徴量、および、該抽出された位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成してもよい。これらの場合、位置登録エリア境界付近では、位置登録エリア境界から少し離れた位置よりも、位置登録情報がより頻繁に生成されることに起因した不都合を抑制することができる。
【0012】
また、位置データとしては、位置登録情報、セクタ識別子付きのGPS位置情報などを広く含むことができる。ただし、位置データを位置登録情報のみに限定してもよい。
【0013】
本発明に係る情報処理装置は、補完された基地局データを用いて人口を推計するための構成を備えてもよい。例えば、情報処理装置は、補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計部と、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出部と、算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出部と、をさらに備えてもよい。また、このような情報処理装置は、導出された人口に対し、予め定められた基準に基づき秘匿処理を行う秘匿処理部、をさらに備えてもよい。
【0014】
さて、情報処理装置に係る本発明は、情報処理装置によって実行される情報処理方法に係る発明として捉えることができ、以下のように記述することができる。以下の情報処理方法に係る発明は、上述した情報処理装置に係る発明と同様の作用・効果を奏する。
【0015】
本発明の一側面に係る情報処理方法は、セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部を備えた情報処理装置、によって実行される情報処理方法であって、携帯端末を識別する端末識別情報と携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と携帯端末の位置に関する位置情報と位置情報が取得された位置取得時刻情報とを含む位置データを取得する位置データ取得ステップと、位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出ステップと、抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完ステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る情報処理方法は、補完された基地局データを用いて人口を推計するための情報処理方法として、以下のように記述できる。即ち、本発明に係る情報処理方法は、補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計ステップと、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出ステップと、算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出ステップと、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1、第2実施形態の情報処理装置を示す機能ブロック図である。
【図2】第1実施形態の欠落セクタ情報生成部を示す機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態の情報処理装置により実行される処理を示すフロー図である。
【図4】図3の処理過程における、位置データ、特徴量付き位置データ、基地局データ、情報結合部による結合後のデータ、および補完した後の基地局データのそれぞれのデータ例を示す図である。
【図5】欠落セクタ情報生成部による処理を説明するための図である。
【図6】第2実施形態の欠落セクタ情報生成部を示す機能ブロック図である。
【図7】第2実施形態の情報処理装置により実行される処理を示すフロー図である。
【図8】第3実施形態の情報処理装置を示す機能ブロック図である。
【図9】第3実施形態の情報処理装置により実行される処理を示すフロー図である。
【図10】セクタ勢力範囲の推計処理を説明するための図である。
【図11】面積按分比の算出処理を説明するための図である。
【図12】面積按分比の算出処理を説明するための図である。
【図13】位置データと面積按分比との結合後のデータ例を示す図である。
【図14】第1実施形態の変形例に係る情報処理装置を示す機能ブロック図である。
【図15】端末数推計の考え方を説明するための図である。
【図16】端末数推計に係る計算方法を説明するための図である。
【図17】秘匿処理を示すフロー図である。
【図18】第1〜第3実施形態の情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る各種の実施形態を順に説明する。なお、本件における「位置データ」とは、携帯端末を識別する端末識別子と、携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別子と、携帯端末の位置に関する位置情報(例えば緯度・経度情報)と、位置情報が取得された位置取得時刻情報と、を含むデータを広く意味し、例えば、携帯端末にて生成された位置登録信号に含まれる情報(以下「位置登録情報」という)、上記セクタ識別子が付加されたGPS位置情報などが含まれる。GPS位置情報は、その生成時には上記のセクタ識別子を含まないが、携帯端末からのGPS位置情報を受信した基地局によって上記セクタ識別子が付加され、後述の情報処理装置10(図1)はセクタ識別子付きのGPS位置情報を取得可能とされている。また、GPS位置情報は、その生成時に上記のセクタ識別子を含む場合も想定される。この場合、携帯端末がGPS位置情報を生成した際に上記セクタ識別子が付加され、後述の情報処理装置10(図1)はセクタ識別子付きのGPS位置情報を取得可能とされている。位置登録情報には、位置登録信号が生成された要因(例えば、周期的位置登録、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだこと(いわゆるLA跨り)、携帯端末の電源オン等によるアタッチ処理の実行、携帯端末の電源オフ等によるデタッチ処理の実行など)を示す生成要因情報が含まれており、この生成要因情報に基づいて、位置登録情報のうち、例えば、携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報(以下「LA跨り位置登録情報」と称する)を除外することや、周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報のみを抽出すること等が可能とされている。
【0020】
[第1実施形態]
第1、第2実施形態では、携帯端末の位置データの一例として「位置登録情報に対応する位置データ」(以下では「位置登録情報」と表記する)のみを使用して、基地局データを補完する処理を説明する。詳細は後述するが、第2実施形態では、位置データの種別に応じて抽出された位置データに基づき算出されたセクタ情報と、上記抽出を行う前の位置データに基づき算出されたセクタ情報と、に基づいて、基地局データを補完する処理を説明する。ここでの「セクタ情報」とは、セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む情報であり、基地局データにおける1レコードに相当する。このような第2実施形態に先立ち、第1実施形態では、対象とすべき全ての位置データに基づきセクタ情報を算出し、基地局データを補完する処理を説明する。
【0021】
図1には、第1実施形態にて基地局データ補完に係る一連の処理を実行する情報処理装置10の構成を示す。図1に示すように、情報処理装置10は、後述する予め定められた取得元から携帯端末の位置データ(ここでは位置登録情報)を取得する位置データ取得部11と、取得された位置データを記憶する位置データ記憶部12と、位置データに対し当該位置データについての後述する「特徴量」を算出する特徴量算出部13と、セクタごとのセクタ識別子と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部14と、位置取得時刻が予め定められた位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合することで、位置データ内のセクタ識別子自身または位置データ内のセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データ(以下「欠落位置データ」という)を抽出する欠落位置データ抽出部15と、欠落位置データについての特徴量および当該欠落位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別子に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部16と、生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、基地局データ記憶部14に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完部17と、を備える。以下、各構成部の機能を補足説明する。
【0022】
位置データ取得部11により取得される位置データは、図4(a)に示すように、携帯端末を識別する端末識別子と、携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別子と、携帯端末の位置を示す位置情報(位置情報緯度および位置情報経度)と、位置情報が取得された位置取得時刻情報とを含む。また、位置データ取得部11による位置データの取得元は、特定の装置に限定されるものではない。例えば、位置データ取得部11は、携帯端末にて生成された位置登録情報を基地局経由で取得してもよいし、ネットワークにおいて基地局の上位にあるRNC(無線ネットワーク制御装置)又は交換機経由で取得してもよい。
【0023】
上記の欠落位置データ抽出部15による抽出処理に関する「位置データ抽出期間」としては、例えば、2011年9月1日〜2011年9月30日の1ヶ月の期間、2011年9月24日〜2011年9月30日の1週間の期間、2011年9月30日の1日の期間など、さまざまな期間を設定することができる。
【0024】
特徴量算出部13は、位置取得時刻が上記の位置データ抽出期間内にある位置データのそれぞれについて、当該対象とする位置データ(「対象位置データ」という)と同一の端末識別情報を含む位置データ(即ち、同一の携帯端末に関する位置データ)のうち、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直前の位置データに含まれる位置取得時刻情報、および、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直後の位置データに含まれる位置取得時刻情報を取得し、直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差を対象位置データの特徴量として算出する。さらに、特徴量算出部13は、図4(b)に示すように、位置データ(図4(a))に特徴量の情報を付加し、付加後の特徴量付き位置データを欠落位置データ抽出部15へ出力する。なお、位置データへの特徴量の情報の付加は、欠落位置データ抽出部15における欠落位置データの抽出の前までに実行すればよく、後述するセクタ中心位置情報と位置データとの結合後に実行してもよい。また、本実施形態では、特徴量算出部13により特徴量が算出される対象位置データを、位置データ抽出期間内にある位置データとしたが、これに限定されるものではなく、「位置データ抽出期間を含んだ期間」内の位置データであればよく、例えば位置データ取得部11により取得された全て位置データを対象位置データとして特徴量を算出してもよい。
【0025】
基地局データ記憶部14は、図4(c)に示すように、セクタごとのセクタ識別子と当該セクタのセクタ中心位置情報(セクタ中心緯度およびセクタ中心経度)とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶している。なお、図4(c)の基地局データにおいて、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報は欠落しており、「N/A」(即ち、Not Available)と表記している。
【0026】
欠落位置データ抽出部15は、図1に示すように、情報結合部15Aと情報抽出部15Bとを含む。このうち情報結合部15Aは、位置取得時刻が位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合し、位置データにおけるセクタ識別子自身が基地局データ内に存在すれば、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報を基地局データから取得し、該セクタ中心位置情報を特徴量付き位置データに結合する。このとき、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に存在しなければ、情報結合部15Aは、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」(Not Available))を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。また、位置データにおけるセクタ識別子自身が基地局データ内に存在しない場合も、情報結合部15Aは、上記同様、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。図4(d)には、位置データにおけるセクタ識別子が基地局データ内に存在するものの当該セクタ識別子に関するセクタ中心位置情報が欠落していた場合の結合後の特徴量付き位置データの一例を示している。この例では、基地局データにてセクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が欠落しているため、結合後の特徴量付き位置データにおけるセクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)がセットされている。なお、結合後の特徴量付き位置データでは、端末識別子は必須ではないため、図4(d)の例には表記していない。即ち、端末識別子は、結合後の特徴量付き位置データに含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0027】
情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データから欠落位置データを抽出し、欠落セクタ情報生成部16へ出力する。例えば、情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データのうち、少なくとも「セクタ中心位置情報」が欠落しているデータを抽出することで、欠落位置データ(位置データ内のセクタ識別子自身または位置データ内のセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データ)を抽出することができる。
【0028】
欠落セクタ情報生成部16は、図2に示すように、特徴量小計算出部16Aと乗算処理部16Bと総和処理部16Cと算出処理部16Dとを備え、欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、以下の式(1)による重み付け演算を行うことで、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)を生成する。
Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)/特徴量総和 (1)
【0029】
詳細は図5の例を用いて後述するが、欠落セクタ情報生成部16では、上記抽出された欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、以下の処理が行われる。特徴量小計算出部16Aは、対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する。乗算処理部16Bは、位置情報緯度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を算出する。総和処理部16Cは、特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する。算出処理部16Dは、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を特徴量総和により割算することで、欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子のセクタに関するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として当該セクタ識別子に対応付ける。こうして得られた、セクタ識別子に対応付けられた欠落セクタ情報は、基地局データ補完部17へ出力され、基地局データ補完部17は、欠落セクタ情報によって、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データを補完する。これにより、図4(e)に示すように、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が補完された「補完した後の基地局データ」が得られる。なお、上記のような欠落セクタ情報生成部16における処理を欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに実行するために、例えば、特徴量小計算出部16Aが、抽出された欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類して、処理対象となるセクタ識別子に関する情報を算出処理部16Dあてに転送し、算出処理部16Dが、当該処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断してもよい。
【0030】
なお、図18には、図1の情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す。図18に示すように情報処理装置10は、CPU10A、主記憶装置であるRAM10B及びROM10C、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置10D、ディスプレイ等の出力装置10E、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール10F、および、ハードディスク等の補助記憶装置10Gを含むコンピュータにより構成されている。図1、図2において説明した各機能は、図18に示すCPU10A、RAM10B等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU10Aの制御のもとで入力装置10D、出力装置10Eおよび通信モジュール10Fを動作させるとともに、RAM10Bおよび補助記憶装置10Gにおけるデータの読み出し、書き込みを行うことによって実現される。第2実施形態以降で説明する情報処理装置10、10S(図8)、10T(図14)についても、同様のハードウェア構成とされている。また、これら情報処理装置10、10S、10Tの各々は、1台のコンピュータにより構成されることに限定されるものではなく、相互に通信接続可能な複数のコンピュータにより構成してもよい。
【0031】
次に、図3のフロー図に沿って、図1の情報処理装置10により実行される処理(本発明の情報処理方法に係る処理)を説明する。
【0032】
位置データ取得部11は、予め定められた取得元から携帯端末の位置データ(ここでは位置登録情報)を取得する(図3のステップS1)。取得された位置データは、位置データ記憶部12により記憶される。
【0033】
特徴量算出部13は、位置取得時刻が前述した位置データ抽出期間内にある位置データのそれぞれについて、当該対象とする位置データ(「対象位置データ」という)と同一の端末識別情報を含む位置データ(即ち、同一の携帯端末に関する位置データ)のうち、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直前の位置データに含まれる位置取得時刻情報、および、位置取得時刻が時系列上で対象位置データの直後の位置データに含まれる位置取得時刻情報を取得し、直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差を対象位置データの特徴量として算出する(ステップS2)。このとき特徴量算出部13は、図4(b)に示すように、位置データ(図4(a))に特徴量の情報を付加し、付加後の特徴量付き位置データを情報結合部15Aへ出力する。
【0034】
情報結合部15Aは、特徴量付き位置データのうち位置取得時刻が位置データ抽出期間内にある位置データと、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合し、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報を基地局データから取得し、該セクタ中心位置情報を特徴量付き位置データに結合する(ステップS3)。このとき、情報結合部15Aは、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に存在しなければ、情報結合部15Aは、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。また、位置データにおけるセクタ識別子自身が基地局データ内に存在しない場合も、情報結合部15Aは、上記同様、当該セクタ中心位置情報として、欠落を示す所定の情報(例えば「N/A」)を特徴量付き位置データに結合してもよいし、セクタ中心位置情報の結合を回避してもよい。そして、情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データから欠落位置データを抽出し、欠落セクタ情報生成部16へ出力する(ステップS4)。例えば、情報抽出部15Bは、結合後の特徴量付き位置データのうち、少なくとも「セクタ中心位置情報」が欠落しているデータを抽出することで、欠落位置データ(位置データ内のセクタ識別子自身または位置データ内のセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が基地局データ内に欠落している位置データ)を抽出することができる。図4(c)に示す基地局データの例では、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が欠落しているため、図4(d)のように、結合後の特徴量付き位置データにおけるセクタ中心位置情報も欠落することとなる。ステップS4では、図4(d)のようなセクタ中心位置情報が欠落している欠落位置データが抽出される。
【0035】
次に、ステップS5A〜S8Dにて、欠落セクタ情報生成部16は、欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、前述した式(1)による重み付け演算を行うことで、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)を生成する。ここでは、図5を用いて欠落セクタ情報生成部16の処理を説明する。図5には、基地局データにおいてセクタ中心位置情報が欠落しているセクタYが示されており、このセクタYのセクタ識別子を含んだ位置データがステップS4で欠落位置データとして抽出されたとする。また、ここでは、セクタYのセクタ識別子を含んだ位置データ(位置登録情報)における位置情報緯度・位置情報経度の組合せとして図5の右上部に示すa〜fの6つがあるものとし、便宜上、緯度と経度は小数点以下1けた目までの数値で説明する。
【0036】
まず、特徴量小計算出部16Aは、抽出された欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類し、当該セクタ識別子のうち対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する(ステップS5A)。これにより、例えば図5の右上部に示すように、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計が算出される。なお、欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類することで得られた「処理対象となるセクタ識別子に関する情報」は、算出処理部16Dあてに転送され、後述のステップS8Dにて用いられる。また、上記のセクタ識別子ごとへの分類処理は最初の1回だけ実行すればよい。
【0037】
次に、乗算処理部16Bは、図5の下部に示すように、位置情報緯度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量小計とを乗算してその積の合計を算出することで、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を求める(ステップS6A)。また、総和処理部16Cは、特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する(ステップS7A)。図5の下部に示すように、特徴量総和「150」が求められる。なお、ステップS6A、S7Aの処理は、同時並行で実行してもよいし、ステップS7A、S6Aの順に実行してもよい。
【0038】
さらに、算出処理部16Dは、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を特徴量総和により割算することで、欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子のセクタに関するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として当該セクタ識別子に対応付ける(ステップS8A)。例えば図5の下部に示すように、欠落セクタ情報として(セクタ中心緯度,セクタ中心経度)=(34.617,139.182)が求められる。そして、算出処理部16Dは、処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断する(ステップS8D)。未処理のセクタ識別子が残っていれば、ステップS5Aへ戻り、未処理のセクタ識別子を含んだ欠落位置データについてステップS5A〜S8Aの処理を実行する。一方、未処理のセクタ識別子が残っていなければ、セクタ識別子に対応付けられたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)が基地局データ補完部17へ出力され、後述のステップS9が実行される。
【0039】
最後に、基地局データ補完部17は、欠落セクタ情報によって、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データを補完する(ステップS9)。これにより図4(e)に示すように、補完した後の基地局データでは、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が補完されることとなる。なお、本実施形態では、基地局データ内に、セクタ識別子は存在するものの当該セクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報が欠落している例を用いて説明したが、本発明は、基地局データ内にセクタ識別子とセクタ中心位置情報の両方が欠落している場合にも適用可能である。この場合は、例えば、ステップS9にて基地局データ補完部17は、欠落していたセクタ識別子とセクタ中心位置情報の両方を基地局データに追加することで、基地局データを補完すればよい。
【0040】
以上のようにして、欠落位置データを抽出し、抽出された欠落位置データについての特徴量および位置情報に基づいて、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完することで、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データを適切に補完することができる。
【0041】
[特徴量と端末数推計について]
前述したように、「特徴量」とは、携帯端末によって生成された位置データについての推定生成密度に対応する情報であり、ここでの「推定生成密度」とは、当該位置データを生成した携帯端末が、当該位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)周辺で単位時間あたりに生成する位置データの数の推定値を意味する。そのため、ある領域(例えばセクタ)に在圏する携帯端末によって所定の観測期間内に生成された位置データについての特徴量の和は、当該領域に在圏する携帯端末の端末数に相関する。以下、この点について説明する。
【0042】
まず、位置データの生成時間間隔が変動することによる影響を校正しつつ端末数を推計する処理の考え方および計算方法を説明する。図15に示すモデルのように、ある観測期間(長さT)の間に、n個の端末a1,a2,…,anがセクタSを通過し、各端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間がti(0<ti≦T)であったとする。このとき、セクタSに存在する端末数m(実際にはセクタSに存在する端末数mの観測期間内における平均値)は、以下の式(2)で表わされる。
【数1】
即ち、各端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiの総和を観測期間の長さTで除した結果を、端末数mとして推計する。ただし、端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiの真の値は観測不能であるが、各端末aiは信号(例えば位置登録信号)を発信し、それらの信号は観測可能である。
【0043】
端末aiが観測期間内にセクタSで発信した信号を、時刻順に
【数2】
(xiは、端末aiが観測期間内にセクタSで発信した信号の総数)とすると、端末数の推計とは、観測された信号qij(jは1以上xi以下の整数)からmの値を推計することに他ならない。
【0044】
さて、図16に基づき端末数推計の計算方法を説明する。端末aiから信号qijが送信される密度(即ち、単位時間あたりの信号数)をpiとする。このとき、信号が送信される確率がセクタに対して独立であれば、端末aiが観測期間内にセクタSで発信した信号の総数xiの期待値E(xi)は、E(xi)=ti×piであるため、端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiの期待値E(ti)について以下の式(3)が成立する。
E(ti)=xi/pi (3)
ここで、信号qijの送信時刻をuijとしたとき、信号qijの密度pijは、以下の式(4)で与えられる。
pij=2/(ui(j+1)−ui(j−1)) (4)
ここで、信号qijを対象の位置データに係る信号とすると、信号qi(j-1)は直前の位置データに係る信号、信号qi(j+1)は直後の位置データに係る信号に相当する。本実施形態では、直前の位置データに係る信号qi(j-1)の送信時刻ui(j−1)と直後の位置データに係る信号qi(j+1)の送信時刻ui(j+1)の差、即ち、上記式(4)の(ui(j+1)−ui(j−1))を、対象の位置データについての特徴量wijとする。そのため、上記式(4)は、以下となる。即ち、特徴量wijは、密度pijの逆数に対応づけて算出することができる。
pij=2/(ui(j+1)−ui(j−1))=2/wij (5)
このとき密度piは、
【数3】
で与えられるため、端末数mの推計値E(m)は、以下の式(7)に示すように、特徴量wijの総和を2Tで割算することで求めることができる。
【数4】
【0045】
なお、図16の例に示すように、観測期間内であり且つ端末aiがセクタSに滞在していた期間内に、端末aiは信号qi1、qi2、qi3を送信し、信号qi1の直前に信号qi0を、信号qi3の直後に信号qi4を送信したものとし、信号qi0、qi1、qi2、qi3、qi4の送信時刻をそれぞれui0、ui1、ui2、ui3、ui4とすると、上記の考え方は、端末aiの観測期間内のセクタSの滞在時間tiを、(ui0とui1の中点)から(ui3とui4の中点)までの期間と推計することに相当する。なお、端末aiは、観測期間内ではないものの、セクタSへの滞在中に信号qi4を送信している。但し、滞在時間tiの推計量の不偏性を維持するために、ここでは一例として、滞在時間tiの終了時刻を観測期間の終了時刻と同じとして推計することは行わない処理を説明する。
【0046】
さて、上記式(7)に示すように、端末数mの推計値E(m)は、特徴量wijの和を2Tで割算することで求めることができるため、ある領域(例えばセクタ)に在圏する携帯端末によって所定の観測期間内に生成された位置データについての特徴量の和は、当該領域に在圏する携帯端末の端末数に相関する。
【0047】
これを利用することで、図5の例のように、a〜fの位置情報緯度・位置情報経度ごとに特徴量小計を求め、得られた位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計(即ち、位置情報緯度・位置情報経度ごとの端末数に相関する値)を重みとして、以下の式(8)による重み付け演算を行うことで、位置データの生成時間間隔が変動することによる影響を校正しつつ、セクタ中心緯度・経度を精度良く求めることができる。
Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)/特徴量総和 (8)
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態では、位置データの種別に応じて抽出された位置データに基づき算出されたセクタ情報と、上記抽出を行う前の位置データに基づき算出されたセクタ情報と、に基づいて、基地局データを補完する処理を説明する。なお、上記の「位置データの種別」として、以下では、位置データの生成要因を利用した例を示す。位置データの種別に応じた抽出方法として、例えば、位置登録情報に含まれる前述した生成要因情報を参照することで、位置データのうちLA跨り位置登録情報のみを除外する(即ち、LA跨り位置登録情報以外の位置データを抽出する)方法、位置データのうち周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報のみを抽出する方法、などを実行できる。また、「位置データの種別」としては、上記の生成要因以外に、例えば位置データの生成時刻なども適用可能である。
【0049】
以下では、位置データのうちLA跨り位置登録情報のみを除外する方法を用いて、対象とすべき位置データのうちLA跨り位置登録情報を除外した位置データに基づき算出されたセクタ情報と、LA跨り位置登録情報を除外しない位置データに基づき算出されたセクタ情報とに基づいて、基地局データを補完する例を説明する。
【0050】
第2実施形態の情報処理装置の全体構成は、第1実施形態で述べた図1の構成と同様であるため、説明を省略する。ただし、欠落セクタ情報生成部16の内部構成が第1実施形態とは異なるため、図6を用いて欠落セクタ情報生成部16の構成を説明する。
【0051】
図6に示すように、欠落セクタ情報生成部16は、第1実施形態と同様の機能を持つ特徴量小計算出部16A、乗算処理部16B、総和処理部16Cおよび算出処理部16Dを備え、さらに、LA除外特徴量小計算出部16E、LA除外乗算処理部16F、LA除外総和処理部16G、LA除外算出処理部16Hおよび按分点算出処理部16Iが追加された構成とされている。このうちLA除外特徴量小計算出部16E、LA除外乗算処理部16F、LA除外総和処理部16GおよびLA除外算出処理部16Hは、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データにおけるセクタ識別子ごとに、第1実施形態と同様の重み付け演算を行うことで、特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求める。以下、これらの追加された各構成部の機能を説明する。
【0052】
このうち、LA除外特徴量小計算出部16Eは、位置登録情報に含まれる生成要因情報を参照することで、図1の情報抽出部15Bから出力された欠落位置データのうちLA跨り位置登録情報を除外し、除外した後の欠落位置データにおけるセクタ識別子のうち、対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する。
【0053】
LA除外乗算処理部16Fは、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報緯度とを乗算してその積の合計を算出するとともに、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報経度とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データを対象として、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を算出する。LA除外総和処理部16Gは、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する。LA除外算出処理部16Hは、LA除外乗算処理部16Fにより算出されたΣ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を、LA除外総和処理部16Gにより算出された特徴量総和により割算することで、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子に対応付ける。なお、上記のような処理をセクタ識別子ごとに実行するために、例えば、LA除外特徴量小計算出部16Eが、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類して、処理対象となるセクタ識別子に関する情報をLA除外算出処理部16Hあてに転送し、LA除外算出処理部16Hが、当該処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断してもよい。
【0054】
上記のようにしてLA除外算出処理部16Hにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報、および、第1実施形態と同様の手法で算出処理部16Dにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報は、按分点算出処理部16Iへ出力される。なお、変形例として、欠落セクタ情報生成部16において、対象とするセクタ識別子について、後述する按分点算出処理部16Iによる按分点算出までの処理を実行し、以後、各セクタ識別子について上記のように按分点算出までの処理を繰り返す処理形態を採用してもよい。
【0055】
按分点算出処理部16Iは、セクタ識別子をキーにして、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報とLA除外算出処理部16Hから得られた緯度・経度の重心の情報とを関連付け、セクタ識別子ごとに、算出処理部16Dにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外しない欠落位置データに関する緯度・経度の重心)と、LA除外算出処理部16Hにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する緯度・経度の重心)との間の所定の按分点(例えば中間値)を算出し、得られたセクタ識別子ごとの按分点情報を、当該セクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として図1の基地局データ補完部17へ出力する。なお、ある特定のセクタ識別子を含む位置データが全てLA跨り位置登録情報であるケースが起こりうる。このケースでは、上記特定のセクタ識別子は、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報に係るセクタ識別子の中に存在するものの、LA除外算出処理部16Hから得られた緯度・経度の重心の情報に係るセクタ識別子の中には存在しないことになる。このような場合、上記の按分点算出ができないため、按分点算出処理部16Iは、例えば、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報を、当該合致しないセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報とすればよい。
【0056】
次に、図7のフロー図に沿って、第2実施形態の情報処理装置10により実行される処理(本発明の情報処理方法に係る処理)を説明する。図7においてステップS1〜S4およびS5A〜S8A、S8Dの処理は、第1実施形態の処理と同様なので、ここでは説明を省略する。図7に示すように、ステップS5B〜S8Bの処理は、一例として、ステップS5A〜S8Aの処理と同時並行で実行される。ただし、同時並行で実行することは必須ではなく、ステップS5B〜S8Bの処理は、ステップS5A〜S8Aの処理の後に実行してもよいし、ステップS5A〜S8Aの処理の前に実行してもよく、このように順次実行する場合は、未処理のセクタ識別子が残っているか否かの判断処理(ステップS8D、S8E)は、ステップS5A〜S8Aの処理およびステップS5B〜S8Bの処理の後に実行すればよい。
【0057】
ステップS5Bでは、LA除外特徴量小計算出部16Eが、位置登録情報に含まれる生成要因情報を参照することで、図1の情報抽出部15Bから出力された欠落位置データのうちLA跨り位置登録情報を除外し、除外した後の欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類し、当該セクタ識別子のうち対象とするセクタ識別子を含んだ欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出する。なお、欠落位置データをセクタ識別子ごとに分類することで得られた「処理対象となるセクタ識別子に関する情報」は、LA除外算出処理部16Hあてに転送され、後述のステップS8Eにて用いられる。また、上記のセクタ識別子ごとへの分類処理は最初の1回だけ実行すればよい。
【0058】
次のステップS6Bでは、LA除外乗算処理部16Fが、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報緯度とを乗算してその積の合計を算出するとともに、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計と位置情報経度とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データを対象として、Σ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を算出する。次のステップS7Bでは、LA除外総和処理部16Gが、LA除外特徴量小計算出部16Eにより算出された特徴量小計の総和(特徴量総和)を算出する。そして、ステップS8Bでは、LA除外算出処理部16Hが、LA除外乗算処理部16Fにより算出されたΣ(位置情報緯度×特徴量小計,位置情報経度×特徴量小計)を、LA除外総和処理部16Gにより算出された特徴量総和により割算することで、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する特徴量を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、対象とするセクタ識別子に対応付ける。そして、ステップS8EでLA除外算出処理部16Hは、処理対象となるセクタ識別子に関する情報に基づいて、未処理のセクタ識別子が残っているか否かを判断する。未処理のセクタ識別子が残っていれば、ステップS5Bへ戻り、未処理のセクタ識別子を含んだ欠落位置データについてステップS5B〜S8Bの処理を実行する。一方、未処理のセクタ識別子が残っていなければ、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報が基地局データ補完部17へ出力され、後述のステップS8Fが実行される。
【0059】
上記のようにしてLA除外算出処理部16Hにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報、および、第1実施形態と同様の手法で算出処理部16Dにより得られた、セクタ識別子ごとに対応付けられた緯度・経度の重心の情報は、按分点算出処理部16Iへ出力され、ステップS8Fにおいて按分点算出処理部16Iは、セクタ識別子をキーにして、算出処理部16Dから得られた緯度・経度の重心の情報とLA除外算出処理部16Hから得られた緯度・経度の重心の情報とを関連付け、セクタ識別子ごとに、算出処理部16Dにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外しない欠落位置データに関する緯度・経度の重心)と、LA除外算出処理部16Hにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する緯度・経度の重心)との間の所定の按分点(例えば中間値)を算出し、得られたセクタ識別子ごとの按分点情報を、当該セクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として図1の基地局データ補完部17へ出力する。
【0060】
そして、基地局データ補完部17は、按分点算出処理部16Iから得られた欠落セクタ情報によって、基地局データ記憶部14に記憶されている基地局データを補完する(ステップS9)。これにより図4(e)に示すように、補完した後の基地局データでは、セクタ識別子「abcdef012」に関するセクタ中心位置情報が補完されることとなる。
【0061】
以上のように、欠落セクタ情報生成部16において、算出処理部16Dにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外しない欠落位置データに関する緯度・経度の重心)と、LA除外算出処理部16Hにより算出された緯度・経度の重心(即ち、LA跨り位置登録情報を除外した後の欠落位置データに関する緯度・経度の重心)との間の所定の按分点(ここでは例えば中間値)を算出し、得られた按分点情報を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)として生成することで、位置登録エリア境界付近では、位置登録エリア境界から少し離れた位置よりも、位置登録情報がより頻繁に生成されることに起因した不都合を抑制することができる。
【0062】
なお、第2実施形態では、位置データの種別に応じて抽出された位置データとして、LA跨り位置登録情報を除外した位置データを用いた例を示したが、これ以外に、例えば「周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報」のみを用いてもよい。つまり、対象とすべき位置データのうち「周期的位置登録に起因して生成された位置登録情報」のみを抽出し、抽出後の位置データに基づき算出されたセクタ情報と、抽出する前の位置データに基づき算出されたセクタ情報とに基づいて、基地局データを補完してもよく、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(第1、第2実施形態の変形例1)
なお、第1、第2実施形態の特徴量小計算出部16Aおよび第2実施形態のLA除外特徴量小計算出部16Eは、欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類して、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量の和(特徴量小計)を算出したが、このように位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計を算出することは必須ではない。
【0064】
例えば、第1実施形態の欠落セクタ情報生成部16において、特徴量小計算出部16Aを設けないで、乗算処理部16Bが、欠落位置データそれぞれについて、位置情報緯度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出すればよい。また、総和処理部16Cは、欠落位置データそれぞれの特徴量の総和を算出し、算出処理部16Dは、乗算処理部16Bにより得られたΣ(位置情報緯度×特徴量,位置情報経度×特徴量)を、総和処理部16Cにより得られた特徴量の総和により割算すればよい。
【0065】
こうして得られた欠落位置データに関する緯度・経度の重心は、第1実施形態にて得られる欠落位置データに関する緯度・経度の重心に等しくなるため、上記の変形例1により得られた緯度・経度の重心を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)とすることができる。また、上記の変形例1は、第2実施形態の欠落セクタ情報生成部16についても適用することができる。
【0066】
(第1、第2実施形態の変形例2)
第1、第2実施形態では、携帯端末の位置データの一例として「位置登録情報」のみを使用して基地局データを補完する処理を説明したが、位置データとしては、位置登録情報だけに限らず、端末識別子、セクタ識別子および位置情報を含んだ位置データであれば、使用することができる。例えば、前述したセクタ識別子付きのGPS位置情報を使用してもよい。
【0067】
仮に、位置登録情報だけに限定しない位置データを用いて第1実施形態の処理を実行する場合、情報処理装置の構成(図1、図2)および処理のフロー(図3)は上記第1実施形態とほぼ同様である。ただし、位置登録情報のみを使用した場合とは違い、位置情報緯度・位置情報経度の組合せの数が極めて多数になるため、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計を算出することは現実的でない。そのため、この場合は、上述した変形例1のように、欠落セクタ情報生成部16において、特徴量小計算出部16Aを設けないで、乗算処理部16Bが、欠落位置データそれぞれについて、位置情報緯度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出する実施態様となる。
【0068】
また、位置登録情報だけに限定しない位置データを用いて第2実施形態の処理を実行することもできる。この場合、位置登録情報が位置データに含まれることが前提となる。また、上述したように、位置情報緯度・位置情報経度ごとの特徴量小計を算出することは現実的でないため、上述した変形例1のように、欠落セクタ情報生成部16において、特徴量小計算出部16AおよびLA除外特徴量小計算出部16Eを設けないで、乗算処理部16BおよびLA除外乗算処理部16Fが、欠落位置データそれぞれについて、位置情報緯度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と特徴量とを乗算してその積の合計を算出する実施態様となる。
【0069】
(第1、第2実施形態の変形例3)
第1、第2実施形態では、位置データについての「特徴量」を基礎として、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完する例を説明した。しかし、第1、第2実施形態において、位置データについての「特徴量」に代わり、「位置データの数」を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完してもよい。
【0070】
ここでは一例として、第1実施形態において位置データ(ここでは位置登録情報)の数を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を以下の式(9)に基づいて生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完する変形例を説明する。
Σ(位置情報緯度×位置データの数,位置情報経度×位置データの数)/位置データの総数 (9)
【0071】
例えば、図14に示す情報処理装置10Tによって、位置データ(位置登録情報)の数を基礎とした一連の基地局データ補完処理を行うことができる。第1実施形態の情報処理装置(図1、図2)との比較で説明すると、図14に示すように、情報処理装置10Tは、図1の特徴量算出部13を備えておらず、特徴量を算出しない。情報結合部15Aは、位置取得時刻が位置データ抽出期間内にある位置データと基地局データとを、セクタ識別子をキーにして照合し、照合された基地局データの中から、位置データにおけるセクタ識別子に対応するセクタ中心位置情報を取得し、該セクタ中心位置情報を位置データに結合する。情報抽出部15Bは、結合後の位置データのうちセクタ中心位置情報が欠落しているデータ(即ち、欠落位置データ)を抽出し、欠落セクタ情報生成部16へ出力する。
【0072】
欠落セクタ情報生成部16では、信号数小計算出部16Sが、上記抽出された欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類し、位置情報緯度・位置情報経度ごとの「位置データの数」をカウントする。乗算処理部16Bは、位置情報緯度と位置データの数とを乗算してその積の合計を算出するとともに、位置情報経度と位置データの数とを乗算してその積の合計を算出する。即ち、Σ(位置情報緯度×位置データの数,位置情報経度×位置データの数)を算出する。総和処理部16Cは、位置データの総数を算出する。算出処理部16Dは、Σ(位置情報緯度×位置データの数,位置情報経度×位置データの数)を位置データの総数により割算することで、欠落位置データに関する「位置データの数」を重みとした緯度・経度の重心を求め、得られた緯度・経度の重心を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)とする。また、欠落セクタ情報生成部16において、信号数小計算出部16Sは、上記のように欠落位置データを位置情報緯度・位置情報経度ごとに分類する処理を行わずに、上記抽出された欠落位置データに対してセクタ毎にその重心を求め、得られた重心の緯度・経度を、欠落していたセクタ中心位置情報(欠落セクタ情報)としてもよい。こうして得られた欠落セクタ情報は、基地局データ補完部17へ出力され、基地局データ補完部17は、欠落セクタ情報によって基地局データを補完する。
【0073】
以上のようにして、位置データについての「特徴量」に代わり、「位置データの数」を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完することができる。
【0074】
ただし、前述した第1、第2実施形態のように、「位置データの数」ではなく、位置データについての「特徴量」を基礎として、上記欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、生成されたセクタ中心位置情報によって基地局データを補完する場合は、位置データの生成時刻(上記の位置取得時刻に相当)の間隔が変動することによる影響を校正しつつ、実際のネットワーク実装に合致するよう基地局データをより適切に補完することができる、という利点がある。一方、変形例3のように「位置データの数」を基礎として、欠落していたセクタ中心位置情報を生成し、当該セクタ中心位置情報によって基地局データを補完する場合は、特徴量の算出処理が不要となるため、全体の処理量を削減できるという利点がある。
【0075】
[第3実施形態]
第3実施形態では、補完された基地局データを用いて人口を推計するための構成を備えた情報処理装置、および該情報処理装置により実行される処理について説明する。
【0076】
図8には、第3実施形態における情報処理装置10Sの構成を示す。図8に示すように、情報処理装置10Sは、基地局データの補完を行う補完部10Xに加え、補完された基地局データに基づいて後述するセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計部18と、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出部19と、算出された面積按分比を特徴量付き位置データに結合する面積按分比結合部20と、位置取得時刻が人口推計の対象期間(以下「対象期間」という)内にある位置データについての特徴量、面積按分比および対象期間の長さに基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの端末数を推計する端末数推計部21と、端末数を人口に変換するための拡大係数を算出する拡大係数算出部22と、拡大係数を用いて対象期間の人口推計単位ごとの端末数から人口を推計する人口推計部23と、推計された人口に対し、予め定められた基準に基づき秘匿処理を行う秘匿処理部24と、を備える。
【0077】
特許請求の範囲に記載の「人口導出部」に相当する人口導出部23Sは、端末数推計部21、拡大係数算出部22および人口推計部23を含んで構成される。補完部10Xは、前述した第1、第2実施形態と同様の構成でも、前述した変形例1〜3の構成でも適用することができる。即ち、基地局データの補完に関する構成および処理内容は特定の形態に限定されるものではない。
【0078】
人口推計の「対象期間」と、第1、第2実施形態で述べた基地局データ補完に係る処理のための「位置データ抽出期間」とは、同一の期間であってもよいし、異なる期間であってもよく、互いに独立して設定することができる。なお、端末数推計部21が上記「対象期間」における端末数を推計するためには、位置取得時刻が「対象期間」内にある位置データについての特徴量が必要となる。そのため、補完部10X内の特徴量算出部13は、位置データのうち、少なくとも位置取得時刻が「対象期間」内にある位置データについて特徴量を算出し、特徴量付き位置データを面積按分比結合部20に出力する。ここでは、ある位置データについての「特徴量」は、第1実施形態で述べたように「直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差」とする。このとき、直前の位置データの位置取得時刻情報および直後の位置データの位置取得時刻情報が必要となるので、特徴量算出部13は、少なくとも対象期間内の位置データについて特徴量を算出するために、実際には、対象期間を前後に数時間拡張した期間内の位置データを位置データ記憶部12から読み出して、第1実施形態のような特徴量算出処理を行う。
【0079】
以下、図9のフロー図に沿って、図8の情報処理装置10Sにより実行される処理(本発明の情報処理方法に係る処理)を説明する。
【0080】
補完部10Xは、前述した第1、第2実施形態、変形例1〜3の何れかの処理により基地局データの補完処理を行い、基地局データを補完する(図9のステップS10)。
【0081】
次に、セクタ勢力範囲推計部18が、補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計する(ステップS20)。例えば、セクタ勢力範囲推計部18は、補完された基地局データからセクタごとのセクタ情報(セクタ中心緯度、セクタ中心経度)を抽出し、セクタごとのセクタ情報を用いてボロノイ分割を行い、セクタ勢力範囲としてボロノイ領域を推計する。図10には、セクタごとのセクタ中心X(即ち、セクタ中心緯度およびセクタ中心経度に相当するセクタ中心X)を示しており、例えば、対象とするセクタのセクタ中心Xと隣接するセクタ各々のセクタ中心Xとの間に垂直二等分線を引き、これら複数の垂直二等分線によって上記対象とするセクタについてのセクタ勢力範囲(ボロノイ領域)を推計する。
【0082】
次に、面積按分比算出部19が、推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する(ステップS30)。ここでは人口推計単位として、例えば、図11(b)に示すいわゆるメッシュ領域を想定し、セクタ勢力範囲として図11(a)に示すボロノイ領域A〜Cを想定する。面積按分比算出部19は、図11(c)に示すようにボロノイ領域とメッシュ領域とを仮想的に重ね合わせ、図12に示すように各ボロノイ領域について地理的に重なるメッシュ領域ごとの面積按分比を算出する。例えばボロノイ領域Aについては、地理的に重なるメッシュ領域はメッシュ領域1〜4である。ボロノイ領域Aの面積が200m2であり、メッシュ領域1と重なる部分の面積が10m2、メッシュ領域2と重なる部分の面積が50m2、メッシュ領域3と重なる部分の面積が100m2、メッシュ領域4と重なる部分の面積が40m2とすると、面積按分比算出部19は、ボロノイ領域Aについて、メッシュ領域1と重なる部分:5%、メッシュ領域2と重なる部分:25%、メッシュ領域3と重なる部分:50%、メッシュ領域4と重なる部分:20%という面積按分比を算出する。
【0083】
そして、面積按分比結合部20が、算出された面積按分比を、図8の特徴量算出部13から出力された特徴量付き位置データに結合する(ステップS40)。これにより、図13に示すように、算出された面積按分比が特徴量付き位置データに結合される。
【0084】
次に、端末数推計部21は、図13に示す面積按分比および特徴量が付加された位置データを受け取り、それらの位置データのうち位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、面積按分比および対象期間の長さに基づいて、対象期間における人口推計単位ごとの端末数を推計する(ステップS50)。例えば端末数推計部21は、位置取得時刻が対象期間内の位置データそれぞれについて、当該位置データに付加された面積按分比および特徴量を読み出して、メッシュ領域ごとに(面積按分比×特徴量)を算出し、対象期間内の位置データ全てから得られた(面積按分比×特徴量)をメッシュ領域ごとに集計する。これにより、対象期間におけるメッシュ領域ごとの特徴量の総和が得られる。そこで、端末数推計部21は、第1実施形態にて図15、図16を用いて説明したように、対象期間におけるメッシュ領域ごとの特徴量の総和を(対象期間長×2)で割算することにより、対象期間におけるメッシュ領域(人口推計単位)ごとの端末数を推計する。
【0085】
なお、セクタと該セクタのセクタ勢力範囲(ボロノイ領域)では、それらの領域範囲は異なるが、端末数推計や人口推計を簡易に行うために、各セクタのセクタ勢力範囲(ボロノイ領域)を当該セクタの領域範囲として扱っている。
【0086】
次に、拡大係数算出部22は、端末数を人口に変換するための拡大係数を算出する(ステップS60)。拡大係数は、一例として「在圏率と携帯端末の普及率との積(即ち、人口に対する在圏数の比率)の逆数」を用いることができる。ここで「在圏率」とは、携帯端末の契約台数に対する在圏数の比率を意味し、「普及率」とは人口に対する携帯端末の契約台数の比率を意味する。拡大係数の算出方法として、特徴量を用いた拡大係数の算出方法について後述する。
【0087】
なお、拡大係数は毎回算出する必要はなく、拡大係数算出部22は、算出した拡大係数を記憶しておき、次回以降は当該記憶した拡大係数を人口推計部23に提供してもよい。また、予め定められた拡大係数を使用してもよく、この場合、図8の人口導出部23Sにおいて、人口推計部23が当該予め定められた拡大係数を記憶しておけば、拡大係数算出部22は不要となる。
【0088】
次に、人口推計部23は、対象期間の人口推計単位ごとの端末数に拡大係数を乗算することで、対象期間の人口推計単位ごとの人口を推計する(ステップS70)。
【0089】
なお、上記例は、全体で共通の拡大係数を用いる例であるが、後述する所定の単位(以下「拡大係数算出単位」という。例えば、ユーザ属性(性別・年齢・住所など)、場所、時間帯など)ごとの拡大係数を用いてもよい。拡大係数算出部22が、例えばユーザ属性ごとの拡大係数を算出するには、端末識別子をキーにしてユーザ属性を取得し位置データに関連付けておく必要がある。これは、例えば、位置データ取得部11が、取得した位置データの端末識別子をキーにして、図示しないユーザ属性記憶部からユーザ属性を取得し、当該位置データにユーザ属性を付加することで実現できる。この場合、拡大係数は、以下のように特徴量および対象期間長に基づいて推計された端末数を用いて算出してもよい。上述した手法により位置データから特徴量を求め、特徴量および対象期間長に基づいて、拡大係数算出単位(ユーザ属性)ごとの端末数を集計することでユーザ数ピラミッドデータを得るともに、統計データ(例えば住民基本台帳など)として予め求められた同じ拡大係数算出単位における人口ピラミッドデータを取得する。そして、ユーザ数ピラミッドデータ及び人口ピラミッドデータにおいて拡大係数算出単位(ユーザ属性)ごとの位置データの取得率(即ち、在圏数/人口)を算出する。ここで得られた「位置データの取得率(即ち、在圏数/人口)」が、前述した「在圏率と端末の普及率との積」に相当する。このようにして得られたユーザ属性ごとの「位置データの取得率」の逆数を、拡大係数算出単位(ユーザ属性)ごとの拡大係数として得ることができる。なお、上記のように拡大係数を算出する拡大係数算出単位としては、一例として、住所の都道府県ごと、5才又は10才刻み年齢層ごと、男女ごと、時間帯として1時間ごとなどを採用してもよいし、これらの2つ以上を組み合わせたものを採用してもよい。例えば、拡大係数算出単位を「東京都在住の20才台の男性」とした場合、日本全国における、東京都在住の(即ち、ユーザ属性における住所情報が東京都である)20才台の男性に該当する位置データを抽出して端末数を集計することでユーザ数ピラミッドデータを得るとともに、統計データから東京都在住の20才台の男性に関する人口ピラミッドデータを取得する。なお、上記ユーザ数ピラミッドデータを得る際に、「東京都在住」という条件については、東京都に在圏するユーザの位置データだけを抽出するのではなく、ユーザ属性における住所情報が東京都である位置データを抽出する。そして、ユーザ数ピラミッドデータ及び人口ピラミッドデータから拡大係数算出単位(ここでは東京都在住の20才台の男性)の位置データの取得率(即ち、在圏数/人口)を算出し、得られた「位置データの取得率」の逆数を拡大係数として導出することができる。なお、本願では、拡大係数算出単位と人口推計単位とが等しいものとして説明しているが、これはあくまでも一例であり、これに限られるものではない。
【0090】
また、上記例は、図8の人口導出部23Sにおいて、端末数を一旦推計し、端末数と拡大係数から人口を推計する例であるが、端末数を推計することは必須ではなく、以下のように端末数推計を行わずに人口を推計してもよい。例えば、人口推計部23は、特徴量に拡大係数を乗算し当該乗算結果の集計値を用いて人口を求めてもよい。また、人口推計部23は、人口推計を行う所定の単位(例えば、ユーザ属性、場所、時間帯など)ごとに特徴量を集計し、当該特徴量の集計値に当該所定の単位に応じた拡大係数を乗算し、当該乗算結果を用いて人口を求めてもよい。この場合、図8の人口導出部23Sにおいて、端末数推計部21は不要となる。
【0091】
図9へ戻り、最後のステップS80にて、秘匿処理部24は、人口推計部23から推計値(推計人口)を受け取ると、例えば図17に示すいわゆるセル秘匿相当の秘匿処理を行う。即ち、秘匿処理部24は、推計の基礎となったエリア(セクタ)ごとの位置データが何台の端末から取得されたかを示す取得元端末数が、秘匿処理が必要と判断するための予め定められた基準値(一例として10)未満であるか否かを判定する(図17のステップS81)。なお、取得元端末数は、同一端末についての重複を除いたユニークな端末数を示す。ここでの判定を行うには、エリア(セクタ)ごとの位置データの取得元端末数が必要となるが、一例としては、端末数推計部21が、位置データに対応付けられた特徴量を集計する際に、重複を省きながら該位置データ中の端末識別子の数をカウントし、得られた端末識別子のカウント数情報を人口推計部23経由で秘匿処理部24へ送り、秘匿処理部24が端末識別子のカウント数をエリア(セクタ)ごとの位置データの取得元端末数として用いてもよい。
【0092】
ステップS81にて、上記取得元端末数が基準値未満ならば、秘匿処理部24は当該エリア(セクタ)に関する推計値をゼロとすることで、当該推計値を秘匿する(ステップS82)。なお、ここでの秘匿方法は、推計値をゼロとすることに限定されるものではなく、推計値を所定の文字や記号(例えば「X」など)で表象する方法など他の方法を採用してもよい。
【0093】
一方、ステップS81にて、上記取得元端末数が基準値以上ならば、秘匿処理部24は当該エリア(セクタ)に関する推計値に対し、以下のような、推計値出力にて用いられる階級幅の確率的丸めを行う(ステップS83)。即ち、あるエリア(セクタ)に関する推計値をx、階級幅をkとすると、秘匿処理部24は、kn≦x<k(n+1)(nは整数)の場合に、当該推計値xを、確率(x−kn)/kでk(n+1)に、確率(k(n+1)−x)/kでknに丸める。例えば、推計値xが23、階級幅kが10の場合、k×2≦x<k(2+1)なので、n=2となり、推計値「23」は、確率0.3(30%の確率)で「30」に、確率0.7(70%の確率)で「20」に丸められる。
【0094】
なお、秘匿処理部24による秘匿処理は、図17に示す処理には限定されず、別の処理を採用してもよい。例えば、図17のステップS81では、推計の基礎となったエリア(セクタ)ごとの「位置データの取得元端末数」に代わり、推計の基礎となったエリア(セクタ)ごとの「位置データの個数」が基準値未満か否かを判定してもよいし、「出力される推計値(推計人口)」が基準値未満か否かを判定してもよい。また、図17のステップS81で否定判定された場合には、ステップS83の処理を省略してもよい。
【0095】
以上のような第3実施形態により、補完された基地局データを用いて人口推計単位(例えばメッシュ領域)ごとの人口を推計することができる。また、上述した秘匿処理部24による秘匿処理により、推計結果からの個人特定を防止して推計結果の有用性を高めることができ、また、秘匿した値が他の値から推測できてしまうといった不都合を未然に防止することができる。
【0096】
なお、ある程度の広さを持った任意図形の人口推計単位(例えば、市区町村単位)で人口推計値を求める場合には、上述した手法で補完した後の基地局データに含まれるセクタ中心位置情報に基づくセクタ中心位置をそのセクタの代表点と見なし、ある人口推計単位の中にセクタ中心位置が位置する全てのセクタについての人口推計値を合計することで、当該人口推計単位の人口推計値を求めてもよい。上記の手法は、上記のような人口推計単位で端末数を推計する場合にも同様に適用できる。
【0097】
また、上記第3実施形態では、特徴量算出部13が、ある位置データ(対象位置データ)について特徴量として、「直前の位置データの位置取得時刻と直後の位置データの位置取得時刻との時間差」を算出する例を示した。これを式で表すと、特徴量は、以下の式(10)で表すことができる。なお、以下の式(10)は、前述した式(4)を変形しただけであり、式(4)と等価である(即ち、式(4)の考え方を変更したものではない)。
wij=ui(j+1)−ui(j−1) (10)
【0098】
以下では、特徴量算出部13において算出される特徴量の算出方法に関する別の例を示すものである。ここでは、特徴量算出部13は、以下のようにして直前の位置データの信号種別および直後の位置データの信号種別を考慮して対象位置データについての特徴量を算出する。具体的に、特徴量算出部13は、直後の位置データの位置取得時刻ui(j+1)と対象位置データの位置取得時刻uijとの時間差に対し、直後の位置データの信号種別に対応する補正係数αを乗算した値を算出するとともに、直前の位置データの位置取得時刻ui(j−1)と対象位置データの位置取得時刻uijとの時間差に対し、直前の位置データの信号種別に対応する補正係数βを乗算した値を算出する。そして、特徴量算出部13は、算出したこれらの値を合計した値を対象位置データについての特徴量wijとしてもよい。即ち、以下の式(11)により、対象位置データについての特徴量wijを求めてもよい。
wij=α(ui(j+1)−uij)+β(uij−ui(j−1)) (11)
なお、直後の位置データの信号種別に対応する補正係数αとしては、直後の位置データの信号種別ごとに予め定められた値を用いてもよい。但し、補正係数αは0以上2以下の値となっている。同様に、直前の位置データの信号種別に対応する補正係数βとしては、直前の位置データの信号種別ごとに予め定められた値を用いてもよい。但し、補正係数βは0以上2以下の値となっている。なお、ここで示した補正係数α,βの値は一例であり、この値に限定されるものではない。
【0099】
また、上記例のように、対象位置データについての特徴量を算出する場合に、直前の位置データの信号種別および直後の位置データの信号種別を考慮する以外に、対象位置データの信号種別を考慮してもよいし、対象位置データの信号種別および直前の位置データの信号種別を考慮してもよいし、対象位置データの信号種別および直後の位置データの信号種別を考慮してもよい。さらに、対象位置データ、直前の位置データおよび直後の位置データの信号種別すべてを考慮してもよい。
【0100】
このように、特徴量算出部13は、対象位置データについての特徴量を算出する場合に、対象位置データに対し直前・直後の位置データについての信号種別に応じて時間差を補正し、補正した時間差を用いて特徴量を算出することで、位置データの信号種別に基づいて特徴量をより精度よく算出することができる。
【0101】
ここで、上記の式(11)を用いて特徴量を算出する場合の一例として、対象位置データの信号種別に基づいて特徴量を算出する場合について説明する。周期的に行われる測位処理に基づく位置データのように端末の位置と位置データの生成契機とが無関係である位置データの場合は、現在のセクタに滞在していた時間の期待値は、当該位置データの生成の前後で同じと考えられる。一方、位置登録エリア境界を跨いだときに生成される位置データの場合、少なくとも当該位置データが生成される前は、端末は現在のセクタに滞在していなかったと判断できる。そのため、当該位置データが生成される前に端末が現在のセクタに滞在していた時間を0と考え、対象位置データの信号種別(生成要因)が「位置登録エリア境界跨り」であれば、上記式(11)における補正係数β(即ち、直前の位置データとの時間差に関する補正係数β)を0に設定することができる。これにより、より実態に即した特徴量を算出できる。
【符号の説明】
【0102】
10、10S、10T…情報処理装置、10X…補完部、11…位置データ取得部、12…位置データ記憶部、13…特徴量算出部、14…基地局データ記憶部、15…欠落位置データ抽出部、15A…情報結合部、15B…情報抽出部、16…欠落セクタ情報生成部、16A…特徴量小計算出部、16B…乗算処理部、16C…総和処理部、16D…算出処理部、16E…LA除外特徴量小計算出部、16F…LA除外乗算処理部、16G…LA除外総和処理部、16H…LA除外算出処理部、16I…按分点算出処理部、16S…信号数小計算出部、17…基地局データ補完部、18…セクタ勢力範囲推計部、19…面積按分比算出部、20…面積按分比結合部、21…端末数推計部、22…拡大係数算出部、23…人口推計部、23S…人口導出部、24…秘匿処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末を識別する端末識別情報と、前記携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と、前記携帯端末の位置に関する位置情報と、前記位置情報が取得された位置取得時刻情報と、を含む位置データを取得する位置データ取得部と、
セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部と、
位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと前記基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が前記基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出部と、
抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、
生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
前記位置データ取得部により取得された位置データのうち、ある第1の位置データについて、当該第1の位置データと同一の端末識別情報を含む位置データのうち、当該第1の位置データの直前の位置データである第2の位置データの位置取得時刻情報、および当該第1の位置データの直後の位置データである第3の位置データの位置取得時刻情報を取得し、前記第1の位置データの位置取得時刻情報、前記第2の位置データの位置取得時刻情報および前記第3の位置データの位置取得時刻情報のうち2つ以上に基づいて、前記第1の位置データについての特徴量を算出する特徴量算出部、
をさらに備え、
前記欠落セクタ情報生成部は、前記抽出された位置データについての特徴量、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ中心位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記欠落セクタ情報生成部は、
前記抽出された全ての位置データについての特徴量、および、当該全ての位置データ内の位置情報に基づいて、第1のセクタ中心位置情報を生成するとともに、前記抽出された位置データから位置データの種別に応じて抽出された位置データについての特徴量、および、当該抽出した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成し、
生成された第1のセクタ中心位置情報および第2のセクタ中心位置情報に基づいて、前記欠落していたセクタ中心位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記欠落セクタ情報生成部は、前記第2のセクタ中心位置情報については、
携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報に対応する位置データを除外した後の位置データについての特徴量、および、当該除外した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記位置データは、位置登録情報である、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計部と、
推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出部と、
算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出部と、
をさらに備える請求項1〜5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
導出された人口に対し、予め定められた基準に基づき秘匿処理を行う秘匿処理部、
をさらに備える請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部を備えた情報処理装置、によって実行される情報処理方法であって、
携帯端末を識別する端末識別情報と、前記携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と、前記携帯端末の位置に関する位置情報と、前記位置情報が取得された位置取得時刻情報と、を含む位置データを取得する位置データ取得ステップと、
位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと前記基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が前記基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出ステップと、
抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成ステップと、
生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完ステップと、
を備える情報処理方法。
【請求項9】
補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計ステップと、
推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出ステップと、
算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出ステップと、
をさらに備える請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項1】
携帯端末を識別する端末識別情報と、前記携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と、前記携帯端末の位置に関する位置情報と、前記位置情報が取得された位置取得時刻情報と、を含む位置データを取得する位置データ取得部と、
セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部と、
位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと前記基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が前記基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出部と、
抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成部と、
生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
前記位置データ取得部により取得された位置データのうち、ある第1の位置データについて、当該第1の位置データと同一の端末識別情報を含む位置データのうち、当該第1の位置データの直前の位置データである第2の位置データの位置取得時刻情報、および当該第1の位置データの直後の位置データである第3の位置データの位置取得時刻情報を取得し、前記第1の位置データの位置取得時刻情報、前記第2の位置データの位置取得時刻情報および前記第3の位置データの位置取得時刻情報のうち2つ以上に基づいて、前記第1の位置データについての特徴量を算出する特徴量算出部、
をさらに備え、
前記欠落セクタ情報生成部は、前記抽出された位置データについての特徴量、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ中心位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記欠落セクタ情報生成部は、
前記抽出された全ての位置データについての特徴量、および、当該全ての位置データ内の位置情報に基づいて、第1のセクタ中心位置情報を生成するとともに、前記抽出された位置データから位置データの種別に応じて抽出された位置データについての特徴量、および、当該抽出した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成し、
生成された第1のセクタ中心位置情報および第2のセクタ中心位置情報に基づいて、前記欠落していたセクタ中心位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記欠落セクタ情報生成部は、前記第2のセクタ中心位置情報については、
携帯端末が位置登録エリア境界を跨いだことに起因して生成された位置登録情報に対応する位置データを除外した後の位置データについての特徴量、および、当該除外した後の位置データ内の位置情報に基づいて、第2のセクタ中心位置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記位置データは、位置登録情報である、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計部と、
推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出部と、
算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出部と、
をさらに備える請求項1〜5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
導出された人口に対し、予め定められた基準に基づき秘匿処理を行う秘匿処理部、
をさらに備える請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
セクタごとのセクタ識別情報と当該セクタのセクタ中心位置情報とを含む1つ以上のレコードから成る基地局データを記憶した基地局データ記憶部を備えた情報処理装置、によって実行される情報処理方法であって、
携帯端末を識別する端末識別情報と、前記携帯端末が在圏するセクタを識別するセクタ識別情報と、前記携帯端末の位置に関する位置情報と、前記位置情報が取得された位置取得時刻情報と、を含む位置データを取得する位置データ取得ステップと、
位置取得時刻が所定の位置データ抽出期間内にある位置データと前記基地局データとを照合することで、位置データ内のセクタ識別情報自身またはセクタ識別情報に対応するセクタ中心位置情報が前記基地局データ内に欠落している位置データを抽出する欠落位置データ抽出ステップと、
抽出された位置データについての特徴量、又は、位置データの数、および、当該位置データ内の位置情報に基づいて、欠落していたセクタ識別情報に関する基地局データのレコードまたは欠落していたセクタ中心位置情報を生成する欠落セクタ情報生成ステップと、
生成された基地局データのレコードまたはセクタ中心位置情報によって、前記基地局データ記憶部に記憶された基地局データを補完する基地局データ補完ステップと、
を備える情報処理方法。
【請求項9】
補完された基地局データに基づいてセクタ勢力範囲を推計するセクタ勢力範囲推計ステップと、
推計により得られたセクタ勢力範囲と予め定められた人口推計単位とにおいて、各セクタ勢力範囲について地理的に重なる人口推計単位ごとの面積按分比を算出する面積按分比算出ステップと、
算出された各セクタ勢力範囲についての人口推計単位ごとの面積按分比、位置取得時刻が人口推計の対象期間内にある位置データについての特徴量、対象期間の長さ、および、端末数を人口に変換するための拡大係数に基づいて、対象期間の人口推計単位ごとの人口を導出する人口導出ステップと、
をさらに備える請求項8に記載の情報処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−106078(P2013−106078A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246585(P2011−246585)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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