説明

情報処理装置および情報処理方法

【課題】撮影した疾患部の画像と当該画像に対する診断支援情報とを効率的に把握可能とする技術を提供する。
【解決手段】診断を支援する情報処理装置において、被検体のシェーマに記録される疾患部の位置を示す位置情報を得る第一の手段と、位置情報に基づいて被検体の医用画像データから疾患部に対応する領域を抽出する第二の手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルテ(診療録)や画像診断レポートなどの作成を支援するための情報処理装置に関するものである。特に、医師が医用文書に描画するシェーマの表示技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、患者の体内を検査するための医用画像を生成する装置としては、CR(Computed Radiography)装置、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波装置(US:Ultrasound System)等が挙げられる。医師は、これらの撮像装置によって撮影された患者の医用画像を、モニタに表示し、表示された医用画像から、疾患部の状態や経時変化を観察し、画像診断を行った結果を所見情報として画像診断レポートに記入する。そして、疾患に対して確定診断を行う医師は、患者の症状や病名をカルテに記入する。このとき、画像診断レポートやカルテなどの医用文書には、医師が疾患部に対して下した判断が視覚的に容易に分かるように、疾患部に対する判断の特徴を描画したシェーマを作成し添付することができる。
【0003】
従来、シェーマは紙で出来た医用文書の上に手書きで記入されるものであった。しかし、近年、病院情報システム(HIS)や画像保管通信システム(PACS)等の医用情報システムが普及するに連れて、電子カルテを始め、医用文書の電子化が進められており、その一部としてシェーマの電子化も徐々に進展している。シェーマを電子データとして作成する際、マウスやタブレットなどの入力デバイスを用いることで、任意形状の図形を線画情報としてコンピュータに入力することができる。しかし、シェーマにおける身体構造を表すイラスト(基本シェーマと呼ぶ)の作成に当たっては、複雑な形状の人体構造を描画する必要があり、マウスやタブレットを用いて描画することは容易ではない。
【0004】
そこで、特許文献1では、あらかじめ装置内に基本シェーマのテンプレートを多数記憶しておき、医師に所望の基本シェーマを選択させる技術を開示している。この方式では、医師が基本シェーマを選択した後、基本シェーマ上に疾患部の状態を簡単な図形と説明文章で示したもの(疾患部シェーマと呼ぶ)を描画することで、容易にシェーマを作成できる。さらに、特許文献2では、基本シェーマだけではなく、疾患部シェーマを構成する疾患部の図形と説明文章、それらを繋ぐ矢印を全て分離した電子データとして保存する装置を提案している。これにより、作成済みのシェーマに対して、その中に含まれる文字や図形の変更・移動・削除などの操作を伴う編集を容易に行うことができる。
【0005】
また、非特許文献1及び非特許文献2では、それぞれSHIFT特徴量及びPCA−SHIFT特徴量が提案されている。例えば、基本シェーマにおいて、これらの特徴量を計算することで、その結果を基本シェーマに描かれた身体部位の構造情報の一つとして利用することができる。さらに、非特許文献3では、可変形状モデルによる領域分割手法が提案されている。例えば、画像やシェーマにおいて可変形状モデルを適用することで、エッジで囲まれた疾患部の領域を抽出することができる。
【0006】
ところで、臨床現場では、画像診断の目的の一つである、腫瘍等の疾患部の病状進行状態や治癒状態の経過観察を目的とした診断が行われている。経過観察においては、同一患者の過去に撮影した画像だけでなく、過去に作成されたシェーマを確認することで、過去の医師による疾患部への判断の情報を、医師の心象図と文章が結びついた情報として参照し、診断の参考にすることができる。
【0007】
従来、特許文献3や特許文献4等に示されているように、医師は、同一被検体(検査対象患者と呼ぶことにする)に関する撮影時点の相異なる複数の画像をCRT表示装置等の画像表示手段に表示することで、疾患部の経時変化を判断していた。この場合、画像表示手段には、撮影時点の相異する複数の画像が同時表示あるいは切り換え表示され、医師等の観察者はそれら複数の表示画像を比較観察して、疾患部の経時変化を判断するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−181146号公報
【特許文献2】特開2000−222503号公報
【特許文献3】特開平1−107739号公報
【特許文献4】特開平8−263625号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D. G. Lowe, "Object recognition from local scale-invariant features", Proc. of IEEE International Conference on Computer Vision(ICCV), pp.1150-1157, 1999
【非特許文献2】Y. Ke, R. Sukthankar, "PCA-SHIFT: A more distinctive representation for local image descriptors", Proc. of IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition(CVPR), pp.511-517, 2004
【非特許文献3】Kass M, Witkin A, Terzopoulos D: Snakes:active contour models. International Journal of Computer Vision 1 (4):321-331, 1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の手法では、撮影した疾患部の画像から疾患部の状態の経時変化は把握できるものの、各撮影の時点で医師が疾患部をどのように特徴付けて判断したかを表す診断情報(シェーマ)を把握することはできない。そのため、医師は、撮影した画像に対応する各種情報を別途に確認する必要が生じていた。
【0011】
本発明は上述の上記を鑑みてなされたものであり、撮影した疾患部の画像と当該画像に対する診断支援情報とを効率的に把握可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の問題点を解決するため、本発明の情報処理装置は以下の構成を備える。すなわち、診断を支援する情報処理装置において、被検体のシェーマに記録される疾患部の位置を示す位置情報を得る第一の手段と、前記位置情報に基づいて前記被検体の医用画像データから前記疾患部に対応する領域を抽出する第二の手段と、を有する。
【0013】
又は、情報処理装置において、被検体に関する異なる時点で記録された複数のシェーマと該複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に関連する医用画像データとを取得する取得手段と、前記複数のシェーマと対応する医用画像データとを関連付けて表示手段に表示する表示制御手段と、を有する。
【0014】
更に、情報処理装置において、被検体に関する異なる時点で記載された複数のシェーマと該複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に関連する医用画像データとを取得する取得手段と、前記複数のシェーマの各々に関連する医用画像データの各々について、前記疾患部領域の画像特徴量を導出する導出手段と、前記複数のシェーマの各々の時刻情報と該複数のシェーマの各々に関連する医用画像データの疾患部領域の画像特徴量とに基づいて、該疾患部領域に関する時系列の画像特徴量を生成する時系列画像特徴量生成手段と、前記複数のシェーマと前記疾患部領域に関する時系列の画像特徴量とを同期させて表示手段に表示する表示制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撮影した疾患部の画像と当該画像に対する診断支援情報とを効率的に把握可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る診療支援装置1の機器構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る診療支援装置1の処理フローチャートである。
【図3】基本シェーマ上の特徴点を表す図である。
【図4】第1実施形態に係る疾患部シェーマを表す図である。
【図5】疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像との連動表示を示す図である。
【図6】疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像との連動表示の他の例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る診療支援装置1の処理フローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る疾患部経時変化グラフを表す図である。
【図9】疾患部時系列シェーマと疾患部経時変化グラフとの連動表示を示す図である。
【図10】疾患部経時変化テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0018】
(第1実施形態)
本発明に係る情報処理装置の第1実施形態として、データ処理システムにおける診療支援装置を例に挙げて以下に説明する。
【0019】
<装置構成>
図1は、第1実施形態に係る診療支援装置の機器構成を示す図である。
【0020】
診療支援装置1は、制御部10、モニタ(表示部)104、マウス105、キーボード106を有する。制御部10は、中央処理装置(CPU)100、主メモリ101、磁気ディスク102、表示メモリ103を有する。そして、CPU100が主メモリ101に格納されたプログラムを実行することにより、医用文書データベース2や医用画像データベース3との通信、診療支援装置1の全体の制御、等の各種制御が実行される。
【0021】
また、診療支援装置1は、被検体の画像を撮影可能な医用画像データベース3と接続されている。医用画像データベース3には、例えばX線CT装置、MRI装置、US装置、X線装置、核医学装置などの医用画像撮影装置で撮影された画像データが格納されている。医用文書データベース2(検査記録データベース)には、電子カルテ、画像診断レポート、作成済みのシェーマなどの文書データが格納されている。
【0022】
CPU100は、主として診療支援装置1の各構成要素の動作を制御する。主メモリ101は、CPU100が実行する制御プログラムを格納したり、CPU100によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。磁気ディスク102は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブ、後述する診断支援処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等を格納する。表示メモリ103は、モニタ104のための表示用データを一時記憶する。モニタ104は、例えばCRTモニタや液晶モニタ等であり、表示メモリ103からのデータに基づいて画像を表示する。マウス105及びキーボード106はユーザによるポインティング入力及び文字等の入力をそれぞれ行う。上記各構成要素は共通バス107により互いに通信可能に接続されている。
【0023】
第1実施形態において、診療支援装置1は、LAN4を介して医用文書データベース2及び医用画像データベース3にアクセスし、電子カルテ等の医用文書データ及び医用画像データを読み出すことができる。なお、診療支援装置1に記憶装置、例えばFDD、CD−RWドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等を接続し、それらのドライブから医用画像等を読み込むようにしても良い。また、LAN4を経由して医用画像撮影装置から直接に医用画像等を取得してもよい。
【0024】
<装置の動作>
図2は、第1実施形態に係る診療支援装置1の動作フローチャートである。なお、図2によって示される処理は、CPU100が主メモリ101に格納されているプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
ステップS201では、CPU100はマウス105やキーボード106の入力に応じて、画像診断の対象となる医用検査データ(医用画像及び電子カルテ)を診療支援装置1に入力する処理を行う。この医用検査データの入力処理は、例えば、上述したように、CPU100が、医用文書データベース2及び医用画像データベース3からLAN4を介して医用画像や電子カルテを受信する処理である。また、上述したように、CPU100が、診療支援装置1に接続された記憶装置、例えばFDD、CD−RWドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等の各種記憶媒体から同様のデータを読み取るよう構成してもよい。
【0026】
ステップS202では、CPU100は、ステップ201で読み込まれた医用検査データから検査対象の患者情報を認識する処理を行う。患者情報の認識処理は、例えば、医用画像のヘッダ情報(DICOM画像であれば、DICOMヘッダ)や電子カルテから、患者IDなどの患者を特定するための情報(被検体特定情報)を抽出する処理を行う。
【0027】
ステップS203では、CPU100は、ステップS202の患者情報認識処理で認識した患者情報を検索条件として、医用文書データベース2及び医用画像データベース3を検索する。そして、検査対象患者の過去の1以上のシェーマ及び医用画像のデータを抽出する処理を行う。これを過去検査記録抽出処理と呼ぶことにする。そして、磁気ディスク102に抽出したデータを格納する。このとき、複数の検査日時のデータが抽出された場合、検査日時順にシェーマ及び医用画像のデータに対して新しく検査データ番号iを振り直す。
【0028】
なお、医用文書データベース2及び医用画像データベース3に格納されているシェーマ及び医用画像に関しては、基本的には、医師がある撮影日時の画像の診断を行う度に、疾患部を描いたシェーマを作成しているものとする。つまり、診断済みのデータに関しては、基本的には、全てのシェーマと医用画像が1対1に対応して各々のデータベースに格納されているものとする。また、シェーマには、対応する医用画像の情報が付随して記録されるものとする。付随情報としては、例えば、医用画像のIDや撮影日時(時刻情報)が記録される。従って、本処理では、それぞれのデータベースから該当する患者のシェーマ及び医用画像を抽出した後、各々のシェーマに記録された情報をキーにして、i番目のシェーマとi番目の医用画像を対応付けて磁気ディスク102に保存する。
【0029】
ただし、シェーマと画像のどちらか一方の情報が欠損している場合も考えられる。この場合には、例えば、対応する相手が存在しないデータも含めて検査データ番号を与え、欠損しているデータ側にもブランクデータとして検査データ番号を与えるとよい。あるいは、相手が存在しないデータはスキップして検査データ番号をカウントするとよい。
【0030】
また、医用文書データベース2に記録されたシェーマは、身体部位を描画する手間を省くために、あらかじめ装置内に多数記憶された基本シェーマのテンプレートを医師が選択し、その上に疾患部シェーマを描画したものであるとする。従って、各シェーマは、”基本シェーマ”と”疾患部シェーマ”とに分離されて医用文書データベース2に記憶されているものとする。
【0031】
ステップS204では、CPU100は、処理対象となる検査データ番号iに値1を格納し、また、定数nに、検査対象患者に関して抽出された過去の検査記録の総数を格納する。
【0032】
ステップS205では、CPU100は、検査対象患者に関するi番目の検査データ、つまりi番目のシェーマとi番目の医用画像を磁気ディスク102から主メモリ101に読み出す。
【0033】
ステップS206では、CPU100は、ステップS205で主メモリ101に読み出したi番目のシェーマに関して、シェーマに描かれた身体部位の構造情報及び疾患部の存在位置・範囲情報を抽出する処理を行う。上述したように、各シェーマは基本シェーマと疾患部シェーマに分離して記憶されている。
【0034】
図3は基本シェーマに描かれた身体部位の構造情報として、身体部位の輪郭線上の特徴的な点(形状特徴)(図中、○で示した位置)の座標を抽出した例を示す図である。輪郭線の分岐点や曲率が極大となる点などを特徴点として抽出している。
【0035】
なお、基本シェーマに描かれた身体部位の構造情報の抽出方法として、いくつか異なる手段がある。その一つとして、例えば、予め基本シェーマの作成時に身体部位の構造情報を基本シェーマの属性情報として入力しておく方法がある。また、例えば、基本シェーマの階層リストにおいて基本シェーマが属するグループ名や、基本シェーマに付けられた識別名から、身体部位の位置または臓器名、及び身体部位の向き(正面、左側面、右側面など)を識別可能である。さらに、身体部位の構造情報を自動的に抽出する方法として、前述のように、非特許文献1で提案されたSHIFT特徴量あるいは非特許文献2で提案されたPCA−SHIFT特徴量をCPU100が計算する方法がある。但し、SHIFTはScale-Invariant Feature Transform、PCAはPrincipal Component Analysisの略である。
【0036】
また、疾患部シェーマに描かれた疾患部の存在位置・範囲情報(疾患部情報)の抽出方法としては、以下の手法が考えられる。
【0037】
図4は、疾患部の存在する身体部位を表す基本シェーマ401の上に描かれた疾患部シェーマを表している。疾患部シェーマは、一般的に、次の3種類の情報(パーツ)から成る。
【0038】
・疾患部の状態を医師の心象図として絵で表現した図形402(疾患部描画図形と呼ぶ)
・疾患部描画図形を説明するための文章403(疾患部説明文と呼ぶ)
・疾患部説明文と疾患部描画図形とを繋ぎ、疾患部説明文から疾患部描画図形の方向を向いた矢印404(連結矢印と呼ぶ)
つまり、疾患部の存在位置・範囲情報は、疾患部描画図形402を抽出すればよいことになる。このとき、図4が示すように、一般的に、疾患部説明文403及び連結矢印404は線成分から成るが、疾患部描画図形402は、医師がその存在位置及び範囲を明確に示すために、閉じた境界線で囲まれた図形で表すことが多い。従って、例えば、疾患部シェーマの画像に対して、前述の非特許文献3で提案されている可変形状モデルを適用することで、エッジで囲まれた領域を抽出することができるため、疾患部描画図形を取り出すことが可能となる。次に、疾患部描画図形の中心部分の座標を計算することで、基本シェーマ上における疾患部のおおよその存在位置(肺野であれば、上葉・中葉・下葉など)を求めることができる。
【0039】
なお、特許文献2に記述されているように、疾患部シェーマの3つの構成要素が予め分離した電子データとして記憶されている場合には、直接、疾患部描画図形の存在位置・範囲を読み込めばよい。
【0040】
ステップS207では、CPU100は、ステップS205で主メモリ101に読み出したi番目の医用画像に関して、画像に写った身体部位の構造情報及び疾患部の存在位置・範囲の候補情報を抽出する処理を行う。医用画像に写った身体部位の構造情報を抽出する際、身体部位の構造情報は、基本シェーマに描かれた身体部位の構造情報と比較可能な情報でなければならない。
【0041】
基本シェーマに描かれた身体部位の構造情報の抽出方法と同様に、医用画像に写った身体部位の構造情報の抽出には、いくつか異なる手法がある。例えば、医用画像をモニタ104に表示し、医師に医用画像に写った身体部位の輪郭線上の特徴点の位置を指定してもらう方法がある。この際、医師に指定してもらう特徴点は、図3に例示した基本シェーマの輪郭線上の特徴点と対応する位置に指定してもらう。あるいは、CPU100が医用画像に対して前述のSHIFT特徴量またはPCA−SHIFT特徴量を自動的に計算する方法がある。
【0042】
そして、医用画像に写った疾患部に関する存在位置・範囲の候補情報の抽出方法としては、コンピュータ支援診断(Computer Aided Diagnosis:CAD)の技術を用いて抽出する方法がある。例えば、発生頻度が比較的高く、かつ死亡リスクが高い疾患の一つに肺がんが挙げられるため、これを例にとることにする。原発性の肺がんは、球の形状に近い結節影で画像上に現れる。そこで、球状の陰影を強調するフィルタを適用し、強調された画像に対して閾値処理を施すことにより、肺がんの候補陰影の領域、つまり疾患部の候補陰影の領域を自動抽出することができる。
【0043】
ステップS208では、CPU100は、ステップS206で抽出したi番目のシェーマに描かれた身体部位及び疾患部の構造情報と、ステップS207で抽出したi番目の医用画像に写った身体部位及び疾患部の構造情報を比較する。そして、幾何学的な対応関係を算出することで、身体部位対応付けを行なう(構造情報対応付け処理と呼ぶ)。このとき、医用画像が3次元画像或いは複数枚の2次元画像から成る場合は、画像データ内から、シェーマと同じ向きの断面画像を特定し、シェーマと、検出した断面画像を対応付ける。
【0044】
構造情報の例として上述した特徴点の座標、SHIFT特徴量またはPCA−SHIFT特徴量はいずれも、複数成分からなるベクトル情報と言うことができる。従って、ステップS206の具体的な処理は、基本シェーマと医用画像間で対となるベクトル情報を探すことである。この処理は、基本シェーマの1つのベクトル情報と医用画像の1つのベクトル情報との間のベクトル間距離を計算し、すべてのベクトルの組合せ中で距離が最小となるベクトルの組合せを求めればよい。ただし、ベクトル間距離が予め決めた閾値より大きい場合は、対となるベクトルがないものと判断する。またさらに、対応するベクトルの探索ミスを減らす工夫として、1つのベクトルではなく、互いに近傍にある数個のベクトルをまとめて、より高次元のベクトルとして扱うことができる。この時、基本シェーマの高次元ベクトルと医用画像の高次元ベクトルとの間のベクトル間距離を計算する。
【0045】
ここで、基本シェーマに描かれた身体部位の向きは、ステップS206において身体部位の構造情報の一部として抽出されている。医用画像が3次元画像である場合、身体部位の向きが決められると、アキシャル断面、コロナル断面、サジタル断面などの画像断面の方向が決まる。しかし、3次元画像では、画像断面の方向が決まっても、なおかつ複数枚の断面画像が存在する。そこで、これらの断面画像の中で、疾患部が最もよく映っている断面画像を選択する。そのためには、3次元画像から実際の疾患部を特定する必要がある。このとき、ステップS207において既に疾患部の候補陰影の領域を抽出しているため、候補陰影の中から実際の疾患部を特定する。
【0046】
疾患部の特定方法としては、疾患部に関して事前に得られている情報を利用する方法がある。経過観察においては、処理対象であるi番目の医用画像よりも以前に撮影した画像が存在すれば、以前の画像から、疾患部の形状、サイズ、存在位置及び輝度分布がある程度予測できる。i番目より以前の検査時に、検査記録としてこれらの情報を記録しておけば、その情報に基づいて、候補陰影の中から実際の疾患部を絞り込むことができる。また、各断面画像はシェーマと同じ向きであり、ステップS206において、シェーマにおける疾患部の存在位置及び範囲がある程度分かっている。そこで、断面画像ごとに、画像内の候補陰影の存在位置及び範囲を、シェーマにおける疾患部のおおよその存在位置及び範囲と比較し、合致する候補陰影を検出することで、疾患部を特定できる。これにより、シェーマと画像間で疾患部を対応付けることが可能となる。次に、疾患部が最もよく映っている断面画像の選択方法としては、特定した疾患部領域の面積が最も大きくなる断面画像を選択する方法がある。
【0047】
ステップS209では、CPU100は、検査データ番号iをインクリメントする(1増やす)。
【0048】
ステップS210では、CPU100は、検査データ番号iの値が、過去の検査記録の総数n以下であれば、ステップS205に移り、そうでなければ次のステップS211及びステップS212に移る。
【0049】
ステップS211では、CPU100は、1からn番目までのシェーマにおける疾患部シェーマのデータを用いて、これらの疾患部シェーマの経時的な移り変わりが把握可能なシェーマ(疾患部時系列シェーマと呼ぶ)を生成する処理を行う。さらに、この処理を疾患部時系列シェーマ生成処理と呼ぶことにする。
【0050】
ここでは、疾患部シェーマの集合を関連付け、疾患部シェーマを構成する前記の3つのパーツが分離されており、その座標が分かっている場合には、表示に適した形に補正することで時系列シェーマを生成する。
【0051】
疾患部シェーマ内の疾患部描画図形に関しては、経過観察を目的とした検査であれば、疾患部の存在位置は基本的には変わらないため、作成日時の異なるシェーマ間で、基本シェーマ上のほぼ同じ位置に描かれるはずである。従って、疾患部描画図形を配置する座標は、変更せずそのまま用いる。しかし、疾患部説明文と連結図形に関しては、医師が自由な位置に配置することができるため、疾患部シェーマ間で統一されているとは限らない。そのため、疾患部時系列シェーマとして、例えば疾患部シェーマを同じ位置で切り替えて表示することを考えた場合、疾患部説明文の位置がばらばらで表示されるため、非常に見づらくなる。そこで、1からn番目までの疾患部シェーマにおける疾患部説明文の座標の平均値を算出し、各疾患部シェーマにおける疾患部説明文の座標を平均値に変更する。そして、各疾患部シェーマにおける連結矢印を、疾患部描画図形と座標変更後の疾患部説明文を繋ぐように引き直すよう構成するとよい。
【0052】
ステップS212では、CPU100は、1からn番目までの医用画像に関して、ステップS208においてシェーマと対応付けられた断面画像から疾患部の画像情報として、疾患部を囲むROI(注目領域)画像を抽出する。そして、これらの疾患部ROI画像の経時的な移り変わりが把握可能な画像(疾患部時系列画像データと呼ぶ)を生成する処理を行う。さらに、この処理を疾患部時系列画像データ生成処理と呼ぶことにする。
【0053】
ROI画像の抽出範囲の決定方法としては、例えば次の方法がある。ステップS208において、医用画像内の疾患部の領域は既に抽出されているため、1からn番目までの医用画像の中で、最も疾患部のサイズが大きいものを求めることができる。最大サイズの疾患部を対象として、一定幅のマージン付きの疾患部を囲む最小の矩形領域または円形領域を計算することで、1からn番目までの医用画像に関して、共通のROI画像の抽出範囲を決定することができる。
【0054】
ステップS213では、CPU100は、ステップS211で生成した疾患部時系列シェーマ、ステップS212で生成した疾患部時系列画像データの2つの時系列データを連動させてモニタ104に表示出力する処理を行う。この処理を、疾患部時系列データ連動提示処理と呼ぶことにする。
【0055】
図5は、疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像データとのペアを連動させて表示する一例を表している。図5の501は、疾患部の属する身体部位を描いた基本シェーマを表し、基本シェーマ上に疾患部の存在位置も表示される。502は、疾患部時系列シェーマを表し、503は、それに対応する疾患部時系列画像データ内の画像を表す。
【0056】
疾患部時系列シェーマ502は、検査データ番号i(1≦i≦n)の値が小さい方から順に、つまり時系列順に並んだ状態で同時に表示される。同様に、疾患部時系列画像データ503も、検査データ番号iが小さい方から順に表示される。これらにより、診療支援装置1の操作者は、疾患部シェーマ及び疾患部画像の双方に関しての疾患部の経時的な変化を観察することが出来る。
【0057】
また、i番目の疾患部シェーマ及びi番目の疾患部画像は関連付けられている。これを利用して、関連付けられた2種類の表示情報のうち、1種類におけるi番目のデータを指定すると、他方の表示情報に関して該当するデータを強調表示することができる。例えば、疾患部時系列シェーマのi番目の点を指定すると、関連付けられたi番目の疾患部画像が強調表示される。また、その逆の指定及び表示も可能である。強調表示の方法としては、i番目の疾患部シェーマ及び画像の表示枠を色付けして表示する、或いは他の疾患部シェーマ及び画像を半透明で表示するなどの方法がある。これらにより、診療支援装置1の操作者は、同じ検査データ番号の疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像データとを同時に把握可能となる。
【0058】
さらに、2種類(疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像データ)の表示情報のうち、1種類におけるデータの複数個抽出(選択)することで、他方の表示情報に関しても該当する複数個のデータを強調表示することができる。これにより、検査データ番号の異なる複数のデータの間で、2種類の表示情報を、同時に比較することができる。例えば、疾患部時系列シェーマで検査データ番号の異なる2点を指定すると、該当する疾患部画像が強調表示され、それぞれを容易に比較することができる。
【0059】
以上説明したように、第1実施形態に係る診療支援装置1によれば、診療支援装置1の操作者は、疾患部シェーマ及び疾患部画像の双方に関しての疾患部の経時的な変化を観察することが出来る。疾患部画像と共に疾患部時系列シェーマを参照することで、医師が疾患部をどう特徴付けて判断したかの移り変わりを容易に把握することができる。加えて、疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像データを連動させて参照できることで、医師による判断の情報と、疾患部の原画像を同時に把握しながら、それらの経時的な変化を観察することができる。それにより、過去の主観的な評価と生の情報との両方を参考にできるため、経過観察における診断に役立つ情報を提供することが可能となる。
【0060】
(変形例1)
ステップS213における、疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像データとのペアの連動表示は、次の形態をとってもよい。
【0061】
図6は、連動表示において、疾患部時系列シェーマを基本シェーマに重畳して表示する例を表している。601は、疾患部の属する身体部位を描いた基本シェーマを表し、基本シェーマ上に疾患部時系列シェーマ602も表示される。603は、疾患部時系列シェーマに対応する疾患部時系列画像データ内の画像を表している。疾患部時系列シェーマ602は、特定の表示領域上(基本シェーマ上)に、指定された検査データ番号iの疾患部シェーマが表示され、iの値が変更される度に対応する疾患部シェーマが表示領域上に表示される。同様に、疾患部時系列画像データ603も、特定の表示領域上に、指定された検査データ番号iの疾患部画像が表示され、iの値が変更される度に対応する疾患部画像が表示領域上に表示される。
【0062】
図5と同様、2つの表示情報は検査データ番号iに関して関連付けられており、検査データ番号iを指定すると、2つの表示情報が連動して順次にi番目のデータを表示する。検査データ番号iのデータの指定方法としては、プログラム上で、自動的にiの値を連続的に加算する、或いはマウスのクリックやドラッグなどに連動してiの値を変更するなどの方法がある。これにより、疾患部時系列シェーマ及び疾患部時系列画像データ内の画像を、表示領域上に動画表示(アニメーション表示)することが出来る。
【0063】
このように構成することにより、連続的な変化をより直感的に把握することができる。また、疾患部時系列シェーマを基本シェーマ上で切り替えて表示することで、身体部位と疾患部の情報をシームレスに把握可能となる。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態では、シェーマと当該シェーマに対応する疾患部画像の特徴量とを連動表示させる形態について説明する。なお、第2実施形態に係る診療支援装置の構成は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。ただし、以下に説明するように、CPU100が実行する制御プログラムが第1実施形態と異なる。すなわち、磁気ディスク102に格納されているプログラムが異なる。
【0065】
図7は、第2実施形態に係る診療支援装置1の動作フローチャートである。なお、第1実施形態の図2のフローチャートと同様の処理を行っているステップについては詳細な説明は省略する。
【0066】
ステップS701からステップS711までの処理は、それぞれ第1実施形態のステップS201からステップS211までの処理と同様である。
【0067】
ステップS712では、CPU100は、1からn番目までの医用画像に関して、シェーマにおける疾患部と対応付けられた画像内の疾患部領域の定量データを算出する。そして、定量データを用いて、これらの疾患部領域の定量的な移り変わりが把握可能なデータ(疾患部時系列画像特徴量(定量データ)と呼ぶ)を生成する処理を行う。この処理を、疾患部時系列画像特徴量生成手段と呼ぶことにする。
【0068】
ここでは、ステップS707で抽出した疾患部領域データから、診断のために有用となる定量的な情報を抽出する。例えば、胸部CT画像において肺がんの疑いのある結節影が所見として発見された場合、診断のために有効な情報の一つとして、そのサイズが挙げられる。従って、この場合、ステップS708で領域分割された疾患部領域の有効半径Rを算出する。有効半径Rは例えば下記の式(1)または式(1’)で与えられる。
【0069】
R=(画像に基づいて導出される疾患部面積と同面積の円の半径) ・・・ (1)
または
R=(画像に基づいて導出される疾患部体積と同体積の球の半径) ・・・ (1’)
式(1)に基づいて撮影日時の異なる医用画像ごとに有効半径Rを求めることで、疾患部時系列定量データを生成できる。疾患部時系列定量データとして、例えば、図8に示すような結節の大きさの定量的な移り変わりを表すグラフ(疾患部経時変化グラフと呼ぶ)を作成することができる。図8は、横軸を医用画像ごとの撮影日時、縦軸を有効半径Rの値とし、点をプロットしたグラフを表している。
【0070】
ステップS713では、CPU100は、ステップS711で生成した疾患部時系列シェーマおよびステップS712で生成した疾患部時系列定量データを連動させて表示する処理を行う。この処理を、第1実施形態に係るステップS213と同様、疾患部時系列データ連動提示処理と呼ぶことにする。
【0071】
図9は、疾患部時系列シェーマ及び疾患部時系列定量データの具体例として生成した疾患部経時変化グラフを連動させて表示する一例を示す図である。
【0072】
901は、疾患部の属する身体部位を描いた基本シェーマを表し、基本シェーマ上に疾患部の存在位置も表示される。902は、疾患部時系列シェーマを表し、903は、それに対応する疾患部時系列グラフを表す。図9では、疾患部の定量値として、結節影のサイズを適用している。図9における連動提示と同様、疾患部時系列シェーマ902と疾患部時系列グラフ903を連動提示可能である。例えば、疾患部経時変化グラフ903上のi番目の点を指定すると、それに関連付けられたi番目の疾患部シェーマを強調表示することができる。例えば、強調表示の方法として、i番目の疾患部シェーマの表示枠を色付けして表示する、或いはそれ以外の疾患部シェーマを半透明で表示するなどの方法がある。
【0073】
さらに、例えば疾患部経時変化グラフ903上で時系列に沿って指定する点を推移させることで、上記2つの情報の移り変わりを同期させて強調表示可能である。グラフ上の指定点を推移させる方法としては、例えば、グラフ上の点をマウスで順にクリックしたり、ある点から別の点までドラッグしたりする方法がある。或いはグラフの横軸に対応するコントロールバーを用意し、コントロールバーを動かすことで指定点を変更したりする方法もある。なお、グラフ上で検査データ番号の異なる2点を指定した際に、対応する2つの疾患部シェーマが強調表示するように構成してもよい。
【0074】
以上説明したように、第2実施形態に係る診療支援装置1によれば、診療支援装置1の操作者は、疾患部シェーマ及び対応する疾患部画像から導出される定量データの双方に関しての疾患部の経時的な変化を観察することが出来る。
【0075】
(変形例1)
ステップS712における疾患部時系列定量データの生成及びステップS713における時系列データの連動提示は、次の形態を取ってもよい。
【0076】
図10は、疾患部の定量データを表としてまとめた疾患部経時変化テーブルを示す図である。ステップS712における疾患部経時変化グラフと同様に、疾患部の定量データとして結節影の有効半径を示している。
【0077】
そして、ステップS713では、疾患部時系列シェーマと疾患部経時変化表を連動させて表示する処理を行う。例えば、疾患部経時変化表内の特定の検査データ番号を指定した場合に、対応する疾患部時系列シェーマ内のデータを強調表示するように構成するとよい。
【0078】
(変形例2)
ステップS712における疾患部時系列定量データの生成は、次の形態を取ってもよい。
【0079】
疾患部の定量データとして、ステップS712では画像データから抽出される結節影の有効半径を適用したが、適用できる疾患部の定量データはこれに限られない。例えば、リンパ節の内部領域に腫瘍などの軟部組織を含む場合と、それが壊死した液体の組織を含む場合では、その領域の濃度値の平均や分散が異なる。一般的には軟部組織の方が液体よりも濃度値がやや高い傾向にあり、また、液体の方が、濃度値が均一であるため、軟部組織よりも分散が小さくなる傾向にある。そこで、疾患部の状態を特徴付ける定量データとして、画像データにおける疾患部領域内部の画像濃度値の平均や分散の値を適用して、疾患部時系列定量データを生成することも好適である。
【0080】
(第3実施形態)
第3実施形態では、シェーマと連動表示させる他の情報(データ)を2つ以上をした例について説明する。つまり、第1及び第2の実施形態では、疾患部時系列シェーマと連動表示する情報として、それぞれ、疾患部時系列画像及び疾患部時系列定量データを用いた。しかし、疾患部時系列シェーマと連動表示する情報は1つに限定されない。
【0081】
例えば、疾患部時系列シェーマ、疾患部時系列画像、及び疾患部時系列定量データの3つの情報を連動させて提示することもできる。そして、疾患部時系列定量データとして、疾患部経時変化グラフを用いた場合には、次のような連動表示手法がある。すなわち、グラフ上の点をマウスなどにより順に指定することで、それに対応する疾患部時系列シェーマと疾患部時系列画像を動画表示(アニメーション表示)するよう構成しても良い。
【0082】
以上説明したように、第3実施形態に係る診療支援装置1によれば、診療支援装置1の操作者は、各シェーマに対応する時点での他の複数のデータをシェーマに連動させて確認することが可能となる。
【0083】
(第4実施形態)
第4実施形態では、シェーマと連動表示させる情報(データ)として類似症例データを用いる例について説明する。つまり、上述の実施形態においては、疾患部時系列シェーマと同時に提示する情報として、検査対象患者本人の過去の検査画像のみから得られる情報を適用した。しかし、疾患部時系列シェーマと同時に提示する情報は、検査対象患者本人に関する検査データに限定されない。
【0084】
例えば、検査対象患者の症例と類似する他の患者の過去の検査画像(類似画像と呼ぶ)も同時に提示する方法がある。類似画像の取得方法としては、例えば検査対象患者のカルテに記載された確定診断の情報をキーワードとして、一致する診断情報が記載された患者のカルテをデータベースから検索し、その患者の検査画像を取得する手法がある。或いは、検査対象患者の疾患部の画像から画像特徴量を抽出し、過去の様々な検査画像が大量に格納されたデータベースから、最も画像特徴量の類似する画像を類似画像として取得する手法がある。
【0085】
そして、類似画像を取得した後、当該画像に関連する患者に関して、他にも検査画像が存在する場合、時系列の類似画像(類似症例時系列画像データと呼ぶ)を生成することができる。これまでの処理を、類似症例時系列画像データ生成処理と呼ぶ事にする。その際、時系列類似画像の提示方法の一つとして、疾患の進行状況(程度)を基準にして、検査対象患者の疾患部時系列画像と連動して提示するよう構成してもよい。疾患の進行状況に基づく対応付け手法としては、例えば、所見として肺がんの疑いのある結節影が確認されている場合、結節影の有効半径が同程度のものを対応付ける方法がある。
【0086】
以上説明したように、第4実施形態に係る診療支援装置1によれば、診療支援装置1の操作者は、疾患部シェーマまたは対応する疾患部画像と類似症例の疾患部画像とを比較しながら観察することが出来る。
【0087】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0088】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0089】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0090】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどがある。
【0091】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0092】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【符号の説明】
【0093】
1 診療支援装置
2 医用文書データベース
3 医用画像データベース
4 LAN
10 制御部
100 CPU
101 主メモリ
102 磁気ディスク
103 表示メモリ
104 モニタ
105 マウス
106 キーボード
107 共通バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断を支援する情報処理装置であって、
被検体のシェーマに記録される疾患部の位置を示す位置情報を得る第一の手段と、
前記位置情報に基づいて前記被検体の医用画像データから前記疾患部に対応する領域を抽出する第二の手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記抽出した領域を表示部に表示させる制御をする第三の手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記シェーマは、異なる時点で記録された複数のシェーマを含み、
前記第三の手段は、前記複数のシェーマと前記第二の手段で抽出された領域とを時系列に関連付けた表示形態で表示する制御をする
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第二の手段は、前記医用画像データが3次元画像又は複数枚の2次元画像である場合に、前記シェーマと同じ向きの断面画像を特定し前記疾患部に対応する領域を抽出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第二の手段は、前記被検体のシェーマに記録される疾患部の位置を示す位置情報を用いて、前記被検体の医用画像データから得られた候補陰影の存在位置及び範囲を制限する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
被検体に関する異なる時点で記録された複数のシェーマと該複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に関連する医用画像データとを取得する取得手段と、
前記複数のシェーマと対応する医用画像データとを関連付けて表示手段に表示する表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
前記複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に基づいて、該複数のシェーマの各々に関連する医用画像データにおける疾患部領域を特定する特定手段を更に有し、
前記取得手段は、前記特定された疾患部領域に基づく医用画像データを取得する
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
シェーマに描かれた身体部位の形状特徴と、該シェーマに関連する医用画像データにおける身体部位の形状特徴と、を幾何学的に対応付ける対応付け手段を更に有し、
前記特定手段は、前記対応付け手段による身体部位の幾何学的な対応付け結果と該シェーマに描かれた疾患部情報とに基づいて、該シェーマに関連する医用画像データにおける疾患部領域を特定する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示制御手段は、前記取得手段によって取得された前記複数のシェーマ及び対応する医用画像データの中から、シェーマと対応する医用画像データとのペアを複数個抽出し、該抽出された複数個のペアを時系列順に並べて前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記表示制御手段は、前記複数のシェーマと対応する医用画像データとを同期させて前記表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
被検体に関するシェーマと該シェーマに関連する医用画像データとを記憶する検査記録データベースを更に有し、
前記取得手段は、前記被検体を特定する被検体特定情報に基づいて、前記検査記録データベースから前記被検体に関する複数のシェーマと医用画像データとを取得する
ことを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
被検体に関する異なる時点で記載された複数のシェーマと該複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に関連する医用画像データとを取得する取得手段と、
前記複数のシェーマの各々に関連する医用画像データの各々について、前記疾患部領域の画像特徴量を導出する導出手段と、
前記複数のシェーマの各々の時刻情報と該複数のシェーマの各々に関連する医用画像データの疾患部領域の画像特徴量とに基づいて、該疾患部領域に関する時系列の画像特徴量を生成する時系列画像特徴量生成手段と、
前記複数のシェーマと前記疾患部領域に関する時系列の画像特徴量とを同期させて表示手段に表示する表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項13】
前記画像特徴量は、疾患部領域の大きさであることを特徴とする請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記画像特徴量は、疾患部領域の濃度値であることを特徴とする請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項15】
診断を支援するための情報処理方法であって、
被検体のシェーマに記録される疾患部の位置を示す位置情報を得る第一の工程と、
前記位置情報に基づいて前記被検体の医用画像データから前記疾患部に対応する領域を抽出する第二の工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項16】
被検体に関する異なる時点で記載された複数のシェーマと該複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に関連する医用画像データとを取得する取得工程と、
前記複数のシェーマと対応する医用画像データとを関連付けて表示手段に表示する表示制御工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
被検体に関する異なる時点で記載された複数のシェーマと該複数のシェーマの各々に記録された疾患部情報に関連する医用画像データとを取得する取得工程と、
前記複数のシェーマの各々に関連する医用画像データの各々について、前記疾患部領域の画像特徴量を導出する導出工程と、
前記複数のシェーマの各々の時刻情報と該複数のシェーマの各々に関連する医用画像データの疾患部領域の画像特徴量とに基づいて、該疾患部領域に関する時系列の画像特徴量を生成する時系列画像特徴量生成工程と、
前記複数のシェーマと前記疾患部領域に関する時系列の画像特徴量とを同期させて表示手段に表示する表示制御工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項18】
コンピュータを請求項1乃至14のいずれか一項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52245(P2013−52245A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241068(P2012−241068)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2008−246596(P2008−246596)の分割
【原出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】