説明

情報処理装置および方法、並びにプログラム

【課題】通信の信頼性を保ちつつ応答性を向上させる。
【解決手段】増幅部51乃至復調部53は、符号化プリアンブルと符号化データを含む符号化フレームが送信元から送信されてきた場合、符号化フレームをアナログ信号として受信する。サンプリング部61は、符号化フレームを、ビット区間を単位として、1単位につき2以上のサンプリング数でサンプリングする。ビット判別部62は、1単位分のサンプリングの結果に基づいて、ビット区間の符号化前のビットを判別する。ビットサンプリング数変更部81は、符号化プリアンブルに対するサンプリングの結果に基づいて、符号化データに対するサンプリングを行う場合のビットサンプリング数を変更する制御を行う。本発明は、例えば、パッシブエントリシステムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、通信の信頼性を保ちつつ応答性を向上させることができるようになった情報処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の施錠システムとして、パッシブエントリシステムが普及しつつある。
【0003】
パッシブエントリシステムは、例えば、携帯電子キーと、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)を含むように構成されている。
【0004】
携帯電子キーは、車両を運転するユーザにより主に携帯され、車両のドアの施錠/開錠や、車両のエンジンスタート等を行うために使用される。
【0005】
ECUは、携帯電子キーと無線通信を行うことでその認証を行い、認証に成功した場合には、車両のドアの施錠/開錠や、エンジンスタート等の動作を制御する。
【0006】
この携帯電子キーの認証においては、ECUと携帯電子キーの間でデータが伝送される。このECUと携帯電子キーの間のデータの伝送のうち、ECUから携帯電子キーへのデータ伝送について説明する。
【0007】
ECUから携帯電子キーへのデータ伝送では、フレームが伝送単位となる。ECUは、フレームに対する符号化処理をビット単位で行う。なお、符号化処理前後のビットを、明確に区別すべく、符号化処理前のビットを単に「ビット」と称し、符号化処理後のビットを「符号化ビット」と称する。この符号化処理により、1ビットは、2以上の符号化ビットからなる符号化ビット群に変換される。即ち、この符号化処理により、1フレームは、複数の符号化ビット群の集合体に変換される。なお、以下、符号化処理後のフレーム、即ち、複数の符号化ビット群の集合体を、符号化フレームと称する。符号化フレームは、ECUから電子キーに送信される。
【0008】
携帯電子キーは、ECUから送信されてくる符号化フレームを受信し、符号化フレームに対して復号処理を行う。復号処理前の符号化フレームは、符号化ビットが「1」である部分がHighレベルとされ、符号化ビットが「0」である部分がLowレベルとされた信号として形成されている。かかる信号を、以下、受信信号と称する。この復号処理では、受信信号に対してサンプリングが行われ、そのサンプリングの結果に基づいて、フレームを構成する各ビットが復号される。このサンプリングは、受信信号のうち、1つの符号化ビット群に相当する区間(以下、ビット区間と称する)に対して2以上のサンプリング数で行われる。このようなサンプリングは、オーバーサンプリングと称されている。以下、1つのビット区間において行われるオーバーサンプリングを、符号化ビット群をサンプリングすると表現することにする。また、符号化ビット群に対するサンプリングの回数を、以下、ビットサンプリング数と称する。
【0009】
従来、復号処理におけるサンプリング手法には、ビットサンプリング数を固定させる手法と、ビットサンプリング数を可変させる手法が存在する。なお、前者を、以下、固定サンプリング手法と称する。後者を、以下、可変サンプリング手法と称する。
【0010】
復号処理において、ビットサンプリング数を増やすことで、符号化ビットに含まれるノイズを除去できることが知られている。そこで、固定サンプリング手法では、例えば、ECUと携帯電子キーの間の伝送路の状況から想定しうるノイズの上限に基づいて、可能な限り大きいビットサンプリング数が求められ、それが固定のビットサンプリング数として予め設定される。これにより、固定サンプリング手法では、大抵の場合におけるノイズを除去することが可能となる。しかしながら、このようにサンプリング数を固定してしまうと、ノイズが少ないときには余分なサンプリングが行われることになり、携帯電子キーの消費電流が大きくなってしまう。ところが、携帯電子キーは、比較的容量の小さい電池を電源としているため、消費電流の低減が要求されている。よって、電子キーの消費電流が大きくなってしまう固定サンプリング手法では、かかる要望に応えることは困難である。
【0011】
これに対して、可変サンプリング手法は、かかる要望にある程度応えることが可能である。可変サンプリング手法としては、例えば、次のような手法が知られている。即ち、携帯電子キーは、フレームに含まれるCRC(Cyclic Redundancy Check)を用いてデータのビットエラーレートを算出する。そして、携帯電子キーは、データのビットエラーレートに基づいて、ビットサンプリング数を変更する。このような一連の処理を実現する手法が、可変サンプリング手法の一例であり、以下、CRCに基づく可変サンプリング手法と称する。なお、CRCについては、特許文献1に記載されている。
【0012】
CRCに基づく可変サンプリング手法では、例えば、データのビットエラーレートが許容値より小さい場合、ビットサンプリング数を小さくすることが可能となる。これにより、データのビットエラーレートが許容値より小さい場合に限れば、データ品質を固定サンプリング手法と同程度に維持しつつ、携帯電子キーの消費電流を抑えることができる。即ち、携帯電子キーに対する消費電流の低減の要求にある程度応えることができる。
【特許文献1】特開2001−257731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したCRCに基づく可変サンプリング手法では、データのビットエラーレートが許容値以上となった場合、そのデータを使用することができない。そこで、送信されたフレームと同じフレームを送信元に再送してもらう必要があった。
【0014】
図1は、フレームの再送について説明するための図である。
【0015】
図1の例では、ECUから、1回目にフレームF1が符号化フレームとして送信され、2回目にフレームF2が符号化フレームとして送信(再送)される。なお、フレームF1,F2は、プリアンブル、データ、およびCRCから構成されている。プリアンブルには、伝送開始を示す情報が格納される。
【0016】
携帯電子キーは、フレームF1を符号化フレームとして受信する。そこで、携帯電子キーは、符号化フレームに対して復号処理を施す。この復号処理では、通常時のビットサンプリング数B1が使用されているとする。ビットサンプリング数B1としては、例えば、通常時におけるノイズを除去するための最小限のビットサンプリング数が採用されているとする。即ち、ビットサンプリング数B1で、符号化ビットがサンプリングされることで、フレームF1を構成する各ビットが復号される。携帯電子キーは、復号されたビットから、フレームF1を再構成する。
【0017】
ステップSa1において、携帯電子キーは、再構成されたフレームF1のうちデータとCRCを用いて、ビットエラーチェックを行う。これにより、フレームF1のデータについてのビットエラーレートが求められる。なお、この例では、符号化フレームとして受信されたフレームF1に含まれるノイズが多く、求められたフレームF1のデータについてのビットエラーレートは、許容値以上となっているとする。
【0018】
ステップSa2において、携帯電子キーは、フレームF1のデータについてのビットエラーレートが許容値以上なので、フレームF1と同じフレームの再送要求をECUに送信する。
【0019】
ステップSa3において、携帯電子キーは、ビットサンプリング数B1をビットサンプリング数B2(B2>B1)に増加させる。ビットサンプリング数B2としては、例えば、ECUと携帯キーの間の伝送路の状況から想定しうるノイズの上限に合わせたビットサンプリング数が採用されているとする。
【0020】
その後、携帯電子キーは、ECUから再送されたフレームF2を符号化フレームとして受信する。そこで、携帯電子キーは、符号化フレームに対して復号処理を施す。この復号処理では、ビットサンプリング数B2で、符号化ビットがサンプリングされる。これにより、フレームF2のデータについてのビットエラーレートを許容範囲内に抑えることができる。
【0021】
このように、CRCに基づく可変サンプリング手法では、固定サンプリング手法と同程度に、ECUとの無線通信の信頼性を保つことができる。
【0022】
しかしながら、CRCに基づく可変サンプリング手法では、同じフレームを再送してもらう必要があるので、固定サンプリング手法に比べて、携帯電子キーの応答が遅れてしまう。
【0023】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、携帯電子キーにおいて、ECUとの無線通信の信頼性を保ちつつ応答性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一側面の情報処理装置は、伝送開始を示す情報が格納された第1の部分と、データが格納される第2の部分を少なくとも含むフレームに対して、1のビットを複数ビットの集合体である符号化ビット群に変換する方式の符号化処理が施された結果として、第1の部分に対して符号化処理が施されることで得られる第1の符号化部分と、第2の部分に対して符号化処理が施されることで得られる第2の符号化部分とを少なくとも含む符号化フレームが得られ、その符号化フレームが送信元から送信されてきた場合、符号化フレームをアナログ信号として受信する受信手段と、受信手段に受信された符号化フレームを、符号化ビット群に相当する区間を単位として、1単位につき2以上のサンプリング数でサンプリングするサンプリング手段と、1単位分のサンプリング手段によるサンプリングの結果に基づいて、区間の符号化前のビットを判別する判別手段と、第1の符号化部分に対するサンプリング手段によるサンプリングの結果に基づいて、第2の符号化部分に対するサンプリング手段によるサンプリングを行う場合のサンプリング数を変更する制御を行う制御手段とを備える。
【0025】
本発明の一側面の情報処理装置においては、受信手段により、伝送開始を示す情報が格納された第1の部分と、データが格納される第2の部分を少なくとも含むフレームに対して、1のビットを複数ビットの集合体である符号化ビット群に変換する方式の符号化処理が施された結果として、第1の部分に対して符号化処理が施されることで得られる第1の符号化部分と、第2の部分に対して符号化処理が施されることで得られる第2の符号化部分とを少なくとも含む符号化フレームが得られ、その符号化フレームが送信元から送信されてきた場合、符号化フレームがアナログ信号として受信され、サンプリング手段により、受信手段に受信された符号化フレームが、符号化ビット群に相当する区間を単位として、1単位につき2以上のサンプリング数でサンプリングされ、判別手段により、1単位分のサンプリング手段によるサンプリングの結果に基づいて、区間の符号化前のビットが判別され、制御手段により、第1の符号化部分に対するサンプリング手段によるサンプリングの結果に基づいて、第2の符号化部分に対するサンプリング手段によるサンプリングを行う場合のサンプリング数を変更する制御が行われる。
【0026】
これにより、通信の信頼性を保ちつつ応答性を向上させることができる。
【0027】
この受信手段は、例えば、増幅回路や、フィルタ、復調回路等から構成することができる。サンプリング手段と復号手段は、例えば、プリプロセッサにより構成することができる。制御手段は、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成される。
【0028】
この情報処理装置は、1単位分のサンプリング手段によるサンプリングの結果の誤りを検出する検出手段をさらに備えることができる。制御手段は、第1の符号化部分におけるサンプリングの結果についての検出手段の検出結果に基づいて、第2の符号化部分に対するサンプリング数を変更する制御を行うことができる。
【0029】
これにより、サンプリング数の制御をより確実かつ正確に行うことが可能となる。
【0030】
この検出手段は、例えば、プリプロセッサにより構成することができる。
【0031】
符号化処理の方式は、マンチェスター方式とすることができる。
【0032】
これにより、通信の信頼性を向上することができる。
【0033】
本発明の一側面の情報処理方法およびプログラムは、上述した本発明の一側面の情報処理装置に対応する方法およびプログラムである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、通信の信頼性を保ちつつ応答性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本願の実施の形態を説明する前に、図1を再度参照して、CRCに基づく可変サンプリング手法において、フレームの再送が生じる原因について考察する。
【0036】
上述したように、携帯電子キーは、フレームF1を符号化フレームとして受信する。この符号化フレームは、符号化処理後のプリアンブル(以下、符号化プリアンブル)、符号化処理後のデータ(以下、符号化データ)、および符号化処理後のCRC(以下、符号化CRC)から構成される。
【0037】
携帯電子キーは、CRCを用いてノイズ状況を判断する。このCRCは、符号化CRC(図1中の網掛けの部分に対して符号化処理が施されたもの)に対して復号処理を施すことで得られたものである。従って、携帯電子キーは、符号化フレームのうち、符号化CRCに基づいて、ノイズ状況を判断していることになる。即ち、このCRCに基づくサンプリング手法は、符号化CRCに基づいた可変サンプリング手法(以下、符号化CRCに基づく可変サンプリング手法と称する)になっていると言える。この符号化CRCは、符号化データより時間的に後に存在するので、ノイズ状況の判断を終えた段階では、この符号化フレームの符号化データは既にサンプリング済みとなってしまっている。そこで、フレームF1と同じフレームを再送してもらう必要性が生じるのである。従って、フレームの再送が生じるのは、符号化フレームのうち、符号化データより後に存在する部分に基づいてノイズ状況を判断しているからである、と本発明人は考察した。
【0038】
そして、この考察をもとに、フレームの再送を回避するには、符号化フレームのうち、符号化データより前に存在する部分に基づいて、ノイズ状況の判断を行えばよい、という技術的思想を本発明人はした。即ち、例えば、図1の構造のフレームに対する符号化フレームでは、符号化プリアンブルに基づいて、ノイズ状況の判断を行えばよい、という技術的思想を本発明人はした。
【0039】
そこで、本発明人は、符号化フレームのうち、符号化データより前に存在する部分(例えば符号化プリアンブル)に基づいてノイズ状況を判断し、その結果によりビットサンプリング数を変更するという手法を発明した。以下、かかる手法のうち、符号化プリアンブルを用いてノイズ状況を判断する手法を、符号化プリアンブルに基づく可変サンプリング手法と称する。
【0040】
図2は、符号化プリアンブルに基づく可変サンプリング手法の概要を説明するための図である。
【0041】
図2において、ECUから、フレームFが符号化フレームとして送信される。なお、フレームFは、プリアンブル、データ、およびCRCから構成されている。また、符号化フレームは、符号化プリアンブル、符号化データ、および符号化CRCから構成されている。
【0042】
携帯電子キーは、フレームFのうちのプリアンブルを符号化プリアンブル(図2中網掛けの部分に対して符号化処理が施されたもの)として受信する。そこで、携帯電子キーは、符号化プリアンブルに対して復号処理を施す。この復号処理では、通常時のビットサンプリング数B1が使用されているとする。即ち、ビットサンプリング数B1で、符号化ビットがサンプリングされることで、フレームFのうちのプリアンブルを構成する各ビットが復号される。携帯電子キーは、復号されたビットから、フレームFのプリアンブルを再構成する。
【0043】
ステップSb1において、携帯電子キーは、例えば、符号化プリアンブルに対するサンプリング結果に基づいて、ノイズ状況を判断する。なお、この例では、符号化フレームとして受信されたフレームに含まれるノイズが多く、通常時に比べて増加しているというノイズ状況であるとする。
【0044】
ステップSb2において、携帯電子キーは、ノイズ状況に応じてビットサンプリング数を増加させる。この例では、通常時に比べて増加しているというノイズ状況であるので、携帯電子キーは、ビットサンプリング数B1をビットサンプリング数B2(B2>B1)に増加させる。
【0045】
携帯電子キーは、フレームFのうちのデータとCRCを、符号化データと符号化CRCとして受信する。そこで、携帯電子キーは、符号化データと符号化CRCに対して復号処理を施す。この復号処理では、増加後のビットサンプリング数B2が使用される。これにより、フレームFのデータについてのビットエラーレートが許容範囲内に抑えられる。
【0046】
このように、符号化プリアンブルに基づく可変サンプリング手法では、通常時に比べて増加しているというノイズ状況の場合でも、ECUとの無線通信の信頼性を保つことができ、かつ、フレームの再送を不要にすることができる。従って、符号化プリアンブルに基づく可変サンプリング手法では、従来の符号化CRCに基づく可変サンプリング手法に比べて応答時間を半分以下にすることができ、さらに、消費電流も半分以下に抑えることができる。
【0047】
次に、本発明を適用したパッシブエントリシステムの実施の形態について説明する。
【0048】
なお、本実施の形態では、フレームは、プリアンブル、データ、およびCRCから構成される。但し、フレームの構成は、この構成に限定されない点に留意すべきである。
【0049】
図3は、パッシブエントリシステムの構成例を示す図である。
【0050】
図3の例では、パッシブエントリシステムは、携帯電子キー11およびECU12を含むように構成されている。
【0051】
携帯電子キー11は、車両を運転するユーザにより主に携帯され、車両のドアの施錠/開錠や、車両のエンジンスタート等を行うために使用される。
【0052】
ECU12は、携帯電子キー11と無線通信を行うことでその認証を行い、認証に成功した場合には、車両のドアの施錠/開錠や、エンジンスタート等の動作を制御する。
【0053】
携帯電子キー11は、LF(Low Frequency)用アンテナ21、LF用受信部22、UHF(Ultra High Frequency)用送信部23、UHF用アンテナ24、および制御部25を含むように構成されている。
【0054】
LF用受信部22は、ECU12からLF用アンテナ21を介して送信されてくるLF信号をデータとして受信し、制御部25に供給する。
【0055】
UHF用送信部23は、制御部25から供給されるデータをUHF信号として、UHF用アンテナ24を介してECU12に送信する。
【0056】
制御部25は、ECU12からのデータに基づいて各種の処理を実行する。また、制御部25は、必要に応じて、データをUHF用送信部23に供給することで、データをUHF信号としてECU12に送信させる。
【0057】
例えば、制御部25は、ECU12からの携帯電子キー11を認証するための認証情報の送信要求に従って、図示せぬ記憶部に記憶されている認証情報を取得し、UHF信号としてECU12に送信させる。
【0058】
ECU12は、LF用送信部31、LF用アンテナ32、UHF用アンテナ33、UHF用受信部34、および制御部35を含むように構成されている。
【0059】
LF用送信部31は、制御部35から供給されるデータを、LF信号としてLF用アンテナ32を介して携帯電子キー11に送信する。
【0060】
UHF用受信部34は、携帯電子キー11からUHF用アンテナ33を介して送信されてくるUHF信号を、データとして受信し、制御部35に供給する。
【0061】
制御部35は、図示せぬセンサによる検知結果や、携帯電子キー11からのデータに基づいて、各種処理を実行する。制御部35は、センサにより車両のドアに対する物体の接近を検知した場合、携帯電子キー11に対する認証情報の送信要求をLF用送信部31に送信させる。制御部35は、その送信要求に応じて携帯電子キー11から送信されてくる認証情報を用いて、携帯電子キーの認証を行い、その認証結果に基づいて、車両のドアの開錠/閉錠を制御する。
【0062】
このように構成されるECU12のLF用送信部31は、制御部35からのデータをフレームに格納し、そのフレームに対して符号化処理を施す。なお、符号化処理の方式は特に限定されない。但し、本実施の形態では、マンチェスター方式を採用するとする。
【0063】
図4は、LF用送信部31の符号化処理を説明するための図である。
【0064】
図4Aは、フレームの符号化処理前の信号(以下、符号化前信号と称する)の一例を示している。図4Bは、フレームの符号化処理後の信号(以下、符号化後信号と称する)の一例を示している。
【0065】
図4Aにおいて、符号化前信号のうち、縦方向の点線で区切られた区間のそれぞれが1つのビットを示している。この縦方向の点線で区切られた区間を、以下、ビット区間と称する。これらのビット区間のうち、Highレベルの区間が「1」のビットを示し、Lowレベルのビット区間が「0」のビットを示している。図4Aの例では、ビットp1乃至p4は、それぞれ、1,0,1,1となっている。
【0066】
図4Bにおいて、符号化後信号のうち、縦方向の点線で区切られた区間を2等分した区間のそれぞれが1つの符号化ビットを示している。これらの区間のうち、Highレベルの区間が「1」の符号化ビットを示し、Lowレベルの区間が「0」の符号化ビットを示している。図4Bの例では、符号化ビットq1乃至q8は、それぞれ、0 , 1 , 1 , 0 , 0 , 1 , 0 , 1となっている。
【0067】
図4の例では、「1」であるビットp1,p3,p4が、「0,1」の符号化ビット群に変換されていることがわかる。また、「0」であるビットp2が、「1,0」の符号化ビット群に変換されていることがわかる。
【0068】
即ち、LF用送信部31は、符号化処理として、符号化前信号を構成する各ビットを、2つの符号化ビットからなる符号化ビット群に変換する。これにより、複数の符号化ビット群から構成される符号化後信号が得られる。なお、このときの符号化処理の規則としては、上述の如く、「1」であるビットを「0,1」の符号化ビット群に変換し、「0」であるビットを「1,0」の符号化ビット群に変換する、といった規則が採用されている。
【0069】
そして、LF用送信部31は、符号化後信号をLF信号として、LF用アンテナ32を介して携帯電子キー11に送信する。
【0070】
次に、携帯電子キー11の詳細について説明する。
【0071】
図5は、携帯電子キー11が有する各種機能のうち、LF信号の無線受信機能を実現する構成の詳細例を示す図である。
【0072】
なお、図5において、図3における対応する部分には同じ符号を付しており、以下、適宜、その説明を省略する。
【0073】
LF用受信部22は、増幅部51、フィルタ部52、復調部53、およびデコード部54を含むように構成されている。
【0074】
増幅部51は、LF用アンテナ21から供給されるLF信号を増幅し、フィルタ部52に供給する。
【0075】
フィルタ部52は、増幅されたLF信号に対して、例えば、LPF(Low Pass Filter)等を用いたフィルタ処理を施し、その結果得られるLF信号を復調部53に供給する。なお、本実施の形態では、LF信号は、振幅変調されているとする。但し、LF信号の変調方式は特に限定されない。
【0076】
復調部53は、フィルタ部52からのLF信号に対して復調処理を施す。復調部53からは、図4Bの符号化後信号の形態として、受信信号が出力されて、デコード部54に供給される。
【0077】
デコード部54は、例えば、プリプロセッサから構成される。デコード部54は、復調部53からの受信信号に対して復号処理を施す。その結果、図4Aの符号化前信号が復号されて、出力される。なお、以下、デコード部54の出力信号を、復号信号と称する。この復号信号は、誤り訂正部55に供給される。
【0078】
デコード部54は、サンプリング部61、ビット判別部62、およびビット割れ検出部63を含むように構成されている。
【0079】
サンプリング部61は、復調部53からの受信信号を、ビット区間を単位として、1単位につき2以上のビットサンプリング数でサンプリングする。サンプリング部61は、サンプリングの結果をビット判別部62に供給する。なお、サンプリング部61によるサンプリングの詳細は、図7等を参照して後述する。
【0080】
ビット判別部62は、所定のビット区間のサンプリングの結果に基づいて、そのビット区間における符号化前のビットを判別し、誤り訂正部55に供給する。なお、ビット判別部62によるビットの判別の詳細は、図7等を参照して後述する。
【0081】
ビット割れ検出部63は、所定のビット区間のサンプリングの結果がビット割れになっているか否かを判定し、その判定結果を制御部25に供給する。このビット割れとは、符号化ビット群に対するサンプリング結果のうちの少なくとも一部が誤った結果となっている状態をいう。なお、ビット割れ検出部63によるビット割れの判定の詳細は、図8を参照して後述する。
【0082】
誤り訂正部55は、デコード部54からの復号信号を用いて、フレームを再構成する。誤り訂正部55は、再構成されたフレームのデータとCRCを用いて誤り訂正を行い、誤り訂正後のデータを制御部25に供給する。
【0083】
制御部25は、例えば、CPUから構成される。制御部25は、ビットサンプリング数変更部81を含むように構成される。制御部25は、例えば、LF用受信部22のデコード部54による復号処理を制御する。以下、かかる制御を、復号制御処理と称する。ビットサンプリング数変更部81は、復号制御処理として、ビット割れ検出部63によるビット割れの判定結果に基づいて、サンプリング部61のビットサンプリング数を変更する制御処理を行う。
【0084】
次に、図6のフローチャートを参照して、制御部25の復号制御処理の一例について説明する。
【0085】
なお、サンプリング部61は、ビットサンプリング数Nを、予めN1(N1は2以上の整数)に設定しているものとする。
【0086】
ステップS1において、制御部25は、符号化フレームが伝送されてきたか否かを判定する。この符号化フレームは、上述したように、符号化プリアンブル、符号化データ、および符号化CRCから構成されている。
【0087】
例えば、LF用受信部22により、符号化プリアンブルが検出され、その検出結果がLF用受信部22から制御部25に通知されない限り、ステップS1においてNOであると判定される。そして、処理はステップS1に戻され、ステップS1の判定処理が繰り返される。
【0088】
その後、符号化プリアンブルが検出され、その検出結果がLF用受信部22から制御部25に通知された場合、ステップS1においてYESであると判定されて、処理はステップS2に進む。なお、検出された符号化プリアンブルが処理対象となり、以降の処理が実行される。
【0089】
ステップS2において、制御部25は、LF用受信部22のデコード部54を制御して、処理対象の符号化プリアンブルに対する復号処理(以下、プリアンブル復号処理と称する)を開始させる。このプリアンブル復号処理では、ビット割れの判定が行われる。ビット割れの判定とは、上述したように、ビット区間に対するサンプリングの結果が誤りであるか否かについての判定をいう。なお、プリアンブル復号処理のさらなる詳細については、図7および図8を用いて後述する。
【0090】
ステップS3において、制御部25は、符号化プリアンブルを構成する符号化ビット群のうち、一定数の符号化ビット群についてのビット割れの判定が終了したか否かを判定する。
【0091】
例えば、ビット割れの判定結果が一定数LF用受信部22から制御部25に供給されない限り、ステップS3においてNOであると判定される。そして、処理はステップS3に戻され、ステップS3の判定処理が繰り返される。
【0092】
即ち、ステップS2の処理以降、この復号制御処理と並行して、プリアンブル復号処理が行われている。このプリァンブル復号処理において、符号化プリアンブルを構成する符号化ビット群のひとつずつに対して、ビット割れの判定が順次行われている。このビット割れの判定が一定数以上行われると、ステップS3においてYESと判定されて、処理はステップS4に進む。
【0093】
ステップS4において、制御部25のビットサンプリング数変更部81は、一定数の符号化ビット群の各ビット割れの判定結果に基づいて、ビット割れ率を算出する。このビット割れ率とは、例えば、一定数の符号化ビット群に対する、ビット割れと判定された符号化ビット群の比率をいう。ビットサンプリング数変更部81は、ビット割れ率に応じて、サンプリング部61のビットサンプリング数を変更する制御を行う。即ち、例えば、ビットサンプリング数変更部81は、処理対象の符号化プリアンブルのビット割れ率が閾値以上の場合、サンプリング部61を制御して、ビットサンプリング数N1をビットサンプリング数N2(N2>N1)に増加させる。
【0094】
ステップS5において、制御部25は、符号化フレームのうち符号化データが伝送されてきたか否かを判定する。
【0095】
例えば、LF用受信部22により、符号化プリアンブルの検出が継続されている限り、ステップS5においてNOであると判定される。そして、処理はステップS5に戻され、ステップS5の判定処理が繰り返される。
【0096】
その後、LF用受信部22により、符号化プリアンブルの検出が終了し、符号化データが検出され、その検出結果がLF用受信部22から制御部25に通知された場合、ステップS5においてYESであると判定されて、処理はステップS6に進む。なお、検出された符号化データと、それに続いて送信されてくる符号化CRCとが処理対象となり、以降の処理が実行される。
【0097】
ステップS6において、制御部25は、デコード部54を制御して、プリアンブル復号処理を終了させる。そして、制御部25は、デコード部54を制御して、処理対象の符号化データと符号化CRCに対する復号処理(以下、データCRC復号処理と称する)を開始させる。なお、データCRC復号処理の詳細については、図10を用いて後述する。
【0098】
ステップS7において、制御部25は、符号化フレームの伝送が終了したか否かを判定する。
【0099】
例えば、LF用受信部22により、符号化CRCの終端が検出され、その検出結果がLF用受信部22から制御部25に通知されない限り、ステップS7においてNOであると判定される。そして、処理はステップS7に戻され、ステップS7の判定処理が繰り返される。
【0100】
その後、符号化CRCの終端が検出され、その検出結果がLF用受信部22から制御部25に通知された場合、ステップS7においてYESであると判定されて、処理はステップS8に進む。ステップS8において、制御部25は、デコード部54を制御して、データCRC復号処理を終了させる。そして、復号制御処理が終了される。
【0101】
次に、デコード部54の復号処理の詳細について説明する。
【0102】
上述したように、デコード部54は、復号処理として、プリアンブル復号処理とデータCRC復号処理を行う。
【0103】
そこで、最初に、図7および図8を参照して、デコード部54のプリアンブル復号処理の詳細について説明する。
【0104】
図7は、プリアンブル復号処理のうちの、サンプリング部61とビット判別部62で行われる部分の処理の一例を説明するための図である。プリアンブル復号処理は、上述の如く、復号制御処理のステップS2で開始され、ステップS6で終了する。
【0105】
サンプリンブ部61は、プリアンブル復号処理の一部として、受信信号のサンプリング処理を行う。ビット判別部62は、プリアンブル復号処理の一部として、ビットの判別処理を行う。
【0106】
図7Aは、受信信号の一例を示している。図7Bは、受信信号に対するサンプリングの結果の一例を示している。図7Cは、プリアンブル復号処理後の復号信号の一例を示している。
【0107】
図7Aにおいて、ビット区間は縦方向の点線で区切られている。図7Aの受信信号のうち、ビット区間をさらに一点鎖線で2等分した区間のそれぞれが1つの符号化ビットを示している。ビット区間の2つの符号化ビットにより、符号化ビット群が構成されている。図7Aの例では、受信信号のうち、符号化ビットq1乃至q8の区間は、それぞれ、Lowレベル,Highレベル,Highレベル,Lowレベル,Lowレベル,Highレベル,一部がLowレベルで他部がHighレベル,Lowレベルとなっている。
【0108】
即ち、符号化ビットq7の区間にはノイズが混入しており、一様にHighレベルになるべきところが、一部がLowレベルで他部がHighレベルとなっている。
【0109】
図7Aにおいて、下向きの複数の矢印のそれぞれは、受信信号におけるサンプリング点をそれぞれ示している。なお、この前提は、以降の受信信号を示す図においても同様である。即ち、この例では、ビット区間内に2つの矢印があるので、ビットサンプリング数が2とされてサンプリングが行われている。
【0110】
図7Bにおいて、各符号化ビットのサンプリング点についてのサンプリング結果が、各符号化ビットの下に記述されている。図7Bの例では、符号化ビットq1乃至q8に対するサンプリング結果は、0,1,1,0,0,1,0,0となっている。
【0111】
図7の例では、「Lowレベル」に近いサンプリング点が、「0」とサンプリングされていることがわかる。また、「Highレベル」に近いサンプリング点が、「1」とサンプリングされていることがわかる。
【0112】
即ち、サンプリング部61は、各符号化ビットに対してサンプリングし、「0」または「1」をサンプリング結果として出力する。なお、このときのサンプリングの規則としては、上述の如く、「Lowレベル」に近い符号化ビットを、「0」とサンプリングし、「Highレベル」に近い符号化ビットを、「1」とサンプリングする、といった規則が採用されている。
【0113】
図7Cにおいて、復号信号のうち、縦方向の点線で区切られた区間(ビット区間)のそれぞれが復号された1つのビットを示している。これらのビット区間のうち、Highレベルの区間が「1」として復号されたビットを示し、Lowレベルの区間が「0」として復号されたビットを示している。なお、これらの前提は、以降の復号信号の図においても同様である。図7Cの例では、復号されたビットp1乃至p4は、それぞれ、1,0,1,1となっている。
【0114】
上述した符号化ビットq1乃至q8に対するサンプリング結果を符号化ビット群毎にまとめると次のようになる。即ち、符号化ビット群(q1, q2)乃至(q7, q8)に対するサンプリング結果は、それぞれ、「0,1」,「1,0」,「0,1」,「0,0」となっている。なお、符号化ビット群(qi, q(i+1))とは、符号化ビットqiと符号化ビットq(i+1)からなる符号化ビット群をいう。
【0115】
図7の例では、「0, 1」や「0, 0」である符号化ビット群のサンプリング結果が、「1」のビットに復号されていることがわかる。「1, 0」である符号化ビット群のサンプリング結果が、「0」のビットに復号されていることがわかる。
【0116】
即ち、ビット判別部62は、符号化ビット群に対するサンプリング結果から、符号化前のビットを判別する。この判別されたビットが、復号されたビットとされる。復号された複数のビットからは、それらのビットにより構成される復号信号が得られる。なお、このときのビット判別の規則としては、次のような規則が採用されている。即ち、符号化ビット群のサンプリング結果が「0, 1」に近い場合、符号化前のビットを「1」のビットと判別する。符号化ビット群のサンプリング結果が「1, 0」に近い場合、符号化前のビットを「0」のビットと判別する、といった規則が採用されている。なお、符号化ビット群のサンプリング結果が「0, 0」または「1, 1」の場合、このサンプリング結果は、「0, 1」と「1, 0」のいずれにも同程度に近い。従って、この規則では、ビット判別ができないことになる。そこで、サンプリング結果が「0, 0」または「1, 1」の場合、例えば、一定のビット(例えば、「1」のビット)に判別する、といった特例的な規則が採用されている。
【0117】
なお、図7の例では、符号化ビット群(q7, q8)にノイズが混入している。この符号化ビット群(q7, q8)のサンプリング結果は、「0, 0」となっている。このサンプリング結果からは、符号化前のビットは、特例的な規則によりあるビットに判別されるに過ぎない。従って、この例では、符号化ビットに含まれるノイズを除去できるとは限らないことがわかる。
【0118】
図8は、プリアンブル復号処理のうちの、ビット割れ検出部63で行われる処理の一例を説明するための図である。プリアンブル復号処理は、上述の如く、復号制御処理のステップS2で開始され、ステップS6で終了する。
【0119】
デコード部54のビット判別部62は、プリアンブル復号処理として、ビット割れの判定処理を行う。
【0120】
なお、図8Aおよび図8Bは、それぞれ、図7Aおよび図7Bと同じ図である。従って、これらの図の説明を省略する。
【0121】
図8Cは、図8Aの受信信号を構成する各符号化ビットに対して予測されるサンプリング結果(以下、予測サンプリング結果と称する)の一例を示している。
【0122】
処理対象の符号化プリアンブルでは、符号化ビットの配列が予め決められており、各符号化ビットは固定の値になっている。この予め決められている符号化ビットを、受信する側の装置である携帯電子キー11内に記憶させておく。ビット割れ検出部63は、符号化ビットのサンプリング結果と、携帯電子キー11内に記憶されている符号化ビットからの予測サンプリング結果とを比較する。
【0123】
図8Cにおいて、各符号化ビットのサンプリング点についての予測サンプリング結果が、図8Aの各符号化ビットの下に記述されている。図8Cの例では、符号化ビットq1乃至q8に対する予測サンプリング結果は、0,1,1,0,0,1,1,0となっている。この符号化ビットq1乃至q8に対する予測サンプリング結果を符号化ビット群毎にまとめると次のようになる。即ち、符号化ビット群(q1, q2)乃至(q7, q8)に対する予測サンプリング結果は、それぞれ、「0,1」,「1,0」,「0,1」,「1,0」となっている。
【0124】
図8の例では、符号化ビット群(q7, q8)では、予測サンプリング結果が「1,0」であるのに対し、サンプリング結果が「0,0」である。このように、符号化ビット群のサンプリング結果と予測サンプリング結果が異なる場合、ビット割れと判定される。なお、ビット割れとは、上述したように、符号化ビット群に対するサンプリング結果のうちの少なくとも一部が誤っている状態をいう。
【0125】
即ち、ビット割れ検出部63は、サンプリング結果と予測サンプリング結果が一致する場合、その符号化ビット群をビット割れでないと判定する。また、ビット割れ検出部63は、サンプリング結果と予測サンプリング結果が一致しない場合、その符号化ビット群をビット割れであると判定する。
【0126】
次に、図9のフローチャートを参照して、デコード部54のプリアンブル復号処理の一例について説明する。プリアンブル復号処理は、上述の如く、復号制御処理のステップS2で開始され、ステップS6で終了する。図9は、符号化ビット群毎の処理を表している。即ち、復号制御処理のステップS2とステップS6の間、図9の処理が繰り返される。即ち、符号化プリアンブルを構成する符号化ビット群のそれぞれに対して、図9の処理がそれぞれ実行される。
【0127】
ステップS21において、サンプリング部61は、処理対象の符号化ビット群に対してサンプリングをおこない、「0」または「1」のサンプリング結果を出力する。出力されたサンプリング結果は、ビット判別部62およびビット割れ検出部63に供給される。
【0128】
ステップS22において、ビット判別部62は、処理対象の符号化ビット群に対するサンプリング結果から、符号化前の1つのビットを判別するビット判別を行う。この判別されたビットが、復号されたビットとされる。復号された複数のビットからは、これらの複数のビットにより構成される復調信号が得られる。この復調信号は、誤り訂正部55に供給される。
【0129】
ステップS23において、ビット割れ検出部63は、処理対象の符号化ビット群に対するサンプリング結果と予測サンプリング結果とを比較する。ビット割れ検出部63は、処理対象のサンプリング結果と予測サンプリング結果が一致する場合、その符号化ビット群をビット割れでないと判定する。また、ビット割れ検出部63は、処理対象のサンプリング結果と予測サンプリング結果が一致しない場合、その符号化ビット群をビット割れであると判定する。ビット割れ検出部63は、処理対象の符号化ビット群に対するビット割れの判定結果を、制御部25のビットサンプリング数変更部81に供給する。
【0130】
次に、図10を参照して、デコード部54のデータCRC復号処理の詳細について説明する。
【0131】
図10は、サンプリング部61およびビット判別部62で行われるデータCRC復号処理の一例を説明するための図である。データCRC復号処理は、上述の如く、復号制御処理のステップS6で開始され、ステップS8で終了する。
【0132】
本実施の形態では、データCRC復号処理は、プリアンブル復号処理のうち、ビット割れの判定処理が省かれた処理である。また、データCRC復号処理では、符号化データと符号化CRCに対して復号処理が施される。これらの符号化データと符号化CRCでは、通常、符号化ビットの配列が予め決められていない。従って、予測サンプリング結果を用意することができない。これにより、データCRC復号処理では、ビット割れの判定処理を行ったとしても意味のある結果が得られない。よって、データCRC復号処理では、プリアンブル復号処理のうち、ビット割れの判定処理が省かれた処理となっているのである。
【0133】
但し、データCRC復号処理を、プリアンブル復号処理と同じ処理とすることも可能である。
【0134】
図10Aは、受信信号の一例を示している。図10Bは、受信信号に対するサンプリング結果の一例を示している。図10Cは、データCRC復号処理後の復号信号の一例を示している。
【0135】
図10Aの例では、受信信号のうち、符号化ビットq1乃至q4の区間は、それぞれ、Lowレベル,Highレベル,Highレベル,一部がLowレベルで他部がHighレベルとなっている。受信信号のうち、符号化ビットq5乃至q8の区間は、それぞれ、Highレベル,Lowレベル, Lowレベル,Highレベルとなっている。
【0136】
図10Aの例では、符号化ビットq4の区間には、ノイズが混入しており、一様にLowレベルになるべきところが、一部がLowレベルで他部がHighレベルとなっている。
【0137】
この例では、ビットサンプリング数が4とされてサンプリングが行われている。
【0138】
図10Bの例では、符号化ビットq1乃至q8に対するサンプリング結果は、それぞれ、0,0,1,1,1,1,0,1,1,1,0,0,0,0,1,1となっている。
【0139】
図10の例でも、図7の例と同様に、「Lowレベル」に近いサンプリング点が、「0」とサンプリングされていることがわかる。また、「Highレベル」に近いサンプリング点が、「1」とサンプリングされていることがわかる。
【0140】
即ち、サンプリング部61は、各符号化ビットに対してサンプリングし、「0」または「1」をサンプリング結果として出力する。なお、このときのサンプリングの規則としては、上述の如く、「Lowレベル」に近い符号化ビットを、「0」とサンプリングし、「Highレベル」に近い符号化ビットを、「1」とサンプリングする、といった規則が採用されている。
【0141】
図10Cの例では、復号されたビットp1乃至p4は、それぞれ、1,0,0,1となっている。
【0142】
上述した符号化ビットq1乃至q8に対するサンプリング結果を符号化ビット群毎にまとめると次のようになる。即ち、符号化ビット群(q1, q2)乃至(q7, q8)に対するサンプリング結果は、それぞれ、「0,0,1,1」,「1,1,0,1」,「1,1,0,0」,「0,0,1,1」となっている。
【0143】
図10の例では、「0,0,1,1」である符号化ビット群のサンプリング結果が、「1」のビットに復号されていることがわかる。「1,1,0,0」や「1,1,0,1」である符号化ビット群のサンプリング結果が、「0」のビットに復号されていることがわかる。
【0144】
即ち、ビット判別部62は、符号化ビット群に対するサンプリング結果から、符号化前のビットを判別する。この判別されたビットが、復号されたビットとされる。復号された複数のビットからは、それらのビットにより構成される復調信号が得られる。なお、このときのビット判別の規則としては、次のような規則が採用されている。即ち、符号化ビット群のサンプリング結果が「0,0,1,1」に近い場合、復号すべきビットを「1」のビットに判別する。符号化ビット群のサンプリング結果が「1,1,0,0」に近い場合、復号すべきビットを「0」のビットに判別する、といった規則が採用されている。
【0145】
なお、図10の例では、符号化ビット群(q3, q4)の区間にノイズが混入している。この符号化ビット群(q3, q4)のサンプリング結果は、「1,1,0,1」となっている。このサンプリング結果は、サンプリング結果が「1,1,0,0」に近いので、復号すべきビットが「0」に判別される。従って、この例では、符号化ビットに含まれるノイズを除去できることがわかる。
【0146】
次に、図11のフローチャートを参照して、デコード部54のデータCRC復号処理の一例について説明する。データCRC復号処理は、上述の如く、復号制御処理のステップS6で開始され、ステップS8で終了する。図11は、符号化ビット群毎の処理を表している。即ち、復号制御処理のステップS6とステップS8の間、図11の処理が繰り返される。即ち、符号化データと符号化CRCを構成する符号化ビット群のそれぞれに対して、図11の処理がそれぞれ実行される。
【0147】
ステップS41において、サンプリング部61は、処理対象の符号化ビットに対してサンプリングをおこない、「0」または「1」のサンプリング結果を出力する。出力されたサンプリング結果は、ビット判別部62およびビット割れ検出部63に供給される。
【0148】
ステップS42において、ビット判別部62は、処理対象の符号化ビット群に対するサンプリング結果から、符号化前の1つのビットを判別するビット判別を行う。この判別されたビットが、復号されたビットとされる。復号された複数のビットからは、これらの複数のビットにより構成される復調信号が得られる。この復調信号は、誤り訂正部55に供給される。
【0149】
ところで、前述したように、ビットサンプリング数を増やすことで、符号化ビットに含まれるノイズを除去できることが知られている。このことを、次のシミュレーションにより確認する。
【0150】
図12は、サンプリングのシミュレーションについて説明するための図である。
【0151】
なお、図12Aは、図7Aと同じ図であり、その説明を、以下、適宜、省略する。また、図12Bの受信信号は、図12Aの受信信号と全く同じものである。
【0152】
図12Aのサンプリングのシミュレーションでは、受信信号を構成する符号化ビット群(q7, q8)にノイズが混入している。この符号化ビット群(q7, q8)に対するサンプリング結果は、「0, 0」となる。このサンプリング結果からは、符号化前のビットは、特例的な規則によりあるビットに判別される。従って、このシミュレーションでは、符号化ビットに含まれるノイズを除去できるとは限らないことがわかる。
【0153】
これに対して、図12Bのサンプリングのシミュレーションでは、ビットサンプリング数が2から4に増やされている。
【0154】
同じ符号化ビット群(q7, q8)に対するサンプリング結果は、「0, 1, 0, 0」となる。このサンプリング結果は、「1, 1, 0, 0」に近いので、符号化前のビット「0」に判別される。従って、このシミュレーションでは、符号化ビットに含まれるノイズを除去できていることがわかる。
【0155】
このシミュレーションにより、ビットサンプリング数を増やすことで、符号化ビットに含まれているノイズを除去できることが確認できた。
【0156】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、プログラム記録媒体からインストールされる。このプログラムは、例えば、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータにインストールされる。または、このプログラムは、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどにインストールされる。
【0157】
図13は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0158】
コンピュータにおいて、CPU101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103は、バス104により相互に接続されている。
【0159】
バス104には、さらに、入出力インタフェース105が接続されている。入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部106、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部107、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部108が接続されている。さらに、入出力インタフェース105には、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部109、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ110が接続されている。
【0160】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU101が、例えば、記憶部108に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース105及びバス104を介して、RAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0161】
コンピュータ(CPU101)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)であるリムーバブルメディア111に記録して提供される。プログラムは、パッケージメディアであるリムーバブルメディア111に記録して提供される。なお、パッケージメディアとしては、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどが用いられる。あるいは、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0162】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア111をドライブ110に装着することにより、入出力インタフェース105を介して、記憶部108にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部109で受信し、記憶部108にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM102や記憶部108に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0163】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0164】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0165】
本実施の形態では、携帯電子キーにより受信されるアナログ信号として、LF信号を採用している。但し、携帯電子キーにより受信されるアナログ信号の信号帯域は特に限定されず、例えば、UHF信号等を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】フレームの再送を説明するための図である。
【図2】符号化プリアンブルに基づく可変サンプリング手法の概要を説明するための図である。
【図3】パッシブエントリシステムの構成例を示す図である。
【図4】図3のLF用送信部31の符号化処理を説明するための図である。
【図5】図3の携帯電子キーの構成の詳細例を示す図である。
【図6】図5の制御部25による復号制御処理の一例を説明するフローチャートである。
【図7】図5のサンプリング部61およびビット判別部62のプリアンブル復号処理の詳細例を説明するための図である。
【図8】図5のビット判別部62のプリアンブル復号処理の詳細例を説明するための図である。
【図9】図5のデコード部54のプリアンブル復号処理の一例を説明するフローチャートである。
【図10】図5のサンプリング部61およびビット判別部62のデータCRC復号処理の詳細例を説明するための図である。
【図11】図5のデコード部54のデータCRC復号処理の一例を説明するフローチャートである。
【図12】サンプリングのシミュレーションを説明するための図である。
【図13】本発明を適用したコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0167】
11 携帯電子キー, 12 ECU, 21 LF用アンテナ, 22 LF用受信部, 23 UHF用送信部, 24 UHF用アンテナ, 25 制御部, 31 LF用送信部, 32 LF用アンテナ, 33 UHF用アンテナ, 34 UHF用受信部, 35 制御部, 51 増幅部, 52 フィルタ部, 53 復調部, 54 デコード部, 55 誤り訂正部, 61 サンプリング部, 62 ビット判別部, 63 ビット割れ検出部, 81 ビットサンプリング数変更部, 101 CPU, 102 ROM, 103 RAM, 104 バス, 105 入出力インタフェース, 106 入力部, 107 出力部, 108 記憶部, 109 通信部, 110 ドライブ, 111 リムーバブルメディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送開始を示す情報が格納された第1の部分と、データが格納される第2の部分を少なくとも含むフレームに対して、1のビットを複数ビットの集合体である符号化ビット群に変換する方式の符号化処理が施された結果として、前記第1の部分に対して前記符号化処理が施されることで得られる第1の符号化部分と、前記第2の部分に対して前記符号化処理が施されることで得られる第2の符号化部分とを少なくとも含む符号化フレームが得られ、その符号化フレームが送信元から送信されてきた場合、前記符号化フレームをアナログ信号として受信する受信手段と、
前記受信手段に受信された前記符号化フレームを、前記符号化ビット群に相当する区間を単位として、1単位につき2以上のサンプリング数でサンプリングするサンプリング手段と、
前記1単位分の前記サンプリング手段によるサンプリングの結果に基づいて、前記区間の符号化前のビットを判別する判別手段と、
前記第1の符号化部分に対する前記サンプリング手段によるサンプリングの結果に基づいて、前記第2の符号化部分に対する前記サンプリング手段によるサンプリングを行う場合のサンプリング数を変更する制御を行う制御手段と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記1単位分の前記サンプリング手段によるサンプリングの結果の誤りを検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1の符号化部分における前記サンプリングの結果についての前記検出手段の検出結果に基づいて、前記第2の符号化部分に対する前記サンプリング数を変更する制御を行う
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記符号化処理の方式は、マンチェスター方式である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
伝送開始を示す情報が格納された第1の部分と、データが格納される第2の部分を少なくとも含むフレームに対して、1のビットを複数ビットの集合体である符号化ビット群に変換する方式の符号化処理が施された結果として、前記第1の部分に対して前記符号化処理が施されることで得られる第1の符号化部分と、前記第2の部分に対して前記符号化処理が施されることで得られる第2の符号化部分とを少なくとも含む符号化フレームが得られ、その符号化フレームが送信元から情報処理装置に送信されてきた場合、
前記情報処理装置は、
前記符号化フレームをアナログ信号として受信し、
受信された前記符号化フレームを、前記符号化ビット群に相当する区間を単位として、1単位につき2以上のサンプリング数でサンプリングし、
前記1単位分のサンプリングの結果に基づいて、前記区間の符号化前のビットを判別し、
前記第1の符号化部分に対するサンプリングの結果に基づいて、前記第2の符号化部分に対するサンプリングを行う場合のサンプリング数を変更する制御を行う
ステップを含む情報処理方法。
【請求項5】
伝送開始を示す情報が格納された第1の部分と、データが格納される第2の部分を少なくとも含むフレームに対して、1のビットを複数ビットの集合体である符号化ビット群に変換する方式の符号化処理が施さた結果として、前記第1の部分に対して前記符号化処理が施されることで得られる第1の符号化部分と、前記第2の部分に対して前記符号化処理が施されることで得られる第2の符号化部分とを少なくとも含む符号化フレームが得られ、その符号化フレームが送信元から情報処理装置に送信されてきた場合、前記符号化フレームをアナログ信号として受信する受信装置を制御するコンピュータに実行させるステップとして、
受信された前記符号化フレームを、前記符号化ビット群に相当する区間を単位として、1単位につき2以上のサンプリング数でサンプリングし、
前記1単位分のサンプリングの結果に基づいて、前記区間の符号化前のビットを判別し、
前記第1の符号化部分に対するサンプリングの結果に基づいて、前記第2の符号化部分に対するサンプリングを行う場合のサンプリング数を変更する制御を行う
ステップを含むプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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