説明

情報処理装置および方法、並びにプログラム

【課題】練習者が楽器の練習を途中で止めたりせずに継続できるようにする。
【解決手段】楽譜DB22は、楽曲の楽譜情報を登録する。操作部12は、練習者により操作され、楽器の練習者における楽器の演奏に係る身体的な制限事項が入力されると、その情報を取得し制御部11に供給する。演奏レベル算出部20は、楽譜DB22に登録されている楽曲の楽譜情報と、制御部11より供給されてくる練習者の身体的な制限事項とに基づいて、楽曲を、楽器で演奏する際の演奏者に対する演奏困難度を演奏技術レベルとして算出する。本技術は、楽器練習装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、楽器の演奏技術を向上させるための練習を楽しみながら継続できるようにした情報処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
楽器の演奏技術を向上させるための練習を補助するための技術が提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−167341号公報
【特許文献2】特開2007−183660号公報
【特許文献3】特開2007−241026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの従来の楽器の演奏技術を高めるための楽器の練習を補助する装置およびソフトウェアには練習者に対する敷居を下げるため、または、エンターテインメント性を高めるための工夫がなされているが、それぞれ単機能または単目的であった。
【0005】
また、演奏技術向上を目的とした練習装置は既知であるが、技術向上のためだけに用意された楽譜が呈示されるため、練習者にとっては未知の楽曲である確率が高く、その楽譜の演奏をマスターすること自体にモチベーションを感じることはなかった。すなわち、特定箇所の反復練習など、練習者が演奏自体に心地よさを覚えることのない練習要素が多く、練習を継続させることが困難だった。しかも、反復練習により練習要素をマスターしても、公の場で演奏を求められる類の曲ではないため、発表曲は別途練習する必要があり、練習がつまらないものとなる恐れがあった。
【0006】
また、任意の楽譜を自動簡易化するという概念は公知であるが、簡易化の具体的方法について述べられた先行技術はなかった。
【0007】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、特に、楽器の演奏技術を向上させると共に、レパートリ数を増やせるように楽器の練習を補助するにあたり、練習者が練習そのものに飽きてしまったり、練習を挫折することのこないように練習曲となる楽譜を呈示できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の一側面の情報処理装置は、楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得部と、楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得部と、前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出部とを含む。
【0009】
前記楽器は鍵盤楽器とすることができ、前記演奏困難度算出部には、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の静的な配置を示す静指ベクトルを算出する静指ベクトル算出部と、前記静指ベクトルに基づいて、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の静的な困難度を示す静指困難度を算出する静指困難度算出部と、前記静指ベクトル間の前記演奏者の指の動的な変化を示す動指ベクトルを算出する動指ベクトル算出部と、前記動指ベクトルに基づいて、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の動的な困難度を示す動指困難度を算出する動指困難度算出部と、前記静指ベクトルと、前記動指ベクトルとの組み合わせである運指ベクトルを算出する運指ベクトル算出手段とを含み、前記楽曲内における所定の演奏技術に対する前記運指ベクトルの組み合わせからなる演奏技術要素毎に、前記運指ベクトルを構成する静指ベクトルおよび動指ベクトルに対する前記静指困難度および前記動指困難度から演奏技術レベルを算出し、前記楽曲に含まれる全ての演奏技術要素の演奏技術レベルの平均値を、前記楽曲の演奏困難度として算出する。
【0010】
前記演奏者により前記楽曲が、前記楽器により演奏されるとき、前記演奏された楽曲を聴取する聴取部と、前記聴取部により聴取された楽曲を楽譜に変換する楽譜変換部と、前記楽譜変換部により変換された楽譜と、前記楽曲の楽譜情報により得られる楽譜との比較により、前記演奏者の演奏レベルを求める演奏レベル算出部と前記演奏レベルに基づいて、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する推薦部とを含ませるようにすることができる。
【0011】
前記楽曲の原曲の楽譜を、前記演奏困難度を低減させるように簡易化する楽譜簡易化処理部を含み、前記推薦部は、前記演奏レベルが第1の所定の閾値よりも低い場合、前記楽譜簡易化処理部により簡易化された前記演奏困難度のより低い、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する。
【0012】
前記推薦部には、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高い場合、前記楽譜変換部により変換された前記演奏困難度のより高い、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦させるようにすることができる。
【0013】
前記推薦部には、前記演奏者の演奏レベルを向上させるモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏困難度がより高く、かつ、前記楽曲と原曲が同一の、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦させるようにすることができる。
【0014】
前記推薦部には、前記演奏者が演奏可能な楽曲のレパートリを増やすモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏困難度が略同一であって、かつ、前記楽曲とは原曲が異なる楽曲を推薦させるようにすることができる。
【0015】
前記推薦部には、前記演奏者の演奏レベルを向上させて、かつ、演奏可能な楽曲のレパートリを増やすモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏者の演奏可能なレパートリ数と、前記演奏者の演奏レベルに応じて、前記演奏困難度が略同一であって、かつ、前記楽曲とは原曲が異なる楽曲、または、前記演奏困難度がより高く、かつ、前記楽曲と原曲が同一の、前記楽曲とは異なる楽曲のいずれかを推薦させるようにすることができる。
【0016】
本技術の一側面の情報処理方法は、前記情報処理装置が、楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得処理し、楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得処理し、前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出処理する。
【0017】
本技術の一側面のプログラムは、コンピュータを、楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得部と、楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得部と、前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出部として機能させるためのプログラム。
【0018】
本技術の情報処理装置は、独立した装置であっても良いし、情報処理を行うブロックであっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本技術によれば、楽曲の演奏技術を向上させたり、レパートリ数を増やすための練習を楽しみながら継続できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本技術を適用した情報処理装置の実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】練習モードの種類を説明する図である。
【図3】練習モードの種類を説明する図である。
【図4】練習支援処理を説明するフローチャートである。
【図5】YGレベル簡易確認処理を説明するフローチャートである。
【図6】楽譜簡易化処理を説明するフローチャートである。
【図7】楽譜簡易化処理を説明する図である。
【図8】静指ベクトルを説明する図である。
【図9】静指困難度を説明する図である。
【図10】楽器の演奏に係る身体的制限を説明する図である。
【図11】静指ベクトルの変化を説明する図である。
【図12】指1本の動きに着目した状態遷移図を説明する図である。
【図13】動指ベクトルを説明する図である。
【図14】動指困難度を説明する図である。
【図15】運指ベクトルを説明する図である。
【図16】演奏技術要素を説明する図である。
【図17】楽曲の演奏技術要素毎のYGレベルを説明する図である。
【図18】静指困難度の簡易化する説明する図である。
【図19】静指困難度の簡易化する説明する図である。
【図20】転回を用いた簡易化する説明する図である。
【図21】動指困難度の簡易化する説明する図である。
【図22】動指困難度の簡易化する説明する図である。
【図23】動指困難度の簡易化された楽譜の例を説明する説明する図である。
【図24】Δtを増大することで簡易化された楽譜の例を説明する説明する図である。
【図25】簡易化された楽譜の例を説明する説明する図である。
【図26】簡易化された楽譜の例を説明する説明する図である。
【図27】YGレベル判定処理を説明するフローチャートである。
【図28】評価値計算処理を説明するフローチャートである。
【図29】評価値計算処理を説明するフローチャートである。
【図30】レパートリ数分布を説明する図である。
【図31】同一YGレベル楽曲推薦処理を説明するフローチャートである。
【図32】その他の同一YGレベル楽曲推薦処理を説明するフローチャートである。
【図33】類似度の算出方法を説明する図である。
【図34】類似度の算出方法の例を説明する図である。
【図35】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[本技術を適用した情報処理装置の構成例]
図1を参照して、本技術を適用した情報処理装置の構成例について説明する。
【0022】
図1の情報処理装置は、練習者が楽器の演奏の練習をする際、練習者の演奏技術を向上させると共に、練習者により演奏できる楽曲のレパートリ数を向上させるように練習すべき楽譜(目的楽譜)を練習曲として練習者の演奏技術に合わせて呈示することにより、演奏練習を補助するものである。図1の情報処理装置1については、ピアノやエレクトーンなどの鍵盤楽器の演奏練習を対象とした例について説明するものとするが、本技術を応用することにより、他の楽器についての演奏練習を補助することも可能である。
【0023】
情報処理装置1は、制御部11、操作部12、演奏情報記録部13、評価部14、学習選択部15、練習者情報記録保持部16、楽譜推薦部17、および楽譜簡易化処理部18を備えている。また、情報処理装置1は、呈示部19、演奏レベル算出部20、楽譜選択部21、楽譜データベース(DB)22、および新規楽譜登録部23を備えている。
【0024】
制御部11は、マイクロコンピュータなどから構成されており、情報処理装置1における動作の全体を制御している。操作部12は、練習者により操作されるキーボードや操作ボタンなどにより構成されており、練習モード、演奏したい楽曲、および練習者の身体的制限(制約)情報を入力するとき操作され、操作内容に応じた操作信号を発生する。演奏情報記録部13は、練習者により楽器が演奏されるとき、その練習者の演奏を記録して評価部14に供給する。より詳細には、演奏情報記録部13は、マイクロフォン13a、カメラ13b、およびセンサ13cを備えている。マイクロフォン13aは、練習者が演奏することにより鍵盤楽器から発せられる音声を取得し記録する。カメラ13bは、鍵盤やペダルなどの演奏に係る練習者の指使い(どの指がどの鍵盤を押下しているか)がわかる画像を撮像する。センサ13cは、楽器の鍵盤やペダルなどに対しての押圧操作に係る圧力等を測定し、練習者の演奏時の強弱を測定する。演奏情報記録部13は、マイクロフォン13a、カメラ13b、およびセンサ13cにより計測される音声、画像、および圧力測定結果を演奏情報として記録し、評価部14に供給する。
【0025】
評価部14は、演奏情報記録部13より供給されてくる演奏情報に基づいて、練習者による演奏を練習者の演奏技術レベルとして評価値を求め、練習者情報としてハードディスクなどからなる練習者情報記録保持部16に練習者に対応付けて保持させる。より詳細には、評価部14は、簡易評価部51、および楽譜変換部52を備えている。簡易評価部51は、練習者を登録する際、最初の練習者の演奏技術レベル(以下、YGレベルとも称する)を簡易的に求める。より詳細には、評価部14によりなされる練習者のYGレベルを求める際に、マイクロフォン13aにより取得される音声、カメラ13bにより撮像される演奏時の練習者の指使いの画像、およびセンサ13cにより計測される鍵盤を押下する圧力の情報に基づいて、練習者のYGレベルを求めるのに対して、簡易評価部51は、マイクロフォン13aにより取得される音声のみで練習者のYGレベルを求めるため、「簡易」と付されている。楽譜変換部52は、マイクロフォン13aにより取得される練習者が楽器を演奏する際に取得される音声に基づいて、演奏音声を楽譜(演奏楽譜)に変換する。簡易評価部51は、このようにして変換された楽譜である演奏楽譜と、練習者に呈示される楽譜である目的楽譜との比較によりYGレベルを簡易的に求める。
【0026】
学習選択部15は、操作部12が操作されて、練習者に対して練習曲として推薦する楽曲を選択する際の練習モードを選択する操作信号が発せられた場合、対応する練習モードの情報を制御部11に供給する。ここで、練習モードは、第1乃至第3モードの三種類が有る。第1モードは、練習者が演奏できるようにしたいと希望する楽曲の演奏技術を高めていくように練習曲を順次推薦して呈示して行く練習モードである。また、第2モードは、練習者の演奏レベルで演奏可能な楽曲のレパートリを増やすように練習曲を順次推薦して呈示して行く練習モードである。さらに、第3モードは、演奏技術を高めつつ、演奏可能な楽曲のレパートリを増やすように練習曲を順次推薦して呈示する練習モードである。
【0027】
楽譜推薦部17は、練習者情報記録保持部16に記録されている練習者の練習者情報に含まれている練習者のYGレベルに対応する楽曲を楽譜DB22に登録されている楽譜から選択し、選択した楽譜の情報を楽譜選択部21に供給する。楽譜選択部21は、推薦された楽譜のデータを楽譜DB22より読み出して、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electronic Luminescent)などからなる呈示部19に練習曲である目的楽譜として呈示させる。練習者は、呈示部19に練習曲として呈示される楽譜を見ながら楽器を演奏し練習を繰り返す。
【0028】
楽譜簡易化処理部18は、原曲の楽譜を最高難易度として順次原曲の音楽性を維持しながら楽譜を段階的に簡易化し、練習者のYGレベルに応じた楽譜を練習曲として呈示部19に呈示する。従って、楽譜簡易化処理部18は、最初の処理では、制御部11より供給されてくる練習者のYGレベルに対応する楽譜になるまで簡易化処理を繰り返し、練習者のYGレベルに対応する楽譜を練習曲として呈示部19に呈示させる。この際、演奏レベル算出部20は、順次生成される簡易化された楽譜と、練習者の手の大きさ、または指の長さなどの身体的制限の情報とに基づいて、楽曲および練習者毎のYGレベルを算出し楽譜簡易化処理部18に供給する。
【0029】
より詳細には、演奏レベル算出部20は、演奏技術要素リスト31、静指ベクトル算出部32、静指困難度算出部33、動指ベクトル算出部34、動指困難度算出部35、および運指ベクトル算出部36を備えている。静指ベクトル算出部32は、楽譜に基づいて所定の時間単位で順次鍵盤が押下されるときの指の配列をベクトル化した静指ベクトルを求める。静指困難度算出部33は、静指ベクトル毎に身体的制限に基づいて設定される困難度を算出する。動指ベクトル算出部34は、順次求められる静指ベクトルの差分で定義される動指ベクトルを算出する。動指困難度算出部35は、求められた動指ベクトル毎に身体的制限に基づいて設定される困難度を算出する。
【0030】
運指ベクトル算出部36は、隣接する静指ベクトルと、隣接する静指ベクトル間の差分から求められる動指ベクトルとから運指ベクトルを算出する。演奏レベル算出部20は、演奏技術要素リスト31に登録されている、運指ベクトルの組み合わせから予め定められている演奏技術要素を検索し、検索された演奏技術要素毎に、その要素となる静指困難度、および動指困難度に基づいて演奏技術要素毎の困難度を設定する。そして、演奏レベル算出部20は、楽曲に含まれる全ての演奏技術要素に設定される困難度の平均値を、楽譜の演奏技術レベル、すなわち、YGレベルとして算出する。尚、YGレベルの算出については、詳細を後述する。この間、新規楽譜登録部23は、順次繰り返し生成される簡易化された楽譜を、新規楽譜としてYGレベルと共に楽譜DB22に登録する。
【0031】
[練習モード]
次に、図2,図3を参照して、情報処理装置1における練習モードの詳細について説明する。
【0032】
情報処理装置1は、上述したように第1乃至第3モードの3種類の練習モードを設定することができる。
【0033】
すなわち、図2で示されるように、横軸を練習者が演奏可能な楽曲数、すなわち、レパートリ数とし、縦軸を練習者のYGレベルであるものとすると、3種類の練習モードは、それぞれ矢印A乃至Cで示される順序で適切な楽曲を練習曲として呈示する。すなわち、図2における矢印Aは、第1モードにおける楽曲の呈示順序を示しており、第1モードが同一の楽曲について、YGレベルを高めていくように練習曲の楽譜を呈示していく練習モードであることを示している。したがって、練習モードが第1モードの場合、同一の楽曲について、徐々に楽譜のYGレベルが高められるように楽曲の演奏技術レベルを変えた練習曲の楽譜が呈示されるため、レパートリ数は増えないが、特定の楽曲に対しては高いYGレベルを獲得することが可能となる。すなわち、第1モードの場合、練習者がどうしてもこの楽曲を演奏できるようになりたいといった動機で練習するのに適した練習モードであるといえる。
【0034】
また、図2における矢印Cは、第2モードにおける楽曲の呈示順序を示しており、第2モードが、同一のYGレベルの楽曲であるが演奏できる楽曲数を増やしていくように練習曲の楽譜を呈示していく練習モードであることを示している。したがって、練習モードが第2モードの場合、徐々にレパートリが増えていくように練習曲の楽譜が呈示されるため、YGレベルは高められないが、特定のYGレベルの楽曲については演奏可能な楽曲数、すなわち、レパートリ数を増やすことが可能となる。すなわち、第2モードの場合、練習者が飽きっぽい性格などであって、なかなか練習を継続できないので、レパートリを増やして飽きのこない練習を継続できるようにしたいといった動機で練習するのに適した練習モードであるといえる。
【0035】
さらに、図2における矢印Bは、第3モードにおける楽曲の呈示順序を示しており、第3モードが、YGレベルを高めると共に、レパートリ数を増やしていくように練習曲の楽譜を呈示していく練習モードであることを示している。したがって、練習モードが第3モードの場合、YGレベルを高めつつ、かつ、レパートリ数が増えていくように様々な原曲の楽譜が練習曲として呈示されるため、練習者の演奏技術レベルとレパートリ数とを総合的に高めることが可能となる。
【0036】
より具体的には、原曲の楽譜からなる楽曲が楽曲a乃至cであり、YGレベルが1乃至3であるとき、原曲の楽譜のYGレベルが最も困難である3であるとしたとき、原曲の楽譜は、楽譜a3,b3,c3であるものとする。また、これらの楽譜a3,b3,c3を簡易化し、YGレベルを1段下げた2の楽譜を楽譜a’2,b’2,c’2であるものとする。さらに、これらの楽譜a’2,b’2,c’2をさらに簡易化し、YGレベルを1段下げた1の楽譜を楽譜a’1,b’1,c’1であるものとする。横軸をレパートリとなる楽曲として、縦軸をYGレベルとした場合、これらの楽譜は図3で示されるように配置される。
【0037】
情報処理装置1が、例えば、練習者に提示する練習曲である楽曲をレパートリ数を増やすに当たり、楽曲a,b,cの順序で練習曲を推薦するものとする。この場合、情報処理装置1は、練習モードが第1モードであるとき、一番最初に楽譜a’1を練習曲として推薦し、練習者が、この楽譜a’1を十分に演奏できるとみなすと、原曲が同一の楽譜a’2を推薦する。さらに、情報処理装置1は、練習者が、この楽譜a’2を十分に演奏できるとみなすと、原曲である楽譜a3を推薦する。練習者は、このような練習モードにより自らが演奏したいと思う楽曲について、最も簡易化された楽譜を用いて練習を開始し、徐々にYGレベルを上げながら、最終的には原曲の楽譜を演奏することが可能となる。
【0038】
また、情報処理装置1は、練習モードが第2モードであるとき、一番最初に楽譜a’1を練習する楽曲として推薦し、練習者が、この楽譜a’1を十分に演奏できるとみなすと、原曲は異なるが、同一YGレベルの楽譜b’2を推薦する。さらに、情報処理装置1は、練習者が、この楽譜b’1を十分に演奏できるとみなすと、楽譜c’1を推薦する。練習者は、このような練習モードにより最も簡易化された楽譜のみであるが、演奏可能な楽曲のレパートリ数を増やすことが可能となる。
【0039】
さらに、情報処理装置1は、練習モードが第3モードであるとき、一番最初に楽譜a’1を練習する楽曲として推薦し、練習者が、この楽譜a’1を十分に演奏できるとみなすと、原曲が同一の楽譜a’2を推薦する。さらに、情報処理装置1は、練習者が、この楽譜a’2を十分に演奏できるとみなすと、原曲は異なるが同一YGレベルである楽譜b’2を推薦する。情報処理装置1は、練習者が、この楽譜b’2を十分に演奏できるとみなすと、原曲は異なるが、同一YGレベルの楽譜c’2を推薦する。さらに、情報処理装置1は、練習者が、この楽譜c’2を十分に演奏できるとみなすと、原曲は同一であるが、YGレベルが1段階高い楽譜c3を推薦する。練習者は、このような練習モードにより自らが演奏したいと思う楽曲について、最も簡易化された楽譜を用いて練習を開始し、原曲が異なる楽曲を練習しつつ、徐々にYGレベルを上げながら、最終的には自ら演奏したい楽曲とは異なるが、自らが演奏したいと考える楽曲のYGレベルと同一の楽譜を演奏することが可能となる。この時点では、現実にはYGレベルも高められていると考えられるので、練習者は、自ら演奏したいと思っていた楽曲a3についても、または、楽曲a2についても容易に演奏することが可能になっていると考えることができる。すなわち、第3モードにおいては、練習者はYGレベルを高めつつ、レパートリを増やすことが可能となる。ただし、第3モードの場合、図3で示されるように、上達には多少時間が係ることが予想される。
【0040】
[練習支援処理]
次に、図4のフローチャートを参照して、図1の情報処理装置1による、楽器演奏の練習者に対する練習支援処理について説明する。
【0041】
ステップS1において、制御部11は、呈示部19を制御して、練習者に対して必要な情報、すなわち、練習により弾けるようになりたい楽曲、練習者情報、および練習モードの入力を要求する画像を呈示させる。ここで、練習者情報とは、練習者の顔画像、氏名(ハンドルネームなど)、演奏技術レベル(YGレベル)、および身体的制限情報である。練習者のYGレベルは、例えば、10段階としたときに、自らのYGレベルを申告させるようにしてもよいし、何らかの楽曲の譜面を呈示して演奏させ、演奏された楽曲を評価して求めるようにしてもよい。尚、後述するが、ここでは、何らかの楽曲の譜面を呈示して演奏させて、演奏された楽曲により評価する場合の例について説明するものとする。身体的制限情報とは、練習者が楽器を演奏するに当たり、身体的に制限される情報を示し、例えば、練習者の手の大きさや指の長さなどの情報である。これらの情報は、演奏情報記録部13に設けられたカメラ13bなどで撮像するようにしてもよいし、長さをテンキーなどで入力するようにしてもよい。
【0042】
ステップS2において、制御部11は、操作部12が操作されて、楽曲、練習者情報、および練習モードが入力されたか否かを判定し、入力されたと判定されるまで、同様の処理が繰り返される。そして、ステップS2において、操作部12が操作されて、楽曲、練習者情報、および練習モードが入力されたとみなされた場合、処理は、ステップS3に進む。
【0043】
ステップS3において、制御部11は、操作部12が操作されて入力された練習者情報に基づいて、練習者情報記録保持部16に保持されている練習者情報を検索して、同一の情報が登録されているか否かを判定する。すなわち、既に、練習支援を受けたことがある練習者であるか否かが判定される。ステップS3において、例えば、練習者情報が存在しない、すなわち、初めて練習支援を受ける練習者であるとみなされた場合、処理は、ステップS4に進む。
【0044】
ステップS4において、制御部11は、評価部14を制御して、YGレベル簡易確認処理を実行させて、練習者のYGレベルを簡易的に確認する。
【0045】
[YGレベル簡易確認処理]
ここで、図5のフローチャートを参照して、YGレベル簡易確認処理について説明する。
【0046】
ステップS31において、評価部14の簡易評価部51は、楽譜DB22にアクセスし、課題曲となる楽曲の楽譜を選択して、読み出す。簡易評価部51は、YGレベルが平均的なレベルの楽曲の楽譜を選択するようにしてもよいし、簡易的にYGレベルを計測するために予め定められている楽曲の楽譜を選択するようにしてもよい。また、簡易的にYGレベルが計測できればよいので、比較的短めの楽曲の楽譜を選択するようにしてもよい。
【0047】
ステップS32において、簡易評価部51は、楽譜DB22より読み出した楽曲の楽譜を呈示部19に呈示(提示)して練習者が演奏できるように表示し、練習者に演奏するように促す情報を表示する。これにより、練習者は楽譜を見ながら演奏する。
【0048】
ステップS33において、簡易評価部51は、演奏情報記録部13のマイクロフォン13aを制御して記録される演奏情報を順次取得する。すなわち、マイクロフォン13aは、練習者により演奏される楽器の音声を取得する。
【0049】
ステップS34において、簡易評価部51は、演奏情報と呈示した楽譜とを比較して類似度を算出する。より詳細には、簡易評価部51は、楽譜変換部52を制御して、マイクロフォン13aにより取得される音声の情報からなる楽譜、すなわち、演奏楽譜に変換させ、呈示した楽譜との比較により再現性があるか否かに基づいて類似度を算出する。すなわち、簡易評価部51は、例えば、呈示した楽譜の音の全てを基準として、演奏楽譜と一致しているか否かを比較し、一致している割合を類似度として算出する。
【0050】
ステップS35において、簡易評価部51は、類似度がYGレベルの標準レベルの上限となる閾値よりも高いレベルであるか否かを判定し、例えば、類似度がYGレベルの標準レベルの上限となる閾値よりも高いレベルではない場合、処理は、ステップS36に進む。
【0051】
ステップS36において、簡易評価部51は、類似度がYGレベルの標準レベルの下限となる閾値よりも低いレベルであるか否かを判定し、例えば、類似度がYGレベルの標準レベルの下限となる閾値よりも低いレベルではない場合、すなわち、標準レベルである場合、処理は、ステップS37に進む。
【0052】
ステップS37において、簡易評価部51は、練習者のYGレベルが標準レベルであるものとみなし、練習者情報として簡易的に求められたYGレベルを練習者のYGレベルとして練習者情報記録保持部16に保持させる。
【0053】
また、ステップS36において、類似度がYGレベルの標準レベルの下限となる閾値よりも低いレベルである場合、ステップS38において、簡易評価部51は、練習者のYGレベルが下級レベルであるものとみなし、練習者情報として簡易的に求められたYGレベルを練習者のYGレベルとして練習者情報記録保持部16に保持させる。
【0054】
さらに、ステップS35において、類似度がYGレベルの標準レベルの上限となる閾値よりも高いレベルである場合、ステップS39において、簡易評価部51は、練習者のYGレベルが上級レベルであるものとみなし、練習者情報として簡易的に求められたYGレベルを練習者のYGレベルとして練習者情報記録保持部16に保持させる。
【0055】
以上の処理により、YGレベルが3段階であれば、上級レベル、標準レベル、および下級レベルに分類することが可能となる。尚、これ以上のレベル数である場合については、標準レベルの上限を超えたときに、呈示した楽曲よりも上位のYGレベルの楽曲の楽譜を再度呈示して演奏させることを繰り返し、標準レベルの下限を下回ったときには、呈示した楽曲よりも下位のYGレベルの楽曲の楽譜を再度呈示して演奏させることを繰り返すことで、練習者のYGレベルがより多くの段階であっても確認することができる。また、YGレベルが、100段階程度に設定されている場合、上述した手法において求められた上級レベル、標準レベル、および下級レベルに対して、例えば、代表値として、30,50,80の仮のYGレベルを簡易的に設定するようにしてもよい。
【0056】
ここで、図4のフローチャートの説明に戻る。
【0057】
ステップS4の処理により、YGレベル簡易確認処理が実行されて、練習者のYGレベルが簡易的に求められると、ステップS5において、制御部11は、練習者情報記録保持部16にアクセスし、練習者のYGレベルを読み出し、楽譜簡易化処理部18に供給し、練習者が演奏したい楽譜を、練習者のYGレベル、または、その近傍のYGレベルにまで簡易化するように指令する。楽譜簡易化処理部18は、この指令に基づいて、楽譜簡易化処理を実行して、練習者が演奏したい楽譜を、楽曲の音楽性を残しつつ、練習者のYGレベル、または、その近傍のYGレベルにまで簡易化する。このとき、楽譜選択部21は、操作部12により入力された、練習者が演奏したい楽曲の楽譜の情報を取得しており、楽譜DB22より読み出して呈示部19に供給された状態となっている。
【0058】
[楽譜簡易化処理]
ここで、図6のフローチャートを参照して、楽譜簡易化処理について説明する。
【0059】
ステップS51において、演奏レベル算出部20は、呈示部19に読み込まれている楽曲の楽譜の情報を読み出し、楽曲全体のYGレベルを算出するに当たり、静指ベクトル算出部32を制御して、楽曲の静指ベクトルを算出させる。
【0060】
[楽曲の演奏に必要なYGレベル]
ここで、楽曲の楽譜に基づいたYGレベル、すなわち、演奏に必要とされる演奏技術レベルの算出方法について説明する。
【0061】
楽曲の楽譜に基づいたYGレベルを求めるにあたり、静指ベクトル、動指ベクトル、および、それらの組み合わせである運指ベクトルが定義されており、静指ベクトル、および動指ベクトルに対して静指困難度、動指困難度が定義されている。最終的には、楽曲の楽譜に基づいた演奏に必要なYGレベルは、静指困難度および動指困難度から算出される。
【0062】
まず、静指ベクトル算出部32は、楽譜に記述された演奏情報を細かい時間単位に分解する。例えば、図7で示されるように、楽譜に記述された音符の変化点を区切りとして、時刻t1乃至t5というように離散的に楽譜を最小単位に標本化する。各演奏標本点の時刻は音符の変化点となっているため、標本化周期は等間隔にはならない。例えば、図7で示される楽譜の場合、演奏テンポは120BPM(Beat per min)なので四分音符1当たりの演奏時間は約500m秒となり、八分音符は1当たり250m秒となる。それゆえ、時刻t2乃至t1間の時間は500m秒、時刻t3乃至t2間の時間は250m秒となる。
【0063】
また、図8の右上部で示されるように、鍵盤楽器の鍵盤には左から順番に各鍵盤固有の番号(鍵盤番号)を付与するものとする。例えば、88個の鍵盤中の最も低い音の番号を1として、音が1上がる毎に番号を2,3・・・のように1ずつ増やしながら連番の鍵盤番号を与えるものとする。ここで、例えば、白鍵1と白鍵2の間に黒鍵が存在する場合、黒鍵の鍵盤番号は1.5とする。もちろん、白鍵と黒鍵を混合しての連番を与えても良い。
【0064】
また、図8の左部で示されるように、演奏する左右の手の指にも各指固有の番号(指番号)を付与するものとする。例えば、各指番号は図8の左部で示されるように、左手の親指、人差し指、中指、薬指、小指の順番が指番号0乃至4とされ、右手の親指、人差し指、中指、薬指、小指の順番が指番号5乃至9とされる。
【0065】
上記の表記方法を用いると各演奏標本点で演奏する手の指の状態を行列で表現することができる。例えば、図8の右下部に示すように、左手の親指、中指、小指でドミソ、右手の親指でドを演奏する場合、両手各指は左から順に鍵盤番号1,3,5,8を押下している。指がどの鍵盤も押下していない場合、鍵盤番号は0とされる。これに演奏時刻0.1秒の情報を加えて図8の右下部のように行列で表記したものが、静指ベクトルSVである。静指ベクトルSVは各演奏標本点の鍵盤を押下している指の状態を表している。
【0066】
すなわち、ステップS51において、静指ベクトル算出部32は、以上のように定義される静指ベクトルを算出する。図8を参照して、静指ベクトルを定義したが、演奏標本点である静指ベクトルは、様々な楽曲が存在するため数多く存在することになる。
【0067】
ステップS52において、静指困難度算出部33は、静指ベクトルに基づいて静指困難度を算出する。
【0068】
ここで鍵盤楽器の演奏の困難度について考える。鍵盤楽器の演奏の困難度を考える場合、1には、指の押下パターンの難易度が考えられる。例えば、1オクターブ近い音程の開きがある和音を片手だけで押下するのは身体的に困難な作業である。
【0069】
静指困難度算出部33は、静指ベクトル毎に指押下のパターンの困難度を算出する。すなわち、指押下の困難度は、手の骨格(手の大きさ、指の長さなど)、および筋肉などの身体的制限情報、並びに、鍵盤楽器鍵盤の物理的な形状条件に依存するものであると考えることができる。静指困難度算出部33は、練習者情報として入力されている身体的制限情報に基づいた指の押下の困難度を、静指困難度と定義し、各静指ベクトル毎に静指困難度を設定する。したがって、同一の楽曲であっても、練習者毎に静指困難度は異なることになる。
【0070】
静指困難度算出部33は、例えば、0.0(最も容易)乃至100.0(最も困難)というように、静指困難度を連続的な値として与える。また、図9で示されるように、静指困難度算出部33は、演奏時刻を除く、左手と右手のパターンに分けて、それぞれ左手困難度SDL、および右手困難度SDRを定義しても良い。この場合、1の静指ベクトルに左右の2の手の困難度が定義される。
【0071】
より具体的には、例えば、鍵盤楽器の鍵盤の総数を88鍵とすると、左手の指5本以下を使った押下パターン総数は、以下の式(1)のように求められることになるので、約50億通り存在することになる。したがって、左右合わせて約100億通りであり、有限の数である。この総数は純粋に数学的な算出で求められるものであるため、現実的に押下不可能なパターンがほとんどであり、静指困難度は、ほとんどが100.0になることがわかる。
【0072】
【数1】

【0073】
ここで、第1項乃至第5項の各項は、親指、人差し指、中指、薬指、および小指のそれぞれについての配置パターン数である。
【0074】
そこで、静指困難度については、100.0より小さい押下パターンについて、各練習者毎に予め全ての困難度を求めておくことにより、係数テーブル化しておくようにしてもよい。尚、静指ベクトルと、対応する静指困難度の求め方については、教師演奏者が主観で定義しても良いし、数多くの演奏者の演奏ミス情報から統計的に求めても良い。また、静指ベクトルと、対応する静指困難度の求め方については、指の形状、鍵盤の距離、および身体的制限情報をモデル化し、計算により簡易的に自動生成するようにしてもよい。
【0075】
身体的制限情報については、例えば、図10で示されるように、各指の物理的な距離や掌の鍵盤に対する角度によって指の届く範囲が制限されることを示す情報である。静指困難度算出部33は、例えば、図10の距離制約には手の大きさを示す身体的制限情報に基づいて、練習者情報における手の大きさや指の長さの情報を利用する。しかしながら、鍵盤間の距離が大きくなるほど困難度が上がる傾向は同じであるため、相対的な静指困難度を計算によって求める場合、静指困難度算出部33は、標準的な手の大きさをモデルにして求め、練習者情報の手のサイズを用いて拡大、または縮小するようにしてもよい。また、図10で示されるように、指番号9の指が押下する鍵盤の鍵盤番号が指番号7の指により押下される鍵盤の鍵盤番号以下になることはないといった、事前の制約条件を用意しておくことで困難度を求めるべきパターン数を大幅に低減することができ、テーブル計算を効率的に行うことができる。
【0076】
尚、図10の下部においては、上から右手親指と人差し指との距離は最大鍵盤5個分であり、右手親指と中指との距離は最大鍵盤7.5個分であり、右手人差し指と中指との距離は最大鍵盤3個分であり、右手薬指と小指との距離は最大鍵盤1.5個分であるという制約条件が示されている。したがって、図10の上部で示される右手の親指と人差し指との間隔は、2.5(鍵盤2.5個分)であるので、距離制約である5の半分程度であるので困難度は中程度であると考えることができる。一方、人差し指と中指との間隔は3(鍵盤3個分)であるので、距離制約である3と同一であることから、困難度が高いと考えることができる。このように各指間の距離制約の、例えば、平均値などから静指困難度は設定される。
【0077】
加えて、この係数テーブルは一度作成しておけばよいものであり、演奏毎に作成し直すものではないため、係数テーブル作成コストは初回作成時のみとすることができる。したがって、この場合、ステップS52の処理は、静指ベクトルに対応する静指困難度をテーブルから読み出す処理となる。
【0078】
ステップS51,S52の処理により、静指ベクトルが求められて、静指困難度が求められると、ステップS53において、動指ベクトル算出部34は、求められた静指ベクトル間の差分となる動指ベクトルを算出する。
【0079】
ここで、動指ベクトルについて説明する。実際の鍵盤楽器の演奏は、静指ベクトルの変化と捉えることができる。すなわち、図11で示されるように。例えば、時刻t1でドミソドを弾き、時刻t2でドミソドミを弾く場合、静指ベクトルSV1から静指ベクトルSV2へと変化する。図11の例では、時々刻々静指ベクトルSV1乃至SV4へと変化している様子が示されている。すなわち、時刻t1において、ベクトルSV1は、上から[0.1,1,0,3,0,5,8,0,0,0,0]であり、時刻t2において、ベクトルSV2は、上から[0.3,1,0,3,0,5,8,0,10,0,0]である。また、時刻t3において、ベクトルSV3は、上から[0.6,5,0,7,0,9,0,0,0,0,0]であり、時刻t4において、ベクトルSV4は、上から[0.9,5,0,7,0,9,11,0,0,0,0]である。
【0080】
ここで静指ベクトルが変化する場合の1本の指の動きに着目する。図12には、1本の指の動きの状態遷移図が示されている。通常、何も演奏していない場合、指は自由状態である。また、何らかの鍵盤が押下されている場合、固定状態であるとする。ここで、この2つの状態を遷移するパターンとして、遷移A,B,C,Dの4つの遷移パターンが定義できる。すなわち、遷移Aは、指が自由状態から固定状態になる遷移である。すなわち、ある指が自由状態から何らかの鍵盤を押下する動作に相当する状態遷移を示している。遷移Bは、指が固定状態から自由状態になる遷移である。すなわち、ある指が鍵盤を押下している状態から解放する動作に相当する状態遷移を示している。遷移Cは、指が同じ鍵盤を固定して押下している状態である。すなわち、例えば、ある時刻で親指がドの鍵盤を押下している。次の時刻で親指をそのままにして小指が別の鍵盤の押下をする場合、この親指の動作が遷移Cに相当する状態遷移を示している。遷移Dは、指がある鍵盤を押下している状態から、次の時刻において別の鍵盤を押下する動作である。すなわち、例えば、ある時刻で親指がドの鍵盤を押下し、次の時刻で親指がミの鍵盤を押下する場合、この親指の動作が遷移Dに相当する状態遷移を示している。また、同じ鍵盤を同じ指でもう一度打鍵する場合も遷移Dに相当する状態遷移を示している。遷移Eは、指が同じ鍵盤を連打する動作であり、遷移Dの一種の状態遷移を示している。
【0081】
さらに、図13で示されるように、静指ベクトルSV1からSV2へと遷移する場合、多くの指が短時間で動くことになる。この動きを表したものが動指ベクトルMVと定義される。
【0082】
例えば、静指ベクトルSV1から静指ベクトルSV2へと変化する場合、動指ベクトルMV1は、静指ベクトルSV2−静指ベクトルSV1として求められる。動指ベクトルMV1は時刻t2の静指ベクトルSV2から時刻t1の静指ベクトルSV1を引いたものであり、2つの静指ベクトル間の差分ベクトルとなる。行列の一番上の要素は差分時間を表している。
【0083】
例えば、図13の動指ベクトルMV2の場合、指番号0,2,4の値がそれぞれ4となっている。これは静指ベクトルSV2から静指ベクトルSV3への変化時間が0.25秒間で、それぞれの指が白鍵4個分動いたことを意味している。例えば、白鍵の幅を約2.2cmとすると、0.25秒間で8.8cm動いたことになる。
【0084】
尚、図13において、動指ベクトル内の値A,B,Cは、図12の状態遷移図で説明した状態遷移を示すものである。
【0085】
以上のように定義される動指ベクトルであるが、演奏形態である動指ベクトルは、様々な楽曲が存在するので数多く存在することになる。
【0086】
ステップS53の処理により動指ベクトルが求められると、ステップS54において、動指困難度算出部35は、動指ベクトルに基づいて、動指困難度を算出する。
【0087】
ここで、動指困難度について説明する。動指困難度は、図9を参照して説明した静指困難度と同様に定義される。すなわち、鍵盤楽器の演奏の困難度を考えた場合、静指困難度のみならず、短い時間で指を移動させる困難も存在する。例えば、250m秒で1オクターブ近い音程に対し、指を正確にジャンプさせるのは困難な作業である。
【0088】
動指困難度算出部35は、動指ベクトル毎に指移動のパターンの困難度を定義する。すなわち、指移動の困難度は、手の骨格(手の大きさ、指の長さなど)、筋肉などの身体的制限、並びに、鍵盤楽器の鍵盤の物理的な形状条件に依存するものであると考えることができる。そこで、動指困難度算出部35は、練習者の身体的制限情報に基づいた指移動の難易度を、動指困難度として算出する。したがって、動指困難度についても、静指困難度と同様に、同一の楽曲であっても、練習者によって異なる値が求められることになる。
【0089】
すなわち、動指困難度算出部35は、例えば、0.0(最も容易)乃至100.0(最も困難)というように、連続的な値として算出する。また、動指困難度算出部35は、図14で示されるように、左手と右手のパターンに分けて、それぞれ左手困難度MDL、および右手困難度MDRを定義して算出するようにしても良い。この場合、1の動指ベクトルに左手右手2つの困難度が定義される。
【0090】
より具体的には、例えば、鍵盤楽器の鍵盤の総数を88鍵とすると、動指ベクトルの総数は、以下の式(2)のように求められることになるので、約2450億通りである。左右合わせて約4900億通りであり、有限の数である。この総数は純粋に数学的な算出で求められるものであるため、現実的に押下不可能なパターンがほとんどであり、動指困難度は、ほとんどが100.0になることがわかる。
【0091】
【数2】

【0092】
そこで、動指困難度が100.0より小さい押下パターンについて、予め全ての困難度を求めておくことにより、係数テーブル化しておくようにしてもよい。尚、動指ベクトルと、対応する動指困難度の求め方については、教師演奏者が主観で定義しても良いし、数多くの演奏者の演奏ミス情報から統計的に求めても良い。また、この係数テーブルは一度作成しておけばよいものであり、演奏毎に作成し直すものではないため、係数テーブル化しておくことで、係数テーブル作成に係るコストを初回作成時のみとすることができる。
【0093】
なお、この総数の計算に、差分時間情報は含まれていない。すなわち、指の移動の困難度は指の移動時間、即ち差分時間が短い程、困難度が上昇するものと考えられる。それゆえ、動指困難度は標準の差分時間、例えば、500msでの標準的な演奏者での困難度で表現し、実際の差分時間と標準差分時間500msとの比率を利用して、動指困難度を算出するものとする。例えば、差分時間/500msの逆数を動指困難度の係数に乗じても良い。
【0094】
ステップS55において、運指ベクトル算出部36は、静指ベクトルと動指ベクトルとの組み合わせからなる運指ベクトルを算出する。
【0095】
ここで、運指ベクトルについて説明する。演奏の困難度に着目した場合、その困難度は静指ベクトルと動指ベクトルとの組み合わせと考えられる。そこで、図15で示されるように、静指ベクトルと動指ベクトルとの組み合わせが運指ベクトルFVとして定義される。例えば、運指ベクトルFV1は、静指ベクトルSV1,SV2、および動指ベクトルMV1の3つのベクトルから構成されるものとする。図15においては、運指ベクトルFV1から運指ベクトルFV2へと、運指ベクトルFV2から運指ベクトルFV3へと移る様子を示されている。
【0096】
したがって、運指ベクトルの困難度は、含まれる静指ベクトルの静指困難度、動指ベクトルの動指困難度の組み合わせであると考えることができる。
【0097】
ステップS56において、演奏レベル算出部20は、求められた運指ベクトルの配置パターンを参照して、予め演奏技術要素リスト31に登録されている演奏技術要素を検索して抽出する。
【0098】
ここで、演奏技術要素について説明する。例えば、鍵盤楽器でトリルという演奏技術があるが、これを演奏技術要素として考えるとき、演奏技術要素は、運指ベクトルの組み合わせとして表現することができる。トリルという演奏技術が、例えば、図16で示されるように、運指ベクトルFV4乃至FV7の連続で構成されるとき、この一連の運指ベクトルのグループが演奏技術要素TEとして定義される。
【0099】
図16の例では、一連の演奏の流れが、演奏技術要素TE1乃至TE3の3グループにより構成されており、一連の演奏は、3の演奏技術要素から構成されていることが示されている。
【0100】
演奏技術要素のグループは、小節毎に分解してもよいし、休符があるところを区切りにして分解しても良い。これらの演奏技術要素は、予め演奏技術要素リスト31にデータベース化された状態で記録されて保持されている。
【0101】
ステップS57において、演奏レベル算出部20は、求められた各演奏技術要素について、静指困難度、および動指困難度に基づいて、困難度を演奏技術レベルとして算出する。より詳細には、演奏技術要素が運指ベクトルの組み合わせであるので、まず、演奏レベル算出部20は、各運指ベクトルの困難度を算出する。運指ベクトルは、それぞれ2の静指ベクトルと1の動指ベクトルとから構成される。このため、演奏レベル算出部20は、運指ベクトルそれぞれの困難度を、運指ベクトルを構成する静指ベクトルの静指困難度と、動指ベクトルの動指困難度の平均値として算出する。さらに、演奏レベル算出部20は、演奏技術要素毎に、それぞれを構成する運指ベクトルの困難度の平均値を演奏技術要素に対する演奏技術レベル、すなわち、YGレベルとして算出する。例えば、図17で示されるように、楽曲Aに含まれる運指ベクトルFV1乃至FV3からなる演奏技術要素TE1の静指困難度および動指困難度の平均が18である場合、演奏技術要素TE1のYGレベルは18とされる。同様に、楽曲Aに含まれる運指ベクトルFV4乃至FV7からなる演奏技術要素TE2の静指困難度および動指困難度の平均が15である場合、演奏技術要素TE2のYGレベルは15とされる。さらに、楽曲Aに含まれる運指ベクトルFV8,FV9からなる演奏技術要素TE3の静指困難度および動指困難度の平均が15である場合、演奏技術要素TE3のYGレベルは15とされる。尚、YGレベルを算出するに当り、動指ベクトル、または静指ベクトルの構成毎に困難度に重みを付して求められる平均値を演奏技術レベルとしてもよい。
【0102】
ステップS58において、演奏レベル算出部20は、原曲である楽曲の楽譜に含まれる演奏技術要素毎に個別に求められたYGレベルの平均値を原曲の楽曲のYGレベルとして算出する。すなわち、例えば、図17で示されるように、楽曲Aの中に演奏技術要素TE1乃至TE3が含まれている場合、それぞれのYGレベルが18,15,15であるとき、演奏レベル算出部20は、楽曲AのYGレベルを16(=(18+15+15)/3)として算出する。
【0103】
ステップS59において、演奏レベル算出部20は、算出した原曲となる楽曲の楽譜におけるYGレベルを楽譜DB22に楽譜と対応付けて登録すると共に楽譜簡易化処理部18にYGレベルを供給する。すなわち、ステップS51乃至S59までの処理により、原曲となる楽曲の楽譜におけるYGレベルが求められる。尚、楽譜のYGレベルの算出は、練習者毎に1回求められれば以降においては必要のないものであるので、同一の練習者について、初回以降の楽譜簡易化処理においては、ステップS51乃至S59の処理を省略するようにしてもよい。また、バッチ処理によりステップS51乃至S59の処理を別のタイミングで実行し、いずれの楽譜においてもYGレベルが求められている状態で楽譜DB22に登録されるようにしてもよい。
【0104】
ステップS60において、楽譜簡易化処理部18は、今現在の楽譜のYGレベルと練習者の持つYGレベルとを比較し、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。すなわち、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いということは、練習者は、その楽譜を演奏することが可能であるとみなされ、逆に、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達していないのであれば、その演奏は困難であるとみなされる。ステップS60において、例えば、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達しておらず、練習者が演奏するのが困難な楽譜であるとみなされた場合、処理は、ステップS61に進む。
【0105】
ステップS61において、楽譜簡易化処理部18は、楽譜の所定の範囲について、構成音を単純化させることにより静指困難度を低減させることにより楽譜を簡略化し、簡略化した楽譜の情報を演奏レベル算出部20に供給する。
【0106】
すなわち、図18の左部で示されるように、簡略化前の楽譜がドミソドミであり、左手の親指、中指、小指でドミソを、右手の親指、中指によりドミを弾く演奏をする際の静指ベクトルSVに対応する困難度がSDであった場合を考える。この場合、楽譜簡易化処理部18は、図18の右部で示されるように、構成音を単純化させることにより目的の静指困難度SDより容易に演奏することができることを示す静指困難度SD’となる新たな静指ベクトルSV’を求めることにより楽譜を簡易化する。
【0107】
より具体的には、例えば、図19の左上部の4の音符からなるFm7と呼ばれる一般的な和音が、元の和音である場合、図19の左下部で示されるように、実際の音の構成は、静指ベクトルで示されるように左手の親指でファを、右手の親指、人差し指、薬指で、シ♭、ド、ミ♭の4音を演奏する。
【0108】
楽譜簡易化処理部18は、この構成音を単純化する上で和音の性質に着目し処理を行う。すなわち、図19の左上部のFm7を例にとると和音の構成音のうち、Fの部分がルートノート(根音)とよばれる部分で和音のもっとも重要な音である。そこで、Fmという和音を構成するのは根音ファと、根音ファから見て短3度上のシ♭と、完全5度上のドの3音とであり、和音を構成する基本的な3音である。7とは根音からみて短7度の音でこの例ではミ♭となる。この(短)7度の音は響きにバリエーションを持たせるための装飾的な音であり、省いたとしても曲自体が破たんすることはない。装飾音となる音としては他に 9,11,13,sus4などがある。そこで、楽譜簡易化処理部18は、図19の中央上部で示されるように、楽譜を根音ファと、根音ファから見て短3度上のシ♭と、完全5度上のドの3音に簡易化する。この結果、静指ベクトルは、図19の中央下部で示されるように、親指で根音のファを、人差し指で根音ファから見て短3度上のシ♭を、薬指で完全5度上のドの3音を弾くようにすることで両手を使った演奏から片手の演奏に簡易化される。
【0109】
さらに、簡易化が必要である場合、すなわち、原曲の楽譜が図19の中央上部であるような場合、楽譜簡易化処理部18は、図19の右上部で示されるように、根音であるファのみを残してその他を省略する。この結果、静指ベクトルは、図19の右下部で示されるように人差し指で根音となるファを弾くのみとされるので、より簡易化されることになる。
【0110】
ステップS62において、演奏レベル算出部20は、楽譜簡易化処理部18より供給されてきた簡易化された楽譜について、簡易化された範囲を含む演奏技術要素について、YGレベルを算出し、さらに、簡易化された楽曲全体のYGレベルを算出する。
【0111】
ステップS63において、演奏レベル算出部20は、算出した簡易化された楽譜におけるYGレベルを楽譜DB22に簡易化された楽譜と対応付けて登録すると共に楽譜簡易化処理部18にYGレベルを供給する。
【0112】
ステップS64において、楽譜簡易化処理部18は、今現在の楽譜のYGレベルと練習者のYGレベルとを比較し、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。ステップS64において、例えば、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達しておらず、練習者が演奏するのが困難な楽譜であるとみなされた場合、処理は、ステップS65に進む。
【0113】
ステップS65において、楽譜簡易化処理部18は、楽譜の所定の範囲について、構成音を転回により静指困難度を低減させることにより楽譜を簡略化し、簡略化した楽譜の情報を演奏レベル算出部20に供給する。
【0114】
すなわち、図20の上部で示されるように、例えば、構成音がド、ミ、シである場合、元の楽譜の静指ベクトルSVから指間の最大距離と平均距離を求めるとそれぞれ4.0と3.0となる。定性的に言って指同士の距離が大きいほどそれぞれの指の可動範囲が少なくなり自由度が下がる。
【0115】
そこで、図20の下部で示されるように、楽譜簡易化処理部18は、各指からもっとも距離が大きい音(この例ではシ)に着目し、1オクターブ低いシに移動する。音楽的性質によると、オクターブが異なっても音名が同じ場合には全体の和声的響きは同じである。このように同じ音名のオクターブを上下させることを音楽用語で転回という。
【0116】
この転回を利用して図20の下部のように低い方からシ、ド、ミの順に並び変えた静指ベクトルSV’について同様に最大距離と平均距離を求めると、それぞれ2.0および1.5となる。楽譜簡易化処理部18は、このように転回により静指困難度を低下させる。
【0117】
ステップS66において、演奏レベル算出部20は、楽譜簡易化処理部18より供給されてきた簡易化された楽譜について、簡易化された範囲を含む演奏技術要素について、YGレベルを算出し、さらに、楽曲全体のYGレベルを算出する。
【0118】
ステップS67において、演奏レベル算出部20は、算出した簡易化された楽譜におけるYGレベルを楽譜DB22に簡易化された楽譜と対応付けて登録すると共に楽譜簡易化処理部18にYGレベルを供給する。
【0119】
ステップS68において、楽譜簡易化処理部18は、今現在の楽譜のYGレベルと練習者の持つYGレベルとを比較し、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。ステップS68において、例えば、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達しておらず、練習者が演奏するのが困難な楽譜であるとみなされた場合、処理は、ステップS69に進む。
【0120】
ステップS69において、楽譜簡易化処理部18は、楽譜の所定の範囲について、静指ベクトル間の指の移動距離を低減させるにより動指困難度を低減させることにより楽譜を簡略化し、簡略化した楽譜の情報を演奏レベル算出部20に供給する。
【0121】
すなわち、動指困難度は動指ベクトルから求まる値であり、動指ベクトルは2の隣り合う時間の静指ベクトルの差分から求められる。動指ベクトルを単純化させるには、静指ベクトル間の差分を低減させること、および、静指ベクトル間の時間を増大させることで実現することができる。さらに、静指ベクトル間の差分を低減させるには、発音または消音を繰り返す音符の変化回数を減らすことで動指ベクトルの要素に0を増やし、結果的にΔtも長くする。すなわち、図21で示されるような、静指ベクトルSV1乃至SV4、および動指ベクトルMV1乃至MV3であるような場合、静指ベクトルSV1乃至SV4間の差分を小さくし、動指ベクトルMV1乃至MV3の要素に0が増えるように楽譜が変更されると、動指困難度が低減する。
【0122】
より具体的には、例えば、図22の左上部で示されるように、元の楽譜が多数の8分音符により構成されている場合、図22の右上部で示されるように、16個の動指ベクトルで表現されることになる。各動指ベクトルの時間間隔は、120BPMにおいて、0.25秒間隔となる。
【0123】
そこで、楽譜簡易化処理部18は、小節単位で音符のシーケンスに着目し、その小節内で使われている音符の音名を列挙する。このとき、同じ音名は2度は数えず、またオクターブ違いも同じ音名として扱う。すると、例えば、図22の左上部の最初の小節は、「ドミソシミソドシ」からド、ミ、ソ、シという構成音だけでつくられていることが分かる。
【0124】
次に、楽譜簡易化処理部18は、この構成音と和音のコンビネーションを比較し、広く知られている和音の構成音と同じであれば、その小節のすべての音符を和音の全音符に置き換える。このような処理により、図22の左上部の楽譜は、図22の左下部で示されるように「ドミソシ」(CM7)、「レソシ」=「ソシレ」(G)に簡略化される。また、音符の変化点が減ることで、16個の動指ベクトルは、図22の右下部で示されるように、1個とされて、同時にΔtも低減されることになるため元の楽譜に比べて非常に効果的な簡略化がされることとなる。
【0125】
図22は基本的な例で示したが、実際の楽譜は1小節内の構成音を列挙しても既存の和音の構成音になっていない場合も多い。そこで、図23で示されるように、楽譜簡易化処理部18は、1小節から半小節、さらに半分の1/4小節という具合に、既存の和音に当てはまらない場合には、対象区間を小節より細かい単位で区切りながら、同様の処理を行うことで楽譜を簡略化する。図23においては、4分音符1つ分(8分音符2つ)の長さより細かくは分解しないようにしている。
【0126】
すなわち、図23においては、最上段で示される第1小節内の楽譜は、いずれも四分音符で「ドソレラ」とされ、第2小節内の楽譜は、いずれも八分音符で「ソレソソソシファミ」とされている。
【0127】
第1小節が半分にされることで「ドソ」と「レラ」とに分けられるがいずれも不協和音ではないので、和音とされて2分音符とされる。一方、第2小節においては、半分にされると、「レソ」と「ミファソシ」とに分けられ、「レソ」については不協和音ではないので和音とされて2分音符とされるが、「ミファソシ」については不協和音であるので、さらに、「ソシ」と、「ファミ」とに分割され、「ソシ」は不協和音ではないので1分音符とされ、「ファミ」は不協和音であるので、そのままとされる。これらの結果、楽譜は、図23の右上部で示されるようなものに簡易化される。
【0128】
ステップS70において、演奏レベル算出部20は、楽譜簡易化処理部18より供給されてきた簡易化された楽譜について、簡易化された範囲を含む演奏技術要素について、YGレベルを算出し、さらに、楽曲全体のYGレベルを算出する。
【0129】
ステップS71において、演奏レベル算出部20は、算出した簡易化された楽譜におけるYGレベルを楽譜DB22に簡易化された楽譜と対応付けて登録すると共に楽譜簡易化処理部18にYGレベルを供給する。
【0130】
ステップS72において、楽譜簡易化処理部18は、今現在の楽譜のYGレベルと練習者の持つYGレベルとを比較し、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。ステップS72において、例えば、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達しておらず、練習者が演奏するのが困難な楽譜であるとみなされた場合、処理は、ステップS73に進む。
【0131】
ステップS73において、楽譜簡易化処理部18は、楽譜の所定の範囲について、Δtを増大させることにより動指困難度を低減させることにより楽譜を簡略化し、簡略化した楽譜の情報を演奏レベル算出部20に供給する。
【0132】
より具体的には、楽譜簡易化処理部18は、純粋にΔtを増大させるために、同じ音程の音符が連続する場合にそれらを1にまとめる。すなわち、図24の上部で示されるように、時刻t2乃至t4において、ソの8分音符が連続しているような場合、楽譜簡易化処理部18は、図24の下部で示されるように、これらを時刻t2乃至t3で示されるように、4分音符1にまとめてΔtを増加させるように簡易化する。
【0133】
ステップS69,S73の処理を組み合わせることにより、楽譜簡易化処理部18は、図25の上部で示される楽譜を、図25の下部で示されるような楽譜に簡易化処理する。すなわち、第1小節では、最後の一音である「ファソ」が「ソ」のみにされている。第2小節では、前半の2音が2分音符の「ソ」とされ、後半の「シド」が「シ」のみにされている。第3小節では、先頭の一音である「ドレ」が「ド」とされ、最終音の「ソシソ」が高音側の「ソ」のみとされている。さらに、第4小節では、前半の同一の2音が1音に纏められ、後半の二音の「ソソ」は、高音側の「ソ」に集約されている。尚、ステップS69,S73の処理により間引かれる音符の割合は、どの程度の割合にするかといったものを設定できるようにしてもよい。
【0134】
ステップS74において、演奏レベル算出部20は、楽譜簡易化処理部18より供給されてきた簡易化された楽譜について、簡易化された範囲を含む演奏技術要素について、YGレベルを算出し、さらに、楽曲全体のYGレベルを算出する。
【0135】
ステップS75において、演奏レベル算出部20は、算出した簡易化された楽譜におけるYGレベルを楽譜DB22に簡易化された楽譜と対応付けて登録すると共に楽譜簡易化処理部18にYGレベルを供給する。
【0136】
ステップS76において、楽譜簡易化処理部18は、今現在の楽譜のYGレベルと練習者の持つYGレベルとを比較し、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。ステップS76において、例えば、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達しておらず、練習者が演奏するのが困難な楽譜であるとみなされた場合、処理は、ステップS77に進む。
【0137】
ステップS77において、楽譜簡易化処理部18は、楽譜の所定の範囲について、演奏技術要素そのものを省略させることにより楽譜を簡略化し、簡略化した楽譜の情報を演奏レベル算出部20に供給する。
【0138】
すなわち、楽譜には、音符の表記とは別に、特定の技術要素が記載されていることがある。例えば、高速に2本以上の指を交互に動かし2音以上の音を高速に奏でる奏法としてトリル奏法がある。また、難易度は低いがスタッカートと呼ばれる音を短く切って弾く奏法や、pp(ピアニッシモ)やf(フォルテ)など打鍵の強弱を指示する記号も存在する。
これらの演奏技術は付加的ではあるが、音符に追従するだけで精いっぱいな初心者にとっては困難度が上がる要因となる。そこで、楽譜簡易化処理部18は、それら個別の演奏技術を省略することによって困難度を下げる。
【0139】
すなわち、楽譜簡易化処理部18は、例えば、図26の左下部で示されるように、演奏技術要素TE1乃至TE3がトリルを演奏するものである場合、図26の右下部で示されるように、それらを省略することにより、楽譜を簡易化する。すなわち、図26の左下部の楽譜は、その下に記載されているように、「ラシドシド」および「シドシラシ」がそれぞれ5連符で示されている。しかしながら、楽譜簡易化処理部18は、このような高度な演奏技術要素を削除することにより、単に「シ」としてしまう。この結果、高度な演奏技術が不要となりつつ、楽曲の響きを残して楽譜が簡易化処理される。
【0140】
ステップS78において、演奏レベル算出部20は、楽譜簡易化処理部18より供給されてきた簡易化された楽譜について、簡易化された範囲を含む演奏技術要素について、YGレベルを算出し、さらに、楽曲全体のYGレベルを算出する。
【0141】
ステップS79において、演奏レベル算出部20は、算出した簡易化された楽譜におけるYGレベルを楽譜DB22に簡易化された楽譜と対応付けて登録すると共に楽譜簡易化処理部18にYGレベルを供給する。
【0142】
ステップS80において、楽譜簡易化処理部18は、今現在の楽譜のYGレベルと練習者の持つYGレベルとを比較し、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。ステップS80において、例えば、練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルに達しておらず、練習者が演奏するのが困難な楽譜であるとみなされた場合、処理は、ステップS81に進む。
【0143】
ステップS81において、楽譜簡易化処理部18は、楽譜内において、簡易化できる要素が残されているか否かを判定する。すなわち、楽譜簡易化処理部18は、例えば、簡易化していない小節や、より簡易化することができる小節を検索し、その有無により簡易化できる要素が残されているか否かを判定する。ステップS81において、まだ、簡易化できる要素があるとみなされた場合、処理は、ステップS61に戻る。すなわち、練習者のYGレベルが楽曲の楽譜のYGレベルよりも高く、十分に演奏ができる状態になるまで、ステップS61乃至S81の楽譜の簡易化処理が繰り返される。
【0144】
そして、ステップS60,S64,S68,S72,S76,S80のいずれかにおいて、練習者のYGレベルが楽曲の楽譜のYGレベルよりも高いとみなされたか、または、ステップS81において、簡易化できる要素がないとみなされた場合、楽譜簡易化処理が終了する。
【0145】
以上の処理により、練習者のYGレベルに対して適切なYGレベルの楽譜になるまで楽譜の簡易化処理が繰り返される。尚、楽譜の簡易化処理そのものについては、オフラインで処理するようにしてもよいし、また、最もYGレベルの低い楽譜まで全て作成するようにしてもよい。このようにすることで、楽譜DB22には、同一の楽曲についてYGレベルの異なる楽譜データを蓄積させておくことが可能となり、処理速度を向上させることが可能となる。また、このように楽譜DB22にYGレベルの異なる楽譜データを蓄積しておくことにより、練習者のYGレベルが認識できれば、対応するYGレベルの楽譜を読み出すだけで済む上、楽譜簡易化処理そのものを1度だけで済ますことも可能となる。さらに、以上の例においては、練習者のYGレベルよりも低いYGレベルにまで簡易化された楽譜を生成する例について説明してきたが、練習者のYGレベルよりも若干高いYGレベルの楽譜を生成するようにしてもよく、このようにすることで、練習に多少負荷を掛けるようなことが可能となる。
【0146】
ここで、図4のフローチャートの説明に戻る。
【0147】
ステップS5の処理により、楽譜簡易化処理がなされると、ステップS6において、楽譜簡易化処理部18は、練習者のYGレベルに対応する楽譜を呈示部19に供給し、練習者に練習曲として楽譜を提示すると共に、楽器の演奏を開始するように促す。すなわち、この呈示に基づいて、練習者は呈示部19に呈示される楽譜を見ながら、楽器の演奏を開始する。
【0148】
ステップS7において、演奏情報記録部13は、マイクロフォン13aを制御して、練習者により演奏される楽器の音声を取得させ、カメラ13bを制御して、練習者の演奏する楽器の鍵盤に対する指の動きを撮像させる。さらに演奏情報記録部13は、センサ13cを制御して、練習者の楽器の鍵盤に対する押圧圧力を計測させる。そして、演奏情報記録部13は、これらの音声、画像、および押圧圧力の情報からなる演奏情報を評価部14に供給する。評価部14は、供給されてくる演奏情報を、練習者を識別する情報に対応付けて、練習者情報記録保持部16に記録させ保持させる。
【0149】
ステップS8において、評価部14は、演奏情報記録部13より供給されてくる演奏情報の取得状態から演奏が完了したか否かを判定する。ステップS8において、演奏が完了していないとみなされた場合、処理は、ステップS6に戻る。すなわち、演奏が完了したとみなされるまで、演奏情報が記録され続ける。そして、ステップS8において、演奏が完了したとみなされた場合、処理は、ステップS9に進む。
【0150】
ステップS9において、評価部14は、演奏が終了したことを制御部11に通知する。制御部11は、YGレベル判定処理を実行し、練習者が演奏した内容が、楽譜のYGレベルに達しているか否か、すなわち、現状の練習者のYGレベルが楽譜のYGレベルよりも高いか否かを判定する。
【0151】
[YGレベル判定処理]
ここで、図27のフローチャートを参照して、YGレベル判定処理について説明する。
【0152】
ステップS91において、評価部14は、演奏情報に基づいて、練習者が最後まで演奏を完了したか否かを判定する。より詳細には、評価部14は、楽譜変換部52を制御して、演奏情報に基づいて、練習者が楽器を演奏することにより発生された音声を演奏楽譜に変換し、呈示部19に呈示された楽譜と比較して最後まで演奏されていることを確認する。ステップS91において、最後まで演奏しているとみなされた場合、処理は、ステップS92に進む。
【0153】
ステップS92において、評価部14は、評価値計算処理を実行して、練習者による楽器の演奏を評価する評価値である練習者のYGレベルを計算する。
【0154】
[評価値計算処理]
ここで、図28のフローチャートを参照して、評価値計算処理について説明する。
【0155】
ステップS111において、評価部14は、楽譜変換部52を制御して、練習者情報記録保持部16に記録されている演奏情報に基づいて、演奏楽譜、すなわち、練習者が楽器を演奏した際に発する、マイクロフォン13aにて取得した音声を楽譜に変換した情報を生成する。ここでは、上述したステップS91における音声のみならず、さらに、評価部14は、カメラ13bにより撮像された画像を解析することにより、各音の鍵盤番号の鍵盤をどの指番号の指で、弾いているのか、また、センサ13cにより計測された押圧圧力に基づいた強さから、弾くときの音の強弱や表現についての情報も演奏楽譜に再現させる。従って、ステップS4のYGレベル簡易確認処理において変換される演奏楽譜よりも、より詳細な演奏に関する情報を含めた演奏楽譜が生成される。すなわち、ここでは、演奏楽譜は、練習者の演奏を指の動きまでも含めて楽譜化したものとなる。
【0156】
ステップS112において、評価部14は、楽譜DB22より目的楽譜、すなわち、呈示部19に呈示された楽曲の楽譜データを読み出して取得する。この楽譜データには、楽譜の情報のみならず、どの音については、どの鍵盤番号の鍵盤をどの指番号の指で弾くべきであるかの情報、音声の強弱や表現を示す情報も含まれている。
【0157】
ステップS113において、評価部14は、目的楽譜と演奏楽譜との類似度を算出する。より具体的には、評価部14は、例えば、楽譜に設けられた全ての音符、各音の鍵盤番号の鍵盤毎に弾くべき指を示す指番号の情報、および、音声の強弱等の情報のうち、一致している割合を類似度として算出する。
【0158】
ステップS114において、評価部14は、求められた類似度から評価値を生成する。すなわち、類似度は、最も相関が低い場合、0.0、最も相関が高い場合、1.0となるので、練習者の演奏の指の押さえ方やタイミングが楽譜に合っているほど類似度は1に近づき、逆に合っていないほど0に近づく。評価値は、その値が高いほど楽曲が弾きこなせていることを意味しているので、この類似度をそのまま評価値に適用してもよいし、何らかの変換式を通した値を評価値として定義してもよい。ただし変換後の評価値も0.0から1.0の値を取るように、例えば、以下の式(3)で示されるような変換式を定義して求めるようにしても良い。
【0159】
V=f(C) (0≦C≦1)
・・・(3)
【0160】
ここで、Vは評価値を、Cは類似度を、fは類似度をパラメータとして評価値を表現する関数を、それぞれ表している。
【0161】
ステップS115において、評価部14は、求められた評価値Vより、演奏者のYGレベルを算出する。すなわち、評価部14は、例えば、式(3)により求められる評価値Vに基づいて、以下の式(4)で示される演算によりYGレベルを算出する。
【0162】
X=V×T (0<V<1)
・・・(4)
【0163】
ここで、Xは、演奏者のYGレベルであり、Tは、楽譜のYGレベルである。尚、この楽曲を完全に弾きこなせた場合、評価値Vは1となるが、最も高い技術レベルの楽曲を演奏しているので、完全に弾きこなせたというケースは存在しない。同様に、全くこの楽曲が弾けなかった、つまり評価値が0もしくは限りなく評価値Vが0に近づくようなケースに関しても、楽曲のレベルとかけ離れている場合、より簡単な楽曲を演奏しているはずなので、このようなケースも存在しない。
【0164】
以上の処理により、練習者が楽譜を見ながら演奏した結果から練習者の評価値を求め、さらに、評価値に基づいて、練習者のYGレベルを算出することが可能となる。
【0165】
ここで、図27のフローチャートの説明に戻る。
【0166】
ステップS92において、練習者が演奏した結果に対する評価値となるYGレベルが算出されると、ステップS93において、評価部14は、練習者が演奏した結果に対する評価値として算出されたYGレベルが現在の楽譜に設定されるYGレベルの下限閾値よりも低いか否かを判定する。ステップS93において、例えば、練習者が演奏した結果に対する評価値として算出されたYGレベルが現在の楽譜に設定されるYGレベルの下限閾値よりも低いとみなされた場合、処理は、ステップS95に進む。
【0167】
ステップS95において、評価部14は、練習者のYGレベルが、楽譜のYGレベルに達していないとみなし、練習者情報記録保持部16に練習者の情報に対応付けて、楽譜のYGレベルに達していないことを示す情報を記録し、保持させる。
【0168】
一方、ステップS93において、練習者が演奏した結果に対する評価値として算出されたYGレベルが現在の楽譜に設定されるYGレベルの下限閾値よりも低くないとみなされた場合、処理は、ステップS94に進む。
【0169】
ステップS94において、評価部14は、練習者が演奏した結果に対する評価値として算出されたYGレベルが現在の楽譜に設定されるYGレベルの上限閾値よりも高いか否かを判定する。ステップS94において、例えば、評価部14は、練習者が演奏した結果に対する評価値として算出されたYGレベルが現在の楽譜に設定されるYGレベルの上限閾値よりも高いとみなされた場合、処理は、ステップS96に進む。
【0170】
ステップS96において、評価部14は、練習者のYGレベルが、楽譜のYGレベルに達しているものとみなし、練習者情報記録保持部16に練習者の情報に対応付けて、楽譜のYGレベルに達していることを示す情報を記録し、保持させる。
【0171】
すなわち、評価部14により得られた評価値としての練習者のYGレベルが高い場合、その楽曲を楽譜に記載されている通りに演奏できることを示している。逆に、評価値としての演奏者のYGレベルが低い場合、その楽曲を楽譜に記載されている通りに演奏することができないことが示されている。そこで、図29で示されるように、評価値である練習者のYGレベルが高く、YG上限閾値を超えている場合、その楽譜は練習者にとって技術を向上させるために必要のない簡単な楽譜であることを示す。換言すれば、この楽曲の演奏結果によっては練習者の演奏レベルを正確に判断できないとして、新たにより高いYGレベルの楽譜を呈示して再び練習者に演奏してもらうべきであるといえる。同様に、評価値としての練習者のYGレベルが低すぎて下限閾値よりも低い場合、その楽譜は練習者にとって難しすぎることを示す。換言すれば、この楽譜の演奏結果によっては練習者の演奏レベルを正確に判断できないとして、新たにより低いYGレベルの楽譜を呈示して、より低いレベルからの練習が必要であるといえる。
【0172】
以上の処理により練習者の演奏結果に基づいて練習者のYGレベルを評価値として算出することが可能となる。
【0173】
ここで、図4のフローチャートの説明に戻る。
【0174】
ステップS9の処理によりYGレベル判定処理が実行されると、ステップS10において、制御部11は、練習者情報記録保持部16にアクセスし、練習者情報に基づいて、YGレベル判定処理の判定結果において、練習者のYGレベルが、楽譜のYGレベルに達しているとみなしているか否かを判定する。ステップS10において、例えば、練習者のYGレベルが、楽譜のYGレベルに達しているとみなされている場合、処理は、ステップS11に進む。
【0175】
ステップS11において、制御部11は、練習者情報記録保持部16にアクセスし、練習者が選択している練習モードが第1モード、すなわち、レパートリ数を増やすよりも、自らの弾きたいと望む楽曲の演奏技術を高めるモードであるか否かを判定する。ステップS11において、例えば、第1モードではないとみなされる場合、処理は、ステップS12に進む。
【0176】
ステップS12において、楽譜推薦部17は、練習者情報記録保持部16にアクセスし、練習者が選択している練習モードが第2モード、すなわち、演奏技術の向上よりも、レパートリ数を増やすようにするモードであるか否かを判定する。ステップS12において、例えば、第2モードではないとみなされる場合、処理は、ステップS13に進む。
【0177】
ステップS13において、楽譜推薦部17は、練習者情報記録保持部16にアクセスし、練習者情報を読み出して、レパートリ分布を生成する。すなわち、ステップS11,S12において、第1モードでも第2モードでもないため、この練習者は第3モード、すなわち、演奏技術を向上させつつ、レパートリ数を増加するモードであると判定される。第3モードにおいては、ある時点では演奏技術を向上させるように楽譜を変化させつつ、ある時点においてはレパートリ数を増やすように練習曲である目的楽譜を選択する。そこで、制御部11は、練習者に対して、現段階では演奏技術を向上させるべきか、レパートリ数を増やすべきかを判断するために、レパートリ分布を生成する。
【0178】
レパートリ分布とは、図30で示されるように、横軸に平均レパートリ数をとり、縦軸に各練習者のYGレベルをとった分布であり、練習者が分布のどの位置に属するかを示すものである。図30のレパートリ分布において、曲線Gは、全練習者のYGレベル毎の平均レパートリ数を示すものである。従って、レパートリ分布において、例えば、図30のポイントP1で示されるように、曲線Gよりも上方の領域に属する練習者のレパートリ数は、同じYGレベルの平均的なレパートリ数よりも少ない状態である。このため、現状においては、矢印G1で示されるように、演奏技術を向上させるよりも、レパートリ数を増やすモード、すなわち、第2モードである方がいい状態であるといえる。一方、レパートリ分布において、例えば、図30のポイントP2で示されるように、曲線Gよりも下方の領域に属する練習者のレパートリ数は、同じYGレベルの平均的なレパートリ数に対して十分な状態である。このため、現状においては、矢印G2で示されるように、レパートリ数を増やすよりも、演奏技術を向上させるモード、すなわち、第1モードである方がいい状態であるといえる。
【0179】
そこで、ステップS14において、楽譜推薦部17は、生成したレパートリ分布に基づいて、練習者の状態がレパートリ数を増加させる方を優先させる状態であるか否かを判定する。ステップS14において、例えば、上述した図30におけるポイントP2で示される状態である場合、レパートリ数は十分であるので、レパートリ数を増やす状態ではないので、演奏技術を高める状態であるものとみなされ、処理は、ステップS15に進む。
【0180】
ステップS15において、楽譜推薦部17は、第1モードにおける場合と同様に、現状の練習者のYGレベルよりも、1段階程度上位となるYGレベルであって、同一の楽曲を次の練習曲(目的楽譜)として推薦するように楽譜選択部21を制御して、この目的楽譜を呈示部19に呈示させる。尚、楽譜DB22には、YGレベルが同一、または、それに類似する簡易化された楽譜が、大量に登録されていることになるが、その中でも練習者のYGレベルにより対応した楽譜が目的楽譜として推薦されることが望ましい。そこで、楽譜推薦部17は、これまでの練習者の演奏結果である演奏楽譜を参照し、現状のYGレベルより1段階程度上位となるYGレベルの楽譜のうち、目的楽譜と演奏楽譜と一致している(マスターできている)演奏技術要素については現状の目的楽譜よりも困難度が高くされ、かつ、目的楽譜と演奏楽譜とが一致していない(マスターできていない)演奏技術要素については現状のYGレベルの楽譜のままとされている楽譜を目的楽譜として推薦する。この処理により、同一の楽曲について、YGレベルが比較的近い楽譜を次に練習曲として選択することができるので、練習者が今現在持っているYGレベルを少しずつ確実に進歩させていくことが可能となる。また、極端に上位のYGレベルの楽譜が練習曲として選ばれることがないので、練習者は、練習してもできないと感じる可能性が低くなるため、練習を楽しく継続することが可能となる。
【0181】
一方、ステップS14において、例えば、上述した図30におけるポイントP1で示される状態である場合、レパートリ数が少ない状態であるため、練習者の状態がレパートリ数を増加させる方を優先させる状態であるとみなされ、処理は、ステップS21に進む。
【0182】
ステップS21において、楽譜推薦部17は、同一YGレベル楽曲推薦処理を実行し、同一のYGレベルとなる楽曲を推薦し、そのいずれかを練習者に選択させる。
【0183】
[同一YGレベル楽曲推薦処理]
ここで、図31のフローチャートを参照して、同一YGレベル楽曲推薦処理について説明する。尚、この処理に当たっては、楽譜DB22には、全ての原曲に対する楽曲について、全てのYGレベルについて簡易化処理がなされており、簡易化された楽譜が登録されていることを前提とする。従って、新たな楽曲が楽譜DB22に登録された時点で、上述した楽譜簡易化処理がオフライン処理され、YGレベルとして設定される最低値の楽譜まで簡易化処理により生成されて登録されているものとする。
【0184】
ステップS131において、楽譜推薦部17は、楽曲数をカウントするためのカウンタNを1に初期化する。
【0185】
ステップS132において、楽譜推薦部17は、楽譜DB22にアクセスし、現在呈示されている楽曲の楽譜のYGレベルを取得する。
【0186】
ステップS133において、楽譜推薦部17は、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲以外、すなわち、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜のYGレベルを取得する。
【0187】
ステップS134において、楽譜推薦部17は、楽譜DB22より読み出した未処理の楽譜のいずれかを処理対象の楽譜Nとし、現在呈示されている楽曲の楽譜のYGレベルと、処理対象の楽譜NのYGレベルとを比較する。
【0188】
ステップS135において、楽譜推薦部17は、処理対象となる楽譜NのYGレベルが、現在呈示されている楽曲の楽譜NのYGレベルと略同等であるか否かを判定する。ステップS135において、例えば、処理対象となる楽譜NのYGレベルが、現在呈示されている楽曲の楽譜NのYGレベルと略同等であると判定された場合、処理は、ステップS136に進む。
【0189】
ステップS136において、楽譜推薦部17は、今現在呈示されている楽譜と同一のYGレベルの楽譜であって、他の楽曲の曲名を練習曲の候補として楽譜選択部21を制御して呈示部19に呈示させる。
【0190】
ステップS137において、楽譜推薦部17は、読み出した、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜の全てについて、現在呈示されている楽曲の楽譜のYGレベルを比較したか否かを判定する。ステップS137において、全ての楽譜がYGレベルについて比較されていない場合、処理は、ステップS138に進む。
【0191】
ステップS138において、楽譜推薦部17は、カウンタNを1インクリメントして、処理は、ステップS133に戻る。
【0192】
一方、ステップS135において、例えば、処理対象となる楽譜NのYGレベルが、現在呈示されている楽曲の楽譜NのYGレベルと略同等ではないと判定された場合、ステップS136の処理はスキップされる。
【0193】
すなわち、ステップS137において、全ての楽譜DB22より読み出した未処理の楽譜がないと判定されるまで、ステップS133乃至S138の処理が繰り返される。そして、ステップS137において、楽譜DB22より読み出した未処理の楽譜がないと判定された場合、処理は、ステップS139に進む。
【0194】
ステップS139において、楽譜推薦部17は、制御部11を介して呈示部19に練習曲の候補として呈示されている楽曲のいずれかが選択されたか否かを判定し、選択されるまで、同様の処理を繰り返す。そして、ステップS139において、練習者が操作部12を操作して、いずれかの練習曲が選択されると、ステップS140において、楽譜推薦部17は、選択された練習曲の楽譜を呈示部19に呈示するように楽譜選択部21を制御する。
【0195】
すなわち、以上の処理により、今現在の楽曲の楽譜については、演奏することができる状態であるとみなされて、かつ、レパートリ数を増やす方がよい状態であるので、略同一のYGレベルの楽譜を次の練習曲の候補として推薦し、その中からいずれかを練習者に選択させるようにすることができる。この結果、単調になりがちな練習に変化をもたせることができるので、練習者が練習を継続する意識を高めることができる。さらに、候補として挙げられる楽譜は、既に、演奏可能となっているYGレベルと略同一の楽譜であることから、練習者がそれほど苦労することなく演奏できるようになる可能性の高い楽譜であるので、練習者は、比較的短期間で演奏できるようになる可能性が高いので、練習を楽しみながらレパートリ数を増やしていくことが可能となる。
【0196】
ここで、図4のフローチャートの説明に戻る。
【0197】
ステップS15またはS21の処理により、次の楽曲が推薦されると、ステップS16において、制御部11は、操作部12が操作されて、処理の終了が指示されたか否かを判定する。ステップS16において、終了が指示された場合、処理は、ステップS17に進む。
【0198】
ステップS17において、制御部11は、今現在呈示部19に呈示されている楽曲と楽譜の情報を練習者に対応付けて、練習者情報として練習者情報記録保持部16に記録させて、保持させ、処理を終了する。これにより、この情報処理装置1を利用して楽器の練習を開始した練習者は、自らの練習者情報を入力するだけで、継続して自らのYGレベルに対応した練習曲の呈示を受けることができる。
【0199】
一方、ステップS12において、練習モードが第2モードであると判定された場合、処理は、ステップS21に進む。すなわち、レパートリ数を増やしていくようにする練習モードであるので、ステップS21において、同一YGレベル楽曲推薦処理がなされて、略同一のYGレベルの楽曲の楽譜が練習曲の候補として呈示されて、練習曲が決定される。
【0200】
また、ステップS11において、練習モードが第1モードであると判定された場合、処理は、ステップS15に進む。すなわち、YGレベルを向上させるようにしていく練習モードであるので、ステップS15において、現在呈示されている楽譜と原曲が同一であって、1段階程度YGレベルが上位の楽譜が練習曲として呈示される。
【0201】
さらに、ステップS10において、演奏情報に基づいて求められた練習者のYGレベルが、楽譜のYGレベルに達しているとみなされなかった場合、処理は、ステップS19に進む。
【0202】
ステップS19において、制御部11は、演奏情報に基づいて求められた練習者のYGレベルと楽譜のYGレベルとの差分が所定値以上となっているか否かを判定する。ステップS19において、演奏情報に基づいて求められた練習者のYGレベルと楽譜のYGレベルとの差分が所定値以上となっている、すなわち、練習者には、楽譜のYGレベルが高すぎるとみなされた場合、処理は、ステップS20に進む。
【0203】
ステップS20において、制御部11は、楽譜簡易化処理部18を制御して、楽譜簡易化処理を実行させて、今現在の楽曲の楽譜を、演奏情報に基づいて求められた練習者のYGレベルよりも低いYGレベルとなる楽譜を生成させて、次の練習曲として呈示させる。
【0204】
また、ステップS3において、練習者情報が検索された場合、その練習者は新規の練習者ではないものとみなされるので、練習者情報に基づいて、ステップS17の処理で、前回の練習終了時に登録されたYGレベルを始めとする入力すべき情報をそのまま利用することができる。
【0205】
すなわち、ステップS6乃至S16、およびステップS18乃至S21の処理が繰り返されることにより、練習モードとして第1モードが選択された場合、練習者のYGレベルが上昇し、演奏技術が上達すると、原曲に近い楽譜が徐々に呈示されていく。このため、最も低いYGレベルの簡易化された楽譜から、上達に合わせて原曲の楽譜に近づくように練習曲が設定されるので、練習者が弾けないために、練習するのを途中で止めてしまう可能性を低減させることが可能となる。
【0206】
また、練習モードとして第2モードが選択された場合、練習者が練習曲として呈示された楽譜の楽曲の演奏ができるようになると、略同一のYGレベルの楽譜を次の練習曲として呈示するので、練習者は、比較的短期間で、次々と練習曲を完成させられる可能性が高められるので、レパートリ数を短期間で増やしていくことが可能となる。このため、レパートリ数を増やすことができるので、練習を途中で止めてしまう可能性を低減させることが可能となる。
【0207】
さらに、練習モードとして第3モードが選択された場合、練習者が練習曲として呈示された楽譜の楽曲の演奏ができるようになると、今現在の練習者のYGレベルとレパートリ数との関係から、演奏技術レベルを向上させるべきか、レパートリ数を増やすべきであるかを判断して練習曲が呈示されることになるので、演奏技術レベルの向上と、レパートリ数とをバランスよく向上させるようにすることが可能となる。
【0208】
また、練習モードに関係なく、演奏情報に基づいて求められた練習者のYGレベルと、楽譜のYGレベルとの差分が大きく、練習者にとって、今現在の楽譜が難しすぎると判定された場合には、さらに、楽譜が簡易化される。このように練習者にとって常に最適な目的楽譜が練習曲として呈示されるので、練習者に練習してもできないといった感覚を持たせないようにすることが可能となる。このため、楽器の演奏練習を継続できずに止めてしまう可能性を低減させることが可能となる。
【0209】
<変形例>
[類似度を用いた同一YGレベル楽曲推薦処理]
以上においては、同一YGレベル楽曲推薦処理において、各楽譜におけるYGレベルと演奏情報に基づいて得られる練習者のYGレベルとの比較により、練習者が比較的直ぐに弾けるようになるであろう楽曲を次の練習曲として推薦する例について説明してきた。しかしながら、YGレベルではなく、練習者が演奏できたとみなされる楽譜に含まれる演奏技術要素の類似度が高い演奏技術要素を含む楽譜を次の練習曲として呈示するようにしてもよい。さらには、上述したYGレベルとの比較で次の練習曲の候補を選択するモードとするか、類似度が高い楽譜を練習曲の候補として選択するモードとするかを選択できるようにしてもよい。
【0210】
尚、ここで、楽譜推薦部17は、上述したYGレベルとの比較で次の練習曲の候補を選択するモードとするか、演奏技術要素の類似度が高い楽譜を練習曲の候補として選択するモードとするかを選択できるものとし、以降においては、類似度が高い楽譜を練習曲の候補として選択するモードにおける場合の同一YGレベル楽曲推薦処理について説明する。
【0211】
ステップS151において、楽譜推薦部17は、楽曲数をカウントするためのカウンタNを1に初期化する。
【0212】
ステップS152において、楽譜推薦部17は、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲以外、すなわち、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜のうち、未処理の楽譜のいずれかを処理対象の楽譜Nとし、現在呈示されている楽曲の楽譜との類似度を算出する。
【0213】
例えば、図33で示される運指ベクトルFV1乃至FV3からなる演奏技術要素TE1と、運指ベクトルFV4乃至FV6からなる演奏技術要素TE2とを、それぞれベクトルとみなすことにより、以下の式(5)で示される演算により演奏技術要素TE1,TE2の類似度が算出できる。
【0214】
【数3】

【0215】
ここで、TE1,TE2は、それぞれ運指ベクトルFV1乃至FV3からなる演奏技術要素TE1のベクトルであり、運指ベクトルFV4乃至FV6からなる演奏技術要素TE2のベクトルであり、cosθは、演奏技術要素TE1,TE2の類似度である。そこで、楽譜推薦部17は、このcosθで定義される類似度を応用して、図34で示されるように楽曲の類似度を算出する。
【0216】
すなわち、楽曲(楽譜)1が演奏技術要素TE1乃至TE3で構成されており、楽曲(楽譜)2が演奏技術要素TE4乃至TE6で構成されている場合、楽譜推薦部17は、以下の式(6)を算出することにより楽曲(楽譜)間の類似度を算出する。
【0217】
類似度=[max(C14,C15,C16)
+max(C24,C25,C26)
+max(C34,C35,C36)]/3
・・・(6)
【0218】
ここで、max(a,b,c)は、a乃至cの最大値を選択することを示している。また、C14乃至C16は、それぞれ演奏技術要素TE1と演奏技術要素TE4乃至TE6の類似度を示している。また、C24乃至C26は、それぞれ演奏技術要素TE2と演奏技術要素TE4乃至TE6の類似度を示している。さらに、C34乃至C36は、それぞれ演奏技術要素TE3と演奏技術要素TE4乃至TE6の類似度を示している。
【0219】
ステップS153において、楽譜推薦部17は、処理対象となる楽譜Nと、現在呈示されている楽曲の楽譜の類似度が所定の基準値よりも高いか否かを判定する。ステップS153において、例えば、処理対象となる楽譜Nと、現在呈示されている楽曲の楽譜の類似度が所定の基準値よりも高いと判定された場合、処理は、ステップS154に進む。
【0220】
ステップS154において、楽譜推薦部17は、今現在呈示されている楽譜と類似した演奏技術要素を含む楽譜であって、他の楽曲Nの曲名を練習曲の候補として楽譜選択部21を制御して呈示部19に呈示させる。
【0221】
ステップS155において、楽譜推薦部17は、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜の全てが今現在呈示されている楽譜との類似度が求められたか否かを判定する。ステップS155において、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜の全てが今現在呈示されている楽譜との類似度が求められていない場合、処理は、ステップS156に進む。
【0222】
ステップS156において、楽譜推薦部17は、カウンタNを1インクリメントして、処理は、ステップS152に戻る。
【0223】
一方、ステップS153において、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜の全てが今現在呈示されている楽譜との類似度が求められた場合、ステップS154の処理はスキップされる。
【0224】
すなわち、ステップS155において、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜の全てが今現在呈示されている楽譜との類似度が求められたと判定されるまで、ステップS152乃至S156の処理が繰り返される。そして、ステップS155において、楽譜DB22に登録されている、現在呈示されている楽曲と原曲が異なる楽曲の楽譜の全てが今現在呈示されている楽譜との類似度が求められたと判定された場合、処理は、ステップS157に進む。
【0225】
ステップS157において、楽譜推薦部17は、制御部11を介して呈示部19に練習曲の候補として呈示されている楽曲のいずれかが選択されたか否かを判定し、選択されるまで、同様の処理を繰り返す。そして、ステップS157において、練習者が操作部12を操作して、いずれかの練習曲を選択すると、ステップS158において、楽譜推薦部17は、選択された練習曲の楽譜を呈示部19に呈示するように楽譜選択部21を制御する。
【0226】
すなわち、以上の処理により、演奏することができたとみなされた楽譜と、演奏技術要素において類似した楽譜を次の練習曲の候補として呈示することができるので、習得した演奏技術要素を応用して次の練習曲を練習することが可能となるので、比較的短期間で新しい練習曲を演奏できるようにすることが可能となる。
【0227】
このため、略同一の演奏技術要素を含む楽譜を次の練習曲の候補として推薦し、その中からいずれかを練習者に選択させるようにすることができる。この結果、単調になりがちな練習に変化をもたせることができるので、練習者が練習を継続する意識を高めることができる。さらに、候補として挙げられる楽譜は、既に、演奏可能となっている演奏技術要素と略同一の楽譜である。このことから、練習者がそれほど苦労することなく演奏できるようになる可能性の高い楽譜であるので、練習者は、比較的短期間で演奏できるようになる可能性が高く、練習を楽しみながらレパートリ数を増やしていくことが可能となる。
【0228】
尚、以上においては、楽譜間の演奏技術要素を用いた類似度により次の練習曲の候補を呈示する例について説明してきたが、楽譜間の演奏技術要素を用いた類似度により検索される練習曲となる楽譜の候補と、YGレベルが略同一となる練習曲の楽譜とを、両方とも次の練習曲の候補として呈示するようにしてもよい。
【0229】
以上の如く、本技術によれば、練習者は、自らが弾けるようになりたいと思った目標の楽曲を比較的容易に段階的に弾けるようになるので、つまらないと感じる練習が低減されることにより、原曲の楽譜を弾けるようになるまで練習を継続できる可能性を向上できる。また、自らが取得しているYGレベルに応じてレパートリを増やすことができるので、比較的容易にレパートリ数を増やすことが可能となる。さらに、楽譜に対するYGレベルは、練習者の身体的制限事項を含めて設定することが可能となるので、子供から大人まで、様々な手の大きさの練習者に対して適切に目的楽譜を呈示することが可能となる。
【0230】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0231】
図35は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0232】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)1001,ROM(Read Only Memory)1002,RAM(Random Access Memory)1003は、バス1004により相互に接続されている。
【0233】
バス1004には、さらに、入出力インタフェース1005が接続されている。入出力インタフェース1005には、入力部1006、出力部1007、記憶部1008、通信部1009、及びドライブ1010が接続されている。
【0234】
入力部1006は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部1007は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部1008は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部1009は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ1010は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011を駆動する。
【0235】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU1001が、例えば、記憶部1008に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース1005及びバス1004を介して、RAM1003にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0236】
コンピュータ(CPU1001)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア1011に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0237】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア1011をドライブ1010に装着することにより、入出力インタフェース1005を介して、記憶部1008にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部1009で受信し、記憶部1008にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM1002や記憶部1008に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0238】
なお、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0239】
また、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0240】
例えば、本技術は、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0241】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0242】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0243】
尚、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1) 楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得部と、
楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得部と、
前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出部と
を含む情報処理装置。
(2) 前記楽器は鍵盤楽器であり、
前記演奏困難度算出部は、
前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の静的な配置を示す静指ベクトルを算出する静指ベクトル算出部と、
前記静指ベクトルに基づいて、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の静的な困難度を示す静指困難度を算出する静指困難度算出部と、
前記静指ベクトル間の前記演奏者の指の動的な変化を示す動指ベクトルを算出する動指ベクトル算出部と、
前記動指ベクトルに基づいて、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の動的な困難度を示す動指困難度を算出する動指困難度算出部と、
前記静指ベクトルと、前記動指ベクトルとの組み合わせである運指ベクトルを算出する運指ベクトル算出手段とを含み、
前記楽曲内における所定の演奏技術に対する前記運指ベクトルの組み合わせからなる演奏技術要素毎に、前記運指ベクトルを構成する静指ベクトルおよび動指ベクトルに対する前記静指困難度および前記動指困難度から演奏技術レベルを算出し、前記楽曲に含まれる全ての演奏技術要素の演奏技術レベルの平均値を、前記楽曲の演奏困難度として算出する
(1)に記載の情報処理装置。
(3) 前記演奏者により前記楽曲が、前記楽器により演奏されるとき、前記演奏された楽曲を聴取する聴取部と、
前記聴取部により聴取された楽曲を楽譜に変換する楽譜変換部と、
前記楽譜変換部により変換された楽譜と、前記楽曲の楽譜情報により得られる楽譜との比較により、前記演奏者の演奏レベルを求める演奏レベル算出部と
前記演奏レベルに基づいて、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する推薦部とを含む
(1)または(2)に記載の情報処理装置。
(4) 前記楽曲の原曲の楽譜を、前記演奏困難度を低減させるように簡易化する楽譜簡易化処理部を含み、前記推薦部は、前記演奏レベルが第1の所定の閾値よりも低い場合、前記楽譜簡易化処理部により簡易化された前記演奏困難度のより低い、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する
(2)または(3)に記載の情報処理装置。
(5) 前記推薦部は、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高い場合、前記楽譜変換部により変換された前記演奏困難度のより高い、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する
(3)または(4)に記載の情報処理装置。
(6) 前記推薦部は、前記演奏者の演奏レベルを向上させるモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏困難度がより高く、かつ、前記楽曲と原曲が同一の、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する
(3)または(4)に記載の情報処理装置。
(7) 前記推薦部は、前記演奏者が演奏可能な楽曲のレパートリを増やすモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏困難度が略同一であって、かつ、前記楽曲とは原曲が異なる楽曲を推薦する
(3)または(4)に記載の情報処理装置。
(8) 前記推薦部は、前記演奏者の演奏レベルを向上させて、かつ、演奏可能な楽曲のレパートリを増やすモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏者の演奏可能なレパートリ数と、前記演奏者の演奏レベルに応じて、前記演奏困難度が略同一であって、かつ、前記楽曲とは原曲が異なる楽曲、または、前記演奏困難度がより高く、かつ、前記楽曲と原曲が同一の、前記楽曲とは異なる楽曲のいずれかを推薦する
(3)または(4)に記載の情報処理装置。
(9) 情報処理装置の情報処理方法において、
前記情報処理装置が、
楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得処理し、
楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得処理し、
前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出処理する
情報処理方法。
(10) コンピュータを、
楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得部と、
楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得部と、
前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出部と
して機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0244】
1 情報処理装置, 11 制御部, 12 操作部, 13 演奏情報記録部, 13a マイクロフォン, 13b カメラ部, 13c センサ部, 14 評価部, 15 学習選択部, 16 練習者情報記録保持部, 17 楽譜推薦部, 18 楽譜簡易化処理部, 19 呈示部, 20 演奏レベル算出部, 21 楽譜選択部, 22 楽譜DB, 23 新規楽譜登録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得部と、
楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得部と、
前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出部と
を含む情報処理装置。
【請求項2】
前記楽器は鍵盤楽器であり、
前記演奏困難度算出部は、
前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の静的な配置を示す静指ベクトルを算出する静指ベクトル算出部と、
前記静指ベクトルに基づいて、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の静的な困難度を示す静指困難度を算出する静指困難度算出部と、
前記静指ベクトル間の前記演奏者の指の動的な変化を示す動指ベクトルを算出する動指ベクトル算出部と、
前記動指ベクトルに基づいて、前記楽曲の楽譜に基づいて配置される所定の期間の演奏者の指の動的な困難度を示す動指困難度を算出する動指困難度算出部と、
前記静指ベクトルと、前記動指ベクトルとの組み合わせである運指ベクトルを算出する運指ベクトル算出手段とを含み、
前記楽曲内における所定の演奏技術に対する前記運指ベクトルの組み合わせからなる演奏技術要素毎に、前記運指ベクトルを構成する静指ベクトルおよび動指ベクトルに対する前記静指困難度および前記動指困難度から演奏技術レベルを算出し、前記楽曲に含まれる全ての演奏技術要素の演奏技術レベルの平均値を、前記楽曲の演奏困難度として算出する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記演奏者により前記楽曲が、前記楽器により演奏されるとき、前記演奏された楽曲を聴取する聴取部と、
前記聴取部により聴取された楽曲を楽譜に変換する楽譜変換部と、
前記楽譜変換部により変換された楽譜と、前記楽曲の楽譜情報により得られる楽譜との比較により、前記演奏者の演奏レベルを求める演奏レベル算出部と
前記演奏レベルに基づいて、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する推薦部とを含む
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記楽曲の原曲の楽譜を、前記演奏困難度を低減させるように簡易化する楽譜簡易化処理部を含み、
前記推薦部は、前記演奏レベルが第1の所定の閾値よりも低い場合、前記楽譜簡易化処理部により簡易化された前記演奏困難度のより低い、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推薦部は、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高い場合、前記楽譜変換部により変換された前記演奏困難度のより高い、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推薦部は、前記演奏者の演奏レベルを向上させるモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏困難度がより高く、かつ、前記楽曲と原曲が同一の、前記楽曲とは異なる楽曲を推薦する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記推薦部は、前記演奏者が演奏可能な楽曲のレパートリを増やすモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏困難度が略同一であって、かつ、前記楽曲とは原曲が異なる楽曲を推薦する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記推薦部は、前記演奏者の演奏レベルを向上させて、かつ、演奏可能な楽曲のレパートリを増やすモードである場合、前記演奏レベルが前記第1の所定の閾値よりも高い第2の所定の閾値よりも高いとき、前記演奏者の演奏可能なレパートリ数と、前記演奏者の演奏レベルに応じて、前記演奏困難度が略同一であって、かつ、前記楽曲とは原曲が異なる楽曲、または、前記演奏困難度がより高く、かつ、前記楽曲と原曲が同一の、前記楽曲とは異なる楽曲のいずれかを推薦する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置の情報処理方法において、
前記情報処理装置が、
楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得処理し、
楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得処理し、
前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出処理する
情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
楽曲の楽譜情報を取得する楽譜情報取得部と、
楽器の演奏者における前記楽器の演奏に係る身体的な制約事項を取得する制約事項取得部と、
前記楽曲の楽譜情報と、前記身体的な制約事項とに基づいて、前記楽曲を、前記楽器で演奏する際の前記演奏者に対する演奏困難度を算出する演奏困難度算出部と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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