説明

情報処理装置及びその制御方法、画像形成装置、情報処理システム、プログラム及び記録媒体

【課題】情報処理装置と、識別情報送信装置との相対距離を、受信電波強度の測定値と、予め取得した相関データとに基づいて算出するときに、識別情報送信装置の電波送信レベルの変動要因に対する相関データの補正を不要にする。
【解決手段】デジタル複合機2は、電波を送信するとともに、送信電界強度を記憶する。ユーザYがデジタル複合機2に近づくと、ユーザYが携帯している識別情報送信装置4は、デジタル複合機2からの電波を受信して、その電界強度を測定し、測定データをユーザYの識別情報とともにデジタル複合機2へ送信する。デジタル複合機2は、記憶した送信電界強度と、識別情報送信装置4から取得した受信電界強度と、予め作成・保存した相関データとに基づいて、デジタル複合機2と識別情報送信装置4との間の相対距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークで接続された情報処理端末等の外部装置と通信する情報処理装置及びその制御方法と、その情報処理装置を備えた画像形成装置及び情報処理システムと、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置を備えた画像形成装置、例えばネットワークによりパーソナルコンピュータ(以下、PCという)等の情報処理端末に接続されたプリンタでは、一般に、ユーザが情報処理端末を操作してデータと印刷指示とを送信すると、それらの受信完了に伴い印刷処理を開始し、印刷された用紙を排紙トレイに排紙する。具体的にオフィス内で共用されるプリンタを例に採ると、ユーザが特定のプリンタに印刷させるときには、自己のPC等を使用して、印刷データファイルと出力先のプリンタとを指定してデータ転送する。プリンタは、この印刷データを受信すると、内部で画像データの生成を含む印刷処理を実行し、画像データの生成完了後に画像を形成して印刷や排紙等を行う。
【0003】
ここで、このようなプリンタでは、ユーザが意図するタイミングで印刷して印刷物を排紙するわけではないため、ユーザがプリンタまで移動する間に、排紙後の印刷物を他人に見られたり、盗まれたりする危険がある。そこで、従来、印刷物の盗難防止やセキュリティ向上の観点から、データは随時受信するものの、ユーザがプリンタ前で所定の認証動作を行うまで、受信データを保持して印刷・排紙処理を開始せず、認証後に、受信データに基づいて印刷及び排紙処理する機能を搭載したプリンタが使用されている。また、同様の観点から、印刷物をプリンタの内部トレイに排紙して、ユーザ認証まで外部に取り出せないようにした機構を搭載し、ユーザ認証後に、印刷物を外部トレイに排紙し、或いは内部トレイからの取り出しを許可する鍵機構を設けたプリンタも知られている。
【0004】
ところが、このユーザ認証は、ユーザがプリンタの操作画面を操作してIDやパスワード等の識別(認証)情報を入力し、又は、プリンタに接続されたICカードリーダに、ユーザが所持するICカードを接触させて読み取らせる等して行うのが一般的である。即ち、従来のプリンタでは、ユーザが、プリンタまで移動して所定の操作等により認証されるまで印刷処理が開始されないため、頻繁に印刷処理するときには、その都度、移動や同じ操作を繰り返して印刷・排紙させる必要があり、煩雑で使い難く、かつ印刷の待ち時間が長くなる、という問題がある。特に、熱定着方式のプリンタでは、印刷開始までのウォームアップ時間が比較的長く、印刷・排紙まで、ユーザがプリンタの前で長時間拘束される傾向がある。また、印刷物を内部トレイに排紙するプリンタでは、専用の各種機構が必要になるのに加えて、ユーザ毎に別のトレイに排紙して管理する必要もあるため、トレイ数等に応じて装置全体が大きくなり、設置場所が制約される、という問題も生じる。
【0005】
これに対し、従来、ユーザが携帯するICカードから無線通信により識別情報を受信すると、識別情報からユーザを識別してログイン名を自動設定して操作パネルに表示し、パスワードを受け付ける状態にすることで、ユーザによるログイン名の入力を不要として操作を簡単にした画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この従来の画像形成装置では、ユーザのパスワードの入力によるユーザ認証後に印刷等の各動作が開始されるため、ユーザが画像形成装置前で印刷・排紙を待つ時間や拘束時間はほとんど短縮されず、利便性を充分に向上できない。また、この画像形成装置では、ICカード側から送信された電波を画像形成装置側で受信する際の電界強度(電波強度)の変化から、ICカードの接離を認識する、即ち、この強度が強くなると互いの相対距離が短くなり、強度が弱くなると相対距離が長くなるのを利用して、ICカードの接近及び離隔を判別して認識する。ところが、ICカードからの電波の電界強度と電波送受信器間の相対距離との相関は、携帯が前提の構造であるICカード側の機器の変動要因等により一定にはならず、それらが一定であることを基準に相対距離を求めて、ICカードの接離を判別する方式を採用すると、充分な相対距離の正確性や接離の判別精度を得るのが難しい。
【0007】
加えて、この従来の画像形成装置では、ICカードからの無線通信による応答が一定時間無いときや、ICカードが画像形成装置近傍を離れたと判断できるときには、操作パネルに表示したログイン画面を消してセキュリティを向上させている。しかし、互いに通信可能で、かつICカードが離れた場合にログイン画面を消すためには、ICカードとの間の距離を正確に検知する手段が必要となるが、この画像形成装置は、このような検知手段を有さず、正確に装置のセキュリティ機能を発揮させるのが難しい。また、この画像形成装置は、無線通信により操作画面の表示に関する制御を行うだけで、無線通信結果等に基づき、電力削減を目的とする省電力モードへの自動移行や復帰、又は、印刷対象データへのアクセス権が無いユーザの接近検知に伴い、印刷動作の停止や音又は画面で警告する機能等は有さず、省エネやセキュリティの観点から更なる改善を図る必要がある。
【0008】
そのため、ICカード側の変動要因による電界強度の変化を補正する目的で、画像形成装置とICカードを一定距離に配置し、その際の画像形成装置側での電界強度の測定値を利用して、電界強度の値と相対距離の相関データを補正することが考えられた。しかしながら、定期的に、ICカードを画像形成装置から一定距離に配置した状態で、電界強度値を取得する操作が発生するため、ユーザにとって必ずしも使いやすいものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、外部装置と通信可能な情報処理装置と、その外部装置のユーザ等の識別情報を電波で送信する識別情報送信装置との相対距離を、受信電波強度の測定値と、予め取得した相対距離と受信電波強度との相関データとに基づいて算出し、その算出結果に基づいて情報処理装置の動作を制御するときに、識別情報送信装置の電波送信レベルの変動要因に対する相関データの補正を不要にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外部装置と通信する手段と、その外部装置のユーザの識別情報又はその外部装置の識別情報、及び受信電波の電界強度情報を無線送信する識別情報送信装置に対して電波を送受信する手段と、前記識別情報送信装置との間の相対距離と、前記識別情報送信装置への送信電波の送信電界強度と、その送信電波の前記識別情報送信装置での受信電界強度との相関データを記憶する相関データ記憶手段と、前記識別情報送信装置へ送信した電波の送信電界強度と、その電波を受信した前記識別情報送信装置から送信された、その電波の受信電界強度情報と、前記相関データ記憶手段に記憶されている相関データとに基づいて、前記相対距離を算出する距離算出手段と、前記相対距離の算出結果に基づいて当該情報処理装置の動作を制御する動作制御手段と、を備えたことを特徴とする情報処理装置である。
また、本発明は、この情報処理装置を備えたことを特徴とする画像形成装置及び、この画像形成装置と、この画像形成装置に、外部装置の識別情報又はその外部装置のユーザの識別情報、及びその画像形成装置から送信された電波の受信電界強度情報を電波により無線送信する識別情報送信装置と、を備えたことを特徴とする情報処理システムである。
更に、本発明は、外部装置と通信する手段と、その外部装置のユーザの識別情報又はその外部装置の識別情報、及び受信電波の電界強度情報を無線送信する識別情報送信装置に対して電波を送受信する手段と、を備えた情報処理装置の制御方法であって、前記情報処理装置からの送信電波の送信電界強度を測定する工程と、その送信電波を受信した前記識別情報送信装置から送信された、前記送信電波の受信電界強度情報を受信する工程と、前記測定した送信電界強度と、前記受信した受信電界強度情報と、予め取得した相関データであって、前記識別情報送信装置との間の相対距離と、前記識別情報送信装置への送信電波の送信電界強度と、その送信電波の前記識別情報送信装置での受信電界強度との相関データとに基づいて、前記相対距離を算出する工程と、前記相対距離の算出結果に基づいて前記情報処理装置の動作を制御する動作制御工程と、を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法である。
そして、本発明は、これら情報処理装置の制御方法の各工程をコンピュータで実行させるためのプログラム及び、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部装置と通信可能な情報処理装置と、その外部装置のユーザ等の識別情報を電波で送信する識別情報送信装置との相対距離を、受信電波強度の測定値と、予め取得した相対距離と受信電波強度との相関データとに基づいて算出し、その算出結果に基づいて情報処理装置の動作を制御するときに、識別情報送信装置の電波送信レベルの変動要因に対する相関データの補正を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の情報処理システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の情報処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信電波強度及び受信電波強度と相対距離との相関を示すテーブルの説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の情報処理システムによる印刷手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、情報処理システムを例に、図面を参照しながら詳細に説明する。この情報処理システムは、ユーザにより使用される外部の情報処理端末やネットワーク装置等の外部装置と通信する情報処理装置を備えた画像形成装置と、外部装置のユーザにより所持され、ユーザ等を識別するための識別情報を、電波により画像形成装置に無線送信する識別情報送信装置と、を有する画像形成システムである。
【0014】
ただし、以下の各実施形態では、画像形成装置として、コピー、プリンタ、ファクシミリ、及びスキャナ等の複数の機能を併せ持つ、いわゆるMFP(Multi Function Peripheral)と呼ばれるデジタル複合機を例に採り、その画像形成や情報処理装置の各処理について説明する。また、外部装置として、デジタル複合機にLAN(Local Area Network)を介して接続されたPCを使用し、ユーザの操作により、デジタル複合機に印刷やコピー処理(動作)を実行させる例を説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態の情報処理システムの概略構成を示す模式図である。
この情報処理システム1は、図示のように、デジタル複合機2と、デジタル複合機2に接続された少なくとも1つ(ここでは1つのみ示す)のPC3と、PC3のユーザYにより携帯可能な識別情報送信装置4と、を備えている。
【0016】
デジタル複合機2は、PC3と通信するための通信手段(図示せず)を有し、ネットワークケーブルNを介して、印刷データや制御信号等の各種データを送受信する。また、デジタル複合機2は、識別情報送信装置4と無線通信するための無線通信モジュール29が内蔵又は外部接続され、互いに所定データを送受信する無線親機としても機能する。これにより、デジタル複合機2は、予め設定されたデバイスID等の自機の識別情報を外部に向け定期的に電波により無線送信するとともに、外部の識別情報送信装置4等から無線送信された電波を受信する。
【0017】
識別情報送信装置4は、RFID(Radio Frequency Identification)等のパッシブタイプの無線通信手段ではなく、電池等の内蔵電源で駆動されて電波を送受信するアクティブタイプの外部無線通信装置(無線子機)であり、自装置やユーザYのID等のユーザYの識別に使用される識別情報を送信する。ここでは、識別情報送信装置4は、例えば、デジタル複合機2のネットワークを介した通信手段のインターフェースと比べて消費電力が小さい特定小電力無線等の小電力な無線データ通信手段を備え、デジタル複合機2の無線通信モジュール29から比較的離れた状態でも互いに無線通信可能である。また、識別情報送信装置4は、各PC3を使用する複数のユーザY毎に所持され、定期的に、又はデジタル複合機2からの識別情報の受信に応じて、それぞれの識別情報を送信し、ユーザYがデジタル複合機2の無線通信モジュール29と無線通信可能な距離まで接近すると所定の無線通信を行う。
【0018】
PC3は、LAN(Local Area Network)を構成するネットワークケーブルNを介してデジタル複合機2に接続され、各識別情報送信装置4を所持するユーザYの操作を受けて、デジタル複合機2へ画像データや印刷指示等を出力する。
【0019】
以上のように構成される情報処理システム1では、各ユーザYは、それぞれのユーザYに対応付けられた異なる識別情報が設定された識別情報送信装置4を有し、それを各々身に付けてPC3を操作し、或いは、操作後に所持してデジタル複合機2へ向かって移動して、デジタル複合機2に印刷処理等を実行させる。このように、識別情報送信装置4は、ここでは、各ユーザYと、少なくともデジタル複合機2に接近する際に場所を共有した状態(近傍位置にある状態を含む)にあり、その識別情報の受信に伴い、デジタル複合機2は、予め設定された条件等に応じて後述する所定の動作を実行する。その際、この情報処理システム1では、デジタル複合機2が、移動中や離れた状態の各識別情報送信装置4との間の相対距離を算出し、その算出結果に基づいて動作制御を行うようになっている。以下、この情報処理システム1の各構成について、より詳細に説明する。
【0020】
図2は、情報処理システム1の概略構成を示すブロック図であり、互いに接続された状態のシステム各部毎に、その機能等を模式的にブロックで示している。
【0021】
PC3は、図示のように、各種のデータ処理や演算、及びPC3全体の制御等を行うCPU(Central Processing Unit)30と、CPU30の動作や処理に必要なデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)31と、液晶ディスプレイ等からなる表示部32とを備え、それらがチップセットN33を介して互いに接続されている。また、PC3は、チップセットN33に接続されたチップセットS34を備え、チップセットS34に、CPU30に実行させるプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)35、ユーザYによる入力を受けるキーボードやマウス等の入力部36、ネットワークに接続して通信するための通信手段であるネットワークI/F(インターフェース)37、及びHDD(ハードディスクドライブ)38が接続されている。
【0022】
従って、CPU30は、これらのチップセット33、34を介してPC3の各部にアクセスし、例えばROM35からBIOS(Basic Input/Output System)プログラムを随時読み出して解読及び実行を行い、表示部32や入力部36等を制御する。同様に、CPU30は、HDD38に格納されたOS(Operating System)プログラム38Aや各種のアプリケーションプログラム38Bを随時読み出して実行し、保存すべきデータをHDD38の所定領域(データ38C)に記憶させる。このように、CPU30は、PC3内外の各種I/O(Input/Output)にアクセスして制御するとともに、ネットワークI/F37を介して、デジタル複合機2とも通信する。
【0023】
デジタル複合機2は、このデジタル複合機2全体の制御等を行うCPU10と、プログラム等を記憶するROM11と、CPU10の処理用データ等を一時的に記憶するRAM12と、情報の表示画面(ここでは、例えばタッチパネル等の操作画面)を有する表示手段やテンキー等からなる操作パネル13と、を備えている。また、デジタル複合機2は、スキャナ部14と、そのスキャナ信号を変換するASIC(Application Specific Integrated Circuit)15と、ビデオ書込処理回路16と、接続されたLD(レーザダイオード)17を制御するLD制御部18と、エンジン制御回路19と、それに接続されたエンジン部20及び電源制御部21と、備えている。さらに、デジタル複合機2は、各種データを記憶するHDD22と、外部との通信を制御するASIC23と、ASIC23に接続されたネットワーク通信手段を構成するネットワークI/F24及び、図1を参照しながら説明した無線通信モジュール29とを備え、以上の各部を、システムバスB等を介して互いに接続している。
【0024】
デジタル複合機2は、CPU10により、ROM11から制御や動作に必要な各プログラムを随時読み出して解読及び実行を行い、動作に必要なデータ(ここでは、後述する電界強度データを図示)や画像データをRAM12に一時的に記憶する。従って、これらCPU10等は、デジタル複合機2が備える情報処理装置や、後述する各動作を制御して実行させるための各手段の一部を構成する。これに対し、HDD22には、印刷データファイル22Aやコピーデータファイル22Bの他、操作パネル13等を介して設定される各種の設定データファイル22C、及び、以下説明する制御に必要なデータや管理データが格納され、CPU10により必要に応じて読み出されて使用される。
【0025】
また、デジタル複合機2は、従来装置と同様に各部を連動させてコピーや印刷等を行い、例えばコピー動作時には、スキャナ14で読み取った画像データに対し、ASIC15により各種の補正処理を施した後、RAM12に一時的に記憶する。これに対し、複数部数の印刷動作時には、HDD22にも画像のコピーデータを一時的に格納し(コピーデータファイル22B)、これを使用して紙に印刷するときには、まず、画像データをビデオ書込処理回路16からLD制御部18へ送信する。次に、LD制御部18により制御してLD17を点滅させる等により、感光体ドラム(図示せず)上に静電潜像を形成し、エンジン制御回路19の制御によりタイミングを取りつつ、エンジン部20と連動させて、静電潜像の現像、用紙への転写及び定着等、通常の複写動作を実行する。
【0026】
さらに、デジタル複合機2は、ネットワークI/F24が、PC3のネットワークI/F37とネットワークケーブルNにより接続され、それらを介して、PC3と互いに通信して印刷データ等を送受信する。従って、デジタル複合機2とPC3は、ネットワークにより互いに有線接続され、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)等のネットワークプロトコルに基づいて通信することができる。ただし、デジタル複合機2とPC3とが、専用線や他のプロトコルによる通信手段、又は、無線通信モジュール29とは別に構成される無線インターフェースを使用して通信するように構成してもよい。
【0027】
加えて、このデジタル複合機2では、無線通信モジュール29が、上記した識別情報送信装置4から無線送信される識別情報の電波を受信する受信(無線通信)手段を構成しており、これに対応して、各ユーザYの識別情報送信装置4にも、同様の無線通信モジュール40が設けられている。これら両無線通信モジュール29、40は、互いに所定範囲(距離)内に位置する間、互いの設定された識別情報(ここではID情報)を電波で送受信して通知する。
【0028】
デジタル複合機2は、このように受信したユーザYの識別情報から、予めHDD22に格納された、又はネットワーク経由で外部サーバ(図示せず)から取得したユーザ情報を参照し、送信元の識別情報送信装置4を判別して、そのユーザYを識別して特定及び認証する。そのため、ここでは、HDD22に、ユーザ情報フィル22Eとして、識別情報送信装置4に設定されたID番号等の識別情報と、その所持者(ユーザY)を特定するためのユーザ名等の特定情報とが、関連して予め設定・格納され、CPU10により読み出されてユーザYの識別や認証処理等に使用される。
【0029】
また、この情報処理システム1のデジタル複合機2は、識別情報送信装置4に向けて電波を送信するとともに、その送信電波の電界強度を測定して、RAM12に記憶する。識別情報送信装置4は、デジタル複合機2から送信された電波を受信し、内部の電界強度測定回路(図示せず)によって、受信電界強度値を測定した値を識別情報と共にデジタル複合機2へ送信する。デジタル複合機2は識別情報送信装置4から受信した自送信電波の受信電界強度データを受信し、自送信時に記憶しておいた送信電波の電界強度値と、予め取得しておいた相関データとに基づいて、送信元の識別情報送信装置4との間(無線通信モジュール29、40間)の相対距離を算出する。そのため、デジタル複合機2のHDD22には、識別情報送信装置4との間の相対距離と受信電波の電界強度間の対応関係を示す相関(対応)データ(ここでは、それらの間の変換テーブル22D)が予め設定・記憶されている。
【0030】
図3は、送信電界強度及び受信電界強度と相対距離の変換テーブル22Dの例を示す説明図である。図示のように、変換テーブル22Dには、送信電界強度が125dBμVから129dBμVの範囲において、受信電界強度が105±5dBμVのときには相対距離は1.0m、50±5dBμVのときには2.0m等、また、送信電界強度が120dBμVから124dBμVの範囲において、受信電界強度が98±5dBμVのときには相対距離は1.0m、44±5dBμVのときには2.0m等、送信電界強度(図の左列)と受信電界強度(図の中央列)と相対距離(図の右列)とが、予め実測等により複数取得され設定されている。
【0031】
デジタル複合機2は、この記憶された相関データ(変換テーブル22D)に基づいて、CPU10により演算処理を行い、自送信電波の電界強度値と送信した電波の識別情報送信装置4側での受信電界強度値とから、その識別情報送信装置4との間の相対距離を算出する。また、デジタル複合機2は、この算出した相対距離と予め設定された規定距離とを比較して、識別情報送信装置4が規定距離より近づいたか否か、又は所定距離内(例えば、1mや3m以内)まで移動したか否か等を判断する。このように、デジタル複合機2は、相対距離の算出結果に基づいて、例えば識別情報送信装置4との距離や互いの位置関係、又は、その接近・離反を判断し、その結果や予め設定された条件に応じて、CPU10により動作が制御されて所定の動作を実行する。
【0032】
ここで、従来システムのように、識別情報送信装置側から送信された電波を画像形成装置側で受信したときに電界強度に基づいて、識別情報送信装置との間の相対距離を求める場合、測定される電界強度と相対距離の相関は、電波状態や各機器の電源の状態、特に識別情報送信装置4の実装状態(社員証のように胸に着けるのか、携帯電話に組み込むのか等)、及び、それぞれの個体差により、一定にならないことがある。従って、正確に相対距離を算出して動作制御に利用するためには、識別情報送信装置4毎に、相関データを補正する必要がある。しかし、そのためには、距離を固定して電界強度値を決定するような処理が必要になるため、手間がかかる。
【0033】
ここで、補正が必要なのは識別情報送信装置側の電源状態や実装状態が変動するためであり、その変動要因を排除できれば良いことになる。そこで、本実施形態では、画像形成装置2の無線通信モジュール29で自送信レベルを測定し、識別情報装置側の無線通信モジュール40で画像形成装置2からの送信電波の受信電界強度を測定し、識別情報装置4では識別情報と共に受信電界強度データをそのまま画像形成装置2に送信することで、識別情報装置4側の送信レベルの変動要因に影響されない距離測定手段を実現している。
【0034】
具体的には、デジタル複合機2は識別情報送信装置4へのID情報の送信時にRAM12上に送信電波の電界強度値を保存する。識別情報送信装置4はデジタル複合機4からのID情報の受信時に受信電波の電界強度値を測定し、その値を識別情報送信時に付加するなどして送信する。デジタル複合機4は識別情報装置4から識別情報と電界強度値とを受信し、受信した識別情報に基づいて制御を行うが、その際に受信した電界強度値とRAM12上に格納した送信時の電界強度値とをCPU10により比較演算し、HDD22内の変換テーブル22Dを参照して相対距離を算出し、その距離データに基づいて制御内容を変更する。
【0035】
その際、このデジタル複合機2では、ユーザYが識別情報送信装置4を所持して移動するときに、相対距離の算出結果から、所定距離(例えば1、3、5m等の1又は複数距離)を基準にしたユーザYの接近や離反を判別して認識できる。同様に、相対距離の算出結果の変化から、接近及び離反するユーザYの移動速度が算出でき、その結果から、ユーザYが、デジタル複合機2の使用を意図して接近しているのか、又は、単に傍を通り過ぎようとしているのかなども判別できる。このように、デジタル複合機2は、CPU10により、例えば所定条件と比較してユーザYの状態を判別し、ユーザYの接近に応じて特定の機能を有効又は無効にし、離反や通過では反応しない等、少なくとも相対距離の算出結果に基づき動作制御されて所定の動作を実行する。
【0036】
また、ここでは、デジタル複合機2は、消費電力が異なる複数の電力モード、例えば通常の画像形成動作が可能な通常電力モードや、一部の構成への電力供給の停止等により消費電力が相対的に少なくなり、動作が部分的に制限される1又は複数の省電力モード等に切り替え可能に構成されている。デジタル複合機2は、相対距離の算出結果に基づいて、その電力モードを消費電力が異なる複数の電力モード間で切り替える手段を有し、上記した所定の動作として、より消費電力が少ない省電力モードへの移行や復帰等を実行する。
【0037】
具体的には、デジタル複合機2は、例えば受信した識別情報から登録された識別情報送信装置4(ユーザY)を識別して特定し、そのユーザYからの印刷データがHDD22等に蓄積され、又は同データをPC3から受信中であれば電力モードを変更し、その状態を印刷準備状態に移行させる。その際、省電力モードであった場合には、エンジン制御回路19経由で電源制御部21に指示信号を送信し、定着部(図示せず)への電力供給等を再開するとともに、CPU10により印刷処理プログラムを起動して印刷待機状態にする。これに対し、同状態で識別情報送信装置4が離れて識別情報電波の受信レベル(電界強度レベル)が低下し、算出した相対距離が所定距離以上になったと認識されたときには、CPU10による印刷処理プログラムの起動を終了し、かつ電源制御部21に指示して定着部への電力供給等を停止して省電力モードに移行する。
【0038】
このように、デジタル複合機2は、相対距離の算出結果を使用して、電力モードの切替制御を行い、識別情報送信装置4の接近や所定距離内への進入の検知に応じて、省電力モードからスタンバイモードへの復帰や、印刷動作が可能な状態への自動的な移行等を実行する。逆に、識別情報送信装置4の離隔や所定距離外への移動の検知に応じて、省電力モードに移行し、使用時のみ印刷動作等の可能状態になることで、全体としての消費電力を削減している。
【0039】
さらに、デジタル複合機2は、表示手段である操作パネル13の操作画面の表示内容(表示画面)が、ユーザY毎に設定可能になっており、相対距離の算出結果及び、上記した識別情報に基づくユーザYの識別結果に基づいて、その表示画面を変更する制御も行う。即ち、このデジタル複合機2では、必要に応じて、ユーザY毎に、操作画面に表示する項目や操作内容等からなる専用画面を予め設定・変更でき、識別情報を受信したときには、ユーザ認証により対応するユーザYを特定し、そのユーザ専用の画面設定情報がHDD22に登録されていれば、その情報を読み出す。また、相対距離の算出結果から、そのユーザYの接近や所定距離内への進入等を検知すると、操作画面を、特定されたユーザY専用の画面に自動的に切り替える。このように、デジタル複合機2は、上記した所定の動作として、識別された識別情報送信装置4のユーザYに応じて、そのユーザYの専用画面(画像)を操作パネル13に表示する動作を実行する。
【0040】
次に、以上説明した情報処理システム1による、情報処理手順や動作、及び制御方法等について、デジタル複合機2により印刷する場合を例に採り説明する。
【0041】
図4は、この情報処理システム1による印刷手順を示すフローチャートであり、デジタル複合機2、PC3、及びユーザYの所持する識別情報送信装置4毎に、それぞれの処理の流れを示している。
【0042】
まず、ユーザYがPC3を操作してデータ編集等を行うことで、画像データや印刷指示を含む印刷データが作成されて(S101)、印刷処理が始まる。これにより、PC3が、ネットワークを介してデジタル複合機2と接続して互いに通信し、印刷データにユーザYの識別情報等のユーザ情報を付加して、ネットワークI/F37を介して、デジタル複合機2のネットワークI/F24へ転送する(S102)。デジタル複合機2は、この印刷データを受信すると(S201)、ASIC23を介して、印刷データをRAM12に一旦格納し、データ圧縮等を行ってからHDD22に印刷データファイル22Aとして蓄積する(S202)。併せて、デジタル複合機2は、CPU10の制御により、無線通信モジュール29を介して通信可能な識別情報送信装置4(無線通信モジュール40)を検索する。
【0043】
その際、デジタル複合機2は、一定時間間隔で識別情報を電波により無線送信するとともに、送信電界強度をRAM12に記憶しており(S203)、PC3を操作したユーザYが、識別情報送信装置4を所持してデジタル複合機2に近づくことで(S301)、デジタル複合機2からの識別情報を含む電波を識別情報送信装置4が受信する。識別情報送信装置4は、デジタル複合機2からの電波を受信して、その電界強度を測定し(S302)、その測定データをユーザYの識別情報とともにデジタル複合機2へ無線送信する(S303)。
【0044】
デジタル複合機2は、識別情報送信装置4から送信されたユーザYの識別情報及び受信電界強度データを受信する(S204)。そして、その識別情報から送信元の識別情報送信装置4を判別してユーザYを識別し、受信電界強度データから、デジタル複合機2から送信された電波を識別情報送信装置4で受信したときの電界強度データを取得する。また、上記した変換テーブル22D(図3参照)をHDD22から読み出して参照し(S205)、RAM12に記憶した送信電界強度と、識別情報送信装置4から取得した受信電界強度と、変換テーブル22Dに書かれている相関データとに基づいて、デジタル複合機2と識別情報送信装置4との間の相対距離を算出する。
【0045】
この相対距離の算出結果に基づいて、デジタル複合機2は、上記のように動作が制御されて、設定された条件に応じて所定の動作を実行する。ここでは、デジタル複合機2は、識別情報送信装置4が予め設定された規定距離内であるか否かを判断し(S206)、規定距離外にある間は(S206:NO)、識別情報及び電界強度データの受信と相対距離の算出とを繰り返す(S204→S205)。その結果、識別情報送信装置4が規定距離内に近づいたことを条件に(S206:YES)、電力モードを消費電力が異なる複数の電力モード間で切り替える等、所定の動作(処理)を実行する(S207)。或いは、デジタル複合機2は、予め操作パネル13にユーザY毎の表示画面が設定されているときには、相対距離の算出結果及び、ユーザYの識別結果に基づいて、操作パネル13の表示画面を、ユーザYに応じて変更する。
【0046】
このように、本実施形態の情報処理システム1では、デジタル複合機2と識別情報送信装置4との間の相対距離と電界強度との相関データに対して、識別情報送信装置4側の送信電波のレベル変動要因に応じて、その補正を行う必要が無いため、個々の装置間の差の影響や、変動要因等に対処して、正確な相対距離を算出することができる。特に、電池駆動を想定した識別情報送信装置4の送信電波の電界強度は、それぞれの電源状態や経年変化等により変化するが、この機能により、電界強度と相対距離の相関データの対応精度を略一定に維持でき、長期間に亘って、高い精度で相対距離を算出することができる。また、この相対距離の算出結果等に基づいてデジタル複合機2の動作を制御し、意図した条件下でのみ所定の機能を有効・無効にし、又は所定の動作を実行させること等が可能となり、ユーザYの利便性を向上できるとともに、相対距離に基づく制御の正確性も高めることもできる。
【0047】
さらに、識別情報送信装置4との間の相対距離に基づいて、デジタル複合機2の電力モードを変更するため、その電力モードをユーザYの離隔に応じて自動で切り替えて省電力モードへの移行等ができ、例えば待機時の電力を低減させる等により消費電力を削減することができる。併せて、デジタル複合機2の前まで移動して直接操作する前に、ユーザYのある程度の接近に応じて省電力モードから復帰させることもでき、印刷等の待ち時間を短縮して利便性もより向上でき、それらと消費電力の削減とを両立させることができる。
【0048】
加えて、このデジタル複合機2は、特定の識別情報送信装置4の接近等に応じて操作パネル13の表示画面を変更し、そのユーザYの専用の表示画面を操作不要で表示できるため、ユーザの操作を支援して操作性や利便性を高めることができる。その結果、例えば目の不自由な人が、デジタル複合機2まで移動するだけで、自己の使い慣れた専用画面が表示された状態にすることができ、操作ミスを抑制することができる。また、近年では、デジタル複合機2等の画面のカスタマイズサービスが広く行われており、それらにも応用可能で広い範囲に適用できる。
【0049】
その際、識別情報からユーザYを識別するとともに、ユーザYが併せて所持する他の識別情報送信装置4を識別して特定し、複数の情報から表示画面の変更制御を行うようにしてもよい。具体的には、例えばメンテナンスやシステム管理を行う権限を有するユーザYが、自己を特定する識別情報送信装置4に加えて、管理用のキーとなる特定の識別情報が設定された識別情報送信装置4を所持して、デジタル複合機2へ近づくことで、デジタル複合機2は両識別情報を受信する。このようにして、両装置4が所定距離内に進入した場合にのみ、操作パネル13に管理者メニューが表示された画面を表示させる等、通常はアクセスできない画面に切り替えることもでき、セキュリティの向上とともに、操作パネル13の操作に伴う煩雑さを回避することもできる。
【0050】
従って、この情報処理システム1によれば、ユーザYの識別情報を無線送信する識別情報送信装置4との間の相対距離を、識別情報送信装置4の電波送信レベルの変動要因に対する相関データの補正をすることなく正確に算出でき、相対距離の正確性や接離の判別精度を高めることができる。また、相対距離の算出結果に基づいて動作を制御して、ユーザYの利便性やセキュリティを高め、又は消費電力を低減させることもできる。
【0051】
なお、ここでは、ユーザYの識別情報を識別情報送信装置4から無線送信したが、その代わりに、外部装置(ここではPC3)の識別に使用するための識別情報を送信するようにして、その識別結果と相対距離の算出結果をPC3からのデータと関連付けて使用し、又は、他の識別情報を設定して送信してもよい。このように、識別情報送信装置4からは、少なくとも外部装置のユーザY又は外部装置の識別情報を無線送信する。また、この第1の実施形態では、相対距離の算出結果に基づく所定の動作として、デジタル複合機2の動作を制御して電力モードの切り替えや表示画面の変更を実行したが、所定の動作として、各デジタル複合機2の有する機能等に応じて、他の動作や処理を実行させるようにしてもよい。
【0052】
次に、このように、異なる所定の動作を実行する他の実施形態の情報処理システム1について順に説明する。それらは基本的には、以上説明した情報処理システム1と同様に構成されているため、以下では、デジタル複合機2の上記と異なる構成等についてのみ説明する。
【0053】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の情報処理システム1では、デジタル複合機2は、識別情報送信装置4との間の相対距離の算出結果及び、送信元の識別情報送信装置4のユーザYの識別結果に基づいて、そのユーザYのPC3からの受信データに対する処理を実行させ、又は、その処理を停止させる処理を行う。
【0054】
即ち、このデジタル複合機2は、電界強度から算出した識別情報送信装置4との間の相対距離から、その接近を検知すると、上記と同様に、ユーザ認証機能により、受信した識別情報から識別情報送信装置4(ユーザY)を識別して特定する。また、PC3から受信した印刷データに付加されたユーザ情報を検索して、特定したユーザYからの印刷データが受信されていれば、識別情報送信装置4が所定距離まで近づいたことを検知した後に、そのデータの印刷動作を開始して印刷処理を実行し、印刷紙等として出力する。一方、相対距離の算出結果から、識別情報送信装置4が所定距離以上に離れたことを検知すると、識別情報から識別情報送信装置4(ユーザY)を特定し、そのユーザYの印刷データを印刷中のときには、印刷処理を中止して動作を停止する。
【0055】
また、デジタル複合機2は、例えば、複数のユーザ(Y1〜Y4)からの印刷データを受信してHDD22に格納した状態で、所定のユーザY2が識別情報送信装置4と共に移動して規定距離(例えば1m以内)まで近づくと、その識別情報からユーザY2であると認識し、ユーザY2の印刷データを印刷処理する。その際、複数のユーザY1〜Y4の識別情報送信装置4のいずれとも通信可能な場合には、最も近いと判断されるユーザYの印刷データを印刷処理し、又は、相対距離が順次近くなり、次第に接近して特定距離(例えば3m)以内になったと判断されたユーザYの印刷データを印刷処理する。
【0056】
これに対し、デジタル複合機2は、所定のユーザY2が近接位置にいて印刷処理中の状態で、その識別情報送信装置4が遠くへ移動し、相対距離の算出結果から特定距離(例えば2m)以上離れたと判断された場合には、現在の印刷処理や動作を停止する処理を実行する。併せて、操作パネル13に表示されたユーザY2専用の表示画面を他の画面に切り替えたり、画面を非表示にしたりすることで、そのユーザY2の情報の漏洩を防止するとともに、ユーザY2の再度の接近により、印刷処理を再開(又は、停止前のときには継続)して実行する。
【0057】
このように、このデジタル複合機2は、相対距離の算出結果及びユーザYの識別結果に基づいて、そのユーザYのPC3から受信した画像データに対し、デジタル複合機2による画像形成処理を実行させる手段を有する。これにより、そのユーザYの印刷データが受信されていれば、印刷データを印刷処理して出力する。また、デジタル複合機2は、相対距離の算出結果及びユーザYの識別結果に基づいて、そのユーザYのPC3から受信した画像データに対する、デジタル複合機2による画像形成処理を停止させる手段を有する。これにより、そのユーザYの印刷データの印刷処理中であれば、印刷処理や出力を停止する。
【0058】
従って、本実施形態の情報処理システム1によれば、例えば印刷指示したユーザYの接近に応じて、デジタル複合機2による印刷を開始させることができ、予め印刷指示を出しておけば、PC3で他の処理を実行し、又はPC3の電源を切ることもできる。また、ユーザYが、印刷物を受け取りたいときにデジタル複合機2に近づけば、印刷が開始して印刷物が得られるため、利便性を高めつつ、印刷等の待ち時間を短縮することもできる。同時に、それまでは印刷されないので、他人に印刷物を盗み見られたり、持ち去られたりすることも防止でき、セキュリティを効果的に高めることができる。さらに、印刷途中でユーザYが離れたときに、一旦印刷処理を中止することで、同様に、印刷物の他人による盗難等を防止できるとともに、ユーザYの再度の接近により印刷処理を再開させることで、その利便性を維持することができる。
【0059】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の情報処理システム1では、デジタル複合機2が、識別情報送信装置4のユーザY毎に、操作パネル13の操作画面に対する操作やデータ等へのアクセス(操作)レベル(アクセス可能範囲)、又は、アクセスの許可・禁止を設定するアクセス権設定手段を有する。また、デジタル複合機2は、これにより、予めユーザY(識別情報送信装置4)毎にアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止が設定され、その設定データ等に基づいて、表示画像等の画像状態を変更可能な操作パネル13のユーザYが操作に使用する操作画面を変更する。又は、所定位置に設けられた発音警告手段や発光警告手段等からなるユーザへの警告手段により、音や光で警告を発生する。
【0060】
具体的には、このデジタル複合機2は、ユーザYのアクセス権を管理する管理手段を有し、識別情報による識別結果から、アクセスの無い、又は所定のアクセスが禁止等されたユーザY’の接近を検知すると、操作画面の表示内容(表示画面)を、予め設定された条件に応じて変更する。これにより、現在のユーザYが操作画面を操作中に、その操作やデータアクセスが禁止された他のユーザY’を検知することで、操作パネル13に警告画面を表示し、或いは操作画面にスクランブルをかける等を行って、ユーザYに他のユーザY’の接近を認識させる。同時に、操作画面に表示されたパスワードや設定値、又は画像のサムネイルからなる画面が読み取られるのを防止する。逆に、所定のアクセス権を有するユーザYの接近検知に伴い、操作内容が規制された操作画面から、それぞれのアクセス権の内容等に応じた操作画面に切り替える。
【0061】
また、警告手段が設けられているときには、デジタル複合機2は、アクセス禁止されたユーザY’の検知により、表示画面変更による警告と併せて又は、それに替えて、警告手段を作動させてユーザYへ向けて警告を発生させる。この警告は、ブザーやスピーカ等からなる発音警告手段による警告音の出力や、LED(発光ダイオード)等からなる発光警告手段による光の点滅動作等、ユーザYに認識可能な方法で行われる。
【0062】
また、ここでは、デジタル複合機2は、PC3から印刷データと共に送信されるユーザ情報に付加されたアクセスレベル情報も受信し、識別情報送信装置4から受信する識別情報に基づいて、ユーザYの識別や認証と併せて、そのアクセスレベル情報も照合する。これにより、例えばレベル1なら全データへのアクセス可、レベル2なら一部データのみアクセス可等と設定された、ユーザYのアクセスレベルを把握する。その結果、レベル1のユーザYがデジタル複合機2の前で印刷処理中に、レベル2のユーザY’(識別情報送信装置4)の接近を検知したときには、現在表示している操作パネル13の操作画面を警告表示に切り替えて、又は、他の警告手段により警告して、アクセスレベルが低い他のユーザY’の接近をユーザYに通知する。さらに、デジタル複合機2は、この他のユーザY’が遠ざかった際には、警告手段による警告を停止して、再び現在のユーザYの許可された操作画面の表示に切り替える。
【0063】
このように、このデジタル複合機2は、ユーザY毎にアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止を設定するアクセス権設定手段と、ユーザYによる操作に使用される操作画面とを有し、予め操作画面やデータ等に対する各々のアクセス権が設定される。また、上記した相対距離の算出結果及びユーザYの識別結果に基づいて、そのユーザYのアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止の設定に応じて操作画面を変更する手段を有し、これにより、アクセスレベルが制限された、又はアクセスが禁止されたユーザY’の接近に応じて画面状態を変更する等、設定されたアクセス権に応じた画面表示に変更制御する。一方、デジタル複合機2は、ユーザYへの警告手段を有する場合には、相対距離の算出結果及びユーザYの識別結果に基づいて、そのユーザY’のアクセスレベル等の設定に応じて警告手段により警告を発生させ、例えばアクセスレベルが制限された、又はアクセスが禁止されたユーザY’の接近に応じて警告するように制御する。
【0064】
従って、本実施形態の情報処理システム1によれば、アクセス権が制限等されたユーザY’が、アクセスできない操作画面やデータを盗み見ることを防止でき、又は、そのようなユーザY’の接近を警告等できるため、現在のユーザYに周囲の状況を認識させつつセキュリティを向上させることができる。また、ユーザYが自己の識別情報送信装置4を所持していない状態では、印刷データへのアクセスを禁止して印刷の実行を防止できる等、データアクセスに対するセキュリティを向上させることもできる。
【0065】
以上、デジタル複合機2と識別情報送信装置4とを備えた情報処理システム1を例に採り説明したが、本発明は、同様に、外部装置と通信するための通信手段と、その外部装置のユーザY等の識別情報、及び受信電波の電界強度情報を無線送信する識別情報送信装置に対して電波を送受信する手段と、を備えた情報処理装置としても実現することができる。この場合には、情報処理装置が、以上説明したデジタル複合機2と同様の、送信及び受信データの電界強度値と相関データテーブルによる相対距離の算出機能を有し、外部装置からの受信データを処理しつつ、識別情報送信装置4との間の相対距離の算出結果等に基づいて、その動作が制御されて特定動作を実行する。また、この情報処理装置は、以上説明した情報処理システム1(デジタル複合機2)の各工程と同様の工程を実行するように制御され、従って、本発明は、情報処理装置の制御方法としても実現することができる。
【0066】
更に、本発明は、この情報処理装置の制御方法の各工程(手順)を、コンピュータで実行させるためのプログラムとして、汎用のプログラム言語により記述することでも実現することができる。併せて、このプログラムをフレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、又はMO等、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、これをコンピュータで読み取らせることで容易に実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・情報処理システム、2・・・デジタル複合機、3・・・PC、4・・・識別情報送信装置、10・・・CPU、11・・・ROM、12・・・RAM、13・・・操作パネル、14・・・スキャナ部、15・・・ASIC、16・・・ビデオ書込処理回路、17・・・LD、18・・・LD制御部、19・・・エンジン制御回路、20・・・エンジン部、21・・・電源制御部、22・・・HDD、23・・・ASIC、24・・・ネットワークI/F、29・・・無線通信モジュール、30・・・CPU、31・・・RAM、32・・・表示部、33・・・チップセットN、34・・・チップセットS、35・・・ROM、36・・・入力部、37・・・ネットワークI/F、38・・・HDD、40・・・無線通信モジュール、N・・・ネットワークケーブル、Y・・・ユーザ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2007−122384号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置と通信する手段と、
その外部装置のユーザの識別情報又はその外部装置の識別情報、及び受信電波の電界強度情報を無線送信する識別情報送信装置に対して電波を送受信する手段と、
前記識別情報送信装置との間の相対距離と、前記識別情報送信装置への送信電波の送信電界強度と、その送信電波の前記識別情報送信装置での受信電界強度との相関データを記憶する相関データ記憶手段と、
前記識別情報送信装置へ送信した電波の送信電界強度と、その電波を受信した前記識別情報送信装置から送信された、その電波の受信電界強度情報と、前記相関データ記憶手段に記憶されている相関データとに基づいて、前記相対距離を算出する距離算出手段と、
前記相対距離の算出結果に基づいて当該情報処理装置の動作を制御する動作制御手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された情報処理装置において、
動作制御手段は、相対距離の算出結果に基づいて、電力モードを消費電力が異なる複数の電力モード間で切り替える手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載された情報処理装置において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する手段と、ユーザ毎に表示画面を設定して変更可能な表示手段とを備え、
動作制御手段は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、前記表示手段の表示画面を変更する手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載された情報処理装置において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する手段を備え、
動作制御手段は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、そのユーザの外部装置からの受信データに対する処理を実行させる手段、又は、受信データに対する処理を停止させる手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載された情報処理装置において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する手段と、ユーザ毎にアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止を設定する手段と、ユーザによる操作に使用される操作画面とを備え、
動作制御手段は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、そのユーザのアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止の設定に応じて前記操作画面を変更する手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載された情報処理装置において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する手段と、ユーザ毎にアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止を設定する手段と、ユーザへの警告手段とを備え、
動作制御手段は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、そのユーザのアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止の設定に応じて前記警告手段により警告を発生させる手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された情報処理装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載された画像形成装置において、
動作制御手段の受信データに対する処理を実行させる手段、又は、受信データに対する処理を停止させる手段が、受信した画像データに対する画像形成装置による画像形成処理を実行させる手段、又は、受信した画像データに対する画像形成装置による画像形成処理を停止させる手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載された画像形成装置と、その画像形成装置に、外部装置の識別情報又はその外部装置のユーザの識別情報、及びその画像形成装置から送信された電波の受信電界強度情報を電波により無線送信する識別情報送信装置と、を備えたことを特徴とする情報処理システム。
【請求項10】
外部装置と通信する手段と、その外部装置のユーザの識別情報又はその外部装置の識別情報、及び受信電波の電界強度情報を無線送信する識別情報送信装置に対して電波を送受信する手段と、を備えた情報処理装置の制御方法であって、
前記情報処理装置からの送信電波の送信電界強度を測定する工程と、
その送信電波を受信した前記識別情報送信装置から送信された、前記送信電波の受信電界強度情報を受信する工程と、
前記測定した送信電界強度と、前記受信した受信電界強度情報と、予め取得した相関データであって、前記識別情報送信装置との間の相対距離と、前記識別情報送信装置への送信電波の送信電界強度と、その送信電波の前記識別情報送信装置での受信電界強度との相関データとに基づいて、前記相対距離を算出する工程と、
前記相対距離の算出結果に基づいて前記情報処理装置の動作を制御する動作制御工程と、
を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載された情報処理装置の制御方法において、
動作制御工程は、相対距離の算出結果に基づいて、電力モードを消費電力が異なる複数の電力モード間で切り替える工程を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項12】
請求項10に記載された情報処理装置の制御方法において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する工程と、表示手段の表示画面をユーザ毎に設定する工程とを有し、
動作制御工程は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、前記表示手段の表示画面を変更する工程を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項13】
請求項10に記載された情報処理装置の制御方法において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する工程を有し、
動作制御工程は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、そのユーザの外部装置からの受信データに対する処理を実行させる工程、又は、受信データに対する処理を停止させる工程を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項14】
請求項10に記載された情報処理装置の制御方法において、
受信したユーザの識別情報からユーザを識別する工程と、ユーザ毎にアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止を設定する工程とを有し、
動作制御工程は、相対距離の算出結果及びユーザの識別結果に基づいて、そのユーザのアクセスレベル又はアクセスの許可・禁止の設定に応じて、ユーザによる操作に使用される操作画面を変更する工程、又は、ユーザへ警告を発生する工程を有することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれかに記載された情報処理装置の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−166369(P2010−166369A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7527(P2009−7527)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】