説明

情報処理装置及び情報処理プログラムを記録した記録媒体

【課題】 クリップボードの存在やその使い方を完全に知らなくても容易にファイル形式を変換できることを目的とする。
【解決手段】 表示部に表示されたデータの中から任意のデータの範囲を指定すると、指定された範囲のデータの種類、例えばテキストデータかスプレッドシートデータかを「区切記号」の有無などで判定して、判定されたデータの種類に応じたファイル形式でデータを登録する。データ範囲が所定のデータ量を超えた場合には、分割境界部分のデータがオーバーラップするように複数のデータに分割して登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関し、特に、テキストやスプレッドシートなどのデータを表示できる情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末(以下「PDA」)はポケットに収まる程度に小さく、しかも相当長い時間バッテリで動くという利点から、外出先での使用などデスクトップパソコンにない優れた利便性を持っている反面、小型であるがゆえに、キーボードの大きさに限界があり、データ入力の非効率を免れないという欠点を持っている。ちなみに、PDAの一部には、表示画面の上に透明なタッチパネルを装着し、画面に映し出されたアイコンなどをペン先でタッチするようにして入力作業の容易化を図ったものもあるが、通常のキーボード操作におけるブラインドタッチに比べて格段に入力効率が悪いことは明らかである。
【0003】
そこで、大量のデータ入力はデスクトップパソコンに任せ、PDAはその入力済みのデータを取り込んで利用するという使用形態が定着しつつある。
図22は、デスクトップパソコン(以下「パソコン」)とPDAの接続状態図であり、PDA1とパソコン2の双方に備えられたコネクタ3、4を、専用の通信ケーブル5で接続している。
コネクタ3、4及びケーブル5は、所定のインターフェース規格に則った構造と電気的仕様を有しており、同規格は、例えば、EIA(米電子工業会)が定めたRS(recommended standard)−232Cが代表である。
図22において、例えば、パソコン2で作成したワープロファイル(添え字などの書式情報を含む文書ファイル)をPDA1に転送する場合は、まず、図示のようにケーブル5を接続し、次いで、PDA1の電源を入れて情報の受信準備を整えた後、パソコン2で通信ソフトを起動して上記ワープロファイルを送信し、PDA1でそのワープロファイルを受信するという流れになる。
【0004】
ところで、殆どの場合、PDA1のOS(オペレーティングシステム)とパソコン2のOSは同一でない。これは、PDA1のリソース(メモリなどの資源)が必要最小限に抑えられているのに対し、パソコン1のそれはコストの範囲でふんだんに設けられているからであり、当然のことながらアーキテクチャにも差があるからである。
なお、近時のパソコン用のOSはWindows95/98/NT(登録商標)やUNIX(登録商標)といった汎用のマルチタスク・マルチウィンドウOSが主流であり、かかる汎用OSのファミリー版(例えば、WindowsCE:登録商標)もPDA用のOSとして出回っているが、前者のOS用のアプリケーションは後者のOSでは動かないから、両者は似て非なるOSである。
【0005】
このように、OSが異なるパソコン2とPDA1にあっては、共通のアプリケーションプログラム(例えば、ワープロソフト)が走らないために、パソコン2で作った折角のワープロファイルをそのままの形でPDA1に転送できないという欠点があった。
そこで、パソコン2のワープロファイルをOSの垣根を越えた共通のデータ形式(例えば、テキスト形式)のファイルに変換してからPDA1に転送することが行われている。
すなわち、上記の例示に従えば、図22のようにケーブル5を接続し、次いで、PDA1の電源を入れて情報の受信準備を整えた後、パソコン2でワープロソフトを起動して所望のデータファイルを開き、パソコン2の画面上で送信対象の文字列範囲を選択してメモリ内の所定の作業領域(クリップボード)にコピー(複写)し、次いで、テキストデータの編集ソフト(エディタソフト)を起動し、クリップボード上のデータをエディタソフトにペースト(張り付け)して任意のファイル名で保存した後、通信ソフトを起動して、そのテキストファイルをPDA1に送信するという応用操作が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の応用操作は、あくまでも“応用”であって、クリップボードの存在を知らない、または、その使い方(コピーとペーストの操作)を知らない、若しくは、ファイル形式の違い(ワープロファイルとテキストファイルの違いなど)が分からない初級ユーザにとっては、「隠れ機能」であることに変わりなく、何らかの指導教育を受けない限り、まったく使いこなせないという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、クリップボードの存在やその使い方を完全に知らなくても容易にファイル形式を変換できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の情報処理装置は、データを表示する表示部と、この表示部に表示されたデータの中から、任意のデータの範囲を指定するデータ指定手段と、このデータ指定手段により指定された範囲のデータの種類を検知するデータ種類検知手段と、このデータ種類検知手段により検知されたデータの種類に応じたファイル形式で前記指定範囲のデータを登録する検知形式登録手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記指定範囲のデータに含まれる所定の区切り記号に基づいてデータの種類を検知することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の情報処理装置は、データを表示する表示部と、この表示部に表示されたデータの中から、任意のデータの範囲を指定するデータ指定手段と、このデータ指定手段により指定された指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えるか否かを判別するデータ量判別手段と、このデータ量判別手段により前記指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えると判別された場合に、前記指定範囲のデータを分割境界部分のデータがオーバーラップするように複数のデータに分割するオーバーラップ分割手段と、このオーバーラップ分割手段により分割された各データにそれぞれ異なるファイル名を付加してファイルを生成する分割ファイル生成手段と、この分割ファイル生成手段により生成された各ファイルを登録する分割ファイル登録手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の情報処理装置によれば、表示部に表示されたデータの中から、データ指定手段により任意のデータの範囲を指定すると、データ種類検知手段はこのデータ指定手段により指定された範囲のデータの種類を検知し、検知形式登録手段はこのデータ種類検知手段により検知されたデータの種類に応じたファイル形式で前記指定範囲のデータを登録するので、表示されたデータ中から任意のデータの範囲を指定するという簡単な操作によって、指定のデータ範囲をデータの種類に応じたファイル形式で登録できる。
【0012】
請求項3記載の情報処理装置によれば、表示部に表示されたデータの中から、データ指定手段により任意のデータの範囲を指定すると、データ量判別手段はこのデータ指定手段により指定された指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えるか否かを判別し、オーバーラップ分割手段はこのデータ量判別手段により前記指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えると判別された場合に前記指定範囲のデータを分割境界部分のデータがオーバーラップするように複数のデータに分割し、分割ファイル生成手段はこのオーバーラップ分割手段により分割された各データにそれぞれ異なるファイル名を付加してファイルを生成し、分割ファイル登録手段はこの分割ファイル生成手段により生成された各ファイルを登録するので、表示されたデータ中から任意のデータの範囲を指定するという簡単な操作によって、指定のデータ範囲を分割境界部分のデータがオーバーラップするように複数のデータに分割して登録できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、通信機能を有するPDAを例にして、図面を参照しながら説明する。
図1において、10はパソコン(情報転送端末)、11はパソコン10の通信ポート(以下「PCポート」という)、12は通信ケーブル、13はPDA、14はPDA13の通信ポート(以下「HCポート」という)、15は表示部(表示手段)、16は入力部、17はRAM、18はROM、19はCPU(検出手段、判定手段、格納手段、表示制御手段)である。
【0014】
<パソコン10の構成と機能>
パソコン10は、少なくとも、クリップボードの機能とアプリケーション間通信機能(DDE:ダイナミックデータエクスチェンジ)とを有する汎用OSの元で様々なアプリケーションプログラムを実行できるものであり、図示は略すが、ディスプレイやマウス及びキーボードなどの入出力部、CPUやメモリなどの演算/記憶/制御部を搭載したメインボード、ハードディスクやフロッピー(登録商標)ディスクなどの外部記憶、筐体並びにその筐体に設けられたスロットを介してメインボードの拡張ポートに実装される様々な拡張ボードなどによって構成されている。
一般に、パソコン10のメインボードにはCOM1とCOM2の二つのRS−232Cポートが実装されており、さらに市販の通信ボードを加えることによってCOM3、COM4・・・・を追加することも可能であるが、ここでは、便宜的にCOM1をPCポート11に割り当てることにする。
【0015】
パソコン10で適宜に実行されるアプリケーションプログラムは、例えば、文章作成用のワープロソフトや財務諸表等の帳票作成用の表計算ソフトなどである。これらのソフトは公私を問わずもっとも利用頻度の高いソフトであり、様々な情報の作成、編集及び加工用ツールの典型的なものである。なお、言うまでもなく、情報の作成、編集及び加工用ツールはこれだけに限らない。
本実施の形態においては、これらのアプリケーションプログラムに加えて、さらに、クリップボードプログラム(Windows95(登録商標)に付属のCLIPBRD.EXE)並びにPDA13との間のデータ転送を制御する専用の「データ転送ソフト」を使用する。このデータ転送ソフトは、DDEの通信チャネルを利用して「クリップボード」のデータを取り込むことができ、且つ、そのデータを所定のプロトコルに従ってPDA13に転送できる機能を有しているものである。
【0016】
なお、クリップボードプログラム22は、図2に示すように、任意のアプリケーションプログラムで「コピー」(多くの場合“編集”メニューのリストにある;図3参照)を実行(S1)したときに、バックグラウンドで起動し(S2)、そのアプリケーションプログラムの選択範囲(作業ウィンドウ内で反転表示されている範囲;S3)からテキストデータだけを抽出して取り込む(S4)ものであり、二つのアプリケーションプログラム間のデータの受け渡し(「コピー」と「ペースト」又は「カット」と「ペースト」)の際の中継役と理解されているが、上記の“抽出”に着目すれば、むしろ、テキストデータのフィルタープログラムと言うことができる。
【0017】
図4は、データ通信ソフト(送信手段)の機能を図式化したものであり、データ通信ソフト20は少なくともDDEクライアントアプリケーションの機能を持ち、任意のアプリケーションプログラム21(例えば、ワープロソフトとする)やクリップボードプログラム22とともに共通のOS23の管理下で動作し、ユーザに対するGU(グラフィカルユーザー)インターフェース24を提供するほか、COM1を通して転送データエリア25(取り込み手段)のデータをPDA13へ転送するというものである。
GUインターフェース24には「送信」コマンドボタン26(イベント発生手段)が設けられており、このコマンドボタン26のクリックイベントには、以下の処理を順次に実行するイベントプロシージャが記述されている。なお、ここでは説明の便宜上、構造の簡単なVisualBasic(登録商標)を例にするが、これに限定されないことはもちろんである。
【0018】
(1)DDE通信の開始
クリップボードプログラム22をDDEサーバーアプリケーションとしてDDE通信を開始する。すなわち、クリップボードプログラム22のDDEサーバーアプリケーション名(一般に実行形式のファイル名から拡張子を除いたもの;クリップボードプログラム22の場合は“CLIPBRD”)を用いてDDEInitiate関数を実行する。DDEInitiate関数は、指定したDDEサーバーアプリケーションが起動されていれば使用可能なDDE通信チャネル番号を返す。
なお、DDEInitiate関数を実行した際に、DDEサーバーアプリケーションが起動されていない場合は“実行時エラー”が発生するので、この場合はエラーをトラップし、Shell関数を用いてクリップボードプログラム22を起動した後、DDEInitiate関数を再実行する。
【0019】
(2)DDEサーバーアプリケーションからのデータの取得
DDEInitiate関数の実行時に返されたDDE通信チャネル番号と、クリップボードプログラム22にコピーされたテキストデータの取得を促す所定の“topic”(DDEサーバアプリケーションで処理されるデータの単位)とを指定してDDERequest関数を実行する。DDERequest関数は、指定したチャネル番号がアクティブで、且つ、指定した“topic”が正しい(そのDDEサーバーアプリケーションでサポートされている)場合に“topic”で指定したデータ(クリップボードプログラム22の場合はテキストデータ)を返すので、その戻り値を、図4の転送データエリア25に一時保管する。
【0020】
(3)DDE通信の終了
DDEInitiate関数の実行時に返されたDDE通信チャネル番号を指定してDDETermnate関数を実行する。このDDE通信の終了処理は明示的に行わなければならない。終了せずにプロシージャを閉じると、通信チャネルが開かれたままとなってシステムリソースを浪費(メモリリークと言う)するからである。
【0021】
(4)PDA13との通信処理
COM1を開き、PDA13との間で通信プロトコルに従ったネゴシェーションを行った後、図4の転送データエリア25に保管中のデータをPDA13に送信する。送信プロトコルはここではRS−232Cとするが、これに限定されない。TCP/IPやNetBEUI又はIPX/SPXなどのネットワークプロトコルであってもよいし、IEEE1284やIEEE1394又はUSBなどのコンピュータ用周辺機器向けインターフェース規格であってもよい。また、その通信媒体もケーブルを用いたものに限らない。電波や光又は音波を使った無線方式でもよい。
【0022】
なお、DDEの代わりにOLE(オブジェクトとリンクの埋め込み)の使用も可能であるが、OLEの場合はサーバーアプリケーション側に制御が移る(サーバーアプリケーションで処理を実行する必要がある)ので、プログラムの開発効率を考慮すると、DDEの使用が望ましい。
【0023】
<PDA13の構成と機能>
一方、PDA13は、既述のとおり、HCポート14、表示部15、入力部16、RAM17、ROM18及びCPU19並びに図示は略すが手帳サイズのケースによって構成されており、パソコン10と同様にコンピュータの四要素すなわち「演算」、「記憶」、「入出力」及び「制御」を備えるものであり、タッチパネルやキーボードなどの入力部16を介してマンマシン・インターフェイスをとりつつ、ROM18に収められたプログラムを選択的にRAM17にロードしてCPU19で実行し、その結果を表示部15に表示したりする等の“所要の処理”を行うというものである。
ここで、上記所要の処理の一つは、HCポート14を介して転送されたテキストデータやスプレッドシートデータを受け取るための通信処理であり、図5は、そのプログラムのフローチャートである。このプログラムは、パソコン10のPCポート11とHCポート14との間をケーブル12で接続した状態で、例えば、表示部15に表示された通信処理開始メニューを選択することによって実行される。
【0024】
実行を開始すると、まず、パソコン10のPCポート11から出力される適当な送信開始信号を待ち(S11)、この送信開始信号を検出すると、データを受信できる状態にする(S12)。次いで、送信開始信号に続けてパソコン10から転送されるデータ本体を取り込み、そのデータの種別、例えば、テキストデータ(図ではメモデータ)かスプレッドシートデータかを判定する(S13)。ここで、テキストデータとスプレッドシートデータの判別は、「区切り記号」の有無で行うことができる。
すなわち、パソコン用の表計算ソフトの代表である、例えば、ExcelやLotus1−2−3(何れも各社の登録商標)を例にして説明すれば、これらの表計算ソフトの作業ウィンドウ上に開かれたスプレッドシートの複数セルを範囲指定してクリップボードにコピーすると、クリップボード上ではセルの間の罫線情報が所定の区切り記号、例えば、カンマ(,)やタブ記号に置き換えられるからであり、本実施の形態では、このクリップボード上のデータがパソコン10から転送されてくるからである。
【0025】
したがって、データ本体の文字列の一行(データの先頭から改行コードまでの間または改行コードから次の改行コードまでの間若しくは改行コードからデータの最後までの間)の中に、上記の区切り記号が見つかった場合は、転送されてきたデータの種別がスプレッドシートデータであると判定できる。
なお、通常のテキストデータにおいても、偶然に上記の区切り記号が混ざっていることがある。この場合は、1行目と2行目に含まれる区切り記号の数を比較すればよい。スプレッドシートデータの場合、全ての行に含まれる区切り記号の数は一致しているが、テキストデータに混入した区切り記号は高い蓋然性で一致しないからである。また、完璧を期すのであれば、比較対照の行数を3行以上に増やせばよい。
【0026】
データの種別判定を完了すると、データ種別に対応したデータエリアに転送されたデータを格納(S15、S17)して処理を終了するが、その格納の際にファイル名の生成処理を行う(S14、S16)。この生成処理は、転送データ本体の1行目(データの先頭から最初の改行コードまでの部分)に含まれる文字列の全部又は先頭から任意文字数を切り出してファイル名とし、そのファイル名を、テキストデータ(メモデータ)の場合は「メモ」用のファイル名データエリアに書込み(S14)、スプレッドシートデータの場合は「スプレッドシート」用のファイル名データエリアに書込む(S16)というものである。
【0027】
以上、説明した本実施の形態によれば、
(A) 図1の状態にパソコン10とPDA13を接続した後、
(B) パソコン10で任意のアプリケーションプログラム21、例えば、ワープロソフトを起動して既存のワープロファイルを開き(若しくは新規ファイルを作成し)、
(C) そのアプリケーションプログラム21の作業ウィンドウ上の表示文字列を範囲指定した上、
(D) メニューバーの「編集」メニューを選択して、そのメニューリストの「コピー」を選択することにより、又は「編集」メニューを選択せずに所定のショートカットキー操作(「CTRL」キーと「C」キーの同時押し)を行うことにより、
(E) 上記選択範囲の文字列のテキストデータだけ(書式情報を含まない文字コードのみのデータ)をクリップボードプログラム22に送ることができる。
(F) そして、PDA13で所定の通信処理プログラム(図5のプログラム)を起動するとともに、パソコン10でデータ通信ソフト20を起動し、
(G) データ通信ソフト20のGUインターフェース24の「実行」コマンドボタン26を押すことにより、
(H) クリップボードプログラム22にコピーされた文字列を、データ通信ソフト20のユーザ転送エリア25とCOM1を介してPDA13に転送することができる。
【0028】
したがって、最低限、(1)文字列の範囲指定の仕方、(2)メニューバーの「編集」メニューとそのリスト内の「コピー」メニューの利用法、及び、(3)データ通信ソフト20のGUインターフェース24に設けられた「送信」コマンドボタン26の存在を知っているだけで、クリップボードの存在やその使い方を完全に知らなくても容易にファイル形式を変換(例えば、書式情報を含むワープロデータを同情報を含まないテキストデータに変換)してPDA13に送信でき、若しくは簡単な操作でその送信データをPDA13に取り込むことができ、以ってパソコン10とPDA13との情報共有の促進を図ることができるという特有の効果を得ることができる。
【0029】
なお、データの種別は、テキストデータやスプレッドシートデータだけに限らない。画像や音声などのバイナリデータであってもよい。MIMEやBinHex若しくはUuencodeなどの手法を用いて変換すれば、テキストデータ(もちろん意味不明の記号の羅列になるが)として転送することができるからであり、受信側で同様な手法を用いて逆変換すれば、元のバイナリファイルに再生できるからである。
【0030】
<第2の実施の形態>
ところで、テキストデータとスプレッドシートデータの両者のサイズを考えた場合、スプレッドシートデータは1枚のシートのセル数が、例えば256行×256列のように上限が設けられているのに対して、前者のテキストデータは基本的にサイズの限界がない。一方、PDA13はいわゆるメモ帳のような“簡易”な編集ツールでテキストデータを取り扱うが、かかる簡易な編集ツールのファイルサイズは、一般に2KB程度に抑えられていることが多く、場合によっては、転送されたテキストデータの一部(2KBを越えた部分)をPDA13で受信できないという不都合を招くことになる。
【0031】
そこで、第2の実施の形態は、ある大きさのサイズを越えたテキストデータを転送する場合、同サイズに収まるいくつかのファイルに分割して転送することによって、上記不都合を解消するものである。
図6は、第2の実施の形態におけるデータ通信ソフト20に含まれるGUインターフェース24aを示す図である。このGUインターフェース24aは、同図(a)に示すように、右端に「閉じる」ボタン24bを設けたタイトルバー24cと、このタイトルバー24cの下辺に接したウィンドウオブジェクト24dとを有する、いわゆるマルチウィンドウOSに馴染みのスタイルで設計されたものであり、本実施の形態においては、そのウィンドウオブジェクト24dに、「M」と「S」の二つのコマンドボタン24e、24fを設けたものである。なお、“M”及び“S”はメモとスプレッドシートデータの頭文字であるが、これは、図示の都合上の適当な(便宜的な)表記である。実際には、ユーザインターフェースを考慮した適切な文字列又はマークにすべきである。ちなみに、同図(b)は、通信中に使用すべきGUインターフェース24aの好ましい例を示す図であり、ウィンドウオブジェクト24dの二つのコマンドボタン24e、24fを隠し(Visibleプロパティ:False)、その代わりに、“通信中”という文字列を持つテキストコントロール24gと、通信の進み具合をグラフィカルに表現するスケールバーコントロール24hとを設けたものである。
【0032】
図7は、二つのコマンドボタン24e、24fのどちらが押されたかを判定し、その結果に応じて適切な処理プログラムを起動するボタンイベント判定プログラムのフローチャートである。このプログラムは、図6(a)のGUインターフェース24aが画面上に表示されている間、実行状態にあり、二つのコマンドボタン24e、24fのどちらか一方が押されるまで待機し(S21)、「M」コマンドボタン24eが押された場合は「メモ処理」のプログラム(図8)を起動し(S22)、「S」コマンドボタン24fが押された場合は「スプレッドシート処理」のプログラム(図10)を起動する(S23)と言うものである。
【0033】
図8は、メモ処理プログラムのフローチャートであり、このプログラムは、クリップボードプログラムにコピーされていたデータ(テキストデータ)を転送データエリアに取り込んで(S31)、そのデータサイズを所定値(例えば2KB)と比較し(S32)、所定値以下の場合は、先頭のn文字(例えば、n=10)をファイル名として登録し(S34)、PDA13にデータ送信開始信号を送り(S35)、メモデータを送信し(S36)、GUインターフェース24aの表示を「通信中」の状態(図6(b))に変更し(S37)、送信を完了するとGUインターフェース24aの表示を元の状態(図6(a))に戻す(S38)という処理を順次に実行する一方、所定値以下でない場合は、ファイル名の登録ステップ(S34)を行わず、その代わりに「ファイル分割処理」を実行するというものである。
【0034】
図9は、そのファイル分割処理プログラムのフローチャートである。このプログラムでは、まず、転送データエリアに取り込まれているテキストデータ(以下、便宜的に「元ファイル」と言う)の先頭のn文字(例えば、n=10)をベースファイル名として登録し(S41)、繰り返し変数iに初期値1をセット(S42)した後、ベースファイル名の末尾にj個のスペースとハイフン(−)及びiを加えて分割ファイルiのファイル名を生成する(S43)。生成された分割ファイル名は、例えば、ベースファイル名を“ABCDEFGHIJ”、jを3、iを1とすると、「ABCDEFGHIJ□□□−1」となる。但し、□はスペース1個を表している。
次に、元ファイルの先頭からm文字(mはPDA13のメモ帳で開ける最大の文字数を越えない適当な値)を取り出して分割ファイルiの本文とし(S44)、元ファイルの文末に達していなければ(S45)、元ファイルの先頭からm−10文字を削除して元ファイルを更新し(S46)、iを一つアップ(S47)した後、分割ファイルiのファイル名生成以降のステップ(S43〜)を繰り返す。
【0035】
ここで、ステップS46における「m−10文字」の“10”は、分割ファイルの“オーバーラップ”文字数である。例えば、分割ファイルiの最後の文字列が「・・・・あいうえおかきくけこさしすせそ」である場合、このうちの最後の10文字(かきくけこさしすせそ)が次順の分割ファイルi+1の先頭に残るようにするためのものである。このオーバーラップを設けたことにより、ファイル分割の不都合、すなわち「文章のつながりが分かりにくくなる」を防止できる。
【0036】
図10は、スプレッドシート処理プログラムのフローチャートであり、取り扱うデータの種別が異なる点と、ファイルサイズの判定ステップ(S32)及びファイル分割処理プログラムの実行ステップ(S33)がない点を除いて、図8のフローチャートと実質同一である。すなわち、クリップボードプログラムにコピーされていたデータ(スプレッドシートデータ)を転送データエリアに取り込み(S51)、そのデータの先頭のn文字(例えば、n=10)をファイル名として登録し(S52)、PDA13にデータ送信開始信号を送り(S53)、スプレッドシートデータを送信し(S54)、GUインターフェース24aの表示を「通信中」の状態(図6(b))に変更し(S55)、送信を完了するとGUインターフェース24aの表示を元の状態(図6(a))に戻す(S56)という処理を順次に実行するものである。
【0037】
<第3の実施の形態>
上記第2の実施の形態では、GUインターフェース24aに設けた二つのコマンドボタン24e、24fを“人為的”に選択してクリックすることにより、テキストデータとスプレッドシートデータの送信を行っているが、ボタンの押し間違いを否定できないので、改良の余地がある。図11は、データ種別の自動判別機能を付加したデータ通信ソフトの例であり、図7の改良例である。
すなわち、この改良プログラムは、まず、クリップボードプログラムにコピーされていたデータを転送データエリアに取り込み(S61)、そのデータの第1行目(データの先頭から1番目の改行コードまで)と第2行目(1番目の改行コードから2番目の改行コードまで)の双方に所定の区切り記号(カンマやタブコードなど)が存在し(S62、S63)、且つ、その区切り記号の数が等しい場合(S64)にスプレッドシートデータであると判断してスプレッドシート処理プログラム(図10)を起動(S65)する一方、そうでない場合にテキストデータであると判断してメモ処理プログラム(図8)を起動(S66)するというものである。
【0038】
かかるデータ自動判別の考え方は、先にも述べたように、例えば、ExcelやLotus1−2−3を例にして説明すれば、これらの表計算ソフトの作業ウィンドウ上に開かれたスプレッドシートの複数セルを範囲指定してクリップボードにコピーすると、クリップボード上ではセルの間の罫線情報が所定の区切り記号、例えば、カンマ(,)やタブ記号に置き換えられるという事実に基づくものである。
【0039】
<実際の画面表示例>
1.テキストデータの転送例
図12は、パソコン10の表示画面30を示す図である。表示画面30にはアプリケーションプログラム31(ここではインターネットプラウザソフト)とデータ通信ソフト20のGUインターフェース24aが開かれている。なお、一般に、プラウザソフトでは改行コードなどは非表示であるが、説明の都合上、図面では見えるようにしている。
今、図13に示すように、アプリケーションプログラム31をアクティブウィンドウ(フォーカスを持つウィンドウ)にして、その表示文字列の任意部分をマウスで範囲指定(マウスをクリックしたまま所望の範囲をドラッグする)すると、図示のようにその範囲内の文字列が反転表示される。この状態で、GUインターフェース24aの「M」コマンドボタン24eをクリックすると、データ通信ソフトプログラム(図7又は図11)が実行され、当該範囲指定された文字列がPDA13に送信されることになる。もちろん、PDA13はケーブル12でパソコン10に接続されていなければならず、また、PDA13で通信処理プログラム(図5)が実行されていなければならない。
【0040】
図14は、PDA13におけるメモ帳の一覧表示例であり、上記データ転送“前”の一覧表示(a)に対して、上記データ転送“後”の一覧表示(b)には、図13の選択範囲の第1行目の文字列(“◆電子手帳 新機能”)が標題として追加表示されている。そして、その標題をクリックすれば、図15のメモ本文が開き、図13の選択範囲の全文を表示させることができる。
【0041】
2.サイズの大きなテキストデータの転送例
図16は、サイズの大きな(例えば、2KBを越える)テキストデータ33と、その分割ファイル34〜36とを示す図であり、これらの分割ファイル34〜36は、図9のファイル分割処理プログラムによって生成されたものである。
すなわち、第1の分割ファイル34の末尾10文字(実線のアンダーライン部分)と、第2の分割ファイル35の先頭10文字(破線のアンダーライン部分)がオーバーラップし、且つ、第2の分割ファイル35の末尾10文字(実線のアンダーライン部分)と、第3の分割ファイル36の先頭10文字(破線のアンダーライン部分)がオーバーラップしているため、ファイル分割の不都合(文章のつながりが分かりにくくなる)を防止できるのである。
【0042】
また、各分割ファイル34〜36の1行目は、それぞれの分割ファイル名であるが、この分割ファイル名は、既述のとおり、テキストデータ33の1行目をベースファイル名(ここでは“地中海旅行”)とし、そのベースファイル名の末尾に、j個のスペースとハイフン(−)及び分割ファイル番号(i)を加えて生成しているため、図17に示すように、共通部分(ベースファイル名の部分)で同一のテキストファイル33であることを知ることができ、さらに、その連番(−1、−2、・・・・)から文章の並びを知ることができる(図17参照)。
【0043】
3.スプレッドシートデータの転送例
図18は、パソコン10の表示画面30を示す図である。表示画面30にはアプリケーションプログラム31(ここでは表計算ソフト)とデータ通信ソフト20のGUインターフェース24aが開かれている。
今、図19に示すように、アプリケーションプログラム31をアクティブウィンドウにして、その複数セルの任意部分をマウスで範囲指定すると、図示のようにその範囲内のセルが反転表示される。この状態で、GUインターフェース24aの「S」コマンドボタン24fをクリックすると、データ通信ソフトプログラム(図7又は図11)が実行され、当該範囲指定されたセル内の文字列がPDA13に送信されることになる。もちろん、PDA13はケーブル12でパソコン10に接続されていなければならず、また、PDA13で通信処理プログラム(図5)が実行されていなければならない。
【0044】
図20は、PDA13におけるスプレッドシート(表計算)の一覧表示例であり、上記データ転送“前”の一覧表示(a)に対して、上記データ転送“後”の一覧表示(b)には、図19の選択範囲の先頭セル(A列、1行のセル)の文字列(“メーカー”)が標題として追加表示されている。そして、その標題をクリックすれば、図21のスプレッドシートが開き、図19の選択範囲の全セルの情報とそのセル位置が正しく再現された表示が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態のパソコン及びPDAのブロック図である。
【図2】範囲指定とコピーのフローチャートである。
【図3】コピーメニューを示す図である。
【図4】実施の形態のコピー及びDDE通信の概念図である。
【図5】通信処理プログラムのフローチャートである。
【図6】データ通信ソフトのGUインターフェースレイアウト図である。
【図7】データ通信ソフトのフローチャートである。
【図8】メモ処理プログラムのフローチャートである。
【図9】ファイル分割処理プログラムのフローチャートである。
【図10】スプレッドシート処理プログラムのフローチャートである。
【図11】自動判別機能付データ通信ソフトのフローチャートである。
【図12】ワープロソフトとデータ通信ソフトを開いた画面表示図である。
【図13】ワープロソフトで範囲指定を行った画面表示図である。
【図14】メモ帳一覧の画面表示図である。
【図15】メモ帳本文の画面表示図である。
【図16】分割ファイルの概念図である。
【図17】分割ファイル一覧の画面表示図である。
【図18】表計算ソフトとデータ通信ソフトを開いた画面表示図である。
【図19】表計算ソフトで範囲指定を行った画面表示図である。
【図20】スプレッドシート一覧の画面表示図である。
【図21】スプレッドシートの画面表示図である。
【図22】パソコンとPDAの接続状態図である。
【符号の説明】
【0046】
10 パソコン(情報転送端末)
11 PCポート(通信ポート)
13 PDA(携帯情報端末)
15 表示部(表示手段)
19 CPU(検出手段、判定手段、格納手段、表示制御手段)
20 データ通信ソフト(送信手段)
22 クリップボードプログラム(クリップボード)
25 ユーザ転送エリア(取り込み手段)
26 送信コマンドボタン(イベント発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを表示する表示部と、
この表示部に表示されたデータの中から、任意のデータの範囲を指定するデータ指定手段と、
このデータ指定手段により指定された範囲のデータの種類を検知するデータ種類検知手段と、
このデータ種類検知手段により検知されたデータの種類に応じたファイル形式で前記指定範囲のデータを登録する検知形式登録手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記データ種類検知手段は、前記指定範囲のデータに含まれる所定の区切り記号に基づいてデータの種類を検知することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
データを表示する表示部と、
この表示部に表示されたデータの中から、任意のデータの範囲を指定するデータ指定手段と、
このデータ指定手段により指定された指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えるか否かを判別するデータ量判別手段と、
このデータ量判別手段により前記指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えると判別された場合に、前記指定範囲のデータを分割境界部分のデータがオーバーラップするように複数のデータに分割するオーバーラップ分割手段と、
このオーバーラップ分割手段により分割された各データにそれぞれ異なるファイル名を付加してファイルを生成する分割ファイル生成手段と、
この分割ファイル生成手段により生成された各ファイルを登録する分割ファイル登録手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
データを表示する表示部を有する情報処理装置のコンピュータを制御するための情報処理プログラムを記録した記録媒体であって、
前記コンピュータを、
前記表示部に表示されたデータの中から、任意のデータの範囲を指定するデータ指定手段、
このデータ指定手段により指定された範囲のデータの種類を検知するデータ種類検知手段、
このデータ種類検知手段により検知されたデータの種類に応じたファイル形式で前記指定範囲のデータを登録する検知形式登録手段、
として機能させるための情報処理プログラムを記録した記録媒体。
【請求項5】
データを表示する表示部を有する情報処理装置のコンピュータを制御するための情報処理プログラムを記録した記録媒体であって、
前記コンピュータを、
前記表示部に表示されたデータの中から、任意のデータの範囲を指定するデータ指定手段、
このデータ指定手段により指定された指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えるか否かを判別するデータ量判別手段、
このデータ量判別手段により前記指定範囲のデータ量が所定のデータ量を超えると判別された場合に、前記指定範囲のデータを分割境界部分のデータがオーバーラップするように複数のデータに分割するオーバーラップ分割手段、
このオーバーラップ分割手段により分割された各データにそれぞれ異なるファイル名を付加してファイルを生成する分割ファイル生成手段、
この分割ファイル生成手段により生成された各ファイルを登録する分割ファイル登録手段、
として機能させるための情報処理プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−179547(P2007−179547A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345186(P2006−345186)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【分割の表示】特願平10−234944の分割
【原出願日】平成10年8月6日(1998.8.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】