説明

情報処理装置及び方法

【課題】 血糖値を低負担で適切に管理することができるようにする。
【解決手段】 検出部は、ユーザを対象とした行動情報及び生体情報を検出する。血糖値推定部は、検出部により検出された行動情報及び生体情報を代謝モデルに適用して、推定生体情報を算出する。提示部は、血糖値推定部により算出された推定生体情報に基づいて算出された推奨行動をユーザに提示する。本技術は、生体情報を予測する情報処理装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報処理装置及び方法に関し、特に、血糖値を低負担で適切に管理することができる、情報処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糖尿病の患者にとっては、血糖値の管理は健康管理に関わる重大な事項であるため、血糖値を予測して患者に提示する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3735660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、患者にとっては、特許文献1等の従来の装置から血糖値の予測の提示を受けるためには、先ず、血糖値の予測に必要な情報として、例えば食事内容、運動内容、服薬内容等の情報を、手動入力せねばならず、負担が大きい。さらに、患者にとっては、単に血糖値の予測値が提示されるに過ぎず、その後の血糖値の管理を適切に行うためには、血糖値の予測値に基づいて自ら考えた行動を採るほかなく、この点も多大な負担になっている。
【0005】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、血糖値を低負担で適切に管理できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一側面の情報処理装置は、ユーザを対象とした行動情報及び生体情報を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記行動情報及び前記生体情報を代謝モデルに適用して、推定生体情報を算出する生体情報推定部と、前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報に基づいて算出された推奨行動をユーザに提示する提示部とを備える。
【0007】
前記推奨行動をユーザに実施させる実施部をさらに備えることができる。
【0008】
前記検出部により検出された前記行動情報及び前記生体情報に基づいて、前記ユーザの行動を推定する行動推定部をさらに備えることができる。
【0009】
前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報に基づいて、前記推奨行動を算出する推奨行動算出部と、前記検出部により検出された実測生体情報と前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報とを用いて、前記代謝モデルを更新する更新部をさらに備えることができる。
【0010】
前記実施部は、前記ユーザの脳を活性化するための行動または前記ユーザの筋肉運動を前記ユーザに実施させることができる。
【0011】
前記更新部は、前記検出部により検出された前記実測生体情報と前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報との差分を用いて、前記代謝モデルを更新することができる。
【0012】
前記生体情報の実測値又は前記推定生体情報を用いて前記推奨行動を算出するかを判定する判定部をさらに備えることができる。
【0013】
前記行動情報は、食事情報又は運動情報または服薬情報とし、前記生体情報は、血糖値情報又は尿糖値情報とすることができる。
【0014】
前記生体情報推定部による前記推定生体情報の算出に補助的に用いられる情報の記憶を制御する記憶制御部をさらに備えることができる。
【0015】
前記情報は、前記ユーザとは異なる他者についての、前記実測生体情報に対する前記推定生体情報との差分とすることができる。
【0016】
前記情報は、前記ユーザについての、前記実測生体情報に対する前記推定生体情報との差分とすることができる。
【0017】
本技術の一側面の情報処理方法は、上述した本技術の一側面の情報処理装置に対応する方法である。
【0018】
本技術の一側面の情報処理装置及び方法においては、ユーザを対象とした行動情報及び生体情報が検出され、検出された前記行動情報及び前記生体情報が代謝モデルに適用され、推定生体情報が算出され、算出された前記推定生体情報に基づいて算出された推奨行動がユーザに提示される。
【発明の効果】
【0019】
以上のごとく、本技術によれば、血糖値を低負担で適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】推奨行動提示実施システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】推奨行動提示実施システムの機能的構成例を示すブロック図である。
【図3】推奨行動提示実施処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】患者の服薬情報と注射情報の検出について説明する図である。
【図5】患者の血糖値の検出について説明する図である。
【図6】患者の尿糖値の検出について説明する図である。
【図7】患者の食事の推定について説明する図である。
【図8】患者の食事内容が撮影される様子を模式的に示す図である。
【図9】患者の運動の推定について説明する図である。
【図10】臓器情報取得装置の構成例を示す図である。
【図11】臓器情報取得装置の他の構成例を示す図である。
【図12】患者の血糖値を下げるための既存の手法について説明する図である。
【図13】推奨行動実施デバイスによる患者の血糖値を下げるための手法について説明する図である。
【図14】脳活性化実施デバイスの構成例を示す図である。
【図15】本技術が適用される情報処理装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[推奨行動提示実施システム1の構成]
図1は、推奨行動提示実施システム1の構成例を示すブロック図である。
【0022】
推奨行動提示実施システム1は、血糖値を適切に管理するために推奨される行動を、ユーザである患者に提示または実施させるシステムである。なお、本実施形態において、患者とは、人間のみならず、ペット等の動物をも含むものとする。
【0023】
このような推奨行動提示実施システム1は、図1に示されるように、行動生体情報検出装置11、行動生体情報データベース12、行動推定装置13、血糖値推定装置14、血糖値推定用補助情報提供装置15、推奨行動算出装置16、推奨行動提示デバイス17、及び推奨行動実施デバイス18から構成されている。
【0024】
行動生体情報検出装置11は、患者を対象とした行動情報及び生体情報を検出する。行動情報は、患者の行動に関する情報である。患者の行動としては、例えば、食事、運動、服薬、注射、電子決済等が存在する。生体情報は、患者の生体の状態を特定したり推定するための情報である。例えば、患者の血糖値、尿糖値、心拍数等が、生体情報の一例である。
【0025】
行動生体情報データベース12は、例えばクラウドネットワーク上に設置され、行動生体情報検出装置11の検出結果、即ち患者についての行動情報及び生体情報を記憶する。
【0026】
行動推定装置13は、行動生体情報データベース12に記憶された患者についての行動情報及び生体情報に基づいて、患者の行動を推定する。なお、行動推定装置13による患者の行動の推定処理の詳細については、図7乃至図9を用いて後述する。行動推定装置13は、患者の行動の推定結果を、血糖値推定装置14に供給する。
【0027】
血糖値推定装置14は、行動生体情報データベース12に記憶された患者についての行動情報及び生体情報、並びに行動推定装置13による患者の行動の推定結果をそれぞれ代謝モデルに適用して、患者の現在の血糖値を推定する。このようにして推定された血糖値を、以下、推定血糖値と呼ぶ。また、代謝モデルとしては、例えば、特開2007−17235(国立大学法人神戸大学)等に記載されている数理モデルを適用することが可能である。このような数理モデルに対して、行動情報や生体情報等がパラメータとして入力されて、推定血糖値が算出される。
【0028】
なお、血糖値推定装置14により算出された患者の推定血糖値は、行動推定装置13により推定された患者の行動(以下、推定行動と称する)と対応付けられて、行動生体情報データベース12に記憶される。このような対応付けを確認することにより、患者の行動パターンと血糖値との関連性が推定可能になる。なお、このようにして行動生体情報データベース12に記憶された推定血糖値と推定行動は、患者とは異なる他者の処理においても利用することが可能になる。
【0029】
血糖値推定用補助情報提供装置15は、血糖値推定装置14による代謝モデルを用いた血糖値の推定の処理に補助的に用いられる情報(以下、血糖値推定用補助情報と呼ぶ)を記憶する。血糖値推定用補助情報については、後述する。血糖値推定装置14は、このような血糖値推定用補助情報を用いることで、代謝モデルの精度を向上させるように改善させ、ひいては推定血糖値の信頼性を向上させることができる。
【0030】
推奨行動算出装置16は、血糖値推定装置14から出力された、患者の現在の推定血糖値に基づいて、患者に推奨する行動(以下、推奨行動と呼ぶ)を算出する。具体的には、本実施の形態では、推奨行動算出装置16は、患者の現在の推定血糖値を用いて、複数の推奨行動の候補を求めて、血糖値推定装置14に提供する。血糖値推定装置14は、これらの複数の推奨行動の候補のそれぞれが未来に実施されたと仮定して、患者の未来の推定血糖値をそれぞれ算出して、推奨行動算出装置16に提供する。推奨行動算出装置16は、複数の推奨行動の候補のうち、未来の推定血糖値が適切な範囲内にある候補を推奨行動として選抜する。
【0031】
推奨行動提示デバイス17は、推奨行動算出装置16により算出された推奨行動と、当該推奨行動が実施された場合の未来の推定血糖値とを、患者に提示する。また、推奨行動提示デバイス17は、「食事Aをしたいならば、運動Rをすればよい」等の条件付き推奨行動も提示することができる。
【0032】
推奨行動実施デバイス18は、推奨行動算出装置16により算出された推奨行動を、患者に実施させる。すなわち、推奨行動提示デバイス17が、患者に対して推奨行動を実施することを促すのに対して、推奨行動実施デバイス18は、患者が意識しないうちに推奨行動を実施させる。
【0033】
さらに以下、行動生体情報検出装置11、血糖値推定用補助情報提供装置15、推奨行動提示デバイス17、及び推奨行動実施デバイス18の各構成要素について、その順番に個別に説明する。
【0034】
行動生体情報検出装置11は、患者についての行動情報と生体情報を検出するための構成として、動画カメラ41、静止画カメラ42、電子決済情報取得装置43、位置行動姿勢検出装置44、服薬注射検出装置45、血糖値計46、尿糖値計47、及び心拍計48を有している。行動生体情報検出装置11に含まれる各装置は、患者の周辺に設置されるか、または患者により携帯される。
【0035】
動画カメラ41は、監視カメラ等として構成され、行動している患者を被写体として、その被写体の動画を撮影する。なお、動画カメラ41は、必要に応じて、静止画をも撮影することができる。
【0036】
静止画カメラ42は、行動している患者を被写体として、その被写体の静止画を撮影する。
【0037】
電子決済情報取得装置43は、患者のICカード等による決済情報を取得する。決済情報には、患者が購入した商品の情報、購入時刻等が含まれる。
【0038】
位置行動姿勢検出装置44は、位置センサ、加速度センサ等を含むように構成され、行動している患者の位置及び姿勢を検出する。
【0039】
服薬注射検出装置45は、患者の服薬に関する情報(以下、服薬情報と称する)や、患者への注射に関する情報(以下、注射情報と呼ぶ)を検出する。服薬情報には、薬の種類、服薬時刻、用量等が含まれる。また、注射情報には、注射器の内容物、注射時刻、注入量等が含まれる。
【0040】
血糖値計46、尿糖値計47、及び心拍計48は、それぞれ、患者の血糖値、尿糖値、及び心拍数を計測する。以下、血糖値計46により計測される患者の血糖値を実測血糖値と称し、尿糖値計47により計測される患者の尿糖値を実測尿糖値と称する。なお、行動生体情報検出装置11による、患者についての行動情報と生体情報の検出については、図4乃至6を用いて後述する。
【0041】
血糖値推定用補助情報提供装置15は、各種血糖値推定用補助情報を提供するためのデータベースとして、他者差分データベース51、自己差分データベース52、遺伝情報データベース53、及び健康医療情報データベース54を有している。
【0042】
他者差分データベース51は、患者とは異なる他者についての、実測血糖値に対する推定血糖値との差分を、血糖値測定用補助情報のデータの1つとして記憶する。なお、この場合の他者は、患者と類似する体型や体質の者であると好適である。他者差分データベース51は、複数の他者のデータを記憶するようにしてもよい。
【0043】
自己差分データベース52は、患者についての、実測血糖値に対する推定血糖値の差分を、血糖値測定用補助情報のデータの1つとして記憶する。
【0044】
遺伝情報データベース53は、患者の遺伝情報を、血糖値測定用補助情報のデータの1つとして記憶する。遺伝情報には、患者の体質や病気のかかりやすさ等の情報が含まれる。
【0045】
健康医療情報データベース54は、患者の健康医療情報を、血糖値測定用補助情報のデータの1つとして記憶する。健康医療情報には、患者の診療履歴、病歴等の情報が含まれる。
【0046】
さらに、血糖値推定用補助情報提供装置15は、iPS(Induced pluripotent stem)細胞などの多能性細胞を分化誘導させて作られた、患者のクローン膵臓及びクローン肝臓等の活動による血糖値の情報(以下、クローン臓器情報と称する)を、血糖値測定用補助情報の1つとして提供することができる。このため、患者のクローン臓器情報を取得する臓器情報取得装置55が、血糖値推定用補助情報提供装置15に設けられている。なお、臓器情報取得装置55の詳細については、図10と図11を用いて後述する。
【0047】
推奨行動提示デバイス17は、各種推奨行動等を患者に提示すべく、食事サプリ提示デバイス61、運動提示デバイス62、服薬注射提示デバイス63、及び脳活性化提示デバイス64を有している。
【0048】
食事サプリ提示デバイス61は、食事についての推奨行動が推奨行動算出装置16により算出された場合、患者に推奨する食事やサプリメントの内容を、当該食事やサプリメントを摂取した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0049】
運動提示デバイス62は、運動についての推奨行動が推奨行動算出装置16により算出された場合、患者に推奨する運動の内容を、当該運動を実施した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0050】
服薬注射提示デバイス63は、服薬についての推奨行動が推奨行動算出装置16により算出された場合、患者に推奨する服薬や注射の内容を、当該服薬や注射を実施した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0051】
脳活性化提示デバイス64は、脳活性化についての推奨行動が推奨行動算出装置16により算出された場合、患者に推奨する脳活性化を実現する行動の内容を、当該脳活性化を実現する行動を実施した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0052】
一般的に、脳が活性化すると、血中の糖の消費が促進され、その結果血糖値が下がる。したがって、脳活性化提示デバイス64は、患者の脳を活性化させるために、例えば、五感を刺激する行動の内容を当該患者に提示する。五感を刺激する行動として、例えば、香りを嗅ぐ、音楽を聴く、映像を視る、物体に接触する、クイズや迷路等の問題を解く等の行動を採用することができる。また、一般的に、筋肉運動が行われると、筋肉が糖を取り込んで血糖値が下がる。したがって、脳活性化提示デバイス64は、筋肉運動も脳活性化についての行動の1つとして、例えば、所定の運動の内容を患者に提示する。
【0053】
推奨行動実施デバイス18は、患者に推奨行動を実施させるべく、脳活性化実施デバイス71、筋肉運動実施デバイス72、及び他システム連動装置73を有している。
【0054】
脳活性化実施デバイス71は、脳を活性化するための行動を、患者に意識させずに実施させる。例えば、脳活性化実施デバイス71は、患者の明示の操作がなくとも、お香やアロマオイルの芳香成分を患者の鼻付近に滞留させたり、音楽や映像を出力したり、所定の物体を患者に接触させることによって、患者の脳を活性化させる。また、例えば、脳活性化実施デバイス71は、患者に問題を出題して解答させることによって、患者の脳を活性化させるようにしてもよい。なお、脳活性化実施デバイス71の処理の詳細については、図14を用いて後述する。
【0055】
筋肉運動実施デバイス72は、患者の脳からの指令でなく外部からの指令により、当該患者に筋肉運動を実施させる。例えば、筋肉運動実施デバイス72は、患者に装着させるEMS(Electrical Muscle Stimulation)装置等の電気刺激により筋肉を収縮させる運動器具として構成され、当該電気刺激を外部から患者の筋肉に与えることによって、当該患者の筋肉運動を実施させる。なお、推奨行動実施デバイス18の処理の詳細については、図13と図14を用いて後述する。
【0056】
他システム連動装置73は、図示せぬ他のシステムと連動することにより、患者に推奨行動を実施させる。例えば、他システム連動装置73は、図示せぬ食事配膳システムに、推奨される献立を患者に対して配膳するように指示することによって、結果として、推奨される献立で患者に食事をさせることができる。また、例えば、他システム連動装置73は、図示せぬ宅配システムに、推奨される食物や薬等を患者に対して宅配するように指示することによって、結果として、推奨される食べ物で患者に食事をさせたり、推奨される薬を患者に服薬させることができる。
【0057】
次に、図1に示される推奨行動提示実施システム1が有する機能のうち、血糖値を適切に管理するための推奨行動を、患者に提示または実施させるための各種機能を実現させるための機能的構成例を、図2を用いて説明する。
【0058】
[推奨行動提示実施システム1の機能的構成]
図2は、図1の推奨行動提示実施システム1の機能的構成例を示すブロック図である。
【0059】
推奨行動提示実施システム1は、機能的には、検出部101、行動生体情報記憶制御部102、行動推定部103、血糖値推定部104、補助情報提供部105、推奨行動算出部106、提示部107、及び実施部108を有している。
【0060】
検出部101は、図1の行動生体情報検出装置11の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、患者の行動情報と生体情報を検出する。
【0061】
行動生体情報記憶制御部102は、図1の行動生体情報データベース12に対する記憶を制御する機能ブロックである。行動生体情報記憶制御部102は、検出部101により患者の行動情報と生体情報として最初の情報が検出されると、行動生体情報データベース12を構築して、当該最初の情報を行動生体情報データベース12に記憶させる。さらに、検出部101により患者の行動情報と生体情報として新たな情報が検出されると、行動生体情報記憶制御部102は、当該新たな情報を行動生体情報データベース12に記憶させ、行動生体情報データベース12を更新する。
【0062】
行動推定部103は、図1の行動推定装置13の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御された行動情報及び生体情報に基づいて、患者の行動を推定する。
【0063】
血糖値推定部104は、図1の血糖値推定装置14の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御された行動情報及び生体情報、並びに行動推定部103による患者の行動の推定結果を、それぞれ代謝モデルに適用して、患者の現在の血糖値を推定する。
【0064】
また、血糖値推定部104は、補助情報提供部105から提供される血糖値推定用補助情報を用いて、患者の現在の血糖値を推定し、代謝モデルの精度を向上させる。
【0065】
血糖値推定部104は、更新部111を有する。更新部111は、行動生体情報記憶制御部102により記憶された実測血糖値と、血糖値推定部104が算出した推定血糖値の差分を用いて、代謝モデルを更新する。
【0066】
なお、血糖値推定部104により算出された推定血糖値は、行動推定部103により算出された推定行動と対応付けられて、行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御される。
【0067】
補助情報提供部105は、図1の血糖値推定用補助情報提供装置15の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、血糖値推定用補助情報を血糖値推定部104に提供する。
【0068】
補助情報提供部105は、記憶制御部121及び臓器情報取得部122を有する。
【0069】
記憶制御部121は、図1の他者差分データベース51、自己差分データベース52、遺伝情報データベース53、及び健康医療情報データベース54に対する記憶を制御する機能ブロックである。記憶制御部121は、他者についての実測血糖値に対する推定血糖値との差分、患者についての実測血糖値に対する推定血糖値との差分、患者の遺伝情報、健康医療情報等を、血糖値測定用補助情報のデータとして、それぞれのデータベースに記憶させる。
【0070】
臓器情報取得部122は、図1の臓器情報取得装置55の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、患者のクローン臓器情報を取得する。
【0071】
推奨行動算出部106は、図1の推奨行動算出装置16の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、血糖値推定部104により算出された推定血糖値に基づいて、推奨行動を算出する。
【0072】
推奨行動算出部106は、判定部131を有する。判定部131は、行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御された実測血糖値と、血糖値推定部104により算出された推定血糖値のどちらを用いて推奨行動を算出するかを判定する。通常の場合、実測血糖値を用いて算出された推奨行動の方が、推定血糖値を用いて算出された推奨行動よりも適切であることが多いため、判定部131は、実測血糖値を用いて推奨行動を算出すると判定する。しかしながら、実測血糖値が、検出されてから長期間が経過したものである場合や、通常の条件下で検出されたものでない場合、例えば、患者が通常よりも高カロリーな食事をとった直後に検出されたものである場合には、推定血糖値を用いて算出された推奨行動の方が適切なことが多い。したがって、このような場合、判定部131は、推定血糖値を用いて推奨行動を算出すると判定する。
【0073】
提示部107は、図1の推奨行動提示デバイス17の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、推奨行動算出部106により算出された推奨行動と、当該推奨行動が実施された場合の未来の推定血糖値とを提示する。また、提示部107は、条件付き推奨行動を提示することができる。
【0074】
実施部108は、図1の推奨行動実施デバイス18の一部の機能を発揮するために設けられる機能ブロックであり、推奨行動算出部106により算出された推奨行動を患者に実施させる。すなわち、実施部108は、脳を活性化するための行動または筋肉運動を、患者に実施させる。
【0075】
次に、推奨行動提示実施システム1が実行する処理(以下、推奨行動提示実施処理と称する)について説明する。
【0076】
[推奨行動提示実施処理]
図3は、推奨行動提示実施処理の流れを説明するフローチャートである。
【0077】
ステップS11において、検出部101は、患者の行動情報と生体情報を検出する。すなわち、検出部101は、動画カメラ41、静止画カメラ42、電子決済情報取得装置43、位置行動姿勢検出装置44、及び服薬注射検出装置45によって、患者の各種行動情報を検出する。また、検出部101は、血糖値計46、尿糖値計47、及び心拍計48によって、患者の各種生体情報を検出する。
【0078】
検出部101により、患者の各種行動情報が検出されるので、患者は、血糖値の予測に必要な行動情報を自ら手動入力する必要がなくなり、負担が軽減される。また、検出部101により検出される行動情報は、患者自らの入力によるものでないため、客観的な情報であるということができる。
【0079】
ステップS12において、行動生体情報記憶制御部102は、行動生体情報データベース12を構築または更新する。すなわち、行動生体情報記憶制御部102は、検出部101により患者の行動情報と生体情報として最初の情報が検出されると、行動生体情報データベース12を構築して、当該最初の情報を行動生体情報データベース12に記憶させる。さらに、検出部101により患者の行動情報と生体情報として新たな情報が検出されると、行動生体情報記憶制御部102は、当該新たな情報を行動生体情報データベース12に記憶させ、行動生体情報データベース12を更新する。
【0080】
ここで、検出部101による行動情報と生体情報の検出、及び行動生体情報記憶制御部102による行動生体情報データベース12の構築または更新についての具体例について、図4乃至図6を用いて説明する。
【0081】
[服薬注射情報検出]
図4は、検出部101による患者の服薬情報と注射情報の検出について説明する図である。すなわち、図4は、検出部101により患者の行動情報の1つとして服薬情報と注射情が検出される具体例を示している。
【0082】
図4に示されるように、行動生体情報検出装置11は、ピルケースセンサ141と注射器センサ142を有している。
【0083】
ピルケースセンサ141は、患者の薬が格納されるピルケースに搭載される。ピルケースセンサ141は、患者によりピルケースの蓋が開けられた時刻を服薬時刻として検出し、さらに、患者が服薬した薬の用量を検出する。ピルケースセンサ141は、薬の種類、服薬時刻、用量等を含む服薬情報を、行動生体情報データベース12に記憶させる。
【0084】
注射器センサ142は、患者が用いるインシュリン等が入った注射器に搭載される。注射器センサ142は、患者により注射器が使用された時刻を注射時刻として検出し、さらに、内容物の注入量を検出する。注射器センサ142は、注射器の内容物、注射時刻、注入量等を含む注射情報を、行動生体情報データベース12に記憶させる。
【0085】
行動生体情報データベース12は、ピルケースセンサ141により検出された服薬情報及び注射器センサ142により検出された注射情報を記憶する。
【0086】
図2の機能ブロックを用いて換言すると、検出部101は、ピルケースセンサ141により検出された服薬情報及び注射器センサ142により検出された注射情報を、患者の行動情報の1つとして検出して、行動生体情報記憶制御部102に供給する。行動生体情報記憶制御部102は、検出部101から服薬情報及び注射情報が供給されると、行動生体情報データベース12を構築または更新する。
【0087】
[血糖値検出]
図5は、検出部101による患者の血糖値の検出について説明する図である。すなわち、図5は、検出部101により、患者の生体情報の1つとして血糖値が検出される具体例を示している。
【0088】
図5に示されるように、行動生体情報検出装置11における血糖値計46は、患者の血糖値を測定し、測定した血糖値を実測血糖値として、行動生体情報データベース12に記憶させる。
【0089】
行動生体情報データベース12は、血糖値計46により検出された患者の実測血糖値を記憶する。
【0090】
図2の機能ブロックを用いて換言すると、検出部101は、血糖値計46により検出された患者の実測血糖値を、患者の生体情報の1つとして検出して、行動生体情報記憶制御部102に供給する。行動生体情報記憶制御部102は、検出部101から患者の実測血糖値が供給されると、行動生体情報データベース12を構築または更新する。
【0091】
行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御された患者の実測血糖値は、血糖値推定部104により推定される患者の推定血糖値の初期値として用いられる。また、患者の実測血糖値は、血糖値推定部104により算出された患者の推定血糖値と比較されて、推定血糖値の信頼性の確認に用いられる。また、患者の実測血糖値は、自己差分データベース52により、推定血糖値との差分が算出され、血糖値測定用補助情報のデータの1つとして記憶される。
【0092】
[尿糖値検出]
ところで、検出部101の検出結果は、患者の推定血糖値の算出に用いられていたが、本実施形態ではさらに患者の尿糖値の推定に用いられる場合もある。すなわち、本実施形態では、血糖値推定部104は、検出部101の検出結果を用いて、患者の推定血糖値のみならず、当該患者の現在の尿糖値も推定することができる。このようにして推定された尿糖値を、以下、推定尿糖値と呼ぶ。なお、推定尿糖値の算出手法は、上述の推定血糖値の算出手法と同様であるため、ここではその説明は省略する。このように、血糖値推定装置14が推定血糖値のみならず推定尿糖値も算出するのは、患者の血糖値と尿糖値の変化は重複する場合が多く、それゆえ、推定尿糖値の精度を確認することにより、推定血糖値の信頼性の向上が期待できるからである。
【0093】
このような推定尿糖値の算出のために、例えば、検出部101は、患者の尿糖値を検出することもできる。
【0094】
図6は、検出部101による患者の尿糖値の検出について説明する図である。すなわち、図6は、検出部101により、患者の生体情報の1つとして尿糖値が検出される具体例を示している。
【0095】
図6に示されるように、行動生体情報検出装置11における尿糖値計47は、患者の尿糖値を測定し、測定した尿糖値を実測尿糖値として、行動生体情報データベース12に記憶させる。
【0096】
行動生体情報データベース12は、尿糖値計47により検出された患者の実測尿糖値を記憶する。
【0097】
図2の機能ブロックを用いて換言すると、検出部101は、尿糖値計47により検出された患者の実測尿糖値を、患者の生体情報の1つとして検出して、行動生体情報記憶制御部102に供給する。行動生体情報記憶制御部102は、検出部101から患者の実測糖尿糖値が供給されると、行動生体情報データベース12を構築または更新する。
【0098】
行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御された患者の実測尿糖値は、血糖値推定部104により推定される患者の推定尿糖値の初期値として用いられる。また、患者の実測尿糖値は、血糖値推定部104により算出された患者の推定尿糖値と比較されて、推定尿糖値の信頼性の確認に用いられる。また、患者の実測尿糖値は、自己差分データベース52により、推定尿糖値との差分が算出され、血糖値測定用補助情報のデータの1つとして記憶される。
【0099】
なお、尿糖値計47による尿糖値の検出は、血糖値計46とは異なり、針を用いた採血が不要な非侵襲的な手法であることから、患者に負担をかけることはない。
【0100】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS13において、行動推定部103は、行動生体情報データベース12に記憶された行動情報と生体情報に基づいて、患者の行動を推定する。
【0101】
ここで、行動推定部103による患者の行動の推定の一例として、患者の食事と運動の推定の例について、図7乃至図9を参照して説明する。
【0102】
[食事推定]
図7は、行動推定部103による患者の食事の推定について説明する図である。
【0103】
行動生体情報検出装置11における動画カメラ41と静止画カメラ42のうち少なくとも一方は、患者の食事内容を撮影し、その結果得られる画像データを、行動生体情報データベース12に記憶させる。例えば、図8に示されるように、動画カメラ41により患者の食事内容が撮影されるとする。
【0104】
図8は、患者の食事内容が撮影される様子を模式的に示す図である。
【0105】
図8に示されるように、動画カメラ41は、テーブルの上方に設置される。動画カメラ41は、患者の食事内容を撮影し、その結果得られる画像データを、撮影時刻の情報ととともに、通信装置171を介して行動生体情報データベース12に記憶させる。なお、図8に示されるように、静止画カメラ42を広角カメラとしてテーブル上に配置し、患者の食事内容を撮影してもよい。この場合、静止画カメラ42は、患者の携帯端末に内蔵されるものであってもよい。
【0106】
行動生体情報データベース12は、動画カメラ41と静止画カメラ42のうち少なくとも一方により検出された患者の食事内容の画像データを記憶する。
【0107】
図2の機能ブロックを用いて換言すると、検出部101は、動画カメラ41と静止画カメラ42のうち少なくとも一方により得られた患者の食事内容の画像データを、患者の行動情報の1つとして検出して、行動生体情報記憶制御部102に供給する。行動生体情報記憶制御部102は、検出部101から患者の食事内容の画像データが供給されると、行動生体情報データベース12を構築または更新する。
【0108】
さらに、図7に示されるように、行動推定装置13は、食事の内容を推定する食事推定装置161を有する。食事推定装置161は、行動生体情報データベース12から提供される食事内容の画像データから、食事の内容を推定する。例えば、食事推定装置161は、食事内容の画像データを参照して、皿ごとの食べ残し量、患者の手に対する食材等の相対的な大きさの比較から得られる食事のボリューム、使用している食器等から、患者が摂取した食事の総カロリー量の値や栄養成分の値等を、食事の内容として推定する。
【0109】
図2の機能ブロックを用いて換言すると、行動推定部103は、行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御されている行動情報のうち、患者の食事内容の画像データを用いて、食事内容を推定する。
【0110】
なお、患者が所定の食堂等で食事をしている場合には、電子決済情報取得装置43内の注文システム151が取得した情報を、行動情報の1つとして行動生体情報データベース12に記憶させるようにしてもよい。具体的には、注文システム151は、患者が注文したメニューから、食事の総カロリー量の値や栄養成分の値等を行動情報の1つとして取得して行動生体情報データベース12に供給する。この場合に、食事推定装置161は、注文システム151が行動情報として取得した情報、すなわち食事の総カロリー量の値や栄養成分の値等を、そのまま推定結果として採用することができる。
【0111】
[運動推定]
図9は、行動推定部103による患者の運動の推定について説明する図である。
【0112】
図9に示されるように、行動生体情報検出装置11は、加速度センサ181と位置センサ182を有している。
【0113】
位置行動姿勢検出装置44における加速度センサ181と位置センサ182は、それぞれが検出した患者の加速度情報と位置情報を、行動生体情報データベース12に記憶させる。なお、加速度センサ181と位置センサ182は、患者に携帯させるものとする。
【0114】
行動生体情報データベース12は、加速度センサ181と位置センサ182により検出された、患者の加速度情報と位置情報を記憶する。
【0115】
図2の機能ブロックを用いて換言すると検出部101は、加速度センサ181により得られた加速度情報と、位置センサ182により得られた位置情報を、患者の行動情報の1つとして検出して、行動生体情報記憶制御部102に供給する。行動生体情報記憶制御部102は、検出部101から患者の加速度情報と位置情報が供給されると、行動生体情報データベース12を構築または更新する。
【0116】
さらに、図9に示されるように、行動推定装置13は、運動の内容を推定する運動推定装置191を有する。行動推定部103は、行動生体情報データベース12から取得した加速度情報と位置情報から、運動の内容を推定する。例えば、行動推定部103は、患者の加速度情報と位置情報から、運動の種類や運動の強度等を、運動の内容として推定する。
【0117】
図2の機能ブロックを用いて換言すると、行動推定部103は、行動生体情報記憶制御部102により記憶が制御されている行動情報のうち、患者の加速度情報と位置情報を用いて、運動内容を推定する。
【0118】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS14において、血糖値推定部104は、血糖値を推定する。すなわち、血糖値推定部104は、行動生体情報データベース12に記憶された行動情報と生体情報、並びに行動推定部103により推定された患者の行動をそれぞれ代謝モデルに適用して、患者の現在の血糖値を推定する。
【0119】
また、血糖値推定部104は、患者の現在の血糖値を推定する場合、血糖値推定用補助情報提供装置15から提供される血糖値推定用補助情報を補助的に用いる。血糖値推定部104は、血糖値推定用補助情報を用いて代謝モデルの精度を向上させ、推定血糖値の信頼性を向上させる。血糖値推定部104は、血糖値推定用補助情報として、記憶制御部121に記憶された、他者についての実測血糖値に対する推定血糖値との差分、患者についての実測血糖値に対する推定血糖値との差分、患者の遺伝情報、健康医療情報等を用いることができる。
【0120】
また、血糖値推定部104は、血糖値推定用補助情報として、臓器情報取得部122により取得される患者のクローン臓器情報を用いることができる。
【0121】
ここで、臓器情報取得装置55の詳細について図10と図11を用いて説明する。
【0122】
[臓器情報取得装置55の構成例]
図10は、臓器情報取得装置55の構成例を示す図である。
【0123】
図10に示されるように、臓器情報取得装置55は、生体再現装置201と血中成分制御装置202を有している。
【0124】
生体再現装置201は、iPS細胞などの多能性細胞を分化誘導させて作られた患者のクローン臓器、具体的には同図では血管223により結合されたクローン膵臓221とクローン肝臓222を、患者の体内の環境を再現した再現環境内で活動させるように動作する。
【0125】
血中成分制御装置202は、行動生体情報データベース12に記憶された行動情報や生体情報に基づいて、血管223の血中成分を制御する。具体的には例えば、血中成分制御装置202は、行動生体情報データベース12に記憶された行動情報から患者が食事をしたと判断した場合には、血管223を介してクローン膵臓221とクローン肝臓222に供給する血の血糖値を上昇させる。また、血中成分制御装置202は、行動生体情報データベース12に記憶された行動情報から患者が運動をしたと判断した場合には、血管223を介してクローン膵臓221とクローン肝臓222に供給する血の血糖値を下降させる。その結果、患者のクローン膵臓221とクローン肝臓222が血中成分の変化に応じた活動を行い、当該活動に伴って血管223の中の血中成分が変化する。
【0126】
臓器情報取得装置55は、患者のクローン膵臓221とクローン肝臓222の活動により変化した血管223内の血中成分、例えば血糖値の情報を取得して、クローン臓器情報として血糖値推定装置14に提供する。
【0127】
ここで、患者のクローン膵臓221とクローン肝臓222の活動による血中成分の変化は、患者の体内の血中成分の変化と類似するものとして取り扱うことができる。そこで、血糖値推定装置14は、臓器情報取得装置55から提供された患者のクローン臓器情報を血糖値測定用補助情報の1つとして用いて、推定血糖値を求めることができる。このように、臓器情報取得装置55を用いることにより、代謝モデルの精度を向上させ、ひいては推定血糖値の信頼性を向上させることができる。
【0128】
なお、図10に示される臓器情報取得装置55は、患者のクローン臓器を用いるため、ある一定の設備を有する場所に設置する必要がある。しかしながら、よりコンパクトにクローン臓器情報と同等の情報を取得するために、例えば、図11に示されるように、患者の膵臓と肝臓の細胞の情報(以下、臓器細胞情報と称する)を取得するようにしてもよい。
【0129】
[臓器情報取得装置55の他の構成例]
図11は、臓器情報取得装置55の構成例であって、図10とは別の構成例を示す図である。
【0130】
図11の臓器情報取得装置55は、患者の膵臓の細胞241と肝臓の細胞242を、患者の体内の再現環境内で培養する。そして、臓器情報取得装置55は、図10の例と同様に、行動生体情報データベース12に記憶された行動情報及び生体情報に基づいて、患者の体内の再現環境を制御する。この場合、当該制御は、図示はしないが、内蔵するICチップ等により実行される。その結果、患者の膵臓の細胞241と肝臓の細胞242が環境の変化に応じて反応する。
【0131】
臓器情報取得装置55は、患者の膵臓の細胞241と肝臓の細胞242の反応により得られる情報を臓器細胞情報として取得し、血糖値推定装置14に提供する。
【0132】
ここで、患者の膵臓の細胞241と肝臓の細胞242の反応は、患者の体内の臓器の反応と類似するものとして取り扱うことができる。そこで、血糖値推定装置14は、臓器情報取得装置55から提供された患者の臓器情報を血糖値測定用補助情報の1つとして用いて、推定血糖値を求めることができる。このように、臓器情報取得装置55を用いることにより、代謝モデルの精度を向上させ、ひいては推定血糖値の信頼性を向上させることができる。
【0133】
さらに、図10と比較して図11の臓器情報取得装置55は、患者が携帯可能な程度にコンパクトに構成されているため、大量に生産することが容易に可能であり、低価格で患者に提供可能になると想定される。したがって、1人の患者が、複数の臓器情報取得装置55を保有することは容易に可能になると想定される。このような場合、複数の臓器情報取得装置55は、内部の環境を、推奨行動算出装置16が算出する複数の異なる推奨行動のそれぞれに対応する環境に制御して、それぞれの異なる環境下での臓器細胞情報を取得することも可能になる。
【0134】
以上、説明したように、ステップS14において、血糖値推定部104により、患者の推定血糖値が算出されることにより、患者は、頻繁に行う必要があった血糖値計46による血糖値の測定回数を減らすことができる。したがって、患者は、血糖値の管理に伴う負担を軽減することができる。なお、血糖値推定部104による血糖値の推定は、患者の生体情報の推定の一例にすぎない。
【0135】
図3のフローチャートの説明に戻り、ステップS15において、推奨行動算出部106は、血糖値推定部104により推定された推定血糖値に基づいて、推奨行動を算出する。
【0136】
推奨行動算出部106は、血糖値推定部104により推定された患者の現在の推定血糖値を用いて、複数の推奨行動の候補を求めて、血糖値推定部104に提供する。血糖値推定部104は、これらの複数の推奨行動の候補のそれぞれが未来に実施されたと仮定して、患者の未来の推定血糖値をそれぞれ算出して、推奨行動算出部106に提供する。推奨行動算出部106は、複数の推奨行動の候補のうち、未来の推定血糖値が適切な範囲内にある候補を推奨行動として選抜する。
【0137】
ステップS16において、提示部107は患者に推奨行動を提示し、実施部108は患者に推奨行動を実施させる。すなわち、提示部107は、推奨行動と、当該推奨行動が実施された場合の未来の推定血糖値とを提示し、実施部108は、推奨行動を患者に意識させずに実施させる。
【0138】
提示部107は、食事についての推奨行動が推奨行動算出部106により算出された場合、食事サプリ提示デバイス61により、患者に推奨する食事やサプリメントの内容を、当該食事やサプリメントを摂取した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0139】
また、提示部107は、運動についての推奨行動が推奨行動算出部106により算出された場合、運動提示デバイス62により、患者に推奨する運動の内容を、当該運動を実施した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0140】
また、提示部107は、服薬についての推奨行動が推奨行動算出部106により算出された場合、服薬注射提示デバイス63により、患者に推奨する服薬や注射の内容を、当該服薬や注射を実施した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0141】
また、提示部107は、脳活性化についての推奨行動が推奨行動算出部106により算出された場合、脳活性化提示デバイス64により、患者に推奨する脳活性化を実現する行動の内容を、当該脳活性化を実現する行動を実施した場合の未来の推定血糖値とともに、画像や音声により患者に提示する。
【0142】
さらに、提示部107は、「食事Aをしたいならば、運動Rをすればよい」等の条件付き推奨行動を提示することができる。したがって、患者は、運動Rをすることを条件に、今まで血糖値を制御するために我慢していた食事Aをすることができるようになり、血糖値の管理に伴う負担が軽減される。
【0143】
実施部10は、脳活性化についての推奨行動が推奨行動算出部106により算出された場合、脳活性化実施デバイス71により、脳を活性化するための行動を、患者に意識させずに実施させる。
【0144】
また、実施部10は、脳活性化についての推奨行動として筋肉運動が推奨行動算出部106により算出された場合、筋肉運動実施デバイス72により、患者に筋肉運動を実施させる。
【0145】
ここで、本技術が適用される患者が血糖値を最適な値に管理するための手法の一例として、血糖値を下げるための手法について、既存の手法と適宜比較しつつ説明する。
【0146】
[患者の血糖値を下げるための既存の手法]
図12は、患者の血糖値を下げるための既存の手法について説明する図である。
【0147】
図12に示されるように、患者の血糖値を下げるための既存の手法として代表的なものとして、薬を注入する、インスリンポンプを使用する、体内の電極で膵臓に電圧を印加する、の3つの手法がある。
【0148】
以下、これらの3つの手法について、「対象」、「接触」、「注入・浸透」、及び「侵襲」といった4つの特徴の点を比較しつつ個別に説明する。なお、「対象」とは、その手法による制御の対象を意味する。「接触」とは、その手法が適用される場合に何かしらの物体が患者に接触することを意味する。「注入・浸透」とは、その手法が適用される場合に何かしらの物体が患者の体内に注入または浸透することを意味する。「侵襲」とは、その手法を適用するために、その手法の適用中またはその前後に、手術や検査等に伴う痛み、発熱、出血など、患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激を与えることを意味する。
【0149】
薬を注入する手法とは、血糖値を下げるための薬を、経口や注射器により患者の体内に注入する手法である。図12に示されるように、当該手法による制御の「対象」は、血中の成分である。また、図12において「接触」の項目内に丸印が示されているように、当該手法を用いる場合、薬、注射針が患者に接触する。また、図12において「注入・浸透」の項目内に丸印が示されているように、当該手法を用いる場合、薬が患者の体内に注入されることから、患者への注入または浸透がある。図12において「侵襲」の項目内に丸印が示されているように、当該手法は、服薬や注射器の使用が必要なため侵襲的であるといえる。
【0150】
インスリンポンプを使用する手法とは、ここではインスリンポンプを用いて患者の体内にインスリンを注入する手法をいう。インスリンポンプとは、患者の体内にインスリンを注入するための携帯型の小型機器であり、インスリンポンプに接続されたチューブと針が、患者の体内に埋め込まれる。患者は、食事や運動の内容に基づいてインスリンポンプを操作して、自ら注入するインスリン量を設定する。
【0151】
図12に示されるように、当該手法による制御の「対象」は、血中の成分である。また、図12において「接触」の項目内に丸印が示されているように、当該手法を用いる場合、患者はインスリンポンプが患者に接触する。また、図12において「注入・浸透」の項目内に丸印が示されているように、当該手法を用いる場合、インスリンが患者の体内に注入されることから、患者への注入または浸透がある。図12において「侵襲」の項目内に丸印が示されているように、当該手法は、インスリンポンプに接続されたチューブと針が患者の体内に埋め込まれるため侵襲的であるといえる。
【0152】
体内の電極で膵臓に電圧を印加する手法とは、膵臓からのグルカゴンの分泌を促すために、患者の体内に電極を埋め込み、膵臓に電圧を印加して電気刺激を与える手法である。図12に示されるように、当該手法による制御の「対象」は、膵臓である。また、図12において「接触」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法を用いる場合、電極は患者の体内に埋め込まれているため、患者への接触はない。また、図12において「注入・浸透」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法を用いる場合、電圧が印加されることから、患者への注入または浸透はない。しかしながら、図12において「侵襲」の項目内に丸印が示されているように、当該手法は、電極が患者の体内に埋め込まれるため侵襲的であるといえる。
【0153】
このように、上述した3つの手法はいずれも侵襲的であり、患者に負担がかかる。これに対して、本実施形態の推奨行動実施デバイス18によれば、患者が意識しないうちに、血糖値を適切な値に管理するための推奨行動を実施させ、患者の血糖値を下げることができる。推奨行動実施デバイス18による患者の血糖値を下げるための手法について、図13を用いて説明する。
【0154】
[推奨行動実施デバイス18による患者の血糖値を下げるための手法]
図13は、推奨行動実施デバイス18による患者の血糖値を下げるための手法について説明する図である。
【0155】
推奨行動実施デバイス18が有する脳活性化実施デバイス71は、脳を活性化するための行動を、患者に意識させずに実施させる。すなわち、脳活性化実施デバイス71は、患者の脳を活性化することにより、血中の糖の消費を促進させ、血糖値を下げる。
【0156】
図13に示されるように、脳活性化実施デバイス71は、患者に対して匂いによる刺激を与えて、患者の脳を活性化させる。当該手法による制御の「対象」は、患者の脳と鼻である。また、図13において「接触」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、お香やアロマオイルの芳香成分を患者の鼻付近に滞留させることから、患者への接触はない。また、図13において「注入・浸透」の項目内に丸印が示されているように、お香やアロマオイルの芳香成分の患者への注入や浸透はある。当該手法は、図13において「侵襲」の項目内にバツ印が示されているように、患者の肉体への痛み、出血等の患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激はなく、非侵襲的である。
【0157】
また、脳活性化実施デバイス71は、患者に対して音楽による刺激を与えて、患者の脳を活性化させる。当該手法による制御の「対象」は、患者の脳と耳である。また、図13において「接触」、「注入・浸透」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、患者に音楽を聞かせることにより行われるので、患者への接触、注入や浸透がない。当該手法は、図13において「侵襲」の項目内にバツ印が示されているように、患者の肉体への痛み、出血等の患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激はなく、非侵襲的である。
【0158】
また、脳活性化実施デバイス71は、患者に対して映像による刺激を与えて、患者の脳を活性化させる。当該手法による制御の「対象」は、患者の脳と眼である。また、図13において「接触」、「注入・浸透」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、患者に映像をみせることにより行われるので、患者への接触、注入や浸透がない。当該手法は、図13において「侵襲」の項目内にバツ印が示されているように、患者の肉体への痛み、出血等の患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激はなく、非侵襲的である。
【0159】
また、脳活性化実施デバイス71は、患者に対して感触による刺激を与えて、患者の脳を活性化させる。当該手法による制御の「対象」は、患者の脳と皮膚である。また、図13において「接触」の項目内に丸印が示されているように、当該手法は、患者に所定の物体を接触させることにより行われるので、患者への接触はある。また、図13において、「注入・浸透」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、患者への注入や浸透はない。当該手法は、図13において「侵襲」の項目内にバツ印が示されているように、患者の肉体への痛み、出血等の患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激はなく、非侵襲的である。
【0160】
また、脳活性化実施デバイス71は、患者に対して問題の出題による刺激を与えて、患者の脳を活性化させる。当該手法による制御の「対象」は、患者の脳と眼である。また、図13において「接触」、「注入・浸透」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、患者に問題を出題することにより行われるので、患者への接触、注入や浸透がない。当該手法は、図13において「侵襲」の項目内にバツ印が示されているように、患者の肉体への痛み、出血等の患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激はなく、非侵襲的である。
【0161】
さらに、推奨行動実施デバイス18が有する筋肉運動実施デバイス72は、筋肉運動を、患者に意識させずに実施させる。すなわち、脳活性化実施デバイス71は、患者に筋肉運動を実施させることにより、筋肉に糖を取り込ませ、血糖値を下げる。
【0162】
図13に示されるように、筋肉運動実施デバイス72は、患者の筋肉に対して電気による刺激を与えて、筋肉運動を実施させる。当該手法による制御の「対象」は、患者の筋肉である。また、図13において「接触」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、患者が装着するEMS装置等により行われるので、患者への接触はある。また、図13において、「注入・浸透」の項目内にバツ印が示されているように、当該手法は、患者への注入や浸透はない。当該手法は、図13において「侵襲」の項目内にバツ印が示されているように、患者の肉体への痛み、出血等の患者の肉体の通常の状況を乱す外部刺激はなく、非侵襲的である。
【0163】
このように、本実施形態の推奨行動実施デバイス18によれば、患者が意識しないうちに、血糖値を制御するための推奨行動を実施させることができる。当該手法は、非侵襲的であり、患者の負担を軽減することができる。
【0164】
次に、推奨行動実施デバイス18による患者への推奨行動の実施の処理のうち、脳活性化実施デバイス71の処理について説明する。
【0165】
[脳活性化実施デバイス71の構成例]
図14は、脳活性化実施デバイス71の構成例を示す図である。
【0166】
図14に示されるように、脳活性化実施デバイス71は、実施装置261と問題データベース262を有している。
【0167】
実施装置261は、推奨行動算出装置16により算出された推奨行動を患者に実施させる。例えば、実施装置261は、推奨行動算出装置16により、患者に対して匂いによる刺激を与えることが推奨行動として算出された場合、お香やアロマオイルの芳香成分を患者の鼻付近に滞留させる。また、実施装置261は、推奨行動算出装置16により、患者に対して音楽または映像による刺激を与えることが推奨行動として算出された場合、音楽または映像を出力する。また、実施装置261は、推奨行動算出装置16により、患者に対して感触による刺激を与えることが推奨行動として算出された場合、患者に所定の物体を接触させる。
【0168】
また、例えば、実施装置261は、推奨行動算出装置16により、問題の出題による刺激を与えることが推奨行動として算出された場合、問題を出題する。実施装置261は、問題データベース262に記憶されている問題の中から、所定の問題を検索して患者に出題する。
【0169】
実施装置261は、推奨行動を患者に実施させるときに、他の動作もあわせて行うことができる。例えば実施装置261は、推奨行動算出装置16により算出された推奨行動の程度に応じて刺激の強度を変えることもできる。推奨行動の程度とは、刺激の強弱であり、強い刺激が与えられる程、患者の脳が活性化されて血糖値の変化量が大きくなる。
【0170】
例えば、実施装置261は、推奨行動算出装置16により、問題の出題による刺激としてより強い刺激を与えることが推奨行動として算出された場合には、問題データベース262の中から難易度の高い問題を検索して出題する。これに対して、実施装置261は、推奨行動算出装置16により、問題の出題による刺激としてより弱い刺激を与えることが推奨行動として算出された場合には、問題データベース262の中から難易度の低い問題を検索して出題する。
【0171】
同様に、実施装置261は、推奨行動算出装置16により算出された推奨行動の程度に応じて、匂い、音楽、映像、感触による刺激の強弱も変化させる。
【0172】
また、実施装置261は、刺激の強弱を変化させるのと変えて又はそれと共に、さらに他の動作、例えば、患者に問題を出題した場合、患者が問題に解答しない限り携帯電話器が使えないようにするといった動作をしてもよい。
【0173】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0174】
例えば上述の例では、推奨行動算出装置16は、複数の推奨行動の候補のうち、未来の推定血糖値が適切な範囲内にある候補を推奨行動として選抜している。しかしながら、適切な範囲内にない推奨行動を、警告行動として推奨行動提示デバイス17により提示させてもよい。これにより、患者は、警告行動のそれぞれを未来に実施した場合のリスクを、事前に知ることができ、危険を回避することができる。
【0175】
また例えば上述の例は、糖尿病の患者によって、推奨行動提示実施システム1が用いられるものとして説明した。しかしながら、推奨行動提示実施システム1は、糖尿病の予防、健康管理等の目的で、一般のユーザにより使用されてもよい。また、ユーザである患者がペット等の動物の場合には、例えば、推奨行動提示デバイス17は、飼い主に対してペット等に対する推奨行動を提示する。飼い主は、当該推奨行動をペットに実施することで、ペットの健康を適切に管理することができる。
【0176】
また例えば、行動生体情報検出装置11は、患者についての生体情報を検出するための構成として、その他に例えば、患者の脳波を計測する脳波計を有していてもよい。脳波計により検出される患者の脳波から、患者が推奨行動提示デバイス17によって提示された推奨行動を実施したか否か、また、推奨行動実施デバイス18によって推奨行動が実施されたか否かを検出することができる。当該検出の結果は、行動生体情報データベース12に記憶され、行動推定装置13による患者の行動の推定や血糖値推定装置14による患者の血糖値の推定に用いられる。
【0177】
また例えば、推奨行動実施デバイス18は、患者に推奨行動を実施させるための構成として、その他に例えば、インスリンポンプ等の注射実施デバイスを有していてもよい。注射実施デバイスは、注射についての推奨行動が推奨行動算出部106により算出された場合、インスリンポンプ等のインスリン量を設定して患者の体内にインスリンを注入する。これにより、患者は、食事や運動の内容に基づいて自らインスリンポンプを操作せずとも、血糖値を下げることができるようになる。
【0178】
以上、説明したように、推奨行動提示実施システム1により、患者の各種行動情報が検出されるので、患者は、血糖値の予測に必要な行動情報を自ら手動入力する必要なくなり、負担が軽減される。また、推奨行動提示実施システム1により検出される行動情報は、患者自らの入力によるものでないため、客観的な情報であるということができる。
【0179】
また、推奨行動提示実施システム1により、患者の推定血糖値が算出されるので、患者は、血糖値の管理のために、頻繁に行う必要があった針を用いる血糖値の測定回数を減らすことができる。
【0180】
また、推奨行動提示実施システム1により、条件付き推奨行動が提示されるので、患者は条件付きではあっても、今まで血糖値を管理するために制限していた行動をすることができるようになる。
【0181】
また、推奨行動提示実施システム1により、患者は、警告行動のそれぞれを未来に実施した場合のリスクを、事前に知ることができるので、血糖値を適切に管理することができる。
【0182】
また、推奨行動提示実施システム1により、患者が意識しないうちに推奨行動が実施され、血糖値が管理されるため、侵襲的な手法による血糖値の管理を用いることを抑制することができる。
【0183】
また、推奨行動提示実施システム1により、そのユーザが意識しないうちに推奨行動が実施されるので、医療知識を持たない一般のユーザも、血糖値を適切に管理することができる。
【0184】
[本技術のプログラムへの適用]
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0185】
この場合、上述した情報処理装置の少なくとも一部として、例えば、図15に示されるパーソナルコンピュータを採用してもよい。
【0186】
図15において、CPU301は、ROM302に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。または記憶部308からRAM303にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM303にはまた、CPU301が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0187】
CPU301、ROM302、及びRAM303は、バス304を介して相互に接続されている。このバス304にはまた、入出力インタフェース305も接続されている。
【0188】
入出力インタフェース305には、キーボード、マウスなどよりなる入力部306、ディスプレイなどよりなる出力部307が接続されている。また、ハードディスクなどより構成される記憶部308、及び、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部309が接続されている。通信部309は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
【0189】
入出力インタフェース305にはまた、必要に応じてドライブ310が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア311が適宜装着される。そして、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部308にインストールされる。
【0190】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0191】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図15に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア(パッケージメディア)311により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM302や、記憶部308に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0192】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0193】
本技術は、生体情報を予測する情報処理装置に適用することができる。
【0194】
なお、本技術は、以下のような構成もとることができる。
(1)
ユーザを対象とした行動情報及び生体情報を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記行動情報及び前記生体情報を代謝モデルに適用して、推定生体情報を算出する生体情報推定部と、
前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報に基づいて算出された推奨行動をユーザに提示する提示部と
を備える情報処理装置。
(2)
前記推奨行動をユーザに実施させる実施部
をさらに備える前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記検出部により検出された前記行動情報及び前記生体情報に基づいて、前記ユーザの行動を推定する行動推定部
をさらに備える前記(1)または(2)に記載の情報処理装置。
(4)
前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報に基づいて、前記推奨行動を算出する推奨行動算出部と、
前記検出部により検出された実測生体情報と前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報とを用いて、前記代謝モデルを更新する更新部
をさらに備える前記(1)、(2)、または(3)に記載の情報処理装置。
(5)
前記実施部は、前記ユーザの脳を活性化するための行動または前記ユーザの筋肉運動を前記ユーザに実施させる
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の情報処理装置。
(6)
前記更新部は、前記検出部により検出された前記実測生体情報と前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報との差分を用いて、前記代謝モデルを更新する
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の情報処理装置。
(7)
前記生体情報の実測値又は前記推定生体情報を用いて前記推奨行動を算出するかを判定する判定部
をさらに備える前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の情報処理装置。
(8)
前記行動情報は、食事情報又は運動情報または服薬情報であり、
前記生体情報は、血糖値情報又は尿糖値情報である
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の情報処理装置。
(9)
前記生体情報推定部による前記推定生体情報の算出に補助的に用いられる情報の記憶を制御する記憶制御部
をさらに備える前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の情報処理装置。
(10)
前記情報は、前記ユーザとは異なる他者についての、前記実測生体情報に対する前記推定生体情報との差分である
前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の情報処理装置。
(11)
前記情報は、前記ユーザについての、前記実測生体情報に対する前記推定生体情報との差分である
前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0195】
1 推奨行動提示実施システム, 11 行動生体情報検出装置, 12 行動生体情報データベース, 13 行動推定装置, 14 血糖値推定装置, 15 血糖値推定用補助情報提供装置, 16 推奨行動算出装置, 17 推奨行動提示デバイス, 18 推奨行動実施デバイス, 101 検出部, 102 行動生体情報記憶制御部, 103 行動推定部, 104 血糖値推定部, 105 補助情報提供部, 106 推奨行動算出部, 107 提示部, 108 実施部, 111 更新部, 121 記憶制御部, 122 臓器情報取得部, 131 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを対象とした行動情報及び生体情報を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記行動情報及び前記生体情報を代謝モデルに適用して、推定生体情報を算出する生体情報推定部と、
前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報に基づいて算出された推奨行動をユーザに提示する提示部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記推奨行動をユーザに実施させる実施部
をさらに備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記検出部により検出された前記行動情報及び前記生体情報に基づいて、前記ユーザの行動を推定する行動推定部
をさらに備える請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報に基づいて、前記推奨行動を算出する推奨行動算出部と、
前記検出部により検出された実測生体情報と前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報とを用いて、前記代謝モデルを更新する更新部
をさらに備える請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記実施部は、前記ユーザの脳を活性化するための行動または前記ユーザの筋肉運動を前記ユーザに実施させる
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記更新部は、前記検出部により検出された前記実測生体情報と前記生体情報推定部により算出された前記推定生体情報との差分を用いて、前記代謝モデルを更新する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生体情報の実測値又は前記推定生体情報を用いて前記推奨行動を算出するかを判定する判定部
をさらに備える請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記行動情報は、食事情報又は運動情報または服薬情報であり、
前記生体情報は、血糖値情報又は尿糖値情報である
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記生体情報推定部による前記推定生体情報の算出に補助的に用いられる情報の記憶を制御する記憶制御部
をさらに備える請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記情報は、前記ユーザとは異なる他者についての、前記実測生体情報に対する前記推定生体情報との差分である
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記情報は、前記ユーザについての、前記実測生体情報に対する前記推定生体情報との差分である
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
ユーザを対象とした行動情報及び生体情報を検出する検出ステップと、
前記検出ステップの処理により検出された前記行動情報及び前記生体情報を代謝モデルに適用して、推定生体情報を算出する生体情報推定ステップと、
前記生体情報推定ステップの処理により算出された前記推定生体情報に基づいて算出された推奨行動をユーザに提示する提示ステップと
を含む情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−235869(P2012−235869A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105991(P2011−105991)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】