説明

情報収集システム

【課題】見栄えを低下させることなく、設置の汎用性を高めることができ、また各種情報を確実に収集することができる情報収集システムを提供することを目的とする。
【解決手段】建築物に配置されたタグリーダ1によりRFタグ情報を読み取り、建築物内に設定された所定の情報収集対象領域2内の情報を収集する情報収集システムであって、
前記タグリーダ1とRFタグ3のいずれか一方が建築物の天井部4に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報収集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFIDを利用した情報収集システムとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、情報収集システムは、商品に取り付けられるRFタグと、出入口に配置されるゲート側に固定されるタグリーダとから構成され、タグリーダを未精算商品が通過すると、警報信号が生成される。
【特許文献1】特開2000-259958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来例は、通路にゲートを設置する必要があるために見栄えが悪い上に、利用者への精神的な圧迫が大きいという問題がある。この問題は、タグリーダを壁面等に埋め込むことにより解消可能であるが、対向壁面間の距離は建物によりまちまちであり、RFIDの交信距離を越えるような広い間口を有する場合には適用できないという欠点がある。また、RFIDを用いて入退室管理を行う場合にも、同様の問題があった。
【0004】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、見栄えを低下させることなく、汎用性も高めることができる情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、
建築物に配置されたタグリーダ1によりRFタグ情報を読み取り、建築物内に設定された所定の情報収集対象領域2内の情報を収集する情報収集システムであって、
前記タグリーダ1とRFタグ3のいずれか一方が建築物の天井部4に固定される情報収集システムを提供することにより達成される。
【0006】
本発明において、RFIDの構成要素であるRFタグ3とタグリーダ1のいずれか一方を天井部4に固定することによって、交信方向をほぼ鉛直方向とすることが可能になる。天井の高さは、対向壁面間の間隔に比べるとばらつきは少なく、かつ、情報収集対象領域の広さのばらつきは、天井部4に複数のRFIDの構成要素(RFタグ、タグリーダ)を配置することにより吸収することができる。
【0007】
この結果、建築物の広さ等に影響されることなく、どこにでもシステムを設置することが可能となるために、汎用性が向上する。また、天井部4に配置されたRFIDの構成要素は、目立たないために、利用者に精神的な圧迫感を与えることがない。
【0008】
さらに、RFIDは、使用周波数によっては、水分による減衰が激しいために、人陰等に入ったRFタグ3は検出されにくくなり、これが精度低下の一因となる場合がある(例えばマイクロ波帯である2.45GHz)。これに対して、RFIDの構成要素の一方を天井部に配置する本発明においては、交信方向がほぼ鉛直方向になって、人陰になる領域を狭くすることが可能になり、結果、精度向上が達成できる。
【0009】
加えて、天井部4には、火災報知器や煙感知器等の防災設備、空調機、あるいは監視カメラや赤外線センサ、超音波センサ等の各種防犯センサ等の保守を要する設備6が配置することにより、これらのメンテナンス時にRFID構成要素も保守することができ、メンテナンス性も向上する。
【0010】
なお、本明細書において、「RFID」の用語は、JIS X 0500による定義に基づき、「誘導電磁界又は電波によって、非接触で半導体メモリのデータを読み出し、書込みのために近距離通信を行うものの総称」として使用する。同様に、「RFタグ」の用語は、「半導体メモリを内蔵して、誘導電磁界又は電波によって書き込まれたデータを保持し、非接触で読出しできる情報媒体」として使用するが、JIS X 0500により未だ規定されていない同種のものを排除するものではない。また、JIS X 0500では、「リーダ/ライタ」を「RFタグのデータを書込み、読出しする装置」として定義している。これに対し、本発明においては、書込み機能は必ずしも要しないことから、「タグリーダ」の用語を使用するが、書込み機能を備えたものを排除することを意図しない。
【0011】
さらに、情報収集システムは、
情報収集対象領域がタグリーダの通信可能領域にほぼ一致するように、前記タグリーダ1を例えば天井部4に固定し、
情報収集対象が保持するRFタグ3の情報を適宜タイミングで読み取るように構成することにより、情報収集精度を飛躍的に高めることができる。
【0012】
すなわち、上述した従来例は、ゲート前の通過の有無により情報収集対象領域の状態を把握しようとした場合には、RFタグ3の誤読等による精度低下が避けられないという問題がある。
【0013】
RFタグ3の誤読を防止するために、利用者の背信性がない場合、例えば、入退室管理においては、RFタグ3をタグリーダ1に翳さなければ扉が開かないようにして入退出検出の確実性を高めることが可能のようにも思われる。
【0014】
しかし、近接型、あるいは近傍型のように、交信距離の小さなRFIDによりかかるシステムを構築した場合には、先導者がRFタグ3を使用して開扉した際に、後続者がRFタグ3を翳すことなく連なって入退出してしまう、いわゆる共連れを確実に防止することができないために、確実性の向上には限りがある。
【0015】
この問題を解決するためには、RFIDを交信距離の長い遠隔型のもので構成することも可能であるが、この場合には、扉に近接した室外領域のRFタグ3の誤読が発生する。また、遠隔型においては交信領域が広いために、複数人が交信領域を通過する状態が頻発する。遠隔型RFIDには、複数のRFタグ3を同時読み取り可能なアンチコリジョン対応のものもあるが、入退出者は比較的速い速度で扉前を通過するために、RFタグ3の検出精度が飛躍的に高くなることは望めない。とりわけ、アンチコリジョンにおけるRFタグ3の特定は、通常、順次応答するRFタグ3が1個になるまで複数の条件を送信し続けることにより行われるものであるから、比較的早期にタグリーダ1の交信範囲から離脱してしまう退出者の検出は困難になる。
【0016】
上記発明は、これらの問題がRFIDを使用したゲート管理という手法から流出する問題であるとの認識の下、入退出管理に代表されるように、入室者等の情報収集対象は情報収集対象領域内に比較的長い間留まるという特徴があり、この時間的要素を精度向上に利用することができるとの考えによりなされたもので、領域内の状態を、天井部4と情報収集対象とに配置されたRFIDにより直接読み取り、これを適宜のタイミングで繰り返すことにより検出精度を高めるものである。
【0017】
本発明において、天井部4に固定されるタグリーダ1は、所定のタイミングでRFタグ3に対するリクエスト用搬送波を送出しており、交信可能領域に進入したRFタグ3はリクエスト命令に対応して要求されたタグ情報を発信し、タグリーダ1により受信される。受信されたタグ情報は、例えば、管理用コンピュータシステムに出力され、必要な処理がなされる。
【0018】
タグリーダ1を設置する天井部4の位置は、情報収集対象領域の全域がRFIDの通信可能領域とほぼ一致するように決定される。情報収集対象領域は複数のタグリーダ1によりカバーされるものであってもよく、この場合、タグリーダ1は、情報収集対象領域に空白が生じないように、適宜間隔をおいて配置される。
【0019】
タグリーダ1による読み取りタイミングは、タイマ等を利用するように、読み取り時刻間に一定の間隔を設定するもの以外に、例えば、ドア11の開閉や照明のON/OFF等、情報収集対象領域内での特定の行為に同期させることもできる。
【0020】
また、本発明に係る情報収集システムは、特定の固定された領域内での情報収集対象の存否を知る以外に、
前記天井部4には通信可能領域にほぼ一致する間隔で複数のタグリーダ1が固定され、
タグ情報を受信したタグリーダ1の通信可能領域から情報収集対象の位置を特定する情報収集システム
を構成すると、情報収集対象の移動を捕捉するために使用することもできる。
【0021】
さらに、以上においては、天井部4にタグリーダ1を配置する場合について述べたが、RFタグ3を天井部4に配置するシステムを構成することもできる。この場合、
建築物の天井部4には、情報収集対象領域が各RFタグにより構成される通信可能領域にほぼ一致するよう複数のRFタグ3が固定され、
かつ、各RFタグ3には、通信可能領域に関連した属性が格納される情報収集システムとすることにより、タグリーダ1の保持者が領域に関連した属性情報をRFタグ3から取得することができる。このシステムの運用例としては、火災等における避難経路をRFタグ3からの情報に基づいて決定したり、あるいはRFタグ3にデパート等の売り場におけるタイムサービスの内容や商品陳列に関する指示等を配信・記憶させ、従業員への作業指示を行うようにすることが挙げられる。
【0022】
RFタグ3への領域情報の設定は、別途タグリーダ1を使用して書き込むことも可能であるが、緊急性等に対応するためには、RFタグ3がデータ配信ネットワーク5に接続され、RFタグ3に対するデータ配信を可能とすることが有用である。
【0023】
さらに、天井部4には、一般に火災報知器等の防災設備、空調機、あるいは監視カメラや赤外線センサ、超音波センサ等の各種防犯センサ等の保守を要する設備6が配置されるために、
前記天井部4に配置されるRFID構成要素が、天井部4に設置される保守対象設備6に固定され、
前記設備6のメンテナンス時に設備6とともに交換可能な請求項1記載の情報収集システム
を構成すると、設備6等の保守の際に一緒に保守、あるいは交換することが簡単になり、メンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、見栄えを低下させることなく、設置の汎用性を高めることができる。
また、情報収集対象領域を複数回にわたってスキャンして領域内の情報を取得するために、情報収集精度を高めることができる。また、タグリーダ1、あるいはRFタグ3の一方が天井部4に配置されるために、水分の影響を可及的に少なくすることが可能になり、情報収集精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1(a)に社屋の在室者管理システムとして構成された本発明の第1の実施の形態を示す。この実施の形態において、室内(情報収集対象領域2)の天井部4にはタグリーダ1が固定される。ここで天井部4とは、室内天井及び天井に隣接した壁面上部
、あるいは壁で囲まれた屋外領域の壁面情報等、RFタグとタグリーダとの更新方向がほぼ鉛直方向となる位置のことである。タグリーダ1は、情報収集対象領域がタグリーダの通信可能領域にほぼ一致するように、天井部4に配置されている火災報知器等の防災設備、空調機、あるいは監視カメラや赤外線センサ、超音波センサ等の各種防犯センサに一体に固定され、これら設備6の設置、交換時に同時に交換される。
【0026】
一方、RFタグ3は、社員証に埋め込まれて社員等に配布される。RFタグ3には、社員番号等のID情報のほかに、例えば喫煙者か否か、聴覚障害があるか否か等の付加情報が記憶される。
【0027】
RFIDには、通信距離の比較的長いUHF、あるいはマイクロ波方式等の電波方式のものが使用できる。以下、マイクロ波を使用した場合について動作を図1(b)のフローチャートを使用して説明する。
【0028】
室内の情報を収集するに際し、先ず、タグリーダ1を起動する。起動したタグリーダ1は、起動後初めてのマイクロ波送信か否かを判断する(ステップS1-1)。過去に既に送信している場合には、直前の送信から所定時間(例えば1分)経過しているかを判断し(S1-2)、経過していない場合には、所定時間が経過するまで待機する(ステップS1-3)。経過している場合には、マイクロ波を送信する(ステップS1-4)。また、ステップS1-1にて初めての送信の場合にはそのまま送信する。
【0029】
社員が検知範囲内に入ると、タグリーダ1から送信された電波によりRFタグ3が起動され(S1-5)、RFタグ3から記憶している識別情報が読み出され(S1-6)、図外の管理センターに向けて送信される(S1-7)。
【0030】
管理センター側では、上記識別情報を受信し、管理センター内に設置されているデータベースに記憶されている室内の在室者リストに検出された社員を登録する(ステップS1-8)。
【0031】
所定の時間間隔でタグリーダ1からマイクロ波を送信し、RFタグ3からの応答を検知することにより、順次在室者リストを更新する。
【0032】
以上のようにして収集した室内情報は、在室者数、在室者名等の一般的な情報把握に加えて、RFタグ3内に種々の属性情報を含ませることによって、より多様な利用が可能になる。例えば、喫煙者属性を管理することによって、最後の喫煙者の退室時に灰皿の始末を促すメッセージを流したり、あるいは、聴覚障害属性を管理することにより、スピーカ音量を高くすることができる。
あるいは、社員が時間の経過と共にどこに移動したかといった、いわゆる行動履歴を把握することができる為、この情報を元に原価管理を行うことができる。この場合、各建築物で利用されているRFIDの規格を統一しておくことにより、社員が外出時に様々な建築物間を移動した場合であっても、行動履歴や原価管理を行うことができる。
【0033】
また、以上において、RFタグ3は社員にのみ配布される場合について説明したが、設備6のメンテナンス業者等に、入館証として配布することが可能である。RFタグ3には、配布日、業者コード等が記憶されており、設備6のメンテナンス作業が行われると、タグリーダ1はRFタグ情報を記憶し、後日管理センターにおいてメンテナンス履歴として活用される。
【0034】
更に、独居老人の着衣等にRFタグを埋め込み、一般家庭や老人ホームにおける独居老人の行動履歴から安否を確認したり、あるいは物品にRFタグを取り付けることにより個人の貴重品や会社備品の所在を管理し、置き忘れを防止することもできる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態において、天井部4には、相互に通信可能領域が重合するように複数のRFタグ3、3・・・が固定される。図2において、各RFタグ3は有線、あるいは無線のLAN(データ配信ネットワーク5)により管理センター7に接続されている。RFタグ3は、管理センター7から配信される配信データにより記憶部を書き替え可能に形成される。
【0036】
図2は火災時における誘導システムとして機能させる場合を例示するもので、4個の部屋8と廊下9が示され、RFタグ3は、廊下9と各室内8の天井部4に配置される。いま、火災が図2のX方向の領域で発生したとすると、先ず、管理センター7は、各RFタグ3に対して避難経路を示すデータを配信し、RFタグ3に格納する。
【0037】
各RFタグ3には、図2において鎖線で示す通信可能領域内に避難者10が進入してきた場合の避難経路が格納されることになり、例えば、RFタグ3(A)には、廊下を出た後、左側(矢印a方向)に進むメッセージが記憶される。
【0038】
一方、避難者10は、タグリーダ1を保持しており、RFタグ3の指示に従って安全に避難することができる。この場合、タグリーダ1にRFタグ3からの指示を音声化する装置を組み込むこともできる。また、RFタグ3には、タグリーダ1を保持した消火担当者に対する指示等を記憶させることができる。
【0039】
また、RFタグ3に、例えばデパート等の売り場におけるタイムサービスの内容や商品の陳列に関する指示等を配信・記憶させ、タグリーダを保持した売り場担当者がRFタグ情報を読み出し、これに従って作業を行うようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を示す図で、(a)は室内の状態を示す説明図、(b)は在室管理のフローチャートである。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 タグリーダ
2 情報収集対象領域
3 RFタグ
4 天井部
5 データ配信ネットワーク
6 設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に配置されたタグリーダによりRFタグ情報を読み取り、建築物内に設定された情報収集対象領域内の情報を収集する情報収集システムであって、
前記タグリーダとRFタグのいずれか一方が建築物の天井部に固定されることを特徴とする情報収集システム。
【請求項2】
建築物に固定されたタグリーダによりRFタグ情報を読み取り、建築物内に設定された情報収集対象領域内の情報を収集する情報収集システムであって、
前記タグリーダは、情報収集対象領域がタグリーダの通信可能領域がほぼ一致するように建築物天井部に固定され、
情報収集対象領域内に保持されているRFタグ情報を適宜のタイミングで読み取ることを特徴とする情報収集システム。
【請求項3】
前記天井部には、情報収集対象領域が各タグリーダの通信可能領域から構成される領域にほぼ一致するよう複数のタグリーダが固定され、
RFタグ情報を受信したタグリーダの通信可能領域から情報収集対象の位置を特定することを特徴とする請求項2記載の情報収集システム。
【請求項4】
前記RFタグ情報は、RFタグを保持する人または物を識別可能な情報であり、前記情報を元にその所在情報を収集することを特徴とする請求項2または請求項3記載の情報収集システム。
【請求項5】
タグリーダにより建築物に固定されたRFタグに記憶された情報を読み取り、建築物内に設定された情報収集対象領域内の情報を収集する情報収集システムであって、
前記RFタグは、情報収集対象領域が各RFタグの通信可能領域から構成される領域にほぼ一致するよう建築物天井部に複数固定され、
各RFタグには、情報収集対象領域に関連した属性情報が記憶されていることを特徴とする情報収集システム。
【請求項6】
前記属性情報は、避難経路情報、売り場店員への指示情報のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の情報収集システム。
【請求項7】
前記RFタグはデータ配信ネットワークに接続され、RFタグにデータを配信することが可能であることを特徴とする請求項5記載の情報収集システム。
【請求項8】
前記タグリーダまたはRFタグは、天井部に設置される保守対象設備に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7記載の情報収集システム。

【図1】
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【図2】
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