説明

情報担持片、機械読取方法及び復号方法並びに記録媒体

【課題】 貴重印刷物等に付与された偽造防止要素を、機械によって読み取ったパターンにエラーが発生した場合においても正しい情報を得ることができる情報担持片及び復号方法並びに記録媒体を提供する。
【解決手段】 二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片であって、前述のセルは、情報担持片の長辺方向に沿って、a個で1パターンを形成して繰り返され、少なくともb個(bはaの倍数)配置され、パターンは、情報を表現するための符号化されたデータであり、a個で形成されるパターンの二元系列から成る符号長及び符号語の第一の符号は二元から成る長さa個の系列すべての集合から最小片方向巡回ハミング距離又は最小双方向巡回ハミング距離がc(cは0以上の整数)となる部分集合を選択することで、(bc/a-1)/2を超えない最大の整数個のセルの誤り訂正が可能と成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報担持片、機械読取方法及び復号方法並びに記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、有価証券類、その他の価値ある物品等の貴重印刷物については、偽造や改ざんを防ぐために、様々な偽造防止技術が開発されている。これらの偽造防止技術を貴重印刷物に付与する方法として、印刷によって付与する方法や紙等のベースとなる基材を製造する際に付与する方法等、様々な方法で付与されている。
【0003】
中でも、あらかじめ印刷等を施したロール状の基材を用意し、その一部を紙やフィルム等のベースとなる基材に付与することで、そのベースとなる基材に直接印刷しても得ることができないような偽造防止技術を付与することが可能となる方法がある。また、磁性材料、蛍光材料、光沢材料等の偽造防止効果のある材料をロール状の基材に付与することで、更に偽造が困難な効果を達成させることが可能となる。具体例としては、用紙にセキュリティスレッドを挿入又は貼付したセキュリティスレッド用紙、ストライプ状のホログラムを貼付した用紙、多層抄き合わせ紙における複数層の間に積層する機能層等が挙げられる。
【0004】
これら偽造防止効果を有する材料を付与したロール状の基材を用紙等に付与する際に、ロール状基材の長手方向に偽造防止効果のある材料等で、任意の模様を連続的に付与する方法がある。その際に、用紙上に付与されたロール状の基材上に現れる任意の模様が、すべての用紙について同じになるように管理する必要がある場合があるが、一般にそのように管理するのは製造上、非常に困難なものとなる。そのため、通常は、任意の模様が現れる位置については制御しないため、付与された任意の模様が用紙ごとに異なる場合が多い。
【0005】
ところで、今日、貴重印刷物は、機械によって処理されることが多くなり、機械読取要素が非常に重要になっている。その一方で、貴重印刷物という性質から、機械が偽物を本物として受理することがないように、機械読取要素も偽造防止技術であることが望ましい。さらに、機械読取結果が本物又は偽物というだけでなく、例えば、銀行券の場合、どの券種の銀行券であるか、どこの国の銀行券であるかという情報や発行製造者側にとって流通後の管理に役立てるために、発行時期、発行場所、製造時期、製造工場、製造機械等の情報を付与できることが望ましい。
【0006】
印刷物に情報を付与することができる技術として代表的なものは、バーコード等が挙げられるが、前述したような偽造防止の観点や、例えば、銀行券に印刷する場合、券面への付与領域の確保等、困難な点が多いという問題があった。
【0007】
そこで、上記ロール状の基材に偽造防止効果を有する材料で付与した模様を利用して情報を付与しようとする場合について考えると、前述したように、用紙ごとに模様が同じになっていない場合があることから、バーコードのように情報を担持させるのは困難である。そのため、情報パターンの形態として、情報を表すパターンの前後に、その情報を表すパターンの始まりと終わりを表すパターンを有するようにして、その情報パターンが少なくとも一つ断裁されていない状態で用紙上に存在するようにした方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表平3−504294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、セキュリティスレッドのように、機能性を有するロール状基材をシートに付与する際の製造の実態を把握することができるが、この特許の明細書に記載されている実施例の場合で計算すると、符号長が34に対して符号語数が409個となり、効率的な方法とはいえない。
【0009】
そこで、本発明者は、スレッド等に付与したパターンがずれていても正しい情報が読み取れるように、いかなるずれに対しても、互いに異なるパターンだけを抽出し、スレッド等に付与する方法を提案した(特開2008−77470号)が、機械で読み取ったパターンにエラーが発生した場合、正しい情報を得ることができないだけでなく、誤り検出や誤り訂正の機能についても考慮していなかった。
【0010】
本発明は、前述の従来の問題点を解決するためになされたもので、シートに情報を担持させるために、ロール状の基材にあらかじめ定められた情報を機械読取可能な任意の長さのパターンとして連続的に繰り返し配置されているロール状基材(以下「情報担持ロール」という。)を提供し、前述の情報担持ロールからシート上に情報担持ロールの一部(以下「情報担持片」という。)を付与する際の製造工程の管理を容易にし、更に、情報担時片が付与されているシート(以下「情報担持シート」という。)から情報担持片上の情報パターンを抽出する方法等を提供するものである。
【0011】
さらに、貴重印刷物等に付与された情報担持片上の偽造の防止要素を、機械によって読み取り、読み取ったパターンにエラーが発生した場合においても正しい情報を得ることができ、また、例えば、セキュリティスレッドに磁性を用いてパターンを付与し、当該セキュリティスレッドを銀行券に付与した場合においても、セキュリティスレッドのパターンを正しく読み取ることができる情報担持片、機械読取方法及び復号方法並びに記録媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明の情報担持片は、二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片であって、前記セルは、前記情報担持片の長辺方向に沿って、a個で1パターンを形成して繰り返され、少なくともb個(bはaの倍数)配置され、前記パターンは情報を表現するための符号化されたデータであり、前記a個で形成されるパターンの二元系列から成る符号長及び符号語の第一の符号は二元から成る長さa個の系列すべての集合から最小片方向巡回ハミング距離又は最小双方向巡回ハミング距離がc(cは0以上の整数)となる部分集合を選択することで、(bc/a-1)/2を超えない最大の整数個のセルの誤り訂正が可能となることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の本発明の情報担持片は、前記パターンは、機能性材料の印刷、塗布、貼付又は金属蒸着によって構成されている。
【0014】
請求項3記載の本発明の情報担持シートは、請求項1又は2に記載の情報担持片が、シート状基材の表面に付与又は内部に挿入されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4記載の本発明の情報担持片の機械読取方法は、二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片の機械読取方法であって、
前記情報担持片上のセル1個の幅g、前記情報担持片の長さk、長さk当たりのセルのサンプリング数hの信号を取り込み、サンプリング間隔はk/hとなる第一の信号のタイミング処理として、あらかじめ1波長分を2gh/k個の点で構成した矩形波であって位相をk/hずつずらしたgh/k個の矩形波を設定し、前記第一の信号を機械読取するステップと、
前記gh/k個の矩形波と前記第一の信号との相互相関を計算により得るステップと、
前記得られた相互相関の絶対値が最も大きくなる矩形波を求めて第二の信号とするステップと、
前記第二の信号の矩形波の半波長の中心位置と前記第一の信号との同じ位置において、任意に設定した閾値より大きい場合に1、小さい場合に0として二元系列を得るステップとを含むことを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の本発明の復号方法は、二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片であり、前記セルは、前記情報担持片の長辺方向に沿って、a個で一パターンを形成して繰り返され、少なくともb個(bはaの倍数)配置された前記情報担持片から機械読取して得られた二元系列の復号方法であって、
前記a個のセルで形成されるパターンが表す符号語が含まれる第一の符号のすべての符号語と該符号語の信頼度とから成る復号テーブルを生成するステップと、
前記生成された復号テーブルの信頼度を0とするステップと、
前記二元系列をb/a個に等分割してb/a個の分割語を生成するステップと、
前記分割語それぞれについて、前記第一の符号の符号語を求めて候補語とするステップと、
前記分割語と前記候補語との片方向巡回ハミング距離又は双方向巡回ハミング距離を求めるステップと、
前記復号テーブルから前記候補語と同じ符号語の信頼度に、前記第一の符号の最小片方向巡回ハミング距離又は最小双方向巡回ハミング距離を加えて、更に前記片方向巡回ハミング距離又は双方向巡回ハミング距離を2倍した値を差し引くステップと、
前記復号テーブルで最も大きい信頼度をもつ前記第一の符号の符号語を前記情報担持片に付与されていた第一の符号の符号語とするステップとから成ることを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の本発明の記録媒体は、請求項5記載の方法に従って、コンピュータに処理を実行させるためのプログラムをコンピュータ可読の形態で記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貴重印刷物等に付与された情報担持片上の偽造防止要素のパターンを機械によって読み取り、その読み取ったパターンにエラーが発生した場合においても、正しい情報を得ることができる。また、例えば、銀行券等に付与したセキュリティスレッドに磁性を用いてパターンを付与した場合に、そのパターンの読み取りに対して、銀行券の印刷に用いられた磁性インキが影響するとしても、付与したセキュリティスレッドのパターンを正しく読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の情報担持片、機械読取方法及び復号方法並びに記録媒体にかかわる実施の形態において、情報担持片を付与して形成されるシート状基材には、紙、プラスチック又は薄層状物が用いられる。
また、情報担持片は、一般に公知の技術によってシート状基材に組み入れられ、シート状基材の短辺方向又は長辺方向を横切って、また、シート状基材のどこにでも組み入れられるが、本実施の形態では、短辺方向に組み入れる形態で説明する。
組み入れる方法としては、シート状基材の紙層中に抄き込むスレッドの形態と表面に貼付する形態があり、貼付の形態としては、シール方式、スレッド方式、熱転写方式等の方式を用いる。
スレッドの形態としては、テープ状のものとして、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム等があり、プラスチックの片面又は両面にアルミニウム等を蒸着したもの、染料でフィルムや蒸着層を着色したもの、表面に文字や図柄等を印刷したもの等でスレッドに特別な情報を付加させて、細幅にスリットして製造したものを用いる。このように製造したスレッドを、シート状基材の表面から露出しないように、又は一部が表面から露出するように抄き込むか、又はシート状基材の表面に貼付するものである。
符号語とは、一般に情報源記号の系列に対し、新しい別の記号の系列をいう。情報源記号と符号語とを1対1に割り当てることを符号化といい、符号語の集合を符号という。
二元符号とは、0と1のように、二種類のみの記号を有する符号をいう。
ハミング距離とは、二元符号の二つの系列の間で互いに記号が異なっている場所の総数を二つの系列の間のハミング距離という。また、符号である以上復号ができるものでなければならない。そこで、復号方法とは、符号系列を再び元の情報源記号の系列に戻す方法をいう。
信頼度(reliability)とは、復号結果の“確からしさ”を表す量である。
【0020】
本発明者は、先に、例えば、セキュリティスレッドのような機能性を有するロール状基材をシートに付与する際に、前述の従来技術よりも更に効率的に、用紙に付与するセキュリティスレッドや用紙に貼付するストライプ状ホログラム等のように、機械読取可能な、機能性を有する材料で情報を付与したロール状の基材をシートに付与することで機械読取要素とし、セルと呼ぶ機械読取可能な二状態以上取り得る領域を組み合わせたパターンを有するロール状の基材をシートに付与することで情報を担持させる方法を提案した(特開2008−77470号)。
【0021】
この提案の内容は、具体的には、情報の量を多くするために、ポーリアの数え上げに関する定理を用いて、巡回同値類の総数分の情報の量を付与することができるようにした方法である。
ここで、巡回同値類について説明する(“符号理論”、宮川、岩垂、今井 昭晃堂(1973))。
長さnの系列a=(a1a2…an)に対して、巡回置換a(k)を、a(k)=(ak+1…ana1…ak)(1≦k≦n-1)とする。このとき、aとその巡回置換a(1),a(2),…,a(n-1)のうち異なるものすべての集合を巡回同値類と呼ぶ。
例えば、長さ4の二元系列について説明すると、系列0001は巡回置換すると0010,0100,1000となり、0001が属する巡回同値類は、{0001,0010,0100,1000}である。そして、長さ4の二元系列のすべての巡回同値類は、{0000}、{1111},{0101,1010}、{0001,0010,0100,1000}、{0011,0110,1100,1001}、{0111,1110,1101,1011}の六つとなる。
このように、長さnの系列を巡回置換し、長さnの二元系列のすべての巡回同値類の総数を求め、その総数分を情報として付与する方法を、本発明の実施の形態において、「方法A」という。
【0022】
前述の提案では、機械によって読み取ったパターンにエラーが発生した場合に、正しい情報を読み取ることまでは考慮していなかった。そこで、本発明においては、上記の問題点を解決するために、更に研究を重ねた結果、符号化における信頼性が向上し、かつ、読み取りの誤り率を減少させるための情報担持片及び復号方法を提案するものである。
つまり、発生する誤りは、ある数t以下であると仮定し、この仮定の元で、あるパターンの生成方法(符号化方法)に基づいたパターンに対して、前述のある数t以下のいかなる誤りが生じても元のパターンに変換できる方法(復号方法)を提案するものである。
【0023】
従来、前述のセキュリティスレッドやストライプ状ホログラムといった偽造防止技術を付与した基材に対して、機械読取によって情報を読み出すことができるようにするために、基材に対して情報を担持させる方法自体の考え方が少ない上に、担持させた情報を読み取る際の誤り率を減少させて信頼性を向上させるという考え方も見当たらない。
【0024】
一方、情報通信又は情報記録媒体を通じた情報伝達の効率化や高信頼化について、情報理論や符号理論の分野において様々な研究が提案されている。しかし、インターネット、携帯電話等のディジタル情報通信や、CD、DVD、ハードディスク、メモリ等の情報記録媒体をターゲットにしての研究がメインであり、各種偽造防止技術を付与した基材に適した符号化の研究はなされていない。
【0025】
研究環境が類似するものとしては、同期用符号がある(符号理論(著者:宮川、岩垂、今井、発行所:昭晃堂))。これは、受信系列から符号語の同期ずれを起こしても、送信者が送ろうとした情報を得ることができるような符号であり、時系列的に様々な情報が送信される。これに対して、同期がずれるという点では、本発明を適用する情報担持シートに付与した情報担持片が類似しているが、本発明では、一つの情報担持ロールから得られる情報担持シートに付与した情報担持片それぞれは、同じ情報が付与されるのであって、同期用符号を情報担持シートに付与した情報担持片に適用するのは効率的とはいえない。具体的には、同期用符号の場合には、すべての巡回同値類のうち一部しか符号語となりえないが、情報担持ロールに対しては、すべての巡回同値類を符号語として採用することが可能であり、想定環境を精査することで効率的な符号化を行うことが可能となる。
【0026】
しかしながら、符号理論の概念は、有用である。符号語間の距離という概念は、元の正しい符号語に訂正することや誤り検出についても利用することができる。2進数で表現するコンピュータが扱う符号語間の距離も、2進数の符号語が誤るということは、符号を構成する各ビットの値が0ならば1、1ならば0に変化することを意味する。
【0027】
本発明の実施の形態においては、高信頼化を狙うために誤り率を減少させる方法として、符号の最小距離という考え方を活用している。符号の最小距離とは、符号に含まれる二つの異なる符号語の距離のうち最小値となるものをいう。この距離としてよく利用されるのがハミング距離である。系列aの各ビットをa、a、・・・an−1、a、系列bの各ビットをb、b、・・・bn−1、bとする。a、bは、系列a、bのそれぞれiビット目の値で、0か1である。このとき、系列a、b間の距離dHを、dH=Σni=1?ai−bi?とし、この距離dHがハミング距離である。
【0028】
ハミング距離は、二つの系列の対応する位置にある成分のうち、互いに異なるものの数を表しており、一方の系列を送信語、もう一方の系列を受信語と考えると、それらのハミング距離が誤りの発生した個数を表している。
例として、000と111の二つの符号語を有する符号について説明する。この符号の最小距離は3である。このとき、010が受信されたとき、000と010のハミング距離は1であり、111と010のハミング距離は2である。この通信路において、誤りの発生は、一つの符号語に対して1ビット以下であるという仮定があれば、000が送信され1ビットの誤りが生じて010を受信したと推測することができる(111を送信して010を受信するには2ビットの誤りが発生しなければならず、仮定と反する。)。
このようにして、最小距離が3の符号は、1ビット以下の誤りを訂正することが可能となる。
【0029】
一般に、符号の最小距離の半分未満の誤りである場合、互いの領域を区別することができ、最も近い符号語が判明し、訂正することができる。この最小距離は、符号の誤り訂正能力を示す値となる。
【0030】
しかし、本発明の実施の形態においては、用紙ごとに模様が同じにならない情報担持シートを対象としており、上述のハミング距離及び最小距離をそのまま適用することはできない。
【0031】
本発明の実施の形態で用いる誤り訂正可能な方法については、上述したハミング距離の概念を用いた巡回ハミング距離というものを用いるものであり、さらに、元の正しい符号に訂正する方法を提案するものである。
【0032】
初めに、巡回を一方向だけにシフトするやり方を、片方向巡回ハミング距離dOCH(U,V)と呼び、以下のように定義する。
dOCH(U,V)=min(dH(U,V),dH(U,V(1)),dH(U,V(2)),…,dH(U,V(n-1)))
ただし、1≦k≦n-1における巡回置換V(k)は、V(k)=vk+1…vnv1…vkを表し、dH(U,V)は、ハミング距離を表す。
【0033】
さらに、符号の任意の二つの異なる符号語間の片方向巡回ハミング距離を、その符号の最小片方向巡回ハミング距離と呼ぶことにする。最小片方向巡回ハミング距離がxの符号は、(x-1)/2を超えない最大の整数個のランダムな誤りを訂正することができる。その符号に含まれる各々の符号語をn個並べた構成を有する符号(以下「第二の符号」という。)については、最小片方向巡回ハミング距離がx×nとなる。したがって、第二の符号は、(x×n-1)/2を超えない最大の整数個のランダムな誤りを訂正することができる。
【0034】
以下に、本発明のいくつかの実施の形態による情報担持片を付与した情報担持シート、機械読取方法及び復号方法並びに情報記録媒体について、図面を用いて説明する。
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る情報担持片を付与した情報担持シートの概略図を示す。初めに、最小片方向巡回ハミング距離が1、符号長がaの二元の第一の符号を用意する。その方法としては、上述した方法Aを用いる。
巡回同値類の総数分の情報の量を付与することができるようにした方法Aは、ポーリアの数え上げに関する定理を用いている(組合せ数学入門I(著者:C.L.リウ、発行所:共立出版株式会社))。この定理から、巡回同値類の総数を得ることができるので情報の量を知ることができ、さらに、重みと呼ばれる系列の1の成分の総数ごとの巡回同値類の数を求めることができるので、各情報に対応する符号語の重みを求めることができ、効率的に符号化することができる。
この第一の符号から得られる符号語の系列が機械読取によって得られるように、機械読取可能な二つのいずれかの状態(0又は1)となり得るa個のセルから成るパターンが連続する情報担持ロールを用意する。
【0035】
図2は、情報担持ロールを示す図であり、a個のセルから成るパターンが連続する同じ模様が印刷されている。セルを構成するために、磁性材料、蛍光材料又は光沢材料といった特殊な材料等を用いることが可能である。
【0036】
この情報担持ロールをシートに貼付したり、又はシート製造中にシート中に埋め込んだりすることで情報担持シートを製造する。
図3は、情報担持ロールを貼付したロール状の情報担持シートと当該ロール状の情報担持シートを断裁して枚葉シートとしたものである。枚葉状態のシートに情報担持ロールを貼付して、シートの幅に合わせて情報担持ロールを断裁するという製造方法もある。情報担持シート上の情報担持片にはb個のセルが存在するようにする。つまり、b/a個相当の模様又はパターンが存在する。
【0037】
このようにすることで、最大で(b/a-1)/2を超えない整数個に相当するセルの読み取りの誤りが発生したとしても、情報担持シート上に貼付された情報担持片に付与されていたパターンがどれであったのかを特定することが可能である。
例えば、符号長が3で最小片方向巡回ハミング距離が1の符号の符号語を3個のセルから構成したパターンが連続して印刷されている情報担持ロールで、この情報担持ロールを情報担持シート上に貼付した情報担持片に87個のセルが存在していたとすると、情報担持片には87/3=29個のパターンがあることになり、最大で(87/3-1)/2=14個の誤りが訂正できることになる。
【0038】
本発明の第2の実施の形態に係る情報担持片が貼付された情報担持シートについて、はじめに最小片方向巡回ハミング距離が1より大きい値のc、符号長がaの二元の第一の符号を用意する。その方法としては、一般的にはテーブルルックアップ法と呼ばれている方法を用いるもので、総当り的に系列の片方向巡回ハミング距離を求めて最終的にどの二つの要素の片方向巡回ハミング距離がc以上となる集合であるかを求める方法である。
【0039】
テーブルルックアップ法は、一度テーブルを作成すると、そのテーブルを検索するだけで、片方向巡回ハミング距離の探索を行うことができるため検索時間が短くなる。
【0040】
第一の符号の符号長がある程度短い場合は、このテーブルルックアップ法が現実的な計算量で求めることが可能である。第1の実施の形態と同様にして、情報担持片にb個のセルが存在する情報担持シートを作製する。第2の実施の形態の場合、最小片方向巡回ハミング距離がcであるので、最大で(bc/a-1)/2を超えない整数個に相当するセルの読み取りの誤りが発生したとしても、情報担持シート上の情報担持片に付与されていたパターンがどれであったのかを特定することが可能である。
例えば、3個のセルから成るパターン(符号長が3)が連続して印刷されている情報担持ロールで、情報担持シート上に貼付された情報担持片には87個のセルが存在していたとすると、最小片方向巡回ハミング距離が1より大きい値であるので、例えば3とすると、情報担持片には87/3=29個のパターンがあることになり、最大で(87×3/3-1)/2=43個の誤りを訂正することができることになる。
【0041】
次に、読取方向を限定しない情報担持片が貼付された情報担持シートの実施の形態を説明する。
上述した巡回ハミング距離において、巡回を両方向にシフトするやり方を、双方向巡回ハミング距離と呼ぶ。
上述した第1及び第2の実施の形態に係る情報担持シート上の情報担持片から情報を読み取る場合に、片方向巡回ハミング距離に基づいた場合は、読取方向を誤って読むと別の符号語となる可能性があった。そのような誤った読み取りをしないために、符号語の前後を示す何らかの情報を持たせておく必要がある。
【0042】
例えば、図4に示すように、情報担持シートに貼付された情報担持片の読取方法として、情報担持シートの上部方向からの読み取りと下部方向からの読み取りの2パターンが考えられる。
上述した第1及び第2の実施の形態による情報担持シートに貼付された情報担持片に付与されている符号語を使用している場合は、情報担持シートの上部方向から読み取っているのか、又は下部方向から読み取っているのかということを読取側で認識することができるようにしなければならない。
読み取りに際して、このような手間を軽減するために、読取方向を限定する必要がない情報担持シートの実施の形態を以下に示す。
【0043】
初めに、二つの二元系列U=u1u2…unとV=v1v2…vnの間の双方向巡回ハミング距離dBCH(U,V)を以下のように定義する。
dBCH(U,V)=min(dH(U,V),dH(U,V(1)),dH(U,V(2)),…,dH(U,V(n-1)),dH(U,V~),dH(U,V(1)~),dH(U,V(2)~),…,dH(U,V(n-1)~))
ただし、V~は、Vを逆に並べ替えた系列で、V~=vnvn-1…v1であり、V(k)~=vk…v1vn…vk+1を表す。
【0044】
さらに、符号の任意の二つの異なる符号語間の双方向巡回ハミング距離を、その符号の最小双方向巡回ハミング距離と呼ぶことにする。最小双方向巡回ハミング距離がyの符号は、(y-1)/2を超えない数のランダムな誤りを訂正することができる。
【0045】
本発明の第3の実施の形態に係る情報担持片が貼付された情報担持シートについて、初めに、最小双方向巡回ハミング距離が1、符号長がaの二元の第一の符号を用意する。その方法としては、上述した方法Aを用いる。方法Aを用いた第一の符号を用意する方法は、上述した第1の実施の形態と同様である。
情報担持シート上の情報担持片には、機械読取可能な二つのいずれかの状態(0又は1)となり得るセルがb個存在する情報担持シートを作製する。
【0046】
本実施の形態による情報担持片が貼付された情報担持シートは、第1及び第2の実施の形態と異なり、情報担持シートの上部方向及び下部方向のどちらの方向からでも読み取りが可能で、最大で(b/a-1)/2を超えない整数個に相当するセルの読み取りの誤りが発生したとしても、情報担持シートに付与されていたパターンがどれであったのかを特定することが可能である。
【0047】
本発明の第4の実施の形態に係る情報担持シートとして、初めに最小双方向巡回ハミング距離が1より大きい値のc、符号長がaの二元の第一の符号を用意する。第2の実施の形態と同様に、テーブルルックアップ法と呼ばれている方法を用いるものであり、情報担持片にb個のセルが存在する情報担持シートを作製する。
【0048】
本実施の形態による情報担持シートは、第3の実施の形態と同様に、情報担持シートの上部方向又は下部方向のどちらの方向からでも読み取りが可能で、最大で(bc/a-1)/2を超えない整数個に相当するセルの読み取りの誤りが発生したとしても、情報担持シートに貼付された情報担持片に付与されていたパターンがどれであったのかを特定することが可能である。
【0049】
次に、本発明の第5の実施の形態として、第1又は第2の実施の形態に係る情報担持シートに貼付された情報担持片に付与されている符号語の復号方法を示す。ここで復号とは、第一の符号の符号長をaとし、情報担持シートに貼付された情報担持片に存在するb個のセル数から得られる系列から第一の符号の符号語を求めることをいう。
情報担持片に配置されたデータの符号化時に組み込まれたデータは、パターンであり、このパターンは、情報を有し、センサによる読取装置により読み取られる。読取装置は、パターンを記録して情報を復号化するものである。
【0050】
ここで、第1又は第2の実施の形態における第一の符号の最小片方向巡回ハミング距離をdk_minとすると、上述した第1の実施の形態の場合はdk_min=1である。図5に示すように、復号の前処理として、S1において、第一の符号のすべての符号語と、受信系列がどの符号語らしいかを表す信頼度とから成る表を表す復号テーブルを作成する。図6に、復号テーブルの構成図を表す。符号語ciの信頼度がriとなる。情報担持片には、符号長aの第一の符号の符号語がb/a個存在することになる。受信系列を長さaごとに第一の符号の復号を実施して、各復号結果ごとに復号テーブルの該当する符号語の信頼度を加算していく。最終的に信頼度の最も大きな符号語が元々送信されたものであると判断する。
【0051】
図5のS2において、復号テーブルの全信頼度を初期値である0にする。なお、復号処理を何度か繰り返す場合は、S2の信頼度を初期値にする設定を行えばよい。
実際に復号の流れについて説明する前に、情報担持シート上の情報担持片から受信系列を読み取る処理について説明する。
【0052】
図7は、情報担持シート上の情報担持片から受信系列を読み取る処理の流れを表した図である。本実施の形態の情報担持シートに貼付した情報担持片の端部は、セルの一部分が存在している可能性が高いので、セルの位置を特定する必要がある。そのためのタイミング処理として、前処理として受信系列を読み取る側ではあらかじめ位相をずらした複数の矩形波を用意しておく。情報担持片上には、幅gのセルが存在し、情報担持片の長さがk、それをサンプリング数hで読み取る場合は、あらかじめ用意しておく矩形波の数が、gh/kとなる。タイミングを取るために、図7のS100に示すように、始めに、長さkの情報担持片をサンプリング数hで機械読取する。ここで得られた信号を第一の信号と呼ぶ。そして、図7のS101に示すように、前処理としてあらかじめ用意しておいたgh/k個の矩形波それぞれと相互相関を計算する。そして、図7のS102に示すように、相互相関の絶対値が最も大きい矩形波の位相と読み取った第一の信号の位相が同じだと判断するものである。そして、その矩形波の半波長ごとの中心位置と同じ位置にある第一の信号を、閾値を用いて二値化することで受信系列を求めることができる。
【0053】
図8(a)は、情報担持シートに貼付した情報担持片のセルを読み取った信号であり、セルの幅g、情報担持シート上の情報担持片の長さをk、長さk当たりのセルのサンプリング数をhとすると、サンプリング間隔は、k/hである。図8の(b)〜(e)は、位相をk/hずつずらしており、1波長当たり2gh/k個の点で構成したサンプリング間隔がk/hのh点から成る矩形波を表したものである。読み取った信号、図8の(a)と図8の(b)〜(e)のそれぞれの相互相関をとったとき、その絶対値が最も大きい矩形波は、図8の(d)であったとする。
【0054】
次に、図9に示すように、矩形波(d)の半波長の中心位置と(a)の矩形波の同じ信号の位置において、ある閾値より大きい場合には1、小さい場合には0と判断することで、情報担持片から受信系列を読み取ることが可能となる。得られた系列が符号長より長い場合には、得られた系列から連続する符号長分の系列を取り出せばよい。信号の端部は正しくない値である可能性が高いので、好ましくは、中央の連続する系列を取り出したほうがよい。
【0055】
図9で得られた受信系列の復号方法を図10に示す。初めに、S3において、受信系列をb/a個に等分割してb/a個の語を生成する。それらを分割語と呼ぶ。そして、S4において、すべての分割語ごとに行う処理に進む。
【0056】
図11に、S4におけるすべての分割語ごとに行う処理を示す。
初めに、S6において、第一の符号の復号方法を実施して第一の符号の符号語を求める。これは、正しく復号できているとは限らないので、それを候補語と呼ぶ。
用意された第一の符号が上述した方法Aを用いた場合、誤り訂正機能を持っていないので、分割語それ自体が候補語となる。
第一の符号がテーブルルックアップ法を用いた場合、図12に示すように、発生し得る系列を2進数としたときに最小となるように巡回置換した系列と、第一の符号の誤り訂正能力の範囲において、その系列になり得る符号語の対応テーブルを用意しておき、その対応テーブルを参照して候補語を導き出す。
なお、第一の符号の訂正能力の範囲において、分割語となり得る符号語がない場合は、該当する候補語はないものとする。
【0057】
次に、S7において、分割語と候補語との片方向巡回ハミング距離を求める。第一の符号として、テーブルルックアップ法に基づく符号の場合、図13に示すように、上述の対応テーブルに、あらかじめ分割語を2進数としたときに最小となるように巡回置換した系列と候補語の片方向巡回ハミング距離を列挙しておくという方法もある。
【0058】
次に、S8において、図6に示した復号テーブルの符号語から、ここで得られた候補語と同じ系列を探し、その系列の信頼度に、最小片方向巡回ハミング距離を加えて、更にS7で求めた分割語と候補語との片方向巡回ハミング距離を2倍した値を差し引く。
【0059】
ここで、図14に示すように、対応テーブルに、最小片方向巡回ハミング距離dk_minから分割語と候補語の片方向巡回ハミング距離を2倍した値を差し引いた値を用意しておき、S8において該当する候補語の信頼度を更新する際に、信頼度に、対応テーブル内にあらかじめ用意しておいた最小片方向巡回ハミング距離dk_minから分割語と候補語の片方向巡回ハミング距離を2倍した値を差し引いた値を加算するという方法もある。
【0060】
すべての分割語に対して図11の処理を行った後、図10のS5において、図6の復号テーブルの符号語から信頼度が最も大きい第1の符号の符号語を出力する。
【0061】
次に、本発明の第6の実施の形態として、第3又は第4の実施の形態に係る情報担持片に付与されている符号語の復号方法を示す。ここで、第3又は第4の実施の形態における第一の符号の最小双方向巡回ハミング距離をds_minとする。第3の実施の形態の場合は、ds_min=1である。
【0062】
復号の前処理、復号テーブルの構成、受信系列を読み取る処理及び復号方法の処理については、第5の実施の形態と同様であり、図5〜図10に示すとおりである。ただし、図6に示す復号テーブルの符号は、最小双方向巡回ハミング距離ds_minの符号である。
【0063】
本実施の形態において、図10のS4において、すべての分割語ごとに行う処理としては、図15に示すようになる。
初めに、第5の実施の形態と同様、S9において、第一の符号の復号方法を実施して第一の符号の符号語を求める。これは、正しく復号できているとは限らないので、それを候補語と呼ぶ。
【0064】
第一の符号が上述した方法Aを用いた場合、誤り訂正機能を持っていないので、分割語それ自体が候補語となる。
第一の符号がテーブルルックアップ法を用いた場合、第5の実施の形態と同様、図12に示すように、発生し得る系列を2進数としたときに最小となるように巡回置換した系列と、第一の符号の誤り訂正能力の範囲において、その系列になり得る符号語の対応テーブルを用意しておき、その対応テーブルを参照して候補語を導き出す。ただし、図6に示す復号テーブルの符号は、最小双方向巡回ハミング距離ds_minの符号である。
なお、第5の実施の形態と同様、第一の符号の訂正能力の範囲において、分割語となり得る符号語がない場合は、該当する候補語はないものとする。
【0065】
次に、S10において、分割語と候補語との双方向巡回ハミング距離を求める。第一の符号として、テーブルルックアップ法に基づく符号の場合、上記の対応テーブルに、あらかじめ分割語と候補語の双方向巡回ハミング距離を列挙しておくという方法もある。
【0066】
次に、S11において、図6に示す復号テーブルの符号語から、ここで得られた候補語と同じ系列を探し、その系列の信頼度に、最小双方向巡回ハミング距離を加えて、更にS10で求めた分割語と候補語との双方向巡回ハミング距離を2倍した値を差し引く。
【0067】
上記した第5及び第6の実施の形態では、いずれも復号方法について説明した。これらの復号方法の処理に係るプログラムを作成し、実行することは可能である。本発明において、かかるコンピュータプログラムをもその範疇とするのは明らかである。また、通常、コンピュータプログラムは、CD−ROM等のコンピュータ可読記憶媒体をそのコンピュータにセットし、システムにコピー又はインストールすることで実行可能になるわけであるから、当然、そのようなコンピュータ可読記憶媒体も本発明の範疇に含まれる。また、ダウンロード可能なネットワークシステムに適用することも可能である。
【0068】
(実施例1)
上記第1の実施の形態における実施例1として、二元系列から成る符号長4及び符号語数4の第一の符号として、“0001”、“0011”、“0101”、“0111”を用意する。長さ4の二元系列の巡回同値類は、六つ存在し、上述した方法Aを用いることで、{0000,0001,0011,0101,0111,1111}の六つの符号語から成る符号を求めることができる。そこから“0000”,“1111”を間引くことによって得られる符号である。どの二つの符号語の片方向巡回ハミング距離をとっても1以上であることから、この第一の符号の最小片方向巡回ハミング距離は、1である。
【0069】
上記第1の符号“0001”、“0011”、“0101”、“0111”を、ストライプ状のホログラム基材に対して付与することで、4種類のパターンのホログラム基材を製造することができる。例えば、ホログラム基材に付与された4種類のパターンそれぞれを、4券種の銀行券に対応付けることが可能である。
【0070】
図16は、ホログラム基材へのパターンの付与方法を示す概略図であり、一例として、Nd:YVO4レーザ(1.06μm)を用いる場合である。Nd:YVO4レーザ(1.06μm)により、ホログラム基材から金属蒸着部分のみを除去することで、例えば、“0”は金属蒸着部分なし、“1”は金属蒸着部分あり、とすると、一つの符号語である“0001”のパターンを付与する際には、“0”の文字ならば金属蒸着部分なし、“1”の文字ならば金属蒸着1mm分ありとなり、“0001”のパターンは、金属蒸着あり部分1mmと金属蒸着なし部分3mmとで構成されるストライプホログラムが得られるようになる。
【0071】
図17は、上記符号語“0001”が18個並んだパターンを示したもので、黒の部分は金属蒸着が存在する部分、灰色の部分は金属蒸着が存在しない部分を表す。
上記ストライプホログラムを、図18に示すようなホットスタンピングにより、幅76mmの用紙に貼付することによって、ストライプホログラムが貼付されたシートを製造する。
【0072】
図19は、上記のようにして得られた、符号語“0001”のパターンが18個付与されたストライプホログラムが貼付されたシートの外観を示す図である。
同様にして、第一の符号の符号語“0011”、“0101”、“0111”のパターンをホログラム基材に付与し、用紙に貼付して、ストライプホログラムを貼付したシートを製造する。図20は符号語“0011”のパターンを、図21は符号語“0101”のパターンを、図22は、符号語“0111”のパターンを付与したストライプホログラムが貼付されたシートの外観図である。
【0073】
第一の符号の符号語“0001”が、ストライプホログラム上に18個並んだパターンの全長は幅が72mmとなり、幅76mmの用紙に付与されたストライプホログラムの幅72mm相当のセルの系列として読み取ることができる。これは、符号長72及び符号語数4である。
そして、第二の符号は、第一の符号の最小片方向巡回ハミング距離が1で、それが18個連なっているので、最小片方向巡回ハミング距離は18となる。したがって、(18-1/2)を超えない最大の整数個である8個の文字のランダムな誤りを訂正することができる第二の符号とみなすことができる。
【0074】
なお、実施例1の第一の符号は最小片方向巡回ハミング距離が1であるが、最小双方向巡回ハミング距離としてみても1であり、第二の符号としてみると最小双方向巡回ハミング距離が18である第3の実施の形態の実施例でもある。
【0075】
(実施例2)
上記第2の実施の形態における実施例2として、二元系列から成る符号長8及び符号語数4の第一の符号として、“00000001”、“00100111”、“01010101”、“00011111”を用意する。これらの符号は、テーブルルックアップ法と呼ばれている方法で、総当たり的に系列の片方向巡回ハミング距離が3以上となる系列のみの集合を選び出すことによって得ることができる。
【0076】
実施例1と同様、ストライプ状のホログラム基材に対して、上記の第一の符号を付与することで、4種類のパターンのホログラム基材を製造することができる。また、4種類のパターンそれぞれを4券種の銀行券に対応付けることが可能である。
ホログラム基材への付与方法は、実施例1と同様に、Nd:YVO4レーザ(1.06μm)を用いて、ホログラム基材から金属蒸着部分のみを除去する。そこで、一つの符号語である“00000001”のパターンを付与する際には、例えば、“0”の文字ならば金属蒸着1mm分なし、“1”の文字ならば金属蒸着1mm分あり、とする。
【0077】
実施例1と同様に、上記符号語“00000001”を付与して作製したストライプホログラムを、ホットスタンピングにより、幅76mmの用紙に貼付することによって、ストライプホログラムが貼付されたシートを製造する。
第一の符号の符号語“00000001”が、ストライプホログラム上に9個並んだパターンの全長は幅が72mmとなり、幅76mmの用紙に付与されたストライプホログラムの幅72mm相当のセルの系列として読み取ることができる。これは、符号長72及び符号語数4である。
テーブルルックアップ法で求めた最小片方向巡回ハミング距離27、したがって(27−1/2)を超えない数13個の文字のランダムな誤りを訂正できる第2の符号とみなすことができる。
【0078】
なお、この実施例2の第一の符号は、最小片方向巡回ハミング距離が3であるが、最小双方向巡回ハミング距離としてみても3であり、第二の符号としてみると最小双方向巡回ハミング距離が27である第4の実施の形態の実施例でもある。
【0079】
(実施例3) 第5及び第6の実施の形態に係る復号方法の実施例を示す。
はじめに復号テーブルを作成する。本実施例では、上記実施例1の情報担持シートに貼付された情報担持片の符号の復号の手順を示す。
図23は、復号テーブルを示すものである。符号語“0001”、“0011”、“0101”、“0111”に対し、信頼度は、それぞれ0に設定している。金属蒸着部は、用紙に比べて光の遮光性が高いことから、上記実施例1の用紙からストライプホログラムのパターンの読み取りには、透過光による読み取りが適している。
図24は、図18に示すホットスタンピングで付与した“0001”のパターン部分を透過光スキャナで76.2dpi相当(1mm辺り3ドット)で読み取った信号の一部を示したものである。“0”の文字が金属蒸着1mm分なし、“1”の文字が金属蒸着1mm分あり、としているので、“0001”は、金属蒸着なし部分3mm、金属蒸着部分1mmとなるので、“0001”のパターンを透過光スキャナで読み取ると、金属蒸着部分は透過しないので信号は高く、金属蒸着のない部分は透過するので低い信号となる。
【0080】
図25は、図24の信号のセルの位置を特定するために、それぞれ位相をずらした矩形波の一部を示したものである。図24と図25(a)、図24と図25(b)、図24と図25(c)のそれぞれの相互相関の値は、0.23、-0.28、-0.57となり、図24と図25(c)の相互相関の絶対値が最も大きくなる。そこで、図26に示すように、図25(c)の矩形波の1又は0が連続する3点の中央の点が左から数えて3番目、6番目、9番目、…となっているので、それと同じ図24の信号の値が、ある閾値より大きいか小さいかで1又は0と判断することにより、図24の信号の値が“0100010001”と判断することができる。
【0081】
上記の処理を、図19に示す、符号語“0001”のパターンを付与したストライプホログラムが貼付されたシートのストライプホログラムの幅全体にすることによって、76文字前後の二元系列を得ることができる。得られた二元系列の前、後又は前後の系列を間引いて、連続する72文字の系列を得る。それが、ストライプホログラムが貼付されたシートから得られる受信系列である。
【0082】
以下では、本実施の形態の誤り訂正能力を示すために、あるストライプホログラムから、受信系列“011001100110011001100110011001100010001000100010001000100010001000100010”が得られた場合の復号方法について示す。
【0083】
図10のS3の処理で、上記受信系列を18個に等分割し、18個の各分割語それぞれについて、図11に示す処理を行う。例えば、最初の分割語“0110”について、この系列を、2進数とみなしたときに最小となるように巡回置換すると、“0011”となり、図11のS6の処理で分割語“0011”と同じ第一の符号語が存在するので候補語は“0011”となり、図11のS7の処理で分割語と候補語の片方向巡回ハミング距離は0となる。そこで、図27に示すように、第一の符号の最小片方向巡回ハミング距離が1なので1(1−2×0=1)を、図11のS8の処理で復号テーブルの“0011”の信頼度に加算する。
【0084】
このような処理をすべての分割語について行った後の復号テーブルを図28に示す。“0001”の信頼度が最も大きいので、“0001”が元の第一の符号の符号語であると判断する。
【0085】
(実施例4)
第5及び第6の実施の形態に係る別の復号方法の実施例として、上記実施例2の符号の復号の手順を示す。
図29は、復号テーブルを示すものである。
以下では、本実施の形態の誤り訂正能力を示すために、あるストライプホログラムから、受信系列“000100100100001001000010011000100001001001110010011100100100001001100000”が得られた場合の復号方法について示す。
【0086】
図10のS3の処理で、上記受信系列を9個に等分割して、各分割語それぞれについて、図11に示す処理を行う。
最初の分割語“00010010”について、この系列を、2進数とみなしたときに最小となるように巡回置換すると、図30に示す対応テーブルの“00001001”と一致し、これは、候補語“00000001”で、分割語“00010010”と候補語“00000001”の片方向巡回ハミング距離が1であることから、最小片方向巡回ハミング距離3から2×1を引いた値を、図29の復号テーブルの“00000001”に対応する信頼度に加算する。この処理をすべての分割語に対して行った後の復号テーブルを、図31に示す。
“00100111”の信頼度が最も大きいので、“00100111”が元の第一の符号の符号語であると判断する。
【0087】
本発明の実施の形態によれば、図32に示すような、情報担持ロール上に、機械読取に影響するような印刷が一部に施されていても、正しく復号することが可能となる。
【0088】
図33は、図22に示すような白と黒のバーコートではなく、文字を模様にもつ符号語パターンを付与した情報担持シートの一例であるが、このような形状のものでも正しく復号することが可能である。
【0089】
(実施例5)
複数のセルから成るパターンが連続して印刷されている情報担持ロールのセルを構成するために、磁性材料、蛍光材料、光沢材料等といった機能性材料を用いることが可能である。本実施例では、機能性材料として、紫外線励起蛍光材料であるBaSi:Pb、SrB:Eu、Ca(PO:Tlを適用する。セルのパターンの“1”に当たるところに、BaSi:Pbを含むインキが付与され、“0”にはそれが付与されていないようにしてパターンを印刷して情報担持片を作成した。読み取りの際には、紫外線を照射することによって、蛍光色に発光したパターンが出現するので、その画像から上述の機械読取方法と復号方法によって、情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施の形態による情報担持シートを示す図である。
【図2】第1の実施の形態による情報担持ロールを示す図である。
【図3】第1の実施の形態による情報担持シートが製造される様子を示す図である。
【図4】読み取の方向を示す。
【図5】第5の実施の形態による復号の前処理を示す。
【図6】第5の実施の形態による復号テーブルの構成図を示す。
【図7】第5の実施の形態による系列を読み取る処理の流れを表した図である。
【図8】第5の実施の形態による系列を読み取るための信号と位相をずらした矩形波を示す図である。
【図9】第5の実施の形態による系列を読み取るために閾値で“0”又は“1”と判断しているところを示す。
【図10】第5の実施の形態による復号方法を示す。
【図11】第5の実施の形態による片方向巡回ハミング距離に基づく分割語ごとの処理を示す。
【図12】第5の実施の形態による対応テーブルを示す。
【図13】第5の実施の形態による分割語と候補語の片方向巡回ハミング距離を有する対応テーブルを示す。
【図14】第5の実施の形態による最小片方向巡回ハミング距離から分割語と候補語の片方向巡回ハミング距離の2倍を引いた値を有する対応テーブルを示す。
【図15】第6の実施の形態による双方向巡回ハミング距離に基づく分割語ごとの処理を示す。
【図16】実施例1のNd:YVO4レーザ(1.06μm)を用いることによってホログラム基材から金属蒸着部分のみを除去しているところを示す。
【図17】実施例1で符号語のパターンをもつストライプホログラムを示す。
【図18】実施例1でストライプホログラムをホットスタンピングによりシートに付与しているところを示す。
【図19】実施例1の第一の符号の符号語0001を付与したストライプホログラムシートを示す。
【図20】実施例1の第一の符号の符号語0011を付与したストライプホログラムシートを示す。
【図21】実施例1の第一の符号の符号語0101を付与したストライプホログラムシートを示す。
【図22】実施例1の第一の符号の符号語0111を付与したストライプホログラムシートを示す。
【図23】実施例3の復号テーブルを示す。
【図24】実施例3の符号語パターンの一部を読み取った信号を示す。
【図25】実施例3の位相をずらした矩形波を示す。
【図26】実施例3の系列を読み取るために閾値で0、又は1と判断しているところを示す。
【図27】実施例3の復号テーブルの信頼度を更新していることを示す。
【図28】実施例3の最終的な復号テーブルを示す。
【図29】実施例4の復号テーブルを示す。
【図30】実施例4の対応テーブルを示す。
【図31】実施例4の最終的な復号テーブルを示す。
【図32】情報担持ロール上に機械読取に影響するような印刷が一部に施されているところを示す。
【図33】文字を模様に持つ符号語パターンから成る情報担持ロールの一部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片であって、前記セルは、前記情報担持片の長辺方向に沿って、a個で1パターンを形成して繰り返され、少なくともb個(bはaの倍数)配置され、前記パターンは情報を表現するための符号化されたデータであり、前記a個で形成されるパターンの二元系列から成る符号長及び符号語の第一の符号は二元から成る長さa個の系列すべての集合から最小片方向巡回ハミング距離又は最小双方向巡回ハミング距離がc(cは0以上の整数)となる部分集合を選択することで、(bc/a-1)/2を超えない最大の整数個におけるセルの誤り訂正が可能となることを特徴とする情報担持片。
【請求項2】
前記パターンは、機能性材料の印刷、塗布、貼付又は金属蒸着によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の情報担持片。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報担持片が、シート状基材の表面に付与又は内部に挿入されていることを特徴とする情報担持シート。
【請求項4】
二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片の機械読取方法であって、
前記情報担持片上のセル1個の幅g、前記情報担持片の長さk、長さk当たりのセルのサンプリング数hの信号を取り込み、サンプリング間隔はk/hとなる第一の信号のタイミング処理として、あらかじめ1波長分を2gh/k個の点で構成した矩形波であって位相をk/hずつずらしたgh/k個の矩形波を設定し、前記第一の信号を機械読取りするステップと、
前記gh/k個の矩形波と前記第一の信号との相互相関を計算により得るステップと、
前記得られた相互相関の絶対値が最も大きくなる矩形波を求めて第二の信号とするステップと、
前記第二の信号における矩形波の半波長の中心位置と前記第一の信号との同じ位置において、任意に設定した閾値より大きい場合に1、小さい場合に0として二元系列を得るステップとを含むことを特徴とする情報担持片の機械読取方法。
【請求項5】
二元符号で、かつ、機械読取可能なセルが配設された情報担持片であり、前記セルは、前記情報担持片の長辺方向に沿って、a個で1パターンを形成して繰り返され、少なくともb個(bはaの倍数)配置された前記情報担持片から機械読取して得られた二元系列の復号方法であって、
前記a個のセルで形成されるパターンが表す符号語が含まれる第一の符号におけるすべての符号語と該符号語の信頼度とから成る復号テーブルを生成するステップと、
前記生成された復号テーブルの信頼度を0とするステップと、
前記二元系列をb/a個に等分割してb/a個の分割語を生成するステップと、
前記分割語それぞれについて、前記第一の符号の符号語を求めて候補語とするステップと、
前記分割語と前記候補語との片方向巡回ハミング距離又は双方向巡回ハミング距離を求めるステップと、
前記復号テーブルから前記候補語と同じ符号語の信頼度に、前記第一の符号の最小片方向巡回ハミング距離又は最小双方向巡回ハミング距離を加えて、更に前記片方向巡回ハミング距離又は双方向巡回ハミング距離を二倍した値を差し引くステップと、
前記復号テーブルで最も大きい信頼度をもつ前記第一の符号の符号語を前記情報担持片に付与されていた第一の符号の符号語とするステップとから成ることを特徴とする復号方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法に従って、コンピュータに処理を実行させるためのプログラムをコンピュータ可読の形態で記録した記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−39697(P2010−39697A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200840(P2008−200840)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】