説明

情報提供システム、情報提供サーバ、情報提供方法、および、コンピュータプログラム

【課題】携帯端末装置において、現在位置取得機能を利用した新たなサービスを提供する。
【解決手段】地図表示システム10は、表示パネル202を有し、複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末200と、サーバシステム1000を備える。サーバシステム1000は、複数の携帯端末200の現在位置をそれぞれ表す複数の現在位置情報を取得し、複数の現在位置情報に基づいて、複数の携帯端末200を同一の列車単位でグループ化する。サーバシステム1000は、グループに対応する列車の混雑の程度、車両数などのグループ特性情報を生成し、情報対象端末としての携帯端末200に送信する。携帯端末200の表示パネル202には、グループ特性情報が表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータで利用可能に電子化された地図データを利用して、車や歩行者に経路案内を行う技術を始めとして、地表上の施設や道路などの情報を電子機器の表示部に表示することは広く行われている。例えば、地図情報とランドマークの位置情報を表示する車両用ナビゲーション装置において、ランドマークの詳細情報の表示順位を決定し、決定した順位に従ってランドマークの詳細情報を順次に表示する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、携帯端末装置では、GPS(Global Positioning System)を用いて、現在位置を認識する技術が一般的に用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−132777号公報
【特許文献2】特開2003−254761号公報
【特許文献3】特開平6−295397号公報
【特許文献4】特開2000−131087号公報
【特許文献5】特許3850898号公報
【特許文献6】特許3478674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような地図表示可能な携帯端末を始めとする携帯端末装置において、GPSなどの現在位置取得機能を利用した新たなサービスの提供が求められていた。本発明は、携帯端末装置において、現在位置取得機能を利用した新たなサービスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]適用例1の情報提供システムは、複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末装置と、公共交通機関の経路を含む交通機関情報を取得する交通機関情報取得手段と、前記複数の携帯端末装置の現在位置の変動をそれぞれ表す複数の現在位置変動情報を取得する現在位置変動情報取得手段と、前記複数の現在位置変動情報と前記交通機関情報とに基づいて、前記公共交通機関の運行状況を認識する運行状況認識手段と、を備える。こうすれば、携帯端末装置の現在位置の変動を取得することにより、公共交通機関の運行状況を認識できるので、運行状況の認識結果を用いた新たなサービスを提供することができる。
【0007】
[適用例2]適用例1に記載の情報提供システムは、さらに、前記公共交通機関の運行状況に異常が発生した場合に、前記公共交通機関の経路および乗降場所のうち、前記異常が波及する異常波及範囲を認識する異常波及範囲判断手段と、前記複数の携帯端末装置のうち、前記異常波及範囲に存在する端末装置に対して、前記異常に関する異常情報を送信する異常情報送信手段とを備える。こうすれば、公共交通機関の運行状況に異常が発生したときに、端末装置に対して異常情報を送信する新たなサービスを提供できる。
【0008】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の情報提供システムは、さらに、インターネット上のサイトから前記運行状況に関する運行状況情報を取得する運行状況情報取得手段を備え、前記運行状況認識手段は、さらに、運行状況情報を用いて、前記公共交通機関の運行状況を認識する。こうすれば、運行状況の認識に、さらに、インターネット上のサイトから取得した運行状況情報を用いるので、より精度の高い運行状況の認識を実現できる。
【0009】
[適用例4]適用例2に記載の情報提供システムは、前記異常情報は、前記携帯端末装置において表示される画像情報であり、前記画像情報は、前記異常が発生した前記経路および前記異常波及範囲の前記経路の経路画像を含んでも良い。こうすれば、携帯端末情報に異常が発生した経路および異常波及範囲に含まれる経路を含む経路画像が提供されるので、便利である。
【0010】
[適用例5]適用例4に記載の情報提供システムは、前記画像情報は、さらに、前記複数の携帯端末装置の現在位置に関する現在位置画像を含む。こうすれば、携帯端末情報に異常が発生した経路および異常波及範囲に含まれる経路を含む経路画像に加えて、複数の携帯端末装置の現在位置に関する現在位置画像が提供されるので、便利である。
【0011】
[適用例6]適用例5に記載の情報提供システムは、前記現在位置画像は、所定の領域に前記複数の携帯端末装置の現在位置が位置する前記複数の携帯端末装置の密度を表す画像含む。こうすれば、携帯端末情報に異常が発生した経路および異常波及範囲に含まれる経路を含む経路画像に加えて、複数の携帯端末装置の密度に関する画像が提供されるので、便利である。
【0012】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれかに記載の情報提供システムは、さらに、前記公共交通機関の時刻表を表す時刻表情報を取得する時刻表情報取得手段を備え、前記運行状況認識手段は、さらに、前記時刻表情報を用いて、前記公共交通機関の運行状況を認識する。こうすれば、運行状況の認識に、さらに、時刻表情報を用いるので、より精度の高い運行状況の認識を実現できる。
【0013】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末装置を介して、情報を提供する情報提供サーバや、情報提供方法、その方法を実現するためのコンピュータプログラム、当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、実施例に基づき説明する。
【0015】
A.実施例:
・地図表示システムの構成:
図1は、実施例としての地図表示システム10の概略構成を示す説明図である。図示するように、実施例の地図表示システム10は、情報提供サーバ100と、地図サーバ150と、基地局BSと、携帯端末装置としての携帯端末200とを含んでいる。情報提供サーバ100と、地図サーバ150と、基地局BSとは、インターネットINTを介して通信可能に接続されている。携帯端末200は、基地局BSと無線通信することが可能であり、この結果、携帯端末200は、基地局BSを介して、情報提供サーバ100および地図サーバ150と通信を行うことができる。
【0016】
本実施例の携帯端末200は、地図表示端末として機能することができる。また、携帯端末200は、GPS受信機201を備えており、当該GPS受信機201と地図表示機能とを用いて経路案内を行う機能を備えている。携帯端末200は、GPS受信機201に加えて、表示パネル202と、音声出力部204と、キー入力部205と、無線通信回路206と、通話制御部207と、外部記憶装置208と、主制御部210と、を備えている。
【0017】
GPS受信機201は、GPS(全地球測位システム)を構成する人工衛星から送信された電波を受信する装置である。表示パネル202は、液晶ディスプレイとこれを駆動する駆動回路とを備えている。表示パネル202には、液晶ディスプレイに限らず、有機ELディスプレイなど、種々の表示装置を採用することが可能である。
【0018】
音声出力部204は、経路案内時に音声を出力するためのスピーカや、これを駆動する回路などから構成される。キー入力部205は、方向入力キー205aや、その他の操作キー205bなどのキー群から構成される。携帯端末200の利用者は、これらのキーを用いることで、各種の操作を行うことができる。
【0019】
無線通信回路206は、基地局BSとの間でデータ通信もしくは音声通信を行うための回路である。無線通信回路206は、基地局BSを介して、情報提供サーバ100や地図サーバ150にアクセスを行うことができる。通話制御部207は、音声通話のための着信や呼出、音声信号を電気信号に変換するなどの制御を行う回路である。通話制御部207と無線通信回路206とを備えることにより、携帯端末200は、携帯電話として動作することができる。外部記憶装置208は、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカードなどで構成され得る。外部記憶装置208には、各種ソフトウェアやデータの格納に用いられる。
【0020】
携帯端末200の主制御部210は、携帯端末200の上述した各部201〜208を制御するためのコントローラである。主制御部210は、図示しない中央演算回路(CPU)と、ROMやRAMなどの内部記憶装置を含んでいる。
【0021】
携帯端末200が地図表示端末として機能するとき、主制御部210の内部記憶装置には、地図表示のためのプログラムが格納されている。このプログラムは、例えば、地図サーバ150や情報提供サーバ100を運用する事業者によりインターネットINTおよび基地局BSを介して配信されても良い。このプログラムは、使用しないときは、外部記憶装置208に格納され、使用時に、外部記憶装置208から読み出されて、主制御部210の内部記憶装置に格納される。主制御部210は、このプログラムを実行することで、後述する様々な処理/機能を実現する。
【0022】
情報提供サーバ100は、通信部102と、制御部104と、記憶部105とを備えている。制御部104は、通信部102および記憶部105を制御するためのコントローラである。通信部102は、インターネットINTを介して地図サーバ150と、インターネットINTおよび基地局BSを介して携帯端末200と、それぞれ通信を行うことができる。記憶部105には、利用者が通る経路のデータベース(DB)として、車の経路(道路)を表す車経路データベース106と、電車の経路(線路)を表す電車経路データベース107と、歩行者の経路を表す歩行経路データベース108とが格納されている。さらに、記憶部105には、施設データベース109と、電車の時刻表を表す時刻表データベース110とが格納されている。各データベース106〜110については後述する。
【0023】
地図サーバ150は、通信部152と、制御部154と、記憶部155とを備えている。記憶部155には、後述する地図データベース156が格納されている。制御部154は、地図サーバ150の上述した通信部152および記憶部155を制御するためのコントローラである。通信部152は、インターネットINTを介して情報提供サーバ100と、インターネットINTおよび基地局BSを介して携帯端末200と、それぞれ通信を行うことができる。
【0024】
情報提供サーバ100の制御部104および地図サーバ150の制御部154は、それぞれ、図示しないCPUと、ROMやRAMなどの内部記憶装置を含んでいる。制御部104および制御部154の内部記憶装置には、携帯端末200と通信することによって当該携帯端末200の地図表示端末としての機能を支援するためのプログラムが格納されている。制御部104および記憶部105は、これらのプログラムを実行することにより、後述する様々な処理/機能を実現する。
【0025】
本実施例における情報提供サーバ100および地図サーバ150から成るサーバシステム1000と、携帯端末200とを含む地図表示システム10が、情報提供システムとして機能する。本実施例では、地図サーバ150と情報提供サーバ100とは、インターネットINTを介して接続されるものとしたが、LAN(ローカルエリアネットワーク)を介して接続されるものとしてもよい。また、情報提供サーバ100と地図サーバ150とは、一つのサーバ計算機によって構成されることも可能である。
【0026】
図2は、サーバシステム1000に格納されたデータベースの内容を説明する図である。図2には、上述した地図データベース156と、車経路データベース106と、電車経路データベース107と、歩行経路データベース108と、施設データベース109の内容が、それぞれ、概念的に示されている。
【0027】
地図データベース156には、携帯端末200に送信される地図画像を表すデータ(地図画像データ)がベクトルデータ形式で格納されている。なお、地図画像データは、ベクトルデータ形式に代えて、ビットマップ形式やJPEGデータ形式などのラスタデータ形式で格納されていても良い。この地図画像データには、地形や建物、道路等の形状を表すデータが含まれている。
【0028】
3種類の経路データベース106、107、108には、異なる種類の経路データが格納されている。車経路データベース106には、地図画像データが表す地図画像に対応した領域に存在する交通経路のうち、車が通行可能な経路(車道)に関する経路データが格納されている。電車経路データベース107には、地図画像データが表す地図画像に対応した領域に存在する交通経路のうち、電車が通行する経路(線路)に関する経路データが格納されている。歩行経路データベース108には、地図画像データが表す地図画像に対応した領域に存在する交通経路のうち、歩行者が通行可能な経路(歩行者道)に関する経路データが格納されている。
【0029】
各経路データは、交通経路の地表上における配置を示すネットワークデータと、ネットワークデータに関連付けられた経路属性情報とを含んでいる。ネットワークデータは、交通経路における要素点ND(ノードと呼ぶ。)を表すノードデータと、ノード間を結ぶ線分LK(リンクと呼ぶ)を表すリンクデータとを含む。ノードNDは、例えば、交差点、分岐点、終点、始点、駅などの乗降位置などを表している。リンクLKは、例えば、上述した車道、線路、歩行者道などの交通経路を表している。
【0030】
経路属性情報は、ノードNDあるいはリンクLKに関連付けられており、その属性を示す情報である。経路属性情報は、図2に示すように、例えば、リンクLKの名称(例えば、道路の名称)、ノードNDの名称(例えば、交差点、駅の名称)を含むテキストデータZ11を含む。また、経路属性情報は、図2に示すように、他の属性データZ12、例えば、関連付けられたノードNDに関する画像を表す画像データ、具体的には、例えば、ノードND(例えば、交差点、駅)の分岐状況を示す模式図や案内板を示す画像、あるいは、ノードNDの周辺の撮影画像を含む。1つのノードNDまたはリンクLKに関連付けられる経路属性情報は、1つであっても良いし、複数であっても良い。
【0031】
車と歩行者が両方とも通行可能な経路についての経路データは、車経路データベース106および歩行経路データベース108に重複して記録されている。高速道路など歩行者が通行できず、車は通行できる経路についての経路データは、歩行経路データベース108には記録されておらず、車経路データベース106には記録されている。同様に、細い道、歩道橋、地下街の道など、車は通行できず、歩行者は通行できる経路についての経路データは、車経路データベース106には記録されておらず、歩行経路データベース108には記録されている。
【0032】
施設データベース109は、地図画像データが表す地図画像に対応した領域に存在する施設(地物とも呼ぶ。)の位置を表す施設ポイントBPと、施設ポイントBPに関連付けられた施設属性情報と、クローズドポリゴンCPを含む。施設属性情報は、例えば、施設ポイントBPが表す位置に存在する施設の名称Z21を含む。また、施設属性情報は、例えば、対応する施設の分類情報、種類、特徴(例えば、レストラン、駅、駐車場)などの記述Z22を含んでもいる。1つの施設ポイントBPに関連付けられる施設属性情報は、1つであっても良いし、複数であっても良い。クローズドポリゴンCPは、施設の占める領域を平面形状で表す閉じたポリゴンであり、ノードとリンクからなる環状のポリゴンである。クローズドポリゴンCPに基づき、施設の占める領域の面積を算出することができる。
【0033】
・地図表示システムの動作:
・情報表示処理:
図3は、情報表示処理の処理ステップを示すフローチャートである。携帯端末200で情報表示アプリケーションが起動しているとき、携帯端末200とサーバシステム1000とは協働して、情報表示処理を実行する。
【0034】
携帯端末200の主制御部210は、GPS受信機201を用いて、現在位置を表す現在位置情報を取得する。そして、主制御部210は、当該現在位置情報を定期的にサーバシステム1000に送信する(ステップS110)。携帯端末200の利用者は、1人ではなく、多人数であるので、サーバシステム1000は、多数の携帯端末200の現在位置情報を定期的に取得することとなる。情報提供サーバ100の制御部104は、定期的に送信されてくる多数の現在位置情報に基づいて、列車利用者情報を生成して管理する(ステップS210)。
【0035】
図4は、列車利用者情報を生成する列車利用者情報生成処理の処理ステップを示すフローチャートである。サーバシステム1000の制御部104は、列車の経路に沿って、存在する携帯端末200を検索する(ステップS211)。具体的には、制御部104は、電車経路データベース107を参照して、列車利用者情報生成処理の対象とする列車の経路を特定し、当該経路から所定距離範囲内(例えば、経路から2m以内)に存在する携帯端末200を、取得した現在位置情報に基づいて検索する。
【0036】
制御部104は、検索された各携帯端末200の現在位置の変動を表す移動ベクトルを生成する(ステップS212)。具体的には、移動ベクトルは、携帯端末200の移動方向と、移動速度を表す。具体的には、制御部104は、同一の携帯端末200から時系列的に送信された複数の現在位置情報に基づき、移動ベクトルを生成する。
【0037】
制御部104は、互いに近接しており、移動ベクトルが所定範囲内にある携帯端末200を同一の列車内に存在する携帯端末200としてグループ化する(ステップS213)。図5は、携帯端末200のグループ化について説明する図である。移動ベクトルの所定範囲は、例えば、実質的に、対象の列車の経路に沿った同一の方向に向かって、同一の速度で移動しているとみなせる誤差範囲に設定される。
【0038】
制御部104は、同一の列車内に存在する携帯端末200のグループ(以下、同一列車グループと呼ぶ。)に対応する列車を、時刻表データベース110を参照して特定する(ステップS214)。時刻表データベース110には、例えば、各列車の経路ごとに、列車の各駅での発車時刻が記録されているため、時刻表データベース110と現在時刻と同一列車グループの経路上における位置とを参照すれば、同一列車グループに対応する列車が特定できる。
【0039】
制御部104は、特定された列車の特性を表す列車特性情報を生成する(ステップS215)。列車特性情報は、列車の速度、列車の車両数、列車の混雑のレベル(列車内の人の密度)を含む。列車の速度は、例えば、対応する同一列車グループに属する携帯端末200の移動ベクトルによって表される速度の平均値で表される。列車の車両数は、対応する同一列車グループに属する携帯端末200の位置の経路に沿った方向への分布から推定される。例えば、図5に示すように、経路を表すリンクLKに沿って、列車の3両分の長さに亘って、携帯端末200の位置を表す点TPが分布している場合には、列車の車両数は、3両と推定される。列車の混雑のレベルは、例えば、対応する同一列車グループに属する携帯端末200が経路に沿った列車の一両分の長さ当たりに分布している数を用いて推定される。例えば、携帯端末200の列車一両当たりの数が、第1の所定値以下であれば混雑レベル1(混雑していない)、第1の所定値を超えて第2の所定値以下であれば混雑レベル2(混雑している)、第2の所定値を超えていれば混雑レベル3(大変混雑している)と判断される(第1の所定値<第2の所定値とする。)。
【0040】
制御部104は、以上の列車利用者情報生成処理を、管理対象である列車の経路ごとに、一定期間おきに繰り返して行い、管理対象である列車の経路について、列車の運行状況を管理する。
【0041】
図3に戻って説明を続ける。制御部104は、列車の運行状況にアクシデントが発生したか否かを判断する(ステップS220)。例えば、(a)ある同一列車グループに属する携帯端末200が駅以外の位置で停車した場合、あるいは、(b)ある同一列車グループに属する携帯端末200の位置が、時刻表データベース110に記録された運行予定よりも所定時間以上遅れている場合、(c)ある同一列車グループに属する携帯端末200の位置が一定時間以上に亘って停止している場合に、制御部104は、アクシデントが発生したと判断することができる。もちろん、上記(a)(b)(c)のうち複数の事象が同時に発生した場合についても、アクシデントが発生したと判断することができる。制御部104は、アクシデントが発生していないと判断すると(ステップS220:NO)、ステップS210に戻って、列車利用者情報の生成・管理を続ける。
【0042】
一方、制御部104は、アクシデントが発生したと判断すると(ステップS220:YES)、制御部104は、アクシデント情報対象端末を特定する(ステップS230)。アクシデント情報対象端末は、サーバシステム1000に現在位置情報を送信している多数の携帯端末200のうち、後述するアクシデント情報の対象となる端末である。
【0043】
図6は、アクシデント情報対象端末の決定について説明する図である。制御部104は、例えば、発生したアクシデントの影響が波及すると推定されるアクシデント波及範囲にある列車内に存在している携帯端末200を、アクシデント情報対象端末と認識する。アクシデント波及範囲は、例えば、所定以上の確率でアクシデントが発生した位置を通過する列車内とすることができる。例えば、図6に示すように、環状の経路C1と、経路C1と交差すると共に互いに交差する2つの略直線の経路L1、L2とが存在する場所において、列車T1がアクシデントで停車したとする。他の列車T2〜T7には、アクシデントが発生していないとする。
【0044】
図6において、列車T1〜T7の内部に示された矢印は、列車の進行方向を表している。このような場合、例えば、列車T3がアクシデント発生地点(列車T1の存在地点)を通る確率は、現在の列車T3の位置からアクシデント発生地点までに分岐がないため、1(100パーセント)であるとされる。それに対して、列車T2は、駅S1で3方向(駅S13方面、駅S4方面、駅S2方面)に分岐する可能性があるため、列車T3がアクシデント発生地点を通る確率は、1/3(約33パーセント)であるとされる。同様にして、列車T4、T6、T7がアクシデント発生地点を通る確率は、1/3である。一方、列車T5がアクシデント発生地点を通る確率は、駅S4と駅S10とでそれぞれ3方向に分岐する可能性があるため、1/3×1/3=1/9(約11パーセント)である。ここで、しきい値としての確率を、20パーセントとすると、列車T2〜T4、T6、T7内に存在する携帯端末200は、アクシデント情報対象端末であると判断され、列車T5内に存在する携帯端末200は、アクシデント情報対象端末でないと判断される。
【0045】
制御部104は、アクシデント情報を生成し、生成されたアクシデント情報を、アクシデント情報対象端末に送信する(ステップS240)。アクシデント情報には、例えば、アクシデントが発生した列車と、アクシデント情報対象端末が存在する列車が位置する列車経路の画像(例えば、その領域の地図画像)のデータ、当該画像上に存在する列車および駅の画像、当該列車および駅の混雑の程度を表すデータ、当該列車の車両数、アクシデントの発生からの経過時間、アクシデントの内容を表すデータが含まれる。アクシデントの内容は、例えば、制御部104が、アクシデントの発生した列車を運行する運行管理者(例えば、鉄道会社)が開設するサイト(例えば、鉄道会社のホームページ)にアクセスすることによって取得される。
【0046】
これに代えて、携帯端末200の利用者が開設するブログなどのサイトにアクセスして取得されても良い。駅の混雑の程度は、例えば、駅における面積当たりの携帯端末200の数(密度)に基づいて決定される。駅の範囲は、施設データベース109に記憶されたクローズドポリゴンCPによって認識でき、制御部104は、クローズドポリゴンCPにより駅の面積を算出できる。また、制御部104は、駅のクローズドポリゴンCP内に存在する携帯端末200の数をカウントして、その数を駅の面積で割ることにより、駅における面積当たりの携帯端末200を算出できる。駅の混雑の程度は、列車の混雑の程度と同様に、所定のしきい値を用いて、複数のレベル(例えば、3段階)で表される。
【0047】
アクシデント情報対象端末となった携帯端末200は、アクシデント情報を受信する(ステップS120)。アクシデント情報を受信すると、携帯端末200は、受信したアクシデント情報を利用者に提示する(ステップS130)。具体的には、携帯端末200は、アクシデント情報を表示パネル202に表示する。
【0048】
図7は、表示パネル202に表示されたアクシデント情報を示す第1の図である。アクシデント画像の表示の初期画面として、まず、アクシデント情報対象端末が存在する列車と、アクシデントが発生した列車と、アクシデント情報対象端末が存在する列車とが位置する列車経路の画像が表示される。図7に示す例では、表示された画像において、アクシデント情報対象端末としての携帯端末200が存在する列車T6の画像が表示されている。また、アクシデントが発生した列車T1の画像がアクシデントの簡単な内容と共に、表示されている。ここで、アクシデントの簡単な内容には、アクシデントの詳細を表示するか否かを利用者から受け付けるユーザインタフェースが含まれる。利用者によってアクシデントの詳細の表示が指示されると、さらに、詳細なアクシデント情報が表示される。
【0049】
図8は、表示パネル202に表示されたアクシデント情報を示す第2の図である。詳細なアクシデント情報としては、図8に示すように、アクシデントの種類(例えば、人身事故)、アクシデント発生からの経過時間と共に、アクシデント発生位置の周辺およびアクシデント情報対象端末としての携帯端末200が存在する列車の付近の列車および駅の混雑の程度が示される。例えば、混雑の程度は、そのレベルによって異なる色で、対応する列車および駅の画像を表示することによって表示される。例えば、図8に示す例では、混雑の程度が大きくなるに従って、濃い色で列車および駅の画像が表示されることを示している。さらに、図8に示すように、各列車の画像の隅には、各列車の車両数が表示される。図8に示す内容に加えて、携帯端末200の利用者が交通機関を利用している場合には、利用者自身が利用している交通機関に関する情報、例えば、利用者自身が利用している交通機関の予定運行時間に対する遅れ時間を表示しても良い。
【0050】
なお、本実施例においては、多数の携帯端末200のGPS受信機201と、それらの携帯端末200から現在位置情報を受け取るサーバシステム1000の制御部104が、現在位置変動情報取得手段として機能する。また、本実施例において、サーバシステム1000の制御部104が、運行状況認識手段と、異常波及範囲判断手段と、異常情報送信手段と、運行状況情報取得手段として機能する。また、本実施例において、時刻表データベース110と、時刻表データベース110を参照する制御部104が、時刻表情報取得手段として機能する。
【0051】
以上、説明した本実施例によれば、多数の携帯端末200の現在位置情報が、列車の単位でグループ化され、グループに対応する特性が、利用者に提示される。この結果、利用者は、より有用な情報を手にすることができて便利である。例えば、ある列車に対応するグループの特性として、その列車の画像がその列車の混雑の程度を表す色で表示されるので、利用者は、例えば、乗り換えの際、混雑した列車を回避して、混雑していない列車を選択するなどの判断が容易にできる。
【0052】
また、経路に沿って、実質的に同じ方向に同じ速度で移動している複数の携帯端末200を、同じ列車に乗っている利用者が保持する携帯端末200としてグループ化するので、精度の良いグループ化が可能である。また、同じ列車のグループに属する携帯端末200の現在位置情報に基づいて、列車の速度や車両数などの列車の特性を精度良く推定することができる。また、アクシデントの発生時に、自発的にアクシデント情報がアクシデント情報対象端末に送信されるので、アクシデント情報が必要な利用者に自動的にアクシデント情報を通知することができ、便利である。
【0053】
さらに、列車の運行状況を、携帯端末200群の現在位置の変動を表す移動ベクトルに基づいて認識することができるので、列車の運行状況に関する情報を携帯端末200に送信する新たなサービスを提供できる。さらに、列車の運行状況を、時刻表データベース110を参照して、認識するので、より高い精度で運行状況を認識できる。さらに、インターネット上のサイトから列車の異常に関する情報などの運行状況情報を取得して、列車の運行状況を認識するので、さらに、精度良く、運行状況を認識できる。
【0054】
B.変形例:
・上記実施例では、同一の列車内に存在する携帯端末200を、1つのグループとしてグループ化しているが、グループ化の対象は、列車単位に限られない。例えば、制御部104は、レストランなどの施設(地物)の占める領域内に含まれる携帯端末200を、1つのグループとしてグループ化しても良い。例えば、所定の施設内で、所定時間以上に亘って停止している携帯端末200が存在する場合、当該携帯端末200の所有者は、当該施設の利用者であると推定する。また、例えば、所定の店舗の内部から外部に停止した複数の携帯端末200が列を作って存在している場合、当該店舗には行列ができていると推定する。施設の占める領域を特定するための情報は、例えば、施設データベース109にクローズドポリゴンCPとして記憶されていれば良い。そして、例えば、制御部104は、レストランの混雑状況などの施設の特性を当該施設内に存在する携帯端末200の数や速度に基づいて推定しても良い。こうすれば、携帯端末200において、レストランの画像の色を混雑の程度に応じて異なる色でレベル表示するなど、施設の特性を利用者が判別可能な態様で提示することが可能になる。そうすれば、利用者は、例えば、このようなグループ情報を、入店するレストランを決める際の参考にすることができ、便利である。
【0055】
・上記実施例において、アクシデント情報対象端末は、列車内に存在する携帯端末200としているが、これに代えて、または、これに加えて、アクシデント発生位置から所定距離内にある駅に存在する携帯端末200をアクシデント情報対象端末としても良いし、クシデント発生位置から所定距離内に存在する携帯端末200全てをアクシデント情報対象端末としても良い。このようにアクシデント波及範囲は、任意に設定することができる。
【0056】
・上記実施例においては、アクシデントが発生した場合に、アクシデント情報対象端末に対して、アクシデント情報としてグループの特性情報(実施例では、列車の混雑の程度、車両数)を送信しているが、これに代えて、利用者が携帯端末200を操作して要求した場合に、グループの特性情報(実施例では、列車の混雑の程度、車両数)を、当該携帯端末200に対して送信することとして良い。
【0057】
・上記実施例において、携帯端末200に送信されるアクシデント情報は、グループ特性情報に加えて、周辺の駅の駅情報、例えば、トイレの有無、駅周辺の休憩場(喫茶店など)の情報を含んでも良い。こうすれば、利用者は、アクシデントに対応する方策、例えば、次の駅で降りてアクシデントが終息するまで休憩するなどの選択を容易にすることができる。
【0058】
・上記実施例において、運行状況(異常の状況を含む)を認識する際に、移動ベクトルに加えて、時刻表データベース110の情報、インターネット上のサイトから取得された情報を用いているが、これらは、用いなくとも運行状況の認識は可能である。
【0059】
・上記実施例においては、列車の運行の異常に関する情報を、携帯端末200の表示パネル202に画像として表示することにより利用者に通知しているが、これに代えて、音声で通知しても良い。
【0060】
・上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしても良い。
【0061】
・記憶部105に格納されている各種データベース106〜110は、必要に応じて適宜まとめてもよい。例えば、車経路データベース106と電車経路データベース107とをまとめて1つのデータベースとしてもよい。また、各種データベース106〜110を1つのデータベースとしてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例としての地図表示システムの概略構成を示す説明図。
【図2】サーバシステムに格納されたデータベースの内容を説明する図。
【図3】情報表示処理の処理ステップを示すフローチャート。
【図4】列車利用者情報を生成する列車利用者情報生成処理の処理ステップを示すフローチャート。
【図5】携帯端末のグループ化について説明する図。
【図6】アクシデント情報対象端末の決定について説明する図。
【図7】表示パネルに表示されたアクシデント情報を示す第1の図。
【図8】表示パネルに表示されたアクシデント情報を示す第2の図。
【符号の説明】
【0064】
10…地図表示システム、100…情報提供サーバ、102…通信部、104…制御部、105…記憶部、106…車経路データベース、107…電車経路データベース、108…歩行経路データベース、109…施設データベース、110…時刻表データベース、150…地図サーバ、152…通信部、154…制御部、155…記憶部、156…地図データベース、200…携帯端末、201…GPS受信機、202…表示パネル、204…音声出力部、205…キー入力部、206…無線通信回路、207…通話制御部、208…外部記憶装置、210…主制御部、1000…サーバシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末装置と、
公共交通機関の経路を含む交通機関情報を取得する交通機関情報取得手段と、
前記複数の携帯端末装置の現在位置の変動をそれぞれ表す複数の現在位置変動情報を取得する現在位置変動情報取得手段と、
前記複数の現在位置変動情報と前記交通機関情報とに基づいて、前記公共交通機関の運行状況を認識する運行状況認識手段と、
を備える、情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供システムは、さらに、
前記公共交通機関の運行状況に異常が発生した場合に、前記公共交通機関の経路のうち、前記異常が波及する異常波及範囲を認識する異常波及範囲判断手段と、
前記複数の携帯端末装置のうち、前記異常波及範囲に存在する端末装置に対して、前記異常に関する異常情報を送信する異常情報送信手段と、
を備える、情報提供システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報提供システムは、さらに、
インターネット上のサイトから前記運行状況に関する運行状況情報を取得する運行状況情報取得手段を備え、
前記運行状況認識手段は、さらに、運行状況情報を用いて、前記公共交通機関の運行状況を認識する、情報提供システム。
【請求項4】
請求項2に記載の情報提供システムであって、
前記異常情報は、前記携帯端末装置において表示される画像情報であり、
前記画像情報は、前記異常が発生した前記経路および前記異常波及範囲の前記経路の経路画像を含む、情報提供システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報提供システムであって、
前記画像情報は、さらに、前記複数の携帯端末装置の現在位置に関する現在位置画像を含む、情報提供システム。
【請求項6】
請求項5に記載の情報提供システムであって、
前記現在位置画像は、所定の領域に前記複数の携帯端末装置の現在位置が位置する前記複数の携帯端末装置の密度を表す画像を含む、情報提供システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の情報提供システムは、さらに、
前記公共交通機関の時刻表を表す時刻表情報を取得する時刻表情報取得手段を備え、
前記運行状況認識手段は、さらに、前記時刻表情報を用いて、前記公共交通機関の運行状況を認識する、情報提供システム。
【請求項8】
複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末装置を介して、情報を提供する情報提供サーバであって、
公共交通機関の経路を含む交通機関情報を取得する交通機関情報取得手段と、
前記複数の携帯端末装置の現在位置の変動をそれぞれ表す複数の現在位置変動情報を取得する現在位置変動情報取得手段と、
前記複数の現在位置変動情報と前記交通機関情報とに基づいて、前記公共交通機関の運行状況を認識する運行状況認識手段と、
を備える、情報提供サーバ。
【請求項9】
複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末装置によって情報を提供する情報提供方法であって、
コンピュータが公共交通機関の経路を含む交通機関情報を取得する交通機関情報取得工程と、
コンピュータが前記複数の携帯端末装置の現在位置の変動をそれぞれ表す複数の現在位置変動情報を取得する現在位置変動情報取得工程と、
コンピュータが前記複数の現在位置変動情報と前記交通機関情報とに基づいて、前記公共交通機関の運行状況を認識する運行状況認識工程と、
を備える、情報提供方法。
【請求項10】
複数の利用者にそれぞれ携帯される複数の携帯端末装置によって情報提供を行うためのコンピュータプログラムであって、
公共交通機関の経路を含む交通機関情報を取得する交通機関情報取得機能と、
前記複数の携帯端末装置の現在位置の変動をそれぞれ表す複数の現在位置変動情報を取得する現在位置変動情報取得機能と、
前記複数の現在位置変動情報と前記交通機関情報とに基づいて、前記公共交通機関の運行状況を認識する運行状況認識機能と、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−69910(P2010−69910A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236341(P2008−236341)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】