情報提供システム、情報提供方法
【課題】車両のユーザに対して、情報提供後のユーザの心理状況の変化や理解度を考慮した上で効率的に次回の情報提供を行うことができる情報提供システムを提供する。
【解決手段】情報提供システムは、ユーザの心理状況または理解度を判断するユーザ状態推定部、ユーザに提供する情報の内容または提供方法を決定する情報制御部、ユーザに情報を提供する情報提供部を備える。そして、センサを用いてユーザの身体的状況や運転状況、周囲状況を測定し、それらに基づいて情報提供を行うことにより、冗長や不足のない的確な情報をユーザに提供することが可能となる。
【解決手段】情報提供システムは、ユーザの心理状況または理解度を判断するユーザ状態推定部、ユーザに提供する情報の内容または提供方法を決定する情報制御部、ユーザに情報を提供する情報提供部を備える。そして、センサを用いてユーザの身体的状況や運転状況、周囲状況を測定し、それらに基づいて情報提供を行うことにより、冗長や不足のない的確な情報をユーザに提供することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のユーザに適切に情報を提供するシステム、およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全かつ快適な車両の運転を実現するためには、運転中のユーザに対して、適切な情報を、適切な方法で提供し続けることが必要である。ユーザに提供する情報(以下、提供情報という)としては、目的地に到達するまでの経路情報や混雑情報、天候情報のほか、他の車両や通行人が存在する時の警告、注意、快適さを高めるためのスポット情報、音楽やラジオなどの音声情報などがある。これらの情報を、内容に応じた最適な方法、例えば音声や映像などでユーザに提供することにより、安全かつ快適な運転を実現できる。
【0003】
このような分野において従来、運転中のユーザの現在の感性状態を検出して、その結果や運転手の性格に合わせて動作する車両用ソフトウェアが存在している。
【特許文献1】特開2006−190248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同じ情報を提供した場合であっても個人ごとの特性によって情報に対する理解度は異なる。しかしながら従来の技術では、ユーザの理解度を考慮しないまま情報提供を繰り返していた。そのため、情報を十分に理解したユーザに対して冗長な情報を提供したり、情報を理解できなかったユーザに対して補足を行えないなど、非効率的な情報提供を行うおそれがあった。なお、ここで「理解」とは、ユーザが提供情報の意味を分かり、何らかの行動を指示されていれば実行可能な状態を言う。理解度は「理解」または「理解なし」で表される。
【0005】
また、従来の技術では、情報を提供した後にユーザの心理状態がどう変化したかまでは考慮していなかった。そのため、ユーザに対して不適切な情報を提供する場合があった。例えばユーザにとって興味がないスポット情報を説明しても無関心に終わってしまい、このような説明を繰り返した場合、かえってユーザを不快な心理状態にしてしまう。
【0006】
つまり、情報提供後にユーザがどのような状態になったかを判断し、それに基づいて、以降提供すべき情報の内容や提供方法を最適化することが必要とされている。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、情報提供後のユーザ状態を判断した上で、最適な内容および方法で情報を提供できるような、情報提供システムおよび情報提供方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明においては以下の構成によって運転者への情報提供を行う。すなわち本発明の情報提供システムは、ユーザ状態を推定するユーザ状態推定部と、推定結果に基づいて次回提供する情報を決定する情報制御部と、それに従って情報を提供する情報提供部によって構成される。ここでユーザ状態とは、ユーザの内面的な状態であって、運転に影響を及ぼすようなものをいい、具体的には情報提供による心理状況の変化、または提供情報に対する理解度を指す。
【0009】
まず、ユーザ状態推定部について述べる。ユーザ状態推定部は、前記ユーザ状態を推定し、情報制御部に送信する部位である。
【0010】
ここで、ユーザ状態を推定する方法として、情報提供の前後におけるユーザの身体的状態の変化に基づくユーザの心理状況の推定や、情報提供後のユーザの行動に基づくユーザの理解度の推定によることができる。なお、ユーザの身体的状態とは、各種のセンサによって取得した、ユーザに関するデータをいう。例えば、車内カメラで撮影したユーザの表情や、マイクで録音したユーザの音声などが挙げられる。他にも、脈拍計で測定した脈拍、血圧計で測定した血圧など、各種のバイタルサインを使用することができる。また、ユーザの行動は、各種のセンサによってユーザによる運転操作を検知することによって把握できる。例えば、走行または停止、ハンドル操作、ウィンカーやライトの点灯などがある。
【0011】
次に、情報制御部について述べる。情報制御部は、ユーザ状態に基づいて、ユーザに次回提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。つまり、ユーザの心理状況を把握したうえで、どうすれば最適な情報提供を行えるかを判断する。
【0012】
また、情報制御部は、その時々で最適な情報提供を行うために、車両状態を判断材料に加えることもできる。ここで、車両状態とは、車両がどのような状態にあるかを周囲状況および前述した運転操作を元に総合的に判断したものである。例えば、通常運転中、運転多忙、車両接近中、などの状態がある。また、周囲状況とは、車両外部にあって、運転に影響を与えるような種々の状況をいう。例えば、他の車両や交通情報等である。周囲状況はその種類に応じた方法で取得する。例えば、他の車両の接近は車両に取り付けた車外撮影用カメラから、交通情報は基地局から受信するなどの方法で取得できる。
【0013】
次に情報提供部について述べる。情報提供部は、情報制御部から制御信号等の指示を受けて、ユーザに情報を提供する。提供方法としては音声、画像などを用いることができる。例えば、スピーカによる音声情報や、表示装置による静止画や動画情報を用いることができる。
【0014】
このように構成された本発明によれば、情報提供後のユーザ状態を把握した上で、冗長だったりユーザの特性に合わない情報を排除し、的確な情報提供を行うことができるようになる。そのため、ユーザにとって安全で快適な運転を実現できる。
【0015】
なお、本発明は、上記構成要素の少なくとも一部を有する情報提供システム、または情報提供装置として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む情報提供方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記構成要素および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、情報提供後のユーザ状態を考慮した上で、最適な内容および方法で情報提供を行うような、情報提供システムまたは情報提供方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。まず、以下の実施形態に係る車両の構成について説明する。
【0018】
<システム全体の構成>
図1は本発明にかかる車両の構成を表すブロック図である。本発明の構成要素は車体101に搭載されており、車外と区切られている。ユーザ102は車両の運転手である。
【0019】
ユーザ測定部103はセンサによってユーザの身体的状態を測定するものであり、以下の実施形態ではセンサとして車内カメラ103aを有する。車内カメラ103aはユーザの表情、および頭部の動きを撮影可能である。ユーザ測定部103は、測定結果をユーザ状態推定部105に送信する。
【0020】
運転操作認識部104はセンサによって運転操作を測定するものである。以下の実施形態では、ハンドルを切っている方向、ウィンカーの点灯の有無、オーディオ操作の有無、アクセル操作の有無を認識する。運転操作認識部104は、運転操作の測定結果をユーザ状態推定部105に送信する。
【0021】
ユーザ状態推定部105は、ユーザ測定部103からユーザの身体的状態を、運転操作認識部104から運転操作を受信し、後述する方法によってユーザ状態、すなわちユーザの心理状態の変化および情報の理解度を推定する。ユーザ状態推定部105はユーザ状態を情報制御部107に送信する。
【0022】
周囲状況認識部106はセンサによって車両の周囲状況を測定するものである。以下の実施形態ではセンサとして、車外の様子を撮影可能な車外カメラ106aを備え、他の車両が接近しているかどうかを判断することができる。周囲状況認識部106は、測定した周囲状況を情報制御部107に送信する。
【0023】
情報制御部107は、ユーザ状態と周囲状況、運転操作を総合的に判断し、次回ユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。情報制御部107は、決定した内容通りに情報提供部108が情報提供を行うように、制御信号を出力する。
【0024】
情報提供部108は情報制御部からの制御信号に従ってユーザに情報を提供する。以下の実施形態における情報提供部108は、液晶表示装置108a、スピーカ108bを有する。
【0025】
なお、運転操作認識部104、ユーザ状態推定部105、および情報制御部107は情報を入出力し所定の方法に従って判断を行う機能があれば、実現方法は問わない。例えば、それぞれ専用のプロセッサ等の装置を用いても良いし、ECU等に搭載されるソフトウェアとして構成されても良い。
【0026】
<データベース部のテーブルの構成>
また、情報提供システムはデータベース部を備える。データベース部は、以下に詳述するように、心理状況判断テーブル、個人心理テーブル、車両状態判断テーブル、理解判断テーブル、提供方法判断テーブル、個人履歴テーブルを有する。データベース部は、例えばEPROMなどの読み書き可能な記憶手段によって実現できる。
【0027】
まず、図2(a)に示した心理状況判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、顔の注目部位と、ユーザが抱いている心理状態との関係が記載されている。注目部位とは、顔の構成要素のうち表情の認識に大きく影響する部位を言う。注目部位が標準的な位置からどの程度移動しているかを、可動範囲の中での比によって表すことができる。表情の画像を解析して注目部位の特徴を把握し、このテーブルと比較することにより、ユーザの心理状況の種類それぞれの確率が推定できる。なお、推定精度を増すために、人種、年齢層、性別などによりテーブルを分けることも可能である。本実施形態では日本人、18〜55歳、男性用のテーブルを用いている。
【0028】
次に、図2(b)に示した個人心理テーブルについて説明する。ある程度ユーザの個性
を把握している場合は、心理状況判断テーブルでの判断結果に対して補正を行い、より正確に心理状況を推定することができる。個人心理テーブルには、情報提供の対象となるユーザと、そのユーザが属する集団の平均との間での判断基準のずれが記録されている。したがって、心理状況判断テーブルの出力結果に対して個人心理テーブルの値を用いて補正を行うことができる。本実施形態においては、喜びが実際よりも低く、怒りが実際よりも高く推定される傾向を修正している。
【0029】
次に、図3に示した車両状態判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、運転操作に基づいて車両の現在の状態を判断するための情報が記載されている。当該テーブルのマトリクスには、条件が満たされていれば1が、満たされなければ0が記載され、これら条件の組合せによって判断がなされる。
【0030】
次に、図4に示した理解判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、提供情報の内容と、提供後にユーザが行った運転操作とに基づいて、情報に対する理解度を判断するための情報が記載されている。判断結果は「理解」か「理解なし」の何れかである。
【0031】
次に、図5に示した提供方法判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、提供情報の内容と、提供後のユーザの心理状況の変化または理解度とに基づいて、次回にユーザに対して提供すべき情報の内容と提供方法が記載されている。
【0032】
次に、不図示の個人履歴テーブルについて説明する。当該テーブルは、オーディオ機器やナビゲーションシステム、ラジオなどの車載情報機器の使用履歴を保持するテーブルである。当該テーブルを参照することにより、ユーザの好みに合った情報提供を行うことが可能となる。
【0033】
<情報の内容>
ユーザに提供する情報は種々の観点から分類することができる。まず、安全性の見地から緊急情報と一般情報に大別される。また、緊急情報の中でも特に緊急性の高いものは警告情報、それに次ぐものは注意情報と呼ぶ。また、一般情報を内容によって区別することができる。例えばナビゲーションのための経路情報、交通情報、オーディオ等車内設備の使用方法、ニュース、音楽CD情報などがある。
【0034】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、第1の実施形態に係る情報提供システムについて説明する。ここでは、目的地までの運転操作中に経路情報を提供してナビゲーションを行う場合について記述する。必要に応じて図6に示した本実施形態の処理全体のフローチャートのステップ番号S601〜S604を参照する。また、図7(a)〜(c)に示したデータベース部の各テーブルからの抜粋を参照する。
【0035】
<情報提供>
まず、図6のステップS601において、情報提供部108がユーザに対して情報を提供する。本実施形態では、情報提供部108は、スピーカ108bを用いて「30メートル先を左折です」という内容の音声情報を提供し、同時に表示装置108aに表示された地図上に経路を表示する。
【0036】
<情報提供後の運転操作認識>
続いて、ステップS602において、運転操作認識部104は、ユーザの運転操作を認識する。本実施形態においては、ハンドルを切る方向、ウィンカー点滅状況、車内カメラ103aにより撮影したユーザ頭部の動作が認識すべき要素となる。
【0037】
本実施形態においては運転操作として、ハンドルの左方向への操作、左ウィンカーの点灯、頭部動作、およびアクセル操作が認識された。これを図7(a)に示した車両状態判断テーブルからの抜粋と対比すると、現在は「左折中」であると判断できる。判断結果はユーザ状態推定部105に送信される。
【0038】
<理解度判断>
続いて、ステップS603において、ユーザ状態推定部105は、先のステップで認識した運転操作に基づいてユーザの理解度を判断する。図7(b)に示した理解判断テーブルからの抜粋と対比すると、ユーザが経路案内に従って運転操作をしていることから、情報を理解していると判断できる。ユーザ状態推定部105は、判断結果を情報制御部107に送信する。
【0039】
<情報提供方法判断>
続いて、ステップS604において、情報制御部107は、提供した情報内容と、それに対する理解度とに基づいて、次回にユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。なお、この場合、ナビゲーション情報であるためユーザの心理状況はあまり問題とならず、専ら理解度に基づいて判断を行う。図7(c)に示した提供方法判断テーブルからの抜粋と対比すると、ユーザは経路情報を理解していることから、ナビゲーションを継続する。
【0040】
一方、もしステップS603で「理解なし」と判断されていれば、情報制御部107は情報の内容または提供方法を変更する。内容変更する例としては、別の経路を探索してナビゲーションする場合が挙げられる。提供方法を変更する例としては、ユーザの心理状況に応じて、ユーザが受容しやすい口調や声質に変更する場合が挙げられる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について記述する。ここでは、ユーザの車両に接近中の他の車両がある場合に、ユーザに注意を喚起するための情報提供を行う場合について記述する。必要に応じて図8に示した本実施形態の処理全体のフローチャートのステップ番号S801〜S808を参照する。また、図9(a)〜(d)に示したデータベース部の各テーブルからの抜粋などを参照する。
【0042】
<情報提供前のユーザ測定>
まず、図8のステップS801において、ユーザ測定部103はユーザの身体的状態を測定する。ここでは、車内カメラ103aによってユーザの画像を取得することによって測定を行う。ユーザ測定部103は、取得した画像データをユーザ状態推定部105に送信する。
【0043】
<情報提供>
続いて、ステップS802において、情報提供部108は、スピーカ108bを用いてユーザに情報を提供する。本実施形態においては、ユーザ車両に他の車両が接近中である旨の「注意」レベルの緊急情報を提供する。
【0044】
<情報提供後のユーザ測定>
続いて、ステップS803において、ユーザ測定部103は再度、車内カメラ103aを用いてユーザの画像を取得し、画像データをユーザ状態推定部105に送信する。
【0045】
<心理状況の判断>
続いて、ステップS804において、ユーザ状態推定部105は、ユーザ測定部103から受信した画像データに基づいて情報提供前後それぞれにおけるユーザの心理状況を判
断する。まずユーザ状態推定部105は、受信した顔画像を解析し所定の注目部位の位置を把握する。次に、注目部位の特徴を心理状況判断テーブルに当てはめて、心理状況ごとに確率を求める。次に、個人心理テーブルによる補正を行う。
【0046】
こうして求めた情報提供前における判断結果を図9(a)の1行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は「注意散漫」である可能性が高いと言える。続いて情報提供後における判断結果を図9(a)の2行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は依然として「注意散漫」であると言える。
【0047】
<情報提供後の運転操作認識>
続いて、ステップS805において、運転操作認識部104は、ユーザの運転操作を認識する。本実施形態においては運転操作として、アクセル操作のみが認識された。これを図9(b)に示した車両状態判断テーブルからの抜粋と対比すると、現在は「通常運転」であると判断できる。判断結果はユーザ状態推定部105に送信される。
【0048】
<理解度判断>
続いて、ステップS806において、ユーザ状態推定部105は、先のステップで認識した運転操作に基づいてユーザの理解度を判断する。図9(c)に示した理解判断テーブルからの抜粋と対比すると、情報提供後の運転操作が「通常運転」であることから、情報を理解していないと判断できる。ユーザ状態推定部105は、判断結果を情報制御部107に送信する。
【0049】
<周囲状況判断>
続いて、ステップS807において、周囲状況認識部106は車外カメラ106aを用いて車両の周辺を撮影する。この画像データを解析したところ、本実施形態においては、依然として他の車両がユーザ車両に接近中であると判断された。
【0050】
<情報提供方法判断>
続いて、ステップS808において、情報制御部107は、次回にユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。図9(d)に示した提供方法判断テーブルからの抜粋と対比すると、ユーザは車両接近中という情報を理解していない。また、前述したようにユーザの心理状況は「注意散漫」である。そこで、次回の情報提供時は確実に注意を喚起し危険回避行動を取らせるために、「警告」レベルの緊急情報を提供する。注意を喚起する方法は任意に選択することができ、例えば情報提供開始時にブザー音を鳴らしたり、スピーカの音量を大きくすることもできる。
【0051】
一方、当初の提供情報をユーザが理解し、適切な車間距離を確保するなどの行動をとった場合は一層の注意喚起は不要である。この場合、図9(d)で情報を理解している時の記載に従って、この件に関する情報提供は終了する
【0052】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について記述する。ここでは、ユーザに対して利用可能な音楽CDの情報を提供し、音楽を再生するかどうかを問いかける情報提供を行っている。必要に応じて図10に示した本実施形態の処理全体のフローチャートのステップ番号S1001〜S1007を参照する。また、図11(a)〜(c)に示したデータベース部の各テーブルからの抜粋などを参照する。
【0053】
<情報提供前のユーザ測定>
まず、図10のステップS1001において、ユーザ測定部103はユーザの身体的状態を測定する。測定方法は第2の実施形態と同様である。
【0054】
<情報提供>
続いて、ステップS1002において、情報提供部108は、スピーカ108bを用いてユーザに情報を提供する。本実施形態においては、ある音楽CDが利用可能である旨の情報を提供する。
【0055】
<情報提供後のユーザ測定>
続いて、ステップS1003において、ユーザ測定部103は再度ユーザの身体的状態を測定し、画像データをユーザ状態推定部105に送信する。
【0056】
<心理状況の判断>
続いて、ステップS1004において、ユーザ状態推定部105は、情報提供前後それぞれにおけるユーザの心理状況を判断する。判断方法は前述した第2の実施形態と同様である。こうして求めた情報提供前における判断結果を図11(a)の1行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は「平常」であると判断できる。続いて情報提供後における判断結果を図11(a)の2行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は「快適」であると判断できる。
【0057】
<情報提供後の運転操作認識>
続いて、ステップS1005において、運転操作認識部104は、ユーザの運転操作を認識する。本実施形態においては運転操作として、CD操作とアクセル操作が認識された。これを図9(b)に示した車両状態判断テーブルからの抜粋と対比すると、現在は「CD操作」という状態にあると判断できる。判断結果はユーザ状態推定部105に送信される。
【0058】
<情報提供方法判断>
続いて、ステップS1006において、情報制御部107は、次回にユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を、図11(c)に示した提供方法判断テーブルからの抜粋と対比して決定する。この場合、提供情報の内容は既に実行されたので、この件に関する情報提供を終了する。なお、音楽CDの情報は専ら快適性にかかわる問題であるので、理解度はさほど問題とならず、ユーザの心理状況に基づいて判断を行っている。その後、ステップS1007において、情報制御部107は、ユーザが「快適」な状況になった音楽CDのID情報を個人履歴テーブルに記録する。
【0059】
なお、上記実施形態は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の車両全体を示すブロック図である。
【図2】本発明の心理状況判断に用いるテーブルを示す図であり、(a)は心理状況判断テーブルを、(b)個人心理テーブルを、それぞれ示す。
【図3】本発明の車両状態判断テーブルを示す図である。
【図4】本発明の理解判断テーブルを示す図である。
【図5】本発明の提供方法判断テーブルを示す図である。
【図6】実施形態1の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態1で使用する各種テーブルを抜粋した表である
【図8】実施形態2の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】実施形態2で使用する各種テーブルを抜粋した表である
【図10】実施形態3の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態3で使用する各種テーブルを抜粋した表である
【符号の説明】
【0061】
102 ユーザ
105 ユーザ状態推定部
107 情報制御部
108 情報提供部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のユーザに適切に情報を提供するシステム、およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全かつ快適な車両の運転を実現するためには、運転中のユーザに対して、適切な情報を、適切な方法で提供し続けることが必要である。ユーザに提供する情報(以下、提供情報という)としては、目的地に到達するまでの経路情報や混雑情報、天候情報のほか、他の車両や通行人が存在する時の警告、注意、快適さを高めるためのスポット情報、音楽やラジオなどの音声情報などがある。これらの情報を、内容に応じた最適な方法、例えば音声や映像などでユーザに提供することにより、安全かつ快適な運転を実現できる。
【0003】
このような分野において従来、運転中のユーザの現在の感性状態を検出して、その結果や運転手の性格に合わせて動作する車両用ソフトウェアが存在している。
【特許文献1】特開2006−190248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同じ情報を提供した場合であっても個人ごとの特性によって情報に対する理解度は異なる。しかしながら従来の技術では、ユーザの理解度を考慮しないまま情報提供を繰り返していた。そのため、情報を十分に理解したユーザに対して冗長な情報を提供したり、情報を理解できなかったユーザに対して補足を行えないなど、非効率的な情報提供を行うおそれがあった。なお、ここで「理解」とは、ユーザが提供情報の意味を分かり、何らかの行動を指示されていれば実行可能な状態を言う。理解度は「理解」または「理解なし」で表される。
【0005】
また、従来の技術では、情報を提供した後にユーザの心理状態がどう変化したかまでは考慮していなかった。そのため、ユーザに対して不適切な情報を提供する場合があった。例えばユーザにとって興味がないスポット情報を説明しても無関心に終わってしまい、このような説明を繰り返した場合、かえってユーザを不快な心理状態にしてしまう。
【0006】
つまり、情報提供後にユーザがどのような状態になったかを判断し、それに基づいて、以降提供すべき情報の内容や提供方法を最適化することが必要とされている。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、情報提供後のユーザ状態を判断した上で、最適な内容および方法で情報を提供できるような、情報提供システムおよび情報提供方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明においては以下の構成によって運転者への情報提供を行う。すなわち本発明の情報提供システムは、ユーザ状態を推定するユーザ状態推定部と、推定結果に基づいて次回提供する情報を決定する情報制御部と、それに従って情報を提供する情報提供部によって構成される。ここでユーザ状態とは、ユーザの内面的な状態であって、運転に影響を及ぼすようなものをいい、具体的には情報提供による心理状況の変化、または提供情報に対する理解度を指す。
【0009】
まず、ユーザ状態推定部について述べる。ユーザ状態推定部は、前記ユーザ状態を推定し、情報制御部に送信する部位である。
【0010】
ここで、ユーザ状態を推定する方法として、情報提供の前後におけるユーザの身体的状態の変化に基づくユーザの心理状況の推定や、情報提供後のユーザの行動に基づくユーザの理解度の推定によることができる。なお、ユーザの身体的状態とは、各種のセンサによって取得した、ユーザに関するデータをいう。例えば、車内カメラで撮影したユーザの表情や、マイクで録音したユーザの音声などが挙げられる。他にも、脈拍計で測定した脈拍、血圧計で測定した血圧など、各種のバイタルサインを使用することができる。また、ユーザの行動は、各種のセンサによってユーザによる運転操作を検知することによって把握できる。例えば、走行または停止、ハンドル操作、ウィンカーやライトの点灯などがある。
【0011】
次に、情報制御部について述べる。情報制御部は、ユーザ状態に基づいて、ユーザに次回提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。つまり、ユーザの心理状況を把握したうえで、どうすれば最適な情報提供を行えるかを判断する。
【0012】
また、情報制御部は、その時々で最適な情報提供を行うために、車両状態を判断材料に加えることもできる。ここで、車両状態とは、車両がどのような状態にあるかを周囲状況および前述した運転操作を元に総合的に判断したものである。例えば、通常運転中、運転多忙、車両接近中、などの状態がある。また、周囲状況とは、車両外部にあって、運転に影響を与えるような種々の状況をいう。例えば、他の車両や交通情報等である。周囲状況はその種類に応じた方法で取得する。例えば、他の車両の接近は車両に取り付けた車外撮影用カメラから、交通情報は基地局から受信するなどの方法で取得できる。
【0013】
次に情報提供部について述べる。情報提供部は、情報制御部から制御信号等の指示を受けて、ユーザに情報を提供する。提供方法としては音声、画像などを用いることができる。例えば、スピーカによる音声情報や、表示装置による静止画や動画情報を用いることができる。
【0014】
このように構成された本発明によれば、情報提供後のユーザ状態を把握した上で、冗長だったりユーザの特性に合わない情報を排除し、的確な情報提供を行うことができるようになる。そのため、ユーザにとって安全で快適な運転を実現できる。
【0015】
なお、本発明は、上記構成要素の少なくとも一部を有する情報提供システム、または情報提供装置として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む情報提供方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記構成要素および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、情報提供後のユーザ状態を考慮した上で、最適な内容および方法で情報提供を行うような、情報提供システムまたは情報提供方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。まず、以下の実施形態に係る車両の構成について説明する。
【0018】
<システム全体の構成>
図1は本発明にかかる車両の構成を表すブロック図である。本発明の構成要素は車体101に搭載されており、車外と区切られている。ユーザ102は車両の運転手である。
【0019】
ユーザ測定部103はセンサによってユーザの身体的状態を測定するものであり、以下の実施形態ではセンサとして車内カメラ103aを有する。車内カメラ103aはユーザの表情、および頭部の動きを撮影可能である。ユーザ測定部103は、測定結果をユーザ状態推定部105に送信する。
【0020】
運転操作認識部104はセンサによって運転操作を測定するものである。以下の実施形態では、ハンドルを切っている方向、ウィンカーの点灯の有無、オーディオ操作の有無、アクセル操作の有無を認識する。運転操作認識部104は、運転操作の測定結果をユーザ状態推定部105に送信する。
【0021】
ユーザ状態推定部105は、ユーザ測定部103からユーザの身体的状態を、運転操作認識部104から運転操作を受信し、後述する方法によってユーザ状態、すなわちユーザの心理状態の変化および情報の理解度を推定する。ユーザ状態推定部105はユーザ状態を情報制御部107に送信する。
【0022】
周囲状況認識部106はセンサによって車両の周囲状況を測定するものである。以下の実施形態ではセンサとして、車外の様子を撮影可能な車外カメラ106aを備え、他の車両が接近しているかどうかを判断することができる。周囲状況認識部106は、測定した周囲状況を情報制御部107に送信する。
【0023】
情報制御部107は、ユーザ状態と周囲状況、運転操作を総合的に判断し、次回ユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。情報制御部107は、決定した内容通りに情報提供部108が情報提供を行うように、制御信号を出力する。
【0024】
情報提供部108は情報制御部からの制御信号に従ってユーザに情報を提供する。以下の実施形態における情報提供部108は、液晶表示装置108a、スピーカ108bを有する。
【0025】
なお、運転操作認識部104、ユーザ状態推定部105、および情報制御部107は情報を入出力し所定の方法に従って判断を行う機能があれば、実現方法は問わない。例えば、それぞれ専用のプロセッサ等の装置を用いても良いし、ECU等に搭載されるソフトウェアとして構成されても良い。
【0026】
<データベース部のテーブルの構成>
また、情報提供システムはデータベース部を備える。データベース部は、以下に詳述するように、心理状況判断テーブル、個人心理テーブル、車両状態判断テーブル、理解判断テーブル、提供方法判断テーブル、個人履歴テーブルを有する。データベース部は、例えばEPROMなどの読み書き可能な記憶手段によって実現できる。
【0027】
まず、図2(a)に示した心理状況判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、顔の注目部位と、ユーザが抱いている心理状態との関係が記載されている。注目部位とは、顔の構成要素のうち表情の認識に大きく影響する部位を言う。注目部位が標準的な位置からどの程度移動しているかを、可動範囲の中での比によって表すことができる。表情の画像を解析して注目部位の特徴を把握し、このテーブルと比較することにより、ユーザの心理状況の種類それぞれの確率が推定できる。なお、推定精度を増すために、人種、年齢層、性別などによりテーブルを分けることも可能である。本実施形態では日本人、18〜55歳、男性用のテーブルを用いている。
【0028】
次に、図2(b)に示した個人心理テーブルについて説明する。ある程度ユーザの個性
を把握している場合は、心理状況判断テーブルでの判断結果に対して補正を行い、より正確に心理状況を推定することができる。個人心理テーブルには、情報提供の対象となるユーザと、そのユーザが属する集団の平均との間での判断基準のずれが記録されている。したがって、心理状況判断テーブルの出力結果に対して個人心理テーブルの値を用いて補正を行うことができる。本実施形態においては、喜びが実際よりも低く、怒りが実際よりも高く推定される傾向を修正している。
【0029】
次に、図3に示した車両状態判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、運転操作に基づいて車両の現在の状態を判断するための情報が記載されている。当該テーブルのマトリクスには、条件が満たされていれば1が、満たされなければ0が記載され、これら条件の組合せによって判断がなされる。
【0030】
次に、図4に示した理解判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、提供情報の内容と、提供後にユーザが行った運転操作とに基づいて、情報に対する理解度を判断するための情報が記載されている。判断結果は「理解」か「理解なし」の何れかである。
【0031】
次に、図5に示した提供方法判断テーブルについて説明する。当該テーブルには、提供情報の内容と、提供後のユーザの心理状況の変化または理解度とに基づいて、次回にユーザに対して提供すべき情報の内容と提供方法が記載されている。
【0032】
次に、不図示の個人履歴テーブルについて説明する。当該テーブルは、オーディオ機器やナビゲーションシステム、ラジオなどの車載情報機器の使用履歴を保持するテーブルである。当該テーブルを参照することにより、ユーザの好みに合った情報提供を行うことが可能となる。
【0033】
<情報の内容>
ユーザに提供する情報は種々の観点から分類することができる。まず、安全性の見地から緊急情報と一般情報に大別される。また、緊急情報の中でも特に緊急性の高いものは警告情報、それに次ぐものは注意情報と呼ぶ。また、一般情報を内容によって区別することができる。例えばナビゲーションのための経路情報、交通情報、オーディオ等車内設備の使用方法、ニュース、音楽CD情報などがある。
【0034】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、第1の実施形態に係る情報提供システムについて説明する。ここでは、目的地までの運転操作中に経路情報を提供してナビゲーションを行う場合について記述する。必要に応じて図6に示した本実施形態の処理全体のフローチャートのステップ番号S601〜S604を参照する。また、図7(a)〜(c)に示したデータベース部の各テーブルからの抜粋を参照する。
【0035】
<情報提供>
まず、図6のステップS601において、情報提供部108がユーザに対して情報を提供する。本実施形態では、情報提供部108は、スピーカ108bを用いて「30メートル先を左折です」という内容の音声情報を提供し、同時に表示装置108aに表示された地図上に経路を表示する。
【0036】
<情報提供後の運転操作認識>
続いて、ステップS602において、運転操作認識部104は、ユーザの運転操作を認識する。本実施形態においては、ハンドルを切る方向、ウィンカー点滅状況、車内カメラ103aにより撮影したユーザ頭部の動作が認識すべき要素となる。
【0037】
本実施形態においては運転操作として、ハンドルの左方向への操作、左ウィンカーの点灯、頭部動作、およびアクセル操作が認識された。これを図7(a)に示した車両状態判断テーブルからの抜粋と対比すると、現在は「左折中」であると判断できる。判断結果はユーザ状態推定部105に送信される。
【0038】
<理解度判断>
続いて、ステップS603において、ユーザ状態推定部105は、先のステップで認識した運転操作に基づいてユーザの理解度を判断する。図7(b)に示した理解判断テーブルからの抜粋と対比すると、ユーザが経路案内に従って運転操作をしていることから、情報を理解していると判断できる。ユーザ状態推定部105は、判断結果を情報制御部107に送信する。
【0039】
<情報提供方法判断>
続いて、ステップS604において、情報制御部107は、提供した情報内容と、それに対する理解度とに基づいて、次回にユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。なお、この場合、ナビゲーション情報であるためユーザの心理状況はあまり問題とならず、専ら理解度に基づいて判断を行う。図7(c)に示した提供方法判断テーブルからの抜粋と対比すると、ユーザは経路情報を理解していることから、ナビゲーションを継続する。
【0040】
一方、もしステップS603で「理解なし」と判断されていれば、情報制御部107は情報の内容または提供方法を変更する。内容変更する例としては、別の経路を探索してナビゲーションする場合が挙げられる。提供方法を変更する例としては、ユーザの心理状況に応じて、ユーザが受容しやすい口調や声質に変更する場合が挙げられる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について記述する。ここでは、ユーザの車両に接近中の他の車両がある場合に、ユーザに注意を喚起するための情報提供を行う場合について記述する。必要に応じて図8に示した本実施形態の処理全体のフローチャートのステップ番号S801〜S808を参照する。また、図9(a)〜(d)に示したデータベース部の各テーブルからの抜粋などを参照する。
【0042】
<情報提供前のユーザ測定>
まず、図8のステップS801において、ユーザ測定部103はユーザの身体的状態を測定する。ここでは、車内カメラ103aによってユーザの画像を取得することによって測定を行う。ユーザ測定部103は、取得した画像データをユーザ状態推定部105に送信する。
【0043】
<情報提供>
続いて、ステップS802において、情報提供部108は、スピーカ108bを用いてユーザに情報を提供する。本実施形態においては、ユーザ車両に他の車両が接近中である旨の「注意」レベルの緊急情報を提供する。
【0044】
<情報提供後のユーザ測定>
続いて、ステップS803において、ユーザ測定部103は再度、車内カメラ103aを用いてユーザの画像を取得し、画像データをユーザ状態推定部105に送信する。
【0045】
<心理状況の判断>
続いて、ステップS804において、ユーザ状態推定部105は、ユーザ測定部103から受信した画像データに基づいて情報提供前後それぞれにおけるユーザの心理状況を判
断する。まずユーザ状態推定部105は、受信した顔画像を解析し所定の注目部位の位置を把握する。次に、注目部位の特徴を心理状況判断テーブルに当てはめて、心理状況ごとに確率を求める。次に、個人心理テーブルによる補正を行う。
【0046】
こうして求めた情報提供前における判断結果を図9(a)の1行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は「注意散漫」である可能性が高いと言える。続いて情報提供後における判断結果を図9(a)の2行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は依然として「注意散漫」であると言える。
【0047】
<情報提供後の運転操作認識>
続いて、ステップS805において、運転操作認識部104は、ユーザの運転操作を認識する。本実施形態においては運転操作として、アクセル操作のみが認識された。これを図9(b)に示した車両状態判断テーブルからの抜粋と対比すると、現在は「通常運転」であると判断できる。判断結果はユーザ状態推定部105に送信される。
【0048】
<理解度判断>
続いて、ステップS806において、ユーザ状態推定部105は、先のステップで認識した運転操作に基づいてユーザの理解度を判断する。図9(c)に示した理解判断テーブルからの抜粋と対比すると、情報提供後の運転操作が「通常運転」であることから、情報を理解していないと判断できる。ユーザ状態推定部105は、判断結果を情報制御部107に送信する。
【0049】
<周囲状況判断>
続いて、ステップS807において、周囲状況認識部106は車外カメラ106aを用いて車両の周辺を撮影する。この画像データを解析したところ、本実施形態においては、依然として他の車両がユーザ車両に接近中であると判断された。
【0050】
<情報提供方法判断>
続いて、ステップS808において、情報制御部107は、次回にユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を決定する。図9(d)に示した提供方法判断テーブルからの抜粋と対比すると、ユーザは車両接近中という情報を理解していない。また、前述したようにユーザの心理状況は「注意散漫」である。そこで、次回の情報提供時は確実に注意を喚起し危険回避行動を取らせるために、「警告」レベルの緊急情報を提供する。注意を喚起する方法は任意に選択することができ、例えば情報提供開始時にブザー音を鳴らしたり、スピーカの音量を大きくすることもできる。
【0051】
一方、当初の提供情報をユーザが理解し、適切な車間距離を確保するなどの行動をとった場合は一層の注意喚起は不要である。この場合、図9(d)で情報を理解している時の記載に従って、この件に関する情報提供は終了する
【0052】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について記述する。ここでは、ユーザに対して利用可能な音楽CDの情報を提供し、音楽を再生するかどうかを問いかける情報提供を行っている。必要に応じて図10に示した本実施形態の処理全体のフローチャートのステップ番号S1001〜S1007を参照する。また、図11(a)〜(c)に示したデータベース部の各テーブルからの抜粋などを参照する。
【0053】
<情報提供前のユーザ測定>
まず、図10のステップS1001において、ユーザ測定部103はユーザの身体的状態を測定する。測定方法は第2の実施形態と同様である。
【0054】
<情報提供>
続いて、ステップS1002において、情報提供部108は、スピーカ108bを用いてユーザに情報を提供する。本実施形態においては、ある音楽CDが利用可能である旨の情報を提供する。
【0055】
<情報提供後のユーザ測定>
続いて、ステップS1003において、ユーザ測定部103は再度ユーザの身体的状態を測定し、画像データをユーザ状態推定部105に送信する。
【0056】
<心理状況の判断>
続いて、ステップS1004において、ユーザ状態推定部105は、情報提供前後それぞれにおけるユーザの心理状況を判断する。判断方法は前述した第2の実施形態と同様である。こうして求めた情報提供前における判断結果を図11(a)の1行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は「平常」であると判断できる。続いて情報提供後における判断結果を図11(a)の2行目に示す。これによると、ユーザの心理状態は「快適」であると判断できる。
【0057】
<情報提供後の運転操作認識>
続いて、ステップS1005において、運転操作認識部104は、ユーザの運転操作を認識する。本実施形態においては運転操作として、CD操作とアクセル操作が認識された。これを図9(b)に示した車両状態判断テーブルからの抜粋と対比すると、現在は「CD操作」という状態にあると判断できる。判断結果はユーザ状態推定部105に送信される。
【0058】
<情報提供方法判断>
続いて、ステップS1006において、情報制御部107は、次回にユーザに提供すべき情報の内容と提供方法を、図11(c)に示した提供方法判断テーブルからの抜粋と対比して決定する。この場合、提供情報の内容は既に実行されたので、この件に関する情報提供を終了する。なお、音楽CDの情報は専ら快適性にかかわる問題であるので、理解度はさほど問題とならず、ユーザの心理状況に基づいて判断を行っている。その後、ステップS1007において、情報制御部107は、ユーザが「快適」な状況になった音楽CDのID情報を個人履歴テーブルに記録する。
【0059】
なお、上記実施形態は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の車両全体を示すブロック図である。
【図2】本発明の心理状況判断に用いるテーブルを示す図であり、(a)は心理状況判断テーブルを、(b)個人心理テーブルを、それぞれ示す。
【図3】本発明の車両状態判断テーブルを示す図である。
【図4】本発明の理解判断テーブルを示す図である。
【図5】本発明の提供方法判断テーブルを示す図である。
【図6】実施形態1の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】実施形態1で使用する各種テーブルを抜粋した表である
【図8】実施形態2の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】実施形態2で使用する各種テーブルを抜粋した表である
【図10】実施形態3の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態3で使用する各種テーブルを抜粋した表である
【符号の説明】
【0061】
102 ユーザ
105 ユーザ状態推定部
107 情報制御部
108 情報提供部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のユーザに情報を提供するシステムであって、
提供情報によるユーザの心理状況の変化または提供情報に対する理解度である、ユーザ状態を推定するユーザ状態推定部と、
前記ユーザ状態に基づいて、ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する情報制御部と、
前記ユーザに情報を提供する情報提供部と
を備えることを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記ユーザの身体的状態を検知するユーザ測定部をさらに備え、
前記ユーザ状態推定部は、前記ユーザ測定部が検知した前記身体的状態に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記ユーザの運転操作を検知する運転操作認識部をさらに備え、
前記ユーザ状態推定部は、前記運転操作認識部が検知した前記運転操作に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項4】
車両の周囲状況を検知する周囲状況認識部をさらに備え、
前記情報制御部は、前記ユーザ状態および前記周囲状況に基づいて前記ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項5】
ユーザ毎に身体的状態とユーザ状態との相関を記録した情報を含むデータベース部をさらに備え、
前記ユーザ状態推定部は、前記相関情報を利用して前記ユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記ユーザ測定部は、ユーザの表情画像を取得する撮影手段を有しており、
前記ユーザ状態推定部は、前記表情画像に基づいて前記ユーザ状態を推定する
ことを特徴とする請求項2または5のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項7】
車両のユーザに情報を提供する方法であって、
提供情報によるユーザの心理状況の変化または提供情報に対する理解度である、ユーザ状態を推定するユーザ状態推定ステップと、
前記ユーザ状態に基づいて、ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する情報制御ステップと、
前記ユーザに情報を提供する情報提供ステップと
を有することを特徴とする情報提供方法。
【請求項8】
前記ユーザの身体的状態を検知するユーザ測定ステップをさらに有し、
前記ユーザ状態推定ステップでは、前記ユーザ測定ステップにおいて検知した前記身体的状態に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項9】
前記ユーザの運転操作を検知する運転操作認識ステップをさらに有し、
前記ユーザ状態推定ステップでは、前記運転操作認識ステップにおいて検知した前記運転操作に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項7または8のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項10】
車両の周囲状況を検知する周囲状況認識ステップをさらに有し、
前記情報制御ステップでは、前記ユーザ状態および前記周囲状況に基づいて前記ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項11】
前記ユーザ状態推定ステップでは、ユーザ毎に身体的状態とユーザ状態との相関を記録した情報を利用して前記ユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項8に記載の情報提供方法。
【請求項12】
前記ユーザ測定ステップは、ユーザの表情画像を取得する撮影ステップを含み、
前記ユーザ状態推定ステップは、前記表情画像に基づいて前記ユーザ状態を推定する
ことを特徴とする請求項8または11のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項1】
車両のユーザに情報を提供するシステムであって、
提供情報によるユーザの心理状況の変化または提供情報に対する理解度である、ユーザ状態を推定するユーザ状態推定部と、
前記ユーザ状態に基づいて、ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する情報制御部と、
前記ユーザに情報を提供する情報提供部と
を備えることを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記ユーザの身体的状態を検知するユーザ測定部をさらに備え、
前記ユーザ状態推定部は、前記ユーザ測定部が検知した前記身体的状態に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記ユーザの運転操作を検知する運転操作認識部をさらに備え、
前記ユーザ状態推定部は、前記運転操作認識部が検知した前記運転操作に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項4】
車両の周囲状況を検知する周囲状況認識部をさらに備え、
前記情報制御部は、前記ユーザ状態および前記周囲状況に基づいて前記ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項5】
ユーザ毎に身体的状態とユーザ状態との相関を記録した情報を含むデータベース部をさらに備え、
前記ユーザ状態推定部は、前記相関情報を利用して前記ユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記ユーザ測定部は、ユーザの表情画像を取得する撮影手段を有しており、
前記ユーザ状態推定部は、前記表情画像に基づいて前記ユーザ状態を推定する
ことを特徴とする請求項2または5のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項7】
車両のユーザに情報を提供する方法であって、
提供情報によるユーザの心理状況の変化または提供情報に対する理解度である、ユーザ状態を推定するユーザ状態推定ステップと、
前記ユーザ状態に基づいて、ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する情報制御ステップと、
前記ユーザに情報を提供する情報提供ステップと
を有することを特徴とする情報提供方法。
【請求項8】
前記ユーザの身体的状態を検知するユーザ測定ステップをさらに有し、
前記ユーザ状態推定ステップでは、前記ユーザ測定ステップにおいて検知した前記身体的状態に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項9】
前記ユーザの運転操作を検知する運転操作認識ステップをさらに有し、
前記ユーザ状態推定ステップでは、前記運転操作認識ステップにおいて検知した前記運転操作に基づいてユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項7または8のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項10】
車両の周囲状況を検知する周囲状況認識ステップをさらに有し、
前記情報制御ステップでは、前記ユーザ状態および前記周囲状況に基づいて前記ユーザに提供する情報内容または提供方法を決定する
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項11】
前記ユーザ状態推定ステップでは、ユーザ毎に身体的状態とユーザ状態との相関を記録した情報を利用して前記ユーザ状態の推定を行う
ことを特徴とする請求項8に記載の情報提供方法。
【請求項12】
前記ユーザ測定ステップは、ユーザの表情画像を取得する撮影ステップを含み、
前記ユーザ状態推定ステップは、前記表情画像に基づいて前記ユーザ状態を推定する
ことを特徴とする請求項8または11のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−9413(P2010−9413A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169345(P2008−169345)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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