説明

情報提供システム及びプログラム

【課題】情報提供サーバが走行する車両の所定距離先の寒冷情報を情報提供端末装置に提供して、ドライバが事前に寒冷対策を採れるようにする。
【解決手段】 情報提供サーバ2と複数の情報端末装置4とをネットワークを介して接続し、情報提供サーバ2は、道路の特定区間における気象情報に基づいて、チェーン装着などの寒冷対策の必要性を判断し、その区間よりも上流側を走行中の車両の情報端末装置4に対して、チェーン装着を促すメッセージを含む寒冷対策情報を送信する。情報端末装置4は受信した寒冷対策情報を表示する。上記実施形態において、情報提供サーバ2は、道路に附設されたチェーン装着場に出入りする車両の走行履歴の有無を監視し、車両の走行履歴が認められたときのみ、上記寒冷情報を送信するよう構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が寒冷地を走行する際に必要な、タイヤチェーンの装着などの寒冷対策を行うための情報を提供する情報提供システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる高速道路では車両が寒冷地を走行する際に必要な、タイヤチェーンの装着などの寒冷対策を行うための情報が提供されており、ドライバーはその情報に応じて、予め対応策を採ることができる。
即ち、タイヤチェーンの装着などの寒冷対策のための注意情報が、電光表示板やFM放送等を通じて走行中にドライバーに提供されるため、ドライバーは、迂回したり、或いはそのまま走行するにしても、順次流れる放送等により情報が提供されるので安心して運転を続けることができる。
【0003】
しかし、これは高速道路などごく限られた道路について行われているサービスであって、全体でみれば圧倒的に利用されている一般道においては通常この様な情報提供はなされない。
そのため、例えばタイヤにチェーンを装着しなければならないにも拘わらず、そのまま進行してしまい、降雪や路面凍結が発生するエリアに到達した段階でチェーンの装着場所を探したり、或いは、予め予測してチェーンなどを装着して寒冷対策を施しても、実際にはそのような対策が不要であることもあり、不便である。
とくに、一般道においては、降雪や路面凍結が発生するエリアに達したときは、もはや迂回なども不可能で、タイヤにチェーンを取り付けるにしてもチェーン装着場所が無く、道路に車両を止めてチェーンの取り付け作業等を行わざるを得ず通行の妨げとなることがあり得る。
【0004】
このような問題を解決するため、車両に搭載したナビゲーション装置で、チェーンの装脱について指示を行うようにした車両用情報提供装置が知られている(特許文献1参照)。
この車両用情報提供装置は、走行路面への着雪または路面の凍結を予測する予測手段と、措置場所提供手段とを有し、上記予測手段の予測結果に基づき、タイヤチェーンの着脱場所についての情報を提供するものであって、上記予測手段としては、対向車からの通信や路側ビーコンからの通信で、或いは気温や天気予報などにより前方道路の路面の着雪や凍結情報を予測する。そして、着雪や凍結情報を予測した場合には、地図情報記憶手段の道路形状データ等に基づいてチェーン装着が必要となる場所の手前で、チェーン装着が行える場所を探索し、得られたチェーン装着場所を出力する。これによってドライバーは、指示に従って、チェーン装着を行うことができる。
【0005】
また、これとは別にナビコントローラで最適誘導経路の検索を行った時点の季節や、検索された最適誘導経路中の地域事情などの路面凍結予測判断データに基づき、路面凍結の可能性を判断する凍結予測判断部を備え、凍結予測判断部により路面凍結の可能性有りと判断され、かつ外気温度が凍結可能温度以下であるときは、車載のアンチロッキングブレーキシステムなどの走行安全性向上システムの作動回数が所定の回数になると、最寄りのチェーン着脱所までの経路を再検索して、誘導経路変更を行う車両用経路誘導装置も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
上記従来の装置は、いずれも凍結などの寒冷による道路の危険状態を予測して車両を事前にチェーン着脱所に誘導するものであり、一般道を走行する走行車両に便利な安全機能を提供することができる。
しかし、上記従来の装置は、いずれもチェーンの装着場への誘導のための処理は全て車載装置が行っている。つまり、個々の車載装置がチェーンの装着場への誘導だけではなく、気象データの収集から凍結予測或いは凍結判断のための処理機能を備えている。したがって、上記従来の車載装置は上記処理機能を備えた専用のものであり、車載装置が重装備化してコストも高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10 −19583号公報
【特許文献2】特開2004−239739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、例えば、降雪或いは低温で路面凍結中のエリアに向かって車両で走行中のユーザに対して、寒冷対策の要・不要情報を情報提供サーバから走行車両のドライバが所持する一般的な情報端末装置に提供できるようにして、誰でも事前に寒冷対策情報を受けることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、互いに通信可能に接続された情報提供サーバと車両と共に移動する複数の情報端末装置とからなる情報提供システムであって、前記情報端末装置は、位置情報を取得する位置情報取得手段と、取得した位置情報、当該位置情報を取得した時刻である時刻情報、及び識別情報を所定時間間隔で送信する送信制御手段と、報知手段と、を備え、前記情報提供サーバは、前記情報端末装置から所定時間間隔で送信される前記情報を受信する受信手段と、受信した前記情報を履歴情報として履歴情報DBに蓄積する履歴情報蓄積管理手段と、前記端末装置を配置した車両が移動するエリアの気象情報を少なくとも蓄積した気象情報DBを管理する気象情報管理手段と、前記受信した情報と気象情報により、前記車両の寒冷対策の要否を判断する寒冷対策判断手段と、を備え、前記寒冷対策判断手段が寒冷対策要と判断したとき、前記情報端末装置に寒冷対策情報を送信し、かつ、前記情報端末装置は送信された前記寒冷対策情報を報知することを特徴とする情報提供システムである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された情報提供システムにおいて、前記情報提供サーバは、さらに前記履歴情報DBに蓄積された前記履歴情報を監視する履歴情報監視手段を備え、前記寒冷対策判断手段は、前記履歴情報監視手段が道路に附設された寒冷対策エリアにおける前記履歴情報の存在を確認したことを条件に、寒冷対策要と判断することを特徴とする情報提供システムである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された情報提供システムにおいて、前記寒冷対策判断手段は、前記履歴情報中の位置情報に基づき、特定した前記寒冷対策エリアの下流側を走行する車両の前記情報端末装置から寒冷対策要の情報を取得したことを条件に、前記寒冷対策情報を上流側の車両の情報端末装置に送信することを特徴とする情報提供システムである。
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載された情報提供システムにおいて、前記履歴情報監視手段が道路に附設された寒冷対策エリアにおける前記履歴情報の存在を確認したとき、前記情報提供サーバは、前記履歴情報監視後一定時間、寒冷対策エリアに向かう車両の情報端末装置に寒冷対策情報の送信を継続することを特徴とする情報提供システムである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された情報提供システムにおいて、前記情報提供サーバは、ネットワークを介して取得した前記情報提供サーバのサービス区域の気象情報を管理する気象情報管理手段を有することを特徴とする情報提供システムである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された情報提供システムにおいて、前記情報提供サーバは道路を複数の区間に区切った各道路区間における渋滞判断手段を備え、前記渋滞判断手段は所定時間内における前記寒冷対策エリアを含む道路区間における車両の履歴情報に基づき渋滞を判断し、前記情報端末装置は、前記渋滞情報を前記寒冷対策情報と共に前記情報端末装置に送信することを特徴とする情報提供システムである。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載された情報提供システムにおける情報提供サーバのコンピュータを前記情報提供サーバの各手段として機能させるためのプログラムである。
【0010】
[作用]
本発明の情報提供システムでは、情報提供サーバは、所定の道路を複数の区間に区分した各区間毎に、当該区間を走行する車両内の情報端末装置から定期的に送信されるプローブ情報に含まれる当該情報端末装置(したがって車両)の位置情報及び当該位置情報の取得時刻を表す時刻情報を取得する。
他方、情報提供サーバは、車両が走行中の区間から進行方向(下流側)所定距離におけるエリアの気象情報を入手して、その気象情報が降雪(着雪)或いは低温(路面凍結のおそれのある例えば気温0℃未満:以下総称して寒冷エリアという)であり、寒冷対策が必要と判断したときは、前記寒冷エリアから上流側所定距離内で前記寒冷エリアに向かう車両の情報端末装置に対して、寒冷エリアの道路区間情報を送信し、情報端末装置に寒冷対策情報(例えば、チェーン装着が必要である旨を音声或いは可視情報によるメッセージの表示を含む)を送信し、その報知手段で報知する。
また、情報提供サーバが提供する寒冷対策情報をより確実なものとするため、情報提供サーバは、寒冷対策情報の発信に当たり、走行中の車両の寒冷対策エリア近傍における履歴情報を監視して、寒冷対策エリア内において上記履歴情報を確認することを、上記寒冷対策情報の発信の条件とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザは、従来のように車両側の装置に特別な機能を備えることなく、例えば、カーナビゲーション装置や携帯電話機などのごく普通の情報端末装置を備えることにより、これから通行するエリアにおける車両の寒冷対策の要否についての確実な情報を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の情報提供システムの構成を示す図である。
【図2】図2Aは、本発明の実施形態の情報提供サーバの機能ブロック図であり、図2Bは同情報提供サーバの制御部の機能を示す機能ブロック図である。図2Cは、位置情報送信機能付き情報端末装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の情報提供システムにおける履歴データ登録手順を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施形態の情報提供システムにおける情報提供要求から情報取得までの処理手順を示すフロー図である。
【図5】上記情報端末装置の表示手段の表示例である。
【図6】第2の実施形態の情報提供サーバの機能ブロック図である。
【図7】チェーン装着エリアが附設された道路区間を示す図である。
【図8】履歴情報監視手段に基づく寒冷対策情報の送信処理を行う手順を示すフロー図である。
【図9】第3の実施形態に係る情報提供サーバの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施形態
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の実施形態の情報提供システムは、図1Aに示すように,商用回線やインターネットなどのネットワーク1と、ネットワーク1に接続されるセンター装置の情報提供サーバ2と、ネットワーク1に接続された基地局3と無線接続された位置情報送信機能付き情報端末装置4(例えば、携帯電話機、PDA、ナビゲーション装置)を含み、情報提供サーバ2には外部記憶部22として各種のDB(データベース)が接続されている。なお、外部記憶部22は、ネットワーク1上に設けてもよいし、情報提供サーバ2に内蔵させてもよい。
【0014】
図2Aは、上記情報提供サーバ2の構成を示すブロック図である。
情報提供サーバ2は、情報提供サービスを運営する企業等のセンターに設置されている情報処理装置であり、パーソナルコンピュータやワークステーションなどからなり、予め登録された会員に各種情報提供サービスを行う。
情報提供サーバ2は、図示のように情報提供サーバ2全体を制御する制御部20と、情報端末装置4と通信を行う通信部21と、外部記憶部22と、入力を行う入力部23と、表示部24とから成っている。
【0015】
図2Bは、上記情報提供サーバ2の制御部20の機能を示す機能ブロック図である。
情報提供サーバ2の制御部20は、通信制御手段201、会員情報管理手段202、地図情報管理手段203、履歴情報管理手段204、及び気象情報管理手段205、寒冷対策判断手段206と、各種データベースDB221〜224を有している。
これらの上記各手段は、制御部20を構成するCPU(Central Processing Unit)が、同様に制御部20を構成する図示しないROM(Read Only Memory)内のプログラムを読み出し、同RAM(Random Access Memory)をワークエリアとして使用することにより実現される機能実現手段である。
【0016】
通信制御手段201は、データの送受信を行う通信部41を制御してネットワーク1を介して情報端末装置4との間で通信を行う。会員情報管理手段202、地図情報管理手段203、履歴情報管理手段204、及び気象情報管理手段205は、それぞれ会員情報DB(データベース)221、地図情報DB222、履歴情報DB223、及び気象情報DB224を管理するとともに、通信制御手段201との間で必要なデータのやりとりを行う。寒冷対策判断手段206は、後述するように気象情報又は履歴情報及び気象情報に基づいて、寒冷対策の要・不要を判断すると共に、通信制御手段201の間で通信のためのデータ等のやり取りを行う。
【0017】
外部記憶部22は、図示のように会員情報DB221、地図情報DB222、履歴情報DB223、及び気象情報DB224から成っている。
会員情報DB221には、情報提供サービスを受けるための会員登録を行ったユーザに関する情報が蓄積されている。ここで、情報提供サービスを受けるための会員登録を行ったユーザに関する情報としては、会員番号、氏名、情報端末装置の認証番号、ユーザID、パスワードなどがある。
【0018】
地図情報DB222には、地図データ(ラスターデータ、ベクターデータで構成される地図データ)が蓄積されている。地図データは、道路をノードとリンクの集合で表した道路ネットワークデータと、地図を表示するための描画データを含み、描画データには、地形や地物の形状を表すポリゴンデータや、地物の位置やその地物の属性データなど含まれている。
【0019】
履歴情報DB223には、予め会員登録されたユーザが所有する情報端末装置4の認証番号と共に、当該情報端末装置4からプローブ信号として定期的に送信される位置情報及び位置取得時刻が受信時刻と共に蓄積されている。
気象情報DB224には、本システムのサービスエリア内全ての例えば1Kmメッシュの気象情報(現在の気象情報及び天気予報)が蓄積されており、情報提供サーバ2は、例えば、インターネットなどの通信網を介して気象情報提供企業のサーバに接続されており、当該サーバから定期的、例えば1時間毎に送信される上記気象情報でその都度更新されるようになっている。
【0020】
図2Cは、位置情報送信機能付き情報端末装置4の機能ブロック図である。
情報端末装置4は、図2Cに示すように、情報端末装置4全体を制御する制御部40、情報提供サーバ2と通信を行う通信部41、GPS電波受信部42及び表示部43、タッチキーや押圧キーなどの適宜の入力手段を備えた入力部44を備えた携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)、カーナビゲーション装置などからなる。表示部43は、例えば液晶やEL(electro-luminescence)などによる薄型表示手段、スピーカ、或いは表示ランプを含むことができる。なお、表示部43は本発明の報知手段を構成する。
【0021】
以上の構成において、情報端末装置4は予め情報提供を受けるための会員登録を行った後、車両の走行中、例えば1分間に1回定期的に基地局3経由でネットワーク1を介して情報提供サーバ2にアクセスし、プローブ信号としてGPS電波受信機で測位した自車の位置情報(経度情報、緯度情報)及び位置情報を測位した時刻を表す時刻情報を送信する。
【0022】
次に、本実施形態の情報提供システムの動作を説明する。
図3は、履歴情報DB223に情報端末装置4の位置情報の履歴を登録する手順を示すフローチャートである。
情報端末装置4は、例えば、ユーザの操作で作動を開始し、一定時間、例えば1分毎に情報提供サーバ2に対し、接続要求する(S101)。この接続要求には、情報端末装置4の認識番号(端末ID)が含まれている。
【0023】
この接続要求信号が情報提供サーバ2で受信されると、情報提供サーバ2側の処理フローがスタートする。即ち、情報提供サーバ2の通信部21で接続要求信号を受信すると、通信制御手段201は、接続要求信号中の端末識別情報を会員情報管理手段202に渡す。会員情報管理手段202は、渡された端末識別情報が会員情報DB221に存在するか否かを調べ、その結果を通信制御手段201に通知する。
【0024】
通信制御手段201は、会員情報管理手段202から「登録済み」との通知を受けた場合は、通信部21から情報端末装置4に対し接続応答信号(登録許可信号)を送信し、「未登録」との通知を受けた場合は、情報端末装置4に対し、登録を受け付けない(S102)。
【0025】
次に、接続応答(OK)信号を通信部41で受信した情報端末装置4は、内蔵するGPS電波受信部42で測位した現在位置の位置情報、当該位置を測位した時刻情報(必要に応じてユーザが設定した車種情報を含む)をプローブ情報として、情報端末装置4に個別に割り当てられた認証番号(必要に応じてユーザID、パスワード)を付加して情報提供サーバ2へ送信する(S103)。なお、このプローブ情報の送信は、車両のエンジンがOFFされた場合にも継続される。情報提供サーバ2内の通信制御手段201は、その通信部21で受信した位置情報を履歴情報管理手段204に渡す。履歴情報管理手段204は、情報端末装置4が当該位置情報を取得した時刻である時刻情報及び道路地図情報に基づく道路名及び例えば数字・文字を割り当てた区間名と共に履歴情報DB223に蓄積する(必要に応じて集計・分析のために、車種別に蓄積する)(S104)。このように、情報端末装置4からの位置情報は、定期的(例えば1分毎)に履歴情報DB223に蓄積される。
なお、情報端末装置4のプローブ情報の送信のタイミングは、1分間隔に限らず、例えば数分間隔でも或いは30秒単位でもよい。このようにして、情報提供サーバ2は、様々な車両に配置された情報端末装置4から取得したプローブ情報に基づいて車両の存在する位置(道路の区間)を判別する。
【0026】
次に、情報提供サーバ2が上記履歴情報を利用して行う処理について説明する。
図4は、情報提供サーバ2が行う上記処理の手順を示す図である。
情報提供サーバ2は、上述のように、情報端末装置4から一定時間毎にプローブ情報を送信し(S201)、情報提供サーバ2はこれを受信すると、上述のように一定時間毎の走行位置の履歴情報(履歴情報)を蓄積する(S202)。
次に、情報提供サーバ2の気象情報管理手段205は、そのサービスエリア内全ての例えば1Kmメッシュの気象情報を蓄積した気象情報DB224から、当該情報端末装置4を搭載した車両が走行する道路区間から所定距離内の前方(下流側)道路区間を含むエリアの気象情報を読み出して(S203)、寒冷対策判断手段206が、当該エリアの気象情報が降雪(積雪)又は気温が道路凍結の恐れがある低温(道路凍結は道路の状態(アップ/ダウン)、凍結防止剤などの使用により一律に決められないが、ここでは、例えば0°C未満)であるかどうかチェックし、上記低温つまりつまり寒冷対策が必要と判断したときは(S204、Yes)、情報提供サーバ2の通信部21から、当該道路区間を走行中の車両及び当該区間から所定距離内の区間を走行中の後続の車両の全ての情報端末装置4に対して、走行方向前方の特定のエリアの気象情報と共に寒冷対策情報(例えばチェーンの装着が必要であることを表わすメッセージ)を送信する(S205)。
【0027】
情報端末装置4は情報提供サーバ2から上記情報を受信すると、図5に示すように、自身の表示装置に寒冷対策エリア(例えばチェーン装着エリア)を含む道路地図と共に、現在位置から前方所定の距離内における気象情報(降雪量(積雪量)、気温など)を表示すると共に、例えば図5に示す寒冷対策情報(タイヤにチェーンを装着するなどの寒冷対策が必要である旨のメッセージ)を報知(ここでは表示)して(S206)、処理を修了する。
【0028】
第2の実施形態
以上の実施形態では、寒冷対策判断手段206は寒冷対策の要・不要を前方のエリアの気象条件のみに基づいて判断しているが、気象の状態によっては、実際に例えばチェーン装着が必要か否かの判断が微妙な場合がある。そこで、このような場合に情報提供サーバ2の寒冷対策情報の信頼性を高めることが必要である。
次に、寒冷対策判断手段206が実際に車両が寒冷対策エリアであるチェーン装着エリアに立ち寄ったかどうかを監視して、立ち寄ったと判断したときに、後続区間を走行中の車両(情報端末装置4)に対して、その旨を表示したり或いは、対策を促すメッセージなどを送信する寒冷対策情報を送る実施形態について説明する。
【0029】
例えば、上記ステップS204において、寒冷対策判断手段206は寒冷対策が必要と判断しているが、そのメッセージを受けた車両が実際にチェーン装着などの寒冷対策を行うか否かの確認はできない。また、現在は降雪(積雪)状態又は上記低温でなくとも、予防的に例えばチェーンの装着を行うことがある。そのため、本実施形態では、情報提供サーバ2側は、チェーン装着エリアを監視して、実際にチェーン装着エリアに立ち寄った車両があるときは、後続車両に、チェーンを装着するように促すためのメッセージを送信するようにしている。
【0030】
図6は、本実施形態に係る情報提供サーバ2の制御部20の機能ブロック図である。
本実施形態では、図2Aに示す情報提供サーバ2に更に履歴情報監視手段207が付加されている。
ここで履歴情報とは、情報端末装置4が測位した経度・緯度からなる位置及び位置情報取得時刻を表す一群の情報(データ)であり、履歴情報により情報端末装置4を配置した車両の走行状態を解析する。即ち、履歴情報監視手段207は、履歴情報管理手段204を介して履歴情報DB223から取得した上記時刻情報に基づく車両の時系列的な位置情報により、車両の上記チェーン装着エリアへの出入りを監視する。
【0031】
情報提供サーバ2の履歴情報監視手段207は、履歴情報DB223に蓄積された車両の履歴情報に基づき、監視対象道路に附設された路面凍結または降雪(積雪)に備えた対策を施すための特定エリア(寒冷対策エリア)、例えばチェーン装着エリア及びその近傍における車両の走行状態を監視する。履歴情報監視手段207が寒冷対策エリア内における車両の履歴情報を確認したときは、寒冷対策判断手段206は、当該寒冷対策エリアの下流側の道路区間の気象情報が所定の低温であることを条件に、寒冷対策要と判断し、情報端末装置4に対して寒冷対策情報を送信(通知)する。
【0032】
図7は、車両の寒冷対策を施すための寒冷対策エリア、即ち、路面(道路)凍結又は降雪対策、例えば、チェーン装着のためのエリアが附設された道路区間を示す図であり、図7Aは、チェーンの装着が行われている現場付近の状態を、また、図7Bはチェーンの装着は行われていない状態を、ここでは、後述する渋滞の状態と併せて表示している。
図中、30は道路(ここでは片側2車線)を示し、32は道路に附設されたチェーン装着エリアを示す。また図中、34は車両の位置情報を表示部24で表示した道路地図上にプロットした位置情報点である。即ち、図7Bは、走行する車両の情報端末装置4から、例えば1分間に1又は数回プローブ情報として送信され履歴情報管理手段204に格納された位置情報及び時刻情報を、履歴情報管理手段204により読み出して表示部24で道路画面に重ねて可視的に表示した例である。
なお、位置情報点34により、一つの情報端末装置4(したがって、当該情報端末装置4を配置した車両)の位置を連続して表示しても、また、多数の異なる情報端末装置4の位置を同時に表示してもよい。
【0033】
図8は、履歴情報監視手段に基づく寒冷対策情報の送信処理を行う手順を示すフロー図である。
履歴情報監視手段207は、上記チェーン装着エリア32の下流側の道路区間の気象情報を気象情報DB224から読み出し(S301)、当該区間の気温が所定の温度以下の場合であるときは(S302、Yes)、履歴情報監視手段207は、履歴情報管理手段204を介して履歴情報DB223に蓄積された車両の位置データを読み出し(S303)、寒冷対策エリアである上記チェーン装着エリア32へ進入し、かつそこから出て行くことを示す履歴情報の有無をチェックし(S304)、履歴情報があれば(S304、Yes)、後続車両の情報端末装置4に対して、チェーン装着エリアに進入する車両があるとして寒冷対策情報(例えば、現在位置、寒冷区間、地図情報と共にチェーン装着を促すメッセージ)を送信する(S305)。寒冷対策情報を受信した情報端末装置4は、その表示部43に寒冷対策情報を表示する(S306)。
なお、上記実施形態において、上記チェーン装着エリア内における履歴情報、つまり車両が上記チェーン装着エリア内に滞在した時間が所定時間を超えたときに、その情報に基づきチェーン装着を促すメッセージを送信する処理を行ってもよい。
【0034】
以上の処理において、所定時間内における上記履歴情報、即ち道路の位置情報点34の数(密度)、または、同じ端末装置の移動距離と時間の関係から、当該道路が渋滞しているか否かを判断することができる。つまり、所定時間に通行する車両の位置情報を、道路を示す画面上にプロットしていくことにより、その位置情報点34の数(従って密度)から、それが所定の基準値(閾値)を超えていれば渋滞していると判断することができる。
他方、車両がチェーン装着時に道路が渋滞することがある。そこで次に、道路の渋滞の検知について説明する。
【0035】
例えば、図7に示す2車線の道路における渋滞状態を監視することで、情報提供サーバ2は、チェーン装着のための渋滞が発生しているか否か、或いは渋滞が発生している場合でも、その渋滞がチェーン装着によるものでないか等の判断が可能であり、これに基づき、後続車両に、例えば、既にチェーンを装着したりスノータイヤを装着した車両は右側を走行するように、またチェーンを装着した車両に対しては左側を走行するように案内することにより、よりきめの細かい情報提供を行うことができる。
【0036】
第3の実施形態
図9は、第3の実施形態に係る情報提供サーバの制御部の機能ブロック図である。
本実施形態では、図示のように情報提供サーバ2に渋滞判断手段208が設けられている。渋滞判断手段208は、一定時間内及び一定の道路区間内におけるプローブ情報に含まれる車両の位置情報を発信した点(位置情報点34)の密度(道路幅が一定であればその数)を計測することで、その密度(数)が所定値以上になったとき、渋滞が発生していると判断する。
これを上記各実施形態に適用して、チェーン装着エリアにおける上記位置情報点34の密度が一定値以上に達したことを条件に、情報提供サーバ2が上記チェーン装着エリアの上流側及び下流側の渋滞情報を提供することができる。
【0037】
次に、その一例として、渋滞が発生したときの情報提供サーバが行う寒冷対策エリアにおける監視手法についてその処理を説明する。
情報提供サーバ2の寒冷対策判断手段206が気象情報管理手段205により取得した気象情報に基づき道路の特定の区間が低温であると判断したときは、履歴情報監視手段207は、履歴情報管理手段204により取得した履歴情報DB223の履歴情報から、上記チェーン装着エリア32付近の情報端末装置4から送信される車両の時系列的な位置情報を読み出して、上記チェーン装着エリア32付近の位置情報の動向を監視する。ここで、車両の位置情報を表す位置情報点34が予めその位置情報(経度、緯度情報)が登録されている上記チェーン装着エリア32及びその手前側で密に分布して(具体的には所定の閾値を越えているときは)渋滞と認められかつ、上記チェーン装着エリア32の下流側では疎になっていて(所定の閾値未満であり)渋滞と認められないときは、渋滞判断手段208はチェーン装着による渋滞発生と判断する。
【0038】
即ち、図7Aは、複数の車両の位置情報点34の断続した流れが道路左側のレーンからチェーン装着エリアに入り、次にチェーン装着エリアから出て、再び元のレーンに戻る状態を示している。これは、図中、左側のレーンを走行する車両が一旦チェーン装着エリア32に入ってから元のレーンに戻っていく流れであることを示し、チェーン装着エリア32に入る左側のレーンの位置情報点34が密であるのは、その部分で車両が渋滞していることを示している。なお、右側のレーンでは位置情報点34は比較的疎であり、左側のレーンに比して渋滞の程度が低いことを示している。右側レーンを走行する車両は、チェーン装着を必要としないもの、例えばスノータイヤを装着した車両と見なすことができる。
【0039】
情報提供サーバ2側では、このように履歴情報監視手段207が道路30の所定のチェーン装着エリア32を監視することで、走行中の車両がチェーン装着エリア32に入ったかどうか知ることができ、図7Aの状態即ち位置情報点34がチェーン装着エリア32内で確認された場合は、上記チェーン装着エリア32から所定範囲内にある後続車両に、その情報端末装置4に寒冷対策情報と共に、渋滞情報を送信し、その表示部43に上記寒冷対策情報と共に渋滞発生区間、渋滞がチェーンの装着によるものである旨、チェーン装着する車両は左側レーンを走行するように指示するメッセージ等を送信する。なお、ここで、寒冷対策情報にどのようなメッセージを含めるかは任意である。要は、寒冷対策に関連するメッセージであればよい。
【0040】
図7Bは、図7Aと同様、道路が渋滞している状態を示している。但し、この場合は、チェーン装着エリアに入る位置情報点34(したがって車両)は確認できない。
この場合は、渋滞判断手段208は、渋滞の原因がチェーン装着以外であると判断し、情報提供サーバ2は、走行中の車両の情報端末装置4を通じて、その表示部43に渋滞の原因が降雪(積雪)、道路凍結、チェーン着脱以外の要因であることを表示(音声などによるアナウンスを含む)する。
【0041】
渋滞判断手段208は、履歴情報監視手段207が上記位置情報点34の寒冷対策エリアであるチェーン装着エリア32への出入りがないことを確認すると、当該渋滞はチェーンの装着に起因するものではないと判断して、その旨を、情報端末装置4を通じて各ユーザに通知する。
【0042】
なお、上記実施形態では、情報提供サーバ2(履歴情報監視手段207)は、車両がチェーン装着エリアに入ったか否かの判断を単に位置情報点34に基づき行っているため、実際にチェーンを装着したかどうかまでは分からない。そこで、情報提供サーバ2の寒冷対策情報の信頼性を更に高めるため、情報提供サーバ2から上記寒冷対策エリアより下流側(前方)の道路区間を走行中の車両の情報端末装置4に対して、実際にチェーン装着を行ったか否かの質問を送信し、前方車両のユーザから、実際にチェーンを装着した、或いはチェーンを装着しないとの回答を得る構成にすることもできる。
この場合、情報提供サーバ2は、上記寒冷対策エリアより下流側区間を走行中の車両の情報端末装置4を特定できるため、当該特定の情報端末装置4に対し上記質問を行う。質問に対しては受信した情報端末装置4のユーザが当該情報端末装置4を介して回答する。
【0043】
前方車両のユーザからの回答を受信した情報提供サーバ2は、これを後方車両の情報端末装置4に対して送信する。なお、後方車両のユーザは情報端末装置4の無線通話機能を利用して自ら前方車両に対して同様の質問を送信し、前方車両からの回答を受信して、情報提供サーバ2による、チェーン装着情報の真偽を確かめることもできる。
【0044】
情報提供サーバ2の履歴情報DB223には、情報端末装置4に送信した情報を全て蓄積しておくことにより、特定の道路において特定のエリアに降雪(積雪)や路面凍結が発生した日時、曜日、時間帯、その場合における当該道路における各区間の車両の速度(平均速度)が分かるため、例えば、当該エリアを通過する予定のユーザが降雪や路面凍結による渋滞が予想されそうなとき、情報端末装置4から問い合わせキー(図示せず)により情報提供サーバ2に問い合わせることにより、履歴情報管理手段204は、履歴情報DB223から同じ曜日で最も近い走行時間帯における履歴データを検索し、その中から当日の気象条件に最も近い気象情報の履歴情報をさらに検索することで、当該道路の所定位置から当該エリアを通過する大凡の時間を予測することができる。
したがって、ユーザは降雪(積雪)や路面凍結による渋滞が予想されそうなとき当該道路の所定位置を指定することにより、その位置から前記エリアを通過するに要する当日の大凡の所要時間を知ることができる。
また、ユーザが走行中のエリアにおいて、車両が数時間前には走行していたが、現在は、車両が走行していない場合でも、そのエリアにおいてチェーン装着エリアに入ったという履歴情報やチェーン装着エリアに滞在した時間の履歴情報から積雪や道路凍結の可能性のあることを予測して、当該ユーザに対してチェーン装着情報等をメールなどで知らせることができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・・ネットワーク、2・・・情報提供サーバ、3・・・基地局、4・・・情報端末装置、201・・・通信制御手段、202・・・会員情報管理手段、203・・・地図情報管理手段、204・・・履歴情報管理手段、205・・・気象情報管理手段、206・・・寒冷対策判断手段、207・・・履歴情報監視手段、208・・・渋滞判断手段、221・・・会員情報DB、222・・・地図情報DB、223・・・履歴情報DB、224・・・気象情報DB、30・・・道路、32・・・チェーン装着エリア、34・・・位置情報点、40・・・制御部、41・・・通信部、42・・・GPS電波受信手段、43・・・表示部、44・・・入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能に接続された情報提供サーバと車両と共に移動する複数の情報端末装置とからなる情報提供システムであって、
前記情報端末装置は、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、
取得した位置情報、当該位置情報を取得した時刻である時刻情報、及び識別情報を所定時間間隔で送信する送信制御手段と
報知手段と、を備え、
前記情報提供サーバは、
前記情報端末装置から所定時間間隔で送信される前記情報を受信する受信手段と、
受信した前記情報を履歴情報として履歴情報DBに蓄積する履歴情報蓄積管理手段と、
前記端末装置を配置した車両が移動するエリアの気象情報を少なくとも蓄積した気象情報DBを管理する気象情報管理手段と、
前記受信した情報と気象情報により、前記車両の寒冷対策の要否を判断する寒冷対策判断手段と、を備え、
前記寒冷対策判断手段が寒冷対策要と判断したとき、前記情報端末装置に寒冷対策情報を送信し、かつ、前記情報端末装置は送信された前記寒冷対策情報を報知することを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載された情報提供システムにおいて、
前記情報提供サーバは、さらに前記履歴情報DBに蓄積された前記履歴情報を監視する履歴情報監視手段を備え、
前記寒冷対策判断手段は、前記履歴情報監視手段が道路に附設された寒冷対策エリアにおける前記履歴情報の存在を確認したことを条件に、寒冷対策要と判断することを特徴とする情報提供システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された情報提供システムにおいて、
前記寒冷対策判断手段は、前記履歴情報中の位置情報に基づき、特定した前記寒冷対策エリアの下流側を走行する車両の前記情報端末装置から寒冷対策要の情報を取得したことを条件に、前記寒冷対策情報を上流側の車両の情報端末装置に送信することを特徴とする情報提供システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された情報提供システムにおいて、
前記履歴情報監視手段が道路に附設された寒冷対策エリアにおける前記履歴情報の存在を確認したとき、前記情報提供サーバは、前記履歴情報監視後一定時間、寒冷対策エリアに向かう車両の情報端末装置に寒冷対策情報の送信を継続することを特徴とする情報提供システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された情報提供システムにおいて、
前記情報提供サーバは、ネットワークを介して取得した前記情報提供サーバのサービス区域の気象情報を管理する気象情報管理手段を有することを特徴とする情報提供システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された情報提供システムにおいて、
前記情報提供サーバは道路を複数の区間に区切った各道路区間における渋滞判断手段を備え、
前記渋滞判断手段は所定時間内における前記寒冷対策エリアを含む道路区間における車両の履歴情報に基づき渋滞を判断し、
前記情報端末装置は、前記渋滞情報を前記寒冷対策情報と共に前記情報端末装置に送信することを特徴とする情報提供システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された情報提供システムにおける情報提供サーバのコンピュータを前記情報提供サーバの各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−7514(P2011−7514A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148789(P2009−148789)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】