情報提供装置、情報提供システム及び情報提供方法
【課題】対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる情報提供装置、情報提供システム及び情報提供方法を提供する。
【解決手段】制御部10は、時刻t1に車両感知器4を通過した車両が速度超過である場合において、当該車両の速度情報を取得した後、所定時間である解除遅延時間TYが経過する前に、時刻t2(時刻t1の後)に車両感知器4を通過した速度超過の車両の速度情報を取得したときには、先の速度情報を取得した時点ではなく、後の速度情報を取得した時点から所定時間である解除遅延時間TYだけ遅延させた時点で第2の所定情報としての通常図形データを光ビーコン3へ送信する。
【解決手段】制御部10は、時刻t1に車両感知器4を通過した車両が速度超過である場合において、当該車両の速度情報を取得した後、所定時間である解除遅延時間TYが経過する前に、時刻t2(時刻t1の後)に車両感知器4を通過した速度超過の車両の速度情報を取得したときには、先の速度情報を取得した時点ではなく、後の速度情報を取得した時点から所定時間である解除遅延時間TYだけ遅延させた時点で第2の所定情報としての通常図形データを光ビーコン3へ送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の安全運転を支援する装置に関し、特に、車載機と通信可能な路側通信装置へ情報を提供する情報提供装置、該情報提供装置を備える情報提供システム及び情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全運転支援や歩行者の安全を支援するために、道路を走行する車両の情報や歩行者等の情報を検出し、あるいは交通信号機の信号情報などを用いて、車両の運転者に安全運転に有用な情報を提供する路車協調システムなどに関する技術が開発されている。
【0003】
例えば、渋滞や事故情報などの道路交通情報をリアルタイムで提供することができる道路交通情報通信システム(VICS)が実用化されている。道路交通情報通信システムでは、情報提供センタ(例えば、VICSセンタ)で収集又は処理した道路交通情報が路側に設けられた光ビーコンや電波ビーコンへ送信され、車載機は光ビーコン等から道路交通情報を受信する。車載機では、受信した道路交通情報を、例えば、VICSレベル2としての簡易図形で表示して車両の搭乗者へ提供することができる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】住友電気工業株式会社カタログ、「住友のネットワーク・ナビゲーション・システム」、1998年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシステムを利用して、例えば、車両感知器で検出した車両に対して、当該車両の情報に応じた道路交通情報を送信するためには、車両が路側通信装置との通信領域を通過するタイミングを計る必要がある。また、車両検知器で複数の車両が続いて検出された場合には、それぞれの車両に対して、それぞれの車両の情報に応じた道路交通情報を正しいタイミングで送信する必要がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる情報提供装置、該情報提供装置を備える情報提供システム及び情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る情報提供装置は、車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置において、異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報を出力するように構成してあることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る情報提供装置は、第1発明において、前記交通状況情報は、車両の速度情報であり、前記所定条件は、速度超過の有無であることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る情報提供装置は、第1発明又は第2発明において、前記所定情報は、道路の背景を示す図形情報に組み合わされる文字又は図形情報であり、前記第1の所定情報は、前記第2の所定情報よりも、注意喚起の度合いを高くしてあることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記所定時間は、車両が前記車両感知器で感知された感知時点から前記路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間と、前記車両が前記路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間より長いことを特徴する。
【0011】
第5発明に係る情報提供システムは、車両感知器と、車載機と通信可能な路側通信装置と、前記車両感知器で感知した車両の車載機へ前記路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置とを備える情報提供システムにおいて、前記情報提供装置は、異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る情報提供方法は、車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置による情報提供方法おいて、前記情報提供装置は、異なる2つの所定情報を記憶しておき、交通状況に関する交通状況情報を取得し、取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御し、前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力し、前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力することを特徴とする。
【0013】
第1発明、第5発明及び第6発明にあっては、情報提供装置は、異なる2つの所定情報を記憶しておく。情報提供装置は、取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力し、交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合には、第2の所定情報を出力する。情報提供装置は、所定条件を満たす交通状況情報を取得した後、所定時間が経過する前に、所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合には、先の交通状況情報を取得した時点ではなく、別の交通状況情報を取得した時点から所定時間だけ遅延させた時点で第2の所定情報を出力する。
【0014】
例えば、所定情報は、車両の運転者に注意を促すための情報とすることができ、第1の所定情報を第2の所定情報よりも注意喚起の度合いを高くすることができる。例えば、第1の所定情報は「速度注意」に関し、第2の所定情報は「走行注意」に関する情報である。交通状況情報は、例えば、車両の速度であり、所定条件は車両の速度が閾値速度を越えたか否かとすることができる。また、所定時間は、車両が車両感知器で感知された感知時点から路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの時間と、車両が路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間とすることができる。
【0015】
なお、所定時間は、T1−(T2+T3+T4+Ta)+αで求めることもできる。ここで、T1は車両が車両感知器4で感知された感知時点から路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間である。T2は所定情報の伝送時間である。T3は車両感知器4が送信した車両情報を取得した時点から所定情報の送信が可能になるまでの処理時間である。T4は路側通信装置で所定情報を取得した時点から当該所定情報の車載機5への送信が可能になるまでの処理時間である。また、Taは補正時間であり、適宜正負の値を決定することができる。また、αは車両が路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間である。
【0016】
情報提供装置は、車両感知器で感知した車両が速度超過の場合、当該車両が路側通信装置との通信可能領域に進入した時点で、第1の所定情報(「速度注意」に関する情報)を路側通信装置へ送信する。当該車両は路側通信装置から第1の所定情報を受信することができる。速度超過の情報を取得した時点から所定時間経過後、すなわち、当該車両が通信可能領域を通過してしまった時点で、情報提供装置は、第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)を路側通信装置へ送信する。他の車両(速度超過となっていない車両)は、第1の所定情報ではなく第2の所定情報を受信することができる。このように、速度超過の車両に対しては、当該車両に固有の注意喚起を促し、速度超過をしていない車両に対しては、通常の情報を提供する。
【0017】
速度超過の車両が続いて走行している場合、すなわち、所定時間経過する前に、車両感知器で感知した別の車両が速度超過である場合には、当該別の車両の速度超過の情報を取得した時点から所定時間だけ遅延させた時点で第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)を路側通信装置へ送信する。速度超過の別の車両は、第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)ではなく、第1の所定情報(「速度注意」に関する情報)を受信することができる。これにより、対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0018】
第2発明にあっては、交通状況情報は、車両の速度情報であり、所定条件は、速度超過の有無である。これにより、速度が超過している車両と超過していない車両それぞれに対して、正しいタイミングで速度に応じた適切な情報を提供することができる。
【0019】
第3発明にあっては、所定情報は、道路の背景を示す図形情報に組み合わされる文字又は図形情報であり、第1の所定情報は、第2の所定情報よりも、注意喚起の度合いを高くしてある。これにより、所定条件を満たす車両(例えば、速度超過の車両)に対して、正しいタイミングで注意喚起を促すことができる。
【0020】
第4発明にあっては、所定時間は、車両が車両感知器で感知された感知時点から路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間と、当該車両が路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間より長くする。これにより、速度超過の車両が続いて走行する場合でも、速度超過の車両が通信可能領域を通過する間は、当該車両に対して第1の所定情報を提供することができる。また、速度超過の車両が通信可能領域を通過した後は、速度超過ではない車両に対して第2の所定情報を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、対象とする車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】情報提供システムの一例を示す模式図である。
【図2】情報提供装置の一実施の形態としての情報中継装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】簡易図形情報の表示例を示す説明図である。
【図4】簡易図形の一例を示す説明図である。
【図5】簡易図形情報のデータ構造の一例を示す説明図である。
【図6】初期設定の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】通常図形データ又は注意図形データの選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】登録遅延時間TXの算定例を示すタイムチャートである。
【図9】誤った簡易図形が表示される一例を示すタイムチャートである。
【図10】解除遅延時間TYを遅延させる例を示すタイムチャートである。
【図11】渋滞に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。
【図12】障害物に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る情報提供装置及び情報提供システムの実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は情報提供システムの一例を示す模式図であり、図2は情報提供装置の一実施の形態としての情報中継装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報提供システムは、情報提供装置としての情報中継装置1、道路交通情報に含まれる所定情報を送信する情報送信装置としての中央装置2、路側通信装置としての光ビーコン3、画像式の車両感知器4などを備えている。なお、上述の各装置の数や設置場所は、一例であって図1で示す構成に限定されるものではない。
【0024】
交差点から適長(例えば、数百m)離れた地点には、交差点に向かって走行する車両を感知する画像式の車両感知器4を設置してある。車両感知器4は、感知領域40に存在する車両等を検知することができる。車両感知器4は、車両の存在、感知領域40に存在する車両の台数、車両の位置及び速度、車種、感知後の経過時間などの車両感知情報を出力することができる。なお、車両感知器4は、画像式に限定されるものではなく、超音波式など他の方式のものでもよい。
【0025】
車両感知器4が設置された地点と交差点との間の適宜な地点には、光ビーコン3を設置してある。光ビーコン3は、通信可能領域30において車載機5と双方向の通信を行うことができる。すなわち、光ビーコン3を経由して車載機5へ所要の情報が送信される。なお、光ビーコン3に代えて、電波ビーコンなどを用いることもできる。
【0026】
情報中継装置1は、交通管制センタなどに設置され情報提供サービスの運用管理を行うための中央装置2、車両感知器4、及び光ビーコン3等と所定のインタフェース規格で接続される。なお、情報中継装置1は、別個の装置として設置することもできるが、光ビーコン3や不図示の交通信号制御機等に内蔵する構成としてもよい。
【0027】
情報中継装置1は、中央装置2、車両感知器4などが出力する情報を、光ビーコン3に割り当てられた情報提供サービスに応じて中継する。光ビーコン3は、情報中継装置1を経由して中継された情報を取得し、取得した情報を登録情報として記憶する。また、情報中継装置1は、光ビーコン3が出力する情報を中央装置2などに中継する。
【0028】
中央装置2は、光ビーコン3を経由して車載機5へ提供される情報提供サービスを定めたシステム情報を送信する。中央装置2が送信したシステム情報は、情報中継装置1を経由して光ビーコン3で受信される。光ビーコン3は、受信したシステム情報で定められた情報提供サービスに応じて所要の情報を車載機5へ送信する。
【0029】
情報提供システムにより提供されるサービスは、例えば、信号情報を提供する信号情報提供サービス、道路交通に関する規制内容を提供する規制情報提供サービス、道路上の障害物に関する情報を提供する障害物検知情報提供サービス、路面情報を提供する路面情報提供サービスなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
図1の例では、中央装置2は、道路交通情報通信システムの稼働を制御する機能も備える。中央装置2は、道路交通情報を簡易図形情報として提供することができる。簡易図形情報は、道路(例えば、車両が通信可能領域30を通過する際に運転者から見た前方の交差点付近の道路など)の背景を示す簡易図形情報(背景図形データ)、及び道路の背景に組み合わされる2つの所定情報としての簡易図形情報である。2つの所定情報は、文字又は図形情報であり、道路状況や交通状況の変化に対応させた異なる簡易図形情報(通常図形データ及び注意図形データ)である。簡易図形情報の詳細は後述する。
【0031】
中央装置2は、道路の背景を示す簡易図形情報(背景図形データ)、及び2つの所定情報としての簡易図形情報(通常図形データ及び注意図形データ)などを情報中継装置1へ送信する。
【0032】
情報中継装置1は、中央装置2が送信した背景図形データを受信し、受信した背景図形データを光ビーコン3へ送信することにより光ビーコン3に登録する。情報中継装置1は、中央装置2が送信した通常図形データ及び注意図形データを受信する。情報中継装置1は、車両感知器4で感知した交通状況情報としての車両情報(例えば、車両の速度情報)を取得し、取得した車両情報に基づいて、通常図形データ又は注意図形データのいずれか1つが光ビーコン3に登録されるよう制御する。
【0033】
光ビーコン3は、背景図形データと、通常図形データ又は注意図形データのいずれか1つとを組み合わせて車載機5へ送信する。車載機5は、道路の背景に所定情報を組み合わせた簡易図形を表示する。
【0034】
図2に示すように、情報中継装置1は、情報中継装置1全体を制御する制御部10、インタフェース部11、記憶部12、時間算出部13、中継部14などを備えている。時間算出部13は、到達時間算出部131、伝送時間算出部132、遅延時間算出部133、補正時間設定部134などを備えている。
【0035】
インタフェース部11は、中央装置2との間の通信機能を有する。インタフェース部11は、中央装置2から所定情報と識別子とを受信する受信部としての機能を有する。インタフェース部11で受信した所定情報と識別子は、制御部10の制御の下、記憶部12に記憶される。
【0036】
中継部14は、交通状況情報を取得する取得部としての機能を有する。中継部14は、制御部10の制御の下、車両感知器4から送られてきた車両情報を光ビーコン3へ中継する。なお、情報を中継する際に、情報をそのまま中継することもでき、あるいは、車両感知器4から受信した車両情報に対して、制御部10又は中継部14で所要の処理を施し、処理後の情報を光ビーコン3へ中継することもできる。なお、図2の例では、車両感知器4及び光ビーコン3が、それぞれ1台だけ図示されているが、複数台設ける構成でもよい。また、交通信号制御機を設けることもできる。この場合、中継部14は、車両感知器4から送られてきた車両情報を、いずれの光ビーコンへ送出するかを決定する。
【0037】
記憶部12は、図形データ121A、121B、122を、各データを識別する識別子(規格フラグ)に対応付けて記憶する。各図形データは、識別子と対応付けた状態で、例えば、中央装置2から送信される。なお、光ビーコン3が複数設けられている場合には、光ビーコン3の設置場所や交通状況に応じて提供する簡易図形情報も異なることから、記憶部12に各光ビーコン3に対応させて図形データを記憶しておくこともできる。図形データの詳細は後述する。
【0038】
到達時間算出部131は、到達時間特定部としての機能を有する。到達時間算出部131は、車両が車両感知器4で感知された感知時点から光ビーコン3と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間T1を算出(特定)する。なお、到達時間T1の算出は、車両の速度に応じて算出してもよく、予め定められた複数の速度値から所望の値を選択してもよく、あるいは予め定めた値を用いてもよい。到達時間T1はいずれの方法でも特定することができる。
【0039】
伝送時間算出部132は、伝送時間特定部としての機能を有する。伝送時間算出部132は、情報中継装置1から送信された情報(所定情報)が光ビーコン3で受信されるまで(伝送されるまで)の伝送時間T2を算出(特定)する。なお、伝送時間T2の算出は、所定情報の情報量に応じて算出してもよく、予め定められた複数の伝送時間値から所望の値を選択してもよく、あるいは予め定めた値を用いてもよい。伝送時間T2はいずれの方法でも特定することができる。
【0040】
遅延時間算出部133は、到達時間算出部131で算出した到達時間T1から伝送時間算出部132で算出した伝送時間T2を減算して所定情報の送信遅延時間を算出する。送信遅延時間は、登録遅延時間TXであり、所定情報(注意図形データ)の第1送信時点(登録タイミング)を決定するものである。
【0041】
遅延時間算出部133は、到達時間T1から、車両感知器4が送信した車両情報を取得した時点から所定情報の送信が可能になるまでの第1処理時間としての処理時間T3をさらに減算して送信遅延時間を算出することもできる。
【0042】
遅延時間算出部133は、到達時間T1から、光ビーコン3で所定情報を取得した時点から当該所定情報の車載機5への送信が可能になるまでの第2処理時間としての処理時間T4(登録処理等の時間を含む)をさらに減算して送信遅延時間を算出することもできる。
【0043】
補正時間設定部134は、遅延時間算出部133で算出した送信遅延時間を補正するための補正時間Taを設定する。補正時間Taは、正負いずれの値も取り得る。補正時間Taを設定することができることにより、所定情報の送信時点を適宜早くすること、あるいは遅くすることができ、送信タイミングを調整することができる。
【0044】
図3は簡易図形情報の表示例を示す説明図である。所定情報としての図形データ121Aは、通常図形データであり、道路の背景に組み合わされて通常の前景を表わすものである。図形データ121Aは、例えば、「走行注意」などの文字又は図形情報である。
【0045】
所定情報としての図形データ121Bは、注意図形データであり、道路の背景に組み合わされて注意喚起の前景を表わすものである。図形データ121Bは、例えば、「速度注意」などの文字又は図形情報である。
【0046】
図形データ121Bは、車両の運転者に注意を促すための情報とすることができ、図形データ121Bで表示される内容を図形データ121Aで表示される内容よりも注意喚起の度合いや緊急度の度合いなどを高くすることができる。
【0047】
図形データ122は、背景図形データであり、道路の背景を表わすものである。
【0048】
図4は簡易図形の一例を示す説明図である。図4(a)は、運転者等に通常の情報を提供するものであり、例えば、車両の速度が閾値速度を越えていない場合に車両の表示部に表示される簡易図形である。この場合には、通常図形データと背景図形データとが光ビーコン3に登録されることにより、車載機5は、光ビーコン3に登録されたデータを受信し、液晶パネルなどの表示部に道路の背景上に「走行注意」などを表示させることができる。
【0049】
図4(b)は、運転者等に注意を促すための情報を提供するものであり、例えば、車両の速度が閾値速度を越えている場合に車両の表示部に表示される簡易図形である。この場合には、注意図形データと背景図形データとが光ビーコン3に登録されることにより、車載機5は、光ビーコン3に登録されたデータを受信し、液晶パネルなどの表示部に道路の背景上に「速度注意」などを表示させることができる。
【0050】
図5は簡易図形情報のデータ構造の一例を示す説明図である。簡易図形情報である通常図形データ、注意図形データ及び背景図形データは、それぞれヘッダ部とデータ部を含む。ヘッダ部には、規格フラグ、図形種別など示す領域があり、データ部には、図形データ121A、121B、122が格納されている。なお、中央装置2は、図5に例示するデータ構造で簡易図形情報を情報中継装置1へ送信する。
【0051】
図5(a)、図5(b)、図5(c)に示すように、所定情報としての通常図形データ及び注意図形データは、図形種別が24で共通であるが、識別子としての規格フラグにより区別される。すなわち、通常図形データは、規格フラグが0、図形種別が24であるのに対し、注意図形データは、規格フラグが1、図形種別が24である。また、背景図形データは、規格フラグが0、図形種別が32である。なお、背景図形データには、規格フラグを設けなくてもよい。
【0052】
制御部10は、交通状況情報に基づいて規格フラグ(識別子)を選定して1つの所定情報(通常図形データ又は注意図形データのいずれか一方)を選択する選択部としての機能を有する。制御部10は、車両感知器4から送信された車両情報に基づいて、通常図形データ又は注意図形データのいずれか一方を選択し、選択した図形データを光ビーコン3へ送信(出力)する。例えば、車両の速度が速度閾値(例えば、80km/h)より遅い(小さい)場合には、通常図形データを選択することにより、車両の表示部に道路の背景図上に「走行注意」の文字又は図形を表示させることができる。また、車両の速度が速度閾値より速い(大きい)場合には、注意図形データを選択することにより、車両の表示部に道路の背景図上に「速度注意」の文字又は図形などを表示させることができる。
【0053】
より具体的には、制御部10は、登録遅延時間TX及び解除遅延時間TYを算出する。登録遅延時間TXは、車両感知器4を通過した車両が、光ビーコン3との通信可能領域30において、当該車両に対する注意図形データを受信することができるように、情報中継装置1において、注意図形データを送信することができる時点から、実際に光ビーコン3へ送信するまで待機する時間である。また、登録タイミングは、登録遅延時間TXが経過した時点、すなわち、注意図形データを光ビーコン3へ実際に送信するタイミングである。解除遅延時間TYは、登録遅延時間TXに、上述の車両が光ビーコン3との通信可能領域30に入った後当該通信可能領域30の外に出るのに要する時間(例えば、定数α)を加算した時間であり、解除遅延時間TYの算出起点は、登録遅延時間TXの算出起点と同様に情報中継装置1において、注意図形データを送信することができる時点である。また、解除タイミングは、通常図形データを光ビーコン3へ送信するタイミングであり、登録タイミングに上述の定数αを加算したタイミングである。制御部10は、車両の速度が速度閾値より速い(大きい)場合には、登録遅延時間TXが経過した登録タイミングの時点で注意図形データを選択して光ビーコン3へ出力する。その後、制御部10は、解除遅延時間TYが経過した解除タイミングの時点で通常図形データを選択して光ビーコン3へ出力する。
【0054】
これにより、交通状況等が変化する場合(すなわち、速度超過をした車両や速度超過をしていない車両が走行する場合)でも、交通状況に対応して内容の異なる情報を速やかに提供することができる。また、速度超過の車両を検知した場合には、当該車両に対して迅速に速度を下げるよう注意を促すことができ、安全運転に資することができる。
【0055】
光ビーコン3が、規格等の制約から、図形種別が32の背景図形データの他に、図形種別が24の図形データを1つしか登録することができない場合であっても、規格フラグと図形種別とを組み合わせることにより、情報中継装置1において、交通状況情報(例えば、車両速度)に応じて、2つの異なる通常図形データ又は注意図形データのいずれか一方を選択して光ビーコン3に登録することができる。これにより、道路の背景上に組み合わされる簡易図形情報の種別が1つに限定されている場合であっても、異なる簡易図形情報を選択して運転者へ提供することができる。
【0056】
次に、情報中継装置1の動作について説明する。図6は初期設定の処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、中央装置2から図形データ122(背景図形データ)を受信し(S11)、受信した図形データ122を記憶するとともに、光ビーコン3へ送信する(S12)。
【0057】
制御部10は、中央装置2から図形データ121A(通常図形データ)及び図形データ121B(注意図形データ)を受信し(S13)、受信した図形データ121A、121Bを記憶するとともに、図形データ121A(通常図形データ)のみを光ビーコン3へ送信し(S14)、処理を終了する。
【0058】
上述の初期設定の処理により、光ビーコン3は、図形データ122(背景図形データ)と図形データ121A(通常図形データ)とを登録する。登録後は、光ビーコン3との通信可能領域30を通過する車両(車載機5)に対して、図形データ122、121Aを送信する。これにより、車両の表示部には、道路の背景図に「走行注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0059】
図7は通常図形データ又は注意図形データの選択処理の手順を示すフローチャートである。制御部10は、車両感知器4から車両の速度情報を受信し(S21)、当該車両の車両速度が速度閾値より大きいか否かを判定する(S22)。車両速度が速度閾値より大きくない場合(S22でNO)、制御部10は、ステップS21以降の処理を続ける。この結果、速度超過していない車両の表示部には、道路の背景図に「走行注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0060】
車両速度が速度閾値より大きい場合(S22でYES)、制御部10は、登録遅延時間TX及び解除遅延時間TYを算出する(S23)。制御部10は、現示時点が登録タイミングであるか否かを判定し(S24)、登録タイミングでない場合(S24でNO)、ステップS24の処理を続ける。
【0061】
登録タイミングである場合(S24でYES)、制御部10は、図形データ121B(注意図形データ)を光ビーコン3へ送信する(S25)。この場合、光ビーコン3は、予め登録していた図形データ121A(通常図形データ)を破棄し、図形データ121B(注意図形データ)を登録する。これにより、光ビーコン3は、速度超過した車両に対して、図形データ122、121Bを送信することができる。これにより、速度超過した車両の表示部には、道路の背景図に「速度注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0062】
制御部10は、解除タイミングであるか否かを判定し(S26)、解除タイミングでない場合(S26でNO)、ステップS26の処理を続ける。解除タイミングである場合(S26でYES)、制御部10は、図形データ121B(注意図形データ)とは異なる図形データ121A(走行図形データ)を光ビーコン3へ送信する(S27)。この場合、光ビーコン3は、先に受信して登録していた図形データ121B(注意図形データ)を破棄し、図形データ121A(走行図形データ)を登録する。これにより、光ビーコン3は、速度超過した車両が通信可能領域30の外へ出て、速度超過していない他の車両が通信可能領域30を通過する場合、当該他の車両に対して、図形データ122、121Aを送信することができる。これにより、当該他の車両の表示部には、道路の背景図に「走行注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0063】
制御部10は、処理を終了するか否かを判定し(S28)、処理を終了しない場合(S28でNO)、ステップS21以降の処理を続け、処理終了であると判定した場合(S28でYES)、処理を終了する。
【0064】
以下、登録タイミングを決定する登録遅延時間TXの算出方法について説明する。
【0065】
図8は登録遅延時間TXの算定例を示すタイムチャートである。登録遅延時間TXの算定において、簡便な方法は、登録遅延時間TXを車両の到達時間T1とすることであるが、本実施の形態に係る情報中継装置1は、図8に示すような伝送時間T2、処理時間T3、処理時間T4、補正時間Taなどを考慮することにより、対象車両に対して一層正しいタイミングで所定情報を提供することができる。以下、この点について説明する。
【0066】
伝送時間T2は、情報中継装置1から送信された所定情報(注意図形データ、通常図形データ)が光ビーコン3で受信されるまでの時間である。また、処理時間T3は、車両感知器4が送信した車両情報を取得した時点から所定情報の送信が可能になるまでの時間である。また、処理時間T4は、光ビーコン3で所定情報を取得した時点から当該所定情報の車載機5への送信が可能になるまでの時間である。さらに、補正時間Taは、例えば、車両感知器4で車両を検知した時点から車両情報が情報中継装置1で受信されるまでの時間である。
【0067】
図8の例では、時刻t1で車両が車両感知器4を通過し、速度情報が補正時間Ta経過後に情報中継装置1で受信される。情報中継装置1は、速度判定などの処理のため処理時間T3経過時点で注意図形データを送信することが可能になるが、登録遅延時間TX経過後に注意図形データを送信する。注意図形データは、伝送時間T2経過後に光ビーコン3で受信される。光ビーコン3は、注意図形データの登録処理のため処理時間T4経過時点で車載機5へデータを送信可能となる。この時点で車両が通信可能領域30に到達したとすると、登録遅延時間TXは、TX=T1−(T2+T3+T4+Ta)で表わすことができる。通信可能領域30において、車載機5は光ビーコン3に対してアップリンク情報を送信し、光ビーコン3は車載機5へダウンリンク情報を送信する。なお、上述の式において、伝送時間T2、処理時間T3、処理時間T4、補正時間Taの少なくとも1つを考慮することができるが、すべてを考慮すれば、一層正しいタイミングで所定情報を対象車両に提供することができる。
【0068】
解除遅延時間TYは、TY=TX+αで表わすことができる。この場合、αは定数とすることができ、例えば、車両が光ビーコン3との通信可能領域30に入った後当該通信可能領域30の外に出るのに要する時間(すなわち、車両が光ビーコン3との通信可能時間T5)である。
【0069】
図8に示すように、車両感知器4で感知した車両が速度超過の場合、当該車両が光ビーコン3との通信可能領域30に進入した時点で、第1の所定情報(「速度注意」に関する情報)としての注意図形データを光ビーコン3へ送信する。当該車両は光ビーコン3から注意図形データを受信することができる。速度超過の情報を取得した時点から所定時間経過後(解除遅延時間TY経過時点)、すなわち、当該車両が通信可能領域30を通過してしまった時点で、光ビーコン3が通常図形データを受信して登録処理が完了するように、情報中継装置1は、第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)としての通常図形データを光ビーコン3へ送信する。他の車両(速度超過となっていない車両)は、注意図形データではなく通常図形データを受信することができる。このように、速度超過の車両に対しては、当該車両に固有の注意喚起を促し、速度超過をしていない車両に対しては、通常の情報を提供する。
【0070】
図8の例で、処理時間T3、T4、補正時間Taを無視することができる場合、登録遅延時間TXは、到達時間T1から伝送時間T2を減算して算出することができる。注意図形データの送信時点(第1送信時点)は、登録遅延時間TX経過時点である。これにより、所定情報が光ビーコン3で受信される時点で車両が通信可能領域30に到達するので、対象とする車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0071】
処理時間T3を考慮する場合、登録遅延時間TXは、到達時間T1から伝送時間T2及び処理時間T3を減算して算出することができる。これにより、処理時間T3が無視できないほどの時間である場合には、対象とする車両に対して一層精度良く正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0072】
処理時間T4を考慮する場合、登録遅延時間TXは、到達時間T1から、伝送時間T2、処理時間T3及び処理時間T4の合計時間を減算して算出することができる。これにより、処理時間T4が無視できないほどの時間である場合には、対象とする車両に対して一層精度良く正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0073】
補正時間Taを考慮することにより、所定情報の送信時点を適宜早くすること、あるいは遅くすることができ、送信タイミングを調整することができる。
【0074】
通常図形データの送信時点(第2送信時点)は、解除遅延時間TY経過時点である。解除遅延時間TYは、登録遅延時間TXに所定時間(定数αで示す)を加算して算出することができる。これにより、速度が超過した車両には、確実に「速度注意」に関する情報を送信して、速度を下げるように注意を喚起することができるとともに、他の車両(速度超過ではない車両)に対しては、「速度注意」ではなく「走行注意」のように緊急度合いの低い情報を誤りなく提供することができる。
【0075】
次に、車両検知器4で複数の車両が続いて検出される場合について説明する。図9は誤った簡易図形が表示される一例を示すタイムチャートである。図9に示すように、時刻t1で車両感知器4を通過した車両(車載機5)に対して、情報中継装置1は、当該車両が速度超過であるため、登録遅延時間TX経過時点で注意図形データを光ビーコン3へ送信する。これにより、当該車両は、注意図形データを受信して注意図形を表示部に表示させることができる。
【0076】
解除遅延時間TYが経過する前に、例えば、時刻t2で別の車両が車両感知器4を通過し、当該車両が速度超過であった場合、情報中継装置1は、解除遅延時間TYが経過して通常図形データの送信が完了しない限り、注意図形データを光ビーコン3へ送信することができない。このため、注意図形データの送信タイミングがずれる(遅延する)ことになる。すなわち、登録タイミングが遅れることにより、時刻t2で車両感知器4を通過した速度超過の車両に対して、注意図形データではなく通常図形データが送信されてしまう。
【0077】
以下、車両検知器4で複数の車両が続いて検出される場合でも正しいタイミングで所定情報を提供する方法について説明する。図10は解除遅延時間TYを遅延させる例を示すタイムチャートである。図10に示すように、時刻t1で車両感知器4を通過した車両(車載機5)に対して、制御部10は、当該車両が速度超過であるため、登録遅延時間TX経過時点で注意図形データを光ビーコン3へ送信する。これにより、当該車両は、注意図形データを受信して注意図形を表示部に表示させることができる。このように、速度超過の車両に対しては、当該車両に固有の注意喚起を促すことができる。
【0078】
制御部10は、所定条件を満たす交通状況情報を取得した後(すなわち、時刻t1に車両感知器4を通過した車両が速度超過である場合に、当該車両の速度情報を取得した後)、所定時間である解除遅延時間TYが経過する前に、所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合(すなわち、時刻t2に車両感知器4を通過した車両が速度超過である場合に、当該車両の速度情報を取得した場合)には、先の交通状況情報を取得した時点ではなく、別の交通状況情報を取得した時点から所定時間である解除遅延時間TYだけ遅延させた時点で第2の所定情報としての通常図形データを光ビーコン3へ送信する。
【0079】
なお、交通状況情報は、例えば、車両の速度であり、所定条件は車両の速度が閾値速度を越えたか否かとすることができる。また、所定時間である解除遅延時間TYは、車両が車両感知器4で感知された感知時点から光ビーコン3と通信可能になる位置に到達するまでの時間(到達時間T1)と、車両が光ビーコン3との通信可能領域30に入った後当該通信可能領域30の外に出るのに要する時間(車両が光ビーコン3との通信可能領域を通過するのに要する時間である通信可能時間T5)との合計時間とすることができ、あるいは合計時間よりも長くすることができる。なお、伝送時間T2、処理時間T3、T4等を考慮することもできる。これにより、速度超過の車両が続いて走行する場合でも、速度超過の車両が通信可能領域30を通過する間は、当該車両に対して注意図形データを提供することができる。また、速度超過の車両が通信可能領域30を通過した後は、速度超過ではない車両に対して通常図形データを提供することができる。
【0080】
速度超過の車両が続いて走行している場合、すなわち、解除遅延時間TYが経過する前に、車両感知器4で感知した別の車両が速度超過である場合には、制御部10は、当該別の車両の速度超過の情報を取得した時点から解除遅延時間TYの時間だけ遅延させた時点で通常図形データを光ビーコン3へ送信する。速度超過の別の車両が光ビーコン3との通信可能領域30を通過する時点で、光ビーコン3には、注意図形データが登録されているので、当該別の車両は、光ビーコン3との通信可能領域30において、注意図形データを受信することができる。これにより、対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0081】
上述の例では、交通状況情報は、車両の速度情報であったが、これに限定されるものではない。例えば、交通状況情報は、渋滞有無の情報であり、2つの所定情報は、走行注意及び追突注意に関する情報であってもよい。図11は渋滞に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。図11の例は、道路に勾配があり、上り坂を走行する車両が前方の下り坂を走行する車両を確認することができない場合に、前方の渋滞列に追突することを防止すべく渋滞情報を提供するものである。なお、渋滞の有無は、渋滞の長さで判断することができる。この場合、情報中継装置1は、車両感知器4等で検出した渋滞の有無に基づいて、走行注意又は追突注意のいずれかの図形データを選択して光ビーコン3へ送信する。光ビーコン3から図形データを受信した車両では、渋滞が無い場合には、道路の背景上に「走行注意」を表示させることができる。また、渋滞が有る場合には、道路の背景上に「追突注意」などを表示させることができる。これにより、車両の前方に渋滞が生じている場合には、当該車両に対して迅速に注意を促すことができ、安全運転に資することができる。
【0082】
図12は障害物に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。この場合、交通状況情報は、障害物有無の情報であり、2つの所定情報は、走行注意及び障害物注意に関する情報であってもよい。この場合、情報中継装置1は、車両感知器4で検出した障害物の有無に基づいて、走行注意又は障害物注意のいずれかの図形データを選択して光ビーコン3へ送信する。光ビーコン3から図形データを受信した車両では、障害物(例えば、歩行者、合流先の道路を走行する車両など)が無い場合には、道路の背景上に「走行注意」を表示させることができる。また、障害物が有る場合には、道路の背景上に「歩行者注意」、「合流注意」などを表示させることができる。これにより、車両の前方に障害物が存在する場合には、当該車両に対して迅速に注意を促すことができ、安全運転に資することができる。
【0083】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 情報中継装置
2 中央装置
3 光ビーコン
4 車両感知器
5 車載機
10 制御部
11 インタフェース部
12 記憶部
13 時間算出部
131 到達時間算出部
132 伝送時間算出部
133 遅延時間算出部
134 補正時間設定部
14 中継部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の安全運転を支援する装置に関し、特に、車載機と通信可能な路側通信装置へ情報を提供する情報提供装置、該情報提供装置を備える情報提供システム及び情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全運転支援や歩行者の安全を支援するために、道路を走行する車両の情報や歩行者等の情報を検出し、あるいは交通信号機の信号情報などを用いて、車両の運転者に安全運転に有用な情報を提供する路車協調システムなどに関する技術が開発されている。
【0003】
例えば、渋滞や事故情報などの道路交通情報をリアルタイムで提供することができる道路交通情報通信システム(VICS)が実用化されている。道路交通情報通信システムでは、情報提供センタ(例えば、VICSセンタ)で収集又は処理した道路交通情報が路側に設けられた光ビーコンや電波ビーコンへ送信され、車載機は光ビーコン等から道路交通情報を受信する。車載機では、受信した道路交通情報を、例えば、VICSレベル2としての簡易図形で表示して車両の搭乗者へ提供することができる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】住友電気工業株式会社カタログ、「住友のネットワーク・ナビゲーション・システム」、1998年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシステムを利用して、例えば、車両感知器で検出した車両に対して、当該車両の情報に応じた道路交通情報を送信するためには、車両が路側通信装置との通信領域を通過するタイミングを計る必要がある。また、車両検知器で複数の車両が続いて検出された場合には、それぞれの車両に対して、それぞれの車両の情報に応じた道路交通情報を正しいタイミングで送信する必要がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる情報提供装置、該情報提供装置を備える情報提供システム及び情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る情報提供装置は、車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置において、異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報を出力するように構成してあることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る情報提供装置は、第1発明において、前記交通状況情報は、車両の速度情報であり、前記所定条件は、速度超過の有無であることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る情報提供装置は、第1発明又は第2発明において、前記所定情報は、道路の背景を示す図形情報に組み合わされる文字又は図形情報であり、前記第1の所定情報は、前記第2の所定情報よりも、注意喚起の度合いを高くしてあることを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る情報提供装置は、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記所定時間は、車両が前記車両感知器で感知された感知時点から前記路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間と、前記車両が前記路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間より長いことを特徴する。
【0011】
第5発明に係る情報提供システムは、車両感知器と、車載機と通信可能な路側通信装置と、前記車両感知器で感知した車両の車載機へ前記路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置とを備える情報提供システムにおいて、前記情報提供装置は、異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る情報提供方法は、車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置による情報提供方法おいて、前記情報提供装置は、異なる2つの所定情報を記憶しておき、交通状況に関する交通状況情報を取得し、取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御し、前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力し、前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力することを特徴とする。
【0013】
第1発明、第5発明及び第6発明にあっては、情報提供装置は、異なる2つの所定情報を記憶しておく。情報提供装置は、取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力し、交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合には、第2の所定情報を出力する。情報提供装置は、所定条件を満たす交通状況情報を取得した後、所定時間が経過する前に、所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合には、先の交通状況情報を取得した時点ではなく、別の交通状況情報を取得した時点から所定時間だけ遅延させた時点で第2の所定情報を出力する。
【0014】
例えば、所定情報は、車両の運転者に注意を促すための情報とすることができ、第1の所定情報を第2の所定情報よりも注意喚起の度合いを高くすることができる。例えば、第1の所定情報は「速度注意」に関し、第2の所定情報は「走行注意」に関する情報である。交通状況情報は、例えば、車両の速度であり、所定条件は車両の速度が閾値速度を越えたか否かとすることができる。また、所定時間は、車両が車両感知器で感知された感知時点から路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの時間と、車両が路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間とすることができる。
【0015】
なお、所定時間は、T1−(T2+T3+T4+Ta)+αで求めることもできる。ここで、T1は車両が車両感知器4で感知された感知時点から路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間である。T2は所定情報の伝送時間である。T3は車両感知器4が送信した車両情報を取得した時点から所定情報の送信が可能になるまでの処理時間である。T4は路側通信装置で所定情報を取得した時点から当該所定情報の車載機5への送信が可能になるまでの処理時間である。また、Taは補正時間であり、適宜正負の値を決定することができる。また、αは車両が路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間である。
【0016】
情報提供装置は、車両感知器で感知した車両が速度超過の場合、当該車両が路側通信装置との通信可能領域に進入した時点で、第1の所定情報(「速度注意」に関する情報)を路側通信装置へ送信する。当該車両は路側通信装置から第1の所定情報を受信することができる。速度超過の情報を取得した時点から所定時間経過後、すなわち、当該車両が通信可能領域を通過してしまった時点で、情報提供装置は、第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)を路側通信装置へ送信する。他の車両(速度超過となっていない車両)は、第1の所定情報ではなく第2の所定情報を受信することができる。このように、速度超過の車両に対しては、当該車両に固有の注意喚起を促し、速度超過をしていない車両に対しては、通常の情報を提供する。
【0017】
速度超過の車両が続いて走行している場合、すなわち、所定時間経過する前に、車両感知器で感知した別の車両が速度超過である場合には、当該別の車両の速度超過の情報を取得した時点から所定時間だけ遅延させた時点で第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)を路側通信装置へ送信する。速度超過の別の車両は、第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)ではなく、第1の所定情報(「速度注意」に関する情報)を受信することができる。これにより、対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0018】
第2発明にあっては、交通状況情報は、車両の速度情報であり、所定条件は、速度超過の有無である。これにより、速度が超過している車両と超過していない車両それぞれに対して、正しいタイミングで速度に応じた適切な情報を提供することができる。
【0019】
第3発明にあっては、所定情報は、道路の背景を示す図形情報に組み合わされる文字又は図形情報であり、第1の所定情報は、第2の所定情報よりも、注意喚起の度合いを高くしてある。これにより、所定条件を満たす車両(例えば、速度超過の車両)に対して、正しいタイミングで注意喚起を促すことができる。
【0020】
第4発明にあっては、所定時間は、車両が車両感知器で感知された感知時点から路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間と、当該車両が路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間より長くする。これにより、速度超過の車両が続いて走行する場合でも、速度超過の車両が通信可能領域を通過する間は、当該車両に対して第1の所定情報を提供することができる。また、速度超過の車両が通信可能領域を通過した後は、速度超過ではない車両に対して第2の所定情報を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、対象とする車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】情報提供システムの一例を示す模式図である。
【図2】情報提供装置の一実施の形態としての情報中継装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】簡易図形情報の表示例を示す説明図である。
【図4】簡易図形の一例を示す説明図である。
【図5】簡易図形情報のデータ構造の一例を示す説明図である。
【図6】初期設定の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】通常図形データ又は注意図形データの選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】登録遅延時間TXの算定例を示すタイムチャートである。
【図9】誤った簡易図形が表示される一例を示すタイムチャートである。
【図10】解除遅延時間TYを遅延させる例を示すタイムチャートである。
【図11】渋滞に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。
【図12】障害物に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る情報提供装置及び情報提供システムの実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は情報提供システムの一例を示す模式図であり、図2は情報提供装置の一実施の形態としての情報中継装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報提供システムは、情報提供装置としての情報中継装置1、道路交通情報に含まれる所定情報を送信する情報送信装置としての中央装置2、路側通信装置としての光ビーコン3、画像式の車両感知器4などを備えている。なお、上述の各装置の数や設置場所は、一例であって図1で示す構成に限定されるものではない。
【0024】
交差点から適長(例えば、数百m)離れた地点には、交差点に向かって走行する車両を感知する画像式の車両感知器4を設置してある。車両感知器4は、感知領域40に存在する車両等を検知することができる。車両感知器4は、車両の存在、感知領域40に存在する車両の台数、車両の位置及び速度、車種、感知後の経過時間などの車両感知情報を出力することができる。なお、車両感知器4は、画像式に限定されるものではなく、超音波式など他の方式のものでもよい。
【0025】
車両感知器4が設置された地点と交差点との間の適宜な地点には、光ビーコン3を設置してある。光ビーコン3は、通信可能領域30において車載機5と双方向の通信を行うことができる。すなわち、光ビーコン3を経由して車載機5へ所要の情報が送信される。なお、光ビーコン3に代えて、電波ビーコンなどを用いることもできる。
【0026】
情報中継装置1は、交通管制センタなどに設置され情報提供サービスの運用管理を行うための中央装置2、車両感知器4、及び光ビーコン3等と所定のインタフェース規格で接続される。なお、情報中継装置1は、別個の装置として設置することもできるが、光ビーコン3や不図示の交通信号制御機等に内蔵する構成としてもよい。
【0027】
情報中継装置1は、中央装置2、車両感知器4などが出力する情報を、光ビーコン3に割り当てられた情報提供サービスに応じて中継する。光ビーコン3は、情報中継装置1を経由して中継された情報を取得し、取得した情報を登録情報として記憶する。また、情報中継装置1は、光ビーコン3が出力する情報を中央装置2などに中継する。
【0028】
中央装置2は、光ビーコン3を経由して車載機5へ提供される情報提供サービスを定めたシステム情報を送信する。中央装置2が送信したシステム情報は、情報中継装置1を経由して光ビーコン3で受信される。光ビーコン3は、受信したシステム情報で定められた情報提供サービスに応じて所要の情報を車載機5へ送信する。
【0029】
情報提供システムにより提供されるサービスは、例えば、信号情報を提供する信号情報提供サービス、道路交通に関する規制内容を提供する規制情報提供サービス、道路上の障害物に関する情報を提供する障害物検知情報提供サービス、路面情報を提供する路面情報提供サービスなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
図1の例では、中央装置2は、道路交通情報通信システムの稼働を制御する機能も備える。中央装置2は、道路交通情報を簡易図形情報として提供することができる。簡易図形情報は、道路(例えば、車両が通信可能領域30を通過する際に運転者から見た前方の交差点付近の道路など)の背景を示す簡易図形情報(背景図形データ)、及び道路の背景に組み合わされる2つの所定情報としての簡易図形情報である。2つの所定情報は、文字又は図形情報であり、道路状況や交通状況の変化に対応させた異なる簡易図形情報(通常図形データ及び注意図形データ)である。簡易図形情報の詳細は後述する。
【0031】
中央装置2は、道路の背景を示す簡易図形情報(背景図形データ)、及び2つの所定情報としての簡易図形情報(通常図形データ及び注意図形データ)などを情報中継装置1へ送信する。
【0032】
情報中継装置1は、中央装置2が送信した背景図形データを受信し、受信した背景図形データを光ビーコン3へ送信することにより光ビーコン3に登録する。情報中継装置1は、中央装置2が送信した通常図形データ及び注意図形データを受信する。情報中継装置1は、車両感知器4で感知した交通状況情報としての車両情報(例えば、車両の速度情報)を取得し、取得した車両情報に基づいて、通常図形データ又は注意図形データのいずれか1つが光ビーコン3に登録されるよう制御する。
【0033】
光ビーコン3は、背景図形データと、通常図形データ又は注意図形データのいずれか1つとを組み合わせて車載機5へ送信する。車載機5は、道路の背景に所定情報を組み合わせた簡易図形を表示する。
【0034】
図2に示すように、情報中継装置1は、情報中継装置1全体を制御する制御部10、インタフェース部11、記憶部12、時間算出部13、中継部14などを備えている。時間算出部13は、到達時間算出部131、伝送時間算出部132、遅延時間算出部133、補正時間設定部134などを備えている。
【0035】
インタフェース部11は、中央装置2との間の通信機能を有する。インタフェース部11は、中央装置2から所定情報と識別子とを受信する受信部としての機能を有する。インタフェース部11で受信した所定情報と識別子は、制御部10の制御の下、記憶部12に記憶される。
【0036】
中継部14は、交通状況情報を取得する取得部としての機能を有する。中継部14は、制御部10の制御の下、車両感知器4から送られてきた車両情報を光ビーコン3へ中継する。なお、情報を中継する際に、情報をそのまま中継することもでき、あるいは、車両感知器4から受信した車両情報に対して、制御部10又は中継部14で所要の処理を施し、処理後の情報を光ビーコン3へ中継することもできる。なお、図2の例では、車両感知器4及び光ビーコン3が、それぞれ1台だけ図示されているが、複数台設ける構成でもよい。また、交通信号制御機を設けることもできる。この場合、中継部14は、車両感知器4から送られてきた車両情報を、いずれの光ビーコンへ送出するかを決定する。
【0037】
記憶部12は、図形データ121A、121B、122を、各データを識別する識別子(規格フラグ)に対応付けて記憶する。各図形データは、識別子と対応付けた状態で、例えば、中央装置2から送信される。なお、光ビーコン3が複数設けられている場合には、光ビーコン3の設置場所や交通状況に応じて提供する簡易図形情報も異なることから、記憶部12に各光ビーコン3に対応させて図形データを記憶しておくこともできる。図形データの詳細は後述する。
【0038】
到達時間算出部131は、到達時間特定部としての機能を有する。到達時間算出部131は、車両が車両感知器4で感知された感知時点から光ビーコン3と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間T1を算出(特定)する。なお、到達時間T1の算出は、車両の速度に応じて算出してもよく、予め定められた複数の速度値から所望の値を選択してもよく、あるいは予め定めた値を用いてもよい。到達時間T1はいずれの方法でも特定することができる。
【0039】
伝送時間算出部132は、伝送時間特定部としての機能を有する。伝送時間算出部132は、情報中継装置1から送信された情報(所定情報)が光ビーコン3で受信されるまで(伝送されるまで)の伝送時間T2を算出(特定)する。なお、伝送時間T2の算出は、所定情報の情報量に応じて算出してもよく、予め定められた複数の伝送時間値から所望の値を選択してもよく、あるいは予め定めた値を用いてもよい。伝送時間T2はいずれの方法でも特定することができる。
【0040】
遅延時間算出部133は、到達時間算出部131で算出した到達時間T1から伝送時間算出部132で算出した伝送時間T2を減算して所定情報の送信遅延時間を算出する。送信遅延時間は、登録遅延時間TXであり、所定情報(注意図形データ)の第1送信時点(登録タイミング)を決定するものである。
【0041】
遅延時間算出部133は、到達時間T1から、車両感知器4が送信した車両情報を取得した時点から所定情報の送信が可能になるまでの第1処理時間としての処理時間T3をさらに減算して送信遅延時間を算出することもできる。
【0042】
遅延時間算出部133は、到達時間T1から、光ビーコン3で所定情報を取得した時点から当該所定情報の車載機5への送信が可能になるまでの第2処理時間としての処理時間T4(登録処理等の時間を含む)をさらに減算して送信遅延時間を算出することもできる。
【0043】
補正時間設定部134は、遅延時間算出部133で算出した送信遅延時間を補正するための補正時間Taを設定する。補正時間Taは、正負いずれの値も取り得る。補正時間Taを設定することができることにより、所定情報の送信時点を適宜早くすること、あるいは遅くすることができ、送信タイミングを調整することができる。
【0044】
図3は簡易図形情報の表示例を示す説明図である。所定情報としての図形データ121Aは、通常図形データであり、道路の背景に組み合わされて通常の前景を表わすものである。図形データ121Aは、例えば、「走行注意」などの文字又は図形情報である。
【0045】
所定情報としての図形データ121Bは、注意図形データであり、道路の背景に組み合わされて注意喚起の前景を表わすものである。図形データ121Bは、例えば、「速度注意」などの文字又は図形情報である。
【0046】
図形データ121Bは、車両の運転者に注意を促すための情報とすることができ、図形データ121Bで表示される内容を図形データ121Aで表示される内容よりも注意喚起の度合いや緊急度の度合いなどを高くすることができる。
【0047】
図形データ122は、背景図形データであり、道路の背景を表わすものである。
【0048】
図4は簡易図形の一例を示す説明図である。図4(a)は、運転者等に通常の情報を提供するものであり、例えば、車両の速度が閾値速度を越えていない場合に車両の表示部に表示される簡易図形である。この場合には、通常図形データと背景図形データとが光ビーコン3に登録されることにより、車載機5は、光ビーコン3に登録されたデータを受信し、液晶パネルなどの表示部に道路の背景上に「走行注意」などを表示させることができる。
【0049】
図4(b)は、運転者等に注意を促すための情報を提供するものであり、例えば、車両の速度が閾値速度を越えている場合に車両の表示部に表示される簡易図形である。この場合には、注意図形データと背景図形データとが光ビーコン3に登録されることにより、車載機5は、光ビーコン3に登録されたデータを受信し、液晶パネルなどの表示部に道路の背景上に「速度注意」などを表示させることができる。
【0050】
図5は簡易図形情報のデータ構造の一例を示す説明図である。簡易図形情報である通常図形データ、注意図形データ及び背景図形データは、それぞれヘッダ部とデータ部を含む。ヘッダ部には、規格フラグ、図形種別など示す領域があり、データ部には、図形データ121A、121B、122が格納されている。なお、中央装置2は、図5に例示するデータ構造で簡易図形情報を情報中継装置1へ送信する。
【0051】
図5(a)、図5(b)、図5(c)に示すように、所定情報としての通常図形データ及び注意図形データは、図形種別が24で共通であるが、識別子としての規格フラグにより区別される。すなわち、通常図形データは、規格フラグが0、図形種別が24であるのに対し、注意図形データは、規格フラグが1、図形種別が24である。また、背景図形データは、規格フラグが0、図形種別が32である。なお、背景図形データには、規格フラグを設けなくてもよい。
【0052】
制御部10は、交通状況情報に基づいて規格フラグ(識別子)を選定して1つの所定情報(通常図形データ又は注意図形データのいずれか一方)を選択する選択部としての機能を有する。制御部10は、車両感知器4から送信された車両情報に基づいて、通常図形データ又は注意図形データのいずれか一方を選択し、選択した図形データを光ビーコン3へ送信(出力)する。例えば、車両の速度が速度閾値(例えば、80km/h)より遅い(小さい)場合には、通常図形データを選択することにより、車両の表示部に道路の背景図上に「走行注意」の文字又は図形を表示させることができる。また、車両の速度が速度閾値より速い(大きい)場合には、注意図形データを選択することにより、車両の表示部に道路の背景図上に「速度注意」の文字又は図形などを表示させることができる。
【0053】
より具体的には、制御部10は、登録遅延時間TX及び解除遅延時間TYを算出する。登録遅延時間TXは、車両感知器4を通過した車両が、光ビーコン3との通信可能領域30において、当該車両に対する注意図形データを受信することができるように、情報中継装置1において、注意図形データを送信することができる時点から、実際に光ビーコン3へ送信するまで待機する時間である。また、登録タイミングは、登録遅延時間TXが経過した時点、すなわち、注意図形データを光ビーコン3へ実際に送信するタイミングである。解除遅延時間TYは、登録遅延時間TXに、上述の車両が光ビーコン3との通信可能領域30に入った後当該通信可能領域30の外に出るのに要する時間(例えば、定数α)を加算した時間であり、解除遅延時間TYの算出起点は、登録遅延時間TXの算出起点と同様に情報中継装置1において、注意図形データを送信することができる時点である。また、解除タイミングは、通常図形データを光ビーコン3へ送信するタイミングであり、登録タイミングに上述の定数αを加算したタイミングである。制御部10は、車両の速度が速度閾値より速い(大きい)場合には、登録遅延時間TXが経過した登録タイミングの時点で注意図形データを選択して光ビーコン3へ出力する。その後、制御部10は、解除遅延時間TYが経過した解除タイミングの時点で通常図形データを選択して光ビーコン3へ出力する。
【0054】
これにより、交通状況等が変化する場合(すなわち、速度超過をした車両や速度超過をしていない車両が走行する場合)でも、交通状況に対応して内容の異なる情報を速やかに提供することができる。また、速度超過の車両を検知した場合には、当該車両に対して迅速に速度を下げるよう注意を促すことができ、安全運転に資することができる。
【0055】
光ビーコン3が、規格等の制約から、図形種別が32の背景図形データの他に、図形種別が24の図形データを1つしか登録することができない場合であっても、規格フラグと図形種別とを組み合わせることにより、情報中継装置1において、交通状況情報(例えば、車両速度)に応じて、2つの異なる通常図形データ又は注意図形データのいずれか一方を選択して光ビーコン3に登録することができる。これにより、道路の背景上に組み合わされる簡易図形情報の種別が1つに限定されている場合であっても、異なる簡易図形情報を選択して運転者へ提供することができる。
【0056】
次に、情報中継装置1の動作について説明する。図6は初期設定の処理手順を示すフローチャートである。制御部10は、中央装置2から図形データ122(背景図形データ)を受信し(S11)、受信した図形データ122を記憶するとともに、光ビーコン3へ送信する(S12)。
【0057】
制御部10は、中央装置2から図形データ121A(通常図形データ)及び図形データ121B(注意図形データ)を受信し(S13)、受信した図形データ121A、121Bを記憶するとともに、図形データ121A(通常図形データ)のみを光ビーコン3へ送信し(S14)、処理を終了する。
【0058】
上述の初期設定の処理により、光ビーコン3は、図形データ122(背景図形データ)と図形データ121A(通常図形データ)とを登録する。登録後は、光ビーコン3との通信可能領域30を通過する車両(車載機5)に対して、図形データ122、121Aを送信する。これにより、車両の表示部には、道路の背景図に「走行注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0059】
図7は通常図形データ又は注意図形データの選択処理の手順を示すフローチャートである。制御部10は、車両感知器4から車両の速度情報を受信し(S21)、当該車両の車両速度が速度閾値より大きいか否かを判定する(S22)。車両速度が速度閾値より大きくない場合(S22でNO)、制御部10は、ステップS21以降の処理を続ける。この結果、速度超過していない車両の表示部には、道路の背景図に「走行注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0060】
車両速度が速度閾値より大きい場合(S22でYES)、制御部10は、登録遅延時間TX及び解除遅延時間TYを算出する(S23)。制御部10は、現示時点が登録タイミングであるか否かを判定し(S24)、登録タイミングでない場合(S24でNO)、ステップS24の処理を続ける。
【0061】
登録タイミングである場合(S24でYES)、制御部10は、図形データ121B(注意図形データ)を光ビーコン3へ送信する(S25)。この場合、光ビーコン3は、予め登録していた図形データ121A(通常図形データ)を破棄し、図形データ121B(注意図形データ)を登録する。これにより、光ビーコン3は、速度超過した車両に対して、図形データ122、121Bを送信することができる。これにより、速度超過した車両の表示部には、道路の背景図に「速度注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0062】
制御部10は、解除タイミングであるか否かを判定し(S26)、解除タイミングでない場合(S26でNO)、ステップS26の処理を続ける。解除タイミングである場合(S26でYES)、制御部10は、図形データ121B(注意図形データ)とは異なる図形データ121A(走行図形データ)を光ビーコン3へ送信する(S27)。この場合、光ビーコン3は、先に受信して登録していた図形データ121B(注意図形データ)を破棄し、図形データ121A(走行図形データ)を登録する。これにより、光ビーコン3は、速度超過した車両が通信可能領域30の外へ出て、速度超過していない他の車両が通信可能領域30を通過する場合、当該他の車両に対して、図形データ122、121Aを送信することができる。これにより、当該他の車両の表示部には、道路の背景図に「走行注意」等の文字又は図形が組み合わされた簡易図形が表示される。
【0063】
制御部10は、処理を終了するか否かを判定し(S28)、処理を終了しない場合(S28でNO)、ステップS21以降の処理を続け、処理終了であると判定した場合(S28でYES)、処理を終了する。
【0064】
以下、登録タイミングを決定する登録遅延時間TXの算出方法について説明する。
【0065】
図8は登録遅延時間TXの算定例を示すタイムチャートである。登録遅延時間TXの算定において、簡便な方法は、登録遅延時間TXを車両の到達時間T1とすることであるが、本実施の形態に係る情報中継装置1は、図8に示すような伝送時間T2、処理時間T3、処理時間T4、補正時間Taなどを考慮することにより、対象車両に対して一層正しいタイミングで所定情報を提供することができる。以下、この点について説明する。
【0066】
伝送時間T2は、情報中継装置1から送信された所定情報(注意図形データ、通常図形データ)が光ビーコン3で受信されるまでの時間である。また、処理時間T3は、車両感知器4が送信した車両情報を取得した時点から所定情報の送信が可能になるまでの時間である。また、処理時間T4は、光ビーコン3で所定情報を取得した時点から当該所定情報の車載機5への送信が可能になるまでの時間である。さらに、補正時間Taは、例えば、車両感知器4で車両を検知した時点から車両情報が情報中継装置1で受信されるまでの時間である。
【0067】
図8の例では、時刻t1で車両が車両感知器4を通過し、速度情報が補正時間Ta経過後に情報中継装置1で受信される。情報中継装置1は、速度判定などの処理のため処理時間T3経過時点で注意図形データを送信することが可能になるが、登録遅延時間TX経過後に注意図形データを送信する。注意図形データは、伝送時間T2経過後に光ビーコン3で受信される。光ビーコン3は、注意図形データの登録処理のため処理時間T4経過時点で車載機5へデータを送信可能となる。この時点で車両が通信可能領域30に到達したとすると、登録遅延時間TXは、TX=T1−(T2+T3+T4+Ta)で表わすことができる。通信可能領域30において、車載機5は光ビーコン3に対してアップリンク情報を送信し、光ビーコン3は車載機5へダウンリンク情報を送信する。なお、上述の式において、伝送時間T2、処理時間T3、処理時間T4、補正時間Taの少なくとも1つを考慮することができるが、すべてを考慮すれば、一層正しいタイミングで所定情報を対象車両に提供することができる。
【0068】
解除遅延時間TYは、TY=TX+αで表わすことができる。この場合、αは定数とすることができ、例えば、車両が光ビーコン3との通信可能領域30に入った後当該通信可能領域30の外に出るのに要する時間(すなわち、車両が光ビーコン3との通信可能時間T5)である。
【0069】
図8に示すように、車両感知器4で感知した車両が速度超過の場合、当該車両が光ビーコン3との通信可能領域30に進入した時点で、第1の所定情報(「速度注意」に関する情報)としての注意図形データを光ビーコン3へ送信する。当該車両は光ビーコン3から注意図形データを受信することができる。速度超過の情報を取得した時点から所定時間経過後(解除遅延時間TY経過時点)、すなわち、当該車両が通信可能領域30を通過してしまった時点で、光ビーコン3が通常図形データを受信して登録処理が完了するように、情報中継装置1は、第2の所定情報(「走行注意」に関する情報)としての通常図形データを光ビーコン3へ送信する。他の車両(速度超過となっていない車両)は、注意図形データではなく通常図形データを受信することができる。このように、速度超過の車両に対しては、当該車両に固有の注意喚起を促し、速度超過をしていない車両に対しては、通常の情報を提供する。
【0070】
図8の例で、処理時間T3、T4、補正時間Taを無視することができる場合、登録遅延時間TXは、到達時間T1から伝送時間T2を減算して算出することができる。注意図形データの送信時点(第1送信時点)は、登録遅延時間TX経過時点である。これにより、所定情報が光ビーコン3で受信される時点で車両が通信可能領域30に到達するので、対象とする車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0071】
処理時間T3を考慮する場合、登録遅延時間TXは、到達時間T1から伝送時間T2及び処理時間T3を減算して算出することができる。これにより、処理時間T3が無視できないほどの時間である場合には、対象とする車両に対して一層精度良く正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0072】
処理時間T4を考慮する場合、登録遅延時間TXは、到達時間T1から、伝送時間T2、処理時間T3及び処理時間T4の合計時間を減算して算出することができる。これにより、処理時間T4が無視できないほどの時間である場合には、対象とする車両に対して一層精度良く正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0073】
補正時間Taを考慮することにより、所定情報の送信時点を適宜早くすること、あるいは遅くすることができ、送信タイミングを調整することができる。
【0074】
通常図形データの送信時点(第2送信時点)は、解除遅延時間TY経過時点である。解除遅延時間TYは、登録遅延時間TXに所定時間(定数αで示す)を加算して算出することができる。これにより、速度が超過した車両には、確実に「速度注意」に関する情報を送信して、速度を下げるように注意を喚起することができるとともに、他の車両(速度超過ではない車両)に対しては、「速度注意」ではなく「走行注意」のように緊急度合いの低い情報を誤りなく提供することができる。
【0075】
次に、車両検知器4で複数の車両が続いて検出される場合について説明する。図9は誤った簡易図形が表示される一例を示すタイムチャートである。図9に示すように、時刻t1で車両感知器4を通過した車両(車載機5)に対して、情報中継装置1は、当該車両が速度超過であるため、登録遅延時間TX経過時点で注意図形データを光ビーコン3へ送信する。これにより、当該車両は、注意図形データを受信して注意図形を表示部に表示させることができる。
【0076】
解除遅延時間TYが経過する前に、例えば、時刻t2で別の車両が車両感知器4を通過し、当該車両が速度超過であった場合、情報中継装置1は、解除遅延時間TYが経過して通常図形データの送信が完了しない限り、注意図形データを光ビーコン3へ送信することができない。このため、注意図形データの送信タイミングがずれる(遅延する)ことになる。すなわち、登録タイミングが遅れることにより、時刻t2で車両感知器4を通過した速度超過の車両に対して、注意図形データではなく通常図形データが送信されてしまう。
【0077】
以下、車両検知器4で複数の車両が続いて検出される場合でも正しいタイミングで所定情報を提供する方法について説明する。図10は解除遅延時間TYを遅延させる例を示すタイムチャートである。図10に示すように、時刻t1で車両感知器4を通過した車両(車載機5)に対して、制御部10は、当該車両が速度超過であるため、登録遅延時間TX経過時点で注意図形データを光ビーコン3へ送信する。これにより、当該車両は、注意図形データを受信して注意図形を表示部に表示させることができる。このように、速度超過の車両に対しては、当該車両に固有の注意喚起を促すことができる。
【0078】
制御部10は、所定条件を満たす交通状況情報を取得した後(すなわち、時刻t1に車両感知器4を通過した車両が速度超過である場合に、当該車両の速度情報を取得した後)、所定時間である解除遅延時間TYが経過する前に、所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合(すなわち、時刻t2に車両感知器4を通過した車両が速度超過である場合に、当該車両の速度情報を取得した場合)には、先の交通状況情報を取得した時点ではなく、別の交通状況情報を取得した時点から所定時間である解除遅延時間TYだけ遅延させた時点で第2の所定情報としての通常図形データを光ビーコン3へ送信する。
【0079】
なお、交通状況情報は、例えば、車両の速度であり、所定条件は車両の速度が閾値速度を越えたか否かとすることができる。また、所定時間である解除遅延時間TYは、車両が車両感知器4で感知された感知時点から光ビーコン3と通信可能になる位置に到達するまでの時間(到達時間T1)と、車両が光ビーコン3との通信可能領域30に入った後当該通信可能領域30の外に出るのに要する時間(車両が光ビーコン3との通信可能領域を通過するのに要する時間である通信可能時間T5)との合計時間とすることができ、あるいは合計時間よりも長くすることができる。なお、伝送時間T2、処理時間T3、T4等を考慮することもできる。これにより、速度超過の車両が続いて走行する場合でも、速度超過の車両が通信可能領域30を通過する間は、当該車両に対して注意図形データを提供することができる。また、速度超過の車両が通信可能領域30を通過した後は、速度超過ではない車両に対して通常図形データを提供することができる。
【0080】
速度超過の車両が続いて走行している場合、すなわち、解除遅延時間TYが経過する前に、車両感知器4で感知した別の車両が速度超過である場合には、制御部10は、当該別の車両の速度超過の情報を取得した時点から解除遅延時間TYの時間だけ遅延させた時点で通常図形データを光ビーコン3へ送信する。速度超過の別の車両が光ビーコン3との通信可能領域30を通過する時点で、光ビーコン3には、注意図形データが登録されているので、当該別の車両は、光ビーコン3との通信可能領域30において、注意図形データを受信することができる。これにより、対象車両に対して正しいタイミングで所定情報を提供することができる。
【0081】
上述の例では、交通状況情報は、車両の速度情報であったが、これに限定されるものではない。例えば、交通状況情報は、渋滞有無の情報であり、2つの所定情報は、走行注意及び追突注意に関する情報であってもよい。図11は渋滞に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。図11の例は、道路に勾配があり、上り坂を走行する車両が前方の下り坂を走行する車両を確認することができない場合に、前方の渋滞列に追突することを防止すべく渋滞情報を提供するものである。なお、渋滞の有無は、渋滞の長さで判断することができる。この場合、情報中継装置1は、車両感知器4等で検出した渋滞の有無に基づいて、走行注意又は追突注意のいずれかの図形データを選択して光ビーコン3へ送信する。光ビーコン3から図形データを受信した車両では、渋滞が無い場合には、道路の背景上に「走行注意」を表示させることができる。また、渋滞が有る場合には、道路の背景上に「追突注意」などを表示させることができる。これにより、車両の前方に渋滞が生じている場合には、当該車両に対して迅速に注意を促すことができ、安全運転に資することができる。
【0082】
図12は障害物に対応する情報提供システムの一例を示す模式図である。この場合、交通状況情報は、障害物有無の情報であり、2つの所定情報は、走行注意及び障害物注意に関する情報であってもよい。この場合、情報中継装置1は、車両感知器4で検出した障害物の有無に基づいて、走行注意又は障害物注意のいずれかの図形データを選択して光ビーコン3へ送信する。光ビーコン3から図形データを受信した車両では、障害物(例えば、歩行者、合流先の道路を走行する車両など)が無い場合には、道路の背景上に「走行注意」を表示させることができる。また、障害物が有る場合には、道路の背景上に「歩行者注意」、「合流注意」などを表示させることができる。これにより、車両の前方に障害物が存在する場合には、当該車両に対して迅速に注意を促すことができ、安全運転に資することができる。
【0083】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 情報中継装置
2 中央装置
3 光ビーコン
4 車両感知器
5 車載機
10 制御部
11 インタフェース部
12 記憶部
13 時間算出部
131 到達時間算出部
132 伝送時間算出部
133 遅延時間算出部
134 補正時間設定部
14 中継部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置において、
異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、
交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、
該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、
前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報を出力するように構成してあることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記交通状況情報は、車両の速度情報であり、
前記所定条件は、速度超過の有無であることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記所定情報は、
道路の背景を示す図形情報に組み合わされる文字又は図形情報であり、
前記第1の所定情報は、前記第2の所定情報よりも、注意喚起の度合いを高くしてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記所定時間は、
車両が前記車両感知器で感知された感知時点から前記路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間と、前記車両が前記路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間より長いことを特徴する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
車両感知器と、車載機と通信可能な路側通信装置と、前記車両感知器で感知した車両の車載機へ前記路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置とを備える情報提供システムにおいて、
前記情報提供装置は、
異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、
交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、
該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、
前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力するように構成してあることを特徴とする情報提供システム。
【請求項6】
車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置による情報提供方法おいて、
前記情報提供装置は、
異なる2つの所定情報を記憶しておき、
交通状況に関する交通状況情報を取得し、
取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御し、
前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力し、
前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力することを特徴とする情報提供方法。
【請求項1】
車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置において、
異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、
交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、
該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、
前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報を出力するように構成してあることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記交通状況情報は、車両の速度情報であり、
前記所定条件は、速度超過の有無であることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記所定情報は、
道路の背景を示す図形情報に組み合わされる文字又は図形情報であり、
前記第1の所定情報は、前記第2の所定情報よりも、注意喚起の度合いを高くしてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記所定時間は、
車両が前記車両感知器で感知された感知時点から前記路側通信装置と通信可能になる位置に到達するまでの到達時間と、前記車両が前記路側通信装置との通信可能領域を通過するのに要する時間との合計時間より長いことを特徴する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
車両感知器と、車載機と通信可能な路側通信装置と、前記車両感知器で感知した車両の車載機へ前記路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置とを備える情報提供システムにおいて、
前記情報提供装置は、
異なる2つの所定情報を記憶する記憶部と、
交通状況に関する交通状況情報を取得する取得部と、
該取得部で取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、前記記憶部に記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力するようにしてあり、
前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記取得部で前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力するように構成してあることを特徴とする情報提供システム。
【請求項6】
車両感知器で感知した車両に対して、該車両に搭載された車載機と通信可能な路側通信装置を経由して所定情報を提供する情報提供装置による情報提供方法おいて、
前記情報提供装置は、
異なる2つの所定情報を記憶しておき、
交通状況に関する交通状況情報を取得し、
取得した交通状況情報が所定条件を満たす場合、記憶した所定情報のうち第1の所定情報を出力すべく制御し、
前記交通状況情報を取得した後に所定時間経過した場合、第2の所定情報を出力し、
前記交通状況情報を取得した後に前記所定時間が経過する前に、前記所定条件を満たす別の交通状況情報を取得した場合、該交通状況情報を取得した時点から前記所定時間だけ遅延させた時点で前記第2の所定情報の出力することを特徴とする情報提供方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−39707(P2011−39707A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185156(P2009−185156)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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