説明

情報提供装置および情報提供プログラム

【課題】電車の混雑度を適切に提供する。
【解決手段】情報提供装置1は、電車の識別子と、当該電車の混雑度とを対応づけた混雑度データ11が記憶された記憶装置10と、出発駅、到着駅、出発可能時刻および到着可能時刻を含む検索条件データ14を取得する検索条件取得手段23と、検索条件データ14に基づいて、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車を検索し、混雑度データ11から、検索された電車の識別子に対応する混雑度を取得し、検索された電車の識別子と、取得した混雑度とを対応づけた検索結果データ16を出力する経路検索手段24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報提供装置および情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鉄道会社は、顧客サービス向上のため、鉄道の混雑の緩和を重要な課題ととらえている。そこで、鉄道会社は、鉄道の混雑度を公表し、利用者に混雑した列車の利用を回避するよう促している。鉄道会社は、最混雑区間における最混雑時間帯の混雑率、終日の混雑率、過去の混雑率の実績などを公表する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−186783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、電車の混雑は、急行と各駅停車で異なり、また、電車の車両によっても異なることが知られている。また、同じ時間帯の列車でも、始発駅などによって、鉄道の混雑が大きく異なる場合がある。
【0005】
そこで、より適切に電車の混雑度を、より顧客が活用しやすい形で提供することが期待されている。
【0006】
従って本発明の目的は、電車の混雑度を適切に提供することができる情報提供装置および情報提供プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る情報提供装置は、電車の識別子と、当該電車の混雑度とを対応づけた混雑度データが記憶された記憶装置と、出発駅、到着駅、出発可能時刻および到着可能時刻を含む検索条件データを取得する検索条件取得手段と、検索条件データに基づいて、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車を検索し、混雑度データから、検索された電車の識別子に対応する混雑度を取得し、検索された電車の識別子と、取得した混雑度とを対応づけた検索結果データを出力する経路検索手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る情報提供装置の機能ブロック図である。
【図2】実施の形態に係る情報提供装置が用いられる情報提供システムを説明する図である。
【図3】実施の形態に係る情報提供装置の実績混雑度データのデータ構造とデータの一例を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る情報提供装置の予想混雑度データのデータ構造とデータの一例を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る情報提供装置が提供した混雑度を表示する表示板を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る情報提供装置における経路検索処理を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態に係る情報提供装置がユーザ端末に表示する条件入力画面の一例である。(その1)
【図8】実施の形態に係る情報提供装置がユーザ端末に表示する検索結果表示画面の一例である。(その1)
【図9】実施の形態に係る情報提供装置がユーザ端末に表示する条件入力画面の一例である。(その2)
【図10】実施の形態に係る情報提供装置がユーザ端末に表示する検索結果表示画面の一例である。(その2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0010】
実施の形態に係る情報提供装置1は、電車の混雑度をユーザに提供する。具体的には、情報提供装置1は、運行中の電車の混雑度や、運行予定の電車の混雑度を取得する。情報提供装置1は、ユーザが、電車の経路を検索した際、取得した混雑度も併せて表示する。情報提供装置1は、駅のホームに設けられた表示板4に、電車の混雑度を表示しても良い。
【0011】
本発明の実施の形態において、運行中の電車とは、混雑度を実測可能な電車であって、例えば、電車が運行予定区間の始発駅を既に出発している状態で、情報提供装置1が混雑度の実測値を取得できる場合を言う。ここで、まだ始発駅を出発しておらず、始発駅で乗客の乗車を待機している電車も、運行中の電車としても良い。一方、運行予定の電車とは、混雑度を実測不可能な電車であって、例えば、運行することが予め定められているが、その運行予定区間の始発駅をまだ出発していない状況を言う。
【0012】
図1に示すように情報提供装置1は、記憶装置10、中央処理制御装置20および通信制御装置30を備える一般的なコンピュータである。情報提供装置1は、コンピュータに、所定の処理を実行するプログラムがインストールされ、実行されることにより実現される。
【0013】
情報提供装置1は、図2に示す情報提供システム8に用いられる。情報提供システム8は、情報提供装置1、業務端末2、混雑度提供装置3、表示板4a、4b、ユーザ端末5a、5b、5c、電車7a、7bなどを備える。情報提供装置1、業務端末2、混雑度提供装置3、表示板4a、4b、ユーザ端末5a、5bおよび5cは、通信ネットワーク6を介して相互に通信可能に接続される。通信ネットワーク6は、インターネットなどのパブリックネットワークでも良いし、LANなどのプライベートネットワークでも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0014】
実施の形態において、表示板4aおよび4bを特に区別しない場合、単に表示板4と記載する場合がある。また、ユーザ端末5a、5bおよび5cを特に区別しない場合、単にユーザ端末5と記載する場合がある。
【0015】
業務端末2は、一般的なコンピュータに、所定のプログラムがインストールされ実行されることによって実現される。業務端末2は、将来の電車の混雑度を想定し、日次、月次、年次単位などで予想混雑度データを生成する。予想混雑度データは、例えば、過去の混雑度の実績データや、その実績データの集計データなどから生成される。予想混雑度データは、将来の日時と電車の識別子に対応する混雑度を含む。混雑度は、電車の車両および走行区間に対応する混雑度であっても良いし、座席に座れるか否かを示すデータを含んでも良い。業務端末2は、生成した予想混雑度データを、情報提供装置1に送信する。
【0016】
混雑度提供装置3は、電車の混雑度を、電車7から取得し、電車の識別子とその混雑度とを対応づけた実績混雑度データを生成する。混雑度は、電車の車両および走行区間に対応する混雑度であっても良いし、座席に座れるか否かを示すデータを含んでも良い。混雑度提供装置3は、生成した実績混雑度データを、情報提供装置1に送信する。
【0017】
業務端末2が提供する予想混雑度データと、混雑度提供装置3が提供する実績混雑度データとの算出方法は、問わない。例えば、電車の車両ごとに重量センサを装備することにより、混雑度提供装置3は、各車両の重量から混雑度を算出することができる。また、予め電車の各座席にセンサを設けることにより、混雑度提供装置3は、電車の各座席の着席状況を取得することができる。また、混雑度提供装置3は、応荷重装置、ひずみゲージを利用して、電車の混雑度を取得しても良い。また、駅の自動改札におけるICカードによって、駅の入出情報を取得することにより、混雑度提供装置3は、駅の混雑度を取得するとともに、電車の混雑度を取得することもできる。また、業務端末2は、このように取得された混雑度の実績から、車両ごとに予想混雑度を算出したり、座席の着席状況などを取得することができる。
【0018】
ユーザ端末5は、ユーザが利用する情報通信機器であって、例えば、携帯電話機、パソコン、スマートフォンなどである。ユーザ端末5は、混雑度を取得する条件などが入力されると、その条件を情報提供装置1に入力する。またユーザ端末5は、情報提供装置1から混雑度などの情報を受信すると、表示装置に表示してユーザ認識させる。
【0019】
表示板4は、 駅に設置され、到着予定の電車の情報を表示する。表示板4は、例えば、駅の構内やホームに設置された運行案内板などであって、電車の混雑度を表示し、ユーザに認識させる。表示板4は例えば、次に来る電車とその次に来る電車の到着時刻および行き先を表示するとともに、各電車の混雑度を表示する。
【0020】
表示板4は、電気的な制御によって表示内容を動的に変更できるものである。表示板4は例えば液晶ディスプレイであって、コンピュータなどの制御によって表示内容が変更される。また、表示板4は例えば、電気的に制御される複数のパネルで構成され、コンピュータなどの制御によって適切な表示内容に変更されても良い。
【0021】
図1を参照して、実施の形態に係る情報提供装置1を説明する。情報提供装置1の記憶装置10は、混雑度データ11、検索条件データ14、経路時刻表データ15、検索結果データ16を記憶する。これらのデータは、後述する中央処理制御装置20の各処理によって生成または参照される。さらに記憶装置10は、実施の形態に係る情報提供装置1を実現するための情報提供プログラムを記憶する。記憶装置10に記憶された情報提供プログラムが実行されることによって、中央処理制御装置20に、収集手段21、表示板出力手段22、検索条件取得手段23、経路検索手段24および検索結果送信手段25が実装される。
【0022】
収集手段21は、混雑度データ11を取得し、取得した混雑度データ11を記憶装置10に記憶する。この混雑度データ11は、電車の識別子と、当該電車の混雑度とを対応づけたデータである。混雑度データ11は、電車の識別子および電車の車両の識別子に、混雑度が対応づけられても良い。混雑度データ11は、電車7から取得した混雑度を含む実績混雑度データ12と、運行予定の電車の混雑度を含む予想混雑度データ13と、を含む。なお、実施の形態において混雑度提供装置3が電車7の混雑度を算出し、情報提供装置1は、混雑度提供装置1から電車7の混雑度を取得する場合を説明する。
【0023】
実績混雑度データ12は、例えば既に運行している電車の混雑度を示すデータで、混雑度提供装置3から受信する。実績混雑度データ12は、図3に示すように、電車識別子、区間および電車の車両に、混雑度を対応づけたデータである。電車の識別子は、電車を識別する。区間は、電車が既に運行した区間の少なくとも一部を示す。図3に示す例では、区間として、駅の区間が設定される。
【0024】
予想混雑度データ13は、将来運行予定の電車の混雑度を示すデータで、業務端末2から受信する。予想混雑度データ13は、図4に示すように、予想時間、電車の識別子、区間および電車の車両に、混雑度を対応づけたデータである。予想時間は、その時間の運行予定の時間帯である。図4に示す例では、予想時間に、通常の電車の運行の時刻表に基づいて、「平日」または「休日」が設定される。また、日ごとに電車の運行が変更する場合、予想時間として、日や時間が設定されても良い。また、予想混雑度データ13は、日次、月次、年次単位で生成されても良い。
【0025】
このように、実施の形態に係る混雑度データ11は、実績混雑度データ12および予想混雑度データを含む。従って、実施の形態に係る情報提供装置1は、ラッシュ時や輸送障害の発生時など、時々刻々と変化する混雑状況に対応した混雑度をリアルタイムに提供するとともに、予想された混雑度も提供することができる。また、混雑度提供装置3から電車の各座席の着席状況を取得した場合、実績混雑度データ12および予想混雑度データ13には、座席に着床可能か否かを示すデータが含まれる。その場合情報提供装置1は、座席に着席可能か否かも併せて、出力することもできる。
【0026】
図3および図4に示す例においては、実績混雑度データ12および予想混雑度データ13は、電車の運行区間および車両ごとの混雑度を含む場合を説明するが、この例に限られない。例えば、区間や車両ごとの混雑度を考慮せず、単に電車ごとの混雑度のみを示すデータであっても良い。
【0027】
表示板出力手段22は、表示板4に、電車の混雑度を表示する。表示板出力手段22は、駅などに設けられた表示板4に、電車の案内とともに、電車の混雑度を表示する。さらに表示板出力手段22は、電車の車両ごとの混雑度を表示しても良い。
【0028】
表示板出力手段22は、図5に示すように、表示板4に電車の混雑度を表示する。図5に示す例において表示板4は、電車の運行情報で、先発電車と次発電車との出発時間や、急行/快速/各駅停車の別などを表示する。さらに、この表示板4は、駅のホームで電車を待機する客に、次に到着する電車と、さらにその次に到着する電車の情報を告知する。この際、表示板出力手段22は、表示板4の設置された駅の識別子、表示板4に表示される電車の識別子に基づいて、実績混雑度データ12または予想混雑度データ13からこれらの電車の混雑度を取得する。
【0029】
表示板出力手段22は、表示板4に表示する電車の混雑度について、実績の混雑度を取得可能な場合、実績混雑度データ12から実績に基づく電車の混雑度を取得する。一方、実績の混雑度を取得できなかった場合、表示板出力手段22は、予想混雑度データ13から予想に基づく電車の混雑度を取得する。例えば、表示板4が設置された駅が、電車の始発駅である場合、この電車の混雑度は、予想混雑度データ13から出力される。また、表示板4に表示される駅が既に運行している場合、この電車の混雑度は、実績混雑度データ12から出力される。
【0030】
さらに表示板出力手段22は、取得した混雑度を、電車の識別子と対応づけて、表示板4に送信する。表示板4は、情報提供装置1から送信された混雑度を、電車の識別子と対応づけて表示する。表示板出力手段22は、電車の車両ごとの混雑度を取得して、表示板4に送信しても良い。
【0031】
図3および図4に示す例において、混雑度をパーセンテージで表記しているが、どのような表記でも問わない。例えば、混雑度を、Aランク、Bランクなどのランクで表記しても良い。また、実施の形態において、混雑度算出方法や判断基準も問わない。
【0032】
検索条件取得手段23は、ユーザが出発駅から到着駅までの電車の乗換を検索する場合の検索条件データ14を、ユーザ端末5から取得して、記憶装置10に記憶する。この検索条件データ14は、出発駅、到着駅、出発可能時刻および到着可能時刻を含む。出発駅および到着駅は、ユーザが電車を乗車する区間を示す。出発可能時刻は、ユーザが乗換を開始可能な最も早い時刻であって、例えば、ユーザが出発駅に到着可能な時刻である。到着可能時刻は、ユーザが目的地に到着を希望する最も遅い時刻である。
【0033】
ユーザは、電車の乗換について検索条件を入力する際、出発駅に到着する最も早い時刻と、到着駅に到着する最も遅い時刻とを入力する。ユーザは、出発可能時刻から到着可能時刻間に電車で乗換可能な経路を検索することができる。
【0034】
さらに検索条件データ14は、複数の経路が検索された場合、複数の経路から所定数を優先して出力するための優先項目を含んでも良い。優先項目として、所要時間、料金、混雑度、到着時間、乗換回数などが考えられる。情報提供装置1は、優先項目として設定された項目の値が良い乗換候補データを、優先的に出力する。例えば、検索条件データ14に、優先項目として「混雑度」が含まれている場合、情報提供装置1は、混雑度のより低い電車の乗換候補データを、優先的に出力する。
【0035】
また、検索条件データ14に、経由駅、有料特急フラグ、乗換回数の制限数、表示件数が設けられていても良い。経由駅は、出発駅から到着駅まで移動する経路上の駅である。実施の形態において経由駅に、電車が停車してもしなくても良い。有料特急フラグは、経路検索で割り当てる電車に、有料特急を含めるか否かのフラグである。乗換回数の制限数は、経路検索の乗換の最大数である。表示件数は、検索結果として表示される件数である。優先項目として設定された項目の値が良い乗換データのうち、上位から表示件数で指定された数の乗換候補データを、情報提供装置1は出力する。
【0036】
経路検索手段24は、検索条件データ14に基づいて、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車を検索する。さらに経路検索手段24は、混雑度データ11から、検索された電車の識別子に対応する混雑度を取得し、検索された電車の識別子と、取得した混雑度とを対応づけた検索結果データ16を出力する。ここで経路検索手段24は、電車7から混雑度を取得できる場合、実績混雑度データ12から当該電車の混雑度を取得し、電車7から混雑度を取得できない場合、予想混雑度データ13から当該電車の混雑度を取得する。電車7から混雑度を取得できる場合とは、例えば電車7が既に始発駅を出発して運行中であって、実際の電車7の混雑度を、情報提供装置1が取得できる場合である。
【0037】
ここで経路検索手段24は、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する複数の電車を検索し、混雑度の少ない電車を優先的に出力しても良い。また経路検索手段24は、検索された電車の識別子に、電車の車両ごとの混雑度を対応づけて検索結果データ16を出力しても良い。経路検索手段24は、検索結果データ16を記憶装置10に記憶する。
【0038】
経路検索手段24は、検索条件データ14に合致する電車を検索する。出発駅から到着駅までの移動に利用する電車として、経路検索手段24が検索する電車の数は、一つの場合もあれば複数の場合もある。例えば、出発駅と到着駅とが同じ路線上にない場合や、各駅停車と急行の電車を混合する場合などは、複数の電車を乗り継いで出発駅から到着駅まで移動する経路を出力する場合がある。
【0039】
経路検索手段24は、経路時刻表データ15を参照して、出発駅から到着駅まで移動する経路を出力する。経路時刻表データは、電車ネットワークに関するデータと、電車時刻表に関するデータを含む。電車ネットワークに関するデータは、電車の路線、路線上の駅、乗換可能な駅および路線などである。電車時刻表に関するデータは、電車の識別子、路線、停車駅、到着時刻などを対応づけたデータである。経路検索手段24は、既存のアルゴリズムに基づいて、経路時刻表データを参照し、経路条件データに合致する経路を出力する。実施の形態において、経路検索のための具体的な手法は、問わない。
【0040】
図6を参照して経路検索手段24による経路検索処理を説明する。図6に示す経路検索処理は一例であって、経路検索アルゴリズムによっては異なる場合もある。
【0041】
まず、ステップS101において経路検索手段24は、記憶装置10から検索条件データ14を読み出し、検索条件を取得する。この検索条件は、経路を検索する際の出発駅、到着駅、出発可能時刻および到着可能時刻である。また検索条件に、優先して出力する経路を決定するための、優先項目が含まれても良い。ここで、出発駅を「A駅」、到着駅を「B駅」とする。
【0042】
まず、ステップS102において経路検索手段24は、出発駅から到着駅までの経路を検索する。ここで経路検索手段24は、経路時刻表データ15の電車ネットワークに関するデータを参照して、A駅からB駅まで電車で移動する際、乗り継ぐ電車の種別を特定する。例えば、A駅からB駅に移動する際、C駅で乗り換える必要がある場合、経路検索手段24は、A駅−C駅−B駅という経路を特定する。さらに、D駅で乗り換えても移動できる場合、経路検索手段24は、A駅−D駅−B駅という経路を特定する。このように経路検索手段24は、A駅からB駅に移動可能な経路を特定する。
【0043】
さらにステップS103において経路検索手段24は、ステップS102で検索した経路について、ステップS103ないしステップS106の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS103において経路検索手段24は、ステップS102で検索した一つの経路について、経路時刻表データ15の電車時刻表データに関するデータを参照して、電車の時刻を割り当てる。ここで経路検索手段24は、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車の組み合わせを、検索する。経路検索手段24は、経路と各駅の電車の時刻とを対応づけて、乗換候補データを生成する。
【0045】
ここで、一つの経路において、複数のパターンの電車が割り当てられる場合がある。例えば、A駅からC駅を経由してB駅まで移動するために要する時間が、出発可能時刻から到着可能時刻までの時間より短い場合、経路のいずれかにおいて、待ち時間が発生する。この場合、経路検索手段24は、それぞれのパターンについて、経路と、各駅の電車の時刻とを対応づけて、乗換候補データを出力する。
【0046】
例えば、出発駅を出発可能時刻の直後に出発するとともに早く到着駅に到着し、到着駅で待ち時間を過ごす場合が考えられる。この場合、経路検索手段24は、A駅を出発可能時刻の直後に発車する電車に乗車してC駅まで移動し、C駅で到着後すぐに出発する電車に乗車してB駅まで移動するように、電車の時刻を割り当てる。
【0047】
また、出発駅を出発可能時刻の直後に出発し、到着駅を到着可能時刻の直前に到着するように、途中の経由駅で待ち時間を過ごす場合が考えられる。この場合、経路検索手段24は、A駅を出発可能時刻の直後に発車する電車に乗車してC駅まで移動し、B駅に到着可能時刻の直前に到着する電車にC駅で乗車してB駅まで移動するように、電車の時刻を割り当てる。
【0048】
出発駅を遅く出発するとともに到着駅を到着可能時刻の直前に到着し、出発駅で待ち時間を過ごす場合が考えられる。この場合、経路検索手段24は、B駅に到着可能時刻に到着する電車がC駅を出発する直前にC駅に到着する電車にA駅で乗車してC駅まで移動し、B駅に到着可能時刻の直前に到着する電車にC駅で乗車してB駅まで移動するように、電車の時刻を割り当てる。
【0049】
ここでは、A駅、B駅、C駅のいずれかで待ち時間を過ごす場合を説明したが、いずれか2以上の駅で待ち時間を過ごす場合や、待ち時間が発生しない場合も考えられる。例えば、電車が頻繁に運行している路線の場合、A駅でも、B駅でも、C駅でも待ち時間が発生するように、電車の時刻を割り当てる場合も考えられる。
【0050】
経路検索手段24は、ステップS103において、ステップS102で特定された経路について、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車の組み合わせを検索すると、乗換候補データに記憶する。
【0051】
さらに、ステップS103で取得した乗換候補データのそれぞれの電車の組み合わせにおける各電車について、経路検索手段24は、ステップS104において、当該電車の混雑度の実績を実績混雑度データ12から取得できるか否かを判定する。実績混雑度データ12から取得できる場合、経路検索手段24はステップS105において、実績混雑度データ12からこの電車の混雑度を取得し、乗換候補データに電車と混雑度とを対応づけて記憶する。一方、実績混雑度データ12から取得できない電車の場合、経路検索手段24はステップS106において、予想混雑度データ13からこの電車の混雑度を取得し、乗換候補データに電車と混雑度とを対応づけて記憶する。
【0052】
ここで、A駅からC駅に移動する電車と、C駅からB駅に移動する電車とを乗り継いでA駅からB駅を移動する場合、経路検索手段24は、A駅からC駅に移動する電車と、C駅からB駅に移動する電車のそれぞれについて、実績混雑度データ12または予想混雑度データ13のいずれかを割り当てる。
【0053】
ステップS103で生成した乗換候補データの全ての電車についてステップS104ないしステップS106の処理が終了すると、経路検索手段24は、ステップS102で検索した他の経路のうちの一の経路について、ステップS103ないしステップS106の処理を繰り返す。ステップS102で検索した全ての経路について、ステップS103ないしステップS106の処理が終了すると、ステップS107に進む。
【0054】
ステップS107において経路検索手段24は、ステップS101で取得した検索条件に優先項目が含まれている場合、全ての経路について、ステップS103で生成した乗換候補データを、優先項目でソートする。例えば、優先項目が「混雑度」の場合、経路検索手段24は、全ての経路の乗換候補データのうち、混雑度の低い順に、乗換候補データをソートする。
【0055】
ここで乗換候補データにおいて一の電車のみ利用する場合、その電車の混雑度に基づいて、乗換候補データがソートされる。この際、情報提供装置1が車両ごとの混雑度を把握可能な場合、一つの電車の車両のうち最も低い混雑度に基づいて、乗換候補データがソートされても良い。一方、一つの電車の車両の全ての混雑度を平均した値に基づいて、乗換候補データがソートされても良い。一方複数の電車を利用する場合、複数の電車の各混雑度の平均値や、中央値、最大値などに基づいて、乗換候補データがソートされても良い。情報提供装置1が車両ごとの混雑度を把握可能な場合、一つの電車の車両のうち最も低い混雑度を取得し、複数の電車の各混雑度の平均値や、中央値、最大値などに基づいて、乗換候補データがソートされても良い。このように、優先項目が「混雑度」と設定された場合、乗換候補データを混雑度を用いてソートする具体的な方法として、様々な方法が考えられる。
【0056】
ステップS108において経路検索手段24は、ステップS107でソートされた乗換候補データから、優先項目の数値の高い順に所定数の乗換候補データを抽出する。例えば、優先項目が「混雑度」の場合、経路検索手段24は、混雑度の低い所定数の乗換候補データを抽出する。ステップS109において経路検索手段24は、ステップS108で抽出した所定数の乗換候補データを、検索結果データ16として出力し、記憶装置10に記憶する。
【0057】
このように、経路検索手段24は、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車の組み合わせを検索し、ユーザが指定した優先項目の値が高い所定数の乗換候補データを、検索結果データ16として出力する。これにより経路検索手段24は、移動に要する時間が増えても、混雑の少ない電車を選択しつつ、ユーザの出発可能時刻および到着可能時刻を厳守する電車の乗換を出力することができる。
【0058】
検索結果送信手段25は、検索条件を入力したユーザ端末5に、検索結果データ16を送信する。ユーザ端末5は、情報提供装置1から送信された検索結果データを表示装置に表示し、ユーザに認識させる。
【0059】
図7ないし図10を参照して、情報提供装置1がユーザ端末5に表示する画面の一例を説明する。図7および図9は、ユーザ端末5から情報提供装置1に検索条件を入力する画面の一例であって、図8および図10は、その検索結果を表示する画面の一例である。
【0060】
図7および図8を参照して、ユーザが検索条件を入力し、その結果を表示する画面を説明する。図7は、ユーザが検索条件を入力する条件入力画面P101の一例である。条件入力画面P101は、出発駅および到着駅をそれぞれ入力するテキストボックスと、出発可能時刻および到着可能時刻をそれぞれ入力するコンボボックスとを備える。図7に示す条件入力画面P101はさらに、経由駅を入力するテキストボックス、有料特急フラグ、乗換回数の制限数、表示件数を入力するコンボボックス、優先項目を指定するチェックボックスが設けられても良い。ここで優先項目はチェックボックスの形式であるので、ユーザは、複数の優先項目を指定することができる。この場合情報提供装置1は、指定された複数の優先項目を複合的に考慮した経路を検索結果として出力しても良い。
【0061】
ユーザは、条件入力画面P101に所望の経路を検索するための条件を入力する。その後、ユーザがユーザ端末5の入力装置を介して検索ボタンを押下すると、ユーザ端末5は、条件入力画面P101に設定された検索条件を、情報提供装置1に送信する。
【0062】
情報提供装置1は、出発可能時刻以降に出発駅を出発し、到着可能時刻以前に到着駅に到着する電車の組み合わせを検索し、ユーザが指定した優先項目の値が高い所定数の乗換候補データを、検索結果データ16として出力する。図7に示す例では、優先項目として、所要時間および料金がチェックされ、表示件数として3件が指定されているので、情報提供装置1は、所要時間が短く、料金が安い3件の乗換候補データを、検索結果データ16として出力する。情報提供装置1は、検索結果データ16に基づいて図8に示す検索結果表示画面P102を生成して、ユーザ端末5に表示する。
【0063】
図7に示す例の検索条件は、出発駅がA駅、到着駅がB駅、経由駅がC駅、出発可能時刻が7:15、到着可能時刻が8:30、優先項目が、所要時間および料金で、有料特急は使わず、乗換回数は多くても良く、また表示件数は3件である。検索ボタンが押下されると、情報提供装置1は、この検索条件を満たす経路を検索する。
【0064】
検索結果表示画面P102は、A駅からC駅を経由してB駅に到着する経路について、乗換の候補1から候補3まで3件の検索結果をタブで表示する。図8に示す検索結果表示画面P102は、候補1のタブが選択されているので、候補1の検索結果を表示する。
【0065】
図8に示す候補1の検索結果は、D線の各駅停車の電車を使って、A駅を7:20に出発し、C駅に7:40に到着するとともに、E線の電車を使って、C駅を7:42に出発し、B駅に8:00に到着する経路を表示する。また、A駅からC駅まで移動する電車と、C駅からB駅まで移動する電車のそれぞれについて、混雑度が表示されている。図8に示す例において、2車両ごとの混雑度が表示され、また混雑度に応じて、背景がハッチングされている。
【0066】
図8に示すような検索結果表示画面P102によれば、ユーザは、所望の経路の情報を取得できるとともに、各電車の混雑度も把握することができる。また、検索結果表示画面P102に表示される複数の候補のうち、混雑度の低い電車を選択することもできる。またユーザは、同じ電車でも混雑度の低い車両を特定することができる。従って、ユーザは、混雑度の低い車両を選択して乗車することができるので、比較的快適に移動できるとともに、車両ごとの混雑度の偏りを低減することができる。
【0067】
図9は、図7と同様に、ユーザが検索条件を入力する条件入力画面P201の一例である。図9に示す条件入力画面P201の各項目は、図7と同様であるが、条件が異なる。図9に示す条件入力画面P201には、優先項目として、料金および混雑度がチェックされている。従って、図9に示すような条件入力画面P201において検索ボタンが押下されると、情報提供装置1は、料金が安く、混雑度の低い3件の乗換候補データを、検索結果データ16として出力する。情報提供装置1は、検索結果データ16に基づいて図108に示す検索結果表示画面P202を生成して、ユーザ端末5に表示する。
【0068】
図9に示す例の検索条件は、出発駅がA駅、到着駅がB駅、経由駅がC駅、出発可能時刻が7:15、到着可能時刻が8:30、優先項目が、料金および混雑度で、有料特急は使わず、乗換回数は多くても良く、また表示件数は3件である。検索ボタンが押下されると、情報提供装置1は、この検索条件を満たす経路を検索する。
【0069】
図10に示す候補1の検索結果は、D線の各駅停車の電車を使って、A駅を7:30に出発し、C駅に8:00に到着するとともに、E線の電車を使って、C駅を8:05に出発し、B駅に8:30に到着する経路を表示する。さらに検索結果表示画面P202は、各電車について2車両ごとの混雑度を表示する。
【0070】
図10は、料金および混雑度を優先項目として乗換候補データをソートしている。従って、図10に示す候補1の検索結果は、図8に示す候補1の検索結果に比べて、所要時間は長いものの、全般的に混雑度の低い電車である。
【0071】
一般的にユーザは、階段やエスカレータ近くなどの乗換のしやすさを基準に、あるいは、自己の経験に基づく混雑度を基準に、乗車する電車やその位置を選択していた。本発明の実施の形態に係る情報提供装置が、優先項目として混雑度を考慮して経路を検索することにより、ユーザは、出発可能時刻および到着可能時刻を満たす電車であって、より混雑度の低い電車を使った経路の情報を取得することができる。従って、ユーザは、時間に余裕のある場合など、混雑度の低い電車を選択して乗車することができるので、比較的快適に移動できる。例えば、先発の電車は最も早く到着駅に到着するが、次発の電車であれば、さらに空いている車両、確実に座れる車両がある場合がある。このような場合でも、到着希望時刻までに到着することが確実であれば、ユーザは、次発の電車を選択することができる。次発が各駅停車で、その後に出発する急行電車に抜かされ遅く到着する場合でも、到着希望時刻までに到着することが確実であれば、ユーザは、次発の電車を選択することができる。
【0072】
また、情報提供装置1が、電車の混雑度を考慮して電車の経路を案内することにより、電車の混雑度の偏りを低減することができる。これにより、情報提供装置1は、電車の定時運行を支援することができる。また、実施の形態に係る情報提供装置1は、期間、時間帯、車両による混雑の傾向を把握し、ユーザに通知することにより、運用の改善などを図ることができる。
【0073】
以上説明した実施の形態に係る情報提供装置は、鉄道の混雑度を適切に提供することができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 情報提供装置
2 業務端末
3 混雑度提供装置
4 表示板
5 ユーザ端末
6 通信ネットワーク
7 電車
8 情報提供システム
10 記憶装置
11 混雑度データ
12 実績混雑度データ
13 予想混雑度データ
14 検索条件データ
15 経路時刻表データ
16 検索結果データ
20 中央処理制御装置
21 収集手段
22 表示板出力手段
23 検索条件取得手段
24 経路検索手段
25 検索結果送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車の識別子と、当該電車の混雑度とを対応づけた混雑度データが記憶された記憶装置と、
出発駅、到着駅、出発可能時刻および到着可能時刻を含む検索条件データを取得する検索条件取得手段と、
前記検索条件データに基づいて、前記出発可能時刻以降に前記出発駅を出発し、前記到着可能時刻以前に前記到着駅に到着する電車を検索し、前記混雑度データから、検索された電車の識別子に対応する混雑度を取得し、検索された電車の識別子と、取得した混雑度とを対応づけた検索結果データを出力する経路検索手段
を備えることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記混雑度データは、電車から取得した混雑度を含む実績混雑度データと、運行予定の電車の混雑度を含む予想混雑度データと、を含み、
前記経路検索手段は、前記電車から混雑度を取得できる場合、前記実績混雑度データから当該電車の混雑度を取得し、前記電車から混雑度を取得できない場合、前記予想混雑度データから当該電車の混雑度を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記経路検索手段は、前記出発可能時刻以降に前記出発駅を出発し、前記到着可能時刻以前に前記到着駅に到着する複数の電車を検索し、前記混雑度の少ない電車を優先的に出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記混雑度データの混雑度は、前記電車の識別子および当該電車の車両の識別子に対応づけられ、
前記経路検索手段は、前記検索された電車の識別子に、前記電車の車両ごとの混雑度を対応づけて前記検索結果データを出力する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
駅に設置され、到着予定の電車の情報を表示する表示板に、前記電車の車両ごとの混雑度を表示する表示板出力手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項6】
コンピュータを、
出発駅、到着駅、出発可能時刻および到着可能時刻を含む検索条件データを取得する検索条件取得手段と、
前記検索条件データに基づいて、前記出発可能時刻以降に前記出発駅を出発し、前記到着可能時刻以前に前記到着駅に到着する電車を検索し、電車の識別子と当該電車の混雑度とを対応づけた混雑度データから、検索された電車の識別子に対応する混雑度を取得し、検索された電車の識別子と、取得した混雑度とを対応づけた検索結果データを出力する経路検索手段
として機能させるための情報提供プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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