説明

情報提示システム、情報提示方法及びプログラム

【課題】携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を携帯端末装置に提示するシステムにおいて、携帯端末装置の向いている方向だけでなく、向いていない方向の有用な情報を提示する。
【解決手段】携帯端末装置の現在位置P0から所定距離内、かつ現在向いている方向から所定角度内において、地図上で線となる対象物を検索する。P0より、対象物を示す基準方向線L1と直交する直線L4を引く。直線L4の方向と携帯端末装置が現在向いている方向とのなす角度が60°以下の場合は、基準方向線L1の両方向D1、D2に位置する方面に関する情報を提示する。角度が60°より大きく、120°以下である場合は、方向D1、D2の内、携帯端末装置が現在向いている方向に近い方向に位置する方面のみに関する情報を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物(オブジェクト)に関する情報をその携帯端末装置に提示する情報提示システム、情報提示方法及びそのシステムに使用するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような情報提示システムの一例として、現実空間に仮想空間を結合し、拡張現実感の提示を行うシステムがある。このシステムは、カメラ付携帯電話機等の撮影機能付携帯端末装置の位置及び向きに応じてサーバ(情報提示装置)で生成した仮想空間の画像を撮影機能付携帯端末装置のディスプレイ(表示部)に表示するシステムとして実現することができる(特許文献1参照)。仮想空間の画像としては、例えばコンピュータ・グラフィックスにより描画された仮想物体や文字情報等が用いられる。
【0003】
これらの仮想物体や文字情報は、現実空間の様々な位置に存在する店舗、施設、人工公物(道路、橋など)、自然公物(河川、湖沼など)等に関する情報、即ち位置に関連付けられた対象物に関する情報であり、この情報を提示することにより、ユーザは現実空間の画像の外観から得られる情報以上の情報を得ることができる。
【0004】
また、このような情報提示システムの別の一例として、携帯端末装置の位置及び向きに応じてサーバ(情報提示装置)で生成した画像を携帯端末装置のディスプレイに表示するシステムがある(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、従来の情報提示システムでは、サーバから携帯端末装置に提示される情報は、携帯端末装置の向いている方位に存在する対象物に関するものであるため、ユーザにとって重要な対象物に関する情報が携帯端末装置の近くに存在するとしても、その対象物が携帯端末装置の向いていない方向、例えば後方や側方に存在する場合は、その対象物に関する情報が得られないという問題がある。携帯端末装置の向きを変えれば、向きに応じて、様々な方向に存在する対象物に関する情報が得られるが、いちいち携帯端末装置を回転させなければならず操作が煩わしい。
【0006】
そこで、携帯端末装置の向いている方向だけでなく、向いていない方向に存在する対象物に関する情報を同時に提示することが考えられる。しかし、様々な方向に存在する対象物に関する情報を単に提示すると、不用な情報を提示してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−105640号公報
【特許文献2】特開2008−171410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を情報提示装置から携帯端末装置に提示する情報提示システムにおいて、携帯端末装置の向いている方向だけでなく、向いていない方向の有用な情報を提示できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報提示システムは、携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を情報提示装置から前記携帯端末装置に提示する情報提示システムであって、前記携帯端末装置は、情報を表示する情報表示部と、自身の向いている方向を検出し、検出結果として方位情報を生成する方位情報生成部と、自身の位置を検出し、検出結果として位置情報を生成する位置情報生成部と、前記方位情報生成部で生成された方位情報及び前記位置情報生成部で生成された位置情報を前記情報提示装置へ送信する端末情報送信手段とを有し、前記情報提示装置は、位置に関連付けられた対象物に関する情報が予め保存されている位置関連情報記憶部と、前記携帯端末装置から送信された方位情報及び位置情報を受信する受信手段と、前記受信された位置情報の示す位置から所定の距離内、かつ前記受信された方位情報の示す方位から所定の角度内に存在し、かつ平面地図上で線又は多角形となる対象物を前記位置関連情報記憶部から検索する対象物検索手段と、前記平面地図上で、前記受信された位置情報の示す位置と前記線又は多角形に対し所定の方向に延びる基準方向線の所定の部位とを結ぶ線の方向と、前記受信された方位情報の示す方向とのなす角度を検出する角度検出手段と、前記平面地図上で線又は多角形である対象物に対し、前記基準方向線の延びる方向に位置する方面に関する方面関連情報が予め保存されている方面関連情報記憶部と、前記角度検出手段で検出された角度に応じて、前記方面関連情報を、位置に関連付けられた対象物に関する情報として前記携帯端末装置に提示するか否かを決定する提示情報決定手段と、該提示情報決定手段で提示することが決定された方面関連情報を情報前記携帯端末装置へ送信する方面関連情報送信手段とを有することを特徴とする情報提示システムである。
本発明の情報提示方法は、携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を情報提示装置から前記携帯端末装置に提示する情報提示方法であって、前記携帯端末装置が、自身の向いている方向を検出し、検出結果として方位情報を生成する方位情報生成工程と、前記携帯端末装置が、自身の位置を検出し、検出結果として位置情報を生成する位置情報生成工程と、前記携帯端末装置が、前記方位情報生成工程で生成された方位情報及び前記位置情報生成工程で生成された位置情報を前記情報提示装置へ送信する端末情報送信工程とを有し、前記情報提示装置が、前記携帯端末装置から送信された方位情報及び位置情報を受信する受信工程と、前記情報提示装置が、前記受信された位置情報の示す位置から所定の距離内、かつ前記受信された方位情報の示す方位から所定の角度内に存在し、かつ平面地図上で線又は多角形となる対象物を位置関連情報記憶部から検索する対象物検索工程と、前記情報提示装置が、前記平面地図上で、前記受信された位置情報の示す位置と前記線又は多角形に対し所定の方向に延びる基準方向線の所定の部位とを結ぶ線の方向と、前記受信された方位情報の示す方向とのなす角度を検出する角度検出工程と、前記情報提示装置が、前記角度検出手段で検出された角度に応じて、前記方面関連情報を、位置に関連付けられた対象物に関する情報として前記携帯端末装置に提示するか否かを決定する提示情報決定工程と、前記情報提示装置が、該提示情報決定工程で提示することが決定された方面関連情報を前記携帯端末装置へ送信する方面関連情報送信工程とを有することを特徴とする情報提示方法である。
ここで、線とは太さを持つ直線及び曲線である。また、多角形とは一般的な意味の多角形、即ち三つ以上の任意の数の線分で囲まれた平面図形だけでなく、円や楕円など、曲線で囲まれた平面図形を含む。
【0010】
[作用]
本発明によれば、情報提示装置は、携帯端末装置から送信された方位情報及び位置情報を受信し、受信された位置情報の示す位置から所定の距離内、かつ受信された方位情報の示す方位から所定の角度内に存在し、かつ平面地図上で線又は多角形となる対象物を検索し、平面地図上で、受信された位置情報の示す位置と検索された対象物に対し所定の方向に延びる基準方向線の所定の部位とを結ぶ線の方向と、受信された方位情報の示す方向とのなす角度を検出し、検出された角度に応じて、前記基準方向線の延びる方位に位置する方面に関する方面関連情報を携帯端末装置に提示するか否かを決定し、提示することが決定された方面関連情報を携帯端末装置へ送信する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を情報提示装置から携帯端末装置に提示する情報提示システムにおいて、携帯端末装置の向いている方向だけでなく、向いていない方向の有用な情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の情報提示システムを示す図である。
【図2】図1における携帯端末装置のブロック図である。
【図3】図1における情報提示装置のブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における位置関連情報及び方面関連情報のデータ構造を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の情報提示システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】図5において対象が多角形の場合に方面関連情報を取得する手順を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す手順で取得される方面関連情報の一例を説明するための図である。
【図8】携帯端末装置に提示する方面関連情報と携帯端末装置の位置及び向きとの関係を示す図である。
【図9】図5において対象が線の場合に方面関連情報を取得する手順を示すフローチャートである。
【図10】図9に示す手順で取得される方面関連情報の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〈情報提示システムの構成〉
図1は本発明の実施形態の情報提示システムを示す図である。この情報提示システムは、インターネット等のネットワーク1に接続される情報提示装置2と、基地局3経由でネットワーク1に接続される携帯端末装置4からなる。携帯端末装置4は撮影機能、位置測定機能、及び通信機能を有する携帯機器であれば何でもよく、例えばデジタルカメラ、カメラ付の、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Personal Navigation Device)、携帯ゲーム機などである。携帯端末装置4と情報提示装置2とは、基地局3及びネットワーク1を介して通信可能である。
【0014】
〈携帯端末装置の構成〉
図2は携帯端末装置4のブロック図である。この携帯端末装置4は制御部41、操作部42、表示部43、GPS受信部44、方位検出部45、及び無線通信部46を備えている。
【0015】
制御部41は携帯端末装置4の各部を制御するためのコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)411と、ROM(Read Only Memory)412と、RAM(Random Access Memory)413とを備えている。CPU411はROM412に記憶されたプログラムをRAM413にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【0016】
操作部42は、この携帯端末装置4をユーザが操作するための各種ボタンからなる。表示部43は、この携帯端末装置4の動作状態や、操作部42からユーザが入力した情報等を表示するための液晶表示装置等からなる。
【0017】
GPS受信部44は一定時間(例えば1秒)毎にGPS衛星から送信された電波を受信し、現在位置を測定(測位)する。そして、測位結果である位置情報、及び測位時刻情報をGPS情報として制御部41へ出力する。方位検出部45は、地磁気センサ等を用いて、携帯端末装置4の向いている方位、即ちユーザが表示部43を見ているときの携帯端末装置4の前方の方位を検出して方位情報を生成し、制御部41へ出力する。
【0018】
無線通信部46は基地局3との間で無線通信を行うための回路である。無線通信部46は基地局3を介して情報提示装置2にアクセスし、GPS受信部44で生成されたGPS情報、方位検出部45で生成された方位情報、及びROM412に保存されている携帯端末装置4の端末装置IDを送信することができる。また、情報提示装置2から送信された情報を受信することができる。
【0019】
〈情報提示装置の構成〉
図3は情報提示装置のブロック図である。この情報提示装置2は、制御部21、通信部22、及び記憶部23を備えている。
【0020】
制御部21はCPU211、ROM212、及びRAM213を含み、この情報提示装置全体の制御等を行う。CPU211は、ROM212に記憶されたプログラムをRAM213にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【0021】
通信部22はネットワーク1及び基地局3を介して携帯端末装置4と通信を行う。記憶部23はHDD(ハードディスク装置)からなり、位置関連情報DB(データベース)231、方面関連情報DB232、及び表示情報選択テーブル233が設けられている。
【0022】
位置関連情報DB231には、位置関連情報、即ちガソリンスタント、コンビニエンスストア、ラーメン店、ホテルといった店舗や、有名な施設、鉄道線路(地下鉄を含む)、主要な道路、湖沼、河川、海岸線等のような、現実空間の位置に関連付けられた対象物に関する情報が格納されている。この位置関連情報は、図4Aに示すように、位置関連情報ID、名称、位置情報(緯度、経度)、重心位置情報、内容情報、及び対応する方面関連情報IDから構成されている。ただし、重心位置情報は対象物が平面地図上で多角形(ポリゴン)となる場合のみ存在する。
【0023】
「位置関連情報ID」は位置関連情報の識別情報である。「名称」は位置に関連付けられた対象物の名称を示す情報である。「位置情報(緯度、経度)」は位置に関連付けられた対象物の緯度、経度を示す情報である。「重心位置情報」は位置に関連付けられた対象物の多角形の重心の位置(緯度、経度)を示す情報である。「内容情報」は位置に関連付けられた対象物の内容、即ち対象物が店舗や施設等であれば営業時間、商品等であり、対象物が鉄道の路線のある区間であれば、その区間内又は付近の駅名などである。
【0024】
「対応する方面関連情報ID」は、位置に関連付けられた対象物に対応付けられた方面関連情報のIDである。方面関連情報は位置に関連付けられた対象物が多角形であるか線であるかにより異なる。多角形の場合は、その多角形から所定距離以内の任意の方位に存在する対象物に関する情報が方面関連情報である。例えば位置に関連付けられた対象物が日比谷公園であれば、有楽町駅、皇居、霞が関駅等に関する情報が方面関連情報となる。一方、線の場合は、その線の延長方向に存在する対象物に関する情報が方面関連情報である。例えば位置に関連付けられた情報が山手線の有楽町駅であれば、新橋方面、東京方面等に関する情報が方面関連情報となり、東海道新幹線の品川駅であれば、東京方面、新大阪方面等に関する情報が方面関連情報となる。
【0025】
方面関連情報DB232には、上述した方面関連情報が格納されている。方面関連情報は、図4Bに示すように、方面関連情報ID、名称、方位情報、内容情報、対応する位置関連情報IDから構成されている。
【0026】
「方面関連情報ID」は方面関連情報の識別情報である。「名称」は方面関連情報の名称を示す情報である。「方位情報」は対応する位置関連情報に対する方位を示す情報である。例えば方面関連情報が有楽町駅に関する情報であり、対応する位置関連情報が日比谷公園であれば、有楽町駅は日比谷公園の北東に位置することから、方位情報は「北東」となる。
【0027】
「内容情報」は方面関連情報の内容、即ち有楽町駅に関するものであれば、東京方面(内回り)の時刻表、新橋方面(外回り)の時刻表等である。
【0028】
「対応する位置関連情報ID」は、方面関連情報に対応する位置関連情報の内容、即ち方面関連情報が有楽町駅に関する情報であれば、日比谷公園などのIDである。
【0029】
表示情報選択テーブル233には、携帯端末装置4に方面関連情報を提供するときに、方面関連情報を選択するための規則を記述したテーブルである。この規則については後述する。
【0030】
〈情報提示システムの動作〉
以上の構成を有する情報提示システムの概略動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。この図のフローは、携帯端末装置4のCPU411がROM412に格納されているプログラムを実行し、情報提示装置2のCPU211がROM212に格納されているプログラムを実行することにより行われる。
【0031】
携帯端末装置4のユーザが情報提示アプリケーション(以下、情報提示アプリと言う)を起動すると、携帯端末装置4は情報提示装置2に対し、アクセス要求を送信する(ステップS1)。このアクセス要求には、携帯端末装置4の端末装置IDが含まれている。
【0032】
情報提示装置2はアクセス要求を受信すると、端末装置IDをRAM213に書き込み、続いて情報提示アプリのトップ画面の画像データを記憶部23から読み出し、携帯端末装置4へ送信する(ステップS11)。トップ画面の画像データは、情報提示アプリを開始する旨のメッセージを表示するための画像データなどである。携帯端末装置4は情報提示アプリのトップ画面の画像データを受信し、表示部43に表示する(ステップS2)。
【0033】
次いで携帯端末装置4では、CPU411の制御により、GPS受信部44及び方位検出部45が動作する。これにより、GPS受信部44が携帯端末装置4の現在位置を測定(測位)して、位置情報及び測位時刻情報を生成し、方位検出部45が携帯端末装置4の向いている方位を示す方位情報を生成する(ステップS3)。位置情報及び測位時刻情報は端末装置IDとともに情報提示装置2へ送信される(ステップS4)。
【0034】
情報提示装置2は位置情報、方位情報及び端末装置IDを受信すると(ステップS12)、位置関連情報DB231にアクセスし、ステップS12で受信した位置情報の示す携帯端末装置4の現在位置から所定の距離(例えば5km)以内であり、かつステップS12で受信した方位情報の示す方位に対し所定の角度(例えば両側30°)に存在する対象物(オブジェクト)の内、平面地図上で線又は多角形となる対象物を検索し、取得する(ステップS13)。ここで、線となる対象物(線オブジェクト)は、河川、海岸線、主要な道路、鉄道路線等、所定長以上の全長を有するものであり、多角形となる対象物(多角形オブジェクト)は湖沼、山、テーマパーク等、ランドマークとなるような周辺の他の対象と比べて、広大なものである。
【0035】
次に情報提示装置2は、ステップS13で取得した対象物(オブジェクト)に対し所定の方向に位置する方面に関する方面関連情報を、表示情報選択テーブル233に記述されている規則に基づいて決定することで、携帯端末装置4に提示するための方面関連情報を取得する(ステップS14)。
【0036】
次に情報提示装置2は、ステップS14で取得した方面関連情報を携帯端末装置4の表示部43に所定の表示形態で表示させるための画像データを生成し、携帯端末装置4へ送信する(ステップS15)。携帯端末装置4は、この画像データを受信し、表示部43に表示する(ステップS5)。
【0037】
携帯端末装置4では、情報提示アプリを終了する操作が検出される(ステップS6:YES)迄、ステップS3〜S5を繰り返し、検出されたら、情報提示装置2に対し、アクセス解除要求を送信する(ステップS7)。
【0038】
情報提示装置2では、アクセス解除要求を受信する(ステップS16:YES)迄、ステップS12〜S15を繰り返し、受信したら、携帯端末装置4のアクセスを解除する(ステップS17)。
【0039】
〈方面関連情報を取得する処理の詳細〉
方面関連情報を取得する処理の詳細、ステップS14の内容は、対象物が線か多角形かにより異なるので、以下、多角形、線の順に説明する。
【0040】
図6に、対象物が多角形の場合の処理を示す。まず、対象物(多角形オブジェクト)の重心と、対象物(多角形オブジェクト)に対応付けられている方面とを結ぶ線である基準方向線上で、携帯端末装置4の現在位置に最も近い点を求め、現在位置より直線を引く(ステップS21)。
【0041】
ステップS21の具体例を図7に示す。ここでは、対象物(多角形オブジェクト)PLGは、対象物α〜γの位置する3つの方面に対応付けられている。これらの対象物は例えば駅、寺、山等である。これらの3つの方面の方面関連情報は対象物α〜γに関する情報である。ここでは、対象物(多角形オブジェクト)PLGの重心G1と、対象物αの位置する方面とを結ぶ基準方向線L1上で、携帯端末装置4の現在位置P0から最も近い点を求め、その点迄現在位置P0より直線L4を引く。直線L4は、現在位置P0から基準方向線L1に下ろした垂線である。便宜上、図示を省略したが、重心G1と、対象物βの位置する方面とを結ぶ方向基準線L2上で、携帯端末装置4の現在位置P0から最も近い点、及び重心G1と、対象物γの位置する方面とを結ぶ基準方向線L3上で、携帯端末装置4の現在位置P0から最も近い点を求め、それぞれの点迄現在位置P0より直線を引く。ただし、以後、方向基準線L2及びL3についての説明を省略する。
【0042】
図6の説明に戻る。次に、現在位置より引いた直線の方向と、携帯端末装置4が現在向いている方向とのなす角度を求める(ステップS22)。図7の場合、携帯端末装置4が現在向いている方向は直線L5の方向である。従って、求める角度は、直線L4の方向と直線L5の方向とのなす角度である。
【0043】
次に情報提示装置2は、表示情報選択テーブル233に記述されている方面関連情報を決定するための規則を参照することで、ステップS22で求めた角度に応じて、携帯端末装置4に提示する方面関連情報を決定する(ステップS23)。
【0044】
図8を用いて、表示情報選択テーブル233に記述されている方面関連情報を決定するための規則について説明する。この図において、図7と対応する部分には図7と同じ参照符号を付した。方向D0は現在位置P0から直線L4が延びる方向であり、方向D1、D2は、それぞれ基準方向線L1において直線L4との交点から左側、右側に延びる方向である。従って、図7の場合、方向D1に位置する方面に対象物αが存在することになる。なお、この図において、方向D0を基準にして時計回りの方向の角度をプラスの角度とし、反時計回りの方向の角度をマイナスの角度とした。
【0045】
携帯端末装置4の現在の向きが方向D0の両側の所定角度(ここでは30°)以内の場合、情報提示装置2は携帯端末装置4に対して、方面関連情報として、方向D1、D2双方に位置する方面に存在する対象物に関する情報を提示する。ただし、図7の場合、方向D2に位置する方面には対象物が存在しないため、方向D1に位置する方面に存在する対象物αに関する情報を提示する。例えば図7の対象物(多角形オブジェクト)PLGが湖であり、対象物αが寺の場合、携帯端末装置4の表示部43には、画面中央に湖の名称のタグを表示させ、その左方に寺の名称のタグを表示させるための画像データを提示する。寺の名称のタグにタッチすると、その寺の詳細(拝観料、拝観可能日時等)を表示させるように構成することもできる。また、対象物αが駅であれば、駅名や上下線の時刻表等を提示し、バス停であれば停留所名、行先、時刻表等を提示する。
【0046】
携帯端末装置4の現在の向きが−30°を越え、かつ−120°以内の場合、情報提示装置2は携帯端末装置4に対して、方面関連情報として、方向D1、つまり方向D1、D2の内、携帯端末装置4の現在の向きに近い方向のみに位置する方面に存在する対象物に関する情報を提示する。従って、図7の場合、対象物αに関する情報を提示することになる。
【0047】
携帯端末装置4の現在の向きが+30°を越え、かつ+120°以内の場合、情報提示装置2は携帯端末装置4に対して、方面関連情報として、方向D2、つまり方向D1、D2の内、携帯端末装置4の現在の向きに近い方向のみに位置する方面に存在する対象物に関する情報を提示する。図7の場合、方向D2に位置する方面には対象物が存在しないため、携帯端末装置4には対象物(多角形オブジェクト)PLGに関する情報、つまり位置関連情報のみを提示し、方面関連情報は提示しない。
【0048】
携帯端末装置4の現在の向きが−120°或いは+120°を越える場合は、携帯端末装置4には対象物(多角形オブジェクト)PLGに関する位置関連情報のみを提示し、方面関連情報は提示しない。
【0049】
図8を用いた提示対象情報の決定に関する説明は、図7の基準方向線L1の延びる方位に位置する方面の方面関連情報のみに関わるものであり、基準方向線L2及びL3の延びる方位に位置する方面の方面関連情報についても並行して選択動作が行われ、基準方向線L2及びL3の延びる方位に位置する方面の方面関連情報が提示される。
【0050】
図9に、対象物が線の場合の処理を示す。まず、対象物(線オブジェクト)上で、携帯端末装置4の現在位置に最も近い点を求め、現在位置より直線を引く(ステップS31)。ただし、対象物(線オブジェクト)が鉄道路線の場合は、最も近い駅迄直線を引いてもよい。
【0051】
次に、現在位置より引いた直線の方向と、携帯端末装置4が現在向いている方向とのなす角度を求める(ステップS32)。次いで、表示情報選択テーブル233に記述されている方面関連情報を決定するための規則を参照することで、ステップS32で求めた角度に応じて、携帯端末装置4に提示する方面関連情報を決定する(ステップS33)。
【0052】
方面関連情報を決定するための規則は、図8を用いて説明した、対象物が多角形の場合と同様であり、図8の基準方向線L1を対象物(線オブジェクト)とみなして処理すればよい。提示する方面関連情報は、対象物(線オブジェクト)が道路であれば、上下線の方面、パーキング、インターチェンジ等であり、対象物(線オブジェクト)が海岸線であれば、江ノ島方面、真鶴方面等である。また、鉄道路線であれば、上下線の方面、時刻表等である。
【0053】
図10は対象物(線オブジェクト)が鉄道路線の場合に提示される方面関連情報を説明するための図である。図示されている対象物(線オブジェクト)は路線A、路線B、路線Cからなる3本の鉄道路線である。これらの鉄道路線は、図5のステップS13で、携帯端末装置4の現在位置P1から所定距離(例えば5km)の円R1内であり、かつ携帯端末装置4が現在向いている方位の両側の所定の角度(例えば30°)の範囲内に存在する対象物(線オブジェクト)として取得されたものである。
【0054】
路線A、Bには、駅“い”が円R1内に存在し、路線Cには駅“ろ”及び“は”が円R1外に存在する。各駅は路線A、路線B、路線Cを示す位置関連情報の内容情報である。なお、駅は一般的には多角形オブジェクトとしないが、東京駅や新宿駅等の大きな駅については、多角形オブジェクトとしてもよい。また、携帯端末装置4の操作部42により、鉄道路線に関する情報のみを提示する動作モードに設定するように構成してもよい。
【0055】
これらの路線A、路線B、路線Cの延長方向の方面関連情報を携帯端末装置4に提示する際は、まず携帯端末装置4の現在位置P1から路線A、路線B、路線Cの最も近い点迄直線を引く。これらの直線は、現在位置P1から路線A、路線B、路線Cへ下ろした垂線となる。図では、路線AとBは平行であるため、現在位置P1から路線A、路線Bへ下ろした垂線は共通の直線L11となる。路線Cに下ろした垂線は直線L12である。
【0056】
図において、直線L11を時計回りにそれぞれ30°、120°回転させた直線をL11+30、L11+120、反時計回りにそれぞれ30°、120°回転させた直線をL11-30、L11-120とした。また、直線L12を時計回りにそれぞれ30°、120°回転させた直線をL12+30、L12+120、反時計回りにそれぞれ30°、120°回転させた直線をL12-30、L12-120とした。
【0057】
路線A、Bに関する方面関連情報を携帯端末装置4に提示するときは、携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L11の方向の両側30°以内、即ち直線L11の方向から直線L11+30の方向迄、或いは直線L11の方向から直線L11-30の方向迄の場合は、路線A、Bの上下線双方の方面に関する情報(駅“い”の上り、下りの双方の時刻表など)を提示する。携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L11+30の方向を越え、直線L11+120の方向に至るまでの場合は、路線A、Bの図の斜め右上方向に位置する方面に関する情報(駅“い”の上り、下りの一方の時刻表など)を提示する。携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L11-30の方向を越え、直線L11-120の方向に至るまでの場合は、路線A、Bの図の斜め左下方向に位置する方面に関する情報(駅“い”の上り、下りの他方の時刻表など)を提示する。携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L11+120の方向を越えている場合、或いは直線L11-120の方向を越えている場合は路線A、Bの延びる方向に位置する方面に関する情報を提示しない。
【0058】
同様に、路線Cに関する方面関連情報を携帯端末装置4に提示するときは、携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L12の方向の両側30°以内、即ち直線L12の方向から直線L12+30の方向迄、或いは直線L12の方向から直線L12-30の方向迄の場合は、路線Cの上下線双方の方面に関する情報(駅“ろ”及び駅“は”の上り、下り双方の時刻表など)を提示する。携帯端末装置4が現在の向いている方向が直線L12+30の方向を越え、直線L12+120の方向に至るまでの場合は、路線Cの図の右方に位置する方面に関する情報(駅“は”の上り、下りの一方の時刻表など)を提示する。携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L12-30の方向を越え、直線L12-120の方向に至るまでの場合は、路線Cの図の左方に位置する方面に関する情報(駅“は”の上り、下りの他方の時刻表など)を提示する。携帯端末装置4が現在向いている方向が直線L12+120の方向を越えている場合、或いは直線L12-120の方向を越えている場合は路線Cの延びる方向に位置する方面に関する情報を提示しない。
【0059】
ここで、路線A、B、Cに関する情報を提示するときは、現在位置P1に近い順に優先的に表示することができる。この場合、路線Aの駅“い”が最も優先順位が高く、以下、路線Bの駅“い”、路線Cの駅“ろ”、路線Cの駅“は”の順となる。
【0060】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態の情報提示システムによれば、携帯端末装置4の現在位置から所定距離内であり、かつ携帯端末装置4が現在向いている方向から所定角度内に存在する、平面地図上で線となる対象物を検索し、携帯端末装置の現在位置より、検索された対象物を示す線上の最も近い点迄直線を引き、その直線の方向と携帯端末装置4が現在向いている方向とのなす角度に応じて、前記検索された対象物を示す線の方向に位置する方面の方面関連情報を提示するか否かを決定するので、検索された対象物に関する情報に加えて、携帯端末装置4の向きに応じて、ユーザに有用な方面関連情報を提示することができる。
【0061】
また、携帯端末装置4の現在位置から所定距離内であり、かつ携帯端末装置4が現在向いている方向から所定角度内に存在する、平面地図上で多角形となる対象物を検索し、携帯端末装置の現在位置より、検索された対象物の重心とその対象物に対応付けられた方面とを結ぶ線上の最も近い点迄直線を引き、その直線の方向と携帯端末装置4が現在向いている方向とのなす角度に応じて、対象物に対応付けられた方面の方面関連情報を提示するか否かを決定するので、検索された対象物に関する情報に加えて、携帯端末装置4の向きに応じて、ユーザに有用な方面関連情報を提示することができる。
【0062】
なお、以上の実施形態では、携帯端末装置4の表示部43に方面関連情報を表示させるための画像データを情報提示装置2が生成しているが、携帯端末装置4が生成するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0063】
2…情報提示装置、4…携帯端末装置、21…制御部、22…通信部、23…記憶部、41…制御部、43…表示部、44…GPS受信部、45…方位検出部、46…無線通信部、231…位置関連情報DB、232…方面関連情報DB、233…表示情報選択テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を情報提示装置から前記携帯端末装置に提示する情報提示システムであって、
前記携帯端末装置は、
情報を表示する情報表示部と、
自身の向いている方向を検出し、検出結果として方位情報を生成する方位情報生成部と、
自身の位置を検出し、検出結果として位置情報を生成する位置情報生成部と、
前記方位情報生成部で生成された方位情報及び前記位置情報生成部で生成された位置情報を前記情報提示装置へ送信する端末情報送信手段とを有し、
前記情報提示装置は、
位置に関連付けられた対象物に関する情報が予め保存されている位置関連情報記憶部と、
前記携帯端末装置から送信された方位情報及び位置情報を受信する受信手段と、
前記受信された位置情報の示す位置から所定の距離内、かつ前記受信された方位情報の示す方位から所定の角度内に存在し、かつ平面地図上で線又は多角形となる対象物を前記位置関連情報記憶部から検索する対象物検索手段と、
前記平面地図上で、前記受信された位置情報の示す位置と前記線又は多角形に対し所定の方向に延びる基準方向線の所定の部位とを結ぶ線の方向と、前記受信された方位情報の示す方向とのなす角度を検出する角度検出手段と、
前記平面地図上で線又は多角形である対象物に対し、前記基準方向線の延びる方向に位置する方面に関する方面関連情報が予め保存されている方面関連情報記憶部と、
前記角度検出手段で検出された角度に応じて、前記方面関連情報を、位置に関連付けられた対象物に関する情報として前記携帯端末装置に提示するか否かを決定する提示情報決定手段と、
該提示情報決定手段で提示することが決定された方面関連情報を情報前記携帯端末装置へ送信する方面関連情報送信手段とを有する
ことを特徴とする情報提示システム。
【請求項2】
請求項1に記載された情報提示システムにおいて、
前記対象物検索手段で検索された対象物が平面地図上で線となる場合、
前記基準方向線は、該平面地図上の線自身であることを特徴とする情報提示システム。
【請求項3】
請求項1に記載された情報提示システムにおいて、
前記対象物検索手段で検索された対象物が平面地図上で多角形となる場合、
前記基準方向線は、該多角形の重心と、該多角形に対応付けれた方面とを結ぶ線であることを特徴とする情報提示システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された情報提示システムにおいて、
前記角度検出手段は、前記所定の部位を前記受信された位置情報の示す位置に最も近い位置とすることを特徴とする情報提示システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載された情報提示システムにおいて、
前記角度検出手段は、前記対象物検索手段で検索された対象物が鉄道路線である場合、前記所定の部位を前記受信された位置情報の示す位置に最も近い駅の位置とすることを特徴とする情報提示システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された情報提示システムにおいて、
前記提示情報決定手段は、前記角度検出された角度が所定の第1の閾値以内の場合に、前記基準方向線の延びる両方向に位置する方面の方面関連情報を提示することを決定することを特徴とする情報提示システム。
【請求項7】
請求項6に記載された情報提示システムにおいて、
前記提示情報決定手段は、前記角度検出された角度が前記第1の閾値より大きく、第2の閾値以内の場合に、前記基準方向線の延びる方向の内、前記受信された方位情報の示す方向に近い方向のみに位置する方面の方面関連情報を提示することを決定することを特徴とする情報提示システム。
【請求項8】
携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を情報提示装置から前記携帯端末装置に提示する情報提示方法であって、
前記携帯端末装置が、自身の向いている方向を検出し、検出結果として方位情報を生成する方位情報生成工程と、
前記携帯端末装置が、自身の位置を検出し、検出結果として位置情報を生成する位置情報生成工程と、
前記携帯端末装置が、前記方位情報生成工程で生成された方位情報及び前記位置情報生成工程で生成された位置情報を前記情報提示装置へ送信する端末情報送信工程とを有し、
前記情報提示装置が、前記携帯端末装置から送信された方位情報及び位置情報を受信する受信工程と、
前記情報提示装置が、前記受信された位置情報の示す位置から所定の距離内、かつ前記受信された方位情報の示す方位から所定の角度内に存在し、かつ平面地図上で線又は多角形となる対象物を位置関連情報記憶部から検索する対象物検索工程と、
前記情報提示装置が、前記平面地図上で、前記受信された位置情報の示す位置と前記線又は多角形に対し所定の方向に延びる基準方向線の所定の部位とを結ぶ線の方向と、前記受信された方位情報の示す方向とのなす角度を検出する角度検出工程と、
前記情報提示装置が、前記角度検出手段で検出された角度に応じて、前記方面関連情報を、位置に関連付けられた対象物に関する情報として前記携帯端末装置に提示するか否かを決定する提示情報決定工程と、
前記情報提示装置が、該提示情報決定工程で提示することが決定された方面関連情報を前記携帯端末装置へ送信する方面関連情報送信工程とを有する
ことを特徴とする情報提示方法。
【請求項9】
携帯端末装置の位置及び向きに応じて、位置に関連付けられた対象物に関する情報を前記携帯端末装置に提示する情報提示装置のコンピュータを、請求項1〜7に記載された情報提示システムにおける情報提示装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−174806(P2011−174806A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38868(P2010−38868)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】