説明

情報提示システム

【課題】使用者の顔の向きに応じた適切な案内情報を提示することができる情報提示システムを提供する。
【解決手段】情報提示システムは、使用者の顔面の正面方向を検出する正面方向検出手段1と、使用者の現在位置を検出する位置検出手段2と、使用者に案内情報を表示する情報提示手段3と、情報制御手段4および情報取得手段5から構成される制御手段と、位置に対応付けられた位置連動コンテンツを記憶する位置連動コンテンツ記憶手段6とを備える。制御手段は、正面方向検出手段1により検出された前記正面方向および位置検出手段2により検出された現在位置に基づいて、使用者の正面方向の領域に対応する前記位置連動コンテンツを位置連動コンテンツ記憶手段6から取得して、情報提示手段3に案内情報として提示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が歩行時に使用する情報提示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)の受信機や方位センサを内蔵した携帯電話を用いて、歩行者用に経路案内サービスを提供する情報提示システムが種々提案されている。これらのシステムでは、携帯電話の画面上に表示した地図上に、進行方向を示す矢印や現在位置を示すマーカーを表示して、経路案内を提供している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、歩行中の使用者に現在位置と目的地との関係を把握しやすくするため、GPSを利用して現在地を測位し、測位した現在位置から目的地への方位が表示画面の上方向と一致するように、周辺店舗情報等を含む地図を回転させて表示する端末やプログラムも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、頭部に装着して、背景と重畳されたシースルー映像として画像を表示する表示装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この装置を、歩行者用の情報提示システムの表示部として使用すれば、歩行中の使用者の視界を遮ることなく案内情報を提供することができ、使用者は、歩行中に手に持った携帯電話等の携帯機器の表示画面をたびたび見ることがなくなるので、利便性が向上することが期待できる。また、画像を利用せず、音声のみによる情報提供も使用者の視界を遮らない点で有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−251694号公報
【特許文献2】特開2009−058399号公報
【特許文献3】特開2006−003879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、頭部装着型の表示装置を用いる場合や、音声によって案内情報を提示する場合は、情報の関連付けられている対象を理解できるように、使用者の顔の向いている方向に応じて、適切な案内情報が提示されることが望ましい。また、携帯電話等の携帯機器を表示端末として使用する場合も、顔の方向に応じた画像表示ができれば、表示画面内の案内情報と使用者の見ている風景との関係が把握し易く便利である。しかし、従来のGPSを利用した情報提示システムでは、現在地や進行方向は検出することができても、使用者の顔の向いている方向は検出できなかった。このため、顔の向きに応じた情報提示はなされていなかった。例えば、特許文献2に記載の装置では、目的地の方向が地図の上方向として表示されるが、使用者の顔が向いている方向と一致するとは限らなかった。
【0007】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、使用者の顔の向きに応じた適切な案内情報を提示することができる情報提示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する請求項1に係る情報提示システムの発明は、
使用者の顔面の正面方向を検出する正面方向検出手段と、
前記使用者の現在位置を検出する位置検出手段と、
位置に対応付けられた位置連動コンテンツを記憶する位置連動コンテンツ記憶手段と、
前記使用者に案内情報を提示する情報提示手段と、
前記正面方向検出手段により検出された前記正面方向および前記位置検出手段により検出された前記現在位置に基づいて、前記位置連動コンテンツ記憶手段から対応する前記位置連動コンテンツを取得して、前記情報提示手段に前記案内情報として提示させる制御手段と
を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
このようにすることによって、使用者の正面方向および現在位置を検出して、これら正面方向および現在位置の情報に基づいて、対応する位置連動コンテンツを取得して、情報提示手段に案内情報として提示することができるので、使用者の顔の向きに応じた適切な案内情報を提示することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の情報提示システムにおいて、前記正面方向検出手段、前記位置検出手段および前記情報提示手段と、前記制御手段とを接続する通信手段を備え、前記正面方向検出手段、前記位置検出手段および前記情報提示手段は、使用者が携帯可能に構成され、且つ、前記通信手段を介して前記制御手段と通信可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
このようにすることによって、正面方向検出手段、位置検出手段および情報提示手段を、使用者が携帯し、情報処理負荷の高い制御手段を使用者から分離して配置することができるので、使用者が携帯する装置の情報処理負荷を軽減することができる。したがって、使用者が携帯する装置を軽量化、小型化、且つ、省消費電力化することが可能になる。
【0012】
上記目的を達成する請求項3に係る情報提示システムの発明は、
使用者の顔面の正面方向を検出する正面方向検出手段と、
前記使用者の現在位置を検出する位置検出手段と、
使用者の進行方向を検出する進行方向検出手段と、
位置に対応付けられた位置連動コンテンツを記憶する位置連動コンテンツ記憶手段と、
前記使用者に案内情報を提示する情報提示手段と、
前記進行方向検出手段により検出された前記進行方向と、目的地へ向かう経路方向とが一致する場合は、前記正面方向検出手段により検出された前記正面方向および前記位置検出手段により検出された前記現在位置に基づいて、前記位置連動コンテンツ記憶手段から対応する前記位置連動コンテンツを取得して、前記情報提示手段に前記案内情報として提示させる制御手段と
を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
このようにすることによって、進行方向と目的地へ向かう経路方向が一致する場合は、使用者の正面方向および現在位置を検出して、これら正面方向および現在位置の情報に基づいて、対応する位置連動コンテンツを取得して、情報提示手段に案内情報として提示することができるので、使用者の顔の向きに応じた適切な案内情報を提示することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の情報提示システムにおいて、前記制御手段は、前記進行方向検出手段により検出された前記進行方向と、目的地へ向かう経路方向とが一致しない場合は、前記目的地へ向かう経路に関する情報を、前記情報提示手段に前記案内情報として提示させることを特徴とするものである。
【0015】
このようにすることによって、請求項3に係る発明の効果に加え、進行方向と目的地へ向かう経路方向が一致しない場合は、目的地へ向かう経路に関する情報を、情報提示手段に案内情報として提示させることができる。すなわち、使用者が目的地方向へ向かっているか否かに応じて、提示する情報を切替えて、適切な情報を提示することが可能となる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項3または4に記載の情報提示システムにおいて、前記正面方向検出手段、前記位置検出手段、前記進行方向検出手段および前記情報提示手段と、前記制御手段とを接続する通信手段を備え、前記正面方向検出手段、前記位置検出手段、前記進行方向検出手段および前記情報提示手段は、使用者が携帯可能に構成され、且つ、前記通信手段を介して前記制御手段と通信可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
このようにすることによって、正面方向検出手段、位置検出手段、進行方向検出手段および情報提示手段は、使用者が携帯し、情報処理負荷の高い制御手段を使用者から分離して配置することができるので、使用者が携帯する装置の情報処理負荷を軽減することができる。したがって、使用者が携帯する装置を軽量化、小型化、且つ、省消費電力化することが可能になる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項3−5のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記制御手段は、前記使用者の前記現在位置と前記情報提示手段に提示すべき前記位置連動コンテンツが対応づけられた位置との距離に応じて、提示する内容を制御することを特徴とする。
【0019】
このようにすることによって、情報提示手段に提示する内容を現在位置からの距離に応じて変えることができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項3−6のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記進行方向検出手段は、使用者の胴体部に装着若しくは保持される地磁気センサ、または、使用者に装着または保持されるグローバル・ポジショニング・システム受信機を含んで構成されることを特徴とするものである。
【0021】
このようにすることによって、地磁気センサまたはGPS受信機を使用者が装着するので、利用者の進行方向を容易に検出することができる。
【0022】
請求項8に係る発明は、請求項1−7のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記正面方向検出手段は、使用者の頭部に装着可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
このようにすることによって、正面方向検出手段は、他の構成配置に関わりなく使用者の頭部に装着され、使用者の顔の正面方向を検出することができる。
【0024】
請求項9に係る発明は、請求項1−8のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記正面方向検出手段は、地磁気センサを含んで構成されることを特徴とするものである。
【0025】
このようにすることによって、正面方向検出手段を小型且つ安価に構成することができる。
【0026】
請求項10に係る発明は、請求項1−9のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記位置検出手段は、グローバル・ポジショニング・システムを利用して構成されることを特徴とするものである。
【0027】
このようにすることによって、屋外の広い範囲で使用者の現在位置の検出を行うことができる。
【0028】
請求項11に係る発明は、請求項1−10のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記情報提示手段は、使用者の視野内に、表示画像が背景視野に重畳されて表示される頭部装着型の画像表示手段であることを特徴とするものである。
【0029】
このようにすることによって、シースルー表示可能な頭部装着型の表示装置を用いることにより、使用者は、歩行中に手に持った携帯電話などの携帯機器の表示画面を度々確認する必要がなく、歩行しながら風景と重畳された案内情報を見ることができるので、利便性が向上する。
【0030】
請求項12に係る発明は、請求項1−11のいずれか一項に記載の情報提示システムにおいて、前記情報提示手段は、音声による情報提示手段であることを特徴とするものである。
【0031】
このようにすることによって、音声による案内情報を使用者に提示できるので、使用者は、歩行中に手に持った携帯電話などの携帯機器の表示画面を度々確認する必要がなく且つ視野を遮られることもないので利便性と安全性とが向上する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、使用者の顔の向きに応じた適切な案内情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る情報提示システムのブロック図である。
【図2】情報提示手段を示す図である。
【図3】位置連動コンテンツ記憶手段のデータ構造および格納されるデータの一例を示す図である。
【図4】図1の情報提示システムの使用者への装着方法を示す図である。
【図5】図1の情報提示システムの分散配置方法の一例を説明する図である。
【図6】図1の情報制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図7】図1の情報提示システムによる情報提示を説明するイメージ図である。
【図8】本発明の第2実施の形態に係る情報提示システムのブロック図である。
【図9】図8の情報提示システムの使用者への装着方法を示す図である。
【図10】図8の情報提示システムの分散配置方法の一例を説明する図である。
【図11】図8の情報制御手段による使用者状況の判定方法を説明する図である。
【図12】図8の情報制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図13】図8の情報提示システムによる経路案内のイメージ図である。
【図14】図8の情報提示システムによる周辺案内のイメージ図である。
【図15】第2実施の形態の変形例の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る情報提示システムのブロック図である。図1に示すように、本実施の形態の情報提示システムは、正面方向検出手段1と、位置検出手段2と、情報提示手段3と、情報制御手段4と、情報取得手段5と、位置連動コンテンツ記憶手段6とを備える。
【0036】
正面方向検出手段1は、使用者の顔の向き(顔面の正面方向)を検出するものであり、例えば、頭部に装着される地磁気センサである。また、位置検出手段2は、使用者の現在位置を検出するものであり、例えば、GPS受信機を含んで構成される。情報提示手段3は、使用者に対して案内経路や周辺の店舗などの情報を提示する装置である。
【0037】
図2(a)に示すように、情報提示手段3として特許文献3に記載の表示装置と同様な頭部装着型画像表示装置を用いる。この装置は、眼鏡フレームに装着され使用者の片側の眼球へ映像を導光するための棒状の導光部を備える。この表示装置によれば、導光部の幅を瞳孔径より狭くして、表示画像を背景と重畳したシースルー画像として表示する。なお、情報提示手段としては、他の手段を利用することもできる。たとえば、図2(b)に示すように、携帯機器からイヤホンを通じて音声情報を提供するようにしても良い。
【0038】
位置連動コンテンツ記憶手段6は、店舗やビルなどの位置に対応付けられたコンテンツ(位置連動コンテンツ)を記憶する。図3に、位置連動コンテンツ記憶手段6のデータ構造および格納されるデータの一例を示す。位置連動コンテンツ記憶手段6には、少なくとも緯度、経度、対象物を表すテキストや画像などのコンテンツが蓄積されている。図3に示した例によれば、緯度および経度で特定される位置とその位置に対応する店舗の名称(タイトル)およびその詳細情報が格納されている。なお、位置連動コンテンツ記憶手段6は、使用者が携帯しても良いし、通信を介して使用者から離れた場所に配置しても良い。
【0039】
また、情報制御手段4は、正面方向検出手段1および位置検出手段2により検出した、使用者の正面方向情報および現在位置の情報に基づいて、情報取得手段5に対して所定の領域内の位置に対応する位置連動コンテンツの取得を要求し、情報取得手段5はその要求に応じて位置連動コンテンツ記憶手段6から対応する位置連動コンテンツを取得して、情報取得手段5に引き渡す。情報制御手段4は、取得した位置連動コンテンツを、情報提示手段3に案内情報として提示させる。なお、情報制御手段4と情報取得手段5とは、制御手段を構成している。
【0040】
次に、情報提示システムの実装について説明する。図4は、図1に示した情報提示システムの使用者への装着方法を説明する図である。図4(a)に示すように、情報提示手段3として、眼鏡型の頭部装着型画像表示装置を用い、正面方向検出手段を構成する地磁気センサと位置検出手段2を構成するGPS受信機とは、この表示装置と一体として眼鏡フレーム部分に装着される。また、情報制御手段4、情報取得手段5および位置連動コンテンツ記憶手段6は、携帯型の情報端末11に実装され、例えば、胸ポケットなどに入れて持ち運ばれる。この情報端末と、上述の正面方向検出手段1、位置検出手段2および情報提示手段3は、有線または無線通信により相互に接続される。
【0041】
また、図4(b)に示すように、使用者は、正面方向検出手段1、位置検出手段2および情報提示手段3のみを携帯し、位置検出手段2としては、携帯電話12のGPS機能を用いるような構成も可能である。この場合、図5に示すように、使用者側には正面方向検出手段1および位置検出手段2の検出結果を送信する送信手段7aと、情報提示手段3に表示すべき情報を受信する受信手段7cとを有する。また、使用者から離れた場所に配置された情報処理装置に情報制御手段4、情報取得手段5および位置連動コンテンツ記憶手段6を実装する。この情報処理装置は、送信手段7aからの情報を受信する受信手段7bと受信手段7cへ情報を送信する送信手段7dとを有する。ここで、送信手段7a,7dおよび受信手段7b,7cは、通信手段を構成している。図4(b)の構成では、位置検出手段2が携帯電話12に内蔵されるとともに、頭部に装着された正面方向検出手段1および情報提示手段3は、携帯電話12に接続され、携帯電話12の通信機能を用いて、遠隔地のサーバに実装された情報制御手段4と通信を行うように構成される。このように構成することによって、使用者が携帯する装置から、情報処理負荷の高い情報制御手段を分離することができる。なお、通信手段7a−7dは、携帯電話を利用したものに限られず、有線によるものやBluetoothなどの無線通信手段を用いても良い。
【0042】
以下に、情報制御手段4による処理の流れを、図6を用いて説明する。まず、情報提示システムが起動されると、情報制御手段4は、正面方向検出手段1および位置検出手段2により使用者の顔の正面方向と現在位置との情報を収集する(ステップS101)。
【0043】
次に、情報制御手段4は、使用者の顔が向いている方向の所定領域内の位置に対応する位置連動コンテンツを、情報取得手段5に要求する(ステップS102)。ここで、所定領域は、例えば、使用者の正面方向の角度範囲(例えば、正面方向から左右15度以内等)および現在位置からの距離範囲(例えば、現在位置から50メートル以内等)によって規定することができる。このようにすると、使用者の現在位置を中心とする扇形の領域が所定の領域となる。
【0044】
情報取得手段5は、位置連動コンテンツ記憶手段6から、上記所定範囲内の位置に対応する位置連動コンテンツを検索して取得し、情報制御手段4に引き渡す。取得した位置連動コンテンツが複数ある場合、情報制御手段4は、それらの対応する位置と現在位置との距離を求め、最も近い距離にあるものを選択する(ステップS103)。
【0045】
情報制御手段4は、選択した位置連動コンテンツを情報提示手段3である頭部装着型の情報提示手段に出力する(ステップS104)。図7は、表示されるイメージの一例を示している。歩行中の使用者が、道路脇の店舗の方向に顔を向けると、その店舗の情報が、情報提示手段により使用者の視野内に表示される。なお、図2(b)のような音声による情報提示手段を採用した場合には、音声により店舗の情報が読み上げられる。
【0046】
以上の処理は、使用者に情報提示システムが終了されるまで繰り返される(ステップS105)。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、使用者の正面方向および現在位置を検出して、これら正面方向および現在位置の情報に基づいて、対応する位置連動コンテンツを取得して、情報提示手段に案内情報として提示するようにしたので、使用者の顔の向きに応じた適切な案内情報を提示することができる。
【0048】
また、シースルー表示可能な頭部装着型の情報提示手段を用いたので、使用者は、歩行中に携帯情報端末等の表示画面を度々見る必要がなく、視界を遮られることなく歩行しながら提示される情報の画面を見ることができる。
【0049】
(第2実施の形態)
図8は、本発明の第2実施の形態に係る情報提示システムを示すブロック図である。本実施形態は、目的地に向かう経路と進行方向とが一致しているか否かに従って、目的地に向かう使用者に提示する情報を切替えるようにしたものである。このため、本実施の形態は、第1実施の形態に係る情報提示システムにおいて、使用者の進行方向を検出して、検出した進行方向を情報制御手段4に出力する進行方向検出手段8を付加している。
【0050】
進行方向検出手段8は、使用者が装着または保持するGPS受信機を含んで構成される。なお、位置検出手段2としてGPS受信機を使用する場合は、そのGPS受信機を進行方向検出手段8と共用することも可能である。GPSを利用すれば、逐次使用者の位置情報が得られるので、時間経過とともに使用者位置が変位する方向を進行方向として検出することが可能である。また、進行方向検出手段8としては、使用者の胴体部に装着または保持される地磁気センサを用いることもできる。この場合、地磁気センサにより検出される胴体の前方方向が進行方向と見なされる。
【0051】
図9は、図8に示した情報提示システムの使用者への装着方法を説明する図である。本実施の形態では、図9(a)に示すように、図4(a)で説明した装着方法に加え、進行方向検出手段8が眼鏡フレームに装着され、携帯型情報端末11に接続されている。また、図9(b)のように、図4(b)の装着方法において。携帯電話12に実装されているGPS受信機を用いて、進行方向を検出するようにしても良い。この場合、図10に示すように、使用者側には正面方向検出手段1、位置検出手段2、進行方向検出手段8の検出結果を送信する送信手段7aと、情報提示手段3に表示すべき情報を受信する受信手段7cとを有する。また、使用者から離れた場所に配置された情報処理装置に情報制御手段4、情報取得手段5および位置連動コンテンツ記憶手段6を実装する。この情報処理装置は、送信手段7aからの情報を受信する受信手段7bと受信手段7cへ情報を送信する送信手段7dとを有する。このようにすることで、第1実施の形態において図5を用いて説明したのと同様に、使用者が携帯する装置から、情報処理負荷の高い情報制御手段を分離することができる。
【0052】
その他の構成は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施の形態では、上述の使用者に装着された各検出手段1,2,8の検出結果を情報制御手段4で処理することによって、目的地へ向かう使用者の状況を判断する。図11を用いて、情報制御手段による使用者の状況の判定を説明する。図11(a)は、使用者の顔の向き(正面方向)と進行方向とに基づく、状況パターンの判定を示している。図において、「正面方向」の「OK」の欄の「○」は、使用者の顔の向いている方向が、目的地へ向かう経路の方向に一致していることを示しており、「NG」の欄の「○」は同じく一致していないことを示している。また、「進行方向」の「OK」の欄の「○」は、進行方向が目的地へ向かう経路に一致していることを示し、「NG」の欄の「○」は、一致していないことを示す。
【0054】
ここで、所定の時間内に使用者が移動した方向を進行方向として採用するが、所定の時間内の使用者の移動距離が定められた閾値に満たない場合は、「分からない」と判定する。システム開始直後や、GPS受信機が信号を検出できない乗り物からの下車直後などは、進行方向が分からないものとして扱う。また、道に迷って立ち止まっているような場合も進行方向が分からないものとして扱われる。
【0055】
図11(a)のように、正面方向と進行方向の検出結果によって、A−Eの5つのパターンが判定される。各パターンに対応して使用者は、図11(b)の「使用者状況判定」に示したような状況にあると判定され、「提示される情報」に記載される情報が、情報提示手段により提示される。たとえば、使用者が顔を目的地に向かう経路方向に向け、その経路方向に歩いている場合、図11(a)の「正面方向」および「進行方向」はいずれも「OK」であり、「状況パターン」は「A」と判定される。すると、図11(b)の「A」の行に示されるように、使用者は目的地に向かって進んでおり周辺施設に目を向けていないと判定される。この場合、使用者は目的地に向かう経路を誤ったり迷ったりしていないので、使用者が見ている方向にある周辺案内を提供する。
【0056】
以下に、図11で示した判定に従う、情報制御手段4による処理の流れを、図12を用いて説明する。まず、処理を始める前提として、情報提示システムに目的地が入力され、それにより出発地点から目的地までの経路が選択されている。目的地の入力は、使用者が歩行を始める前に本システムに設定しているものとする。あるいは、歩行中に新たに目的地を設定することも可能である。また、経路の選択は、最短距離によるものや、主要道路を優先するものなど種々の選択方法が可能である。さらに、選択された経路から外れた場合は、新たな最適経路を選択し直したり、最初に設定した経路に早く復帰する経路を探索したりする。これらは、既存の歩行者用のナビゲーションシステムに公知の方法なので、説明を省略する。
【0057】
まず、情報提示システムが起動されると、情報制御手段4は、正面方向検出手段1、位置検出手段2および進行方向検出手段8により使用者の顔の正面方向、現在位置および進行方向の情報を収集する(ステップS201)。
【0058】
次に、進行方向の情報と目的地に向かう経路方向とを比較し(ステップS202)、一致しない場合には目的地の方向を示す情報を、情報提示手段3に表示させる(ステップS203)。図13は、頭部装着型の情報提示手段を用いた場合の表示例を示している。この場合、使用者が進んでいる方向は経路方向と反対なので、「方向が違います」というメッセージとともに、使用者の後方向を指す矢印が表示される。これによって、使用者が、経路が誤っていることに気づくことができる。この表示は、進行方向と目的地に向かう経路方向が異なっている間は、継続的に表示される(ステップS202,S203)。
【0059】
一方、進行方向と目的地に向かう経路方向とが一致する場合は、情報制御手段4は、使用者の顔が向いている方向の所定領域内の位置に対応する位置連動コンテンツを、情報取得手段5を介して、位置連動コンテンツ記憶手段から取得する(ステップS204)。ここで、所定領域は、第1実施の形態で説明したものと同様に規定することができる。
【0060】
次に、取得した各位置連動コンテンツについて、対応する位置と使用者の現在位置との距離が、所定の閾値内か否かを判定する(ステップS205)。所定の閾値内の場合は、図3に示した位置連動コンテンツの「タイトル」と「詳細情報」とを順に情報提示手段3に提示する(ステップS206)。また、所定の閾値内にない場合は、「タイトル」一覧を、情報提示手段で提示する(ステップS207)。以上の情報の提示は、使用者が目的地に到着するまで繰り返される(ステップS208)。
【0061】
図14は、頭部に装着した情報提示手段3により表示されるイメージの一例を示しており、図14(a)はステップ206に対応し、「タイトル」(店の名前など)と「詳細情報」とが表示される場合を、図14(b)はステップ207に対応し、「タイトル」のみが表示される。歩行中の使用者が、近くにある店舗の方向に顔を向けると、その店舗の詳細情報が、使用者の視野内に表示され、遠方の店舗に顔を向けた場合は、その店舗および周辺の店舗の店名(タイトル)のみが表示される。なお、図2(b)のような音声による情報提示手段を採用した場合には、音声により提示する内容を変える他、近くの店舗を音声で通知する場合は、遠くの店舗の場合と比べ音量を大きくするなどして差異を設けることもできる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態によれば、進行方向と目的地へ向かう経路方向とが一致する場合、すなわち、使用者が正しい経路を進んでいる場合は、使用者の顔の向いている方向(正面方向)および現在位置の情報に基づいて、周辺の店舗情報等の対応する位置連動コンテンツを取得して、情報提示手段に案内情報として提示することができ、進行方向と目的地へ向かう経路方向とが一致しない場合、すなわち、使用者が選択された経路を進んでいない場合は、目的地の方向など目的地へ向かう経路に関する情報を、情報提示手段に案内情報として提示させることができる。すなわち、使用者が目的地へ向かっているか否かに応じて、提示する情報を切替えて、適切な情報を提示することが可能となる。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、位置連動コンテンツの対応する位置と現在位置との距離に応じて、情報提示手段に提示する内容を変えることができる。
【0064】
なお、第2実施の形態において、第1実施の形態のように最も近い位置に対応する位置連動コンテンツをそのまま表示することも可能である。その場合、処理の流れは、図15のようになる。図15において、ステップS211〜S213,S216は、図12のステップ201〜S203,S208と同様であり、ステップS214は図6のステップS102とS103をあわせた処理と同様であり、ステップS215は、ステップS104と同様なので、説明は省略する。これにより、第2実施の形態と同様に、使用者が目的地へ向かっているか否かに応じて、提示する情報を切替えて、適切な情報を提示することが可能となる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、情報提示システムの各構成要素の機能は通信手段を介して種々の方法で分散配置することが可能である。例えば、正面方向検出手段、位置検出手段、進行方向検出手段および情報提示手段は頭部に装着し、情報制御手段および情報取得手段は、携帯情報端末のようなポータブルな機器に実装し、位置連動コンテンツ記憶手段は、遠隔地のサーバに配置することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 正面方向検出手段
2 位置検出手段
3 情報提示手段
4 情報制御手段
5 情報取得手段
6 位置連動コンテンツ記憶手段
7a,7d 送信手段
7b,7c 受信手段
8 進行方向検出手段
11 携帯型情報端末
12 携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の顔面の正面方向を検出する正面方向検出手段と、
前記使用者の現在位置を検出する位置検出手段と、
位置に対応付けられた位置連動コンテンツを記憶する位置連動コンテンツ記憶手段と、
前記使用者に案内情報を提示する情報提示手段と、
前記正面方向検出手段により検出された前記正面方向および前記位置検出手段により検出された前記現在位置に基づいて、前記位置連動コンテンツ記憶手段から対応する前記位置連動コンテンツを取得して、前記情報提示手段に前記案内情報として提示させる制御手段と
を備えたことを特徴とする情報提示システム。
【請求項2】
前記正面方向検出手段、前記位置検出手段および前記情報提示手段と、前記制御手段とを接続する通信手段を備え、
前記正面方向検出手段、前記位置検出手段および前記情報提示手段は、使用者が携帯可能に構成され、且つ、前記通信手段を介して前記制御手段と通信可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報提示システム。
【請求項3】
使用者の顔面の正面方向を検出する正面方向検出手段と、
前記使用者の現在位置を検出する位置検出手段と、
使用者の進行方向を検出する進行方向検出手段と、
位置に対応付けられた位置連動コンテンツを記憶する位置連動コンテンツ記憶手段と、
前記使用者に案内情報を提示する情報提示手段と、
前記進行方向検出手段により検出された前記進行方向と、目的地へ向かう経路方向とが一致する場合は、前記正面方向検出手段により検出された前記正面方向および前記位置検出手段により検出された前記現在位置に基づいて、前記位置連動コンテンツ記憶手段から対応する前記位置連動コンテンツを取得して、前記情報提示手段に前記案内情報として提示させる制御手段と
を備えたことを特徴とする情報提示システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記進行方向検出手段により検出された前記進行方向と、目的地へ向かう経路方向とが一致しない場合は、前記目的地へ向かう経路に関する情報を、前記情報提示手段に前記案内情報として提示させることを特徴とする請求項3に記載の情報提示システム。
【請求項5】
前記正面方向検出手段、前記位置検出手段、前記進行方向検出手段および前記情報提示手段と、前記制御手段とを接続する通信手段を備え、
前記正面方向検出手段、前記位置検出手段、前記進行方向検出手段および前記情報提示手段は、使用者が携帯可能に構成され、且つ、前記通信手段を介して前記制御手段と通信可能に構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の情報提示システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記使用者の前記現在位置と前記情報提示手段に提示すべき前記位置連動コンテンツが対応づけられた位置との距離に応じて、提示する内容を制御することを特徴とする請求項3−5のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項7】
前記進行方向検出手段は、使用者の胴体部に装着若しくは保持される地磁気センサ、または、使用者に装着または保持されるグローバル・ポジショニング・システム受信機を含んで構成されることを特徴とする請求項3−6のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項8】
前記正面方向検出手段は、使用者の頭部に装着可能に構成されていることを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項9】
前記正面方向検出手段は、地磁気センサを含んで構成されることを特徴とする請求項1−8のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項10】
前記位置検出手段は、グローバル・ポジショニング・システムを利用して構成されることを特徴とする請求項1−9のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項11】
前記情報提示手段は、使用者の視野内に、表示画像が背景視野に重畳されて表示される頭部装着型の画像表示手段であることを特徴とする請求項1−10のいずれか一項に記載の情報提示システム。
【請求項12】
前記情報提示手段は、音声による情報提供手段であることを特徴とする請求項1−11のいずれか一項に記載の情報提示システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−220899(P2011−220899A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91717(P2010−91717)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】