説明

情報提示装置

【課題】ユーザの内部状態とユーザが置かれている状況を相補的に利用することによって、ユーザ個人に最適な情報を推薦する。
【解決手段】本発明に係る情報提示装置は、ユーザが現在有している欲求の強さと、ユーザが現在置かれている状況とを推定し、これらの組み合わせを記述したデータベースを照会することにより、ユーザが有している欲求とユーザが置かれている状況の双方を満たすことのできるアイテムを提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが現在置かれている状況に適した情報を提示する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報通信技術の発展とその商業利用の拡大により、インターネットなどの各種メディアが提供する情報量は計り知れない。ユーザは多種多様な情報を受け取ることができるようになり、ユーザにとっての情報の有用性は多様化している。そのため、ユーザは、大量の多種多様な情報の中から自身にとって有用な情報を選択することが困難となっている。また、情報提供側においても、不特定多数へ向けた広告・宣伝の効果が減少している。
【0003】
こうした状況において、近年、ユーザの消費行動履歴からユーザの嗜好情報(ユーザがどのような情報に興味があるか)のようなプロファイルを抽出し解析することにより、ユーザのプロファイルに適した有用な情報を推薦する技術や、同情報をマーケティングデータとしてターゲティング広告に利用するデータマイニング技術が知られている。
【0004】
非特許文献1には、人間の消費行動は欲求を満足させることが目的であることが示唆されている。また、非特許文献2に記載されているように、人間の基本的欲求の存在が知られている。ユーザの消費行動における欲求の強さは、長期的に普遍である欲求の定常的強さと、欲求の瞬間的な強さ(以下、現在欲求)とによって表すことができる。
【0005】
一方、人間の消費行動は、内的要因と外的要因に起因していることが知られている(非特許文献1)。内的要因とは、身体内の状態の変動によって起こるものであり、空腹、渇き、睡眠、性的衝動などの身体的欲求、社会的名声、地位、友情、権威などの心理的な欲求のことを指す。外的要因とは、外部環境の変動によって引き起こされるものであり、行動エリア、時間帯・季節、友人との会話などの外的状況に影響されるものを指す。このような外的要因に起因してユーザが置かれている状況を、本明細書ではコンテキストと呼ぶ。
【0006】
内的要因を抽出する技術として、基本的欲求の満足度合いによってユーザの内的状態を表現する手法が考えられる。基本的欲求とは、例えば、「所有」「知的好奇心」「やすらぎ」「社会的帰属」などである。
【0007】
「所有」とは、モノを集めたい、特別なものを所有したいなど、獲得・所有に関する欲求である。「知的好奇心」とは、未知のものに興味をもつ、知らないことを学びたいなど、知への好奇心に関する欲求である。「やすらぎ」とは、癒されたい、ストレスからの解放、恥を予防したいなど、心のやすらぎに関する欲求である。「社会的帰属」とは、地域や社会を守りたい、地球全体規模で正しいことをしたいなど、社会への帰属意識に関する欲求である。
【0008】
「所有」の欲求は、切手の収集、シリーズもののテレビ番組の録画、飲料水のおまけ商品の収集、ご当地グルメ巡りなどの行動において現れる。「知的好奇心」の欲求は、教育番組の視聴、雑学に関する書籍の購入、史跡めぐりツアーなどの行動において現れる。「やすらぎ」の欲求は、クラシックコンサートの番組視聴、アロマテラピ−に関する商品購入、温泉旅行などの行動に現れる。「社会的帰属」の欲求は、オリンピックなどの国家を代表するスポーツ番組の視聴、環境負荷の小さい商品の購入などの行動において現れる。
【0009】
外的要因を考慮した技術として、コンテキストに対応したアイテムを推薦する手法がある(特許文献1)。ここでいうアイテムとは、例えば、商品情報、テレビ番組情報、書籍情報、観光地情報などのような、ユーザが自身の興味や嗜好にしたがって選択する種々の情報のことである。
【0010】
特許文献1に記載されている手法では、エリア位置情報や時間帯をユーザが置かれているコンテキストにあらかじめ対応させておく。ユーザが当該エリアに存在している場合や、当該時間帯にいるとき、ユーザが当該コンテキストの状態に置かれていると判定し、コンテキストに適したアイテムを推薦する。コンテキストに最適なアイテムを登録する際には、ユーザのアイテム選択履歴とそのときのコンテキストを基に、当該コンテキストで選択される頻度の高いアイテムを、最適アイテムとして登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−129298号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nelson, P. : “Information and Consumer Behavior”, Journal of Political Economy, Vol.78, pp.311-329,(1970)
【非特許文献2】Steven Reiss : “Who am I? The 16 Basic Desires that Motivate Our Actions and Define Our Personalities”, Berkley Trade(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のような、ユーザの内部状態である基本的欲求の満足度合いに基づきアイテムを推薦する技術では、ユーザが置かれているコンテキストを考慮していないため、欲求を満たすアイテムであってもコンテキストに適していない可能性がある。例えば、朝の空腹を満たすのはサンドイッチだが、夜の空腹を満たすのは焼き肉が最適である場合には、空腹を満たすアイテムとしてサンドイッチを推薦しても、夜の空腹時には欲求を満たすことができない。
【0014】
また、同じアイテムであっても、ユーザが置かれているコンテキストが異なれば、そのアイテムによって満足させることができる欲求も異なるため、ユーザの行動履歴から欲求の満足度合いを高精度に推測することが難しい。例えば、夏に海で泳ぐのは娯楽目的である場合が多く、「やすらぎ」などの欲求を満たすが、冬に水泳をするのは訓練目的である場合が多く、「向上・達成」などの欲求を満たす、ということは容易に考えられる。
【0015】
また、上記特許文献1のようにコンテキストを推定してアイテムを推薦する技術では、ユーザの内部状態を考慮していないため、ユーザが求めていないアイテムを推薦してしまう可能性がある。例えば、遅い朝食を食べたばかりなのに、昼食時でレストランの近くに来たために、レストランを推薦されるということが起こり得る。
【0016】
以上検討したように、ユーザは、自身の内部状態と外部環境のコンテキストを同時に考慮してアイテムを選択する。したがって、ユーザの欲求とユーザが置かれているコンテキストを相補的に利用してアイテムを推薦する手法が必要であると考えられる。
【0017】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ユーザの内部状態とユーザが置かれている状況を相補的に利用することによって、ユーザ個人に最適な情報を推薦することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る情報提示装置は、ユーザが現在有している欲求の強さと、ユーザが現在置かれている状況とを推定し、これらの組み合わせを記述したデータベースを照会することにより、ユーザが有している欲求とユーザが置かれている状況の双方を満たすことのできるアイテムを提示する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る情報提示装置によれば、ユーザが現在有している欲求とユーザが現在置かれている状況の双方に適したアイテムを提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る情報提示装置100の機能ブロック図である。
【図2】ユーザ行動履歴データベース101が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図3】ユーザプロファイルデータベース102が格納している欲求プロファイルデータの構成例を示す図である。
【図4】コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図5】コンテキスト−欲求データベース108が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図6】アイテムデータベース109が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図7】情報提示装置100の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施形態2に係る情報提示装置100の機能ブロック図である。
【図9】実施形態2においてユーザ行動履歴データベース101が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図10】実施形態4に係る情報提示装置100の機能ブロック図である。
【図11】実施形態4においてユーザ行動履歴データベース101が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図12】実施形態4においてユーザプロファイルデータベース102が格納しているデータの構成例を示す図である。
【図13】実施形態5に係る情報提示システム1000の構成図である。
【図14】実施形態5におけるユーザプロファイルデータベース102の構成例を示す図である。
【図15】実施形態5におけるコンテキスト−欲求組合せ確率データベース105の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る情報提示装置100の機能ブロック図である。情報提示装置100は、ユーザ行動履歴データベース101、ユーザプロファイルデータベース102、欲求推定部103、コンテキスト判定部104、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105、組合せ算出部106、最適アイテム検索部107、コンテキスト−欲求データベース108、アイテムデータベース109を備える。
【0022】
ユーザ行動履歴データベース101は、ユーザが商品などのアイテムを選択した行動の履歴を格納する。ユーザプロファイルデータベース102は、ユーザが定常的にどの程度の欲求の強さを有しているかを欲求の種別毎に記述した欲求プロファイルを格納する。欲求推定部103は、ユーザ行動履歴データベース101とユーザプロファイルデータベース102を参照して、ユーザが現在有している欲求の強さを推定する。コンテキスト判定部104は、ユーザが現在置かれている状況(コンテキスト)を判定する。コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105は、ユーザが置かれているコンテキストの下で欲求が満足される確率を、コンテキストと欲求の組み合わせ毎に記述した情報を格納する。組合せ算出部106は、ユーザが現在有している欲求とユーザが置かれているコンテキストをともに満たすことができる、アイテム/コンテキスト/欲求の組み合わせを算出する。最適アイテム検索部107は、組合せ算出部106が算出したアイテムをコンテキスト−欲求データベース108から検索する。コンテキスト−欲求データベース108は、各アイテムによって満足させることができる欲求とコンテキストの組合せを記述した情報を格納する。アイテムデータベース109は、アイテムの属性情報を格納する。
【0023】
組合せ算出部106と最適アイテム検索部107は、一体的に構成してもよい。ユーザが置かれているコンテキストは、例えばユーザが入力してもよいし、現在時刻、日時、気温や湿度などの周辺環境、などに基づき判定してもよい。
【0024】
図2は、ユーザ行動履歴データベース101が格納しているデータの構成例を示す図である。ユーザ行動履歴データベース101は、ユーザがアイテムを選択した履歴を格納するデータベースであり、ユーザIDフィールド1011、アイテムIDフィールド1012、欲求IDフィールド1013、日時フィールド1014を有する。
【0025】
ユーザIDフィールド1011は、ユーザを一意に識別する識別子を保持する。アイテムIDフィールド1012は、アイテムを一意に識別する識別子を保持する。欲求IDフィールド1013は、アイテムIDフィールド1012の値によって識別されるアイテムを選択することによって満たされる基本的欲求の種別を表す値を保持する。日時フィールド1014は、ユーザIDフィールド1011の値によって識別されるユーザがアイテムIDフィールド1012の値によって識別されるアイテムを選択した日時を保持する。
【0026】
図3は、ユーザプロファイルデータベース102が格納している欲求プロファイルデータの構成例を示す図である。ユーザプロファイルデータベース102は、ユーザが各欲求を定常的にどの程度有しているかを記述したデータベースであり、ユーザIDフィールド1021、欲求強さフィールド1022を有する。
【0027】
ユーザIDフィールド1021は、ユーザを一意に識別する識別子を保持する。欲求強さフィールド1022は、ある基本的欲求に対してユーザが日常的にどの程度の欲求を持っているかを示す定常的な欲求度(以下、定常的欲求度)を表す値を保持する。欲求の種類が複数ある場合は、欲求強さフィールド1022を複数設けてもよい。本実施形態1では19種類とした。
【0028】
ユーザが有している定常的な欲求の強さは、例えば、ユーザがサービス加入段階で心理テストなどのアンケートに回答することによって生成することができる。また、ユーザ自身で設定してもよい。定常的な欲求度は、季節によって異なるため、季節毎に登録するものとしてもよい。後述のように、学習・推定してもよい。
【0029】
図4は、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105が格納しているデータの構成例を示す図である。図4(a)は、ユーザが有している欲求があるコンテキストの下で満たされるか否かを、欲求とコンテキストの組み合わせ毎に記述したテーブルである。図4(b)は、コンテキストの詳細内容を記述したテーブルである。
【0030】
図4(a)に示すテーブルは、コンテキストIDフィールド1051、欲求充足確率フィールド1052を有する。コンテキストIDフィールド1051は、コンテキストを一意に識別する識別子を保持する。欲求充足確率フィールド1052は、コンテキストIDフィールド1051の値で識別されるコンテキストの下で欲求が満足される確率を欲求種別毎に記述した値を保持する。欲求が満足される確率は、ユーザが事前に設定しておいてもよいし、後述のようにユーザの行動履歴から学習・推定してもよい。
【0031】
図4(b)に示すテーブルは、コンテキストIDフィールド1051、詳細フィールド1053、判定条件フィールド1054を有する。詳細フィールド1053は、コンテキストの内容を記述する。判定条件フィールド1054は、ユーザが現在置かれている状況がいずれのコンテキストに該当するか判定するための条件を記述する。
【0032】
図5は、コンテキスト−欲求データベース108が格納しているデータの構成例を示す図である。図5(a)は、あるコンテキストの下でアイテムを選択することによって満たすことができる欲求を記述したテーブルである。すなわち、アイテム/欲求/コンテキストの組み合わせを保持する。図5(b)は、図5(a)に示すテーブルを簡略化したテーブルである。
【0033】
図5(a)に示すテーブルは、アイテムIDフィールド1081、欲求IDフィールド1082、コンテキストIDフィールド1083を有する。アイテムIDフィールド1081は、アイテムを一意に識別する識別子を保持する。欲求IDフィールド1082は、アイテムIDフィールド1081の値で識別されるアイテムを選択することによって満たされる基本的欲求の種別を示す値を保持する。コンテキストIDフィールド1083は、アイテムIDフィールド1081の値で識別されるアイテムを選択するのに適したコンテキストの識別子を保持する。アイテムを選択することによって満たされる基本的欲求、およびアイテム選択に適したコンテキストの種別は、例えばユーザが設定してもよいし、学習・推定してもよい。
【0034】
図5(b)に示すテーブルは、欲求IDフィールド1082とコンテキストIDフィールド1083に代えて、コンテキスト−欲求組合せフィールド1084を有する。これらフィールドが記述している内容は同じであるが、図5(b)に示すテーブルでは2つのフィールドを1つに集約している。
【0035】
図6は、アイテムデータベース109が格納しているデータの構成例を示す図である。アイテムデータベース109は、アイテムIDフィールド1091、詳細フィールド1092を有する。
【0036】
アイテムIDフィールド1091は、アイテムを一意に識別する識別子を保持する。詳細フィールド1092は、アイテムの内容の詳細を記述している。
【0037】
以上、情報提示装置100の構成について説明した。次に、情報提示装置100の動作について説明する。
【0038】
図7は、情報提示装置100の動作を示すフローチャートである。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0039】
(図7:ステップS701)
欲求推定部103は、ユーザ行動履歴データベース101に格納されている、アイテムを選択することによって満たされた基本的欲求に関する情報と、ユーザプロファイルデータベース102に格納されている、ユーザが有する欲求の定常的な強さとに基づいて、ユーザが現在有している欲求の強さを推定する。欲求の強さを推定する方法については以下に補足する。
【0040】
(図7:ステップS701:補足その1)
欲求推定部103は、ユーザ行動履歴データベース101に格納されているデータに基づき、アイテムを選択することによって得られる欲求満足度を算出する。欲求の満足度とは、現時点で対象ユーザのどのような基本的欲求が満たされており、どのような基本的欲求が満たされていないかを基本的欲求ごとに示す割合であり、例えば下記式1を用いて算出することができる。
【0041】
【数1】

【0042】
nは、欲求IDである。Sは、欲求IDの欲求満足度である。COSTtotalは、ユーザの行動総数である。COSTは、ユーザ行動が欲求IDを満たした回数である。テレビ番組であれば、回数でなく、番組の長さや視聴時間などを基準にCOSTを計算してもよい。テレビ番組以外の商品の場合には、値段などを基準にCOSTをしてもよい。値段を基準にする場合、COSTtotalはユーザが費やした全費用、COSTは欲求IDのために費やした費用とすればよい。
【0043】
(図7:ステップS701:補足その2)
欲求満足度は、日時フィールド1014の値にしたがって、例えば過去1週間の行動履歴から算出することができる。この場合、ユーザ行動履歴データベース101には、欲求満足度を計算するために必要となる期間内の行動履歴のみ格納するようにしてもよい。
【0044】
(図7:ステップS701:補足その3)
次に、欲求推定部103は、全ての基本的欲求について、欲求満足度とユーザプロファイルデータベース102に格納されているユーザの定常的欲求の強さに基づき、ユーザが現在有している基本的欲求の強さを計算する。これにより、ユーザが現時点で強く望んでいる基本的欲求を抽出することができる。ユーザが現在有している基本的欲求の強さは、下記式2を用いて算出することができる。
【0045】
【数2】

【0046】
は、欲求IDの現在の強さを表す割合であり、0から1の間の値をとる。Sは、欲求IDの欲求満足度であり、式1によって求められる。SSは、欲求IDの定常的欲求度を表す割合であり、0から1の間の値をとる。欲求満足度Sが定常的欲求度SSに達している場合、現時点で欲求が十分に満たされていることになり、Qは0となる。基本的欲求の強さを表現することができれば、式2以外の計算式を用いてもよい。
【0047】
(図7:ステップS702)
コンテキスト判定部104は、ステップS701と並行して、ユーザが現在置かれているコンテキストを判定する。例えば、情報提示装置100周辺の温度、日時などの物理的環境を測定し、図4(b)で説明したような事前設定された判定条件に基づいて、コンテキストを判定することができる。このとき判定するコンテキストは1つでもよいし、複数でもよい。また、ユーザが情報提示装置100に対して入力してもよい。
【0048】
(図7:ステップS703)
組合せ算出部106は、ユーザが現在有している基本的欲求の強さと、ユーザが現在置かれているコンテキストとを用いて、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105に格納されている情報を参照し、アイテムが満たすべき欲求とコンテキストの組合せを取得する。さらに、同データベースが記述している確率に基づき、アイテムが満たすべき欲求とコンテキストの組合せの優先度を決定する。優先度は、例えば下記式3を用いて計算することができる。
【0049】
【数3】

【0050】
desireは、基本的欲求の種類である。Contextは、ユーザが置かれるコンテキストである。Priority(desire,Context)は、アイテムによって満たすことができる基本的欲求desireとコンテキストContextの組合せの優先度である。Qdesireは、式2で計算される現在の基本的欲求desireの強さである。Pr(desire|Context)は、あるアイテムがコンテキストContextと基本的欲求desireをともに満たすことができる確率を示し、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105から取得することができる。αは、ユーザの現在の欲求の強さと、コンテキストと欲求の組合せの確率とのどちらを重視するかを設定するパラメータである。αが1であればユーザの現在の欲求の強さのみを用い、0であればコンテキストと欲求の組合せの確率のみを用いる。
【0051】
(図7:ステップS703:補足)
αの値は、ユーザが事前に設定してもよいし、情報提示装置100の利用状況を学習して動的に変化させてもよい。基本的欲求とコンテキストの組合せに関する優先度を表現できれば、式3以外の計算式を用いてもよい。アイテムによって満足させることができるコンテキストと欲求の組合せは、1つでもよいし複数でもよい。
【0052】
(図7:ステップS704)
組合せ算出部106は、ステップS703で計算した優先度にしたがって、アイテム/欲求/コンテキストの最適な組合せを決定する。優先度が低い場合は、その組合せが欲求とコンテキストを満たすために適していないか、または係数αの設定によって優先度が下がったものと考えられる。そこで本ステップにおいて、優先度が所定値以上の組合せのみを取り出すようにしてもよい。あるいは、ユーザが有している欲求とユーザが置かれているコンテキストの双方を満たす必要があるので、Pr(desire|Context)の値が所定値以上の組合せのみを取り出すようにしてもよい。
【0053】
(図7:ステップS705)
最適アイテム検索部107は、ステップS704で組合せ算出部106が決定した組合せに該当するレコードを、コンテキスト−欲求データベース108から検索する。複数の組合せが得られた場合は、ステップS703で組合せ算出部106が計算した優先度にしたがって、得られたレコードに優先順位を付与してもよい。
【0054】
(図7:ステップS704〜S705:補足)
アイテム/欲求/コンテキストの組合せはコンテキスト−欲求データベース108内に格納されているので、同データベースのみを用いてこれらの組合せを特定することもできる。ただし、同データベースのみでは、アイテム/欲求/コンテキストの組合せによって欲求とコンテキストがどの程度満たされるかを正確に把握することができず、全ての組合せを並列に提示することができるに留まる。そこで、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105が格納しているレコードを用いて、ユーザが有している欲求とユーザが置かれているコンテキストをより確実に満たすことのできる組合せを用いることが望ましいと考えられる。
【0055】
(図7:ステップS706)
最適アイテム検索部107は、ステップS705の結果をユーザに提示する。出力形式は、例えば画面表示、データ出力など、情報提示装置100が備える出力装置に合わせて適宜最適なものを用いればよい。
【0056】
<実施の形態1:まとめ>
以上のように、本実施形態1に係る情報提示装置100は、ユーザが現在有している欲求の強さと、ユーザが現在置かれている状況とを推定し、これらを満たすことのできるアイテム/欲求/コンテキストの組合せを特定する。これにより、ユーザが有している欲求とユーザが置かれているコンテキストの双方を満たすアイテムを提示することができる。
【0057】
また、本実施形態1に係る情報提示装置100は、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105に格納されている情報に基づき、ユーザが有している欲求とユーザが置かれているコンテキストの双方を満たすことができる確率を計算し、同確率にしたがって最適なアイテムを提示する。これにより、欲求とコンテキストの組合せをより確実に満たすことのできるアイテムをユーザに提示することができる。
【0058】
また、本実施形態1に係る情報提示装置100は、QdesireとPr(desire|Context)のいずれを優先するかを定める優先度を式3にしたがって計算し、これを用いてアイテムを検索する。これにより、提示するアイテムを調整することができる。
【0059】
本実施形態1において、ユーザに提示するアイテムは、最も起こりやすい組合せに該当するアイテムを選択してもよいし、所定値以上の組合せ確率を満たす組合せを満足するアイテムをまとめて提示してもよい。
【0060】
本実施形態1において、行動履歴としては、書籍・CDの購買、番組視聴などの同一ドメインのみから抽出した行動履歴を用いてもよいし、異なるドメインから行動履歴を抽出してもよい。異なるドメインの行動履歴を利用する場合、例えば、欲求推定部103が算出した最も強い基本的欲求が「知的好奇心」であれば、当該欲求を満足するアイテムとして、「教育番組」「クイズ番組」「雑学に関する書籍」「プラネタリウム」などの異なるドメインに属する商品などを推薦することもできる。一方、ユーザが置かれているコンテキストが「デート中」であれば、コンテキスト−欲求組合せの起こりやすさから、「プラネタリウム」を提示することができる。ユーザが置かれているコンテキストが「在宅中」であれば、「教育番組」「クイズ番組」を提示することができる。
【0061】
本実施形態1において、例えば「焼き肉レストラン」がコンテキスト「夕食時」と欲求「摂取・消費」の組合せを満足するが、コンテキスト「夕食時」と欲求「摂取・消費」の組合せを満足しないというデータがコンテキスト−欲求組合せ確率データベース105またはコンテキスト−欲求データベース108に格納されている場合が考えられる。本実施形態1によれば、同一の欲求であっても、ユーザのコンテキストに適したアイテムを提示することができる。
【0062】
<実施の形態2>
本発明の実施形態2では、ユーザ行動履歴データベース101が格納している行動履歴を用いてコンテキストと欲求の組合せが発生する確率を計算することにより、時間とともに変化するユーザの性質を加味する構成例を説明する。
【0063】
図8は、本実施形態2に係る情報提示装置100の機能ブロック図である。本実施形態2に係る情報提示装置100は、実施形態1で説明した構成に加えて、コンテキスト−欲求組合せ確率計算部110を備える。その他の構成は実施形態1と同様であるため、以下では差異点を中心に説明する。
【0064】
コンテキスト−欲求組合せ確率計算部110は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している行動履歴を用いて、コンテキストと欲求の組合せが発生する確率を算出し、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105に格納する。
【0065】
図9は、本実施形態2においてユーザ行動履歴データベース101が格納しているデータの構成例を示す図である。ここではユーザIDフィールド1011を省略したが、複数のユーザについての行動履歴を格納する場合は、実施形態1と同様に同フィールドを設けてもよい。
【0066】
本実施形態2において、ユーザ行動履歴データベース101は、実施形態1で説明した構成に加えてコンテキストIDフィールド1015を有する。コンテキストIDフィールド1015は、ユーザがアイテムIDフィールド1012の値で識別されるアイテムを選択したときに当該ユーザが置かれていたコンテキストの識別子を保持する。
【0067】
以上、本実施形態2に係る情報提示装置100の構成を説明した。次に、本実施形態2に係る情報提示装置100の動作を説明する。
【0068】
コンテキスト−欲求組合せ確率計算部110は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している行動履歴のうち、コンテキストと欲求の組合せが出現する確率をその組合せ毎に計算し、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105に格納する。コンテキストと欲求の組合せが出現する確率は、例えば下記式4を用いて算出することができる。
【0069】
【数4】

【0070】
desire∩Contextは、欲求desireとコンテキストContextを同時に満足する行動履歴がユーザ行動履歴データベース101内に出現する回数である。Ndesireは、欲求desireを満足する行動履歴がユーザ行動履歴データベース101内に出現する回数である。NContextは、コンテキストContextを満足する行動履歴がユーザ行動履歴データベース101内に出現する回数である。コンテキストと欲求の組合せの起こりやすさを表現するものであれば、式4以外の計算式を用いることもできる。
【0071】
<実施の形態2:まとめ>
以上のように、本実施形態2に係る情報提示装置100は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している行動履歴を用いて、Pr(desire|Context)を計算する。これにより、ユーザ行動の経時変化に追従しつつ、ユーザが有している欲求とユーザが置かれているコンテキストに適したアイテムを提示することができる。
【0072】
<実施の形態3>
本発明の実施形態3では、ユーザがアイテムを利用する頻度に応じてデータベース101にインデックスを付与し、データアクセスを高速化する手法を説明する。情報提示装置100の構成は実施形態1〜2と同様であるため、以下ではインデックスに係る差異点を中心に説明する。
【0073】
組合せ算出部106は、ユーザ行動履歴データベース101内に出現するコンテキストの出現頻度に応じて、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105にインデクスを付加する。例えば、コンテキストの出現頻度が高い上位10件程度にインデクスを付加する。
【0074】
最適アイテム検索部107は、ユーザ行動履歴データベース101内に出現するコンテキスト−欲求の組合せの出現回数をその組合せ毎に計算し、出現回数に応じてコンテキスト−欲求データベース108にインデクスを付加する。例えば、出現頻度が高い上位10件程度にインデクスを付加する。あるいは、欲求の出現回数に応じてインデクスを付加してもよい。
【0075】
上記インデクスにより、発生頻度が高いコンテキストに対応するコンテキスト−欲求組合せ確率を高速に検索することができる。例えば、現在の季節において発生しやすいコンテキストや欲求は、頻繁に検索されると想定されるので、これらコンテキストや欲求にインデクスを付与し、高速に検索結果を得ることができる。
【0076】
<実施の形態3:まとめ>
以上のように、本実施形態3に係る情報提示装置100は、コンテキストの出現頻度に応じてユーザ行動履歴データベース101にインデクスを付加し、コンテキスト−欲求の組合せの出現頻度に応じてコンテキスト−欲求データベース108にインデクスを付加する。これにより、情報提示装置100の処理を高速化し、情報提示のリアルタイム性を確保することができる。
【0077】
なお、本実施形態3においてインデクスを付加するレコード数は上位10件でなくてもよく、その数はユーザが事前に設定してもよい。また、出現回数を計算する際に、ユーザ行動履歴データベース101が格納しているすべてのレコードを使わずに、過去1か月間のレコードなどのように対象期間を限定してもよい。
【0078】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、ユーザがアイテムを選択した際のコンテキストを加味してユーザの内部状態を推定し、より有効な情報をユーザへ提示する構成例を説明する。
【0079】
図10は、本実施形態4に係る情報提示装置100の機能ブロック図である。本実施形態4に係る情報提示装置100は、実施形態1〜3で説明した構成に加え、行動取得部111、コンテキスト判定部112、ユーザプロファイル生成部113を備える。ここでは実施形態1で説明した構成にこれら機能部を追加した例を示したが、その他の実施形態で説明した構成にこれら機能部を追加することもできる。
【0080】
行動取得部111は、アイテムを選択するなどの行動をユーザが実施するとその旨の情報を取得してユーザ行動履歴データベース101に格納する。コンテキスト判定部112は、ユーザが現在置かれているコンテキストを判定する。ユーザプロファイル生成部113は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している行動履歴を用いて、ユーザが有している基本的欲求の定常的な強さを計算し、ユーザプロファイルデータベース102に格納する。
【0081】
図11は、本実施形態4においてユーザ行動履歴データベース101が格納しているデータの構成例を示す図である。図11(a)は、ユーザの行動履歴を保持するテーブルの構成を示す図である。図11(b)は、あるコンテキストの下でユーザが有する基本的欲求が満たされる頻度をユーザ毎に保持するテーブルである。
【0082】
図11(a)に示すテーブルは、図9で説明した構成と同様の構成を有する。
図11(b)に示すテーブルは、ユーザIDフィールド1016、欲求頻度フィールド1017を有する。ユーザIDフィールド1016は、ユーザを一意に識別する識別子を保持する。欲求頻度フィールド1017は、あるコンテキストの下でユーザがどの程度の頻度で基本的欲求を満足させるかを示す割合を保持する。欲求推定部103は、欲求IDnが満たされる頻度を、例えば下記式5を用いて計算することができる。
【0083】
【数5】

【0084】
COSTn∩Contextは、ユーザ行動履歴データベース101が格納しているレコードにおいて、欲求IDnの欲求とコンテキストContextが同時に満足される回数である。あるコンテキストの下において欲求が満足される頻度を表現するものであれば、式5以外の計算式を用いることもできる。
【0085】
あるコンテキストの下で欲求が満たされるか否かは、コンテキスト毎に異なるのはもちろんであるが、ユーザによっても異なる場合がある。そこで本実施形態4では、あるコンテキストの下で欲求が満たされた頻度を、ユーザ毎に行動履歴として格納しておき、これを用いてアイテムを提示することとした。
【0086】
図12は、本実施形態4においてユーザプロファイルデータベース102が格納しているデータの構成例を示す図である。ユーザプロファイルデータベース102は、欲求強さフィールド1022、コンテキストID1023を有する。ユーザIDフィールド1021については記載を省略したが、複数のユーザについて定常的な欲求の強さを保持する場合は、同フィールドも必要になる。本実施形態4において、ユーザプロファイルデータベース102は、ユーザが有している定常的な欲求の強さを、コンテキスト毎に記述していることになる。
【0087】
ユーザプロファイル生成部113は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している、コンテキストと欲求満足頻度の対応関係を用いて、あるコンテキストの下においてユーザが有している定常的な欲求の強さを下記式6にしたがって算出し、ユーザプロファイルデータベース102に格納する。
【0088】
【数6】

【0089】
SS(Context)は、コンテキストContextの下における欲求IDの定常的な強さである。COSTtotalは、行動の総数である。COSTは、欲求IDの欲求を満足した行動の回数である。式1と同様に、テレビ番組であれば、回数でなく、番組の長さや視聴時間などを基準にCOSTを計算してもよい。テレビ番組以外の商品の場合には、値段などを基準にCOSTをしてもよい。値段を基準にする場合、COSTtotalはユーザが費やした全費用、COSTは欲求IDのために費やした費用とすればよい。
【0090】
欲求推定部103は、ユーザが有している欲求の現在の満足度を式1で計算し、これを用いて、各コンテキストの下における欲求の現在の強さを算出する。例えば、下記式7を用いて計算することができる。
【0091】
【数7】

【0092】
は、欲求IDの現在の強さを表す割合であり、0から1の間の値をとる。Sは、欲求IDの欲求満足度である。SSは、欲求IDの定常的欲求度を表す割合であり、0から1の間の値をとる。欲求満足度Sが定常的欲求度SSの割合に達している場合、現時点で欲求が十分に満たされていることになり、Qは0となる。基本的欲求の強さを表現することができれば、式7以外の計算式を用いてもよい。
【0093】
<実施の形態4:まとめ>
以上のように、本実施形態4に係る情報提示装置100は、ユーザがあるコンテキストの下で定常的に有する基本的欲求の強さを求め、これにしたがってアイテムを提示する。実施形態1〜3では、ユーザが有する定常的な欲求はコンテキストによらず一定であるとしたが、本実施形態4によれば、コンテキスト毎に異なる基本的欲求を有するユーザに対しても適切なアイテムを提示することができる。
【0094】
例えば本実施形態4によれば、例えばユーザのコンテキストが「夏」である間は、食欲に関係する「摂取・消費」に関する欲求が弱いが、コンテキストが「秋」である間は、「摂取・消費」に関する欲求が強くなる、というようにコンテキストに応じて欲求の強さが変化するユーザに対して、コンテキストに応じた適切なアイテムを提示することができる。
【0095】
本実施形態4において、ユーザ行動履歴データベース101とユーザプロファイルデータベース102は、ある程度の期間継続するコンテキストに関するレコードのみを格納するようにしてもよい。例えば、季節や休暇中などのように、数日以上にわたって継続されるようなものである。また、そのような継続するコンテキストに関する計算結果のみを各データベースで保持しておくようにしてもよい。また、コンテキストの出現頻度や継続時間に応じて、各データベースにインデクスを付加してもよい。
【0096】
<実施の形態5>
本発明の実施形態5では、複数のユーザの行動履歴を一括して管理することにより、新たに追加されたユーザのようにアイテム選択履歴が少ないユーザについても、的確なアイテムを提示することができる構成例について説明する。
【0097】
図13は、本実施形態5に係る情報提示システム1000の構成図である。情報提示システム1000は、情報提示装置100とユーザ端末200を有する。
【0098】
本実施形態5において、コンテキスト−欲求組合せ確率計算部110は、複数のユーザの行動履歴を用いてコンテキスト−欲求の組合せ確率を計算し、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105に格納する。また、ユーザプロファイル生成部113は、複数のユーザの行動履歴を用いて、ユーザが定常的に有している基本的欲求の強さを算出し、ユーザプロファイルデータベース102に格納する。その他の構成は、実施形態1〜4と同様である。
【0099】
ユーザ端末200は、ユーザが商品などのアイテムを選択する際に用いる端末であり、行動取得部201、コンテキスト判定部202を備える。行動取得部201は、ユーザの行動を取得して情報提示装置100に送信する。コンテキスト判定部202は、ユーザが現在置かれているコンテキストを判定する。本実施形態5では、ユーザが直接操作するのは情報提示装置100ではなくユーザ端末200であるため、ユーザ操作およびユーザが置かれている状況(コンテキスト)を取得する機能部はユーザ端末200内に設けた。
【0100】
以上、情報提示システム1000の構成について説明した。次に、情報提示システム1000の動作について説明する。
【0101】
コンテキスト−欲求組合せ確率計算部110は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している全ユーザのアイテム選択履歴の中で、コンテキストと欲求の組合せが出現する確率をその組合せ毎に計算し、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105に格納する。コンテキストと欲求の組合せが出現する確率は、例えば下記式8を用いて計算することができる。
【0102】
【数8】

【0103】
userは、ユーザを示す。Ndesire∩Context(user)は、ユーザ行動履歴データベース101が格納している行動履歴のうち欲求desireとコンテキストContextが同時に満足される回数である。Ndesire(user)は、欲求desireが満足される回数である。NContext(user)は、コンテキストContextが満足される回数である。コンテキストと欲求の組合せの起こりやすさを表現するものであれば、式8以外の計算式を用いることもできる。
【0104】
ユーザプロファイル生成部113は、全ユーザをクラスタリングしていくつかのパターンに分類し、パターン毎にコンテキストと欲求の組合せの起こりやすさを算出する。クラスタリング手法としては、階層的クラスタリング、k−meansなどの従来手法を用いることができる。クラスタ内に重複を許してもよい。
【0105】
ユーザプロファイル生成部113は、まずユーザ間の類似度を算出することにより、ユーザをいくつかのグループにクラスタリングする。グループの数は、ユーザが事前に設定してもよい。ユーザ間の類似度は、例えば下記式9のようにユーザが選択したアイテムを基準として算出してもよいし、下記式10のようにユーザプロファイルを利用して算出してもよいし、その他のユーザ間類似度を表す計算式を用いて算出してもよい。
【0106】
【数9】

【0107】
は、ユーザIDがnであるユーザを表す。d(U,U)は、ユーザUとUの間の類似度である。Ove(U,U)は、ユーザUとUがともに利用したアイテムの数である。
【0108】
【数10】

【0109】
iは、欲求IDである。U(i)は、ユーザUが欲求iについて定常的に有している欲求の強さを表す。
【0110】
図14は、本実施形態5におけるユーザプロファイルデータベース102の構成例を示す図である。本実施形態5において、ユーザプロファイルデータベース102は、ユーザクラスタの識別子を保持するユーザクラスタIDフィールド1024を有する。本実施形態5では、ユーザプロファイル生成部113が生成したユーザクラスタ毎に欲求プロファイルを分類し、クラスタに属するユーザの平均的な欲求プロファイルを格納するように、ユーザプロファイルデータベース102を構成することができる。
【0111】
次に、コンテキスト−欲求の組合せの起こりやすさをユーザクラスタ毎に計算する手法について説明する。コンテキスト−欲求組合せ確率計算部110は、コンテキスト−欲求の組合せの起こりやすさを、例えば下記式11を用いて計算することができる。
【0112】
【数11】

【0113】
CUは、全ユーザをクラスタリングした結果得られるクラスタを示す。userは、ユーザを示す。Ndesire∩Context(user)は、ユーザ行動履歴データベース101が格納しているレコードにおいて欲求desireとコンテキストContextが同時に満足される回数である。Ndesire(user)は、欲求desireが満足される回数である。NContext(user)は、コンテキストContextが満足される回数である。コンテキストと欲求の組合せの起こりやすさを表現するものであれば、式11以外の計算式を用いることもできる。
【0114】
図15は、本実施形態5におけるコンテキスト−欲求組合せ確率データベース105の構成例を示す図である。本実施形態5において、コンテキスト−欲求組合せ確率データベース105は、ユーザクラスタの識別子を保持するユーザクラスタIDフィールド1055を有する。あるコンテキストの下で基本的欲求が満たされる確率をユーザクラスタ毎に記述したデータを格納している。
【0115】
組合せ算出部106は、ユーザが情報提示システム1000を利用する初期段階では、複数ユーザの行動履歴に基づき計算したコンテキスト−欲求組合せ確率を利用し、行動履歴がある程度蓄積された段階において、当該ユーザの行動履歴のみに基づき計算したコンテキスト−欲求組合せ確率を用いてもよい。切り替えタイミングは、ユーザが事前に設定してもよいし、情報提示システム1000を利用しているときにユーザが手動で切り替えてもよい。また、ユーザが提示されたアイテムに対して評価を実施し、評価点数が所定値を超えた時点で切り替えるようにしてもよい。
【0116】
最適アイテム検索部107は、複数のユーザの行動履歴を用いてコンテキスト−欲求データベース108を更新する機能を備えるようにしてもよい。この場合、最適アイテム選択部107は、全ユーザの行動履歴に基づき、アイテムが満足したコンテキスト−欲求の組合せの頻度を計算し、最も頻度の高い組合せをコンテキスト−欲求データベース108へ登録する。または、全ユーザをクラスタリングして生成されたパターン毎に、アイテムが満足したコンテキスト−欲求の組合せの頻度を計算し、最も頻度の高い組合せをコンテキスト−欲求データベースへ108に登録するようにしてもよい。例えば、コンテキストが「朝食時」であるときに欲求「摂取・消費」をアイテム「サンドウィッチ」によって満足するパターンと、コンテキストが「朝食時」であるときに欲求「摂取・消費」をアイテム「焼き肉」によって満足するパターンは、アイテム/コンテキスト/欲求の組合せが異なるものとして取り扱う。
【0117】
ユーザが情報提示システム1000を新たに利用し始めると、情報提示装置100は、登録された全ユーザの行動履歴から生成された欲求プロファイル、またはユーザクラスタから生成された欲求プロファイルのうち、新規ユーザが属するユーザクラスタに対応する欲求プロファイルを利用して、新規ユーザに提示するアイテムを決定する。いずれの欲求プロファイルを用いるかは、ユーザが指定してもよいし、ユーザの住所や年齢などの属性に最も近いユーザクラスタの欲求プロファイルを用いてもよいし、その他の手法によって決定してもよい。これにより、行動履歴が十分に蓄積されていない新規ユーザに対しても、アイテムを提示することができる。
【0118】
以上の実施形態1〜5では、商品情報、テレビ番組情報、書籍情報、観光地情報などのアイテム情報を例としたが、さまざまなドメインのアイテム情報を提示する機能について本発明に係る手法を適用できることは言うまでもない。
【0119】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することができる。
【0120】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部や全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【符号の説明】
【0121】
100:情報提示装置、101:ユーザ行動履歴データベース、1011:ユーザIDフィールド、1012:アイテムIDフィールド、1013:欲求IDフィールド、1014:日時フィールド、1015:コンテキストIDフィールド、1016:ユーザIDフィールド、1017:欲求頻度フィールド、102:ユーザプロファイルデータベース、1021:ユーザIDフィールド、1022:欲求強さフィールド、1023:コンテキストID、1024:ユーザクラスタIDフィールド、103:欲求推定部、104:コンテキスト判定部、105:コンテキスト−欲求組合せ確率データベース、1051:コンテキストIDフィールド、1052:欲求充足確率フィールド、1053:詳細フィールド、1054:判定条件フィールド、1055:ユーザクラスタIDフィールド、106:組合せ算出部、107:最適アイテム検索部、108:コンテキスト−欲求データベース、1081:アイテムIDフィールド、1082:欲求IDフィールド、1083:コンテキストIDフィールド、1084:コンテキスト−欲求組合せフィールド、109:アイテムデータベース、1091:アイテムIDフィールド、1092:詳細フィールド、110:コンテキスト−欲求組合せ確率計算部、111:行動取得部、112:コンテキスト判定部、113:ユーザプロファイル生成部、200:ユーザ端末、201:行動取得部、202:コンテキスト判定部、1000:情報提示システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザがアイテムを選択した行動の履歴を格納するユーザ行動履歴データベースと、
前記アイテムの特徴を表す情報を格納したアイテムデータベースと、
前記ユーザが定常的に有している欲求の強さを前記欲求の種別毎に記述する欲求プロファイルを格納したユーザプロファイルデータベースと、
前記ユーザがアイテムを選択するときの外的要因を取得してこれに基づき前記ユーザが置かれている状況を判定するコンテキスト判定部と、
前記ユーザが置かれている状況と、前記アイテムと、前記ユーザが置かれている状況の下で前記アイテムを選択することによって満たすことのできる前記欲求と、の対応関係を記述したコンテキスト−欲求データベースと、
前記ユーザ行動履歴データベースが格納している前記ユーザの行動履歴と、前記ユーザプロファイルデータベースが格納している前記ユーザの欲求プロファイルとを用いて、前記ユーザが現在有している前記欲求の強さを推定する欲求推定部と、
前記ユーザが現在有している前記欲求の強さと、前記ユーザが現在置かれている状況とを用いて前記コンテキスト−欲求データベースを照会することにより、前記ユーザが現在有している前記欲求の強さと前記ユーザが現在置かれている状況に適した前記アイテムを特定し、そのアイテムを前記アイテムデータベースから検索するアイテム検索部と、
を備えることを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
前記状況の下で前記ユーザの前記欲求を満足することができる確率を前記状況毎に記述したコンテキスト−欲求組合せ確率データベースを備え、
前記アイテム検索部は、
前記コンテキスト−欲求組合せ確率データベースが記述している前記確率にしたがって、前記状況の下で前記ユーザの前記欲求を満足することができる前記状況と前記欲求の組合せを特定し、
その結果にしたがって前記アイテムを前記アイテムデータベースから検索する
ことを特徴とする請求項1記載の情報提示装置。
【請求項3】
前記アイテム検索部は、
前記ユーザが現在有している前記欲求の強さと、
前記状況の下で前記ユーザの前記欲求を満足することができる確率と、
のいずれを優先するかを表す優先度を、所定の計算式を用いて計算し、その優先度にしたがって前記アイテムを検索する
ことを特徴とする請求項2記載の情報提示装置。
【請求項4】
前記ユーザが前記アイテムを選択したときに前記ユーザが置かれていた前記状況と、そのときに満足した前記欲求との組合せの起こりやすさを、前記ユーザ行動履歴データベースが格納している前記ユーザの行動履歴を用いて算出するコンテキスト−欲求組合せ確率計算部を備え、
前記コンテキスト−欲求組合せ確率データベースは、前記コンテキスト−欲求組合せ確率計算部が計算した前記確率を格納する
ことを特徴とする請求項2記載の情報提示装置。
【請求項5】
前記アイテム検索部は、
前記ユーザの行動履歴内において出現する前記状況の頻度を計算し、前記コンテキスト−欲求組合せ確率データベースが格納しているレコードのうち、出現頻度が所定値以上の前記状況に対応するレコードに対して、インデクスを付加する
ことを特徴とする請求項2記載の情報提示装置。
【請求項6】
前記ユーザ行動履歴データベースは、
前記履歴と併せて、前記ユーザが前記アイテムを選択したときの前記状況を格納しており、
前記アイテム検索部は、
前記ユーザの行動履歴内において出現する前記状況と前記欲求の組合せの出現頻度を計算し、前記コンテキスト−欲求データベースが格納しているレコードのうち、出現頻度が所定値以上の前記状況と前記欲求の組合せに対応するレコードに対して、インデクスを付加する
ことを特徴とする請求項1記載の情報提示装置。
【請求項7】
前記ユーザ行動履歴データベースは、
前記履歴と併せて、前記ユーザが前記アイテムを選択したときの前記状況を格納しており、
前記欲求推定部は、
前記ユーザが前記状況の下で現在有している前記欲求の強さを推定する
ことを特徴とする請求項1記載の情報提示装置。
【請求項8】
前記ユーザ行動履歴データベースが格納している行動履歴を用いて、前記ユーザが前記状況の下で有する前記欲求の定常的な強さを算出し、前記欲求プロファイルとして前記ユーザプロファイルデータベースに格納するユーザプロファイル生成部を備え、
前記欲求プロファイルは、
前記ユーザが定常的に有している前記欲求の強さを前記状況毎に記述しており、
前記欲求推定部は、
前記欲求プロファイルの記述にしたがって、前記ユーザが前記状況の下で現在有している前記欲求の強さを推定する
ことを特徴とする請求項7記載の情報提示装置。
【請求項9】
前記ユーザ行動履歴データベースは、所定期間以上継続する前記状況の下で発生した前記ユーザの行動履歴のみを格納する
ことを特徴とする請求項1記載の情報提示装置。
【請求項10】
前記ユーザプロファイルデータベースは、所定期間以上継続する前記状況の下で前記ユーザが定常的に有する前記欲求の強さのみを格納する
ことを特徴とする請求項1記載の情報提示装置。
【請求項11】
前記ユーザ行動履歴データベースは、複数の前記ユーザの前記行動履歴を格納し、
前記ユーザプロファイルデータベースは、複数の前記ユーザが定常的に有している前記欲求の強さを集約したデータを格納している
ことを特徴とする請求項1記載の情報提示装置。
【請求項12】
前記ユーザ行動履歴データベースが格納している行動履歴を用いて、前記ユーザが前記状況の下で有する前記欲求の定常的な強さを算出し、前記欲求プロファイルとして前記ユーザプロファイルデータベースに格納するユーザプロファイル生成部を備え、
前記ユーザプロファイル生成部は、
複数の前記ユーザの前記行動履歴の間の類似度または複数の前記ユーザの前記欲求プロファイルの間の類似度にしたがって、前記ユーザをクラスタリングし、その結果を前記ユーザプロファイルデータベースに格納する
ことを特徴とする請求項11記載の情報提示装置。
【請求項13】
前記ユーザプロファイル生成部は、
新規ユーザが前記クラスタリングによって得られたユーザクラスタのいずれに属するかを判定し、
前記ユーザクラスタに対応する前記欲求プロファイルを前記新規ユーザに割り当て、
前記アイテム検索部は、
前記ユーザプロファイル生成部が前記新規ユーザに割り当てた前記欲求プロファイルを用いて、前記新規ユーザに適したアイテムを検索する
ことを特徴とする請求項12記載の情報提示装置。
【請求項14】
前記ユーザ行動履歴データベースが格納している複数の前記ユーザの前記行動履歴を用いて、前記ユーザが前記アイテムを選択したときに前記ユーザが置かれていた前記状況と、そのときに満足した前記欲求との組合せの起こりやすさを算出するコンテキスト−欲求組合せ確率計算部を備え、
前記コンテキスト−欲求組合せ確率データベースは、前記コンテキスト−欲求組合せ確率計算部が計算した前記確率を格納する
ことを特徴とする請求項11記載の情報提示装置。
【請求項15】
前記アイテム検索部は、
前記クラスタリングによって得られたユーザクラスタ毎に、前記アイテムによって満足した前記欲求と前記状況の組合せの頻度を計算し、最も頻度の高い前記組合せを前記コンテキスト−欲求データベースに格納する
ことを特徴とする請求項12記載の情報提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−256183(P2012−256183A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128572(P2011−128572)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)