説明

情報検出装置及び光ディスク装置

【課題】光ディスク等の情報記録媒体に記録された情報を読み出す際に、マーク先頭部に歪がある場合でも良好に情報を読み出すことを可能にする情報検出装置及び光ディクス装置を提供する。
【解決手段】情報記録媒体の再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPRチャネルに等化する等化器と、等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成して等化器出力から記録データを判別するビタビ検出器であって、前記等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限して前記ブランチメトリックを生成して判別するモードを有するビタビ検出器と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の情報再生装置に関する。特に、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)検出時の性能向上に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のマルチメディア化の進展により、映像情報を含む大量の情報を処理する必要があり、これらの情報を記録するストレージ装置の大容量化の必要性が高まっている。特に高画質の映像情報のストレージ分野ではDVD(Digital Versatile Disc)からより大容量のBD(Blue−ray−Disc)へ移行し始めている。光ディスク装置あるいはHDD装置の記憶容量を増加させるためには記録密度を上げる必要があり、これに伴い、エラーレートの低減、信頼性の確保が重要課題となっている。以下、主に光ディスクの高密度化に関して説明する。
【0003】
光ディスクは、光学素子により集光されたレーザービームをディスク媒体上に照射し、反射光の明暗あるいは偏光により情報を検出する。集光されたビームスポットは有限であり、径が小さいほど高密度の記録再生が可能であるため、このビームスポットを小さくするための光学的なアプローチが進められてきている。スポット径は対物レンズNA(Natural Aperture)に逆比例し、レーザービーム波長λに比例する。従って、NAを大きくし、λを小さくすることでスポット径を小さくすることが可能である。しかしNAを大きくすると焦点深度が浅くなり、ディスク面とレンズの距離を狭める必要があるため限界がある。また、短波長レーザーは、高出力発振の安定性、長寿命化等が課題であるが、CDでは赤外レーザー(λ=780nm)、DVDでは赤色レーザー(λ=650nm)、BDでは青色レーザー(λ=405nm)と短波長化は徐々に進んできたがこれもまた限界がある。
【0004】
ところで、光ヘッドとディスク媒体間の伝送路周波数特性であるMTF(Modulation Transfer Function)は有限なビームスポットのため高域のゲインが低下するLPF(Low−Pass Filter)の形となる。従って、矩形波を記録しても再生波形が鈍ってしまう。記録密度を高くすると、特定の時刻で読み出すべき波形が他の時刻の波形と干渉するが、これを符号間干渉と呼ぶ。この符号間干渉のため、ある長さ以下の短い記録マークの再生が困難となる。逆に記録マークが長い場合には、同期クロック抽出用の位相情報出力頻度低下が同期外れの原因となるため、ある長さ以下で制限する必要がある。以上の理由により、信号処理的なアプローチとして、光ディスクへの記録データは記録符号化されている。特に符号の反転距離を制限したRLL符号(Run Length Limited Code)が用いられることが多く、EFM(Eight to Fourteen Modulation)、8/16符号、(1,7)PP、などが使われている。このうち、CDで用いられるEFM変調符号とDVDで採用された8/16変調符号の最小ラン長は2(d=2)であり、より高密度なBDで採用された(1,7)PPの最小ラン長は1である。この符号は(1,7)RLLと同様に2/3であり、最短マークの連続数の制限などに特徴がある。
【0005】
また、波形等化と呼ばれる技術がある。これは符号間干渉を取り除くような逆フィルタを挿入することで誤り率を低下させるものである、この等化は再生信号の高帯域成分を強調するため符号間干渉は抑えられるが、ノイズの高域成分も強調することになり、再生信号のSNR(Signal to Nose Ratio)を劣化させる場合がある。特に記録密度を上げたときには、この波形等化によるSNRの悪化が検出データの誤りの主要因となる。PR(Partial Response)等化は、既知の符号間干渉を故意に起こすような波形等化の1方式である。通常、高域成分を強調することがないため、SNRの悪化を抑えることができる。
【0006】
一方、検出方式として有効なものとして最尤検出方式がある。この方式は、ある状態遷移をすることが分かっているデータ列に対して、考えられる全ての時系列パタンの中から誤差の二乗平均が最小になるものを選択することで検出性能を上げる方式である。ただし、実際の回路上で上述の処理を行うことは、回路規模および動作速度の点で困難であるため、通常は、ビタビアルゴリズムと呼ばれるアルゴリズムを用いてパスの選択を漸化的に行うことにより実現している。この場合、ビタビ復号あるいはビタビ検出と呼ばれる。
【0007】
前述のPR等化にビタビ検出を組み合わせた検出方式はPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式と呼ばれ、一種の誤り訂正を行いながらデータを検出できる。PR等化により再生信号は時間方向に相関を持たされている。このため、再生信号をサンプリングしたデータ系列には特定の状態遷移しか現れなくなる。限られた状態遷移と、ノイズを含む実際の再生信号のデータ系列とを比較し、最も確からしい状態遷移を選ぶことで、検出データの誤りを低減できる。最小ラン長が1である変調符号とPR(1,2,2,2,1)チャネルを用いたPRML検出方式は、非特許文献1にその記述があり、高密度記録再生時に広い検出マージンを得ることが可能である。
【0008】
ビタビ検出により検出性能を上げるためには、再生チャネルの周波数特性を特定のPR等化特性に一致させる必要がある。その場合、再生チャネルになるべく近いPR等化特性を選ぶようにするが、一般には波形等化器を用いて周波数特性を補正し、できるだけ所定のPR特性に等しくなるようにしている。信号の経時劣化を適応的に補正して検出性能を高める技術として自動等化あるいは適応等化方式がある。逐次型の適応等化アルゴリズムとしては、特にZero Forcing法、Mean Square法などが一般的である。適応等化技術は、装置の初期調整が不要となるなどその効果は大きい。
【0009】
続いてビタビ検出動作に関して説明する。図12はDVDの再生信号をチャネルクロック同期でサンプリング後、PR(1,3,3,1)等化した信号xの状態遷移を示している。また図13は図12の状態遷移を時間軸で展開したトレリス線図である。状態遷移図の6つの状態から伸びる枝に付随する数字は、理想的なxの振幅値rを示し、例えば、4Tスペースと4Tマークが連続している領域の場合には、S→S→S→S→S→S→S→S→S→・・・と続くことになる。この時のxは理想的には−4、−3、0、3、4、3、0、−3、−4、−3、・・・だが、実際にはノイズ等によって、例えば、−3.9、−2.9、0.1、2.7、3.8、2.9、0.2、−2.6、−3.9、−3.1、・・・のようになる。ここで、xにはガウスノイズが重畳されていると仮定し、rが5種類の基準レベル{±4、±3、0}の何れかを取るものとすると、Σ(x−rを最小とするrを見つけることが、最尤検出に他ならない。しかし全ての組み合わせを実時間で比較することは困難であるため、逐次的に行うのがビタビアルゴリズムである。これは、図14に示すように状態SとSのように複数のパスが入力される状態に対してより確からしい1本を選択するという操作を毎時刻ごと行う。これによりパスを過去に遡ることである時点で1本に収斂(パスマージ)する。つまり、マージ時刻より前の情報が確定できることになる。
【0010】
さて、複数パスから1本を選択するためにメトリックという確からしさの指標を導入する。時刻nが状態Saである確からしさPaをパスメトリックと名づける。また、(式1)に示すように、xと基準レベルrの差の平方をブランチメトリックb(r)と定義する。
【0011】
(r)=(x−r) −−−−−−−−−−−−−−−−− (式1)
【0012】
パスメトリックは、過去からのブランチメトリックの積算であるので、値が小さいほど確からしいことになる。(式2)に示すとおり、パスメトリックP1は、1時刻前は必ず状態Sなので、1時刻前に状態SであるパスメトリックP0n−1に、現時刻のブランチメトリックb(−3)を加算したものとなる。
【0013】
P1=P0n−1+b(−3) −−−−−−−−−−−−−− (式2)
【0014】
同様に、P3、P4、P6は以下の(式3)〜(式4)のようになる。
【0015】
P3=P1n−1+b(0) −−−−−−−−−−−−−−− (式3)
P4=P6n−1+b(0) −−−−−−−−−−−−−−− (式4)
P6=P7n−1+b(3) −−−−−−−−−−−−−−− (式5)
【0016】
P0を(式6)に示す。P0は、1時刻前はS、あるいはSであり、2本のパスが存在する。このパスメトリックを用いて小さい方を選択する。ただしMin[a,b]はa、bのうち値の小さい方を示す。
【0017】
P0=Min[P0n−1+b(−4),P4n−1+b(−3)] −−−−−−−−−−−−−− (式6)
【0018】
同様に、P7も以下の(式7)のようになる。
【0019】
P7=Min[P7n−1+b(4),P3n−1+b(3)] −−−−−−−−−−−−−−−− (式7)
【0020】
毎時刻パスメトリックを更新し、パス選択を行うことで全ての状態に入力されるパスが1本になる。これによりある時刻よりも過去に遡るとパスがマージして情報が確定することになる。ところで式6、7において、パスメトリックの大小比較ができればよい。b(r)のx項は全てのパスメトリックに共通であるので、ブランチメトリックとして以下の式を用いてもよく、これにより回路が簡略化できるという利点がある。
【0021】
(r)’=r−2rx
【0022】
ところで、通常、この処理はチャネルクロック単位で行われるため、高速処理が要求される。例えばDVDの8倍速ではチャネルクロック周波数が200MHzを超えるため、一般的に専用回路によって処理がなされる。図15にビタビ検出器のブロック図を示す。パスメトリックとブランチメトリックの加算回路(Add)、パスメトリック値の比較回路(Compare)、比較結果に基づいたパスの選択回路(Select)を、まとめてACS回路52と呼ぶ。これにブランチメトリック計算用の回路51(BMG)、およびパス選択情報を保持するためのパスメモリと呼ばれるメモリ(MEM)53が必要である。PRML検出は、各基準レベルに対して適応等化後の信号レベル分布が正規分布に近ければ、レベル検出で全く検出できないようなSNRの低い信号でもビタビ検出器は検出できることが知られている。これらは主に、記録マーク品質が良好だが、ジッタが大きい場合、符号間干渉が大きい場合あるいはデフォーカス状態で再生した場合などに相当する。
【0023】
しかし、主に記録時のパワー制御の不整合で、不完全な形状のマークがディスク上に記録されている場合に、従来のレベル検出系よりもPRML検出系の性能が劣化する場合が存在する。図6は、長マークにひずみを持つ5Tスペース+11Tマークの再生波形の例である。長マークの先頭部で記録パワーが小さくなるような記録ストラテジでマークが形成されてしまったものである。レベル検出によれば、5T−11Tのエッジ位置は5T側に近いため2値スライス検出でエラーなく検出することができる。一方、これをPRML検出した場合を考える。理想パス1(5T+11T、正解)と理想パス2(6T+10T、誤り)のどちらかの選択になるため、2本のパスそれぞれのパスメトリックを求めてみる。表1には、PR(1,3,3,1)チャネルにおける理想パス1、2に対し、各時刻における理想値とxnの差分の平方すなわちブランチメトリック値を記してある。
【0024】
【表1】

【0025】
ブランチメトリックの和がパスメトリックになり、ビタビ検出器では両パスに対してパスメトリック値の小さい方がより確からしいと判断される。この場合のパスメトリックは理想パス1では10.96であるのに対して、理想パス2では10.36となるため、パスメトリックの小さなパス2を選択してしまい、誤検出となる。
【0026】
図8は、長マークにひずみを持つ6Tスペース+10Tマークの再生波形の例である。長マークの先頭部で記録パワーが大きくなる記録ストラテジでマークが形成されてしまったものである。レベル検出によれば、6T−10Tのエッジ位置は10T側に近いため2値スライス検出でエラーなく検出することができる。一方、これをPRML検出した場合を考える。理想パス1(5T+11T、誤り)と理想パス2(6T+10T、正解)のどちらかの選択になるため、2本のパスそれぞれのパスメトリックを求めてみる。表2には、PR(1,3,3,1)チャネルにおける理想パス1、2に対し、各時刻における理想値とxnの差分の平方すなわちブランチメトリック値を記してある。
【0027】
【表2】

【0028】
ブランチメトリックの和がパスメトリックになり、ビタビ検出器では両パスに対してパスメトリック値の小さい方がより確からしいと判断される。この場合のパスメトリックは理想パス1では5.96であるのに対して、理想パス2では6.76となるため、パスメトリックの小さなパス1を選択してしまい、誤検出となる。
【0029】
レベル検出は、従来から使われてきた方法であり、多くの光ディスクドライブで採用されてきた。最近使われ始めたビタビ検出を搭載した光ディスクドライブでも、従来ドライブで記録されたディスクに対して再生互換が必須である。PRMLによる検出では、確かに再生性能の向上が期待できる。しかし、記録マークが不完全な場合など非線形性が強い再生信号の検出では、スレッショルド検出よりも性能が劣化する場合が存在するという問題があった。
【0030】
これに対して特許文献1に波形歪みのある信号をPRMLで検出する際の性能劣化回避策が開示されている。図16にそのビタビ検出器の構成図を示してある。ACS回路102は、パスメトリックとブランチメトリック生成回路101で生成したブランチメトリックの加算、パスメトリック値の比較、及び比較結果に基づいたパスの選択を行う。パス選択情報はパスメモリ103で処理し、最尤判定器104により最少パスメトリックとなるデータを選択して出力する。ただし、パスの選択時には、パスメトリック値だけではなく、所定チャネルクロック数だけ前の時刻のビタビ検出器への入力信号を閾値αでコンパレート(コンパレータ106)した情報も用いて最新のパス判定を行う。特に所定チャネルクロック数だけ前の時刻の入力信号がマークに対応した振幅であるときには、マークが連続するパスを選択し、マークに対応した振幅でないときには、パスメトリック値に基づくパス判定を行う。このようなパス選択を行うことにより、マーク歪みがある場合でも、マークが連続するパスが選択されることになり、検出データの誤検出を防止できる。
【0031】
また、特許文献2には歪み波形をPRML検出するための別方法が開示されている。図17にその構成図を示す。この方法では、磁気拡大型光磁気記録媒体204に記録されている情報を磁気ヘッド206および光ヘッド205により読み出し、その際に発生する波形歪みをリミッタ回路201によってあらかじめ除去し、PR等化回路202によりPR(1,−1)チャネルに等化後、ビタビ検出回路203によって検出を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2008−287763号公報
【特許文献2】特開2005−011385号公報
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】小川、本間他 著 「HD DVD装置化技術の開発(記録技術)」情報メディア学会技術報告 ITE Technical Report Vol.28、 No.43、 PP.17−20 MMS2004−38、 CE2004−39(Jul.2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
以下の分析は本発明により与えられる。特許文献1の手法は、長マークの中央が凹むような歪みに対しては有効である。しかし、図6や図8に示したようなマークの先頭に大きなひずみが生じる場合には効果が出ないという問題がある。これは、状態S、Sを維持し続けるかを過去の入力振幅で判断しているだけなので、エッジシフトを伴う誤検出を救うことが出来ないためである。一方、特許文献2の手法は、符号間干渉がない磁気拡大型光磁気記録再生に特化したもので、通常のDVDやBDディスク再生には適応できないという問題がある。さらに、この方法を通常DVD等に適応すると、リミッタ出力にはリミット振幅近傍で高い周波数成分が重畳するために波形等化によって強調されてビタビ検出時の性能が大きく低下する可能性が高い。
【0035】
DVDやBDなどの光ディスク装置を含む記録媒体に対してマーク先頭部の歪みを含む波形歪みがある場合でも良好に再生ができる簡易な構成の情報検出装置及び光ディスク装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の第1の側面による情報検出装置は、情報記録媒体の再生信号から記録データを識別する情報検出装置であって、前記再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPR(Pertial Response)チャネルに等化する等化器と、前記等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成して前記等化器出力から記録データを判別するビタビ検出器であって、前記等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限して前記ブランチメトリックを生成して判別するモードを有するビタビ検出器と、を備える。
【0037】
本発明の第2の側面による光ディスク装置は、光ディスク媒体に記録された情報を読み出す光ディスク装置において、読み取りヘッドから得られた再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPRチャネルに等化する等化器と、前記等化器出力の振幅値を一定のレベルに制限するリミッタ回路と、前記等化目標レベルのうち、前記リミッタ回路により振幅幅が制限される等化目標レベルを除く等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成して前記リミッタ回路出力から記録データを判別するビタビ検出器と、を備える。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、等化器の等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限してブランチメトリックを生成して判別することのできるビタビ検出器を備えることによって、DVDやBDなどの光ディスク装置を含む記録媒体に対して、マーク先頭部の歪みを含む波形歪みがある場合でも良好に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例による情報検出装置の構成図である。
【図2】一実施例における等化誤差生成器の構成図である。
【図3】一実施例における歪状態判定部の構成図である。
【図4】一実施例におけるビタビ検出器の構成図である。
【図5】一実施例による光ディクス装置の構成図である。
【図6】長マーク先頭部が細く記録された再生信号に対する等化器出力を示した図である。
【図7】長マーク先頭部が細く記録された再生信号に対するリミッタ出力を示した図である。
【図8】長マーク先頭部が太く記録された再生信号に対する等化器出力を示した図である。
【図9】長マーク先頭部が太く記録された再生信号に対するリミッタ出力を示した図である。
【図10】歪状態判定部の動作を示すタイミング図である。
【図11】d=2制限記録符号のリミッタ出力に対応するPR(1,3,3,1)チャネルにおける状態遷移図である。
【図12】d=2制限記録符号のPR(1,3,3,1)チャネルにおける状態遷移図である。
【図13】d=2制限記録符号のPR(1,3,3,1)チャネルにおけるトレリス線図である。
【図14】d=2制限記録符号のPR(1,3,3,1)チャネルに対するビタビ検出によるパスマージ例である。
【図15】従来のビタビ検出器の回路構成である。
【図16】長マーク歪みを考慮した特許文献1に記載の従来のビタビ検出器のブロック図である。
【図17】波形歪みを考慮した特許文献2に記載の従来の光磁気再生装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施例についての詳細な説明に入る前に、本発明の実施形態の概要について説明しておく。なお、概要の説明において引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。
【0041】
一例として図1に示すように、本発明の一実施形態による情報検出装置は、情報記録媒体の再生信号から記録データを識別する情報検出装置20であって、再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPR(Pertial Response)チャネルに等化する等化器3と、等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成して等化器出力EQoutから記録データを判別するビタビ検出器5であって、等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限してブランチメトリックを生成して判別するモードを有するビタビ検出器5(図4参照)と、を備える。上記構成により、特に再生信号のマーク先頭部に歪みがある場合でも良好に再生することができる。
【0042】
また、ビタビ検出器5を制限して判別する場合に、等化器出力EQoutの振幅値を一定のレベルに制限してビタビ検出器に入力させるリミッタ回路4をさらに設けてもよい。リミッタ回路4を設けることにより、波形歪が振幅について増加する方向に歪む場合でも良好に再生することができる。
【0043】
特に、図6および図8に示すような波形歪みの場合に再生性能が低下するのは、基準レベルと実波形データ列との誤差が局所的に大きくなるためである。特に本来振幅4付近まで上がると予想されるxが小さな値(大きな)で検出されてしまう。すなわちブランチメトリックが大きくなりパスメトリックで差が付きにくくなってしまう。これに対して等化後のデータ列にリミッタで振幅制限を行い、例えば最大振幅を3に制限し、さらにビタビ検出器内でもリミッタ効果を考慮したチャネル(図11)で検出することにより等化誤差が小さくなり検出性能が改善する。
【0044】
なお、波形歪として振幅が低下する方向にひずむ場合が主である場合にはリミッタ回路4は必ずしも必要ではない。
【0045】
また、再生信号の歪み量を判定し、歪み量が多い場合に、ビタビ検出器5を制限して判別するモードに設定する歪状態判定部8をさらに設けてもよい。歪状態判定部8を備えることにより、再生信号の歪み量を自動判定して歪がある場合にもない場合にも良好に再生することができる。なお、歪状態判定部8は、図3のような専用の回路を設けても良いし、情報検出装置20に関連して設けられるプロセッサにより実行されるファームウェア(F/W)によって少なくとも一部の機能を分担してもよい。その場合は、そのファームウェアとファームウェアを実行するプロセッサも歪状態判定部8に含まれる。
【0046】
さらに、等化器3の出力とリミッタ回路4の出力とを受けてどちらかを選択してビタビ検出器5に入力させるセレクタ9と、再生信号の歪み量を判定し歪み量が多い場合にビタビ検出器5を制限して判別するモードに設定すると共に、セレクタ9にリミッタ回路4の出力を選択させる歪状態判定部8と、をさらに設けてもよい。
【0047】
また、歪状態判定部8は一例を図3に示すように、特定パタンに対する等化誤差を平均化し、平均化出力とあらかじめ指定した閾値との比較によって歪み量を判定するようにしてもよい。
【0048】
また、ビタビ検出器5は、一例を図4に示すように、等化目標レベルの最大値を制限する場合に等化目標レベルの最大値から2番目の値を基準レベルの最大値としてブランチメトリックを生成して判別し、等化目標レベルの最小値を制限する場合に等化目標レベルの最小値から2番目の値を基準レベルの最小値としてブランチメトリックを生成して判別するものであってもよい。
【0049】
さらに、ビタビ検出器5は、等化目標レベルの最大値を制限する場合に等化目標レベルの最大値から2番目の値を基準レベルの最大値としてブランチメトリックを生成して判別し、等化目標レベルの最小値を制限する場合に等化目標レベルの最小値から2番目の値を基準レベルの最小値としてブランチメトリックを生成して判別し、リミッタ回路4は、等化目標レベルの最大値を制限する場合に等化目標レベルの最大値から2番目の値を上限値として振幅幅を制限し、等化目標レベルの最小値を制限する場合に等化目標レベルの最小値から2番目の値を下限値として振幅幅を制限するものであってもよい。
【0050】
また、等化器3にPRチャネルに適応等化を行わせる等化器3の係数制御部6をさらに設け、波形歪が大きいときは、等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限して、最大値又は最小値以外の基準レベルに対応する等化誤差を用いて適応等化を行うこととしてもよい。
【0051】
また、本発明の一実施形態による光ディスク装置は、一例として図5に示すように、光ディスク媒体10に記録された情報を読み出す光ディスク装置30において、読み取りヘッド11から得られた再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPRチャネルに等化する等化器3と、等化器出力EQoutの振幅値を一定のレベルに制限するリミッタ回路4と、等化目標レベルのうち、リミッタ回路4により振幅幅が制限される等化目標レベルを除く等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成してリミッタ回路出力LMoutから記録データを判別するビタビ検出器MLと、を備える。上記構成により、マーク先頭部に歪がある場合でも良好に再生できる光ディスク装置が得られる。
【0052】
再生信号の歪み量を判定する歪状態判定部8をさらに備え、歪状態判定部8が、歪が少ないと判定した場合に、リミッタ回路4は振幅幅の制限を行なわない等化器の出力信号をビタビ検出器へ出力し、かつ、ビタビ検出器は等化目標レベルの制限を行わないようにすることができる。すなわち、リミッタ回路自体がセレクタ回路9の機能を備えたものであってもよい。歪状態判定部8を設けることにより、歪の有無に応じて、歪がある場合もない場合もどちらも良好に再生できる。
【0053】
再生信号の歪み量を判定する歪状態判定部8と、歪状態判定部8が歪み量を多いと判定した場合に、リミッタ回路4により振幅が制限された等化器出力信号LMoutを選択し、歪み量が少ないと判定した場合に、リミッタ回路により制限されていない等化器出力信号EQoutを選択してビタビ検出器の入力信号として与えるセレクタ9と、をさらに備え、ビタビ検出器5は、9リミッタ回路により制限されていない等化器出力信号EQoutを入力信号とする場合に等化目標レベルの制限を行わないこととすることができる。
【0054】
以上で概要の説明を終え、以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例】
【0055】
図1は本発明の情報検出装置20の構成図を示している。図2〜図4には図1に示した構成図内のサブブロックの詳細を示している。図1を参照すると、この情報検出装置20は、媒体からの読み出し信号RFを図示していないアンチエリアシングフィルタを含むフィルタリング処理後A/D変換器1によって6から8bit幅のデジタル情報にチャネルクロック同期でサンプリングする。ハイパスフィルタ2によってオフセットを補正後、FIRフィルタに代表される等化器3に入力する。A/D変換はハイパスフィルタ2の後段で行っても構わない。また、A/D変換器1のサンプリングクロックは、図示していないアナログPLLによって生成してもよいし、固定クロックでサンプリング後に、これも図示していないデジタルPLLによって補間位相を制御する構成でも構わない。等化器3のタップ係数は、係数制御部6によって適応的に修正され、例えばPR(1,3,3,1)チャネルに等化される(±4、±3、0の5種類の等化目標レベル)。この時、等化誤差生成器7により等化誤差EQerrが生成され、係数制御部6はこの等化誤差EQerrと等化器入力の相関ができるだけ少なくなるようにタップ係数を修正してゆく。等化器3のタップ数は多いほど自由度が高いが、回路量の兼ね合いによりDVD程度の密度では9タップ以下で十分である。またDVDに限らず、BDに使われている最小ラン長d=1のRLL符号に対しても同様に対応できる。等化器3の出力信号EQoutはリミッタ回路4に入力されて変換がなされる。リミッタ回路出力をLMoutとして、波形歪みがプラス方向とあるとすると、例えば式8に示す変換を行う。
【0056】
LMout=EQout(EQout<3)
3 (EQout≧3) −−−−−−(式8)
【0057】
両極性とも歪みが大きい場合には式9に示す処理を行ってもよい。
【0058】
LMout=EQout(|EQout|< 3)
3 ( EQout ≧ 3)
−3 ( EQout ≦−3) −−−(式9)
【0059】
リミット閾値は±3としたが、それ以外の値でももちろん構わない。ビタビ検出器の基準レベルの最大値と最小値は、それぞれ適応等化目標レベルのうち2番目に大きい目標レベルと2番目に小さい目標レベルが好適である。もちろん、最大基準レベルとして最大等化目標レベルよりも小さな値、あるいは最小基準レベルとして最小等化目標値よりも大きな値であれば効果はあるが、前述の構成の方が小さな回路で実現できるというメリットがある。最大と最小基準レベルの両方を変更してもよいが、通常マークが形成される方の極性に歪が大きく発生するためどちらか一方で十分効果が発揮できる。
【0060】
リミッタ出力LMoutおよび等化器出力EQoutはセレクタ9に入力されてどちらか一方が選択出力される。この選択は歪状態判定部8によって行われる。セレクタ出力MLinはビタビ検出器5に入力されて最尤検出により2値の検出情報NRZIが生成される。リミッタ回路4とビタビ検出器5の間にセレクタ9を配置せずに直結し、リミッタ4の閾値を2種類設けてこれを歪状態判定部8により切り替える構成でも構わない。また、歪状態判定部8とセレクタ9を配置せずリミッタ4とビタビ検出器5を直結した構成でも構わないが、波形歪みが少なくSNRが低い入力信号ではリミッタをスルーして通常のPRML検出した方が検出性能が上がる可能性がある。また、波形歪として振幅が低下する方向にひずむ場合が主である場合には必ずしもリミッタ回路4は必要ではない。もちろんこの構成の場合にはセレクタ9は不要であり、SEL信号はビタビ検出器5のみその動作を切り替える。
【0061】
等化誤差生成器7の構成図を図2に示す。等化器出力EQoutに対してFIFO73によりビタビ検出器5内の遅延量に相当する遅延を付加する。ビタビ検出器出力NRZIを1T遅延器(フリップフロップ)71により時系列で4ch分まとめ、フィルタ72(演算器)によって重みを付けることで理想値yが得られる。再生信号にノイズが重畳しておらず完全に等化できた場合FIFO73出力とyは一致してその差である等化誤差EQerrは零となる。通常はノイズおよび非線形の歪みなどによりEQerrは零とはならずEQerrのパワーが最少になるように適応等化が行われる。
【0062】
歪状態判定部8の構成例を図3に示す。図6のようにプラス極性の長マーク波形が歪んでいる場合、例えばNRZI=1が4個連続するタイミングを1T遅延器(フリップフロップ)81およびデコーダ82によって生成し、等化誤差EQerrを平均化フィルタ83によって選択的に取り出して平均化することで信号V4を生成し、これがあらかじめ設定した閾値Vthよりも下回る場合にひずみ量大と判断する。Vthによる比較は単なるレベル判別でもよいがヒステリシスコンパレータ84を使う方がシステムとして安定する。この歪状態判定部8は、高速な切り替えを行うことはないので回路で実現してもよいし、平均化とレベル検出処理を情報検出装置に関連して設けられるプロセッサによりファームウェアF/Wとして実現してもよい。あるいは別回路で検出したアシンメトリ量をレベル検出して判定してもよい。
【0063】
図4にビタビ検出器5の構成例を示す。ブランチメトリック生成回路51が生成するブランチメトリックを受けてASC回路52によりパスメトリックの変更を行い、その時のパス選択情報がパスメモリ53に蓄えられて結果が出力される。ブランチメトリック生成回路51からASC回路52へデータパス上にブランチメトリックセレクタ54が追加されている点が通常のビタビ検出器とは異なる。歪み量が大きい場合SEL信号によってブランチメトリックセレクタ54は(x−4)のパスが切断され常に(x−3)が出力される。これによって図11に示す状態遷移に対して最尤検出が行われる。リミッタ回路4が式9の場合には、(x+4)のデータパスにもセレクタが追加されて(x+3)と(x+4)とのどちらかが選択出力される。ブランチメトリックセレクタ54によって(x−3)と(x−4)を切り替える場合には、単に通常のビタビ検出回路にセレクタを1つ挿入するだけでよいので簡便である。例えば新たに(x−3.2)を生成して(x−4)から切り替えても構わないが、回路増を伴うことは自明である。
【0064】
適応等化の目標チャネルはPR(1,3,3,1)を含むPR(a,b,b,a)やPR(a,b,a)が好適であり、等化出力の上下限をリミットし、さらにビタビ検出器内では2番目に大きい等化目標レベルと2番目に小さい等化目標レベルをそれぞれ最大、最小基準レベルとするPR(1,1)チャネルの状態遷移を元にビタビ検出を行う構成が有効である。より高次のPR(a,b,c,b,a)タイプを使っても構わないが、状態遷移が複雑になっていることもありリミッタによって振幅を制限すると逆に性能低下する恐れがある。ただし、PR(1)チャネルは2値の等化目標レベル、PR(1,1)チャネルは3値の等化目標レベルを持つが、等化後には短マークと長マークで振幅の差が出ないため本発明の効果が現れない。4値以上の等化目標を持つPRチャネルを対象とする。
【0065】
図6の等化目標レベル4に相当するxは、波形歪の影響で振幅が低下している。このため基準レベル4に関係する等化誤差のパワーは大きくなってしまう。従ってタップ係数制御器はノイズが多い状況と同様の係数制御を行うため本来の等化性能を引き出すことができない可能性がある。そこで、最大等化目標レベルあるいは最小等化目標レベルのタイミング以外でタップ係数制御を行うようにすることで、検出性能を上げることも可能である。
【0066】
図5は本発明の情報検出装置を光ディスク装置30に応用した場合の構成例を示している。なお、図5において、図1と構成が同一である部分には、同一の符号を付し、その説明も省略する。光ディスク媒体10は図示していないスピンドルモータによって回転制御されている。ヘッド(光ピックアップ、読み取りヘッド、又は、光ヘッド)11からは光ディスク媒体面に向けて集光ビームが照射される。この反射光の一部がフォトディテクタを経由してトラッキング信号およびフォーカシング信号として検出され、これも図示していないアクチュエータサーボによって集光ビームがディスクの案内溝上を正確に追従するように制御される。一方残りの反射光はディスク上の微小マークを読み取り、波形等化器(RFアンプ)12にて増幅されて再生信号として取り出すことができる。この再生信号はこれも図示していないアナログフィルタを通過後、A/D変換器1によって6から8bit幅のデジタル情報にチャネルクロック同期でサンプリングされる。デジタル化再生信号はハイパスフィルタ2によってオフセットを補正後、FIRフィルタに代表される等化器3に入力される。なお、A/D変換はHPF2の後段で行っても構わない。また、A/D変換器1のサンプリングクロックは、図示していないアナログPLLによって生成してもよいし、固定クロックでサンプリング後に、これも図示していないデジタルPLLによって補間位相を制御する構成でも構わない。等化器3のタップ係数は、係数制御部6によって適応的に修正され、例えばPR(1,3,3,1)チャネルに等化される(±4、±3、0の5種類の等化目標レベル)。この時、等化誤差生成器7により等化誤差EQerrが生成され、係数制御部6はこのEQerrと等化器入力の相関ができるだけ少なくなるようにタップ係数を修正してゆく。等化器のタップ数は多いほど自由度が高いが、回路量の兼ね合いによりDVD程度の密度では9タップ以下で十分である。再生チャネルはPR(1,2,2,1)やPR(3,4,4,3)でも構わない。またDVDに限らず、BDに使われている最小ラン長d=1のRLL符号に対しても同様に対応できる。等化器3出力EQoutはリミッタ回路4に入力されて変換がなされる。リミッタ出力をLMout、波形歪みがプラス方向とすると、例えば式8に示す変換を行う。最尤検出器5の出力である2値データは、復調回路13により復調されたのち、誤り訂正処理14によって誤り訂正が行われ、システムコントローラ15にて映像情報等の情報として処理される。図5では、光ディスクに言及して構成を説明したが、HDD装置や磁気テープの再生処理、あるいは一般的なベースバンド伝送系の受信装置としても利用可能である。
【0067】
次に実施例の動作について説明する。図7には、図6の波形を振幅3で上限リミットした場合のリミッタ出力を示している。また理想パス1と理想パス2は図9の状態遷移における正解パスと誤りパスである。それぞれのパスのパスメトリック値を算出する。表3は、先の表1と同じ入力をxとしてxが3以上の場合にはx=3にリミットするリミット処理を行ったものである。その結果、理想パス1のパスメトリック値の方が小さくなり正しいパスを選択することができることが分かる。これは、最大基準レベルに対応する歪による影響が緩和されたことによるものである。ただし、この場合はリミッタがなくても図11の状態遷移でビタビ検出するだけで同様の効果が得られる。
【0068】
【表3】

【0069】
図9には、図8の波形を振幅3で上限リミットした場合のリミッタ出力を示している。また理想パス1と理想パス2は図9の状態遷移における正解パスと誤りパスである。それぞれのパスのパスメトリック値を算出する。表4は、先の表1と同じ入力をxとしてxが3以上の場合にはx=3にリミットするリミット処理を行ったものである。その結果、理想パス2のパスメトリック値の方が小さくなり正しいパスを選択することができることが分かる。これは、リミッタによって歪み部分の影響が小さくなったためである。
【0070】
【表4】

【0071】
次に、歪状態判別部8による切替信号SELの動作を図10に示すタイミングチャートを用いて説明する。ディスク上のある特定領域で記録状態が悪く、記録マーク先頭振幅で歪が発生している状況を考える。例えば、等化目標レベル4に相当する等化誤差のタイミングは、ビタビ検出器出力を3T分連続して“1”が続くタイミングであるのでビタビ検出器出力をデコードすることでenableとして生成することができる。このenableが正となる期間でEQerrをサンプルして平均化すると、等化目標レベル4に相当する等化器出力が4から極性付きでどの程度ずれているかがわかる。平均化手段(平均化フィルタ83)の出力をV4とすると、V4は歪がない場合にはほぼ零となり、振幅低下を伴う場合にはマイナスの値を持つことになる。これを例えばヒステリシスコンパレータによって閾値判別することで切替信号SELが生成できる。
【0072】
以上説明した実施例によれば、DVDやBDなどの光ディスクを含む記録媒体に対して、マーク先頭部の歪みを含む波形歪みがある場合でも簡易な構成で良好に再生ができる。これは、リミッタによる歪み抑圧と、ビタビ検出時のブランチメトリック生成の変更による。
【0073】
また、歪みあり領域と歪みなし領域が混在していてもどちらも良好に再生することができる。これは、歪量状態判別部により歪あり領域を特定してリミッタおよびビタビチャネルの切替を行うことができるからである。
【0074】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、広く情報記録媒体の再生に利用できるが、光ディスク再生装置、特にCD、DVDに好適である。
【符号の説明】
【0076】
1:A/D変換器
2:ハイパスフィルタ
3:等化器
4:リミッタ回路
5:ビタビ検出器
6:係数制御部(タップ係数コントローラ)
7:等化誤差生成器
8:歪状態判定部
9:セレクタ
10:光ディスク媒体
11:ヘッド(光ピックアップ、読み取りヘッド、又は、光ヘッド)
12:波形等化器
13:データ復調回路
14:ECCデコーダ
15:システムコントローラ
20:情報検出装置
30:光ディスク装置
51:ブランチメトリック生成回路
52:ACS回路
53:パスメモリ回路
54:ブランチメトリックセレクタ
71、81:1T遅延器(フリップフロップ)
72:フィルタ(演算器)
73:FIFO
74:減算器
82:デコーダ
83:平均化フィルタ
84:ヒステリシスコンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体の再生信号から記録データを識別する情報検出装置であって、
前記再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPR(Pertial Response)チャネルに等化する等化器と、
前記等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成して前記等化器出力から記録データを判別するビタビ検出器であって、前記等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限して前記ブランチメトリックを生成して判別するモードを有するビタビ検出器と、
を備えることを特徴とする情報検出装置。
【請求項2】
前記ビタビ検出器を制限して判別する場合に、前記等化器出力の振幅値を一定のレベルに制限して前記ビタビ検出器に入力させるリミッタ回路をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の情報検出装置。
【請求項3】
前記再生信号の歪み量を判定し、歪み量が多い場合に、前記ビタビ検出器を前記制限して判別するモードに設定する歪状態判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載の情報検出装置。
【請求項4】
前記等化器の出力と前記リミッタ回路の出力とを受けてどちらかを選択して前記ビタビ検出器に入力させるセレクタと、
前記再生信号の歪み量を判定し、歪み量が多い場合に、前記ビタビ検出器を前記制限して判別するモードに設定すると共に、前記セレクタにリミッタ回路の出力を選択させる歪状態判定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の情報検出装置。
【請求項5】
前記歪状態判定部は、特定パタンに対する等化誤差を平均化し、前記平均化出力とあらかじめ指定した閾値との比較によって前記歪み量を判定することを特徴とする請求項3又は4記載の情報検出装置。
【請求項6】
前記ビタビ検出器は、前記等化目標レベルの最大値を制限する場合に前記等化目標レベルの最大値から2番目の値を前記基準レベルの最大値として前記ブランチメトリックを生成して判別し、前記等化目標レベルの最小値を制限する場合に前記等化目標レベルの最小値から2番目の値を前記基準レベルの最小値として前記ブランチメトリックを生成して判別することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の情報検出装置。
【請求項7】
前記ビタビ検出器は、前記等化目標レベルの最大値を制限する場合に前記等化目標レベルの最大値から2番目の値を前記基準レベルの最大値として前記ブランチメトリックを生成して判別し、前記等化目標レベルの最小値を制限する場合に前記等化目標レベルの最小値から2番目の値を前記基準レベルの最小値として前記ブランチメトリックを生成して判別し、
前記リミッタ回路は、前記等化目標レベルの最大値を制限する場合に前記等化目標レベルの最大値から2番目の値を上限値として振幅幅を制限し、前記等化目標レベルの最小値を制限する場合に前記等化目標レベルの最小値から2番目の値を下限値として振幅幅を制限することを特徴とする請求項2乃至5いずれか1項記載の情報検出装置。
【請求項8】
前記等化器に前記PRチャネルに適応等化を行わせる前記等化器の係数制御部をさらに設け、波形歪が大きいときは、等化目標レベルの最大値と最小値のうち、少なくとも一方を制限して、最大値又は最小値以外の基準レベルに対応する等化誤差を用いて適応等化を行うことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の情報検出装置。
【請求項9】
光ディスク媒体に記録された情報を読み出す光ディスク装置において、
読み取りヘッドから得られた再生信号を4値以上の等化目標レベルを持つPRチャネルに等化する等化器と、
前記等化器出力の振幅値を一定のレベルに制限するリミッタ回路と、
前記等化目標レベルのうち、前記リミッタ回路により振幅幅が制限される等化目標レベルを除く等化目標レベルを基準レベルとしてブランチメトリックを生成して前記リミッタ回路出力から記録データを判別するビタビ検出器と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
前記再生信号の歪み量を判定する歪状態判定部をさらに備え、
前記歪状態判定部が、歪が少ないと判定した場合に、前記リミッタ回路は振幅幅の制限を行なわない等化器の出力信号を前記ビタビ検出器へ出力し、かつ、前記ビタビ検出器は前記等化目標レベルの制限を行わないことを特徴とする請求項9記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記再生信号の歪み量を判定する歪状態判定部と、
前記歪状態判定部が歪み量を多いと判定した場合に、前記リミッタ回路により振幅が制限された等化器出力信号を選択し、歪み量が少ないと判定した場合に、前記リミッタ回路により制限されていない等化器出力信号を選択して前記ビタビ検出器の入力信号として与えるセレクタと、
をさらに備え、
前記ビタビ検出器は、前記リミッタ回路により制限されていない前記等化器出力信号を入力信号とする場合に前記等化目標レベルの制限を行わないことを特徴とする請求項9記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−103153(P2011−103153A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257339(P2009−257339)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】