説明

情報漏洩防止保守システム、方法、端末

【課題】 情報通信機器の保守時の情報漏洩を防止して、運送中の機器の盗難や修理中の部品の盗難などの問題にも対応することが可能な情報漏洩防止保守システムの実現を課題とする。
【解決手段】 保守ツール50は、保守対象のネットワーク機器から記憶されている設定情報を吸い上げる吸上げ機能と、吸い上げた設定情報を客先に搬送した保守用ネットワーク機器に投入する設定情報投入機能と、保守対象ネットワーク機器を保守用ネットワーク機器と入れ替えて正常に動作した場合に保守対象ネットワーク機器の設定情報を消去する設定情報消去機能と、セキュリティー面での安全に配慮されたネットワーク10を介して通信する通信機能とを備え、保守対象ネットワーク機器を保守用ネットワーク機器と入れ替えて正常に動作した時点で設定情報を含めた保守作業報告をリペア部品修理サーバ60に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信機器の保守時における情報の漏洩を防ぐ情報漏洩防止保守システム、情報漏洩防止保守方法、保守用携帯通信端末および保守用携帯通信端末用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク機器の保守作業は修理に重点が置かれ、回収する機器に対するセキリティー対策がなされないまま顧客先から修理場所まで運ばれていた。
その結果、車上荒らしなどで機器の盗難や修理中の部品の盗難があった場合、データが読み取られてしまうという虞があった。
また、ネットワーク機器の修理診断は、顧客が使用している設定環境を作りあげ検査をすることが難しいため独自設定を行いポートに負荷試験を行う手法が一般的であり、顧客環境での良否判定精度は十分でない。
【0003】
情報通信機器の情報漏洩防止に関連する特許文献や情報通信機器の保守に関する特許文献としては下記に示したように数多く発表されている(特許文献1〜16)。
このうち、特許文献1に示されたものは、クライアント(第二装置)は、記録媒体に情報資産(顧客情報や販売情報)を記録する装置であり、盗難などにあうと会社の信用にかかわる。そこで、一定日時に達した場合など特定の条件を満たした場合に自立的にLANやインターネットを経由しサーバ(第一装置)へ情報資産を送り、記録された情報資産を消去し情報漏洩対策に努めるというものである。
【0004】
また、特許文献2に示されたものは、デジタルカメラのレンタルを効率的に行うため、顧客から要望があった場合、デジタルカメラに記憶されている撮影条件設定情報などのデジタル画像データ以外の種々の設定データや個人情報を吸い上げて別のデジタルカメラ等に移すようにするというものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−350670号公報
【特許文献2】特開2004−21360号公報
【特許文献3】特開2007−235853号公報
【特許文献4】特表2007−519353号公報
【特許文献5】特開2005−94203号公報
【特許文献6】特開2004−10334号公報
【特許文献7】特開2004−13594号公報
【特許文献8】特開2004−272338号公報
【特許文献9】特開2003−58352号公報
【特許文献10】特開2003−3128476号公報
【特許文献11】特開2002−137874号公報
【特許文献12】特表2002−167248号公報
【特許文献13】特開2002−197170号公報
【特許文献14】特開2000−392154号公報
【特許文献15】特開平08−32609号公報
【特許文献16】特開平03−34036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、情報通信機器のセキュリティーに関する、あるいは情報通信機器の保守に関する先行技術は数多く報告されている。しかし、情報通信機器の保守時の機器の輸送時の盗難の危険も考慮された情報漏洩防止の例は見当たらない。
本発明は、情報通信機器の保守時の情報漏洩を防止して、運送中の機器の盗難や修理中の部品の盗難などの問題にも対応することが可能な情報漏洩防止保守システム、情報漏洩防止保守方法の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る情報漏洩防止保守システムは、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する第1設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段とを備えた携帯通信端末と、前記ネットワークを介して前記携帯通信端末から受信した設定情報を記憶する記憶手段と、前記ネットワークを介して前記記憶手段に記憶した設定情報を入手して、前記設定情報を、設定情報が消去された前記保守対象の情報通信機器に投入する第2設定情報投入手段とを備えて成ることを特徴としている。
【0008】
携帯通信端末では、設定情報吸上げ手段が保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げ、第1設定情報投入手段が前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入し、通信手段がネットワークを介して前記設定情報を送信する。記憶手段は前記ネットワークを介して前記携帯通信端末から受信した設定情報を記憶する。第2設定情報投入手段は、前記ネットワークを介して前記記憶手段に記憶した設定情報を入手して、前記設定情報を、設定情報が消去された前記保守対象の情報通信機器に投入する。
【0009】
また本発明に係る情報漏洩防止保守方法は、保守対象の情報通信機器の障害情報を受け付ける障害情報受付工程と、受け付けた前記障害情報から前記情報通信機器の交換保守に用いる保守用情報通信機器を決定する保守部品決定工程と、前記保守対象の情報通信機器から設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ工程と、吸い上げた前記設定情報を、客先に搬送された保守用情報通信機器に投入する設定情報投入工程と、前記保守対象の情報通信機器を、前記設定情報を投入した保守用情報通信機器に置き換えて、あるいは、前記保守用情報通信機器の設定条件を変更したものと置き換えて復旧させる交換復旧工程と、前記保守対象の情報通信機器の設定情報を消去する設定条件消去工程とを備えたことを特徴としている。
【0010】
障害情報受付工程では保守対象の情報通信機器の障害情報を受け付け、保守部品決定工程では受け付けた前記障害情報から前記情報通信機器の交換保守に用いる保守用情報通信機器を決定し、設定情報吸上げ工程では吸い上げた前記設定情報を、客先に搬送された保守用情報通信機器に投入し、交換復旧工程では前記保守対象の情報通信機器を、前記設定情報を投入した保守用情報通信機器に置き換えて、あるいは、前記保守用情報通信機器の設定条件を変更したものと置き換えて復旧させ、設定条件消去工程では前記保守対象の情報通信機器の設定情報を消去する。
【0011】
また本発明に係る携帯通信端末は、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する第1設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段とを備えて成ることを特徴としている。
【0012】
設定情報吸上げ手段は、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げ、第1設定情報投入手段は前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入し、通信手段はネットワークを介して前記設定情報を送信する。
【0013】
また本発明に係るプログラムは、コンピュータを、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段として機能させることを特徴としている。
【0014】
コンピュータは、プログラムを実行することにより、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段として機能する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設定情報を記憶した機器を運送することがないため、たとえ運送中に機器の盗難などの問題が生じたとしても設定情報が漏洩する虞がなく、セキュリティーを保つことが可能な情報漏洩防止保守システム、情報漏洩防止保守方法、および前記システムで用いられる保守用携帯通信端末とこの保守用携帯通信端末で用いられるプログラムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る情報漏洩防止保守システムの全体構成図である。
図1において、ネットワーク10はセキュリティー面に十分配慮されているプライベートネットワークである。
このネットワーク10には、コールセンター端末20、パーツセンターサーバ30、担当拠点サーバ40、保守ツール(保守用携帯通信端末)50、リペア部品修理サーバ(修理部門サーバ)60およびリペア診断器70が接続され、さらに、コールセンター端末20には顧客データベース(以下顧客DBで表す)が接続されている。
【0017】
顧客DBには、例えば、「お客様名」、「お客様住所」、「お客様電話番号」、「お客様システム名」、「保守開始日」、「お客様法人コード」、「担当拠点」、「過去の保守実績」などが記載されている。お客様システム名は、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークシステム等のシステム名である。
コールセンター端末20、パーツセンターサーバ30、担当拠点サーバ40、リペア部品修理サーバ60およびリペア診断機70はコンピュータによって構成されている。
【0018】
また、保守ツール50は作業指示メール(後述するように、少なくともお客様名、保守部品名及び障害情報を有するメール)等を表示するための表示手段(図示せず)やネットワーク10を介して設定情報を送信したり、作業指示メールの受信等の情報通信を行う通信手段を備えており、例えば、通信機能を有する携帯型コンピュータによって構成することができる。
【0019】
図2は、これらの各端末やサーバの機能を示す機能ブロック図である。
図2(a)に、その機能ブロックを示すコールセンター端末20は、問い合わせ窓口(コールセンターと呼ぶ)が所有するパソコンで、コールセンター内に設置されていて、ネットワーク10へアクセスする機能を備えている。
コールセンター端末20の入力データ処理部21は、ブラウザ上で入力された「会社名」をキーワードとし、顧客DBから”お客様情報”を読み出す機能を有している。
【0020】
電文作成処理部22は、”お客様情報”に含まれる(1)お客様名と、(2)保守部品名と、(3)障害情報とを有する図3のデータ入力画面をメール形式に自動変換する機能を有している。保守部品名は、保守すべきネットワークシステムの構成要素(部品)であるネットワーク機器と同型の(換言すれば代替え可能な)ネットワーク機器を表している。電文送信処理部23は電文作成処理部22が作成したメールをパーツセンターサーバ30へ送信する。
【0021】
図2(b)にその機能ブロックを示すパーツセンターサーバ30は、地方拠点の近くにある部品倉庫(パーツセンターと呼ぶ)の所有するサーバであってネットワーク10へアクセスする機能を備えている。
パーツセンターサーバ30のデータ受信処理部31は、コールセンターパソコン20が送った事項を受信する。この受信内容を元に修理で必要になる保守部品や機材の判断が行われる。そうして部品送付処理部32は、判断結果を担当拠点サーバ40へ、図4に示す作業連絡メールで伝える。図4の作業連絡メールには、お客様名(ABC株式会社)、保守部品名(保守部品Y)、障害内容を表す障害情報(拠点10と拠点20間不通)等が含まれている。
【0022】
図2(c)にその機能ブロックを示す担当拠点サーバ40は、障害コールを受けたお客様の地区を担当している地方拠点の所有するサーバであってネットワーク10へアクセスする機能を有する。
担当拠点サーバ40の受信処理部41は、パーツセンター サーバ30からのメールを受信しディスプレー上に表示させる。作業指示処理部42は、送られたメールを元に図5に示す作業指示メールを作成して、保守ツール50へ送信する。図5の作業指示メールには、お客様の情報として、お客様名、契約識別コード(ID)、電話番号が含まれ、又、他の情報として、受付日、指定した訪問日時、保守部品名、障害情報、作業終了の報告方法が含まれている。
図2(d)にその機能ブロックを示す保守ツール50は、障害があった地区を担当する保守員が常備する携帯端末及び接続ケーブルやアダプタで構成される専用ツールであってネットワーク10に接続する機能を有する。
【0023】
保守ツール50は、基地局を介してネットワークに接続され通信を行う無線通信部51と、文字、記号や画像を表示する表示部52と、テンキー、スクロールキー、決定キーおよびファンクションキーを用いて端末自身を操作する操作部53と、送話手段と受話手段の操作およびこれらを経由する音声信号を変復調処理する音声信号処理部54と、撮像と撮像映像の記憶を行うカメラ部57と、電話帳情報、送受信メール情報、発着呼情報や映像、コンテンツ、アプリケーションプログラムおよび操作上の諸設定を記憶するする記憶部56と、これらの各機能の制御を行う制御部55からなる通常の携帯通信端末の基本機能に加えて、無線LANまたはケーブル接続によるLAN接続部5Aを有し、このLAN接続部5Aを用いて保守対象機器から設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ機能と、吸い上げた設定情報を保守部品Yに投入する設定情報投入機能および無線通信部51を介して客先へ保守を行うために持っていく部品および作業指示を担当拠点サーバ40から作業指示メールにて受信する作業指示受信処理部58と、故障ネットワーク機器の設定情報を含む保守作業報告をリペア部品修理サーバ60に送信する作業報告処理部59とを備えている。
【0024】
動作の詳細は後述するが、保守ツール50は、保守対象のネットワーク機器から記憶されている設定情報を吸い上げる吸上げ機能と、吸い上げた設定情報を客先に搬送した保守用ネットワーク機器に投入する設定情報投入機能と、保守対象ネットワーク機器を保守用ネットワーク機器と入れ替えて正常に動作した場合に保守対象ネットワーク機器の設定情報を消去する設定情報消去機能と、セキュリティー面での安全に配慮されたネットワーク10を介して通信する通信機能とを備え、保守対象ネットワーク機器を保守用ネットワーク機器と入れ替えて正常に動作した時点で設定情報を含めた保守作業報告をリペア部品修理サーバ60に送信する。
【0025】
無線通信部51及びLAN接続部5Aは、ネットワーク10を介して設定情報を送信したり、作業指示メールの受信等の情報通信を行う通信手段を構成している。表示部52は、作業指示メール等を表示するための表示手段を構成している。また、制御部55は、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段、及び、前記吸い上げた設定情報を保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器(保守部品Y)に投入する第1設定情報投入手段を構成している。
【0026】
図2(e)にその機能ブロックを示すリペア部品修理サーバ60は、修理部門(リペアと呼ぶ)に配設され、修理部門が所有するサーバでネットワーク10へアクセスする機能を有する。
リペア部品修理サーバ60の保守部品処理部61は、保守ツール50から送られた作業報告のうち、(1)氏名、(2)社員番号、(3)送付日、(4)拠点電話番号、(5)保守対象のネットワーク機器名、(6)障害タイプを部品修理WEB経由で図7に示すよう名形式で診断DB内に記録する。
【0027】
さらに、設定送信部62は、受付した(7)保守対象のネットワーク機器の「お客様設定情報」(保守対象のネットワーク機器の設定情報が含まれる)をリペア診断機70へ送信する。
診断DBは設定情報を記憶する記憶手段を構成している。リペア部品修理サーバ60は、診断DBを管理している。
【0028】
図2(f)にその機能ブロックを示すリペア診断機70は、修理部門(リペアと呼ぶ)が所有するサーバでネットワーク10へアクセスする機能を有する。
リペア診断機70の設定受信部71は、リペア部品修理サーバ60から「お客様設定情報」を受信して、回収した「保守対象のネットワーク機器」内に落とし込む。タイプ読取部72が診断DBにアクセスし障害タイプを認識する。
【0029】
修理検査部73は、設定情報を読み擬似障害を発生させる設定を自動的設定し「保守対象のネットワーク機器」を追加試験する。修理検査部73は修理検査手段を構成している。
リペア診断機70は、ネットワーク10を介して診断DBに記憶した設定情報を入手して、前記設定情報を、設定情報が消去された保守対象の情報通信機器に投入する第2設定情報投入手段を構成している。
図6は、本実施形態での障害対応の保守動作の実施経緯を示す説明図である。図7に診断DBリストの一例を示す。また、図8および図9に本実施の形態での保守動作のフローチャートを示す。
以下、図1ないし図9に沿って本実施形態の保守動作を詳細に説明する。
【0030】
顧客は、所持している情報通信機器に不具合が発生した場合、インターネットなどのITシステムを介して情報通信機器メンテナンス会社のコールセンター端末20へ「会社名」、「障害状況」などを連絡する(ステップA101)。
お客様から連絡があると障害情報を受け付け(ステップB101:障害情報受付工程)、コールセンター端末20の入力データ処理部21は「会社名」をキーワードとし、顧客DBから”お客様情報”を抽出しかつての障害情報などを表示して閲覧する。
【0031】
コールセンターの担当者は、顧客DBを閲覧しつつ、今回の障害状況をお客様からヒアリングすることで障害が起こっているネットワーク機器を特定し(ステップA102)、そのネットワーク機器(保守すべきネットワーク機器)と同一の型番を持ち交換修理をするための機器(代替え機器)である「保守部品Y」を決定する(ステップB102:保守部品決定工程)。
【0032】
そして、お客様の「会社名」、「保守部品Y」、「障害情報」を顧客DB上に加筆登録する。このときのデータ入力画面は例えば図3に示すようである。コールセンター端末20の電文作成処理部22は入力されたお客様の名前、保守部品名、障害情報(ここでは「会社名」、「保守部品Y」、「障害情報」)を含む情報をメール形式に自動変換し、電文送信処理部23は変換データをパーツセンターサーバ30へ障害通報メールとして送付する(ステップB103)。
【0033】
パーツセンターサーバ30のデータ受信処理部31が、コールセンターパソコン20から前記障害通報メールを受信すると(ステップC101)、パーツセンターの担当者は、前記障害情報通報メールに記載されている保守部品名を参照して「保守部品Y」を用意する(ステップC102)。そして部品送付処理部32が 、担当拠点サーバ40へ「保守部品Y」と「保守ツール50」とを持ってお客様の障害対応に向かうようように、図4に示すような作業連絡メールを担当拠点サーバ40に送付する(ステップC103)。
【0034】
担当拠点サーバ40の受信処理部41は、パーツセンターサーバ30から前記作業連絡メールを受けると(ステップD101)、「お客様名」、保守部品名である「保守部品Y」、「障害情報」を確認する。担当拠点の管理者は、保守部品Yに関するスキルがある作業員を洗い出し、前記お客様先へ障害復旧作業に行く日時と作業指示を決定し、該当作業員の保守ツール50に対して図5に示すような作業指示メールを送付する(ステップD102)。
【0035】
保守ツール50の受信処理部51が、通信手段によって前記作業指示メールを受信すると、受信した前記作業指示メールを図5に示すように表示部52に表示する。これにより、表示部52には、少なくともお客様名、前記保守用情報通信機器名及び障害情報が表示される。該当作業員は、図6の201に示すように、作業指示メールに記載された訪問日時に保守部品Yと保守ツール50を携えて、担当拠点(図6の203)からお客様先(図6の204)へ障害対応のために向かう(ステップD103:保守部品搬送工程)。
【0036】
客先へ到着後、保守ツール50を保守すべきネットワーク機器とLAN接続し、前記ネットワーク機器の設定情報を保守ツール50で吸い上げ(ステップD104:設定情報吸上げ工程)、吸い上げた設定情報を、持参した保守部品Yに流し込む(ステップD105:設定情報投入工程)。これにより、保守部品Yは、障害が生じた保守すべきネットワーク機器と同一の設定となり、前記ネットワーク機器と同一の機能を発揮することになる。ここで、保守ツール50のLAN接続部5AによるLAN接続は、無線LANであってもコネクタ、ケーブルを介した有線接続であっても良い。
【0037】
続いて、保守すべきネットワーク機器と保守部品Yとを交換し(ステップD106)、交換しても障害が復旧しない場合は「保守部品Y」の設定を変更し障害復旧する(ステップD107:交換復旧工程)。
最後に、前記保守対象のネットワーク機器の設定データを消去し(ステップD108:設定条件消去工程)、「保守対象のネットワーク機器」と保守ツール50とを回収する。
お客様は復旧状況を確認し、その旨を作業員に伝える(ステップA103)。
【0038】
復旧が完了すると、保守ツール50の作業報告処理部52から、作業指示メール内に記載された部品修理WEB(World Wide Web)にアクセス(ステップD109)して、作業員は(1)自己の氏名、(2)社員番号、(3)送付日、(4)拠点電話番号、(5)保守対象のネットワーク機器の名称/プロトコル/備考および(5)の状況を踏まえて(6)障害タイプ(例えば、プロトコルがIP(Internet Protocol)でVLAN(Virtual Local Area Network)を使った設定ならばタイプは「A」、プロトコルがIPでVoiceを使った設定ならばタイプは「B」)を登録し、その上に(7)お客様設定情報を加えて復旧作業完了報告を作成して送信し(ステップD110:設定条件送信工程)、さらに図6の202に示すように「保守対象のネットワーク機器」を担当拠点(図6の203)を介して修理部門(リペア)へ運送する(ステップD111)。
【0039】
リペアに設けられたリペア部品修理サーバ60内の保守部品処理部61は、部品修理WEB経由で登録された復旧作業完了情報を診断DB内に記録する(ステップE101)。診断DBは、例えば、図7に示したように形成され、復旧作業完了報告の設定情報を除いた部分が記録されてリストに表示される。
【0040】
リペアの担当者は、保守対象のネットワーク機器を受け取ると、診断機70とLAN接続する(ステップE102)。そうして、お客様で見られた障害が再現するか検査し、現象が再現したら障害タイプを判定して良否判定診断を完了させ販売メーカに故障修理依頼を出す(ステップE103:障害タイプ判定工程)。
しかしながら、お客様で見られた障害が再現しない場合、設定送信部62が診断DBにアクセスし登録されたネットワーク機器の設定情報を抜き取り、ネットワーク10経由でリペア診断機70へ自動的に送信する(ステップE104)。
【0041】
リペア診断機70内の設定受信部71は、「お客様設定情報」を受信すると、保守対象のネットワーク機器内に設定情報を落とし込む(ステップE105)。その後、タイプ読取部72が診断DBにアクセスし障害タイプを認識する。修理検査部73は障害タイプを元に診断機70にお客様で見られた障害を発生させうる試験(例えば、VLANならPing試験、ブリッジの設定であるならスパニングツリー試験)を設定し再検査を行う(ステップE106)。
【0042】
検査にて現象が再現した場合は、前記ネットワーク機器の修理を実施し、再現しなかった場合は前記ネットワーク機器を販売メーカに送り故障修理依頼をかける(ステップE107)。そして、販売メーカから前記ネットワーク機器の修理品が返却後、リペアの担当者は、前記ネットワーク機器の動作を確認する(ステップE108)。
【0043】
以上述べたように、本実施の形態に係る情報漏洩防止保守システムによれば、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する第1設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段とを備えた携帯通信端末と、前記ネットワークを介して前記携帯通信端末から受信した設定情報を記憶する記憶手段と、前記ネットワークを介して前記記憶手段に記憶した設定情報を入手して前記設定情報を、設定情報が消去された前記保守対象の情報通信機器に投入する第2設定情報投入手段とを備えている。
【0044】
ここで、前記記憶手段は、修理部門に配設されたリペア部品修理サーバが管理している。
また、前記第2設定情報投入手段を有するリペア診断機を備え、前記リペア診断機は、更に、前記設定情報を読んで疑似障害を発生させる設定を前記保守対象の情報通信機器に行って試験を行う修理検査手段を備えている。
また、前記携帯通信端末は、お客様名、前記保守用情報通信機器名、障害情報を受信する受信手段と、前記お客様名、前記保守用情報通信機器名、障害情報を表示する表示手段とを備えて成るように構成している。
【0045】
また、本実施の形態による情報漏洩防止保守方法によれば、保守対象の情報通信機器の障害情報を受け付ける障害情報受付工程と、受け付けた前記障害情報から前記情報通信機器の交換保守に用いる保守用情報通信機器を決定する保守部品決定工程と、前記保守対象の情報通信機器から設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ工程と、吸い上げた前記設定情報を、客先に搬送された保守用情報通信機器に投入する設定情報投入工程と、前記保守対象の情報通信機器を、前記設定情報を投入した保守用情報通信機器に置き換えて、あるいは、前記保守用情報通信機器の設定条件を変更したものと置き換えて復旧させる交換復旧工程と、前記保守対象の情報通信機器の設定情報を消去する設定条件消去工程とを備えたことを特徴としている。
【0046】
ここで、吸い上げた前記設定情報を作業報告の一環として診断装置に送信する設定条件送信工程と、前記保守対象の情報通信機器を前記診断装置と接続し前記設定情報を投入して障害状況を再現して障害タイプを判定する障害タイプ判定工程とをさらに備えている。
また、本実施の形態によれば、コンピュータを、保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する第1設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段として機能させることを特徴とするプログラムが提供される。
【0047】
また、本実施の形態によれば、保守用の携帯通信端末は、セキュリティー面での安全に配慮されたネットワークと、保守対象の情報通信機器から記憶されている設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ機能と、吸い上げた前記設定情報を客先に搬送した保守用情報通信機器に投入する設定情報投入機能と、前記保守対象の情報通信機器を前記保守用情報通信機器と入れ替えて正常に動作した場合に前記保守対象の情報通信機器の前記設定情報を消去する設定情報消去機能と、前記ネットワークを介して通信する通信機能とを備えている。
【0048】
部品修理部門に設けられた修理部門サーバは、携帯通信端末から前記ネットワークを介して送られる保守作業報告から修理情報を構成して記憶する診断用データベースを備えている。前記保守用の携帯通信端末は前記保守対象の情報通信機器を前記保守用情報通信機器と入れ替えて正常に動作した時点で前記設定情報を含めた保守作業報告を修理部門サーバに送信するようにしている。
【0049】
また、顧客からの障害情報を受信し前記保守用情報通信機器を選定するコールセンターに設けられたコールセンター端末と、このコールセンター端末からの指示によって前記保守用情報通信機器を調達するパーツセンターに設けられたパーツセンターサーバと、各地域を担当し保守要員が配置され前記パーツセンターから前記保守用情報通信機器の提供を受けるとともに前記パーツセンターサーバを介して保守作業を指示される地域拠点に設けられた担当拠点サーバと、前記修理部門サーバから転送される前記保守作業報告を基に障害状況を再現し障害タイプを診断する診断装置とをさらに備え、これらの端末、サーバおよび機器は、前記携帯端末および前記修理部門サーバとともに前記ネットワークを介して相互に通信可能に設けられている。
【0050】
また、本実施の形態に係る保守用携帯通信端末は、基地局を介してネットワークに接続され通信を行う無線通信機能と、文字、記号や画像を表示する表示機能と、テンキー、スクロールキー、決定キーおよびファンクションキーを用いて端末自身を操作する操作機能と、送話手段と受話手段の操作およびこれらを経由する音声信号を変復調処理する音声信号処理機能と、撮像と撮像映像の記憶を行うカメラ機能と、電話帳情報、送受信メール情報、発着呼情報や映像、コンテンツ、アプリケーションプログラムおよび操作上の諸設定を記憶するする記憶機能と、これらの各機能の制御を行う制御機能からなる通常の携帯通信端末の基本機能に加えて、無線LANまたはケーブル接続によるLAN接続機能を有し、このLAN接続機能を用いて保守対象機器から設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ機能と、吸い上げた前記設定情報を前記保守部品に投入する設定情報投入機能および前記無線通信機能を介して保守作業指示を受信する作業指示受信機能と保守作業報告を送信する作業報告機能とを備えている。
【0051】
したがって、設定情報を記憶した機器を運送することがないため、たとえ運送中に機器の盗難などの問題が生じたとしても設定情報が漏洩する虞がなく、セキュリティーを保つことが可能な情報漏洩防止保守システム、情報漏洩防止保守方法、および前記システムで用いられる保守用携帯通信端末とこの保守用携帯通信端末で用いられるプログラムを実現することが可能になる。
【0052】
また、重要な情報を記憶した機器を運搬するような場合にも、本体から予め情報を吸上げて運送し、別途安全に輸送した情報を輸送先で投入するようにして応用することができる。また、客先での障害状況を再現して障害診断が精度よく行われるので、保守会社でのネットワーク機器の修理精度が向上し、販売店への修理依頼が減ることで費用の削減ができるという利点がある。
【0053】
尚、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな変形が可能である。
例えば、以上の説明では、保守ツール50による「保守対象のネットワーク機器」からの設定情報の読み出しを、LAN接続によって行うことにしているが、ネットワーク機器に保守ツール50からの特別な要請によって設定情報を暗号化してネットワーク経由で保守ツール50に送信し、送信とともに消去する機能を予め組み込むことで、ネットワーク通信によって吸い上げることも可能である。
これにより、保守ツール50に余分な機能やコネクタ、ケーブルなどの装置を設ける必要がなくなるという利点がある。
【0054】
また、上記実施の形態によれば、保守対象の機器が情報通信機器の一種であるネットワーク機器の場合、通信速度、通信形態、パスワード等の多様な設定情報やデータが含まれるため、これらの情報を保護しながら保守を行うのに極めて効果的であるが、ネットワークに接続せずに使用するような情報通信機器にも同様に適用可能である。また、何らかの設定情報を有するような電子機器でも前記同様にして適用することが可能である。
また、保守対象の情報通信機器としては設定情報等を保有していれば上記実施の形態と同様に適用できるため、保守対象の情報通信機器には当該情報通信機器の一部の構成要素(部品)も含まれる。この場合、保守用情報通信機器としては、保守対象の情報通信機器に対応する保守用情報通信機の一部の構成要素となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
貴重な情報を記憶した機器を運搬するような場合に適用することができ、情報通信機器を運ぶ運送業界などで用いることができる。また 危機管理に敏感なネットワークユーザーにも活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の情報漏洩防止保守システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す実施形態のシステムを構成する各部の機能ブロック図である。
【図3】図1に示すシステム上のコールセンター端末への入力画面の一例を示す説明図である。
【図4】図1に示すシステム上のパーツセンターサーバから担当拠点サーバへ送られる作業連絡メールの一例を示す説明図である。
【図5】図1に示すシステム上の担当拠点サーバから保守ツールに送られる作業指示メールの一例を示す説明図である。
【図6】本発明の障害対応の保守動作の実施経緯を示す説明図である。
【図7】診断DBの表示リストを示す図表である。
【図8】図1に示すシステムの動作を示すフローチャートである。
【図9】図1に示すシステムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10 ネットワーク
20 コールセンター端末
30 パーツセンターサーバ
40 担当拠点サーバ
50 保守ツール(保守用携帯通信端末)
60 リペア部品修理サーバ(修理部門サーバ)
70 リペア診断機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する第1設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段とを備えた携帯通信端末と、
前記ネットワークを介して前記携帯通信端末から受信した設定情報を記憶する記憶手段と、
前記ネットワークを介して前記記憶手段に記憶した設定情報を入手して、前記設定情報を、設定情報が消去された前記保守対象の情報通信機器に投入する第2設定情報投入手段とを備えて成ることを特徴とする情報漏洩防止保守システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、修理部門に配設されたリペア部品修理サーバが管理して成ることを特徴とする請求項1記載の情報漏洩防止保守システム。
【請求項3】
前記第2設定情報投入手段を有するリペア診断機を備え、
前記リペア診断機は、更に、前記設定情報を読んで疑似障害を発生させる設定を前記保守対象の情報通信機器に行って試験を行う修理検査手段を備えて成ることを特徴とする請求項1又は2記載の情報漏洩防止保守システム。
【請求項4】
前記携帯通信端末は、前記通信手段によって受信したお客様名、前記保守用情報通信機器名及び障害情報を表示する表示手段を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の情報漏洩防止保安システム。
【請求項5】
保守対象の情報通信機器の障害情報を受け付ける障害情報受付工程と、
受け付けた前記障害情報から前記情報通信機器の交換保守に用いる保守用情報通信機器を決定する保守部品決定工程と、
前記保守対象の情報通信機器から設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ工程と、
吸い上げた前記設定情報を、客先に搬送された保守用情報通信機器に投入する設定情報投入工程と、
前記保守対象の情報通信機器を、前記設定情報を投入した保守用情報通信機器に置き換えて、あるいは、前記保守用情報通信機器の設定条件を変更したものと置き換えて復旧させる交換復旧工程と、
前記保守対象の情報通信機器の設定情報を消去する設定条件消去工程とを備えたことを特徴とする情報漏洩防止保守方法。
【請求項6】
吸い上げた前記設定情報を作業報告の一環として診断装置に送信する設定条件送信工程と、
前記保守対象の情報通信機器を前記診断装置と接続し前記設定情報を投入して障害状況を再現して障害タイプを判定する障害タイプ判定工程とをさらに備えたことを特徴とする請求項5記載の情報漏洩防止保守方法。
【請求項7】
保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段とを備えて成ることを特徴とする携帯通信端末。
【請求項8】
前記通信手段によって受信したお客様名、前記保守用情報通信機器名及び障害情報を表示する表示手段を備えて成ることを特徴とする請求項7記載の携帯通信端末。
【請求項9】
コンピュータを、
保守対象の情報通信機器に記憶されている該情報通信機器の設定情報を吸い上げる設定情報吸上げ手段と、前記吸い上げた設定情報を前記保守対象の情報通信機器と代替え可能な保守用情報通信機器に投入する設定情報投入手段と、ネットワークを介して前記設定情報を送信する通信手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−265715(P2009−265715A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110913(P2008−110913)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】