説明

情報発信杭

【課題】センサにとって良好な設置を確保できる情報発信杭を提供する。
【解決手段】地盤に一部または全部が埋め込まれる杭であって、アクティブ型ICタグ40、およびこれと一体もしくは別体のセンサ48が設けられ、アクティブ型ICタグ40がセンサ48の検知情報をタグ情報と共に発信する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に埋め込まれる杭に収納されるセンサの検知情報をタグ情報と共に発信する情報発信杭、ならびに崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を早期に検出する情報発信杭を用いた地盤変動の検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を発信できる杭として、例えば杭自体の位置情報を発信する杭が知られている(特許文献1参照)。この位置情報発信杭はGPSアンテナを備えているため、例えば管理センタにおいてこの杭の位置情報を把握することができる。したがって、地滑りや地震などが発生すると杭の位置が移動するので、地滑りや地震を迅速に監視することができる。
【特許文献1】特開平11−83487
【0003】
ここで、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動のうち、特に大きな災害を引き起こす異常出水等による土石流は、梅雨期や台風時の豪雨などにより水を含んだ大量の土砂が一瞬の間に谷沿いを流下する現象である。一般的に土石流は1時間に20mm以上の強い雨のときや、降り始めてから100mm以上の大雨のときに発生のおそれがあり、要注意とされている。そして発生する土石流のスピードは一般的に秒速5〜20m、時速20〜70kmであり、このスピードが大きな災害につながる要因ともいわれている。
【0004】
土石流の発生などの地盤変動による災害を少なくするために、土石流等の発生や規模を早期に把握する必要があり、土石流の検知装置が各種提案されている。従来の土石流検知装置は、接触型と非接触型とに大別される。
接触型は、流路断面内にワイヤを水平に張り、土石流が発生するとワイヤが断線してこれを検知するもので、このワイヤを上下(鉛直方向に)に複数本張ることにより土石流の水位についてもおおまかに計測できるとされている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この接触型はワイヤを使用したものであり、一度断線すると張り替えない限り再度の検知ができないため、連続的な使用ができないという問題点を有している。
一方、非接触型としては、上記ワイヤの代りに光線を使用する光センサ、土石流の発生音をマイクで検知する音響センサ、土石流の流下時に発生する地震動を捉える振動センサ、或いは土石流に向けて超音波を発生すると共にその反射波を受信して、その往復時間から水位を計測する超音波水位計、等を使用したものがある(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、上記非接触型は、連続的な使用はできるものの、気象条件等により誤作動が生じやすく、信頼性に問題があったり、さらにメンテナンス等に困難さがあり費用的にも問題がある。
【特許文献2】特開2002−352356号公報
【特許文献3】特開平11−83487号公報
【0005】
このような非センサの用い方の例として、例えば磁気センサや加速度センサなどのセンサを搭載したアクティブ型ICタグによるものが知られている。センサとアクティブ型ICタグの組み合わせにより、センサの検知情報をアクティブ型ICタグが発信できるため、センサの検知情報が管理センタなどの処理装置で管理され、広範囲の計測や監視が可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、センサを搭載したアクティブ型ICタグには、適切な取り付け場所が確保され
なければならない。特に、広範囲にわたる検知を行う場合、センサを多数設置する必要があり、風雨にさらされ、一旦配備されると何年にもわたって攻撃の可能性にさらされるため、これらに耐え得る取り付け場所が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、センサにとって良好な設置を確保できる情報発信杭を提供することを目的とする。また、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を検知する技術において、連続的な使用が可能で、かつ誤作動が少なくメンテナンスや経済性に優れている地盤変動検知技術を、センサが設けられた情報発信杭を用いて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる情報発信杭の第1構成は、地盤に一部または全部が埋め込まれる杭であって、ICタグ、およびこれと一体もしくは別体のセンサが設けられ、前記アクティブ型ICタグが前記センサの検知情報をタグ情報と共に発信する。
【0009】
本構成によれば、ICタグおよびセンサが杭に設けられているので、センサにとって良好な設置が確保される。また、センサの検知情報をタグ情報と共に発信するので、これら情報を処理する処理装置では、検知情報をタグ情報に組み合わせて管理することができる。さらに、杭を埋め込むことのできる地盤さえあれば情報発信杭を設置できるので、所定のエリアにセンサを配置するのは容易であり、複数の本情報発信杭を適切に配置することで、検知情報のエリア分布などを求めることができる。
【0010】
ここで、「ICタグ」は、タグ情報を記録し、無線でこのタグ情報を外部に送信できるものである。また、ICタグは、好ましくはアクティブ型である。なお、本明細書中に記載する「アクティブ型ICタグ」は、能動型、すなわち電池を備えることでICタグ自体が電波を発信するものを意味する。これに対して、「パッシブ型ICタグ」は、受動型、すなわち例えばリーダなどから電波を受信して、このように供給された電力を用いて動作するものを意味する。
「センサ」は、好ましくは温度センサ、衝撃センサおよびガスセンサを含む。
「検知情報」は好ましくはセンサの計測値であるが、計測値を加工したデータであってもよい。
「タグ情報」は、好ましくは、ICタグを収納する杭の設置位置情報および杭の設置場所に関連する管理情報である。ただし、タグ情報はアクティブ型ICタグの識別子であってもよく、この場合、この識別子に対応づけて設置位置情報や管理情報がデータベースなどに記憶される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、前記ICタグを収納する収納部を有する杭本体と、この杭本体の頭部に被せられて前記収納部を閉塞するキャップとを備える。この構成によれば、収納部にICタグが収納されて、キャップがこの収納部を閉塞しているので、ICタグが風雨などにさらされて損傷してしまうのを防止できる。さらに、杭本体の頭部にキャップが被せられているので、キャップを外すことにより、杭本体の収納部のICタグをメンテナンスしやすい。つまり、運用中は収納部が閉塞されることで収納されるICタグの損傷を防止できる上に、運用中以外にはキャップを外すことで閉塞された収納部を開放することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記杭本体が棒状であり、前記センサが温湿度センサで、この温湿度センサが、前記棒状の杭本体の一部分の温度および湿度のいずれか一方または両方を検知する第1センシング部を有する。
ここで、「温湿度センサ」には、温度センサ、湿度センサ、およびこれら両方の機能を
備えたセンサが含まれる。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記一部分は前記杭本体の上端部分または下端部分であり、前記温湿度センサは、さらに、前記第1センシング部が検知する前記一部分とは反対側に位置する、前記杭本体の下端部分または上端部分の温度および湿度のいずれか一方または両方を検知する第2センシング部を有する。
この構成によれば、杭本体が棒状であるため、鉛直方向を長手方向にして設置すると、その上端部分と下端部分にセンシング部が配置されて、異なる高さの温度を検知することができる。したがって杭の一部のみを埋設すれば、大気中と地中の2箇所の温度を検知でき、道路の凍結状況などを調査するのに適する。なお、センシング部は2つ以上であれば、いくつでもよい。例えば、さらに、杭の上端部分と下端部分の間に第3センシング部を配置して3つのセンシング部にしてもよい。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記情報発信杭は道路の脇に埋設される距離標であり、前記タグ情報は、前記情報発信杭の設置位置情報および前記情報発信杭が埋設されている道路の管理情報のいずれか一方または両方を含む。この構成によれば、情報発信杭が距離標であるため、道路の所定箇所に設置されている。したがって、これら距離標が埋設された道路の所定箇所それぞれの大気中温度および地中温度を検知できるので、道路の凍結状況を取得するのに、このようなセンサ配置が極めて適している。また、タグ情報は設置位置情報および道路の管理情報のいずれか一方または両方を含み、このタグ情報はセンサの検知情報と共に発信されるので、検知情報が得られた場所またはその道路に関連する情報などが分かり、管理しやすい。なお、杭の上端部分と下端部分との間に第3センシング部をさらに配置して、杭の半分ほどを地盤に埋め込んだ場合、大気中と地中の温度に加えて路面付近の温度を検知できるようにすることができる。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記センサが衝撃センサであり、位置変動の発生の可能性がある地面に埋設されている。ここで、「衝撃センサ」は振動や衝撃を検知できるセンサであり、振動センサ、加速度センサおよび変位センサを含む。また、「位置変動」は、地面が動くことを意味し、特に、斜面において発生する、地滑り、土砂崩れおよび落石などが含まれ、さらに河川における土石流も含まれる。この構成によれば、衝撃センサが搭載された情報発信杭が地面に埋設されているので、位置変動が発生すると衝撃センサの検知情報に変化が現れる。これより、地滑りや土砂崩れなどの発生を検知することができる。また、杭は土砂崩れなどが発生しそうな斜面であっても容易に埋設できるため、センサの取付け場所を容易に確保できる。さらに、広範囲に柵などを設けてワイヤを張り巡らせる上述の接触型に比べて、位置変動が発生しそうな場所にのみ杭を埋設しておけばよいので、杭を多数並べて設置する必要はなく、必要な箇所にのみ設置すればよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、前記ICタグは防水加工されてなる。ここで、「防水加工」としては、防水袋による包装や、テフロン(登録商標)製シートもしくはジェルシートからなる防水膜でコーティングさせること、ならびに化学反応処理によるゴムコーティングなどが含まれる。この構成によれば、ICタグは防水加工されているので、液体などによってICタグが故障してしまうのを防止することができる。特に、アクティブ型ICタグは電池を内蔵しているため、アクティブ型ICタグが杭本体に収納されている場合には、この電池交換用に杭本体を覆っている防護用キャップの取り外しが必要とされる。したがって、杭本体と防護用キャップを強固に接着してしまわないのが通常であるため、キャップと杭本体の間には液体などが混入する恐れがあるが、この防水加工によってICタグの故障を防止することができる。さらに、ICタグの表面は、温度変化つまり朝晩などの温度差によって結露が発生しやすい状況下にあるが、防水膜にテフロン(登録商標)製シートやジェルシートなどの通気性のある素材をコーティングに使用することで、ICタグ表面に結露が発生するのを防止できる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記キャップの内面と前記杭本体の間に衝撃緩衝材が介装されている。この構成によれば、杭を地盤に打ち込む際の衝撃をこの衝撃緩衝材が吸収することができるので、杭に収納されたICタグが衝撃を受けにくくすることができる。また、衝撃緩衝材はキャップの内側に嵌め込んで固定させるのが容易である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、前記ICタグにさらに報知手段が設けられ、前記センサの検知情報が所定のしきい値を超える変位を検出すると、この報知手段が警報を出力する。この構成によれば、センサの検知に反応して報知手段が警報を出力するので、センサを搭載した情報発信杭に動物などが接触して衝撃を与えた場合に報知手段によって撃退することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、前記キャップと前記杭本体の一方または両方が蓄光材で形成されている。この構成によれば、夜間にキャップおよび/または杭本体が光ることで、杭を目立たせて視認させることができる。したがって、杭を適切に配置することで、人を誘導させるための避難道などとして杭を機能させることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、前記杭が棒状であり、長手方向に沿った軸心を有し、
複数の分割体が前記軸心方向に連結されてなる。この構成によれば、複数の分割体が連結されて杭が構成されているため、連結される分割体の個数を変えれば、埋設状況に応じて杭の長さを調節することができる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記センサは、前記複数の分割体のそれぞれに設けられた衝撃センサからなり、隣接する分割体のうち一方が前記軸心と直交する方向に所定の外力を受けたとき、この一方の分割体が他方の分割体と分離するように設定されており、前記衝撃センサの検知情報を対応するタグ情報と共に発信する。この構成によれば、隣接する分割体のうち一方が軸心と直交する方向に所定の外力を受けたとき、この一方の分割体が他方の分割体と分離するように設定されているため、杭が横方向から外力を受けると杭が分割体の一連結部において折れることになる。このように杭が折れると、杭の一部分が移動して他部分はそのままの位置に残るので、移動した一つ以上の分割体に設けられた衝撃センサは位置変動を検知するのに対して、移動しない一つ以上の分割体に設けられた衝撃センサは位置変動を検知しない。これより、全衝撃センサの検知情報から分割体同士が分離した箇所を特定でき、杭が受けた外力の鉛直方向の範囲を推定できる。すなわち、土砂崩れは表層の土砂が崩れ落ちるものであるため、杭が折れた際には、杭が折れた箇所よりも上方で土砂崩れのような表層崩壊が発生しており、下方の地盤は変動がないことが推定される。したがって、表層崩壊の規模すなわち土砂崩れの規模の推定に役立つ。
【0022】
本発明にかかる情報発信杭の第2構成は、一部が土中に埋設される杭本体部と、該杭本体部の前記一部と反対側である頭部に着脱可能に取付けられる蓋体と、該蓋体の内部側に設置された振動検知センサ(振動センサ)付の無線ICタグとを備えている。この情報発信杭は前記のように杭本体部の一部が土中に埋設されていることにより、一部が土中に埋設されて使用される。
【0023】
ここで、本発明の情報発信杭においては、前記無線ICタグは、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報が記録されている記録部と、無線通信により情報の送信を行う通信部と、前記振動検知センサの計測情報に基づいて前記通信部を介して情報送信を行う制御部とを有することを特徴にしている。
【0024】
前記の制御部の制御の下で行われる前記通信部を介しての情報送信は、前記振動検知セ
ンサの計測値に応じて情報送信(例えば、各無線ICタグに固有の識別情報である、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報の送信)を行うものとすることができる。
【0025】
前記振動検知センサの計測情報に基づいて情報送信することにより、例えば、前記振動検知センサの計測値に応じて情報送信することにより、通常発生する振動と災害による振動とを予め区分け、後述する本発明の地盤変動検知システムの検知精度を高めることができる。
例えば、通常発生する振動と災害による振動とを区分けする設定に関する情報は後述する管理サーバの判定情報記録手段に記録されており、前記情報発信杭が設置される場所に応じて、当該情報が、管理サーバから各情報発信杭の無線ICタグに送信される。各情報発信杭に配備されている無線ICタグは、当該無線ICタグの記憶部に格納されている前記の通常発生する振動と災害による振動とを区分けする情報を参照し、前記振動検知センサの計測値に応じて情報送信することにより、災害による振動発生の場合にのみ情報送信するようにして、後述する本発明の地盤変動検知システムの検知精度を高めることができる。
【0026】
このように一部を土中に埋設する情報発信杭に、振動検知センサ付の無線ICタグを設置したので、土石流等の地盤変動があったときは振動検知センサが感知し、無線ICタグが当該無線ICタグに固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報)を送信する。そこで、従来の接触型のような断線による張り替えを不要とし、連続的な使用を可能にすることができる。また、杭本体の一部を土中に埋設するので、従来の非接触型と異なり、気象条件に影響されることなく、誤作動の防止を図ることができる。
【0027】
振動検知センサ付の無線ICタグは杭本体の頭部に着脱可能な蓋体の内部側(例えば、蓋体の内部側壁面や、蓋体の内部側壁面と杭本体部の頭部との間、あるいは、蓋体に覆われている杭本体部の頭部など)に設置されるので、過酷な自然条件下での使用が可能であり、かつメンテナンスも容易となる。また、蓋体は、杭本体部の頭部に着脱可能に取付けられるので、無線ICタグが電池使用のアクティブ型であっても電池交換が可能である。
【0028】
本発明にかかる地盤変動検知システムは、所定の観測地点に設置された少なくとも1以上の前述した本発明の第1構成および第2構成の両方またはいずれか一方の情報発信杭と、前記情報発信杭から送信される情報を取得する管理サーバとを備えている。
【0029】
この本発明の地盤変動検知システムにおいて、前記管理サーバは、取得した情報を計測値として記録する計測値情報記録手段と、前記情報発信杭にそれぞれ付与されている他の情報発信杭と識別するための識別情報と当該情報発信杭それぞれの位置情報とを関連付けて記録する杭情報記録手段と、地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段と、地盤変動を判定する判定手段とを有している。
【0030】
そして、前記の判定手段は、前記計測値情報記録手段に記録された計測値と、前記杭情報記録手段に記録された情報発信杭の識別情報及び位置情報と、前記判定情報記録手段に記録された判定基準情報とに基づいて地盤変動の判定を行うことを特徴とするものである。
【0031】
かかる本発明の地盤変動検知システムによれば、前述した本発明の第1構成および第2構成の両方またはいずれか一方の情報発信杭を所定の観測地点に少なくとも1以上(例えば、複数)設置しておくことにより、前記振動検知センサの計測値が所定の値を越えた情報発信杭からはそれぞれ当該情報発信杭を特定する情報(すなわち、当該情報発信杭に取
り付けられている無線ICタグに固有の識別情報である、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報)を管理サーバが取得する。
【0032】
管理サーバの杭情報記録手段には、前記情報発信杭にそれぞれ付与されている他の情報発信杭と識別するための識別情報と当該情報発信杭それぞれの位置情報とが関連付けられて記録されている。なお、ここで、例えば、前記情報発信杭にそれぞれ付与されている他の情報発信杭と識別するための識別情報は、各情報発信杭に設置されている無線ICタグに固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報)とすることができる。
【0033】
そこで、前記の判定手段が、前記計測値情報記録手段に記録された計測値(例えば、管理サーバが取得した前記のICタグ識別情報)と、前記杭情報記録手段に記録されている情報発信杭の識別情報(例えば、前記の情報発信杭にそれぞれ付与されている他の情報発信杭と識別するための識別情報であるところの、当該情報発信杭に設置されている無線ICタグのICタグ識別情報)及び位置情報とを利用して、前記振動センサの計測値が所定の値を越えた情報発信杭及び、その設置位置が特定される。
【0034】
これにより、例えば、土石流が発生するおそれのある箇所に、予想される土石流の流れを横切るように複数の本発明の情報発信杭を設置しておき、隣り合って設置されている情報発信杭から前記のICタグ識別情報を取得したならば、それらが設置されている幅方向の広がりで、土石流発生箇所や、その規模などを判定することが可能になる。
【0035】
以上に説明した本発明の地盤変動検知システムにおいて、前記情報発信杭から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記情報発信杭から送信される情報を受信する読取装置と、該読取装置で受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われる形態にすることができる。
【0036】
例えば、前述した本発明の情報発信杭を所定の観測地点に1以上設置し、振動検知センサが振動を感知したときに無線ICタグが情報(例えば、当該無線ICタグに固有の識別情報である、他の無線ICタグと識別するための識別情報)を送信し、これを読取装置(例えば、ICタグリーダ)が受信して、通信装置が無線通信網に送信する。そして無線通信網を経由して管理サーバが取得し、管理サーバは上記各記録手段に記録された各種情報と、送信された前記の情報とに基づいて地盤変動の判定を行うものである。
【0037】
すなわち、本発明では情報送信を無線で行うので、従来の接触型検知装置のようにワイヤの断線は発生せず、連続的に使用することが可能である。そして、前述した本発明の第1構成および第2構成の両方またはいずれか一方の情報発信杭を用いているので、誤作動を抑えた地盤変動の検出が可能となり、また、メンテナンスも容易な検出システムを提供することができる。
【0038】
なお、前記の情報発信杭から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記情報発信杭から送信される情報を受信し、中継して送信する少なくとも1以上の中継装置と、該中継装置から受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われる形態にすることもできる。
【0039】
すなわち情報発信杭から送信される情報を受信する読取装置に換えて、情報発信杭から発信される情報を中継する中継装置を、通信装置と情報発信杭の間に置いたものである。読取装置であるICタグリーダの設置が困難な観測地点の環境や、ICタグリーダの読取可能範囲が狭小である等の場合を考慮したものである。
【0040】
以上に説明した本発明の地盤変動検知システムにおいて、前記管理サーバは、前記情報発信杭が設置された前記観測地点の地形地質情報を記録した地形地質情報記録手段を更に有し、前記判定手段は地盤変動の判定において前記地形地質情報に基づく補正を行うものとすることができる。
【0041】
予め情報発信杭が設置された観測地点の地形地質情報を記録し、地盤変動の判定の補正に使用することで、より現場状況に合致した地盤変動の判定が可能となる。例えば、常時落石多発地帯であることや、地盤の弱い地帯で土石流が発生し易い傾斜の急な要注意地点であることなどの地形地質情報を記録しておけば、振動検知センサの振動検知により送信されてきたICタグの識別情報をより活用した判定ができる。
【0042】
本発明の高速道路における逆走を検知するシステムは、本発明にかかる情報発信杭を2つ以上備え、前記センサがいずれも衝撃センサであり、これら2つ以上の情報発信杭が高速道路の路面に走行方向に沿って間隔をあけて埋設されており、前記センサの検知情報に基づいて、高速道路における逆走を検出する。この構成によれば、高速道路の路面に走行方向に沿って埋設された2つ以上の情報発信杭が、路面を走行する自動車の衝撃を時差を有して(時間的にずれて)検知するので、衝撃を検知する順序が正常な順序と逆の場合には、この路面を自動車が逆走していることを検出できる。したがって、本発明の情報発信杭を埋設するのみの簡易な構成によって、高速道路の逆走を検出することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の情報発信杭によれば、センサにとって良好な設置が確保され、また、センサの検知情報をタグ情報に組み合わせて管理することができる。さらに、センサの検知情報のエリア分布などを求めることができる。また、本発明の地盤変動検知システムによれば、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を検知することができ、連続的な使用が可能で、かつ誤作動が少なくメンテナンスや経済性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に、本発明の第1実施形態にかかる情報発信杭を示す。この情報発信杭は、設置位置に関する情報である設置位置情報(例えば土地や道路などの位置(経度、緯度および標高による位置)、または敷地についての各種情報など)を表示する設置位置情報標示器である。
【0045】
図1に示す本実施形態にかかる情報発信杭1は、地盤にほぼ垂直に打ち込まれる杭であって、杭本体10を有し、その頭部12は防護用キャップ20によって覆われている。このように、情報発信杭1の頭部が防護用キャップ20で覆われているので、その内部の部品は雨や風などから効果的に防護され、高い耐環境性能が確保されている。杭本体10およびキャップ20は、例えばプラスティック製であるが、後述するアンテナを外部に露出するなどして、その通信機能に支障がなければ金属製などであってもよい。
【0046】
図2に示すように、情報発信杭1の棒状の杭本体10は、その中心軸Cに沿って上方が開口した収納空間(収納部)14を有する。この収納空間14は、上側に位置する横断面円形の上側凹所14aと、下側に位置して軸方向に延びたほぼ横断面矩形の下側凹所14bとからなる。収納空間14はアクティブ型ICタグ40を収納する収納部を形成するものであるが、この点については後述する。
【0047】
防護用キャップ20は、正方形筒状の側壁22および正方形平板状の頂壁24を有する。側壁22は、杭本体10の外面に設けられた段部に嵌め込まれる。頂壁24は、キャップ20の側壁22と杭本体10の頭部12との間で空間を形成する。また、防護用キャッ
プ20の頂壁24の上面には、測量点を示す標示が施されていてもよい。なお、この防護用キャップ20の下部を、内面にねじ部を持つ円筒体により形成して、杭本体10の頭部12の外周に設けたねじ部にねじ込むようにしてもよい。
【0048】
杭本体10と防護用キャップ20との間には、合成樹脂製弾性体やゴムなどからなるクッション材(衝撃緩衝材)30が介装されている。クッション材30は、防護用キャップの内側に嵌め込まれる基部30aと、収納部14の上側凹所14aに位置される円柱形状の突出部30bとからなる。クッション材30は弾性体であり、力が加えられていない自然状態ではクッション材30の基部30aの平面形状の寸法が防護用キャップ20の内側の平面形状の寸法よりもわずかに大きい。したがって、嵌合した状態ではクッション材30の基部30aがキャップ20の側壁22の内面に圧接する。また、クッション材30の突出部30bは、嵌合状態においてその下面が、収納部14に収納されているICタグ40の上面に接触しているか、またはわずかな間隙のみで隔てているかである。このように、クッション材30が杭本体10と防護用キャップ20との間の空間に介装されて杭1が地盤に打ち込まれるので、ハンマーなどで防護用キャップ20の頂壁24の上面を叩いても、クッション材30によって衝撃が吸収される。特に、収納部14に収納されるアクティブ型ICタグ40の上下振動は、クッション材の突出部30bによって抑制されるので、杭1が地盤に打ち込まれる際の衝撃によってアクティブ型ICタグ40が損傷してしまうのを防止することができる。
【0049】
さらに、図4に示すように、クッション材30の上面に溝34を設けて、防護用キャップ20(図2)の頂壁24の下面に設けられた係合突条(図示せず)に係合させることにより、クッション材30をキャップ20に対して位置決めしてもよい。
【0050】
図2の杭本体10の収納部14には、アクティブ型ICタグ40が収納される。なお、本実施形態では、ICタグ40はアクティブ型であるとして説明するが、パッシブ型であってもよい。アクティブ型ICタグ40は、矩形平板状で、内部にICチップ42および通信用アンテナ44からなる無線ICタグのほかに、電源装置46を内蔵する。ここで、図3に示すように、収納空間14の下側凹所14bの横断面形状は、長手方向の寸法が上側凹所14aの直径と同一であり、長手方向と直交する方向の寸法が、前記直径の数分の1程度と小さい。また、収納空間14の下側凹所14bの開口14bbは、このICタグ40の収納された状態での上面41よりもわずかに大きく構成されており、ICタグ40を収納できるようになっている。ただし、図2に示すように、下側凹所14bの深さは収納されたICタグ40の軸方向長さLLよりも短く構成されているため、ICタグ40は下側凹所14bに全て収まらず、その一部が上側凹所14aに突出するようになっている。このように、ICタグ40は断面がほぼ同一の大きさの下側凹所14bに一部収納されるために安定するとともに、一部は上側凹所14aに突出しているために取り出しやすくなっている。また、このように収納空間からなる収納部14にアクティブ型ICタグを収納するので、耐環境性能が高いのみならず、任意の場所に設置できるという利点がある。すなわち、建物などに取り付ける場合は、設置場所が限定されてしまうが、杭の場合は打ち込み可能な地盤さえあればよく、設置場所が確保しやすい。したがって、このように杭にアクティブ型ICタグを収納することで、ICタグにとって良好な設置を確保できる。また、杭は地盤に打ち込みさえすればよいので設置方法が極めて単純であることより、取付け方法の説明などがなくても、だれでも簡単に設置できる。したがって、センサによる検知を行いたい場所が新たに生じた場合でも、その場所に杭を打ち込むだけでよいので、現場で活用しやすいという利点がある。
【0051】
なお、アクティブ型ICタグ40が内蔵する電源装置46は、バッテリー、乾電池またはキャパシタであり、持続時間はアクティブ型ICタグ40の電波の発信方法によるが、例えば5年である。本情報発信杭1には、この電源装置のみならずソーラパネルを防護用
キャップ20に設けてもよい。この場合、電源装置の電力消費量が抑えられ、電源装置を交換するための保守作業を低減できる。
【0052】
この第1実施形態では、アクティブ型ICタグ40の内部に加速度センサ(衝撃センサ)48Aからなるセンサ48が設けられている。すなわち、アクティブ型ICタグ40と加速度センサ48Aが一体に構成されている。これにより、杭1に生じた振動や衝撃などを検知できる。また、加速度センサ48Aは好ましくは3軸加速度センサである。
【0053】
アクティブ型ICタグ40は、杭の設置位置情報、例えば緯度、経度および標高からなる情報のようなタグ情報を記憶している。加速度センサの検知情報と共にこの設置位置情報も発信されるので、これらの情報を受信して処理する管理センタなどの処理装置では、所定の変位が生じた杭の位置を正確に特定することができる。杭の設置位置情報の代わりに、タグ情報は、杭の識別番号であってもよい。この場合、識別番号に対応した設置位置情報が管理センタまたは他のデータベースに記憶されており、処理装置では、アクティブ型ICタグ40から発信された識別情報をキーとして、データベースから設置位置情報を取得する。
【0054】
なお、ICタグ40は、タグ情報として、さらに、電池の使用開始日付を記憶して、検知情報と共にこの電池の使用開始日付も発信してもよい。この情報を受信した処理装置では、電池の使用開始日付から電池の使用年月と寿命とを比較して、電池交換の時期であるか否かを判別することができる。この他にも、電池の電圧を定期的に検知して、ICタグ40がタグ情報としてこの電圧を発信してもよい。この情報を受信した処理装置では、この検知電圧と所定の電圧とを比較して、所定の電圧値よりも小さくなっているか否かを判別することができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態を示す。図5(a)は、ICタグの収納手段の一例であるゴムアダプタ70を示す。同図において、アダプタ70は例えば四角筒状で長尺のゴム製四角筒から適切な長さのアダプタ70を切り出し、図5(b)に示すように、その中空部72にアクティブ型ICタグ40を入れ、アダプタ70の両端面74a,74aをキャップ20の内側面に取り付ける。なお、アダプタ70の形状は、キャップの内側の形状に合致する任意の形状である。アダプタ70の軸方向長さLが、自由状態でキャップ20の相対向する一対の内側面間の寸法よりもわずかに大きく設定されている。このアダプタ70を長手方向に圧縮しながらキャップ20の前記内側面間に嵌め込むことにより、両内側面に圧接して係止される。こうしてアクティブ型ICタグ40が杭本体10とキャップ20の間に形成された空間に収納される。したがって、アダプタ70が固定されるため、中空部72に収納されるICタグは特に接着などされなくても、安定して保持される。さらに、このアダプタ70はキャップの内側の寸法に合わせて長尺物を切断するだけで製作されるため、製造が容易である。
【0056】
なお、アダプタ70とキャップ20の頂壁24および杭本体10との間には隙間S1,S1が設けられているが、いずれか一方または両方の隙間S1,S1をなくしてもよい。両方の隙間S1,S1をなくすると、アダプタ70が、図2のクッション材30と同様のクッション作用も発揮する。アダプタ70と頂壁24との隙間をなくす場合、アダプタ70の上面に図4と同様な溝34を設けて、キャップ20の頂壁の下面に設けた係合突条に係号させることにより、アダプタ70の位置決めを行うこともできる。また、アクティブ型ICタグの代わりに、超小型IC無線ICチップを含むICタグをアダプタ70の中空部72に収納してもよい。
【0057】
本発明の第3実施形態では、図5のアダプタ70の代わりに、プラスティック製のICタグの収納ケースを防護用キャップ20の内側に嵌め込んでいる。図6(a)に示すよう
に、この場合、杭1の防護用キャップ20の側壁22の4つの内側面に、それぞれ突起部26が設けられている。これに対して、図6(b)に示すように収納ケース70は、収納部76および4つの切欠部78を有する。収納部76はアクティブ型ICタグを収納するものであり、ここにアクティブ型ICタグ40を収納して防護用キャップ20に収納ケース70を嵌め込む。この際、収納ケースの4つの切欠部78は、防護用キャップ20の4つの突出部26にそれぞれ係合される。この状態で、図6(c)に示すように、杭本体10にキャップ20を被せる。このように、キャップ20に嵌め込まれる収納ケース70にアクティブ型ICタグを収納することで、アクティブ型ICタグ40を杭1に容易に固定できる。なお、ICタグ40に電池が内蔵されていない場合、二点鎖線で示すように、電池46のみを杭本体10の収納部14に収納するものとしてもよい。また、本実施形態でも、アクティブ型ICタグ40の代わりに、超小型IC無線ICチップを含むICタグを収納ケース70が収納してもよい。
【0058】
このように防護用キャップ20にICタグを収納する場合、情報発信杭1の設置の際には、まず、杭本体10が例えばハンマーによって地盤に打ち込まれ、次に、ICタグを収納している防護用キャップ20が杭本体10の頭部12に嵌め込まれる。これにより、ICタグは地盤に打ち込む際の衝撃を受けることがない。また、防護用キャップ20に嵌め込まれた収納ケース70にICタグ40が収納されているので、運用中に、ICタグのチェックや交換などを行う場合、杭本体1aを地盤から抜く必要はなく、防護用キャップ20を取り外すだけでよい。
【0059】
図7の第4実施形態では、アクティブ型ICタグ40は、ゴム製の防水袋90で包装されて杭本体10の収納部14に収納されている。防水袋は、アクティブ型ICタグ40が収納空間14に収納される際には、受け入れ口が両面テープで閉じられる。代わりに、開閉自在な密閉チャックによって閉じられてもよい。本実施形態では、杭1に収納されるICタグ40がアクティブ型であり、例えば約5年ごとの電池交換が必要である。このため、運用中においても防護用キャップ20の取り外しが必要とされる。したがって、別体である杭本体10とキャップ20との間には隙間が生じてしまい、この隙間から液体や砂などの混入物が杭1の中空部14に流れ込み、収納されているアクティブ型ICタグ40を損傷する恐れがあるが、アクティブ型ICタグ40が防水袋に収納されていれば、これらの混入物からアクティブ型ICタグ40を防護することができる。また、本実施形態のようにセンサを搭載しているものに限定されない。
【0060】
このような防水袋による防水加工の他に、テフロン(登録商標)製シートやジェルシートなどの防水膜でアクティブ型ICタグ40をコーティングして、密着させてもよい。このように、ICタグ40の外側を通気性のある素材でコーティングすることで、ICタグ40の周りの結露の発生を防止することができる。また、例えばシリコン樹脂の接着剤を塗布して、ゴムコーティングを施してもよい。
【0061】
次に、前記第1ないし第4実施形態に係る情報発信杭1の適用例について説明する。
本実施形態にかかる情報発信杭1が収納するアクティブ型ICタグ40は加速度センサを搭載しており、図8に示すように、これら情報発信杭1が土砂崩れや落石、すなわち斜面変動の恐れがある斜面または斜面下方に設置されている。特に、情報発信杭1は、例えば、石や土砂が落ちてくることが予想される箇所に過不足無く設置されている。このように、杭1は必要と考えられる箇所にのみ設置されればよいので、土砂崩れや落石に備えて柵を設けたりするよりも、対策が簡単である。また、地盤に打ち込まれて固定された杭に加速度センサが収納されているので、土砂崩れや落石が発生していない平常時において誤検出をしてしまう可能性は極めて低い。
【0062】
アクティブ型ICタグの受信機(リーダ)45は、自動車Aのような車両に取り付けら
れている。これより、この自動車Aが道路R1を走行して、この受信機45からの所定距離内に情報発信杭1が出現すると、受信機はアクティブ型ICタグが発信する情報、つまり加速度センサの検知情報およびタグ情報を受信する。
【0063】
道路R1には、例えばゲートウェイ装置52が設けられ、このゲートウェイ装置52に情報コンセント54、光ファイバ網56、ならびに管理センタ60の処理装置62およびデータベース64が接続されている。ゲートウェイ装置52は、受信機45から無線で受信したデータを光ファイバネットワーク用のデータに変換するものである。情報コンセント54は、ゲートウェイ装置52に有線で接続されており、道路R1に敷設された光ファイバ網56との接続口である。光ファイバ網56は、管理センタ60の処理装置62などを接続するものであり、処理装置62にはデータ記憶用にデータベース64が設けられている。
【0064】
この構成により、各情報発信杭1が発信する情報は、管理センタの処理装置62に入力されて、管理センタ60の処理装置62が全ての杭1における加速度センサの検知情報すなわち杭1が振動や衝撃を検知したこと、およびその大きさなどの観測データを監視する。具体的には、土砂や石が杭に当たった際には、加速度センサの検知情報に変位が現れるので、その変位が所定のしきい値を超えた場合に、土砂崩れや落石などの異常事態が発生したと判断される。また、単一の加速度センサの検知情報に変位が生じている場合や、ある範囲内の複数の加速度センサの検知情報に変位が生じている場合などに応じて、土砂崩れなどが発生している範囲が特定される。このように、処理装置62では、土砂崩れの大きさおよび範囲を特定することができるので、この処理情報に基づいて対策を講じることができる。このように、管理センタ60において監視を行うことで、初期段階において地滑りなどの異常発生を検知することができる。
【0065】
また、加速度センサの代わりに傾斜センサを搭載したICタグを収納する情報発信杭を崩壊の危険性が高い斜面または斜面下方の地盤に埋設して、地滑りなどの地山変動時に発生する斜面の変位を検知してもよい。
【0066】
さらに、データベース64には、処理装置62が土砂崩れなどの判別処理に必要な情報の他に、各杭1に関する情報が記憶されていてもよい。したがって、杭1が収納するアクティブ型ICタグは識別情報のみを記憶させ、このデータベース64が、各杭の識別情報とその設置位置情報を対応づけて記憶してもよい。
【0067】
この第1ないし第4実施形態にかかる情報発信杭を収納するアクティブ型ICタグは、電波の送信および受信の両方の機能を備えるものであってもよい。この場合、杭自体が情報を中継することができるので、上述の図7のゲートウェイ装置52、情報コンセント54および光ファイバ網56などが存在しなくても、杭が多数点在することで、ネットワークが構築される。すなわち、杭が発信する情報は、隣接する杭が受信して、その後その情報を発信するので、それぞれの杭の発信情報は確実に転送される。したがって、電力や通信網などがない地域でも土砂崩れ検知センサ網が構築される。
【0068】
例えば、斜面に沿って多数の杭1を上下方向に線上に並べて配置すれば、地滑りなどの異常発生のエリアが拡大していく状況を把握することができる。これは、地滑りが発生すると、斜面に沿って線上に並んだ多数の杭は、上方の杭から時差を有して下方向に順番に異常を検知するからである。したがって、異常を検知した杭をリアルタイムに特定することで、地滑りの進捗を把握することができる。なお、この異常は地滑りに限らず、山火事のようなものも該当する。すなわち、異常発生のエリアが徐々に広がっていくような場合には、多数の杭を適切に配置しておくことで、異常が進行する範囲を取得することができる。
【0069】
さらに、斜面に沿って上下方向に多数の杭を並べることに加えて、水平方向すなわち落石や地滑りなどの方向に対して垂直な方向に、いくつかの情報発信杭を並べてもよい。例えば、斜面の上方においては、水平方向に5つの杭を並べ、斜面の下方においては、水平方向に複数の杭を並べずに1つの杭のみとしてもよい。すなわち、地滑り検知に重要な場所付近においては、水平方向に多数の杭を並べることで、より正確に地滑りを検知することができる。具体的には、水平方向に5つ並べられた杭のうち、1つのみが異常を検知しても、地滑り以外の要因による異常の可能性が極めて高いので、この場合は地滑りが発生しているとは判断しない。一方、水平方向に5つ並べられた杭のうち2つの杭が異常を検知して、初めて地滑りが発生していると判断する。このように、水平方向に複数並べられた杭のうち、所定数以上の杭が異常を検知した場合のみ、地滑りが発生していると判断することで、誤検知を防止することができる。
【0070】
このように、杭は任意の場所に設置が可能であることを利用すれば、センサによる検知を重点的に行いたい場所には設置する杭の数を多くすることで、正確な検知を行うことができる。また、上述の接触型の場合、ワイヤが断線すると、全面復旧にはワイヤを再度張り巡らすために時間および相当の費用を要する。これに対して、本実施形態のように杭によって土石流を検知するのであれば、土石流によって杭が倒れたり壊れたりしても、復旧にはその倒れたり壊れたりした杭の位置に再度杭を埋設すればよいだけであるため、容易に全面復旧することができる。
【0071】
この第1ないし第4実施形態にかかる情報発信杭の別の適用例では、情報発信杭1が沿石やガードレールの車道側に配置されている。この情報発信杭1はその収納部に加速度センサを搭載したICタグを収納するので、車道を走行していた自動車が沿石やガードレールに衝突した場合、それを検知して発信できる。
【0072】
また、さらに別の適用例では、情報発信杭1が道路R1の下方に埋設されている。この場合、道路上を通過する自動車の積載量に応じた衝撃レベルの検知情報を発信できる。したがって、道路R1上を過積載の自動車が通過した場合に、これを検知することができる。
【0073】
さらに、別の適用例では、図9に示すように、高速道路R1の走行車線R10(R20)において、走行方向F10(F20)に沿って間隔をあけて情報発信杭100A,100Bが2つ以上配置されている。この情報発信杭100A,100Bは、そのキャップの上面が道路R1の路面とをほぼ面一になるようにして走行車線F10(F20)の幅方向のほぼ中央部に設置されている。ここで、正常な走行方向F10(F20)に自動車Aが走行する場合は、自動車Aは、第1の情報発信杭100A上を通過した後に第2の情報発信杭100B上を通過する。したがって、第1の情報発信杭100Aのアクティブ型ICタグの衝撃センサが衝撃を検知した後に第2の情報発信杭100Bのアクティブ型ICタグの衝撃センサが衝撃を検知する。これに対して、自動車が高速道路R1を逆走してしまうと、自動車Aは、第2の情報発信杭100B上を通過してから第1の情報発信杭100A上を通過するので、第2の情報発信杭100Bのアクティブ型ICタグの衝撃センサが衝撃を検知した後に、第1の情報発信杭100Aのアクティブ型ICタグの衝撃センサが衝撃を検知する。したがって、これら情報発信杭100A,100Bの検知情報および各タグ情報を管理センタ60(図8)において監視することにより、2つ以上の衝撃センサの検知順序が正常時と逆になった場合には、逆走する自動車が存在することを検出して、警報出力の指示を発することができる。警報は、例えば、逆走している自動車の運転者が必ず視認できる位置に、逆走していることを示す文字や図形を目立つように表示して行う。
【0074】
また、運用中はセンサの動作が定期的に設置場所においてチェックされ、その際に電池が交換されてもよい。
【0075】
次に、本発明の第5実施形態にかかる情報発信杭について説明する。
この第5実施形態にかかる情報発信杭は図1〜図3に示した情報発信杭と同一の構造で、第1実施形態との相違点は、図10の収納部(収納空間)14に収納されるアクティブ型ICタグ40には、センサ48として振動センサ(衝撃センサ)48Bが搭載されている点である。情報発信杭1の構成は、第1実施形態において説明したものと、収納されるアクティブ型ICタグ40を除いては同一である。
【0076】
図11に示すように、本実施形態にかかる情報発信杭1は、河川R2において流路方向Flに沿って、所定間隔以内で複数並んで敷設されている。なお、情報発信杭1は、流路方向Flに直交する方向に並んで敷設されていてもよい。情報発信杭1が収納するアクティブ型ICタグ40(図10)は、送信および受信の両方の機能を有しており、隣接する杭同士が離れすぎずに所定間隔以内で配置されていることで、各情報発信杭1のアクティブ型ICタグが中継局としての役割を果たしている。すなわち、特定の情報発信杭1のアクティブ型ICタグが発信した情報は、隣接する情報発信杭1が受信して、反対側に隣接する情報発信杭1に送信する。このようにして、例えば最も下流に位置する情報発信杭1から無線または有線で情報を受信することができる管理センタ60の処理装置62に情報が届く。このように、本実施形態では、各情報発信杭1がワイヤレスセンサネットワークの端末(ノード)を構成している。これより、管理センタ60の処理装置62において受信した情報を監視することができる。
【0077】
この第5実施形態では、杭1が振動センサ48Bを収納しているので、水流、土石または流木が杭に接触や衝突したことを検知できる。すなわち、管理センタ60の処理装置62が、受信した検知情報に基づいて、これらの現象が発生したことを判別する。このように、杭は河川でも容易に埋設できるため、河川におけるセンサの取付け場所を容易に確保できる。
【0078】
第6実施形態にかかる杭1では、図12に示すように杭1が収納するアクティブ型ICタグ40にさらにセンサアラーム47が設けられている。このセンサアラーム47は、振動センサ48Bとアラーム(報知手段)43が一体に構成されたものである。アラームは、振動センサが所定レベル以上の振動を検知した場合に、警報音、電磁波もしくは超音波、または回転灯もしくは点滅灯などの警報を出力する。
【0079】
ここで、山の中のような場所に情報発信杭1が埋設されて、その一部が地盤上に突出していると、猪や熊のような動物がこの測量杭に衝撃を与えることがある。これに対して、この杭1には、センサアラームが設けられたアクティブ型ICタグが収納されているので、猪や熊などの動物が杭に接触することで、2点鎖線で示すように杭1が揺れて振動センサ48Bが杭の変位を検知し、アラームが警報音、電磁波、または超音波などの警報を出力する。これより、動物を撃退することができ、杭1が動物によって倒されたりして損傷するのを防止することができる。なお、このように山の中に埋設される情報発信杭1は、例えば地籍調査などを行って埋設された測量杭である。
【0080】
この情報発信杭1は、ICタグ40を収納せずに、センサアラーム47のみを収納してもよい。この場合、情報発信杭1からセンサの検知情報は発信されず、警報のみが発生する。一方、情報発信杭1がICタグ、特にアクティブ型ICタグを収納していれば、振動センサの検知情報を用いて動態調査を行うこともできる。これは、多数埋設された杭それぞれの振動センサの検知情報を管理センタ60(図8)で一括に管理することで、動物の出現場所および時期などを取得することができるからである。
【0081】
次に、本発明の第7実施形態にかかる情報発信杭について説明する。
図13に示すように、本実施形態では、情報発信杭1の収納部14に収納されるアクティブ型ICタグ40に、別体で温度センサからなるセンサ48Cが設けられている。具体的には、アクティブ型ICタグ40のセンサポート49から延出したケーブル82A,82Bの先端に温度センサからなるセンシング部48CA,48CBが取り付けられている。すなわち、アクティブ型ICタグ40から離れた位置に温度センサが設けられている。本実施形態では、センサポート49に第1温度センシング部48CAおよび第2温度センシング部48CBという2つのセンシング部が接続されているが、センシング部はいくつあってもよい。なお、図13は、ケーブル82Aがセンサポート49から上方に延出している部分は現れていない。このようなセンサの構成に対して、情報発信杭1は、クッション材30および防護用キャップ20の中心にそれぞれ挿通孔36,28が形成されている。また、下側凹所14bから杭本体10の先端16にまでケーブル孔18が設けられている。これより、第1温度センシング部48CAは、そのケーブル82Aがクッション材30および防護用キャップ20の両方の挿通孔36,28を貫通して、キャップ20の頂壁24の上面つまり杭1の上端部分に設けられている。これに対し、第2温度センシング部48CBは、杭本体10のケーブル孔18を貫通して、杭本体10の先端16つまり杭1の下端部分に設けられている。なお、第1温度センシング部48CAは、防護用キャップ20の内側に設けられてもよい。
【0082】
第2温度センシング部48CBは、このように杭本体1の下端部分に設けられているので、杭1が地盤から引き抜かれると、第2温度センシング部48CBが地盤に引っかかり、そのケーブル82Bが断線してしまう。したがって、このような異常も検出することができる。
【0083】
本実施形態に係る情報発信杭1の適用例について説明する。
図14に示すように、情報発信杭1は、道路R1に設けられた距離標(キロポスト)であり、道路脇の定位置にそれぞれ配置されている。距離標であることより、杭1の一部は地下に埋設されているが、大部分は地上に存在している。また、道路の設置位置に関する情報である設置位置情報を標示するとともに、道路管理情報も標示することができる。具体的には、情報発信杭1が収納するアクティブ型ICタグには、緯度、経度などの設置位置情報を記憶するとともに、道路の管理者や道路の種類などの道路管理情報も記憶されている。なお、これら設置位置情報および道路管理情報をアクティブ型ICのタグ自体に記憶せずに、アクティブ型ICタグには識別番号のみを記憶して、この識別番号をキーとしてデータベースなどから設置位置情報および道路管理情報を取得するようにしてもよい。
【0084】
図13の情報発信杭1が収納するアクティブ型ICタグ40に接続された2つのセンシング部48CA,48CBは、第1センシング部48CAが杭1の上端部分に設けられているので、大気中の温度を検知し、第2センシング部48CBが杭の下端部分に設けられているので、地中の温度を検知する。このように地中の温度と大気中の温度を検知できるので、路面凍結の判断には極めて有効である。
【0085】
なお、本実施形態ではアクティブ型ICタグ40には2つのセンシング部が設けられているものとしたが、センシング部はいくつであってもよい。例えば、杭1が地盤に埋設された際にほぼ路面に位置する箇所(杭1がほぼ半分埋設されるのであれば、杭1の長手方向のほぼ中央部分)に第3センシング部(図示せず)を設けてもよい。この第3センシング部によって、第1および第2センシング部による大気中および地中の温度のみならず、路面温度も検知することができる。
【0086】
図14に戻って、このように、各杭1は、その杭1が埋設された箇所における地中およ
び大気中の2つの温度の検知情報をそれぞれ発信する。本実施形態では、例えば管理センタ60において所定区域の道路の凍結状況を監視している。管理センタ60の処理装置62は、複数の杭1についてのそれぞれ2種類の温度の検知情報と、各情報発信杭1の設置位置情報および道路管理情報とに基づいて、道路の凍結状況を判断でき、これより適切に対策を講じることができる。
【0087】
図14の情報発信杭の適用例の変形として、情報発信杭1は道路の脇に埋設されるものであるが、道路標としてではなく、道路の脇に植えられた樹木ごとに、それらの近傍に埋設されていてもよい。この場合、植えられた日付や剪定履歴、樹木の成長の度合いなどのその樹木についての管理情報をアクティブ型ICタグに記録するか、またはアクティブ型ICタグに記憶された識別番号をキーとしてデータベースに記憶する。これにより、これら樹木が脇に植えられた高速道路を、受信機を搭載した自動車が走るだけで、各樹木管理情報を取得することができる。ただし、この場合、アクティブ型ICタグにセンサは搭載されていなくてもよい。なお、情報発信杭1は1本の樹木ごとに対応させる必要はなく、例えば1つの情報発信杭1によって複数本の樹木を管理するものとしてもよい。この場合、アクティブ型ICタグは、管理対象である樹木の数も記憶する。
【0088】
次に、本発明の第8実施形態にかかる情報発信杭について説明する。
本実施形態では、図15に示す情報発信杭1の中空部に収納されるアクティブ型ICタグ40にガスセンサ48Dが搭載されている。アクティブ型ICタグ40が収納される情報発信杭1の構成は、搭載されるセンサを除いては、第1実施形態において説明したものと同一である。
【0089】
本実施形態にかかる情報発信杭1は、廃棄物最終処分場または埋め立て地に埋設されている。これらの場所では、廃棄物により汚水や泥水ならびにガスが発生し、これらを長年管理する必要があり、特に検知したガスの種類および量を検知する必要がある。ここで、情報発信杭1は、最終処分場の区域または埋め立て地区域を明確にするための境界を示すために設置されているものであってもよいが、ガスを検知しようとする任意の場所に設置されているものであってもよい。管理センタの処理装置は、ガスの検知情報に基づいて、検知したガスの量が基準値内であるか否かなどを判別する。アクティブ型ICタグ40は、ガスセンサが検知したガスの種類および量を記憶してもよいが、ICタグ40には識別番号のみを記憶させてデータベースからこれらガスの種類および量などを取得するようにしてもよい。埋立地などではセンサの取り付け場所を確保するのが困難であったが、このように杭に収納することで、所定の場所に確実に設置することができる。
【0090】
次に、本発明の第9実施形態にかかる情報発信杭について説明する。
図16に示すように、本実施形態にかかる杭1も、杭本体10を有し、その頭部12は防護用のキャップ20によって覆われている。本実施形態において杭本体10は、杭1の長手方向(軸Cの方向)に沿って、複数の分割体10a,10a,…,10a,10bが連結されて構成されている。全分割体は、先端に位置する分割体10bを除いて、同一の形状からなる。
【0091】
図17(a)に、これら同一形状の分割体10aの一つを示す。分割体10aは、円柱状の本体部10aaからなり、この本体部10aaは、その中心軸Cに沿って延びる上方が開口したほぼ横断面矩形の収納空間(収納部)14aを有する。図17(b)に示すように、この収納空間14aはアクティブ型ICタグ40が収納されるものであり、本実施形態ではアクティブ型ICタグ40に衝撃センサ48Aが設けられている。
【0092】
分割体10aは、また、本体部10aaの上方に円筒状の段部10acを有する。この段部10acの内径rは、本体部10aaの外径とほぼ同一である。本体部10aaの
側壁下部の外周面には複数のV溝が切られて第1の凹凸面10adが構成されているのに対して、本体部10aaの上部の段部10acの内周面にも同一寸法の複数のV溝が切られて第2の凹凸面10aeが構成されている。したがって、同一形状の2つの分割体10a,10aを連結する際には、これら2つの凹凸面10ad,10aeのV溝が噛み合うように、分割体10a,10aを嵌め合わせればよい。
【0093】
図16に戻って、このように分割体10a,10a同士の連結を繰り返して、複数の分割体10a,10a,…,10aを直列に連結することができる。杭本体10の先端の分割体10bは、その上部の段部10bcの内周面に複数のV溝が切られて第2の凹凸面10aeが構成されているが、本体部10baの先端は地面に打ち込まれることより、先細り形状で、凹凸面は構成されていない。このように、杭1の先端に位置する分割体10bは、一方の端部のみが連結される。
【0094】
さらに、本実施形態におけるキャップ20は円筒状であり、下部の径は上部の径よりも小さく、分割体10aの内径rとほぼ同一である。また、この下部の外周面には複数のV溝が切られて第1の凹凸面20adが構成されている。したがって、杭1が地中に埋設されて運用される際には、キャップ20の第1の凹凸面20adと、最上部に位置する分割体10aの第2の凹凸面10aeとのV溝が噛み合うように、分割体10aにキャップ20が嵌め合わされる。
【0095】
この第9実施形態にかかる情報発信杭の運用について説明する。
まず、棒状の杭本体10の長さが調整される。長さ調整には、連結する分割体10aの個数を変えるのみでよいため、簡単に行うことができる。したがって、例えば表層が厚い地中に杭1を埋設する場合には杭本体10の長さを長くし、そうでない場合は短くするというような調整が可能である。
【0096】
その後、杭本体1が地中に埋設されてキャップ20が被せられた運用状態において、図18に示すように土砂崩れなどが発生してほぼ水平方向の外力F1を受けると、大きい外力を受けた箇所の分割体10aと、その下方に位置する分割体10aとの嵌合が外れて、これら2つの分割体10a,10aの連結部分H1で杭1が折れることになる。したがって、位置変動した分割体10a(図18の例では上側に位置する2つの分割体)の衝撃センサ48Aは位置変動を検知し、位置変動しない分割体10a(図18の例では下側に位置する2つの分割体)の衝撃センサ48Aは位置変動を検知しない。このように各衝撃センサ48Aの検知情報は、タグ情報とともにアクティブ型ICタグ40から発信されて、リーダ(図示せず)などを介してこれら情報を受信した管理センタ(図示せず)で処理される。具体的には、図18の例では、上側の2つの分割体10aと、下側の2つの分割体10aおよび10bとの間の連結部分H1で杭1が折れたことを管理センタで把握できるため、連結部分H1よりも上方において土砂崩れのような表層崩壊が発生していることが推定される。
【0097】
本発明の第1から第9実施形態においては、センサの検知情報を、情報発信杭1の設置位置情報およびその他管理情報とともに、ICタグ自体のメモリまたは管理センタのデータベース64に逐次蓄積していくことができる。したがって、処理装置62では、経時的な変化から災害などの状況を判断することができる。また、複数の杭を設けることで、所定のエリア内の異常発生などのエリア分布を取得することができる。
【0098】
本発明の第1から第9実施形態において、センサとして加速度センサ、振動センサ、温度センサおよびガスセンサの例を説明したが、これらの他にも照度センサのような半導体センサ、傾斜センサおよび磁気センサなどのセンサであってもよい。ただし、これらのセンサに限定されるものではなく、適用に応じて、必要とされるセンサを搭載したアクティ
ブ型ICタグが選択される。特に、情報発信杭1が地盤に埋設されて運用している間であっても、情報発信杭1のキャップをはずしてアクティブ型ICタグを交換することで、センサを追加したり別の種類に交換することができる。
【0099】
図1から17の杭1における防護用キャップ20は蓄光材で形成されてもよい。この構成により、夜間にはキャップ20が光るので、道路標である杭1が目立ち、視認させることができる。したがって、杭を適切に配置することで、人を誘導させるための避難道などとして杭を機能させることができる。また、杭1を境界表示に用いる場合には、蓄光材のキャップ20によって、夜間や暗いところでも境界を明瞭に示すことができる。なお、防護用キャップ20の代わりに杭本体10の一部もしくは全部を蓄光材で形成してもよく、あるいは、防護用キャップ20と杭本体10の一部もしくは全部の両方を蓄光材で形成してもよい。例えば、蓄光材からなるプレートなどをキャップ20および/または杭本体10に嵌め込むものとしてもよい。
【0100】
また、情報発信杭に、さらに、GPSアンテナを収納してもよい。GPSアンテナが設けられる場合、GPSモジュールが、GPSアンテナを介して衛星からの電波を受信して、情報発信杭1の位置情報を算出する。したがって、情報発信杭の設置位置情報を記憶していなくても、位置情報を取得することができる。
【0101】
以上、本発明にかかる情報発信杭を主眼として説明したが、以下には、これまでに述べた各実施形態の適用例に相当する本発明にかかる地盤変動検知システムを主眼として、この好ましい実施形態を説明する。
【0102】
図19は、本発明に係る地盤変動検知システムの第1実施形態の概略構成を説明する図である。
図19図示の実施形態に係る本発明の地盤変動検知システムは、振動検知センサ付の無線ICタグ223を内蔵する情報発信杭211a、211b、211c、211d、・・・211n(以下、適宜「情報発信杭211」と総称する)と、この情報発信杭211から送信される情報である無線ICタグ223の識別情報(無線ICタグ識別情報(以下「ID情報」という)を受信する読取装置(ICタグリーダ)212と、読取装置212が受信したID情報を無線通信網213に送信する通信装置215と、無線通信網213を経由してID情報を受信する管理サーバ216とからで構成されている。
【0103】
なお、図19図示の実施形態では、通信装置215から送信されたID情報は、通信装置215の付近に位置する無線通信の基地局217を介して無線通信網213に送られ、さらにゲートウェイ218を介して接続されるインターネット219経由で管理サーバ216に送信される。
【0104】
情報発信杭211は、図20図示の形態では、一端側(図20中、下側)が尖鋭部で、他端側(図20中、上側)は平坦な頭部となる円柱体の杭本体部221と、この杭本体部221の他端側の平坦な頭部と着脱可能に螺合する円筒状の蓋体222とを備えている。そして蓋体222の内側底部に、振動検知センサ付の無線ICタグ223が取付けられている。
【0105】
杭本体部221は、プラスチック、アルミニウム、ステンレス等で製造することができるが、尖鋭部側(図20中、下側)を土中に打設して使用するものであり、相当の強度があり、かつ長期間風雨に晒されることから耐腐食性も備えた材質のものであれば、他の材質のものでもよい。
【0106】
図19図示の実施形態では、杭本体部221の尖鋭部となっている一端側と反対側であ
る頭部に蓋体222を着脱可能に取付けるため、杭本体部221の頭部(図20中、上側)の周端面と、蓋体222の内周面との間で相互にねじ切りされた螺合部225を形成しているが、着脱可能な形態はこれに限られるものではない。
【0107】
蓋体222は、プラスチック製とすることができるが、内部に取り付けられた振動検知センサ付の無線ICタグ223のアンテナを外部に露出する等して、その通信機能に支障がなければ、アルミニウム、ステンレス等の金属を使用してもよい。
【0108】
図示の実施形態では、振動検知センサ付の無線ICタグ223は、蓋体222の内側底部に取り付けられているが、杭本体部221の頭部に取付けてもよい。振動検知センサのセンサ機能と無線ICタグ223の機能の双方に支障がなければ、風雨に晒されるおそれのない頭部と蓋体222で形成される密閉空間内であれば、いずれの位置にも振動検知センサ付の無線ICタグ223を取り付けることができ、その上で、電池交換等のメンテナンスができれば問題がない。
【0109】
図21(a)は、振動検知センサ付の無線ICタグ223のブロック構成の一例を説明する図である。図示の実施形態では、振動検知センサ付の無線ICタグ223は、アンテナ231、通信回路232、制御回路233、メモリ235、A/D変換回路236、振動検知センサである振動センサ237、電源238を備えて構成されている。
【0110】
振動検知センサ237は、振動センサと対象測定物によって形成されるコンデンサの静電容量から、ギャップ(変位)を測定するもの、または渦電流効果を利用したもの等があるが、いずれを使用してもよい。
電源238は、アクティブ型ICタグに使用されるものであれば、特に限定するものでなく、通常で2年程度の使用が可能と考えられる。電池交換は上記したように、情報発信杭211の蓋体222が螺合により着脱可能であることから、容易に行える。
A/D変換回路236は、振動検知センサ237の計測値であるアナログ値をデジタル値に変換するものである。
【0111】
メモリ235は、識別情報であるID情報が記録されているものであり、通常読み書き可能な記録回路により構成されている。ID情報は、無線ICタグ223ごとの識別情報である。
【0112】
図示の実施形態においては、この各無線ICタグ223ごとのID情報は、当該無線ICタグ223が配備されている情報発信杭211を特定する情報発信杭211の識別情報として、当該情報発信杭211が設置されている位置を表す位置情報に関連付けられて、後述するように、管理サーバ216の杭情報記録手段276に記録されている。
【0113】
通信回路232は、メモリ235に記録されたID情報を、アンテナ231を介して読取装置(ICタグリーダ)212に送信する機能を有する。
制御回路233は、振動検知センサ付の無線ICタグ223の各構成回路、構成部分等を制御する機能を有するもので、図示の実施形態では、振動センサ237の測定値が予め設定された所定値以上であるときに、メモリ235に記録されたID情報を読取り、通信回路232を制御してアンテナ231を介して送信するようになっている。
【0114】
振動検知センサ付の無線ICタグ223としては、例えば市販品の超小型アクティブセンシングタグ(セイコープレシジョン株式会社、WT−102、又はWT200)を使用することができる。これは内蔵する機械式振動センサで振動を検知してID情報を送信する機能を有するものである。
【0115】
図22は、読取装置(ICタグリーダ)212及び通信装置215のブロック構成の一例を説明する図である。図示の例では、読取装置(ICタグリーダ)212は、アンテナ251、通信手段である送受信手段252、制御手段253、記録手段255、電源256を備えて構成されている。
【0116】
読取装置(ICタグリーダ)212は、情報発信杭211から送信されるID情報を受信する機器で、受信可能範囲を考慮して情報発信杭211の設置位置、設置数により、その設置数量や設置位置が決定される。情報発信杭211が地表に設置されるのに対し、読取装置(ICタグリーダ)212は土石流等に触れることのない地点に設置することが好ましい。
【0117】
また使用する電源256は、太陽光発電装置と蓄電池とを組み合わせたものを用いることができる。情報発信杭211に使用する振動検知センサ付の無線ICタグ223と異なり、読取装置(ICタグリーダ)の使用電力は大きいので、太陽光による発電方式としたものである。これにより昼夜間を問わず連続使用を可能とすることができる。
【0118】
アンテナ251及び送受信手段252は、情報発信杭211の振動検知センサ付の無線ICタグ223から送信されたID情報を受信するものであり、受信したID情報は一旦、記録手段255に記録される。
制御手段253は、読取装置(ICタグリーダ)212の上記各手段等を制御するものであり、受信したID情報の記録指示、後述する通信装置215への送信等を行うものである。なお、図示の実施形態では、読取装置(ICタグリーダ)212と通信装置215は近接しており、有線にて情報の送受信をおこなっている。
【0119】
通信装置215は、読取装置(ICタグリーダ)212が受信、収集したID情報を無線通信網213に送信する役割を有するものである。図示の実施形態では、通信装置215は、アンテナ261、通信手段である送受信手段262、制御手段263、記録手段265、増幅手段266、電源267を備えて構成されている。
【0120】
電源267は、読取装置(ICタグリーダ)212と同様に、太陽光発電装置と蓄電池とを組み合わせたものを用いるが、読取装置(ICタグリーダ)212又は通信装置215の何れかに電源を設け、電力の融通を行ってもよい。
【0121】
アンテナ261及び送受信手段262は、読取装置(ICタグリーダ)212から送信されたID情報を無線通信網213に送信する機能を有するものである。なお読取装置(ICタグリーダ)212から送信されたID情報は一旦、記録手段265に記録される。
【0122】
増幅手段266は、無線通信網213にID情報を送信する前に、出力情報を増幅する機能を有するものである。
制御手段263は、通信装置215の各手段の機能を制御するもので、主として読取装置(ICタグリーダ)212から送信されたID情報の記録、無線通信網213への送信指令等の機能を有する。
【0123】
上記読取装置(ICタグリーダ)212としては、例えば市販のICタグリーダ(セイコープレシジョン株式会社、特定小電力無線TAG用LF設定機WL−102)を使用することが可能であり、PC機器に接続すれば通信装置215には携帯通信機器を使用することもできる。
【0124】
図23は、管理サーバ216のブロック構成の一例を説明する図である。図23図示の例では、管理サーバ216は、通信手段271、制御手段272、地盤変動を判定する判
定手段273、情報提供手段275、情報発信杭211にそれぞれ付与されている他の情報発信杭211と識別するための識別情報と当該情報発信杭211それぞれの位置情報とを関連付けて記録する杭情報記録手段276、地形地質情報記録手段277、地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段278、取得した情報(計測値)を記録する計測値情報記録手段279を備えて構成されている。
【0125】
杭情報記録手段276に記録されている、各情報発信杭211にそれぞれ付与されている他の情報発信杭211と識別するための識別情報は、この実施形態では、各情報発信杭211に配備されている無線ICタグ223に固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報であるID情報)としている。
【0126】
情報発信杭211にそれぞれ付与されている他の情報発信杭211と識別するための識別情報と、当該情報発信杭211それぞれの位置情報とを関連付けて杭情報記録手段276に記録することは、例えば、情報発信杭211の設置時にGPS装置で計測した設置位置の緯度経度の位置情報と、各情報発信杭211に配備されている無線ICタグ223に固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報であるID情報)とを関連付けて記録するようにして行われる。
【0127】
なお、各情報発信杭211にそれぞれ付与されている他の情報発信杭211と識別するための識別情報として情報発信杭211自体の杭番号を用いることもできる。
【0128】
管理サーバ216は、本システム用の各種表示装置等を備えた専用機を使用してもよいが、パーソナルコンピュータやワークステーション、及び各種通信機器等を備えて構成することもできる。
【0129】
計測値情報記録手段279は、振動センサ237が所定の振動値を検出した場合、前記の無線ICタグ223から送信されてきたID情報を計測値として記録するものである。なお、この際、当該ID情報を取得した日時情報を発生日時情報として前記のID情報とともに計測値として記録しておくことができる。
【0130】
判定情報記録手段278には、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動の判定を行うための判定基準が記録されている。
後述する判定手段273はこの判定基準と上記した計測値に基づき、地盤変動の判定を行うものである。
この判定基準としては、例えば、連続して設置されている複数本の情報発信杭211のうち、隣接する5本以上の情報発信杭211に配備されている各無線ICタグ223からID情報が送信されてきたときを地盤変動の警告段階、隣接する10本以上の情報発信杭211に配備されている各無線ICタグ223からID情報が送信されてきたときを地盤変動発生段階とする判定基準を採用することができる。
【0131】
地形地質情報記録手段277は、情報発信杭211を設置した観測地点の地形、地質等の情報が詳細に記録されているものであり、この地形地質情報により地盤変動の判定の補正を行うようになっている。
例えば、ID情報を送信してきた隣接する情報発信杭211が5本であっても、当該観測地点の地質が土石流の発生が起こり易い注意地点である場合であって、補正値として2を乗じるように記録されているときは、5本に2を乗じて10本として地盤変動発生段階に繰り上げるようになっているものである。なお、これは例示であって実際にはより現実に対応した補正値が設定される。
【0132】
判定手段273は、上記したように計測値情報及び判定情報により、あるいは、計測値
情報、判定情報及び地質地形情報により、地盤変動の判定を行う機能を有するものである。
情報提供手段275は、判定手段273が行った判定の結果を、図示しない表示機器等に出力表示するものである。表示機器としては、表示ランプ、映像、音声等によって行うものである。出力は近接地のほか、インターネット219等の通信回線を通じて送信することもできる。
【0133】
通信手段271は、通信装置215から送信される情報発信杭211からのID情報をインターネット219等を介して受信する機能を有するものであり、PC等に内蔵される通信回路等が該当する。
【0134】
制御手段272は、管理サーバ216の各手段を制御する機能を有するものであり、例えばPCのCPU、RAM等が該当する。なお判定手段273及び情報提供手段275も、上記CPU、RAM等を所定のアプリケーションにて作動させることで、上記各手段の機能を発揮するようになっている。
【0135】
また上記各記録手段(276〜279)は、ハードディスク、光磁気ディスク等の外部記憶装置が該当し、バス280を介して通信手段271、制御手段272、判定手段273及び情報提供手段275と接続されて、情報交換をおこなっている。
【0136】
次に、以上に説明した地盤変動検知システムの動作について、動作手順のフローチャートを示す図24を参照して説明する。
なお、管理サーバ216においては、観測地点に設置した情報発信杭211の設置位置(緯度経度等)、杭番号、各情報発信杭211に配備されている無線ICタグ223のID情報等が、杭情報記録手段276に記録されているものとする。
【0137】
情報発信杭211は、振動センサ237が予め設定された数値以上の振動を感知したときは、制御回路233の指令によりメモリ235に記録されたID情報を通信回路223及びアンテナ231を介して送信する。
このID情報は、読取装置(ICタグリーダ)212に受信され、接続する通信装置215によって無線通信網213に送信される。
そしてゲートウェイ218、インターネット219を経由して管理サーバ216に送信される(S211)。
【0138】
管理サーバ216は、連続して送信された各杭のID情報を集計し、計測値情報記録手段279に記録する(S212)。
判定手段273は、計測値情報記録手段279に記録された計測値(送信されたID情報)と、杭情報提供手段276に記録されている設置済み情報発信杭211の識別情報に関連図けられている各情報発信杭211の位置情報、判定情報記録手段278に記録されている地盤変動の判定基準、さらに地形地質情報記録手段277に記録された、判定の補正数値としての観測地点の地質地形情報に基づいて、地盤変動の判定を行う(S213)。
上記判定結果は、情報提供手段275によって図示しない表示装置等に出力する(S214)。
【0139】
このように、観測地点の土中に一部を埋設設置した情報発信杭のそれぞれから、振動感知によって各情報発信杭に内蔵された無線ICタグのID情報が送信されてくるので、連続するように複数本の情報発信杭を設置しておけば、異常出水による土石流の発生、落石、崖崩れ等の地盤変動があった場合、管理サーバ216が取得するID情報も複数になるので、適切な分析による判定ができる。
その結果、誤作動を極力防止でき、さらには分析により災害予側も可能である。またワイヤ等を張った接触型の検出装置と異なり、連続した観測ができる。
地盤変動の判定情報を充実させることで、土石流の規模、場所、速度、下流域への到達時間などを計測・演算し、流域住民や工事従事者などに通報・警告する機能を有するシステムをさらに構築することができる。
また、監視カメラを設置することで、送信されたID情報に基づき、該当する情報発信杭の周辺にある監視カメラを作動させ、観測地点の画像も取得することができる。
【0140】
図25は、本発明に係る地盤変動検知システムの第2の実施形態の概略構成を説明する図である。
上記した実施形態と相違する点は、読取装置(ICタグリーダ)にかえて中継装置を複数設置して、ID情報を中継送信したものである。
したがって、相違する点を中心に説明し、共通する点は説明を省略する。
【0141】
図25に示すように、情報発信杭211a、211b、211c、211d、・・・、211nと通信装置215との間には、ID情報の送受信を無線中継する中継装置214a、214b、・・・、214n(以下、適宜「中継装置214」と表す)が設けられている。
図21(b)は、中継装置214のブロック構成図である。図示の例では、中継装置214は、アンテナ281、通信回路282、制御回路283、メモリ285、電源286、増幅回路287を備えて構成されている。
この中継装置214は、通信のみが可能な無線ICタグを使用することができる。例えば、情報発信杭211に使用した杭本体部221と蓋体222とで形成される密閉空間内に通信のみ可能な無線ICタグを取付けることで、中継装置214を構成することができる。
【0142】
なお杭本体部221と蓋体222とで形成される密閉空間内に無線ICタグを設置したときに、無線機能を損なうことのないようにする必要があり、例えばアンテナ部のみを蓋体222から露出させる等が考えられる。
【0143】
このように、杭211を使用した中継装置214を設置して、ID情報の送信網を形成すれば、無線タグリーダの設置が困難な観測地点であっても、連続した地盤変動検知が可能となる。
【0144】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の第1実施形態に係る情報発信杭の斜視図である。
【図2】図1の情報発信杭をII−II線に沿った断面図である。
【図3】図2の情報発信杭をIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2の情報発信杭に用いられるクッション材の斜視図である。
【図5】(a)は本発明の第2実施形態に用いられるアダプタの斜視図、(b)は同アダプタを使用した情報発信杭を示す縦断面図である。
【図6】(a)は本発明の第3実施形態にかかる杭の防護用キャップの下方斜視図、(b)はこの防護用キャップに嵌め込まれる収納ケースの斜視図、(c)は同収納ケースを使用した情報発信杭を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態にかかる情報発信杭を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1ないし第4実施形態にかかる情報発信杭の適用を示す概略図である。
【図9】本発明の第1ないし第4実施形態にかかる情報発信杭の別の適用を示す図であって、高速道路を上からみた概略図である。
【図10】本発明の第5実施形態にかかる情報発信杭を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態にかかる情報発信杭の適用を示す概略図である。
【図12】本発明の第6実施形態にかかる情報発信杭を示す縦断面図である。
【図13】本発明の第7実施形態にかかる情報発信杭を示す縦断面図である。
【図14】本発明の第7実施形態にかかる情報発信杭の適用を示す概略図である。
【図15】本発明の第8実施形態にかかる情報発信杭を示す縦断面図である。
【図16】本発明の第9実施形態にかかる情報発信杭の縦断面図である。り、(a)は設置した状態、(b)は外力を受けたときの状態を示す図である。
【図17】本発明の第9実施形態にかかる情報発信杭における一分割体を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
【図18】本発明の第9実施形態にかかる情報発信杭の縦断面図であり、外力を受けた時の状態を示す図である。
【図19】本発明に係る地盤変動検知システムの概略構成図。
【図20】本発明に係る情報発信杭の断面概略図。
【図21】(a)は情報発信杭に内蔵される振動検知センサ付の無線ICタグのブロック構成図、同(b)は他の実施形態で使用する中継装置のブロック構成図。
【図22】読取装置(ICタグリーダ)及び通信装置のブロック構成図。
【図23】管理サーバのブロック構成図。
【図24】地盤変動検知システムの動作の手順を示すフローチャート。
【図25】地盤変動検知システムの他の実施形態の概略構成図。
【符号の説明】
【0146】
1 情報発信杭
10 杭本体
10a 分割体
14 収納部
20 キャップ
30 衝撃緩衝材
40 ICタグ
43 報知手段
48A,48B 衝撃センサ
48CA 第1センシング部
48CB 第2センシング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に一部または全部が埋め込まれる杭であって、
ICタグ、およびこれと一体もしくは別体のセンサが設けられ、前記ICタグが前記センサの検知情報をタグ情報と共に発信する、情報発信杭。
【請求項2】
請求項1において、
前記ICタグを収納する収納部を有する杭本体と、
この杭本体の頭部に被せられて前記収納部を閉塞するキャップとを備えた情報発信杭。
【請求項3】
請求項2において、前記杭本体が棒状であり、
前記センサが温湿度センサで、この温湿度センサが、前記棒状の杭本体の一部分の温度および湿度のいずれか一方または両方を検知する第1センシング部を有する、情報発信杭。
【請求項4】
請求項3において、前記一部分は前記杭本体の上端部分または下端部分であり、
前記温湿度センサは、さらに、前記第1センシング部が検知する前記一部分とは反対側に位置する、前記杭本体の下端部分または上端部分の温度および湿度のいずれか一方または両方を検知する第2センシング部を有する、情報発信杭。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記情報発信杭は道路の脇に埋設される距離標であり、前記タグ情報は、前記情報発信杭の設置位置情報および前記情報発信杭が埋設されている道路の管理情報のいずれか一方または両方を含む情報発信杭。
【請求項6】
請求項1または2において、前記センサが衝撃センサであり、位置変動の発生の可能性がある地面に埋設されている、情報発信杭。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記ICタグは防水加工されてなる、情報発信杭。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項において、前記キャップの内面と前記杭本体の間に衝撃緩衝材が介装されている、情報発信杭。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、前記ICタグにさらに報知手段が設けられ、前記センサの検知情報が所定のしきい値を超える変位を検出すると、この報知手段が警報を出力する、情報発信杭。
【請求項10】
請求項2から9のいずれか一項において、前記キャップと前記杭本体の一方または両方が蓄光材で形成されている、情報発信杭。
【請求項11】
請求項1において、前記杭が棒状であり、長手方向に沿った軸心を有し、
複数の分割体が前記軸心方向に連結されてなる、情報発信杭。
【請求項12】
請求項11において、前記センサは、前記複数の分割体のそれぞれに設けられた衝撃センサからなり、隣接する分割体のうち一方が前記軸心と直交する方向に所定の外力を受けたとき、この一方の分割体が他方の分割体と分離するように設定されており、前記衝撃センサの検知情報を対応するタグ情報と共に発信する、情報発信杭。
【請求項13】
一部が土中に埋設される情報発信杭であって、前記一部が土中に埋設される杭本体部と、該杭本体部の前記一部と反対側である頭部に着脱可能に取付けられる蓋体と、該蓋体の
内部側に設置された振動検知センサ付の無線ICタグとを備え、
前記無線ICタグは、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報が記録されている記録部と、無線通信により情報の送信を行う通信部と、前記振動検知センサの計測情報に基づいて前記通信部を介して情報送信を行う制御部とを有することを特徴とする情報発信杭。
【請求項14】
所定の観測地点に設置された少なくとも1以上の請求項1から4および6から13のいずれか一項に記載の情報発信杭と、前記情報発信杭から送信される情報を取得する管理サーバとを備えている地盤変動検知システムであって、
前記管理サーバは、
取得した情報を計測値として記録する計測値情報記録手段と、
前記情報発信杭にそれぞれ付与されている他の情報発信杭と識別するための識別情報と当該情報発信杭それぞれの位置情報とを関連付けて記録する杭情報記録手段と、
地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段と、地盤変動を判定する判定手段とを有し、
該判定手段は、前記計測値情報記録手段に記録された計測値と、前記杭情報記録手段に記録された情報発信杭の識別情報及び位置情報と、前記判定情報記録手段に記録された判定基準情報とに基づいて地盤変動の判定を行うことを特徴とする地盤変動検知システム。
【請求項15】
請求項14において、前記情報発信杭から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記情報発信杭から送信される情報を受信する読取装置と、該読取装置で受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われることを特徴とする地盤変動検知システム。
【請求項16】
請求項14において、前記情報発信杭から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記情報発信杭から送信される情報を受信し、中継して送信する少なくとも1以上の中継装置と、該中継装置から受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われることを特徴とする地盤変動検知システム。
【請求項17】
請求項14から16のいずれか一項において、前記管理サーバは、前記情報発信杭が設置された前記観測地点の地形地質情報を記録した地形地質情報記録手段を更に有し、前記判定手段は地盤変動の判定において前記地形地質情報に基づく補正を行うことを特徴とする地盤変動検知システム。
【請求項18】
高速道路における逆走を検知するシステムであって、
請求項1,2,7,8,10および13のいずれか一項に記載の情報発信杭を2つ以上備え、前記センサがいずれも衝撃センサであり、これら2つ以上の情報発信杭が高速道路の路面に走行方向に沿って間隔をあけて埋設されており、前記センサの検知情報に基づいて、高速道路における逆走を検出する逆走検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−159036(P2008−159036A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299789(P2007−299789)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(591034017)株式会社リプロ (15)
【Fターム(参考)】