説明

情報端末、情報提供システム及び情報提供方法

【課題】カメラで連続的に撮影された現実空間の画像と重畳表示する付加情報の位置合わせを高速に行う情報端末を提供する。
【解決手段】情報端末は、カメラ画像を取得し、現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する。情報端末は、姿勢情報が一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を、姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録するデータベース部から検索し、取得する。情報端末は、カメラ画像と2次元画像間の対応関係を計算し、対応関係を利用して付加情報の表示位置を修正して、付加情報をカメラ画像に重畳表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラで撮影された画像に付加情報を重畳して表示する情報端末、情報提供システム及び情報提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話端末は多機能化が進んでおり、液晶モジュール、カメラモジュール、非接触ICカードモジュール、WiFi通信モジュール、Bluetooth通信モジュール、GPSモジュール、加速度センサモジュール、方位センサモジュール、角速度センサモジュールのようなデバイスが搭載されるようになっている。
【0003】
GPSモジュールや方位センサモジュールを用いることで、カメラでキャプチャーされた風景が何の風景であるかがある程度予測できるようになり、現実空間の映像をコンピュータで処理して更なる情報を付加する拡張現実感(AR)技術がカメラ付き携帯電話端末上で実用化されるようになっている。
【0004】
特許文献1には、センサによって検出されたカメラの位置、姿勢、角度に基づいてAR情報の表示位置を決定し、実空間の映像に重畳して画面表示するとともに、センサから検出されたカメラ部の姿勢、角度の変位量に基づいてAR情報の表示位置を効率的に更新する技術が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、通信ネットワークを介してサービスプロバイダから現在位置の周辺の3次元構築物データを含む地図情報を取得し、カメラで撮影された画像と方位センサで検出された方位にある構築物データを比較することで、カメラに映った構築物の特定を行う技術が開示されている。
【0006】
また特許文献3には、カメラ画像から抽出した画像情報、センサから取得した端末の位置、方向の情報をクエリとしてデータベースを検索する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−238096号公報
【特許文献2】特開2006−119797号公報
【特許文献3】特開2010−118019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カメラで撮影された画像に付加情報を重畳して表示するAR技術では、付加情報を現実空間の適切な位置に重畳することが必要である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、GPSセンサや方位センサ、加速度センサによってカメラの位置や姿勢を決定するため、各センサの取得する情報に誤差が含まれた場合にカメラで撮影された現実空間の画像と付加情報の表示位置にずれが生じる。例えばカメラに映った特定の店の看板や交通標識を対象に付加情報を重畳する場合では、前記の位置ずれによって対象が変わってしまう可能性があり、利便性が低下してしまうという問題点があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の従来技術は、カメラ画像と3次元構築物データの画像情報を比較することによって、現実空間の画像と付加情報の表示位置を正確に合わせることができるが、3次元構築物データの処理や画像比較の際の特徴点の抽出・比較といった画像認識処理は情報端末にとって負荷が大きいという問題点があった。
【0011】
特許文献3に記載の従来技術は、カメラ画像から抽出した3次元特徴点を検索と位置合わせに使用するため、付加情報を正確な位置に重畳することが可能であるが、3次元特徴点の計算と照合の処理負荷が大きいという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、カメラで連続的に撮影された現実空間の画像と重畳表示する付加情報の位置合わせを高速に行う情報端末、情報提供システム及び情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するため本発明による情報端末は、カメラ画像を取得する撮像手段と、情報端末の現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する姿勢情報取得手段と、姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を検索するデータベース部と、前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算する照合手段と、前記対応関係を利用して前記付加情報の表示位置を修正して、前記付加情報を前記カメラ画像に重畳表示する表示制御手段とを備える。
【0014】
また、前記照合手段が、前記カメラ画像と前記2次元画像から特徴点を検出し、該特徴点の対応関係から第1の変換行列を計算し、前記表示制御手段が、前記第1の変換行列を用いて前記付加情報の表示位置を修正することも好ましい。
【0015】
また、前記データベース部が、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と、データベース部に記録されている姿勢情報から、前記2次元画像を情報端末の視点に変換する第2の変換行列を計算し、前記照合手段が、前記第2の変換行列を用いて2次元画像の視点を変換してから、前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算することも好ましい。
【0016】
また、前記姿勢情報取得手段は、情報端末と前記カメラ画像内の対象物との距離、および情報端末の撮影方向を示す姿勢情報を検出し、
前記データベース部が、前記撮影方向、前記距離、およびカメラの内部パラメータの情報から、前記第2の変換行列を計算することも好ましい。
【0017】
また、前記情報端末は、前記カメラ画像を撮影する際の時間および/または天候を取得する手段をさらに備え、前記データベース部は、前記2次元画像と結びつけて、前記2次元画像の撮影時の時間および/または天候、並びに2次元画像の解像度および鮮明度である撮影条件を記録しており、前記データベース部は、前記姿勢情報に加えて、前記撮影条件が最も近い2次元画像を検索することも好ましい。
【0018】
また、前記データベース部は、前記付加情報と紐付けて付加情報を表示する対象の形状情報を記録しており、前記データベース部は、前記形状情報によって前記撮影条件の近さの基準を変更するも好ましい。
【0019】
また、前記データベース部は、3次元地図データを記録しており、前記データベース部は、前記3次元地図データを情報端末の姿勢から見た2次元画像に変換し、出力することも好ましい。
【0020】
上記目的を実現するため本発明による情報提供システムは、カメラ画像を取得する撮像手段と、情報端末の現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する姿勢情報取得手段と、姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を検索するデータベース部と、前記対応関係を利用して前記付加情報の表示位置を修正して、前記付加情報を前記カメラ画像に重畳表示する表示制御手段と、サービスプロバイダと通信する通信手段とを備える情報端末と、姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を検索するデータベース部を備えるサービスプロバイダとを備え、前記情報端末のデータベース部は、前記サービスプロバイダのデータベース部の情報の一部を記録している。
【0021】
また、前記情報端末のデータベース部は、情報端末の現在位置周辺の姿勢情報と紐付いた2次元画像と付加情報を記録しており、前記通信手段が、一定の時間間隔、または情報端末が一定距離移動した時、前記サービスプロバイダのデータベース部から新しい現在位置周辺の2次元画像と付加情報を取得し、前記情報端末のデータベース部の2次元画像と付加情報を更新することも好ましい。
【0022】
また、前記情報端末が、情報端末の移動を考慮して、姿勢情報の差分が一定の範囲内に収まる複数の2次元画像と付加情報をまとめて、前記サービスプロバイダのデータベース部から取得して、前記情報端末のデータベース部に保存するも好ましい。
【0023】
上記目的を実現するため本発明による情報提供方法は、カメラ画像を取得する撮像ステップと、情報端末の現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する姿勢情報取得ステップと、姿勢情報が一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を、前記姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録するデータベース部から検索し、取得するステップと、前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算する照合ステップと、前記対応関係を利用して前記付加情報の表示位置を修正して、前記付加情報を前記カメラ画像に重畳表示する表示制御ステップとを有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、カメラで連続的に撮影された現実空間の画像とデータベースの画像の位置合わせを高速で行い、付加情報を正確な位置に重畳表示する情報端末、情報提供システム及び情報提供方法を提供することができる。
【0025】
目標物の3次元モデルではなく2次元画像を取得することにより、通信量と情報端末の使用メモリを削減し、高速な処理が可能になる。さらに、姿勢情報を考慮した2次元画像を取得することで画像認識の認識率向上と負荷削減が可能になる。さらに、立体物の構造を考慮した2次元画像の選択により認識率の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態における情報端末の機能ブロック図を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態における情報端末の動作シーケンスを示す。
【図3】本発明の第1の実施形態における座標系を示す。
【図4】本発明の第2の実施形態における情報提供システムの構成を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。本発明における情報端末の実施の一形態として、携帯電話機を例に挙げて詳細に説明する。
【0028】
本実施形態の情報端末1では、ユーザが情報端末1のカメラを現実空間内にかざすと、情報端末1がGPS衛星等で現在位置を取得し、方位センサモジュール等で方向を取得し、現在位置・撮影方向の情報を元にカメラで撮影された画像内に存在すると推測される目標物の2次元画像と付加情報を取得し、照合手段14によって、2次元画像とカメラ画像の対応関係を取得し、この対応関係を利用して、付加情報をカメラ画像と合わせて画面に重畳表示する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態における情報端末の機能ブロック図を示す。情報端末1は、カメラ等を用いてカメラ画像を取得する撮像部11と、各種センサを用いて情報端末1の現在位置・撮影方向等の姿勢情報を検出する姿勢情報取得部12と、姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、姿勢情報が一致する2次元画像と付加情報を検索するデータベース部13と、カメラ画像と2次元画像の対応関係を計算する照合部14と、この対応関係で付加情報の表示位置を修正して、付加情報をカメラ画像に重畳表示する表示制御部15と、上記機能の制御や情報の受け渡しを行う制御部16とを備える。
【0030】
撮像部11は、情報端末1に搭載されているカメラモジュールを利用して被写体カメラ画像を一定間隔で取得する。
【0031】
姿勢情報取得部12は、位置検出機能と方位検出機能を備えている。位置検出機能は、情報端末1に搭載されているGPSモジュールやWiFiモジュールを利用して、GPS衛星、WiFi基地局から信号を受信し、電波強度から現在位置の情報を特定する。位置情報は3次元空間内の任意の場所を原点とする3次元座標で表現する。また、ステレオカメラやその他情報端末1に搭載されている距離センサをさらに利用して目標物に対する位置関係を取得しても良い。方位検出機能は、情報端末1に搭載されている磁気センサ、加速度センサ等のセンサモジュールの情報を取得し、3次元空間内で情報端末1の撮影する方向を特定する。本実施形態では、撮影方向は3次元空間内の単位ベクトルで表現する。これらの情報端末の位置と撮影方向の情報をまとめて情報端末の姿勢情報と呼ぶ。
【0032】
また、姿勢情報取得部12は、情報端末1に搭載されているジャイロセンサモジュール等の角速度センサモジュールを利用して、情報端末1の撮影する方向の変化を取得することもできる。例えば情報端末1の撮影する方向がユーザの操作によって変化した場合、撮影する方向の変化の情報を利用することで、変化後の情報端末の姿勢情報を求めることが可能である。
【0033】
データベース部13は、個々の目標物の2次元画像又は3次元空間の風景を撮影した2次元地図画像を記録する。ここで、これらの画像をまとめて2次元画像と呼ぶ。この2次元画像は、姿勢情報と紐付けて記録され、さらに画像内の目標物に対する付加情報とその表示位置も同時に記録している。なお、データベース部13は、情報端末1に搭載されているメモリモジュール(記録部)を利用して、2次元画像と付加情報(およびその表示位置)を姿勢情報と紐付けて記録している。
【0034】
なお、ここで付加情報とは、例えば画面内の目標物に対する名称等を表すタグや広告、関連するWEBページへのハイパーリンク、3次元CG等の2次元/3次元画像、動画、アニメーションであり、付加情報を目標物の位置に重畳表示し、利用者にARサービスを提供することができる。ARサービスとしては、特定の目標物を対象としたものではなく、ナビゲーション情報を道路に沿って重畳表示する等しても良いし、重畳表示に加えて音声や音楽を出力することも可能である。
【0035】
また、データベース部13は情報端末1の姿勢情報が一致する又は最も近い目標物の2次元画像と付加情報を検索し、制御部16に入力する。姿勢情報が一致する2次元画像と付加情報が存在しなかった場合、最も近い位置情報を持つ2次元画像と付加情報と、姿勢情報間の対応関係を表す第2の変換行列とを制御部16に返す。
【0036】
照合部14は、制御部16から入力されたカメラ画像と2次元画像を比較することで、カメラ画像内の目標物の位置を特定する。第2の変換行列が入力された場合、照合部14は、カメラ画像と2次元画像のどちらかを第2の変換行列によって変換する。照合部14は、カメラ画像と2次元画像間の対応関係、変換後のカメラ画像と2次元画像間の対応関係、またはカメラ画像と変換後の2次元画像間の対応関係を表す第1の変換行列を計算し、制御部16に入力する。
【0037】
表示制御部15は、情報端末1に搭載されている液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置を制御して、第1の変換行列および第2の変換行列を用いて付加情報の表示位置を修正し、制御部16から入力されたカメラ画像に、目標物の付加情報を重畳して画面表示することでARサービスを提供する。
【0038】
制御部16は、本発明の情報端末1の各機能の制御や情報の受け渡しを行う。なお、制御部16は、操作部からユーザの付加情報に対する操作入力を受け取り、ブラウザの起動や動画・音楽プレーヤの起動/再生等、情報端末1の統括的な制御も行う。
【0039】
図2は、本発明の第1の実施形態における情報端末の動作シーケンスを示す。
<カメラ画像取得>
撮像部11は、情報端末1に搭載されているカメラモジュールを利用して被写体カメラ画像を一定間隔で取得する。撮影部11は、取得したカメラ画像を制御部16に入力する。
【0040】
<カメラ姿勢取得>
姿勢情報取得部12は、位置検出機能と方位検出機能により、姿勢情報(位置と方向)を検出し、検出された姿勢情報を制御部16に入力する。制御部16は、姿勢情報をデータベース部13を出力する。
【0041】
<2次元画像選択>
データベース部13は、情報端末1の姿勢情報と紐付けて、2次元画像と付加情報(及びその表示位置)とを記録しており、制御部16から姿勢情報の入力を受けて姿勢情報の一致する2次元画像と付加情報(及びその表示位置)を出力する。
【0042】
データベース部13には、多数の2次元画像が保存されるが、制御部16から入力される姿勢情報に一致する画像が、存在しないこともある。この場合、カメラ姿勢が、姿勢情報と最も近い2次元画像を検索する。例えばある店の看板を認識して付加情報を表示する場合、データベース部13が看板の東西南北の4方位から撮影された2次元画像を保有していたとすると、最も方位が近い看板の2次元画像を出力する。
【0043】
また、データベース部13は姿勢情報を所定の評価式に代入し、値が最も大きい2次元画像を取得してもよい。これにより、姿勢情報が一致する又は最も近い2次元画像を選択することができる。この評価式は例えば下記のようになる。
e=w+wrot
は撮影地点の距離の近さを評価する値であり、式は例えば下記のようになる。
=1−2|zdb−zcamera|/(zdb+zcamera
ここで、zdbとzcameraは、それぞれデータベース部13の2次元画像とカメラ画像の姿勢情報に含まれるカメラと目標物の距離を表す。erotは角度の近さを評価する値であり、式は例えば下記のようになる。
rot=vdb・vcamera
ここで、vdbとvcameraはそれぞれデータベースの2次元画像とカメラ画像の姿勢情報に含まれる角度ベクトルを表す。wとwは各評価基準の重みを表す。撮影距離の近さを重視したい場合はwをwより大きく設定し、撮影方向の近さを重視したい場合は逆にwを大きく設定すれば良い。本実施形態における評価式では、目標物がカメラ画像の中心に存在すると仮定したため、位置情報から撮影距離の情報を用いたが、そのような仮定を用いずに2枚の画像の重なりの度合いを用いて評価することも可能である。
<2次元画像変換>
【0044】
データベース部13は、姿勢情報が一致する2次元画像と付加情報が存在しなかった場合、最も近い姿勢情報を持つ2次元画像と、カメラ画像間の対応関係を表す第2の変換行列を制御部16に返す。画像間の対応関係は姿勢情報間の対応関係から計算できる。ここで姿勢情報間の対応関係は目標物に対するカメラの位置と方向の変化分を表す。カメラの位置の変化はカメラの位置を表す3次元座標の差分で表すことができる。カメラの方向を3次元ベクトルで表現した場合、カメラの方向の変化分は3次元ベクトルの回転方向と回転量で表現することができ、例えば回転方向は3次元ベクトルの外積で、回転量は3次元ベクトルの内積で求める。本実施形態では、方向の変化分である回転方向と回転量の積をロドリゲス変換により回転行列
【数1】

に変換し、位置の変化ベクトル
【数2】

と合わせて姿勢情報の対応関係を表す行列W=[R|t]を計算する。第2の変換行列はカメラの内部パラメータで構成される行列A,Bとの積AWBで表す。
【0045】
制御部16は、検索された2次元画像、この画像の付加情報(及びその表示位置)、および計算された第2の変換行列を照合部14に出力する。
【0046】
<表示位置決定>
データベース部13からの2次元画像は、第2の変換行列によって、姿勢情報が一致する画像に変換することができる。
【0047】
姿勢情報取得部12が、姿勢情報を誤差なく取得し、データベース部13に姿勢情報が完全に一致する2次元画像が記録されていた場合、撮影したカメラ画像と受信した2次元画像は一致することになる。また、一致する2次元画像が無い場合でも姿勢情報に誤差が無ければ第2の変換行列のみによって付加情報の表示位置を正確な位置に修正することができる。この場合、位置ずれを修正する画像認識技術は不要となり、認識速度を向上させることができる。
【0048】
また、姿勢情報取得部12が取得した姿勢情報に、誤差が含まれている場合、撮影したカメラ画像と、2次元画像間にずれが生じる。この場合、照合部14は第2の変換行列をさらに補正する第1の変換行列を計算することによって付加情報の表示位置を正確に修正することができる。照合部14は、カメラ画像と変換後の2次元画像の双方から画像内の特徴点を抽出し、抽出された特徴点の情報を用いて特徴点の対応付け(マッチング)を行う。次にマッチングの結果に基づいて、付加情報の表示位置を修正するための第1の変換行列を求める。
【0049】
特徴点の対応関係を用いて付加情報の表示位置を修正するための第1の変換行列を計算する手法はAR技術の分野で一般的に用いられている。特徴点に基づいた比較を行うことで、画像内の障害物に比較的影響されない認識が可能になる。本発明の情報端末では、照合部14が第2の変換行列を用いてカメラ画像と2次元画像のどちらかを視点変換した上で第1の変換行列を計算することで、従来のAR技術における画像認識の負荷を低減し、第1の変換行列を高速に計算することができる。
【0050】
本実施形態の照合部14が行う第2の変換行列を用いた視点変換について具体的に式を用いて説明する。本実施形態では、カメラの焦点位置を原点、カメラの光軸をZ軸とした座標系(図3)を用いて視点変換を行う。
【0051】
2次元画像を視点変換する場合、カメラの焦点距離とx軸とy軸の画素サイズの積をそれぞれf,fとすると、2次元画像はピクセル座標の同次表現
【数3】

から変換後のピクセル座標の同次表現
【数4】

に以下の式で変換することができる。
【数5】

ここでHが2次元画像を変換する第2の変換行列となる。なお、行列W’、A、Bは、
【数6】

と表す。
ここで、カメラ画像と2次元画像の双方において対象物は画像の中央に位置していると仮定することで、位置の変化ベクトルtをz座標(つまり目標物と焦点の距離s)のみを持ったベクトルとして扱うことができる。
つまり、t=s、t=0、t=0となる。こうすることにより、対象物との距離を取得するセンサのみによって第2の変換行列を計算することができる。
本実施例では、カメラの内部パラメータf、f、c、cはカメラキャリブレーションによって予め求めておく。
【0052】
<表示画像作成・表示>
制御部16は、第1の変換行列、第2の変換行列、カメラ画像、その付加情報を表示制御部15に入力し、表示制御部15が、付加情報を第1の変換行列と第2の変換行列の積により表示位置を補正することで、付加情報をカメラ画像内の適切な位置に重畳表示することができる。第1の変換行列は、第2の変換行列による付加情報の表示位置の修正をさらに正確に行うためのものであり、第1の変換行列を用いることによって姿勢情報に誤差が含まれていた場合でも正確な位置に付加情報を表示することができる。
【0053】
図4は、本発明の第2の実施形態における情報提供システムの構成を示した概念図である。本情報提供システムは、情報端末1、通信網2、および情報端末1に情報を提供するサービスプロバイダ3を備える。
【0054】
本実施形態の情報提供システムでは、ユーザが情報端末1のカメラを現実空間内にかざすと、情報端末1がGPS衛星等で現在位置を取得し、方位センサモジュール等で方向を取得し、インターネットのような通信網2を介してサービスプロバイダ3と通信を行うことで、現在位置・撮影方向の情報を元にカメラで撮影された画像内に存在すると推測される目標物の2次元画像と付加情報を取得し、照合手段14によって、2次元画像とカメラ画像の対応関係を取得し、この対応関係を利用して、付加情報をカメラ画像と合わせて画面に重畳表示する。
【0055】
本実施形態において、情報端末1は、通信網2を経由してサービスプロバイダ3と通信する通信部17をさらに備える。
【0056】
通信部17は、制御部16の制御によって、情報端末1に搭載されている通信モジュールを利用して、サービスプロバイダ3のデータベースと通信を行い、データベース部13の情報を更新する。データベース部13が全ての2次元画像を記録する場合、通信部17による情報の更新の必要性は低いが、情報端末1のメモリのサイズと、サービスプロバイダ3のデータベースが常に更新されていく利用形態を想定する場合、データベース部13には、例えば現在位置周辺の2次元画像のみ記録することでメモリサイズを必要最小限に抑え、一定時間間隔でサービスプロバイダ3のデータベースから新しい現在位置周辺の2次元画像を取得してデータベース部13の情報を更新することが望ましい。
【0057】
サービスプロバイダ3は、個々の目標物の2次元画像(2次元目標物画像)又は3次元空間の風景を撮影した2次元地図画像を記録するデータベース部31を備える。この2次元画像は、姿勢情報と紐付けて記録され、さらに画像内の目標物に対する付加情報とその表示位置も同時に記録している。データベース部31は、3次元地図や地図内の目標物の画像データを提供する地図データベースと、画面に重畳表示する付加情報を提供するコンテンツデータベースを有している。サービスプロバイダ3は、通信網2を介して情報端末1に端末の位置、方向に則した情報を提供する。地図データベースとコンテンツデータベースは、同一のサービスプロバイダ3が提供する必要はなく、別々のサービスプロバイダ3が提供しても良いし、コンテンツデータベースは複数のサービスプロバイダ3が提供しても良いが、その場合、地図データベースサーバ内の目標物の付加情報をどのサービスプロバイダが提供するかを指定するデータベースを情報端末1が保持するか、地図データベースを提供するサービスプロバイダ3が情報端末1に通知する必要がある。
【0058】
また、情報端末1がデータベース部13を持たず、2次元画像や付加情報を全て通信部17経由でサービスプロバイダ3のデータベース部31から取得することも可能である。その場合、通信部17はデータベース部31に対して制御部16から入力された姿勢情報を送信し、姿勢情報に合った2次元画像とその付加情報を受信する。通信部17は受信した2次元画像とその付加情報を制御部16に入力する。
【0059】
また、データベース部31が2次元画像を多く保有している場合、データベース部13は、最も姿勢情報の近い2次元画像に加えて、カメラが移動することも考慮して、姿勢情報の差分が一定の範囲内に収まる2次元画像と姿勢情報を複数さらに取得しても良い。そうすることで、姿勢情報が変化した場合でも2次元画像を再度取得せずに目標物の位置を特定することができる。
【0060】
なお、上記第1および第2の実施形態では、2次元画像は姿勢情報と紐付けられていたが、第3の実施形態では、データベース部13およびデータベース部31は、2次元画像と結びつけて保有する情報として、姿勢情報のほかに、撮影時の時間や天候、画像の解像度や鮮明度といった情報を保有することができる。本実施形態では、情報端末1は、撮影時の時間や天候を取得する手段をさらに備える。この場合、データベース部13およびデータベース部31は、撮影時の時間や天候、画像の解像度や鮮明度を近い2次元画像を選択することで、カメラ画像と2次元画像間の明度差や解像度の差を減らし、照合部14での認識処理の負荷を削減することができる。
【0061】
この場合、データベース部13およびデータベース部31は姿勢情報に加えてこれらの情報を、所定の評価式に代入し、値が最も大きい2次元画像を取得する。これにより、撮影条件が最も近い2次元画像を選択することができる。撮影時の時間や天候の近さを用いる場合、例えば評価式は下記のようになる。
e=w+wrot+wtime+wweather
ここで、etimeは撮影時の時間帯の近さを表す値であり、例えば下記のようになる。
time=||tdb−tcamera|−12|/6−1
ここで、tdbとtcameraはそれぞれデータベースの2次元画像とカメラ画像の撮影時間を表す。また、ewheatherは撮影時の天候の近さを表す値であり、同じ天候の際に1、異なる天候の際に−1となるようにしても良い。ここで各評価基準の重みづけを変えることで撮影条件の近さの基準を変えることが可能である。
【0062】
本発明の第4の実施形態では、データベース部13およびデータベース部31はさらに、目標物の形状を記録する。この場合、目標物の形状によって撮影条件の近さの基準を変えることで立体物の形状に合わせた画像認識が可能になる。例えば、看板や標識等主に平面で構成されている立体物の場合、撮影方向が多少ずれていても画像を透視変換することで補正することができるが、電柱広告等の円筒状の立体物、石像や銅像等の立体像、木や山等天然の立体物のような曲面で構成されている立体物の場合は撮影方向のずれを正確に補正することができない。データベース部13およびデータベース部31は曲面で構成される立体物が目的物の場合は姿勢情報の角度の重みづけを大きくすることで角度の近さを重視して2次元画像を選択することができる。
【0063】
ここまでの説明ではデータベース部13およびデータベース部31が、2次元画像を多数保有している場合を説明してきたが、データベースとして保有する情報はこれに限ったものではない。例えばデータベースが3次元地図データを保有しており、受信した端末の姿勢に合わせて3次元地図データを2次元画像に変換した画像を情報端末1に送信しても良い。3次元地図データそのものを送信した場合、情報端末1の処理負荷が大きくなってしまうが、情報端末1の姿勢を考慮した2次元画像のみ(またはカメラの移動を考慮した複数の2次元画像やそれを合成した一枚のパノラマ画像)を送信することで、通信の高速化と処理負荷の軽減が可能になる。この場合、データベースは変換した2次元画像に加えて、2次元画像内に含まれる付加情報を表示することのできる目標物を指定して送信する必要がある。
【0064】
また、上記実施形態では、データベース部13及びデータベース部31は2次元画像を記録していた。2次元画像の代わりに、2次元画像から予め抽出した特徴点を姿勢情報と紐付けて記録することも可能である。この場合、データベース部13及びデータベース部31は、姿勢情報が一致する又は最も近い特徴点と付加情報を検索し、制御部16に入力する。姿勢情報が一致する特徴点と付加情報が存在しなかった場合、最も近い位置情報を持つ特徴点と付加情報と、姿勢情報間の対応関係を表す第2の変換行列とを制御部16に返す。制御部16は、カメラ画像、特徴点、および第2の変換行列を照合部14に入力する。照合部14は、カメラ画像を第2の変換行列で変換し、変換したカメラ画像から特徴点を抽出し、これを入力された特徴点と比較することで第1の変換行列を求め、制御部16に出力する。
【0065】
なお、特徴点に基づいた画像認識では、カメラと被写体間の距離や撮影方向の違いによって生じる、被写体の画像のサイズの変化や回転、透視変換による変形に対応した手法が提案されているが、これらに対応することによって計算量や使用メモリが増大する。本実施形態における情報端末1では、カメラの姿勢を考慮して視点変換した2次元画像を使用するため、画像認識する画像間のサイズの変化や回転、変形を抑えることができ、計算量や使用メモリを削減することが可能になる。
【0066】
なお、上記実施形態では、カメラ画像に重畳していたが、重畳する対象はカメラ画像に限ったものではなく、現実空間に付加情報を投影しても良い。また、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に設置した透過(透明)ディスプレイに付加情報を表示し、実際の視界に重畳表示することも可能である。この場合、本発明における情報端末の構成は、姿勢情報を取得する手段とデータベース、姿勢情報をデータベースから検索し、一致する付加情報を取得する制御手段と、付加情報を表示する表示制御手段となる。
【0067】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 情報端末
2 通信網
3 サービスプロバイダ
11 撮像部
12 姿勢情報取得部
13 データベース部
14 照合部
15 表示制御部
16 制御部
17 通信部
31 データベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ画像を取得する撮像手段と、
情報端末の現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する姿勢情報取得手段と、
姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を検索するデータベース部と、
前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算する照合手段と、
前記対応関係を利用して前記付加情報の表示位置を修正して、前記付加情報を前記カメラ画像に重畳表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とする情報端末。
【請求項2】
前記照合手段が、前記カメラ画像と前記2次元画像から特徴点を検出し、該特徴点の対応関係から第1の変換行列を計算し、
前記表示制御手段が、前記第1の変換行列を用いて前記付加情報の表示位置を修正することを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項3】
前記データベース部が、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と、データベース部に記録されている姿勢情報から、前記2次元画像を情報端末の視点に変換する第2の変換行列を計算し、
前記照合手段が、前記第2の変換行列を用いて2次元画像の視点を変換してから、前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算することを特徴とする請求項1または2に記載の情報端末。
【請求項4】
前記姿勢情報取得手段は、情報端末と前記カメラ画像内の対象物との距離、および情報端末の撮影方向を示す姿勢情報を検出し、
前記データベース部が、前記撮影方向、前記距離、およびカメラの内部パラメータの情報から、前記第2の変換行列を計算することを特徴とする請求項3に記載の情報端末。
【請求項5】
前記情報端末は、前記カメラ画像を撮影する際の時間および/または天候を取得する手段をさらに備え、
前記データベース部は、前記2次元画像と結びつけて、前記2次元画像の撮影時の時間および/または天候、並びに2次元画像の解像度および鮮明度である撮影条件を記録しており、
前記データベース部は、前記姿勢情報に加えて、前記撮影条件が最も近い2次元画像を検索することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報端末。
【請求項6】
前記データベース部は、前記付加情報と紐付けて付加情報を表示する対象の形状情報を記録しており、
前記データベース部は、前記形状情報によって前記撮影条件の近さの基準を変更することを特徴とする請求項5に記載の情報端末。
【請求項7】
前記データベース部は、3次元地図データを記録しており、
前記データベース部は、前記3次元地図データを情報端末の姿勢から見た2次元画像に変換し、出力することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の情報端末。
【請求項8】
カメラ画像を取得する撮像手段と、
情報端末の現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する姿勢情報取得手段と、
姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を検索するデータベース部と、
前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算する照合手段と、
前記対応関係を利用して前記付加情報の表示位置を修正して、前記付加情報を前記カメラ画像に重畳表示する表示制御手段と、
サービスプロバイダと通信する通信手段と、
を備える情報端末と、
姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録し、前記姿勢情報取得手段が取得した姿勢情報と一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を検索するデータベース部
を備えるサービスプロバイダと、
を備え、前記情報端末のデータベース部は、前記サービスプロバイダのデータベース部の情報の一部を記録していることを特徴とする情報提供システム。
【請求項9】
前記情報端末のデータベース部は、情報端末の現在位置周辺の姿勢情報と紐付いた2次元画像と付加情報を記録しており、
前記通信手段が、一定の時間間隔、または情報端末が一定距離移動した時、前記サービスプロバイダのデータベース部から新しい現在位置周辺の2次元画像と付加情報を取得し、前記情報端末のデータベース部の2次元画像と付加情報を更新することを特徴とする請求項8に記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記情報端末が、情報端末の移動を考慮して、姿勢情報の差分が一定の範囲内に収まる複数の2次元画像と付加情報をまとめて、前記サービスプロバイダのデータベース部から取得して、前記情報端末のデータベース部に保存することを特徴とする請求項8または9に記載の情報提供システム。
【請求項11】
カメラ画像を取得する撮像ステップと、
情報端末の現在位置および撮影方向を示す姿勢情報を検出する姿勢情報取得ステップと、
姿勢情報が一致する又は最も近い2次元画像と付加情報を、前記姿勢情報と紐付けて2次元画像と付加情報を記録するデータベース部から検索し、取得するステップと、
前記カメラ画像と前記2次元画像間の対応関係を計算する照合ステップと、
前記対応関係を利用して前記付加情報の表示位置を修正して、前記付加情報を前記カメラ画像に重畳表示する表示制御ステップと、
を有することを特徴とする情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37606(P2013−37606A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174673(P2011−174673)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】