説明

情報端末装置および情報端末装置の製造方法

【課題】電気導体に発生する渦電流に起因した情報伝送距離の減小を軽減できること。
【解決手段】情報端末装置1は、フレキシブルプリント配線板等にコイル状のアンテナパターンを形成してなるアンテナ2a、絶縁性かつ非磁性を有したプラスチック等の材料をシート状に成形してなる絶縁部材3、フェライト等の磁性体をシート状に成形してなる磁性部材4、各種電子回路が表面に実装された配線基板5、各種情報を表示する表示装置6aおよび筐体上面部に突起した複数の入力ボタン7aを備え、アンテナ2a、絶縁部材3、磁性部材4、配線基板5および表示装置6aは、筐体内部にあって底面部から順次配置され、さらに、アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4は、順次積層されるように重ね合わせて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶媒体に対して非接触に情報処理を行う情報端末装置および情報端末装置の製造方法に関し、特に情報記憶媒体の情報を読み取る情報読取処理および情報記憶媒体に情報を書き込む情報書込処理を行う情報端末装置および情報端末装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信による情報処理システムの1つであるRFID(Radio Frequency Identification)システムが、入退室管理、物品管理等に利用されている。このRFIDシステムでは、識別情報等を記憶するRFIDタグを管理対象に取り付け、情報端末装置がRFIDタグに対して所定周波数の電波を用いて情報読取処理および情報書込処理を行うことによって管理対象を管理する。
【0003】
通常、RFIDシステムの情報端末装置は、1ターン以上のループ状もしくはコイル状のアンテナを備え、このアンテナによってRFIDタグに対する電波の送受信を行っている。ところが、アンテナの近傍に金属がある場合、アンテナで発生した磁束が金属に錯交することによって金属内に渦電流が発生し、この渦電流による磁界がアンテナで発生した磁界を打ち消すことによって、情報端末装置のRFIDタグに対する情報読取距離および情報書込距離である情報伝送距離が短くなり、さらには情報伝送距離がなくなるという問題があった。この問題を解決するため、アンテナと金属との間に磁性体を配置した情報端末装置が提案されている(たとえば、特許文献1,2,4,5参照)。また、アンテナを有するRFIDタグについても同様の問題があり、この問題を解決するため、アンテナと金属との間に磁性体を配置したRFIDタグが提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0004】
これらの情報端末装置およびRFIDタグは、高い透磁率を有するフェライト等の磁性体に磁束が集中する特性を利用し、アンテナと金属との間に磁性体を配置することによって、アンテナで発生する磁束が金属に錯交しないようにし、あるいは錯交する磁束が減少するようにして情報伝送距離の減小を軽減するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−108966号公報
【特許文献2】特開2004−38552号公報
【特許文献3】特開2004−166175号公報
【特許文献4】特開2003−99733号公報
【特許文献5】特開2004−86654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、RFIDシステムの利便性を促進するため、情報端末装置の小型化の要求が高まっている。しかし、情報端末装置を小型化すると、内部の配線基板、スイッチ、表示装置等に組み込まれた金属部品がアンテナ近傍に配置されることになり、この金属部品に発生する渦電流に起因して、情報端末装置の情報伝送距離が短くなり、さらには情報伝送距離がなくなるという問題がある。この場合も、上述したように、アンテナと金属との間に磁性体を配置することによって情報伝送距離の減小を軽減することはできるが、近傍に金属がない場合と比較して十分な情報伝送距離を確保できるものではなく、所望の情報伝送距離が得られない場合が生じ、結果的に所望の通信ができない場合が生ずるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の小型化等にともなって情報端末装置のアンテナ近傍に金属等の電気導体を配置する場合、この電気導体に発生する渦電流に起因した情報伝送距離の減小を一層軽減することができ、確実に所望の情報伝送距離を得ることができる情報端末装置および情報端末装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1にかかる情報端末装置は、情報記憶媒体に対して非接触に情報処理を行う情報端末装置において、前記情報記憶媒体との間で情報の伝送を行うアンテナと、当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に配置され、磁性を有した磁性部材と、前記電気導体と前記アンテナとの間に配置され、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材と、を備え、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかる情報端末装置は、外部情報端末装置によって非接触に情報処理が行われる情報記憶媒体を内蔵した情報端末装置において、前記情報記憶媒体に接続され、前記外部情報端末装置との間で情報の伝送を行うアンテナと、当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に配置され、磁性を有した磁性部材と、前記電気導体と前記アンテナとの間に配置され、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材と、を備え、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかる情報端末装置は、上記の発明において、前記絶縁部材は、前記アンテナによって前記情報の伝送を行うことができる情報伝送距離が所定値以上もしくは所定範囲内に入る厚さに設定されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかる情報端末装置は、上記の発明において、前記絶縁部材は、非磁性かつ絶縁性を有した複数層によって形成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5にかかる情報端末装置は、上記の発明において、前記絶縁部材は、それぞれ非磁性かつ絶縁性を有した接着剤、接着剤と基材、粘着材、または粘着材と基材によって形成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6にかかる情報端末装置は、上記の発明において、前記磁性部材は、前記電気導体と対向する面に、金属シートもしくは金属板を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7にかかる情報端末装置は、上記の発明において、前記磁性部材は、前記電気導体と対向する面に、接着剤もしくは粘着剤によって、前記金属シートもしくは金属板を接着して有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8にかかる情報端末装置の製造方法は、情報記憶媒体に対して非接触に情報処理を行う情報端末装置の製造方法において、前記情報記憶媒体との間で情報の伝送を行うアンテナを配置するアンテナ配置工程と、当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に、磁性を有した磁性部材を配置する磁性部材配置工程と、前記電気導体と前記アンテナとの間に、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材を配置する絶縁部材配置工程と、を含み、前記磁性部材配置工程は、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすように前記磁性部材を配置することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9にかかる情報端末装置の製造方法は、外部情報端末装置によって非接触に情報処理が行われる情報記憶媒体を内蔵した情報端末装置の製造方法において、前記情報記憶媒体に接続され、前記外部情報端末装置との間で情報の伝送を行うアンテナを配置するアンテナ配置工程と、当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に、磁性を有した磁性部材を配置する磁性部材配置工程と、前記電気導体と前記アンテナとの間に、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材を配置する絶縁部材配置工程と、を含み、前記磁性部材配置工程は、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすように前記磁性部材を配置することを特徴とする。
【0017】
また、請求項10にかかる情報端末装置の製造方法は、上記発明において、前記絶縁部材は、前記アンテナによって前記情報の伝送を行うことができる情報伝送距離が所定値以上もしくは所定範囲内に入る厚さに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる情報端末装置および情報端末装置の製造方法によれば、装置の小型化等にともなって情報端末装置のアンテナ近傍に金属等の電気導体を配置する場合、この電気導体に発生する渦電流に起因した情報伝送距離の減小を一層軽減することができ、確実に所望の情報伝送距離を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明にかかる情報端末装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0020】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる情報端末装置について説明する。図1および図2は、それぞれこの実施の形態1にかかる情報端末装置の概要構成を示すブロック図および斜視図である。図1に示すように、この実施の形態1にかかる情報端末装置1は、管理対象等に取り付けられた外部情報記憶媒体であるRFIDタグ8に対して情報読取処理および情報書込処理を行うRFID処理部2と、各種情報を表示する表示部6と、各種情報の入力を受け付ける入力部7と、情報端末装置1の全体の処理および動作を制御する制御部C1とを備える。RFID処理部2は、RFIDタグ8に対し所定周波数の電波を送受信して情報の伝送を行うアンテナ2aを備え、RFIDタグ8は、同様に、RFID処理部2に対して電波の送受信を行うアンテナ8aを備える。RFID処理部2、表示部6および入力部7は、制御部C1に電気的に接続され、制御部C1は、これらの各構成部位を制御する。また、図2に示すように、情報端末装置1は、筐体内部にあって底面部から順次配置されたアンテナ2a、絶縁部材3、磁性部材4、配線基板5および表示部6としての表示装置6aと、入力部7の一部であって筐体上面部に突起した複数の入力ボタン7aとを備える。アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4は、順次積層されるように重ね合わせて配置される。
【0021】
アンテナ2aは、たとえば、硬質プリント配線板、フレキシブルプリント配線板等に1ターン以上のコイル状もしくはループ状のアンテナパターンを形成して実現される。なお、硬質プリント配線板あるいはフレキシブルプリント配線板では、通常、銅箔等の導体層のプリントパターンによってアンテナパターンが形成されるが、エナメル線等によってループを構成するようにしてもよい。また、アンテナパターン形状は、円形、矩形もしくは一部折れ曲がった形状等、任意の形状でよい。なお、情報端末装置1の小型化を図る場合、省スペース化対応および立体的な筐体形状への対応などの点で、硬質プリント配線板よりもフレキシブルプリント配線板の使用が好ましい。
【0022】
絶縁部材3は、絶縁性かつ非磁性を有したプラスチック等の材料をシート状もしくはプレート状に成形して実現され、磁性部材4は、フェライト等の磁性体をシート状もしくはプレート状に成形して実現される。なお、絶縁部材3は、空間すなわち空気層でもよい。この空間を満たす空気層は、絶縁性および非磁性を有し、絶縁部材3として作用する。また、磁性部材4は、内部に渦電流が発生しないように、さらに絶縁性を有することが望ましく、たとえば、導電性を有した磁性体を材料として用いる場合、この磁性体を粉末状にしてプラスチック等の絶縁材料に混ぜ込み成形することによって、局所的に導電性を有しても、全体として絶縁性を有するように形成することが好ましい。
【0023】
配線基板5は、情報端末装置1の機能を実現するためのICチップ、各種電子回路等が表面に実装された回路基板であり、制御部C1を実現するCPUを動作させる高速クロック等で発生するノイズを低減させるため、たとえば、基板の全面もしくは大部分の面がグランド面である層(グランドプレーン)を有した多層基板を用いて実現される。
【0024】
表示装置6aは、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等を用いて実現され、情報読取処理によってRFIDタグ8から読み取られた情報等、各種情報をディスプレイ上に表示する。なお、表示装置6aは、入力部7としてのタッチパネルをディスプレイ上に備えるようにしてもよく、この場合、ディスプレイおよびタッチパネルで発生するノイズを低減するため、たとえば、裏面など、表示面以外の表面に薄い金属板(シールド板)が設けられる。
【0025】
入力ボタン7aは、情報端末装置1が行う各種処理および動作の指示情報の入力を受け付ける。入力ボタン7aは、たとえば、外部から押し込まれることによって配線基板5上に配置されたプッシュスイッチ7bの金属接点を接続し、所定の処理回路に接続信号を伝送する。
【0026】
図3は、アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4を底面側から見た場合の構成を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、アンテナ2aは、図上、上面側であって、情報端末装置1の底面側にコイル状に形成されたアンテナパターン2aaを有する。電気導体9は、上述した配線基板5のグランドプレーン、表示装置6aのシールド板、プッシュスイッチ7bの金属接点等、情報端末装置1内に存在する電気導体の総体を模式的に示したものである。情報端末装置1では、絶縁部材3および磁性部材4を配置しない場合、この電気導体9に発生する渦電流によってアンテナ2aで発生する磁界が打ち消され、情報伝送距離が減小する。これに対し、従来は、電気導体9とアンテナ2aとの間に磁性部材4を配置することによって、情報伝送距離の減小を抑制するようにしていたが、この実施の形態1では、さらに磁性部材4とアンテナ2aとの間に絶縁部材3を配置することによって、情報伝送距離の減小を一層抑制するようにしている。なお、図3では、アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4が互いに対向する面を同じ大きさで示しているが、必ずしもこの限りではなく、アンテナ2aの大きさに対して絶縁部材3および磁性部材4の大きさをある程度大きくするか、あるいは小さくするようにしてもよい。また、図3では、磁性部材4と電気導体9との間隔層を空気層としているが、この間隔層に絶縁部材3と同様の絶縁部材を配置するようにしてもよい。
【0027】
図4は、図3に示したアンテナ2a、絶縁部材3、磁性部材4および電気導体9のA−A線断面図である。図4に示すように、絶縁部材3は、アンテナ2aおよび磁性部材4に対して密着して配置されている。情報端末装置1の小型化を図る場合、アンテナ2aと電気導体9との間隔は必然的に小さくなるため、このようにアンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4は互いに密着して配置させることが配置都合上、有効である。なお、実用的には、アンテナ2aから電気導体9までの間隔は、0.1mmでも小さいことが望まれ、具体的には1mm以下を目標とする場合がある。そして、このように限られたスペースの中でアンテナ2aと電気導体9とが密接して配置される場合に、電気導体9に発生する渦電流をいかに抑制するかが本発明の課題である。
【0028】
アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4を互いに密着配置させるためには、図5に示すように、絶縁性および非磁性を有した絶縁基材3aと絶縁接着剤3bとの2層によって絶縁部材3を形成し、絶縁接着剤3bによって絶縁基材3aを磁性部材4に接着するようにしてもよい。さらに、絶縁基材3aのアンテナ2aに対向する面に絶縁接着剤の層を設け、絶縁基材3aとアンテナ2aとを接着するようにしてもよい。このように、アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4を互いに接着することによって、安価かつ簡便に各部材を密着配置させることができる。この場合、絶縁接着剤3bは、塗布して形成する接着剤であってもよいし、貼付して形成する粘着テープであってもよい。
【0029】
なお、絶縁部材3は、さらに複数層によって形成し、たとえば図6に示すように、絶縁基材3c,3dおよび絶縁接着材3bの3層構造としてもよく、さらに、各層の部材を絶縁性および非磁性を有した絶縁接着剤によって接着するようにしてもよい。また、各部材を密着させる必要がない場合には、たとえば図7に示すように、絶縁部材3とアンテナ2aとの間に部材を配置せず空気層3eを設けるようにしてもよい。この空気層3eは、絶縁性および非磁性を有し、絶縁部材3として作用する。
【0030】
ここで、アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4を配置する工程として、たとえば、図4に示したように個別に部材を配置する場合、情報端末装置1の筐体にアンテナ2aを配置し、このアンテナ2aの上に順次、絶縁部材3および磁性部材4を配置すればよい。また、図5に示したように絶縁接着剤3bによって部材を接着して配置する場合、たとえば、筐体にアンテナ2aを配置し、その後、接着した絶縁部材3および磁性部材4をアンテナ2a上に配置すればよい。あるいは、情報端末装置1の筐体とは別に、アンテナ2a、絶縁部材3および磁性部材4を順次重ね合わせて一体の部品とし、その後、この一体の部品を筐体に固定するようにしてもよい。なお、絶縁部材3は、これら配置工程の前にあらかじめ、アンテナ2aの最終的な情報伝送距離が所定値以上もしくは所定範囲内に入る厚さに成形しておくとよい。
【0031】
つぎに、絶縁部材3を配置したアンテナ2aと磁性部材4との間隔の作用によって、電気導体9に発生した渦電流に起因する情報伝送距離の減小が抑制されることを示す実験結果について説明する。図8は、アンテナ2aから磁性体4までの間隔と、磁性部材4の厚さと、磁性部材4から電気導体9までの間隔とを変化させて測定した情報伝送距離の結果を示す図である。ここで、アンテナ2aから磁性部材4までの間隔をA、磁性部材4の厚さをB、磁性部材4から電気導体9までの間隔をCとすると、アンテナ2aから電気導体9までの間隔は(A+B+C)に等しい。組合せ「1」は、従来技術に相当し、アンテナ2aと磁性部材4、および磁性部材4と電気導体9をそれぞれ0.15mm厚の粘着剤である両面テープによって貼り合わせた構成で情報伝送距離を測定した結果である。これに対して、組合せ「2」および「3」は、間隔Aを間隔Cよりも大きくした本発明の構成による測定結果であり、それぞれ厚さBを固定し、間隔Aを変化させた場合の測定結果である。また、組合せ「4」は、厚さBと間隔(A+B+C)とを組合せ「3」と等しくし、間隔Aを間隔Cよりも小さくした構成の測定結果である。なお、この測定で使用したアンテナ2aは、25μm厚のポリイミドを基材としたフレキシブル配線板にアンテナパターンを形成しており、周波数13.56MHzの電波を送受信できる。
【0032】
図8に示すように、間隔(A+B+C)=1.3mmが等しい組合せ「1」および「3」の情報伝送距離はそれぞれ35mmおよび60mmであり、組合せ「3」は組合せ「1」の約1.7倍の情報伝送距離を有している。この結果は、間隔(A+B+C)が等しい場合、絶縁部材3を配置した間隔Aを間隔Cよりも大きくすることによって、アンテナ2aの情報伝送距離を少なくとも約1.7倍に延伸できることを示している。すなわち、この結果は、絶縁部材3を配置した間隔Aを間隔Cよりも大きくすることによって、従来技術に比して、電気導体9に発生する渦電流に起因した情報伝送距離の減小を一層抑制できることを示している。
【0033】
同様に、間隔(A+B+C)=1.3mmが等しい組合せ「3」および「4」の情報伝送距離はそれぞれ60mmおよび40mmであり、組合せ「3」は組合せ「4」の約1.5倍の情報伝送距離を有している。この結果は、間隔(A+B+C)および厚さBが等しい場合、絶縁部材3を配置した間隔Aを間隔Cよりも大きくし、すなわち、磁性部材4をアンテナ2aよりも電気導体9に近く配置することによって、アンテナ2aの情報伝送距離を少なくとも約1.5倍に延伸できることを示している。
【0034】
また、組合せ「2」では、間隔(A+B+C)=1.1mmであり、組合せ「1」に比べて、アンテナ2aから電気導体9までの間隔が小さくなっているにもかかわらず、絶縁部材3を配置した間隔Aを間隔Cよりも大きくすることによって、情報伝送距離を35mmから45mmへと約1.3倍に延伸できることを示している。この組合せ2の結果でも、情報伝送距離の減小を従来技術より抑制できることがわかる。
【0035】
なお、磁性部材4は、アンテナ1から電気導体9方向に発生した磁束が磁性部材4の中を通り、磁性部材4を配置しない場合に比べ、電気導体9に錯交する磁束を減少させるため、情報送信距離の減小を抑制するものである。
【0036】
以上説明したこの実施の形態1にかかる情報端末装置1およびこの情報端末装置1の製造方法によれば、装置の小型化等にともなってアンテナ2aの近傍に情報端末装置1の内部に存在する金属等である電気導体9を配置する場合、アンテナ2aと電気導体9との間に磁性を有した磁性部材4を配置し、さらに、アンテナ2aから磁性部材4までの間隔Aを磁性部材4から電気導体9までの間隔Cよりも大きくすることによって、電気導体9に発生する渦電流に起因したアンテナ2aの情報伝送距離の減小を一層軽減することができ、確実に所望の情報伝送距離を得ることができる。
【0037】
なお、上述した情報端末装置1は、RFIDタグ8に対し所定周波数の電波を送受信して情報読取処理および情報書込処理を行う情報端末装置として説明したが、このような情報端末装置に限定されるものではなく、たとえば図9に示すような情報端末装置であってもよい。図9は、この実施の形態1の変形例としての情報端末装置の概要構成を示すブロック図である。図9に示すように、この変形例としての情報端末装置11は、図1に示した情報端末装置1のRFID処理部2に代えて、アンテナ2aを接続したRFIDチップ12を備えている。情報端末装置11は、アンテナ2aによって、外部情報端末装置21が備えるRFID処理部22との間で所定周波数の電波を送受信する。そして、情報端末装置11は、受信電波による外部情報端末装置21からの指示情報をもとに、RFIDチップ12に対して情報の入出力を行う。なお、RFID処理部22は、アンテナ22aによって、情報端末装置11に対して電波を送受信する。また、RFIDチップ12の起動、電力供給等は、情報端末装置11または外部情報端末装置21のどちらから行うようにしてもよい。
【0038】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、アンテナ2aと電気導体9との間に絶縁部材3と磁性部材4とを配置するようにしていたが、この実施の形態2では、磁性部材4と電気導体9との間に、さらに金属シートを配置するようにしている。
【0039】
図10は、本発明の実施の形態2にかかる情報端末装置のアンテナ周辺部の構成を示す断面図である。図10に示すアンテナ周辺部の構成では、図5に示した構成であるアンテナ2a、絶縁部材3、磁性部材4および電気導体9に加えて、磁性部材4と電気導体9との間に金属シート14が配置されている。この金属シート14は、接着剤13によって磁性部材4に接着されている。その他の構成は、情報端末装置1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0040】
金属シート14は、銅、アルミ等の導体金属によって形成され、シートに限らずプレート状であってもよい。接着剤13は、絶縁体、電気導体、磁性体、非磁性体のいずれで形成されてもよく、また、塗布して形成する接着剤、貼付して形成する粘着テープ等のいずれであってもよい。金属シート14は、この金属シート14もしくは磁性部材4に形成された接着剤13によって、磁性部材4に接着される。
【0041】
このように金属シート14をさらに配置することによって、アンテナ2aから電気導体9方向に発生した磁束であって磁性部材4によって捕捉されなかった磁束は、金属シート14に錯交して渦電流を発生させるが、電気導体9に錯交せず渦電流を発生させない。このため、電気導体9によって情報伝送距離が減小させられることがなくなり、たとえば、情報端末装置の組み付けのばらつきにともなってアンテナ2aから電気導体9までの距離が個体によって変動しても、情報伝送距離は個体によらず安定させることができる。
【0042】
ここで、図8に示す表との対応関係は、次の通りである。金属シート14は、電気的には電気導体9と等価の動きを示すので、表中の電気導体9を金属シート14に置き換えた形となる。つまり、磁性部材4と電気導体9の間隔(C)は、磁性部材4と金属シート14の間隔(C)となり、さらに、アンテナ2aと電気導体9の間隔(A+B+C)は、アンテナ2aと金属シート14の間隔(A+B+C)となる。
【0043】
また、金属シート14をさらに配置することによって、アンテナ2から金属シート14までの積層部品をユニット化することができる。このユニット化によって、情報伝送距離を含む種々のアンテナ性能評価をユニット単体で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる情報端末装置の概要構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる情報端末装置の概要構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示した情報端末装置のアンテナ周辺部材の構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示したA−A断面を示す断面図である。
【図5】図4に示した絶縁部材の変形例を示す断面図である。
【図6】図4に示した絶縁部材の変形例を示す断面図である。
【図7】図4に示した絶縁部材の変形例を示す断面図である。
【図8】図4に示した絶縁部材を配置したアンテナと磁性部材との間隔の作用によって情報伝送距離の減小が抑制される効果を説明する実験結果を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる情報端末装置の変形例の概要構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる情報端末装置のアンテナ周辺部材の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,11 情報端末装置
2,22 RFID処理部
2a,22a アンテナ
2aa アンテナパターン
3 絶縁部材
3a,3c,3d 絶縁基材
3b 絶縁接着剤
3e 空気層
4 磁性部材
5 配線基板
6 表示部
6a 表示装置
7 入力部
7a 入力ボタン
7b プッシュスイッチ
8 RFIDタグ
8a アンテナ
9 電気導体
12 RFIDチップ
13 接着剤
14 金属シート
21 外部情報端末装置
C1,C2,C3 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記憶媒体に対して非接触に情報処理を行う情報端末装置において、
前記情報記憶媒体との間で情報の伝送を行うアンテナと、
当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に配置され、磁性を有した磁性部材と、
前記電気導体と前記アンテナとの間に配置され、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材と、
を備え、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすことを特徴とする情報端末装置。
【請求項2】
外部情報端末装置によって非接触に情報処理が行われる情報記憶媒体を内蔵した情報端末装置において、
前記情報記憶媒体に接続され、前記外部情報端末装置との間で情報の伝送を行うアンテナと、
当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に配置され、磁性を有した磁性部材と、
前記電気導体と前記アンテナとの間に配置され、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材と、
を備え、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすことを特徴とする情報端末装置。
【請求項3】
前記絶縁部材は、前記アンテナによって前記情報の伝送を行うことができる情報伝送距離が所定値以上もしくは所定範囲内に入る厚さに設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の情報端末装置。
【請求項4】
前記絶縁部材は、非磁性かつ絶縁性を有した複数層によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の情報端末装置。
【請求項5】
前記絶縁部材は、それぞれ非磁性かつ絶縁性を有した接着剤、接着剤と基材、粘着材、または粘着材と基材によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の情報端末装置。
【請求項6】
前記磁性部材は、前記電気導体と対向する面に、金属シートもしくは金属板を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の情報端末装置。
【請求項7】
前記磁性部材は、前記電気導体と対向する面に、接着剤もしくは粘着剤によって、前記金属シートもしくは金属板を接着して有することを特徴とする請求項6に記載の情報端末装置。
【請求項8】
情報記憶媒体に対して非接触に情報処理を行う情報端末装置の製造方法において、
前記情報記憶媒体との間で情報の伝送を行うアンテナを配置するアンテナ配置工程と、
当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に、磁性を有した磁性部材を配置する磁性部材配置工程と、
前記電気導体と前記アンテナとの間に、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材を配置する絶縁部材配置工程と、
を含み、前記磁性部材配置工程は、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすように前記磁性部材を配置することを特徴とする情報端末装置の製造方法。
【請求項9】
外部情報端末装置によって非接触に情報処理が行われる情報記憶媒体を内蔵した情報端末装置の製造方法において、
前記情報記憶媒体に接続され、前記外部情報端末装置との間で情報の伝送を行うアンテナを配置するアンテナ配置工程と、
当該情報端末装置内に存在する電気導体と前記アンテナとの間に、磁性を有した磁性部材を配置する磁性部材配置工程と、
前記電気導体と前記アンテナとの間に、非磁性かつ絶縁性を有した絶縁部材を配置する絶縁部材配置工程と、
を含み、前記磁性部材配置工程は、前記アンテナと前記磁性部材とに挟まれた第1の層厚をd1、前記磁性部材と前記電気導体とに挟まれた第2の層厚をd2としたとき、d1>d2なる関係を満たすように前記磁性部材を配置することを特徴とする情報端末装置の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁部材は、前記アンテナによって前記情報の伝送を行うことができる情報伝送距離が所定値以上もしくは所定範囲内に入る厚さに設定されることを特徴とする請求項8または9に記載の情報端末装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−190181(P2006−190181A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2797(P2005−2797)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】