説明

情報表示カード、およびそれを用いた情報表示システム

【課題】 可視情報を実用に耐え得る速度で画像として書き込み、消去でき、必要に応じてその内容を音声情報としても再生できる情報表示カードおよびそのカードを用いた情報表示システムを提供すること。
【解決手段】 情報表示カード及び情報表示システムは、書き換え可能な可視情報表示手段と音声再生手段を備えた情報表示カードにおいて、前記音声再生手段が前記可視情報表示手段に表示される情報を音声に変換し出力する音声変換手段を有することを特徴とする情報表示カードとその情報表示カードを用いた情報表示システムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報表示カードおよびそれを用いた情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、リサイクルに対する関心が高まっている中で、紙などの記録媒体を繰り返して利用できることが望まれている。このような技術開発に対する取り組みにおいては、簡易な手段によって省エネルギーによる記録、消去が可能なリライタブルな表示・記録材料が注目されている。この種の可逆性記録表示材料は、記録媒体をリサイクルするということから、様々な応用が可能である。
【0003】
一方、一時的な画像形成が行なえ、不要となったときにはその画像の消去ができるような、すなわち表面に情報が可視的に表示され、かつ情報の書き換えが可能なリライトカードの開発が行なわれ、近年市場で会員カード、IDカード、ポイントカード等として使用されている。
【0004】
また、画像として可視的に表示しかつ書き換え可能とする技術は、分子構造内にラクトン環を持ち、電子放出によりラクトン環を開環させて構造変化をもたらし発色を呈する電子供与性化合物(いわゆるロイコ染料)と、顕減色剤として酸・塩基化合物との間で、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成させることによって発現するものであり、例えばこのような電子供与性化合物と顕減色剤とを主成分として樹脂母材中に含有させてなる可逆性感熱記録層が支持体上に設けられてなる可逆性記録材料をリライトカードとしたものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
同様に、ハニカム構造のセル中に白色の液体と黒色の磁性粉を混合したものを入れ、磁気ペン又は磁気ヘッドで文字又は図形等の画像を、一方向に吸引した磁性粉で表示する磁性粉表示技術は、ホワイトボードの替わりとして既に導入されているものである。また、リライタブルカードとしては、マイクロカプセル化したセルをPETフィルム上にバインダーを介して塗布した構成を採用し、磁気ペン等でマイクロカプセル内の磁性粉を移動させて、文字等の画像を表示させるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0006】
また、このような可逆性記録材料が有する、情報を可視的に表示しかつ書き換え可能とする機能は、従来からある情報記録カードの欠点である不可視情報が判らないという不満を充分補填できるものとして注目され、画像表示手段として情報を可視的に表示しかつ書き換え可能とする機能と、情報記憶手段として情報を記録し書き換え可能とする機能の双方を合わせ持つカードが開発され、最近市場で使われ始めている。(例えば、特許文献5、6参照。)
【特許文献1】特開平2−188293号公報
【特許文献2】特開平2−188294号公報
【特許文献3】特開平5−16575号公報
【特許文献4】特開平9−231553号公報
【特許文献5】特開2000−137782号公報
【特許文献6】特開平9−223207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来技術によると、表面に情報が可視的に表示され、かつ情報の書き換えが可能なリライトカードを使用する場合に、視覚に障害をもつ人が使用することに対しては、何ら配慮されていない。従って、視覚に障害を持つ人は使用できず、また使用する場合には健常者の助けを得なければならない。また、カードの読み取り装置側に音声案内を設けることも提案されているがこれでは大きな読み取り装置を設置することになり、コスト高となってしまう。更に、このようなユニバーサルデザインでないカードシステムでは、視覚障害のある人の購買意欲を減退させる可能性がある。このように、従来のリライト部を有する情報表示カードおよびそのシステムは視覚障害者に対する視点に欠けるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、可視情報を実用に耐え得る速度で画像として書き込み、消去でき、必要に応じてその内容を音声情報としても再生できる情報表示カードおよびそのカードを用いた情報表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の手段により達成できる。
【0010】
請求項1に係る情報表示カードは、書き換え可能な可視情報表示手段と音声再生手段を備えた情報表示カードにおいて、前記音声再生手段が前記可視情報表示手段に表示される情報を音声に変換し出力する音声変換手段を有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る情報表示カードは、請求項1に記載の情報表示カードにおいて、前記可視情報表示手段が磁性粉またはロイコ系染料を主成分とする可視情報表示部を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係る情報表示カードは、請求項2に記載の情報表示カードにおいて、前記可視情報表示手段がカラー表示の書き換え可能な可視情報表示手段であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る情報表示カードは、請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報表示カードにおいて、筆記具で書き込める記載部分が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に係る情報表示カードは、請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報表示カードにおいて、不可逆的に固有情報を記録できる情報表示手段を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に係る情報表示カードは、請求項5に記載の情報表示カードにおいて、前記不可逆的に固有情報を記録できる情報表示手段がホログラム形成層または回折格子形成層を有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に係る情報表示カードは、請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報表示カードにおいて、不可視情報記録手段を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に係る情報表示カードは、請求項7に記載の情報表示カードにおいて、前記不可視情報記録手段が磁気記録層を有することを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に係る情報表示カードは、請求項7に記載の情報表示カードにおいて、前記不可視情報記録手段が追記型光記録層を有することを特徴とするものである。
【0019】
請求項10に係る情報表示カードは、請求項7に記載の情報表示カードにおいて、前記不可視情報記録手段がIC(集積回路)を有することを特徴とするものである。
【0020】
請求項11に係る情報表示カードは、請求項7乃至10の何れか1項に記載の情報表示カードにおいて、情報表示カードの一面に前記可視情報表示手段と音声再生手段が配置された部分を有し、他方の面に前記不可視情報記録手段が配置された部分を有することを特徴とするものである。
【0021】
請求項12に係る情報表示カードは、請求項7乃至10の何れか1項に記載の情報表示カードにおいて、情報表示カードの表面に前記可視情報表示手段が配置された部分、前記不可視情報記録手段が配置された部分および音声再生手段が配置された部分を有することを特徴とするものである。
【0022】
請求項13に係る情報表示カードは、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の情報表示カードにおいて、情報表示カードの表面に前記可視情報表示手段が配置された部分があり、裏面に前記不可視情報記録手段が配置された部分を有する積層構成になっていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項14に記載の情報表示システムは、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報表示カードが備える可視情報表示手段に、前記リーダーライターが保有するデータが電気信号で書き込まれることを特徴とするものである。
【0024】
請求項15に記載の情報表示システムは、外部情報機器及びリーダーライターを備え、前記外部情報機器からデータが赤外線で前記リーダーライターに転送され、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報表示カードが備える可視情報表示手段に、前記リーダーライターから前記データが電気信号で書き込まれることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、本発明に係る情報表示カードが取得した可視情報を必要に応じて音声情報として再生できるので、目の不自由な人に対しても配慮された情報表示カードおよびそのカードを用いた情報表示システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以上の目的を達成するため、本発明に係る情報表示カードは、書き換え可能な可視情報表示手段と音声再生手段とを備えている。両者は、たとえば、情報表示カードの表裏面にそれぞれ配置されるか、表面または裏面のいずれかに並べて配置されるか、積層して配置される。可視情報表示手段は、磁性粉を主成分とするかまたは、ロイコ染料と顕色剤として長鎖アルキル基を持つ電子受容性化合物とを主成分とし、情報の表示、追記、消去が可能である。音声再生手段は可視情報表示手段に表示される情報を音声に変換する音声変換手段を有する音声ICモジュールと、前記音声ICモジュールからの音声データを音声出力するスピーカとを備えたものである。
【0027】
本発明によれば、情報表示カード上に書き換え可能な可視情報を表示することができ、その情報を音声として確認することができる。特に、可視情報表示手段に用いる可逆性記録材料として磁性粉または、ロイコ染料と顕色剤として長鎖アルキル基を持つ電子受容性化合物とを用いることで、記録情報に応じた磁界または熱を付与することによって所望の色を高速で表示することが可能であり、カラーの表示も行うことができる。また、逆磁場の印加や再加熱によって可視情報が消去され繰り返し書き込むことができる。
【0028】
このような可視情報表示手段は磁気ヘッドによる磁界の印加やサーマルヘッドによる加熱によって、あるいはレーザービーム走査装置から照射される光エネルギーやマスクを介して露光されるフラッシュ光のエネルギーによって、あるいはホットスタンプから加えられる加熱によって、文字、数字、図形等が書き込まれる。また、磁気ヘッドのよる逆磁場の印加やヒートローラー等による全面加熱や全面露光による光エネルギーの照射等で可視情報が消去される。
【0029】
本発明において、ポイントカードであれば、書き換え可能な可視情報表示手段に使用するごとに使用日やポイントの残高等が記録される。使用者は目視によって現在のポイント等を確認することができる。また、ポイントの使用日や残高等の可視情報を音声再生手段によっても確認することができる。
【0030】
本発明において、不可視情報記録手段には、銀行用カードであれば、使用するごとに支払い金額や口座の残高等が記録される。また、可視情報表示手段には、同じく支払い金額や残高が表示され、使用者は目視によってこれらの情報を得ることができる。また、音声によっても可視情報を確認することができる。一方、プリペードカードであれば購入店や使用金額と残高が不可視情報記録手段に記録される。また、可視情報表示手段には、使用金額や残高が表示され、使用者は目視によって、または音声によってこれらの情報を得ることができる。
【0031】
また、本発明によれば、駆動用電極あるいは偏光板等を必要とすることなく可視情報をカラーで表示することができ、構造が簡単であり、安価に製造することができる。特に、既に完成されている書き換え可能な情報表示カードに音声再生手段を圧接着すれば、極めて容易に本発明の情報表示カードとすることもできる。
【0032】
本発明では磁性粉を液体中に分散させてマイクロカプセル化した微粒子を樹脂中に分散させて表示層としてもよい。これは、鉄、ニッケル、鉄−ニッケル合金、アルミニウム−コバルト合金、サマリウム−コバルト合金等の金属粉又は合金粉等の磁性粉で、粒径3〜15μm程度、通常は保持力500〔Oe〕以上の磁性粉をマイクロカプセル中に液体と共に充填して該液体に浮遊させることで、外部から与える磁場の方向に感応して整列した磁性粉からの反射光が変化して、可逆表示層としての反射濃度が変化して可視情報が表示できる仕組みである。すなわち、外部から水平磁場を与えれば磁性粉が水平配向して、外部からの入射光が磁性粉で反射して該磁性粉が呈する色が見え、外部から垂直磁場を与えれば磁性粉が垂直配向して、外部からの入射光は磁性粉ではなく、磁気マイクロカプセルを通過して下の層の色が見える。
【0033】
さらに、本発明では、可視情報表示手段の表示層を磁性粉と低融点化合物や低軟化点樹脂との複合膜にて形成してもよい。この場合、書き込み及び消去は磁界と熱の併用で行なわれる。このような複合膜とすることで、表示層の機械的強度が高められ、媒体が曲げや摩擦に対して強くなる。さらに、この表示層には形状が一定したスぺーサーが含まれていてもよい。スペーサーを含有することで表示層の厚みを均一化することができ、かつ、磁気ヘッドとヒートローラーで可視情報を消去する場合に表示層の厚みを一定に維持できる。
【0034】
使用可能なスぺーサーとしては、液晶パネル用として市販されている球形や板状の樹脂微粒子や無機微粒子が用いられる。
【0035】
さらに、本発明では、可視情報表示手段の表示層上に保護層を設けてもよい。この保護層によって記録層が機械的あるいは化学的に外部から保護されることになる。
【0036】
保護層に使用可能な材料としては、高分子樹脂溶液を塗布して塗膜を形成してもよいし、樹脂フィルムをラミネートしてもよい。また、無機材料の蒸着によって保護層を形成してもよいし、ゾル−ゲル法を用いて溶液を塗布して形成してもよい。
【0037】
さらに、本発明に係る情報表示カードにあっては、表示層の一部を非可逆性記録領域とし、この領域に予め特定の情報を書き込んでおくこともできる。例えば、会社名や飾り図柄を予め書き込んでおくことで、特定のフォーマットされた記録媒体として使用することができる。
【0038】
また、新たに固有の情報を記録表示し、固有情報記録部の改ざん、書き換えが出来ないものを提供することが出来る。
【0039】
さらに、本発明に係る情報表示カードにあっては、表示層の一部に筆記具による記録表示領域を設け、この領域にサインや特定情報を個人的に書き込めるようにしておくこともできる。例えば、氏名や住所を記入する欄として使用することができる。
【0040】
さらに、本発明に係る情報表示カードにあっては、表示層の一部にホログラム形成層ないし回折格子形成層を設け、この領域に予め特定の情報を書き込んでおくこともできる。このホログラム層は、二次元または三次元画像を再生可能な、表面凹凸パターン等で形成したものであり、また、物体光と参照光との光の干渉による強度分布を表面凹凸パターンとして記録しているレリーフホログラムを含むものが使用できる。レリーフ回折格子もまた表面凹凸パターンとして記録しているものである。これらレリーフホログラム、レリーフ回折格子は、表面凹凸部に情報を記録しているため、この凹凸部に反射層を設けて再生するものである。例えば、特定の図柄や文字を予め記録しておくことで、情報表示カードの偽造を困難なものとすることが出来る。
【0041】
また、特定の情報表示カードの検出や照合に利用することもできる。
【0042】
本発明に使用される書き換え可能な表示手段について以下に説明する。
【0043】
まず、ロイコ染料を用いた書き換え可能な感熱記録層を用いた表示手段について説明する。感熱記録層の膜厚は1〜20μmの範囲がよく、より好ましくは3〜15μmである。また、記録層に含有させるロイコ染料としては以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、ロイコ染料を単独または混合して用いることもできる。
【0044】
2−アリニノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−n−シクロへキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アリニノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリフルオロメチルアリニノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアリニノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アリニノ−6−(N−n−へキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアリニノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロへキシルアミノフルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド。
【0045】
本発明で用いる発色剤は前記フルオラン化合物、アザフタリド化合物のほかに、従来公知のロイコ染料を単独または混合して使用することができる。その発色剤としては、2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロへキシルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジブチルフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−トルイジノ)フルオラン等。
【0046】
本発明において好ましく用いられる他の発色剤の具体例を示すと以下の通りである。
【0047】
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−2−エトキシプロピル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロロアニリノ)−6−(N−n−オクチルアミノ)フルオラン、2−(o−メトキシベンゾイルアミノ)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アセチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、2−(α−ナフチルアミノ)−3,4−ベンゾ−4′−ブロモ−6−(N−ベンジル−N−シクロへキシルアミノ)フルオラン、2−ピペリジノ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エトキシエチル−N−エチルアミノ)フルオラン、ベンゾロイコメチレンブルー、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、2−[(3,6−ジエチルアミノ)−9−(o−クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4−クロロ−5−メトキシフェニル)フタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6′−ブロモ−2′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン等。
【0048】
発色剤と組み合わせて用いられる顕色剤としては、長鎖脂肪族炭化水素基を持つ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物等、分子内に発色剤を発色させることができる顕色能を持つ構造と分子凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物が使用される。顕色能を持つ構造としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性の基が用いられるが、これらに限定されず、チオ尿素基、カルボン酸金属塩基など発色剤を発色できる基を持てばよい。
【0049】
分子間の凝集力をコントロールする構造の代表例としては長鎖アルキル基等の炭化水素基などがある。この炭化水素基の炭素数は8以上であることが良好な発色・消色特性を得る上で好ましい。また、この炭化水素基には不飽和結合が含まれていてもよく、また分岐状の炭化水素基であってもよい。この場合も主鎖部分は炭素数8以上であることが好ましい。上記のように顕色剤は、顕色能を持つ構造と炭化水素基のような分子間の凝集力をコントロールする構造が連結した構造を持つ。この連結部分にはヘテロ原子を含む2価の基、または、これらの基が複数個組み合わせた基を挟んで結合していてもよい。
【0050】
以下、本発明に用いられる顕色剤について具体的に例示する。なお、顕色剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0051】
(OH)m−Φ−X1−(R1−X2)n−R2
式中、Φはフェニレン基を表す。X1はヘテロ原子を含む2価の基または直接結合を示し、X2はヘテロ原子を含む2価の基を示す。R1は2価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜22の炭化水素基を表す。また、nは0〜4の整数を表し、nが2〜4のとき繰り返されるR1およびX2は同一でも、異なっていてもよい。また、mは1〜3を表す。具体的には、R1およびR2は置換基を有してもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも方香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水産基、ハロゲン原子、アルコキシ基等がある。なお、R1は直接結合でもよい。また、R1およびR2の炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上が特に好ましい。X1及びX2はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは−NH−、−CO−、−O−、−SO2−、−S−の基を少なくとも1個以上有する2価の基を表す。
【0052】
本発明のロイコ染料を用いた可逆性記録材料を用いた表示手段に発色画像を形成させるためには、一旦発色温度に加熱した後、急冷すればよい。
【0053】
具体的には、たとえばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局所的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。
【0054】
一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや高目の温度に加熱し、除冷すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラー、熱スタンプ、熱風、セラミックヒーターなどを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱してもよい。記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや向上させればよい。
【0055】
この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、画像の消去と新しい画像の表示によりいわゆるオーバーライトが可能となる。記録装置としては、通常用いられるプリンター以外に熱転写プリンター、昇華型プリンターなどを用いてもよい。また、熱ローラー、熱スタンプによって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0056】
また、画像の書き込みは、サーマルヘッド以外に、レーザービーム走査装置によるデジタル露光、マスクを介してのフラッシュ露光あるいはホットスタンプ等によって行うことができる。
【0057】
次に、磁性粉を用いた磁気記録層からなる書き換え可能な表示手段について説明する。
【0058】
磁気記録層の膜厚は3〜200μmの範囲がよく、より好ましくは10〜100μmである。また、記録層に含有させる磁性粉材料としては以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、色素や顔料等を混合して用いることもできる。
【0059】
本発明では磁性粉を液体中に分散させてマイクロカプセル化した微粒子が用いられる。
【0060】
また、磁気マイクロカプセル中の前記液体には、極性液体と疎水性液体との混合液体に熱可塑性樹脂を溶解した液体が用いられる。極性液体とは、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の極性基を有するアルコール類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類、アミノ化合物等であり、例えば、芳香族エステル、脂肪酸エステル等のエステル類であり、より具体的にはフタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等である。疎水性液体とは、低揮発性の脂肪族や芳香族の炭化水素、及びこれらの混合物であり、ノーカボン複写用紙のマイクロカプセルに常用されるもの等である。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル等のビニル樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース等を液体中に2〜50質量%程度溶解させてマイクロカプセル中の液体の粘度を適度なものとする。また、表示のコントラスト向上に着色剤を液体に添加することもできる。
【0061】
そして、上記磁気マイクロカプセルは従来公知のマイクロカプセル化手法により形成し、磁気マイクロカプセルの粒径は体積平均で通常10〜100μmである。また、磁気マイクロカプセルを分散保持して表示層とするバインダー樹脂は、マイクロカプセルを損傷から保護するものであり、成膜性や密着性等から、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂が一般的に使用できる。
【0062】
次に、磁性粉と低融点化合物や低軟化点樹脂との複合膜を磁気記録層として用いる場合について説明する。
【0063】
この場合、磁性粉を低融点化合物や低軟化点樹脂にスペーサー粒子とともに分散させた塗布液を塗布することによって磁気記録層が形成される。この磁気記録層上に記録層を保護するための透明保護層が設けられる。
【0064】
低融点化合物としては、パラフィン系、ロジン系、エステル系、カルナバワックス等の各種ワックスが用いられる。このものは常温で固体であり、融点が30〜100℃のものが好ましい。
【0065】
また、低軟化点樹脂としては、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂や低分子量の合成樹脂が用いられる。これらのものは常温で固体であり、軟化点が30〜100℃のものが好ましい。
【0066】
磁性粉が分散される媒体としては、磁性粉の移動が許容される第1の相及び磁性粉の移動が禁止される第2の相との間で相変化可能なものであればよく、高温において第1の相を呈し、低温において第2の相を呈する低温溶融体であっても良い。この場合、第1の相は、液相であり、第2の相は固相となる。このような媒体としては、低融点ワックスで代表されるような低温溶融体のほかに、グリセリン脂肪酸エステル等のコロイドや、ゾル−ゲル相変化(光・超音波・磁気振動・加熱電界・電解等による流動化も利用)を利用した寒天、ゼラチン、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、ベントナイト等の不安定又は準安定ゲルを用いることもできる。
【0067】
上記のような材料を用いて形成された磁気記録層は以下のようなシステムで画像形成、消去される。
【0068】
まず、感熱ヘッドと磁気ヘッドを用い、表示しようとする画像の単位ドット(画素)に対応する位置に移動されるごとに、感熱ヘッドの通電電極に、所定時間だけ通電されることになる。この通電動作により、通電電極と電極層との間に通電されることになるが、抵抗層には、通電電極との接触部位に対応する抵抗層の領域にのみ通電され、この通電領域のみが発熱されることになる。
【0069】
この結果、抵抗層の通電領域が発熱領域となり、この発熱領域に対応する低融点、低軟化点の部分が、この熱により溶融され、この部分に含まれる着色磁性粉が、磁気ヘッドと一体に移動する磁気ヘッドの磁力により、透明保護層に向けて移動させられることになる。
【0070】
このようにして、移動した磁性粉(例えば黒色の場合)は透明保護層の内面に集合し、一つの画素における黒点を構成することになる。
【0071】
このように、所定の画素に対応する部分において、黒点の呈色動作が完了するが、この後、隣接する次の画素に対応する部位に感熱ヘッド及び磁気ヘッドを副走査方向に沿って移動する。ここで、次の画素において、黒点の呈色動作を行う場合には、上記動作が同様に実施されることになる。一方、次の画素において、黒点の呈色動作を行わずに、地色としての白色を残しておく場合には、何ら、通電動作が実行されずに、更に次に隣接する画素に対応する部位に感熱ヘッド及び磁気ヘッドを移動する。
【0072】
このように、1ライン分の表示動作を完了すると、感熱ヘッド及び磁気ヘッドを、元の開始位置に復帰させると共に、主走査方向に沿って1画素分だけ移動させる。そして、副走査方向に沿って、上記したと同様な表示動作を繰り返し実行する。このような動作を、表示部の全面に渡り実行することにより、表示部の全面に渡り、所定の画像が表示されることになる。
【0073】
尚、既に所定の画像が表示された表示部においては、抵抗層の全面に渡り通電させて発熱させ、磁気記録層を全面に渡り加熱することにより溶融させ、このように低融点、低軟化点材料が全面に渡り溶融している間に、基層側に配置した永久磁石により、黒色磁性粉を基層側に移動させることにより、全ての黒色磁性粉は透明層から取り除かれることとなり、この結果、透明層には、何らの画像も表示されないことになる。即ち、この表示部上の画像は、消去されることになる。
【0074】
支持体上に可逆性記録層を直接設けることもできるが、可逆性記録層を形成するための塗工液を構成する溶剤によって、支持体が溶け出して変形や収縮したり、強度が低下したりして、オーバーシートの機能を阻害することがあり、そのような場合には支持体上に先ずバリア層を設けてから、その上に可逆性記録層を形成することが好ましい。
【0075】
バリア層を形成する方式には、耐溶剤性に優れた材料を塗工する方式と耐溶剤性に優れたフィルムをラミネートする方式がある。
【0076】
バリア層は、可逆性記録層の形成用塗工液の溶剤に対して、耐性を有する材料から形成されることが好ましい。
【0077】
加工性を考慮すると、アルコール系溶剤や水等に溶解又は分散可能な樹脂であることが更に好ましい。また、熱や光等によって硬化すると、有機溶剤に対するバリア性を増すようなものであることが更に好ましい。
【0078】
具体的には、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アルコール可溶性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が好ましいものとして挙げられる。
【0079】
また、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール等とイソシアネートの架橋によって形成されるポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマーからなるものを主成分とし、これに各種アクリレートモノマー、その他添加剤等を適宜混合した紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂を使用することもできる。
【0080】
これらは水やアルコール系溶剤に溶解された溶液状態でもよいし、分散した状態でもよい。
【0081】
この方式によって形成されるバリア層の厚みは、0.1〜10μmの範囲内であることが好ましい。
【0082】
また、可逆性記録層の上に機械的耐久性を向上させる目的で保護層を形成することが好ましい。
【0083】
保護層の膜厚は、0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。
【0084】
また、該保護層中には、劣化を防止する目的で無機または有機紫外線吸収剤を含有しても良く、その含有量はバインダー100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲が好ましい。
【0085】
保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法、乾燥・硬化方法等は上記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。また、樹脂フィルムを貼り合せても構わない。
【0086】
有機紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−エトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、カルボキシフェニルサリシレート、メチルフェニルサリシレート、ドデシルフェニルサリシレート、2−エチルヘキシルフェニルサリシレート、ホモメンチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、p−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸グリセリル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、p−ジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のp−アミノ安息香酸系紫外線吸収剤、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、p−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、4−t−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル等が挙げられる。
【0087】
無機紫外線吸収剤としては、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化亜鉛、窒化バリウム、シリカ、アルミナ、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0088】
保護層には、紫外線吸収性能または紫外線遮蔽性能を有しない他のフィラーをスティッキング防止や耐久性向上を目的に添加しても良く、フィラーとしては無機フィラーと有機フィラーに分けることができる。
【0089】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水ケイ酸アルミ二ウム、含水ケイ酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、シリカ、タルク、マイカ、等が挙げられる。
【0090】
有機フィラーとしては、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、スチレン、ポリスチレン、ポリスチレン・イソプレン、スチレンビニルベンゼンなどのスチレン系樹脂、塩化ビニリデンアクリル、アクリルウレタン、エチレンアクリルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げらる。本発明ではフィラーを単独で用いることもできるが、2種類以上含まれても良い。複数の場合、無機フィラーと有機フィラーの組み合わせ方について特に限定はされない。また、形状としては球状、粒状、板状、針状等が挙げられる。保護層中のフィラーの含有量は体積分率で5〜50体積%である。
【0091】
感熱ヘッドや磁気ヘッドへの融着防止を目的に、保護層に滑剤を添加しても良く、滑剤の具体例としては、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス類:硬化ひまし油等の植物性ワックス類:牛脂硬化油等の動物性ワックス類:ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類:マルガリン酸、ラウリン酸、ミスチレン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、フロメン酸等の高級脂肪酸類:ソルビタンの脂肪酸エステルなどの高級脂肪酸エステル類:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド等のアミド類などが挙げられる。層中の滑剤の含有量は体積分率で0.1〜95%、より好ましくは1〜75%である。
【0092】
本発明において、可逆性記録層と保護層との接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層に含まれる添加剤が記録層へ移行する、あるいは、記録層に含まれる添加剤が保護層へ移行することを防止する目的で、両者の間に中間層を設けることができる。
【0093】
中間層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法、乾燥・硬化方法等は上記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0094】
また、中間層には、劣化を防止する目的で、保護層に用いる上記無機または有機紫外線吸収剤を含有させて良く、その含有量はバインダー100質量部に対して0.5〜50質量部の範囲が好ましい。
【0095】
次に、音声再生手段について説明する。音声再生手段は、可視情報表示手段に表示される情報を音声に変換する音声変換手段を有する音声ICモジュールとスピーカーからなり、フィルム基板上に一体となって形成されている。
【0096】
本発明では、音声ICモジュールとスピーカーからなる音声再生手段をシート状基板間に接着する。また、その上に保護フィルムを接着する接着剤層は、本製造工程中の積層貼合時に接着力を保有するものが使用できる。通常は常温もしくは加熱した状態で加圧接着できるものである。EVA系接着剤など一般的なヒートシーラーが使用できる。接着剤としては、例えば液状のアンカーコート剤、例えばポリウレタン系アンカーコート剤として東洋モートン(株)製のEL−150(商品名)、又はBLS−2080AとBLS−2080Bの混合物が、ポリエステル系アンカーコート剤として同社製のAD−503(商品名)を適用することができる。アンカーコート剤は秤量が0.5〜25g/m2となるように塗布される。
【0097】
音声再生手段をシート状基板間に粘着する粘着剤層の種類や厚さ(塗工層)は、被着体の種類や使用される環境、接着の強度等により種々選択が可能である。一般に用いられる水系もしくは溶剤系の粘着剤を塗工、乾燥して形成でき、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系等が使用でき、これらの合成高分子粘着剤は、有機溶媒溶液や、ディスパージョンやエマルジョンといった水に分散された形態で使用可能である。
【0098】
IC回路の凹凸の影響を受けないようにするため、接着層もしくは粘着層は、IC回路側に設ける。
【0099】
接着層もしくは粘着層の主成分としては天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、S−I−S−ブロックポリマー系、EVA系の材料であることが好ましい。これらは、用途に応じて混合して使用したり、各種添加剤を加えてもよい。
【0100】
本発明の情報表示カードは、必要に応じて粘着性もしくは接着性を有する面の上面に型紙等の剥離可能なシートを積層してもよい。
【0101】
また、接着面以外の面を易接着、撥水、撥油、帯電防止等、必要に応じて各種処理を施してもよい。
【0102】
音声ICモジュールとスピーカーの回路基板は、フレキシブル電極基板で結合されて一体となっていて、薄型電池と接続されていてもよい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明に係る情報表示カードおよびそのカードを用いたシステムについて、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施例においては、具体的な物質名を挙げて説明を行っているが、これはあくまでも一つの実施例であり、本発明がこれらの物質に限られるものではなく、各種の材料を使用することが可能である。
(実施例1)
本発明の実施例1の情報表示カードは、図1に示すように、情報表示カード1の表面に書き換え可能な表示手段2、音声再生手段3、音声再生スイッチ5、裏面に不可視情報記録手段4を配置したものである。表示手段2および音声再生手段3の断面構造は図2に示すように、基板11の表面に可逆性表示層12を設けて保護層15で被覆した表示手段2と、フレキシブル回路基板及び薄型電池6と、音声ICモジュール8及びスピーカー7からなる音声再生手段3と、基板11の裏面に磁気記録層23を設けて保護層25で被覆した不可視情報記録手段4とが設けられている。
【0104】
詳しくは、基板11はPESでコートされた紙が使用されている。磁気記録層23はγ−Fe23を10質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体(UCC社製:VAGH)を10質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン社製:コロネートL)2質量部を、メチルエチルケトン40質量部とトルエン40質量部の混合溶剤に分散させた後、この溶液を基板11上にワイヤーバーで塗布して乾燥させ、約10μmの厚さに形成した。保護層15は厚さ2μmのアクリル系樹脂層からなる。
【0105】
一方、表示層12は、ロイコ染料と長鎖アルキル化合物を主体とする層である。具体的には、HO−Φ−NHCO−(CH25−NHCONH−(CH217CH3を4質量部、ジアルキル尿素(日本化成社製:ハクリーンSB)1質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レーヨン社製:LR503)9質量部、テトラヒドロフラン70質量部をサンドミルを用いて体積平均粒径が約0.5μmになるまで分散させた。
【0106】
次に、2−アリニノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン1質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン社製:コロネートHL)2質量部を上記の分散液に添加し、良く撹拌して表示層塗布液を調整した。この溶液を基板11の反対面上にブレードによって塗布し、加熱乾燥させて厚さ10μmの可逆性表示層12とした。保護層29はウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(大日本インキ社製:C7−157)15質量部、フィラー(水澤化学社製:P527)5質量部、酢酸エチル85質量部を溶解撹拌させた塗布液を厚さ2μmとなるように塗布してUV硬化させ、60℃で16時間エージングを行ない保護層を形成した。
【0107】
本実施例において、基板11の融点は200℃以上、保護層15の結晶化温度は200℃、表示層12の融点は150℃以下であった。書き込み時および消去時に150℃以上に加熱されて表示層12が液化するが、基板11、保護層15がそれらの融点以下の温度に維持しているので、それらの機械的強度が低下することはなく、サーマルヘッドから加えられる圧力に抗して表示層12の厚みを保持できた。表示層12に球状のスぺーサー(商品名)を混合し、厚みの維持をより確実にした。
【0108】
図3に本発明に係る情報表示カードに可視情報及び不可視情報を書き込むためのリーダーライターとしてのサーマルプリンターを示す。このプリンターはハウジング50内に、記録媒体の進行方向Bに沿って、搬送ローラー51、52、サーマルヘッド53、プラテン54、冷却器55、可視情報書き込みヘッド61、不可視情報書き込みヘッド62、搬送ローラー56、57が設置されている。
【0109】
情報表示カード1は、入り口50aからプリンター内に進入し、搬送ローラー51、52によってプラテン54とサーマルヘッド53の間に搬送され、ここで可視情報として可逆性表示層12に画像が書き込まれる。サーマルヘッドからの加熱の停止後自然に急冷されて、書き込みの固体化が図られ、画像表示される。次に、不可視情報書き込みヘッド62により不可視情報記録手段に不可視情報を記録し、可視情報書き込みヘッド61により、音声ICモジュールに可視情報が記録される。その後、情報表示カード1は搬送ローラー56、57によって出口50bから排出される。
【0110】
なお、サーマルヘッド53に設けられた発熱体が通過した後、記録媒体は自然冷却によって急冷されることになるので、表示層の冷却手段は本来不要であるが、より確実に動作を行わせるために、前記実施形態のように冷却器を設けたり、サーマルヘッド53の下流に、今一つの冷却器を設けてもよい。
【0111】
次に、サーマルヘッドでフルカラー画像を印字する場合について説明する。
【0112】
サーマルヘッド53は、図4に示すように、各色ごとの発熱体53e、53b、53g、53rを記録媒体の進行方向Bに直交する矢印C方向に配置したものである。
【0113】
サーマルヘッド53は、記録媒体の送り方向Bに直交する方向Cに、記録媒体の進行に同期して往復運動されるように構成されている。各発熱体53e、53b、53g、53rは、C方向に移動しながら各色ごとの可視情報に基づいてオン、オフされ、発熱と非加熱とを繰り返すことにより、画素数に等しい数のラインずつ画像を表示層12に書き込み、最終的に一枚のカラー画像を書き換え可能表示手段2上に再現する。なお、発熱体による書き込みは、温度の高い順で行うことが好ましい。なお、多色を1本の発熱体で書き込むことも可能であるが、温度制御が複雑になるので色分けして書き込むことが望ましい。
【0114】
また、書き込んだ表示の消去は、同様にサーマルプリンターを用いて消去用のサーマルヘッド53によりロイコ染料の融点以上に加熱した後、除冷することにより表示層12が透明となって、記録が消去される。消去部分は全面でも、一部分でもよい。
【0115】
リーダーライターにサーマルプリンターを用いたときの画像表示及びデータ転送のブロック図を図13に示す。外部装置であるコンピューターやワードプロセッサー等で作成された文字、図形等の可視情報及び不可視情報をインターフェースを介して、データ受信部に転送する。インターフェースとしては、有線で電気信号を転送しても良いし、また、赤外線装置を用いて、転送しても良い。また、制御コマンドは、表示消去制御部に転送される。この制御部では、例えば記録モードであることを指示したり、可視情報サイズを指示したり、表示開始を指示したりするものである。
【0116】
情報表示カード1の不可視情報記録手段4に記録された不可視情報は、リーダーライターのデータ読み込み部に読み込み、リーダーライターのデータ保存部を介して外部装置にデータが転送される。外部装置で読み込んだデータを用いて、必要な演算処理等を行い、その後リーダーライターにデータ転送される。
【0117】
外部装置から転送された制御コマンドは、制御装置内で順次解釈され、可視情報は順次制御装置からビットイメージに対する電圧パルスとした電気信号としてサーマルヘッド53からなる加熱手段に転送される。そして加熱手段に対応する発熱体に一定時間通電し、発熱させてそのジュール熱を表示層12に伝達する。この結果、可視情報に対応して、書き換え可能表示手段2は表示を行う。一方、不可視情報は、磁気記録ヘッドからなる不可視情報書き込みヘッド62により情報表示カード1の不可視情報記録手段に記録する。また、可視情報のデータは、可視情報書き込みヘッド61と音声再生手段に設けられたデータ入力端子とを接触させ、可視情報を音声ICモジュールの中の記憶部に記憶させる。
【0118】
以上のようにして情報表示カード1に可視情報に対応した画像の表示を行い、目視により情報確認ができる。
【0119】
次に音声による可視情報の確認方法について図14のフローチャートを用いて説明する。情報表示カード1をリーダーライターに入れることにより、リーダーライターから可視情報が書き込まれる(ステップS1)。情報表示カード1の表示部には書き込まれた情報が可視情報として表示される(ステップS2)。次いで、情報表示カード1の所有者が、可視情報を音声として再生したいと望めば、情報表示カード1のスイッチ5を押すであろう。スイッチ5が押されていれば(ステップ3:YES)、音声ICモジュール内にある音声変換手段が可視情報を音声情報に変換して(ステップS4)、スピーカ7から可視情報に相当する音声情報が出力される(ステップS5)。音声再生が終了すると自動的に電源がオフされるようになっている。この音声変換手段は、文字、数字データは、その文字、数字を音声に変え、図形データは、その図形に対応した音声をあらかじめ記憶させてある対応データから取り出すことができる。このため音声に変換できる図形データは、あらかじめ決められている。スイッチ5が押されていなければ(ステップ3:NO)音声情報は出力されない。
【0120】
このように制御することで、表示画像に対応した音声情報を再生することができ、画像認識できない人や画像認識できない環境でも、表示内容を確認することができる。
【0121】
音声情報は、可視情報表示部に表示される可視情報と略同一であれば良く、他に操作案内や注意を促す案内を付加することも出来る。また、可視情報表示の中の限定された内容であっても構わない。
【0122】
次に表示層12の消去について説明する。表示層12の消去モード時においては、制御コマンドが入ると、表示消去制御部でコマンド内容が解釈される。そのコマンド内容に従ってデータ作成部に消去パターンの指示を出す。表示消去制御部からの信号によって、データ作成部で作成された消去パターンデータは、消去通電制御部に転送され、消去通電制御部で画像消去信号が生成される。この画像消去信号がサーマルヘッド53からなる加熱手段に転送され消去される。なお、上記消去通電制御部は消去時に必要な熱エネルギーをえるための通電パルス幅を設定するとともに、サーマルヘッド53からなる加熱手段を制御するものであり、上記した表示消去制御部、データ作成部とで、消去制御手段を構成しているものである。表示消去制御部が制御コマンドを解釈してデータ作成部へ消去パターンを作成させているため、任意の範囲の消去が可能になるものである。
【0123】
図5に本発明に係る情報表示カードに可視情報及び不可視情報を書き込むためのリーダーライターとしての別のサーマルプリンターを示す。このプリンターはハウジング内に、カード1の進行方向Bに沿って、搬送ローラー51、52、ヒートローラー58、59、サーマルヘッド53、プラテン54、冷却器55、可視情報書き込みヘッド61、不可視情報書き込みヘッド62、搬送ローラー56、57が設置されている。
【0124】
情報表示カード1は、入り口50aからプリンター内に進入し、搬送ローラー51、52からヒートローラー58、59へ送られ、ここで150℃以上に加熱され、除冷される。ここで初期化が行われ、書き込まれていた情報があれば消去される。次に、情報表示カード1はプラテン54とサーマルヘッド53の間に搬送され、ここで画像が書き込まれる。サーマルヘッド53からの加熱の停止後自然に急冷されて、書き込みの固体化が図られ画像表示される。次に、不可視情報書き込みヘッド62により不可視情報記録手段に不可視情報を記録し、可視情報書き込みヘッド61により、音声ICモジュールに可視情報が記録される。その後、可視情報カード1は搬送ローラー56、57によって出口50bから排出される。
【0125】
なお、サーマルヘッドに設けられた発熱体が通過した後、記録媒体は自然冷却によって急冷されることになるので、表示層の冷却手段は本来不要であるが、より確実に動作を行わせるために、前記実施形態のように冷却器55を設けたり、サーマルヘッドの下流に、今一つの冷却器を設けてもよい。
【0126】
この場合の画像表示について説明すると、可視情報の表示の場合は、前述のサーマルプリンターの場合と全く同様であるが、消去モードではヒートローラーによって全面が消去されるため、表示消去制御部からの信号が消去通電制御部に転送され、消去通電制御部でヒートローラーからなる加熱手段が制御され、表示画像が消去される。
【0127】
情報表示カード1に対しては、図6に示すレーザープリンターを使用して情報を書き込むことも出来る。この場合、レーザー光のエネルギーを熱に変換するため、熱変換層を設けることが望ましい。熱変換層はレーザー波長の光を吸収する吸収剤や赤外線吸収剤を添加して得られる。また、基板に赤外線吸収性の材料を用いてもよい。
【0128】
このレーザプリンタは青色、緑色及び赤色に書き込むための半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ等のレーザ68b、68g、68rを駆動回路70によって変調し、それぞれから放射されたレーザビームをコリメーターレンズ69b、69g、69rを介してポリゴンミラー71に入射する。ポリゴンミラー71は矢印E方向に回転駆動され、この回転に基づいてレーザビームが偏向され、情報表示カード1の書き換え可能表示手段2上を直線状に走査し、情報表示カード1が矢印D方向に搬送されることで、二次元のカラー情報が書き込まれる。なお、図示されていないが、レーザプリンタにはfθレンズ等の光学素子も当然設置されている。
【0129】
書き込む色はレーザーの放射エネルギーを制御することによって対応させる。従って、1個のレーザーを用いて、各色ごとにレーザービームのエネルギーを制御して書き込むことも可能である。しかし、複数個のレーザーを用いて色別に書き込みを行なった方がエネルギーの制御が容易である。
(実施例2)
本発明の実施例2の情報表示カード1の表面図を図7に示す。また図8にその断面図を示す。情報表示カード1の表面に書き換え可能な表示手段2、不可視情報記録手段4および音声再生手段3を設けたものである。
【0130】
すなわち、実施例2において、基板21にはPET(ポリエチレンテレフタレート)カードを使用している。不可視情報記録手段4は磁気記録層が形成されており、その材料および製法は前記実施例1と同じである。
【0131】
表示手段2は、図8に示すように、基板11上に表示層13を設け、表示層13は磁性粉を液体中に分散させてマイクロカプセル化した微粒子をバインダー樹脂に分散させた分散層からなり、保護層15が形成されている。
【0132】
実施例2では、表示層13としてマイクロカプセル構造を持った微粒子が樹脂中に存在しているため、表示層13の機械的強度が高く、曲げ、摩擦等の外力による損傷を最小限に抑えることができる。
【0133】
次に、表示層13の材料および製法の具体例を以下に記載する。
【0134】
疎水化処理された平均粒径1μmのフェライトの粉体粒子3質量部、疎水化処理された平均粒径1μmの白色酸化チタン粉体10質量部、沈降防止剤として微粉珪酸0.5質量部とをトルエンと2−エチル−1−ヘキサノールとを5:3の割合で混合した混合溶剤86質量部に加え、アニオン系界面活性剤0.7質量部を加えて分散した。この分散液を5質量%ポリビニルアルコール水溶液200質量部中に、ホモジナイザーを用いて、回転数10000rpmで、平均粒径が50μmとなるように約5分間分散させた。10質量%炭酸ナトリウム水溶液を滴下し、pHを8〜9に調整した。液温を25℃に冷却し、20質量%尿素−ホルマリンプレポリマー水溶液200質量部を添加し、酢酸を滴下しpHを4に調整した。その後、30℃で3時間、50℃で2時間反応を行ない、尿素−ホルマリン樹脂マイクロカプセルを得た。
【0135】
PET(ポリエチレンテレフタレート)シート上に、アンカー層を塗布し、上記の磁性粉を含有するマイクロカプセルに光重合開始剤DAROCUR1173(チバガイギー社製)を3質量%加えた芳香環を有する二官能アクリレートR712(日本化薬社製)とを質量比で8:2の割合で混合分散し、塗布液を調製した。この塗布液をアンカー層上に塗布し、その上に保護層15として厚さ2μmの透明PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを重ね合わせた。
【0136】
次に、保護層15を押圧しながら、0.02mW/cm2の紫外線を1時間照射し、さらに、0.25mW/cm2の紫外線を1時間照射することにより、厚さ100μmの複合膜を形成し、表示層13とした。
【0137】
リーダーライターとしては、実施例1において、不可視情報書き込みヘッド62を情報表示カードの表面に書き込めるよう可視情報書き込みヘッド61と平行して配置した他は、同様の構成とした。また、音声による可視情報の確認方法についても実施例1と同様な方法を用いた。
【0138】
このように本発明における実施例2の情報表示カード1及び情報表示システムを用いることにより、目の不自由な人でもその表示内容を確認することができる。
(実施例3)
本発明の実施例3の情報表示カードは、図9に示したように、情報表示カード1の表面に可視情報として書き換え可能表示手段2、ホログラム表示手段9、音声再生スイッチ5、裏面に音声再生手段3、不可視情報記録手段4および筆記可能な部分16を配置したものである。その断面構造は図10に示すとおりである。基板11の上に表示層13、保護層15で構成した表示手段2と、ホログラム表示手段9及び音声再生スイッチ5とがウレタン系接着剤層を介して貼り合わされている。
【0139】
詳しくは、書き換え可能表示手段2の基板11は、PES(ポリエーテルスルホン)シートが使用されている。疎水化処理を施した平均粒径1μmの磁性粒子10質量部、疎水化処理を施した、平均粒径0.5μmの酸化チタン50質量部を、60℃に加熱し融解したパラフィンワックス80質量部にスペーサー粒子とともに均一に分散した。この磁性粉分散物をPESシート状に溶融塗布させて厚さ30μmの表示層13とした。保護層15は厚さ2μmのアクリル系樹脂層からなる。
【0140】
ホログラム表示手段9は、一般に、反射性薄膜で金属、金属化合物、ガラス等を蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、電界めっき、無電界めっき等の反射層19とホログラムまたは回折格子層20よりなる。ホログラムまたは回折格子層20は、各種樹脂材料が選択可能である。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の内、1種ないし2種類以上を主体とする樹脂を単独、もしくは各種イソシアネート樹脂や、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛等の金属石鹸、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチルニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱あるいは紫外線硬化剤を添加したものを添加したものを用いることが出来る。この配合は、ガラス転移温度が熱転写時の温度よりも高くなるように配慮して調整し、具体的にはガラス転移温度が100℃〜200℃となるようにするのが好ましい。また、このホログラムまたは回折格子層20は、公知の方法によりインキ塗布方法によって形成することが可能であるが、転写箔により形成する場合は0.5〜2μmの厚さの範囲で形成することが好ましい。反射型の場合に用いられる反射層19の具体例としては、Al、Cr、Ni、Ag、Auが好ましく、膜厚は10〜10000オングストローム、望ましくは200〜2000オングストロームである。
【0141】
一方、基板21はポリカーボネートフィルムを使用した。一方、追記型光記録層は、基板21上にSb2Se3とBi2Te3を順次蒸着して成膜した。保護層29は厚さ2μmのアクリル系樹脂層からなる。
【0142】
音声ICモジュール8とスピーカー7からなる音声再生手段3は、薄型電池と接続され、フレキシブル基板6とともに基板21上に一体的に接着している。
【0143】
筆記可能な部分16はシリコン樹脂(東芝シリコーン社製:YR3370)に酸化チタンを分散させ、さらに触媒(東芝シリコーン社製:CR15)を混合したイソプロピルアルコール溶液を厚さ5μmに塗布し、硬化させたものである。
【0144】
保護層29は厚さ2μmのアクリル系樹脂層からなるホログラム表示手段9および筆記可能な部分16を設けることで偽造、変造を防止することができる。
【0145】
リーダーライターとしては、実施例1において、可視情報書き込みヘッド61を情報表示カードの裏面に書き込めるよう不可視情報書き込みヘッド62と平行して配置し、不可視情報書き込みヘッド62は、光書き込み装置とした他は、同様の構成とした。また、音声による可視情報の確認方法についても実施例1と同様な方法を用いた。
【0146】
このように本発明における実施例3の情報表示カード1及び情報表示システムを用いることにより、目の不自由な人でもその表示内容を確認することができるとともに追記情報の記載や書き換え不能な情報を載せることができる。
(実施例4)
本発明の実施例4の情報記示カードは、図11に示したように、情報表示カード1の表面に可視情報表示手段2、不可視情報記録手段として接触式のICモジュール45およびホログラム表示手段9を、裏面に音声再生手段3、筆記可能な部分16を配置したものである。
【0147】
接触式のICモジュール45、筆記可能な部分16およびホログラム表示手段9を設けることによって偽造、変造を防止することができる。
【0148】
すなわち、実施例4において、接触式のICモジュール45は音声再生手段3と結合または一部兼用された構成になっており、外部から入力された情報をメモリー処理される。
【0149】
リーダーライターとしては、実施例1において、可視情報書き込みヘッド61と不可視情報書き込みヘッド62とを入れ替え、不可視情報記録手段への書き込みを情報表示カード1のICモジュール45と接触する端子を用いた他は、同様の構成とした。また、音声による可視情報の確認方法についても実施例1と同様な方法を用いた。
【0150】
このように本発明における実施例4の情報表示カード1及び情報表示システムを用いることにより、目の不自由な人でもその表示内容を確認することができるとともに追記情報の記載や書き換え不能な情報を載せることができる。
(実施例5)
本発明の実施例5の情報表示カードは、図12に示したように、情報表示カード1の表面に可視情報表示手段2、不可視情報記録手段として接触式のICモジュール45およびホログラム表示手段9、音声再生手段3、筆記可能な部分18を配置したものである。
【0151】
すなわち、実施例5において、不可視情報記録手段4は接触式のICモジュールが使用され、その構成は実施例4と同じである。ここでは使用する薄型電池として太陽電池18が用いられ、情報表示カード1の表面に設けられている。
【0152】
書き換え可能な表示手段2は、実施例1と同様であるが、可逆性感熱層は2層からなり2色表示が可能である。
【0153】
次に、材料および製法の具体例を以下に記載する。
すなわち、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン10質量部、ドコシルホスホン酸45質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体45質量部をトルエン200質量部、メチルエチルケトン200質量部とともにサンドミルで分散し、粒径が0.5μmとなる分散塗布液を得た。この塗布液をPET(ポリエチレンテレフタレート)シート上に、厚さ10μmとなるように塗布して第一の可逆性感熱記録層を得た。次にこの上にポリビニルアルコールの10質量%水溶液を塗布、乾燥して厚さ約2μmの中間層を設けた。
【0154】
次に、2−(N−メチル)アニリノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン10質量部、ヘキサデシルホスホン酸35質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体45質量部をトルエン200質量部、メチルエチルケトン200質量部とともにサンドミルで分散し、粒径が0.5μmとなる分散塗布液を得た。この塗布液を上記中間層上に、厚さ10μmとなるように塗布して第二の可逆性感熱記録層を得た。
【0155】
次に、上記感熱記録層上にウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂の75質量%酢酸ブチル溶液(大日本インキ化学社製:ユニディックC7−157)95質量部、炭酸カルシウム(粒径0.03μm)4質量部、シリコンオイル(信越シリコーン社製:KF96)0.5質量部を超音波分散させた塗布溶液を作製し、ワイヤーバーを用いて乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布した後、紫外線を照射し、60℃で24時間乾燥させて硬化させ形成した。
【0156】
この記録媒体をヒートローラーで125℃に加熱、急冷して、記録層が全面的に発色した状態とするとあずき色を呈した。次に、サーマルヘッドで画像状に加熱し、印加電圧13.3V、パルス幅1.6msecの条件で加熱したところ、緑色に発色した。次に、印加電圧8.0V、パルス幅0.9msecの条件で加熱したところ、赤色に発色した。このようにして印字条件を調整することにより赤と緑の画像を形成することができる。
【0157】
なお、本発明に係る情報表示カード1は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0158】
特に、磁性粉またはロイコ系染料を主成分とする書き換え可能な可視情報表示手段と音声再生手段を有することで音声と表示の両方で確認でき、音声再生手段も薄型であれば種々のものを使用することが出来る。
【0159】
リーダーライターとしては、実施例4において、可視情報書き込みヘッド61を情報表示カードの表面に書き込めるよう不可視情報書き込みヘッド62と平行して配置した他は、同様の構成とした。また、音声による可視情報の確認方法についても実施例4と同様な方法を用いた。
【0160】
このように本発明における実施例5の情報表示カード1及び情報表示システムを用いることにより、目の不自由な人でもその表示内容を確認することができるとともに追記情報の記載や書き換え不能な情報を載せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の第一の実施形態である情報表示カードを示し、(A)は表面図、(B)は裏面図である。
【図2】本発明の第一実施形態である情報表示カードを示す断面図。
【図3】本発明に使用されるサーマルプリンターの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明に使用されるサーマルプリンターのサーマルヘッドを示す平面図である。
【図5】本発明に使用されるサーマルプリンターの他の例を示す概略構成図である。
【図6】本発明で使用されるレーザープリンターを示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第二の実施形態である情報表示カードの表面図を示す。
【図8】本発明の第二の実施形態である情報表示カードの断面図を示す。
【図9】本発明の第三実施形態である情報表示カードを示し、(A)は表面図、(B)は裏面図である。
【図10】本発明の第三の実施形態である情報表示カードの断面図を示す。
【図11】本発明の第四の実施形態である情報表示カードを示し、(A)は表面図、(B)は裏面図である。
【図12】本発明の第五の実施形態である情報表示カードの表面図を示す。
【図13】画像表示及びデータ転送のブロック図を示す。
【図14】画像表示及び音声再生のフローチャートを示す。
【符号の説明】
【0162】
1 情報表示カード
2 書き換え可能表示手段
3 音声再生手段
4 不可視情報記録手段
5 音声再生スイッチ
6 フレキ接続電極基板および薄型電池
7 スピーカー
8 音声ICモジュール
11、21 基板
12、13 表示層
23 磁気記録層
15、25、29 保護層
50 ハウジング
50a 入り口
50b 出口
51、52、56、57 搬送ローラ
53 サーマルヘッド
53e、53b、53g、53r 発熱体
54 プラテン
55 冷却器
58、59 ヒートローラー
61 可視情報書き込みヘッド61
62 不可視情報書き込みヘッド
68b、68g、68r レーザ
69b、69g、69r コリメーターレンズ
70 駆動回路
71ポリゴンミラー
9 ホログラム表示手段
16 筆記可能な部分
27 追記型光記録層
45 接触式のICモジュール
18 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き換え可能な可視情報表示手段と音声再生手段を備えた情報表示カードにおいて、前記音声再生手段が前記可視情報表示手段に表示される情報を音声に変換し出力する音声変換手段を有することを特徴とする情報表示カード。
【請求項2】
前記可視情報表示手段が磁性粉またはロイコ系染料を主成分とする可視情報表示部を有することを特徴とする請求項1に記載の情報表示カード。
【請求項3】
前記可視情報表示手段がカラー表示の書き換え可能な可視情報表示手段であることを特徴とする請求項2に記載の情報表示カード。
【請求項4】
筆記具で書き込める記載部分が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報表示カード。
【請求項5】
不可逆的に固有情報を記録できる情報表示手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報表示カード。
【請求項6】
前記不可逆的に固有情報を記録できる情報表示手段がホログラム形成層または回折格子形成層を有することを特徴とする請求項5に記載の情報表示カード。
【請求項7】
不可視情報記録手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報表示カード。
【請求項8】
前記不可視情報記録手段が磁気記録層を有することを特徴とする請求項7に記載の情報表示カード。
【請求項9】
前記不可視情報記録手段が追記型光記録層を有することを特徴とする請求項7に記載の情報表示カード。
【請求項10】
前記不可視情報記録手段がIC(集積回路)を有することを特徴とする請求項7に記載の情報表示カード。
【請求項11】
情報表示カードの一面に前記可視情報表示手段と音声再生手段が配置された部分を有し、他方の面に前記不可視情報記録手段が配置された部分を有することを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載の情報表示カード。
【請求項12】
情報表示カードの表面に前記可視情報表示手段が配置された部分、前記不可視情報記録手段が配置された部分および音声再生手段が配置された部分を有することを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載の情報表示カード。
【請求項13】
情報表示カードの表面に前記可視情報表示手段が配置された部分があり、裏面に前記不可視情報記録手段が配置された部分を有する積層構成になっていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の情報表示カード。
【請求項14】
リーダーライターを備え、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報表示カードが備える可視情報表示手段に、前記リーダーライターが保有するデータが電気信号で書き込まれることを特徴とする情報表示システム。
【請求項15】
外部情報機器及びリーダーライターを備え、前記外部情報機器からデータが赤外線で前記リーダーライターに転送され、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報表示カードが備える可視情報表示手段に、前記リーダーライターから前記データが電気信号で書き込まれることを特徴とする情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−212911(P2006−212911A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27407(P2005−27407)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】