情報表示システム
【課題】地下鉄等の車両の乗客が列車に乗りながらも列車の外の様子を視覚的に知ることができる情報表示システムを提供する。
【解決手段】情報表示システム10は、車両100が走行する区域において車両100外部に見られる画像を画像データとして記憶する記憶部12と、画像を表示する表示部14と、記憶部12から表示部14への画像データの送信を制御して、車両100の現在位置に対応する画像を表示部14に表示させる制御部16と、を有し、車両100に搭載される。
【解決手段】情報表示システム10は、車両100が走行する区域において車両100外部に見られる画像を画像データとして記憶する記憶部12と、画像を表示する表示部14と、記憶部12から表示部14への画像データの送信を制御して、車両100の現在位置に対応する画像を表示部14に表示させる制御部16と、を有し、車両100に搭載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な列車などの車両には、窓が設けられている。乗客は、窓の外の景色を見ることによって、現在の列車の位置を大まかに確認したり、これから向かう目的の建物やランドマークを確認したりもできる。
【0003】
また、最近では、情報表示用のディスプレイを搭載した車両もある。ディスプレイには、ニュースや広告等が表示される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−355155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように、乗客が車外の様子を確認できるのは、外を走る車両に限られる。地下やトンネル内を走る列車等の車両においては、備えつけの窓から外を見ても、暗いトンネルの内壁が見えるのみであり、トンネルの外の様子や建物を見ることはできない。したがって、現在どの辺りを走っているか等を、乗客は確認できない。
【0006】
また、車両内のディスプレイには、路線図や目的地は表示されるものの、走っている現在位置を確認できるような情報は表示されていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、地下鉄等の車両の乗客が列車に乗りながらも列車の外の様子を視覚的に知ることができる情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
情報表示システムは、車両に搭載され、記憶部、表示部および制御部を有する。記憶部は、車両が走行する区域において車両外部に見られる画像を画像データとして記憶する。表示部は、記憶部に記憶された画像を表示する。制御部は、記憶部から表示部への画像データの送信を制御して、車両の現在位置に対応する(同期した)画像を表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0009】
車両の現在位置に対応した画像(景色)を表示部に表示できるので、乗客に現在位置を知らせ、安心感を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の概念を説明するための図である。
【図2】情報表示システムの概略構成を示す図である。
【図3】記憶部に記憶されるデータ構造を示す概念図である。
【図4】画面に合成される広告の一例を示す図である。
【図5】ドアの上部に設置された表示部を示す図である。
【図6】左右のドアにそれぞれ表示される画像を示す図である。
【図7】異なる背景の画像を示す図である。
【図8】運行モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】車両が駅に到着する直前に表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【図10】車両が駅に到着したときに表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【図11】情報表示システムとサーバを示す図である。
【図12】更新モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態の情報表示システムでは、乗客車両内に設置された表示部に、車両が走る外部(地上、トンネルの外)の情報を表示させて、乗客に外部の状況を知らせるものである。
【0013】
図1は、本実施形態の概念を説明するための図である。
【0014】
図1では、地下のトンネル内を走る電車が概念的に示されている。多くの場合、地下鉄は、大きな道路の下を走っている。したがって、もし、地下鉄がそのまま地上に上がってきて走ったとすると、地上の大きな道路の左右の景色(建物、空模様等)が見えることになる。大きな道路の下を走っていない場合もあるが、その場合でも、地上に電車が上がってきたと想定すれば、見える景色がある。本実施形態は、電車が地上に上がって走ったと想定して、電車の両側の窓から見える建物や空模様などの地上の景色を電車内の乗客に見せるシステムである。地上の景色は、図1に示すように、車両内の表示部(ディスプレイ)に表示される。乗客は、表示部を見ることによって、地上の景色を知ることができる。
【0015】
以下に、本実施形態のシステムについて、詳細に説明する。
【0016】
図2は、情報表示システムの概略構成を示す図、図3は記憶部に記憶されるデータ構造を示す概念図、図4は画面に合成される広告の一例を示す図、図5はドアの上部に設置された表示部を示す図、図6は左右のドアにそれぞれ表示される画像を示す図、図7は異なる背景の画像を示す図である。
【0017】
本実施形態に係る情報表示システム10は、車両100に搭載されており、記憶部12と、表示部14と、制御部16とを有する。記憶部12、表示部14および制御部16は、相互に有線または無線によって接続されている。
【0018】
記憶部12は、図3に示すように、建物データ、天候データ、背景データおよび広告データを格納している。
【0019】
建物データは、三次元コンピュータグラフィック(3DCG)により作成されており、車両100が運行する区域において当該車両100の外部に見られる建物や道路を表現するためのデータである。建物データは、動画であり、車両100の運行に同期できるように、車両の位置と対応付けられて記憶されている。
【0020】
天候データは、当日の天候に関するデータであり、当日の経時的な天候の移り変わりを示す。天候データは、たとえば、朝9時〜12時が曇り、12時〜18時が雨、18時〜21時が曇り、21時〜24時が晴れとうような情報を含む。
【0021】
背景データは、建物の背景の画像を示すデータである。背景データは、時間や天候によって建物の背景に写す画像を変更するために予め記憶部12に記憶されている。たとえば、背景データは、明け方、朝、昼、夕方、夜のように空の明るさを異ならせた背景と、それらに加えて、晴天、雨天、雷雨、曇り空など天候を異ならせた背景とをそれぞれ組み合わせて表示するために使用される。
【0022】
広告データは、建物データによって表現される建物および背景データによって表現される背景に合成される広告に関するデータである。広告データによって表現される広告は、たとえば、図4に示すように、建物の屋上に付けられたバルーン広告や、広告が車体にプリントされたラッピングバスとして、表示部14に表示される建物や背景の映像に合成される。広告は、あるいは、看板広告、空を飛ぶ気球広告や飛行船広告であってもよい。
【0023】
表示部14は、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルのような薄型の表示パネルであり、記憶部12に記憶された画像を表示するために、各乗客車両内に設置されている。表示部14は、たとえば、図5に示すように、車両の両側のドアの上部に設置されている。ドアは進行方向右側と左側の両側にあるので、表示部14は、図6に示すように、右側のドアと左側のドアとで異なる画像、すなわち、図1に示すように地上において両側に見える画像をそれぞれ表示する。
【0024】
また、表示部14に表示される画像は、上述のように、時間や天候によって背景が変わって表示される。背景は、晴れの昼であれば、図7の一番上に示されるように、明るい青空になり、晴れの夕方であれば、上から二番面に示されるように、赤みがかった明るい空になり、晴れの夜であれば、上から三番目に示されるように、暗く星や月が見える空になり、雨の昼であれば、薄暗く雨が降っている空になる。
【0025】
制御部16は、記憶部12から表示部14への画像データの送信を制御して、走行中の車両の現在位置に対応する画像(外の風景)を表示部14に表示させる。ここで、制御部16は、車両の現在位置を取得するために、検出部18が接続されている。検出部18は、図2に示すように、車両100の車輪102に取り付けられている。検出部18は、車輪の回転数を検出する。
【0026】
なお、記憶部12および制御部16は、たとえば、車両に搭載されているATC(Automatic Train Control)システムの一部の機能を流用して達成してもよいし、独立なCPUや記憶装置によって達成してもよい。
【0027】
(運行モード)
次に、車両100の運行中の情報表示システム10の動作を説明する。情報表示システム10の各部は、制御部16によって制御されるので、主に、制御部16の動作として説明する。
【0028】
図8は運行モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャート、図9は車両が駅に到着する直前に表示部に表示される画像の一例を示す図、図10は車両が駅に到着したときに表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【0029】
まず、制御部16は、現在時刻および現在位置を確認する(ステップS1)。現在時刻は、図示しない車載時計から時間データとして得られる。また、現在位置は、検出部18から取得した車輪の回転数から得られる。
【0030】
次に、制御部16は、記憶部12を参照する(ステップS2)。ここで、制御部16は、現在位置に基づいて、当該位置に対応する建物の建物データを記憶部12から抽出する。さらに、制御部16は、天候データおよび時間データから、現在の天候および時間に合った背景の背景データを記憶部12から抽出する。さらに、制御部16は、現在の建物データに合成するための広告の広告データを記憶部12から抽出する。
【0031】
制御部16は、記憶部12から抽出した各データを合成して、表示部14に送信し表示させる(ステップS3)。具体的には、たとえば、現在位置の外部の建物の3次元画像に、晴れの夕方の背景を組み合わせ、広告バスを合成して、表示部14に表示させる。したがって、車両100がまるで地表を走っているかのように、左右の窓から見える景色の3次元画像が、表示部14に表示される。乗客は、天候や時間も背景に反映されるので、画像からだいたいの時間や天候も判断できる。
【0032】
制御部16は、通常の運行を終了したかどうかを判断し(ステップS4)、通常の運行が終了していない場合(ステップS4:NO)、ステップS1からの処理を繰り返す。これによって、表示部14に表示される画像が車両100の位置と同期してリアルタイムに流れていく。通常運行が終了した場合(ステップS4:YES)、情報表示システム10は動作を終了する。
【0033】
以上のように、本実施形態の情報表示システム10では、地下鉄等の外が見えない車両100内においても、車両内部の表示部14に外部の景色を同期させて表示させるので、乗客は、現在位置を大まかに知ることができる。現在位置を知ることによって、乗客は、どこを走っているか全くわからない場合に比べて、安心感を得ることができる。ランドマークになるような建物の大まかな位置や方角も確認できるので、降車後の移動の際に方向感覚が得やすくなる。
【0034】
また、背景の空が時間や当日の天候データ(天気予報)に合わせて変わるので、乗客は、現在位置だけでなく時間や天候も知ることができる。したがって、たとえば、外がもう暗くなっていることや、雨が降っているとなども知ることができる。雨が降っていることが分かれば、傘の準備をするなどの雨に対する心の準備もできる。
【0035】
加えて、表示部14には建物に加えて、ラッピングバスやバルーン広告などが表示される。広告が目立つので、有効な広告効果を得ることができる。
【0036】
本実施形態では、建物や背景の画像に、あえて実際の動画を使わず、3次元コンピュータグラフィックの動画を使用している。実際の風景をそのまま動画として流した場合、看板等が多すぎたり、ランドマークの建物が見えにくかったり、煩雑な画像になってしまうからである。乗客が現在位置を判断するのに役立ちそうな建物等を取捨選択して3次元画像を作成して動画として表示部14に表示することによって、乗客による位置判断を容易にできる。建物等が取捨選択されて表示されるので、広告用のラッピングバス等の画像も目立ち、広告効果をより向上できる。ただし、3次元画像の方が上記利点はあるものの、実際の風景画像を撮影して、表示部14に表示させてもよい。現在位置に対応する実風景を流すことによっても、現在位置の把握の助けにはなるからである。
【0037】
なお、上記運行モードでは、図7に示すように、車両100が地上を走っているときに見えるような画像が表示部14に表示されている例を説明した。しかし、これに限定されない。たとえば、車両が駅に到着する直前には、図9に示されるように、地下から地上を見上げたような画像が表示されてもよい。このように、見上げる画像を表示することによって、地上の建物等の位置に臨場感を持たせることができる。また、駅に到着した時には、図10に示すように、建物の画像に加えて駅名を表示させることによって、当駅をより明確に乗客に伝えることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、車輪の回転数によって、車両の現在位置の情報を得ていたが、これに限定されない。車両外部の中央制御センターから位置情報を受信したり、あるいは、GPSによって位置情報を取得したりしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、時間や天候によって、表示部14に表示する画像の背景を変更している。これと連動させて、車両内の照明の明るさや、色を変更しても良い。たとえば、晴れの昼には照明を青く明るくし、晴れの夕方には照明を赤くし、あるいは、雨の日には照明を少し暗くしたりしても良い。この場合、制御部16が、車両100内の照明も制御する。
【0040】
また、上記実施形態では、画像(動画)が表示部14に表示されている形態について説明した。しかし、車両内に無線送信環境を敷設し、乗客が持つ携帯端末に画像データを送信して、携帯端末のディスプレイに画像を表示させてもよい。乗客は、端末を見ることによって、車外の様子を知ることができる。
【0041】
(更新モード)
次に、記憶部12に記憶している情報を更新する際のシステムおよび手順を説明する。
【0042】
図11は情報表示システムとサーバを示す図、図12は更新モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0043】
図11に示すように、更新作業時には、情報表示システム10はサーバ20に無線接続される。サーバ20との無線接続は、車両100が車庫に戻って、運転が再開される前に行われる。
【0044】
サーバ20は、予め建物データ、広告データおよび当日の天候データを自動取得し、あるいはそれらのデータが入力されている。なお、背景の画像は、上述のように複数種類しかなく、それ以上増えることがないので、最初にサーバ20に入力されてから更新される必要がない。したがって、以下では、建物データ、広告データおよび天候データが更新される手順を説明する。
【0045】
図12に示すように、まず、制御部16は、サーバ20と接続されたかどうかを判断する(ステップS11)。サーバ20との接続は、車両100に設置されたアンテナ104を介して、無線LAN通信等によって行われる。サーバ20に接続されていない場合(ステップS11:NO)、サーバ20に接続されるまで待機する。サーバ20に接続されると(ステップS11:YES)、制御部16は、建物データの更新があるかをサーバ20に確認する(ステップS12)。
【0046】
建物データの更新がある場合(ステップS12:YES)、制御部16は、サーバ20から建物データを受信して、記憶部12の建物データを更新する(ステップS13)。建物データの更新がない場合(ステップS12:NO)、ステップS14の処理に進む。建物データは、表示させる建物に変更がない限り、通常は変更がないので、毎日更新されるものではない。
【0047】
続けて、制御部16は、広告データの更新があるかサーバ20に確認する(ステップS14)。広告データの更新がある場合(ステップS14:YES)、制御部16は、サーバ20から広告データを受信して、記憶部12の広告データを更新する(ステップS15)。建物データの更新がない場合(ステップS14:NO)、ステップS16の処理に進む。広告データも、建物データと同様に、毎日広告主が変わらない限り、基本的には更新の必要はない。ただし、広告を反映する広告媒体やその登場時間および登場位置を毎日変更することは考えられる。広告効果を向上するためである。このような情報の更新も広告データの更新には含まれる。
【0048】
最後に、制御部16は、サーバ20から天候データを受信して、記憶部12の天候データを更新する(ステップS16)。天候データは、当日の天気予報のデータである。したがって、天候データは、毎日更新されるべきものなので、更新の有無を確認することなく更新作業が実行される。
【0049】
以上のように、本実施形態では、車両100が車庫に格納されている間に、その日に表示部14に表示するのに必要な各種データの更新を一気に行う。したがって、走行モード中には、データの更新をする必要がない。しかし、走行モード中にも、サーバ20との通信が可能である場合には、随時、各種データの更新を行ってもよい。
【0050】
なお、上記実施形態を通して、地下鉄に本願発明が適用される形態を説明してきた。しかし、本発明はこれに限定されない。地下鉄でなくても、トンネル等の外が見えない路線を走る電車にも適用できる。この場合、トンネルの外の側方の外の景色を表示部14に表示することができる。これによって、トンネル内でも、乗客は車両の位置を確認できる。さらに、窓から外が見える電車に、本発明を適用してもよい。本発明の一形態によれば、表示部14には、選択した建物の3次元画像に広告が合成されて表示される。したがって、実際の景色よりもランドマークや広告を際立たせることができる。乗客は必要な情報だけ見られる。
【符号の説明】
【0051】
10 情報表示システム、
12 記憶部、
14 表示部、
16 制御部、
18 検出部、
20 サーバ、
100 車両、
102 車輪。
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な列車などの車両には、窓が設けられている。乗客は、窓の外の景色を見ることによって、現在の列車の位置を大まかに確認したり、これから向かう目的の建物やランドマークを確認したりもできる。
【0003】
また、最近では、情報表示用のディスプレイを搭載した車両もある。ディスプレイには、ニュースや広告等が表示される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−355155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように、乗客が車外の様子を確認できるのは、外を走る車両に限られる。地下やトンネル内を走る列車等の車両においては、備えつけの窓から外を見ても、暗いトンネルの内壁が見えるのみであり、トンネルの外の様子や建物を見ることはできない。したがって、現在どの辺りを走っているか等を、乗客は確認できない。
【0006】
また、車両内のディスプレイには、路線図や目的地は表示されるものの、走っている現在位置を確認できるような情報は表示されていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、地下鉄等の車両の乗客が列車に乗りながらも列車の外の様子を視覚的に知ることができる情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
情報表示システムは、車両に搭載され、記憶部、表示部および制御部を有する。記憶部は、車両が走行する区域において車両外部に見られる画像を画像データとして記憶する。表示部は、記憶部に記憶された画像を表示する。制御部は、記憶部から表示部への画像データの送信を制御して、車両の現在位置に対応する(同期した)画像を表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0009】
車両の現在位置に対応した画像(景色)を表示部に表示できるので、乗客に現在位置を知らせ、安心感を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の概念を説明するための図である。
【図2】情報表示システムの概略構成を示す図である。
【図3】記憶部に記憶されるデータ構造を示す概念図である。
【図4】画面に合成される広告の一例を示す図である。
【図5】ドアの上部に設置された表示部を示す図である。
【図6】左右のドアにそれぞれ表示される画像を示す図である。
【図7】異なる背景の画像を示す図である。
【図8】運行モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】車両が駅に到着する直前に表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【図10】車両が駅に到着したときに表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【図11】情報表示システムとサーバを示す図である。
【図12】更新モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態の情報表示システムでは、乗客車両内に設置された表示部に、車両が走る外部(地上、トンネルの外)の情報を表示させて、乗客に外部の状況を知らせるものである。
【0013】
図1は、本実施形態の概念を説明するための図である。
【0014】
図1では、地下のトンネル内を走る電車が概念的に示されている。多くの場合、地下鉄は、大きな道路の下を走っている。したがって、もし、地下鉄がそのまま地上に上がってきて走ったとすると、地上の大きな道路の左右の景色(建物、空模様等)が見えることになる。大きな道路の下を走っていない場合もあるが、その場合でも、地上に電車が上がってきたと想定すれば、見える景色がある。本実施形態は、電車が地上に上がって走ったと想定して、電車の両側の窓から見える建物や空模様などの地上の景色を電車内の乗客に見せるシステムである。地上の景色は、図1に示すように、車両内の表示部(ディスプレイ)に表示される。乗客は、表示部を見ることによって、地上の景色を知ることができる。
【0015】
以下に、本実施形態のシステムについて、詳細に説明する。
【0016】
図2は、情報表示システムの概略構成を示す図、図3は記憶部に記憶されるデータ構造を示す概念図、図4は画面に合成される広告の一例を示す図、図5はドアの上部に設置された表示部を示す図、図6は左右のドアにそれぞれ表示される画像を示す図、図7は異なる背景の画像を示す図である。
【0017】
本実施形態に係る情報表示システム10は、車両100に搭載されており、記憶部12と、表示部14と、制御部16とを有する。記憶部12、表示部14および制御部16は、相互に有線または無線によって接続されている。
【0018】
記憶部12は、図3に示すように、建物データ、天候データ、背景データおよび広告データを格納している。
【0019】
建物データは、三次元コンピュータグラフィック(3DCG)により作成されており、車両100が運行する区域において当該車両100の外部に見られる建物や道路を表現するためのデータである。建物データは、動画であり、車両100の運行に同期できるように、車両の位置と対応付けられて記憶されている。
【0020】
天候データは、当日の天候に関するデータであり、当日の経時的な天候の移り変わりを示す。天候データは、たとえば、朝9時〜12時が曇り、12時〜18時が雨、18時〜21時が曇り、21時〜24時が晴れとうような情報を含む。
【0021】
背景データは、建物の背景の画像を示すデータである。背景データは、時間や天候によって建物の背景に写す画像を変更するために予め記憶部12に記憶されている。たとえば、背景データは、明け方、朝、昼、夕方、夜のように空の明るさを異ならせた背景と、それらに加えて、晴天、雨天、雷雨、曇り空など天候を異ならせた背景とをそれぞれ組み合わせて表示するために使用される。
【0022】
広告データは、建物データによって表現される建物および背景データによって表現される背景に合成される広告に関するデータである。広告データによって表現される広告は、たとえば、図4に示すように、建物の屋上に付けられたバルーン広告や、広告が車体にプリントされたラッピングバスとして、表示部14に表示される建物や背景の映像に合成される。広告は、あるいは、看板広告、空を飛ぶ気球広告や飛行船広告であってもよい。
【0023】
表示部14は、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルのような薄型の表示パネルであり、記憶部12に記憶された画像を表示するために、各乗客車両内に設置されている。表示部14は、たとえば、図5に示すように、車両の両側のドアの上部に設置されている。ドアは進行方向右側と左側の両側にあるので、表示部14は、図6に示すように、右側のドアと左側のドアとで異なる画像、すなわち、図1に示すように地上において両側に見える画像をそれぞれ表示する。
【0024】
また、表示部14に表示される画像は、上述のように、時間や天候によって背景が変わって表示される。背景は、晴れの昼であれば、図7の一番上に示されるように、明るい青空になり、晴れの夕方であれば、上から二番面に示されるように、赤みがかった明るい空になり、晴れの夜であれば、上から三番目に示されるように、暗く星や月が見える空になり、雨の昼であれば、薄暗く雨が降っている空になる。
【0025】
制御部16は、記憶部12から表示部14への画像データの送信を制御して、走行中の車両の現在位置に対応する画像(外の風景)を表示部14に表示させる。ここで、制御部16は、車両の現在位置を取得するために、検出部18が接続されている。検出部18は、図2に示すように、車両100の車輪102に取り付けられている。検出部18は、車輪の回転数を検出する。
【0026】
なお、記憶部12および制御部16は、たとえば、車両に搭載されているATC(Automatic Train Control)システムの一部の機能を流用して達成してもよいし、独立なCPUや記憶装置によって達成してもよい。
【0027】
(運行モード)
次に、車両100の運行中の情報表示システム10の動作を説明する。情報表示システム10の各部は、制御部16によって制御されるので、主に、制御部16の動作として説明する。
【0028】
図8は運行モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャート、図9は車両が駅に到着する直前に表示部に表示される画像の一例を示す図、図10は車両が駅に到着したときに表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【0029】
まず、制御部16は、現在時刻および現在位置を確認する(ステップS1)。現在時刻は、図示しない車載時計から時間データとして得られる。また、現在位置は、検出部18から取得した車輪の回転数から得られる。
【0030】
次に、制御部16は、記憶部12を参照する(ステップS2)。ここで、制御部16は、現在位置に基づいて、当該位置に対応する建物の建物データを記憶部12から抽出する。さらに、制御部16は、天候データおよび時間データから、現在の天候および時間に合った背景の背景データを記憶部12から抽出する。さらに、制御部16は、現在の建物データに合成するための広告の広告データを記憶部12から抽出する。
【0031】
制御部16は、記憶部12から抽出した各データを合成して、表示部14に送信し表示させる(ステップS3)。具体的には、たとえば、現在位置の外部の建物の3次元画像に、晴れの夕方の背景を組み合わせ、広告バスを合成して、表示部14に表示させる。したがって、車両100がまるで地表を走っているかのように、左右の窓から見える景色の3次元画像が、表示部14に表示される。乗客は、天候や時間も背景に反映されるので、画像からだいたいの時間や天候も判断できる。
【0032】
制御部16は、通常の運行を終了したかどうかを判断し(ステップS4)、通常の運行が終了していない場合(ステップS4:NO)、ステップS1からの処理を繰り返す。これによって、表示部14に表示される画像が車両100の位置と同期してリアルタイムに流れていく。通常運行が終了した場合(ステップS4:YES)、情報表示システム10は動作を終了する。
【0033】
以上のように、本実施形態の情報表示システム10では、地下鉄等の外が見えない車両100内においても、車両内部の表示部14に外部の景色を同期させて表示させるので、乗客は、現在位置を大まかに知ることができる。現在位置を知ることによって、乗客は、どこを走っているか全くわからない場合に比べて、安心感を得ることができる。ランドマークになるような建物の大まかな位置や方角も確認できるので、降車後の移動の際に方向感覚が得やすくなる。
【0034】
また、背景の空が時間や当日の天候データ(天気予報)に合わせて変わるので、乗客は、現在位置だけでなく時間や天候も知ることができる。したがって、たとえば、外がもう暗くなっていることや、雨が降っているとなども知ることができる。雨が降っていることが分かれば、傘の準備をするなどの雨に対する心の準備もできる。
【0035】
加えて、表示部14には建物に加えて、ラッピングバスやバルーン広告などが表示される。広告が目立つので、有効な広告効果を得ることができる。
【0036】
本実施形態では、建物や背景の画像に、あえて実際の動画を使わず、3次元コンピュータグラフィックの動画を使用している。実際の風景をそのまま動画として流した場合、看板等が多すぎたり、ランドマークの建物が見えにくかったり、煩雑な画像になってしまうからである。乗客が現在位置を判断するのに役立ちそうな建物等を取捨選択して3次元画像を作成して動画として表示部14に表示することによって、乗客による位置判断を容易にできる。建物等が取捨選択されて表示されるので、広告用のラッピングバス等の画像も目立ち、広告効果をより向上できる。ただし、3次元画像の方が上記利点はあるものの、実際の風景画像を撮影して、表示部14に表示させてもよい。現在位置に対応する実風景を流すことによっても、現在位置の把握の助けにはなるからである。
【0037】
なお、上記運行モードでは、図7に示すように、車両100が地上を走っているときに見えるような画像が表示部14に表示されている例を説明した。しかし、これに限定されない。たとえば、車両が駅に到着する直前には、図9に示されるように、地下から地上を見上げたような画像が表示されてもよい。このように、見上げる画像を表示することによって、地上の建物等の位置に臨場感を持たせることができる。また、駅に到着した時には、図10に示すように、建物の画像に加えて駅名を表示させることによって、当駅をより明確に乗客に伝えることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、車輪の回転数によって、車両の現在位置の情報を得ていたが、これに限定されない。車両外部の中央制御センターから位置情報を受信したり、あるいは、GPSによって位置情報を取得したりしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、時間や天候によって、表示部14に表示する画像の背景を変更している。これと連動させて、車両内の照明の明るさや、色を変更しても良い。たとえば、晴れの昼には照明を青く明るくし、晴れの夕方には照明を赤くし、あるいは、雨の日には照明を少し暗くしたりしても良い。この場合、制御部16が、車両100内の照明も制御する。
【0040】
また、上記実施形態では、画像(動画)が表示部14に表示されている形態について説明した。しかし、車両内に無線送信環境を敷設し、乗客が持つ携帯端末に画像データを送信して、携帯端末のディスプレイに画像を表示させてもよい。乗客は、端末を見ることによって、車外の様子を知ることができる。
【0041】
(更新モード)
次に、記憶部12に記憶している情報を更新する際のシステムおよび手順を説明する。
【0042】
図11は情報表示システムとサーバを示す図、図12は更新モード時の情報表示システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0043】
図11に示すように、更新作業時には、情報表示システム10はサーバ20に無線接続される。サーバ20との無線接続は、車両100が車庫に戻って、運転が再開される前に行われる。
【0044】
サーバ20は、予め建物データ、広告データおよび当日の天候データを自動取得し、あるいはそれらのデータが入力されている。なお、背景の画像は、上述のように複数種類しかなく、それ以上増えることがないので、最初にサーバ20に入力されてから更新される必要がない。したがって、以下では、建物データ、広告データおよび天候データが更新される手順を説明する。
【0045】
図12に示すように、まず、制御部16は、サーバ20と接続されたかどうかを判断する(ステップS11)。サーバ20との接続は、車両100に設置されたアンテナ104を介して、無線LAN通信等によって行われる。サーバ20に接続されていない場合(ステップS11:NO)、サーバ20に接続されるまで待機する。サーバ20に接続されると(ステップS11:YES)、制御部16は、建物データの更新があるかをサーバ20に確認する(ステップS12)。
【0046】
建物データの更新がある場合(ステップS12:YES)、制御部16は、サーバ20から建物データを受信して、記憶部12の建物データを更新する(ステップS13)。建物データの更新がない場合(ステップS12:NO)、ステップS14の処理に進む。建物データは、表示させる建物に変更がない限り、通常は変更がないので、毎日更新されるものではない。
【0047】
続けて、制御部16は、広告データの更新があるかサーバ20に確認する(ステップS14)。広告データの更新がある場合(ステップS14:YES)、制御部16は、サーバ20から広告データを受信して、記憶部12の広告データを更新する(ステップS15)。建物データの更新がない場合(ステップS14:NO)、ステップS16の処理に進む。広告データも、建物データと同様に、毎日広告主が変わらない限り、基本的には更新の必要はない。ただし、広告を反映する広告媒体やその登場時間および登場位置を毎日変更することは考えられる。広告効果を向上するためである。このような情報の更新も広告データの更新には含まれる。
【0048】
最後に、制御部16は、サーバ20から天候データを受信して、記憶部12の天候データを更新する(ステップS16)。天候データは、当日の天気予報のデータである。したがって、天候データは、毎日更新されるべきものなので、更新の有無を確認することなく更新作業が実行される。
【0049】
以上のように、本実施形態では、車両100が車庫に格納されている間に、その日に表示部14に表示するのに必要な各種データの更新を一気に行う。したがって、走行モード中には、データの更新をする必要がない。しかし、走行モード中にも、サーバ20との通信が可能である場合には、随時、各種データの更新を行ってもよい。
【0050】
なお、上記実施形態を通して、地下鉄に本願発明が適用される形態を説明してきた。しかし、本発明はこれに限定されない。地下鉄でなくても、トンネル等の外が見えない路線を走る電車にも適用できる。この場合、トンネルの外の側方の外の景色を表示部14に表示することができる。これによって、トンネル内でも、乗客は車両の位置を確認できる。さらに、窓から外が見える電車に、本発明を適用してもよい。本発明の一形態によれば、表示部14には、選択した建物の3次元画像に広告が合成されて表示される。したがって、実際の景色よりもランドマークや広告を際立たせることができる。乗客は必要な情報だけ見られる。
【符号の説明】
【0051】
10 情報表示システム、
12 記憶部、
14 表示部、
16 制御部、
18 検出部、
20 サーバ、
100 車両、
102 車輪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する区域において車両外部に見られる画像を画像データとして記憶する記憶部と、
前記画像を表示する表示部と、
前記記憶部から前記表示部への画像データの送信を制御して、前記車両の現在位置に対応する画像を前記表示部に表示させる制御部と、
を有し、前記車両に搭載される情報表示システム。
【請求項2】
前記画像は、車両外部の様子を示す三次元コンピュータグラフィックである請求項1または請求項2に記載の情報表示システム。
【請求項3】
前記記憶部は、当日の天候に関する天候データを記憶し、
前記制御部は、前記天候データに基づいて、前記画像データの背景の天候を当日の天候に合わせて変更する請求項1または請求項2記載の情報表示システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像データの背景の明るさおよび色彩の少なくとも一方を現在時刻に合わせて変更する請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項5】
前記記憶部は、広告に関する広告データを記憶し、
前記制御部は、前記広告を合成した前記画像を前記表示部に表示させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項6】
前記記憶部は、外部のサーバから、当日の天候に関する天候データまたは広告に関する広告データを取得する請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項7】
前記車両の車輪の回転数を検出する検出部をさらに有し、
前記制御部は、車両の車輪の回転数として前記車両の現在位置を決定し、当該現在位置に同期した画像を前記記憶部から前記表示部に送信する請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項1】
車両が走行する区域において車両外部に見られる画像を画像データとして記憶する記憶部と、
前記画像を表示する表示部と、
前記記憶部から前記表示部への画像データの送信を制御して、前記車両の現在位置に対応する画像を前記表示部に表示させる制御部と、
を有し、前記車両に搭載される情報表示システム。
【請求項2】
前記画像は、車両外部の様子を示す三次元コンピュータグラフィックである請求項1または請求項2に記載の情報表示システム。
【請求項3】
前記記憶部は、当日の天候に関する天候データを記憶し、
前記制御部は、前記天候データに基づいて、前記画像データの背景の天候を当日の天候に合わせて変更する請求項1または請求項2記載の情報表示システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像データの背景の明るさおよび色彩の少なくとも一方を現在時刻に合わせて変更する請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項5】
前記記憶部は、広告に関する広告データを記憶し、
前記制御部は、前記広告を合成した前記画像を前記表示部に表示させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項6】
前記記憶部は、外部のサーバから、当日の天候に関する天候データまたは広告に関する広告データを取得する請求項1〜5のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【請求項7】
前記車両の車輪の回転数を検出する検出部をさらに有し、
前記制御部は、車両の車輪の回転数として前記車両の現在位置を決定し、当該現在位置に同期した画像を前記記憶部から前記表示部に送信する請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報表示システム。
【図2】
【図3】
【図8】
【図11】
【図12】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図3】
【図8】
【図11】
【図12】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−75848(P2011−75848A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227455(P2009−227455)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(395007277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(395007277)
【Fターム(参考)】
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