説明

情報表示パネル用電極およびそれを用いた情報表示パネル

【課題】電極の構成を検討して電極の帯電特性を制御することで、多数回の反転表示後にもコントラスを維持し、ムラなども発生しない情報表示パネル用電極およびそれを用いた情報表示パネルを提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、正帯電性粒子群および負帯電性粒子群からなる表示媒体を配置し、各基板のそれぞれに設けた電極に電圧を印加して電極間に発生させた電界を表示媒体に与えることで、表示媒体を駆動させて情報を表示する情報表示パネル用電極であって、電極5は、導電性インクを用いて形成され、かつ、電極上に無機成分を含有する帯電制御層11を設け、帯電制御層と、正帯電性粒子群を構成する正帯電性粒子と、負帯電性粒子群を構成する負帯電性粒子との接触帯電序列が、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子、を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、正帯電性粒子群および負帯電性粒子群からなる表示媒体を配置し、各基板のそれぞれに設けた電極に電圧を印加して電極間に発生させた電界を表示媒体に与えることで、表示媒体を駆動させて情報を表示する情報表示パネル用電極およびそれを用いた情報表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した情報表示パネルにおいて、基板上に電極を形成する方法として、フォトリソグラフィーを用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、導電性インクを用いる方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。そのうち、特許文献1に記載された例のように、真空成膜+フォトリソによる電極形成については、確立された技術であり非常に高精度なパターニングが可能となるが、高価な設備が多数必要となるとともに工程数が非常に多くコストが高い。また、エッチング廃液など環境面への負荷も高い。これに対し、特許文献2に記載された例のように、導電性インクあるいは焼成にて導電性を発現するインクを塗布あるいは印刷にて基板上に形成してなる電極は、大幅なコスト低減が可能であることから、近年大きな期待が寄せられている。
【0003】
しかし、一方で、例えば導電フィラーとして銀、バインダーとして樹脂を含む導電性インクから形成された電極を、少なくとも一方が透明な2枚の基板の一方に設け、正帯電性粒子群および負帯電性粒子群からなる表示媒体を配置し、基板のそれぞれに設けた電極に電圧を印加して電極間に発生させた電界を表示媒体に与えることで、表示媒体を駆動させて情報を表示する情報表示パネルに用いようとすると、フィラーが粒子群に対し正帯電しやすい特性を有する為に、電極と粒子群とが接触した際に、接触帯電として電極が正、粒子群が負に帯電しやすい。この結果、多数回の反転表示を行うと正帯電性粒子の帯電量は低下し、負帯電性粒子の帯電量は増大し、表示を行う異なる2色の粒子群の帯電バランスが崩れ(一方は低帯電化、もう一方は高帯電化)、表示特性(コントラスト)が低下し、ムラなどの不具合も発生しやすくなってしまう問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、2枚の基板のそれぞれに設けた電極上に絶縁膜を設け、2種類の粒子A、粒子Bと絶縁膜との帯電序列が、粒子A>絶縁膜>粒子Bとなるようにすることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−337709号公報
【特許文献2】特開2004−287011号公報
【特許文献3】特開2010−48861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示されている、2種類の粒子A、粒子Bと絶縁膜との帯電序列が、粒子A>絶縁膜>粒子Bとなる範囲にあっても、必ずしも目的とする効果を得ることができず、多数回の反転表示後に、コントラスト維持することができず、ムラの発生する場合がある問題があった。
【0007】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、電極の構成を検討して電極の帯電特性を制御することで、多数回の反転表示後にもコントラスを維持し、ムラなども発生しない情報表示パネル用電極およびそれを用いた情報表示パネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、導電フィラーとして銀、バインダーとして樹脂を含む導電性インクから形成された電極上に、帯電制御層として電極とは異なる材料を一層付与することで、多数回の反転表示を行った際にも、表示をつかさどる異なる2色の粒子群の帯電バランスが崩れる事なく、安定した表示特性(コントラスト)を維持し、ムラ等の不具合を回避する検討を行った。その結果、特許文献3で規定している帯電序列:正帯電性粒子(粒子A)>帯電制御膜(絶縁膜)>負帯電性粒子(粒子B)の範囲内にあっても、必ずしも効果があるわけでは無いことが分かった。具体的には、有機物のみからなる材料ではその効果が低く、少なくとも無機成分を含む帯電制御層である必要があることが分かった。その中でSiOを主成分とする帯電制御層が好ましく、より具体的には、シロキサン溶液を塗布し焼成するゾル・ゲル法にて形成したシリカ膜あるいは有機無機ハイブリッドシリカ膜が好ましいことが分かった。
【0009】
無機成分を含む帯電制御層が好ましい事の詳細な理由は現段階では明らかではないが、膜表面の硬度の影響や、粒子群との物理的付着力を低減する効果などがあると考えられ、良好な結果を得ることができる無機セラミックスのITO電極同様に粒子群の流動性を維持できる事が考えられる。
【0010】
上記知見に基づき得られた本発明の情報表示パネル用電極は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、正帯電性粒子群および負帯電性粒子群からなる表示媒体を配置し、各基板のそれぞれに設けた電極に電圧を印加して電極間に発生させた電界を表示媒体に与えることで、表示媒体を駆動させて情報を表示する情報表示パネルの当該基板に設けた電極であって、上記電極は、導電性インクを用いて形成され、かつ、上記電極上に無機成分を含有する帯電制御層を設け、上記帯電制御層と、上記正帯電性粒子群を構成する正帯電性粒子と、上記負帯電性粒子群を構成する負帯電性粒子との接触帯電序列が、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子、を満足することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の情報表示パネルに用いる電極の好適例としては、前記帯電制御層が、SiOを主成分とする材料からなることが挙げられる。
【0012】
さらに、本発明の情報表示パネルは、上述した情報表示パネルに用いる電極を、前記基板のそれぞれに設けた電極のうち、少なくとも一方の電極として用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極は、導電性インクを用いて形成され、かつ、電極上に無機成分を含有する帯電制御層を設け、帯電制御層と、正帯電性粒子群を構成する正帯電性粒子と、負帯電性粒子群を構成する負帯電性粒子との接触帯電序列が、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子、を満足することにより、多数回の表示切り替え後にもコントラストを維持し、ムラ等も発生しない情報表示パネル用電極およびそれを用いた情報表示パネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の対象となる帯電粒子駆動型の情報表示パネルの一例を説明するための図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の対象となる帯電粒子駆動型の情報表示パネルの他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の対象となるパネル構造について>
まず、本発明の対象となる情報表示パネルの一例である帯電粒子駆動型情報表示パネルの基本的な構成について説明する。前記情報表示パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体に対向電極対から電界が付与される。付与された電界方向にそって、表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時あるいは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0016】
本発明の対象となる帯電粒子駆動型の情報表示パネルの例を、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)に基づき説明する。
【0017】
図1(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セル7において、背面側のパネル基板1に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側の透明なパネル基板2に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図1(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示している。
【0018】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT(薄膜トランジスタ)付き画素電極)と基板2に設けた電極6(共通電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図2(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示している。
【0019】
<本発明の情報表示パネル用電極について>
本発明の情報表示パネル用電極は、上述した図1(a)、(b)に示す例では、そのストライプ電極5上に無機成分を含有する帯電制御層11を設けて構成したことを特徴とする。また、上述した図2(a)、(b)に示す例では、TFT付き画素電極5上に無機成分を含有する帯電制御層11を設けたことを特徴とする。そして、電極5が、導電性フィラーおよびバインダー樹脂からなる導電性インクを用いて形成されたものであり、帯電制御層11が、正帯電性粒子群を構成する正帯電性粒子および負帯電性粒子群を構成する負帯電性粒子と帯電制御層との接触帯電序列、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子、を満たすものであることを特徴とする。
【0020】
本発明の情報表示パネル用電極において、電極の接触帯電特性は、電極上に帯電制御層を少なくとも一層付与する事で、電極としての接触帯電特性を変化させる事が出来る。具体的には、シロキサン溶液を塗布し焼成して形成されたシリカ膜あるいは有機無機ハイブリッドシリカ膜では、シロキサン溶液中の有機シラン化合物の有機基の選択により帯電特性を制御可能であり、様々な特性の粒子群に対して帯電制御層として機能させる事が出来る。帯電制御層を形成する為のシロキサン溶液には、他に樹脂や各種無機フィラー、あるいは荷電制御材等を配合してもよい。
【0021】
これらの方策によって、接触帯電序列(正帯電のしやすさ)が、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子の関係式を満たし、かつ、帯電制御層に無機成分を含有する事により、粒子群の帯電バランスの悪化が抑制され、安定した表示特性を維持することができる。
【0022】
本発明の情報表示パネル用電極において、電極の基板材料は特に問わず、ガラス、樹脂板、金属、高分子フィルムなどを用いることができる。導電性インクとしては、導電性粒子や導電性ワイヤー、ドット、チューブ等のフィラーが配合され、塗布あるいは印刷に続く乾燥、焼成後にフィラーの接触により導電性が発現するものや、PEDOT/PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate))に代表される導電性高分子インク等を用いる事ができる。また、有機銀化合物など金属の前駆体がインク中に配合されており、印刷後の焼成によって導電性を発現するインクを用いる事もできる。
【実施例】
【0023】
以下、まず、実施例で使用する正帯電特性を有する黒色粒子群および負帯電特性を有する白色粒子群の製造方法を説明し、本発明例としての実施例1−2および比較例としての比較例1−5について接触帯電序列を求める方法を説明し、実施例1−2および比較例1−5について実際に情報表示パネルを形成した時の表示特性評価を説明する。
【0024】
<使用した粒子について>
(黒色粒子群)
メチルメタクリレートモノマー(関東化学試薬)60重量部、及び、1分子中に重合反応基を複数持つ多官能性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(和光純薬試薬)40重量部(約25mol%)に、正帯電の荷電制御剤としてニグロシン化合物(ボントロンN07:オリエント化学製)3重量部、及び、黒色顔料として、カーボンブラック(スペシャルブラック:デグッサ製)5重量部をサンドミルにより分散させ、(アクリル系及びメタクリル系)樹脂−炭化水素系樹脂ブロックコポリマー(モディパーF600:日本油脂製)5重量部を溶解させた後、さらに2重量部のラウリルパーオキサイド(パーロイルL:日本油脂製)を溶解させた液を、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(ラテムルE−118B:花王製)を0.5%添加した精製水に懸濁、重合させ、濾過、乾燥させた後、分級機(MDS−2:日本ニューマチック工業)を用いて平均粒子径9.2μmの正帯電性黒色粒子群を得た。
【0025】
(白色粒子群)
ポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100重量部と、着色剤として二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)100重量部と、負帯電の荷電制御剤としてフェノール系縮合物(ボントロンE89:オリエント化学製)5重量部とを2軸混練機により溶融混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック(株)製)で細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニュ−マチック工業)を用いて分級し、溶融球状化装置(MR−10:日本ニュ−マチック工業)を用いて溶融球状化して得た、平均粒子径が、9.5μmの負帯電性の白色粒子群を得た。
【0026】
<接触帯電序列の判定方法について>
同一種類の電極が形成されたガラス基板を2枚用意し、平均帯電量が2[fC:フェムトクーロン]の正帯電性粒子群を一方の電極上に5g/mとなる量を均一に散布し、40μmのスペーサーを介してもう一枚の電極を対向するように貼り合せたパネルとする。片方の電極を接地し、もう一方の電極に±200V、1kHzの矩形波電圧を印加し正帯電性粉流体を1万回反転させた後にパネルを分解し、内部の粒子群の帯電量を計測した。粒子群の帯電量測定には電界飛翔方式の帯電量分布測定装置(E−PING社製Q−test)により帯電量分布を測定しその平均値を平均帯電量とした。初期帯電量2[fC]に対する駆動後の帯電量の大小によって、下記の通り正帯電性粒子と電極との接触帯電序列を判定した。
【0027】
駆動後帯電量>初期帯電量(2[fC])の場合
接触帯電序列(正帯電のしやすさ):正帯電性粒子>電極または帯電制御層
駆動後帯電量<初期帯電量(2[fC])の場合
接触帯電序列(正帯電のしやすさ):電極または帯電制御層>正帯電性粒子
【0028】
負帯電性粒子群と電極についても同様に、平均帯電量が−2[fC]の負帯電性粒子群を用い、初期帯電量−2[fC]に対する駆動後の帯電量の大小によって下記の通り負帯電性粉流体と電極の接触帯電序列を判定する。
駆動後帯電量>初期帯電量(−2[fC])の場合
接触帯電序列(正帯電のしやすさ):負帯電性粒子>電極または帯電制御層
駆動後帯電量<初期帯電量(−2[fC])の場合
接触帯電序列(正帯電のしやすさ):電極または帯電制御層>負帯電性粒子
【0029】
(実施例1)
フィラーとして平均粒径1μmの球状銀、バインダーがポリエステル樹脂の銀インクを用い、厚さ1.1mmの無アルカリガラスからなる基板上にナイフコートにてインクを塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ6μmの電極を形成した。その後、この電極上に、帯電制御層として固形分6%のシロキサン溶液(日産化学製OA−1003)をバーコートにて塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ0.5μmの帯電制御層を形成した。この電極基板を用いて接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電粒子群(黒色粒子群)3.4[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−3.2[fC]であった。
【0030】
(実施例2)
フィラーとして平均粒径1μmの球状銀、バインダーがポリエステル樹脂の銀インクを用い、厚さ1.1mmの無アルカリガラスからなる基板上にナイフコートにてインクを塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ6μmの電極を形成した。その後、この電極上に、帯電制御層として実施例1とは末端官能基の分子量が異なる固形分6%のシロキサン溶液(日産化学製OA−1004)をバーコートにて塗布、120℃で30分焼成する事で、厚さ0.5μmの帯電制御層を形成した。この電極基板を用いて接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電粒子群(黒色粒子群)3.0[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−3.3[fC]であった。
【0031】
(比較例1)
フィラーとして平均粒径1μmの球状銀、バインダーがポリエステル樹脂の銀インクを用い、厚さ1.1mmの無アルカリガラスからなる基板上にナイフコートにてインクを塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ6μmの電極を形成した。この電極を用いて接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電粒子群(黒色粒子群)1.4[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−4.2[fC]であった。
【0032】
(比較例2)
フィラーとして平均粒径1μmの球状銀、バインダーがポリエステル樹脂の銀インクを用い、厚さ1.1mmの無アルカリガラスからなる基板上にナイフコートにてインクを塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ6μmの電極を形成した。その後、この電極上に、帯電制御層として固形分10%のポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン200)シクロヘキサノン溶液をバーコートにて塗布、120℃で30分乾燥することで、厚さ0.5μmの帯電制御層を形成した。この電極基板を用いて接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電粒子群(黒色粒子群)3.2[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−2.8[fC]であった。
【0033】
(比較例3)
フィラーとして平均粒径1μmの球状銀、バインダーがポリエステル樹脂の銀インクを用い、厚さ1.1mmの無アルカリガラスからなる基板上にナイフコートにてインクを塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ6μmの電極を形成した。その後、この電極上に、帯電制御層として固形分10%のアクリル樹脂(総研化学製フォレットM80)MEK溶液をバーコートにて塗布、120℃で30分乾燥することで、厚さ0.5μmの帯電制御層を形成した。この電極基板を用いて接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電粒子群(黒色粒子群)2.7[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−3.1[fC]であった。
【0034】
(比較例4)
フィラーとして平均粒径1μmの球状銀、バインダーがポリエステル樹脂の銀インクを用い、厚さ1.1mmの無アルカリガラスからなる基板上にナイフコートにてインクを塗布、120℃で30分焼成する事で厚さ6μmの電極を形成した。その後、この電極上に、帯電制御層として固形分1%の末端にフッ素化合物を官能基として有するシロキサン溶液(日産化学製LR−206)をバーコートにて塗布、120℃で30分乾燥することで、厚さ0.2μmの帯電制御層を形成した。この電極基板を用いて接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電粒子群(黒色粒子群)6.2[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−0.5[fC]であった。
【0035】
(比較例5)
厚さ1.1mmの無アルカリガラスを基材とし、スパッタリングにて厚さ100nmのITO薄膜を形成した電極を作製した。このITO電極を用いて粒子群との接触帯電序列の判定を行った結果、駆動後帯電量はそれぞれ正帯電性粒子群(黒色粒子群)2.4[fC]、負帯電性粒子群(白色粒子群)−3.3[fC]であった。
【0036】
<表示特性評価について>
比較例5と同様の方法でITO薄膜を形成した電極基板を作製した。このITO電極を前面電極とし、この前面電極に高さ40μm、幅15μm、縦横が300μmピッチの正方形の隔壁を形成し、隔壁にて区切られたセル内に帯電極性の異なる白・黒の粒子群をそれぞれ5g/mとなるよう充填した後に、実施例1−2、比較例1−5の電極を背面電極として貼り合せパネルを作製した。
【0037】
背面電極を接地し、前面電極に+80Vの直流電圧を印加して白表示として前面電極側から「グレタグマクベス社製 ホータブル反射濃度計RD−19」を用いて光学濃度を計測し、次に前面電極に−80Vの直流電圧を印加して粒子群を反転させ黒表示として光学濃度を計測し、白および黒表示の光学濃度から以下の式に基づきコントラストを算出し、初期コントラストとした。
コントラスト=10(黒光学濃度−白光学濃度) (10の(黒光学濃度−白光学濃度)乗)
次に、背面電極を接地し、前面電極に±80V、1kHzの矩形波電圧を印加し粒子群を5万回反転させた後に初期コントラストと同様の方法にて5万回反転後のコントラストを計測した。また目視にて白・黒表示のムラを評価した。結果を以下の表1に示す。なお、表1において、接触帯電序列の項は、帯電制御層が有る実施例1−2、比較例2−4では粒子群と帯電制御層との接触帯電序列を記載し、帯電制御層が無い比較例1、5では粒子群と電極との接触帯電序列を記載した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から、実施例1−2および両面がITO電極の比較例5では、5万回反転後のコントラストが維持されたのに対して、比較例1−4ではコントラストが低下し、また表示にムラが発生した。このうち、比較例1では、帯電制御層を用いなかったため、良好な特性を得ることができなかった。また、比較例2−3では、帯電制御層を有するとともに接触帯電序列:正帯電性粒子(黒色粒子)>帯電制御層>負帯電性粒子(白色粒子)を満たしているが、帯電制御層が有機成分のみからなるため、良好な特性を得ることができなかった。さらに、比較例4では、帯電制御層を有するとともに無機成分を含む帯電制御層を用いているが、接触帯電序列:正帯電性粒子(黒色粒子)>帯電制御層>負帯電性粒子(白色粒子)を満たしていないため、良好な特性を得ることができなかった。
【0040】
以上のことから、少なくとも一方の電極表面に無機成分を含む帯電制御層を形成し、かつ、接触帯電序列を、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子、とすることにより、多数回の表示切り替え後にもコントラストを維持し、ムラ等も発生しない情報表示パネルを得る事が出来ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の情報表示パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板(ホワイトボード)等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence, Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、リライタブルペーパー(本発明に係る画素サイズの電界形成用画素電極対を有する外部電界形成手段を用いて書換えできるものや、外部の表示書換え手段に接続して情報を書き換えた後、接続を解放しても情報を表示したままにすることができるもの)としても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0042】
1、2 パネル基板
3W 白色粒子群
3Wa 白色粒子
3B 黒色粒子群
3Ba 黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7 セル
8 接着剤
11 帯電制御層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、正帯電性粒子群および負帯電性粒子群からなる表示媒体を配置し、各基板のそれぞれに設けた電極に電圧を印加して電極間に発生させた電界を表示媒体に与えることで、表示媒体を駆動させて情報を表示する情報表示パネルの当該基板に設けた電極であって、
上記電極は、導電性インクを用いて形成され、かつ、上記電極上に無機成分を含有する帯電制御層を設け、
上記帯電制御層と、上記正帯電性粒子群を構成する正帯電性粒子と、上記負帯電性粒子群を構成する負帯電性粒子との接触帯電序列が、正帯電性粒子>帯電制御層>負帯電性粒子、を満足することを特徴とする情報表示パネル用電極。
【請求項2】
前記帯電制御層が、SiOを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1に記載の情報表示パネル用電極。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板用電極を、前記基板のそれぞれに設けた電極のうち、少なくとも一方の電極として用いることを特徴とする情報表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−163858(P2012−163858A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25360(P2011−25360)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】