説明

情報表示パネル

【課題】従来の課題として、表示パネルの表皮部に目盛、数字、文字等がはっきりと美しく表示されないという問題がある。本発明は、金属光沢性を有した金属層の表面抵抗値をある範囲に限定することで、目盛、数字、文字等がはっきりと美しく表示される情報表示パネルを提供することを課題とする。
【解決手段】支持体の一方の面側に金属層が積層された情報表示パネルであって、前記金属層の表面抵抗値が1.3〜100Ω/□の範囲であることを特徴とする情報表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層を備える情報表示パネルに関し、特に金属層に光透過性を有する情報表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話等の情報表示パネルに、薄い金属蒸着膜の裏側に設けてある目盛、数字、文字等に光を透過させると、目盛、数字、文字等が現れ、光が透過しない場合は、目盛、数字、文字等が現れないことが提案されていた(特許文献1参照)。特許文献1に開示された技術は、薄い金属蒸着膜にアルミ蒸着膜を用いることを開示するものである。
他方、視認性、外観上のデザイン性を高めるための要素技術として、金属薄膜を用いた技術が知られている。例えば、美粧性を付与するために紙又はフィルム基材にアルミニウムを蒸着した金属蒸着膜が、包装材、カード、ポスター、シール、ラベル等に広く用いられている。金属蒸着膜は、基材に直接アルミニウムを蒸着する、いわゆるダイレクト蒸着法により主に製造されているが、最近では、接着剤を介して基材に金属蒸着膜を転写する製造方法がある。金属蒸着膜を転写する方法を用いることで、金属光沢性を有しつつ様々な外観や模様を付与することが提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に開示された技術は、金属光沢性を有しつつ様々な外観や模様を付与することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4192842号
【特許文献2】特開2000−355072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目盛、数字、文字等がはっきりと美しく表示されないという問題がある。本発明は、金属光沢性を有した金属層の表面抵抗値をある範囲に限定することで、目盛、数字、文字等がはっきりと美しく表示される情報表示パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために次のような構成を備えている。
請求項1に記載の発明は、支持体の一方の面側に金属層が積層された情報表示パネルであって、前記金属層の表面抵抗値が1.3〜100Ω/□の範囲であることを特徴とする情報表示パネルである。
請求項1に記載の発明によれば、光源が非点灯時に目視方向から観察すると、金属光沢性を有する金属層が観察され、光源が点灯時には、光が金属層を透過される効果が生じる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記金属層上に酸化防止層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の情報表示パネルである。
請求項2に記載の発明によれば、前記金属層上に酸化防止層が存在することにより、金属層が酸化されることなく金属光沢を保つことができ、より高品位な表示が可能となる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記酸化防止層上に加飾層が積層されていることを特徴とする請求項2記載の情報表示パネルである。
請求項3記載の解決手段によれば、加飾層がインキや樹脂によって構成され、意匠効果を発揮することになり、美観性が向上する。また、エンボス模様やマット模様を加飾層として設けると、艶消し模様等の金属光沢性の強度の度合いが適宜調整できる効果も生じる。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記加飾層上または基材の金属層の無い側へ設けた絵柄層上に帯電防止層が積層されていることを特徴とする請求項3記載の情報表示パネルである。
請求項4に記載の発明によれば、帯電防止層により、加飾層や酸化防止層に汚れや傷等がつきにくくなるので、金属層の金属光沢性や光透過性を維持することができる効果が生じる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記支持体はポリカーボネート、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、アクリル、ポリスチレン、メタクリル・スチレン共重合体またはアクリルニトリル・スチレン共重合体のうちのいずれかの樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4記載の情報表示パネルである。
請求項5に記載の発明によれば、ポリカーボネートは耐熱性や耐衝撃性に優れているために過酷な環境下で使用でき、ポリプロピレントおよび発泡ポリプロピレンは軽量であるために、製造工程において加工等が容易であり、情報表示パネルも軽量になる効果が生じる。また、ポリプロピレンを使用することにより、破棄燃焼時にハロゲンガス等の有害ガスが発生しないため、環境負荷が小さい効果が生じる。
【0010】
請求項6記載の発明は、前記金属層の表面に、微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項1乃至5記載の情報表示パネル。
請求項6に記載の発明によれば、金属層に微細な凹凸を設けることで、光が拡散し、またはヘアライン模様、エンボス模様、マット模様およびホログラム模様等の模様に表現することができるので、美観性を向上する効果が生じる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、金属層が十分な光透過性を有するので、光源が点灯時には、裏面に描かれた文字や図形等が金属層を透過してはっきりと美しく表示できる効果が生じる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、本発明に係る情報表示パネルの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、支持体5の一方の面側に金属層4、酸化防止層3、加飾層2及び帯電防止層1が順に積層され、支持体5の他方の面に絵柄層6が積層されたものである。支持体5の前記他方の面側に光源7が配置され、観察者8側から目視を行うことになる。
【0015】
支持体5は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂等一般的な樹脂が利用できるが、本発明においてはポリカーボネート、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、アクリル、ポリスチレン、メタクリル・スチレン共重合体またはアクリルニトリル・スチレン共重合体のうちのいずれかの樹脂であることが好ましい。特にポリカーボネートは耐熱性、耐衝撃性に優れており屋外などの過酷な環境でも長期間使用することが出来る。
【0016】
支持体5上に金属層4を形成する。
金属層4は、アルミニウム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、錫等が好ましく利用できる。
なお、金属層4は、金属光沢性を有しており、その金属光沢性が本願発明においても、そのままかされることになる。本発明においては、アルミニウムを用いるのが好ましい。アルミニウムは金属光沢性が非常に高く、美しい表示を実現することが可能となるためである。
【0017】
金属層4としては、金属を蒸着することで形成された金属蒸着層を用いることが、薄膜を高品質に形成でき、その表面に凹凸等を設けることも行いやすいことから好ましい。金属層を形成する方法としては、支持体5に対して直接に真空蒸着する方法や、転写用フィルムに真空蒸着して形成した金属蒸着層を、接着剤を塗布した支持体5へ転写する転写蒸着法が利用できる。
【0018】
本発明においては、転写蒸着法を用いて、微細な凹凸をつけた転写フィルムを利用することによって転写後の金属層4表面に微細な凹凸を設けた。この微細な凹凸によってヘアライン模様、エンボス模様、マット模様、又はホログラム模様等を表現することができる。
【0019】
転写フィルムに微細な凹凸を設ける方法として研磨剤を用いることができる。研磨剤は、砥粒と接着剤と合成繊維の三大要素から構成されている。砥粒は、酸化アルミニウムとシリコンカーバイドを混合させたものを用いることができ、粒の硬度や大きさによって、微細な凹凸を調整することができる。
【0020】
微細な凹凸は、ヘアライン調やマット模様などのデザイン性を持たせることができ、特にマット模様は艶消し模様であり、金属光沢性の強度の度合いが適宜調整できる。
【0021】
金属層を支持体に転写する際に使用する接着剤としては、例えばドライラミネートに用いられる各種の二液硬化型接着剤や光硬化型接着剤を挙げることができる。二液硬化型接着剤は、時間経過とともに硬化するものであり、更には、加熱により一層短時間で硬化させることができ、例えばウレタン系樹脂接着剤やエポキシ系樹脂接着剤を用いることができる。また光硬化型接着剤は、電子線や紫外線などを照射して硬化するタイプのものである。例えばウレタン系樹脂接着剤やアクリル系樹脂接着剤を用いることができる。
【0022】
また図示はしていないが、金属層4上に保護層を設けてよい。保護層は、アクリレート系共重合樹脂および所望によりその他添加剤を、水、有機溶剤等の溶媒に溶解又は分解せしめてなる絵柄を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の通常のコーティング方法に従い塗布し、乾燥することにより形成される。保護層の厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜3μm程度である。
保護層を積層した場合は、保護層上に、後述する加飾層2および帯電防止層1を順に積層する。
【0023】
金属層4上に酸化防止層3を積層する。
酸化防止層3は、透明又は半透明の樹脂から構成することが好ましい。後述する酸化防止層3の構成層の一層であるインク受容層により印刷適性を付与することができ、かつ、金属層4の酸化を防ぐことができる。
【0024】
酸化防止層3は、プライマー層、アンカー層およびインク受容層の三層構造になっている。
プライマー層は、金属層4上に積層され、金属層4と後述するアンカー層との密着性を向上させる。
アンカー層は、後述するインク受容層を通過した水分を吸収して、金属層4への水分の浸透を防止するとともに、インク受容層と金属層4との密着性を向上させ、印刷適性の改善及び金属層4とインク受容層の剥離を防止できる。
アンカー層としては、ポリエステル変性樹脂を主成分とした樹脂を用いることができ、また、アンカー層の厚みは1〜5μmである。
インク受容層は、インクのにじみが少ないものであればよく、例えばポリエステル樹脂水分散体の加工剤を用いることができる。厚みは10〜20μmである。
よって酸化防止層3を積層することで、金属層4の酸化を防ぐことができるので、金属光沢性を維持することができる。
【0025】
酸化防止層3上に加飾層2を積層する。
加飾層2は、金属光沢性を有するような模様等を施すことができるので、さらなる金属光沢性または意匠効果が発揮される。加飾層2は観察者8から直接観察され、用いる絵柄には、印刷をする際に一般的に使われるインキを使用することができ、好みに応じた絵柄を印刷することができる。
【0026】
加飾層2の模様として、エンボス模様、マット模様等が用いられる。エンボス模様やマット模様は艶消し模様であり、金属光沢性の強度の度合いが適宜調整できる効果が生じる。
【0027】
加飾層2を形成する方法としては凸版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット等が利用できるが、耐光性に優れるスクリーン印刷を使用することが好ましい。
【0028】
加飾層2上に帯電防止層1を積層する。
帯電防止層1は、加飾層2の全面に積層され、透明又は半透明の樹脂から構成されている。帯電防止層が存在することで、加飾層および酸化防止層の汚れや傷等を防ぐことができるので、金属光沢性や光透過性を維持することができる。
帯電防止層1は、導電性粉末や界面活性剤などを樹脂中に分散させてシート状に成形する方法、フィルム表面に帯電防止剤を塗布する方法、及びカルボキシル基を持つ帯電防止ポリマーを使用する方法等が採用することができる。
【0029】
支持体5の他方の面に絵柄層6を設ける。絵柄層6は、スクリーン印刷によって設けることができる。特にスクリーン印刷に限定することなく、凸版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット等を用いることができる。絵柄層6が設けられない箇所が文字や図形等になる。光源が点灯時には、絵柄層が遮光性を有するので、光を透過させない。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例について具体的に説明する。図1は本発明の情報表示パネル9の一実施例を示したものである。
酸化アルミニウムとシリコンカーバイドを混合させた研磨剤による研磨によって、微細な凹凸をつけた二軸延伸ポリプロピレン製の転写用フィルムの表面に真空蒸着法により、表面抵抗値が1.3Ω/□になるようにアルミニウム蒸着層を形成させた後、この上に接着剤である二液重合型ポリウレタンを4μm程度の厚みになるように塗布した。
【0031】
ここで、アルミニウム蒸着層である金属層の表面抵抗値が1.3Ω/□になるようにしたのは、表1から得た金属光沢性と光透過性(遮光性)を考慮したためで、特に金属光沢性を重視したためである。表1から明らかなように、金属層が厚い、すなわち表面抵抗値が高い場合には金属層を透過する光量が減少してしまう。金属層が薄すぎる、すなわち表面抵抗値が低い場合には金属層の金属光沢感が失われてしまう。そのため、金属層3の表面抵抗値は1.3Ω/□から100Ω/□が好ましい。その下限は、さらに好ましくは2.6Ω/□以上であり、その上限は、さらに好ましくは60Ω/□、より好ましくは30Ω/□以下である。表面抵抗値は蒸着加工中にインラインで測定された値であり、従来の膜厚測定に比べ測定方法が容易である。また、膜厚が非常に薄い場合でも測定することができる。
【0032】
表1の測定は、本発明の情報表示パネルの他方の面側に1,000cd/mのLED光源を置き、情報表示パネルの表面抵抗値の値を変化させて、1mの距離から観察し、光沢性と光透過性を評価した。アルミニウム蒸着の場合、蒸着層の厚みが大きくなると表面抵抗値が下がる。
【表1】

【0033】
金属層4の表面抵抗値により金属光沢性と遮光性を適宜選択することができる。たとえば光透過性を重視すると、表面抵抗値は1.3Ω/□程度が好ましい。
表面抵抗値に変えて、金属層の厚さを制御する方法も考えられるが、厚さには、厚さムラもあり、適切な測定が難しいという問題を有している。そのため、表面抵抗値を制御する方法によることが好ましく、表1に示すように、光透過性や金属光沢性と相関関係があることも確認されている。
【0034】
この接着剤の上に支持体であるポリカーボネート(商品名FE−2000B;三菱瓦斯化学株式会社)を重ね、全体を熱圧着して接着剤を硬化させた。
そして転写用フィルムをアルミニウム蒸着層から剥離し、接着剤を介してアルミニウム転写蒸着層とポリカーボネートが一体化したものを得た。
【0035】
支持体であるポリカーボネートは板厚400μmである。
アルミニウム蒸着層の表面に、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層を形成した。プライマー層上に、樹脂(商品名:WAC−10、高松油脂(株)社製)を厚み約1.5μmのアンカー層を形成した。 アンカー層上に、ポリエステル樹脂(商品名:NS−141LX、高松油脂(株)社製)の水分散体を固形分厚み15μmとなるよう塗布し、インク受容層を形成して酸化防止層3を積層した。
酸化防止層上に二液硬化型スクリーンプロセス絵柄(商品名SS65シリーズ;東洋絵柄製造株式会社)を用いてスクリーン印刷によりマット模様である加飾層2を形成した。
【0036】
支持体の他方の面に二液硬化型スクリーンプロセス絵柄(商品名SS65シリーズ;東洋絵柄製造株式会社)を用いて、光を透過させない箇所にスクリーン印刷を行った。光を透過させる箇所の形状を文字や図形等にすることで、光源が点灯時に、文字や図形等に光が透過する。本発明の絵柄層6に該当する。
絵柄層を設けると、絵柄層の側から入射する光が、絵柄層の存在しない領域のみを通過することから、その通過する領域が特に明るく観察され、多様な表示が可能になる。
特に光源7を設けて、点灯した場合には、この傾向は著しくなり、美しい表示が可能となる。
【0037】
加飾層上全面に、導電性粉末や界面活性剤などを樹脂中に分散させて層状に成形する方法を用いて、帯電防止層1を設けた。
光源が点灯時に目視方向から観察すると、絵柄層で施された数字、図形および文字等がアルミニウム蒸着層を透過して観察でき、はっきりと美しく表示されていた。光源が非点灯時には、加飾層が存在しない範囲で酸化防止層および帯電防止層を透過して金属層を観察することができ、加飾層が存在する範囲は、加飾層で施した模様が観察することができた。
加飾層1によって、意匠効果に優れた模様等を印刷することができた。

【符号の説明】
【0038】
1 帯電防止層
2 加飾層
3 酸化防止層
4 金属層
5 支持体
6 絵柄層
7 光源
8 観察者
9 情報表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に金属層が積層された情報表示パネルであって、前記金属層の表面抵抗値が1.3〜100Ω/□の範囲であることを特徴とする情報表示パネル。
【請求項2】
前記金属層上に酸化防止層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の情報表示パネル。
【請求項3】
前記酸化防止層上に加飾層が積層されていることを特徴とする請求項2記載の情報表示パネル。
【請求項4】
前記加飾層上または基材の金属層の無い側へ設けた絵柄層上に帯電防止層が積層されていることを特徴とする請求項3記載の情報表示パネル。
【請求項5】
前記支持体はポリカーボネート、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、アクリル、ポリスチレン、メタクリル・スチレン共重合体またはアクリルニトリル・スチレン共重合体のうちのいずれかの樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4記載の情報表示パネル。
【請求項6】
前記金属層の表面に、微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項1乃至5記載の情報表示パネル。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−198009(P2010−198009A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15378(P2010−15378)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】