説明

情報表示用パネルの製造方法および情報表示用パネル

【課題】接着剤硬化工程をオートクレーブを用いて行う工程とすることにより、基板表面への押しムラの形成を防止して外観の良好な情報表示用パネルを作製し得る情報表示用パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板である基板1、基板2間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法では、基板1に配置した接着剤を硬化させる接着剤硬化工程を、熱硬化系接着剤を使用して、オートクレーブ18を用いて加熱および加圧しながら行う工程とすることにより、情報表示用パネルを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法、および、該製造方法を用いて作製した情報表示用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶(LCD)に代わる情報表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた情報表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な情報表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用情報表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、情報表示の繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方式は、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、表示情報を書き換える際の安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルが知られている。
【0007】
【非特許文献1】趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”論文集、p.249-252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2枚の基板として用いる2枚のフィルム基板を貼り合わせることにより上記情報表示用パネルを作製しようとする場合、2枚のフィルム基板が剥がれないように、一方のフィルム基板に設けた隔壁の上部と対向する他方のフィルム基板とを接着剤で貼り合わせる必要がある。その際、熱硬化系の接着剤を用いて加圧(プレス)および加熱しながら2枚の基板を接着する場合には、フィルム基板の表面に押しムラが形成され、その押しムラによって接着不良が生じたり押し痕(打痕)によって情報表示用パネルの外観を損ねるおそれがある。
【0009】
本発明は、接着剤硬化をオートクレーブを用いて行う接着剤硬化工程とすることにより、基板表面への押しムラの形成を防止して外観の良好な情報表示用パネルを作製し得る情報表示用パネルの製造方法を提供することを第1の目的とする。
本発明は、上記情報表示用パネルの製造方法を用いて、基板表面への押しムラの形成を防止して、外観の良好な情報表示用パネルを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の目的を達成するため、本発明の情報表示用パネルの製造方法は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法であって、少なくとも一方の基板に配置した接着剤を硬化させる接着剤硬化工程を、オートクレーブを用いて加熱および加圧しながら行う工程としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の情報表示用パネルの製造方法の好適例としては、前記接着剤硬化工程では熱硬化系接着剤を使用すること、および、前記2枚の基板は、ロールに巻かれたシート状の連続した基板から形成すること、がある。
【0012】
上記第2の目的を達成するため、本発明の情報表示用パネルは、請求項1〜3の何れか1項記載の情報表示用パネルの製造方法を用いて作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の本発明の情報表示用パネルの製造方法によれば、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルを製造する際には、少なくとも一方の基板に配置した接着剤を硬化させる接着剤硬化を、オートクレーブを用いて加熱および加圧しながら行うので、全面に亘ってムラ無く均一な力で2枚の基板を押し付けながら接着することが可能になり、プレス時に生じ易い押しムラが効果的に防止され、押しムラに伴う接着不良や押し痕(打痕)は生じない。したがって、外観の良好な情報表示用パネルを作製し得る情報表示用パネルの製造方法を提供することができる。
【0014】
上記構成の本発明の情報表示用パネルによれば、請求項1〜請求項3の何れかの情報表示用パネルの製造方法を用いて高い生産性で作製するから、基板表面への押しムラの形成が防止されることになり、外観の良好な情報表示用パネルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の対象となる情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明の対象となる情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に封入した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、帯電した表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電位の切替による電界方向の変化によって移動方向を変えることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示を書き換える時あるいは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0017】
本発明の対象となる情報表示用パネルの例を、図1(a),(b)〜図3(a),(b)に基づき説明する。
【0018】
図1(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状に隔壁4を設けセルを形成している。また、図1(b)において、手前にある隔壁は省略している。
図2(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電特性の異なる少なくとも2種以上の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状に隔壁4を設けセルを形成している。また、図2(b)において、手前にある隔壁は省略している。
図3(a),(b)に示す例では、少なくとも1種以上の粒子から構成される光学的反射率および帯電性を有する1種の表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wを示す)を、基板1に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させ、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。なお、図3(b)に示す例では、図3(a)に示す例に加えて、基板1、2の間に例えば格子状の隔壁4を設けセルを形成している。また、図3(b)において、手前にある隔壁は省略している。
以上の説明は、粒子群からなる白色表示媒体3Wを粉流体からなる白色表示媒体に、粒子群からなる黒色表示媒体3Bを粉流体からなる黒色表示媒体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することができる。
【0019】
以下、本発明の情報表示用パネルの製造方法について詳細に説明する。本発明の情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルであり、図4に例示する工程およびここでは図示しない工程によって作製する。
【0020】
一方の基板(基板1)に関しては、まず、図4に示すように、一方の基板(基板1)を多面取りするための枚葉基板(マザー基板)の基板材料である、ロール11に巻かれたシート状の連続した基板(以下、基板シートという)12を製造ラインに装着する。この基板シート12は、可撓性を有する樹脂基板であることが好ましい。なお、この基板シート12には、図示しない前工程において、ITOパターニング工程、隔壁形成工程、隔壁上部への接着剤配置工程および接着剤UV硬化工程を設けて、隔壁上部の接着剤層をタックフリー化しておくものとする。ここでいうタックフリー化とは、接着機能を有しながらも、そのままでは粘着性がない状態である。
次に、図4に示す表示媒体充填工程で、基板シート12上のパネル形成領域に形成した隔壁より成る各々のセル内に所定量の表示媒体を充填し、その後、図4に示す表示媒体除去工程で、除去ロール13によって隔壁上の不要な表示媒体を除去する。次に、図4に示す裁断工程で、基板シート12をカッター14によって枚葉に裁断して、基板1を多面取り(図示例では4枚取り)するための枚葉基板15を形成する。隔壁、電極が予め形成された連続シートをロール11に巻いておき用いることもできるし、シートだけが巻かれたロール11からシートを引き出して、表示媒体充填工程の前に、隔壁形成工程や電極形成工程を設けることもできる。この場合の隔壁形成工程や電極形成工程の順番は、製造する情報表示用パネルによって適宜変更することができる。さらに、本発明では、表示媒体充填工程の前に接着剤層形成工程を設ける。
【0021】
他方の基板(基板2)に関しては、可撓性を有する樹脂基板である基板シート12を用いて、基板1を多面取りするための枚葉基板15と同様の工程により作製した、基板2を多面取りするための枚葉基板16を用いる。この枚葉基板16を作製する際には、基板シート12に対して、隔壁形成工程、表示媒体充填工程および表示媒体除去工程を設けることもできるし、これらを設けないで、基板シート12の所定位置にシール剤を配置するシール接着剤配置工程を設けることもできる。その後、上記と同様の裁断工程を実施する。作製された枚葉基板16は、図4に示すように、接着剤配置面が上になるようにトレイに載置して所定位置にストックしておき、貼り合わせ時に上下反転させて使用する。上記枚葉基板16は、基板2を多面取り(図示例では4枚取り)するための枚葉基板となる。
【0022】
次に、図4に示すように、減圧チャンバー17内において、基板1を多面取りするための枚葉基板15と基板2を多面取りするための枚葉基板16とを所定の減圧下で貼り合わせる貼り合わせ工程に入る。この貼り合わせ工程は、例えば減圧UVプレスによって行うことにより、シール剤を硬化させるシール剤硬化工程を含むものになる。上記貼り合わせ工程により、2枚の枚葉基板を貼り合わせた状態で、シール剤硬化工程によってシール剤を硬化させるとともにシール部分の接着剤のみを空気が流入しない程度に仮硬化させることができる。
【0023】
次に、図4に示すように、貼り合わせおよびシール剤硬化が完了した2枚の枚葉基板を減圧チャンバー17の外部に設置したオートクレーブ18内に移動して、大気圧下で接着剤を本硬化させて2枚の枚葉基板間を接着する接着剤硬化工程に入る。この接着剤硬化は、オートクレーブ18を用いて加熱および加圧しながら行うものとする。
なお、上記シール剤硬化工程および上記接着剤硬化工程で用いるシール剤および接着剤は、互いに異なる硬化速度を有する硬化系に属するものを用いるものとし、例えばシール剤硬化工程では硬化速度が速いシール剤(例えばUV硬化系シール剤)を使用し、接着剤硬化工程では硬化速度が遅い接着剤(例えば熱硬化系接着剤)を使用するものとする。
【0024】
その後、図示しないパネル裁断工程によって、2枚の枚葉基板を接着したものから、基板1,基板2から成る情報表示用パネルを1枚ずつ切り分ける。以上により、本発明の情報表示用パネルを作製する。
なお、上記接着剤硬化工程以外の各工程を設ける順番は、上記に限定されるものではなく、必要に応じて順番を変更することができる。
【0025】
本発明の情報表示用パネルの製造方法によれば、基板1に配置した接着剤を硬化させる接着剤硬化工程を、オートクレーブ18を用いて加熱および加圧しながら行う工程とするので、全面に亘ってムラ無く均一な力で2枚の基板を押し付けながら接着することができるようになり、プレス時に生じ易い押しムラが効果的に防止されるため、押しムラに伴う押し痕(打痕)が生じず、外観の良好な情報表示用パネルを作製し得る情報表示用パネルの製造方法となる。また、プレス時に押し圧が均一になるため、接着ムラも生じず、均一で高い接着力を得ることができる。
また、本発明の情報表示用パネルは、上記本発明の情報表示用パネルの製造方法を用いて基板表面への押しムラの形成を防止しながら作製したものであるから、外観の良好な情報表示用パネルとなる。
【0026】
以下、本発明の対象となる情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0027】
基板については、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体の色が確認できる透明な基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適であり、フィルム状基板等の可撓性を有する樹脂基板が特に好適である。もう一方の基板となる背面基板は透明でも不透明でもかまわないが、フィルム状基板等の可撓性を有する樹脂基板が好適である。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0028】
必要に応じて設ける電極の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。視認側(表示面側)基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0029】
必要に応じて基板に設ける隔壁4については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図5に示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0030】
次に、本発明の情報表示用パネルで表示媒体として用いる粉流体について説明する。なお、本発明の情報表示用パネルで用いる粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標):登録番号4636931」の権利を得ている。
【0031】
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0032】
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の情報表示用パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0033】
本発明の情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、小さな電界の力でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の情報表示用パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で表示媒体として用いられる。
【0034】
次に、本発明の情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。表示媒体用粒子は、そのまま該表示媒体用粒子だけで構成して表示媒体としたり、その他の粒子と合わせて構成して表示媒体としたり、粉流体となるように調整、構成して表示媒体としたりして用いられる。
粒子には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0035】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0036】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0037】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0038】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0039】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0040】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0041】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0042】
また、本発明の表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体の移動に支障をきたすようになる。
【0043】
さらに本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体移動が可能となる。
【0044】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0045】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0046】
さらに、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体等の表示媒体を乾式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1(a),(b)〜図3(a),(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0047】
本発明の対象となる情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>
図4に示す製造方法により、シール剤硬化工程を含む貼り合わせ工程の後に設ける接着剤硬化工程を、オートクレーブ18を用いて加熱および加圧しながら行う工程とすることにより、実施例1の情報表示用パネルを作製した。
【0050】
<比較例1>
2枚の金属板の間に2枚のフィルム基板を挟んで、プレスしながら加熱することにより接着剤を硬化させることにより、比較例1の情報表示用パネルを作製した。
【0051】
実施例1の情報表示用パネルは、オートクレーブを用いて加熱および加圧して2枚のフィルム基板を接着したものであるため、表面に凹凸が一切無く、外観が極めて良好であった。さらに、接着剤もムラ無く接着されており、情報表示用パネルを曲げても接着剤の剥離は生じなかった。
一方、比較例1の情報表示用パネルは、プレスしながら加熱することにより接着剤を硬化させたものであるため、接着後の基板表面に微細な凹凸が多数発生して表面性が悪くなり、外観も好ましくないものとなった。また、接着剤のムラが発生したため、接着が不十分な部分も発生した。さらに、接着力が低くなったため、情報表示用パネルを少し曲げただけで接着剤の剥離が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の情報表示用パネルの製造方法によって作製した情報表示用パネルは、画像ムラがなく、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP、電子棚札、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる情報表示用パネルの一例を示す図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる情報表示用パネルの他の例を示す図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、本発明の対象となる情報表示用パネルのさらに他の例を示す図である。
【図4】本発明の情報表示用パネルの製造方法の一例を説明するための図である。
【図5】本発明の対象となる情報表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1,2 基板
3 表示媒体(粒子群、粉流体)
3W 白色表示媒体
3B 黒色表示媒体
3Wa 白色表示媒体用粒子
3Ba 黒色表示媒体用粒子
4 隔壁
5 電極
6 電極
11 ロール
12 基板シート
13 除去ロール
14 カッター
15 枚葉基板
16 枚葉基板
17 減圧チャンバー
18 オートクレーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルの製造方法であって、
少なくとも一方の基板に配置した接着剤を硬化させる接着剤硬化工程を、オートクレーブを用いて加熱および加圧しながら行う工程としたことを特徴とする情報表示用パネルの製造方法。
【請求項2】
前記接着剤硬化工程では熱硬化系接着剤を使用することを特徴とする請求項1記載の情報表示用パネルの製造方法。
【請求項3】
前記2枚の基板は、ロールに巻かれたシート状の連続した基板から形成することを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示用パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の情報表示用パネルの製造方法を用いて作製することを特徴とする情報表示用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−163661(P2007−163661A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357632(P2005−357632)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)